(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】素子実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240403BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2020187253
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019227159
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】大河原 聡史
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176129(JP,A)
【文献】特開2010-171301(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
H01L 21/58
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記接触センサ部が計測した、前記第1の所定位置から
前記供給台に支持された前記基準基板までの距離をA、
前記接触センサ部が計測した、前記第2の所定位置から
前記実装台に支持された前記基準基板までの距離をB、
前記第1の非接触センサが計測した
前記供給台に支持された前記基準基板までの距離をC、
前記第3の非接触センサが計測した前記転写ヘッドまでの距離をD、
前記第2の非接触センサが計測した
前記実装台に支持された前記基準基板までの距離をE、
前記第1の非接触センサが計測した前記供給基板上の素子までの距離をF、
前記第3の非接触センサが計測した前記転写ツールまでの距離をG、
前記第2の非接触センサが計測した前記実装基板までの距離をH、
とし、A~Hに基づいて下記式(1)及び(2)により距離L、Mを求める演算部と、
前記距離Lに基づいて前記転写ヘッドを前記第1の所定位置から前記供給台へ向けて移動させ、前記距離Mに基づいて前記転写ヘッドを前記第2の所定位置から前記実装台へ向けて移動させる移動制御部と、
式(1):L=A-(C-F)-(D-G)
式(2):M=B-(E-H)-(D-G)
を更に備える請求項1乃至3のいずれかに記載の素子実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に半導体素子、抵抗及びコンデンサ等の素子を実装する素子実装装置が普及している。素子実装装置は、素子がストックされた供給基板と素子を実装する実装基板との間を往復する素子の移送部を有する。移送部は、素子を一つずつ供給基板からピックアップして、実装基板まで素子を保持して搬送し、実装基板上に素子を配置する。実装基板には、ACF(Anisotropic Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)、NCF(Non Conductive Film)、NCP(Non Conductive Paste)又は均質共晶半田等の接合材料が形成されており、この接合材料を介して、素子が実装基板に実装される。
【0003】
近年、素子の微小化が非常に速いペースで進展している。一辺のサイズが50μmや10μmといった200μm以下の素子も提案されている。これら素子は、例えば50μmや10μmといったミニLEDやマイクロLEDであり、ディスプレイ用の表示基板にRGBの各画素としてアレイ状(行列状)に配列され、またバックライトの発光体として照明基板に配列される。LEDを画素として表示基板に搭載する場合、表示基板が4K対応であれば、RGBのうちの一色で少なくとも800万個以上のLEDを表示基板に実装する必要があり、素子を一つずつ実装することは生産効率に問題があった。
【0004】
そこで、複数行複数列の素子を一度にピックアップして実装基板に実装することで、生産効率を改善する案が提案されている。移送部は、複数行複数列の素子を保持する転写ツールを備え、この転写ツールで複数行複数列の素子を一括してピックアップし、一括して実装する。この素子実装装置によれば、移送部の往復回数は、移送部で一度に保持できる素子の数で供給基板上の全素子の数を除した回数分に削減できる。
【0005】
転写ツールによる素子の保持方法としては、真空吸着や静電吸着等の吸着が使用されている。何れの場合も、転写ツールには複数行複数列の保持部が配設されている。真空吸着が採用される場合、保持部は吸引穴である。各吸引穴は、エジェクタ等を有する空気圧回路に接続されており、各吸引穴には負圧が発生する。移送部は、負圧により転写ツールの吸引穴に素子を吸い付けることで、供給基板から素子を一括してピックアップし、基板まで搬送し、真空破壊や大気開放等による負圧解除によって実装基板上に素子を配置し実装する。静電吸着が採用される場合、保持部はメサ形構造体である。ベース基板に多数のメサ形構造体が形成され、メサ形構造体に電極及び誘電体層が設けられる。このメサ形構造体を有する静電力発生部が素子に対する局所的な吸着点となって、電圧の印加による静電力によって各静電力発生部に素子を一括して吸い付ける。そして、電圧の印加解除によって実装基板上に素子を配置し実装する。
【0006】
素子のピックアップにおいては、素子をピックアップする転写ツールの素子に対する移動距離が不十分だと、転写ツールが十分に素子を吸着できずに素子のピックアップに失敗し、転写ツールが移動し過ぎると、転写ツールが過剰に素子に押し当たってしまい、素子または転写ツールが破損する虞がある。また、実装基板への素子の配置においては、素子を保持する転写ツールの実装基板に対する移動距離が不十分だと、転写ツールが十分に素子を実装基板に押し付けることができずに素子の配置に失敗し、転写ツールが移動し過ぎると、転写ツールが過剰に素子を押し付けてしまい、素子または転写ツールが破損する虞がある。このため、転写ツールからピックアップされる素子までの距離や実装基板までの距離を正確に計測する必要がある。
【0007】
これらの距離を計測する方法として、非接触センサを用いる非接触方式と接触センサを用いる接触方式がある。非接触方式が採用される場合、非接触センサは、例えばレーザ変位計であって、素子にレーザを照射してその反射光から当該素子までの距離を計測する。接触方式が採用される場合、素子と転写ツールを接触させて、接触センサが接触を検出した時点までの転写ツールの移動量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
接触方式は、距離の計測に転写ツールと素子との接触を伴う。そこで、精度良く計測を行なうためには、接触における転写ツールの弾性変形を避けるため、転写ツールは、金属やセラミック、シリコンなどの硬い部材で形成することが好適である。
【0010】
しかしながら、転写ツールに金属やセラミック、シリコンなどの硬い部材を用いた場合、素子が微小であることから接触による素子や転写ツールにかかる応力が高く、素子や転写ツールが破損する虞がある。一方で、転写ツールに樹脂などで軟らかい部材を用いた場合、素子との接触により転写ツールが弾性変形するため、計測する転写ツールから素子までの距離の正確性が失われてしまう。
【0011】
非接触センサを用いた非接触方式は、距離を測定しようとした場合、予め、転写ツールを基準面等に接触させて、転写ツールの上下方向位置と非接触センサの計測値とを結び付ける必要がある。この際に、転写ツールの接触を伴うため、やはり、接触方式と同様の不具合の可能性がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、素子や転写ツールを破損させる虞なく、転写ツールから素子までの距離を正確に計測することが可能な素子実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の素子実装装置は、基準基板、または素子がアレイ状に整列した供給基板が支持される盤面を有する供給台と、基準基板、または前記アレイ状に整列した素子が配置される実装基板が支持される盤面を有する実装台と、前記供給台と前記実装台が並ぶ方向に移動すると共に、前記供給台の前記盤面から対向方向に離隔した第1の所定位置から前記供給台までの間、および、前記実装台の前記盤面から対向方向に離隔した第2の所定位置から前記実装台までの間を移動する転写ヘッドと、前記転写ヘッドに設けられ、前記供給台または前記実装台に支持された前記基準基板に接触したことを検出することにより、前記第1の所定位置から前記供給台に支持された前記基準基板までの距離及び前記第2の所定位置から前記実装台に支持された前記基準基板までの距離を計測する接触センサ部と、を備える。
【0014】
さらに、本発明の素子実装装置は、前記転写ヘッドに着脱可能に設けられ、前記供給台に支持された前記供給基板から複数行複数列の素子をピックアップし、ピックアップした素子を前記実装基板に配置する転写ツールと、前記供給台の前記盤面から対向方向に離隔した第3の所定位置から、前記供給台に支持された前記基準基板までの距離及び前記供給台に支持された前記供給基板上の素子までの距離を非接触で計測する第1の非接触センサと、前記実装台の前記盤面から対向方向に離隔した第4の所定位置から、前記実装台に支持された前記基準基板までの距離及び前記実装台に支持された前記実装基板までの距離を非接触で計測する第2の非接触センサと、前記供給台と前記実装台の間に設けられ、対向する前記転写ヘッドまでの距離及び対向する前記転写ツールまでの距離を非接触で計測する第3の非接触センサと、前記接触センサ部、前記第1の非接触センサ、前記第2の非接触センサ、および、前記第3の非接触センサが計測した距離に基づいて、前記転写ヘッドの移動を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素子や転写ツールを破損させる虞なく、転写ツールから素子までの距離を正確に計測することが可能な素子実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る素子実装装置の構成を示す模式図である。
【
図2】転写ヘッド及び転写ツールの構成を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る各距離の計測動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】接触センサ部による供給台または実装台に支持された基準基板までの距離の計測を示す模式図である。
【
図6】非接触センサによる供給台または実装台に支持された基準基板までの距離、及び転写ヘッドまでの距離の計測を示す模式図である。
【
図7】非接触センサによる供給台に支持された供給基板上の素子までの距離、実装台に支持された実装基板までの距離、及び転写ツールまでの距離の計測を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る素子実装装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】他の実施形態に係る素子実装装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態]
[構成]
(概略構成)
図1は、実施形態に係る素子実装装置1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、素子実装装置1内には供給基板Rと実装基板Sとが搬入される。供給基板Rは、素子Tをアレイ状(行列状)に整列させてストックした矩形状の素子供給体である。素子Tは、電子回路に使用される部品であり、MEMS、半導体素子、抵抗及びコンデンサ等のチップが含まれ、半導体素子にはトランジスタ、ダイオード、LED及びサイリスタ等のディスクリート半導体、並びにICやLSI等の集積回路が含まれる。LEDには所謂ミニLED及びマイクロLEDが含まれる。特に、素子Tには一辺が200μm以下の所謂微小部品が含まれる。実装基板Sは、回路パターンが形成されて成り、例えばミニLEDが整列するバックライト用の照明基板、RGBの各マイクロLEDが画素として配列される表示基板である。
【0018】
この素子実装装置1は、供給基板Rを支持する供給台3と、実装基板Sを支持する実装台4と、素子Tを供給基板Rから実装基板Sに移し替える移送部5と、を備える。この素子実装装置1には、位置固定のピックアップポジション21及び実装ポジション22が設定されており、移送部5は、ピックアップポジション21において供給基板Rから素子Tをピックアップし、また実装ポジション22において実装基板Sに素子Tを配置して実装する。すなわち、ピックアップポジション21は、移送部5が素子Tをピックアップする位置であり、実装ポジション22は、移送部5がピックアップした素子を配置する位置である。
【0019】
供給台3は、盤面と平行な2次元方向(本実施形態では、水平方向)に移動可能となっている。供給台3は、供給基板R上でアレイ状(行列状)に整列した素子Tのうちピックアップ対象となる複数行複数列の素子Tを、ピックアップポジション21に位置するように移動させる。実装台4は、盤面と平行な2次元方向に移動可能となっている。実装台4は、実装基板S上の回路パターンのうち、移送部5によって複数行複数列の素子Tが実装される回路パターンの位置を、実装ポジション22に位置するように移動させる。移送部5は、複数行複数列の素子Tを供給基板Rから一括してピックアップし、ピックアップした素子Tを実装基板Sに一括して移し替える。素子実装装置1は、移送部5を複数回稼働させ、複数行複数列の素子Tを実装基板Sに複数回に亘って移し替えることで、素子Tがアレイ状(行列状)に配列された素子実装基板を製造する。
【0020】
尚、移し替えられた素子Tは、最終的に実装基板Sに電気的及び/又は機械的に接合される。実装基板S上には、例えばACF、ACP、NCF、NCP又は均質共晶半田等の接合材料が予め形成されており、接合材料上に配置された素子Tは、接合材料上に保持される。前述のような接合材料は、粘着性や接着性を有しており、それにより素子Tは保持され、素子Tが実装基板Sに実装される。また、加熱、冷却、加圧などで、合金接合、導電粒子圧着、樹脂硬化、バンプ圧接等により実装基板Sと素子Tとが電気的及び/又は機械的に接続し、接合材料が硬化することで、実装基板Sと素子Tとが最終的に接合される。この最終的な接合は、素子実装装置1の移送部5や実装台4で行われてもよいし、素子実装装置1の内あるいは外の別の装置によって行われてもよい。最終的な接合処理の有無に関係なく、実装基板Sに素子Tが移し替えされて配置され、保持されることが実装することになる。
【0021】
供給台3は、供給基板Rを支持する前に基準基板Pを支持する。実装台4は、実装基板Sを支持する前に基準基板Qを支持する(
図5参照)。基準基板P、Qは、例えばガラスからなり、後述する移送部5に設けられた接触センサ部54によって移送部5と接触したことを検出するためのダミー基板である。
【0022】
接触センサ部54によって、移送部5の基準基板P、Qとの接触を検出し、移送部5が素子Tを供給基板Rからピックアップする際に供給台3の盤面に対して垂直方向に移動する移動量を、また移送部5がピックアップした素子Tを実装基板Sに移し替える際に実装台4の盤面に対して垂直方向に移動する移動量を事前に計測する。この接触センサ部54及び後述の非接触センサ71~73による計測が終わると、基準基板P、Qは素子実装装置1内から取り除かれ、代わりに供給基板Rと実装基板Sとが素子実装装置1内に搬入される。
【0023】
(詳細構成)
供給台3は、平坦な盤面(載置面)を有し、当該盤面に供給基板Rが支持される。実装台4は、平坦な盤面(載置面)を有し、当該盤面に実装基板Sが支持される。これら供給台3及び実装台4の盤面は、それぞれ、直交する2軸からなる直動機構31、41によって支持され、盤面と平行な2次元方向に移動可能となっている。直動機構31、41は、例えばリニアガイド及びボールネジからなり、供給台3及び実装台4の盤面は、それぞれ、この直動機構31、41のスライダに支持されている。
【0024】
供給台3は、直動機構31による2次元方向の平行移動により、ピックアップポジション21に位置付けられるピックアップ領域32を変更する。ピックアップ領域32は、供給基板R上の位置であり、この領域の複数行複数列の素子Tが転写ツール6によって一括してピックアップされる。つまり、ピックアップ領域32は、ピックアップ予定となる複数行複数列の素子Tが存在する範囲を一単位として設定された範囲である。換言すると、
図1で供給基板R上に破線で示されているような、複数行複数列の素子Tからなる素子群を取り囲む、この素子群が存在する領域と同じ大きさの仮想的な領域である。したがって、ピックアップ領域32は、供給基板R上に素子Tの配列に応じて行列状に複数存在し、移送部5によるピックアップ毎にピックアップポジション21に位置付けられる。
【0025】
実装台4は、直動機構41による2次元方向の平行移動により、実装ポジション22に位置付けられる実装領域42を変更する。実装領域42は、実装基板S上の位置であり、転写ツール6によって一括して複数行複数列の素子Tが実装される範囲である。換言すると、
図1で実装基板S上に破線で示されているような、複数行複数列の素子Tからなる素子群を取り囲む、この素子群が配置される領域と同じ大きさの仮想的な領域である。実装領域42は、実装領域42上に実装される素子Tの配列に応じて行列状の配置で実装基板S上に設定されている。そして、各実装領域42は、移送部5による実装毎に実装ポジション22に位置付けられる。
【0026】
移送部5は、直動機構51に昇降機構52を介して支持され、ピックアップポジション21及び実装ポジション22に移動可能となっている。直動機構51は、例えばリニアガイド及びボールネジであり、ピックアップポジション21と実装ポジション22の間に架設され、供給基板Rの素子Tが配列された面と実装基板Sの実装領域42が配列された面を臨むように延設されている。昇降機構52は、例えばリニアガイド及びボールネジであり、直動機構51のスライダに支持され、供給基板Rと実装基板Sに接離する方向(本実施形態では、水平方向に対して垂直に交わる鉛直方向、つまり、上下方向)に延設されている。移送部5は、この昇降機構52のスライダに支持されている。
【0027】
移送部5は、転写ヘッド53を備える。
図2に示すように、転写ヘッド53は、供給台3、実装台4に対向する面が接触面531となっている。この接触面531に転写ツール6が着脱可能に装着される。接触面531には、後述の転写ツール6の吸引穴である保持部62に連通する吸引孔が設けられている。この吸引孔に負圧を発生させることによって素子Tを転写ツール6に吸着保持可能とする。
【0028】
転写ツール6は、弾性を有する部材で形成され、保持面61を備える。保持面61は、ピックアップポジション21で供給基板Rと向かい合い、また実装ポジション22で実装基板Sと向かい合う転写ツール6の端面である。この保持面61には保持部62が配設されている。保持部62は複数行複数列に整列し、1個の保持部62が1個の素子Tを保持する。保持部62は、例えば、素子Tの辺長より小径の吸引穴であり、真空吸着によって素子Tを吸着保持する。各保持部62は、連通する接触面531の吸引孔に負圧を発生させることにより素子Tを吸い付け、負圧が発生している間は素子Tを保持し、真空破壊や大気開放等による負圧解除によって素子Tを離す。なお、保持部62の行数、列数と、供給基板R上でアレイ状に整列した素子Tの行数、列数とは一致していなくても一致していても良い。ここでは、保持部62の行数、列数と、供給基板R上でアレイ状に整列した素子Tの行数、列数とは一致しておらず、保持部62の行数、列数の方が供給基板R上でアレイ状に整列した素子Tの行数、列数より少ない。保持部62の配置間隔は、供給基板R上で整列した素子Tの配置間隔と一致している。
【0029】
また、転写ヘッド53は、供給基板Rと実装基板Sの搬入前に行われる、素子Tのピックアップ及び配置に係る移送部5の移動距離の計測に用いられる。この時には、基準基板P、Qが供給台3と実装台4とにそれぞれ支持されている。すなわち、転写ヘッド53は、その接触面531を供給台3上に支持された基準基板P、または実装台4上に支持された基準基板Qへ向けて対向する。接触面531は、例えば金属やセラミックといった硬い部材からなり、移送部5の移動によって基準基板Pの盤面または基準基板Qの盤面に接触する面でもある。
【0030】
転写ヘッド53には、接触センサ部54が設けられている(
図1参照)。接触面531が基準基板P、Qに接触したことは、転写ヘッド53に設けられたこの接触センサ部54によって検出される。接触センサ部54は、例えば接触センサとエンコーダから成る。接触センサは、例えば渦電流センサなどのギャップセンサである。接触センサは、転写ヘッド53の接触面531が基準基板P、Qに接触したことにより生じる、移送部5上での転写ヘッド53の相対移動を検知する。エンコーダは、転写ヘッド53の移動量を検出する。
【0031】
接触センサ部54は、この接触センサが検出した接触情報と、エンコーダによる基準基板Pまたは基準基板Qに接触するまでの接触面531の移動量情報とに基づいて、転写ヘッド53の初期位置(所定位置)から基準基板Pまでの距離A及び基準基板Qまでの距離Bを計測する。なお、後述の制御部8は、接触面531が基準基板Pまたは基準基板Qの盤面に対して垂直方向に接近を開始する所定位置(初期位置)を、第1の所定位置X1または第2の所定位置X2として記憶している。換言すれば、第1の所定位置X1は、接触面531が供給台3から鉛直方向(対向方向)に離隔して供給台3の盤面を臨む位置であり、第2の所定位置X2は、接触面531が実装台4から鉛直方向(対向方向)に離隔して実装台4の盤面を臨む位置である(
図5参照)。すなわち、第1の所定位置X1から基準基板Pまでの距離が距離A、第2の所定位置X2から基準基板Qまでの距離が距離Bとして検出される。なお、本実施形態では、第1の所定位置X1と第2の所定位置X2とは同じ高さ位置としている。
【0032】
図1に戻ると、素子実装装置1は、3つの非接触センサ71、72、73を備える。非接触センサ71~73は、例えば検出する対象にレーザを照射して、対象までの距離を計測するレーザ変位計である。
図6、
図7に示すように、非接触センサ71(第1の非接触センサ)は、供給台3に支持された基準基板Pまでの距離C及び供給基板R上のピックアップ対象の複数行複数列の素子Tまでの距離Fを計測する。非接触センサ72(第2の非接触センサ)は、実装台4に支持された基準基板Qまでの距離E及び実装基板Sまでの距離Hを計測する。非接触センサ73(第3の非接触センサ)は、移送部5に設けられた転写ヘッド53の接触面531までの距離D及び転写ツール6の保持面61までの距離Gを計測する。なお、非接触センサ71~73が計測する距離C~Hの始点は、例えば非接触センサ71~73の光源の位置であるが、設定できるのであれば非接触センサ71~73のどの位置であってもよい。
【0033】
非接触センサ71、72は、移送部5と一体で移動することができる。すなわち、非接触センサ71、72は、移送部5との相対位置が不変であるように、直動機構51に昇降機構52を介して支持されている。例えば、
図1に示すように、不図示のブラケットによって移送部5の転写ヘッド53に搭載される。つまり、非接触センサ71、72は、ピックアップポジション21及び実装ポジション22に移動可能となっている。したがって、非接触センサ71、72は、ピックアップポジション21及び実装ポジション22で各距離の計測を行うことができる。また、非接触センサ71、72には、センサの種類によっては、適正に計測できる距離範囲が存在する。このような場合、昇降機構52によって、測定対象までの間隔を調整でき、適正に計測できる距離の範囲内とすることができる。
【0034】
非接触センサ71は、供給台3上の基準基板Pまでの距離C、供給基板R上の複数の素子Tまでの距離Fを測定する時、ピックアップポジション21でレーザ照射を行う。距離Fを測定する場合、レーザ照射の対象とする素子Tは、後述の制御部8に予め設定され、例えば、ピックアップ対象となる、供給基板R上の所定のピックアップ領域32内における複数行複数列の素子Tの中心に位置する素子Tである。また、距離Cを測定する場合、必ずしもピックアップポジション21である必要はなく、基準基板Pの盤面までの距離が計測できる位置ならばどこでもよい。
【0035】
また、非接触センサ72は、実装台4上の基準基板Qまでの距離E、実装基板Sまでの距離Hを測定する時、実装ポジション22でレーザ照射を行う。レーザ照射の対象とする位置は、後述の制御部8に予め設定され、例えば、実装基板S上の所定の実装領域42の中心位置とすることができる。また、距離Eを測定する場合、必ずしも実装ポジション22である必要はなく、基準基板Qの盤面までの距離が計測できる位置ならばどこでもよい。
【0036】
非接触センサ73は、移送部5の移送経路の直下における、供給台3と実装台4との間に設けられる。非接触センサ73は、転写ヘッド53の接触面531または転写ツール6の保持面61を当該非接触センサ73に対向する位置に停止させた状態で、接触面531または保持面61にレーザ照射を行い、接触面531までの距離D及び保持面61までの距離Gを計測する。
【0037】
素子実装装置1は、各構成を制御する制御部8を更に備える。制御部8は、例えば、素子実装装置1の各構成を制御するCPU、ROM、RAM及び信号送信回路を有するコンピュータ又はマイコンであり、供給台3、実装台4及び移送部5の駆動源、及び各センサと接続されている。
【0038】
図3は、制御部8の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御部8は、記憶部81、演算部82、判定部83、移動制御部84を備える。記憶部81は、HDDまたはSSD等の記録媒体である。記憶部81には、システムの動作に必要なデータ、プログラムが予め記憶され、またシステムの動作に必要なデータを記憶する。より詳細には、記憶部81は、各センサから受信したデータやこれらの情報に基づいて演算部82が算出した数値、第1の所定位置X1及び第2の所定位置X2、ユーザが設定可能なレーザ照射対象となる素子Tの位置などを記憶する。制御部8は、転写ヘッド53に設けられた接触センサ部54が計測した当該転写ヘッド53の移動量情報、すなわち第1の所定位置から基準基板Pまでの距離A、第2の所定位置から基準基板Qまでの距離Bを受信する。制御部8の記憶部81は、受信した距離A及び距離Bを記憶する。また、制御部8は、非接触センサ71~73から距離C~Hの情報を受信し、制御部8の記憶部81は、受信した距離C~Hの情報を記憶する。演算部82は、これらの距離A~Hに対して演算を行い、ピックアップ及び配置に係る移送部5の移動量を算出する。
【0039】
これらの距離A~Hは、各距離それぞれ、基準基板P、Q、供給基板R、実装基板Sの盤面、接触面531または保持面61のそれぞれのどの位置で計測しても良い。また、基準基板P、Q、供給基板R、実装基板Sの盤面に対しては、供給基板R、実装基板Sそれぞれに複数想定できるピックアップ領域や実装領域のうちの、どの領域で計測しても良い。また、複数の領域で計測してもよい。より厳密な計測結果を求めるのであれば、各距離それぞれ、基準基板P、Q、供給基板R、実装基板Sの盤面、接触面531または保持面61それぞれの複数個所で計測した数値を制御部8へと送信し、制御部8の演算部82が当該複数個所で計測した数値を平均したものを距離A~Hとしても良い。例えば、距離Fは、所定のピックアップ領域32内の複数行複数列の素子Tのうち四隅に位置する素子Tからそれぞれ距離F1~F4を測定し、距離F=(F1+F2+F3+F4)/4としてもよい。このような各距離の平均値の算出は、制御部8の演算部82が行う。
【0040】
判定部83は、各距離A~Hに対し、それぞれの計測値が適切なものであるか(正常か否か)を判定する。それぞれの距離の計測値に対し、所定の閾値を設定し、各計測値をこの所定の閾値に基づいて適切なものであるかを判定する。適切でないと判断される場合、再度の計測を行ったり、報知したりする。それぞれの閾値は、判定対象とする計測値が必要とする範囲で適宜決定される。また、各所定の閾値は記憶部81に記憶される。
【0041】
例えば、距離A、Bの場合、各距離が設計上算出される値の±5%のように閾値を設けることができる。判定部83は、計測された距離がこの閾値範囲にある場合適切なものと判定する。この閾値範囲外の場合、所定の基準位置がずれている、接触センサ部54が正常でない、接触面における異物の付着、あるいは基準基板P、Qが水平に載置されていない、供給台3または実装台4の盤面が水平でない、などの異常と判断することができる。
【0042】
例えば、距離C、Fの場合、距離Cと距離Fの差分に対し、所定の閾値を設定し、判定部83は、この閾値に基づいて距離Cあるいは距離Fのいずれかが適正な計測でないと判定することができる。例えば、基準基板P、供給基板Rが水平に載置されていない、レーザの照射位置がずれている、素子Tが欠けている、素子Tの倒れなど姿勢の異常、レーザの照射位置(ピックアップポジション21)に素子Tが正しく位置付けられていない、などの異常と判断することができる。
【0043】
また、距離E、Hも同様に、距離Eと距離Hの差分によって、基準基板Qあるいは実装基板Sが水平に載置されていないなどの異常を判断することができる。
【0044】
例えば、距離D、Gの場合、距離Dと距離Gの差分に対し、所定の閾値を設定し、判定部83は、この閾値に基づいて距離Dあるいは距離Gのいずれかが適正な計測でないと判定することができる。例えば、転写ツール6が適切に装着されていないなどの異常を判断することができる。
【0045】
さらに、判定部83は、例えば距離Fが複数の距離F1~F4の平均として求められる場合に、その算出に先立って、非接触センサ71が計測した距離F1~F4の差が所定の閾値を上回るか否かによって、計測をした素子Tが含まれる素子群が、実装するに適切なものであるかを判定することができる。距離F1~F4の差とは、例えば距離F1~F4のうち最大値と最小値との差や、距離F1~F4のうち最大値または最小値と、距離F1~F4の平均値との差である。供給基板R上でアレイ状(行列状)に整列した素子Tは、例えば製造上の誤差により厚みにバラツキがあり、中には許容範囲を越えて突出していたり陥没していたりする場合がある。このような素子Tをレーザ照射対象として距離Fを求めると、複数行複数列の素子Tのピックアップに係る移送部5の移動量に誤差が生じる、あるいはピックアップに失敗する虞がある。そこで、所定の閾値を設定し、判定部83がこの所定の閾値に基づいてレーザ照射対象の素子Tが含まれる素子群が実装するのに適切なものであるかを判定する。すなわち、製造上の誤差等により許容範囲を越えて突出したり薄く陥没したりする素子Tが存在する場合には、判定部83により、その素子Tを含む素子群は転写ツール6によるピックアップに不適切であると判定し、ピックアップの対象から除外することができる。つまり、当該素子群を実装する対象から除外することができる。なお、この所定の閾値は記憶部81に記憶されている。また、距離F1~F4を計測する複数の素子Tは、素子群(ピックアップ領域32)の中で一部に集中しているよりも、均等に分散していた方がよい。
【0046】
ここで、不適切と判定された素子群(ピックアップ領域32)をピックアップ対象から除外する場合、当該ピックアップ領域32の位置情報を記憶部81に記憶させておき、素子Tの移送時に当該ピックアップ領域32がピックアップポジション21を素通りするように制御するとよい。
【0047】
移動制御部84は、素子実装装置1の各構成、すなわち供給台3、実装台4、移送部5の移動を制御する。この制御は、記憶部81に予め記憶されているシステムの動作に必要なデータ、プログラム、演算部82の演算結果、判定部83の判定結果などに基づくものであるが、例えば図示しない入力装置から入力されるユーザの命令に基づくものであっても良い。
【0048】
[動作]
前述のように、移送部5は供給基板Rから素子Tをピックアップし、実装基板Sへ移送し、実装基板Sに素子Tを配置して実装する。
【0049】
まず、移送部5が、ピックアップのための初期位置から供給基板Rに向かって移動すべき距離、配置のための実装基板Sへ向かって移動すべき距離を算出する。その算出した各距離に基づいて素子Tのピックアップ及び配置が行われる。
【0050】
(移送部が移動すべき距離の算出)
図4は、本実施形態に係る各距離の計測動作の一例を示すフローチャートである。この動作を説明する前提として、予め供給台3の盤面に基準基板Pが配置され、実装台4の盤面に基準基板Qが配置されているものとする。また、移送部5の転写ヘッド53に転写ツール6は設けられていないものとする。
【0051】
図5(a)に示すように、まず、移送部5を供給台3の上方の位置である第1の所定位置X1へと移動させる。次に、移送部5を第1の所定位置X1から基準基板Pへ向けて移動させ、移送部5が基準基板Pの盤面に接触したことを検出して停止させる。具体的には、移送部5が備える転写ヘッド53の接触面531を、直動機構51により第1の所定位置X1へと移動させ、第1の所定位置X1に位置した接触面531を基準基板Pの盤面へ向けて移動させる。接触面531が基準基板Pの盤面に接触すると、転写ヘッド53の接触センサ部54が備える接触センサが接触面531の接触を検出し、転写ヘッド53は停止する。接触センサ部54のエンコーダは、このときの第1の所定位置X1からの移動量を計測し、制御部8は、この移動量情報を受信する。制御部8の記憶部81はこの移動量を距離Aとして記憶する(ステップS01)。換言すると、距離Aは、第1の所定位置X1から基準基板Pの盤面まで転写ヘッド53が移動した距離である。
【0052】
図5(b)に示すように、第2の所定位置X2から実装台4に支持された基準基板Qの盤面までの距離である距離Bも距離Aと同様に計測される。まず、移送部5を実装台4の上方の位置である第2の所定位置X2へと移動させる。次に、移送部5を第2の所定位置X2から基準基板Qへ向けて移動させ、移送部5が基準基板Qの盤面に接触したことを検出して停止させる。具体的には、移送部5が備える転写ヘッド53の接触面531を、直動機構51により第2の所定位置X2へと移動させ、第2の所定位置X2に位置した接触面531を基準基板Qの盤面へ向けて移動させる。接触面531が基準基板Qの盤面に接触すると、転写ヘッド53の接触センサ部54が備える接触センサが接触面531の接触を検出し、転写ヘッド53は停止する。接触センサ部54のエンコーダがこのときの第2の所定位置X2からの移動量を計測し、制御部8は、この移動量情報を受信する。制御部8の記憶部81はこの移動量を距離Bとして記憶する(ステップS02)。換言すると、距離Bは、第2の所定位置X2から基準基板Qの盤面まで転写ヘッド53が移動した距離である。
【0053】
続いて、
図6に示すように、非接触センサ71、72を用いて、非接触センサ71から基準基板Pの盤面まで、非接触センサ72から基準基板Qの盤面までの距離を計測する。制御部8は、非接触センサ71、72からこの計測情報を受信し、制御部8の記憶部81は、それぞれの距離を距離C、Eとして記憶する(ステップS03)。さらに、非接触センサ73を用いて、非接触センサ73から転写ヘッド53の接触面531までの距離を計測する。なお、接触面531までの距離を計測する際、直動機構51により接触面531は非接触センサ73に対向する位置に位置付けされる。制御部8は、非接触センサ73からこの計測情報を受信し、制御部8の記憶部81は、この距離を距離Dとして記憶する(ステップS04)。なおここで、非接触センサ71、72は、移送部5の直動機構51に昇降機構52を介して支持されているので、上述の基準基板P、Qの盤面までの距離の計測を、予め設定された所定の高さ位置(第3の所定位置および第4の所定位置)において行うことができる。本実施形態では、例えば、第3の所定位置は、第1の所定位置X1と同じ高さ位置とし、また第4の所定位置は、第2の所定位置X2と同じ高さ位置としている。また、非接触センサ73で接触面531までの距離を計測するときの転写ヘッド53の高さ位置も、接触面531が予め設定された高さ位置に設定して行うことができる。本実施形態では、例えば、第1の所定位置X1となるように設定するものとする。
【0054】
距離A~Eの計測が完了すると、基準基板P、Qは供給台3及び実装台4から取り除かれ、替わりに供給基板Rと実装基板Sが搬入される。また、転写ヘッド53の接触面531側に転写ツール6が設けられる(ステップS05)。
【0055】
続いて、
図7に示すように、非接触センサ71、72を用いて、非接触センサ71から供給基板R上の素子Tまでの距離、非接触センサ72から実装基板Sの盤面までの距離を計測する。なお、供給基板R上の素子Tまでの距離、実装基板Sの盤面までの距離を計測する際、直動機構51により非接触センサ71、72は、それぞれピックアップポジション21、実装ポジション22に位置付けされる。上述のように、供給基板R上の素子Tのうち非接触センサ71のレーザ照射対象となる素子Tは、制御部8の記憶部81に設定されている通りに選択される。例えば、ピックアップ対象の複数行複数列の素子Tの中心に位置する素子Tが、非接触センサ71のレーザ照射対象とされる。制御部8は、非接触センサ71からこの計測情報を受信し、制御部8の記憶部81は、この距離を距離Fとして記憶する(ステップS06)。また、制御部8は、非接触センサ72から実装基板Sの盤面までの距離の計測情報を受信し、制御部8の記憶部81は、この距離を距離Hとして記憶する(ステップS07)。ここで、非接触センサ71、72による供給基板R上の素子Tまでの距離、および、実装基板Sの盤面までの距離の計測は、上述の基準基板P、Qの盤面までの距離の計測と同じく、各盤面から対向方向に離隔した第3の所定位置および第4の所定位置で行うことができる。
【0056】
ステップS06において、例えば、距離Fを所定のピックアップ領域32内の複数の素子Tを対象として計測する場合、制御部8の判定部83は、計測した複数の距離Fのうち最大値と最小値の差、或いは、この最大値または最小値と複数の距離Fの平均値との差を記憶部81に記憶された所定の閾値と比較してもよい。判定部83は、距離Fの差が所定の閾値を上回る場合、当該素子Tを含む複数行複数列の素子T(素子群、つまり、ピックアップ領域32)をピックアップ対象から除外すべく、記憶部81に当該素子群を不適切な素子群として記憶することができる。このように除外される場合、距離Fの計測を当該素子群とは異なる素子群に変更するようにしてもよい。そして、非接触センサ71は、変更した素子群内に位置する素子Tまでの距離を測定し、再度閾値と比較するようにしてもよい。またさらに、予め設定された回数繰り返しても距離Fの差が閾値を上回る場合、異常を報知すると共に中断するようにしてもよい。
【0057】
さらに、非接触センサ73を用いて転写ツール6の保持面61までの距離を計測する。なお、保持面61までの距離を計測する際、直動機構51により保持面61は非接触センサ73に対向する位置に移動している。制御部8は、非接触センサ73からこの計測情報を受信し、制御部8の記憶部81は、この距離を距離Gとして記憶する(ステップS08)。ここで、非接触センサ73による保持面61までの距離の計測は、転写ヘッド53の接触面531が予め設定された高さ位置、例えば、接触面531までの距離を計測するときと同じ高さ位置になるように設定して行う。
【0058】
最後に、制御部8の演算部82が、素子Tのピックアップ及び配置に係る移送部5の移動量として、転写ツール6の保持面61から供給基板R上の素子Tまでの距離L及び、転写ツール6の保持面61から実装基板Sまでの距離Mを算出する。距離L、Mは、記憶部81に記憶されている距離A~Hから、次の式(1)、(2)によってそれぞれ算出される(ステップS09)。
(数1)
L=A-(C-F)-(D-G) ・・・(1)
(数2)
M=B-(E-H)-(D-G) ・・・(2)
【0059】
以上のように、制御部8は、各センサからの計測データに基づいて、素子Tのピックアップ及び配置に係る移送部5の移動量を算出する。
【0060】
式(1)は、接触センサ部が計測した距離Aから、非接触センサが計測した距離CとFの差分、及び距離DとGの差分を差し引くものである。換言すれば、転写ヘッド53の接触面531が供給台3の盤面に対して垂直方向に接近移動を開始する第1の所定位置X1から基準基板Pまでの距離を基準とし、基準基板Pの盤面から供給基板R上の素子Tの表面までの距離を差し引き、さらに接触面531から転写ツール6の保持面61までの距離を差し引くことにより、転写ツール6の保持面61から供給基板R上の素子Tまでの距離Lを算出している。接触センサ部が計測した距離Aを基準に、非接触センサが計測した距離を利用することにより、転写ツール6と素子Tを接触させずに、素子Tのピックアップに係る移送部5の移動量を正確に算出することができる。
【0061】
式(2)は、接触センサ部が計測した距離Bから、非接触センサが計測した距離EとHの差分、及び距離DとGの差分を差し引くものである。換言すれば、転写ヘッド53の接触面531が実装台4の盤面に対して垂直方向に接近移動を開始する第2の所定位置X2から基準基板Qまでの距離を基準とし、基準基板Qの盤面から実装基板Sの盤面までの距離を差し引き、さらに接触面531から転写ツール6の保持面61までの距離を差し引くことにより、転写ツール6の保持面61から実装基板Sまでの距離Mを算出している。接触センサ部が計測した距離Bを基準に、非接触センサが計測した距離を利用することにより、転写ツール6と実装基板Sを接触させずに、素子Tの配置に係る移送部5の移動量を正確に算出することができる。
【0062】
(素子の実装)
図8は、本実施形態に係る素子実装装置の動作の一例を示すフローチャートである。この動作を説明する前提として、予め供給台3の盤面に供給基板Rが配置され、実装台4の盤面に実装基板Sが配置されているものとする。また、移送部5の転写ヘッド53に転写ツール6が設けられているものとする。
【0063】
まず、供給台3を直動機構31によって2次元平面上を移動させ、所定のピックアップ領域32の中心位置がピックアップポジション21に位置するように停止させる。また、実装台4を直動機構41によって2次元平面上を移動させ、所定の実装領域42の中心位置が実装ポジション22に位置するように停止させる(ステップS11)。
【0064】
次に、移送部5をピックアップポジション21に移動させて、転写ツール6によりピックアップ領域32における複数行複数列の素子Tを一括してピックアップする。具体的には、移送部5を、直動機構51によりピックアップポジション21へと移動させ、続いてピックアップポジション21上の第1の所定位置X1から転写ヘッド53を昇降機構52により、演算部82が算出した距離Lだけ移動(下降)させる(ステップS12)。この結果、転写ツール6の保持面61が各素子Tに当接し、転写ツール6の保持面61は、負圧により各素子Tを吸着保持する。
【0065】
そして、保持面61で複数行複数列の素子Tからなる素子群を保持した状態で昇降機構52により移送部5を供給台3から離間する方向へと移動させ、直動機構51によって実装ポジション22へ移送させる(ステップS13)。
【0066】
最後に、実装ポジション22上の第2の所定位置X2から転写ツール6を昇降機構52により、演算部82が算出した距離Mだけ移動(下降)させる(ステップS14)。これにより、転写ツール6の保持面61に保持された素子Tが実装基板Sに当接されて実装領域42に配置される。ここで、上述の式(2)により算出される距離Mは、転写ツール6に保持された素子Tの厚みは考慮されていない。つまり、距離Bから素子Tの厚さを差し引いた値ではない。しかしながら、本実施形態の転写ツール6は弾性を有する部材で形成されていることから、数十μm程度の素子Tの厚みはその弾性変形によって吸収することが可能であり、素子Tを損傷することはない。なお、素子Tの厚みを考慮する必要があるのであれば、距離Mから素子Tの厚み分を差し引けばよい。
【0067】
このように、素子実装装置1は、ステップS11~S14のように供給基板Rからの複数行複数列の素子Tからなる素子群のピックアップ、移送、及び実装基板Sへの配置を、供給基板R上からピックアップ対象となる複数行複数列の素子Tが無くなるまで繰り返す。
【0068】
[効果]
(1)本実施形態の素子実装装置1は、基準基板P、または素子Tがアレイ状に整列した供給基板Rが支持される盤面を有する供給台3と、基準基板Q、または前記アレイ状に整列した素子Tが配置される実装基板Sが支持される盤面を有する実装台4と、供給台3と実装台4が並ぶ方向に移動すると共に、供給台3の盤面から対向方向に離隔した第1の所定位置X1から供給台3までの間、および、実装台4の盤面から対向方向に離隔した第2の所定位置X2から実装台4までの間を移動する転写ヘッド53と、転写ヘッド53に設けられ、供給台3または実装台4に支持された基準基板P、Qに接触したことを検出することにより、第1の所定位置X1から供給台3に支持された基準基板Pまでの距離及び第2の所定位置X2から実装台4に支持された基準基板Qまでの距離を計測する接触センサ部54と、を備える。
【0069】
さらに、本実施形態の素子実装装置1は、転写ヘッド53に着脱可能に設けられ、供給台3に支持された供給基板Rから複数行複数列の素子Tをピックアップし、ピックアップした素子Tを実装基板Sに配置する転写ツール6と、供給台3の盤面から対向方向に離隔した第3の所定位置から、供給台3に支持された基準基板Pまでの距離及び供給台3に支持された供給基板R上の素子Tまでの距離を非接触で計測する第1の非接触センサ71と、実装台4の盤面から対向方向に離隔した第4の所定位置から、実装台4に支持された基準基板Qまでの距離及び実装台4に支持された実装基板Sまでの距離を非接触で計測する第2の非接触センサ72と、供給台3と実装台4の間に設けられ、対向する転写ヘッド53までの距離及び対向する転写ツール6までの距離を非接触で計測する第3の非接触センサ73と、接触センサ部54、第1の非接触センサ71、第2の非接触センサ72、および、第3の非接触センサ73が計測した距離に基づいて、転写ヘッド53の移動を制御する制御部8と、を備える。
【0070】
このように、本実施形態の素子実装装置1は、素子Tに対して転写ツール6を直接接触させることなく非接触センサ71、72の計測値を接触センサ部54が計測した距離と結び付けることができるので、接触の際に生じる応力によって転写ツール6または素子Tを破損させる虞がない。その結果、実装基板Sへの素子Tのより正確な実装を行うことができ、また転写ツール6または素子Tの破損を回避できるので、歩留まりを向上させることができる。
【0071】
(2)供給基板R上のピックアップされる素子Tまでの距離は、複数行複数列の素子Tのうち予め定められた複数の素子Tまでの各距離の平均値とすることができる。これにより、より正確に素子Tまでの距離を計測することができるので、この計測した距離を基準とした移送部5の移動量も正確なものとなり、確実なピックアップを可能とする。
【0072】
(3)本実施形態の制御部8は、第1の非接触センサ71によって計測された予め定められた複数の素子Tまでの距離同士を比較し、距離の差が所定の閾値を上回るか否かを判定する判定部83を更に備え、制御部8は、距離の差が所定の閾値を上回ると判定部83が判定した場合、距離の差が所定の閾値を上回ると判定された素子Tを除外して他の素子Tをピックアップするように供給台3および転写ヘッド53を制御するようにした。これにより、供給基板R上の素子Tのうち、例えば製造上の不良で突出しているものをピックアップすることがないので、ピックアップの失敗を回避することが出来、歩留まりを向上させることができる。
【0073】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0074】
(1)上記実施形態では、非接触センサ71~73による各距離の計測の後、移送部5による素子Tの実装を行ったが、直動機構51による移動が、移送部5の移動と非接触センサ71、72の移動とを連動させることを利用し、一部を同時に行っても良い。この場合、上記実施形態に比較して、距離F、距離Hの計測タイミングが異なる。
【0075】
転写ヘッド53に転写ツール6を装着せず、供給台3に基準基板P、実装台4に基準基板Qを載置する。その状態で、接触センサ部54による距離A、Bの計測の後、非接触センサ71~73によって距離C、D、Eを計測する。続いて、転写ヘッド53に転写ツール6を装着し、供給台3に供給基板R、実装台4に実装基板Sを載置する。その状態で実装動作に移る。非接触センサ71の素子Tに対するレーザ照射を移送部5のピックアップポジション21への移動中に行い、距離Fを計測する。すなわち、非接触センサ71は、転写ヘッド53と一体で移動する。そのため、転写ヘッド53がピックアップポジション21へ移動する際、非接触センサ71は、ピックアップポジション21に位置付けられた今回ピックアップの対象となるピックアップ領域32の上方を通過する。このとき非接触センサ71を第3の所定位置に位置付けて移動させれば、非接触センサ71の移動軌跡上に位置する素子Tまでの距離Fを計測することができる。転写ヘッド53がピックアップポジション21に到達するまでに、演算部82が昇降機構52による移動量である距離Lを算出すれば、続けて昇降機構52により移送部5を供給基板R上の素子Tまで移動させることができる。
【0076】
非接触センサ72の実装基板Sに対するレーザ照射を移送部5の実装ポジション22への移動中に行い、距離Hを計測する。すなわち、非接触センサ72は、転写ヘッド53と一体で移動する。そのため、転写ヘッド53が実装ポジション22へ移動する際、非接触センサ72は、実装ポジション22上方を通過する。このとき非接触センサ72を第4の所定位置に位置付けて移動させれば、非接触センサ72の移動軌跡上に位置する実装基板Sまでの距離Hを計測することができる。
【0077】
(2)上記実施形態では、素子Tの配置に係る移送部5の移動量の算出において、転写ヘッド53の接触面531と転写ツール6の保持面61の差分を利用したが、転写ヘッド53の接触面531と転写ツール6の保持面61上の素子Tの差分を利用しても良い。この場合、非接触センサ73による距離Gの計測を、素子Tの移送時に行なう。すなわち、素子Tをピックアップした移送部5(転写ツール6)が実装ポジション22へ移動する過程で、転写ツール6は非接触センサ73の上を通過する。その際、転写ヘッド53の接触面531を所定の高さ位置に位置させると共に、転写ツール6に保持された素子群のうちの所定の素子Tを非接触センサ73の真上に位置付けるように停止させる、或いは、真上を通過するように移動させる。そして、真上に位置付けられた素子T、或いは、真上を通過する素子Tまでの距離を非接触センサ73によって計測し、距離Gを求める。このとき計測する素子Tの数は、1つであっても複数であってもよい。転写ツール6に保持された素子群は直動機構51による移動方向に沿って整列されている。そのため、転写ツール6を移動させながら非接触センサ73による計測を行なうようにすれば、非接触センサ73の真上を通過する複数の素子Tまでの距離を連続して計測することができる。なお、複数の素子Tを計測対象とする場合、各測定距離の平均値を距離Gとすればよい。
【0078】
上記実施形態では、距離Mには素子Tの厚みが考慮されていなかったが、接触面531と転写ツール6の保持面61上の素子Tの差分を利用することで、素子Tの厚さも考慮したより正確な配置ができる。これにより、転写ツール6として弾性変形しにくく硬い素材であって、弾性変形によって素子Tの厚みを吸収することが難しい場合でも、素子Tを破損することなく配置することができる。
【0079】
また、転写ヘッド53の接触面531と転写ツール6の保持面61の差分を利用して距離Lを算出し、転写ヘッド53の接触面531と転写ツール6の保持面61上の素子Tの差分を利用して距離Mを算出しても良い。つまり、ピックアップでは転写ツール6の保持面61の高さ位置、配置では転写ツール6に保持された素子Tの下面の高さ位置を基に、ピックアップと配置における計測を、それぞれより正確な高さ位置で行うことができる。
【0080】
(3)基準基板P、Q上の所定の領域毎、例えば、ピックアップ領域32や実装領域42に対応する領域毎、或いは、供給基板R上の所定の領域毎、例えば、ピックアップ領域32毎、実装基板S上の所定の領域毎、例えば、実装領域42毎に、個別に距離A~CおよびE、F、Hを求めるようにしてもよい。特に、距離Fは、初めに供給基板R上のすべてのピックアップ領域に対し計測を行い、判定部83による判定で、除外すべき領域を決定してもよい。
【0081】
(4)上記実施形態では、第1の所定位置X1と第2の所定位置X2とは同じ高さ位置とし、第3の所定位置と第4の所定位置についても第1の所定位置および第2の所定位置X2とは同じ高さ位置としたが、これに限られるものではなく、それぞれ異なる高さ位置であってもよい。すなわち、距離の測定毎に所定位置を変更しなければ、それぞれの所定位置は異なる高さ位置であっても同じ高さ位置であってもよい。
【0082】
(5)上記実施形態では、最初に基準基板P、Q載置状態、転写ツール6未装着状態で距離の計測を行った。しかし、距離A、B、C、Eの計測は、素子実装装置1を稼働させる最初だけでもよいし、供給基板R、実装基板Sの交換毎に、その交換に合わせて実施してもよい。この時、基板交換に合わせた計測は、距離C、Eのみとしてもよい。距離Dは、転写ツール6の交換毎としてもよい。また、距離Gは、転写ツール6の交換毎に計測するのが好ましい。距離L、Mの算出も各距離が再計測された場合、再度計算するのが好ましい。
【0083】
(6)上記実施形態では、非接触センサ71がピックアップポジション21での距離の計測を行い、非接触センサ72が実装ポジション22での距離の計測を行ったが、非接触センサ71と非接触センサ72が一つのセンサであってもよい。一つの非接触センサ71(72)が、移送部5と一体あるいは別体で移動することで、ピックアップポジション21及び実装ポジション22の各距離の計測を行ってもよい。
【0084】
(7)上記実施形態では、非接触センサ71、72は、移送部5と一体で移動していたが、これに限られず、移送部5とは独立して移動できてもよく、また固定配置であってもよい。例えば、
図9に示すように、非接触センサ71はピックアップポジション21上に固定的に配置することができる。また、非接触センサ72は実装ポジション22上に固定的に配置することができる。さらに、いずれかを固定的に配置し、いずれかを移送部5に搭載することもできる。非接触センサ71の計測によって距離Aと距離Cとの比較、非接触センサ72の計測によって距離Bと距離Dを比較ができればよく、測定するときの高さ位置さえ決めておけば、非接触センサ71、72の取り付ける場所、部材は適宜決定できる。
【0085】
(8)上記実施形態では、基準基板Pを用いたが、基準基板Pの代わりに供給台3の盤面を用いてもよい。また、基準基板Qを用いたが、基準基板Qの代わりに実装台4の盤面を用いてもよい。上記実施形態での基準基板P、Qをそれぞれ供給台3、実装台4に置き換えることで、全く同様に実施することができる。この場合、各基準基板P、Qを設置、排除することを無くすことができる。
【0086】
(9)上記実施形態では、距離A、Bを計測するのに、転写ヘッド53の接触面531を用いたが、転写ツール6が硬い部材からなり、基準基板P、Qに接触することを厭わなければ、転写ツール6を用いてもよい。この場合でも、接触面531を用いるのと同様に、距離A、Bを計測することができる。そして、素子Tや実装基板Sに直接接触させることなく非接触センサ71、72の計測値を接触センサ部54が計測した距離と結び付けることができるので、接触の際に生じる応力によって素子Tを破損させる虞がない。その結果、実装基板Sへの素子Tのより正確な実装を行うことができ、また素子Tの破損を回避できるので、歩留まりを向上させることができる。
【0087】
この場合、距離D及び距離Gの計測はしなくてもよく、その為の非接触センサ73も不要とできる。距離A、Bに、距離Dと距離Gとの差分が含まれることになるので、式(1)、式(2)における(D-G)をゼロと見なして、距離L、距離Mを算出すればよい。つまり、L=A-(C-F)、M=B-(E-H)で算出することができる。
【0088】
(10)上記実施形態では、転写ツール6として吸引吸着で説明したが、静電吸着によっても同様に適用でき、同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、転写ツール6として粘着材を用いることもできる。供給基板Rに素子Tがストックされるとき、その保持のため粘着材が用いられる時がある。この場合、転写ツール6で素子Tをピックアップするには、そのストックの粘着力より大きな保持力を必要とする。吸引吸着では大気圧以上の保持力は出せず、必要な保持力とできない場合がある。また、静電吸着の場合、大きな電圧を印加して必要な保持力となる静電力とすることもできるが、素子Tによっては静電破壊を起こしてしまう場合もある。
【0090】
粘着材では、容易に必要な保持力となる粘着力を得ることができる。また、吸引や静電力発生の為の複雑な構造や制御を必要としない。さらに、粘着材が柔らかく素子Tへのダメージも与えにくい。このように、転写ツール6として粘着材を用いた場合、素子Tを破損することなく、シンプルな構成で、確実に供給基板Rから素子Tをピックアップすることができる。
【0091】
しかしながら、転写ツール6として粘着材を転写ヘッド53に装着した場合、その状態で接触方式による高さ位置の計測はできない。高さ位置の計測を行うために、粘着材を基準基板や素子T、実装基板に接触させると、その状態で転写ツール6と対象が粘着してしまい、計測状態が解除できない。したがって、粘着材からなる転写ツール6を装着しないで高さ位置を計測する必要がある。この場合においても、上記実施形態での計測を実施することで、正確な高さ位置を計測することができ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 素子実装装置
21 ピックアップポジション
22 実装ポジション
3 供給台
31 直動機構
32 ピックアップ領域
4 実装台
41 直動機構
42 実装領域
5 移送部
51 直動機構
52 昇降機構
53 転写ヘッド
531 接触面
54 接触センサ部
6 転写ツール
61 保持面
62 保持部
71~73 非接触センサ
8 制御部
81 記憶部
82 演算部
83 判定部
84 移動制御部
A~H、L、M 距離
P、Q 基準基板
R 供給基板
S 実装基板
T 素子
X1 第1の所定位置
X2 第2の所定位置