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特許7465209電気またはハイブリッド自動車両のバッテリーを冷却および/または加熱するためのデバイス
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  • 特許-電気またはハイブリッド自動車両のバッテリーを冷却および/または加熱するためのデバイス 図1
  • 特許-電気またはハイブリッド自動車両のバッテリーを冷却および/または加熱するためのデバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電気またはハイブリッド自動車両のバッテリーを冷却および/または加熱するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240403BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240403BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240403BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240403BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20240403BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240403BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20240403BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
B60K1/04 Z
B60K11/06
C08K3/01
C08K7/02
C08L23/00
C08L77/00
F28F21/06
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/653
H01M10/6563
H01M10/6568
H01M10/6569
H01M10/663
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020527988
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081861
(87)【国際公開番号】W WO2019101716
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】1761145
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラシェッド, ウィサム
(72)【発明者】
【氏名】デュフォール, ニコラス
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513909(JP,A)
【文献】特表2014-523449(JP,A)
【文献】特開平06-024238(JP,A)
【文献】特表2015-505142(JP,A)
【文献】特開平11-144756(JP,A)
【文献】特開2012-252959(JP,A)
【文献】国際公開第2011/033815(WO,A1)
【文献】特開2016-094508(JP,A)
【文献】特表2005-509259(JP,A)
【文献】特開昭50-159586(JP,A)
【文献】米国特許第05460900(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B60K 1/04
B60K 11/06
C08K 3/01
C08K 7/02
C08L 23/00
C08L 77/00
F28F 21/06
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/651
H01M 10/653
H01M 10/6563
H01M 10/6568
H01M 10/6569
H01M 10/663
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気またはハイブリッド自動車両バッテリー(2)用の冷却および/または加熱デバイスであって、
- 組成物から構成される少なくとも1つのエンベロープであり、前記組成物が
- 強化繊維を、前記組成物の全重量に対して0から80重量%、
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、前記全重量に対して0から20重量%、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、前記全重量に対して0から20重量%、
- 添加剤を、前記組成物の前記全重量に対して0から20重量%
含み、
- 残分が、主に少なくとも1種のポリアミドおよび任意選択で少なくとも1種の防炎剤を含む母材である、
少なくとも1つのエンベロープと、
- 伝熱流体(6)入口(4)と、
- 伝熱流体(6)出口(5)と
を備えたバッテリーボックス(3)を含み、
前記バッテリーボックス(3)の区画が、前記バッテリー(2)の冷却および/または加熱容積を画定する、
冷却および/または加熱デバイス。
【請求項2】
前記バッテリーボックス(3)が、前記エンベロープにより画定される外側エンベロープ(7)として、
- 熱伝導特性を持たない強化繊維を、前記組成物の前記全重量に対して20から80重量%、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、前記全重量に対して0から20重量%、
- 添加剤を、前記組成物の前記全重量に対して0から20重量%
含み、
- 残分が、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材である
外側エンベロープ(7)を備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記区画が、前記エンベロープとして、少なくとも2つのエンベロープを含み、内側エンベロープ(8)は、前記バッテリー(2)に面して配置され、その組成物は請求項1で定義された通りであり、外側エンベロープ(7)は、前記内側エンベロープ(8)と共に、伝熱流体(6)を流動させることが意図される通路を形成する
ことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記内側エンベロープ(8)の熱伝導度(λ)の、前記外側エンベロープ(7)の熱伝導度(λ)に対する比が、少なくとも1.5より大きい
ことを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記内側エンベロープ(8)が、
- 強化繊維を、前記組成物の前記全重量に対して0から80重量%、
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、前記全重量に対して0から20重量%、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、前記全重量に対して0から20重量%、
- 添加剤を、前記組成物の前記全重量に対して0から20重量%
含み、
- 残分が、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材であり、
前記外側エンベロープ(7)が、
- 熱伝導特性を持たない強化繊維を、前記組成物の前記全重量に対して20から80重量%、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、前記全重量に対して0から20重量%、
- 添加剤を、前記組成物の前記全重量に対して0から20重量%
含み、
- 残分が、主に少なくとも1種のポリアミドを含む母材である
ことを特徴とする、請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記内側エンベロープ(8)が、前記バッテリー(2)と、少なくとも部分的に接触して配置構成されることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記バッテリー(2)と前記内側エンベロープ(8)との間に、空間が設けられることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記バッテリー(2)が、複数の隣接するセルパック(10、11、12)を含む場合、前記内側エンベロープ(8)が、形状の相補性によってセルのアセンブリを包封することを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
内側エンベロープ(8)および/または前記外側エンベロープ(7)内側および/または外側、低透水性を有する層でコーティングされることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
主循環ループ(13)内で伝熱流体(6)を循環させることが意図される手段が設けられた、伝熱流体(6)用の主循環ループ(13)を含む、電気ハイブリッド自動車両バッテリー(2)用の冷却および/または加熱回路であって、
前記主循環ループ(13)が、可逆的ヒートポンプ(14)ならびに請求項1から9のいずれか一項に記載の冷却および/または加熱デバイスに接続されることを特徴とする、冷却および/または加熱回路。
【請求項11】
前記伝熱流体(6)が気体であることを特徴とする、請求項10に記載の冷却および/または加熱回路。
【請求項12】
前記伝熱流体(6)が空気であることを特徴とする、請求項10に記載の冷却および/または加熱回路。
【請求項13】
前記伝熱流体(6)が液体であることを特徴とする、請求項10に記載の冷却および/または加熱回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気バッテリーの使用を必要とする、電気またはハイブリッド自動車両の分野に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、電気またはハイブリッド自動車両用バッテリーの、冷却および/または加熱デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
「電気自動車両」は、電気バッテリー車両の承認に関する国連規則第100号(United Nations Regulation No.100)に定義された、車両を意味すると理解される。
【0004】
自動車の分野で求められる目標の1つは、汚染がますます少なくなる車両を提案することである。したがって、バッテリーを含む電気またはハイブリッド車両は、ガスまたはディーゼル車両などの燃焼機関車両に徐々に取って代わることを目指している。
【0005】
バッテリーは、比較的複雑な車両構成要素であることがわかっている。車両内のバッテリーの位置決めに応じて、衝撃から、ならびに極端な温度および変動し得る湿度を有する可能性のある外部環境から、バッテリーを保護することが必要になる可能性がある。火炎のいかなるリスクも回避することも必要である。
【0006】
加えて、バッテリーのセルを破壊しないためおよびバッテリーの寿命を維持するために、バッテリーの動作温度は55℃を超えないことが重要である。逆に、例えば冬では、バッテリーの動作が最適化されるように、バッテリーの温度を上昇させることが必要になる可能性がある。
【0007】
したがって電気またはハイブリッド自動車両は、バッテリー用の冷却および/または加熱デバイスが必要である。
【0008】
バッテリー用の冷却デバイスは、保護区画を含むバッテリーであるように、バッテリーの周りを伝熱流体が循環することにあるものが公知である。特に、今日では、バッテリーは金属区画を備える。
【0009】
加えて、金属構造に与えられた形状は、スタンピング法から得られる。しかし、区画の形状が、例えば区画の配置により複雑である場合、スタンピング法は、このタイプの特異性を得るのに最も有効であるというわけではない。
【0010】
この区画には、特に湿度の高い環境に位置付けられた場合に比較的重くかつ時間と共に比較的速く破壊されるという欠点もある。
【0011】
したがって、上述の仕様の特定のリストを満たす、公知の金属構造に取って代わる材料、ならびにバッテリーとバッテリー用の冷却デバイス内の伝熱流体との間に生じる熱伝達を改善する材料が、求められている。
【発明の概要】
【0012】
これらの目標は、電気またはハイブリッド自動車両バッテリー用の冷却および/または加熱デバイスであって、
- 組成物からなる少なくとも1つのエンベロープであり、組成物が
- 強化繊維を、組成物の全重量に対して0から80重量%、好ましくは0.1から80%、より好ましくは5から80%、
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%、
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%、
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み、
- 残分が、主に少なくとも1種のポリアミドおよび任意選択で少なくとも1種の防炎剤を含む母材である、
少なくとも1つのエンベロープと、
- 伝熱流体入口と、
- 伝熱流体出口と
を備えたバッテリーボックスを含み、
区画が、バッテリーの冷却および/または加熱容積を画定する、冷却および/または加熱デバイスによって達成される。
【0013】
本発明の目的で、「バッテリーボックス」は、バッテリーの周りに配置されたエンベロープまたはボックスを意味すると理解される。本発明の冷却および/または加熱デバイス内に定められた区画は、バッテリーの構成要素ではない。区画の機能は、バッテリーを保護することである。区画という用語は、ハウジングも示す。区画という用語は、とりわけ、スーツケースおよびその他の物体を受容することが意図される車両の部分を指さない。
【0014】
本発明によるバッテリー用の冷却および/または加熱デバイスには、金属構造を含むデバイスよりも軽いという利点がある。この重量節減は、クリーンであるとされる車両に関する所望のエネルギーまたは燃料効率への影響に、関与する。
【0015】
車両におけるバッテリーの配置に応じて、この区画は、侵襲的環境:夏の高温、冬の非常に低い温度、塩化亜鉛との接触、衝撃、高湿度に接触するのを見出すことができる。本発明による区画は、これらの外的ストレスに対して満足のいく耐性を有することが観察された。
【0016】
さらに、必要とされる燃焼性基準は、防炎剤の可能性ある存在によって満たすことができる。
【0017】
さらに、自動車製造業者によれば、バッテリーの形状は様々にできることが観察された。事実、製造業者は、このバッテリーを、今日まで使用されていないまたは比較的使用することのできない空間に収容しようとしている。成型または射出によるプラスチックの成形は、金属板の成形よりも、行なうことが容易である。
【0018】
本発明のその他の特質、形体、対象、および利益は、以下に続く説明および実施例を読んだ後に、一層より明らかにされよう。
【0019】
さらに、本発明の記述で使用される「...と...との間に含まれる(included between…and…)」および「...から...(from…to…)」という表現は、示される限界のそれぞれを含むものと理解されなければならないことが示される。
【0020】
デバイス
ポリアミド
本発明による冷却および/または加熱デバイスの区画は、少なくとも1種のポリアミドを含む母材を含む組成物からなる、少なくとも1つのエンベロープを含む。
【0021】
本発明によれば、PAとも示される「ポリアミド」という用語は:
- ホモポリマー;
- 異なるアミド単位をベースにするコポリマーまたはコポリアミド、例えば、ラクタム-6およびラクタム-12から誘導されたアミド単位を持つ6/12コポリアミドなど
を包含する。
【0022】
ポリアミドを定義するのに使用される命名法は、ISO規格1874-1:1992「Plastics-Polyamide(PA)molding and extrusion materials-Part 1:Designation」、特に3頁目(表1および2)に記載され、当業者に周知である。
【0023】
一般に、ポリアミドは、少なくとも2つの同一のまたは異なる反復単位を含み、これらの単位は、2つの対応するモノマーまたはコモノマーから形成される。したがってポリアミドは、アミノ酸、ラクタム、および/またはカルボン二酸およびジアミンの中から選択される2つ以上のモノマーまたはコモノマーから調製される。
【0024】
本発明によるポリアミドは、ホモポリアミドとすることができ、アミノ酸と、ラクタムと、式(Caジアミン)・(Cb二酸)(式中、aは、ジアミン中の炭素の数を表し、bは、二酸中の炭素の数を表し、aおよびbはそれぞれ、以下に定義されるように4から36の間である)を満たす単位との中から選択される、モノマーの重縮合によって得られた少なくとも2つの同一の反復単位を含むことができる。
【0025】
本発明によるポリアミドは、コポリアミドとすることができ、少なくとも2つの全く異なる反復単位を含むことができ、これらの単位は、アミノ酸と、ラクタムと、式(Caジアミン)・(Cb二酸)(式中、aは、ジアミン中の炭素の数を表し、bは、二酸中の炭素の数を表し、aおよびbはそれぞれ、以下に定義されるように4から36の間である)を満たす単位との中から選択される、モノマーの重縮合によって得ることができる。
【0026】
本発明によるポリアミドは、脂肪族、脂環式、半芳香族、またはさらに芳香族とすることができる。
【0027】
本発明によるポリアミドは、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、12-アミノドデカン酸、および11-アミノウンデカン酸、ならびにこれらの誘導体から選択される少なくとも1種のアミノ酸、特にN-ヘプチル-11アミノウンデカン酸を含むことができる。
【0028】
本発明によるポリアミドは、ピロリジノン、ピペリジノン、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、およびラウロラクタムの中から選択される少なくとも1種のラクタムを含むことができる。
【0029】
本発明によるポリアミドは、式(Caジアミン)・(Cb二酸)を満足させる少なくとも1つの単位を含むことができる。
【0030】
(Caジアミン)単位が、式HN-(CH-NHを持つ脂肪族で直鎖状のジアミンである場合、Caジアミンは、ブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)、オクタデカンジアミン(a=18)、オクタデカンジアミン(a=18)、エイコサンジアミン(a=20)、ドコサンジアミン(a=22)、および脂肪酸から得られたジアミンから選択される。
【0031】
Caジアミンは、メチル-ペンタン-メチレン-ジアミン(MPMD)から選択される分枝状脂肪族ジアミンとすることができる。
【0032】
ジアミンが脂環式である場合、ジアミンは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロ-ヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロ-ヘキシル)ブタン、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(BMACMまたはMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)-メタン(PACM)およびイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、cisおよびtrans1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC、CAS番号2579-20-6)、ならびにcisおよびtrans1,4ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC、CAS番号2549-07-9)から選択される。
【0033】
下記の炭素主鎖:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含んでいてもよい。これらの脂環式ジアミンの非包括的リストは、刊行物「Cycloaliphatic Amines」(Encyclopaedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer、4版(1992年)、386~405頁)に示されている。
【0034】
ジアミンがアルキル芳香族である場合、1,3-キシリレンジアミンおよび1,4-キシリレンジアミン、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0035】
モノマー(Cb二酸)が脂肪族および直鎖状である場合、コハク酸(y=4)、ペンタン二酸(y=5)、アジピン酸(y=6)、ヘプタン二酸(y=7)、オクタン二酸(y=8)、アゼライン酸(y=9)、セバシン酸(y=10)、ウンデカン二酸(y=11)、ドデカン二酸(y=12)、ブラッシル酸(y=13)、テトラデカン二酸(y=14)、ヘキサデカン二酸(y=16)、オクタデカン酸(y=18)、オクタデカン二酸(y=18)、エイコサン二酸(y=20)、ドコサン二酸(y=22)、および36個の炭素を含有する脂肪酸ダイマーから選択される。
【0036】
上述の脂肪酸ダイマーは、特に文献EP0,471,566に記載されるように、一塩基性不飽和長鎖炭化水素脂肪酸(リノール酸およびオレイン酸など)のオリゴマー化または重合によって得られた、二量体化脂肪酸である。
【0037】
二酸が脂環式である場合、下記の炭素主鎖:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含むことができる。
【0038】
二酸が芳香族である場合、テレフタル酸、イソフタル酸、およびナフタレン二酸から選択される。
【0039】
以下、コポリアミドの例として示すことができる:カプロラクタムおよびラウロラクタムコポリマー(PA 6/12)、カプロラクタム、アジピン酸およびヘキサメチルジアミンコポリマー(PA 6/66)、カプロラクタム、ラウロラクタム、およびアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンコポリマー(PA 6/12/66)、カプロラクタム、アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミン、11-アミノウンデカン酸およびラウロラクタムコポリマー(PA 6/69/11/12)、カプロラクタム、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミン、11-アミノウンデカン酸およびラウロラクタムコポリマー(PA 6/66/11/12)、アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミンおよびラウロラクタムコポリマー(PA 69/12)。
【0040】
好ましくは、本発明による組成物で使用されるポリアミドは、カプロラクタムおよびアミノカプロン酸の重縮合から得られるPA6ホモポリアミド、11-アミノウンデカン酸の重縮合から得られるPA11ホモポリアミド、ラウロラクタムまたは12-アミノドデカン酸の重縮合から得られるPA12ホモポリアミド、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸の重縮合から得られるPA66コポリアミドから選択される。
【0041】
より具体的には、ポリアミド単位は、PA6、PA66、PA 6/66、PA46、PA6T/66、PA6T/6I/66、PA610、PA612、PA 69/12、PA 614、PA 6/12、PA11/12、PA12、PA11、PA1010、PA1012、PA618、PA10T、PA 6/12/66、PA 4T、PA 9T、PA12/10T、PA1010/10T、PA 6/6T/10T、PA 11/6T/10T、PA 12/6T/10T、PA 6/69/11/12、PA 6/66/11/12、PA11/10T、MXDT/10T、MPMDT/10T、およびBACT/10T、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0042】
ポリアミド混合物を使用することができる。有利には、硫酸中1%溶液中、20℃で測定されたポリアミドの相対粘度は、1.5から5の間である。
【0043】
ポリアミドまたはポリアミド混合物は、好ましくは、十分に半結晶質のものが選択され、融解エンタルピーが25J/g以上(DSCにより測定された)であることを意味する。
【0044】
好ましくは、ポリアミドまたはポリアミドの混合物は、高い使用温度で使用可能でなければならない。1つの可能性ある選択基準は、好ましくは、融点が170℃以上であるものを選択することである。
【0045】
本発明の目的で、大半は、母材中50%超の割合を意味すると理解される。
【0046】
1種または複数のポリアミドは、組成物の全重量に対して20から80重量%である。
【0047】
強化繊維
本発明によるエンベロープを構成する組成物は、強化繊維を、組成物の全重量に対して0から80重量%含む。
【0048】
エンベロープの組成物中に存在する繊維は、異なる寸法を有することができる。
【0049】
強化繊維は、短く、長く、または連続的にすることができる。様々な寸法および/または様々なタイプのこれらの繊維の混合物を、使用することもできる。
【0050】
好ましくは、「短」繊維は200から400μmの間の長さである。
【0051】
長繊維は、1000μm超の長さを有する。
【0052】
これらの強化繊維は:
- 本発明による区画の組成物の母材中に存在する前記ポリアミドの融解温度Tmよりも高く、かつ重合および/または実行温度よりも高い、融解温度Tm’を有する鉱物繊維;
- 重合温度よりも高い、または本発明による区画の組成物の母材中に存在する前記ポリアミドの融解温度Tmよりも高い、かつ実行温度よりも高い、融解温度Tm’、またはTm’でない場合にはガラス転移温度Tg’を有する、ポリマー繊維;
- 天然繊維;
- または上記引用された繊維の混合物
から選択されてもよい。
【0053】
本発明に適した無機繊維の例は、ナノチューブもしくはカーボンナノチューブ(CNT)の繊維、カーボンナノファイバー、またはグラフェンを含む、炭素繊維;ガラス繊維などのシリカ繊維、特にタイプE、R、またはS2;ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、バサルト繊維;金属および/もしくはそれらの合金を含有する繊維またはフィラメント;特にアルミナ(Al)の金属酸化物繊維;金属化ガラス繊維および金属化炭素繊維などの金属化繊維、または先に引用された繊維の混合物である。
【0054】
ガラス繊維の長さは、ISO 22314:2006(E)規格に従い測定される。
【0055】
下記は、本発明に適したポリマー繊維として列挙することができる:
- 非晶質熱可塑性ポリマー系繊維であり、非晶質であるときに、母材中に存在するポリアミドもしくはポリアミドの混合物のTgよりも高く;または半結晶質であるときに、母材中に存在するポリアミドもしくはポリアミドの混合物のTmよりも高いガラス転移温度Tgを有する。
【0056】
有利には、ポリマー繊維は半結晶質熱可塑性ポリマー系であり、母材が非晶質であるときに、母材中に存在するポリアミドもしくはポリアミド混合物のTgよりも高く;または母材が半結晶質であるときに、母材中に存在するポリアミドもしくはポリアミドの混合物のTmよりも高い融点Tmを有する。したがって、最終複合体の熱可塑性母材による含浸中、強化材料を構成する有機繊維に関して融解のリスクはない。
- 熱硬化性ポリマー繊維であり、より詳細には:不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレート、およびポリイミド、例えばビス-マレイミド樹脂、メラミンなどのアミンとグリオキサールまたはホルミアルデヒドなどのアルデヒドとの反応から得られたアミノプラストから選択され;
- 熱可塑性ポリマーの繊維であり、より詳細には:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択され;
- ポリアミド繊維であり;
- アラミド繊維(Kevlar(登録商標)など)および芳香族ポリアミド、例えば式:PPDT、MPDI、PAA、およびPPAの1つを有するものであり、PPDおよびMPDは、それぞれp-およびm-フェニレンジアミンであり、PAAはポリアリールアミドであり、PPAはポリフタルアミドであり;
- ポリアミド/ポリエーテルなどのポリアミドブロックコポリマーの繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維である。
【0057】
天然由来の繊維、特に植物繊維の中で、下記を列挙することができる:亜麻、リシン、木材、ケナフ、ココナツ、麻、ジュート、リグニン、竹、絹、特にスパイダーシルク、サイザルアサ、およびその他のセルロース繊維、特にビスコースをベースにした繊維。これらの植物繊維は、ポリマー母材の接着および含浸を改善するために、純粋なままで、処理して、またはコーティング層でコーティングして、使用することができる。
【0058】
強化繊維は、布であってもよく編み組まれてもよくまたは繊維と共に織られてもよい繊維材料を、構成することができる。
【0059】
支持糸を含む繊維に該当してもよい。
【0060】
これらの成分繊維は、単独でまたは混合物として使用することができる。したがって有機繊維は、ポリマー母材を含浸させるために、かつ予備含浸繊維材料を形成するために、鉱物繊維と混合することができる。
【0061】
有機繊維ロービングは、数坪量を有することができる。さらにいくつかの幾何形状を有することができる。繊維は、短繊維形態にすることができ、その後、フェルトまたは不織布を構成して細片、層、もしくは小片の形にすることができ、または2Dの布、編組み、もしくはロービングであって一方向(UD)または不織繊維を構成する連続繊維形態にすることができる。繊維材料の成分繊維はさらに、異なる幾何形状を持つこれらの強化繊維の混合物の形をとることができる。
【0062】
好ましくは、繊維材料は、連続炭素、ガラス、もしくは炭化ケイ素繊維、またはこれらの混合物、特に炭素繊維から構成される。繊維材料は、1本のロービングまたはいくつかのロービングの形で使用される。
【0063】
好ましい短強化繊維は:金属化繊維を含む炭素繊維、E、R、S2のような金属化ガラス繊維を含むガラス繊維、アラミド繊維(Kevlar(登録商標)など)または芳香族ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)繊維、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)繊維、またはこれらの混合物から選択される短繊維である。
【0064】
好ましくは、強化繊維は、ガラス、炭素、セラミック、およびアラミド繊維、またはこれらの混合物から選択される。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、本発明によるデバイスの区画のエンベロープは、伝熱特性を有する。この好ましい実施形態によれば、強化繊維は、好ましくは炭素繊維、窒化ホウ素繊維から選択される。
【0066】
本発明の別の実施形態によれば、区画のエンベロープは、断熱特性を有する。この好ましい実施形態によれば、強化繊維は、好ましくはガラス繊維、バサルト繊維、およびアラミド繊維から選択される。
【0067】
より具体的には、組成物中の強化繊維の含量は、組成物の全重量に対する重量で、20から80重量%の間である。
【0068】
使用される繊維のサイズ:短い、長い、または連続しているかに応じて、強化繊維の含量を組成物中で異ならせることができる。
【0069】
したがって、短強化繊維の場合、繊維含量は、好ましくは強化繊維が15から60重量%の間である。長または連続強化繊維の場合、繊維含量は、好ましくは強化繊維が40から80重量%の間である。
【0070】
熱伝導成分
本発明によるデバイス用のバッテリーボックスのエンベロープを構成する組成物は、少なくとも1種の熱伝導成分を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%含む。
【0071】
熱伝導成分により、この成分を受容するポリマー母材に熱伝導性を与えることが可能になり、またはそうでない場合には、母材の熱伝導性を増大させることが可能になる。
【0072】
熱伝導成分は、炭素、炭素繊維、カーボンブラック、例えばEnsaco 250Gという商品名でImerysにより販売されているカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、例えばMB Graphistrength(登録商標)の形でArkemaにより販売されているカーボンナノチューブなど、押出成形黒鉛、例えばImerysにより販売されているTimrex(登録商標)C-THERM(商標)製品ライン、特にTimrex(登録商標)C-THERM(商標)001製品のようなもの、窒化アルミニウム、ならびに窒化ホウ素の中から選択することができる。
【0073】
衝撃改質剤
本発明によるデバイス用のバッテリーボックスのエンベロープを構成する組成物は、少なくとも1種の衝撃改質剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%含む。
【0074】
衝撃改質剤は、有利には、50%RHでISO規格178に従い測定された100MPa未満の曲げ弾性率、および規格11357-2、2013に従い測定された0℃未満のTgを有する、ポリマーによって構成される。
【0075】
ポリアミドのガラス転移温度Tgは、ISO規格1 1357-2:2013に従い、2回目の加熱パスの後に、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定される。加熱および冷却速度は20℃/分である。
【0076】
好ましくは、衝撃改質剤は、1種または複数のポリオレフィンで形成され、それらの一部または全ては、カルボン酸、無水カルボン酸、およびエポキシド官能基から選択される官能基を保持する。非常に具体的には、ポリオレフィンは、エラストマーエチレンおよびプロピレンコポリマー(EPR)、エラストマーエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)、およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーから選択することができる。
【0077】
組成物は、50%RHでISO規格178に従い測定された曲げ弾性率、300MPa超、有利には800MPa超を有する半結晶質ポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物を、前記組成物の全重量に対して最大20重量%含んでいてもよい。
【0078】
この衝撃改質剤は、官能化ポリオレフィン(B1)である。
【0079】
本発明によれば、官能化ポリオレフィン(B1)は、下記のポリマーを意味すると理解される。
【0080】
官能化ポリオレフィン(B1)は、反応性単位:官能基を有するアルファ-オレフィンポリマーとすることができる。そのような反応性単位は、カルボン酸、無水物、またはエポキシ官能基である。
【0081】
アルファ-オレインまたはジオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーは、例として、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、ブタジエンなどを示すことができ、より具体的には:
- エチレン、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、およびメタロセンポリエチレンの、ホモポリマーおよびコポリマー;
- プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー;
- エチレン/プロピレン、EPR(エチレン-プロピレン-ゴムの略称)、およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)などの、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー;
- スチレン/エチレン-ブタジエン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン-プロピレン/スディレン(SEPS)ブロックコポリマー;
- エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、アクリル酸メチル)などの不飽和カルボン酸の塩もしくはエステルまたは酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1種の生成物とのコポリマー(EVA)であり、コモノマーの割合が40重量%に達することができるもの
である。
【0082】
上に記載のこれらのポリオレフィンは、カルボン酸、無水物、またはエポキシ官能基などの反応性単位(官能基)によって、グラフト化、共重合、または三元重合することができる。
【0083】
より具体的には、これらのポリオレフィンは、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシドによって、または(メタ)アクリル酸などのカルボン酸もしくは対応する塩もしくはエステルによって(例えばZn等の金属によって完全にまたは部分的に中和することができる)、または無水マレイン酸などのカルボン酸無水物によって、グラフト化されまたは共重合もしくは三元重合される。
【0084】
官能化ポリオレフィン(B1)は、下記の、無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジルのグラフト化(コ)ポリマーから選択することができ、グラフト率は例えば、0.01から5重量%:
- のPE、PP、またはエチレンとプロピレン、ブテン、ヘキセン、もしくはオクテンとのコポリマーであって例えばエチレンを35から80重量%含有するコポリマー;
- エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、例えばエチレン/プロピレン、EPR(エチレン-プロピレン-ゴムの略称)、およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM);
- スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー;
- 酢酸ビニルを最大40重量%含有する、エチレンおよび酢酸ビニルコポリマー(EVA);
- アルキル(メタ)アクリレートを最大40重量%含有する、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートコポリマー;
- コモノマーを最大40重量%含有する、エチレンおよび酢酸ビニル(EVA)およびアルキル(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0085】
官能化ポリオレフィンは、例えばPE/EPR混合物であり、その重量比は広く様々にすることができ、例えば40/60から90/10の間であり、前記混合物は、例えば0.01から5重量%のグラフト率に従い、無水物、特に無水マレイン酸で共グラフト化されている。
【0086】
官能化ポリオレフィン(B1)は、無水マレイン酸グラフト化プロピレンの大半がモノアミンポリアミド(またはポリアミドオリゴマー)と縮合された、エチレン/プロピレンコポリマーから選択することもできる(EP-A-0,342,066に記載された生成物)。
【0087】
官能化ポリオレフィン(B1)は、少なくとも下記の単位:
(1)エチレン;
(2)アルキルメタクリレートまたは飽和カルボン酸ビニルエステル;および
(3)無水マレイン酸もしくは無水メタクリル酸などの無水物、またはメタクリル酸グリシジルなどのエポキシ
の、コポリマーまたはターポリマーとすることもできる。
【0088】
後者のタイプの官能化ポリオレフィンの例として、下記のコポリマーを挙げることができ、エチレンは、好ましくはコポリマーの少なくとも60重量%であり、ターモノマー(官能基)は例えばコポリマーの0.1から12重量%である:
- エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジルコポリマー;
- エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジルコポリマー;
- エチレン/酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジルコポリマー。
【0089】
先のコポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸は、ZnまたはLiで塩化することができる。
【0090】
(B1)での「アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、C~Cメタクリレートおよびアルキルアクリレートを示し、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチル-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルから選択することができる。
【0091】
さらに、先に引用されたポリオレフィン(B1)は、任意の適切な方法または薬剤(ジエポキシ、二酸、過酸化物等)によって架橋されてもよく;官能化ポリオレフィンという用語は、先に引用されたポリオレフィンと、例えばこれらに反応することができる二酸、二無水物、ジエポキシ等の二官能性試薬との混合物、または一緒に反応することができる少なくとも2種の官能化ポリオレフィンの混合物も含む。
【0092】
上述のコポリマー(B1)は、統計的にまたは逐次、共重合されてもよく、直鎖状または分枝状構造を有していてもよい。
【0093】
これらのポリオレフィンの分子量、MFI、および密度は、広く様々にすることができ、このことを当業者なら理解されよう。MFIは、メルトフローインデックスの略称であり、融解したときの流動性の尺度である。ASTM 1238規格に従い測定される。
【0094】
有利には、官能化ポリオレフィン(B1)は、アルファ-オレフィン単位と、エポキシ、カルボン酸、またはカルボン酸無水物官能基のような極性反応性官能基を保持する単位とを含む、任意のポリマーから選択される。そのようなポリマーの例として、エチレン、アルキルアクリレート、および無水マレイン酸、または本出願人のLotader(登録商標)のようなメタクリル酸グリシジル、または本出願人のOrevac(登録商標)のような無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンのターポリマー、ならびにエチレン、アルキルアクリレート、および(メタ)アクリル酸のターポリマーを挙げてもよい。出願EP0,342,066に記載されるように、次いで無水カルボン酸グラフト化ポリプロピレンをポリアミドまたはポリアミドモノアミンオリゴマーと縮合させた、ホモポリマーまたはコポリマーを挙げてもよい。
【0095】
より具体的には、官能化ポリオレフィン(B1)は:
- エチレン、アルキルアクリレート、および無水マレイン酸ターポリマー;
- エチレン、アルキルアクリレート、およびメタクリル酸グリシジルターポリマー;
- 無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンおよびポリエチレン;
- 無水マレイン酸グラフト化エチレンおよびプロピレンコポリマー、およびおそらくはジエンモノマー;
- 無水マレイン酸グラフト化エチレンおよびオクテンコポリマー;
ならびにこれらの混合物である。
【0096】
官能化ポリオレフィン(B1)は、組成物の全重量に対して0から20重量%の間、好ましくは1から10重量%の間の濃度で存在する。
【0097】
有利には、本発明による組成物は、少なくとも1種の非官能化ポリオレフィン(B2)を含むことができる。
【0098】
非官能化ポリオレフィン(B2)は、従来、アルファ-オレフィンまたはジオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、ブタジエンなどの、ホモポリマーまたはコポリマーである。例として:
- ポリエチレン、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、およびメタロセンポリエチレンの、ホモポリマーおよびコポリマー;
- プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー;
- エチレン/プロピレン、EPR(エチレン-プロピレン-ゴムの略称)、およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)などの、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー;
- スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー;
- エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、アクリル酸メチル)などの不飽和カルボン酸の塩もしくはエステル、または酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1種の生成物とのコポリマー(EVA)であり、コモノマーの割合が40重量%に達することができるもの;
ならびにこれらの混合物を挙げてもよい。
【0099】
上述のコポリマー(B2)は、統計的にまたは逐次、共重合されてもよく、直鎖状または分枝状構造を有していてもよい。
【0100】
有利には、非官能化ポリオレフィン(B2)は、ポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、および任意のエチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマー、およびブテン、ヘキセン、オクテン、または4-メチル-1-ペンテンなどの高級アルファ-オレフィンコモノマーから選択される。PP(ポリプロプレン)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および超低密度ポリエチレンを、例として引用することができる。これらのポリエチレンは、フリーラジカル法から、Ziegler触媒法から、または、より最近では、メタロセン触媒からの生成物であるとして、当業者に公知である。本出願人によりEVATANE(登録商標)という商品名で販売されるものなどの、エチレンおよび酢酸ビニル(EVA)のコポリマーも好ましい。
【0101】
本発明によるデバイスのエンベロープを構成する組成物が、1種または複数の非官能化ポリオレフィンを含む場合、(A)のMFIならびに(B1)および(B2)のMFIは広範囲にわたり選択することができ、しかし(B1)および(B2)の粘度は、(B1)および(B2)の分散が改善されるように、近いものであることが推奨される。
【0102】
非官能化ポリオレフィンは、組成物の全重量に対して0から20重量%の間、好ましくは1から10重量%の間の濃度で存在する。
【0103】
衝撃改質剤は、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックで形成されたコポリマーとすることもでき、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックは、エステル官能基によって連結されている。これらの生成物は、文献FR2,273,021に記載されており、PEBAX(登録商標)という商品名でArkemaにより販売されている。
【0104】
ポリアミドブロック(以下、PAと略す)およびポリエーテルブロック(以下、PEと略す)とのコポリマーは、反応性末端を持つポリアミドブロックと反応性末端を持つポリエーテルブロックとの共重縮合から得られる。例えば、下記を反応させることができる:
- ポリエーテルジオールおよびカルボン二酸ポリアミド;
- ポリエーテルジアミンおよびカルボン二酸ポリアミド;
- ポリエーテルジオールおよびジアミンポリアミド。
【0105】
ジカルボン酸鎖末端を持つブロックポリアミドは、例えば、連鎖調節剤カルボン二酸の存在下、ポリアミド前駆体の縮合から得られる。ジアミン鎖末端を持つブロックポリアミドは、例えば、連鎖調節剤ジアミンの存在下、ポリアミド前駆体の縮合から得られる。したがって、ブロック間の結合は、エステル結合またはアミド結合のいずれかである。
【0106】
PAブロックおよびPEブロックを持つポリマーは、単一PAブロックおよび単一PEブロックを含むことができる。
【0107】
上記ポリマーは、ポリアミドを構成する1つまたは複数のモノマーのいくつかの構造的に同一のPAブロック、およびランダムに分布された同一のPEを、含んでいてもよい。前記ポリマーは、PEブロックおよびPAブロック前駆体の同時反応によって調製されてもよい。ポリマーは、PAブロックの形成中に連鎖調節剤が作用する瞬間に応じて、非常に変動し得る長さを持つPEブロックおよびPAブロックを有するものが得られるが、様々な試薬も、ポリマー鎖に沿ってランダムに(統計的に)分布されたものがランダムに反応している。
【0108】
本発明によるデバイス用のバッテリーボックスのエンベロープを構成する組成物は、少なくとも1種の衝撃改質剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%含む。
【0109】
添加剤
本発明によるデバイス用のバッテリーボックスエンベロープを構成する組成物は、0から20%の添加剤も含むことができる。
【0110】
好ましくは、区画を形成する組成物中に存在する添加剤は、熱安定化剤、可塑剤、潤滑剤、有機または無機顔料、抗UV剤、帯電防止剤、鉱物充填剤、および有機充填剤から選択される。
【0111】
この熱安定化剤は、銅をベースにした安定化剤、有機安定化剤、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0112】
銅をベースにした安定化剤は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、酢酸第一銅、および酢酸第二銅などの銅をベースにした化合物から選択される、1種または複数の構成成分から構成することができる。
【0113】
銀などのその他の金属のハロゲン化物および酢酸塩を、列挙することができる。これらの銅をベースにした化合物は、典型的には、アルカリ金属のハロゲン化物に関連付けられる。周知の例は、CuIおよびKIの混合物であり、CuI:KI比が、典型的には境界も含めて1:5から1:15の間である。そのような安定化剤の例は、CibaのPolyadd P201である。
【0114】
より詳しくは、銅を含有する安定化剤において、米国特許第2,705,227号に見出される。より最近では、BruggemannのBruggolen H3336、H3337、H3373のような銅錯体などの銅をベースにした安定化剤が現れた。
【0115】
銅をベースにした安定化剤は、銅ハロゲン化物、酢酸銅、銅ハロゲン化物または酢酸銅を少なくとも1種のアルカリ金属ハロゲン化物と混合したもの、およびこれらの混合物から選択され、好ましくは、ヨウ化銅とヨウ化カリウムとの混合物(CuI/KI)である。
【0116】
有機安定化剤は:
- フェノール抗酸化剤、例えばCibaのIrganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、CibaのIrganox MD1024、Great LakesのLowinox 44B25;
- 亜リン酸塩などの、リンをベースにした安定化剤、例えば、CibaのIrgafos(登録商標)168;
- UV吸収剤、例えばCibaのTinuvin 312、
- 先に述べたようなHALS、
- アミン型安定化剤、例えばCromptonのNaugard 445、またはさらにヒンダードアミン型のもの、例えばCibaのTinuvin 770、
- 多官能性安定化剤、例えばClariantのNylostab S-EED
から選択することができるが、このリストは限定的なものではない。
【0117】
これらの有機安定化剤の2種以上の混合物を、明らかに考え出すことができる。
【0118】
組成物中の熱安定化剤の量は、好ましくは、組成物の全重量に対して0.05から5重量%の間である。
【0119】
添加剤は、特に、BBSA(N-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミド)などの可塑剤、潤滑剤、例えばステアリン酸;有機または無機顔料;抗UV剤;帯電防止剤;鉱物充填剤、例えばタルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛など、および有機充填剤から選択することができる。
【0120】
充填剤の中で、シリカ、酸化チタン、またはさらにガラスビーズを列挙することができる。
【0121】
好ましくは、添加剤は、組成物の全重量に対して一般に0.1から15重量%、好ましくは1から15重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0122】
防炎剤
区画用のエンベロープを構成する組成物は、少なくとも1種の難燃剤を含み得る母材を含む。
【0123】
好ましくは、防炎剤は、米国特許出願公開第2008/0,274,355号に記載されているものなどの、ハロゲンを含まない防炎剤から選択され、特に、ホスフィン酸金属塩、ジホスフィン酸の金属塩、ホスフィン酸の少なくとも1種の金属塩を含有するポリマー、ジホスフィン酸の少なくとも1種の金属塩を含有するポリマーから選択される金属塩である。防炎剤は、赤リン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩、ピロリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、およびケイ素添加またはフッ素添加型非ドリップ剤から選択することもできる。
【0124】
防炎剤は、前述の難燃剤の混合物とすることもできる。
【0125】
防炎剤は、臭素化またはポリ臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、または臭素化フェノールなどのハロゲン化難燃剤であってもよい。
【0126】
好ましくは、本発明によるホスフィン酸金属塩は以下の式(I)を有し、ジホスフィン酸金属塩は以下の式(II)を有する:
(式中、
およびRは、互いに独立して、直鎖状または分枝状C~Cアルキル基またはアリール基を示し;
は、直鎖状または分枝状C~C10アルキレン、C~C10アリーレン、C~C10アルキルアリーレン、またはC~C10アリールアルキレン基であり;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、および/またはプロトン化アミン塩基であり;
- mは、1から4の範囲の整数であり;
- nは、1から4の範囲の整数であり;
- xは、1から4の範囲の整数であり;
ここで、nおよびmは、塩が中性であるように選択され、正味の電荷を保持しないことを意味する)。
【0127】
好ましくは、Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、または亜鉛イオンを表す。
【0128】
好ましくは、RおよびRは、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、第三級ブチル、n-ペンチル、および/またはフェニル基を示す。
【0129】
好ましくは、Rは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、n-オクチレン、n-ドデシレン、フェニレン、ナフタレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、第三級ブチルフェニレン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、tert-ブチルナフタレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、またはフェニルブチレン基を表す。
【0130】
より具体的には、組成物の母材中に存在し得る難燃剤の含量は、組成物中に存在するポリアミドの全重量に対して10から30重量%の間であり、好ましくは15から25重量%、より具体的には17から22重量%の間である。
【0131】
エンベロープの位置およびその数
デバイスの区画は、1つまたは複数のエンベロープを含んでいてもよい。
【0132】
本発明によるデバイスの一実施形態によれば、デバイスは単層区画を含み、単一のエンベロープからなることを意味する。次いでこのエンベロープは、外側エンベロープと記述される。
【0133】
有利には、エンベロープは、10W/m・K以下の、好ましくは10から0.3W/m・Kの間、より好ましくは1から0.1W/m・Kの間の熱伝導度(λ)を有する。
【0134】
さらに、より有利には、外側エンベロープは:
- 熱伝導特性を持たない強化繊維を、組成物の全重量に対して20から80重量%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み、
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材である。
【0135】
デバイスは、バッテリーとデバイスの外側との間の熱交換の制限を可能にしようとしている。
【0136】
別の実施形態によれば、デバイスは、少なくとも2つのエンベロープを含み、その組成物が本発明によるものである内側エンベロープはバッテリーに面して配置されており、外側エンベロープは内側エンベロープと共に、伝熱流体を流動させることが意図される通路を形成する。
【0137】
好ましくは、内側エンベロープの熱伝導度(λ)の、外側エンベロープの熱伝導度(λ)に対する比は、少なくとも1.5より大きく、好ましくは1.5から300の範囲、より詳細には2から100の範囲、より好ましくは2から50の範囲である。
【0138】
有利には、内側エンベロープは:
- 強化繊維を、組成物の全重量に対して0から80重量%、好ましくは0.1から80%、より好ましくは5から80%;
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み;
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材であり;
外側エンベロープは:
- 熱伝導特性を持たない強化繊維を、組成物の全重量に対して20から80重量%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み;
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドを含む母材である。
【0139】
この実施形態によれば、伝熱流体は、これら2つのエンベロープの間を流動することができ、内側エンベロープは、バッテリーによって放出された熱の回収を可能にし、外側エンベロープは、デバイスの外側との熱交換の制限を可能にするものであり、即ちデバイスの目的は、バッテリーにより放出された最大限の熱を回収するということである。
【0140】
強化繊維が、例えば炭素繊維、CNT、カーボンナノファイバー、またはグラフェンのように熱伝導特性を有する場合、内側エンベロープ内での熱伝導成分の存在は、欠かせないものである。
【0141】
特定の実施形態によれば、内側エンベロープは:
- 熱伝導特性を持たない強化繊維を、組成物の全重量に対して0から80重量%、好ましくは0.1から80%、より好ましくは5から80%;
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、組成物の全重量に対して10から20重量%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1か15%、より好ましくは1から15%
含み、
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材である。
【0142】
別の特定の実施形態によれば、内側エンベロープは:
- 熱伝導特性を有する強化繊維を、組成物の全重量に対して0から80重量%、好ましくは0.1から80%、より好ましくは5から80%;
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み、
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材である。
【0143】
ある特徴によれば、内側エンベロープは、バッテリーと、少なくとも部分的に接触させて配置構成することができる。
【0144】
あるいは、バッテリーと内側エンベロープとの間に、空間を設けることができる。
【0145】
有利には、バッテリーが、複数の隣接するセルパックを含む場合、内側エンベロープは、形状の相補性によってセルのアセンブリを包封する。
【0146】
別の特徴によれば、内側エンベロープおよび外側エンベロープは、その内側および/または外側に、低透水性を有する層でコーティングすることができる。
【0147】
低透水性を持つ1つまたは複数の層を有することにより、防湿効果を得ることができ、バッテリーを、その場所に応じて伝熱流体またはバッテリーボックスの外側の環境に対して封止することを意味する。
【0148】
本発明の目的で、内側は、伝熱流体用の通路に面して配置構成された層を意味すると理解される。
【0149】
本発明の目的で、外側は、バッテリーボックスの外側に面してまたはバッテリーに面して配置構成された層であって、層の反対側が、伝熱流体用の通路に面して配置構成されているものを意味すると理解される。
【0150】
特に、選択された伝熱流体が液体、例えばグリコール水である実施形態によれば、低透水性を有する1つまたは複数の層は、その配置に従って、バッテリーに向かうまたは冷却および/または加熱デバイスの外側に向かう流体の漏れを回避するように働く。
【0151】
好ましい実施形態によれば、この/これらの層は、EVOH、ポリオレフィン、例えばポリプロピレンまたはポリエチレン:HDPE、LDPEのものとすることができる。
【0152】
本発明の第1の実施形態によれば、区画は、少なくとも2つのエンベロープを含み、低透水性の層が、内側エンベロープの内側および外側に配置されている。
【0153】
本発明の第2の実施形態によれば、区画は、少なくとも2つのエンベロープを含み、低透水性の層が、内側エンベロープの内側および外側にかつ外側エンベロープの内側に配置されている。
【0154】
本発明の第3の実施形態によれば、区画は、少なくとも2つのエンベロープを含み、低透水性の層が、内側エンベロープの内側にかつ外側エンベロープの内側に配置されている。
【0155】
熱伝導度の測定
材料の熱伝導度測定は、ISO 22007-2規格に記載されるようなHOT DISK技術によって行なわれる。
【0156】
組成物を調製するための方法
本発明は、上記で定義された通りの組成物を調製するための方法も包含する。この方法によれば、組成物は、強化繊維のサイズを考慮しつつ、溶融状態押出し、圧密化、またはさらにローラーミキサーなど、本発明による組成物および任意選択でその他の添加剤を含有する均質な混合物を得ることを可能にする任意の方法によって調製することができる。
【0157】
有利には、混合しまたは混練するための熱可塑性工業からの通常のデバイス、例えば二軸スクリュー型押出し機などの押出し機、および混練機、例えばBUSS共混練機が使用される。
【0158】
区画を生成するための方法
繊維のサイズに応じて、本発明によるバッテリーボックスを様々な技法により作製することができる。
【0159】
繊維が短い場合、本発明によるバッテリーボックスは、上記で定義された通りの少なくとも1種の組成物の、射出、押出し、共押出し、熱間圧縮、およびマルチインジェクションによって、得ることができる。
【0160】
繊維が長くまたは連続的である場合、本発明によるバッテリーボックスは:引抜き成型、フィラメントワインディング、熱圧着、注入成型、樹脂トランスファー成型(RTM)、構造化反応、および射出成型(S-RIM)、または射出-圧縮成型から選択される様々な技法によって作製することができる。特定の密閉成型技法は、RTMまたはS-RIMまたは射出-圧縮である。ここでRTMにおける「樹脂」という用語は、強化繊維のない本発明による組成物を特定する。
【0161】
特定の実施形態によれば、生成方法は:
- 金型内に強化繊維を付着させるステップ、次いで
- 本発明による組成物の前駆体組成物により前記繊維を含浸させる、少なくとも1つのステップ
を含んでいてもよい。
【0162】
本発明による組成物の前駆体組成物は、上記で定義された通りであるが強化繊維を含まない、本発明による組成物を意味すると理解される。
【0163】
回路
本発明は、主ループ内で伝熱流体を循環させることが意図される手段が設けられた、主伝熱流体循環ループを含む、電気またはハイブリッド自動車両バッテリー用の冷却および/または加熱回路にも関する。
【0164】
さらに、主ループは、可逆的ヒートポンプ、ならびに先に説明されたように冷却および/または加熱デバイスに接続される。
【0165】
様々な実施形態によれば、伝熱流体は、気体、例えば空気、または液体、例えばグリコール水とすることができる。
【0166】
本発明の特質によれば、回路は、主ループに接続された少なくとも1つの二次ループを含んでいてもよく、1つまたは複数の二次ループは、自動車両の客室に、および/または自動車両がハイブリッドである場合は自動車両の電動機に接続された電子回路に、接続される。
【0167】
有利には、回路は、先に定義されたものなどの主ループから少なくとも1つの二次ループへの伝熱を制御するために構成された、制御デバイスを含んでいてもよい。
【0168】
その他の目標、利点、および特徴は、純粋に例示的な実施例として与えられた下記の記述から、かつ添付図面を参照ながら、浮かび上がるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0169】
図1】本発明の第1の実施形態による、電気またはハイブリッド自動車両用バッテリーの、冷却および/または加熱デバイスであって、エンベロープを含むバッテリーボックスを含むデバイスの、断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態による、電気またはハイブリッド自動車両用バッテリーの、冷却および/または加熱デバイスであって、内側および外側エンベロープを含むバッテリーボックスを含むデバイスの、断面図である。
図3】電気またはハイブリッド自動車両用バッテリーの、冷却および/または加熱デバイスであって、内側および外側エンベロープを含むバッテリーボックスを含むデバイスの一部の断面図であり、図3は、図2に示される外側エンベロープの代替の外側エンベロープ構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0170】
図1から図3は、本発明に準拠する、電気またはハイブリッド車両バッテリー用の、冷却および/または加熱デバイスの2つの実施形態を示す。
【0171】
図1において、一般的な参照符号1によって示される冷却および/または加熱デバイスは、バッテリー2に関し、バッテリーボックス3を含む。図示される区画3は:
- 強化繊維を、組成物の全重量に対して20から80重量%;
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み、
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材である
エンベロープを備え;
区画3は、バッテリーの冷却および/または加熱容積を画定する。
【0172】
さらに、デバイス1は、伝熱流体6の通路用の、それぞれ4および5である入口および出口を備える。図示されるデバイス1の構成は、有利には、入口4から出口5まで、バッテリー2と接触させて伝熱流体6の通過を可能にする。
【0173】
有利には、エンベロープ7は、10W/m・K以下の熱伝導度(λ)を有する。次いでエンベロープ7は、有利には断熱特性を有し、特に、エンベロープ7を経た熱の損失の回避を可能にする。
【0174】
さらに、強化繊維の特定の割合は、エンベロープ7に対し、エンベロープ7の場所に適した高い機械抵抗を与えるが、これは外部環境に接触することを意味する。
【0175】
図2において、図示される冷却および/または加熱デバイス1は、2つのエンベロープを含む。内側エンベロープ8は、バッテリー2に面して配置構成される。外側エンベロープ7は、内側エンベロープ8と共に、伝熱流体6を流動させることが意図される通路を形成する。この実施例では、流体6は、外側エンベロープ7と内側エンベロープ8との間を循環し、バッテリー2と接触しない。
【0176】
内側エンベロープ8は:
- 強化繊維を、組成物の全重量に対して0から80重量%、好ましくは0.1から80%、より好ましくは5から80%;
- 少なくとも1種の熱伝導成分を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み、
残分は、主に少なくとも1種のポリアミドおよび少なくとも1種の防炎剤を含む母材である。
【0177】
外側エンベロープ7は:
- 熱伝導特性を持たない強化繊維を、組成物の全重量に対して20から80重量%;
- 少なくとも1種の衝撃改質剤を、全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から20%、より好ましくは5から20%;
- 添加剤を、組成物の全重量に対して0から20重量%、好ましくは0.1から15%、より好ましくは1から15%
含み;
- 残分は、主に少なくとも1種のポリアミドを含む母材である。
【0178】
さらに、内側エンベロープ8の熱伝導度(λ)の、外側エンベロープ7の熱伝導度(λ)に対する比は、少なくとも1.5より大きい。
【0179】
図示される実施例では、バッテリー2と内側エンベロープ8との間に、空間9が設けられる。代替例によれば、バッテリー2と伝熱流体6との間の伝熱が最適化されるように、内側エンベロープ8は、バッテリーと、少なくとも部分的に接触させて配置構成することができる。
【0180】
従来、バッテリー2は、複数の隣接するセルパックを含む。図3に示される別の実施例によれば、内側エンベロープ8は、2つの隣接するセルパックの間に挿入されると考えられる。図3は、3つの同一のセルパック10、11、および12を含むバッテリー2の一部を、概略的に示す。それぞれ10a、10b、10c、10d、および11a、11b、11c、11dである4つの壁をそれぞれが含む、隣接するパック10および11を参照されたい。図示される実施例において、内側エンベロープ8は、パック10の壁10a、10b、10c、10dに、およびパック11の壁11a、11b、11c、11dに、部分的に面して配置構成される。
【0181】
このように内側エンベロープ8は、バッテリー2のセルパックの形状に沿うようにこれらのセルパックに最も近付いて延びており、したがって、より良好なエネルギー回収に向けてバッテリー2と伝熱流体6との間の伝熱の改善が可能になる。有利には、バッテリー2の複雑な幾何形状に適合されたそのようなエンベロープ8は、ポリアミド組成物により、容易にかつ素早く製造することができる。
【0182】
有利には、内側および外側エンベロープを、低透水性を有する層でコーティングすることができる。1つまたは複数の層(図には示さず)は、内側または外側にすることができる。
【0183】
好ましくは、低透水性を持つ少なくとも1つの層が、内側で、内側エンベロープ8に接触して配置構成され、これは伝熱流体6に接触することを意味する。
【0184】
伝熱流体(6)の機能は、2つ以上の温度供給源の間で熱を伝達させることである。この流体は、気体、空気、またはさらに液体とすることができる。
【0185】
本発明に準拠するバッテリーボックスのエンベロープの組成物は、バッテリーと伝熱流体との間のより良好な熱伝達に関与し、したがって、バッテリーの最適化された冷却および/または加熱に関与する。
図1
図2
図3