(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】炭化物の脱塩装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/40 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
C10L5/40
(21)【出願番号】P 2020152184
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 正也
(72)【発明者】
【氏名】松末 一博
(72)【発明者】
【氏名】福永 史樹
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241010(JP,A)
【文献】特開2005-272595(JP,A)
【文献】特開2006-021956(JP,A)
【文献】米国特許第05302254(US,A)
【文献】特開2006-175410(JP,A)
【文献】特開2017-029960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/40
B09B 1/00-5/00
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水が貯えられた洗浄水槽と、
前記洗浄水を用いて水溶性塩素を含む炭化物を洗浄して脱塩する脱塩槽と、
洗浄した前記炭化物を固体と濾液とに分離する脱水機と、
前記脱水機から排水された前記濾液が貯えられた濾液水槽と、
前記濾液水槽に貯えられた前記濾液を前記洗浄水槽へ送る還送ラインと、
前記還送ラインを通じた前記濾液の循環水量を調整する循環水量調整器と、
前記洗浄水槽へ新水を供給する注水ラインと、
前記注水ラインを通じた前記新水の注水量を調整する注水量調整器と、
前記洗浄水槽に貯えられた前記洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度を測定する洗浄水塩素濃度計と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、脱塩後の前記炭化物の残留塩素濃度目標値と対応する洗浄水塩素濃度目標値を取得し、給水後の前記洗浄水塩素濃度が前記洗浄水塩素濃度目標値に近づくように前記洗浄水槽へ前記濾液及び前記新水が給水されるように、前記循環水量調整器及び前記注水量調整器の動作を制御する、
炭化物の脱塩装置。
【請求項2】
前記濾液水槽に流入する前記濾液の塩素濃度である流入濾液塩素濃度を測定する流入濾液塩素濃度計を更に備え、
前記制御装置は、前記流入濾液塩素濃度と前記洗浄水塩素濃度との差を溶出塩素濃度と規定し、前記溶出塩素濃度が所定の許容範囲を超える場合に前記洗浄水塩素濃度目標値を低く修正し、前記溶出塩素濃度が所定の許容範囲を下回る場合に前記洗浄水塩素濃度目標値を高く修正する、
請求項1に記載の炭化物の脱塩装置。
【請求項3】
前記洗浄水塩素濃度目標値が、脱塩後の前記炭化物の残留塩素濃度と前記洗浄水塩素濃度との所定の関係に基づいて得られる前記残留塩素濃度目標値と対応する前記洗浄水塩素濃度である、
請求項1又は2に記載の炭化物の脱塩装置。
【請求項4】
前記濾液水槽に貯えられた前記濾液の塩素濃度である滞留濾液塩素濃度を測定する滞留濾液塩素濃度計と、
前記洗浄水槽の洗浄水液位を測定する液位計とを、更に備え、
前記制御装置は、前記洗浄水塩素濃度、前記滞留濾液塩素濃度、及び前記洗浄水液位の測定値を取得し、前記洗浄水塩素濃度、前記滞留濾液塩素濃度、前記洗浄水液位、及び、予め記憶された前記新水の塩素濃度に基づいて、給水後の前記洗浄水塩素濃度が前記洗浄水塩素濃度目標値に近づくような前記濾液の前記循環水量と前記新水の前記注水量との組み合わせを求める、
請求項1~3のいずれか一項に記載の炭化物の脱塩装置。
【請求項5】
洗浄水槽に貯えられた洗浄水を用いて水溶性塩素を含む炭化物を洗浄して脱塩するステップと、
洗浄した前記炭化物を固体と濾液とに分離し、前記濾液を濾液水槽へ排水するステップと、
脱塩後の前記炭化物の残留塩素濃度目標値と対応する前記洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度目標値を取得するステップと、
前記洗浄水槽に貯えられた前記洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度を測定するステップと、
給水後の前記洗浄水塩素濃度が前記洗浄水塩素濃度目標値に近づくように、前記濾液水槽に貯えられた前記濾液及び新水を前記洗浄水槽へ給水するステップと、を含む、
炭化物の脱塩方法。
【請求項6】
前記濾液水槽に流入する前記濾液の塩素濃度である流入濾液塩素濃度を測定するステップと、
前記流入濾液塩素濃度と前記洗浄水塩素濃度との差を溶出塩素濃度と規定し、前記溶出塩素濃度が所定の許容範囲を超える場合に前記洗浄水塩素濃度目標値を低く修正し、前記溶出塩素濃度が所定の許容範囲を下回る場合に前記洗浄水塩素濃度目標値を高く修正するステップとを、更に含む、
請求項5に記載の炭化物の脱塩方法。
【請求項7】
前記洗浄水塩素濃度目標値が、脱塩後の前記炭化物の残留塩素濃度と前記洗浄水塩素濃度との所定の関係に基づいて得られる前記残留塩素濃度目標値と対応する前記洗浄水塩素濃度である、
請求項5又は6に記載の炭化物の脱塩方法。
【請求項8】
前記濾液水槽に貯えられた前記濾液の塩素濃度である滞留濾液塩素濃度を測定するステップと、
前記洗浄水槽の洗浄水液位を測定するステップと、
前記洗浄水塩素濃度、前記滞留濾液塩素濃度、前記洗浄水液位、及び、前記新水の塩素濃度に基づいて、前記洗浄水塩素濃度が前記洗浄水塩素濃度目標値に近づくような前記洗浄水槽への前記濾液の循環水量と前記新水の注水量との組み合わせを求めるステップとを、更に含む、
請求項5~7のいずれか一項に記載の炭化物の脱塩方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素を含有する炭化物から塩素を水洗浄除去する脱塩装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃ごみを炭化炉で炭化させることにより、燃料や工業原料として利用される炭化物製品を製造することが行われている。このように製造された炭化物製品はごみ由来の塩素を含有する。多量の塩素を含有する炭化物製品が炉の燃料として使用されると、炉やダクトが腐食したり、環境問題が引き起こされたりする可能がある。そこで、特許文献1では、塩素を含有する炭化物を水洗浄して水溶性塩素を除去する工程を含む、炭化物の製造方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の炭化物の製造方法では、可燃ごみを炭化炉で炭化させることにより得られた炭化物を、水洗浄槽で水洗浄して塩素濃度を低下させたうえ、脱水及び乾燥させて炭化物を得る。水洗浄槽には、炭化物の残存塩素濃度を低下させるために必要量の水が注入されるとともに、脱水排水の一部が返送される。脱水排水の残部は、炭化炉からの高温排ガスの冷却塔へ送られてここで蒸発する。
【0004】
また、水洗浄槽の洗浄水を固液分離して得られる濾液(即ち、上記の脱水排水)から塩素を効率よく回収するために、濾液の塩素濃度が所定値となるまで濾液を循環利用することが、特許文献2で提案されている。
【0005】
特許文献2に記載の塩素含有粉体の洗浄方法は、水溶性塩素含有粉末と、この水溶性塩素含有粉末に対して2~5質量倍の洗浄水とを攪拌してスラリーとし、得られたスラリーを圧搾して固形分と塩素を含む濾液とに分離し、この濾液に含まれる塩素及び/又は塩素化合物を蒸発或いは析出させて回収する。ここで、予め濾液の導電率の許容値を定めておき、測定された濾液の導電率が上記許容値以下であれば濾液が洗浄水として再利用され、測定された濾液の導電率が許容値を超えていれば濾液に所定の排水処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-272595号公報
【文献】特開2009-241010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
季節や回収場所・曜日によって回収されるごみ質が変動し、ごみ質の変動に伴って水脱塩前のごみ由来の炭化物の塩素濃度も変動する。従って、塩素濃度の大小に関係なく炭化物を一律に水洗浄して脱塩すると、脱塩後の炭化物の塩素濃度も変動することとなる。塩素濃度が所定の基準値を超えた炭化物製品は、燃料として利用することは難しいので廃棄物として取り扱われる。また、塩素濃度が所定の基準値以下であっても、炭化物製品の塩素濃度にばらつきがあることは望ましくない。つまり、ごみ由来の炭化物製品の有効利用を促進するためには、炭化物製品の塩素濃度が低く且つ安定していることが肝要である。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、塩素濃度が低く且つ安定した炭化物製品を製造する技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る炭化物の脱塩装置は、
洗浄水が貯えられた洗浄水槽と、
前記洗浄水を用いて水溶性塩素を含む炭化物を洗浄して脱塩する脱塩槽と、
洗浄した前記炭化物を固体と濾液とに分離する脱水機と、
前記脱水機から排水された前記濾液が貯えられた濾液水槽と、
前記濾液水槽に貯えられた前記濾液を前記洗浄水槽へ送る還送ラインと、
前記還送ラインを通じた前記濾液の循環水量を調整する循環水量調整器と、
前記洗浄水槽へ新水を供給する注水ラインと、
前記注水ラインを通じた前記新水の注水量を調整する注水量調整器と、
前記洗浄水槽に貯えられた前記洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度を測定する洗浄水塩素濃度計と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、脱塩後の前記炭化物の残留塩素濃度目標値と対応する洗浄水塩素濃度目標値を取得し、給水後の前記洗浄水塩素濃度が前記洗浄水塩素濃度目標値に近づくように前記洗浄水槽へ前記濾液及び前記新水が給水されるように、前記循環水量調整器及び前記注水量調整器の動作を制御することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の一態様に係る炭化物の脱塩方法は、
洗浄水槽に貯えられた洗浄水を用いて水溶性塩素を含む炭化物を洗浄して脱塩するステップと、
洗浄した前記炭化物を固体と濾液とに分離し、前記濾液を濾液水槽へ排水するステップと、
脱塩後の前記炭化物の残留塩素濃度目標値と対応する前記洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度目標値を取得するステップと、
前記洗浄水槽に貯えられた前記洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度を測定するステップと、
給水後の前記洗浄水塩素濃度が前記洗浄水塩素濃度目標値に近づくように、前記濾液水槽に貯えられた前記濾液及び新水を前記洗浄水槽へ給水するステップと、を含むことを特徴としている。
【0011】
上記の炭化物の脱塩装置及び炭化物の脱塩方法は、「洗浄水塩素濃度と炭化物の残留塩素濃度とが相関し、洗浄水塩素濃度を残留塩素濃度目標値と対応する洗浄水塩素濃度目標値に制御することにより、脱塩後の炭化物の残留塩素濃度を残留塩素濃度目標値とすることができる」いう新たな知見に基づいている。よって、上記構成の炭化物の脱塩装置及び炭化物の脱塩方法によれば、脱塩後炭化物の残留塩素濃度は脱塩前炭化物の含有塩素濃度より低く且つ概ね残留塩素濃度目標値となる。これにより、塩素濃度が低く且つ安定した炭化物製品を製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塩素濃度が低く且つ安定した炭化物製品を製造する技術を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る脱塩装置を備えるごみの炭化燃料化施設の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、脱塩装置の構成を洗浄水の流れとともに示すブロック図である。
【
図3】
図3は、炭化物の脱塩処理の流れを説明する図である。
【
図4】
図4は、濾液水槽へ流入する濾液の塩素濃度と、脱塩後炭化物の残留塩素濃度との関係を示すグラフ1である。
【
図5】
図5は、洗浄水槽の洗浄水の塩素濃度と、脱塩後炭化物の残留塩素濃度との関係を表すグラフ2である。
【
図6】
図6は、脱塩後炭化物の残留塩素濃度と溶出塩素濃度との相関関係を表すグラフ3である。
【
図7】
図7は、洗浄水槽への給水処理における制御装置の処理の流れを示す図である。
【
図8】
図8は、制御装置の給水制御部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る炭化物の脱塩装置は、粉末又は粉粒状の炭化物から水溶性塩素を水洗除去する装置である。以下では、この脱塩装置をごみの炭化燃料化施設に適用させた実施形態について説明する。但し、本発明に係る脱塩装置は、本実施形態に限定されず、炭化物から水溶性塩素を除去するために広く適用することができる。
【0015】
〔炭化燃料化施設100の概略構成〕
まず、ごみの炭化燃料化施設100の概略構成から説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る脱塩装置3を備えるごみの炭化燃料化施設100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示す炭化燃料化施設100は、炭化炉1、炭化物取出装置2、脱塩装置3、及び、造粒装置4を備える。炭化燃料化施設100は、可燃ごみから炭化燃料を製造する設備である。炭化燃料は、燃料として使用される炭化物製品であり、塩素濃度は所定の規定値以下に制限される。
【0016】
炭化炉1は、可燃ごみを炭化させる炉である。炭化炉1の形式は特に限定されない。炭化炉1では、投入された可燃ごみが無酸素雰囲気下で加熱されることにより炭化され、炭化物となる。炭化炉1の排ガスは、図示されない排ガス処理系統へ送られて処理される。排ガス処理系統では、排ガス中の可燃ガスを完全燃焼させ、排ガスから熱を回収し、排ガスに対し除塵、脱硫、ダイオキシン類除去等の処理を行ったうえで、大気へ放出する。
【0017】
炭化炉1で生成された炭化物は、炭化物取出装置2に導入される。炭化物取出装置2は、炭化物を一時的に貯えて、定量ずつ次工程の脱塩装置3へ供給する。
【0018】
脱塩装置3は、炭化物を水で洗浄することにより、炭化物に含まれる水溶性塩素を洗浄水へ溶出させ、炭化物の塩素濃度を低下させる。脱塩された炭化物は、脱水されたうえで次工程へ送られる。脱塩装置3については、後ほど詳述する。
【0019】
造粒装置4は、脱塩装置3で水洗浄により脱塩された炭化物を、造粒し、乾燥させて、ペレット状の炭化燃料とする。
【0020】
〔脱塩装置3の構成〕
次に、脱塩装置3の構成について詳細に説明する。
図2は、脱塩装置3の構成を洗浄水の流れとともに示すブロック図である。
図2に示すように、脱塩装置3は、脱塩槽31、脱水機32、洗浄水槽33、濾液水槽34、及び、制御装置35を備える。
【0021】
洗浄水槽33には、洗浄水が貯えられている。洗浄水槽33には、保有水量Msの指標となる液位を測定する液位計65が設けられている。液位計65で測定された液位に基づいて、洗浄水槽33の保有水量Msを求めることができる。洗浄水槽33には、洗浄水の塩素濃度(以下、「洗浄水塩素濃度Es」と称する)を直接的又は間接的に測定する洗浄水塩素濃度計61が設けられている。本実施形態では、洗浄水の塩素濃度の指標となる導電率を測定する導電率計が洗浄水塩素濃度計61として設けられている。洗浄水塩素濃度計61で測定された導電率に基づいて、洗浄水塩素濃度Esを求めることができる。
【0022】
脱塩槽31には、脱塩の対象である所定量の炭化物が投入される。また、脱塩槽31には、洗浄水槽33から洗浄水が給水される。脱塩槽31では、炭化物は洗浄水と攪拌されて炭化物スラリーとなり、炭化物に含まれる水溶性塩素又は塩素化合物が洗浄水に溶出する。この攪拌の際に、炭化物中の塩素又は塩素化合物の溶出を促進するために、脱塩槽31内が加温されてもよい。
【0023】
炭化物スラリーは、脱水機32に投入される。脱水機32では、炭化物スラリーが圧搾されて、炭化物の脱水ケーキ(固体分)と濾液とに分離される。炭化物の脱水ケーキは、次工程の造粒装置4へ送られる。また、濾液は、濾液水槽34へ送られる。
【0024】
濾液水槽34には、脱水機32から排水された濾液が貯えられている。濾液水槽34には、保有水量の指標となる液位(以下、「濾液液位Lf」と称する)を測定する液位計66が設けられている。濾液水槽34には、濾液水槽34に貯えられた濾液の塩素濃度(以下、「滞留濾液塩素濃度Ef」と称する)を直接的に又は間接的に測定する滞留濾液塩素濃度計62が設けられている。本実施形態においては、濾液の塩素濃度の指標となる導電率を測定する導電率計が滞留濾液塩素濃度計62として設けられている。滞留濾液塩素濃度計62で測定された導電率に基づいて、濾液水槽34に貯えられた濾液の塩素濃度を求めることができる。
【0025】
濾液水槽34の入口には、濾液水槽34に流入する濾液の塩素濃度(以下、「流入濾液塩素濃度Ei」と称する)を直接的又は間接的に測定する流入濾液塩素濃度計63が設けられている。本実施形態においては、流入する濾液の塩素濃度の指標となる導電率を測定する導電率計が流入濾液塩素濃度計63として設けられている。流入濾液塩素濃度計63で測定された導電率に基づいて、濾液水槽34に流入する濾液の塩素濃度を求めることができる。
【0026】
濾液水槽34に貯えられた濾液の一部は、還送ライン41を通じて、洗浄水槽33へ送られる。還送ライン41には、送液ポンプ55と、循環水量調整器51とが設けられている。循環水量調整器51によって、濾液水槽34から洗浄水槽33へ送られる濾液が「循環水量Mf」に調整される。
【0027】
また、濾液水槽34に貯えられた濾液の一部は、排水ライン43を通じて濾液水槽34から排水される。排水ライン43には、排水量調整器53が設けられている。排水量調整器53によって、濾液水槽34から排水ライン43を通じて排出される濾液が「排水量Md」に調整される。濾液水槽34から排出された濾液は、排水ライン43を通じて前述の炭化炉1の排ガス処理系統へ送られ、高温の排ガス中に噴霧されて蒸発する(蒸発処理)。
【0028】
洗浄水槽33では、還送ライン41から流入する濾液と、注水ライン42から流入する新水とが混合する。つまり、洗浄水槽33に貯えられている洗浄水は、濾液と新水との混合水である。新水として、工業用水、製造工程から排出される二次排水等が用いられてよい。注水ライン42には、洗浄水槽33へ流入する新水の流量を調整する注水量調整器52が設けられている。注水量調整器52によって、洗浄水槽33へ流入する新水が「注水量Mw」に調整される。新水の塩素濃度を「新水塩素濃度Ew」と称する。新水塩素濃度Ewは既知の値である。
【0029】
制御装置35は、プロセッサ、ROM及びRAMなどのメモリ、及び、I/O部(いずれも図示略)を備えるコンピュータにより構成される。上記のプロセッサは、集中制御を行う単独のプロセッサであってもよいし、分散制御を行う複数のプロセッサであってもよい。
【0030】
制御装置35は、脱塩装置3の各種のプロセス値を監視する監視部35aと、脱塩装置3の給水を制御する給水制御部35bとを備える。
【0031】
制御装置35のプロセッサは、I/O部を介して洗浄水塩素濃度計61、滞留濾液塩素濃度計62、流入濾液塩素濃度計63、液位計65、及び液位計66と接続されている。制御装置35の監視部35aは、洗浄水塩素濃度計61で測定された洗浄水塩素濃度Es(又は、洗浄水導電率)、滞留濾液塩素濃度計62で測定された滞留濾液塩素濃度Ef(又は、濾液導電率)、流入濾液塩素濃度計63で測定された流入濾液塩素濃度Ei(又は、流入濾液導電率)、液位計65で測定された洗浄水液位Ls、及び、液位計66で測定された濾液液位Lfを取得し、これらの値を監視する。
【0032】
制御装置35のプロセッサは、I/O部を介して循環水量調整器51、注水量調整器52、排水量調整器53、及び、送液ポンプ55と接続されている。制御装置35の給水制御部35bは、循環水量調整器51、注水量調整器52、排水量調整器53、及び、送液ポンプ55の動作を制御する。
【0033】
制御装置35のメモリやI/O部を介して接続された記憶装置(図示略)には、プロセッサが実行する基本プログラムやアプリケーションプログラム等のプログラムや、データが格納されている。プログラムは、プロセッサに後述する脱塩装置3の制御を行わせるように構成されている。プロセッサがプログラムを読み出して実行することによって、制御装置35は後述する脱塩装置3の制御を行う。
【0034】
〔炭化物の脱塩処理の流れ〕
ここで、
図3を用いて、上記構成の脱塩装置3を用いた炭化物の脱塩処理の流れを説明する。
【0035】
洗浄水槽33には洗浄水が貯えられている。洗浄水槽33に貯えられた洗浄水は所定量ずつ脱塩槽31へ供給され(ステップS11)、洗浄水槽33の洗浄水液位Lsは次の給水処理まで徐々に減少する。
【0036】
次に、洗浄水槽33から送られた洗浄水を用いて、脱塩槽31で水溶性塩素を含む炭化物の洗浄が行われる(ステップS12)。洗浄に際し、脱塩槽31へ供給された洗浄水は炭化物と攪拌されて、炭化物スラリーの態様で脱水機32へ投入される。
【0037】
続いて、脱水機32で、炭化物スラリーを脱水及び濾過することにより、炭化物スラリーが固体と濾液とに分離され(ステップS13)、固体は造粒装置4へ送られ、濾液が濾液水槽34へ排水される(ステップS14)。濾液は、脱水機32から連続的に排出されて濾液水槽34へ流入し、濾液水槽34の濾液液位Lfは徐々に上昇する。
【0038】
脱水機32からの排水が終わると、給水処理が開始される(ステップS15)。給水処理では、送液ポンプ55が稼働し、濾液水槽34から循環水量Mfの濾液が還送ライン41を通じて洗浄水槽33へ供給される。この濾液の塩素濃度は、滞留濾液塩素濃度Efである。また、給水処理において、洗浄水槽33には、注水量Mwの新水が洗浄水槽33へ流入する。この新水の塩素濃度は、既知の新水塩素濃度Ewである。1回の給水処理で、洗浄水槽33に対し注水量Mwと循環水量Mfとを合わせた量の給水が行われ、洗浄水槽33の洗浄水液位Lsが上昇する。
【0039】
濾液水槽34から洗浄水槽33への濾液の送液と同時に(又は、任意のタイミングで)、濾液水槽34の排水量Mdの濾液は排水ライン43を通じて排出される。濾液の排水量Mdは、炭化燃料化施設100内で蒸発処理の可能な所定の許容排水量以下に制限される。
【0040】
〔脱塩後炭化物の塩素濃度制御方法〕
続いて、脱塩装置3による脱塩後炭化物の塩素濃度制御方法について説明する。
【0041】
出願人は、脱塩装置3を用いて、一定の洗浄水塩素濃度Esの洗浄水で様々な含有塩素濃度の炭化物を水洗浄して、流入濾液塩素濃度Eiの測定と、脱塩後炭化物(即ち、製品である炭化燃料)の残留塩素濃度Cの分析とを行った(第1試験)。また、出願人は、脱塩装置3を用いて、様々な洗浄水塩素濃度Esの洗浄水で一定の含有塩素濃度の炭化物を水洗浄して、洗浄水塩素濃度Esの測定と、脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cの分析とを行った(第2試験)。塩素を含む液体(濾液及び洗浄水)の塩素濃度と、当該液体の電気導電率との間には正の相関があることが知られている。そこで、洗浄水塩素濃度Es及び流入濾液塩素濃度Eiの測定に際し、液体の塩素濃度の指標として即時且つ容易に測定可能な電気導電率を用いた。また、脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cの分析に際し、造粒装置4の出口で炭化燃料を採取し、当該炭化燃料の塩素濃度の分析した。
【0042】
図4には、上記の第1試験で得られた流入濾液塩素濃度Eiと脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cとの関係を示すグラフ1が示されている。グラフ1の縦軸は脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cを表し、横軸は流入濾液塩素濃度Eiの測定値を表す。流入濾液塩素濃度Eiは濾液水槽34への濾液の入口に設置された流入濾液塩素濃度計63の測定値に基づく値である。グラフ1から、洗浄水塩素濃度Esが一定の場合、流入濾液塩素濃度Eiは所定の範囲内において脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cと正の相関があり、流入濾液塩素濃度Eiが高くなるほど脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cが高くなることがわかる。
【0043】
図5には、上記の第2試験で得られた洗浄水槽33の洗浄水塩素濃度Esと脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cとの関係を表すグラフ2が示されている。グラフ2の縦軸は脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cを表し、横軸は洗浄水塩素濃度Esを表す。洗浄水塩素濃度Esは洗浄水槽33内に設置された洗浄水塩素濃度計61の測定値に基づく値である。グラフ2から、脱塩前炭化物の含有塩素濃度が一定の場合、洗浄水塩素濃度Esは所定の範囲内において脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cと正の相関があり、洗浄水塩素濃度Esが高くなるほど脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cが高くなることがわかる。
【0044】
流入濾液塩素濃度Eiと洗浄水塩素濃度Esとの差を、溶出塩素濃度ΔEと規定する(ΔE=Ei-Es)。溶出塩素濃度ΔEは、脱塩前炭化物から洗浄水へ溶出した塩素量と正の相関がある。一方で、洗浄水の塩素濃度が一定の場合に、脱塩前炭化物の含有塩素量が多いほど、洗浄水へ溶出する塩素量が多くなる。このことと上記試験の結果とから、脱塩後炭化物の残留塩素量Cと溶出塩素濃度ΔEとの間の相関関係が推定される。
図6に示すグラフ3は、脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cと溶出塩素濃度ΔEとの相関関係Kを示している。相関関係Kは、実験により或いはシミュレーションにより求め得る。グラフ3に基づいて、溶出塩素濃度ΔEが増加すれば脱塩後炭化物の残留塩素量Cが増加したことが推定され、溶出塩素濃度ΔEが減少すれば脱塩後炭化物の残留塩素量Cが減少したことが推定される。
【0045】
以上から、脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cと洗浄水塩素濃度Esとの既知の関係(例えば、グラフ2を参照)に基づいて、脱塩後の炭化物の残留塩素濃度目標値Ctに対応する洗浄水塩素濃度目標値Estが特定され、洗浄水の塩素濃度を洗浄水塩素濃度目標値Estに制御することで残留塩素濃度が残留塩素濃度目標値Ctとなる脱塩後炭化物が得られると考えられる。そこで、本実施形態に係る脱塩装置3では、給水後の洗浄水塩素濃度Es’が洗浄水塩素濃度目標値Estとなるように洗浄水槽33に対し給水が行われ、この給水後の洗浄水で炭化物を水洗浄するように構成されている。これにより脱塩装置3で脱塩後の炭化物の残留塩素濃度は、残留塩素濃度目標値Ctとなる。給水後の洗浄水の洗浄水塩素濃度Es’は、次式(1)で求めることができる。
【0046】
【0047】
式(1)において、滞留濾液塩素濃度Efは測定値、循環水量Mfは変数、新水塩素濃度Ewは既知の定数、注水量Mwは変数、洗浄水塩素濃度Esは測定値、洗浄水槽33の保有水量Msは測定値である。制御装置35は、給水後の洗浄水塩素濃度Es’を洗浄水塩素濃度目標値Estに制御するように循環水量調整器51、注水量調整器52、及び排水量調整器53を動作させる。循環水量Mfは濾液水槽34への濾液の流入量から排水量Mdを差し引いた値であってよい。排水量Mdが略一定であることから、循環水量Mfは変数であるが、定数と見做すことができる。この場合、変数は実質的に注水量Mwのみとなる。
【0048】
〔給水処理の流れ〕
図7は、洗浄水槽33への給水処理における制御装置35の処理の流れを示す図である。以下、
図7を参照しながら、給水処理における制御装置35の処理の流れを説明する。
【0049】
制御装置35は、脱塩装置3の運転中に、滞留濾液塩素濃度Efの計測値、流入濾液塩素濃度Eiの計測値、及び洗浄水塩素濃度Esの計測値を取得し、これらの値を監視している。また、制御装置35は、脱塩装置3の運転中に、洗浄水槽33の液位計65の計測値、及び、濾液水槽34の液位計66の計測値を取得し、これらの値を監視している。
【0050】
制御装置35は、給水処理を開始すると、濾液液位Lfに基づいて濾液の合計排出量を求める(ステップS1)。合計排出量は、循環水量Mfと排水量Mdとの和である。また、合計排出量は、現在の濾液液位Lfから所定の基準液位までの、濾液の体積又は質量であってよい。これにより、給水処理を終えた時点で、濾液液位Lfは常に基準液位へ戻ることとなる。
【0051】
制御装置35は、合計排出量を循環水量Mfと排水量Mdとに分配する(ステップS2)。排水量Mdは許容排水量以下であって、小さな値であることが望ましい。また、排水量Mdは設備の処理能力に応じた値であり、固定値であってよい。合計排出量から排水量Mdを差し引いた値が循環水量Mfとなる。
【0052】
次に、制御装置35は、洗浄水塩素濃度目標値Estを取得する(ステップS3)。脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cと洗浄水塩素濃度Esとの既知の関係(例えば、グラフ2に示す関係)に基づいて、残留塩素濃度目標値Ctと対応する洗浄水塩素濃度目標値Estが求まる。制御装置35は、洗浄水塩素濃度目標値Estを求め、それを取得してよい。或いは、制御装置35は予め記憶された又は外部から入力された洗浄水塩素濃度目標値Estを取得してもよい。
【0053】
制御装置35は、給水後の洗浄水塩素濃度Es’が洗浄水塩素濃度目標値Estとなるように、洗浄水塩素濃度Esのフィードフォワード制御及びフィードバック制御を行う。
図8は、制御装置35の給水制御部35bの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、制御装置35の給水制御部35bは、外乱検出器351、FF(フィードフォワード)制御器352、及び、FB(フィードバック)制御器353を有する。
【0054】
外乱検出器351は、外乱(ここでは、脱塩前炭化物の含有塩素濃度の変動に起因して脱塩後炭化物の残留塩素濃度が変動すること)の指標として、溶出塩素濃度ΔEを求める(ステップS4)。前述の通り、溶出塩素濃度ΔEは脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cと相関があることから、溶出塩素濃度ΔEの変動に基づいて脱塩前炭化物の残留塩素濃度Cの変動を推定することができる。溶出塩素濃度ΔEは、流入濾液塩素濃度Eiの計測値と洗浄水塩素濃度Esの計測値との差である。
【0055】
FF制御器352は、溶出塩素濃度ΔEに基づいて、FF補償値を生成する(ステップS5)。溶出塩素濃度ΔEに対し、許容範囲(不感帯)が予め設定される。溶出塩素濃度ΔEが許容範囲内の場合、FF補償値はゼロ又は微小な値である。溶出塩素濃度ΔEが許容範囲を上回る場合、FF補償値は負の値(即ち、給水後の洗浄水塩素濃度Es’の値が低く修正されるような値)である。溶出塩素濃度ΔEが許容範囲を下回る場合、FF補償値は正の値(即ち、給水後の洗浄水塩素濃度Es’の値が高く修正されるような値)である。溶出塩素濃度ΔEからFF補償値を求める演算方法(マップや演算式など)は予めFF制御器352に記憶されている。
【0056】
FB制御器353は、取得した洗浄水塩素濃度目標値Estと、測定された洗浄水塩素濃度Esとの偏差と、その他演算に必要な数値(滞留濾液塩素濃度Ef、循環水量Mf、新水塩素濃度Ew、及び洗浄水槽33の保有水量Ms)とに基づいて、FB操作量を求める(ステップS6)。FB操作量は、新水の注水量Mwに関する操作量を含む。ここで、FB制御器353は、式(1)を利用して新水の注水量Mwを求めることができる。
【0057】
FB操作量は、FF制御器352で生成されたFF補償値が加算されたうえで、制御対象である注水量調整器52へ出力される。FB操作量にFF補償値が加算されることによって、脱塩前炭化物の含有塩素濃度にばらつきが生じても、脱塩後炭化物の残留塩素濃度は残留塩素濃度目標値Ctと対応した略一定の値に保たれる。
【0058】
制御装置35は、排水量Mdの濾液が濾液水槽34から排水ライン43へ流出するように、排水量調整器53を動作させる(ステップS7)。また、制御装置35は、循環水量Mfの濾液が濾液水槽34から洗浄水槽33へ送られるように、送液ポンプ55を稼働させる共に循環水量調整器51を動作させる(ステップS8)。同時に、制御装置35は、注水量Mwの新水が洗浄水槽33へ流入するように、注水量調整器52を動作させる(ステップS9)。なお、上記ステップS7~9の順番は問わない。このようにして、給水後の洗浄水塩素濃度Es’が洗浄水塩素濃度目標値Estに近づくように、洗浄水槽33に給水が行われる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態に係る炭化物の脱塩装置3は、
洗浄水が貯えられた洗浄水槽33と、
洗浄水を用いて水溶性塩素を含む炭化物を洗浄して脱塩する脱塩槽31と、
洗浄した炭化物を固体と濾液とに分離する脱水機32と、
脱水機32から排水された濾液が貯えられた濾液水槽34と、
濾液水槽34に貯えられた濾液を洗浄水槽33へ送る還送ライン41と、
還送ライン41を通じた濾液の循環水量を調整する循環水量調整器51と、
洗浄水槽33へ新水を供給する注水ライン42と、
注水ライン42を通じた新水の注水量を調整する注水量調整器52と、
洗浄水槽33に貯えられた洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度Esを測定する洗浄水塩素濃度計61と、
制御装置35とを備える。
そして、制御装置35は、脱塩後の炭化物の残留塩素濃度目標値Ctと対応する洗浄水塩素濃度目標値Estを取得し、給水後の洗浄水塩素濃度Es’が洗浄水塩素濃度目標値Estに近づくように洗浄水槽33へ濾液及び新水が給水されるように、循環水量調整器51及び注水量調整器52の動作を制御することを特徴としている。
【0060】
同様に、本実施形態に係る炭化物の脱塩方法は、
洗浄水槽33に貯えられた洗浄水を用いて水溶性塩素を含む炭化物を洗浄して脱塩するステップと、
脱塩した炭化物を固体と濾液とに分離し、濾液を濾液水槽34へ排水するステップと、
脱塩後の炭化物の残留塩素濃度目標値Ctと対応する洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度目標値Estを取得するステップと、
洗浄水槽33に貯えられた洗浄水の塩素濃度である洗浄水塩素濃度Esを測定するステップと、
給水後の洗浄水塩素濃度Esが洗浄水塩素濃度目標値Estに近づくように、濾液水槽34に貯えられた濾液及び新水を洗浄水槽33へ給水するステップと、を含むことを特徴としている。
【0061】
上記の炭化物の脱塩装置3及び炭化物の脱塩方法において、洗浄水塩素濃度目標値Estは、例えば、脱塩後の炭化物の残留塩素濃度Cと洗浄水塩素濃度Esとの所定の関係に基づいて得られる残留塩素濃度目標値Ctと対応する洗浄水塩素濃度Esである。上記の所定の関係は、脱塩装置3の規模や炭化物の特性に応じて異なることが想定され、実験により或いはシミュレーションにより得られる。
【0062】
上記脱塩装置3及び炭化物の脱塩方法は、「洗浄水塩素濃度Esと炭化物の残留塩素濃度Cとが相関し、洗浄水塩素濃度Esを残留塩素濃度目標値Ctと対応する洗浄水塩素濃度目標値Estに制御することにより、脱塩後の炭化物の残留塩素濃度Cを残留塩素濃度目標値Ctとすることができる」いう新たな知見に基づいている。よって、上記構成の炭化物の脱塩装置3及び炭化物の脱塩方法によれば、脱塩後の炭化物の残留塩素濃度Cは、脱塩前炭化物の塩素濃度より低く且つ概ね残留塩素濃度目標値Ctとなる。これにより、低く安定した残留塩素濃度の炭化物製品(例えば、炭化燃料)を製造することができる。
【0063】
また、本実施形態において、上記炭化物の脱塩装置3は、濾液水槽34に流入する濾液の塩素濃度である流入濾液塩素濃度Eiを測定する流入濾液塩素濃度計63を更に備え、制御装置35は、流入濾液塩素濃度Eiと洗浄水塩素濃度Esとの差を溶出塩素濃度ΔEと規定し、溶出塩素濃度ΔEが所定の許容範囲を超える場合に洗浄水塩素濃度目標値Estを低く修正し、溶出塩素濃度ΔEが所定の許容範囲を下回る場合に洗浄水塩素濃度目標値Estを高く修正するように構成されている。
【0064】
同様に、本実施形態において、上記炭化物の脱塩方法は、濾液水槽34に流入する濾液の塩素濃度である流入濾液塩素濃度Eiを測定するステップと、流入濾液塩素濃度Eiと洗浄水塩素濃度Esとの差を溶出塩素濃度ΔEと規定し、溶出塩素濃度ΔEが所定の許容範囲を超える場合に洗浄水塩素濃度目標値Estを低く修正し、溶出塩素濃度ΔEが所定の許容範囲を下回る場合に洗浄水塩素濃度目標値Estを高く修正するステップとを、更に含む。
【0065】
上記の炭化物の脱塩装置3及び炭化物の脱塩方法によれば、脱塩後炭化物の残留濃度の変動(これは、脱塩前炭化物の含有塩素濃度の変動に起因する)に追従して、洗浄水塩素濃度目標値Estが調整されることになる。よって、脱塩前炭化物の含有塩素濃度が多少変動しても、脱塩後炭化物の残留塩素濃度Cを残留塩素濃度目標値Ctに安定させることができる。これにより、安定した残留塩素濃度の炭化物製品(例えば、炭化燃料)を製造することができる。また、濾液水槽34へ流入する濾液の塩素濃度が安定化することにより、濾液水槽34に貯えられた濾液の塩素濃度を管理することができる。
【0066】
また、本実施形態の炭化物の脱塩装置3は、濾液水槽34に貯えられた濾液の塩素濃度である滞留濾液塩素濃度Efを測定する滞留濾液塩素濃度計62と、洗浄水槽33の洗浄水液位Lsを測定する液位計65とを、更に備える。そして、制御装置35は、洗浄水塩素濃度Es、滞留濾液塩素濃度Ef、洗浄水液位Ls、及び、予め記憶された新水の塩素濃度に基づいて、給水後の洗浄水塩素濃度Esが洗浄水塩素濃度目標値Estに近づくような濾液の循環水量Mfと新水の注水量Mwとの組み合わせを求めるように構成されている。
【0067】
同様に、本実施形態において、上記炭化物の脱塩方法は、濾液水槽34に貯えられた濾液の塩素濃度である滞留濾液塩素濃度Efを測定するステップと、洗浄水槽33の洗浄水液位Lsを測定するステップと、洗浄水塩素濃度Es、滞留濾液塩素濃度Ef、洗浄水液位Ls、及び、新水の塩素濃度に基づいて、給水後の洗浄水塩素濃度Esが洗浄水塩素濃度目標値Estに近づくような洗浄水槽33への濾液の循環水量Mfと新水の注水量Mwとの組み合わせを求めるステップとを、更に含んでいる。
【0068】
上記の炭化物の脱塩装置3及び炭化物の脱塩方法によれば、求めた濾液の循環水量Mfと新水の注水量Mwとの組み合わせの通りに洗浄水槽33へ給水することにより、洗浄水槽33の洗浄水の塩素濃度(即ち、洗浄水塩素濃度Es)を洗浄水塩素濃度目標値Estに近づけることができる。
【0069】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0070】
例えば、上記実施形態に係る炭化物の脱塩装置3及び方法は、可燃ごみ由来の炭化物から水溶性塩素を水洗除去するものであるが、炭化物は上記に限定されない。
【0071】
また、上記実施形態に係る炭化物の脱塩装置3及び方法では、脱塩後の炭化物は炭化燃料とされるが、脱塩後の炭化物は炭化燃料以外の炭化物製品とされてもよい。同様に、上記実施形態に係る炭化物の脱塩装置3は炭化燃料を製造する炭化燃料化施設100に備えられているが、脱塩装置3は炭化燃料以外の炭化物製品を製造する施設に備えられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 :炭化炉
2 :炭化物取出装置
3 :脱塩装置
4 :造粒装置
31 :脱塩槽
32 :脱水機
33 :洗浄水槽
34 :濾液水槽
35 :制御装置
41 :還送ライン
42 :注水ライン
51 :循環水量調整器
52 :注水量調整器
53 :排水量調整器
55 :送液ポンプ
61 :洗浄水塩素濃度計
62 :滞留濾液塩素濃度計
63 :流入濾液塩素濃度計
65 :液位計
66 :液位計
100 :炭化燃料化施設