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特許7465155制御装置、制御システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20240403BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
E05B49/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020101430
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021196211
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】森 惠
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
(72)【発明者】
【氏名】古池 竜也
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0288569(US,A1)
【文献】特開2017-173256(JP,A)
【文献】特開2018-141771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0119467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14,
G01S 19/00-19/55,
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、窓およびドアを有する車室内であって、当該室内の天井部に固定されるアンテナを有する1以上の第1の位置固定型通信装置及び前記室内の床部または側部に固定されるアンテナを有する1以上の第2の位置固定型通信装置のそれぞれと、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記第1または前記第2の位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す各測距値を取得し、前記室内に対する前記位置可変型通信装置の相対的な位置を推定する制御部、
を備え
前記制御部は、
前記第1の位置固定型通信装置との無線通信により得られた測距値に基づく第1の推定結果に基づいて、前記位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを判定し、
前記位置可変型通信装置が車室外に位置すると判定された場合は、前記第2の位置固定型通信装置との無線通信により得られた測距値に基づく第2の推定結果に基づいて、前記位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを判定し、
前記第2の推定結果に基づいて前記位置可変型通信装置が車室外に位置すると判定された場合、最終的な判定結果として車室外と判定する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の推定結果に基づいて前記位置可変型通信装置が車室内に位置すると判定された場合、前記第2の推定結果に基づく判定を行わずに、最終的な判定結果として車室内と判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記無線通信により前記位置可変型通信装置から送信される信号が前記第1または前記第2の位置固定型通信装置に到来する角度を取得し、当該取得した角度と前記測距値に基づいて、前記相対的な位置を推定する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
記位置可変型通信装置は、前記車両を利用するユーザに携帯して使用される装置である、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記測距値を得るために前記第1および第2の位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置とが行う前記無線通信では、UWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号が送受信される、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
車両に設けられ、窓およびドアを有する車室内であって、当該室内の天井部に固定されるアンテナを有する1以上の第1の位置固定型通信装置及び前記室内の床部または側部に固定されるアンテナを有する1以上の第2の位置固定型通信装置と、
前記第1または前記第2の位置固定型通信装置と前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置とが無線通信を行うことで得られた、前記第1または前記第2の位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す各測距値を取得し、前記室内に対する前記位置可変型通信装置の相対的な位置を推定する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、
前記第1の位置固定型通信装置との無線通信により得られた測距値に基づく第1の推定結果に基づいて、前記位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを判定し、
前記位置可変型通信装置が車室外に位置すると判定された場合は、前記第2の位置固定型通信装置との無線通信により得られた測距値に基づく第2の推定結果に基づいて、前記位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを判定し、
前記第2の推定結果に基づいて前記位置可変型通信装置が車室外に位置すると判定された場合、最終的な判定結果として車室外と判定する、
制御システム。
【請求項7】
コンピュータを、
車両に設けられ、窓およびドアを有する車室内であって、当該室内の天井部に固定されるアンテナを有する1以上の第1の位置固定型通信装置及び前記室内の床部または側部に固定されるアンテナを有する1以上の第2の位置固定型通信装置のそれぞれと、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記第1または前記第2の位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す各測距値を取得し、前記室内に対する前記位置可変型通信装置の相対的な位置を推定する制御部、
として機能させ
前記制御部は、
前記第1の位置固定型通信装置との無線通信により得られた測距値に基づく第1の推定結果に基づいて、前記位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを判定し、
前記位置可変型通信装置が車室外に位置すると判定された場合は、前記第2の位置固定型通信装置との無線通信により得られた測距値に基づく第2の推定結果に基づいて、前記位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを判定し、
前記第2の推定結果に基づいて前記位置可変型通信装置が車室外に位置すると判定された場合、最終的な判定結果として車室外と判定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、装置間で信号を送受信した結果に従って、一方の装置が他方の装置の位置を推定する技術が開発されている。位置推定技術の一例として、下記特許文献1には、UWB(Ultra-Wide Band)で無線通信を行うことで、UWB受信機がUWB送信機からの無線信号の到来角度を推定する技術が開示されている。また、位置推定技術の他の一例として、無線通信を行うことで装置間の距離を測定し、当該距離を用いて位置推定が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/176776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、装置間に遮蔽物があると通信がうまく行われず、その結果として計測したい対象の計測精度が悪化するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置推定精度を向上させることが可能な仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、物体によって区画された空間である対象空間の内部であって、当該対象空間に含まれる少なくとも一つの部位に固定される第1の位置固定型通信装置及び前記部位とは異なる部位に固定される第2の位置固定型通信装置を含む複数の位置固定型通信装置の少なくとも一つと、前記対象空間に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記少なくとも一つの前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、前記対象空間に対する前記位置可変型通信装置の相対的な位置を、前記測距値に基づいて推定する制御部、を備える制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、物体によって区画された空間である対象空間の内部であって、当該対象空間に含まれる少なくとも一つの部位に固定される第1の位置固定型通信装置及び前記部位とは異なる部位に固定される第2の位置固定型通信装置を含む複数の位置固定型通信装置と、少なくとも一つの前記位置固定型通信装置と前記対象空間に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置とが無線通信を行うことで得られた、前記少なくとも一つの前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、前記対象空間に対する前記位置可変型通信装置の相対的な位置を、前記測距値に基づいて推定する制御装置と、を備える、制御システムが提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、物体によって区画された空間である対象空間の内部であって、当該対象空間に含まれる少なくとも一つの部位に固定される第1の位置固定型通信装置及び前記部位とは異なる部位に固定される第2の位置固定型通信装置を含む複数の位置固定型通信装置の少なくとも一つと、前記対象空間に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記少なくとも一つの前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、前記対象空間に対する前記位置可変型通信装置の相対的な位置を、前記測距値に基づいて推定する制御部、として機能させるための、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、位置推定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の技術的課題を説明するための図である。
図3】本実施形態に係る複数の通信装置の配置の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る制御装置により実行される位置パラメータ推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素を、必要に応じて通信装置200A、及び200Bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、通信装置200A、及び200Bを特に区別する必要が無い場合には、単に通信装置200と称する。
【0013】
<<1.概要>>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100と、車両20に搭載される通信装置200及び制御装置300と、を含む。車両20は、ユーザの利用対象(対象物)である移動体の一例である。
【0014】
本発明には、被認証側の装置と、当該装置との通信により得られた情報を用いて当該装置を認証する認証処理を行う認証側の装置と、が関与する。図1に示した例では、携帯機100が被認証側の装置の一例であり、制御装置300が認証側の装置の一例である。
【0015】
システム1においては、例えば車両20のドライバーであるユーザが携帯機100を携帯して車両20に近付くと、携帯機100と通信装置200との間で認証のための無線通信が行われる。そして、通信装置200により得られた情報を用いて制御装置300が認証処理を行い、認証が成功すると、制御装置300の制御により車両20のドア錠がアンロックされたり、照明が点灯したり、エンジンが始動されたり等、車両20がユーザにより利用可能な状態となる。このようなシステム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0016】
<1.1.携帯機100>
携帯機100は、任意の制御装置として構成される。任意の制御装置の一例として、移動体のユーザに携帯して使用される、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等の装置が挙げられる。図1に示すように、携帯機100は、無線通信部110、制御部120、及び記憶部130を備える。
【0017】
(無線通信部110)
無線通信部110は、通信装置200との間で、所定の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。所定の無線通信規格では、例えばRF(Radio Frequency)帯の信号及びLF(Low Frequency)帯の信号が使用されてもよい。または、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。若しくは、UWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号が使用されてもよい。
【0018】
なおUWBによるインパルス方式の信号は、測距を高精度に行うことができるという特性を有する。すなわち、UWBによるインパルス方式の信号は、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測距を高精度に行うことができる。空中伝搬時間とは、電波を送信してから受信するまでにかかる時間である。ここで、測距とは、信号を送受信する装置間の距離を測定することを指す。無線通信部110は、例えば、UWBを用いた信号を送受信することが可能なインタフェースとして構成される。
【0019】
なお、UWBを用いた信号は、例えば、測距用信号、角度推定用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信される信号である。測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、例えば、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。角度推定用信号とは、後述する角度推定処理において送受信される信号である。角度推定用信号は、測距用信号と同様の構成を有していてもよい。データ信号は、例えば、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが好ましい。
【0020】
ここで、無線通信部110は、少なくとも1つのアンテナを有する。そして、無線通信部110は、少なくとも1つのアンテナを介して無線信号を送受信する。
【0021】
(制御部120)
制御部120は、携帯機100による動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部120は、無線通信部110を制御して通信装置200との通信を行う。また、制御部120は、記憶部130からの情報の読み出し及び記憶部130への情報の書き込みを行う。制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0022】
(記憶部130)
記憶部130は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部130は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(identifier)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部130は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0023】
以上、携帯機100の構成例について具体的に説明した。なお、図1に示す構成は一例であって、携帯機100の構成はこれに限定されない。例えば携帯機100は、携帯機100に対するユーザの操作を受け付ける操作部、携帯機100の動きや周辺の音声を検知するセンサ部、音声を出力する音声出力部、または携帯機100を振動させる振動部等をさらに有する構成であってもよい。
【0024】
<1.2.通信装置200および制御装置300>
通信装置200および制御装置300は、車両20に対応付けて設けられる。ここでは、車両20の車室内に設置される、又は通信モジュールとして車両20に内蔵される等、通信装置200は車両20に搭載されるものとする。他にも、車両20の駐車場に制御装置300が設けられる等、車両20と制御装置300とが別体として構成されてもよい。その場合、制御装置300は、携帯機100と通信装置200との通信結果に基づいて、車両20に制御信号を無線送信し、車両20を遠隔で制御し得る。車両20には、複数の通信装置200が設けられていてもよい。
【0025】
(通信装置200)
通信装置200は、携帯機100との間で無線通信を行う装置である。図1に示すように、通信装置200Aは、無線通信部210、制御部220、記憶部230、および車両内通信部240を備える。なお、通信装置200B等の他の通信装置200もまた、通信装置200Aと同様の構成要素を備える。
【0026】
無線通信部210は、携帯機100の無線通信部110との間で、所定の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。無線通信部210は、携帯機100からの信号を無線で受信する。また、無線通信部210は、携帯機100へ信号を無線で送信する。無線通信部210は、例えば、UWBでの通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0027】
ここで、無線通信部210は、少なくとも1つのアンテナを有する。そして、無線通信部210は、少なくとも1つのアンテナを介して無線信号を送受信する。
【0028】
制御部220は、通信装置200による動作を制御する機能を有する。一例として、制御部220は、無線通信部210を制御して携帯機100との間で通信を行う。他の一例として、制御部220は、車両内通信部240を制御して車両20に対応付けて設けられる他の装置との間で通信を行う。他の一例として、制御部220は、記憶部230からの情報の読み出し及び記憶部230への情報の書き込みを行う。制御部220は、例えばECU(Electronic Control Unit)として構成される。
【0029】
記憶部230は、通信装置200の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部230は、通信装置200の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(identifier)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部230は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0030】
車両内通信部240は、車両20に対応付けて設けられる他の装置との間で通信を行う機能を有する。一例として、車両内通信部240は、制御装置300との間で通信を行う。車両内通信部240は、例えば、LIN(Local Interconnect Network)又はCAN(Controller Area Network)等の、任意の車載ネットワークの規格に準拠した通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0031】
(制御装置300)
制御装置300は、通信装置200との間で通信を実行する装置である。制御装置300は、複数の通信装置200との間で通信を実行する装置である。図1に示すように、制御装置300は、車両内通信部310、制御部320、及び記憶部330を備える。
【0032】
車両内通信部310は、車両20に対応付けて設けられる他の装置との間で通信を行う機能を有する。一例として、車両内通信部310は、通信装置200との間で通信を行う。車両内通信部310は、例えば、LIN(Local Interconnect Network)又はCAN(Controller Area Network)等の、任意の車載ネットワークの規格に準拠した通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0033】
制御部320は、制御装置300による動作を制御する機能を有する。一例として、制御部320は、車両内通信部310を制御して車両20に対応付けて設けられる他の装置との間で通信を行う。他の一例として、制御部320は、記憶部330からの情報の読み出し及び記憶部330への情報の書き込みを行う。制御部320は、例えばECU(Electronic Control Unit)等の電子回路として構成される。
【0034】
とりわけ、制御部320は、複数の通信装置200の各々と携帯機100との間の無線通信により得られた情報に基づく処理を実行する。当該処理の一例は、携帯機100を認証する認証処理である。また、当該処理の他の一例として、制御部320は、車両20のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、当該処理の他の一例として、制御部320は、車両20のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両20に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。また、当該処理の他の一例として、制御部320は、車両20に設けられた照明の点灯及び消灯の制御を行う。また、当該処理の他の一例として、制御部320は、車両20に設けられた所定の電気関係の部品への通電の開始/停止の制御を行う。所定の電気関係の部品とは、例えば、エアコンディショナー、カーオーディオ、カーナビゲーション装置などが挙げられる。
【0035】
記憶部330は、制御装置300の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部330は、制御装置300の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(identifier)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部330は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0036】
以上、本システム1の構成の一例について具体的に説明した。なお、携帯機100と複数の通信装置200の各々との間で送受信される無線信号は、任意の周波数帯により送受信される。無線信号は、UWBを用いた信号に限定されず、例えば、LF(Radio Frequency)帯の信号でもよいし、RF(Radio Frequency)帯の信号として送信でもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号でもよい。また、携帯機100および複数の通信装置200は、UWBを用いた信号の送受信を行う無線通信部の他に、周波数帯の異なる通信により無線信号を送受信する無線通信部をさらに備えていてもよい。
【0037】
<<2.位置パラメータの推定>>
本実施形態に係る制御装置300は、携帯機100が存在する位置を示す位置パラメータを推定する推定処理を行う。
【0038】
位置パラメータは、携帯機100と、車両20に搭載された各通信装置200との間の距離を含み得る。当該距離は、例えば通信装置200のローカル座標系の原点から携帯機100までの距離である。本実施形態では、通信装置200を基準とする座標系として、通信装置200のローカル座標系を設定してもよい。通信装置200は、複数のアンテナを有する。通信装置200のローカル座標系の一例は、通信装置200が有する複数のアンテナの中心を原点とし、車両20の前後方向をX軸、車両20の左右方向をY軸、車両20の上下方向をZ軸とする座標系である。複数のアンテナの配置形状は特に限定しない。
【0039】
携帯機100と各通信装置200との間の距離は、携帯機100と各通信装置200との間で行われる、後述する測距用信号の送受信結果に基づいて、推定される。
【0040】
また、位置パラメータは、携帯機100から送信された信号が各通信装置200に到来する角度を含み得る。当該角度は、通信装置200を基準とする携帯機100の角度である。例えば、当該角度は、通信装置200のローカル座標系における原点と携帯機100とを結ぶ直線と当該ローカル座標系における座標軸とがなす角度から成る。
【0041】
また、位置パラメータは、所定の座標系における携帯機100の座標を含み得る。所定の座標系は、通信装置200のローカル座標系であってもよい。例えば、当該ローカル座標系におけるX軸上の座標x、Y軸上の座標y、及びZ軸上の座標zにより、携帯機100の三次元座標(x,y,z)が示される。
【0042】
<2.1.測距処理>
制御装置300は、測距処理を行う。測距処理とは、各通信装置200と携帯機100との間の距離を推定する処理である。測距処理は、測距用信号を送受信すること、及び測距用信号の空中伝搬時間に基づいて距離Rを計算することを含む。空中伝搬時間とは、信号が送信されてから受信されるまでにかかる時間である。制御装置300は、各通信装置200と携帯機100とが通信を行うことで得られた情報を各通信装置200から取得し、各通信装置200と携帯機100との間の距離をそれぞれ算出する測距処理を行い得る。
【0043】
測距処理においては、複数の通信装置200の各々と携帯機100との間で複数の測距用信号が送受信され得る。複数の測距用信号のうち、一方の装置から他方の装置へ送信される測距用信号を第1の測距用信号とも称する。次に、第1の測距用信号を受信した装置から、第1の測距用信号を送信した装置へ、第1の測距用信号の応答として送信される測距用信号を、第2の測距用信号とも称する。
【0044】
測距処理の一例について説明する。例えば、まず、携帯機100が測距の開始を指示する測距トリガ信号を送信する。次いで、測距トリガ信号を受信した通信装置200は、第1の測距用信号を送信する。次に、第1の測距用信号を受信した携帯機100は、第1の測距用信号を受信してから規定時間(ΔT1)経過後に、第2の測距用信号を送信する。通信装置200は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT2を計測する。第2の測距用信号の受信時刻とは、第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻である。制御装置300は、既知のΔT1と、計測されたΔT2とに基づいて、携帯機100と通信装置200との間の距離を計算する。具体的には、ΔT2からΔT1を差し引いた値を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間が計算され、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と通信装置200との間の距離が計算される。なお、時間ΔT1は、制御装置300に既知でなくともよい。例えば、携帯機100は、時間ΔT1を計測し、通信装置200に報告してもよい。かかる報告は、時間ΔT1を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信することで行われ得る。
【0045】
<2.2.角度推定>
制御装置300は、角度推定処理を行う。例えば、角度取得処理は、角度推定用信号を受信すること、及び角度推定用信号の受信結果に基づいて角度を計算することを含む。角度推定用信号とは、角度推定処理において送受信される信号である。
【0046】
まず、携帯機100は、角度推定用信号を送信する。次いで、通信装置200の無線通信部210により角度推定用信号が受信される。制御装置300の制御部320は、無線通信部210により受信された角度推定用信号に基づいて、到達角度(AoA:Angle of Arrival)を推定する。
【0047】
-補足
なお、角度推定用信号と、測距用信号とは、同一であってもよい。この場合、複数の通信装置200の各々が、角度推定用信号及び第2の測距用信号を兼ねるひとつの無線信号を受信することで、制御装置300により、各通信装置200と携帯機100との距離並びに各通信装置200に対する携帯機100の角度を計算することができる。
【0048】
<2.3.座標推定>
制御装置300は、座標推定処理を行う。座標推定処理とは、携帯機100の三次元座標(x,y,z)を推定する処理である。制御装置300は、例えば、測距処理及び角度推定処理の結果に基づいて、座標x、y、及びzを計算する。座標推定処理で推定する携帯機100の座標は、二次元座標(x,y)であってもよい。制御装置300は、複数の通信装置200の得られた情報に基づいて、携帯機100の座標x、y、及びzを計算する。測距処理及び角度推定処理は、各通信装置200においてそれぞれ行われてもよい。
【0049】
なお、ローカル座標系における携帯機100の座標と、グローバル座標系におけるローカル座標系の原点の座標とを組み合わせることで、グローバル座標系における携帯機100の座標も推定可能である。
【0050】
<2.4.存在領域の判定>
位置パラメータの推定には、存在領域の判定が含まれる。制御装置300の制御部320は、予め定義された複数の領域のうち、携帯機100が存在する領域を判定し得る。一例として、領域が通信装置200からの距離により定義される場合、制御部320は、測距処理により推定された距離に基づいて、携帯機100が存在する領域を判定する。他の一例として、領域が通信装置200からの角度により定義される場合、制御部320は、角度推定処理により推定された角度に基づいて、携帯機100が存在する領域を判定する。他の一例として、領域が三次元座標により定義される場合、制御部320は、座標推定処理により推定された座標(x,y,z)に基づいて、携帯機100が存在する領域を判定する。
【0051】
他にも、車両20に特有の処理として、制御部320は、車両20の車室内及び車室外を含む複数の領域の中から、携帯機100が存在する領域を推定してもよい。例えば、制御部320は、携帯機100が車両20の車室内及び車室外のいずれの領域に存在するかを判定してもよい。これにより、ユーザが車室内にいる場合と車室外にいる場合とで異なるサービスを提供することが可能となる。他にも、制御部320は、車両20から所定距離以内の領域である周辺領域、及び車両20から所定距離以上の領域である遠方領域の中から、携帯機100が存在する領域を特定してもよい。
【0052】
<2.5.位置パラメータの推定結果の用途>
位置パラメータの推定結果は、例えば携帯機100の認証のために使用され得る。例えば、制御部320は、運転席側であって通信装置200からの距離が近い領域に携帯機100が存在する場合に、認証成功を判定し、ドアを解錠する。また、制御部320は、車室内領域に携帯機が存在する場合、認証成功を判定し、エンジンの始動を許可する。
【0053】
<<3.技術的課題>>
図2を参照しながら、本実施形態の技術的課題を説明する。図2は、本実施形態の技術的課題を説明する図である。図2に示すように、車両20は天井部23と床部25を含む。また、天井部と床部25とを繋ぐ側面部には、ガラス窓28が設けられる。
【0054】
車両20の車室内には、通信装置200Eが設置される。通信装置200Eは、図1に示す本実施形態による通信装置200と実質的に同一の機能構成を有する。図2に示すように、通信装置200Eは、天井部23に配置される。通信装置200Eを天井部23に設置することで、車室内外の広い範囲において携帯機100の位置推定が可能となる。
【0055】
ここで、車両20に乗車しているユーザDの後ろポケットに携帯機100が入れられている場合等、携帯機100からの直接波が人体や手荷物その他の物体により遮蔽される場合がある。この場合、天井部23に配置された通信装置200Eには、携帯機100から送信された信号が車室内で反射した反射波が到達する。このため、当該反射波に基づいて位置推定が行われる。
【0056】
より具体的には、上述した携帯機100と通信装置200Eとの間の距離を算出する測距処理において、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT2が計測されるが、当該第2の測距用信号の受信時刻とは、第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻である。第1到来波は、直接波、遅延波、又は合成波のいずれかであり得る。直接波とは、送受信間の最短経路を経て、直接的に(即ち、反射、回折等されずに)受信側に受信される信号である。遅延波とは、送受信間の最短でない経路を経て、即ち、反射、回折等されて間接的に受信側に受信される信号である。遅延波は、直接波よりも遅延して受信側に受信される。合成波とは、複数の異なる経路を経た複数の信号が合成された状態で受信側に受信される信号である。
【0057】
したがって、第1到来波として検出された信号は、必ずしも直接波であるとは限らない。上述したように直接波が人体等により遮蔽され、第1到来波として反射波が検出された場合、上記計測されるΔT2には遅延時間が含まれる。このような遅延波の受信時刻でΔT2を計測し、当該ΔT2を用いて測距処理が行われると、実際の距離より長い誤った距離が算出される。また、遅延波に基づいて上述した角度推定処理が行われた場合も、誤った角度が算出される。このため、例えば図2に示す座標P10が、携帯機100の座標として推定され、携帯機100が車室外に存在すると誤った判定が行われる恐れがある。このように、人体等による遮蔽が、携帯機100の位置パラメータ推定の精度低下の一因となる。
【0058】
そこで、車室内において衣服のポケットや手荷物等に携帯機100が入れられて人体や手荷物等により信号が遮蔽される場合にも、より正確に位置を推定できることが望ましい。
【0059】
<<4.技術的特徴>>
制御装置300は、以下に詳しく説明する複数の通信装置200の配置により、車室内において衣服のポケットや手荷物等に携帯機100が入れられている場合にも、第1到来波として直接波を検出することが可能となる。以下では一例として、第1到来波を検出する主体が複数の通信装置200の少なくともいずれかであり、制御装置300により位置推定等の処理が行われる場合について説明する。以下に説明する処理は、携帯機100により実行されてもよい。
【0060】
<4.1.通信装置の配置>
複数の通信装置200は、車両20に搭載される。通信装置200は、位置固定型通信装置の一例である。位置固定型通信装置とは、物体によって区画された空間である対象空間に対する相対的な位置が固定された通信装置である。
【0061】
車両20の車室は、対象空間の一例である。ここで、車室とは、ユーザが車両20に搭乗するために車両20に設けられた空間である。対象空間が車室である場合、対象空間を区画する物体の一例は、車両20の最外殻を構成する構成要素である。車両20の最外殻を構成する構成要素とは、車室を構成する構成要素のうち、車室からみて最も遠い層である。車両20の最外殻を構成する構成要素の一例は、車両20のボディを構成する鋼板、ドアを構成する鋼板、及びドアにはめ込まれたガラス窓である。なお、ボディを構成する鋼板、及びドアを構成する鋼板よりも車室側には、樹脂等で内装が施される場合がある。これら内装部分も、車室に含まれるものとする。また、対象空間を区画する物体は、対象空間に含まれる部位の一例である。
【0062】
図3は、本実施形態に係る複数の通信装置200の配置の一例を示す図である。図3において、車両20の進行方向は前方向、車両20の進行方向の逆方向は後方向とも称される。また、車両20の進行方向に直交する、地面と水平の方向は左右方向とも称される。また、車両20の進行方向に直交する、地面と垂直の方向は上下方向とも称される。また、車両20は、車両20の最外殻を構成する構成要素として、天井部23と床部25と側部を有する。天井部23と床部25と側部は、車室に含まれる部位の一例である。また、側部には、運転席側の側部26と、助手席側の側部と、車両20前側の側部と、車両20後側の側部と、が含まれる。側部には、車両20のドア部が含まれる。また、側部には、車両20の窓柱(所謂ピラー)が含まれてもよい。
【0063】
ここで、本実施形態において、複数の位置固定型通信装置のうち、第1の位置固定型通信装置は、対象空間に含まれる少なくとも一つの部位に固定され、第2の位置固定型通信装置は、第1の位置固定型通信装置が固定される部位とは異なる部位に固定される。かかる配置により、携帯機100からの直波が第1の位置固定型通信装置及び第2の位置固定型通信装置の少なくともいずれかに到達した際には、携帯機100の座標を正しく位置推定することができ、位置推定の精度が向上する。第1の位置固定型通信装置の一例が、図3に示す通信装置200Aである。また、第2の位置固定型通信装置の一例が、図3に示す通信装置200Bである。なお、携帯機100は、位置可変型通信装置の一例である。位置可変型通信装置とは、対象空間に対する相対的な位置が可変な通信装置である。携帯機100は、ユーザに携帯され、ユーザの移動に伴い移動する。例えば、携帯機100は、車室内に位置したり、車室外に位置したりし得る。
【0064】
制御装置300は、第1の位置固定型通信装置及び第2の位置固定型通信装置を含む複数の位置固定型通信装置の少なくとも一つと、位置可変型通信装置とが無線通信を行うことで得られた、少なくとも一つの位置固定型通信装置と位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値や角度に基づいて、位置可変型通信装置の位置を推定することができる。さらに具体的には、制御装置300は、少なくとも一つ以上の推定結果において、位置可変型通信装置の位置が対象空間の内部と推定された場合には、当該位置可変型通信装置が対象空間の内部に位置すると判定する。
【0065】
例えば、図3に示すように、車両20に乗車しているユーザDの後ろポケットに携帯機100が入れられている場合、携帯機100から通信装置200Aへの直接波は人体により遮蔽される。通信装置200Aには、携帯機100から送信された信号が車室内で反射した反射波が到達する。例えば運転席側の側部26で反射する。このため、制御装置300は当該反射波に基づいて位置推定を行い、誤った距離および角度が推定され、図3に示す座標P1aが、携帯機100の座標として推定され、携帯機100が車室外に存在すると誤った判定が行われる。一方、通信装置200Aの配置場所と異なる場所、例えば座面部21より下方向に配置されている通信装置200Bには、携帯機100からの直接波が人体により遮蔽されることなく到達する。通信装置200Bは、例えば床部25に配置される。また、遮蔽物の一例として人体を挙げたが、手荷物等も想定される。制御装置300は当該直波に基づいて位置推定を行い、正しい距離および角度を推定し得る。具体的には、制御装置300は、図3に示す座標P1bを、携帯機100の座標として推定することができる。これにより、制御装置300は、携帯機100が車室内に存在すると正しく判定を行える。複数の位置推定結果において、少なくとも一つの推定結果が車室内に位置することを示す場合、制御装置300は、最終判定として、携帯機100が車室内に位置すると判定する。また、複数の位置推定結果の全てにおいて推定結果が車室外に位置することを示す場合は、制御装置300は、最終判定として、携帯機100が車室外に位置すると判定する。
【0066】
このように、本実施形態では、複数の通信装置200を異なる部位にそれぞれ配置することで、推定精度が向上し、車室内外の判定を誤ることを低減できる。例えば車室の上方向に伝搬する信号が人体や手荷物等により遮蔽される場合にも、携帯機100からの直接波が、車室の下方向に配置されている通信装置200Bに少なくとも到達する。また、車室外に携帯機100が位置している場合は、携帯機100からの直接波が、車室の上方向に配置された通信装置200Bに少なくとも到達する。これにより、制御装置300の制御部320は、携帯機100が車室内外のいずれに位置していても、複数の位置固定型通信装置の少なくともいずれかにより直接波に基づいて位置パラメータを推定できるため、推定精度が向上する。制御装置300は、携帯機100の座標をより正確に推定し、携帯機100が車室内外のいずれに存在するかを適切に判定することができる。
【0067】
本実施形態による配置の一例として、通信装置200Bは、通信装置200Aが固定される部位と直交または対向する位置関係にある部位に固定される。例えば通信装置200Aが固定される部位が天井部23の場合、直交する位置関係にある部位の一例は運転席側の側部26である。また、天井部23と対向する位置関係にある部位の一例は床部25である。したがって通信装置200Aが天井部23に配置される場合、通信装置200Bは側部26や床部25に配置されてもよい。また、例えば通信装置200Aが固定される部位が側部26の場合、直交する位置関係にある部位の一例は床部25である。また、測部26と対向する位置関係にある部位の一例は、助手席側の側部である。したがって通信装置200Aが側部26に配置される場合、通信装置200Bは床部25や反対側の側部に配置されてもよい。このように配置されることで、推定精度がより向上し、車室内外の判定を誤ることを低減できる。なお、側部26とは、より具体的には、ドア部やピラーであってもよい。
【0068】
また、本実施形態による配置の一例として、通信装置200Aは、床部25より天井部23に(距離的に)近い位置に配置され、通信装置200Bは、天井部23より床部25に(距離的に)近い位置に配置される。より限定的には、例えば通信装置200Aが天井部23に配置され、通信装置200Bが床部25に配置されてもよい。また、通信装置200Bは、座面部と床部25との間に配置されていてもよい。座面部には、運転席の座面部21、助手席の座面部、後部座席の座面部が含まれる。より限定的には、例えば通信装置200Bは、運転席の座面部21と、床部25との間に配置されていてもよい。また、通信装置200Bは、運転席の座面部21の裏側に配置されていてもよい。また、通信装置200Bは、床部25の左右方向の中央部分に配置されてもよい。また、通信装置200Bは、床部25の左右いずれかの方向(運転席側または助手席側)に寄った部分に配置されていてもよい。また、通信装置200Bは、床部25の前方向側の端部に配置されていてもよい。また、通信装置200Bは、床部25の前方向側の端部かつ、左右方向の中央部分に配置されていてもよい。また、通信装置200Aが天井部23に配置され、通信装置200Bが天井部23と床部25を繋ぐ側部に配置される際、通信装置200Bは、側部において座面部21より下の高さに配置されていてもよい。このように配置されることで、推定精度がさらに向上し、車室内外の判定を誤ることをさらに低減できる。
【0069】
また、本実施形態による配置例として、通信装置200Aと通信装置200Bの配置の位置関係に言及すると、一例として、通信装置200Aと通信装置200Bとは、車両20に設けられる座面部21を挟んで対向する位置関係であってもよい。
【0070】
また、本実施形態による配置例として、通信装置200Aと通信装置200Bの配置の位置関係に言及すると、一例として、通信装置200Aと通信装置200Bとを結ぶ直線が、車両20の車室内に存在する規定の遮蔽物を通過する位置関係であってもよい。規定の遮蔽物とは、例えば、人体、手荷物、及び座面部等が挙げられる。
【0071】
以上説明した複数の通信装置200の配置により、携帯機100の位置推定において、車室内外の判定を誤り難くすることが可能である。
【0072】
<4.2.処理の流れ>
図4は、本実施形態に係る制御装置300により実行される位置パラメータ推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0073】
図4に示すように、まず、制御装置300の制御部320は、通信装置200Aと携帯機100との間で行われる無線通信により得られた情報に基づいて測距処理および角度推定を行い、算出した距離および角度に基づいて携帯機100の座標P1-A(x,y,z)を推定する(ステップS103)。
【0074】
次いで、制御部320は、座標P1-Aが車室内及び車室外のいずれであるかを判定する(ステップS106)。
【0075】
次に、座標P1-Aが車室外であると判定された場合(ステップS106/Yes)、制御部320は、通信装置200Bと携帯機100との間で行われる無線通信により得られた情報に基づいて測距処理および角度推定を行い、算出した距離および角度に基づいて携帯機100の座標P1-B(x,y,z)を推定する(ステップS109)。
【0076】
次いで、制御部320は、座標P1-Bが車室内及び車室外のいずれであるかを判定する(ステップS112)。
【0077】
次に、座標P1-Bが車室外であると判定された場合(ステップS112/Yes)、制御部320は、携帯機100が車室外に存在すると最終的に判定する(ステップS115)。すなわち、制御部320は、複数の通信装置200に基づく全ての推定結果において車室外と判定された場合には、車室外判定を決定する。なお、ここでは複数の通信装置200として2つの通信装置200A、Bを用いたが、本実施形態はこれに限定されず、複数の通信装置200は3つ以上であってもよい。この場合も、制御部320は、3つ全ての通信装置200に基づくすべて推定結果において車室外と判定された場合に、車室外判定を決定する。
【0078】
一方、座標P1-Aが車室内であると判定された場合(ステップS106/No)、制御部320は、携帯機100が車室内に存在すると最終的に判定する(ステップS121)。若しくは、座標P1-Bが車室内であると判定された場合(ステップS112/No)、制御部320は、携帯機100が車室内に存在すると最終的に判定する(ステップS121)。すなわち、制御部320は、複数の通信装置200に基づく全ての推定結果において、一つでも車室内と判定された場合には、車室内判定を決定する。なお、ここでは複数の通信装置200として2つの通信装置200A、Bを用いたが、本実施形態はこれに限定されず、複数の通信装置200は3つ以上であってもよい。この場合も、制御部320は、3つ全ての通信装置200に基づくすべて推定結果において、一つでも車室内と判定された場合に、車室内判定を決定する。
【0079】
上述したように、複数の通信装置200の配置の工夫により、携帯機100が車室内に存在するにも関わらず通信装置200Aに基づいて誤って車室外と判定されても、通信装置200Bに基づいて正しく車室内と判定することができる。また、携帯機100が車室外に存在する場合は、全ての推定結果で車室外と推定され、制御部320は、正しく車室外と判定することができる。例えば、車両20のボディを構成する鋼板やドアを構成する鋼板により、ガラス窓より下方向の車室外エリアに位置する携帯機100の通信装置200Bへの直接波が遮蔽される場合でも、回析波や反射波は通信装置200Bに到達し得る。かかる回析波や反射波に基づいて位置推定を実行した場合、実際の携帯機100の座標とは異なる座標が推定されるが、少なくとも車室外に位置することは正しく判定することができる。
【0080】
なお、制御部320は、車室外に決定した場合、通信装置200Aに基づく座標P1-Aを用いて、車室外の詳細エリアを判断する(ステップS118)。上述したように、携帯機100が車室外に存在する場合、通信装置200Bに基づく座標P1-Bでは、位置の精度が低いため、詳細なエリア判断に関しては座標P1-Aを用いることが好ましい。
【0081】
以上、本実施形態による処理の流れの一例について説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップS103とステップS109に示す処理は、逆に行われてもよいし、並列して行われてもよい。例えば制御部320は、複数の通信装置200の各々について、測距処理、角度推定、及び車室内外判定を行った後に、最終的な車室内外判定を行ってもよい。この際、制御部320は、推定結果の多数決や信頼度に基づいて、最終的な車室内外判定を行ってもよい。
【0082】
また、制御部320は、複数の通信装置200の各々と携帯機100との間の無線通信を順次に行うよう制御してもよい。例えば、制御部320は、通信装置200Aと携帯機100との間の無線通信を開始し、車室外判定された場合には、次いで、通信装置200Bと携帯機100との間の無線通信を開始して測距処理、角度推定、及び車室内外判定を行うようにしてもよい。
【0083】
また、複数の通信装置200は、2つの通信装置であってもよいし、3つ以上の通信装置200であってもよい。複数の通信装置200は、例えば少なくとも通信装置200Aと通信装置200Bを含め3つ以上の通信装置200であってもよい。
【0084】
<<5.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、上記実施形態では、制御装置300が測距値の計算を行う例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、通信装置200が、測距値の計算を行ってもよい。その場合、制御装置300は、ΔT2を示す情報を通信装置200に報告する。
【0086】
また、上記実施形態では、携帯機100における第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT1を示す情報をデータ信号に含めて通信装置200に送信してもよい旨を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。データ信号は、第1の測距用信号の受信時刻及び第2の測距用信号の送信時刻に関する情報を含んでいればよい。
【0087】
また、上記実施形態では、通信装置200が第1の測距用信号を送信する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、携帯機100が第1の測距用信号を送信してもよい。その場合、通信装置200は、第1の測距用信号を受信すると、その応答として第2の測距用信号を送信する。そして、通信装置200は、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT1を示す情報を含むデータ信号を送信する。他方、携帯機100は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT2と、データ信号に含まれる時間ΔT1に基づいて、測距値を計算する。なお、時間ΔT1は携帯機100に既知であってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が通信装置200である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び通信装置200の役割は逆であってもよいし、役割が動的に交換されてもよい。また、通信装置200同士で測距及び認証が行われてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、携帯機100と通信装置200の間における一往復の通信の送信時刻および受信時刻から距離を測定しているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、携帯機100と通信装置200の間における一往復半の通信の送信時刻および受信時刻から距離を測定してもよい。携帯機100と通信装置200の間における一往復半の通信は、例えば、まず、携帯機100から第1の信号が送信され、次いで通信装置200が第1の信号の受信に応じて第2の信号を送信し、そして携帯機100が第2の信号の受信に応じて第3の信号を通信装置200に送信する。制御装置300は、各信号の送信時刻および受信時刻から、携帯機100と通信装置200の距離を測定し得る。
【0090】
例えば、上記実施形態では、伝搬時間に基づいて測距値を計算する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、電波強度に基づいて測距値が計算されてもよい。
【0091】
例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いる例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。一例として、RF帯の信号及びLF帯の信号を使用する無線通信規格が、用いられてもよい。他の一例として、Wi-Fi(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、及び赤外線を使用する無線通信規格等が、用いられてもよい。
【0092】
例えば、上記実施形態では、制御装置300が複数の通信装置200の各々と別体の構成として車両20に搭載される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。一例として、制御装置300と複数の通信装置200の各々とを含む通信ユニットが車両20に搭載されていてもよい。また、制御装置300の制御部320の機能が、複数の通信装置200の各々の制御部220に設けられていてもよい。また、制御装置300が携帯機100に含まれていてもよい。また、制御装置300は、携帯機100及び複数の通信装置200の各々以外の他の装置に含まれていてもよい。
【0093】
例えば、上記実施形態では、通信装置200および制御装置300が車両に搭載される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。通信装置200および制御装置300は、車両以外の、航空機、船舶、ドローン、及びロボット等の任意の移動体に搭載されてもよい。ここで、移動体とは、移動する装置である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、無線通信を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、ユーザが利用する対象物として、ドローン、車両、船舶、飛行機、建築物(住宅など)、ロボット、ロッカー、家電製品等が挙げられる。また、本発明は、携帯機、車両、船舶、飛行機、スマートフォン、ドローン、建築物、ロボット、ロッカー及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに適用可能である。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。この場合、一方の装置が認証者側の装置として動作し、他方の装置が被認証者側の装置として動作する。
【0095】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0096】
また、本明細書においてフローチャート及びシーケンス図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0097】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【符号の説明】
【0098】
1:システム、100:携帯機、110:無線通信部、120:制御部、130:記憶部、20:車両、200:通信装置、210:無線通信部、220:制御部、230:記憶部、240:車両内通信部、300:制御装置、310:車両内通信部、320:制御部、330:記憶部
図1
図2
図3
図4