(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電子式吸入装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/65 20200101AFI20240403BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20240403BHJP
【FI】
A24F40/65
A24F47/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020143411
(22)【出願日】2020-08-27
(62)【分割の表示】P 2018108247の分割
【原出願日】2013-10-09
【審査請求日】2020-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2012-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ロード、クリストファー
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】水野 治彦
【審判官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0080477(KR,A)
【文献】特開2008-309379(JP,A)
【文献】特表2010-522584(JP,A)
【文献】特開2000-330844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0265806(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2012-0094400(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2012-0093046(KR,A)
【文献】特表2011-518484(JP,A)
【文献】特表2009-535894(JP,A)
【文献】特開2010-179875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F40/60
A24F47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸い口および制御部を備える電子式吸入装置であって、前記制御部が電源用電池およびコンピューターを含み、前記コンピューターがコンピューター処理装置、記憶装置および入出力手段を含み、前記装置がさらに、前記コンピューターに接続された送信機を備え、前記コンピューターは、利用者による前記装置の使用に関する使用データを収集して前記コンピューター記憶装置に保存し、前記使用データを受信機に送信するように構成されており、前記送信機が音声信号発生手段であり、音声によって前記使用データを送信するように構成されており、当該使用データは音声による送信用に最適化され
るように8バイト以下のデータ記憶装置に保存されている、電子式吸入装置。
【請求項2】
前記電子式吸入装置が電子タバコであることを特徴とする請求項1に記載の電子式吸入装置。
【請求項3】
前記コンピューターがマイクロコントローラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子式吸入装置。
【請求項4】
前記送信機が、無線手段により前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項5】
前記使用データが吸入回数を含み、前記吸入回数は、利用者が前記装置を用いたときの吸入回数を計数したものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項6】
前記吸入回数が1バイトまたは2バイトのデータ記憶装置に保存されていることを特徴とする請求項5に記載の電子式吸入装置。
【請求項7】
前記使用データが平均吸入時間を含み、前記平均吸入時間は、前記吸入回数で計数された前記各吸入の平均的な代表値であることを特徴とする請求項5または6に記載の電子式吸入装置。
【請求項8】
前記平均吸入時間が1バイトまたは2バイトのデータ記憶装置に保存されていることを特徴とする請求項7に記載の電子式吸入装置。
【請求項9】
前記使用データがセッション回数を含み、前記セッション回数は、各吸入期間の回数を計数したものであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項10】
前記セッション回数が1バイトまたは2バイトのデータ記憶装置に保存されていることを特徴とする請求項9に記載の電子式吸入装置。
【請求項11】
前記装置を吸入してから前記装置が所定の停止時間停止したときに吸入期間が終了することを特徴とする請求項9または10に記載の電子式吸入装置。
【請求項12】
前記使用データがさらに、前記使用データの開始を示すヘッダーデータを前記使用データの先頭に含むことを特徴とする請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項13】
前記使用データがさらに、前記使用データの終了を示すフッターデータを前記使用データの末尾に含むことを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項14】
前記使用データがさらに、前記使用データをどのように構成して送信するかを示す構成データを前記使用データの先頭近くに含むことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項15】
前記構成データが前記使用データを送信する際の周波数範囲を示すことを特徴とする請求項
14に記載の電子式吸入装置。
【請求項16】
前記構成データが前記使用データを送信する際の期間を示すことを特徴とする請求項
14または
15に記載の電子式吸入装置。
【請求項17】
前記構成データが前記使用データを送信する際の強度を示す
ことを特徴とする請求項
14乃至
16のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項18】
前記使用データが各吸入事象の詳細を含むことを特徴とする請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項19】
各吸入事象の詳細には各吸入の日付および時間が含まれることを特徴とする請求項
18に記載の電子式吸入装置。
【請求項20】
各吸入事象の詳細には各吸入の期間が含まれることを特徴とする請求項
18または
19に記載の電子式吸入装置。
【請求項21】
前記コンピューターは、前記使用データの第1送信バージョンおよび前記使用データの第2送信バージョンを連続的に送信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
20のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項22】
前記第1送信バージョンは前記第2送信バージョンと実質的に同一であることを特徴とする請求項
21に記載の電子式吸入装置。
【請求項23】
前記第1送信バージョンおよび前記第2送信バージョンがそれぞれ異なる周波数範囲であることを特徴とする請求項
21に記載の電子式吸入装置。
【請求項24】
前記第1送信バージョンおよび前記第2送信バージョンがそれぞれ異なる期間であることを特徴とする請求項
21または
23に記載の電子式吸入装置。
【請求項25】
前記第1送信バージョンおよび前記第2送信バージョンがそれぞれ異なる信号強度であることを特徴とする請求項
21、
23または
24に記載の電子式吸入装置。
【請求項26】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データの3つ以上の送信バージョンを連続的に送信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
25のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項27】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データを繰り返し送信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
26のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項28】
前記コンピューターは使用時に、典型的な背景雑音が属する周波数範囲を実質的に上回る周波数で前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
27のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項29】
前記コンピューターは使用時に、可聴周波数範囲を実質的に上回る周波数で前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
28のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項30】
前記コンピューターは、送信後に前記記憶装置から前記使用データを消去するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
29のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項31】
前記コンピューターは、前記利用者による消去操作がなされたときに前記記憶装置から前記使用データを消去するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
30のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項32】
前記電子式吸入装置がさらに、前記コンピューターに接続された圧力センサを備えることを特徴とする請求項1乃至
31のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項33】
前記コンピューターは使用時に、前記圧力センサが前記装置の通常利用以外の操作を検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32に記載の電子式吸入装置。
【請求項34】
前記コンピューターは使用時に、前記装置へ吹き込まれたことを前記圧力センサが検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32または
33に記載の電子式吸入装置。
【請求項35】
前記コンピューターは使用時に、前記装置が吸引されたことを前記圧力センサが検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32乃至
34のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項36】
前記コンピューターは使用時に、前記装置へ短く一気に吹き込まれたことを前記圧力センサが検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32乃至
35のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項37】
前記コンピューターは使用時に、前記装置が短く一気に吸引されたことを前記圧力センサが検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32乃至
36のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項38】
前記コンピューターは使用時に、前記装置へ短く一気に吹き込まれたことを前記圧力センサが2回以上検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32乃至
37のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項39】
前記コンピューターは使用時に、前記装置が短く一気に吸引されたことを前記圧力センサが2回以上検出したときに前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
32乃至
38のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項40】
前記コンピューターはさらにメニューモードを備え、前記圧力センサを用いて、前記メニューモードを起動し、前記使用データの送信を開始するメニュー選択項目を選択するように構成されていることを特徴とする請求項
32乃至
39のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項41】
前記コンピューターは、利用者が記憶装置消去のメニュー選択項目を選択したときに前記記憶装置から前記使用データを消去するように構成されていることを特徴とする請求項
40に記載の電子式吸入装置。
【請求項42】
前記コンピューターは、前記メニューモードを終了するときに前記記憶装置から前記使用データを消去するように構成されていることを特徴とする請求項
40または
41に記載の電子式吸入装置。
【請求項43】
前記コンピューターは使用時に、前記装置が前記メニューモードに入ったときには前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項
40乃至
42のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項44】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データを送信する前に前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
43のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項45】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データの送信中には前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
44のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項46】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データの送信が完了したときには前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
45のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項47】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データの送信が正常に受信されたときには前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
46のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項48】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データの送信が正常に受信されなかったときには前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
47のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項49】
前記コンピューターは使用時に、前記使用データが前記コンピューター記憶装置から消去されたときには前記利用者に音声で通知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
48のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項50】
前記装置がさらに、前記コンピューターに接続されたマイクを備えることを特徴とする請求項1乃至
49のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項51】
前記コンピューターは、前記マイクを用いて信号受信を妨げる背景雑音を測定し、前記背景雑音を実質的に回避して前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
50に記載の電子式吸入装置。
【請求項52】
前記コンピューターは、前記マイクで開始信号を受信したときに送信を開始するように構成されていることを特徴とする請求項
50または
51に記載の電子式吸入装置。
【請求項53】
前記コンピューターは、前記マイクで終了信号を受信したときに送信を終了するように構成されていることを特徴とする請求項
50乃至
52のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項54】
前記コンピューターは、前記マイクで失敗信号を受信したときに前記使用データを再送信するように構成されていることを特徴とする請求項
50乃至
53のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項55】
前記コンピューターは、前記マイクで消去信号を受信したときに前記記憶装置から前記使用データを消去するように構成されていることを特徴とする請求項
50乃至
54のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項56】
前記電子式吸入装置は吸い口および先端部を備え、前記送信機が前記先端部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
55のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【請求項57】
前記送信機は使用時に、前記先端部の外側に前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
56に記載の電子式吸入装置。
【請求項58】
前記装置は長手方向中心軸を備え、前記送信機は使用時に、前記長手方向軸と実質的に平行に、かつ前記先端部から外側に前記使用データを送信するように構成されていることを特徴とする請求項
56または
57に記載の電子式吸入装置。
【請求項59】
前記送信機がスピーカーであることを特徴とする請求項1乃至
58のいずれか1項に記載の電子式吸入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式吸入装置に関する。詳しくはそれに限定するものではないが、本発明は、コンピューターおよび送信機を備えた電子タバコに関する。
【背景技術】
【0002】
電子式吸入装置は、典型的には紙巻きタバコの大きさであり、利用者が吸い口に吸引力を加えることにより、液体貯蔵部からニコチン蒸気を吸入できるように機能するものである。一部の電子式吸入装置は、利用者が吸引力を加えたときに作動し、加熱コイルを熱して液体を気化させる圧力センサを備える。電子式吸入装置には、電子タバコが含まれる。
【発明の概要】
【0003】
吸い口および制御部を備える電子式吸入装置であって、制御部が電源用電池およびコンピューターを含み、コンピューターがコンピューター処理装置、記憶装置および入出力手段を含み、装置がさらに、コンピューターに接続された送信機を備え、コンピューターは、利用者による装置の使用に関する使用データを収集してコンピューター記憶装置に保存し、使用データを送信するように構成されている、電子式吸入装置。
【0004】
データを保存することは、利用者の吸引および使用習慣に関するデータを監視することができるという点で有利であるが、これは、装置を紙巻きタバコの代わりとして用いる場合に重要である。なぜなら、かかる監視を行うことにより、置換療法を観察し、装置が作動しているかどうかを判断することが可能になるためである。保存済みの使用データを送信することにより、利用者は、データを読み取り、自身による装置の利用を監視するために、本データを受信装置に送信することができる。
【0005】
好ましくは、電子式吸入装置は電子タバコである。
【0006】
好ましくは、コンピューターはマイクロコントローラーである。
【0007】
好ましくは、送信機は、無線手段により使用データを送信するように構成されている。
【0008】
好ましくは、送信機は音声信号発生手段であり、音声によって使用データを送信するように構成されている。
【0009】
無線送信手段を設けることにより、煩雑な有線インターフェースを用いずとも、データを送信して共有することが可能となる。これにより、装置にはアクセスポートが不要になる。無線手段で送信することによって装置内に送信装置が必要となるが、音声で送信を行う場合、送信機はブザーやスピーカーなどの簡単な構成部品とすることができる。この部品は、安価な商品でありながら有用な構成部品であり、これを用いることにより、音声を変調してデータを送信することが可能となる。さらに、音声発生器は、他の機能を果たすことも可能である。
【0010】
好ましくは、使用データは吸入回数を含む。この吸入回数は、利用者が装置を用いたときの吸入回数を計数したものである。好ましくは、吸入回数は、1バイトまたは2バイトのデータ記憶装置に保存されている。
【0011】
好ましくは、使用データは平均吸入時間を含む。この平均吸入時間は、吸入回数で計数された各吸入の平均的な代表値である。好ましくは、平均吸入時間は、1バイトまたは2
バイトのデータ記憶装置に保存されている。
【0012】
好ましくは、使用データはセッション回数を含む。このセッション回数は、各吸入期間の回数を計数したものである。好ましくは、セッション回数は、1バイトまたは2バイトデータの記憶装置に保存されている。好ましくは、装置を吸入してから装置が所定の停止時間停止したときに吸入期間が終了する。
【0013】
吸入回数、平均吸入時間およびセッション回数に関するデータを保存することにより、データの保存必要量が最小限になるが、それでも重要な情報は依然として保存されている。吸入回数およびセッション回数は単に計数したものであり、コンピューター記憶装置に保存された値を変更・更新することができるため、必要とされるのは一つの値のみである。同様に、平均期間についても、記憶装置内で変更・更新することができるため、必要とされるのは一つの値のみである。従って、記憶装置の容量に対する要求は大幅に抑制される。
【0014】
好ましくは、使用データは、8バイト以下のデータ記憶装置に保存されている。
【0015】
好ましくは、使用データは、音声による送信用に最適化されている。
【0016】
データを最小化することは有利である。なぜなら、これによってデータをより迅速に送信し、さらには短時間内に繰り返して送信することが可能となり、送信を行う際に利用者が待機していなくてもよくなるためである。8バイト以下のデータ記憶装置に保存したことによって送信用データが最小になり、従って、送信処理を高速化することが可能となる。最小データは、変調後の音声によってデータを送信する場合に重要となり得る。
【0017】
好ましくは、使用データはさらに、データの開始を示すヘッダーデータをデータの先頭に含む。
【0018】
好ましくは、使用データはさらに、データの終了を示すフッターデータをデータの末尾に含む。
【0019】
好ましくは、使用データはさらに、データをどのように構成して送信するかを示す構成データをデータの先頭近くに含む。
【0020】
好ましくは、構成データは、データを送信する際の周波数範囲を示す。
【0021】
好ましくは、構成データは、データを送信する際の期間を示す。
【0022】
好ましくは、構成データは、データを送信する際の強度を示す。
【0023】
使用データの主要部分に付加した追加データは、送信されるデータについての有用な情報を受信手段に提供する役割を果たす。受信手段が待ち受けているヘッダーデータを付加することにより、受信手段は、このヘッダーデータにデータが後続することを確実に認識する。同様に、フッターデータを付加することにより、受信手段は、データ送信が終了したことを認識する。構成データを用いることは重要である。なぜなら、構成データによって受信機自体の設定を行い、データを送る準備をすることが可能になるためである。音声で送信を行う場合、データを異なる周波数範囲に、異なる期間に、あるいは異なる強度に変調することが可能である。そのため、構成データは、データがどのように送られるかを知るのに有用である。
【0024】
好ましくは、使用データは、各吸入事象の詳細を含む。好ましくは、各吸入事象の詳細
には、各吸入の日付および時間が含まれる。好ましくは、各吸入事象の詳細には各吸入の期間が含まれる。
【0025】
好ましくは、コンピューターは、使用データの第1送信バージョンおよび使用データの第2送信バージョンを連続的に送信するように構成されている。
【0026】
好ましくは、第1送信バージョンは第2送信バージョンと実質的に同一である。
【0027】
好ましくは、第1送信バージョンおよび第2送信バージョンは、それぞれ異なる周波数範囲である。
【0028】
好ましくは、第1送信バージョンおよび第2送信バージョンは、それぞれ異なる期間である。
【0029】
好ましくは、第1送信バージョンおよび第2送信バージョンは、それぞれ異なる信号強度である。
【0030】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データの3つ以上の送信バージョンを連続的に送信するように構成されている。
【0031】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データを繰り返し送信するように構成されている。
【0032】
データを2回以上送信することにより、受信機は、完了メッセージをより受信しやすくなる。1回の送信中に干渉が存在する場合、別の送信は干渉せずに伝達され得る。周波数範囲、期間および強度などの設定値を変化させることにより、ある条件群に影響されるデータが別の条件群では影響されなくなる場合がある。従って、受信機がデータを受信する可能性が高まる。また、データを2回以上送信することにより、受信機は送られたデータを検証することが可能となる。
【0033】
好ましくは、コンピューターは使用時に、典型的な背景雑音が属する周波数範囲を実質的に上回る周波数で使用データを送信するように構成されている。
【0034】
好ましくは、コンピューターは使用時に、可聴周波数範囲を実質的に上回る周波数で使用データを送信するように構成されている。
【0035】
通常の生活環境や作業環境には、典型的な背景雑音が存在する。これらの背景雑音から実質的に外れた信号を送信することにより、送信した信号が受信機で受信される可能性が高まる。また、変調した音声でデータを送信する場合、送信雑音が発生するのは好ましくない場合があるため、可聴周波数範囲付近の周波数を避けて送信することにより、送信雑音の発生を防ぐ。
【0036】
好ましくは、コンピューターは、送信後に記憶装置から使用データを消去するように構成されている。
【0037】
好ましくは、コンピューターは、利用者による消去操作がなされたときに記憶装置から使用データを消去するように構成されている。
【0038】
一旦データが送信されたら、記憶装置からデータを消去することによって次のデータを保存することが可能となる。
【0039】
好ましくは、電子式吸入装置はさらに、コンピューターに接続された圧力センサを備える。
【0040】
好ましくは、コンピューターは使用時に、圧力センサが装置の通常利用以外の操作を検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0041】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置へ吹き込まれたことを圧力センサが検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0042】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置が吸引されたことを圧力センサが検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0043】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置へ短く一気に吹き込まれたことを圧力センサが検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0044】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置が短く一気に吸引されたことを圧力センサが検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0045】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置へ短く一気に吹き込まれたことを圧力センサが2回以上検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0046】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置が短く一気に吸引されたことを圧力センサが2回以上検出したときに使用データを送信するように構成されている。
【0047】
好ましくは、コンピューターはさらにメニューモードを備え、圧力センサを用いて、メニューモードを起動し、使用データの送信を開始するメニュー選択項目を選択するように構成されている。
【0048】
圧力センサを用いてデータ送信を制御することは有利である。なぜなら、圧力センサは元々本製品の主要部品であり得るためである。従って、送信を制御するのに構成部品を追加する必要がなくなる。さらに、この制御は内部制御であるため、本製品を損傷させるような変質が起きにくくなる。
【0049】
好ましくは、コンピューターは、利用者が記憶装置消去のメニュー選択項目を選択したときに記憶装置から使用データを消去するように構成されている。
【0050】
好ましくは、コンピューターは、メニューモードを終了するときに記憶装置から使用データを消去するように構成されている。
【0051】
好ましくは、コンピューターは使用時に、装置がメニューモードに入ったときには利用者に音声で通知するように構成されている。
【0052】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データを送信する前に利用者に音声で通知するように構成されている。
【0053】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データの送信中には利用者に音声で通知するように構成されている。
【0054】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データの送信が完了したときには利用者
に音声で通知するように構成されている。
【0055】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データの送信が正常に受信されたときには利用者に音声で通知するように構成されている。
【0056】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データの送信が正常に受信されなかったときには利用者に音声で通知するように構成されている。
【0057】
好ましくは、コンピューターは使用時に、使用データがコンピューター記憶装置から消去されたときには利用者に音声で通知するように構成されている。
【0058】
音声を用いて利用者に通知することにより、利用者がそれぞれ区別可能な複数の異なる音声信号を容易に用いることが可能である。従って、利用者は、送信が開始し、終了し、成功し、あるいは失敗した場合を容易に識別することができ、それに応じた行動を取ることが可能となる。これは特に、圧力センサを用いて装置を制御する場合に有利である。なぜなら、装置が利用者の口内にあることから、利用者には装置を見るのが困難であるためである。しかしながら、口内に装置がある場合には、利用者の耳の近くに装置があるため、音声が容易に聞こえることになる。
【0059】
好ましくは、装置はさらに、コンピューターに接続されたマイクを備える。
【0060】
好ましくは、コンピューターは、マイクを用いて背景雑音を測定し、背景雑音を実質的に回避して使用データを送信するように構成されている。
【0061】
好ましくは、コンピューターは、マイクで開始信号を受信したときに送信を開始するように構成されている。
【0062】
好ましくは、コンピューターは、マイクで終了信号を受信したときに送信を終了するように構成されている。
【0063】
コンピューターは、マイクで失敗信号を受信したときに使用データを再送信するように構成されている。
【0064】
好ましくは、コンピューターは、マイクで消去信号を受信したときに記憶装置から使用データを消去するように構成されている。
【0065】
マイクを備えることは有利である。なぜなら、これによって受信機からフィードバックを受け取り、受信機から送信を制御することが可能になるためである。また、背景雑音を避けて読み取りを行うことにより、背景雑音があっても受信可能な送信を行う送信方法が実施できるようになる。
【0066】
好ましくは、電子式吸入装置は、吸い口および先端部を備え、送信機が先端部に配置されている。
【0067】
好ましくは、送信機は、先端部の外側に使用データを送信するように構成されている。
【0068】
好ましくは、装置は長手方向中心軸を備え、送信機は使用時に、長手方向軸と実質的に平行に、かつ先端部から外側に使用データを送信するように構成されている。
【0069】
装置の物理次元に応じて送信の仕方を構成することにより、利用者は、送信を最適化す
るために、受信機を基準として装置を向けることが可能となる。
【0070】
好ましくは、送信機はスピーカーである。
【0071】
本明細書で用いられる用語「電子喫煙装置」は、電子タバコのみならず、電子タバコ以外の電子喫煙品も含む。例えば、加熱されるが燃焼しない(heat-not-burn:HNB)装置または電動噴霧装置などがあるが、これらは、加圧液体を蓋付容器に貯蔵しており、利用者が装置を利用することにより生じる圧力降下に応答し、電子弁による制御を受けて加圧液体を放出するものである。本明細書では、これらの装置を総称して「電子喫煙装置」と呼ぶが、この用語は、紙巻きタバコの代わりとして、あるいは禁煙装置として用いることが可能である任意の電子装置を包含するように意図されるものであり、これは、従来のようにタバコの燃焼を必要とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
以下、単なる例示として、添付図面を参照しながら各実施形態について説明する。
【
図3】分離式の吸い口および制御部を備えた電子式吸入装置の分解側面斜視図である。
【
図4】
図3の装置において、吸い口および制御部を接続した状態の側面断面図である。
【
図5】分離式の吸い口、気化器および制御部を備えた電子式吸入装置の分解側面斜視図である。
【
図6】
図5の装置において、吸い口、気化器および制御部を接続した状態の側面断面図である。
【
図7】
図3および
図4並びに
図5および
図6の各電子式吸入装置と同様の電子式吸入装置の別の実施形態において、その内部構成部品をより詳細に示した、長手方向の分解断面図である。
【
図8】
図7の電子式吸入装置を組み立てたときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1および
図2を参照すると、電子式吸入装置が、紙巻きタバコ型電子タバコの形態で示されている。電子タバコは、吸い口2およびタバコ本体4を備える。吸い口2は、第1端部に空気出口6を備えており、第2端部にてタバコ本体4に接続される。
【0074】
電子タバコの内部には、吸い口端部に向かって液体貯蔵部8が設けられており、さらに、加熱コイル12を備えた気化器10が設けられている。気化器10は、液体貯蔵部8の隣に配置されており、液体をこの気化器10へと移して気化できるようになっている。回路基板14には、圧力センサ16、送信機18およびコンピューター20が搭載されている。電源用電池22は、装置に電力を供給する。制御部24には、電源用電池22、圧力センサ16を搭載した回路基板14、送信機18およびコンピューター20が収容されている。
【0075】
この電子タバコの全般的な動作は、既知の装置の動作と同様である。利用者が電子タバコで一服する際、吸い口2および空気出口6に吸引力が加わる。電子タバコ内部で圧力が減少すると、電源用電池22から気化器10に電力が供給され、この気化器10によってニコチン液体溶液が気化される。次いで、こうして得られた蒸気が、利用者によって吸引される。
【0076】
本実施例において、電子タバコの動作は、一般的な装置の動作にとどまらない。通常の動作モードでは、利用者が電子タバコに吸引力を加えると、気流が生じることにより、装置内では大気圧からより低い圧力へと圧力降下が生じる。圧力センサ16は、コンピューター20に信号を送信する。コンピューター20は、圧力センサ16からの圧力信号を監視するソフトウェアを実行し、圧力が減少してしきい圧力を下回ったのを判定すると、加熱コイル12を熱して液体貯蔵部8からの液体を気化させるため、加熱コイル12に電流を流す。
【0077】
コンピューター20で動作するソフトウェアにより、装置の動作が制御される。コンピューター20はまた、記憶装置内に使用方法に関するデータを保存することが可能であり、さらに、この使用データを送信することができる。
【0078】
利用者が、通常の動作モードで装置を利用してニコチン蒸気などの気化した液体を吸入する際、コンピューター20はこのときの使用方法を監視し、3つの変数がコンピューター20によって保存される。これらの変数は、吸入回数、平均吸入時間およびセッション回数である。
【0079】
吸入回数は、装置が作動して通常利用中に液体溶液を気化した回数を単純に計数したものである。この計数は、ゼロから開始し、装置が作動して吸入中に蒸気を放出するごとに増分される。従って、上記計数は、装置内の圧力がしきい圧力を下回って減少し、それによって気化器10が作動するごとに増分される。これは単なる計数であるため、コンピューター20は、吸入回数値を保存し、それによってこの値を更新する。従って、コンピューターの記憶装置には一つの値のみが保存される。
【0080】
定義では、1バイトデータは8ビットデータに等しい。この1バイトデータを用いると、0から255までの値をその中に保存することができる。加えて、2バイトデータを用いると、0から65535までの値をその中に保存することができる。従って、吸入回数値は、2バイトデータに十分保存することが可能であるが、使用方法により1バイトデータに保存できる場合もある。
【0081】
利用者が吸入装置を吸入して装置を作動させることにより加熱コイル12を熱して液体貯蔵部8内の液体を気化させる場合は、装置は、利用者が吸引力を加えている間にしか作動しない。実際には、コンピューター20は、気化器10を作動させるために、圧力センサ16で測定された圧力が第1のしきい圧力値を下回って減少したことを判定する。利用者が吸入を止めると、装置内の圧力が上昇する。コンピューター20は、圧力センサ16で測定された圧力が第2のしきい圧力値を上回って上昇したことを判定すると、気化器10を停止させて、気化器10に電流が流れないようにする。第1のしきい圧力値よりも圧力が降下しなければ装置が作動せず、第2のしきい圧力値よりも圧力が上昇しなければ装置が停止しないようになっている。従って、第1のしきい圧力値は、第2のしきい圧力値よりも低い絶対圧力である。第1のしきい圧力と大気圧の間の圧力変化は、第2のしきい圧力と大気圧の間の圧力変化よりも大きいが、これは、装置の誤動作を確実に防ぐのに有用である。
【0082】
コンピューター20が加熱素子12に電流を供給しているときの時間が、吸入時間である。従って、各吸入時間は、利用者が装置を吸入する時間に依存する。コンピューター20は、平均吸入時間を算出して保存することが可能であり、この平均吸入時間は平均的な代表値である。
【0083】
1回目の吸入後には、吸入回数は1であり、平均吸入時間は1回目の吸入時間にすぎない。2回目の吸入後には、吸入回数は2であり、平均吸入時間は1回目と2回目の吸入時
間を合計して2で割ったものになる。n回目の吸入後には、吸入回数はnであり、平均吸入時間は1からnまでの全ての吸入を合計してnで割ったものになる。
【0084】
コンピューター20は、吸入が起きるごとに平均吸入時間を更新することが可能であり、これにより一つの値のみを保存しさえすればよいようになっている。コンピューター20は、1バイトデータ中に、10分の1秒の刻みで0から25.5秒までの値を保存することができる。吸入は通常2秒から3秒続くため、平均吸入時間は、1バイトデータに十分保存することが可能である。
【0085】
電子タバコは、実際の紙巻きタバコの喫煙を再現する。利用者は通常、自身のニコチン摂取量を自分で調節する。従って、液体貯蔵部8内の全液体により、1本の紙巻きタバコから得られるニコチンよりもかなり多くのニコチンが供給されるとしても、利用者はその全てを直ちに吸入することはない。利用者は、数回連続して吸入するがそれらの吸入間におけるよりも長い間隔を置いてから吸入を再開するようにして、装置をセッションで使用してもよい。
【0086】
利用者が装置を吸入する際、コンピューター20は、前回の吸入から経過した時間を測定することができる。次いで、コンピューターは、この時間が、新たな喫煙セッションを規定するしきい期間よりも長い時間であるかどうかを判定する。そのため、吸入と次の吸入の間の待機時間が、所定の新規セッション時間よりも長ければ、コンピューターは、次の吸入で新たにセッションが開始されたと判別する。
【0087】
コンピューター20は、セッション回数を計数してから、この回数を1つの値として更新することが可能である。1バイトデータ中には、コンピューター20は、0から255までの回数を保存することができる。2バイトデータ中には、コンピューター20は、0から65535までの回数を保存することができる。従って、セッション回数は、1バイトデータまたは2バイトデータに保存することができる。
【0088】
コンピューター20が使用データ値を保存する際、これらの値が吸入後には常に現在の値になるように更新される。ある時点で利用者がこの情報にアクセスすると決めてもよい。
【0089】
コンピューター20には送信機18が接続されており、利用者はこの送信機18を用いて使用データを送信することができる。送信を開始するために、利用者は最初に送信機18を作動させる必要がある。データ送信の作動を実現する方法はいくつか存在するが、ある作動例では圧力センサ16を利用する。
【0090】
圧力センサ16は、通常動作では、気化した液体を吸入するのに使用される。そのため、利用者が圧力センサをその通常の用法以外の方法で用いた場合は、装置を用いて使用データを送信することができる。
【0091】
利用者が装置の利用を終えて使用データの送信を望む場合には、利用者が通常モードで装置を利用する方法とは異なる動作を装置に加えることにより、使用データを送信させることができる。通常モードでは、利用者は、通常2~3秒装置を吸入し、実際の紙巻きタバコの喫煙動作を再現する。この状況では、コンピューター20は、圧力センサ16から信号を受け取って気化器10を作動させることにより、加熱コイル12を熱する。
【0092】
送信を開始するには、利用者は装置に向かって短時間吹き込む。圧力センサ16は信号をコンピューター20に送り、コンピューターは、これが通常動作ではなく送信を開始するための信号であると認識する。あるいは、利用者は、装置に向かって短時間吹き込むか
、装置を急速に勢いよく一気に吸引するか、実際に2回以上素早く連続して吹き込むかあるいは吸引する。これらの各状況では、圧力センサ16から信号がコンピューター20に送られることになり、コンピューター20は、これが通常動作ではなく装置が送信を開始するための信号であると判定する。装置が通常モードを終えて送信状態に入るときには、気化器10を作動させないようにすることにより、利用者が、加熱素子12を作動させずに圧力センサ16を用いて引き続き装置を制御できるようにする。
【0093】
送信機18は無線送信機であってもよく、従って、無線手段により対応する受信機に使用データが送信される。本実施例では、送信機18は、ブザーやスピーカーなどの音声発生器であり、音声を用いてデータを送信する。コンピューター20は、データを読み取り、音声によって使用データを送信する。
【0094】
送信は一般に指向性を持つため、送信機18は、タバコ本体4に対して外側に向けた位置に取り付けることが可能であり、これにより、利用者は装置を見て送信方向を決定することができるようになっている。本実施例では、送信方向は、電子タバコと平行にその先端から外部に向かう方向である。従って、利用者は、電子タバコを受信機に向ければ最も効率良く送信されることが分かる。
【0095】
送信が音声によってなされる場合、対応する受信機にはマイクを用いる。本実施例では、受信装置は、マイクを内蔵したスマートフォンである。このスマートフォンはコンピューターを備えており、本機を電子タバコからの送信に対する受信機として構成するために、ソフトウェア・アプリケーションを当該スマートフォンに読み込むことが可能である。
【0096】
使用の際には、電子タバコから使用データを音声信号として送信し、この音声信号をスマートフォンで検出・記録することができる。次いで、スマートフォンで動作するコンピューターは、データを検索し、それを利用者に視覚的に呈示することができる。
【0097】
使用データは、音声によって送信されることから、受信装置で記録されている音声に依存する。従って、大概の日中環境でよくあるような背景雑音が信号に干渉して、受信装置による信号受信を妨げる恐れがある。これを抑制するために、音声信号は、背景雑音の大部分が属する周波数範囲外の周波数範囲内で一斉に送信される。別の実施例では、変調後の音声信号は、利用者にとって好ましい音声ではない場合があるため、可聴周波数外の周波数で音声信号を送信することも可能である。これにより、利用者には音声信号が聞こえなくなる。
【0098】
装置が送信を開始し、データを送信中であり、さらにデータの送信を完了したことを利用者が識別するために、これらの各事象に対応する音声信号が利用者に伝達される。例えば、電子音1回が開始を、電子音2回が送信中を、さらに電子音3回が完了を、それぞれ意味するようにしてよい。
【0099】
使用データは数バイトデータで保存されているだけなので、このデータは、変調後の音声によって容易かつ迅速に送信することができる。また、送信期間中にデータを1回以上送信することができる可能性もある。例えば、利用者が使用データの送信を開始すると、送信終了に先立ち、第1バージョンを送信し、その直後に第2バージョンを送信してもよい。受信装置はいずれも、信号が送信された回数が分かるように構成されている。2種類のバージョンを持つことにより、同一データを送信するのに異なる音声信号を用いることができる。例えば、第2バージョンの音声信号を、異なる周波数、異なる期間、または異なる強度で送信することが可能であろう。これにより、背景雑音を回避する方法が提供されて、受信装置で信号およびデータが確実に受信される。
【0100】
別の実施例では、この着想をさらに生かして、データに対して3種以上のバージョンを、異なる音声信号を用いて連続的に送信することにより、受信機が信号を受信する確率が最大になるようにする。別の実施例では、利用者が信号を停止するまで、使用データを繰り返し送信してよい。これにより、利用者は受信機を適切な場所に置き、受信装置がデータを正常に受信まで待機することができる。
【0101】
利用者は、データ送信を終えると、コンピューターの記憶装置からデータを消去して、新規データを装置の記憶装置内に保存できるようにすることを望むであろう。利用者は、圧力センサ16を用いてこれを行ってよい。あるいは、コンピューター20は、データが送信されたとみなして自動的に記憶装置を消去してもよい。データがコンピューターの記憶装置から消去されたとき、利用者には音声信号(電子音4回など)が通知される。
【0102】
受信機が音声信号の送信開始および送信終了を識別するのに役立てるため、信号の開始を表すヘッダーデータおよび信号の終了を表すフッタデータを、使用データに付加することができる。このようにして、受信機は信号の開始および信号の終了を識別することができるが、これは、使用データが2回以上送信される場合において特に有用である。
【0103】
図3および
図4は、
図1および
図2について示した装置と同様の装置を示す図である。その違いは、吸い口2がタバコ本体4に対して脱着可能になっている点である。吸い口は、雌ねじ山の接続手段を備えており、タバコ本体は、雄ねじ山の接続手段を備えた制御部24である。吸い口2と制御部24を螺合あるいは分離することができる。
【0104】
本実施例では、吸い口2は、液体貯蔵部8および加熱コイル12を有する気化器10を備える。制御部24は、電源用電池22並びに圧力センサ16、送信機18およびコンピューター20を搭載した回路基板14を備える。吸い口2と制御部24を螺合接続すると電気的接続が得られ、気化器10の作動時に加熱コイル12に電流を印加できるようになっている。
【0105】
別の違いは、制御部24がさらにマイク26を備えていることである。マイク26により、送信機および受信機の両方として装置を機能させることが可能になる。使用の際には、コンピューター20は、マイク26を用いて背景雑音を測定することができる。そのため、典型的な背景雑音を回避する使用データの音声信号を送信するのではなく、コンピューター20は、測定した背景雑音を回避するように音声信号を構成することができる。
【0106】
次いで、コンピューター20は、この調整済み音声信号を送信することが可能であり、受信機が信号を正常に受信する確率が高まる。コンピューター20は、測定した背景雑音を用いているため、使用データの音声信号の先頭近くに構成データを付加することが有用な場合もある。この構成データは、信号の周波数、期間および強度についての情報を提供するものであり、受信機は、これに応じた調整を行って送信を受信することが可能となる。
【0107】
さらに、マイク26により、使用データを送信するために装置を作動させる手段も提供される。例えば、利用者は、受信装置を用いて始動音声信号を送出することが可能である。これをマイク26が拾って、使用データの送信が開始されることになる。送信が行われている最中に、受信装置は、音声信号を送出して送信を終了させることが可能である。受信装置が使用データを正常に受信しなかった場合には、受信装置は、音声信号を送出して使用データの送信を繰り返すことが可能である。受信装置が使用データの送信を正常に受信した場合には、受信装置は信号を送出して、装置を通常モードにして記憶装置から使用データを消去することが可能である。
【0108】
使用データが正常に送信されたことをコンピューター20が確認した場合には、コンピューター20は、これを利用者に音声で通知する。同様に、使用データが正常に送信されなかったことをコンピューター20が確認した場合も、コンピューター20は、これを利用者に音声で通知する。
【0109】
コンピューター20は、気化器10が制御部24からねじを緩めて取り外されたときには、送信モードを終えることが可能である。
【0110】
図5および
図6は、
図3および
図4について示した装置と同様の装置を示す図である。ただし、本実施例では、気化器10が吸い口2から取り外し可能になっている。また、
図1および
図2の装置と同様に、回路基板14にはマイクが設けられていない。
【0111】
また、吸い口2は、円筒形の開口を備え、この開口に気化器10を押し込むと締まり嵌めされる。このようにして、吸い口2を気化器10から分離することができる。吸い口2は、液体貯蔵部8を備える。気化器10は、加熱コイル12および芯28を備える。芯28は、気化器10の端から突出しており、吸い口2と制御部10を接続したとき、これが液体貯蔵部8内に浸漬するようになっている。
【0112】
使用時に利用者が装置で吸入すると、液体は、液体貯蔵部8から芯28へ移動し、その後気化用の加熱コイル12へ移動する。
【0113】
図7および
図8は、電子タバコの形態をとった電子式吸入装置の別の実施形態を示す図である。この装置は、
図3および
図4に示した実施形態、並びに
図5および
図6に示した実施形態と同様であるが、
図7および
図8の実施形態は、その内部構成部品をより詳細に示している。この装置は、吸い口31、気化装置32および制御部33を備えており、これらは
図8に示すように組み立てることが可能である。これにより略円筒形の装置が提供され、これを紙巻きタバコに火をつける従来のタバコの代わりとして利用することができる。制御部33には、ねじ式延長部34が設けられており、気化装置32の内側ねじ山35で、このねじ式延長部34を受ける。吸い口31は、略円筒形の樹脂ケース36を備え、ここに気化装置32を押し込んで取り付けることができる。
【0114】
吸い口31は、蒸気を利用者の口に供給するための出口37、および使用時に気化装置32で生成される蒸気用の排出路38を備える。吸い口31はまた、気化可能な液体(使用時に気化装置32によって気化されるニコチン含有液体など)に含浸させた樹脂製の連続発泡材料など、多孔性の貯蔵基材39で構成される液体貯蔵部も含む。この基材39は、液体の貯蔵所として機能すると共に、吸い口31が容易に取り外し可能かつ交換可能であるため、多孔性基材39内の液体を使い切って補充する必要があるときに、詰め替えカプセルとして利用することもできる。
【0115】
気化装置32は、セラミック基材42に支持され、セラミック芯41に巻回させた電子加熱コイル40を含む。略U字型の吸上部材43は、毛細管作用によって貯蔵所39から加熱素子40に向かって液体を吸い上げるように構成されている。吸上部材43は、例えばニッケル発泡体などの金属発泡体で作製してもよい。
【0116】
加熱コイル40には、制御部33内に設置された充電式電池44から、電気接点48、49(
図7および
図8には図示せず、
図9を参照)を通じて電力が供給される。さらに、ねじ山34、35を係合させて制御部33を気化装置32に取り付けると、これらの接点により加熱コイル40が電池44に電気的に接続される。電池44からの電力は、制御部33内の回路基板46に実装された制御回路45の制御を受けて加熱コイル40に供給される。
【0117】
図9に示すように、制御回路45はマイクロコントローラー47を含み、このマイクロコントローラー47には、接点48、49を通じてコイル40に加熱用電流を供給するための電力が電池44から供給される。さらに、
図7に示すねじ山34、35によって制御部33を気化装置32にねじ係合させると、これらの接点により電気的接続が得られる。
【0118】
以下でより詳細に説明するように、圧力センサ50は、利用者が吸い口38を使用することを検出する。
【0119】
また、信号発生装置51を設けることにより、装置の動作状態を示す音声出力または映像出力が利用者に提供される。例えば、信号装置には、利用者が装置を使用する際、赤色に光る発光ダイオードを含めてもよい。また、所定の音声信号または映像信号を信号装置が提供することにより、例えば、電池44が再充電を必要とすることを示してもよい。
【0120】
電池44からマイクロコントローラーへの電流供給は、スイッチングトランジスタ52によって制御される。
【0121】
利用者が吸い口1を使用して出口37から蒸気を吸い込む際、圧力センサ50は、気化装置32内から制御部33の内部を介して回路基板45へと伝わる圧力降下を検出する。マイクロコントローラー47は、センサ50で検出された圧力降下に応答して加熱コイル40に電流を供給する。これにより、毛細管作用によってU字型の吸上部材43を通じて吸い上げられた液体を気化させる。空気流入路55は、気化装置32と制御部33の間の結合部に設けられ、制御部33のねじ式延長部34を介して気化装置32内へと矢印Aの方向に空気を引き込むことができるようになっている。従って、得られた蒸気は、排出路38を介して出口37へと矢印Bの方向に引き出される。
【0122】
図7および
図8の装置の動作は、上述した
図1から
図6の任意の装置における動作と同じでよいため、かかる動作の詳細な説明は、ここでは繰り返さない。しかしながら、
図7および
図8の実施形態の回路基板46を、
図1から
図6の実施形態の回路基板14のように構成してもよく、
図1から
図6の実施形態の回路基板14を、
図7および
図8の実施形態の回路基板46のように構成してもよいことが意図される。具体的には、回路基板46は、
図1から
図6に示した実施形態について上述した通りに構成され、かつ動作可能な送信機18を備えてもよい。そのため、この装置は、使用データを送信することが可能であってもよく、さらに、上述したように本装置を作動させ、および/または操作してもよい。また、圧力センサ50を制御部33内の回路基板46に配置し、気化装置32を、例えば、開口した流路(図示せず)を経て制御部33内の領域と流体連通させて、制御部33内の回路基板46に搭載された圧力センサで気化装置32内の圧力降下を検出できるようにしてもよい。
【0123】
上記に加えて、
図7および
図8の実施形態のマイクロコントローラー47を、
図1から
図6の実施形態のコンピューター20のようにプログラムすることにより、圧力センサ16からの測定圧力を監視し、それに応じて上述の通り装置を制御するようにしてもよいが、特に、ソフトウェアを実行して装置の動作を制御する(上述したように、装置の使用方法を監視したり、使用方法の各変数を監視および算出したりする)ようにしてもよい。
【0124】
回路基板46は、
図3および
図4に示した上述の実施形態のようにマイク26をさらに含んでもよく、これにより、この装置が送信機および受信機の両方として作用し、当該実施形態について上記で詳述したように機能するようにしてもよい。
【0125】
実施例を示して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更および
修正をなし得ることは、当業者にとって理解されよう。コンピューター処理装置は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラーとしてもよい。また、本装置は、紙巻きタバコ型に限定されるものではない。コンピューター処理装置、送信機および圧力センサは、同一の回路基板に搭載されることに限定されない。気化用の加熱コイルは、別の種類の非コイル式加熱素子に置き換えることもできる。送信機の制御は、圧力センサまたはマイクではなく、ボタンもしくはスイッチまたは他の何らかの手段でも可能である。使用データには、より多くの情報(日付、時間および期間を含む各吸入に関する詳細など)を保存することが可能である。
【0126】
種々の問題に対処し本技術を促進するため、本開示の全体は、種々の実施形態を一例として示す。その実施形態の中で特許請求の範囲に記載の1つ以上の発明が実践され、優れた電子式吸入装置が提供される。本開示の利点および特徴は、単に実施態様の代表的事例であって、これらに限定されるものではない。これらは単に特許請求された特徴の理解を助け、教示するために提示される。本開示の利点、実施形態、実施例、機能、特徴、構造、および/または他の態様は、特許請求の範囲で規定される本開示またはその均等物を限定するものではなく、本開示の範囲および/または概念から逸脱することなく他の実施形態を利用し改変することができることを理解すべきである。種々の実施形態は、開示された要素、構成要素、特徴、部品、工程、手段などの種々の組み合わせを好適に含んでも、それらで構成されても、または本質的にそれらで構成されてもよい。さらに本開示には、現在特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明も含まれる。いずれの実施形態のいずれの特徴も、他のいずれかの特徴と別個に、あるいはこれと組み合わせて用いることができる。