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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】原版の製造方法、および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/80 20120101AFI20240403BHJP
   G03F 1/38 20120101ALI20240403BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G03F1/80
G03F1/38
G03F7/20 521
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020155641
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049435
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 華織
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
(72)【発明者】
【氏名】三本木 省次
(72)【発明者】
【氏名】内藤 翼
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-005675(JP,A)
【文献】特開平05-066554(JP,A)
【文献】特開平04-216553(JP,A)
【文献】特開平06-186728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0157159(US,A1)
【文献】特開平06-118618(JP,A)
【文献】特開2017-055020(JP,A)
【文献】特開平05-313349(JP,A)
【文献】特開2021-149019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00
7/20
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上に、フッ酸を含む薬液によるエッチングの速度が前記第1基板よりも大きい第1膜を形成し、
前記第1膜上に、前記薬液によるエッチングの速度が前記第1膜よりも小さい第2膜を形成し、
前記第1膜と前記第2膜とをマスクとして用いて前記第1基板を前記薬液によりエッチングすることで、第1高さを有する第1領域と、前記第1高さと異なる第2高さを有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第1スロープとを前記第1基板に形成する、
ことを含む原版の製造方法。
【請求項2】
前記第1基板は、石英基板である、請求項1に記載の原版の製造方法。
【請求項3】
前記第1膜は、Si(シリコン)元素を含む、請求項1または2に記載の原版の製造方法。
【請求項4】
前記第2膜は、Cr(クロム)元素、Mo(モリブデン)元素、W(タングステン)元素、Au(金)元素、Ag(銀)元素、または白金族元素を含む、または有機膜を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の原版の製造方法。
【請求項5】
前記第2膜は、前記薬液によるエッチングの速度が前記第1基板よりも小さい、請求項1から4のいずれか1項に記載の原版の製造方法。
【請求項6】
前記第1基板上に、複数の遮光パターンを含む遮光膜を形成することをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の原版の製造方法。
【請求項7】
第1基板上にレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜を含む第3領域と、前記レジスト膜を含まない第4領域と、の間に位置する第3スロープを前記レジスト膜に形成し、
前記レジスト膜をマスクとして用いて前記第1基板をエッチングすることで、第1高さを有する第1領域と、前記第1高さと異なる第2高さを有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第1スロープとを前記第1基板に形成する、
ことを含み、
前記レジスト膜を、レーザー光を用いて露光し、前記露光後に前記レジスト膜を現像することで、前記レジスト膜に前記第3スロープを形成する原版の製造方法。
【請求項8】
第1基板上にレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜を含む第3領域と、前記レジスト膜を含まない第4領域と、の間に位置する第3スロープを前記レジスト膜に形成し、
前記レジスト膜をマスクとして用いて前記第1基板をエッチングすることで、第1高さを有する第1領域と、前記第1高さと異なる第2高さを有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第1スロープとを前記第1基板に形成する、
ことを含み、
前記レジスト膜を、第1ショットと、前記第1ショットとドーズ量の異なる第2ショットとにより露光し、前記露光後に前記レジスト膜を現像することで、前記レジスト膜に前記第3スロープを形成する原版の製造方法。
【請求項9】
前記第3スロープの少なくとも一部は、前記第1ショットと前記第2ショットとの間の前記レジスト膜に形成される、請求項に記載の原版の製造方法。
【請求項10】
前記第1ショットと前記第2ショットは、サイズが異なり、互いに分離されている、請求項またはに記載の原版の製造方法。
【請求項11】
第1基板上にレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜を含む第3領域と、前記レジスト膜を含まない第4領域と、の間に位置する第3スロープを前記レジスト膜に形成し、
前記レジスト膜をマスクとして用いて前記第1基板をエッチングすることで、第1高さを有する第1領域と、前記第1高さと異なる第2高さを有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第1スロープとを前記第1基板に形成し、
前記第1基板上に、複数の遮光パターンを含む遮光膜を形成する
こと含む原版の製造方法。
【請求項12】
第1スロープが設けられた第1基板と、前記第1スロープ上に設けられ、複数の遮光パターンを含む遮光膜と、を備えるフォトマスクを用意し、
前記フォトマスクを用いて、第2基板と、前記第2基板上に設けられ第4スロープを有する被加工膜と、前記被加工膜上に設けられ第2スロープを有するレジスト膜と、を含むウェハの露光を行う、
ことを含み、
前記第1スロープは、前記第4スロープの幅の1/M倍(Mは、前記露光の縮小倍率を表す)よりも短い幅を有する、露光方法。
【請求項13】
前記第1スロープは、前記第4スロープの幅の1/M倍よりも短い幅と、前記第4スロープの高低差の1/M倍よりも小さい高低差とを有する、請求項12に記載の露光方法
【請求項14】
前記第1スロープの幅が前記第4スロープの幅の1/M倍よりも短く、前記第1スロープの高低差が前記第4スロープの高低差の1/M倍よりも小さい場合の前記第1スロープの傾斜角度は、前記第1スロープの幅が前記第4スロープの幅の1/M倍であり、前記第1スロープの高低差が前記第4スロープの高低差の1/M倍である場合の前記第1スロープの傾斜角度よりも大きい、請求項13に記載の露光方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原版の製造方法、マスクブランク、フォトマスク、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の被加工膜の表面に段差が存在する場合、被加工膜上に形成されたレジスト膜の表面にも段差が生じる場合がある。この場合、レジスト膜の段差が、レジスト膜の露光に悪影響を及ぼすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-138644号公報
【文献】特開2003-344987号公報
【文献】特開2004-233401号公報
【文献】特開平6-118618号公報
【文献】特開2007-256687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
段差を有するレジスト膜を好適に露光することが可能な原版の製造方法、マスクブランク、フォトマスク、および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、原版の製造方法は、第1基板上に、フッ酸を含む薬液によるエッチングの速度が前記第1基板よりも大きい第1膜を形成することを含む。前記方法はさらに、前記第1膜上に、前記薬液によるエッチングの速度が前記第1膜よりも小さい第2膜を形成することを含む。前記方法はさらに、前記第1膜と前記第2膜とをマスクとして用いて前記第1基板を前記薬液によりエッチングすることで、第1高さを有する第1領域と、前記第1高さと異なる第2高さを有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第1スロープとを前記第1基板に形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の露光装置の構造を示す断面図である。
図2】第1実施形態のウェハの露光について説明するための断面図である。
図3】第1実施形態のウェハとフォトマスクの構造を示す断面図である。
図4】第1実施形態のフォトマスクの製造方法を示す断面図(1/2)である。
図5】第1実施形態のフォトマスクの製造方法を示す断面図(2/2)である。
図6】第1実施形態の比較例のフォトマスクの製造方法を示す断面図である。
図7】第2実施形態のフォトマスクの製造方法を示す断面図である。
図8】第2実施形態のフォトマスクの製造方法の2つの例を示す断面図である。
図9】第3実施形態のウェハとフォトマスクの構造を示す断面図である。
図10】第3実施形態のウェハの構造の例を示す平面図と断面図である。
図11】第3実施形態のフォトマスクの構造の例を示す平面図と断面図である。
図12図10のウェハと図11のフォトマスクの構造を示す拡大平面図と拡大断面図である。
図13】第3実施形態のウェハとフォトマスクの構造の別の例を示す平面図と断面図である。
図14】第3実施形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図15】第3実施形態のフォトマスクの利点を説明するためのグラフである。
図16】第3実施形態のフォトマスクの基板の性質を説明するための断面図である。
図17】第3実施形態のフォトマスクの基板の性質を説明するための図である。
図18】第3実施形態のウェハとフォトマスクの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図18において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の露光装置の構造を示す断面図である。
【0009】
図1の露光装置は、マスクステージ1と、干渉計2と、駆動装置3と、ウェハステージ4と、干渉計5と、照明ユニット6と、投影ユニット7と、フォーカスセンサ8と、制御装置9とを備えている。ウェハステージ4は、ウェハチャック4aと、駆動装置4bとを備えている。フォーカスセンサ8は、投影器8aと、検出器8bとを備えている。
【0010】
図1はさらに、互いに垂直なX方向、Y方向、およびZ方向を示している。この明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。なお、-Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。
【0011】
マスクステージ1は、フォトマスク11を支持する。フォトマスク11は例えば、回路パターンを形成するための遮光パターンを含んでいる。図1では、マスクステージ1上にフォトマスク11が載置されている。フォトマスク11は、原版の例である。
【0012】
干渉計2は、マスクステージ1の位置を測定する。マスクステージ1の位置の測定結果は、干渉計2から駆動装置3へと出力される。
【0013】
駆動装置3は、マスクステージ1を移動させることで、フォトマスク11を移動させることができる。駆動装置3は例えば、複数のモータを備えており、これらのモータによりマスクステージ1をX方向およびY方向に沿って移動させることができる。駆動装置3がマスクステージ1を移動させると、マスクステージ1の位置の測定結果が、干渉計2から駆動装置3にフィードバックされる。駆動装置3は、マスクステージ1の位置の測定結果に基づいて、マスクステージ1の位置を制御することができる。
【0014】
ウェハステージ4は、ウェハ21を支持する。ウェハチャック4aは、ウェハステージ4上に載置されたウェハ21をチャックする。駆動装置4bは、ウェハチャック4aを移動させることで、ウェハ21を移動させることができる。駆動装置4bは例えば、複数のモータを備えており、これらのモータによりウェハチャック4aをX方向、Y方向、およびZ方向に沿って移動させることができる。駆動装置4bはさらに、ウェハチャック4aの傾きを調整することができる。
【0015】
干渉計5は、ウェハチャック4aの位置を測定する。ウェハチャック4aの位置の測定結果は、干渉計5から駆動装置4bへと出力される。駆動装置4bがウェハチャック4aを移動させると、ウェハチャック4aの位置の測定結果が、干渉計5から駆動装置4bにフィードバックされる。駆動装置4bは、ウェハチャック4bの位置の測定結果に基づいて、ウェハチャック4aの位置を制御することができる。
【0016】
照明ユニット6は、フォトマスク11に露光光を照射する。図1では、照明ユニット6からフォトマスク11に向かう露光光L1が、フォトマスク11の領域A1に照射されている。これにより、露光光L1が、ウェハ21に回路パターンを形成するための光に成形される。
【0017】
投影ユニット7は、フォトマスク11を透過した露光光をウェハ12に投影する。図1では、投影ユニット7からウェハ21に向かう露光光L2が、ウェハ21の領域A2に投影されている。これにより、ウェハ21に含まれるレジスト膜が、露光光L2により露光される。本実施形態のウェハ21は、後述するように、基板と、基板上の被加工膜と、被加工膜上のレジスト膜とを含んでいる。本実施形態では、露光後のレジスト膜を現像し、現像後のレジスト膜をマスクとして用いて被加工膜をエッチングすることで、被加工膜に回路パターンを形成する。
【0018】
フォーカスセンサ8は、ウェハ21の表面(レジスト膜の表面)のトポグラフィを測定するために使用される。投影器8aは、検出光L3をウェハ21に照射する。検出器8bは、ウェハ21の表面で反射した検出光L3である反射光L4を検出し、反射光L4の検出結果に基づいてウェハ21の表面のトポグラフィを算出(測定)する。ウェハ21の表面のトポグラフィの測定結果は、検出器8bから制御装置9へと出力される。
【0019】
制御装置9は、図1の露光装置の種々の動作を制御する。制御装置9は例えば、駆動装置3を通じてフォトマスク11の移動を制御し、駆動装置4bを通じてウェハ21の移動を制御し、照明ユニット6や投影ユニット7を通じてフォトマスク11によるウェハ21の露光を制御する。制御装置9はさらに、ウェハ21の表面のトポグラフィの測定結果を検出器8bから受信することができる。
【0020】
図2は、第1実施形態のウェハ21の露光について説明するための断面図である。
【0021】
本実施形態のウェハ21は、基板21aと、被加工膜21bと、レジスト膜21cとを含んでいる。基板21aは例えば、シリコン基板などの半導体基板である。被加工膜21bは、基板21a上に形成されている。被加工膜21bは、シリコン酸化膜のように、1種類の膜のみを含んでいてもよいし、複数のシリコン酸化膜と複数のシリコン窒化膜とを交互に含む積層膜のように、2種類以上の膜を含んでいてもよい。また、被加工膜21bは、基板21a上に直接形成されていてもよいし、基板21a上に他の層を介して形成されていてもよい。レジスト膜21cは、被加工膜21b上に形成されている。基板21aは、第2基板の例である。
【0022】
図2に示す被加工膜21bは、上面の高さが低い左側領域と、上面の高さが高い右側領域とを含んでいる。その結果、被加工膜21bは、左側領域の上面と右側領域の上面との間に段差を有している。図2に示す被加工膜21bは、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ22を有しており、段差がスロープ22により滑らかになっている。スロープ22は、第4スロープの例である。
【0023】
本実施形態では、このような被加工膜21b上にレジスト膜21cが形成される。そのため、図2に示すレジスト膜21cも、上面の高さが低い左側領域と、上面の高さが高い右側領域とを含んでいる。その結果、レジスト膜21cも、左側領域の上面と右側領域の上面との間に段差を有している。図2に示すレジスト膜21cも、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ23を有しており、段差がスロープ23により滑らかになっている。スロープ23は、第2スロープの例である。
【0024】
本実施形態のウェハ21は例えば、3次元メモリを製造するための使用される。この場合、3次元メモリの複数のメモリセルが、基板21aのメモリセル領域上に形成され、3次元メモリの周辺回路が、基板21aの周辺回路領域上に形成される。本実施形態のスロープ22、23は例えば、基板21aのメモリセル領域と周辺回路領域との境界の上方に形成される。
【0025】
図2は、フォトマスク11を用いてウェハ21の複数箇所(ここでは5箇所)を露光光Lで順次露光する様子を模式的に示している。図2はさらに、これらの箇所での露光光Lの焦点位置Fを示している。
【0026】
本実施形態の露光装置(図1)は、露光時にレジスト膜21cの表面の段差を測定することで、露光光LのZ方向の焦点位置Fを調整するフォーカスシフト機能を有している。しかしながら、この調整はすべての段差に追従することはできず、その結果、符号K1、K2、K3で示すような追従残差が生じてしまう。符号K1で示す追従残差は、スロープ23上で生じている。符号K2で示す追従残差は、スロープ23付近で生じている。符号K3で示す追従残差は、レジスト膜21cに形成された凹部24内で生じている。
【0027】
追従残差が小さい場合には、レジスト膜21cを適切に露光することができ、被加工膜21bに所望の精度で回路パターンを形成することができる。しかしながら、追従残差が大きい場合には、レジスト膜21cを適切に露光することができなくなり、被加工膜21bに所望の精度で回路パターンを形成することができなくなる。その結果、ウェハ21から製造される半導体装置の歩留まりが低下するおそれがある。
【0028】
半導体装置が3次元メモリの場合には、Z方向の寸法が長い層(例えば、電荷蓄積層やチャネル半導体層)を形成することが多いことから、被加工膜21bに大きな段差が生じやすい。そのため、レジスト膜21cにも大きな段差が生じやすく、追従残差に起因する歩留まりの低下が起こりやすい。このような大きな段差は例えば、基板21aのメモリセル領域と周辺回路領域との境界の上方で生じやすい。また、回路パターンの微細化や複雑化が進むと、追従残差をより小さくしなければ、半導体装置の歩留まりの低下を十分に抑制することができなくなる。
【0029】
そこで、本実施形態では、このような問題を解決するために、後述するような構造を有するフォトマスク11を用いてウェハ21を露光する。以下、本実施形態のフォトマスク11の詳細を説明する。
【0030】
図3は、第1実施形態のウェハ21とフォトマスク11の構造を示す断面図である。
【0031】
図3(a)は、ウェハ21の構造を示している。上述のように、ウェハ21は、基板21aと、被加工膜21bと、レジスト膜21cとを含んでいる。被加工膜21bは、上面の高さが低い左側領域と、上面の高さが高い右側領域とを含んでおり、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ22を有している。同様に、レジスト膜21cは、上面の高さが低い左側領域と、上面の高さが高い右側領域とを含んでおり、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ23を有している。本実施形態のスロープ22、23は、Y方向にまっすぐ延びる形状を有しているが、その他の形状を有していてもよい。
【0032】
図3(a)はさらに、スロープ22の下端を通過する断面α1と、スロープ22の上端を通過する断面β1とを示している。断面α1は、被加工膜21bの左側領域とスロープ22との境界面であり、断面β1は、被加工膜21bの右側領域とスロープ22との境界面である。本実施形態では、スロープ23の下端も、おおむね断面α1上に位置しており、スロープ23の上端も、おおむね断面β1上に位置している。よって、断面α1は、レジスト膜21cの左側領域とスロープ23との境界面でもあり、断面β1は、レジスト膜21cの右側領域とスロープ23との境界面でもある。
【0033】
図3(a)はさらに、スロープ22の幅W1と、スロープ22の高低差H1とを示している。スロープ22の幅W1は、スロープ22の下端とスロープ22の上端との間のX方向の距離であり、別言すると、断面α1と断面β1との間の距離である。スロープ22の高低差H1は、スロープ22の下端の高さとスロープ22の上端の高さとの差であり、別言すると、スロープ22の下端とスロープ22の上端との間のZ方向の距離である。本実施形態では、スロープ23の幅は、おおむねスロープ22の幅W1と等しく、スロープ23の高低差は、おおむねスロープ22の高低差H1と等しい。スロープ23の幅および高低差の定義は、スロープ22の幅W1および高低差H1の定義と同様である。
【0034】
図3(b)は、フォトマスク11の構造を示している。フォトマスク11は、基板11aと、遮光膜11bとを含んでいる。基板11aは例えば、石英基板である。遮光膜11bは、基板11a上に形成されており、複数の遮光パターンP1を含んでいる。遮光膜11bは例えば、クロム膜などの金属膜である。本実施形態の露光装置(図1)の露光光は、基板11aを透過し、遮光膜11bで遮光される。基板11aは、フォトマスク11のマスクブランクに相当する。基板11aは、第1基板の例である。マスクブランクは、原版の例である。
【0035】
図3(b)に示す基板11aは、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域とを含んでいる。その結果、基板11aは、左側領域の上面と右側領域の上面との間に段差を有している。図3(b)に示す基板11aは、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ12を有しており、段差がスロープ12により滑らかになっている。本実施形態のスロープ12は、Y方向にまっすぐ延びる形状を有しているが、その他の形状を有していてもよい。本実施形態の遮光パターンP1は、基板11aの左側領域や右側領域の上面だけではなく、基板11aのスロープ12上にも配置されている。スロープ12は、第1スロープの例である。また、基板11aの左側領域と右側領域は、第1高さを有する第1領域と、第2高さを有する第2領域の例である。
【0036】
図3(b)はさらに、スロープ12の上端を通過する断面α2と、スロープ12の下端を通過する断面β2とを示している。断面α2は、基板11aの左側領域とスロープ12との境界面であり、断面β2は、基板11aの右側領域とスロープ12との境界面である。
【0037】
図3(b)はさらに、スロープ12の幅W2と、スロープ12の高低差H2とを示している。スロープ12の幅W2は、スロープ12の上端とスロープ12の下端との間のX方向の距離であり、別言すると、断面α2と断面β2との間の距離である。スロープ12の高低差H2は、スロープ12の上端の高さとスロープ12の下端の高さとの差であり、別言すると、スロープ12の上端とスロープ12の下端との間のZ方向の距離である。
【0038】
本実施形態では、フォトマスク11のスロープ12の幅W2が、ウェハ21のスロープ22の幅W1の1/M倍に設定されている(W2=W1/M)。本実施形態ではさらに、フォトマスク11のスロープ12の高低差H2が、ウェハ21のスロープ22の高低差H1の1/M倍に設定されている(H2=H1/M)。係数Mは、図1の露光装置でフォトマスク11を用いてウェハ21を露光する際の縮小倍率を表す。ただし、幅W1と幅W2は、W2=W1/Mと異なる関係を満たすように設定されてもよいし、高低差H1と高低差H2は、H2=H1/Mと異なる関係を満たすように設定されてもよい。
【0039】
図3(c)は、図3(b)に示すフォトマスク11と同じフォトマスク11を示している。ただし、図3(c)に示すフォトマスク11の上下の向きは、図3(b)に示すフォトマスク11の上下の向きと逆になっている。本実施形態のフォトマスク11は、フォトマスク11を製造する際には、図3(b)に示す状態で製造され、フォトマスク11を使用する際には、図3(c)に示す状態で使用される。図3(a)に示すスロープ23は、+X方向に向かって上昇するように傾斜しており、図3(c)に示すスロープ12も同様に、+X方向に向かって上昇するように傾斜している。
【0040】
なお、本実施形態では、フォトマスク11の断面α2の位置が、ウェハ21の断面α1の位置と対応し、フォトマスク11の断面β2の位置が、ウェハ21の断面β1の位置と対応している。よって、フォトマスク11を用いてウェハ21を露光する際に、フォトマスク11の断面α2の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面α1の位置に到達し、フォトマスク11の断面β2の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面β1の位置に到達する。別言すると、ウェハ21のレジスト膜21cのスロープ23は、おおむねフォトマスク11のスロープ12を透過した光により露光される。
【0041】
以上のように、本実施形態のフォトマスク11の基板11aは、ウェハ21のレジスト膜21cがスロープ23を有するのと同様に、スロープ12を有している。これにより、露光時にスロープ23の影響をスロープ12の作用により低減することが可能となり、露光時の追従残差(図2)を補償することが可能となる。よって、本実施形態によれば、スロープ12を有するフォトマスク11を用いることで、スロープ23を有するウェハ21を好適に露光することが可能となる。
【0042】
図4および図5は、第1実施形態のフォトマスク11の製造方法を示す断面図である。
【0043】
まず、基板11aを用意する(図4(a))。基板11aは例えば、石英基板である。基板11aは、フォトマスク11のマスクブランクに相当する。
【0044】
次に、基板11aを洗浄した後に、基板11a上に下部マスク層13を形成する(図4(a))。本実施形態の下部マスク層13は、本実施形態で使用する薬液によるエッチングの速度が基板11aよりも大きい膜である。下部マスク層13は例えば、SiO膜(シリコン酸化膜)などの酸化膜である。下部マスク層13は、上記薬液によるエッチングの速度が基板11aよりも大きいその他の膜でもよく、例えばSi元素を含むSiO膜以外の膜(例:SiON膜(シリコン酸窒化膜))でもよい。下部マスク層13は例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)、スパッタリング、蒸着など、均一な膜を形成可能な種々の方法により形成可能である。下部マスク層13は、第1膜の例である。
【0045】
次に、下部マスク層13上に上部マスク層14を形成する(図4(a))。本実施形態の上部マスク層14は、上記薬液によるエッチングの速度が基板11aや下部マスク層13よりも小さい膜である。上部マスク層14は例えば、Cr(クロム)膜などの金属膜である。この金属膜は、金属単体で形成されていてもよいし、金属化合物(例えば金属酸化物)で形成されていてもよい。上部マスク層14は、上記薬液によるエッチングの速度が基板11aや下部マスク層13よりも大きいその他の膜でもよく、例えばCr元素、Mo(モリブデン)元素、W(タングステン)元素、Au(金)元素、Ag(銀)元素、または白金族元素を含む膜でもよいし、または有機膜でもよい。上部マスク層14は例えば、CVD、PVD、ALD、スパッタリング、蒸着など、均一な膜を形成可能な種々の方法により形成可能である。上部マスク層14の形成温度は、下部マスク層13の品質を変化させないために、下部マスク層13の形成温度よりも低いことが望ましい。上部マスク層14は、第2膜の例である。
【0046】
次に、上部マスク層14上に、コーターを用いた塗布により、レジスト膜15を形成する(図4(a))。このようにして、基板11a上に下部マスク層13、上部マスク層14、およびレジスト膜15が順に形成される。下部マスク層13と上部マスク層14は、基板11aをエッチングにより加工するためのハードマスク層として使用される。
【0047】
次に、EB(Electron Beam)装置によりレジスト膜15にパターンを描画し、その後にレジスト膜15を現像する(図4(b))。その結果、レジスト膜15が、基板11aに上述のスロープ12を形成するための形状に加工される。
【0048】
次に、レジスト膜15をマスクとして用いたドライエッチングにより、上部マスク層14を加工する(図4(c))。その結果、レジスト膜15のパターンが、上部マスク層14に転写される。
【0049】
次に、レジスト膜15を除去する(図4(d))。なお、レジスト膜15は、図4(d)の工程で除去せずに、後述する図5(a)の工程でもマスクとして用いてもよい。
【0050】
次に、上部マスク層14をマスクとして用いたドライエッチングにより、下部マスク層13を加工する(図5(a))。その結果、上部マスク層14のパターンが、下部マスク層13に転写される。なお、後述する図5(b)の工程の薬液によるエッチングが均一である場合には、図5(a)の工程もこの薬液を用いて行ってもよい。なお、図5(a)の工程と図5(b)の工程とを同じ薬液を用いて行う場合には、これらの工程は、同じエッチング処理の一環として行ってもよい。
【0051】
次に、上部マスク層14と下部マスク層13とをマスクとして用いて、基板11aを薬液によりエッチングする(図5(b))。その結果、基板11aが、図5(b)に示すように、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域と、左側領域と右側領域との間に位置するスロープ12とを有する形状に加工される。上記薬液は例えば、フッ酸(HF)を含む水溶液である。このフッ酸は、希フッ酸、濃フッ酸、バッファードフッ酸のいずれでもよい。本実施形態では、薬液として、濃度10%の希フッ酸水溶液を使用する。
【0052】
基板11aの左側領域とスロープ12は、上部マスク層14および下部マスク層13で覆われており、基板11aの右側領域は、上部マスク層14および下部マスク層13から露出している。薬液によるエッチングは等方的に進むため、図5(b)の工程では、基板11aの右側領域だけでなく、基板11aの右側領域付近の領域もエッチングされる。その結果、基板11aの右側領域と左側領域との間にスロープ12が形成される。
【0053】
本実施形態の下部マスク層13は、上記薬液によるエッチングの速度が基板11aよりも大きい膜であり、本実施形態の上部マスク層14は、上記薬液によるエッチングの速度が基板11aや下部マスク層13よりも小さい膜である。よって、図5(b)では、上部マスク層14があまりエッチングされておらず、基板11aが大きくエッチングされており、下部マスク層13がさらに大きくエッチングされている。
【0054】
下部マスク層13がエッチングされると、下部マスク層13が除去された領域に薬液が入り込む。この領域に入り込んだ薬液は、基板11aの上面をエッチングする。よって、この領域に入り込んだ薬液は、スロープ12の幅W2(図3(b))を長くし、スロープ12の傾斜角度を緩やかにする。一方、基板11aの右側領域上の薬液は、基板11aの右側領域の上面をエッチングし、スロープ12の高低差H2(図3(b))を深くする。
【0055】
よって、スロープ12の幅W2は、下部マスク層13のエッチング速度により制御することができ、スロープ12の高低差H2は、基板11aのエッチング速度により制御することができる。その結果、スロープ12の傾斜角度は、これらのエッチング速度の比により決定される。例えば、下部マスク層13のエッチング速度が基板11aのエッチング速度の5倍の場合には、傾斜角度は約11度になり、下部マスク層13のエッチング速度が基板11aのエッチング速度の10倍の場合には、傾斜角度は約5度になる。本実施形態のスロープ12の高低差H2は、例えば800nmである。なお、基板11aや下部マスク層13のエッチング速度は、基板11aや下部マスク層13の材料、応力、厚さなどにより変化し得る。本実施形態では、これら材料、応力、厚さなどを調整することで、スロープ12の傾斜角度を任意の角度に制御することができる。
【0056】
図5(b)の工程で使用する薬液は、フッ酸以外の物質を含む液体でもよいし、フッ酸とフッ酸以外の物質とを含む液体でもよい。上記薬液は例えば、濃度6%のフッ酸と、濃度30%のフッ化アンモニウム(NHF)と、界面活性剤とを含む水溶液でもよい。
【0057】
次に、ドライエッチングにより上部マスク層14を除去し、薬液を用いたエッチングにより下部マスク層13を除去する(図5(c))。この薬液は例えば、希フッ酸またはSC1を含む水溶液である。
【0058】
次に、基板11aの表面の筋とりや、スロープ12の上端や下端のコーナー丸めのためのエッチングを行う(図5(c))。その結果、基板11aの表面が平滑化される。このエッチングは例えば、図5(b)の工程で使用可能な薬液として例示した薬液と同じ薬液を用いて行われる。このようにして、基板11a(マスクブランク)が、スロープ12を有する形状に加工される。なお、下部マスク層13の除去のためのエッチングと、筋とりやコーナー丸めのためのエッチングは、同じエッチング処理の一環として行ってもよい。
【0059】
次に、基板11a上に遮光膜11bを形成し、遮光膜11bをドライエッチングにより加工する(図5(d))。その結果、基板11a上に、複数の遮光パターンP1を含む遮光膜11bが形成される。このようにして、基板11aと遮光膜11bとを含むフォトマスク11が製造される。
【0060】
このフォトマスク11はその後、図1の露光装置のマスクステージ1上に載置され、ウェハ21を露光するために使用される。このようにして、ウェハ21から半導体装置が製造される。
【0061】
上述のように、下部マスク層13は第1膜の例であり、上部マスク層14は第2膜の例である。本実施形態では、下部マスク層13上に上部マスク層14を形成せずに、下部マスク層13上にレジスト膜15を形成することで、レジスト膜15を第2膜として使用してもよい。例えば、図5(b)の工程で使用する薬液に耐性を有するレジスト膜15を使用することで、レジスト膜15を第2膜として使用することができる。このようなレジスト膜15と薬液の組合せの例は、i線レジスト膜と、濃度7%のフッ酸、濃度30%の水酸化アンモニウム(NHOH)、および界面活性剤を含む水溶液である。
【0062】
図6は、第1実施形態の比較例のフォトマスク11の製造方法を示す断面図である。
【0063】
まず、基板11a上に、上述の上部マスク層14と同様のマスク層14を形成し、マスク層14上にレジスト膜15を形成する(図6(a))。本比較例では、基板11a上に上述の下部マスク層13が形成されない。次に、レジスト膜15をEB描画および現像により加工し、レジスト膜15をマスクとして用いたドライエッチングによりマスク層14を加工する(図6(a))。その後、レジスト膜15は除去される。
【0064】
次に、マスク層14をマスクとして用いたドライエッチングにより、基板11aを加工する(図6(b))。その結果、基板11aの上面がリセスされたリセス部16が、基板11a内に形成される。
【0065】
次に、ドライエッチングによりマスク層14を除去する(図6(c))。このようにして、本比較例の基板11a(マスクブランク)が、リセス部16に起因する段差を有する形状に加工される。その後、基板11a上に遮光膜11bを形成することで、本比較例のフォトマスク11が完成する。
【0066】
図6(d)は、図6(c)に示す基板11aの詳細な形状を示している。本比較例の基板11aは、図6(b)の工程でドライエッチングにより加工されるため、図6(b)の工程ではエッチングが異方的に進む。そのため、図6(b)の工程では基板11aにスロープ12が形成されない。そこで、図6(c)の工程後にCMP(Chamical Mechanical Polishing)により基板11aにスロープ12を形成してもよい。しかしながら、CMPにより形成されるスロープ12は、図6(d)に示すように急峻なものとなる。かといって、図6(c)の工程後にCMPを行わないと、符号Dで示すようなスクラッチの欠陥が、基板11aの表面に残存してしまう。
【0067】
そこで、図6(b)の工程のエッチングを、薬液を用いて行うことが考えられる。これにより、図6(b)の工程で基板11aにスロープ12を形成することが可能となる。しかしながら、この場合に形成されるスロープ12は、傾斜角度が45度に近い急峻なものとなる。一般に、ウェハ21のレジスト膜21cのスロープ23は緩やかであることが多いため(図3(a))、このようなスロープ12を有するフォトマスク11では、露光時の追従残差(図2)を十分に補償することが難しい。
【0068】
そこで、本実施形態の基板11aのエッチングは、下部マスク層13および上部マスク層14により基板11aが覆われた状態で、薬液を用いて行われる。これにより、このエッチングにより基板11aに緩やかなスロープ12を形成することが可能となる。
【0069】
以上のように、本実施形態のフォトマスク11の基板11aは、ウェハ21のレジスト膜21cがスロープ23を有するのと同様に、スロープ12を有している。これにより、露光時にスロープ23の影響をスロープ12の作用により低減することが可能となり、露光時の追従残差を補償することが可能となる。よって、本実施形態によれば、スロープ12を有するフォトマスク11を用いることで、スロープ23を有するウェハ21を好適に露光することが可能となる。
【0070】
さらに、本実施形態の基板11aのスロープ12は、下部マスク層13および上部マスク層14により基板11aが覆われた状態で、薬液を用いたエッチングを行うことで形成される。これにより、スロープ23を有するウェハ21を露光するのに好適なスロープ12を、基板11aに形成することが可能となる。例えば、ウェハ21のスロープ23が緩やかな場合に、基板11aに緩やかなスロープ12を形成することが可能となる。
【0071】
本実施形態によれば、このようなフォトマスク11を用いてウェハ21を露光することで、ウェハ21から製造される半導体装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のフォトマスク11の製造方法を示す断面図である。
【0073】
まず、基板11aを用意し、基板11a上にレジスト膜15を形成する(図7(a))。次に、所定の手法により露光(パターン描画)および現像を行うことで、レジスト膜15を加工する(図7(b))。その結果、レジスト膜15が、図7(b)に示すように、レジスト膜15を含む左側領域と、レジスト膜15を含まない右側領域と、の間にスロープ17を有する形状に加工される。スロープ17は、第3スロープの例である。また、レジスト膜15を含む左側領域と、レジスト膜15を含まない右側領域は、第3領域と第4領域の例である。なお、レジスト膜15がスロープ17を有していれば、上記の左側領域と右側領域の両方がレジスト膜15を含んでいてもよい。
【0074】
本実施形態のスロープ17は例えば、ブラー(blur)の大きいエネルギー線を用いてレジスト膜15にパターンを描画し、その後にレジスト膜15を現像することで形成可能である。このようなエネルギー線の例は、レーザー光である。エネルギー線のブラーは、エネルギー線のピンボケであり、エネルギー線のデフォーカスによりエンハンスすることが可能である。本実施形態のスロープ17は例えば、レーザー光を用いてレジスト膜15にグレースケール描画によりパターンを描画し、その後にレジスト膜15を現像することで形成される。これにより、レジスト膜15においてグレースケール描画がなされた箇所にスロープ17を形成することができる。
【0075】
次に、レジスト膜15をマスクとして用いて、基板11aをエッチングにより加工する(図7(c))。この際、スロープ17におけるレジスト膜15は、図7(c)の工程におけるエッチングにより徐々に消滅していく。これにより、レジスト膜15のスロープ17が、基板11aに転写される。その結果、基板11aが、図7(c)に示すように、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域と、左側領域と右側領域との間に位置するスロープ12とを有する形状に加工される。図7(c)の工程におけるエッチングは、例えばドライエッチングである。このようにして、基板11a(マスクブランク)が、スロープ12を有する形状に加工される。
【0076】
次に、基板11a上に遮光膜11bを形成し、遮光膜11bをドライエッチングにより加工する(図7(d))。その結果、基板11a上に、複数の遮光パターンP1を含む遮光膜11bが形成される。このようにして、基板11aと遮光膜11bとを含むフォトマスク11が製造される。
【0077】
このフォトマスク11はその後、図1の露光装置のマスクステージ1上に載置され、ウェハ21を露光するために使用される。このようにして、ウェハ21から半導体装置が製造される。
【0078】
図8は、第2実施形態のフォトマスク11の製造方法の2つの例を示す断面図である。
【0079】
図8(a)は、図7(a)の工程の第1の例を示している。第1の例では、レーザー光を用いてショットS1によりレジスト膜15を露光し、その後にレジスト膜15を現像することで、レジスト膜15にスロープ17を形成する。図8(a)はさらに、ショットS1が照射される領域R1と、ショットS1が照射されない領域R2と、スロープ17の幅T1とを示している。本実施形態のショットS1の形状は、正方形である。幅T1は、例えば約1μmである。
【0080】
本実施形態のショットS1は、大きなドーズ量を有する。よって、ショットS1が照射された領域R1では、多くの領域でレジスト膜15が完全に除去される。一方、ショットS1が照射されない領域R2では、多くの領域でレジスト膜15が除去されない。また、領域R1と領域R2との境界付近では、ブラーの影響でレジスト膜15が部分的に除去されて薄膜化される。これにより、領域R1と領域R2との境界付近にスロープ17を形成することができる。
【0081】
図8(b)は、図7(a)の工程の第2の例を示している。第2の例では、レーザー光を用いてショットS1およびショットS2によりレジスト膜15を露光し、その後にレジスト膜15を現像することで、レジスト膜15にスロープ17を形成する。図8(b)はさらに、ショットS1が照射される領域R1と、ショットS2が照射される領域R3と、領域R1と領域R3との間に位置する領域R4と、スロープ17の幅T2とを示している。図8(b)に示すように、ショットS1、S2は、異なるサイズを有しており、かつ互いに分離されている。ショットS1、S2は、第1および第2ショットの例である。本実施形態のショットS2の形状は、ショットS1の形状よりも小さい正方形である。幅T2は、例えば約3μmである。
【0082】
本実施形態のショットS1は、大きなドーズ量を有する。よって、ショットS1が照射された領域R1では、多くの領域でレジスト膜15が完全に除去される。一方、本実施形態のショットS2は、小さなドーズ量を有する。よって、ショットS2が照射された領域R3では、レジスト膜15が部分的に除去されて薄膜化される。同様に、領域R4内や領域R4付近でも、ブラーの影響でレジスト膜15が部分的に除去されて薄膜化される。ここで、ショットS1のドーズ量はショットS2のドーズ量よりも大きいため、ショットS1のブラーの影響は、ショットS2のブラーの影響よりも大きい。その結果、領域R4内や領域R4付近にスロープ17が形成され、スロープ17は領域R1から領域R3に向かって上昇する形状となる。
【0083】
本実施形態のフォトマスク11は、第1の例の方法で形成してもよいし、第2の例の方法で形成してもよい。ただし、第2の例のスロープ17の幅T2は一般に、第1の例のスロープ17の幅T1よりも長くなることから(T2>T1)、基板11aに緩やかなスロープ12を形成したい場合には、第2の例の方法を採用することが望ましい。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態のフォトマスク11と同様の構造を有するフォトマスク11を、第1実施形態のフォトマスク11の製造方法と異なる方法で製造することが可能となる。例えば、本実施形態によれば、基板11a上に下部マスク層13や上部マスク層14を形成せずにフォトマスク11を製造することが可能となる。
【0085】
なお、本実施形態のフォトマスク11およびウェハ21の幅W1、W2、高低差H1、H2、および縮小倍率Mの関係は、第1実施形態の場合と同様であり、W2=W1/MおよびH2=H1/Mの関係を満たしている。ただし、これらの実施形態のフォトマスク11およびウェハ21は、これらの関係を満たしていなくてもよい。これらの関係を満たさないフォトマスク11およびウェハ21の例については、後述する第3実施形態で説明する。
【0086】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態のウェハ21とフォトマスク11の構造を示す断面図である。
【0087】
図9(a)は、本実施形態のウェハ21を示している。図9(a)のウェハ21は、図3(a)のウェハ21と同様に、基板21aと、被加工膜21bと、レジスト膜21cとを含んでいる。ただし、図3(a)は、露光および現像前のレジスト膜21cを示すのに対し、図9(a)は、露光および現像後のレジスト膜21cを示している。よって、図9(a)のレジスト膜21cは、露光および現像後に残存した複数のレジストパターンP2を含んでいる。
【0088】
図9(a)において、被加工膜21bは、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域とを含んでおり、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ22を有している。同様に、レジスト膜21cは、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域とを含んでおり、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ23を有している。図9(a)のスロープ22、23は、図3(a)のスロープ22、23と同様の形状を有しているが、図3(a)のスロープ22、23が、+X方向に向かって上昇するように傾斜しているのに対し、図9(a)のスロープ22、23は、-X方向に向かって上昇するように傾斜している。
【0089】
図9(a)はさらに、スロープ22の下端を通過する断面α1と、スロープ22の上端を通過する断面β1と、断面α1と断面β1との中間地点に位置する断面γ1とを示している。本実施形態では、第1実施形態と同様に、スロープ23の下端も、おおむね断面α1上に位置しており、スロープ23の上端も、おおむね断面β1上に位置している。
【0090】
図9(a)はさらに、スロープ22の幅W1と、スロープ22の高低差H1とを示している。スロープ22の幅W1は、スロープ22の下端とスロープ22の上端との間のX方向の距離であり、別言すると、断面α1と断面β1との間の距離である。スロープ22の高低差H1は、スロープ22の下端の高さとスロープ22の上端の高さとの差であり、別言すると、スロープ22の下端とスロープ22の上端との間のZ方向の距離である。本実施形態では、第1実施形態と同様に、スロープ23の幅は、おおむねスロープ22の幅W1と等しく、スロープ23の高低差は、おおむねスロープ22の高低差H1と等しい。断面α1と断面γ1との間の距離や、断面β1と断面γ1との間の距離は、図9(a)に示すようにW1/2である。
【0091】
図9(b)は、後述する本実施形態のフォトマスク11との比較のために、第1実施形態のフォトマスク11を示している。図9(b)のフォトマスク11は、図3(c)のフォトマスク11と同様に、基板11aと、遮光膜11bとを含んでいる。遮光膜11bは、複数の遮光パターンP1を含んでいる。
【0092】
図9(b)において、基板11aは、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域とを含んでおり、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ12を有している。図9(b)のスロープ12は、図3(c)のスロープ12と同様の形状を有しているが、図3(c)のスロープ12が、+X方向に向かって上昇するように傾斜しているのに対し、図9(b)のスロープ12は、-X方向に向かって上昇するように傾斜している。
【0093】
図9(b)はさらに、スロープ12の下端(ここでは+X方向の端部)を通過する断面α2と、スロープ12の上端(ここでは-X方向の端部)を通過する断面β2と、断面α2と断面β2との中間地点に位置する断面γ2とを示している。
【0094】
図9(b)はさらに、スロープ12の幅W2と、スロープ12の高低差H2とを示している。スロープ12の幅W2は、スロープ12の上端とスロープ12の下端との間のX方向の距離であり、別言すると、断面α2と断面β2との間の距離である。スロープ12の高低差H2は、スロープ12の上端の高さとスロープ12の下端の高さとの差であり、別言すると、スロープ12の上端とスロープ12の下端との間のZ方向の距離である。断面α2と断面γ2との間の距離や、断面β2と断面γ2との間の距離は、図9(b)に示すようにW2/2である。
【0095】
図9(b)では、フォトマスク11のスロープ12の幅W2が、ウェハ21のスロープ22の幅W1の1/M倍に設定されている(W2=W1/M)。図9(b)ではさらに、フォトマスク11のスロープ12の高低差H2が、ウェハ21のスロープ22の高低差H1の1/M倍に設定されている(H2=H1/M)。なお、図9(a)の縮尺と図9(b)の縮尺はM倍だけ異なるため、図9(a)および図9(b)において幅W2は幅W1と同じ長さで図示されている。
【0096】
なお、図9(b)では、フォトマスク11の断面α2の位置が、ウェハ21の断面α1の位置と対応し、フォトマスク11の断面β2の位置が、ウェハ21の断面β1の位置と対応している。よって、図9(b)のフォトマスク11を用いてウェハ21を露光する際に、フォトマスク11の断面α2の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面α1の位置に到達し、フォトマスク11の断面β2の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面β1の位置に到達する。別言すると、ウェハ21のレジスト膜21cのスロープ23は、おおむねフォトマスク11のスロープ12を透過した光により露光される。また、フォトマスク11の断面γ2の位置を透過した光は、おおむねウェハ21の断面γ1の位置に到達する。
【0097】
図9(c)は、本実施形態のフォトマスク11を示している。図9(c)のフォトマスク11は、図3(c)や図9(b)のフォトマスク11と同様に、基板11aと、遮光膜11bとを含んでいる。遮光膜11bは、複数の遮光パターンP1を含んでいる。
【0098】
図9(c)において、基板11aは、上面の高さが高い左側領域と、上面の高さが低い右側領域とを含んでおり、左側領域の上面と右側領域の上面との間にスロープ12を有している。図9(c)のスロープ12は、図9(b)のスロープ12と同様に、-X方向に向かって上昇するように傾斜している。
【0099】
図9(c)はさらに、スロープ12の下端を通過する断面α3と、スロープ12の上端を通過する断面β3と、断面α3と断面β3との中間地点に位置する断面γ3とを示している。図9(b)との比較のため、図9(c)はさらに、断面α2、断面β2、および断面γ2の位置も示している。
【0100】
図9(c)はさらに、スロープ12の幅W3と、スロープ12の高低差H3とを示している。スロープ12の幅W3は、スロープ12の上端とスロープ12の下端との間のX方向の距離であり、別言すると、断面α3と断面β3との間の距離である。スロープ12の高低差H3は、スロープ12の上端の高さとスロープ12の下端の高さとの差であり、別言すると、スロープ12の上端とスロープ12の下端との間のZ方向の距離である。断面α3と断面γ3との間の距離や、断面β3と断面γ3との間の距離は、図9(c)に示すようにW3/2である。
【0101】
図9(c)では、フォトマスク11のスロープ12の幅W3が、ウェハ21のスロープ22の幅W1の1/M倍よりも短く設定されており(W3<W1/M)、その結果、幅W2よりも短く設定されている(W3<W2)。図9(c)ではさらに、フォトマスク11のスロープ12の高低差H3が、ウェハ21のスロープ22の高低差H1の1/M倍よりも小さく設定されており(H3<H1/M)、その結果、高低差H2よりも小さく設定されている(H3<H2)。なお、図9(a)の縮尺と図9(c)の縮尺はM倍だけ異なるため、図9(a)および図9(c)において幅W3は幅W1よりも短く図示されている。
【0102】
図9(c)では例えば、幅W3が幅W2の半分より短く設定され(W3<W2/2)、高低差H3が高低差H2の半分に設定される(H3=H2/2)。その結果、図9(c)のスロープ12のXY平面に対する傾斜角度は、図9(b)のスロープ12のXY平面に対する傾斜角度より大きくなる。一例として、図9(b)は緩やかなスロープ12を示しており、図9(c)は急峻なスロープ12を示している。
【0103】
なお、図9(c)では、フォトマスク11の断面α2の位置が、ウェハ21の断面α1の位置と対応し、フォトマスク11の断面β2の位置が、ウェハ21の断面β1の位置と対応している。よって、図9(c)のフォトマスク11を用いてウェハ21を露光する際に、フォトマスク11の断面α2の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面α1の位置に到達し、フォトマスク11の断面β2の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面β1の位置に到達する。図9(c)に示すように、断面α3と断面β3は、断面α2と断面β2との間に位置し、図9(c)のスロープ12は、断面α3と断面β3との間に位置する。よって、ウェハ21のレジスト膜21cのスロープ23は、図9(c)のフォトマスク11のスロープ12を透過した光だけでなく、図9(c)のフォトマスク12の断面α2、α3間や断面β2、β3間を透過した光によっても露光される。また、フォトマスク11の断面γ3の位置を透過した光は、おおむねウェハ21の断面γ1の位置に到達する。
【0104】
以下、引き続き図9(a)~図9(c)を参照し、本実施形態のフォトマスク11のさらなる詳細について説明する。
【0105】
第1実施形態のフォトマスク11の基板11a(図9(b))は、ウェハ21のレジスト膜21cがスロープ23を有するのと同様に、スロープ12を有している。これにより、露光時にスロープ23の影響をスロープ12の作用により低減することが可能となり、露光時の追従残差を補償することが可能となる。よって、第1実施形態によれば、スロープ12を有するフォトマスク11を用いることで、スロープ23を有するウェハ21を好適に露光することが可能となる。
【0106】
このような好適な露光を実施するためには、図9(b)に示すように、フォトマスク11のスロープ12の幅W2を、ウェハ21のスロープ22の幅W1の1/M倍に設定することが望ましい(W2=W1/M)。これにより、ウェハ21のレジスト膜21cのスロープ23全体を、フォトマスク11のスロープ12を透過した光により露光することが可能となり、スロープ23全体でスロープ23の影響をスロープ12の作用により低減することが可能となる。
【0107】
しかしながら、幅W2を幅W1の1/M倍に設定すると、一般にフォトマスク11のスロープ12が緩やかになる。第1実施形態で説明したように、緩やかなスロープ12を形成することは一般に難しい。
【0108】
一方、本実施形態では、図9(c)に示すように、フォトマスク11のスロープ12の幅W3を、ウェハ21のスロープ22の幅W1の1/M倍よりも短く設定する(W3<W1/M)。これにより、例えばフォトマスク11のスロープ12を急峻にするなど、フォトマスク11のスロープ12の形状を、形成しやすい形状にすることが可能となる。よって、本実施形態によれば、露光時にスロープ23の影響をスロープ12の作用により低減しつつ、スロープ12を容易に形成することが可能となる。図9(c)のフォトマスク11のスロープ12の形状を設計する際には、スロープ12の効果を図9(b)の場合の効果に近づけつつ、スロープ12の形成しやすさを高めることが望ましい。
【0109】
本実施形態のスロープ12の断面γ3は、断面α3と断面β3との中間地点に位置するだけでなく、断面α2と断面β2との中間地点にも位置しており、その結果、スロープ12の断面γ3の位置が、ウェハ21の断面γ1の位置に対応している。よって、図9(c)のフォトマスク11を用いてウェハ21を露光する際に、フォトマスク11の断面γ3の位置を透過した光が、おおむねウェハ21の断面γ1の位置に到達する。すなわち、スロープ12の中央(γ3)を透過した光が、おおむねスロープ23の中央(γ1)に到達する。これにより、スロープ12からの光を、スロープ23の広い範囲に効果的に照射することが可能となり、スロープ23の影響をスロープ12の作用により効果的に低減することが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態のフォトマスク11の幅W3や高低差H3は、上述の値と異なる値を有していてもよい。例えば、幅W3は、幅W2の半分以上の値に設定されてもよい(W3≧W2/2)。また、高低差H3は、高低差H2の半分以外の値に設定されてよい(H3≠H2/2)。また、本実施形態のスロープ12の断面γ3は、断面α2と断面β2との中間地点に位置していなくてもよい。例えば、断面γ3は、断面γ2が断面α3と断面β3との間に挟まれる範囲内で、断面γ2からずれた位置に位置していてもよい。
【0111】
本実施形態のウェハ21は例えば、3次元メモリを製造するための使用される。この場合、ウェハ21のスロープ22、23が、基板21aのメモリセル領域と周辺回路領域との境界の上方に形成されやすい。本実施形態のスロープ12は例えば、このようなウェハ21のレジスト膜21cのスロープ23を露光するために使用される。これにより、3次元メモリの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0112】
図9(c)に示す本実施形態のフォトマスク11は、第1実施形態や第2実施形態で説明した方法で製造してもよいし、その他の方法で製造してもよい。例えば、本実施形態のフォトマスク11のスロープ12が急峻な場合には、図8(a)に示すショットS1を用いた露光によりスロープ12を形成してもよい。
【0113】
図10は、第3実施形態のウェハ21の構造の例を示す平面図と断面図である。
【0114】
図10(a)の平面図は、ウェハ21全体の形状と、ウェハ21の領域Rの構造とを示している。図10(a)のウェハ21は、基板21a上に被加工膜21bとレジスト膜21cとが形成された後、かつ、レジスト膜21cの露光および現像が行われる前の状態のものを示している。
【0115】
図10(a)は、領域R内の複数(ここでは20個)のショット領域25と、各ショット領域25内の凸部26とを示している。各ショット領域25は、レジスト膜21cの露光時に1つのショットにより露光される領域である。本実施形態では、これらのショット領域25を露光光によりY方向にスキャンすることで、これらのショット領域25のレジスト膜21cを露光する。各凸部26は例えば、基板21aの周辺回路領域の上方に形成される。その結果、各凸部26の側面が、基板21aのメモリセル領域と周辺回路領域との境界の上方に形成される。各凸部26の側面が、レジスト膜21cのスロープ23に相当する。
【0116】
図10(b)および図10(c)はそれぞれ、1つのショット領域25内の凸部26のX断面およびY断面とを示している。具体的には、図10(b)は、図10(a)に示すA-A’線に沿った凸部26のX断面を示し、図10(c)は、図10(a)に示すB-B’線に沿った凸部26のY断面を示している。図10(a)は、図10(b)に示すA-A’線や図10(c)に示すB-B’線の高さにおける凸部26の平面形状を示している。
【0117】
図11は、第3実施形態のフォトマスク11の構造の例を示す平面図と断面図である。
【0118】
図11(a)の平面図は、フォトマスク11の複数(ここでは20個)のショット領域18と、各ショット領域18内の凹部19とを示している。図11(a)の平面図はさらに、1つのショット領域18の拡大図を示している。各ショット領域18は、ウェハ21の露光時に1つのショット用に使用される領域である。本実施形態では、これらのショット領域18に露光光を照射し、これらのショット領域18を透過した露光光によりウェハ21を露光する。例えば、各凹部19を透過した露光光は、周辺回路領域の上方のレジスト膜21cの露光用に使用され、各凹部19の側面を透過した露光光は、メモリセル領域と周辺回路領域との境界の上方のレジスト膜21cの露光用に使用される。各凹部19の側面が、基板11aのスロープ12に相当する。
【0119】
図11(b)および図11(c)はそれぞれ、1つのショット領域18内の凹部19のX断面およびY断面とを示している。具体的には、図11(b)は、図11(a)に示すC-C’線に沿った凹部19のX断面を示し、図11(c)は、図11(a)に示すD-D’線に沿った凹部19のY断面を示している。図11(a)は、図11(b)に示すC-C’線や図11(c)に示すD-D’線の高さにおける凹部19の平面形状を示している。なお、図11(a)に示す拡大図における凹部19の三重線については後述する。
【0120】
図12は、図10のウェハ21と図11のフォトマスク11の構造を示す拡大平面図と拡大断面図である。
【0121】
図12(a)は、1つのショット領域25の平面形状と、このショット領域26内の凸部26の断面形状とを示している。凸部26を示す三重線は、3つの異なる高さにおける凸部26の平面形状を示している。図12(a)に示すA-A’線は、これらの三重線のうちの真ん中の線の高さや、凸部26の断面形状の位置を示している。
【0122】
図12(b)は、1つのショット領域18の平面形状と、このショット領域18内の凹部19の断面形状とを示している。凹部19を示す三重線は、3つの異なる高さにおける凹部19の平面形状を示している。図12(b)に示すC-C’線は、これらの三重線のうちの真ん中の線の高さや、凹部19の断面形状の位置を示している。
【0123】
図12(a)および図12(b)に示すように、凸部26の側面は緩やかに傾斜しており、凹部19の側面は急峻に傾斜している。図9(a)から図9(c)を参照して説明したように、本実施形態では、急峻なスロープ12を有するフォトマスク11を用いて、緩やかなスロープ23を有するウェハ21を露光する。図12(a)および図12(b)は、このようなスロープ12、23の例として、凹部19の側面や、凸部26の側面を示している。
【0124】
図13は、第3実施形態のウェハ21とフォトマスク11の構造の別の例を示す平面図と断面図である。
【0125】
図13(a)の平面図は、ウェハ21の複数(ここでは20個)のショット領域25と、各ショット領域25内の凸部26とを示している。図10(a)の凸部26がY方向に延びているのに対し、図13(a)の凸部26はX方向に延びている。図13(a)では、これらのショット領域25を露光光によりY方向にスキャンすることで、これらのショット領域25のレジスト膜21cを露光する。
【0126】
図13(b)の平面図は、フォトマスク11の複数(ここでは20個)のショット領域18と、各ショット領域18内の凹部19とを示している。図11(a)の凹部19がY方向に延びているのに対し、図13(b)の凹部19はX方向に延びている。図13(b)では、これらのショット領域18に露光光を照射し、これらのショット領域18を透過した露光光によりウェハ21を露光する。
【0127】
図10(a)のウェハ21では、凸部26がY方向に延びており、ショット領域25がY方向にスキャンされる。そのため、X方向に拡がりのある露光光でウェハ21をスキャンする場合、露光光がおおむね、凸部26と凸部26以外の部分とに同時に照射される。よって、この場合には、露光光の焦点が合わせにくい。
【0128】
一方、図13(a)のウェハ21では、凸部26がX方向に延びており、ショット領域25がY方向にスキャンされる。そのため、X方向に拡がりのある露光光でウェハ21をスキャンする場合、露光光がおおむね、凸部26と凸部26以外の部分とに順番に照射される。よって、この場合には、露光光の焦点が合わせやすい。図13(a)および図13(b)に示す構造を採用する場合には、例えばこのようなメリットを享受することができる。
【0129】
図14は、第3実施形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0130】
まず、ウェハ21のスロープ22の幅W1や高低差H1を測定するために、ウェハ21と同じ構造を有するウェハを用意する。例えば、基板21aと同様の基板を用意し、この基板上に被加工膜21bと同様の被加工膜を形成する。この被加工膜上にレジスト膜21cと同様のレジスト膜を形成することは省略する。なお、ウェハ21と同じ構造を有するウェハを用意する代わりに、この段階でウェハ21そのものを用意してもよい。
【0131】
次に、用意したウェハを用いて、ウェハの表面の各凹凸の高低差を測定する(ステップS11)。次に、測定した高低差に基づいて、スロープ22に対応するスロープの位置を特定する(ステップS12)。次に、このスロープの中央位置(γ1)、高低差(H1)、および幅(W1)を算出する(ステップS13)。
【0132】
次に、算出した中央位置(γ1)、高低差(H1)、および幅(W1)に基づいて、ウェハ21を露光するためのフォトマスク11の段差分布のデータを作成する(ステップS14)。例えば、基板11aのスロープ12の中央位置γ3、高低差H3、および幅W3を算出する。
【0133】
次に、作成した段差分布を有するフォトマスク11を製造する(ステップS15)。例えば、基板11aを用意し、算出した中央位置γ3、高低差H3、および幅W3を有するスロープ12を基板11aに形成する。このようにして、フォトマスク11のマスクブランク(基板11a)が製造される。さらに、基板11a上に遮光膜12を形成し、遮光膜12を複数の遮光パターンP1を含む形状に加工する。このようにして、フォトマスク11が製造される。フォトマスク11は例えば、第1または第2実施形態の方法で製造してもよいし、その他の方法で製造してもよい。
【0134】
次に、製造したフォトマスク11を用いて、ウェハ21を露光する(ステップS16)。例えば、基板21a上に被加工膜21bを形成し、被加工膜21b上にレジスト膜21cを形成し、図1の露光装置にセットしたフォトマスク11を用いてレジスト膜21cを露光する。これにより、フォトマスク11のパターンがレジスト膜21cに転写される。さらに、露光後のレジスト膜21cを現像し、現像後のレジスト膜21cをマスクとして被加工膜21bをエッチングにより加工する。これにより、レジスト膜21cのパターンである複数のレジストパターンP2が、被加工膜21bに転写される。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0135】
なお、ステップS14で使用する中央位置(γ1)、高低差(H1)、および幅(W1)は、ステップS11~S13により測定された値以外の値としてもよく、例えば、シミュレーションで算出された値としてもよいし、ウェハ21の設計値から算出された値としてもよい。
【0136】
図15は、第3実施形態のフォトマスク11の利点を説明するためのグラフである。
【0137】
図15は、段差(スロープ12)のないフォトマスク11、第1実施形態のように緩やかな段差のあるフォトマスク11、および第3実施形態のように急峻な段差のあるフォトマスク11によるデフォーカス残渣を示している。90度配置とは、図10(a)~図12(c)に示すように、凸部26や凹部19がY方向(90度方向)に延びる配置である。0度配置とは、図13(a)および図13(b)に示すように、凸部26や凹部19がX方向(0度方向)に延びる配置である。
【0138】
図15によれば、段差のないフォトマスク11を用いる場合には、ウェハ21の段差がそのままデフォーカス残渣になることが分かる。また、緩やかな段差のあるフォトマスク11を用いる場合には、デフォーカス残渣を大きく低減できることが分かる。また、急峻な段差のあるフォトマスク11を用いる場合には、デフォーカス残渣をある程度低減できることが分かる。よって、本実施形態によれば、ウェハ21の露光時にスロープ23の影響をスロープ12の作用によりある程度低減しつつ、フォトマスク11の製造時にスロープ12を容易に形成することが可能となる。
【0139】
図16は、第3実施形態のフォトマスク11の基板11aの性質を説明するための断面図である。
【0140】
図16は、基板11aのスロープ12の傾斜角度θinと、スロープ12の下端を通過する断面α3と、スロープ12の上端を通過する断面β3と、基板11aの屈折率nとを示している。例えば、基板11aは石英基板であり、露光光の波長が193nmの場合の屈折率nは1.56である。
【0141】
図16はさらに、基板11aの平坦部分(スロープ12以外の部分)における光軸I1と、基板11aの平坦部分に入射する露光光I1と、基板11aのスロープ部分(スロープ12の部分)における光軸J1と、基板11aのスロープ部分に入射する露光光J2とを示している。光軸I1、J1は、Z方向に平行である。また、露光光I2、J2は、-Z方向に進行して基板11aの下面に入射している。
【0142】
平坦部分では、基板11aの下面に入射した露光光J2は、屈折せずに基板11aから出射される。一方、スロープ部分では、基板11aの下面に入射した露光光I2は、傾斜角度θinに応じて、-Z方向から角度θだけ屈折して基板11aから出射される。角度θは、以下の式(1)により与えられる。
【0143】
θ=θout-θin
=sin-1(n×sinθin)-θin ・・・(1)
基板11aの下面に入射した露光光J2が、角度θだけ屈折して基板11aから出射されることで、ウェハ21上に転写されるパターンが位置ずれを起こす。
【0144】
図17は、第3実施形態のフォトマスク11の基板11aの性質を説明するための図である。
【0145】
図17(a)は、式(1)における傾斜角度θinと角度θとの関係を示している。例えば傾斜角度θinが5度の場合には、角度θは2.8度となる。図17(b)の曲線C1~C3で示すように、フォーカス位置をベストフォーカス位置からずらしていくと、ウェハ21上に転写されるパターンの位置ずれが大きくなっていく。位置ずれは、以下の式(2)で与えられる。
【0146】
Δx=Δz×tan{sin-1(n×sinθin)-θin} ・・・(2)
式(2)において、Δzはデフォーカスを表し、Δxは位置ずれを表す。例えば、傾斜角度θinが5度で、デフォーカスΔzが50nmの場合には、位置ずれΔxは2.45nmとなる。
【0147】
図18は、第3実施形態のウェハ21とフォトマスク11の構造を示す断面図である。
【0148】
図18は、ウェハ21のスロープ22、23や、フォトマスク11のスロープ12を示している。ただし、図18に示すスロープ22、23は、位置ずれの説明を分かりやすくするため、XY平面に平行に図示されている。
【0149】
図18では、符号ΔM、ΔNで示すように、レジスト膜21cのレジストパターンP2の位置ずれが起きている。直線M1、M2は、対応する遮光パターンP1とレジストパターンP2の+X方向のエッジを示している。このレジストパターンP2がΔMだけ位置ずれを起こしているため、直線M1、M2の位置が互いにずれている。同様に、直線N1、N2は、対応する遮光パターンP1とレジストパターンP2の+X方向のエッジを示している。このレジストパターンP2がΔNだけ位置ずれを起こしているため、直線N1、N2の位置が互いにずれている。このように、図18に示す各レジストパターンP2は、矢印E1の方向に位置ずれを起こしている。
【0150】
そこで、本実施形態のフォトマスク11を製造する際には、各遮光パターンP1の位置が、設計値の位置から矢印E2の方向にずれるように、各遮光パターンP1を形成してもよい。例えば、あるレジストパターンP2が+X方向にΔxだけ位置ずれを起こすと予想される場合には、対応する遮光パターンP1の位置が、設計値の位置から-X方向にΔxだけずれるように、対応する遮光パターンP1を形成してもよい。すなわち、対応する遮光パターンP1の位置をこのように補正してもよい。
【0151】
式(2)から分かるように、各レジストパターンP2の位置ずれの大きさは、基板11aのスロープ12の傾斜角度θinに応じて変化する。よって、本実施形態のフォトマスク11を製造する際には、各遮光パターンP1の位置が、設計値の位置から、傾斜角度θinに基づく距離だけずれるように、各遮光パターンP1を形成してもよい。これにより、各レジストパターンP2の位置ずれを効果的に抑制することが可能となる。
【0152】
なお、本実施形態のフォトマスク11を製造する際には、各遮光パターンP1の位置を設計値の位置からずらすだけでなく、各遮光パターンP1のX方向の幅を設計値の幅から補正してもよい。これにより、各レジストパターンP2の位置ずれをさらに効果的に抑制することが可能となる。また、各レジストパターンP2の位置ずれが、スロープ12の形状に関する傾斜角度θin以外の変数に応じて変化する場合には、各遮光パターンP1の位置や幅を、この変数に応じて補正してもよい。
【0153】
以上のように、本実施形態のフォトマスク11のスロープ12は、第1実施形態や第2実施形態のフォトマスク11のスロープ12の幅W2よりも短い幅W3を有するように形成される。また、本実施形態のフォトマスク11のスロープ12は、第1実施形態や第2実施形態のフォトマスク11のスロープ12の高低差H2よりも小さい高低差H3を有するように形成される。これにより、例えばフォトマスク11のスロープ12を急峻にするなど、フォトマスク11のスロープ12の形状を、形成しやすい形状にすることが可能となる。よって、本実施形態によれば、露光時にスロープ23の影響をスロープ12の作用により低減しつつ、スロープ12を容易に形成することが可能となる。
【0154】
なお、第1から第3実施形態におけるマスクブランクの加工方法やフォトマスク11の製造方法は、マスクブランクやフォトマスク11以外の原版の加工や製造に適用してもよい。このような原版の例は、ナノプリント用のテンプレートである。
【0155】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な方法、ブランク、およびマスクは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した方法、ブランク、およびマスクの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0156】
1:マスクステージ、2:干渉計、3:駆動装置、
4:ウェハステージ、4a:ウェハチャック、4b:駆動装置、
5:干渉計、6:照明ユニット、7:投影ユニット、
8:フォーカスセンサ、8a:投影器、8b:検出器、9:制御装置、
11:フォトマスク、11a:基板、11b:遮光膜、12:スロープ、
13:下部マスク層、14:上部マスク層(マスク層)、15:レジスト膜、
16:リセス部、17:スロープ、18:ショット領域、19:凹部、
21:ウェハ、21a:基板、21b:被加工膜、21c:レジスト膜、
22:スロープ、23:スロープ、24:凹部、25: ショット領域、26:凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18