(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】制気口の検査方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/89 20180101AFI20240403BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20240403BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20240403BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240403BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20240403BHJP
【FI】
F24F11/89
F24F11/49
F24F11/56
F24F11/74
G01F1/00 G
(21)【出願番号】P 2020167730
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅明
(72)【発明者】
【氏名】山口 倫明
(72)【発明者】
【氏名】内山 聖士
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-324337(JP,A)
【文献】特開2004-257842(JP,A)
【文献】特開2020-020770(JP,A)
【文献】実開平4-138226(JP,U)
【文献】特開2018-081003(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056795(WO,A1)
【文献】特開2008-241152(JP,A)
【文献】特開2009-059147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
G01F 1/00-1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定時に制気口の下方に配され、上方から吹き出されまたは下方から吸い込まれる空気を集風するフードと、該フード内に取り付けられて制気口に関する測定を行うセンサと、を備えた測定部と、
リフタを備えて前記測定部を上下に昇降可能に支持する昇降部と、
前記昇降部の昇降の度合を検出する昇降検出部と
を備えた検査装置を用い、
測定時には、制気口の下に位置した前記検査装置の前記リフタの昇動作を行い、
前記フードを制気口の下方に所定の時間停止させた後、
前記リフタの降動作を行い、
前記センサは、少なくとも前記リフタの昇動作により前記フードが制気口の下方に停止する前から、前記リフタの降動作により前記フードが制気口を離れるまで測定を継続し、
前記センサにより取得された測定データから、前記リフタの高さが所定の範囲にある間の測定データを抽出し、該当する制気口における測定データとすること
を特徴とする制気口の検査方法。
【請求項2】
前記リフタの高さが所定の範囲内にある間の測定データから、さらに最初の時点と最後の時点のデータを除いた測定データを、該当する制気口に関する測定値として扱うこと
を特徴とする請求項1に記載の制気口の検査方法。
【請求項3】
前記検査装置に、位置合わせ部として天井に向かって照射光を照射する光照射装置を備え、測定時には、天井における照射光の照射位置を目安に前記フードの位置を制気口の真下に合わせてから、前記リフタの昇動作を行うこと
を特徴とする請求項1または2に記載の制気口の検査方法。
【請求項4】
前記センサを用いて少なくとも風量を測定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の制気口の検査方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の制気口の検査方法を実行可能に構成されていることを特徴とする制気口の検査システム。
【請求項6】
前記センサにより取得された測定データを外部に送信するように構成され、
前記センサにより取得され外部に送信された測定データから、前記リフタの高さが所定の範囲にある間の測定データを抽出し、該当する制気口に関する測定データとする解析部を備えたこと
を特徴とする請求項5に記載の制気口の検査システム。
【請求項7】
前記検査装置は、通信部を介して接続されたネットワークに測定データを送信するように構成され、
前記解析部は前記ネットワーク内に設けられ、
前記ネットワークには、前記解析部にアクセス可能な外部ハードウェアが接続され、
該外部ハードウェアは、前記解析部へテンプレートをアップロードし、前記解析部は、前記テンプレートにデータを書き込み、前記外部ハードウェアは、前記解析部によりテンプレートにデータを書き込まれた帳票データをダウンロードし得るよう構成されていること
を特徴とする請求項6に記載の制気口の検査システム。
【請求項8】
前記昇降検出部は、リミットスイッチ、光距離計の高さセンサ、のうち少なくとも一つ以上を備え、
前記昇降検出部により検出されるリフタの高さを用い、前記リフタの高さが所定の範囲にある間の測定データを特定するよう構成されていること
を特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の制気口の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調設備の工事後に空調の試運転や調整を行う場合等に、各制気口について風量の測定等の検査を行うための検査方法および検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
事務所ビルや商業施設、病院など居室を主とする建物、あるいは工場のような産業用途の建物、その他各種の建物において、天井面に空調のための制気口(空気の吹出口または吸込口)が設けられる場合がある。そうした建物において空調設備の工事(新築工事や改修工事)を行った際、新規の制気口を天井面に設置した場合には、施主への引渡し前に、各制気口について十分な風量が出ているかどうかや、適切な温度の吹出空気が供給されているか等の性能検査を行う必要がある。
【0003】
従来、こうした検査に係る作業は、多くが手動で行われてきた。すなわち、空調を作動させた状態で、天井に設けられた制気口の下方に脚立等を立て、そこに作業員が登って前記制気口に測定用のフードを当て、前記制気口の下方における風量等を測定して記録するのである。この作業を、各制気口毎に順番に行う。
【0004】
こういった作業は、各制気口毎に脚立の移動や昇り降り、フードの着脱やセンサの操作を繰り返すことになり、煩雑である。特に高層ビルなど、制気口の設置される領域の面積が大きい建物では、検査に必要な作業量は膨大となり、非常に手間と時間がかかって工期の長期化を招く場合があった。また、検査はフードやセンサを操作し測定を行う係と、報告された数値を記録する係の二人一組で行われることが多く、人件費も嵩むし、人の行う作業が多ければ、その分だけ人的ミスの生じる可能性も高まってしまう。
【0005】
そこで近年では、例えば下記特許文献1、2のように、風量等の測定・記録作業を機械的に代行あるいは補助するための技術も種々提案されている。特許文献1には、画像処理によって空気吹出口の存在を検出し、該吹出口の位置へロボットを自動的に移動させて空気の風量と温度を測定する技術が記載されている。特許文献2には、飛行手段(所謂ドローン)を用いて集風フードを天井制気口に運び、空気の風量や温度を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-149363号公報
【文献】特開2018-91684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような画像処理を用いる方法では、形状パターンによって吹出口を認識するため、吹出口の識別に関して確実性に欠ける。通常、一個の部屋やフロアには、共通する形状の吹出口が幾つも設けられるので、一度測定を済ませた吹出口を再び測定してしまうといった誤動作が生じる可能性が考えられるのである。
【0008】
また、上記特許文献2に記載されているような飛行手段を用いた方法では、測定対象である吹出口毎に誘導用のカメラを設置する必要があり、該カメラの設置作業に多大な労力と費用を要するほか、飛行手段の操作に習熟した作業員の確保にも手間や費用が生じてしまう。さらに、ドローンによる測定時、該ドローンを測定対象付近に留まらせるためにはプロペラによるホバリングが必要であるが、これによって測定対象の近傍に強い気流が形成され、周囲の空気が誘引されてしまうので、正確な風量測定ができないという問題もある。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、空調の制気口に関する検査を簡便且つ好適に実行し得る制気口の検査方法およびシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、測定時に制気口の下方に配され、上方から吹き出されまたは下方から吸い込まれる空気を集風するフードと、該フード内に取り付けられて制気口に関する測定を行うセンサと、を備えた測定部と、リフタを備えて前記測定部を上下に昇降可能に支持する昇降部と、前記昇降部の昇降の度合を検出する昇降検出部とを備えた検査装置を用い、測定時には、制気口の下に位置した前記検査装置の前記リフタの昇動作を行い、前記フードを制気口の下方に所定の時間停止させた後、前記リフタの降動作を行い、前記センサは、少なくとも前記リフタの昇動作により前記フードが制気口の下方に停止する前から、前記リフタの降動作により前記フードが制気口を離れるまで測定を継続し、前記センサにより取得された測定データから、前記リフタの高さが所定の範囲にある間の測定データを抽出し、該当する制気口における測定データとすることを特徴とする制気口の検査方法にかかるものである。
【0011】
本発明の制気口の検査方法においては、前記リフタの高さが所定の範囲内にある間の測定データから、さらに最初の時点と最後の時点のデータを除いた測定データを、該当する制気口に関する測定値として扱うことができる。
【0012】
本発明の制気口の検査方法においては、前記検査装置に、位置合わせ部として天井に向かって照射光を照射する光照射装置を備え、測定時には、天井における照射光の照射位置を目安に前記フードの位置を制気口の真下に合わせてから、前記リフタの昇動作を行うことができる。
【0013】
本発明の制気口の検査方法においては、前記センサを用いて少なくとも風量を測定することができる。
【0014】
また、本発明は、上述の制気口の検査方法を実行可能に構成されていることを特徴とする制気口の検査システムにかかるものである。
【0015】
本発明の制気口の検査システムは、前記センサにより取得された測定データを外部に送信するように構成し、前記センサにより取得され外部に送信された測定データから、前記リフタの高さが所定の範囲にある間の測定データを抽出し、該当する制気口に関する測定データとする解析部を備えることができる。
【0016】
本発明の制気口の検査システムにおいて、前記検査装置は、通信部を介して接続されたネットワークに測定データを送信するように構成し、前記解析部は前記ネットワーク内に設け、前記ネットワークには、前記解析部にアクセス可能な外部ハードウェアが接続され、該外部ハードウェアは、前記解析部へテンプレートをアップロードし、前記解析部は、前記テンプレートにデータを書き込み、前記外部ハードウェアは、前記解析部によりテンプレートにデータを書き込まれた帳票データをダウンロードし得るよう構成することができる。
【0017】
本発明の制気口の検査システムにおいて、前記昇降検出部は、リミットスイッチ、光距離計の高さセンサ、のうち少なくとも一つ以上を備え、前記昇降検出部により検出されるリフタの高さを用い、前記リフタの高さが所定の範囲にある間の測定データを特定するよう構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制気口の検査方法およびシステムによれば、空調の制気口に関する検査を簡便且つ好適に実行するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施による制気口の検査システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施に用いる制気口の検査装置の形態の一例を示す斜視図である。
【
図5】制気口に対し検査装置の位置合わせを行う様子の概略図である。
【
図6】各制気口について取得される風量値の推移の一例を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施による制気口の検査方法の測定側における手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施による制気口の検査方法の記録側における手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の実施による制気口の検査システムの形態の一例を示している。本実施例の検査システムは、フードやセンサなど、制気口の検査に必要な装置を備えた検査装置1を用い、例えば建築物において空調の設備工事を行った後、空調設備を試運転し、性能検査や調整を行う際等に利用し得るよう設計されている。
【0022】
検査装置1は、測定作業を行う作業員が手動で床面上を走行させるよう構成され、且つ作業員の操作入力に応じ、制気口に対し測定動作を行うようになっている。作業員は、天井に制気口の設置された領域内で検査装置1を各制気口の位置へ次々と移動させ、制気口毎に測定を行う。また、検査装置1は取得した測定データを外部に送信するようになっており、検査装置1の外部に設けられた解析部8aでは、検査装置1から送信された測定データが逐次解析・記録されるようになっている。尚、測定やデータの記録・解析の具体的な手順については後に詳述する。
【0023】
検査装置1の構成の一例を
図2、
図3に示す。検査装置1は、床面上を移動可能に構成された台車部2と、該台車部2の上に設けられた昇降部3と、該昇降部3の上部に設けられた測定部4と、各部の動作を操作する操作部11を備えている。
【0024】
台車部2は、座面2aの下部に車輪2bを備えると共に、座面2aの一辺にハンドル2cを備えた手押し台車として構成されている。
【0025】
昇降部3は、台車部2の上に測定部4を支持し、且つ該測定部4の昇降を行う機構であり、上下に伸縮するリフタ3aを備え、該リフタ3aの上部に測定部4が取り付けられるようになっている。リフタ3aの仕組みとしては、パンタグラフジャッキ様の構造、あるいは油圧による昇降機構等とすることができるが、その他、測定部4を昇降可能に支持し得る限りにおいて、どのような仕組みを採用してもよい。
【0026】
昇降部3は、該昇降部3の昇降の度合(リフタ3aの伸縮度)を検出する昇降検出部として、リミットスイッチ3b,3cおよび高さセンサ3dを備えている。ここで昇降検出部は、リミットスイッチ3b,3cの代わりにシート式のスイッチやシート式の感圧センサを用いても良いし、他の検出手段を用いても良い。また高さセンサ3dも一例に限定されず、他の検出手段を用いても良い。更に昇降検出部は、リミットスイッチ3b,3c、高さセンサ3dのうち少なくとも一つ以上を備え、リミットスイッチ3b,3cのみの場合や高さセンサ3dのみの場合のようにいずれかを単独で使用しても良いし、それらを組み合わせて使用しても良い。
【0027】
上側のリミットスイッチ3bは、後述する測定部4のフード4aの上端に取り付けられており、昇動作時(リフタ3aが伸びる時)において、リミットスイッチ3bへの入力により、フード4aが対象物(この場合、天井あるいは制気口)に接触したことを検出するようになっている。また上側のシート式のスイッチやシート式の感圧センサの場合は、上側のリミットスイッチ3bと同様に位置すると共に作用し、フード4aが対象物(この場合、天井あるいは制気口)に接触したことを検出するようになっている。
【0028】
下側のリミットスイッチ3cは、リフタ3aの上下の互いに対向する面のいずれか(ここに図示した例では上側)に備えられており、降動作時(リフタ3aが縮む時)において、リミットスイッチ3cへの入力によりリフタ3aが縮みきったことを検出するようになっている。
【0029】
高さセンサ3dは、例えばリフタ3aの上端側に取り付けられた光距離計であり、下方に位置する台車部2の座面2aの上面に取り付けられた反射板に対し赤外線等の検出波を照射し、反射波を検出して座面2aに対するセンサ自身の高さを特定できるようになっている。尚、図示は省略するが、高さセンサ3dを上方へ検出波を照射する向きに取り付け、後述する測定の際、天井からの距離を測定するようにしてもよい。その他、昇降検出部としては、ここに説明したリミットスイッチ3b,3cや高さセンサ3d以外にも種々の仕組みを採用することができる。
【0030】
測定部4は、
図2に示す如く下方に向けて窄まる形状のダクト状のフード4aと、該フード4a内の適宜位置に設けられたセンサを備えている。測定時には、
図3に仮想線にて示すように、フード4aの上部開口が上方の制気口10と対向するよう、フード4aを制気口10の下方に配する。制気口10が吹出口である場合、制気口10から下方へ吹き出される空調空気がフード4a内に集められる。制気口10が吸込口である場合は、制気口10に下方から吸い込まれる室内空気がフード4a内に集められる。フード4a内では、集風された空気に対し、前記センサにより測定を行う。
【0031】
測定部4によって測定される項目は、前記センサの種類によって異なるが、本実施例の場合、前記センサとして圧力センサ4bと温度センサ4cを備えており、圧力センサ4bではフード4a内外の圧力差が取得され、その差圧値を演算することで風量を測定することができる。温度センサ4cでは、フード4aに集風される空気の温度を測定することができる。尚、測定する項目や、そのためのセンサの種類は本発明を実施する際の各条件に応じて変更することができるが、少なくとも風量を測定できるように検査装置1を構成するとよい。
【0032】
また、フード4aの基部側が取り付けられているリフタ3aの上端側の四隅には、制気口に対するフード4aの位置を検出する位置合わせ部としての光照射装置3eが備えられている。本実施例の場合、光照射装置3eは
図2に示す如く平面視でフード4aを取り囲む位置に4個が設けられており、それぞれ上方へ向かって照射光としてのレーザ光を照射するようになっている。そして、この照射光を目視することで、平面視におけるフード4aの天井に対する位置を検出できるようになっている。位置合わせ部(光照射装置3e)による位置合わせの手順については後述する。
【0033】
操作部11は、検査装置1の各部に対し操作指令を入力する部分であり、例えばタッチパネル式のディスプレイとして構成される。操作部11に入力された操作指令は、次に述べる制御部5に指令信号として入力され、制御部5では、この指令信号に基づいて各部の動作を実行する。尚、
図2には操作部11を台車部2のハンドル2cに取り付けた形態を図示しているが、操作部11の取付位置はこれに限定されず、検査装置1を適切に操作できる限りにおいて、操作部11はどこに設けてもよい。あるいは、測定作業を行う作業員が操作部11を携行するようにしてもよい。
【0034】
制御部5は、検査装置1を構成する各部の動作を制御する制御装置(PLC)であり、例えば操作部11から入力される指令信号に応じてリフタ3aの駆動モータに動作信号を入力し、リフタ3aの昇降動作を行うようになっている。
【0035】
制御部5には、リフタ3aに取り付けられたリミットスイッチ3b,3cの検出信号や、高さセンサ3dによって検出されるリフタ3aの高さに関する値が昇降度データとして入力されるようになっており、制御部5は、これらの昇降度データに従ってリフタ3aの昇降動作を行う。測定時における昇降動作の手順については、後に改めて説明する。
【0036】
光照射装置3eのオンオフについても、操作部11からの操作信号の入力に応じ、制御部5により切り替えられるようになっている。その他、制御部5は、検査装置1における各部の動作を必要に応じて種々実行可能に構成することができる。
【0037】
さらに、制御部5は、通信部6を介して外部の機器と情報的に接続されており、圧力センサ4b、温度センサ4c、リミットスイッチ3b,3c、高さセンサ3dといったセンサ類から入力される信号を適宜変換し、外部出力に適したアナログまたはデジタルの測定データとして外部へ出力するようになっている。尚、本実施例の場合、通信部6はゲートウェイ機7を通じてネットワーク8と通信可能に構成されている。
【0038】
ネットワーク8内のクラウドには、検査装置1から取得した測定データを解析する解析部8aが設けられている。解析部8aは、各種の測定データを演算する機能を備えており、例えば圧力センサ4bから逐次入力される差圧値や、温度センサ4cにより測定された空気温度に応じた補正値、予め入力されているフード4aの断面積等に基づき、風量値を算出することができる。取得した測定データや、それらを演算したデータは、時系列に沿って整理されたデータベースとして解析部8a内の記憶部8bに記録される。
【0039】
また、ネットワーク8には、パーソナルコンピュータ、あるいはタッチパネル式のタブレット等の情報処理装置である端末装置9が接続されている。端末装置9は、検査装置1とは別に設けられた外部ハードウェアである。端末装置9は、ネットワーク8内の解析部8aや、検査装置1の制御部5にアクセスできるようになっており、圧力センサ4bや温度センサ4cの取得したデータや、解析部8aによって解析・記録されたデータを必要に応じて参照したり、制御部5との間でデータのやり取りを行うことができる。この端末装置9が複数台あって、そのうちの一台が
図2のハンドル2c上部部分に設置できるタブレットやスマートフォンであることが好適である。
【0040】
端末装置9内には、各種のテンプレートが予め格納されている。これらのテンプレートのうち少なくとも一部は、解析部8aからアクセスできるようネットワーク8にアップロードすると、アップロードされたテンプレートに対し、解析部8aが検査装置1から取得したデータやそれらを解析して得たデータを自動的に書き込むようになっている。端末装置9では、解析部8aによって書き込みの行われたデータをダウンロードし、帳票データとして利用することができる。尚、帳票データの作成に関わる機能の分担に関しては、以上のような例に限定されない。例えば、解析部8aに記録されたデータベースの一部または全部を端末装置9にダウンロードし、そのデータを端末装置9内でテンプレートに書き込んで帳票を作成してもよい。また、テンプレートを解析部8a側に予め格納し、解析部8aは取得したデータを前記テンプレートに自動的に書き込むようにしておき、端末装置9ではデータの書込みの済んだテンプレートを帳票としてダウンロードするのみとしてもよい。あるいは、データの取得や解析・記録といった解析部8aの機能全体を端末装置9に持たせる(端末装置9内に解析部を設ける、あるいは端末装置9を解析部として構成する)こともできる。また、検査装置1や検査システムの他の部分の構成についても、ここに示した例に限定されない。例えば、通信部6は検査装置1の一部として構成してもよいし、逆に制御部5を検査装置1から物理的に離して設置し、台車部2や昇降部3と無線で接続してもよい。あるいは、端末装置9はネットワーク8を介さず、通信部6や制御部5と直接接続してもよい。その他、各部の必要な機能を実現できる限りにおいて、検査装置や検査システムの構成は適宜変更してよい。
【0041】
尚、
図1に示したシステム系統の各所には、必要に応じてリレーや指示計、指示調節計等を組み込むことができるが、ここでは図示を省略している。
【0042】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0043】
測定対象のエリアには、天井に複数の制気口10が設けられている(
図4参照。ここでは、4つの制気口10A~10Dを図示している)。この対象エリアに検査装置1を置いたら、まず検査装置1の制御部5に対し、操作部11や外部ハードウエアである端末装置9を一時的に接続しそこから入力して対象エリアに関する各種の設定を行う。設定する項目は、例えば対象エリアの天井の高さや、対象エリア内における測定対象(制気口10)の数、測定エリアの名称、測定の際に必要な待機時間(tとする)、測定番号(測定毎にカウントアップされ、各制気口10に割り振られる、制気口10の識別のための番号)の初期値、測定番号に紐づけられる風量設定値、等である。
【0044】
設定が済んだら、測定対象とする制気口10の下に検査装置1を配置し、さらに制気口10に対して検査装置1の位置合わせを行う。
【0045】
上述のように、検査装置1の適宜位置(ここに示した例では、昇降部3のリフタ3aにおけるフード4aの周囲)には、上方へ向かって鉛直にレーザ光を照射するよう、光照射装置3eが取り付けられている。光照射装置3eをオンにすると、該光照射装置3eから発するレーザ光は、例えば
図5中に破線で示すように天井に照射される。フード4aは、これらの照射光に囲まれる領域の中央下方に位置しているので、作業員は、天井における照射光の照射位置を目安に台車部2を動かし、フード4aの位置を対象の制気口10の真下に合わせる。すなわち、照射光に囲まれた領域の中央に制気口10が位置するよう、台車部2の位置を調整する。尚、ここではフード4aを取り囲むように配置された4つの光照射装置3eからそれぞれレーザ光が点状に照射される場合を図示したが、フード4aを制気口10に対し適切に位置合わせすることができる限りにおいて、光照射装置3eの数や配置、照射光の形状等がどのようであっても良いことは勿論である。
【0046】
位置合わせが済んだら、操作部11に測定開始の指令を入力する。制御部5は、測定開始の信号が入力されると、リフタ3aの駆動モータを昇方向(上方向)へ動作させ、フード4aが制気口10の下方の測定に適した位置に達した段階で停止させる。フード4aが適当な高さにあるか、ないしリフタ3aが適当な高さまで伸びたかについては、例えば作業員が目視で把握し、適当なタイミングで操作部11にリフタ3a停止の操作を入力してもよいが、昇降検出部であるリミットスイッチ3bや高さセンサ3dによって制御部5側で把握し、これに応じて自動でリフタ3aの昇降の度合を操作するよう構成すると便利である。すなわち、高さセンサ3dの検出値として取得されるリフタ3aの高さが設定された閾値に到達するか、上側のリミットスイッチ3bが接触を検知した時点で、制御部5がリフタ3aの昇動作を自動で停止すればよい。このとき、前記閾値としては、ステップS1で入力した天井の高さに基づき算出した値を使用することができる。
【0047】
また、制御部5は、測定開始の指令が入力された時点で、圧力センサ4b、温度センサ4c、高さセンサ3dといった各種センサから取得される測定値を、通信部6へ出力する。この信号の出力は、少なくとも一個の制気口10に対する測定が終了するまで継続する。出力されたデータは、通信部6からネットワーク8へ送信され、解析部8aに順次記録される。
【0048】
ここで、高さセンサ3dが
図2とは逆に上方へ照射波を照射するようになっている場合には、高さセンサ3dは下方の台車部2からの高さではなく、上方に位置する天井からの距離を検出する。この場合、例えば高さセンサ3dをフード4aの基部端の高さに取り付けておけば、高さセンサ3dによって検出される対象(すなわち、天井)の距離が、フード4aの高さと一致した時点、またはリミットスイッチ3bが接触を検知した時点で、リフタ3aの駆動モータを停止させればよい。
【0049】
リフタ3aの昇動作が停止した後、所定の時間、フード4aを制気口10の下方で停止させた状態で、センサ4b,4cによる測定を続ける。その後、制御部5はリフタ3aの駆動モータを降方向(下方向)へ動作させ、リフタ3aを縮める。フード4aを制気口10の下方に支持した状態でリフタ3aを停止させておく時間は、先の設定時に制御部5に入力した待機時間tである。
【0050】
後述するように、ロギング周期毎に取得される圧力センサ4bの測定値の時系列データから、または/及び、該当する制気口の測定データとして抽出された点数の測定値データの平均値から、制気口10の風量値を、解析部8aにおいて求める。リフタ3aを縮めたら、求められた風量測定値を測定番号に紐づけられる風量設定値と比較し適合範囲にあるかどうかを判断するように、現在の制気口10について取得された測定値をチェックする。例えば風量を検査したい場合、ある閾値以上の風量が検知できれば正常、風量が閾値未満であれば、再度の検査や整備が必要である。そこで、一個の制気口10について一回の測定が済んだら、取得された測定値をチェックし、その値が正常な範囲にあればその制気口10については測定を終了し、異常な値が検出されれば再度測定を行う。そのために、解析部8aにて、求められた風量測定値を測定番号に紐づけられる風量設定値と比較し適合範囲にあるかどうかを判断し、設定した適合範囲と比較演算して範囲外ならば、端末装置9へ警報を出力する。複数回の測定を行った結果、端末装置9に警報が出力されず正常な測定値が検出されれば、その値が正しい測定値であるとして、次の測定対象である制気口10へ向かう。複数回の測定を行っても異常な測定値が検出されるようであれば、その値が正しい測定値であり、該当の制気口10については調整や修理が必要であるとして、次の制気口10へ向かう。この作業を、測定対象である制気口10の全てについて繰り返す。全ての制気口10について測定が終了したら、制御部5から通信部6への測定値データの送信を終了し、それらの解析部8aでの取得も終了する。
【0051】
次に、各制気口10における各センサによる測定値の決定について説明する。
【0052】
解析部8aでは、リフタ3aが伸びてフード4aが制気口10に当てられている間の測定データのほか、リフタ3aの昇降動作中の測定データも、ロギング周期毎に時々刻々取得されている。すなわち、本実施例では、少なくともリフタ3aの昇動作によりフード4aが制気口10の下方に停止する前から、フード4aが制気口10の下方で所定の時間停止し、その後リフタ3aの降動作によりフード4aが制気口10を離れるまでの間、センサ4b,4cによる測定が継続され、その間に取得された測定データは、検査装置1から解析部8aへ送信されるようになっている。そして、ある制気口10の測定前後における風量値は、差圧センサである圧力センサ4bの測定値に基づいて算出され、例えば
図7にグラフとして示すような時系列データとして取得される。
【0053】
これらの測定データから、まず、リフタ3aが所定の範囲の高さに伸びた状態で停止していた時間に該当する測定データを抽出する。「所定の範囲の高さ」とは、即ちフード4aが制気口10の下方の適切な位置にあるようなリフタ3aの高さであり、例えば目標とするリフタ3aの高さHをH=X[mm]とする場合、X-a≦H≦X+aである間の風量データを抽出する。リフタ3aが所定の範囲の高さにあった時間(X-a≦H≦X+aであった時間)は、高さセンサ3dの測定ログや、リフタ3aへの伸縮動作の指令ログを参照すれば特定できる。高さセンサ3dの測定ログを根拠とする場合には、例えば「X-a≦(高さセンサ3dの測定値)+(台車部2の高さ)≦X+aであった時間」(高さセンサ3dが、台車部2の上面からの高さを測定するよう設置されている場合)、あるいは、「(フード4aの高さ)-a≦高さセンサ3dの測定値≦(フード4aの高さ)+aであった時間」(高さセンサ3dが、フード4aの基部端から天井までの距離を測定するよう設置されている場合)、などとして特定することができる。ここで、リフタ3aの高さについて「所定の値」(H=X)ではなく「所定の範囲」(X-a≦H≦X+a)としているのは、リフタ3aの高さに関し、ある程度の揺れ幅を許容することで測定漏れを防止する趣旨である。
【0054】
「リフタ3aが所定の範囲の高さにあった時間」の風量データとして抽出されるのは、
図6に示す例においては、Q
1~Q
6の6点である。例えば風量測定のロギング周期が5秒、待機時間tが30秒であり、測定対象である制気口10において正常な風量が出ていた場合には、このように6点程度の風量データが抽出される。抽出された風量データは、測定対象である制気口10の風量データであり、このようにして、圧力センサ4bの取得した測定データから、該当する制気口10の測定データを簡便に抽出することができる。
【0055】
さらに、正確を期すため、抽出された風量データのうち、最初に測定された一点Q1と、最後に測定された一点Q6のデータを除くとよい。これらのデータは、リフタ3aが伸びきった直後、およびリフタ3aが縮み始める直前にあたるデータであり、フード4aの位置が不安定で、正しい風量が反映されていない可能性があるためである。解析部8aは、最初と最後の一点ずつを除いたQ2~Q5の4点のデータを、測定対象である制気口10の風量データとして記録する。記録の際には、Q2~Q5の4点の平均値を記録してもよいし、4点の風量値をそのまま記録してもよい。あるいは、複数(4点)ある風量値の一部を代表値として記録してもよいし、一部の値の平均値を記録してもよい。記録された各制気口10の風量値は、測定の終了後、あるいは測定の実行中にも逐次、端末装置9から参照することができる。
【0056】
こうした風量値の算出やその記録は、各制気口10の測定を行いながら並行して行うこともできるし、一連のデータを解析部8aに保存しておいて、測定が終了してから別途行ってもよい。
【0057】
ここで、待機時間tの設定について説明する。風量等に関し、正確な測定値を得るためには、ある程度の時間、フード4aを制気口10に当てた状態で測定をする必要がある。待機時間tはこのために設定される時間であり、リフタ3aは、台車部2が目標の制気口10の位置で停止し、リフタ3aが伸び動作を終えてから、待機時間tとして設定された時間、伸びた状態で停止する。そして、特に上に述べたような手順で測定データの抽出を行う場合、この待機時間tはロギング周期の少なくとも3倍以上とすると良い。待機時間tがロギング周期の3倍以上あれば、リフタ3aが伸びた状態で停止している間の測定データから、最初と最後の測定データを除いたデータを取得し、記録することができる。
【0058】
尚、ここでは風量値を例に説明を行ったが、風量値以外の測定項目、例えば空気の温度等についても、同様の方法(リフタ3aが伸びた状態で停止している間の測定データを抽出し、そのうち最初と最後のデータを除いた測定データを、該当の制気口10に関する測定値として記録する)で測定値を記録することができることは勿論である。
【0059】
記録された測定値等のデータは、必要に応じて各種のテンプレートに書き込み、端末装置9にて帳票として利用することができる。
【0060】
上述のような制気口の検査の手順は、
図7、
図8に示す如きフローチャートに整理することができる。
【0061】
検査の作業は、概ね測定と記録に大別されるが、測定を行う側にあたる検査装置1における手順は、例えば
図7に示す通りである。まず、検査装置1の制御部5に対し、対象エリアに関する各種の設定を行う(ステップS1)。設定する項目は、対象エリアの天井の高さ、測定対象である制気口10の数、対象エリアの名称、待機時間t、測定番号、測定番号に紐づけられた風量設定値、適合範囲設定値等である。次に、位置合わせ部である光照射装置3eをオンにし(ステップS2)、最初の制気口10の下に検査装置1を移動させ、位置合わせを行う(ステップS3)。位置合わせが済んだら、作業員は操作部11に測定開始の指令を入力する(ステップS4)。制御部5は、通信部6に対し、各センサから取得した測定データの出力を開始する(ステップS5)。測定データを出力する際には、これらに現在設定されている測定番号を紐付ける。同時に、リフタ3aの駆動モータを昇方向へ動作させる(ステップS6)。
【0062】
制御部5は、リフタ3aの昇動作を続けながら、高さセンサ3dの検出値として取得されるリフタ3aの高さが設定された閾値に到達したか、または上側のリミットスイッチ3bに入力があるかの判定を繰り返す(ステップS7)。ここで、前記閾値としては、ステップS1で入力した天井の高さに基づき算出した値を使用することができる。リフタ3aの高さが閾値に達したか、リミットスイッチ3bが接触を検知した時点で、駆動モータを停止する(ステップS8)。
【0063】
リフタ3aを停止させた状態で、制御部5は、昇動作を停止してから待機時間tが経過したか否かの判定を繰り返す(ステップS9)。待機時間tが経過した時点で、制御部5はリフタ3aの駆動モータを降方向へ動作させ、リフタ3aを縮める(ステップS10)。リフタ3aの降動作を続けながら、制御部5は、下側のリミットスイッチ3cに入力があるか否かの判定を繰り返す(ステップS11)。リミットスイッチ3cが接触を検知した時点で、駆動モータを停止する(ステップS12)。ステップS6~S12で一個の制気口10に対する一回の測定が済んだので、測定番号(各制気口10の識別のため、制気口10毎に割り振られる番号)をカウントアップする(ステップS13)。
【0064】
ここで、先のステップS6~S12で測定を行った制気口10に関し、再び測定を行うか否かの判定を行う(ステップS14)。先のステップS6~S12で得られた測定値をチェックし、正常な値が検出されていれば、その制気口10については測定が済んだとして、ステップS16へ進む。測定値が正常の範囲にない場合には、測定番号をカウントダウンし(ステップS15)、同じ制気口10に対し再度ステップS6~S12を繰り返す。
【0065】
測定を複数回繰り返した結果、正常な測定値が検出されれば、その時点でステップS14からステップS16へ進む。所定の回数、測定を行っても異常な測定値が検出されるようであれば、その制気口10については異常値が測定されている(異常値がその制気口10に関しては正しい測定値であり、その制気口10には調整や修理が必要である)と判断できるので、やはりステップS16へ進む。
【0066】
ステップS16では、制御部5から通信部6へのデータの送信を停止する。続いて、対象エリアにある測定対象の制気口10のうち、未測定の制気口10があるか否かについて判定する(ステップS17)。未測定の制気口10がなければ、検査装置1の電源を落とし(ステップS18)、測定を終了する。未測定の制気口10がある場合には、次の制気口10に移動し、その制気口10についてステップS3以降の工程を繰り返す。
【0067】
検査の作業のうち、記録を行う側にあたるシステムにおける手順は、例えば
図8に示す通りである。
【0068】
解析部8aには、予めデータの演算・記録のための各種設定を入力しておく(ステップS20)。ここで入力されるのは、例えば上述の如き測定値の取得方法において、
図6に示すような時系列データのうち、どの値を使用するか(リフタ3aの高さがどの範囲にある時間帯のデータを測定値として抽出するか。つまり、例えばリフタ3aの高さHがX-a≦H≦X+aである間のデータを測定値として抽出する場合のXやaの値の設定)、また、リフタ3aが所定の高さにある間のデータが何個連続していた場合に、それを測定値として抽出するか(これをN個とする)、さらに、測定値を正常・異常を判断する閾値(例えば風量値について閾値をQ
sとすると、測定値がQ
s以上であれば正常値、Q
s未満であれば異常値と判断される)、等である。
【0069】
解析部8aの設定が済んだ後、検査装置1による測定が開始されると、制御部5からは各種の測定データ(圧力センサ4bや温度センサ4c、高さセンサ3d等による測定値等)が測定番号と共にネットワーク8の解析部8aへ転送され(ステップS21;
図7、ステップS5も参照)、解析部8aは、これを時刻と紐つけて取得する(ステップS22)。ここで本実施例の場合、圧力センサ4bによって差圧値が測定されるようになっているが、この差圧値は、解析部8aにおいてフード4aの断面積等と共に演算され、風量値として記録される。
【0070】
さらに、解析部8aは、あるロギング周期において取得された測定データの測定時において、リフタ3aの高さが所定の閾値(X-a)以上であったか否かを判定する(ステップS23)。閾値未満であった場合は、次のロギング周期で測定された測定データを取得し(ステップS22)、これについて同じ判定を行う(ステップS23)。これを、リフタ3aの高さが所定の閾値(X-a)以上である時刻の測定データが取得されるまで繰り返す。
【0071】
リフタ3aの高さが所定の閾値(X-a)以上である時刻の測定データが初めて取得されたら、その時刻(t1とする)を測定値と共に記録する(ステップS24)。時刻t1以降、測定データの取得を続けながら(ステップS25)、それらの測定データの測定時刻において、リフタ3aの高さが所定の閾値(X-a)以上であったか否かを判定する(ステップS26)。閾値以上であった場合は、次のロギング周期で測定された測定データを取得し(ステップS25)、これについて同じ判定を行う(ステップS26)。これを、リフタ3aの高さが所定の閾値(X-a)未満である時刻の測定データが取得されるまで繰り返す。
【0072】
時刻t1以降、リフタ3aの高さが所定の閾値(X-a)未満である時刻の測定データが初めて取得されたら、その直前のロギング周期で取得された測定値を、時刻(t2とする)と共に記録する(ステップS27)。時刻t1から時刻t2までの間の測定データは、すなわち、リフタ3aが制気口10の下で所定の高さ以上にある状態で取得された測定データである。
【0073】
ここで、リフタ3aの昇降の度合を示す昇降度データとしては、高さセンサ3dで取得される高さだけでなく、リミットスイッチ3bにて検知される接触信号を利用することもできる。この場合、例えば、リミットスイッチ3bにて接触が検知されてから最初に圧力センサ4bや温度センサ4cの測定データが取得された時刻をt1とし、その後、接触が検知されなくなる直前に測定データが取得された時点をt2とするとよい。
【0074】
続いて、時刻t1から時刻t2までの間に取得された測定データを再度参照し(ステップS28)、これらの各測定データの測定時刻において、リフタ3aの高さが所定の範囲内(X-a≦H≦X+a)にあったかをチェックする。リフタ3aの高さが所定の範囲内にあった測定データの個数をカウントし、その個数が閾値(N個)以上であるか否かを判定する(ステップS29)。個数が閾値未満であった場合には、それまでのステップS22~S27で取得された測定データに関しては決定ができないので、測定不能とし(ステップS30)、データベースに記録する(ステップS36)。
【0075】
ステップS29において、リフタ3aの高さが所定の範囲内にあった測定データの個数が閾値以上であった場合には、それらN個以上の測定データを抽出し(ステップS31)、それらのうち最初の時点と最後の時点の測定データを除外し、残りの測定データについて測定値の平均値を算出する(ステップS32)。算出された平均値について、正常値か否かを判定する(ステップS33)。風量値の場合は、算出された平均風量が所定の風量Qs以上であれば正常、Qs未満であれば異常である。判定の結果を出力し(ステップS34、S35)、測定番号と紐付けてデータベースに記録する(ステップS36)。ここで記録されるのは、対象の制気口10に関し、風量値等の測定値が正常であるか否かであるが、それ以外のデータ、例えば測定された数値そのものやその平均値、測定時刻等もあわせて記録してよい。解析部8aにて、求められた風量値等の測定値を測定番号に紐づけられる風量設定値と比較し適合範囲にあるかどうか、設定した適合範囲と比較演算して正常であるか否かを判断し、否であるならば、端末装置9へ警報を出力する。
【0076】
データの記録が済んだら、検査装置1からのデータの出力が継続しているか否か、あるいは検査装置1から出力されたデータのうち、解析部8aにおいて未取得のデータがあるか否かを判定する(ステップS37)。新しいデータや未取得のデータがあればステップS22に戻り、データの取得・解析を継続する。なければ、解析部8aによるデータの取得を終了する。ステップS36で記録されたデータは、必要に応じて所定のテンプレートに書き込み、帳票として端末装置9にて利用することができる(ステップS38)。ここで、端末装置9では適当なテンプレートを解析部8aにアップロードしてデータを書き込ませ、帳票データとしてダウンロードしてもよいし、解析部8aからダウンロードしたデータを端末装置9でテンプレートに書き込んで帳票データとしてもよい。また、解析部8aに予め格納されたテンプレートに対し解析部8aがデータを書き込んだものを帳票データとして端末装置9にダウンロードしてもよい。
【0077】
以上の如き検査装置を用いた検査方法あるいは検査システムによれば、測定作業については作業員は検査装置1を制気口10の下に位置合わせし、測定開始の指令を操作部11に入力するという動作を繰り返せばよく、フード4aを制気口10に当てたり、センサ4b,4cによる測定をしたり、測定値を記録したりといった作業はシステム側で自動的に実行される。検査を行う作業員にとっては、制気口10毎に脚立等を昇り降りしたり、測定をして結果を制気口10毎に記録したりといった作業が不要であり、検査にかかる手間や時間を大幅に抑えることができる。また、検査の作業に係る人員は、検査装置1を移動させて操作部11に指令を入力する人員が最低一人いれば十分であり、測定作業と記録作業を行う作業員がそれぞれ一人ずつ必要であった従来の方式と比較して人件費も節減できる。
【0078】
さらに、システム側で記録された測定データについては、測定時におけるリフタ3aの高さを参照してデータを抽出することで、正確な値を取得することができる。各制気口10と測定データの紐付けも自動で行われるので、記入ミスのような人的ミスも減らすることができる。また、測定結果の記入された帳票も自動で作成することができるので、データの管理にかかる手間を著しく減らすことができる。
【0079】
また、制気口10の位置は作業員が確認し、その都度検査装置1を制気口10の下方へ移動させるので、例えば上記特許文献1に記載されているような方法と異なり、一度測定を済ませた制気口を再び測定してしまうような心配はない。また、上記特許文献2に記載されているような方法と比較しても、誘導カメラの設置が不要でコストを抑えることができ、飛行手段の操作のような特殊な技術に習熟した作業員も必要ない。
【0080】
以上のように、上記本実施例の制気口の検査方法においては、測定時に制気口10の下方に配され、上方から吹き出されまたは下方から吸い込まれる空気を集風するフード4aと、該フード4a内に取り付けられて制気口10に関する測定を行うセンサ4b,4cと、を備えた測定部4と、リフタ3aを備えて測定部4を上下に昇降可能に支持する昇降部3と、昇降部3の昇降の度合を検出する昇降検出部3b~3dとを備えた検査装置1を用い、測定時には、制気口10の下に位置した検査装置1のリフタ3aの昇動作を行い、フード4aを制気口10の下方に所定の時間停止させた後、リフタ3aの降動作を行い、センサ4b,4cは、少なくともリフタ3aの昇動作によりフード4aが制気口10の下方に停止する前から、リフタ3aの降動作によりフード4aが制気口10を離れるまで測定を継続し、センサ4b,4cにより取得された測定データから、リフタ3aの高さが所定の範囲にある間の測定データを抽出し、該当する制気口10における測定データとするようにしている。このようにすれば、センサ4b,4cの測定データから、該当する制気口10の測定データを簡便に取得することができる。
【0081】
また、本実施例の制気口の検査方法においては、リフタ3aの高さが所定の範囲内にある間の測定データから、さらに最初の時点と最後の時点のデータを除いた測定データを、該当する制気口10に関する測定値として扱うようにしている。このようにすれば、制気口10の測定データから、より正確な測定値を簡便に取得することができる。
【0082】
本実施例の制気口の検査方法においては、検査装置1に、位置合わせ部として天井に向かって照射光を照射する光照射装置3eを備え、測定時には、天井における照射光の照射位置を目安にフード4aの位置を制気口10の真下に合わせてから、リフタ3aの昇動作を行うようにしている。このようにすれば、検査装置1を制気口10の測定に適した位置に簡便に配置することができる。
【0083】
本実施例の制気口の検査方法においては、センサ4b,4cを用いて少なくとも風量を測定するようにしている。
【0084】
また、本実施例の制気口の検査システムは、上述の制気口の検査方法を実行可能に構成されている。
【0085】
本実施例の制気口の検査システムは、上述の検査方法を実行するにあたり、センサ4b,4cにより取得された測定データを外部に送信するように構成され、センサ4b,4cにより取得され外部に送信された測定データから、リフタ3aの高さが所定の範囲にある間の測定データを抽出し、該当する制気口10に関する測定データとする解析部8aを備えている。
【0086】
本実施例の制気口の検査システムにおいて、検査装置1は、通信部6を介して接続されたネットワーク8に測定データを送信するように構成され、解析部8aはネットワーク8内に設けられ、ネットワーク8には、解析部8aにアクセス可能な外部ハードウェア(端末装置)9が接続され、該外部ハードウェア9は、解析部8aへテンプレートをアップロードし、解析部8aは、前記テンプレートにデータを書き込み、外部ハードウェア9は、解析部8aによりテンプレートにデータを書き込まれた帳票データをダウンロードし得るよう構成されている。このようにすれば、該当する制気口10の測定データを帳票として簡便に入手することができる。
【0087】
本実施例の制気口の検査システムにおいて、前記昇降検出部は、リミットスイッチ3b,3c、光距離計の高さセンサ3d、のうち少なくとも一つ以上を備え、前記昇降検出部により検出されるリフタ3aの高さを用い、リフタ3aの高さが所定の範囲にある間の測定データを特定するよう構成されている。
【0088】
したがって、本実施例によれば、空調の制気口に関する検査を簡便且つ好適に実行し得る。
【0089】
尚、本発明の制気口の検査方法およびシステムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
1 検査装置
3 昇降部
3a リフタ
3b 昇降検出部(リミットスイッチ)
3c 昇降検出部(リミットスイッチ)
3d 昇降検出部(高さセンサ)
3e 位置合わせ部(光照射装置)
4 測定部
4a フード
4b センサ(圧力センサ)
4c センサ(温度センサ)
6 通信部
8 ネットワーク
8a 解析部
9 外部ハードウェア(端末装置)
10 制気口