(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 651M
H01L21/304 651L
(21)【出願番号】P 2020117821
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博史
(72)【発明者】
【氏名】石津 岳明
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162847(JP,A)
【文献】特開2019-140340(JP,A)
【文献】特開2020-068372(JP,A)
【文献】特開2020-017633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1基板上に有機溶剤の第1液膜を形成する工程と、
(b)前記第1基板を加熱することによって、前記第1基板の上面上に、前記第1液膜を保持する第1気体膜を形成する工程と、
(c)予め定められた第1条件で前記第1基板へ光を照射することによって、前記第1気体膜に保持された前記第1液膜に第1穴を形成する工程と、
(d)前記第1条件と異なる予め定められた第2条件で前記第1基板へ光を照射することによって、前記第1穴を拡張する工程と、
(e)前記工程(d)によって拡張された前記第1穴を撮影することによって第1画像を取得する工程と、
(f)前記第1画像を、基準画像として記憶する工程と、
(g)前記工程(f)の後、第2基板上に有機溶剤の第2液膜を形成する工程と、
(h)前記第2基板を加熱することによって、前記第2基板の上面上に、前記第2液膜を保持する第2気体膜を形成する工程と、
(i)前記第1条件で前記第2基板へ光を照射することによって、前記第2気体膜に保持された前記第2液膜に第2穴を形成する工程と、
(j)前記第2条件で前記第2基板へ光を照射することによって、前記第2穴を拡張する工程と、
(k)前記工程(j)によって拡張された前記第2穴を撮影することによって第2画像を取得する工程と、
(l)前記基準画像としての前記第1画像における前記第1穴と、前記第2画像における前記第2穴とを比較することによって、前記第2穴の拡張の進行状況を評価する工程と、
(m)前記工程(l)によって評価された前記進行状況に基づいて、前記第2基板へ光を照射するための第3条件を調整する工程と、
(n)前記第3条件で前記第2基板へ光を照射することによって、前記第2穴をさらに拡張する工程と、
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記工程(b)は、前記第1基板を加熱するために前記第1基板へ光を照射する工程を含む、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記第2基板の前記上面にはパターンが設けられている、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(c)および(d)において、前記第1基板へ照射される光は前記第1基板の前記上面の上方から照射され、かつ、前記工程(i)、(j)および(n)において、前記第2基板へ照射される光は前記第2基板の前記上面の上方から照射される、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記第3条件は、前記第2基板に照射される光の強度の設定条件を含む、基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記第3条件は、前記第2基板のうち光に照射される部分である被照射領域の移動速度の設定条件を含む、基板処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理方法であって、
前記工程(l)は、前記被照射領域内での比較によって行われる、基板処理方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記第3条件は、前記第2基板の回転速度の設定条件を含む、基板処理方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の面積と、前記第2画像における前記第2穴の面積とを比較する工程を含む、基板処理方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の寸法と、前記第2画像における前記第2穴の寸法とを比較する工程を含む、基板処理方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(i)、(j)および(n)において、前記第2基板への光は光源によって生成され、
前記工程(k)において、前記第2画像はカメラによって撮影され、
前記基板処理方法は、
(o)前記カメラによって撮影される画像に基づいて、前記光源の劣化状態を評価する工程
をさらに備える、基板処理方法。
【請求項12】
(a)第1基板上に有機溶剤の第1液膜を形成する工程と、
(b)前記第1基板を加熱することによって、前記第1基板の上面上に、前記第1液膜を保持する第1気体膜を形成する工程と、
(c)予め定められた第1条件で前記第1基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第1気体膜に保持された前記第1液膜に第1穴を形成する工程と、
(d)前記第1条件と異なる予め定められた第2条件で前記第1基板へ不活性ガスを吐出することによって、前記第1穴を拡張する工程と、
(e)前記工程(d)によって拡張された前記第1穴を撮影することによって第1画像を取得する工程と、
(f)前記第1画像を、基準画像として記憶する工程と、
(g)前記工程(f)の後、第2基板上に有機溶剤の第2液膜を形成する工程と、
(h)前記第2基板を加熱することによって、前記第2基板の上面上に、前記第2液膜を保持する第2気体膜を形成する工程と、
(i)前記第1条件で前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第2気体膜に保持された前記第2液膜に第2穴を形成する工程と、
(j)前記第2条件で前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第2穴を拡張する工程と、
(k)前記工程(j)によって拡張された前記第2穴を撮影することによって第2画像を取得する工程と、
(l)前記基準画像としての前記第1画像における前記第1穴と、前記第2画像における前記第2穴とを比較することによって、前記第2穴の拡張の進行状況を評価する工程と、
(m)前記工程(l)によって評価された前記進行状況に基づいて、前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出するための第3条件を調整する工程と、
(n)前記第3条件で前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第2穴をさらに拡張する工程と、
を備える、基板処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の基板処理方法であって、
前記第2基板の前記上面にはパターンが設けられている、基板処理方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の基板処理方法であって、
前記第3条件は、前記第2基板の前記上面へ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含む、基板処理方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の面積と、前記第2画像における前記第2穴の面積とを比較する工程を含む、基板処理方法。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の寸法と、前記第2画像における前記第2穴の寸法とを比較する工程を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理するための基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板を用いての半導体装置の製造においては、基板を処理するための基板処理方法が行われる。具体的には、基板の表面に処理液が供給されることによって、当該表面が処理される。基板処理方法は、たとえば、枚葉式の基板処理装置によって行われる。この装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ当該基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板の表面に処理液を供給するためのノズルと、を備えている。スピンチャックに保持された基板に対して薬液が供給され、その後にリンス液(純水)が供給されることにより、基板上の薬液が純水に置換される。その後に、基板上の純水を排除するためのスピン乾燥処理が行われる。スピン乾燥処理では、基板が高速回転されることにより、基板に付着している純水が振り切られて除去(乾燥)される。
【0003】
微細パターン(たとえば、突状パターンまたはライン状パターン)が設けられた表面を有する基板へ上記方法が単純に適用されると、パターンの間隙に入り込んだ純水が十分に除去されないことがある。そこで、純水によるリンス処理が行われた後の基板の表面に常温のイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)等の有機溶媒を供給することによって、微細パターンの間隙に入り込んだ純水を有機溶媒に置換した後、基板の表面を乾燥させる手法が用いられることがある。この乾燥工程として単純なスピンドライ工程が用いられるとすると、有機溶剤が除去される際に、隣接するパターン同士が引きつけ合って接触することで、パターン倒壊に至ることがある。この原因の一つは、隣接するパターン間に存在する液による表面張力にあると推測される。有機溶剤は純水の表面張力に比して小さな表面張力を有するので、パターン間の液が有機溶剤の場合は、純水の場合に比して、パターン倒壊が抑制されると考えられる。しかしながら、近年の半導体装置の高集積化の進展にともなって基板の表面に高アスペクト比の微細パターンが設けられていることがあり、そのような場合、パターン間の液が有機溶剤であってもパターン倒壊の懸念がある。以上から、基板が洗浄される際に、スピンドライ前に有機溶媒を基板の表面に供給するだけでは、スピンドライ時のパターン倒壊を十分に抑制することが困難な場合がある。このような問題を解決するために、特開2014-112652号公報は、以下のような基板処理方法を開示している。
【0004】
微細パターンが形成され、水平姿勢に保持されている基板の上面に、リンス液が供給される。次に、基板の上面に有機溶媒を供給することにより、上面に有機溶媒の液膜が形成される。次に、基板の上面を有機溶媒の沸点よりも高い温度に保持することにより、基板の上面において有機溶媒の気相膜が形成されると共に当該気相膜の上方に有機溶媒の液膜が位置する。次に、上述した高い温度が保持されつつ、基板の上面から有機溶媒が排除される。この排除は、たとえば、回転させられている基板の上面の回転中心に向けて不活性ガスを吐出することによって行われる。
【0005】
上記方法によれば、微細パターンの上方と微細パターンの間隙とに有機溶媒の気相膜が形成され、気相膜の上方に有機溶媒の液膜が形成される。この状態では、微細パターンの間隙における表面張力が小さくなるので、表面張力に起因したパターン倒壊が生じにくくなる。よって、高アスペクト比の微細パターンが形成された基板を洗浄する場合であっても、パターンの倒壊を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板の上面に設けられたパターンの倒壊を抑制することができるような、基板処理方法の最適条件が見出されていたとしても、基板処理方法を厳密に当該条件で繰り返すことは、工程ばらつきの存在に起因して困難である。よって、半導体装置の量産のために基板処理が繰り返し行われる場合において、最適条件からの逸脱が限度を超えた際に、上述したパターン倒壊などの不具合が基板の上面に加わることがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、基板の上面を乾燥させる際の当該上面への悪影響を抑制することができる基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される第1の態様は、基板処理方法であって、(a)第1基板上に有機溶剤の第1液膜を形成する工程と、(b)前記第1基板を加熱することによって、前記第1基板の上面上に、前記第1液膜を保持する第1気体膜を形成する工程と、(c)予め定められた第1条件で前記第1基板へ光を照射することによって、前記第1気体膜に保持された前記第1液膜に第1穴を形成する工程と、(d)前記第1条件と異なる予め定められた第2条件で前記第1基板へ光を照射することによって、前記第1穴を拡張する工程と、(e)前記工程(d)によって拡張された前記第1穴を撮影することによって第1画像を取得する工程と、(f)前記第1画像を、基準画像として記憶する工程と、(g)前記工程(f)の後、第2基板上に有機溶剤の第2液膜を形成する工程と、(h)前記第2基板を加熱することによって、前記第2基板の上面上に、前記第2液膜を保持する第2気体膜を形成する工程と、(i)前記第1条件で前記第2基板へ光を照射することによって、前記第2気体膜に保持された前記第2液膜に第2穴を形成する工程と、(j)前記第2条件で前記第2基板へ光を照射することによって、前記第2穴を拡張する工程と、(k)前記工程(j)によって拡張された前記第2穴を撮影することによって第2画像を取得する工程と、(l)前記基準画像としての前記第1画像における前記第1穴と、前記第2画像における前記第2穴とを比較することによって、前記第2穴の拡張の進行状況を評価する工程と、(m)前記工程(l)によって評価された前記進行状況に基づいて、前記第2基板へ光を照射するための第3条件を調整する工程と、(n)前記第3条件で前記第2基板へ光を照射することによって、前記第2穴をさらに拡張する工程と、を備える。
【0010】
本明細書に開示された第2の態様は、第1の態様の基板処理方法であって、前記工程(b)は、前記第1基板を加熱するために前記第1基板へ光を照射する工程を含む。
【0011】
本明細書に開示される第3の態様は、第1または第2の態様の基板処理方法であって、前記第2基板の前記上面にはパターンが設けられている。
【0012】
本明細書に開示される第4の態様は、第1から第3の態様の基板処理方法であって、前記工程(c)および(d)において、前記第1基板へ照射される光は前記第1基板の前記上面の上方から照射され、かつ、前記工程(i)、(j)および(n)において、前記第2基板へ照射される光は前記第2基板の前記上面の上方から照射される。
【0013】
本明細書に開示される第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記第3条件は、前記第2基板に照射される光の強度の設定条件を含む。
【0014】
本明細書に開示される第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記第3条件は、前記第2基板のうち光に照射される部分である被照射領域の移動速度の設定条件を含む。
【0015】
本明細書に開示される第7の態様は、第6の態様の基板処理方法であって、前記工程(l)は、前記被照射領域内での比較によって行われる。
【0016】
本明細書に開示される第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記第3条件は、前記第2基板の回転速度の設定条件を含む。
【0017】
本明細書に開示される第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の面積と、前記第2画像における前記第2穴の面積とを比較する工程を含む。
【0018】
本明細書に開示される第10の態様は、第1から第9のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の寸法と、前記第2画像における前記第2穴の寸法とを比較する工程を含む。
【0019】
本明細書に開示される第11の態様は、第1から第10のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記工程(i)、(j)および(n)において、前記第2基板への光は光源によって生成され、前記工程(k)において、前記第2画像はカメラによって撮影され、前記基板処理方法は、(o)前記カメラによって撮影される画像に基づいて、前記光源の劣化状態を評価する工程、をさらに備える。
【0020】
本明細書に開示される第12の態様は、基板処理方法であって、(a)第1基板上に有機溶剤の第1液膜を形成する工程と、(b)前記第1基板を加熱することによって、前記第1基板の上面上に、前記第1液膜を保持する第1気体膜を形成する工程と、(c)予め定められた第1条件で前記第1基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第1気体膜に保持された前記第1液膜に第1穴を形成する工程と、(d)前記第1条件と異なる予め定められた第2条件で前記第1基板へ不活性ガスを吐出することによって、前記第1穴を拡張する工程と、(e)前記工程(d)によって拡張された前記第1穴を撮影することによって第1画像を取得する工程と、(f)前記第1画像を、基準画像として記憶する工程と、(g)前記工程(f)の後、第2基板上に有機溶剤の第2液膜を形成する工程と、(h)前記第2基板を加熱することによって、前記第2基板の上面上に、前記第2液膜を保持する第2気体膜を形成する工程と、(i)前記第1条件で前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第2気体膜に保持された前記第2液膜に第2穴を形成する工程と、(j)前記第2条件で前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第2穴を拡張する工程と、(k)前記工程(j)によって拡張された前記第2穴を撮影することによって第2画像を取得する工程と、(l)前記基準画像としての前記第1画像における前記第1穴と、前記第2画像における前記第2穴とを比較することによって、前記第2穴の拡張の進行状況を評価する工程と、(m)前記工程(l)によって評価された前記進行状況に基づいて、前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出するための第3条件を調整する工程と、(n)前記第3条件で前記第2基板の前記上面へ不活性ガスを吐出することによって、前記第2穴をさらに拡張する工程と、を備える。
【0021】
本明細書に開示される第13の態様は、第12の態様の基板処理方法であって、前記第2基板の前記上面にはパターンが設けられている。
【0022】
本明細書に開示される第14の態様は、第12または第13の態様の基板処理方法であって、前記第3条件は、前記第2基板の前記上面へ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含む。
【0023】
本明細書に開示される第15の態様は、第12から第14のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の面積と、前記第2画像における前記第2穴の面積とを比較する工程を含む。
【0024】
本明細書に開示される第16の態様は、第12から第15のいずれかの態様の基板処理方法であって、前記工程(l)は、前記第1画像における前記第1穴の寸法と、前記第2画像における前記第2穴の寸法とを比較する工程を含む。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の態様の基板処理方法によれば、第2条件で第1基板へ光を照射したことによる第1穴の拡張の進行状況を基準として、第2条件で第2基板へ光を照射したことによる第2穴の拡張の進行状況が評価される。この進行状況に基づいて、第2基板へ光をさらに照射するための第3条件を調整することによって、第2穴のさらなる拡張の進行速度を、標準的な進行速度へ、より近づけることができる。これにより、第2基板の上面上における第2液膜の第2穴の拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。よって、当該ばらつきに起因しての基板の上面への悪影響を抑制することができる。
【0026】
上記第2の態様の基板処理方法によれば、液膜に穴を形成する工程だけでなく、それに先立って気体膜を形成する工程も、光を利用して行うことができる。
【0027】
上記第3の態様の基板処理方法によれば、第2基板の上面上における第2液膜の第2穴の拡張の進行速度のばらつきを抑制することによって、第2基板の上面上に設けられているパターンの倒壊を抑制することができる。
【0028】
上記第4の態様の基板処理方法によれば、第1基板および第2基板へ光が上方から照射されるので、光源が第1基板および第2基板の上方に配置される。これにより、第1基板および第2基板へ吐出される薬液が光源およびそれに付随する部材へ付着しにくい。よって、光源およびそれに付随する部材への薬液に起因してのダメージを避けることができる。
【0029】
上記第5の態様の基板処理方法によれば、第3条件は、第2基板に照射される光の強度の設定条件を含む。これにより、第2穴のさらなる拡張の進行速度を、効果的に調整することができる。
【0030】
上記第6の態様の基板処理方法によれば、第3条件は、第2基板のうち光に照射される部分である被照射領域の移動速度の設定条件を含む。これにより、第2穴のさらなる拡張の進行速度を、効果的に調整することができる。
【0031】
上記第7の態様の基板処理方法によれば、進行状況を評価するための第1穴と第2穴との比較は、被照射領域内で行われる。これにより、当該評価の信頼性を高めることができる。
【0032】
上記第8の態様の基板処理方法によれば、第3条件は、第2基板の回転速度の設定条件を含む。これにより、第2穴のさらなる拡張の進行速度を、効果的に調整することができる。
【0033】
上記第9の態様の基板処理方法によれば、進行状況を評価するための第1穴と第2穴との比較は、第1穴および第2穴の面積の比較で行われる。これにより、様々な方向への拡張の影響を平均化しての評価が可能である。
【0034】
上記第10の態様の基板処理方法によれば、進行状況を評価するための第1穴と第2穴との比較は、第1穴および第2穴の寸法の比較で行われる。これにより、簡素な方法での評価が可能である。
【0035】
上記第11の態様の基板処理方法によれば、カメラによって撮影される画像に基づいて、光源の劣化状態が評価される。これにより、光源からの光が照射されることによる第2穴の拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。
【0036】
上記第12の態様の基板処理方法によれば、第2条件で第1基板の上面へ不活性ガスを吐出したことによる第1穴の拡張の進行状況を基準として、第2条件で第2基板の上面へ不活性ガスを吐出したことによる第2穴の拡張の進行状況が評価される。この進行状況に基づいて、第2基板の上面へ不活性ガスをさらに吐出するための第3条件を調整することによって、第2穴のさらなる拡張の進行速度を、標準的な進行速度へ、より近づけることができる。これにより、第2基板の上面上における第2液膜の第2穴の拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。よって、当該ばらつきに起因しての基板の上面への悪影響を抑制することができる。
【0037】
上記第13の態様の基板処理方法によれば、第2基板の上面上における第2液膜の第2穴の拡張の進行速度のばらつきを抑制することによって、第2基板の上面上に設けられているパターンの倒壊を抑制することができる。
【0038】
上記第14の態様の基板処理方法によれば、第3条件は、第2基板の上面へ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含む。これにより、第2穴のさらなる拡張の進行速度を、効果的に調整することができる。
【0039】
上記第15の態様の基板処理方法によれば、進行状況を評価するための第1穴と第2穴との比較は、第1穴および第2穴の面積の比較で行われる。これにより、様々な方向への拡張の影響を平均化しての評価が可能である。
【0040】
上記第16の態様の基板処理方法によれば、進行状況を評価するための第1穴と第2穴との比較は、第1穴および第2穴の寸法の比較で行われる。これにより、簡素な方法での評価が可能である。
【0041】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な平面図である。
【
図2】処理対象の基板の表面の断面の拡大図である。
【
図3】
図1の基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図3の処理ユニットに備えられるランプユニットの縦断面図である。
【
図5】
図4のランプユニットを下から見た図である。
【
図6】
図1の基板処理装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図8A】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図8B】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図8C】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図8D】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図8E】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図8F】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図9A】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法において基板の上面に形成される領域について説明するための模式図である。
【
図9B】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法において基板の上面に形成される領域について説明するための模式図である。
【
図9C】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法において基板の上面に形成される領域について説明するための模式図である。
【
図9D】本発明の実施の形態1に係る基板処理方法において基板の上面に形成される領域について説明するための模式図である。
【
図10】
図7の工程の一部であって第1基板へ適用される工程を示すフロー図である。
【
図11】
図7の工程の一部であって第2基板へ適用される工程を示すフロー図である。
【
図12】穴形成工程によって液膜に穴が形成された状態を模式的に示す平面図である。
【
図13】液膜の穴の拡張の進行状況の評価工程を説明する平面図である。
【
図15】本発明の実施の形態2に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成を示す模式的な断面図である。
【
図16】
図15に示すスピンベースおよびこれに関連する構成を上から見た模式図である。
【
図19】
図15に示す第2のランプヒータの模式的な縦断面図である。
【
図20】
図19に第2のランプヒータを下から見た模式図である。
【
図21】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図22A】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図22B】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図22C】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図22D】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図22E】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図22F】本発明の実施の形態2に係る基板処理方法の様子を説明するための模式図である。
【
図24】
図21の工程の一部であって第1基板へ適用される工程を示すフロー図である。
【
図25】
図21の工程の一部であって第2基板へ適用される工程を示すフロー図である。
【
図26】本発明の実施の形態3に係る基板処理方法において第1基板へ適用される工程を示すフロー図である。
【
図27】本発明の実施の形態3に係る基板処理方法において第2基板へ適用される工程を示すフロー図である。
【
図28】本発明の実施の形態4に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成を示す模式的な平面図である。
【
図29】本発明の実施の形態4に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成を示す模式的な断面図である。
【
図30】第1ノズルヘッドに接続される給液部の一例を示した図である。
【
図31】第2ノズルヘッドに接続される給液部の一例を示した図である。
【
図32】第3ノズルヘッドに接続される給液部および給気部の一例を示した図である。
【
図33】本発明の実施の形態4における各基板への基板処理方法を示すフロー図である。
【
図34】本発明の実施の形態4において第1基板へ適用される乾燥処理(
図33)の詳細を示すフロー図である。
【
図35】基板の上面に液膜が形成された様子を示した図である。
【
図36】液膜が形成された状態を模式的に示す部分断面図である。
【
図38】気体膜が形成された状態を模式的に示す部分断面図である。
【
図39】基板の上面の中央に乾燥領域が初期形成された様子を示した図である。
【
図40】乾燥領域が徐々に拡大する様子を示した図である。
【
図41】穴形成工程によって液膜に穴が形成された状態を模式的に示す部分断面図である。
【
図42】本発明の実施の形態4において第2基板へ適用される乾燥処理(
図33)の詳細を示すフロー図である。
【
図43】
図42の乾燥処理における、進行状況の評価工程を説明する平面図である。
【
図45】本発明の実施の形態5における基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図46】
図45の基板処理装置における光照射ユニットを概略的に示す平面図である。
【
図47】本発明の実施の形態5において第1基板へ適用される乾燥処理(
図33)の詳細を示すフロー図である。
【
図48】本発明の実施の形態5において第2基板へ適用される乾燥処理(
図33)の詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0044】
<1.実施の形態1>
<1-1.基板処理装置の構成>
図1は、本実施の形態1にかかる基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施の形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、基板Wを流体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリアCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。各処理ユニット2は、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口4Aが形成されている。チャンバ4には、この出入口4Aを開閉するシャッタユニット4Bが備えられている。
【0045】
図2に示すように、基板処理装置1で処理される基板Wの表層には、微細な凹凸パターン960が形成されている。凹凸パターン960は、基板Wの表面に形成された微細な凸状の構造体961と、隣接する構造体961の間に形成された凹部(溝)962とを含む。凹凸パターン960の表面、すなわち、構造体961(凸部)および凹部962の表面は、凹凸のあるパターン面965を形成している。パターン面965は、基板Wの表面に含まれる。構造体961の表面961aは、先端面961b(頂部)および側面961cによって構成されており、凹部962の表面は、底面962b(底部)によって構成されている。構造体961が筒状である場合には、その内方に凹部が形成されることになる。構造体961は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体961は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。凹凸パターン960は、アスペクト比が3以上の微細パターンである。凹凸パターン960のアスペクト比は、たとえば、10~50である。構造体961の幅L1は5nm~45nm程度、構造体961同士の間隔L2は5nm~数μm程度であってもよい。構造体961の高さ(パターン高さT1)は、たとえば50nm~5μm程度であってもよい。パターン高さT1は、構造体961の先端面961bと凹部962の底面962b(底部)との間の距離である。
【0046】
図3は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、ヒータユニット6と、処理カップ7と、薬液ノズル8と、リンス液ノズル9と、低表面張力液体ノズル10と、気体ノズル11と、ランプユニット12と、撮像部IMとを含む。
【0047】
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる。回転軸線A1は、基板Wの上面(上側の表面)の中心位置を通り鉛直方向に延びる。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、回転軸22に回転力を与えるスピンモータ23とを含む。スピンチャック5は、基板保持回転ユニットの一例である。スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、基板Wの周縁部を保持する複数のチャックピン20が、スピンベース21の周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン20は、ピン開閉ユニット24によって開閉される。複数のチャックピン20は、ピン開閉ユニット24によって閉状態にされることによって基板Wを水平に保持(挟持)する。複数のチャックピン20は、ピン開閉ユニット24によって開状態にされることによって基板Wを解放する。複数のチャックピン20は、開状態において、基板Wを下方から支持する。スピンベース21および複数のチャックピン20は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットを構成している。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。スピンモータ23は、回転軸22に回転力を与える。スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。スピンモータ23は、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例である。
【0048】
ヒータユニット6は、基板Wの全体を加熱する基板加熱ユニットの一例である。ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット6は、スピンベース21の上面と基板Wの下面との間に配置されている。ヒータユニット6は、基板Wの下面に下方から対向する対向面6aを有する。ヒータユニット6は、プレート本体61およびヒータ62を含む。プレート本体61は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。プレート本体61の上面が対向面6aを構成している。ヒータ62は、プレート本体61に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ62に通電することによって、対向面6aが加熱される。対向面6aは、たとえば、195℃に加熱される。そして、ヒータ62には、給電線63を介して、ヒータ通電ユニット64から電力が供給される。
【0049】
処理ユニット2は、ヒータユニット6をスピンベース21に対して相対的に昇降させるヒータ昇降ユニット65を含む。ヒータ昇降ユニット65は、たとえば、ボールねじ機構(図示せず)と、それに駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。ヒータ昇降ユニット65は、ヒータリフタともいう。ヒータユニット6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸66が結合されている。昇降軸66は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸66内には、給電線63が通されている。ヒータ昇降ユニット65は、昇降軸66を介してヒータユニット6を昇降させる。ヒータユニット6は、ヒータ昇降ユニット65によって昇降されて、下位置および上位置に位置することができる。ヒータ昇降ユニット65は、下位置および上位置だけでなく、下位置および上位置の間の任意の位置に配置することが可能である。
【0050】
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止め、その液体を回収または廃棄する部材である。処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード71と、複数のガード71によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ72と、複数のガード71と複数のカップ72とを取り囲む円筒状の外壁部材73とを含む。この実施の形態では、2つのガード71(第1ガード71Aおよび第2ガード71B)と、2つのカップ72(第1カップ72Aおよび第2カップ72B)とが設けられている例を示している。第1カップ72Aおよび第2カップ72Bのそれぞれは、上向きに開放された環状溝の形態を有している。第1ガード71Aは、スピンベース21を取り囲むように配置されている。第2ガード71Bは、第1ガード71Aよりも外側でスピンベース21を取り囲むように配置されている。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bは、それぞれ、ほぼ円筒形状を有している。各ガード71の上端部は、スピンベース21側に向かうように内側に傾斜している第1カップ72Aは、第1ガード71Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ72Bは、第1ガード71Aと一体に形成されている。第2カップ72Bは、第2ガード71Bによって下方に案内された液体を受け止める。
【0051】
処理ユニット2は、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを別々に昇降させるガード昇降ユニット74をさらに含む。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第1ガード71Aを昇降させる。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第2ガード71Bを昇降させる。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bが共に上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第1ガード71Aによって受けられる。第1ガード71Aが下位置に位置し、第2ガード71Bが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第2ガード71Bによって受けられる。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bが共に下位置に位置するときには、搬送ロボットCRが、チャンバ4内に基板Wを搬入したりチャンバ4内から基板Wを搬出したりすることができる。ガード昇降ユニット74は、たとえば、第1ガード71Aに結合された第1ボールねじ機構(図示せず)と、第1ボールねじ機構に駆動力を与える第1モータ(図示せず)と、第2ガード71Bに結合された第2ボールねじ機構(図示せず)と、第2ボールねじ機構に駆動力を与える第2モータ(図示せず)とを含む。ガード昇降ユニット74は、ガード移動ユニットの一例である。ガード昇降ユニット74は、ガードリフタともいう。
【0052】
薬液ノズル8は、基板Wの上面に向けて薬液を吐出するノズルである。薬液ノズル8は、薬液ノズル8に薬液を案内する薬液配管40に接続されている。薬液配管40に介装された薬液バルブ50が開かれると、薬液が、薬液ノズル8の吐出口から下方に向けて連続流で吐出される。薬液として、たとえば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸(HF、DHF)、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液を用いることができる。
【0053】
薬液ノズル8は、たとえば、移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2は、薬液ノズル8が先端部に取り付けられた第1アーム30と、第1アーム30を移動させることにより、薬液ノズル8を移動させる第1移動ユニット31とをさらに含む。第1移動ユニット31は、第1アーム30を回動させることにより、平面視で基板Wの上面の中央部を通る軌跡に沿って薬液ノズル8を水平に移動させる。第1移動ユニット31は、中央位置と退避位置との間で薬液ノズル8を水平に移動させる。薬液ノズル8が中央位置に位置するとき、薬液ノズル8が基板Wの上面の中央部に対向する。基板Wの上面の中央部とは、基板Wの上面の回転中心位置と基板Wの上面における回転中心位置の周囲の位置とを含む領域である。薬液ノズル8が退避位置に位置するとき、薬液ノズル8が平面視でスピンチャック5の周囲に退避する。第1移動ユニット31は、たとえば、第1アーム30に接続され鉛直方向に延びる回動軸(図示せず)と、当該回動軸を回動させる電動モータ(図示せず)とを含む。
【0054】
リンス液ノズル9は、薬液を洗い流すリンス液を基板Wの上面に向けて吐出するノズルである。リンス液ノズル9は、リンス液ノズル9にリンス液を案内するリンス液配管41に接続されている。リンス液配管41に介装されたリンス液バルブ51が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル9の吐出口から下方に向けて連続流で吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)のアンモニア水のいずれかであってもよい。
【0055】
リンス液ノズル9は、たとえば、移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2は、リンス液ノズル9が先端部に取り付けられた第2アーム32と、第2アーム32を移動させることにより、リンス液ノズル9を移動させる第2移動ユニット33とをさらに含む。第2移動ユニット33は、第2アーム32を回動させることにより、平面視で基板Wの上面の中央部を通る軌跡に沿ってリンス液ノズル9を水平に移動させる。第2移動ユニット33は、中央位置と退避位置との間でリンス液ノズル9を水平に移動させる。リンス液ノズル9が中央位置に位置するとき、リンス液ノズル9が基板Wの上面の中央部に対向する。リンス液ノズル9が退避位置に位置するとき、リンス液ノズル9が平面視でスピンチャック5の周囲に退避する。第2移動ユニット33は、たとえば、第2アーム32に接続され鉛直方向に延びる回動軸(図示せず)と、当該回動軸を回動させる電動モータ(図示せず)とを含む。
【0056】
低表面張力液体ノズル10は、リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を基板Wの上面に向けて吐出するノズルである。低表面張力液体ノズル10は、低表面張力液体ノズル10に低表面張力液体を案内する低表面張力液体配管42に接続されている。低表面張力液体配管42に介装された低表面張力液体バルブ52が開かれると、低表面張力液体が、低表面張力液体ノズル10の吐出口10aから下方に連続流で吐出される。低表面張力液体は、たとえばIPA等の有機溶剤である。IPAの表面張力は、水の表面張力よりも低い。IPA以外の有機溶剤も低表面張力液体として使用することができる。IPAの他に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、EG(エチレングリコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコールおよび2-ブタノール等の有機溶剤も、低表面張力液体として用いることができる。単体成分のみからなるものだけでなく、他の成分と混合した有機溶剤も低表面張力液体として使用できる。低表面張力液体は、処理液の一例であり、低表面張力液体ノズル10は、処理液供給ユニットの一例である。
【0057】
気体ノズル11は、基板Wの上面に向けて気体を吐出するノズルである。気体ノズル11は、気体ノズル11に気体を案内する気体配管43に接続されている。気体配管43には、気体バルブ53Aと、気体流量調整バルブ53Bとが介装されている。気体バルブ53Aが開かれると、気体流量調整バルブ53Bの開度に対応する流量で、気体ノズル11の吐出口11aから下方に向けて気体が連続的に吐出される。気体ノズル11に供給される気体は、窒素ガス等の不活性ガスである。不活性ガスは窒素ガスに限られず、不活性ガスとして、ヘリウムガスやアルゴンガス等の希ガス類を用いることもできる。
【0058】
ランプユニット12は、基板Wの上面に向けて光を照射(放出)することによって、基板Wを加熱するユニットである。ランプユニット12は、照射ユニットの一例である。ランプユニット12は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光を基板Wに向けて照射して、輻射によって基板Wを加熱する。すなわち、ランプユニット12は、輻射加熱ヒータである。ランプユニット12には、給電線89を介して、ランプ通電ユニット90から電力が供給される。
【0059】
低表面張力液体ノズル10および気体ノズル11は、ランプユニット12に取り付けられている。処理ユニット2は、ランプユニット12が先端部に取り付けられた第3アーム34と、第3アーム34を移動させることにより、ランプユニット12を移動させる第3移動ユニット35(移動ユニット)とをさらに含む。第3アーム34が移動することによって、ランプユニット12と共に、低表面張力液体ノズル10および気体ノズル11が移動する。低表面張力液体ノズル10および気体ノズル11は、移動可能なスキャンノズルである。第3移動ユニット35は、第3アーム34を回動させることにより、平面視で基板Wの上面の中央部を通る軌跡に沿って、低表面張力液体ノズル10、気体ノズル11およびランプユニット12を水平に移動させる。第3移動ユニット35は、低表面張力液体ノズル10、気体ノズル11およびランプユニット12を、退避位置および中央位置に配置できる。低表面張力液体ノズル10、気体ノズル11およびランプユニット12は、退避位置に位置するとき平面視でスピンチャック5の周囲に退避する。低表面張力液体ノズル10が中央位置に位置するとき、低表面張力液体ノズル10の吐出口10aが基板Wの上面の中央部に対向する。気体ノズル11が中央位置に位置するとき、気体ノズル11の吐出口11aが基板Wの上面の中央部に対向する。ランプユニット12が中央位置に位置するとき、ランプユニット12が基板Wの上面の中央部に対向する。第3移動ユニット35は、たとえば、第3アーム34に接続され鉛直方向に延びる回動軸(図示せず)と、当該回動軸を回動させる電動モータ(図示せず)とを含む。
【0060】
図4は、ランプユニット12の縦断面図である。
図5は、ランプユニット12を下から見た図である。ランプユニット12は、ランプ80と、ランプ80を収容するランプハウジング81と、ランプハウジング81の内部を冷却するためのヒートシンク82とを含む。
【0061】
ランプ80は、円板状のランプ基板83と、ランプ基板83の下面に実装された複数(
図5の例では、59個)の光源84とを含む。個々の光源84は、たとえばLED(発光ダイオード)である。ランプ通電ユニット90から供給される電力によって複数の光源84が点灯する。
図5に示すように、複数の光源84は、ランプ基板83の下面の全域に分散して配置されている。
図5の例では、1個の光源84が、ランプ基板83の下面の中心に配置されており、残りの58個の光源84が、ランプ基板83の下面の中心を取り囲むように4重円環状に配置されている。ランプ基板83における光源84の配置密度は略一様である。複数の光源84によって、水平方向に広がる円形状の発光部12aが構成されている。個々の光源84から発せられる光は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む。個々の光源84から発せられる光の波長は、200nm以上1100nm以下の波長である。個々の光源84から発せられる光は、390nm以上800nm以下の波長であることが好ましい。
【0062】
図4に示すように、ランプハウジング81は、円筒状のハウジング本体85と、円板状の底壁86とを含む。ハウジング本体85は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬性を有する材料で形成されている。底壁86は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。ランプハウジング81は、平面視で基板Wよりも小さい。底壁86の下面は、ランプユニット12の下面を構成している。
【0063】
ヒートシンク82は、ヒートシンク本体87と、ヒートシンク本体87に冷却流体を供給して、ヒートシンク本体87を冷却する冷却ユニット88とを含む。ヒートシンク本体87は、高い伝熱特性を有する金属(たとえば、アルミニウム、鉄、銅等)を用いて容器状に形成されている。冷却ユニット88は、冷媒供給源88aと、冷媒供給源88aから冷媒をヒートシンク本体87に供給する冷媒供給配管88bと、ヒートシンク本体87に供給された冷媒を冷媒供給源88aに戻す冷媒戻り配管88cと、冷媒供給配管88b内の冷媒を送り出すポンプ88dとを含む。冷却ユニット88は、冷却水等の冷媒をヒートシンク本体87に供給する。すなわち、ヒートシンク82は、水冷式のヒートシンクである。複数の光源84の発光に伴い、ランプ80およびその周囲が加熱される。しかしながら、ヒートシンク82によりランプハウジング81内が冷却されるので、ランプハウジング81内が過度に昇温することを防止できる。ヒートシンク82において、冷媒として冷却気体が用いられてもよい。
【0064】
ランプユニット12は、基板Wの上面を覆う低表面張力液体の液膜Lが基板Wの上面に形成されている状態で使用される。低表面張力液体ノズル10および気体ノズル11は、ランプハウジング81の外壁面81aに鉛直方向に沿う姿勢で取り付けられている。
【0065】
図4に示すように、ランプ80が発光すると、すなわち複数の光源84が発光すると、ランプ80から発せられた光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)は、ランプハウジング81の底壁86を透過し、基板Wの上面に照射される。低表面張力液体の一例であるIPAは、200nm以上1100nm以下の波長の光を透過させる。ランプ80から発せられた光の波長が200nm以上1100nm以下(より好ましくは、390nm以上800nm以下)である。そのため、ランプ80から放出された光は、液膜Lに吸収されずに、液膜Lを透過する。ランプハウジング81の外表面(底壁86の下面)から放射された光は、液膜Lを透過し、基板Wの上面に照射される。基板Wの上面においてランプユニット12から光が照射される領域を被照射領域RRという。これにより、被照射領域RRが輻射により加熱されて昇温する。被照射領域RRは、ランプユニット12から照射される光によって加熱される加熱領域と平面視で一致している。
【0066】
ランプユニット12から照射される光によって、基板Wの表層(詳しくは、
図2に示す凹凸パターン960)の温度が上昇する。光の照射によって、基板Wの表層の温度が低表面張力液体の沸点以上の温度にまで加熱されることにより、被照射領域RRに接する低表面張力液体が温められて蒸発する。これにより、基板Wの表面(
図2に示すパターン面965)の周囲に低表面張力液体の気体膜が形成される。低表面張力液体がIPAである場合、沸点は82.6℃である。基板Wの上面に被照射領域RRが設定されている状態で第3移動ユニット35がランプユニット12を水平に移動させることにより、被照射領域RRが基板Wの上面内で移動する。
【0067】
撮像部IM(
図3)は、基板Wの上面を撮影する装置である。撮像部IMは、たとえば、チャンバ4(
図1)の側壁の内面に近接した位置に設置されている。撮像部IMは、カメラCMおよび光源LTを有する。カメラCMには、たとえばCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタルカメラが用いられる。光源LTには、たとえばLEDが用いられる。撮像部IMは、必要に応じて光源LTから光を照射つつ、カメラCMによる撮影を行うことにより、基板Wの上面の撮影画像を取得する。撮影画像は、複数のピクセルにより構成され、ピクセル毎に輝度値の情報を有する。
【0068】
LEDを用いた光源84(
図4)は、一般に、動作に伴って徐々に劣化しやすい傾向がある。この劣化状態が、カメラCMによって撮影される画像に基づいて評価されてよい。たとえば、予め定められた条件で光源84による光の生成とカメラCMによる画像の撮影とを行い、この画像の明度から、光源84の劣化状態を評価することができる。光源84の劣化に起因して強度が低下していると評価された場合、それを補うように光源84への電力を増大させることによって、上記劣化に起因してのプロセス変動を抑制することができる。この評価のための画像を撮影するタイミングは任意であるが、たとえば、下記の基板処理方法によって撮影される画像を当該評価のために利用してもよい。
【0069】
図6は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。特に、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、第1移動ユニット31、第2移動ユニット33、第3移動ユニット35、ガード昇降ユニット74、ピン開閉ユニット24、ヒータ通電ユニット64、ヒータ昇降ユニット65、ランプ通電ユニット90、ポンプ88d、薬液バルブ50、リンス液バルブ51、低表面張力液体バルブ52、気体バルブ53A、および気体流量調整バルブ53Bを制御するようにプログラムされているコントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの液体や気体の吐出の有無や、対応するノズルからの気体の吐出流量が制御される。
【0070】
<1-2.基板処理方法の基本技術>
図7は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するためのフロー図である。
図7には、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
図8A~
図8Fは、基板処理の様子を説明するための模式図である。
図9A~
図9Dは、基板処理中の基板Wの上面に形成される領域について説明するための模式図である。以下では、主に
図3および
図7を参照し、
図8A~
図9Dについては適宜参照する。
【0071】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、
図7に示すように、基板搬入工程(ステップS11)、薬液供給工程(ステップS12)、リンス液供給工程(ステップS13)、置換工程(ステップS14)、液膜形成工程(ステップS15)、気体膜形成工程(ステップS16)、液膜排除工程(ステップS17)および基板搬出工程(ステップS18)が実行される。
【0072】
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットCRによってキャリアCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS11)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。基板Wは、凹凸パターン960(
図2を参照)が形成されている表面が上面となる姿勢で保持される。基板Wの搬入時には、ヒータユニット6には電力が供給されており、ヒータユニット6は、下位置に退避している。基板Wの搬入時には、複数のガード71が下位置に退避している。基板Wの搬入時には、ランプユニット12には電力が供給されていない。スピンチャック5によって基板Wが保持されると、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転される(基板回転工程)。スピンチャック5による基板Wの保持、およびスピンモータ23による基板Wの回転は、液膜排除工程(ステップS17)が終了するまで継続される。ガード昇降ユニット74は、基板保持工程が開始されてから液膜排除工程(ステップS17)が終了するまでの間、少なくとも一つのガード71が上位置に位置するように、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bの高さ位置を調整する。
【0073】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、基板Wの上面を薬液で処理するために基板Wの上面に薬液を供給する薬液供給工程(ステップS12)が開始される。具体的には、第1移動ユニット31が、薬液ノズル8を薬液処理位置に移動させる。薬液処理位置は、たとえば、中央位置である。薬液ノズル8が薬液処理位置に位置する状態で、薬液バルブ50が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央部に向けて、薬液ノズル8から薬液が供給(吐出)される(薬液供給工程、薬液吐出工程)。薬液ノズル8から吐出された薬液は、基板Wの上面の中央部に着液する。基板Wの上面に着液した薬液には、基板Wの回転による遠心力が作用する。そのため、薬液は、遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡り、それにより、基板Wの上面の全体が薬液によって処理される。薬液ノズル8からの薬液の供給は、所定時間、たとえば、60秒の間継続される。薬液供給工程において、基板Wは、所定の薬液回転速度、たとえば、1000rpmで回転される。
【0074】
所定時間の薬液処理の後、基板Wの上面をリンス液で処理するリンス処理(ステップS13)が開始される。具体的には、薬液バルブ50が閉じられ、第1移動ユニット31が薬液ノズル8を退避位置に移動させる。薬液ノズル8の移動が開始された後、第2移動ユニット33が、リンス液ノズル9をリンス処理位置に移動させる。リンス処理位置は、たとえば、中央位置である。リンス液ノズル9がリンス処理位置に位置する状態で、リンス液バルブ51が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央部に向けて、リンス液ノズル9からリンス液が供給(吐出)される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。リンス液ノズル9から吐出されたリンス液は、基板Wの上面の中央部に着液する。基板Wの上面に着液したリンス液には、基板Wの回転による遠心力が作用する。そのため、リンス液は、遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡り、それにより、基板Wの上面に存在する薬液がリンス液で置換される。すなわち、基板Wの上面の全体がリンス液で処理される。リンス液ノズル9からのリンス液の供給は、所定時間、たとえば、15秒の間継続される。リンス液供給工程において、基板Wは、所定のリンス液回転速度、たとえば、1000rpmで回転される。
【0075】
所定時間のリンス処理の後、基板Wの上面に存在するリンス液を低表面張力液体に置換する置換工程(ステップS14)が実行される。
【0076】
置換工程では、まず、リンス液バルブ51が閉じられ、第2移動ユニット33がリンス液ノズル9を退避位置に移動させる。リンス液ノズル9の移動が開始された後、第3移動ユニット35が、低表面張力液体ノズル10を低表面張力液体処理位置に移動させる。低表面張力液体処理位置は、たとえば、中央位置である。
【0077】
低表面張力液体ノズル10が低表面張力液体処理位置に位置する状態で、低表面張力液体バルブ52が開かれる。これにより、
図8Aに示すように、低表面張力液体ノズル10からの低表面張力液体の供給(吐出)が開始され、基板Wの上面の中央部に向けて低表面張力液体が供給される(低表面張力液体供給工程、低表面張力液体吐出工程)。低表面張力液体ノズル10から吐出された低表面張力液体は、基板Wの上面の中央部に着液する。基板Wの上面に着液した低表面張力液体には、基板Wの回転による遠心力が作用する。そのため、低表面張力液体は、遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡り、それにより、基板Wの上面に存在するリンス液が低表面張力液体で置換され、基板Wの上面の全体が低表面張力液体によって覆われる。低表面張力液体の供給の開始と同時、または、低表面張力液体の供給中に、基板Wの回転は、所定の置換速度に減速される(第1回転減速工程)。置換速度は、たとえば、300rpmである。
【0078】
低表面張力液体の供給中に、ヒータ昇降ユニット65がヒータユニット6を下位置から第1加熱位置に移動させる。第1加熱位置は、下位置よりも上方で基板Wから離間する位置である。ヒータユニット6が第1加熱位置に位置するとき、ヒータユニット6の対向面6aは基板Wの下面に非接触で近接する。ヒータユニット6を第1加熱位置に配置することによって、基板Wの加熱が開始される。ヒータユニット6が第1加熱位置に位置するとき、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離は、たとえば、4mmである。ヒータユニット6が第1加熱位置に配置されている状態で、基板Wは、たとえば、30℃に加熱される。
【0079】
基板Wの上面に存在するリンス液が低表面張力液体で置換された後、低表面張力液体の供給を継続して、基板Wの上面に低表面張力液体の液膜L(
図8Bを参照)を形成する液膜形成工程(ステップS15)が実行される。基板Wの上面に存在するリンス液が低表面張力液体で置換された後、基板Wの回転は、所定の液膜形成速度に減速される(第2回転減速工程)。液膜形成速度は、0rpmよりも大きく50rpm以下の速度であり、たとえば、10rpmである。第2回転減速工程において、基板Wの回転は、段階的に減速されてもよい。
【0080】
基板Wの回転が液膜形成速度に減速された後に、低表面張力液体バルブ52が閉じられる。これにより、低表面張力液体ノズル10から基板Wの上面への低表面張力液体の供給が停止される。低表面張力液体ノズル10からの低表面張力液体の供給は、所定時間、たとえば、30秒の間継続される。基板Wの回転が液膜形成速度に減速されることによって、基板W上の低表面張力液体に作用する遠心力が小さくなる。そのため、基板Wからの低表面張力液体の排出は停止される。あるいは、低表面張力液体は、基板Wから微量しか排除されない。そのため、基板Wの上面への低表面張力液体の供給が停止された後も、基板Wの上面は、低表面張力液体によって覆われた状態で維持される。
図8Bに示すように、基板Wの回転が液膜形成速度に減速された状態で低表面張力液体の供給が停止されることによって、基板W上の低表面張力液体が充分に厚くされてパドル状態の液膜Lが形成される(液膜形成工程、パドル形成工程)。
【0081】
リンス液が低表面張力液体で置換された後に微量のリンス液が凹凸パターン960の凹部962に残っていたとしても(
図2を参照)、このリンス液は、低表面張力液体に溶け込み、液膜L中に拡散する。これにより、凹凸パターン960の凹部962に残留するリンス液を減らすことができる。
【0082】
基板Wの上面に液膜Lが形成された後、ランプユニット12から光を照射することによって基板Wを加熱して基板Wの上面の中央部に気体膜VL(
図8Cの拡大図を参照)を形成する気体膜形成工程(ステップS16)が実行される。
【0083】
液膜Lが基板Wの上面に形成されている状態で、
図8Cに示すように、ヒータ昇降ユニット65がヒータユニット6を上昇させて第2加熱位置に配置する。第2加熱位置は、第1加熱位置よりも上方で基板Wから離間する位置である。ヒータユニット6が第2加熱位置に位置するとき、ヒータユニット6の対向面6aは基板Wの下面に非接触で近接する。ヒータユニット6が第2加熱位置に位置するとき、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離は、たとえば、2mmである。ヒータユニット6が第2加熱位置に配置されることによって、基板Wの全体は、常温(たとえば、25℃)よりも高く低表面張力液体の沸点よりも低い温度に加熱される(ヒータ加熱工程)。そのため、液膜Lが常温(たとえば、25℃)よりも高く低表面張力液体の沸点よりも低い温度に保温される(液膜保温工程)。ヒータユニット6が第1加熱位置に位置するときよりもヒータユニット6が第2加熱位置に位置するときの方が基板Wは高温に加熱される。ヒータユニット6が第2加熱位置に配置されている状態で、ヒータユニット6の対向面6aが195℃に加熱されていれば、基板Wは、40℃に加熱される。
【0084】
基板Wの上面に液膜Lが形成された状態で、第3移動ユニット35が、ランプユニット12を水平方向に移動させて光照射位置に配置する。光照射位置は、たとえば、中央位置である。さらに、第3移動ユニット35は、ランプユニット12の高さ位置が離隔位置になるように、ランプユニット12を鉛直方向に移動させる。ランプユニット12が離隔位置に位置するとき、ランプユニット12の下面と基板Wの上面との間の距離は、たとえば、50mmである。ランプユニット12の高さ位置が離隔位置である状態で、ランプ通電ユニット90がランプユニット12を通電させる。これにより、ランプユニット12からの光の照射が開始される(光照射工程)。光の照射は、液膜保温工程を実行しながら開始される。光の照射は、パドル状態の液膜Lが形成されてから速やかに(たとえば、1.5秒後に)開始される。ランプユニット12から放出される光は、液膜Lに吸収されずに、液膜Lを透過し、基板Wの上面の中央部に設定された被照射領域RRに照射される。これにより、基板Wの上面の中央部が輻射により加熱される。これにより、被照射領域RRに接する低表面張力液体が温められる。
【0085】
被照射領域RRの温度(すなわち、被照射領域RRにおける凹凸パターン960の温度)が、低表面張力液体の沸点以上である場合には、低表面張力液体が液膜Lと基板Wとの界面で蒸発する。被照射領域RRにおいて凹凸パターン960に接触する低表面張力液体が蒸発することにより、低表面張力液体の気体膜VL(
図8Cの拡大図を参照)が液膜Lと基板Wとの間に形成される。これにより、被照射領域RRにおいて液膜Lが気体膜VLに保持されて基板Wの上面から浮上する。
【0086】
被照射領域RRにおける基板Wの表層の温度が低表面張力液体の沸点以上の気相形成温度に加熱されていれば、充分な厚みの気体膜VLが被照射領域RRに形成される。低表面張力液体がIPAである場合、沸点は82.6℃であり、気体膜形成温度は、たとえば、100℃である。充分な厚みとは、パターン高さT1よりも大きい厚みのことをいう。充分な厚みの気体膜が形成されれば、気体膜によって液膜Lを充分な高さ位置に保つことができる。充分な高さ位置とは、液膜Lと気体膜VLとの界面が凹凸パターン960の構造体961の先端面961b(
図2も参照)よりも上方に位置する位置である。
【0087】
気体膜形成領域VRが形成された後、気体膜形成領域VRが形成された状態を維持しながら基板Wの上面から液膜Lを排除する液膜排除工程が実行される(ステップS17)。
【0088】
具体的には、気体膜形成領域VRが形成された後においても、ランプユニット12を光照射位置に配置することによって被照射領域RRが基板Wの上面の中央部に維持される。そのため、気体膜形成領域VRが形成された後においても、ランプユニット12による基板Wの上面の中央部の加熱が維持される。基板Wの上面の中央部に対する加熱の維持によって、基板Wの上面の中央部において気体膜VLに保持される処理液の蒸発が促進される。
【0089】
また、基板Wの上面の中央部に対する加熱の維持によって、基板Wの上面において、被照射領域RRと、非照射領域NRとの間には大きな温度差が生じる。この温度差に起因して、基板Wの上面には、中央部から周縁部に向けて流れる熱対流が形成される。基板Wが回転しているため、液膜Lには遠心力が作用している。
【0090】
基板Wの回転速度がパドル速度であるため、液膜Lに加わる遠心力は比較的弱い。また、基板Wの上面に発生する熱対流も比較的弱い。しかし、前述したように、気体膜形成領域VRにおいて液膜Lに働く摩擦抵抗は零と見なせるほど小さい。そのため、これら遠心力および熱対流によって、低表面張力液体が外方に押し退けられる。これにより、液膜Lの中央部の厚みが減少し、
図8Dに示すように、液膜Lの中央部にほぼ円形の開口100が形成される。開口100は、基板Wの上面を露出させる露出穴である。開口100の形成によって液膜Lが部分的に除去されることにより、
図9Bに示すように気体膜形成領域VRが円環状を呈する。被照射領域RRは、円形状である。開口100が形成されることによって、
図8Dの拡大図に示すように、気体膜形成領域VRの液膜Lと開口100との間、すなわち気体膜形成領域VRの液膜Lの内周縁に気液界面GLが形成される。
【0091】
このように、処理液の蒸発、熱対流の発生、および遠心力の作用によって、
図8Dに示すように、気体膜VLによって保持される低表面張力液体が排除されて、液膜Lの中央部に開口100が速やかに形成される(開口形成工程)。開口100が形成されることにより、液膜Lが環状にされる。開口100が形成されることによって、
図9Bに示すように、液膜形成領域LRも環状にされる。
【0092】
気体膜VLが形成された後においても、ヒータユニット6による基板Wの加熱は継続されて、液膜Lの全体が保温される(液膜保温工程)。そのため、開口100が形成される際に気体膜VLが消失することを抑制できる。
【0093】
液膜Lに開口100が形成された後においてもヒータユニット6およびランプユニット12によって基板Wが加熱される。基板Wの上面において開口100が形成されている領域(開口形成領域OR)には低表面張力液体が存在しないので、ヒータユニット6およびランプユニット12によって基板Wの温度が速やかに上昇する。それによって、液膜Lの内周縁よりも内側(開口形成領域OR)と液膜Lの内周縁の外側(液膜形成領域LR)とで温度差が生じる。具体的には、開口形成領域ORでは基板Wの温度が高く、液膜形成領域LRでは基板Wの温度が低くなる。この温度差によって、液膜Lの内周縁付近において熱対流の発生が継続される。また、基板Wが回転しているため、液膜Lには遠心力が作用する。そのため、遠心力の作用および熱対流の発生によって、
図8Dおよび
図8Eに示すように、開口100が拡大される(開口拡大工程)。
【0094】
開口100が形成された後、
図8Dに二点鎖線で示すように、第3移動ユニット35がランプユニット12の高さ位置を、離隔位置よりも基板Wの上面に近い近接位置に変更する(照射ユニット近接工程)。これにより、基板Wの上面において開口形成領域ORの温度を速やかに上昇させることができる。ランプユニット12が近接位置に位置するとき、ランプユニット12の下面と基板Wの上面との間の距離は、たとえば、4mmである。
【0095】
開口100の拡大が開始されると、第3移動ユニット35は、ランプユニット12の高さ位置を近接位置に維持しながら、低表面張力液体ノズル10、気体ノズル11およびランプユニット12を基板Wの周縁部に向けて移動させる(近接移動工程)。その際、気体ノズル11がランプユニット12よりも基板Wの内側に位置するように、すなわち、気体ノズル11が開口形成領域ORに対向するように、低表面張力液体ノズル10、気体ノズル11およびランプユニット12が移動される。ランプユニット12が基板Wの上面の周縁部に向けて移動することによって、被照射領域RRが基板Wの上面の周縁部に向けて移動する。
【0096】
開口100の拡大中においても、基板Wは回転されている。そのため、被照射領域RRは、基板Wの回転方向の上流側に相対移動する。これにより、液膜Lの内周縁が全周において加熱され、液膜Lの内周縁の全周において充分な厚みの気体膜VLが形成される。すなわち、
図9Cに示すように、開口100の拡大中において、気体膜形成領域VRは、円環状となる。開口100の拡大中において、気体膜VLは、非照射領域NRにも形成されている。このように、開口拡大工程では、基板Wを回転させながら被照射領域RRを基板Wの上面の周縁部に向けて移動させる。そのため、液膜Lの内周縁に気体膜VLが形成された状態を維持しながら開口100が拡大される。
【0097】
図9Cに示すように、被照射領域RRは、液膜形成領域LRおよび開口形成領域ORに跨って配置されるように開口100の拡大に追従して移動される。そのため、液膜Lの内周縁を充分な熱量で加熱することができる。従って、熱量不足により液膜Lの内周縁において気体膜VLが形成されない事態や、一度形成された気体膜VLが消失して低表面張力液体が基板Wの上面に接触する事態の発生を抑制できる。すなわち、液膜Lの内周縁に安定して気体膜VLを形成することができる。
【0098】
熱対流による低表面張力液体の移動では、或る程度まで開口100を拡大できるものの、
図8Fおよび
図9Dに示すように基板Wの上面の周縁部にまで開口100の外周縁が至ると、低表面張力液体の移動が停止するおそれがある。より詳細には、開口100の外周縁が基板Wの上面の周縁部に至っている状態では、基板W上の処理液の全体量が少ないため、開口100の内側と開口100の外側での基板Wの温度差が小さくなる。そのため、低表面張力液体は基板Wの内側への移動と外側への移動とを繰り返す平衡状態となる。この場合、低表面張力液体が基板Wの内側に戻るときに、気体膜VLが失われた基板Wの上面に低表面張力液体が直接接するおそれがある。そのため、低表面張力液体の表面張力によるパターン倒壊や乾燥不良によるパーティクルが生じるおそれがある。開口100を拡大する際、基板Wは回転している。そのため、液膜Lに作用する遠心力が充分に大きければこの平衡状態を解消することができる。しかしながら、遠心力が充分に大きくない場合には、平衡状態が解消されない。特に、10rpm程度の低回転速度では、平衡状態が解消されないおそれがある。
【0099】
そこで、液膜Lの内周縁が基板Wの上面の周縁部に達したときに、気体バルブ53Aが開かれる。これにより、
図8Fに示すように、開口形成領域ORに向けて気体が吹き付けられる。基板Wの上面に衝突した気体は、基板Wの上面に沿って流れ、低表面張力液体を基板Wの外側に押して、開口100の拡大を促進する(拡大促進工程)。これにより、低表面張力液体が停止することなく基板Wの上面から排除される。パターン倒壊やパーティクルの発生を抑制または防止できる。
【0100】
開口100の拡大によって、最終的に液膜Lが基板Wの上面から完全に排除される。その後、ランプ通電ユニット90からランプユニット12への電力の供給が停止され、気体バルブ53Aが閉じられる。そして、第3移動ユニット35が低表面張力液体ノズル10、気体ノズル11およびランプユニット12を退避位置に移動させる。そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを下位置に移動させる。そして、ヒータ昇降ユニット65がヒータユニット6を下位置に移動させる。搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5のチャックピン20から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(ステップS18)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。
【0101】
本実施の形態1によれば、基板Wの上面の中央部に設定された被照射領域RRに光が照射されて基板Wの上面の中央部が加熱される。これにより、基板Wの上面の中央部に接する低表面張力液体が蒸発し、気体膜VLが基板Wの上面の中央部に形成される。気体膜VLが形成されることにより、基板Wの上面の中央部から液膜Lが浮上する。基板Wの上面の中央部に形成された気体膜VLによって保持される低表面張力液体を排除することによって液膜Lの中央部に開口100が形成される。
【0102】
開口100が形成された後、基板Wを回転させながら被照射領域RRを基板Wの上面の周縁部に向けて移動させることによって、液膜Lの内周縁に気体膜VLが形成された状態を維持しながら開口100が拡大される。言い換えると、基板Wの上面から液膜Lを排除する際に、気体膜VLが形成されている環状の領域(気体膜形成領域VR)が、開口100の拡大とともに基板Wの上面の周縁部に向かって移動する。気体膜形成領域VRは、内周縁および外周縁が大きくなるように基板W上を移動する。
【0103】
液膜Lに開口を形成および拡大して基板の上面から液膜Lを排除する手法として、本実施の形態とは異なり、基板Wの下面にヒータユニット6を接触させた状態で液膜Lを基板Wから排除する手法や、基板Wの上面の全体に対向するランプユニット(本実施の形態1とは異なるランプユニット)によって基板Wの上面の全体を加熱しながら液膜Lを基板Wから排除する手法が想定し得る。これらの手法を採用した場合、基板Wの上面において液膜Lが最後に排除される箇所では、液膜Lの排除の開始から終了までの長期間において、気体膜VLが形成された状態を維持し続ける必要がある。
【0104】
一方、本実施の形態1では、環状の気体膜形成領域VRが開口100と共に拡大される。従って、気体膜VLに保持される液膜Lが基板Wの上面の全域に気体膜VLが形成された後に排除される方法と比較して、気体膜VLが形成されてから気体膜VLに保持される低表面張力液体が排除されるまでの時間を、基板Wの上面の任意の箇所において短くすることができる。これにより、開口100の形成および拡大の際に、基板Wの全体が過度に(長期間)加熱されることを抑制できる。よって、低表面張力液体が局所的に蒸発して液膜Lが分裂することを抑制できる。
【0105】
気体膜VLを維持するために加熱する時間が長いほど、液膜Lや基板Wの温度の局所的な低下によって気体膜VLが消失する可能性が高まるところ、本実施の形態1では、気体膜VLが形成されてから気体膜VLに保持される低表面張力液体が排除されるまでの時間が、基板Wの上面の任意の箇所において短くされている。そのため、気体膜VLを長期間維持するための加熱に起因するパターン倒壊を抑制できる。
【0106】
また、開口100の形成および拡大は、低表面張力液体をヒータユニット6によって保温しながら行われる。そのため、被照射領域RRにおいて気体膜VLを速やかに形成することができる。また、非照射領域NR(特に、基板Wの上面の回転中心位置に対して被照射領域RRとは反対側の領域)における基板Wの温度低下を抑制できる。そのため、形成された気体膜VLが被照射領域RR外(被照射領域RRよりも回転方向の下流側)に移動して消失することを、抑制できる。
【0107】
以上により、基板Wの上面から低表面張力液体を良好に排除できる。その結果、低表面張力液体の表面張力によるパターン倒壊や乾燥不良によるパーティクル発生を抑制できる。
【0108】
また、本実施の形態1によれば、液膜保温工程において、基板Wは、基板Wの下面から離間した位置(第2加熱位置)に配置されたヒータユニット6によって加熱される。従って、ヒータユニット6の構成にかかわらず、すなわち、ヒータユニット6が基板と共に回転できない構成であっても、開口100を拡大させる際に基板Wを容易に回転させることができる。また、基板Wにヒータユニット6を接触させる構成と比較して、基板Wの全体を適度に加熱することができる。また、ヒータユニット6に付着する汚れが基板Wに転写されることを抑制できる。さらに、ヒータユニット6を基板Wに接触させる構成のように対向面6aと基板Wの下面との平行度を精度よく調整する必要がないため、基板処理装置1の複雑化を避けることができる。
【0109】
また、開口100の拡大中に基板Wの上面の開口形成領域ORに気体を吹き付けることによって、開口形成領域ORが冷却されるおそれがある。開口形成領域ORが冷却されると、基板Wの上面における液膜形成領域LRと開口形成領域ORとの間の温度差が不充分となり、液膜L内で熱対流が充分に形成されないおそれがある。これでは、開口100の拡大が阻害されるおそれがある。そこで、本実施の形態1では、開口拡大工程において、液膜Lの内周縁が基板Wの上面の周縁部に達するまでは、基板Wの上面への気体の吹き付けが行われない。そのため、気体の吹き付けによる基板Wの上面の開口形成領域ORの冷却を避けることができる。
【0110】
<1-3.基板処理方法のばらつき抑制技術>
複数の基板Wを処理するために上記基板処理方法のステップS11~S18(
図7)が繰り返される。その際に特にステップS17のばらつきを抑制するための技術について説明する。この技術によれば、詳しくは後述するが、ある特定の基板への基板処理において生じた状況が、他の少なくとも1つの基板(典型的には複数の基板)への基板処理の条件設定において参照され、これにより基板処理のプロセスばらつきが抑制される。以下において、上述した「特定の基板」を基準基板(または第1基板W)と称することがあり、上述した「他の少なくとも1つの基板」を通常基板(または第2基板W)と称することがある。また、基準基板への基板処理を基準基板処理と称することがあり、上述した通常基板への基板処理を通常基板処理と称することがある。なお、基準基板と通常基板とは、ほぼ共通の構成を有していてよい。また基準基板処理と通常基板処理とは、処理条件のパラメータ値の相違をのぞき、ほぼ共通の基板処理であってよい。
【0111】
はじめに、基準基板処理(基準基板としての基板Wへの基板処理)へのステップS14~S17(
図7)として、ステップ100h(
図10)が行われる。以下、その具体的方法について説明する。
【0112】
ステップS101h(
図10)にて、基準基板である第1基板W上に低表面張力液体(有機溶剤)の液膜Lが形成される(
図8B参照)。言い換えれば、第1基板Wに対して、前述したステップS15(
図7)が行われる。なお、以下において、第1基板W上に形成されている液膜Lのことを第1液膜Lと称することがある。
【0113】
次に、ステップS102h(
図10)にて、第1基板Wを加熱することによって、第1液膜Lを保持する気体膜VLが形成される(
図8C参照)。言い換えれば、第1基板Wに対して、前述したステップS16(
図7)が行われる。なお、以下において、第1液膜Lを保持する気体膜VLのことを第1気体膜VLと称することがある。ステップS102h(
図10)は、第1基板Wを加熱するために基板Wへランプユニット12(
図8C)から光を照射するステップS102hLを含む。
【0114】
ステップS103h(
図10)にて、第1基板Wに対して、前述したステップS17(
図7)の第1段階が行われる。具体的には、予め定められた条件(第1条件)で第1基板Wの上面S2(
図12)へランプユニット12(
図8D)から光が照射されることによって、第1気体膜VLに保持された第1液膜Lに、穴OP(
図12)としての開口100(
図8D)が形成される。なお、以下において、第1液膜Lに形成されている穴OPのことを第1穴OPと称することがある。第1条件は、第1基板Wに照射される光の強度の設定条件と、第1基板Wのうち光に照射される部分である被照射領域RRの設定条件とを含む。
【0115】
次にステップS104h(
図10)にて、第1基板Wに対して、前述したステップS17(
図7)の第2段階が行われる。言い換えれば、前述した第1条件と異なる予め定められた第2条件で、第1基板Wへ光が照射される。具体的には、第2条件は、第1基板Wを矢印RT(
図13)に示すように回転させつつ、スキャン方向CN(
図13)に沿って被照射領域RRを基板Wの中央部からずらす動作条件を含む。これにより第1穴OPが、
図12における矢印で示すように拡張させられる。このように拡張された第1穴OPをカメラCM(
図3)を用いて撮影することによって、穴画像OQ(第1画像)が取得される(ステップS105h(
図10))。そしてこの穴画像OQが、基準画像として記憶される(ステップS111h(
図10))。
【0116】
穴画像OQの上記取得は、たとえば、予め定められた時間が基準時点から経過した時点でなされる。基準時点は、基板処理方法における特定の時点であり、本実施の形態1においては、被照射領域RRがスキャンされ始める時点であってよい。
【0117】
次に、第1基板Wに対して、前述したステップS17(
図7)の第3段階が行われる。具体的には、予め定められた第3条件で第1基板Wへ光を照射することによって、第1穴OPがさらに拡張される(ステップS121h(
図10))。第3条件は、第1基板Wに照射される光の強度の設定条件を含んでよい。また第3条件は、第1基板Wの中央部から外周部へ向かっての被照射領域RRの移動速度(言い換えれば、ランプユニット12(
図8E)のスキャン速度)の設定条件を含んでよい。また第3条件は、第1基板Wの回転速度の設定条件を含んでよい。最終的に被照射領域RRは基板Wの外周部に達するまで移動され(
図9D参照)、これにより上面S2からIPAの液膜Lがおおよそ除去される。
【0118】
次に、第1基板Wに対して、前述したステップS17(
図7)の第4段階が行われる。具体的には、開口形成領域ORに向けて気体が吹き付けられる(
図8F参照)。これにより上面S2からIPAの液膜Lが除去される。
【0119】
以上により、基準基板としての第1基板Wへの乾燥処理(ステップS100h(
図10))が完了される。すなわち基準基板処理(基準基板への処理)が終了する。
【0120】
上述した基準基板処理(ステップS100h(
図10))後に、通常基板処理(通常基板としての第2基板Wへの基板処理)としてのステップS100i(
図11)が行われる。典型的には、1つの基準基板への基準基板処理が1回行われた後、通常基板処理が複数回繰り返されることによって多数の通常基板が処理される。以下、このステップS100iの詳細について説明する。
【0121】
まずステップS101i(
図11)が前述したステップS101h(
図10)と同様に行われる。これによって、通常基板である第2基板W上に低表面張力液体(有機溶剤)の液膜Lが形成される(
図8B参照)。なお、以下において、第2基板W上に形成されている液膜Lのことを第2液膜Lと称することがある。
【0122】
次に、ステップS102i(
図11)が前述したステップS102h(
図10)と同様に行われることによって、第2基板Wが加熱される。これによって、第2液膜Lを保持する気体膜VLが形成される(
図8C参照)。なお、以下において、第2液膜Lを保持する気体膜VLのことを第2気体膜VLと称することがある。ステップS102i(
図11)は、第2基板Wを加熱するために基板Wへランプユニット12(
図8C)から光を照射するステップS102iLを含む。
【0123】
次に、ステップS103i(
図11)が前述したステップS103h(
図10)と同様に行われる。具体的には、前述した第1条件で第2基板Wへ光が照射されることによって、第2気体膜VLに保持された第2液膜Lの中央部に穴OPが形成される。なお、以下において、第2液膜Lに形成されている穴OPのことを第2穴OPと称することがある。
【0124】
次に、ステップS104i(
図11)が前述したステップS104h(
図10)と同様に行われる。具体的には、前述した第2条件で第2基板Wへ光を照射することによって、第2穴OPが拡張される。
【0125】
次に、ステップS105i(
図11)が前述したステップS105h(
図10)と同様に行われる。具体的には、上記ステップS104iによって拡張された第2穴OP(
図13)がカメラCM(
図3)によって撮影される。これによって、拡張された第2穴OP(
図13)の画像(第2画像)が取得される。
【0126】
次に、ステップS111i(
図11)にて、
図13を参照して、基準画像としての穴画像OQ(第1画像)が表す第1穴と、上記第2画像が表す第2穴OPとが比較される。これによって、第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。この比較は、コントローラ3によって構成される画像比較部(図示せず)によって実行されてよい。上述したステップS104h(
図10)およびステップS104i(
図11)は、共に第2条件に設定されたプロセスであるが、実際にはプロセス変動の影響があることから、ステップS104hによる第1穴OPと、ステップS104iによる第2穴OPとでは、相違が生じ得る。
【0127】
次に、ステップS112i(
図11)にて、第2穴OPの拡張の、上記のように評価された進行状況に基づいて、第2基板Wへ光を照射するための第3条件が調整される。この調整は、コントローラ3によって構成される条件調整部(図示せず)によって実行されてよい。
【0128】
上記の比較において、たとえば、
図13に示すように、穴画像OQ(第1画像)によって表される第1穴の面積AQ(
図13においてドットが付された領域)と、第2画像(
図13)における第2穴OPの面積AP(
図13においてハッチングが付された領域)とが比較されてよい。なお
図13に示された例においては、面積AQおよび面積APの各々は、基板Wの上面S2全体についてではなく、撮影時点での被照射領域RRにおいて算出されている。よって上記比較は、被照射領域RR内で行われる。なお撮影時点での被照射領域RRは、ランプユニット12をスキャン動作させるための第3移動ユニット35(
図3)の動作条件から算出されてよい。面積AQに比して面積APが大きい場合、第3条件は、穴OPの拡張が抑制されるように調整される。具体的には、第3条件の調整として、たとえば、第2基板Wに照射される光の強度が、より小さく調整される。あるいは、たとえば、被照射領域RRの移動速度(スキャン速度)が、より小さく調整される。あるいは、第2基板Wの回転速度が、より小さく調整される。これら調整における調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、面積AQと面積APとの差異に対応した量であってもよい。逆に、面積AQに比して面積APが小さい場合、第3条件は、穴OPの拡張が促進されるように調整される。
【0129】
図13を参照して説明された上記比較方法の変形例として、たとえば、
図14に示すように、穴画像OQ(第1画像)が表す第1穴の寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)と、第2画像(
図14)における第2穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)とが比較されてよい。なお
図14に示された例においては、各寸法は、基準点P1から外側へ延びる検出区間LEにおいて算出されている。検出区間LEは、撮影時点での被照射領域RR内にあることが好ましく、スキャン方向CNに沿っていることが好ましく、被照射領域RRが円形を有する場合は、当該円形のスキャン方向CNに沿った直径であってよい。穴画像OQの寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)に比して穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)が大きい場合、第3条件は、第2穴OPの拡張が抑制されるように調整される。逆に、穴画像OQの寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)に比して第2穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)が小さい場合、第3条件は、第2穴OPの拡張が促進されるように調整される。これら調整の調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、上述した寸法の差異の大きさに対応した量であってもよい。
【0130】
次に、上記ステップS112i(
図11)において調整された第3条件で第2基板Wへ光を照射することによって、第2穴OPがさらに拡張される(ステップS121i(
図11))。最終的に被照射領域RRは基板Wの外周部に達するまで移動され(
図9D参照)、これにより上面S2からIPAの液膜Lがおおよそ除去される。
【0131】
次に、第1基板Wの場合と同様に、第2基板Wの開口形成領域OR(
図8F)に向けて気体が吹き付けられる。これにより上面S2からIPAの液膜Lが除去される。
【0132】
以上により、通常基板としての第2基板Wへの乾燥処理(ステップS100i(
図11))が完了される。すなわち通常基板処理(通常基板への処理)が終了する。
【0133】
<1-4.効果>
本実施の形態1によれば、所定条件(第2条件)で基準基板としての第1基板Wへ光を照射したことによる第1穴OPの拡張の進行状況を基準として、上記所定条件(第2条件)で通常基板としての第2基板Wへ光を照射したことによる第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。この進行状況に基づいて、通常基板としての第2基板Wへ光をさらに照射するための条件(第3条件)を調整することによって、第2穴OPのさらなる拡張の進行速度を、標準的な進行速度へ、より近づけることができる。これにより、通常基板としての第2基板Wの上面S2上における第2液膜Lの第2穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。よって、当該ばらつきに起因しての第2基板W(通常基板)の上面S2への悪影響を抑制することができる。具体的には、通常基板の上面S2上に設けられているパターン960の倒壊を抑制することができる。
【0134】
基板Wへ光が上方から照射されるので、ランプユニット12は基板Wの上方に配置される。これにより、基板Wへ吐出される薬液がランプユニット12およびそれに付随する部材へ付着しにくい。よって、ランプユニット12およびそれに付随する部材への薬液に起因してのダメージを避けることができる。この効果は、フッ酸のように高い腐食性を有する薬液が用いられる場合に特に大きい。
【0135】
上記第3条件は、通常基板に照射される光の強度の設定条件を含んでよい。上記第3条件は、被照射領域RRのスキャン速度の設定条件を含んでよい。上記第3条件は、通常基板の回転速度の設定条件を含んでよい。これら設定条件の少なくともいずれかを用いることにより、第2基板W(通常基板)上の第2液膜Lの第2穴OPのさらなる拡張の進行速度を、効果的に調整することができる。
【0136】
進行状況を評価するために行われる基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較(
図11:ステップS111i)は、被照射領域RR内で行われてよい(
図13または
図14参照)。これにより、当該評価の信頼性を高めることができる。
【0137】
進行状況を評価するために行われる基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較(
図11:ステップS111i)は、
図13に示すように、基準基板の穴画像OQの面積AQと通常基板の穴OPの面積APとの比較で行われてよい。この場合、様々な方向への拡張の影響を平均化しての評価が可能である。あるいは、進行状況を評価するために行われる基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較は、
図14に示すように、基準基板の穴画像OQと通常基板の穴OPとの寸法の比較で行われてよい。この場合、簡素な方法での評価が可能である。
【0138】
カメラCM(
図3)によって撮影される画像に基づいて、ランプユニット12の光源84(
図4および
図5)の劣化状態が評価されることが好ましい。これにより、光源84からの光が照射されることによる穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。
【0139】
<2.実施の形態2>
<2-1.基板処理装置の構成>
本実施の形態2においては基板処理装置1(
図1)に、処理ユニット2(
図1)に代わって処理ユニット2A(
図15)が備えられている。
図15は処理ユニット2Aの内部を水平に見た模式図であり、
図16は、スピンベース116およびこれに関連する構成を上から見た模式図である。
図17は、
図15に示す上面ヘッド130の模式的な縦断面図である。
図18は、上面ヘッド130を下から見た模式図である。
図19は、第2のランプヒータ172の模式的な縦断面図である。
図20は、第2のランプヒータ172を下から見た模式図である。
【0140】
図15に示すように、処理ユニット2Aは、基板Wに処理液を供給するウェット処理ユニットである。処理ユニット2Aは、内部空間を有する箱型のチャンバ4と、チャンバ4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1回りに回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)105と、スピンチャック105に保持されている基板Wに向けて処理流体(処理液および処理ガス)を吐出する複数のノズル131~135と、基板Wを上方から光の照射によって加熱するための第1の加熱ユニット151および第2の加熱ユニット171と、回転軸線A1回りにスピンチャック105を取り囲む筒状の処理カップ107と、を含む。
【0141】
図15に示すように、チャンバ4は、基板Wが通過する出入口4Aが設けられた箱型の隔壁111と、出入口4Aを開閉するシャッタユニット4Bと、を含む。FFU113(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁111の上部に設けられた送風口111aの上に配置されている。FFU113は、クリーンエア(フィルタによってろ過された空気)を送風口111aからチャンバ4の内部に常時供給する。チャンバ4内の気体は、処理カップ107の底部に接続された排気ダクト114を通じてチャンバ4から排除される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバ4の内部に常時形成される。排気ダクト114に排除される排気の流量は、排気ダクト114内に配置された排気バルブ115の開度に応じて変更される。
【0142】
図15に示すように、スピンチャック105は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース116と、スピンベース116の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン117と、スピンベース116の中央部から回転軸線A1に沿って鉛直下方に延びるスピン軸118と、を含む。スピン軸118は、スピンモータ(基板回転ユニット)119によって、回転軸線A1回りに回転される。それにより、スピンベース116および複数のチャックピン117を回転させると、複数のチャックピン117が回転軸線A1回りに回転する。複数のチャックピン117は、スピンベース116の上面116uの外周部に、周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン117は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。複数のチャックピン117は、開状態において、基板Wの外周部の下面に接触して、基板Wを下方から支持する。チャックピン117には、チャックピン117を開閉駆動するためのチャックピン駆動ユニット120が結合されている。チャックピン駆動ユニット120は、たとえば、スピンベース116の内部に収容されたリンク機構と、スピンベース116の外に配置された駆動源と、を含む。駆動源は、電動モータを含む。チャックピン駆動ユニット120の具体的な構成例は、特開2008-034553号公報などに記載されている。
【0143】
なお、スピンチャック105としては、把持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線回りに回転することにより、スピンチャック105に保持されている基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0144】
複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル131と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル132と、基板Wの上面に向けて、有機溶剤(より一般的に言えば低表面張力液体)を吐出する有機溶剤ノズル(処理液ノズル)133と、基板Wの上面に向けて気体を吐出する第1の気体ノズル134と、基板Wの上面に向けて気体を吐出する第2の気体ノズル135と、を含む。
【0145】
薬液ノズル131は、薬液ノズル131に薬液を案内する薬液配管136に接続されている。薬液配管136に介装された薬液バルブ137が開かれると、薬液が、薬液ノズル131の吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル131から吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の処理液であってもよい。
【0146】
図15および
図16の例では、薬液ノズル131は、移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2Aは、薬液ノズル131が先端部に取り付けられた第1のアーム140と、第1のアーム140を移動させることにより、薬液ノズル131を移動させる第1の移動装置139と、を含む。
図16に示すように、第1の移動装置139は、スピンチャック105の周囲で鉛直方向に延びる回動軸線A2回りに第1のアーム140を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って薬液ノズル131を水平に移動させる。第1の移動装置139は、薬液ノズル131から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、薬液ノズル131が平面視でスピンチャック105の周囲に退避した退避位置(
図16に示す位置)との間で、薬液ノズル131を移動させる。第1の移動装置139は、たとえば電動モータを含む。
【0147】
図15に示すように、リンス液ノズル132は、リンス液ノズル132にリンス液を案内するリンス液配管141に接続されている。リンス液配管141に介装されたリンス液バルブ142が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル132の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル132から吐出されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)のアンモニア水のいずれかであってもよい。
【0148】
図15および
図16の例では、リンス液ノズル132は、移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2Aは、リンス液ノズル132が先端部に取り付けられた第2のアーム143と、第2のアーム143を移動させることにより、リンス液ノズル132を移動させる第2の移動装置144と、を含む。
図16に示すように、第2の移動装置144は、スピンチャック105の周囲で鉛直方向に延びる回動軸線A3回りに第2のアーム143を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿ってリンス液ノズル132を移動させる。第2の移動装置144は、リンス液ノズル132から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル132が平面視でスピンチャック105の周囲に退避した退避位置(
図16に示す位置)との間で、リンス液ノズル132を移動させる。第2の移動装置144は、電動モータを含む。
【0149】
図15に示すように、有機溶剤ノズル133は、有機溶剤ノズル133に有機溶剤を案内する有機溶剤配管145に接続されている。有機溶剤配管145に介装された有機溶剤バルブ146が開かれると、有機溶剤が、有機溶剤ノズル133の有機溶剤吐出口133aから下方に連続的に吐出される。有機溶剤ノズル133から吐出される有機溶剤は、たとえばIPA(isopropyl alcohol)である。使用可能な有機溶剤として、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、EG(エチレングリコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコールおよび2-ブタノールを例示できる。また、有機溶剤としては、単体成分のみからなるものだけでなく、他の成分と混合した液体も使用できる。有機溶剤ノズル133、有機溶剤配管145および有機溶剤バルブ146によって、有機溶剤供給ユニット(処理液供給ユニット)が構成されている。有機溶剤ノズル133は、この実施の形態では、後述する第1のランプヒータ152に一体化されている。
【0150】
第1の気体ノズル134は、第1の気体ノズル134に気体を案内する第1の気体配管147に接続されている。第1の気体配管147に介装された第1の気体バルブ148が開かれると、気体の流量を変更する第1の流量調整バルブ149の開度に対応する流量で、第1の気体ノズル134の第1の気体吐出口134aから下方に気体が連続的に吐出される。第1の気体ノズル134に供給される気体は、窒素ガス等の不活性ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外の気体であってもよい。第1の気体ノズル134、第1の気体配管147、第1の気体バルブ148および第1の流量調整バルブ149によって、スピンチャック105に保持されている基板Wの上面に気体を吹き付けるための第1の吹き付けユニットが構成されている。第1の気体ノズル134は、後述する第1のランプヒータ152に取り付けられ、かつ第1のランプヒータ152に支持されている。
【0151】
第2の気体ノズル135は、第2の気体ノズル135に気体を案内する第2の気体配管197に接続されている。第2の気体配管197に介装された第2の気体バルブ198が開かれると、気体の流量を変更する第2の流量調整バルブ199の開度に対応する流量で、第2の気体ノズル135の第2の気体吐出口135aから下方に気体が連続的に吐出される。第2の気体ノズル135に供給される気体は、窒素ガス等の不活性ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外の気体であってもよい。第2の気体ノズル135、第2の気体配管197、第2の気体バルブ198および第2の流量調整バルブ199によって、スピンチャック105に保持されている基板Wの上面に気体を吹き付けるための第2の吹き付けユニットが構成されている。第2の気体ノズル135は、後述する第2のランプヒータ172に取り付けられ、かつ第2のランプヒータ172に支持されている。
【0152】
第1の加熱ユニット151は、第1のランプヒータ152と、第1のランプヒータ152を移動させる第1のヒータ移動ユニット(後述する第3の移動装置163)と、を含む。
図17に示すように、第1のランプヒータ152は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光を基板Wに向けて照射して、輻射によって基板Wを加熱する輻射加熱ヒータである。第1のランプヒータ152は、第1のランプ154と、第1のランプ154を収容する第1のランプハウジング155と、第1のランプハウジング155の内部を冷却するための第1のヒートシンク156と、を含む。
【0153】
図17および
図18に示すように、第1のランプ154は、円板状の第1のランプ基板157と、第1のランプ基板157の下面に実装された複数(
図18の例では、52個)の第1の光源158と、を含む。個々の第1の光源158は、たとえばLED(発光ダイオード)である。
図18に示すように、複数の第1の光源158は、第1のランプ基板157の下面の全域に分散して配置されている。
図18の例では、52個の第1の光源158が、3重円環状に並べられている。第1のランプ基板157における第1の光源158の配置密度は略一様である。複数の第1の光源158によって、水平方向に広がりを有する円環状の第1の発光部154Aが構成されている。第1の発光部154Aは、下方から見て有機溶剤吐出口133aの周囲を環状に取り囲んでいる。個々の第1の光源158から発せられる光は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む。個々の第1の光源158から発せられる光の波長は、200nm~1100nmの範囲の波長、より好ましくは、390nm~800nmの範囲の波長である。
【0154】
図17に示すように、第1のランプハウジング155は、円筒状の第1のハウジング本体159と、円板状の第1の底壁160と、を含む。第1のハウジング本体159は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬性を有する材料で形成されている。第1の底壁160は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。第1のランプハウジング155は、平面視で基板Wよりも小さい。
【0155】
第1のヒートシンク156は、第1のヒートシンク本体161と、第1のヒートシンク本体161に冷却流体を供給して、第1のヒートシンク本体161を冷却する第1の冷却機構162と、を含む。第1のヒートシンク本体161は、高い伝熱特性を有する金属(たとえばアルミニウム、鉄、銅等)を用いて容器状に所定の形状に形成されている。第1の冷却機構162は、冷却流体の供給源162aと、供給源162aから冷却流体を第1のヒートシンク本体161に供給する冷却流体供給配管162bと、第1のヒートシンク本体161に供給された冷却流体を供給源162aに戻す冷却流体戻り配管162cと、を含む。
図17の例では、第1の冷却機構162として、冷却水等の冷却液体を冷却流体として第1のヒートシンク本体161に供給している。すなわち、第1のヒートシンク156は、水冷式のヒートシンクである。複数の第1の光源158の発光に伴い、第1のランプ154およびその周囲が加熱される。しかしながら、第1のヒートシンク156により第1のランプハウジング155内が冷却されるので、第1のランプハウジング155内が過度に昇温することを防止できる。第1のヒートシンク156において、冷却流体として冷却気体が用いられてもよい。
【0156】
図16に示すように、処理ユニット2Aは、第1のランプヒータ152が先端部に取り付けられた第3のアーム164をさらに備えている。第1のヒータ移動ユニットは、第1のランプヒータ152を移動させるべく、第3のアーム164を移動させる第3の移動装置(第1の加熱領域移動ユニット、第1の吹き付け領域移動ユニット)163、を含む。具体的には、第3の移動装置163は、スピンチャック105の周囲で上下方向に延びる回動軸線A4回りに第3のアーム164を回動させる。第3の移動装置163は、電動モータを含む。第3の移動装置163は、第1のランプヒータ152を所定の高さで保持している。第3の移動装置163は、回動軸線A4回りに第3のアーム164を回動させることにより、第1のランプヒータ152を水平に移動させる。第3の移動装置163が、第1のランプヒータ152を鉛直方向に移動可能な構成であってもよい。具体的には、第3の移動装置163が、第3のアーム164に結合されており、第3のアーム164を昇降させるアーム移動ユニットを備えていてもよい。
【0157】
第1のランプヒータ152は、基板Wの上面に、基板Wの上面を覆う処理液の液膜L(有機溶剤の液膜)が形成されている状態で使用される。
【0158】
図17に示すように、第1のランプ154が発光すると、すなわち複数の第1の光源158が発光すると、第1のランプ154から発せられた光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)は、第1のランプハウジング155を透過し、スピンチャック105に保持されている基板Wの上面内の第1の照射領域R1に照射される。前述のように有機溶剤としてIPAが採用されている。IPAは、200nm~1100nmの波長の光を略全て透過させる。第1のランプ154から発せられた光の波長が200nm~1100nm(より好ましくは、390nm~800nm)であるため、第1のランプ154から放出された光は、液膜Lに吸収されずに、液膜Lを透過する。そのため、第1のランプハウジング155の外表面から放射された光は、液膜Lを透過し、第1の照射領域R1に照射される。これにより、基板Wの上面(基板Wの表面)において第1の照射領域R1およびその周囲の部分(以下、「第1の加熱領域RH1」という。)が輻射により加熱され、昇温する。基板Wの表面(
図2参照)にはパターン960(
図2参照)が形成されているので、昇温する基板Wの表面からの伝熱によりパターン960が温められ、昇温する。第1の加熱領域RH1に形成されているパターン960が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温することにより、第1の加熱領域RH1に接する有機溶剤が温められ、この有機溶剤が蒸発する。
【0159】
この状態において、
図16に示すように、第3の移動装置163は、回動軸線A4回りに第3のアーム164を回動させることにより、第1のランプヒータ152を水平に移動させる。これにより、第1の加熱領域RH1が基板Wの上面内で移動する。
【0160】
図17に示すように、第1のランプヒータ152に有機溶剤ノズル133が一体化されている。すなわち、第1のランプヒータ152および有機溶剤ノズル133が、上面ヘッド130に含まれている。上面ヘッド130は、第1のランプヒータ152に、有機溶剤ノズル133が一体化された構成を有している。上面ヘッド130は、処理液としての有機溶剤を吐出する処理液ノズルとしての機能と、ランプヒータとしての機能と、の双方を備えている。また、上面ヘッド130には、第1の気体ノズル134が取り付けられている。上面ヘッド130は、ハウジングとして、第1のランプハウジング155を含む。第1のランプハウジング155の内部を有機溶剤ノズル133が鉛直方向に挿通している。また、第1の気体ノズル134が、第1のランプハウジング155の外周155aに鉛直方向に沿う姿勢で取り付けられている。第1のヒートシンク156によって、有機溶剤ノズル133と第1のランプ154とが断熱されており、そのため、有機溶剤ノズル133を流れる有機溶剤は、第1のランプ154からの熱影響を最低限に抑えられている。
【0161】
図16に示すように、第1の気体ノズル134は、第1のランプヒータ152に対し、第3のアーム164の先端側に配置されている。
図18に示すように、第1の気体ノズル134の第1の気体吐出口134aは、下方から見て、第1のランプヒータ152の第1の発光部154Aに隣接している。
図16に二点鎖線で示すように、第1のランプヒータ152が基板Wの上面の外周部に対応して配置されている場合において、第1の気体ノズル134が、第1のランプヒータ152に対し基板Wの回転方向Rの上流側に配置されている。すなわち、基板Wの上面において、第1の気体ノズル134からの気体が吹き付けられる第1の吹き付け領域RB1(
図22E等参照)が、第1のランプヒータ152から光の照射によって加熱される第1の加熱領域RH1に対し、基板Wの回転方向Rの上流側に設定されている。
【0162】
図15に示すように、第2の加熱ユニット171は、第2のランプヒータ172と、第2のランプヒータ172を移動させる第2のヒータ移動ユニット(前述した第1の移動装置139)と、を含む。
図19に示すように、第2のランプヒータ172は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光を基板Wに向けて照射して、輻射によって基板Wを加熱する輻射加熱ヒータである。第2のランプヒータ172は、第2のランプ174と、第2のランプ174を収容する第2のランプハウジング175と、第2のランプハウジング175の内部を冷却するための第2のヒートシンク176と、を含む。また、第2の気体ノズル135が、第2のランプハウジング175の外周175aに鉛直方向に沿う姿勢で取り付けられている。
【0163】
第2のランプ174は、円板状の第2のランプ基板177と、第2のランプ基板177の下面に実装された複数(
図20の例では、6個)の第2の光源178と、を含む。個々の第2の光源178は、200nm~1100nmの範囲の波長の光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)を発する。個々の第2の光源178は、たとえばLEDである。
図20に示すように、複数の第2の光源178は、第2のランプ基板177の下面に配置されている。
図20の例では、6個の第2の光源178が、第1のアーム140の延びる方向に3つずつ2列で並べられている。第2のランプ基板177における第2の光源178の配置密度は略一様であり、第1の光源158の配置密度と略同等である。第2のランプ基板177は、次に述べる第2の底壁180によって連結具190を介して下方から支持されている。複数の第2の光源178によって、水平方向に広がりを有する第2の発光部174Aが構成されている。第2の発光部174Aは、第1の発光部154Aよりも小さい。個々の第2の光源178から発せられる光は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む。個々の第2の光源178から発せられる光の波長は、200nm~1100nmの範囲の波長、より好ましくは、390nm~800nmの範囲の波長である。
【0164】
図19に示すように、第2のランプハウジング175は、略角筒状の第2の側壁179と、略長方形状の第2の底壁180と、を含む。第2の側壁179は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬性を有する材料で形成されている。第2の底壁180は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。第2のランプハウジング175は、平面視で基板Wよりも小さい。
【0165】
第2のヒートシンク176は、第2のヒートシンク本体181と、第2のヒートシンク本体181に冷却流体を供給して、第2のヒートシンク本体181を冷却する第2の冷却機構182と、を含む。第2のヒートシンク本体181は、高い伝熱特性を有する金属(たとえばアルミニウム、鉄、銅等)を用いて容器状に所定の形状に形成されている。第2の冷却機構182は、冷却流体の供給源182aと、供給源182aから冷却流体を第2のヒートシンク本体181に供給する冷却流体供給配管182bと、第2のヒートシンク本体181に供給された冷却流体を供給源182aに戻す冷却流体戻り配管182cと、を含む。
図19の例では、第2の冷却機構182として、冷却気体を冷却流体として第2のヒートシンク本体181に供給している。すなわち、第2のヒートシンク176は、空冷式のヒートシンクである。複数の第2の光源178の発光に伴い、第2のランプ174およびその周囲が加熱される。しかしながら、第2のヒートシンク176により第2のランプハウジング175内が冷却されるので、第2のランプハウジング175内が過度に昇温することを防止できる。第2のヒートシンク176において、冷却流体として、冷却水等の冷却液体が用いられてもよい。
【0166】
図16に示すように、第2のランプヒータ172は、第1のアーム140に取り付けられている。第2のランプヒータ172は、薬液ノズル131よりも、回動軸線A2寄りに配置されている。すなわち、第2のランプヒータ172を移動する第2のヒータ移動ユニットは、第1の移動装置(第2の加熱領域移動ユニット、第2の吹き付け領域移動ユニット)139を含む。第1の移動装置139は、第2のランプヒータ172を所定の高さで保持している。第1の移動装置139は、回動軸線A2回りに第1のアーム140を回動させることにより、第2のランプヒータ172を水平に移動させる。
【0167】
第2のランプ174が発光すると、すなわち複数の第2の光源178が発光すると、
図19に示すように、第2のランプ174から発せられた光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)は、第2のランプハウジング175を透過し、スピンチャック105に保持されている基板Wの上面内の第2の照射領域R2に照射される。前述のように有機溶剤としてIPAが採用されている。IPAは、200nm~1100nmの波長の光を略全て透過させる。第2のランプ174から発せられた光の波長が200nm~1100nm(より好ましくは、390nm~800nm)であるため、第2のランプ174から放出された光は、液膜Lに吸収されずに、液膜Lを透過する。そのため、第2のランプハウジング175の外表面から放射された光は、液膜Lを透過し、第2の照射領域R2に照射される。これにより、基板Wの上面において第2の照射領域R2およびその周囲の部分(以下、「第2の加熱領域RH2」という)に形成されているパターン960(
図2参照)が輻射により加熱され、昇温する。基板Wの表面(
図2参照)にはパターン960が形成されているので、昇温する基板Wの表面からの伝熱によりパターン960が温められ、昇温する。第2の加熱領域RH2に形成されているパターン960が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温することにより、第2の加熱領域RH2に接する有機溶剤が温められ、この有機溶剤が蒸発する。第2の加熱領域RH2は、第1の加熱領域RH1(
図17等参照)よりも小さい。
【0168】
この状態において、
図16に示すように、第1の移動装置139は、回動軸線A2回りに第1のアーム140を回動させることにより、第2のランプヒータ172を水平に移動させる。これにより、基板Wの上面内の一部に形成される第2の加熱領域RH2が基板Wの上面内で移動する。
【0169】
図16に示すように、第2の気体ノズル135は、第2のランプヒータ172に対し、第1のアーム140の先端側に配置されている。
図16に二点鎖線で示すように、第2のランプヒータ172が基板Wの上面の外周部に対応して配置されている場合において、第2の気体ノズル135が、第2のランプヒータ172に対し基板Wの回転方向Rの上流側に配置されている。すなわち、基板Wの上面において、第2の気体ノズル135からの気体が吹き付けられる場合、その吹き付け領域、すなわち第2の吹き付け領域、が、第2のランプヒータ172から光の照射によって加熱される第2の加熱領域RH2(
図22D参照)に対し、基板Wの回転方向Rの上流側に設定されている。
【0170】
図15に示すように、処理カップ107は、基板Wから外方に排除された処理液を受け止める複数のガード184と、複数のガード184によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ183と、複数のガード184および複数のカップ183を取り囲む円筒状の外壁部材188と、を含む。
図15は、4つのガード184と3つのカップ183とが設けられており、最も外側のカップ183が上から3番目のガード184と一体である例を示している。ガード184は、スピンチャック105を取り囲む円筒部185と、円筒部185の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部186と、を含む。複数の天井部186は、上下に重なっており、複数の円筒部185は、同心円状に配置されている。天井部186の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース116を取り囲むガード184の上端184uに相当する。複数のカップ183は、それぞれ、複数の円筒部185の下方に配置されている。カップ183は、ガード184によって下方に案内された処理液を受け止める環状の受液溝を形成している。
【0171】
処理ユニット2Aは、複数のガード184を個別に昇降させるガード昇降ユニット187を含む。ガード昇降ユニット187は、上位置から下位置までの任意の位置にガード184を位置させる。
図15は、2つのガード184が上位置に配置されており、残り2つのガード184が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、ガード184の上端184uがスピンチャック105に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード184の上端184uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0172】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード184が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード184の内面に衝突し、このガード184に対応するカップ183に案内される。これにより、基板Wから排除された処理液がカップ183に集められる。
【0173】
コントローラ3のCPU3A(
図6)は、プログラムに従って、処理ユニット2A(
図15)の各部を制御する。具体的には、CPU3Aは、プログラムに従って、スピンモータ119、チャックピン駆動ユニット120、第1の移動装置139、第2の移動装置144、第3の移動装置163、ガード昇降ユニット187等の動作を制御する。また、コントローラ3は、第1のランプヒータ152、第2のランプヒータ172等に供給される電力を調整する。さらに、コントローラ3は、薬液バルブ137、リンス液バルブ142、有機溶剤バルブ146、第1の気体バルブ148等の開閉を制御するとともに、第1の流量調整バルブ149のアクチュエータを制御して、当該第1の流量調整バルブ149の開度を制御する。コントローラ3は、以降に述べる基板処理方法を実行するようにプログラムされている。
【0174】
<2-2.基板処理方法の基本技術>
次に、表面にパターン960(
図2)が形成された基板Wを、上述した処理ユニット2A(
図15)を有する基板処理装置1(
図1)によって処理する基板処理方法について説明する。
図21はこの基板処理方法について説明するためのフロー図である。
図22A~
図22Fは、基板処理方法が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。
図23A~
図23Dのそれぞれは、
図22B~
図22Eに示す状態の基板を上から見た模式図である。
【0175】
処理ユニット2Aによって基板Wが処理されるときは、チャンバ4の内部に基板Wを搬入する搬入工程(
図21のステップS101)が実行される。具体的には、全てのガード184が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、搬送ロボットCR(
図1参照)のハンドが、基板Wを支持しながらチャンバ4内に進入する。そして、搬送ロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンド上の基板Wを複数のチャックピン117の上に置く。その後、複数のチャックピン117が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。搬送ロボットCRは、基板Wをスピンチャック105の上に置いた後、ハンドをチャンバ4の内部から退避させる。
【0176】
次に、コントローラ3は、スピンモータ119を制御して、基板Wの回転を開始させる(
図21のステップS102)。これにより、基板Wが薬液供給速度(100rpm以上、1000rpm未満)で回転する。
【0177】
次に、薬液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜を形成する薬液供給工程(
図21のステップS103)が実行される。具体的には、コントローラ3は、第1の移動装置139を制御して、薬液ノズル131を待機位置から処理位置に移動させる。その後、コントローラ3は、薬液バルブ137が開いて、薬液ノズル131からの薬液の吐出を開始する。薬液バルブ137が開かれてから所定時間が経過すると、コントローラ3は、薬液バルブ137を閉じる。これにより、薬液ノズル131からの薬液の吐出が停止される。その後、コントローラ3は、第1の移動装置139を制御して、薬液ノズル131を待機位置に移動させる。薬液ノズル131から吐出された薬液は、薬液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成される。薬液ノズル131が薬液を吐出しているとき、コントローラ3は、第1の移動装置139を制御して、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を中央部と外周部との間で移動させてもよいし、基板Wの上面の中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0178】
次に、リンス液の一例であるリンス液を基板Wの上面に供給して、基板W上の薬液を洗い流すリンス液供給工程(
図21のステップS104)が実行される。具体的には、少なくとも一つのガード184が上位置に位置している状態で、コントローラ3は、第2の移動装置144を制御して、リンス液ノズル132を待機位置から処理位置に移動させる。その後、コントローラ3がリンス液バルブ142を開いて、リンス液ノズル132からのリンス液の吐出を開始する。リンス液の吐出が開始される前に、基板Wから排除された処理液を受け止めるガード184を切り換えるために、コントローラ3はガード昇降ユニット187を制御して少なくとも一つのガード184を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ142が開かれてから所定時間が経過すると、コントローラ3はリンス液バルブ142を閉じ、リンス液ノズル132からのリンス液の吐出を停止する。その後、コントローラ3は、第2の移動装置144を制御して、リンス液ノズル132を待機位置に移動させる。
【0179】
次に、基板Wの上面上のリンス液を有機溶剤に置換するために、有機溶剤を基板Wの上面に供給する有機溶剤供給工程(
図21のステップS105)が実行される。
【0180】
具体的には、少なくとも一つのガード184が上位置に位置している状態で、コントローラ3は、スピンチャック105を制御して、基板Wを置換速度で回転させる(基板回転工程)。置換速度は、リンス液供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、コントローラ3は、第3の移動装置163を制御して、有機溶剤ノズル133を含む上面ヘッド130を、待機位置から処理位置に移動させる。有機溶剤ノズル133が処理位置に配置されている状態で、コントローラ3は、有機溶剤バルブ146を開いて、有機溶剤ノズル133からの有機溶剤の吐出を開始する。有機溶剤の吐出が開始される前に、コントローラ3は、基板Wから排除された処理液を受け止めるガード184を切り換えるために、ガード昇降ユニット187を制御して、少なくとも一つのガード184を鉛直に移動させてもよい。
【0181】
有機溶剤ノズル133から吐出された有機溶剤は、置換速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のリンス液は、有機溶剤ノズル133から吐出された有機溶剤に置換される。これにより、
図22Aに示すように、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤の液膜Lが形成される(液膜形成工程)。この基板処理方法では、上面ヘッド130を、有機溶剤ノズル133から吐出された有機溶剤が基板Wの上面の中央部に衝突する中央処理位置で静止させた状態で、有機溶剤の供給が実行される。しかし、コントローラ3が第3の移動装置163を制御して、基板Wの上面に対する有機溶剤の着液位置を中央部と外周部との間で移動させてもよい。
【0182】
その後、液膜Lを基板Wの上面上に保持する有機溶剤パドル工程(
図21のステップS106)が実行される。具体的には、上面ヘッド130が中央処理位置で静止している状態で、コントローラ3が、スピンモータ119を制御して、基板Wの回転速度を置換速度からパドル速度に低下させる。パドル速度は、たとえば、0を超える50rpm以下の速度である。置換速度からパドル速度までの減速は、段階的に実行される。基板Wの回転速度がパドル速度に低下した後、コントローラ3は、有機溶剤バルブ146を閉じて、有機溶剤の吐出を停止する。
【0183】
基板Wの回転速度がパドル速度に低下すると、基板W上の有機溶剤に加わる遠心力が弱まる。そのため、有機溶剤は基板Wの上面から排除されない、もしくは、微量しか排除されない。従って、有機溶剤の吐出が停止された後も、基板Wの上面全域を覆う液膜Lが基板W上に保持される。リンス液を液膜Lに置換した後に、微量のリンス液がパターン960(
図2参照)の間に残っていたとしても、このリンス液は、液膜Lを構成する有機溶剤に溶け込み、有機溶剤中に拡散する。これにより、パターン960の間に残留するリンス液を減らすことができる。
【0184】
次いで、液膜Lが基板Wの上面に形成された後は、上面ヘッド130に含まれる第1のランプヒータ152からの光の照射によって基板Wを加熱することにより、蒸気層形成部VFを、基板Wの上面の中央部に形成する蒸気層形成部形成工程(
図21のステップS107)が実行される。蒸気層形成部VFは、
図22Bに示すように、有機溶剤と基板Wの上面との間に気体膜VLが形成されかつ気体膜VL上に液膜Lが保持された領域である。
【0185】
具体的には、上面ヘッド130が中央処理位置で静止している状態で、コントローラ3は、パドル速度での基板Wの回転を維持しながら第1のランプヒータ152への電力の供給を開始して、第1のランプヒータ152に含まれる複数の第1の光源158の発光を開始させる。複数の第1の光源158が発光すると、
図22Bに示すように、第1のランプヒータ152から光が放出される。第1のランプヒータ152から放出された光は、液膜Lに吸収されずに、液膜Lを透過し、第1の照射領域R1に照射される。これにより、第1の加熱領域RH1が輻射により加熱される。そして、第1の加熱領域RH1のパターン960が第1の加熱領域RH1によって温められ、このパターン960が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温させられる。これにより、第1の加熱領域RH1のパターン960に接する有機溶剤が温められる。第1の加熱領域RH1は、基板Wの上面の中央部に設定され、かつ基板Wの上面の外周部に設定されていない。
【0186】
また、第1の加熱領域RH1の温度(すなわち、第1の加熱領域RH1に形成されているパターン960の温度)が有機溶剤の沸点以上である場合には、有機溶剤が液膜Lと基板Wとの界面で蒸発し、多数の小さな気泡が有機溶剤と基板Wの上面との間に介在する。有機溶剤が液膜Lと基板Wとの界面のあらゆる場所で蒸発することにより、有機溶剤の蒸気を含む気体膜VL(
図22B参照)が液膜Lと基板Wとの間に形成される。これにより、有機溶剤が基板Wの上面から離れ、液膜Lが基板Wの上面から浮上する。そして、液膜Lが気体膜VL上に保持される。このとき、基板W上の液膜Lに働く摩擦抵抗は、零と見なせるほど小さい。すなわち、第1のランプヒータ152による第1の加熱領域RH1の加熱により、
図23Aに示すように、基板Wの上面の中央部に蒸気層形成部VFが形成される。蒸気層形成部VFは、有機溶剤と基板Wの上面との間に気体膜VLが形成されかつ気体膜VL上に液膜Lが保持された領域である。
【0187】
一方、基板Wの上面において第1の加熱領域RH1の外側の領域は、加熱温度まで達していない。そのため、気体膜VLが全く形成されないか、形成される気体膜VLの量が不十分であり、気体膜VLによって液膜Lを十分な高さ位置に保つことができない。そのため、基板Wの上面において第1の加熱領域RH1の外側の領域には、蒸気層形成部VFは形成されない。基板Wが回転しているため、蒸気層形成部VFは、基板Wの上面の中央部を覆うほぼ円形の領域である。
【0188】
基板Wが回転しているため、蒸気層形成部VFの液膜Lには遠心力が加わる。また、基板Wの上面において、第1の加熱領域RH1と、第1の加熱領域RH1の外側の領域との間には大きな温度差が生じる。この温度差に起因して、基板Wの上面には、中央部から外周部に向けて流れる熱対流が形成される。これら遠心力や熱対流によって蒸気層形成部VFの液膜Lの中央部に初期開口部Hが形成される。
【0189】
基板Wの回転速度がパドル速度であるため、蒸気層形成部VFの液膜Lに加わる遠心力は弱い。また、基板Wの上面に発生する熱対流も比較的弱い。しかし、蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜Lに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、これら遠心力および熱対流によって、液膜Lに含まれる有機溶剤が気体の圧力で外方に押し退けられる。これにより、液膜Lの中央部の厚みが減少し、
図22Cおよび
図23Bに示すように、液膜Lの中央部にほぼ円形の初期開口部Hが形成される。初期開口部Hは、基板Wの上面を露出させる露出穴である。初期開口部Hの形成によって液膜Lが部分的に除去されることにより、蒸気層形成部VFが円環状を呈する。そして、蒸気層形成部VFの液膜Lと初期開口部Hとの間、すなわち蒸気層形成部VFの液膜Lの内周に気液界面GLが形成される。
【0190】
次いで、基板W上の初期開口部H(
図22Cおよび
図23B)への気体の吹き付けによって、穴OP(
図23C)が形成される。具体的には、コントローラ3が第1の気体バルブ148(
図15)を開くことによって、第1の気体ノズル134の第1の気体吐出口134a(
図22C)から気体が吐出され始める(第1の吹き付け工程)。第1の気体ノズル134に供給される気体の温度は、室温であってもよいし、室温より高くてもよい。第1の気体ノズル134から吐出された気体は、基板Wの上面の中央部に設定された第1の吹き付け領域RB1において液膜Lに衝突した後、液膜Lの表面に沿ってあらゆる方向に外方に流れる。これにより、基板Wの上面の中央部から外方に流れる気流が形成される。第1の気体ノズル134に供給される気体の流量は、たとえば5L/minである。蒸気層形成部VFの内周に対し内側に設定された第1の吹き付け領域RB1に気体が吹き付けられることにより、蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周に向けて押される。これにより初期開口部Hが拡張されることで、穴OPが形成される(
図21のステップS108)。
【0191】
次いで、
図22Dおよび
図23Cに示すように、蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程(
図21のステップS109)が実行される。この蒸気層形成部移動工程(
図21のステップS109)は、蒸気層形成部VFの外周を拡げる外周拡大工程と、穴OPの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)を拡げる穴拡大工程と、を含む。穴拡大工程は、外周拡大工程に並行して実行される。
【0192】
蒸気層形成部移動工程(
図21のステップS109)の開始に先立って、コントローラ3が、スピンモータ119を制御して、基板Wの回転速度をパドル速度から形成部移動速度に調整する。形成部移動速度は、たとえば、0を超える100rpm以下の速度である。形成部移動速度は、パドル速度と同じ速度であってもよい。
【0193】
蒸気層形成部移動工程(
図21のステップS109)において、コントローラ3は、第1の気体ノズル134からの気体を吐出しながらかつ第1のランプヒータ152からの光を照射しながら、第3の移動装置163を制御して、第1のランプヒータ152を含む上面ヘッド130を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第1の加熱領域RH1が基板Wの上面内を、平面視で基板Wの中心を通る円弧状の軌跡に沿って、基板Wの外周に向けて移動する。基板Wが回転している状態で、第1の加熱領域RH1を基板Wの外周に向けて移動するので、第1のランプヒータ152によって基板Wの内周全域を良好に加熱できる。第1の加熱領域RH1の移動に伴って、円環状の蒸気層形成部VFの外周が拡大する(外周拡大工程)。
【0194】
また、第1の気体ノズル134が第1のランプヒータ152に同伴移動可能に設けられているので、第1の吹き付け領域RB1が、第1の加熱領域RH1との間で一定の距離を保ちながら移動する(第1の吹き付け領域移動工程)。第1の加熱領域RH1の基板Wの外周への移動に同伴して、第1の吹き付け領域RB1が基板Wの外周に向けて移動する。第1の吹き付け領域RB1を基板Wの外周に向けて移動させることにより、穴OPの外縁すなわち蒸気層形成部VFの内周が拡げられる(穴拡大工程)。蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜Lに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、気体の流れによる小さな押し力によって、蒸気層形成部VFの内周を基板Wの外周に向けてスムーズに移動させることができる。第1の吹き付け領域RB1に気体を吹き付けながら、第1の吹き付け領域RB1を基板Wの外周に向けて移動させることによって、蒸気層形成部VFの内周位置を高精度に制御しながら蒸気層形成部VFの内周を拡げることができる。蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターン960の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
【0195】
また、第1の吹き付け領域RB1が第1の加熱領域RH1に対し、基板Wの回転方向R(
図16)の上流側に設定されている。そのため、発生する気流の影響を最小限に抑制しながら、蒸気層形成部VFの内周に気体を吹き付けることができる。これにより、蒸気層形成部VFの内周を良好に拡大させることができる。
【0196】
また、第1の気体吐出口134aが、下方から見て第1の発光部154Aに隣り合っているので、第1の発光部154Aによって加熱される第1の加熱領域RH1によって形成される円環状の蒸気層形成部VFの内周に、気体を吹き付けることができる。
【0197】
また、穴拡大工程における穴OPの拡大は、気体の吹き付けだけでなく、基板Wの上面上の有機溶剤に、基板Wの回転による遠心力が働くことによっても促進される。そして、蒸気層形成部VFの外側の液膜Lは、基板Wの中央部側から移動してくる有機溶剤によって外方に押され、基板W外に排出される。
【0198】
この基板処理方法では、蒸気層形成部移動工程(
図21のステップS109)の途中から、第1のランプヒータ152からの光の照射のみによらず、第2のランプヒータ172からの光の照射によっても基板Wを加熱する(
図21のステップS109)。この第2のランプヒータ172を用いた基板Wの加熱は、第1のランプヒータ152からの光の照射による基板Wの加熱を補助(アシスト)している(補助加熱工程)。
【0199】
第2のランプヒータ172からの光の照射の開始に先立って、コントローラ3は、第1の移動装置139を制御して、第2のランプヒータ172を待機位置から処理位置に移動させ、第2のランプヒータ172を所定の照射開始位置PS1に配置する。
【0200】
第1のランプヒータ152の照射開始から所定の期間が経過して、
図22Dに示すように第1の加熱領域RH1が所定の基準位置RPに達すると、コントローラ3は、第2のランプヒータ172への電力の供給を開始して、第2のランプヒータ172に含まれる複数の第2の光源178の発光を開始する(
図21のステップS110)。これにより、第2のランプヒータ172による基板Wの加熱が開始される。複数の第2の光源178が発光すると、第2のランプヒータ172から光が放出され、第2のランプヒータ172の下方の領域に光が照射される。第2のランプヒータ172から放出された光は、液膜Lに吸収されずに、液膜Lを透過し、第2の照射領域R2に照射される。これにより、第2の加熱領域RH2が輻射により加熱される。そして、第2の加熱領域RH2のパターン960が第2の加熱領域RH2によって温められ、このパターン960が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温させられる。これにより、第2の加熱領域RH2のパターン960に接する有機溶剤が温められる。
【0201】
照射開始位置PS1に配置された第2のランプヒータ172による第2の加熱領域RH2が、基準位置RPに位置する第1の加熱領域RH1と回転方向Rに関して離隔している。また、照射開始位置PS1に配置された第2のランプヒータ172による第2の加熱領域RH2の内周端と回転軸線A1との間の距離が、基準位置RPに位置する第1の加熱領域RH1の内周端と回転軸線A1との間の距離と、略同距離である。
【0202】
また、第2の加熱領域RH2は、第1の加熱領域RH1と離隔していることが望ましいが、第1の加熱領域RH1と全部が重複していなければ、一部が重複していてもよい。すなわち、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2の少なくとも一部が重複しなくてもよい。
【0203】
そして、コントローラ3は、第2のランプヒータ172によって基板Wを加熱しながら、第1の移動装置139を制御して、第2のランプヒータ172を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第2の照射領域R2が基板Wの上面内を所定の円弧状の軌跡に沿って基板Wの外周に向けて移動する。
【0204】
このとき、第1のアーム140の旋回速度は、第3のアーム164の旋回速度と同等である。そのため、第2の加熱領域RH2の基板Wの径方向の移動速度が、第1の加熱領域RH1の基板Wの径方向の移動速度と同じである。すなわち、第2の加熱領域RH2の内周端と回転軸線A1との間の距離が第1の加熱領域RH1の内周端と回転軸線A1との間の距離と略同距離に保たれながら、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2が移動する。基板Wが回転している状態で、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2を基板Wの外周に向けて移動するので、第1のランプヒータ152および第2のランプヒータ172によって基板Wの上面全域を走査しながら良好に加熱できる。
【0205】
蒸気層形成部VFの外周および穴OPの外縁が拡大することにより、蒸気層形成部VFの全域において液膜Lが良好に浮上しながら、蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向けて移動する。このとき、蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターン960の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
【0206】
蒸気層形成部VFの外周および穴OPの外縁がさらに拡大することにより、
図22Eおよび
図23Dに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜Lが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、
図22Fに示すように、第1の吹き付け領域RB1が基板Wの外周部に達することにより、穴OPの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜Lが基板Wから排出される。
【0207】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、基板Wの上面全域が露出する。穴OPが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
【0208】
円環状の蒸気層形成部VFの移動によって、蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLをパターン960に接触させることなく、液膜Lを基板Wから排除できる。これにより、有機溶剤が基板W上のパターン960に及ぼす表面張力を抑制できるので、パターン960の倒壊を抑制または防止できる。
【0209】
第1のランプヒータ152の照射開始から予め定める加熱期間が経過すると、コントローラ3は、第1のランプヒータ152および第2のランプヒータ172への電力の供給を停止して第1のランプヒータ152および第2のランプヒータ172の発光を停止させる。また、コントローラ3は、スピンモータ119を制御して、基板Wの回転を停止させる(
図21のステップS111)。
【0210】
基板Wの回転停止後に、チャンバ4から基板Wを搬出する搬出工程(
図21のステップS112)が実行される。具体的には、コントローラ3は、ガード昇降ユニット187を制御して、全てのガード184を下位置まで下降させる。また、コントローラ3は、第1の気体バルブ148を閉じて第1の気体ノズル134からの気体の吐出を停止する。また、コントローラ3は、第3の移動装置163を制御して、上面ヘッド130を、待機位置まで退避させる。また、コントローラ3は、第1の移動装置139を制御して、第2のランプヒータ172を、待機位置まで退避させる。
【0211】
その後、搬送ロボットCRのハンドがチャンバ4内に進入する。チャックピン駆動ユニット120が複数のチャックピン117による基板Wの把持を解除した後、搬送ロボットCRは、スピンチャック105上の基板Wをハンドで支持する。その後、搬送ロボットCRは、基板Wをハンドで支持しながら、ハンドをチャンバ4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバ4から搬出される。
【0212】
<2-3.基板処理方法のばらつき抑制技術>
複数の基板Wを処理するために上記基板処理方法のステップS101~S112(
図21)が繰り返される。その際に特にステップS109のばらつきを抑制するための技術について説明する。この技術においても、前述した実施の形態1の技術と類似して、ある特定の基板への基板処理において生じた状況が、他の少なくとも1つの基板(典型的には複数の基板)への基板処理の条件設定において参照され、これにより基板処理のプロセスばらつきが抑制される。以下において、上述した「特定の基板」を基準基板(または第1基板W)と称することがあり、上述した「他の少なくとも1つの基板」を通常基板(または第2基板W)と称することがある。また、基準基板への基板処理を基準基板処理と称することがあり、上述した通常基板への基板処理を通常基板処理と称することがある。なお、基準基板と通常基板とは、ほぼ共通の構成を有していてよい。また基準基板処理と通常基板処理とは、処理条件のパラメータ値の相違をのぞき、ほぼ共通の基板処理であってよい。
【0213】
はじめに、基準基板処理(基準基板としての基板Wへの基板処理)へのステップS105~S109(
図21)に対応して、ステップ100j(
図24)が行われる。以下、その具体的方法について説明する。
【0214】
ステップS101j(
図24)にて、基準基板である第1基板W上に有機溶剤の第1液膜Lが形成される(
図22A参照)。言い換えれば、第1基板Wに対して、前述したステップS105~S106(
図21)が行われる。
【0215】
次に、ステップS102j(
図24)にて、第1基板Wを加熱することによって、第1液膜Lを保持する第1気体膜VLが形成される(
図22B参照)。言い換えれば、第1基板Wに対して、前述したステップS107(
図21)が行われる。ステップS102j(
図24)は、第1基板Wを加熱するために基板Wへ第1のランプヒータ152(
図22B)から光を照射するステップS102jLを含む。
【0216】
次に、ステップS130j(
図24)にて、第1基板Wが回転していることによる遠心力と、第1基板Wの中央部が局所的に加熱されていることによる熱対流とが、第1液膜Lに対して作用することによって、初期開口部H(
図22Cおよび
図23B)が形成される。次に、ステップS103j(
図24)にて、上記の初期開口部Hへ、予め定められた条件(第1条件)で不活性ガスを吐出することによって、第1液膜Lに第1穴OPが形成される。
【0217】
次に、ステップS104j(
図24)にて、前述した第1条件と異なる予め定められた第2条件で、基準基板としての第1基板Wへ不活性ガスを吐出することによって、第1穴OP(
図22Dおよび
図23C)が拡張される。具体的には、不活性ガスを吐出しつつかつランプヒータ152から光を照射しながら、第2条件においては上面ヘッド130が基板Wの外周に向けて水平に移動される(
図22D参照)。これにより、加熱領域RH1が基板Wの上面内を、平面視で基板Wの中心を通る円弧状の軌跡に沿って、基板Wの外周に向けて移動する(
図23C参照)。また加熱領域RH1の基板Wの外周への移動に同伴して、不活性ガスの吹き付け領域が基板Wの外周に向けて移動する。これにより、第1穴OPの外周が拡大される。外周の拡大は、基板Wの上面上の有機溶剤に、基板Wの回転による遠心力が働くことによっても促進される。
【0218】
次に、ステップS105jおよびステップS111j(
図24)が、ステップS105hおよびステップS111h(
図10:実施の形態1)と同様に行われる。なお、ステップS105jにおける画像の取得は、前述した実施の形態1と同様、予め定められた時間が基準時点から経過した時点でなされてよい。基準時点は、基板処理方法における特定の時点であり、本実施の形態2においては、第1の吹き付け領域RB1がスキャンされ始める時点(言い換えれば、上面ヘッド130がスキャンされ始める時点)であってよい。
【0219】
ステップS121j(
図24)にて、予め定められた第3条件で第1基板Wへ不活性ガスを吐出することによって、ステップS104jに引き続き穴OPがさらに拡張される。第3条件は、第1基板Wへ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含んでよい。また第3条件は、第1基板Wの中央部から外周部へ向かっての上面ヘッド130の移動速度(言い換えれば、上面ヘッド130のスキャン速度)の設定条件を含んでよい。また第3条件は、基板Wの回転速度の設定条件を含んでよい。また第3条件は、ランプヒータ152の出力の設定条件を含んでよい。最終的に上面ヘッド130は基板Wの外周部に達するまで移動され、これにより上面S2からIPAの液膜Lが除去される。
【0220】
以上により、基準基板としての第1基板Wへの乾燥処理(ステップS100j(
図24))が完了される。すなわち基準基板処理(基準基板への処理)が終了する。
【0221】
上述した実施の形態1と同様、上述した基準基板処理後に、通常基板処理(通常基板としての第2基板Wへの基板処理)が行われる。上記のように基準基板(第1基板W)に対してはステップS100j(
図24)が行われるが、通常基板(第2基板W)に対してはステップS100k(
図25)が行われる。以下、このステップS100kの詳細について説明する。
【0222】
まず、前述したステップS101j(
図24)と同様のステップS101k(
図25)にて、通常基板である第2基板W上に有機溶剤の第2液膜Lが形成される(
図22A参照)。次に、前述したステップS102j(
図24)と同様のステップS102k(
図25)により第2基板Wを加熱することによって、第2液膜Lを保持する第2気体膜VLが形成される(
図22B参照)。ステップS102k(
図25)は、第2基板Wを加熱するために第2基板Wへ第1のランプヒータ152(
図22B)から光を照射するステップS102kLを含む。次に、前述したステップS130j(
図24)と同様のステップS130k(
図25)により、第2液膜Lに初期開口部Hが形成される。次に、前述したステップS103j(
図24)と同様のステップS103k(
図25)により、第2液膜Lに第2穴OP(
図22Dおよび
図23C)が形成される。次に、前述したステップS104j(
図24)と同様のステップS104k(
図25)により、第1穴OPが拡張される。次に、前述したステップS105j(
図24)と同様のステップS105k(
図25)により、第2画像が取得される。次に、ステップS111k(
図25)がステップS111i(
図11:実施の形態1)と同様に行われる。
【0223】
次に、ステップS112k(
図25)にて、第2穴OPの拡張の、上記のように評価された進行状況に基づいて、第2基板Wの上面へ不活性ガスを吐出するための第3条件が調整される。この調整は、コントローラ3によって構成される条件調整部(図示せず)によって実行されてよい。次に、ステップS121k(
図25)にて、上記のように調整された第3条件で第2基板Wの上面へ不活性ガスを吐出することによって、第2穴OPがさらに拡張される。
【0224】
上記ステップS111k(
図25)における比較の結果として第2穴OPが過大と判断された場合、第3条件は、第2穴OPの拡張が抑制されるように調整される。たとえば、第2基板Wへ吹き付けられる不活性ガスの流量が、より小さく調整される。この調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、上記比較の結果から算出された量であってもよい。逆に、第2穴OPが過小と判断された場合は、第3条件は、第2穴OPの拡張が促進されるように調整される。たとえば、不活性ガスの流量が、より大きく調整される。
【0225】
<2-4.効果>
本実施の形態2によれば、所定条件(第2条件)で基準基板の上面へ不活性ガスを吐出したことによる第1穴OPの拡張の進行状況を基準として、上記所定条件(第2条件)で通常基板の上面S2へ不活性ガスを吐出したことによる第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。この進行状況に基づいて第3条件(たとえば不活性ガスの流量)を調整することによって、通常基板の第2穴OPのさらなる拡張の進行速度を、標準的な進行速度へ、より近づけることができる。これにより、通常基板の上面上における液膜Lの第2穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。よって、当該ばらつきに起因しての通常基板の上面への悪影響を抑制することができる。具体的には、通常基板の上面上に設けられているパターン960の倒壊を抑制することができる。
【0226】
<2-5.変形例>
図22Eを参照して、蒸気層形成部VFの内周の内側に向けて、第1の気体ノズル134からだけでなく、第2の気体ノズル135からも気体が吹き付けられてよい。この場合、上記第3条件は、第1の気体ノズル134からの吹き付けに関連するだけでなく第2の気体ノズル135からの吹き付けにも関連した条件であってよい。
【0227】
<3.実施の形態3>
本実施の形態3に係る基板処理方法は、上記実施の形態2で用いられる処理ユニット2Aと同様のものを用いて実施することができる。ただし本実施の形態3においては、不活性ガス吐出機構(具体的には、第1の気体ノズル134、第1の気体配管147、第1の気体バルブ148、第1の流量調整バルブ149、第2の気体ノズル135、第2の気体配管197、第2の気体バルブ198および第2の流量調整バルブ199)は省略されていてよい。
【0228】
本実施の形態においては、前述した実施の形態2とは異なり、ステップS108~S110(
図21)が、不活性ガスの吐出を利用することなく行われる。これ対応して、本実施の形態3においては、前述した実施の形態2におけるステップS100jおよびステップS100k(
図24および
図25)のそれぞれに代わって、ステップS100mおよびステップS100n(
図26および
図27)が行われる。
【0229】
ステップS100m(
図26)において、まずステップS101jおよびステップS102jが実施の形態2と同様に行われる。ステップS102jの後、光の照射を継続することによって、実施の形態2において説明した初期開口部Hが、本実施の形態3における第1穴OPとして形成される(ステップS103m)。言い換えれば、本実施の形態3においては、上記実施の形態2で説明した初期開口部Hの形成を、穴OPの形成とみなす。続いて、ステップS104m、ステップS105m、ステップS111m、およびステップS121mのそれぞれが、実施の形態2におけるステップS104j、ステップS105j、ステップS111jおよびステップS121j(
図24)と同様に、ただし本実施の形態においては不活性ガスの吐出を伴うことなく、行われる。
【0230】
同様に、ステップS100n(
図27)において、まずステップS101kおよびステップS102kが実施の形態2と同様に行われる。ステップS102kの後、光の照射を継続することによって、実施の形態2において説明した初期開口部Hが、本実施の形態3における第2穴OPとして形成される(ステップS103n)。言い換えれば、本実施の形態3においては、上記実施の形態2で説明した初期開口部Hの形成を、穴OPの形成とみなす。続いて、ステップS104n、ステップS105n、ステップS111n、ステップ112nおよびステップS121nのそれぞれが、実施の形態2におけるステップS104k、ステップS105k、ステップS111k、ステップ112kおよびステップS121k(
図25)と同様に、ただし本実施の形態においては不活性ガスの吐出を伴うことなく、行われる。
【0231】
なお本実施の形態3においては、穴OPの拡張の進行を調整するための前記第3条件は、第1のランプヒータ152から基板Wに照射される光の強度の設定条件を含んでよい。また第3条件は、基板Wの中央部から外周部へ向かっての第1のランプヒータ152の移動速度(言い換えれば、第1のランプヒータ152のスキャン速度)の設定条件を含んでよい。また第3条件は、基板Wの回転速度の設定条件を含んでよい。
【0232】
<4.実施の形態4>
<4-1.基板処理装置の構成>
本実施の形態4においては基板処理装置1(
図1)に、処理ユニット2(
図1)に代わって処理ユニット2B(
図28および
図29)が備えられている。
図28および
図29のそれぞれは、処理ユニット2Bの構成を概略的に示す平面図および断面図である。
図28および
図29に示すように、処理ユニット2Bは、チャンバ4、基板保持部1020、回転機構1030、流体供給部1040、処理液捕集部1050、加熱部1060、撮像部IM、およびコントローラ3を備えている。
【0233】
チャンバ4は、基板Wを処理するための処理空間1011を内包する筐体である。チャンバ4は、処理空間1011の側部を取り囲む側壁1012と、処理空間1011の上部を覆う天板部1013と、処理空間1011の下部を覆う底板部1014と、を有する。基板保持部1020、回転機構1030、流体供給部1040、処理液捕集部1050、加熱部1060、および撮像部IMは、チャンバ4の内部に収容される。側壁1012の一部には、チャンバ4内への基板Wの搬入およびチャンバ4から基板Wの搬出を行うための搬入出口と、搬入出口を開閉するシャッタとが、設けられている(いずれも図示省略)。
図29に示すように、チャンバ4の天板部1013には、ファンフィルタユニット(FFU)1015が設けられている。ファンフィルタユニット1015は、HEPAフィルタ等の集塵フィルタと、気流を発生させるファンとを有する。ファンフィルタユニット1015を動作させると、基板処理装置1(
図1)が設置されるクリーンルーム内の空気が、ファンフィルタユニット1015に取り込まれ、集塵フィルタにより清浄化されて、チャンバ4内の処理空間1011へ供給される。これにより、チャンバ4内の処理空間1011に、清浄な空気のダウンフローが形成される。また、側壁1012の下部の一部には、排気ダクト1016が接続されている。ファンフィルタユニット1015から供給された空気は、チャンバ4の内部においてダウンフローを形成した後、排気ダクト1016を通ってチャンバ4の外部へ排出される。
【0234】
基板保持部1020は、チャンバ4の内部において、基板Wを水平に(法線が鉛直方向を向く姿勢で)保持する機構である。
図2および
図29に示すように、基板保持部1020は、円板状のスピンベース1021と、複数のチャックピン1022とを有する。複数のチャックピン1022は、スピンベース1021の上面の外周部に沿って、等角度間隔で設けられている。基板Wは、パターンが形成される被処理面を上側に向けた状態で、複数のチャックピン1022に保持される。各チャックピン1022は、基板Wの周縁部の下面および外周端面に接触し、スピンベース1021の上面から空隙を介して上方の位置に、基板Wを支持する。スピンベース1021の内部には、複数のチャックピン1022の位置を切り替えるためのチャックピン切替機構1023が設けられている。チャックピン切替機構1023は、複数のチャックピン1022を、基板Wを保持する保持位置と、基板Wの保持を解除する解除位置と、の間で切り替える。
【0235】
回転機構1030は、基板保持部1020を回転させるための機構である。回転機構1030は、スピンベース1021の下方に設けられたモータカバー1031の内部に収容されている。
図29中に破線で示したように、回転機構1030は、スピンモータ1032と支持軸1033とを有する。支持軸1033は、鉛直方向に延び、その下端部がスピンモータ1032に接続されるとともに、上端部がスピンベース1021の下面の中央に固定される。スピンモータ1032を駆動させると、支持軸1033がその軸芯1330を中心として回転する。そして、支持軸1033と共に、基板保持部1020および基板保持部1020に保持された基板Wも、軸芯1330を中心として回転する。
【0236】
処理液捕集部1050は、使用後の処理液を捕集する部位である。
図29に示すように、処理液捕集部1050は、内カップ1051、中カップ1052、および外カップ1053を有する。内カップ1051、中カップ1052、および外カップ1053は、図示を省略した昇降機構により、互いに独立して昇降移動することが可能である。内カップ1051は、基板保持部1020の周囲を包囲する円環状の第1案内板1510を有する。中カップ1052は、第1案内板1510の外側かつ上側に位置する円環状の第2案内板1520を有する。外カップ1053は、第2案内板1520の外側かつ上側に位置する円環状の第3案内板1530を有する。また、内カップ1051の底部は、中カップ1052および外カップ1053の下方まで広がっている。そして、当該底部の上面には、内側から順に、第1排液溝1511、第2排液溝1512、および第3排液溝1513が設けられている。流体供給部1040から基板Wの上面に供給された処理液は、基板Wの回転による遠心力、または後述する乾燥処理での窒素ガスの吹き付けによって、外側へ飛散する。そして、基板Wから飛散した処理液は、第1案内板1510、第2案内板1520、および第3案内板1530のいずれかの内側に捕集される。第1案内板1510の内側に捕集された処理液は、第1排液溝1511を通って、処理ユニット2Bの外部へ排出される。第2案内板1520の内側に捕集された処理液は、第2排液溝1512を通って、処理ユニット2Bの外部へ排出される。第3案内板1530の内側に捕集された処理液は、第3排液溝1513を通って、処理ユニット2Bの外部へ排出される。このように、この処理ユニット2Bは、処理液の排出経路を複数有する。このため、基板に供給された処理液を、種類毎に分別して回収できる。従って、回収された処理液の廃棄や再生処理も、各処理液の性質に応じて別々に行うことができる。
【0237】
加熱部1060は、後述する乾燥処理において、基板Wを加熱する加熱手段である。本実施の形態の加熱部1060は、円板状のホットプレート1061と、発熱源となるヒータ1062とを有する。ホットプレート1061は、スピンベース1021の上面と、チャックピン1022に保持される基板Wの下面との間に、配置されている。ヒータ1062は、ホットプレート1061の内部に埋め込まれている。ヒータ1062には、たとえば、通電により発熱するニクロム線等の電熱線が用いられる。ヒータ1062に通電すると、ホットプレート1061が、環境温度よりも高い温度に加熱される。また処理ユニット2Bは、ホットプレート1061を昇降移動させる昇降機構(図示せず)をさらに備えている。これによりホットプレート1061は、上位置および下位置に配置され得る。上位置にあるホットプレート1061は、基板Wの下面に接触することによって基板Wを加熱する。下位置にあるホットプレート1061は、基板Wから下方へ十分に下方へ離れることによって、基板Wが実質的に加熱されることを避ける。
【0238】
流体供給部1040は、基板保持部1020に保持された基板Wの上面に、処理液および不活性ガスを供給する機構である。
図2および
図29に示すように、流体供給部1040は、第1ノズル1041、第2ノズル1042、および第3ノズル1043を有する。第1ノズル1041は、第1ノズルアーム1411と、第1ノズルアーム1411の先端に設けられた第1ノズルヘッド1412と、第1ノズルモータ1413とを有する。第2ノズル1042は、第2ノズルアーム1421と、第2ノズルアーム1421の先端に設けられた第2ノズルヘッド1422と、第2ノズルモータ1423とを有する。第3ノズル1043は、第3ノズルアーム1431と、第3ノズルアーム1431の先端に設けられた第3ノズルヘッド1432と、第3ノズルモータ1433とを有する。各ノズルアーム1411,1421,1431は、ノズルモータ1413,1423,1433の駆動により、
図2中の矢印のように、各ノズルアーム1411,1421,1431の基端部を中心として、水平方向に個別に回動する。これにより、各ノズルヘッド1412,1422,1432を、基板保持部1020に保持された基板Wの上方の処理位置と、処理液捕集部1050よりも外側の退避位置との間で、移動させることができる。
【0239】
図30は、第1ノズルヘッド1412に接続される給液部の一例を示した図である。
図30の例では、第1ノズルヘッド1412が、薬液配管1414を介して、薬液供給源1415に接続されている。薬液配管1414の経路途中には、薬液用バルブ1416が介挿されている。このため、第1ノズルヘッド1412を処理位置に配置した状態で、薬液用バルブ1416を開放すると、薬液供給源1415から薬液配管1414を通って第1ノズルヘッド1412に、薬液が供給される。そして、第1ノズルヘッド1412から基板Wの上面に向けて、薬液が吐出される。第1ノズルヘッド1412から吐出される薬液の例としては、たとえば、SPM洗浄液(硫酸および過酸化水素水の混合液)、SC1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、および純水の混合液)、SC2洗浄液(塩酸、過酸化水素水、および純水の混合液)、DHF洗浄液(希フッ酸)などを挙げることができる。
【0240】
図31は、第2ノズルヘッド1422に接続される給液部の一例を示した図である。
図31の例では、第2ノズルヘッド1422が、純水配管1424を介して、純水供給源1425に接続されている。純水配管1424の経路途中には、純水用バルブ1426が介挿されている。このため、第2ノズルヘッド1422を処理位置に配置した状態で、純水用バルブ1426を開放すると、純水供給源1425から純水配管1424を通って第2ノズルヘッド1422に、純水(脱イオン水)が供給される。そして、第2ノズルヘッド1422から基板Wの上面に向けて、純水が吐出される。
【0241】
図32は、第3ノズルヘッド1432に接続される給液部および給気部の一例を示した図である。
図32の例では、第3ノズルヘッド1432は、IPA吐出口1432a、垂直吹出口1432b、および傾斜吹出口1432cを有する。
【0242】
IPA吐出口1432aは、IPA配管1434aを介して、IPA供給源1435aに接続されている。IPA配管1434aの経路途中には、IPA用バルブ1436aが介挿されている。このため、第3ノズルヘッド1432を処理位置に配置した状態で、IPA用バルブ1436aを開放すると、IPA供給源1435aからIPA配管1434aを通って第3ノズルヘッド1432に、有機溶剤であるIPA(イソプロピルアルコール)が供給される。そして、第3ノズルヘッド1432のIPA吐出口1432aから基板Wの上面に向けて、IPAが吐出される。
【0243】
垂直吹出口1432bは、第1窒素ガス配管1434bを介して、第1窒素ガス供給源1435bに接続されている。第1窒素ガス配管1434bの経路途中には、垂直吹出用バルブ1436bが介挿されている。このため、第3ノズルヘッド1432を処理位置に配置した状態で、垂直吹出用バルブ1436bを開放すると、第1窒素ガス供給源1435bから第1窒素ガス配管1434bを通って第3ノズルヘッド1432に、不活性ガスである窒素ガスが供給される。そして、第3ノズルヘッド1432の垂直吹出口1432bから基板Wの上面に向けて、窒素ガスが下向きに吹き付けられる。
【0244】
傾斜吹出口1432cは、第2窒素ガス配管1434cを介して、第2窒素ガス供給源1435cに接続されている。第2窒素ガス配管1434cの経路途中には、傾斜吹出用バルブ1436cが介挿されている。このため、第3ノズルヘッド1432を処理位置に配置した状態で、傾斜吹出用バルブ1436cを開放すると、第2窒素ガス供給源1435cから第2窒素ガス配管1434cを通って第3ノズルヘッド1432に、不活性ガスである窒素ガスが供給される。そして、第3ノズルヘッド1432の傾斜吹出口1432cから基板Wの上面に向けて、窒素ガスが外向きかつ斜め下向きに吹き付けられる。
【0245】
ただし、各ノズル1041~1043は、複数種類の処理液を切り替えて吐出できるようになっていてもよい。また、処理ユニット2Bに設けられるノズルの数は、3本に限定されるものではなく、1本、2本、または4本以上であってもよい。
【0246】
<4-2.基板処理方法>
以下、本実施の形態における基板処理方法について説明する。この方法においては、
図33に示された基板処理が繰り返される。その際に、前述した実施の形態1~3の場合と類似して、ある特定の基板への基板処理において生じた状況が、他の少なくとも1つの基板への基板処理の条件設定において参照され、これにより基板処理のプロセスばらつきが抑制される。以下において、上述した「特定の基板」を基準基板(または第1基板W)と称することがあり、上述した「他の少なくとも1つの基板」を通常基板(または第2基板W)と称することがある。また、基準基板への基板処理を基準基板処理と称することがあり、上述した通常基板への基板処理を通常基板処理と称することがある。なお、基準基板と通常基板とは、ほぼ共通の構成を有していてよい。また基準基板処理と通常基板処理とは、処理条件のパラメータ値の相違をのぞき、ほぼ共通の基板処理であってよい。
【0247】
はじめに、基準基板処理(基準基板としての基板Wへの基板処理)について、
図33を参照しつつ、以下に説明する。
【0248】
図33に示された基板処理を行うために、チャンバ4(
図29)内へ未処理の基板Wを搬入する基板搬入工程(ステップS10)が行われる。チャンバ4内に搬入された基板Wは、基板保持部1020の複数のチャックピン1022により、水平に保持される。その後、回転機構1030のスピンモータ1032を駆動させることにより、基板Wの回転を開始させる(ステップS20)。具体的には、支持軸1033、スピンベース1021、複数のチャックピン1022、およびチャックピン1022に保持された基板Wが、支持軸1033の軸芯1330を中心として回転する。
【0249】
続いて、基板Wの上面に対して、薬液による処理を行う(ステップS30)。具体的には、まず、第1ノズルモータ1413の駆動により、第1ノズルヘッド1412を、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動させる。そして、薬液用バルブ1416を開放する。そうすると、第1ノズルヘッド1412から、回転する基板Wの上面中央に向けて、薬液が吐出される。吐出された薬液は、基板Wの回転による遠心力で、基板Wの上面全体に拡がる。これにより、基板Wの上面に対して、エッチング、洗浄等の薬液処理が行われる。所定時間の薬液の吐出が完了すると、薬液用バルブ1416を閉鎖して、第1ノズルヘッド1412からの薬液の吐出を停止する。その後、第1ノズルモータ1413の駆動により、第1ノズルヘッド1412を、処理位置から退避位置へ移動させる。
【0250】
次に、基板Wの上面に対して、純水によるリンス処理を行う(ステップS40)。具体的には、まず、第2ノズルモータ1423の駆動により、第2ノズルヘッド1422を、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動させる。そして、純水用バルブ1426を開放する。そうすると、第2ノズルヘッド1422から、回転する基板Wの上面中央に向けて、純水が吐出される。吐出された純水は、基板Wの回転による遠心力で、基板Wの上面全体に拡がる。これにより、基板Wの表面に残存する薬液が洗い流される。所定時間の純水の吐出が完了すると、純水用バルブ1426を閉鎖して、第2ノズルヘッド1422からの純水の吐出を停止する。その後、第2ノズルモータ1423の駆動により、第2ノズルヘッド1422を、処理位置から退避位置へ移動させる。
【0251】
次に、ステップS100(
図33)にて、乾燥処理が行われる。具体的には、基板Wの上面上に残存するリンス液が液体IPAに置換され、その後このIPAが乾燥される。このステップS100として、前述した基準基板(第1基板W)に対しては、具体的には、
図34に示されたステップS100aが行われる。以下、このステップS100aの詳細について説明する。
【0252】
乾燥処理を行うときには、まず、第3ノズルモータ1433(
図2)の駆動により、第3ノズルヘッド1432(
図2)を、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動させる。そして、IPA用バルブ1436a(
図32)を開放する。そうすると、第3ノズルヘッド1432のIPA吐出口1432aから、回転する基板Wの上面中央に向けて、IPAが吐出される。吐出されたIPAは、基板Wの回転による遠心力で、基板Wの上面全体に拡がる。IPAは、純水よりも表面張力が低い液体である。このため、基板Wの上面にIPAが供給されると、基板Wの上面に残存する純水は、IPAに置換される。
【0253】
その後、回転機構1030のスピンモータ1032(
図29)を停止させることにより、基板Wの回転を停止させる。そして、IPA用バルブ1436aを閉鎖することにより、第3ノズルヘッド1432からのIPAの吐出も停止させる。そうすると、
図35のように、基板Wの上面に、IPAの液膜Lがパドル状に形成された状態となる(ステップS101a(
図34)。このとき、ホットプレート1061は下位置にあり、よって基板Wへはホットプレート1061からの熱が実質的に伝わっていない。よって、基板Wの上面S2の温度はほぼ常温のままであり、よってIPAもほぼ常温を維持したまま基板Wの上面S2を覆う。これにより、基板Wの上面S2上に液体IPAの液膜L(基準基板上の第1液膜L)が形成される)。これにより、
図36に示すように、基板Wの上面S2に設けられたパターン960の凹部962において、DIW(リンス液)が液体IPA(有機溶剤)に置換される。
【0254】
図37に示すように、次に、昇降機構を制御することによって、ホットプレート1061が下位置(
図36に示す位置)から上位置(
図37に示す位置)まで上昇させられる。これにより、ホットプレート1061からの熱が基板Wの下面に与えられ、その結果、基板Wが加熱される。これに伴い、基板Wの上面上のIPAの液膜Lが加熱される。ホットプレート1061から基板Wに与えられる単位面積当たりの熱量は、基板Wの全域においてほぼ均一であることが好ましい。ホットプレート1061による基板Wへの加熱により、基板Wの上面の温度が、IPAの沸点(82.4℃)よりも40℃~120℃程度高い予め定める液膜浮上温度(所定の温度)まで昇温させられ、そして保持される。言い換えれば、基板Wの上面が液膜浮上温度になるように、ヒータ1062の単位時間当たりの発熱量が設定される。上面の温度が液膜浮上温度に到達してからしばらくすると、上面のIPAの液膜Lの一部が蒸発して気相化する。これにより、
図38に示すように、基準基板としての第1基板Wの上面S2上に気体膜VL(第1気体膜)が形成される(ステップS102a(
図34))。気体膜VL(第1気体膜)は第1液膜Lを保持している。微細パターン960の凹部962(
図38)が少なくとも部分的に気体膜VLによって満たされることによって、凹部962の間に作用する表面張力が低減され、その結果、表面張力に起因する微細パターン960の構造体961の倒壊を抑制または防止することができる。
【0255】
次にステップS103a(
図34)にて、第1基板Wの上面S2へ窒素ガス(不活性ガス)が吐出される。具体的には、まず垂直吹出用バルブ1436b(
図32)を開放する。そうすると、第3ノズルヘッド1432の垂直吹出口1432bから、基板Wの上面中央に向けて、窒素ガスが吹き付けられる。これにより、
図39のように、液膜Lの中央が開口する。すなわち、基板Wの上面の中央に、IPAが除去された乾燥領域DRが初期形成される。続いて、傾斜吹出用バルブ1436c(
図32)を開放する。そうすると、第3ノズルヘッド1432の傾斜吹出口1432cから、基板Wの上面に向けて、外向きかつ斜め下向きに、窒素ガスが吹き付けられる。これにより、上記のように初期形成されていた乾燥領域DRが、
図40のように徐々に拡大する。これによって、
図41に示すように、気体膜VL(第1気体膜)に保持された第1液膜Lに第1穴OPが形成される。穴OPを形成するための窒素ガスの吐出は、予め定められた条件(第1条件)で行われる。この条件は、吐出される窒素ガスの流量についての設定条件を含む。流量が大きいほど穴OPは大きくなるが、最初から大きな流量を用いると液膜Lに、割れなどの異常形状が生じやすい。よって、上記ステップS103aの時点では、このような異常の頻発を避けることができる程度に小さな流量条件が用いられる。
【0256】
図12に示すように、次にステップS104a(
図34)にて、前述した第1条件と異なる予め定められた第2条件で基準基板(第1基板W)へ不活性ガスを吐出することによって、第1穴OPが、図中矢印に示されるように拡張させられる。第2条件は、基板Wの上面S2へ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含み、この設定条件による流量は第1条件によって設定される流量よりも大きい。言い換えれば、ステップS103aに比してステップS104aにおいては、より大きな流量で窒素ガスが吐出される。このように拡張された穴OPをカメラCM(
図29)で撮影することによって、穴画像OQ(第1画像)が取得される(ステップS105a(
図34))。そしてこの穴画像OQが、コントローラ3によって、基準画像として記憶される(ステップS111a(
図34))。
【0257】
次に、予め定められた第3条件で基板Wの上面S2へ不活性ガスを吐出することによって、穴OPがさらに拡張される(ステップS121a(
図34))。第3条件は、基板Wの上面S2へ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含み、この設定条件による流量は第2条件によって設定される流量よりも大きい。言い換えれば、ステップS104aに比してステップS121aにおいては、より大きな流量で窒素ガスが吐出される。そして、窒素ガスの吐出は、最終的に上面S2からIPAの液膜Lが除去されるまで行われる。
【0258】
基板Wの上面S2からIPAが除去されると、垂直吹出用バルブ1436bおよび傾斜吹出用バルブ1436c(
図32)を閉鎖する。これにより、第3ノズルヘッド1432からの窒素ガスの吹き付けを停止させる。その後、第3ノズルモータ1433の駆動により、第3ノズルヘッド1432を、処理位置から退避位置へ移動させる。次に、昇降機構を制御することによって、ホットプレート1061が、上位置(
図37の位置)から下位置(
図35における位置)まで下降させられる。これによりホットプレート1061と基板保持部1020(
図29)に保持されている基板Wとの間の間隔が十分に大きくなるため、ホットプレート1061からの熱が基板Wに届きにくくなる。これにより、ホットプレート1061による基板Wの加熱が実質的に終了し、基板Wの温度はほぼ常温へと下降する。次に、基板Wが回転させられることによって、基板Wのスピンドライが行われる。これにより基板Wの下面S1または側面などに付着したIPAが除去される。
【0259】
以上により、基準基板(第1基板W)への乾燥処理(ステップS100(
図33))が完了される。すなわち基準基板処理(基準基板への処理)が終了する。そしてステップS60(
図33)にて基板Wが搬出される。
【0260】
上述した基準基板処理後に、通常基板処理(通常基板としての基板Wへの基板処理)が行われる。典型的には、1つの基準基板への基準基板処理が1回行われた後、通常基板処理が複数回繰り返されることによって多数の通常基板が処理される。各通常基板処理において、はじめに、ステップS40(
図33)までが、上述した基準基板処理の場合と同様に行われる。次に、ステップS100(
図33)にて乾燥工程が行われる。このステップS100として、前述した基準基板(第1基板W)に対してはステップS100a(
図34)が行われているが、通常基板に対してはステップS100b(
図42)が行われることになる。以下、このステップS100bの詳細について説明する。
【0261】
まずステップS101b(
図42)が、前述したステップS101a(
図34)と同様に行われる。これにより、パターン960(
図36)が設けられた上面S2を有する第2基板W上にIPA(有機溶剤)の第2液膜Lが形成される。次に、ステップS102b(
図42)が、前述したステップS102a(
図34)と同様に行われる。これにより、第2基板Wが加熱され、それによって
図38に示すように、基板Wの上面S2上に、第2液膜Lを保持する気体膜VL(第2気体膜)が形成される。次に、ステップS103b(
図42)が、前述したステップS103a(
図34)と同様に行われる。具体的には、前述した第1条件で基板Wの上面S2へ窒素ガス(不活性ガス)を吐出することによって、
図41に示すように、気体膜VLに保持された液膜Lに第2穴OPが形成される。次に、ステップS104b(
図42)が、前述したステップS104a(
図34)と同様に行われる。具体的には、前述した第2条件で基板Wの上面S2へ窒素ガス(不活性ガス)を吐出することによって、
図12における矢印で示すように、穴OPが拡張される。
【0262】
図43に示すように、次にステップS105b(
図42)にて、上記ステップS104b(
図42)によって拡張された穴OP(
図43)がカメラCM(
図29)によって撮影される。これによって、拡張された穴OP(
図43)の画像(第2画像)が取得される。次に、ステップS111bにて、基準画像としての穴画像OQ(第1画像)における穴(第1穴)と、上記第2画像における第2穴OPとが比較される。これによって、第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。ステップS104aとステップS104bとは、共に第2条件に設定されたプロセスであるが、実際にはプロセス変動の影響があることから、ステップS104aによる第1穴OPと、ステップS104bによる穴OPとでは相違が生じる。なおステップS111bにおける比較は、コントローラ3によって構成される画像比較部(図示せず)によって実行されてよい。
【0263】
次に、ステップS112b(
図42)にて、穴OPの拡張の、上記のように評価された進行状況に基づいて、第2基板Wの上面S2へ窒素ガス(不活性ガス)を吐出するための第3条件が調整される。この調整は、コントローラ3によって構成される条件調整部(図示せず)によって実行されてよい。
【0264】
上記の比較において、たとえば、
図43に示すように、穴画像OQ(第1画像)における穴(第1穴)の面積AQ(
図43においてドットが付された領域)と、第2画像(
図43)における第2穴OPの面積AP(
図43においてハッチングが付された領域)とが比較されてよい。なお
図43に示された例においては、面積AQおよび面積APの各々は、基板Wの上面S2全体についてではなく、その一部範囲REにおいて算出されている。面積AQに比して面積APが大きい場合、第3条件は、穴OPの拡張が抑制されるように調整される。具体的には、窒素ガスの流量が、より小さく調整される。この調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、面積AQと面積APとの差異に対応した量であってもよい。逆に、面積AQに比して面積APが小さい場合、第3条件は、穴OPの拡張が促進されるように調整される。具体的には、窒素ガスの流量が、より大きく調整される。この調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、面積AQと面積APとの差異に対応した量であってもよい。
【0265】
上記の比較方法(
図43)の変形例として、たとえば、
図44に示すように、穴画像OQ(第1画像)における穴(第1穴)の寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)と、第2画像(
図43)における第2穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)とが比較されてよい。なお
図44に示された例においては、各寸法は、基準点P1から外側へ延びる検出区間LDにおいて算出されている。穴画像OQの寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)に比して穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)が大きい場合、第3条件は、穴OPの拡張が抑制されるように調整される。具体的には、窒素ガスの流量が、より小さく調整される。逆に、穴画像OQの寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)に比して穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)が小さい場合、第3条件は、穴OPの拡張が促進されるように調整される。具体的には、窒素ガスの流量が、より大きく調整される。これら調整の調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、上述した寸法の差異の大きさに対応した量であってもよい。
【0266】
次に、上記ステップS112b(
図42)において、上記のように調整された第3条件で基板Wの上面S2へ不活性ガスを吐出することによって、穴OPがさらに拡張される(ステップS121b(
図42))。調整された第3条件は、元の第3条件と同様に、前述した第2条件によって設定される流量条件よりも大きな流量条件を含む。言い換えれば、ステップS104bに比してステップS121bにおいては、より大きな流量で窒素ガスが吐出される。そして、窒素ガスの吐出は、最終的に上面S2からIPAの液膜Lが除去されるまで行われる。
【0267】
次に、前述した方法によってスピンドライが行われる。これにより基板Wの下面S1または側面などに付着したIPAが除去される。
【0268】
以上により、通常基板(第2基板W)への乾燥処理(ステップS100(
図33))が完了される。そしてステップS60(
図33)にて基板Wが搬出される。以上により、
図33に示された基板処理方法が完了する。
【0269】
<4-3.効果>
本実施の形態によれば、所定条件(第2条件)で基準基板の上面S2へ不活性ガスを吐出したことによる第1穴OPの拡張の進行状況を基準として、上記所定条件(第2条件)で通常基板の上面S2へ不活性ガスを吐出したことによる第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。この進行状況に基づいて、通常基板の上面S2へ不活性ガスをさらに吐出するための条件(第3条件)を調整することによって、通常基板の第2穴OPのさらなる拡張の進行速度を、標準的な進行速度へ、より近づけることができる。これにより、通常基板の上面S2上における液膜Lの第2穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。よって、当該ばらつきに起因しての通常基板の上面S2への悪影響を抑制することができる。具体的には、通常基板の上面S2上に設けられているパターン960の構造体961の倒壊を抑制することができる。
【0270】
上記第3条件は、通常基板の上面S2へ吐出される不活性ガスの流量の設定条件を含む。これにより、通常基板上の穴OPがさらに拡張する進行速度を、効果的に調整することができる。
【0271】
前述のように進行状況を評価するための基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較は、
図43に示すように、基準基板の穴画像OQの面積AQと通常基板の穴OPの面積APとの比較で行われてよい。この場合、様々な方向への拡張の影響を平均化しての評価が可能である。あるいは、進行状況を評価するための基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較は、
図44に示すように、基準基板の穴画像OQと通常基板の穴OPとの寸法の比較で行われてよい。この場合、簡素な方法での評価が可能である。
【0272】
<4-4.変形例>
なお上記においては、基準基板への第3条件での基板処理における画像に基づいて、通常基板への基板処理に適用される第3条件が調整される形態について説明した。変形例として、上記調整の後、予め定められた第4条件での基準基板への基板処理における画像に基づいて、通常基板への基板処理に適用される第4条件が調整されてもよい。この場合、各通常基板にとって2回の調整が行われる。さらなる変形として、3回以上の調整が行われてもよい。これら複数回の調整は、たとえば、予め定められたインターバルで行われてよい。調整の回数を増やすことによって、穴OPの拡張の進行速度のばらつきを、より抑制することができる。なおこの変形は、本実施の形態4に限らず他の実施の形態に適用されてよい。
【0273】
またホットプレート1061が基板Wを加熱するときに、言い換えればホットプレートが上位置にあるときに、ホットプレート1061が基板Wに接触する形態について説明した。変形例として、ホットプレート1061が基板Wを加熱するときに、言い換えればホットプレートが上位置にあるときに、ホットプレート1061と基板Wの下面との間にクリアランスが設けられてもよい。この場合、クリアランスの大きさを変化させることによって、基板Wに与えられる熱量を調整できる。この変形例においては、ホットプレート1061が基板Wを加熱しつつ回転機構1030が基板Wを回転させることが可能である。この回転の速度が、穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制するために制御されてよい。具体的には、拡張の進行を抑制するために回転速度が小さくされてよく、逆に、拡張の進行を促進するために回転速度が大きくされてよい。
【0274】
またホットプレート1061に代わって他の基板加熱手段が用いられてもよい。たとえば、基板加熱手段として発光ダイオード(LED)ヒータが用いられる場合、基板加熱手段と基板Wとが接触していなくても、効率的な加熱が可能である。
【0275】
また上記においては基板加熱手段が基板Wの下方に配置される形態について説明したが、変形例として、基板加熱手段が基板Wの上方に配置されてもよい。
【0276】
また、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤としてIPAを例に挙げて説明したが、IPAに代わって、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、またはHFE(ハイドロフルオロエーテル)が用いられてもよい。
【0277】
なお上記の各変形例は、後述する実施の形態5に対しても、ほぼ同様に適用され得る。
【0278】
<5.実施の形態5>
<5-1.基板処理装置の構成>
本実施の形態5においては基板処理装置1(
図1)に、処理ユニット2(
図1)に代わって処理ユニット2C(
図45)が備えられている。
図45は、処理ユニット2Cの構成を概略的に示す断面図である。処理ユニット2Cは、処理ユニット2B(
図29)と類似した構成のほかに、光照射ユニット1007を有している。光照射ユニット1007は、光源1071と、光源アーム1079と、光源アーム揺動ユニット1070とを有している。光源1071は、基板Wへの光を生成するためのものであり、この光を吸収することによって基板Wが加熱される。この光は、波長200nm以上1100nm以下の成分を有していることが好ましい。基板W上に液体IPA(有機溶剤)の液膜Lが存在する場合であっても、この光は実質的にIPAには吸収されないので、光源1071からの光による直接的な昇温作用は実質的に、IPAに対しては作用せず基板Wにのみ作用する。よって、光源1071によるIPAの加熱作用は、光源1071によって加熱された基板Wによって加熱されることによる間接的な作用である。光源1071はLEDを含む。光源1071は基板Wの方へ露出されたカバー部材を有していてよく、カバー部材は、たとえば石英ガラスからなる。
【0279】
図46は、光照射ユニット1007(
図45)の動作を概略的に示す平面図である。光照射ユニット1007の光源1071は、光照射方向を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる光源アーム1079の先端に取り付けられている。よって、基板Wへ照射される光は、基板Wの上面S2の上方から照射される。光源アーム1079は回転軸線周りに揺動可能に設けられている。光源アーム1079には、光源アーム1079を揺動させるための光源アーム揺動ユニット1070が結合されている。光源アーム1079の揺動により、光源1071は、基板回転機構1030またはホットプレート1061に保持されている基板Wの中央部上と、処理液捕集部1050外に設定された退避位置との間を移動させられる。光源アーム揺動ユニット1070の動作はコントローラ3によって制御される。また、光源1071によって生成される光の強度は、光源1071への電力をコントローラ3が制御することによって調整される。なお変形例として、光源1071が第3ノズルアーム1431(
図2)に取り付けられてもよく、その場合、光源アーム1079および光源アーム揺動ユニット1070が省略される。
【0280】
LEDを用いた光源1071は、一般に、動作に伴って徐々に劣化しやすい傾向がある。この劣化状態が、カメラCMによって撮影される画像に基づいて評価されてよい。たとえば、予め定められた条件で光照射ユニット1007による光の生成とカメラCMによる画像の撮影とを行い、この画像の明度から、光源1071の劣化状態を評価することができる。光源1071の劣化に起因して強度が低下していると評価された場合、それを補うように光源1071への電力を増大させることによって、上記劣化に起因してのプロセス変動を抑制することができる。この評価のための画像を撮影するタイミングは任意であるが、たとえば、下記の基板処理方法によって撮影される画像を当該評価のために利用してもよい。
【0281】
<5-2.基板処理方法>
以下、本実施の形態における基板処理方法について説明する。実施の形態4において説明した基板処理方法(
図33)のうち、ステップS100以外のステップについては、本実施の形態と共通であるため、それらの説明を省略する。ステップS100(
図33)の乾燥処理において、液膜Lに穴OPを形成する工程が、前述した実施の形態4においては窒素ガス(不活性ガス)の吐出(
図39および
図40)によって行われるが、本実施の形態においては基板Wへの光の照射によって行われる。乾燥処理における、これ以外の特徴は、実施の形態4とほぼ同様である。前述した実施の形態4の説明と同様、本実施の形態においても、はじめに基準基板(第1基板W)への基板処理である基準基板処理が行われ、次に通常基板(第2基板W)への基板処理である通常基板処理が行われる。
【0282】
上記ステップS100として、基準基板に対しては、具体的には、
図47に示されたステップS100hが行われる。以下、このステップS100hの詳細について説明する。なおステップS101hおよびステップS102hは、前述したステップS101aおよびステップS102a(
図34)と同様である。なおステップS102hは、基板Wを加熱するために基板Wをホットプレート1061に接触させるステップS102hHを含んでよい。
【0283】
ステップS103h(
図47)にて、予め定められた条件(第1条件)で第1基板Wの上面S2へ光が照射される。第1条件は、基板Wに照射される光の強度の設定条件と、基板Wのうち光に照射される部分である被照射領域の設定条件とを含む。第1条件によれば、
図46に示すように、被照射領域は基板Wの中央部に配置される。この配置での光照射によって、基板Wの中央部の温度が局所的に増加させられる。その結果、
図41に示すように、気体膜VL(第1気体膜)に保持された第1液膜Lの中央部に、第1穴OPが形成される。なお、このステップS103hの際は、基板Wは回転していてもしていなくてもよい。基板Wが回転させられる場合は、上記実施の形態4における変形例において説明したように、基板Wを基板保持部1020で保持しながら、基板Wに対してクリアランスが設けられたホットプレート1061によって基板Wが加熱されてよい。
【0284】
次にステップS104h(
図47)にて、前述した第1条件と異なる予め定められた第2条件で、基準基板(第1基板W)へ光が照射される。具体的には、第2条件は、基板Wを矢印RT(
図46)に示すように回転させつつ、光源1071をスキャン方向CN(
図46)に沿って所定の角度だけ移動させることによって被照射領域を基板Wの中央部からずらす動作条件を含む。これにより第1穴OPが、
図12における矢印で示すように拡張させられる。このように拡張された穴OPをカメラCM(
図29)を用いて撮影することによって、穴画像OQ(第1画像)が取得される(ステップS105h(
図47))。そしてこの穴画像OQが、基準画像として記憶される(ステップS111h(
図47))。
【0285】
次に、予め定められた第3条件で基板Wへ光を照射することによって、穴OPがさらに拡張される(ステップS121h(
図47))。第3条件は、基板Wに照射される光の強度の設定条件を含んでよい。また第3条件は、基板Wの中央部から外周部へ向かっての被照射領域の移動速度(言い換えれば、光源1071のスキャン速度)の設定条件を含んでよい。また第3条件は、基板Wの回転速度の設定条件を含んでよい。最終的に被照射領域は基板Wの外周部に達するまで移動され、これにより上面S2からIPAの液膜Lが除去される。これにより、基準基板(第1基板W)への乾燥処理(ステップS100(
図33))が完了される。
【0286】
上述した実施の形態4と同様、上述した基準基板処理後に、通常基板処理(通常基板としての基板Wへの基板処理)が行われる。基板処理におけるステップS100(
図33)として、前述した基準基板(第1基板W)に対してはステップS100h(
図47)が行われるが、通常基板(第2基板W)に対してはステップS100i(
図48)が行われる。以下、このステップS100iの詳細について説明する。なおステップS101iおよびステップS102iは、前述したステップS101bおよびステップS102b(
図42)と同様である。なおステップS102iは、基板Wを加熱するために基板Wをホットプレート1061に接触させるステップS102iHを含んでよい。
【0287】
次に、ステップS103i(
図48)が、前述したステップS103h(
図47)と同様に行われる。具体的には、前述した第1条件で第2基板Wへ光が照射されることによって、
図41に示すように、気体膜VL(第2気体膜)に保持された第2液膜Lの中央部に第2穴OPが形成される。次に、ステップS104i(
図48)が、前述したステップS104h(
図47)と同様に行われる。具体的には、前述した第2条件で基板Wへ光を照射することによって、
図12における矢印で示すように、穴OPが拡張される。
【0288】
次にステップS105i(
図48)にて、上記ステップS104iによって拡張された穴OP(
図13)がカメラCM(
図45)によって撮影される。これによって、拡張された穴OP(
図13)の画像(第2画像)が取得される。次に、ステップS111iにて、基準画像としての穴画像OQ(第1画像)における穴(第1穴)と、上記第2画像における第2穴OPとが比較される。これによって、第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。ステップS104hとステップS104iとは、共に第2条件に設定されたプロセスであるが、実際にはプロセス変動の影響があることから、ステップS104hによる第1穴OPと、ステップS104iによる穴OPとでは相違が生じる。なおステップS111iにおける比較は、コントローラ3によって構成される画像比較部(図示せず)によって実行されてよい。
【0289】
次に、ステップS112i(
図48)にて、穴OPの拡張の、上記のように評価された進行状況に基づいて、第2基板Wへ光を照射するための第3条件が調整される。この調整は、コントローラ3によって構成される条件調整部(図示せず)によって実行されてよい。
【0290】
上記の比較において、たとえば、
図13に示すように、穴画像OQ(第1画像)における穴(第1穴)の面積AQ(
図13においてドットが付された領域)と、第2画像(
図13)における第2穴OPの面積AP(
図13においてハッチングが付された領域)とが比較されてよい。
図13に示された例においては、面積AQおよび面積APの各々は、基板Wの上面S2全体についてではなく、撮影時点での被照射領域RRにおいて算出されている。よって上記比較は、被照射領域RR内で行われる。なお撮影時点での被照射領域RRは、光源アーム揺動ユニット1070(
図46)の動作条件から算出されてよい。面積AQに比して面積APが大きい場合、第3条件は、穴OPの拡張が抑制されるように調整される。具体的には、第3条件の調整として、たとえば、基板Wに照射される光の強度が、より小さく調整される。あるいは、たとえば、被照射領域RRの移動速度(スキャン速度)が、より小さく調整される。あるいは、基板Wの回転速度が、より小さく調整される。これら調整における調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、面積AQと面積APとの差異に対応した量であってもよい。逆に、面積AQに比して面積APが小さい場合、第3条件は、穴OPの拡張が促進されるように調整される。
【0291】
上記の比較方法(
図13)の変形例として、たとえば、
図14に示すように、穴画像OQ(第1画像)における穴(第1穴)の寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)と、第2画像(
図14)における第2穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)とが比較されてよい。なお
図14に示された例においては、各寸法は、基準点P1から外側へ延びる検出区間LEにおいて算出されている。検出区間LEは、撮影時点での被照射領域RR内にあることが好ましく、スキャン方向CNに沿っていることが好ましく、被照射領域RRが円形を有する場合は、当該円形のスキャン方向CNに沿った直径であってよい。穴画像OQの寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)に比して穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)が大きい場合、第3条件は、穴OPの拡張が抑制されるように調整される。逆に、穴画像OQの寸法(基準点P1から端点PQまでの寸法)に比して穴OPの寸法(基準点P1から端点PPまでの寸法)が小さい場合、第3条件は、穴OPの拡張が促進されるように調整される。これら調整の調整量は、予め定められた量であってもよく、あるいは、上述した寸法の差異の大きさに対応した量であってもよい。
【0292】
次に、上記ステップS112i(
図48)において調整された第3条件で基板Wへ光を照射することによって、穴OPがさらに拡張される(ステップS121i(
図48))。最終的に被照射領域は基板Wの外周部に達するまで移動され、これにより上面S2からIPAの液膜Lが除去される。これにより、通常基板(第2基板W)への乾燥処理(ステップS100(
図33))が完了される。
【0293】
<5-3.効果>
本実施の形態によれば、所定条件(第2条件)で基準基板へ光を照射したことによる第1穴OPの拡張の進行状況を基準として、上記所定条件(第2条件)で通常基板へ光を照射したことによる第2穴OPの拡張の進行状況が評価される。この進行状況に基づいて、通常基板へ光をさらに照射するための条件(第3条件)を調整することによって、第2穴OPのさらなる拡張の進行速度を、標準的な進行速度へ、より近づけることができる。これにより、通常基板の上面S2上における液膜Lの第2穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。よって、当該ばらつきに起因しての基板Wの上面S2への悪影響を抑制することができる。具体的には、通常基板の上面S2上に設けられているパターン960の構造体961の倒壊を抑制することができる。
【0294】
基板Wへ光が上方から照射されるので、光源1071は基板Wの上方に配置される。これにより、基板Wへ吐出される薬液が光源1071およびそれに付随する部材へ付着しにくい。よって、光源1071およびそれに付随する部材への薬液に起因してのダメージを避けることができる。この効果は、フッ酸のように高い腐食性を有する薬液が用いられる場合に特に大きい。
【0295】
上記第3条件は、通常基板に照射される光の強度の設定条件を含んでよい。上記第3条件は、被照射領域RRのスキャン速度の設定条件を含んでよい。上記第3条件は、通常基板の回転速度の設定条件を含んでよい。これら設定条件の少なくともいずれかを用いることにより、第2穴OPのさらなる拡張の進行速度を、効果的に調整することができる。
【0296】
進行状況を評価するための基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較は、被照射領域RR内で行われてよい。これにより、当該評価の信頼性を高めることができる。
【0297】
前述のように進行状況を評価するための基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較は、
図13に示すように、基準基板の穴画像OQの面積AQと通常基板の穴OPの面積APとの比較で行われてよい。この場合、様々な方向への拡張の影響を平均化しての評価が可能である。あるいは、進行状況を評価するための基準基板の第1穴OPと通常基板の第2穴OPとの比較は、
図14に示すように、基準基板の穴画像OQと通常基板の穴OPとの寸法の比較で行われてよい。この場合、簡素な方法での評価が可能である。
【0298】
カメラCMによって撮影される画像に基づいて、光源1071の劣化状態が評価されることが好ましい。これにより、光源1071からの光が照射されることによる穴OPの拡張の進行速度のばらつきを抑制することができる。
【0299】
<5-4.変形例>
図49は、
図46に示された光照射ユニット1007の第1変形例としての光源1072を示す。光源1072は、基板Wの半径方向における異なる位置に配置された複数の発光部RLを有している。複数の発光部RLに含まれる発光部RL1~RL9は、平面視における基板Wの回転中心である中心CTから外側に向かって、順に配置されている。発光部RL1~RL9は、コントローラ3によって個別に制御され得る。たとえば、発光部RL1~発光部RL9がこの順に選択的に発光することによって、光源1071のスキャン動作とほぼ同様の光照射を行うことができる。本変形例によれば、光源アーム1079および光源アーム揺動ユニット1070を省略することができる。
【0300】
図50は、
図46に示された光照射ユニット1007の第2変形例としての光源1073を示す。光源1073においては、発光部RLの各々が、中心CT周りの円周に沿って延びている。本変形例によれば、上記第1変形例と異なり、基板Wのほぼ全体への光照射を、基板Wの回転なしに行うことができる。また複数の発光部RLを全体的に発光させた場合、基板Wを全体的に加熱することができるので、上記においてホットプレート1061によって行われていた加熱を光源1073によって行うこともできる。よってこの場合、ホットプレート1061が省略されてもよい。
【0301】
なお上記本実施の形態およびその変形例においては、基板Wの上方から基板Wの上面S2へ光が照射されるが、基板Wの下方から基板Wの下面S1へ光が照射されてもよい。
【0302】
<6.各実施の形態の変形例>
上述した各実施の形態において、基準基板処理および通常基板処理は、同一の基板処理装置によって実施されてよく、それに代わってまたはそれと共に、異なる基板処理装置によって実施されてよい。基準基板処理および通常基板処理が同一の基板処理装置によって実施される場合、基準基板処理および通常基板処理は、同一の処理ユニットによって実施されてよく、それに代わってまたはそれと共に、異なる処理ユニットによって実施されてよい。基準基板処理および通常基板処理が、異なる基板処理装置によって実施される場合、ある1つの基板処理装置による基準基板処理によって得られた情報(後述する基準画像の情報を含む)を当該基板処理装置が送り出し、通常基板処理を行う他の基板処理装置が当該情報を受け付けてよい。
【0303】
また、基準基板処理の候補となる複数の基板処理が実施された後に、これら候補のうち最も良好な処理結果が得られたものを選択することによって、基準基板処理が設定されてよい。この選択は、コントローラが選択内容を外部から受け付けることによって行われてよく、あるいは、コントローラが自動的に実施してよい。基準基板処理の候補となる複数の基板処理は、同一の基板処理装置によって実施されてよく、それに代わってまたはそれと共に、異なる基板処理装置によって実施されてよい。基準基板処理の候補となる複数の基板処理が同一の基板処理装置によって実施される場合、これら複数の基板処理は、同一の処理ユニットによる基板処理の繰り返しによって実施されてよく、それに代わってまたはそれと共に、複数の処理ユニットによって実施されてよい。
【0304】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施の形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0305】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
2A :処理ユニット
2B :処理ユニット
2C :処理ユニット
3 :コントローラ
6 :ヒータユニット
10 :低表面張力液体ノズル
12 :ランプユニット
62 :ヒータ
130 :上面ヘッド
133 :有機溶剤ノズル
134 :第1の気体ノズル
146 :有機溶剤バルブ
152 :第1のランプヒータ
960 :パターン
1007 :光照射ユニット
1061 :ホットプレート
1071 :光源
1072 :光源
1073 :光源
1432 :第3ノズルヘッド
1432a :IPA吐出口
1432b: 垂直吹出口
1432c :傾斜吹出口
CM :カメラ
IM :撮像部
L :液膜
OP :穴
VL :気体膜
W :基板