(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】全血及び血液製剤用の改良されたフィルタユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240403BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20240403BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61M1/36 119
A61M1/02 103
B01D29/04 510D
B01D29/04 530A
(21)【出願番号】P 2020532594
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 IB2018059867
(87)【国際公開番号】W WO2019116220
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】102017000143635
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510058575
【氏名又は名称】ジヴエッセ ソチエタ ぺル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】スカグリアリーニ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】クーエルツェ ルカ
(72)【発明者】
【氏名】トラシネッリ フィリッポ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/050215(WO,A1)
【文献】特開平07-267871(JP,A)
【文献】特開平07-289858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0084332(US,A1)
【文献】特表2006-507881(JP,A)
【文献】特表2002-541941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/02
B01D 29/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液及び血液製剤用のフィルタユニットであって、熱可塑性ポリマー材料からなる2個の射出成形されたハーフシェル(2、3)によって構成された本体(1)を備え、前記ハーフシェル(2、3)の間には、2個の、互いに反対側にある平坦な面(5A、5B)を有するフィルタ要素(5)を収容したキャビティ(4)があり、前記キャビティ(4)と連通して、前記本体(1)の、互いに反対側にある外側面(2K、3K)に設けられた入口開口(9)及び出口開口(13)があり、前記ハーフシェル(2、3)は各々、突出した外周フランジ(30)を備えるフィルタユニットにおいて、重なり合う前記ハーフシェルの外周フランジ(30)は、直接接触して単一の溶接線に沿って溶接され、前記フィルタユニットの本体のフランジ(40)を構成して前記2個のハーフシェル(2、3)を接合し、外周フランジ同士は、それらの間に前記フィルタ要素を存在させずに、それらの全表面積にわたり溶接され、前記ハーフシェル(2、3)は、前記フィルタユニットの本体(1)のキャビティ(4)に向いた面(2W、3W)を有し、これらの面から、前記フィルタ要素(5)の対向する面(5A、5B)を押圧することのできるリブ(20)が、突出し、前記リブ(20)は、それらの間に流路(21)を形成することにより、前記フィルタユニットの本体(1)の入口開口(9)から出口開口(13)への血液及び血液製剤の動きを促進し、前記フィルタ要素(5)は、前記本体(1)のキャビティ(4)内に全面的に収容され、各ハーフシェル(2、3)から前記キャビティ(4)に突出する棚状部(55)により押圧され、前記突出した棚状部(55)は、前記ハーフシェル(2、3)の縁近くで、前記ハーフシェルの両面(2W、3W)に、それらの外周縁近くに配置され、前記突出する棚状部(55)は、前記フィルタ要素の外周縁(70)
の近傍において、前記フィルタ要素の2個の平坦な両面(5A、5B)を押圧し、前記棚状部(55)は、前記フィルタ要素(5)を、前記キャビティ(4)内の安定した位置に保持することにより、前記フィルタ要素(5)は、前記ハーフシェルの溶接を妨げず、前記熱可塑性ポリマー材料は、柔軟な半硬質であり、熱可塑性ポリマー材料は、85~95のショアA硬度を
有することを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
充填係数が、100%超であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項3】
2個のハーフシェル(2、3)のフランジ(30)が、したがって、フィルタユニットの本体(1)のフランジ(40)が、前記本体の縁に沿って2~5mm突出していることを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項4】
フィルタユニットの本体(1)の前記フランジ(40)が、外側に向かって又は前記本体から離れるにつれて厚さが減少することを特徴とする請求項3に記載のフィルタユニット。
【請求項5】
前記棚状部(55)は、連続的又は不連続のいずれかであり、前記ハーフシェル(2、3)の縁の近くに連続的又は不連続なリングを構成していることを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項6】
フィルタ要素(5)の縁(70)は、前記フィルタ要素の残りの部分と比較して厚さが小さいことを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項7】
前記入口開口(9)及び前記出口開口(13)は、フィルタユニットの本体(1)の外面を構成する前記ハーフシェルの面(2K、3K)から突出する付属部分(8、12)に設けられ、前記付属部分(8、12)は、前記ハーフシェルと一体になっていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、主請求項の公知要件事項部に記載の全血及び血液製剤用のフィルタユニットである。
【背景技術】
【0002】
研究室及び病院の双方において、フィルタユニットを用いて患者の血液をその構成成分に分けることが公知である。各フィルタユニットは、特に柔軟なポリマー材料からなる本体を備えており、前記本体は、通常本体の内部キャビティの境界となる2個のシェルをつなぎ合わせることにより得られ、この内部キャビティには、例えば、血液中に存在する白血球を濾別するのに適したフィルタ手段又はフィルタ要素が配置される。本体は、入口開口及び出口開口を備え、濾過する血液が、フィルタユニットに入りフィルタユニットから出られるようにしている。2個のシェルは、それらの周縁部に沿ってつなぎ合わされる。
【0003】
血液製剤を分離する間、各フィルタユニットは、遠心分離機にかけられ、全血の袋及び血液製剤を集める種々の袋とともに、閉回路を構成する滅菌集合体の一部となる。
【0004】
時には高速で、遠心分離を受ける硬質材料(ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル、その他)からなるフィルタは、遠心分離機のロータ内で発生する衝撃によってひび割れが生じたり壊れたりすることがある。
【0005】
これに加え、滅菌集合体の他の構成要素に対する衝撃は、それらの構成要素を破裂させることがあり、遠心分離機をその後も使用すると、血液成分の損失(遠心分離機及び血液成分の汚染)のため、明らかな結果となる。
【0006】
米国特許公開明細書第2001/0037978号は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの柔軟な熱可塑性ポリマー材料からなり、成形工程により製造される第1及び第2の収納シェルを備えた全血及び血液製剤などの流体を濾過するフィルタを開示している。こうした材料を使用すると、収納シェル内における非圧縮性の流体(例えば、血液のような流体)又は流体の組み合わせ(空気と血液など)の存在により、フィルタユニット又はフィルタが、潰れる又は膨らむことがある。液体の体積が減少すると、フィルタユニットそれ自体が潰れ、フィルタユニットの内部容積が減少し、泡立ちの発生を防止する。これが、空気と液体が同時に通過して前記の泡立ちをもたらすという、硬質で非伸縮性のフィルタユニットにおいて生じる不利益を克服することを可能にしている。
【0007】
米国特許公開明細書第2001/0037978号は、硬質プラスチック、例えばアクリル樹脂又はポリプロピレンを用いてフィルタが得られる先行技術を引用している。
【0008】
この先行技術文献(米国特許公開明細書第2001/0037978号)は、1枚以上の柔軟なポリ塩化ビニルシートから構成されるフィルタを備えた先行技術についても記述しているが、このシートには、濾過する流体(例えば、血液)がこうしたフィルタに入りフィルタから出られるようにするフィルタと通常のチューブとの間の漏れのない連結部用の開口を形成することが困難であるという欠点がある。
【0009】
米国特許公開明細書第2001/0037978号は、フィルタ自体のシェルと一体に形成された開口を有するフィルタを記述している。これに加え、このフィルタでは、内部フィルタ要素又はフィルタ膜が、シェルの外周縁で終わり、2個のシェルの縁が接合される(通常、局所加熱又は超音波による溶接によって接合される)手段によって、フィルタの本体内の安定した位置に保持される。しかしながら、この解決手段には、フィルタ又はフィルタ要素が、フィルタユニットのキャビティ内において縁の付近で変形することがあり、このことが、フィルタユニットの濾過作用を最適に用いることを損なうという欠点がある。
【0010】
米国特許公開明細書第2006/0049097号は、フィルタ、特に白血球を他の血液成分から分離するフィルタに関し、このフィルタは、外側の筐体又はケーシングを備え、フレームの一部である又はフレームを構成する少なくとも1個の中間層を有し、濾過すべき媒体用の入口と連通した吸込チャンバと、濾液用の出口と連通した排出チャンバを有している。これらのチャンバは、濾材によって隔てられている。
【0011】
外側のケーシング又は筐体は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの柔軟な材料からなっている。外側のケーシングは、中間層に溶接されている。
【0012】
濾材は、一緒に押され、外側のケーシング又は筐体と中間層に溶接される。これは、フィルタ内の第1の溶接及び外側の筐体を構成する2個のシェルを外側の筐体の自由縁において連結する第2の溶接によってもたらされる。
【0013】
濾材は、第1及び第2の溶接された部材間に存在することにより、フィルタ内のフィルタ手段への入口において空きスペースをつくらないようにしている。
【0014】
国際公開第01/91880号は、血液用容器と、血液用容器と連通して配置され、一体品として取り扱い易いようになっているフィルタを備えた血液収集システムを開示している。このフィルタは、医療グレードのプラスチック材料からなる2個の柔軟なシェルを備え、これらのシェルは、濾材を収容している。
【0015】
これらのシェルは、2個の連続する中心が同じの溶接によって接合され、この結果、フィルタ20の周囲に、フィルタ周辺部に柔らかなクッションが形成され、この柔らかいクッションが、フィルタの取り扱い中、上記のシステムが全体として作動する時、例えば、こうしたシステムがかけられる通常の遠心分離作業の間、上記のシステムと、こうしたシステムに用いられるチューブや他の容器との間に生じ得る損傷に対する向上した保護をもたらす。
【0016】
米国特許公開明細書第2010/0108596号も、血液又は血液製剤などの流体から、特定の物質(白血球、病原体、タンパク質など)を選択的に取り除くことのできるフィルタユニット又はフィルタに関するものである。このフィルタユニット又はフィルタは、柔軟で、周縁において溶接されて一緒になった2枚の柔軟なシートを備え、これらのシートの間には、濾材が配置されている。
【0017】
米国特許公開明細書第2007/0199897号は、血液及び血液成分の濾過方法及びポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン又は他の熱可塑性エラストマーなどの柔軟な合成樹脂からなるシート材料から得られるのが好ましい容器を有するフィルタ装置を開示している。このフィルタ装置は、白血球などの物質を血液から取り除く濾材を有しており、この濾材は、特定の厚さと濾過面積を有し、フィルタ装置における特定の圧力低下を生じさせる。濾材は、平坦な形状を有し、濾過をする血液(又は血液製剤)用の入口と、濾過をした血液用の出口を備えた容器内に入っている。この容器は、どのような形状を有していてもよく(多角形、湾曲形状)、濾材の形状と合致している。容器を収容し、容器の外側の境界になる本体も備わっている。
【0018】
ヨーロッパ特許公開第3053610号は、入口側に柔軟な容器、出口側にも柔軟な容器を備えた血液を処理するフィルタを開示しており、前記容器は、濾材を封入し、入口開口及び出口開口を挟むようにして閉鎖している。このフィルタユニットは、流体の流路を供する本体、第1の封止部分及び第2の封止部分も備えており、フィルタユニットにおいて、流体の流路を供する本体は、一対の対向するリブを備えている。出口開口は、前記リブの間に位置している。流体の流路を供するこの本体は、一対の対向するリブ内に設けられたスロット及び一対の対向するリブの外側に位置し、第1の封止部分の側部に向かって連続的に開口した拡散開口を備えている。
【0019】
この先行技術文献は、硬質の容器を有するフィルタユニットによって定義される先行技術から始まっているが、このような容器は、血液の構成成分、特に白血球を分離するのに用いる遠心分離機の部品を損傷させ得ることが知られている。
【0020】
この理由により、ヨーロッパ特許公開第3053610号は、柔軟な容器を用いて、こうしたフィルタユニットを構成することを開示している。しかしながら、この解決手段は、血液をその成分に分ける過程の間に、容器の膨らみ及び/又は扁平化を招く傾向があることが報告されている。この理由で、容器内における流れを確保する(流路確保シート)装置を提供することにより、何よりも容器が内部フィルタ要素上に潰れることを防止している。
【0021】
ヨーロッパ特許公開第3053612号は、血液を処理して血液又は血液製剤から望ましくない成分を除去するフィルタユニットに関するものである。このフィルタは、シート状のフィルタ要素、及び入口側に容器の要素又は部品と出口側に容器の要素又は一部を備えることにより、フィルタ要素をそれらの間に強固に保持するように構成された容器を備えている。容器内において、スペースが、フィルタ要素によって入口スペースと出口スペースに分けられている。フィルタ要素は、入口スペース側の濾面、出口スペース側の濾面及びこれらの濾面の外周に沿う縁面を備えている。入口側の容器の要素及び出口側の容器の要素は、フィルタ要素の一対の濾面の外縁の部分を締めて押す把持部材(グリッパー)を備えている。グリッパーは、溶融樹脂によって縁面に接着される。
【0022】
この先行技術文献は、柔軟な樹脂からなり柔軟な容器を構成することのできる入口側及び出口側の容器要素の使用を開示している。
【0023】
別の形態として、ヨーロッパ特許公開第3053612号は、容器の材料は、硬質の材料でもよいことを開示している。
【0024】
しかしながら、ヨーロッパ特許公開第3053612号は、容器は半硬質の変形する材料からなるものでもよいことを開示していない。したがって、この公知の解決手段には、以下の欠点がある。もしも容器が軟質の材料からなるものであれば、容器内の血液が処理される時に、圧力の変化を受けると、容器がフィルタ要素上で膨れたり潰れたりすることがある。代わりに、容器が硬質の材料からなるものであると、この容器は、容器を入れて全血をその血液成分に分ける遠心分離機の構成要素に損傷を与えることがある。
【0025】
さらに、この容器は、溶接で一緒になった2個の部品を備えている(からなる)のではなく、この容器は、閉じられると出来上がった容器を作ることができる半型に入った部品を成形することによって得られる。こうした部品の一方が、フィルタ要素上に成形される。閉じた金型にインサートされてインサートされたフィルタ要素を有する容器を得るグリッパーは、容器の部品とフィルタ要素を接合することを可能にする。
【0026】
容器の部品の溶接は行われず、代わりに、前記部品を接合するのに必要な手段として、グリッパーの注入が行われる。
【0027】
フィルタユニットの充填率に関しては、開示は一切ない。
【0028】
米国特許第5688460号は、密閉されたフィルタユニットの製造方法及びその方法によって製造されたフィルタユニット製品を開示している。この方法は、多孔質のフィルタ要素を、包囲体の2個の部品の間に位置合わせをし、包囲体の少なくとも一方の部品と重なり合う熱可塑性のエッジ(スカート)を、フィルタ要素の縁に近接して配置することにより、フィルタ要素の縁を遮蔽し、包囲体の2個の部品に圧力を加え、次いで、熱可塑性材料からなるオーバーモールドストリップを、包囲体の(2個の)部品の外側部分の周囲に射出成形して、フィルタ要素の縁に漏れのない封止部を形成することを含んでいる。
【0029】
この公知技術における発明は、成形中、熱可塑性材料がフィルタユニットに噴入する現象を回避するという問題を解決している。
【0030】
前記フィルタユニットの2個の部品間の外周の溶接は、行われない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的は、公知のフィルタユニットと比較して改善された血液及び血液製剤用のフィルタユニットを提供することである。
【0032】
特に、本発明の目的は、血液をその血液成分に分ける際に、フィルタユニットが入れられる遠心分離機内の構成要素を破損することのないように本体が構成されているフィルタユニットを提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、全体にわたって効率の高い内部フィルタ要素を有するフィルタユニットを提供することである。
【0034】
本発明のさらに別の目的は、接触しても柔らかく取り扱い易いフィルタユニットを提供することである。
【0035】
本発明の他の目的は、フィルタユニットであって、フィルタ要素がフィルタユニットの本体に溶接される上記の先行技術における解決手段において行われるような前記フィルタユニットのシェルを接合するのに用いる加熱処理を濾過手段が受けることなしに、フィルタ要素が、所定の位置に安定して保持され、フィルタユニットのキャビティ内で平坦であるフィルタユニットを提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、シェルを効果的に長時間接合することのできる上記のタイプのフィルタユニットを提供することである。
【0037】
本発明のさらに別の目的は、濾過効率の高いフィルタユニットを提供することである。
【0038】
これらの目的及び当業者には明らかになる他の目的は、添付の特許請求の範囲に記載のフィルタユニットによって達成される。
【0039】
本発明をより良く理解することができるよう、純粋に非限定的な例示としての目的で、以下の図面を添付する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明により得られるフィルタユニットの一例を斜視図で示す。
【
図2】本発明により得られるフィルタユニットの
図1とは別の角度から見た斜視図を示す。
【
図4】
図1におけるフィルタユニット例の側面図を示す。
【
図5】
図1及び
図2に示す側と反対側から見たフィルタユニットの平面図を示す。
【
図6】
図1及び
図2におけるフィルタユニットの構成要素の側面図を示す。
【
図7】
図6に示すフィルタユニットの構成要素を上から見た図を示しており、
図7に示すこの構成要素の周縁部は、
図1及び
図2におけるフィルタユニット内にある。
【発明を実施するための形態】
【0041】
上記の図面を参照すると、本発明によるフィルタユニットは、つなぎ合わされてキャビティ又は内部空間4を構成する2個のハーフシェル2及び3によって形成される本体1を備え、キャビティ又は内部空間には、このキャビティをさらに2個の部分、第1のキャビティ部分4A及び第2のキャビティ部分4Bに分割するフィルタ要素5が配置されている。フィルタ要素5は、それ自体公知の態様で、濾過する流体及び/又は所望の濾過効果に応じて組み立てることのできるフィルタ層を備えたモジュール式パックによって構成されている。
【0042】
第1のハーフシェル2は(例えば、
図2及び
図3では上側に配置されている)、孔を穿った外側付属部材8、及び符号9で示す箇所において開口を有している。(ハーフシェル2と一体の)こうした外側付属部材8には、第1のキャビティ部分4Aに開口した導管10がある。
【0043】
同様に、第2のハーフシェル3は(
図3では下側)、ハーフシェル3と一体の孔を穿った第1の外側付属部材12を備え、孔を穿った第1の外側付属部材は、符号13で示す箇所において開口し、第2のキャビティ部分4Bに開口する導管14を有している。符号17で示す箇所において開口する孔を穿った第2の外側付属部材19に形成された導管16も、この第2のキャビティ部分4Bに開口している。
【0044】
ハーフシェル2及び3は、射出成形によって得られ、それらと一体の対応する外側付属部材を有している。その外側付属部材8は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタンなどの柔軟なチューブ(図示せず)に取り付けることができ、第1の外側付属部材12も、柔軟なチューブに取り付けることができる。第2の外側付属部材19だけは、第2のキャビティ部分4Bが、フィルタ要素を通して、第1のキャビティ部分4Aから血液又は血液製剤流体を受容した時に、フィルタ1内に存在する空気用のガス抜き孔として作用する。
【0045】
各ハーフシェル2、3は、本体1の対応する外面を構成する第1の側の面2K、3K及び第1の側の面とは反対側に、キャビティ4を構成する(したがって、本体1内にある)第2の側の面2W、3Wを有している。この第2の側の面2W及び3Wにおいて、各ハーフシェル2、3は、一連の流路21を構成する長さが異なる複数のリブ20を有している。
【0046】
第1のハーフシェル2における、これらの流路21は、第1のキャビティ部分4Aに入る流体が、フィルタ要素5の対応する面5A(第1のキャビティ部分4Aと向かい合う面)全体に亘ってかき乱されるようにする。このようにして、流体(例えば、血液)は、このようなフィルタ要素5を通して適切に濾過される。
【0047】
同様に、第2のハーフシェル3における流路21は、第2のキャビティ部分4Bに存在するこうして濾過された流体を、外側付属部材12に送り、この外側付属部材から、濾過された流体が排出される。
【0048】
フィルタ要素5及びその両面5A、5Bも、これらのリブ20に支持されており、これらのリブは、このフィルタ要素5の全体的な平面性及び剛性を確保する。これらは、以下にさらに示すように、フィルタ要素が最適な濾過効率を有するのに必要な、フィルタ要素に対して適切な封じ込めを行えるようにする要素となることに加えて、血液流体の適切な分布を得るのに必要不可欠である。
【0049】
ハーフシェル2、3は、85~95のショアA硬度を有する半硬質の熱可塑性ポリマー材料からなっている。これらの特性を有する材料も、半硬質の曲がりやすい性質を本体1に付与するものとして、本明細書において例示される。言い換えれば、本体1は、以下に示す特性を有する「半硬質で曲がりやすい」ものとしても示される。
【0050】
好適な材料は公知であり、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)、ポリウレタン(PU)などがある。これらのハーフシェル2、3は、射出成形される。それらのハーフシェルを得る材料の硬さのおかげで、ハーフシェル2、3は、外部構成要素に対する衝撃に関して穏やかな減衰作用を有している。これは、この穏やかな減衰作用が、こうした遠心分離器にある採血及び血液処理システムの部品(袋、チューブ、フィルタユニット)が、本体1と接触した場合に、破損するのを防止するので、遠心分離器を洗浄する際に、特に好ましい。
【0051】
これに加え、ハーフシェルの製造に用いる材料の(固有の)剛性が、(前記のように、通常、複数のフィルタ層によって構成される)フィルタ要素5の密度の調整を可能にしている。実際には、このフィルタ要素5の効率は、このフィルタ要素の圧縮係数すなわち「充填係数」と関連していることが公知である。これは、(層状の)圧縮されたフィルタ要素の密度と、圧縮されていない時の同じフィルタ要素の密度との間の比率によって表される。
【0052】
異なる充填係数を持つフィルタ要素5を備えるフィルタユニット1を用いると、フィルタユニット1の濾過効率における変化は、以下の表1に示すようになることが、実際に分かった。
【0053】
【表1】
ここで
充填率=上記の圧縮係数
濾別後の単位あたりの白血球=「残留白血球」
白血球対数減少=「対数減少」
上記から、濾過効率は、フィルタ要素の圧縮係数とどのような関係があるのかが分かる。すなわち、圧縮係数が高いほど、濾過能力が大きいことが分かる。これは、同じフィルタ要素に関しては、フィルタ要素があまり圧縮されていないフィルタユニットは、フィルタ要素がより圧縮されたフィルタユニットよりも濾過が良好でないことを意味している。
【0054】
本体1のハーフシェル2及び3を構成する材料の硬さを特に選択することにより、本発明は、軽い圧縮を受けているフィルタ要素を収容することができ、同時に、そうしたフィルタ要素を適切に保護することができ、取り扱いを容易にする十分硬質なフィルタユニットを得ることを可能にしている。同時に、この硬さは、十分に柔らかいフィルタユニットであって、採血及び血液処理システムとともに遠心分離器に入れてこうしたシステムが受ける通常の作業を行う際に、他のフィルタユニット、チューブ、袋又は採血及び血液処理システムの他の構成部品に損傷を与えないフィルタユニットを得ることを可能にしている。
【0055】
上に示す表における「構成」1、2、3による3個のフィルタユニットを作成し、本発明によるフィルタユニットの濾過効率を試験した。
【0056】
特に、第1の構成(構成1)においては、フィルタユニットが、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)の40枚の濾過層のパックからなるフィルタ要素5を備え、各濾過層は、0.31mmの理論上の厚さと、52g/m2の表面積あたりの重さを有している。第2の構成(「構成2」)においては、フィルタ要素の層の数のみが変わっており(この構成では、36枚)、第3の構成(「構成3」)においては、フィルタ要素における層の数が、50枚に変更されている。
【0057】
フィルタ手段の各構成に関して3個のフィルタユニットのセットを作成した。各構成に関して、ポリ塩化ビニル(PVC)のハーフシェルを有するが、異なる硬度を有するフィルタユニット、すなわち、本発明による半硬質ハーフシェルを有する第1のフィルタユニット(ショアA硬度93±2)、軟質ハーフシェルを有するフィルタユニット(ショアA硬度85±2)、及び硬質ハーフシェルを有するフィルタユニット(H358/30硬度95MPa)を作成した。
【0058】
硬質のハーフシェルを有するフィルタユニットが、(内部フィルタ要素に高圧を与えることができるという点で)高い充填係数を有することを可能にするのであれば、上掲の表を見ると、このようなフィルタユニットを、硬質の材料を用いて得られたフィルタユニットの例と比較することが重要である。
【0059】
(異なる方法で得られたフィルタ要素を有する)フィルタユニットの種々の構成を、以下の特徴を有する試験プロトコルによる濾過試験に使用した(以下の表2参照)。
【0060】
【表2】
異なる構成による種々のユニットを用いて、以下の表3に示す結果が得られた。
【0061】
【表3】
上記の表に示す事柄を検討すると、半硬質の本体1を有するフィルタユニットは、硬質の本体を有するフィルタユニットに匹敵するフィルタ内での密度を有すること、したがって、充填係数が同等又は同じであることが分かる。逆に、軟質の本体を有するフィルタユニットの場合には、フィルタ内での密度がより低く、充填係数もより低い。
【0062】
したがって、行った試験は、フィルタユニットの本体1は、上記のように曲がりやすい半硬質のハーフシェルからなっているが、同時に、110%を超える充填係数、いずれにしても、公知の硬質のフィルタユニットの充填係数に匹敵する充填係数を有していることと関連して、本発明がどのように利点を有しているかを示している。
【0063】
各ハーフシェル2、3は、シェルから側方に突出した外周フランジ30を有している。2個のハーフシェル2、3の外周フランジ30は、本体1を構成すると重なり合ってアセンブリ(本体1から突出した外周フランジ40)を構成する。このアセンブリは、(ハーフシェルができている材料のおかげで)柔軟であり、そのため、具合よく取り扱うことができる。
【0064】
これに加え、このようにして得られる本体1は、半硬質又は軟質材料の柔軟性及び耐衝撃性のおかげで、遠心分離過程の間、損傷がない(無傷の)ままであり、同時に、遠心分離の進行中に(上記に示したような)採血及び血液処理システムの構成部品を損傷させないことが可能である。
【0065】
フランジ30同士は、溶接されて、それらの全表面積にわたり1本の溶接線に沿って、それらの間に何も夾雑物を挟まずに、特に、それらの間にフィルタ要素を存在させずに、一体にされる。溶接は、通常、熱溶接により又は超音波を用いることにより行われ、溶接が同じ材料からなる同形の部品の間で直に行われることにより、溶接は、耐久性があり、長時間にわたって強さが持続する。溶接線は、連続していることが好ましい。
【0066】
フランジ30同士は、溶接されると、溶融によって生じる厚さが1~2.5mmであり、これが、先に示した予め選択された範囲にある硬さを有する材料とともに(組み合わせて)、使い勝手のよい柔軟なフランジ40を得る助けとなる。
【0067】
こうしたフランジ40は、厚さが変化する、例えば、外側に向かって厚さが減少するものでもよい。
【0068】
フィルタ要素5は、ハーフシェル2及び3によって保持され、リブ20に加えて、突出した棚状部55によっても保持されており、棚状部は、それらのハーフシェルの縁近くで前記ハーフシェルの両面2W及び3Wに、それらの外周縁近くに配置されている。これらの棚状部55は、各面2W又は3W上で連続していても不連続でもよく、フィルタ要素5の両面5A及び5Bを押す一種の(連続した又は不連続の)リングを構成し、フィルタ要素を、ハーフシェルの間に固定する。特に、これらの棚状部55は、前記フィルタ要素の厚みの少ない外周縁70の付近で前記フィルタ要素5を押す。このため、濾過層の数及び種類を異にするモジュール式の組み合わせを、濾過モジュールは、ハーフシェルの溶接を妨げないが、溶接されたハーフシェル内に全体的に収容され、その外周縁において圧縮されるので、特定の用途又は種々の血液製剤に適した製品(フィルタユニット)が得られるという点で、フランジ30の溶接、及びその結果生じる本体1の周縁部の封止を妨げることなしに、変更することができる。
【0069】
以上説明したように、棚状部55は、キャビティ部材4A及び4Bの外周を封止する。この特徴は、流路21を構成する流路21を構成するリブ20の形態とともに、外側付属部材8を通ってフィルタユニットに入る流体が、最適な態様で、フィルタ要素5に向かい、フィルタ要素を通過した後、外側付属部材12に向かって送られるようにしている。これにより、フィルタ要素の外周縁70において、フィルタ要素5をバイパスしないようにしている。
【0070】
本発明により、上述の特徴を有するフィルタユニットが得られる。しかしながら、以下の特許請求の範囲に記載の発明の範囲内において、他の実施の形態も可能である。