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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】安定なタンパク質組成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/34 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
C07K1/34
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020555099
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019024683
(87)【国際公開番号】W WO2019199476
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】62/656,687
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】デサンティアゴ, ロレンソ
(72)【発明者】
【氏名】タリー, クレア
(72)【発明者】
【氏名】ウェクスラー-コーエン, ヤエル
(72)【発明者】
【氏名】エイブル, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】コーシック, ラーフル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ, ニティヤ マリアム
(72)【発明者】
【氏名】トラン, カーソン
(72)【発明者】
【氏名】ボール, ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ゴス, モニカ
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194054(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033482(WO,A1)
【文献】特表2011-518110(JP,A)
【文献】特表2014-514345(JP,A)
【文献】特表2013-544763(JP,A)
【文献】特表2016-504040(JP,A)
【文献】特表平11-509525(JP,A)
【文献】特表2013-528183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含む組成物を調製する方法であって、
目的のタンパク質を含む調製物であって、前記タンパク質及び1つ以上の不純物を含む試料を精製プロセスに供した後に得られる調製物を提供する工程と、
最終限外濾過及び透析濾過(UF DF)操作前に前記調製物のpHを目標pHに調整する工程と、
前記目標pHを有する、前記タンパク質を含む組成物を、さらなるpH調整工程を必要とせずに前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得る工程と
を含、方法。
【請求項2】
前記pHは、pH調整剤を使用して調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記pH調整剤は、酸、塩基又は緩衝液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記酸は、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ホウ酸、カンファースルホン酸、クエン酸、カプリル酸、ギ酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、ヒドロキシ酸、ヒアルロン酸、乳酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、スルホン酸、トラネキサム酸及び酒石酸からなる群から選択される;
(b)前記塩基は、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、水酸化カルシウム、エタノールアミン、リシン、メグルミン、ポリリシン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される;あるいは
(c)前記緩衝液は、酢酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液、アスコルビン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、安息香酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、MES緩衝液、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝液、ヒスチジン緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液及び酒石酸緩衝液からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記目標pHは、pH4.0~pH7.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標pHは、pH4.0~pH6.0である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記調製物中の前記タンパク質を目標濃度に濃縮する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮工程は、(a)前記pH調整工程前に又は(b)前記pH調整工程後及び前記最終UF DF操作前に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最終限外濾過及び透析濾過操作は、緩衝液を実質的に含まない媒体を使用して行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を40mg/mL~200mg/mLの濃度で含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記最終限外濾過及び透析濾過操作は、緩衝液を含む媒体を使用して行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記媒体は、緩衝液を2mM~300mMの濃度で含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を1mg/mL~200mg/mLの濃度で含む;
(b)前記媒体は、緩衝液を2mM~10mMの濃度で含み、前記限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を1mg/mL~50mg/mLの濃度で含む;又は
(c)前記媒体は、緩衝液であって、前記緩衝液の緩衝能範囲外のpHにおける緩衝液を含み、前記限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を1mg/mL~50mg/mLの濃度で含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記精製プロセスは、以下の工程:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、深層濾過及び混合モードクロマトグラフィーの1つ以上を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a)前記精製プロセスは、ウイルス濾過工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記ウイルス濾過工程から得られる;
(b)前記精製プロセスは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる;
(c)前記精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる;
(d)前記精製プロセスは、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる;又は
(e)前記精製プロセスは、混合モードクロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記混合モードクロマトグラフィー工程から得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記調製物に安定剤を添加する工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記安定剤は、アミノ酸、糖、ポリオール、抗酸化剤、キレート剤、脂質又は脂質誘導体、塩、ポリマー、不活性タンパク質、界面活性剤及び水混和性共溶媒から選択される1つ以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)前記アミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸、塩酸リシン、プロリン、リシン、サルコシン、ガンマ-アミノ酪酸及びグルタミン酸から選択される1つ以上である;
(b)前記抗酸化剤は、アスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンE及びポリ(エチレンイミン)から選択される1つ以上である;
(c)前記糖は、スクロース、トレハロース、キシリトール、マルトース、デキストロース、グルコース、ラフィノース及びラクトースから選択される1つ以上である;
(d)前記ポリオールは、糖アルコール、グリセロール、エリトリトール、カプリレート、トリプトファネート及びサルコシンから選択される1つ以上である;
(e)前記ポリマーは、ゼラチン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリアクリル酸(PAA)、Amphipol A8-35、PAA5-25C8-40C3、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチル(heta)デンプン、硫酸化多糖、ポリアミノ酸、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン、ポリエチレンイミン(PEI)及びカルボキシメチルセルロースから選択される1つ以上である;
(f)前記不活性タンパク質は、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)及び組換えヒトアルブミン(HA)から選択される1つ以上である;
(g)前記キレート剤は、EDTA、DPTA、クエン酸、六リン酸塩及びチオグリコール酸から選択される1つ以上である;
(h)前記塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、乳酸カルシウム及び塩酸グアニジンから選択される1つ以上である;
(i)前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマー、PEGドデシルエーテル及びPEG tertオクチルフェニルエーテルから選択される1つ以上である;
(j)前記水混和性共溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、及びカンファースルホン酸(CSA)から選択される1つ以上である;あるいは
(k)前記脂質又は脂質誘導体は、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、リン脂質及びリン脂質誘導体、リン酸DEA、セチルリン酸DEA、オレス-10リン酸、オレス-10、マンノシルグリセレート、ポリドカノール、コール酸スルホベタイン及びC12~15アルコールベンゾエートの1つ以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質は、以下のタンパク質:エタネルセプト、アフリベルセプト、アダリムマブ、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、ベバシズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、エクリズマブ、トラスツズマブ、エボロクマブ、デノスマブ、ロモソズマブ、エレヌマブ、ブリナツモマブ及びBiTE抗体コンストラクトのいずれか1つである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記BiTE抗体コンストラクトは、ブリナツモマブ、抗CD33及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗EGFRvIII及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗DLL3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CD19及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗MSLN及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CDH19及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗FLT3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗DLL3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CDH3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CD70及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗PSMA及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト又は抗BCMA及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記限外濾過及び透析濾過操作は、25℃~50℃、25℃~40℃又は30℃~40℃の温度で行われる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記pH調整工程なしで同じ方法によって調製された組成物と比較してより安定である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/656,687号明細書の利益を主張するものであり、それは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、安定なタンパク質組成物を製造する方法に関する。本願は、1つ以上の不純物を除去する精製手順を使用して、目的のタンパク質を精製する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質、例えば抗体を含む治療用タンパク質の効率的且つ経済的な大規模精製は、バイオテクノロジー及び製薬産業にとって一層重要な考慮事項である。タンパク質は、一般に、細胞培養法を使用して、例えば適切な培地中で目的のタンパク質を産生するように遺伝子操作された哺乳動物又は細菌宿主細胞を使用して製造されるため、タンパク質を精製するプロセスには、培地成分及び宿主細胞から不純物を除去するための多くの様々な工程が含まれる。タンパク質を精製するプロセスは、精製下の特定の目的のタンパク質の特性によって変化し得るが、そのプロセスには、一般に、例えば遠心分離法及び/又は濾過法を使用して宿主細胞及び/又は細胞残屑からタンパク質を回収する工程並びに例えば1つ以上のクロマトグラフィー及び/又は濾過法を使用してタンパク質を精製し、種々の不純物をタンパク質から分離する工程が少なくとも含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、タンパク質精製プロセスは、最終限外濾過及び透析濾過(UF DF)操作を含む。多くのタンパク質は、UF DF操作中及び操作後に安定性の問題を経験する。例えば、タンパク質凝集は、UF DF操作後の一般的な問題である。凝集は、精製中のタンパク質が不安定である場合に特に懸念される。結果として、UF DF操作後に測定すると、タンパク質凝集体(例えば、高分子量(HMW)凝集体)は、タンパク質組成物中に存在するか又はその量が増加し得る。しかしながら、UF DF後のタンパク質組成物中の凝集体の存在は、凝集体が精製タンパク質の安定性及び効力に負の影響を及ぼし得るため、望ましくない。UF DF操作中及び操作後のタンパク質凝集を減少させ、安定なタンパク質組成物を製造する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
安定なタンパク質組成物を製造する方法が本明細書で提供される。本願は、UF DF操作前に不安定性を低減するための条件が存在すると、UF DF後の安定なタンパク質組成物(例えば、凝集体が低減されたタンパク質組成物)を得ることができるという驚くべき知見に基づいている。特に、本願は、精製プロセスから得られたタンパク質調製物のpHを最終UF DF操作前に目標pHに調整すると、UF DF操作後にタンパク質を含む安定な組成物が得られるという驚くべき知見に基づいている。本明細書に開示された方法により調製されたタンパク質組成物は、pH調整工程を伴わない同様の方法によって調製されたタンパク質組成物と比較してより高い安定性を有する。
【0006】
一実施形態において、本明細書に開示されるのは、タンパク質を含む組成物を調製する方法であって、目的のタンパク質を含む調製物であって、タンパク質及び1つ以上の不純物を含む試料を精製プロセスに供した後に得られる調製物を提供する工程と、最終限外濾過及び透析濾過操作前に調製物のpHを目標pHに調整する工程と、タンパク質を含む組成物を最終限外濾過及び透析濾過操作から得る工程とを含み、目標pHは、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる、タンパク質を含む組成物のpH又はその近傍である、方法である。一実施形態では、pHは、pH調整剤を使用して調整される。一実施形態では、pH調整剤は、酸、塩基又は緩衝液である。一実施形態では、目標pHは、pH4.0~約pH7.0又はpH4.0~約pH6.0である。
【0007】
一実施形態では、調製物のpHを調整するために使用される酸は、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、カプリル酸、ギ酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、ヒドロキシ酸、ヒアルロン酸、乳酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸又は酒石酸である。別の実施形態では、調製物のpHを調整するために使用される塩基は、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、水酸化カルシウム、エタノールアミン、リシン、ポリリシン、メグルミン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又はトリエタノールアミンである。一実施形態では、調製物のpHを調整するために使用される緩衝液は、酢酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液、アスコルビン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、グリシン緩衝液、炭酸緩衝液、乳酸緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、MES緩衝液、ADA緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液又は安息香酸緩衝液である。
【0008】
一実施形態では、本方法は、調製物中のタンパク質を目標濃度に濃縮する工程をさらに含む。一実施形態では、濃縮工程は、pH調整工程後及び最終UF DF操作前に行われる。別の実施形態では、濃縮工程は、pH調整工程前に行われる。一実施形態では、目標濃度は、約1mg/mL~約50mg/mLであり、別の実施形態では、目標濃度は、約1mg/mL~約200mg/mLであり、別の実施形態では、目標濃度は、約1mg/mL~約250mg/mLであり、別の実施形態では、目標濃度は、約50mg/mL~約200mg/mLであり、別の実施形態では、目標濃度は、約50mg/mL~約250mg/mLである。
【0009】
一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作は、緩衝液を含む媒体を使用して行われ、一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作は、緩衝液を2mM~10mM、2mM~50mM又は2mM~300mMの濃度で含む媒体を使用して行われる。別の実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作は、実質的に緩衝液を含まない培地を使用して行われる。
【0010】
一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、緩衝液を実質的に含まず、且つタンパク質を約40mg/mL~約200mg/mLの濃度で含む。一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、緩衝液を含み、且つタンパク質を約1mg/mL~約200mg/mLの濃度で含む。一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、緩衝液を2mM~約10mMの濃度で含み、且つタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mLの濃度で含む。一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、緩衝液であって、その緩衝液の緩衝能範囲外のpHにおける緩衝液を含み、且つタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mLの濃度で含む。一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、タンパク質を含む医薬製剤である。一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、タンパク質を含む原薬である。一実施形態では、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる組成物は、pH調整工程なしで同じ方法によって調製された組成物と比較してより安定である。
【0011】
一実施形態では、限外濾過及び透析濾過操作は、約25℃~約50℃の温度で行われる。
【0012】
一実施形態では、タンパク質は、遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、深層濾過及び混合モードクロマトグラフィーから選択される1つ以上の工程を含む精製プロセスから得られる。一実施形態では、精製プロセスは、ウイルス濾過工程と、遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF及び深層濾過から選択される1つ以上の工程とを含み、及び調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。
【0013】
一実施形態では、精製プロセスは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、及び調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。一実施形態では、精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、及び調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。一実施形態では、精製プロセスは、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、及び調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる。一実施形態では、精製プロセスは、混合モードクロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、及び調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程から得られる。
【0014】
一実施形態では、本明細書に開示する方法は、調製物に安定剤を添加することをさらに含む。一実施形態では、安定剤は、アミノ酸、糖、ポリオール、抗酸化剤、キレート剤、脂質又は脂質誘導体、塩、ポリマー、不活性タンパク質、界面活性剤及び水混和性共溶媒から選択される1つ以上である。
【0015】
一実施形態では、本明細書に開示する方法において使用することができるタンパク質は、治療用タンパク質である。一実施形態では、タンパク質は、以下のタンパク質のいずれか1つである:エタネルセプト、アフリベルセプト、アダリムマブ、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、ベバシズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、エクリズマブ、トラスツズマブ、エボロクマブ、デノスマブ、ロモソズマブ、エレヌマブ、ブリナツモマブ、抗CD33及び抗CD3 BiTE、抗EGFRvIII及び抗CD3 BiTE、抗DL3及び抗CD3BiTE並びに抗BCMA及び抗CD3 BiTE。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
タンパク質を含む組成物を調製する方法であって、
目的のタンパク質を含む調製物であって、前記タンパク質及び1つ以上の不純物を含む試料を精製プロセスに供した後に得られる調製物を提供する工程と、
最終限外濾過及び透析濾過操作前に前記調製物のpHを目標pHに調整する工程と、
前記タンパク質を含む組成物を前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得る工程と
を含み、前記目標pHは、前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる、前記タンパク質を含む前記組成物のpH又はその近傍である、方法。
(項目2)
前記pHは、pH調整剤を使用して調製される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記pH調整剤は、酸、塩基又は緩衝液である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記酸は、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ホウ酸、カンファースルホン酸、クエン酸、カプリル酸、ギ酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、ヒドロキシ酸、ヒアルロン酸、乳酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、スルホン酸、トラネキサム酸及び酒石酸からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記酸は、乳酸、ヒドロキシ酸及びヒアルロン酸からなる群から選択される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記塩基は、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、水酸化カルシウム、エタノールアミン、リシン、メグルミン、ポリリシン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びトリエタノールアミンからなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記緩衝液は、酢酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液、アスコルビン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、安息香酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、MES緩衝液、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝液、ヒスチジン緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液及び酒石酸緩衝液からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目8)
前記目標pHは、約pH4.0~約pH7.0である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記目標pHは、約pH4.0~約pH6.0である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記調製物中の前記タンパク質を目標濃度に濃縮する工程をさらに含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記濃縮工程は、前記pH調整工程前に行われる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記濃縮工程は、前記pH調整工程後及び前記最終UF DF操作前に行われる、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作は、緩衝液を実質的に含まない媒体を使用して行われる、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を約40mg/mL~約200mg/mLの濃度で含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作は、緩衝液を含む媒体を使用して行われる、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記媒体は、緩衝液を2mM~約300mMの濃度で含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を約1mg/mL~約200mg/mLの濃度で含む、項目15又は16に記載の方法。
(項目18)
前記媒体は、緩衝液を2mM~10mMの濃度で含み、前記限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を約1mg/mL~約50mg/mLの濃度で含む、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記媒体は、緩衝液であって、前記緩衝液の緩衝能範囲外のpHにおける緩衝液を含み、前記限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を約1mg/mL~約50mg/mLの濃度で含む、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記精製プロセスは、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、深層濾過及び混合モードクロマトグラフィーの1つ以上を含む、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記精製プロセスは、ウイルス濾過工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記ウイルス濾過工程から得られる、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記精製プロセスは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記精製プロセスは、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記精製プロセスは、混合モードクロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、TFF、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、SPTFF、ウイルス濾過及び深層濾過の1つ以上とを含み、前記調製物は、前記混合モードクロマトグラフィー工程から得られる、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記調製物に安定剤を添加する工程をさらに含む、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記安定剤は、アミノ酸、糖、ポリオール、抗酸化剤、キレート剤、脂質又は脂質誘導体、塩、ポリマー、不活性タンパク質、界面活性剤及び水混和性共溶媒から選択される1つ以上である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記アミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸、塩酸リシン、プロリン、リシン、サルコシン、ガンマ-アミノ酪酸及びグルタミン酸から選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記抗酸化剤は、アスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンE及びポリ(エチレンイミン)から選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記糖は、スクロース、トレハロース、キシリトール、マルトース、デキストロース、グルコース、ラフィノース及びラクトースから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記ポリオールは、糖アルコール、グリセロール、エリトリトール、カプリレート、トリプトファネート及びサルコシンから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目32)
前記ポリマーは、ゼラチン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリアクリル酸(PAA)、Amphipol A8-35、PAA5-25C8-40C3、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチル(heta)デンプン、硫酸化多糖、ポリアミノ酸、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン、ポリエチレンイミン(PEI)及びカルボキシメチルセルロースから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目33)
前記不活性タンパク質は、HSA、BSA及び組換えHAから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目34)
前記キレート剤は、EDTA、DPTA、クエン酸、六リン酸塩及びチオグリコール酸から選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目35)
前記塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、乳酸カルシウム及び塩酸グアニジンから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目36)
前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマー、PEGドデシルエーテル及びPEG tertオクチルフェニルエーテルから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目37)
前記水混和性共溶媒は、DMSO、DMF、DMA及びCSAから選択される1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目38)
前記脂質又は脂質誘導体は、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、リン脂質及びリン脂質誘導体、リン酸DEA、セチルリン酸DEA、オレス-10リン酸、オレス-10、マンノシルグリセレート、ポリドカノール、コール酸スルホベタイン及びC12~15アルコールベンゾエートの1つ以上である、項目27に記載の方法。
(項目39)
前記タンパク質は、以下のタンパク質:エタネルセプト、アフリベルセプト、アダリムマブ、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、ベバシズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、エクリズマブ、トラスツズマブ、エボロクマブ、デノスマブ、ロモソズマブ、エレヌマブ、ブリナツモマブ及びBiTE抗体コンストラクトのいずれか1つである、項目1~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記BiTE抗体コンストラクトは、ブリナツモマブ、抗CD33及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗EGFRvIII及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗DLL3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CD19及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗MSLN及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CDH19及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗FLT3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗DLL3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CDH3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CD70及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗PSMA及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト又は抗BCMA及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクトである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記限外濾過及び透析濾過操作は、約25℃~約50℃の温度で行われる、項目1~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記限外濾過及び透析濾過操作は、約25℃~約40℃の温度で行われる、項目1~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記限外濾過及び透析濾過操作は、約30℃~約40℃の温度で行われる、項目1~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を含む医薬製剤である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記タンパク質を含む原薬である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる前記組成物は、前記pH調整工程なしで同じ方法によって調製された組成物と比較してより安定である、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1のアッセイにおける、調整したAEX中間体プールの制御された室温(CRT)でのpHの安定性を示す。
図2A図2は、実施例1のアッセイにおける、UF DFプールのpH(A)及び導電率(B)のCRTでの安定性を示す。
図2B図2は、実施例1のアッセイにおける、UF DFプールのpH(A)及び導電率(B)のCRTでの安定性を示す。
図3A図3は、実施例1のアッセイにおいてSAS溶液で製剤化されたエタネルセプトのpH(A)及び導電率(B)の安定性を示す。
図3B図3は、実施例1のアッセイにおいてSAS溶液で製剤化されたエタネルセプトのpH(A)及び導電率(B)の安定性を示す。
図4】VFプールのpH調整時の緩衝化製剤及び緩衝剤非含有製剤におけるUF DF操作後のHMWの量を示す。
図5】pH調整工程及び濃縮工程の4つの製造オプション(オプションA~D)を示す。
図6】4つの製造オプションを使用して調製されたアフリベルセプト組成物のHMW%を示す。
図7】実施例7においてCEX-HPLCによって測定された輸送なしの4℃でのアダリムマブ製剤の酸性ピーク%を示す。
図8】実施例7においてCEX-HPLCによって測定された輸送ありの4℃でのアダリムマブ製剤の酸性ピーク%を示す。
図9】実施例7においてCEX-HPLCによって測定された輸送なしの25℃でのアダリムマブ製剤の酸性ピーク%を示す。
図10】実施例7においてCEX-HPLCによって測定された輸送ありの25℃でのアダリムマブ製剤の酸性ピーク%を示す。
図11】実施例7においてCEX-HPLCによって測定された輸送なしの40℃でのアダリムマブ製剤の酸性ピーク%を示す。
図12】実施例7においてCEX-HPLCによって測定された輸送ありの40℃でのアダリムマブ製剤の酸性ピーク%を示す。
図13】実施例7においてSE-HPLCによって測定された輸送なしの4℃でのアダリムマブ製剤のHMWを示す。
図14】実施例7においてSE-HPLCによって測定された輸送ありの4℃でのアダリムマブ製剤のHMWを示す。
図15】実施例7においてSE-HPLCによって測定された輸送なしの25℃でのアダリムマブ製剤のHMWを示す。
図16】実施例7においてSE-HPLCによって測定された輸送ありの25℃でのアダリムマブ製剤のHMWを示す。
図17】実施例7においてSE-HPLCによって測定された輸送なしの40℃でのアダリムマブ製剤のHMWを示す。
図18】実施例7においてSE-HPLCによって測定された輸送ありの40℃でのアダリムマブ製剤のHMWを示す。
図19】実施例7においてMFIによって測定されたアダリムマブ製剤中の5μMサブビジブル粒子の数を示す。
図20】実施例7においてMFIによって測定されたアダリムマブ製剤中の10μMサブビジブル粒子の数を示す。
図21】実施例7においてMFIによって測定されたアダリムマブ製剤中の25μMサブビジブル粒子の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、安定なタンパク質組成物を製造する方法が提供される。「安定な」タンパク質組成物は、その中のタンパク質が貯蔵時にその物理的安定性、及び/又は化学的安定性、及び/又は生物学的活性を実質的に保持するものである。タンパク質組成物の安定性は、組成物中の高分子量(HMW)凝集体などの凝集タンパク質の存在及び/若しくは割合により、又はタンパク質の分解、例えば酸化及び/若しくは脱アミド化による分解の存在及び/若しくは割合により、又は貯蔵時の組成物のpHのシフトにより決定することができる。例えば、安定なタンパク質組成物は、7%以下、若しくは5%以下、若しくは2%以下、若しくは1.2%以下、若しくは1%以下、若しくは0.8%以下、若しくは0.5%以下のタンパク質凝集体を含み得るか、又は安定なタンパク質組成物は、例えば、酸化及び/若しくは脱アミド化によって検出可能なタンパク質の分解物を含有し得ないか、又は安定なタンパク質組成物は、貯蔵時に0.1pH単位以下若しくは0.2pH単位以下のpH最大シフトを示し得る。
【0018】
タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当技術分野で知られており、且つ利用可能である。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーは、タンパク質凝集体の評価に広く使用されている技術である。例えば、Theory and Practice of Size Exclusion Chromatography for the Analysis of Protein Aggregates,Fekete S.et al.,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,101:161-173(2014)を参照されたい。タンパク質の安定性及び凝集体を分析する方法は、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びAnalysis of Polypeptides and Proteins,Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)にも概説されている。
【0019】
一実施形態において、本明細書で開示する方法は、目的のタンパク質を含む調製物であって、タンパク質及び1つ以上の不純物を含むサンプルを精製プロセスに供した後に得られる調製物を提供する工程と、最終限外濾過及び透析濾過操作前に調製物のpHを目標pHに調整する工程と、タンパク質を含む組成物を最終限外濾過及び透析濾過操作から得る工程とを含み、目標pHは、最終限外濾過及び透析濾過操作から得られる、タンパク質を含む組成物のpH又はその近傍である。
【0020】
目標pH及びpH調整剤
目標pHは、目的のタンパク質が安定であるpH範囲又はpH値である。いくつかの実施形態では、目標pHは、約3~約10、約4.0~約5.0、約4.0~約6.0、約4.0~約7.0、約5.0~約6.0、約6.0~約7.0、約4.2~約5.2、約4.4~約5.4、約4.6~約5.6、約4.8~約5.8、約5.2~約6.2、約5.4~約6.4、約5.6~約6.6、約5.8~約6.8、約4.9~約5.6、約5.0~約5.5、約5.1~約5.4、約5.1~約5.3、約5.1~約5.2、約5.2~約5.3、約6.1~約6.5又は約6.1~約6.3の範囲である。いくつかの実施形態では、目標pHは、約4.0、約4.2、約4.4、約4.6、約4.8、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6.0、約6.2、約6.4、約6.6、約6.8又は約7.0である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、特定の値又は範囲を変更するために使用されるとき、所与の値又は範囲において20パーセント以内、例えば記載された値又は範囲の10パーセント以内、5パーセント以内、4パーセント以内、3パーセント以内、2パーセント以内又は1パーセント以内を含む変動があり得ることを意味すると理解される。
【0022】
本明細書に開示する方法の一実施形態では、pH調整工程は、pH調整剤を使用して行われる。一実施形態では、pH調整剤は、酸であり、一実施形態では、pH調整剤は、塩基であり、一実施形態では、pH調整剤は、緩衝液である。
【0023】
一実施形態では、pH調整剤は、酸である。酸は、目標pHが調製物のpHよりも低い(すなわちより酸性である)場合、調製物のpHの調整に使用され得る。通常、非毒性であり、タンパク質に悪影響を及ぼさない(例えば、タンパク質の安定性に悪影響を及ぼさない)酸がpH調整剤として使用され得る。一実施形態では、酸は、無機酸であり、別の実施形態では、酸は、有機酸である。調製物のpHを調節するために使用され得る酸の非限定的な例としては、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ホウ酸、カンファースルホン酸、クエン酸、カプリル酸、ギ酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、ヒドロキシ酸(アルファ、ベータ及びオメガヒドロキシ酸を含む)、ヒアルロン酸、乳酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、スルホン酸、トラネキサム酸及び酒石酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、酸は、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、乳酸、硫酸、プロピオン酸、酒石酸、ヒドロキシ酸(アルファ、ベータ及びオメガヒドロキシ酸を含む)又はヒアルロン酸である。いくつかの好ましい実施形態では、酸は、乳酸、ヒドロキシ酸(アルファ、ベータ及びオメガヒドロキシ酸を含む)又はヒアルロン酸である。
【0024】
一実施形態では、pH調整剤は、塩基である。塩基は、目標pHが調製物のpHよりも高い(すなわちより塩基性である)場合、調製物のpHの調整に使用され得る。通常、非毒性であり、タンパク質に悪影響を及ぼさない(例えば、タンパク質の安定性に悪影響を及ぼさない)塩基がpH調整剤として使用され得る。一実施形態では、塩基は、無機塩基であり、別の実施形態では、塩基は、有機塩基である。調製物のpHを調整するために使用され得る塩基の非限定的な例としては、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、水酸化カルシウム、エタノールアミン、リシン、メグルミン、ポリリシン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びトリエタノールアミンが挙げられる。一実施形態では、塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。
【0025】
一実施形態では、pH調整剤は、緩衝液である。緩衝液を調製物に添加して、調製物のpHを目標pHに調整し、安定化させるために、緩衝液を添加することができる。緩衝液は、通常、プロトン化状態の変化によって関連する2つの化学種、例えば酸及びその共役塩基又は塩基及びその対応する共役酸を含む。緩衝液又は緩衝能は、緩衝液の特性であり、緩衝液がpHをどの程度良好に維持するかを測定する。緩衝液の緩衝能に影響を及ぼす因子としては、緩衝液の濃度が挙げられ、一般に濃度が高いほど緩衝能が高くなる。さらに、緩衝液は、一般に、対応する酸形態のpKa付近で約±1(1)pH単位である緩衝能範囲を示す。例えば、酢酸のpKaは、約4.8であり、酢酸緩衝液は、およそ約pH3.8~約pH5.8のpH範囲で緩衝能を有する。
【0026】
一般的に、非毒性であり、タンパク質に悪影響を及ぼさない(例えば、タンパク質の安定性に悪影響を及ぼさない)緩衝液がpH調整剤として使用され得る。タンパク質調製物のpHを調節及び/又は維持するために有用な緩衝液は、当技術分野でよく知られている(例えば、A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems,Gueffroy,D.,ed.Calbiochem Corporation(1975);Zbacnik T.J.et al.,Role of Buffers in Protein Formulations,Journal of Pharmaceutical Sciences 106:713-733(2017)。調製物のpHを調整するために使用され得る緩衝液の非限定的な例としては、酢酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液、アスコルビン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、安息香酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、MES緩衝液、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝液、ヒスチジン緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液及び酒石酸緩衝液が挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、pH調整剤は、低い緩衝能を有する緩衝液である。これは、例えば、緩衝液の緩衝能範囲内のpHであるが、低濃度のpHの緩衝液を使用することにより、又は緩衝液の緩衝能範囲外のpH(例えば、緩衝液の対応する酸形態のpKaの1pH単位より大きいpH)の緩衝液を使用することにより達成され得る。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、2mM~20mMの濃度及び緩衝液の緩衝能範囲内のpHの緩衝液である。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、2mM~10mMの濃度及び緩衝液の緩衝能範囲内のpHの緩衝液である。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、緩衝液の緩衝能範囲外のpHの緩衝液である。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、緩衝液の緩衝能範囲外のpH及び2mM~50mMの濃度の緩衝液である。当業者は、低い緩衝能を提供する特定の緩衝液の緩衝液濃度又は濃度範囲を決定することができる。同様に、当業者は、所与の緩衝液の緩衝能範囲及び低緩衝能を提供する範囲外で使用するために適切な緩衝液の量を決定することができる。
【0028】
濃縮工程
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、調製物中のタンパク質を目標濃度に濃縮することをさらに含む。一実施形態では、濃縮工程は、最終UF DF操作前に行われる。一実施形態では、濃縮工程は、pH調整工程前に行われる。一実施形態では、濃縮工程は、pH調整工程後及び最終UF/DF操作前に行われる。一実施形態では、濃縮工程は、最終UF DF操作後に行われる。一実施形態では、本明細書に開示する方法は、まず、最終UF DF操作前に調製物中のタンパク質を中間濃度に濃縮し、且つ最終UF DF操作後にタンパク質を目標濃度にさらに濃縮することをさらに含む。目標濃度は、最終UF DF操作から得られた組成物中のタンパク質の濃度又はその近傍である。
【0029】
タンパク質は、当技術分野で知られた方法を使用して濃縮することができる。タンパク質を濃縮するために使用され得る非限定的な例示的方法としては、限外濾過、遠心力による膜濃縮器(例えば、セルロース膜濃縮器)を使用する濃縮、吸水性材料(例えば、吸水性ポリマー)に対する透析、塩析(例えば、硫酸アンモニウムを使用する)及びクロマトグラフィー法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、濃縮工程の目標濃度は、最終UF DF操作から得られる組成物中のタンパク質の濃度又はその近傍である。いくつかの実施形態では、濃縮工程の目標濃度は、約1mg/mL~約250mg/mL、約1mg/mL~約200mg/mL、約1mg/mL~約50mg/mL、約10mg/mL~約250mg/mL、約10mg/mL~約200mg/mL、約20mg/mL~約200mg/mL、約30mg/mL~約200mg/mL、約40mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約60mg/mL~約200mg/mL、約70mg/mL~約200mg/mL、約80mg/mL~約200mg/mL、約90mg/mL~約200mg/mL、約100mg/mL~約200mg/mL、約110mg/mL~約200mg/mL、約120mg/mL~約200mg/mL、約130mg/mL~約200mg/mL、約140mg/mL~約200mg/mL、約150mg/mL~約200mg/mL、約160mg/mL~約200mg/mL、約170mg/mL~約200mg/mL、約180mg/mL~約200mg/mL又は約190mg/mL~約200mg/mLの範囲である。いくつかの実施形態では、濃縮工程の目標濃度は、約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL又は約200mg/mLである。
【0031】
タンパク質精製プロセス
本明細書に開示する方法のいくつかの実施形態では、pHが調整される調製物は、目的のタンパク質及び1つ以上の不純物を含む試料を精製プロセスに供することによって得られる。目的のタンパク質を精製するプロセスは、細胞採取から最終精製タンパク質までの全てのプロセス工程を包含し、一般的には、種々の不純物をタンパク質から分離するため、宿主細胞及び/又は細胞残屑からタンパク質を回収する工程(例えば、遠心分離法及び/又は濾過法を使用する)と、タンパク質を精製する工程(例えば、1つ以上のクロマトグラフィー法及び/又は濾過法を使用する)とを少なくとも含む。当技術分野で通常使用される精製工程を以下に記載する。
【0032】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、例えば、宿主細胞を使用して、組換え系において産生される。組換え系において、タンパク質は、宿主細胞から増殖培地中に分泌されるか又は細胞内で作られ得る。精製プロセスは、宿主細胞又は細胞培地から目的のタンパク質を回収することから開始される。いくつかの実施形態では、精製プロセスは、宿主細胞から目的のタンパク質を回収するため、以下の工程の1つ以上を含む:遠心分離、精密濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、限外濾過及び透析濾過。例えば、タンパク質が細胞内で産生される場合、第1の工程として、例えば機械的ホモジナイゼーション、浸透圧ショック又は酵素処理によって宿主細胞を溶解し、タンパク質を放出させる。残屑を例えば遠心分離、精密濾過、限外濾過及び/又は透析濾過によって除去する。タンパク質が培地中に分泌される場合、このような発現系からの上清を、まず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon(商標)又はMillipore Pellicon(商標)限外濾過ユニットを使用して濃縮限外濾過及び/又は透析濾過し得る。
【0033】
次いで、宿主細胞から回収されたタンパク質を、当技術分野で知られ且つ使用されている種々の方法、例えばウイルス不活化工程、種々のクロマトグラフィー法及び種々の濾過法を使用して精製する。
【0034】
いくつかの実施形態では、精製プロセスは、例えば、ウイルスを不活化するか又は複製若しくは感染できないようにするウイルス不活化薬剤及び/又は方法を使用することにより、ウイルスを不活化する工程を含む。多くのウイルス不活化剤が当技術分野で知られ且つ使用されている。例えば、Gail Sofer,“Virus Inactivation in the 1990s - and into the 21st Century,Part 4,Culture Media.Biotechnology Products,and Vaccines,”Biopharm International,pp.50-57(2003)を参照されたい。例示的なウイルス不活化方法としては、溶媒/洗浄剤不活化(例えば、Triton X 100による)、低温殺菌(加熱)、酸性pH不活化(例えば、pH3~5において)及び紫外線(UV)不活化が挙げられる。これらの方法の2つ以上を組み合わせて(例えば、高温で酸性pH不活化を行って)、ウイルスを不活化することも可能である。
【0035】
特定の実施形態では、精製プロセスは、アフィニティークロマトグラフィー工程を含む。アフィニティークロマトグラフィーは、目的のタンパク質(例えば、目的のタンパク質を含むFc領域又は抗体)が、標的タンパク質に特異的なリガンドに特異的に結合されるタンパク質分離技術を指す。特定の実施形態では、精製プロセスがアフィニティークロマトグラフィー工程で使用するためのプロテインAベースのアフィニティー樹脂の使用を含む。プロテインAは、天然のプロテインA(スタフィロコッカス・アウレウス(Staph.Aureus)由来)、組換えプロテインA又はその機能的変異体であり得る。使用し得るプロテインA樹脂の例としては、ProSep-vA HC、ProSep Ultra Plus、MabSelect、MabSelect SuRe及び他の市販のアフィニティー樹脂が挙げられる。他のアフィニティーリガンド/樹脂、例えばプロテインG及び他のFc結合タンパク質(例えば、一本鎖ラクダ抗体)を、本明細書に記載の精製方法において利用することができるであろう。目的のタンパク質は、一般に、クロマトグラフィー工程中、リガンドに対するその特異的結合親和性を保持する一方、混合物中の他の不純物は、リガンドに検知できるほどに又は特異的に結合しない。次いで、当技術分野で知られた溶液、例えばアフィニティークロマトグラフィー工程で使用されるアフィニティー樹脂の製造で推奨される溶液を使用して、目的のタンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出する。
【0036】
特定の実施形態では、精製プロセスは、イオン交換クロマトグラフィー工程を含む。イオン交換クロマトグラフィーは、膜イオン交換クロマトグラフィー又はカラムイオン交換クロマトグラフィーであり得る。イオン交換クロマトグラフィーは、それぞれのイオン電荷の差に基づいてタンパク質を分離するものであり、陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含む。陽イオン交換クロマトグラフィー対陰イオン交換クロマトグラフィーの使用は、タンパク質の全電荷に基づく。目的のタンパク質を精製するために、陽イオン交換クロマトグラフィーのみを使用するか、陰イオン交換クロマトグラフィーのみを使用するか、又はこれらの2つの組み合わせを使用するかを決定することは、当業者の能力の範囲内である。いくつかの実施形態では、精製プロセスは、陽イオン交換工程のみを使用する。いくつかの実施形態では、精製プロセスは、陽イオン交換工程のみを使用する。いくつかの実施形態では、精製プロセスは、陽イオン交換工程の使用前に陰イオン交換工程を使用する。いくつかの実施形態では、精製プロセスは、陰イオン交換工程の使用前に陽イオン交換工程を使用する。
【0037】
イオン交換クロマトグラフィーでは、調製物中の目的のタンパク質は、周囲の溶液又は緩衝液のイオン強度が低い場合、クロマトグラフィーマトリックスに付着した反対の電荷に引き付けられる。溶出は、一般に、溶出溶液のイオン強度(すなわち導電率)を増大させて、イオン交換マトリックスの荷電部位で溶質と競合させることによって達成される。調製物の導電率は、例えば、調製物に塩を添加することによって増加させることができる。使用し得る塩は、調製物のpHに依存し、当業者であれば容易に確認することができる。いくつかの実施形態では、添加する塩の量は、25mM~500mM及び100mM~250mMの範囲である。pHを変化させ、それによって目的のタンパク質の電荷を変化させることは、タンパク質を溶出させるための別の方法である。導電率又はpHの変化は、漸進的(勾配溶出)又は段階的(段階的溶出)であり得る。
【0038】
陽イオン交換材料又は樹脂は、商業的供給源から入手可能である。陽イオン交換クロマトグラフィーに好適な非限定的なカチオン性材料としては、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、リン酸(P)、スルホン酸(S)及びMilliporeからのFractogel(登録商標)EMD陽イオン交換材料が挙げられる。DE23(商標)、DE32(商標)、DE52(商標)、CM-23(商標)、CM-32(商標)及びCM-52(商標)などのセルロースイオン交換樹脂は、Whatman Ltd.Maidstone、Kent、U.K.から入手可能である。SEPHADEX(登録商標)ベースの架橋イオン交換体も知られている。例えば、DEAE-、QAE-、CM-及びSP-SEPHADEX(登録商標)、DEAE-、Q-、CM-及びS-SEPHAROSE(登録商標)並びにSEPHAROSE(登録商標)Fast Flowは、全てPharmacia ABから入手可能である。さらに、TOYOPEARL(商標)DEAE-650S又はM及びTOYOPEARL(商標)CM-650S又はMなどのDEAE及びCM誘導エチレングリコール-メタクリレートコポリマーは、いずれもToso Haas Co.,Philadelphia,Paから入手可能である。Fractogel(登録商標)EMD陽イオン交換材料としては、Fractogel(登録商標)EMD SO3-(S)、Fractogel(登録商標)EMD COO-(S)、Fractogel(登録商標)EMD SO3-(M)、Fractogel(登録商標)EMD SE Hicap(M)及びFractogel(登録商標)EMD COO-(M)が挙げられる。
【0039】
陰イオン交換材料又は樹脂は、商業的供給源から入手可能である。陰イオン交換置換基の非限定的な例としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、第四級アミノエチル(QAE)基及び第四級アミン(Q)基が挙げられる。例示的な陰イオン交換材料としては、Milliporeから入手可能なFractogel(登録商標)EMD TMAE(S)、Fractogel(登録商標)EMD DEAE(S)、Fractogel(登録商標)EMDDMAE(S)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE(M)、Fractogel(登録商標)EMD TMAEHicap(M)、Fractogel(登録商標)EMD DEAE(M)、Fractogel(登録商標)EMD DMAE(M)が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、精製プロセスは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を含む。一般に、HICは、抗体凝集体などのタンパク質凝集体及びプロセス関連不純物を除去するのに有用である。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用は、高イオン強度で最も強いため、HICは、塩沈殿又はイオン交換手順後に行われる。多くのHICカラムが市販されている。非限定的な例としては、低置換又は高置換のPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、Sweden)、Phenyl Sepharose(商標)High Performanceカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、Sweden)、Octyl Sepharose(商標)High Performanceカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、Sweden)、Fractogel(商標)EMD Propylカラム又はFractogel(商標)EMD Phenylカラム(E.Merck、Germany);Macro-Prep(商標)Methyl Support又はMacro-Prep(商標)t-Butyl Support(Bio-Rad、California)、WP HI-Propyl(C3)(商標)カラム(J.T.Baker、NewJersey)、Phenyl Sepharose HiSub FF(GE Healthcare)及びToyopearl(商標)エーテル、フェニル又はブチルカラム(TosoHaas、Pa.)が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、精製プロセスは、混合モード又はマルチモードクロマトグラフィー(MMC)を含む。MMCは、溶質が2つ以上の相互作用様式又は機構によって固定相と相互作用するクロマトグラフィー法である。マルチモード機能性リガンドを使用するMMCは、イオン相互作用、水素結合及び疎水性相互作用の組み合わせで目的のタンパク質を吸着することができる。混合モード樹脂は、それらの多重結合相互作用のため、希釈又は他の添加剤なしに比較的高い塩濃度で標的タンパク質を直接捕捉することができる。非限定的な市販の例示的混合モード樹脂としては、GE HealthcareからのCapto MMC、Capto adhere及びCapto Core 700、Pall CorporationからのPPA Hypercel、HEA Hypercel及びMEP Hypercel、Merck MilliporeからのEshmuno HCX、TOSOH BioscienceからのToyopearl MX-Trp-650 M並びにBio-RadからのNuvia cPrime、CHT Ceramic Hydroxyapatite及びCFT Ceramic Fluoroapatiteが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、タンパク質精製プロセスは、限外濾過及び/又は透析濾過工程を含む。限外濾過は、溶媒及び小溶質分子を通過させながら、高分子を保持する半透膜による分離プロセスである。限外濾過プロセスは、当技術分野で知られており、タンパク質精製プロセスにおいて一般に使用されている(例えば、Zeman et al.,Microfiltration and Ultrafiltration:Principles and Applications,Marcel Dekker,Inc.,pp.299-301(1996))。限外濾過を用いて、タンパク質などの微小分子を精製し、濃縮することができる。透析濾過は、限外濾過膜を使用して、タンパク質、ペプチド、核酸及び他の生体分子を含有する溶液から塩又は溶媒の濃度を除去、置換又は低下させる方法である。特定の実施形態では、タンパク質精製プロセスは、宿主細胞から目的のタンパク質を回収する場合、限外濾過及び/又は透析濾過操作を使用する。他の実施形態では、限外濾過及び/又は透析濾過は、精製の最後から2番目又は最後の工程として含む、精製プロセスの他の工程において使用される。限外濾過及び透析濾過工程は、タンパク質を濃縮するため、又は緩衝液を変えるため、又は目的のタンパク質を所望の溶液若しくは所望の緩衝液に配合するために使用され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、タンパク質精製プロセスは、必要に応じて、上記の工程のいずれかの間及び後にウイルス濾過工程を含む。特定の実施形態では、精製プロセスは、ウイルス不活化後、又はアフィニティークロマトグラフィー後、又は陽イオン交換クロマトグラフィー後、又は陰イオン交換クロマトグラフィー後、又はHIC後、又は混合モードクロマトグラフィー後にウイルス濾過工程を含む。特定の実施形態では、精製プロセスは、陽イオン交換クロマトグラフィー前、又は陰イオン交換クロマトグラフィー前、又はHIC前、又は混合モードクロマトグラフィー前にウイルス濾過工程を含む。特定の実施形態では、精製プロセスは、精製の最終工程として又は精製の最後から2番目の工程として、例えば最終限外濾過及び透析濾過操作前にウイルス濾過工程を含む。
【0044】
ウイルス濾過は、適切なフィルターの使用によって達成され得る。ウイルス濾過に好適なフィルターの非限定的例としては、Pall CorporationからのUltipor DV50(商標)フィルター、Viresolve(商標)フィルター(Millipore、Billerica、Mass.)、Zeta Plus VR(商標)フィルター(CUNO;Meriden、Conn.)及びPlanova(商標)フィルター(Asahi Kasei Pharma、Planova Division、Buffalo Grove、Ill.)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ウイルス濾過工程は、プレフィルターを使用する。プレフィルターは、膜、デプスフィルター、クロマトグラフィーカラム又はこれらの組み合わせ(これらに限定されない)を含む任意の構成であり得る。ウイルス濾過に使用できるデプスフィルターの非限定的な例としては、Cuno(商標)モデル30/60ZAデプスフィルター(3M Corp.)及び0.45/0.2μmのSartopore(商標)二層フィルターカートリッジが挙げられる。
【0045】
特定の実施形態では、精製プロセスは、さらなるプロセス工程、例えば製剤化及び/又は濃縮工程を含むことができる。一実施形態では、精製プロセスは、除菌濾過及び/又は絶対濾過をさらに含む。除菌濾過は、通常、全量濾過(NFF)を使用して行われ、この場合、流体流の方向は、フィルター媒体(例えば、膜)コーダーに対して垂直であり、圧力が加えられる。
【0046】
本明細書に開示する方法のいくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、以下の工程の1つ以上を含む精製プロセスから得られる:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、深層濾過及びウイルス濾過。
【0047】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、ウイルス濾過工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)及び深層濾過の1つ以上とを含む精製プロセスから得られ、調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。いくつかの実施形態では、ウイルス濾過工程は、精製工程の最後から2番目の工程であり、調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。いくつかの実施形態では、ウイルス濾過工程は、精製工程の最後の工程であり、調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。
【0048】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、深層濾過及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製プロセスから得られ、調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。
【0049】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、深層濾過及びウイルス濾過工程の1つ以上とを含む精製プロセスから得られ、調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。
【0050】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィーと、以下の工程:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、深層濾過及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製プロセスから得られ、調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる。
【0051】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程と、以下の工程:遠心分離、精密濾過、タンデンシャルフローフィルトレーション(TFF)、ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過、透析濾過、シングルパスタンデンシャルフローフィルトレーション(SPTFF)、深層濾過及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製プロセスから得られ、調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、混合モードクロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程から得られる。
【0052】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、ウイルス濾過工程と、以下の工程:ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及び混合モードクロマトグラフィーの1つ以上とを含む精製工程から得られ、調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。いくつかの実施形態では、ウイルス濾過工程は、精製工程の最後から2番目の工程であり、調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。いくつかの実施形態では、ウイルス濾過工程は、精製工程の最後の工程であり、調製物は、ウイルス濾過工程から得られる。
【0053】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製工程から得られ、調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。
【0054】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と、以下の工程:ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製工程から得られ、調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程から得られる。
【0055】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程と、以下の工程:ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製工程から得られ、調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程から得られる。
【0056】
いくつかの実施形態では、pHを調整する調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程と、以下の工程:ウイルス不活化、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー及びウイルス濾過の1つ以上とを含む精製工程から得られ、調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程から得られる。いくつかの実施形態では、混合モードクロマトグラフィー工程は、精製工程の最後から2番目の工程又は最後の工程であり、調製物は、混合モードクロマトグラフィー工程から得られる。
【0057】
最終限外濾過及び透析濾過(UF DF)操作並びにそれから得られる組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、タンパク質を含む組成物を最終UF DF操作から得る工程を含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、タンパク質を含む原薬(DS)である。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、タンパク質を含む医薬製剤である。換言すれば、最終UF DF操作により、目的のタンパク質がそのタンパク質のための組成物に入れられる。いくつかの実施形態では、本方法は、最終UF DF操作後、除菌工程及び/又は絶対濾過工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作は、pHが調節される調製物が得られる精製プロセスの最後から2番目の工程又は最後の工程である。
【0058】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、目的のタンパク質を約1mg/mL~50mg/ml、約1mg/mL~250mg/mL、about1mg/mL~200mg/mL、約10mg/mL~200mg/mL、約20mg/mL~200mg/mL、約30mg/mL~200mg/mL、約40mg/mL~200mg/mL、約50mg/mL~200mg/mL、約60mg/mL~200mg/mL、約70mg/mL~200mg/mL、約80mg/mL~200mg/mL、約90mg/mL~200mg/mL、約100mg/mL~200mg/mL、約110mg/mL~200mg/mL、約120mg/mL~200mg/mL、約130mg/mL~200mg/mL、約140mg/mL~200mg/mL、約150mg/mL~200mg/mL、約160mg/mL~200mg/mL、約170mg/mL~200mg/mL、約180mg/mL~200mg/mL又は約190mg/mL~200mg/mLの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、目的のタンパク質を約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL又は約200mg/mLの濃度で含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、pH調整工程の目標pH又はその近傍のpH又はpH範囲を有する。目標pH値は、上に開示されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、例えば、組成物のpHを維持するために緩衝液を含む。上に開示した任意の緩衝液が組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、緩衝液を2mM~500mM、2mM~50mM、2mM~10mM、又は約10mM~50mM、又は50mM~500mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、緩衝液を約50mM~約300mM、約60mM~約300mM、約70mM~約300mM、約80mM~約300mM、約90mM~約300mM、約100mM~約300mM、約120mM~約300mM、約140mM~約300mM、約160mM~約300mM、約180mM~約300mM、約200mM~約300mM、約220mM~約300mM又は約250mM~約300mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、緩衝液を2mM、約2.5mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、約50mM、約70mM、約90mM、約100mM、約120mM、約150mM、約170mM、約200mM、約220mM、約250mM、約270mM又は約300mMの濃度で含む。最終UF DF操作から得られる組成物が緩衝液を含む実施形態では、組成物に含まれる目的のタンパク質は、上述した濃度のいずれかであり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、低い緩衝能を有する緩衝液(例えば、低濃度及び緩衝能範囲内のpHの緩衝液又は緩衝能範囲外のpHの緩衝液。例えば、約pH3.8~約pH5.8の緩衝能範囲外のpHの酢酸緩衝液は、低い緩衝能を有し、且つ目的のタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mLの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、2mM~10mMの濃度及び緩衝能の範囲内のpHの緩衝液を含み、且つ目的のタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mL、又は約1mg/mL~約40mg/mL、又は約10mg/mL、又は約20mg/mL、又は約30mg/mL、又は約40mg/mL、又は約50mg/mLの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、2mM~20mMの濃度及び緩衝能の範囲内のpHの緩衝液を含み、且つ目的のタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mL、又は約1mg/mL~約40mg/mL、又は約10mg/mL、又は約20mg/mL、又は約30mg/mL、又は約40mg/mL、又は約50mg/mLの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、緩衝能の範囲外のpH及び2mM~50mMの濃度で緩衝液を含み、且つ目的のタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mL、又は約1mg/mL~約40mg/mL、又は約10mg/mL、v約20mg/mL、又は約30mg/mL、又は約40mg/mL、又は約50mg/mLの濃度で含む。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、緩衝能の範囲外のpH及び2mM~40mMの濃度で緩衝液を含み、且つ目的のタンパク質を約1mg/mL~約50mg/mL、又は約1mg/mL~約40mg/mL、又は約10mg/mL、又は約20mg/mL、又は約30mg/mL、又は約40mg/mL、又は約50mg/mLの濃度で含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作から得られる組成物は、緩衝液を実質的に含まない。このような組成物は、緩衝液非含有組成物とも呼ばれる。「実質的に緩衝液を含まない」又は「実質的に緩衝剤を含まない」という句は、2mM未満、1mM未満、0.5mM未満又は0.25mM未満の標準緩衝液が存在することを指す。このような実施形態では、通常、組成物は、約1mg/mL~約200mg/mLの濃度で目的のタンパク質を含む。好ましくは、組成物は、目的のタンパク質を約40mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約60mg/mL~約200mg/mL、約70mg/mL~約200mg/mL、約80mg/mL~約200mg/mL、約90mg/mL~約200mg/mL、約100mg/mL~約200mg/mL、約110mg/mL~約200mg/mL、約120mg/mL~約200mg/mL、約130mg/mL~約200mg/mL、約140mg/mL~約200mg/mL、約150mg/mL~約200mg/mL、約160mg/mL~約200mg/mL、約170mg/mL~約200mg/mL、約180mg/mL~約200mg/mL若しくは約190mg/mL~約200mg/mLの濃度で含むか、又は組成物は、目的のタンパク質を約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL若しくは約200mg/mLの濃度で含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作は、UF DF操作後、タンパク質を対象とする組成物溶液又は製剤溶液を含む媒体を使用して行われる。例えば、最終UF DF操作から得られる組成物がタンパク質を含む医薬製剤である場合、最終限外濾過及び透析濾過操作は、製剤溶液を使用して行われる。最終UF DF操作から得られる組成物がタンパク質を含むDSである場合、最終UF DF操作は、タンパク質を含有することを意図した組成物溶液を使用して行われる。その結果、最終UF DF操作から得られる組成物が緩衝液を含む実施形態では、最終UF DF操作は、緩衝液を含む媒体(例えば、組成物溶液又は製剤溶液)を使用して行われる。最終UF DF操作から得られる組成物が、緩衝能の低い緩衝液を含む実施形態では、最終UF DF操作は、緩衝能の低い緩衝液(例えば、2mM~10mMの低濃度及び緩衝能範囲内のpHの緩衝液又は緩衝能範囲外のpHの緩衝液)を含む媒体(例えば、組成物溶液又は製剤溶液)を使用して行われる。最終UF DF操作から得られる組成物が緩衝液を実質的に含まない実施形態では、最終UF DF操作は、緩衝液を実質的に含まない媒体(例えば、組成物溶液又は製剤溶液)を使用して行われる。「組成物溶液」又は「製剤溶液」は、それが使用されている文脈から特に明らかでない限り、それ自体では目的のタンパク質を含まないが、タンパク質を含む製剤又は組成物を作製するために使用される溶液である。好適な緩衝液及び緩衝液濃度は、上に開示されている。
【0064】
いくつかの実施形態では、最終UF DF操作は、約20℃~約50℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作は、約25℃~約40℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、最終UF DF操作は、約30℃~約40℃の温度で行われる。
【0065】
安定剤
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、目的のタンパク質の安定性を増加、促進又は維持するために1つ以上の安定化薬剤又は安定剤を調製物に添加する工程を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、アミノ酸、糖、ポリオール、抗酸化剤、キレート剤、脂質若しくは脂質誘導体、塩、ポリマー、不活性タンパク質若しくはポリペプチド、界面活性剤、水混和性共溶媒又はそれらの組み合わせである。本明細書に開示する方法で使用され得るアミノ酸安定剤の非限定的な例としては、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸、塩酸リシン、プロリン、リシン、サルコシン、ガンマ-アミノ酪酸及びグルタミン酸又はアミノ酸を含むジ-及びトリ-ペプチドを含む。抗酸化剤の非限定的な例としては、アスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンE及びポリ(エチレンイミン)が挙げられる。キレート剤の非限定的な例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸、六リン酸塩及びチオグリコール酸が挙げられる。糖の非限定的な例としては、スクロース、トレハロース、キシリトール、マルトース、デキストロース、グルコース、ラフィノース及びラクトースが挙げられる。ポリオールの非限定的な例としては、糖アルコール(例えば、ソルビトール、イノシトール、マンニトール)、グリセロール、エリトリトール、カプリレート、トリプトファネート及びサルコシンが挙げられる。ポリマー及び不活性タンパク質の非限定的な例としては、硫酸プロタミン、ポリガラクトウロン酸、フィチン酸、ポリフマル酸、ポリセバシン酸、PEG-ポリ(リシン)、ポリアスパラギン酸ブロックコポリマー、カルボキシフェノキシプロパン:セバシン酸コポリマー、キトサン、キチン、パルミトイルグリコールキトサン、糖化キトサン、NNN、トリメチルキトサン、クロロゲン酸キトサン、アシル化アミノ酸のポリマー、ポリ(エチルアクリル酸)、ポリ(プロピルアクリル酸)、長鎖アルキルアミン置換ポリ(アクリル酸)、プロテイノイド(修飾アシル化アミノ酸の縮合ポリマー)、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デキストラン硫酸、PEG(例えば、コハク酸PEG)などのコンジュゲーションを有する塩基、ポリロタキサン、ガラクトシル化ポリ(リシン)、アルファ-2-マクログロブリン-ポリ(リシン)、ガラクトシル化ポリ(エチレンイミン)、N-(ベータ-ヒドロキシエチル)-ラクトアミド、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ステリル-ポリ(L-リシン)、ポリ(ホスホエステル)、PEG-トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ラウリン酸スクロース、PEG-酢酸トコフェロール、PEG-コハク酸トコフェロール、ゼラチン、ラクトグロブリン、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)及び組換えHA)、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリアクリル酸(PAA)及びそれらの誘導体(例えば、Amphipol A8-35、PAA5-25C8-40C3、Carbopol(登録商標)934、Carbopol(登録商標)980)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチル(heta)デンプン、硫酸化多糖、ポリアミノ酸、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、シクロデキストリン及びそれらの誘導体(例えば、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン)、ポリエチレンイミン(PEI)並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。塩の非限定的な例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、乳酸塩(例えば、乳酸カルシウム)、ジオレオイルプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、カプリル酸ナトリウム、硫酸コレステロール、硫酸プロタミン及び塩酸グアニジンが挙げられる。脂質及び脂質誘導体の非限定的な例としては、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、リン脂質及びリン脂質誘導体、リン酸DEA、セチルリン酸DEA、オレス10リン酸、オレス-10、マンノシルグリセレート、ポリドカノール、コール酸スルホベタイン及びC12~15アルコールベンゾエートが挙げられる。界面活性剤界面活性剤の非限定的な例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマー(例えば、Pluronic F68及びF127)、PEGドデシルエーテル(例えば、Brij35及びBrij30)及びPEG tert-オクチルフェニルエーテル(例えば、Triton X-100)を含む非イオン界面活性剤が挙げられる。水混和性共溶媒の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)、エタノール、PEG-40ヒマシ油及びカンファースルホン酸(CSA)が挙げられる。本明細書に開示する方法では、上記リストからの1つ以上の安定剤の組み合わせを使用し得る。
【0066】
当業者に理解され得るように、本明細書に開示される安定剤のいくつかは、調製物のpHにも影響を及ぼし得る。例えば、特定のアミノ酸は、酸性(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)又は塩基性(例えば、リシン及びアルギニン)であり、酸又は塩基として機能し得るか、又は対応する塩基又は酸と緩衝液を形成し得る。同様に、本明細書に開示の特定の酸又は塩基は、安定剤としても機能することができ、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、ヒアルロン酸及び乳酸は、安定化特性を有する。
【0067】
特定の実施形態では、1つ以上の安定剤が最終UF DF操作前に添加される。特定の実施形態では、1つ以上の安定剤が最終UF DF操作後に添加される。特定の実施形態では、1つ以上の安定剤が最終UF DF操作前に添加され、その後、安定剤が、UF DF操作後に得られる、目的のタンパク質を含む組成物中に存在しないように、UF DF操作中に(例えば、安定剤を含有しない製剤溶液又は組成物溶液を使用して)除去される。通常、このような安定剤は、UF DF操作前及びUF DF操作中、目的のタンパク質を安定化させることができるが、患者(例えば、ヒト)への投与に適さない(例えば、fda.gov/Drugs/InformationOnDrugs/ucm113978.htmで入手可能なFDAの非活性成分データベースに含まれない)ことがある。
【0068】
タンパク質
本明細書に開示する方法によって調製され得るタンパク質としては、規制当局(例えば、FDA及びEMA)によってヒトの治療用途に認可されているような治療用タンパク質が挙げられる。特定の実施形態では、治療用タンパク質は、治療用抗体であり、例えばキメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体及びドメイン抗体(dAb)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示する方法は、不安定なタンパク質(例えば、治療用タンパク質)を含む組成物の製造に特に有用である。
【0069】
本明細書に開示する方法を用いて調製され得る治療用タンパク質の非限定的な例としては、アフリベルセプト(Eylea(登録商標))、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、エポエチンアルファ(EPOGEN(登録商標))、ペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標))、フィルグラスチム(NEUPOGEN(登録商標))、ダルベポエチンアルファ(Aranesp(登録商標))、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme(登録商標))、IL-2ムテインFc融合タンパク質(AMG592)、ベカプレルミン(REGRANEX(登録商標))、アルテプラーゼ(Activase(登録商標))、ラロニダーゼ(Aldurazyme(登録商標))、アレファセプト(Amevive(登録商標))、インターフェロンベータ-1b(BETASERON(登録商標))、ラスブリカーゼ(Elitek(登録商標))、アスパラギナーゼ(Elspar(登録商標))、アガルシダーゼベータ(Fabrazyme(登録商標))、インターフェロンアルファコン-1(INFERGEN(登録商標))、インターフェロンアルファ-2a(INTRON A(登録商標))、アナキンラ(Kineret(登録商標))、オプレルベキン(NEUMEGA(登録商標))、デニロイキンディフティトックス(Ontak(登録商標))、ペグインターフェロンアルファ-2a(PEGASYS(登録商標))、アルデスロイキン(Proleukin(登録商標))、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme(登録商標))、インターフェロンベータ-1a(Rebif(登録商標))、ベカプレルミン(REGRANEX(登録商標))、レテプラーゼ(Retavase(登録商標))、インターフェロンアルファ-2(Roferon-A(登録商標))、テネクテプラーゼ(TNKase(登録商標))及びドロトレコギンアルファ(Xigris(登録商標))、リロナセプト(ARCALYST(登録商標))、ロミプロスチム(Nplate(登録商標))、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンアルファ(MIRCERA(登録商標))、C1エステラーゼ阻害剤(Cinryze(登録商標))、イデュルスルファーゼ(Elaprase(登録商標))、アルグルコシダーゼアルファ(Myozyme(登録商標))、アバタセプト(ORENCIA(登録商標))、ガルスルファーゼ(Naglazyme(登録商標))、パリフェルミン(Kepivance(登録商標))及びインターフェロンガンマ-1b(ACTIMMUNE(登録商標))が挙げられる。
【0070】
本明細書に開示する方法を用いて調製され得る非限定的な例示的抗体としては、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))、エクリズマブ(Soliris(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、アルシツモマブ(CEA-Scan)、イミシロマブペンテタート(Myoscint(登録商標))、カプロマブペンデチド(ProstaScint(登録商標))、アブシキシマブ(ReoPro(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、パリビズマブ(Synagis(登録商標))、オマリズマブ(Xolair(登録商標))、ダクリズマブ(Zenapax(登録商標))、ムロモナブ-CD3(Orthoclone OKT3(登録商標))、エドレコロマブ(Panorex(登録商標))、ゴリムマブ(Simponi(登録商標))、セルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))、ウステキヌマブ(Stelara(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、パニツムマブ(Victibix(登録商標))、エボロクマブ(Repatha(登録商標))、デノスマブ(Prolia(登録商標))、ロモソズマブ(Eventiy(登録商標))、テゼペルマブ、抗PAC1(脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化1型)受容体抗体(国際公開第2014/144632号パンフレット)、抗IL-15抗体(国際公開第2007/087384号パンフレット)、BAFF及びICOSリガンドを標的とした二重特異性抗体-ペプチド結合体(米国特許第9,458,241号明細書)、c-fmsを阻害し、腫瘍関連マクロファージ(TAM)機能を減少させるヒトモノクローナル抗体(国際公開第2009/026303号パンフレット)、プレザルマブ(国際公開第2007/011941号パンフレット)、エレヌマブ(Aimovig(商標)、国際公開第2010/075238号パンフレット)並びに二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体コンストラクト(例えば、ブリナツモマブ(Blicyto(登録商標))、抗CD33及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗EGFRvIII及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗DLL3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CD19及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗MSLN及び抗CD3BiTE抗体コンストラクト、抗CDH19及び抗CD3BiTE抗体コンストラクト、抗FLT3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗DLL3及び抗CD3BiTE抗体コンストラクト、抗CDH3及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト、抗CD70及び抗CD3BiTE抗体コンストラクト、抗PSMA及び抗CD3BiTE抗体コンストラクト並びに抗BCMA及び抗CD3 BiTE抗体コンストラクト(国際公開第2008/119567号パンフレット及び国際公開第2017/134140号パンフレットに記載))が挙げられる。
【0071】
本明細書に開示する方法は、いくつかの驚くべき良好な特性を有する。例えば、本明細書に開示する方法は、緩衝液非含有タンパク質組成物を作製するための製造プロセスを多段階プロセスから一段階プロセスに単純化し、製造フットプリントを減少させる。さらに、本明細書中に開示する方法によって調製されたタンパク質組成物は、pH調整工程なしで同じ方法によって調製されたタンパク質組成物と比較して向上した安定性(例えば、減少したタンパク質凝集体、減少したタンパク質の分解)を有する。
【0072】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より十分に理解されるであろう。しかしながら、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0073】
実施例1:事前pH調整工程なしでのUF DF操作を用いたエタネルセプト組成物の調製
これらの実施例は、適切なpHを有するタンパク質組成物が事前のpH調整工程なしに最終UF DF操作から得られ得るかどうかを試験する。これらの実施例で使用するタンパク質は、エタネルセプトであった。TMS(トリス、マンニトール、スクロース)中にエタネルセプトを含有する種々の調製物を、製剤溶液SAS_100NaCl及びPASSを使用して試験製剤に交換し、最終pHを目標pHと比較した。
【0074】
材料:エタネルセプト:25mg/mL、TMS(10mMのトリスHCl、4%のマンニトール、1%のスクロース、pH7.4)中;SAS_100NaCl溶液(100mMのNaCl、25mMのL-アルギニンHCl、1%のスクロース、pH6.3);PASS緩衝液(25mMのリン酸塩、100mMのNaCl、25mMのL-アルギニンHCl、1%のスクロース、pH6.3);10,000MWCOのcentriprep;Mettler Toledo MP220 pHメーター及びMettler Toledo InLab MicroProbe。
【0075】
方法:エタネルセプト25mg/mLを含有するTMSを、Millipore Pellicon-2ミニシステム上で30K MWCO Pellicon3カセットを用いて限外濾過により約50mg/mLに濃縮した。その後、この材料をSAS_100NaCl又はPASS溶液に対して7ダイアボリュームで透析濾過し、続いて限外濾過によって100mg/mLまで濃縮した。
【0076】
結果:
結果の概要を下記の表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
結論:pH7.56の交換前溶液から、PASS緩衝液中に試料を限外濾過/透析濾過すると、目標pHである6.34が達成された。しかし、緩衝液を含有しないSAS_100NaCl溶液中に試料を限外濾過/透析濾過した場合、達成されたUF DF後材料のpHは、6.98であり、これは、予想よりも高く、最終目標のpH6.3に近くなかった。
【0079】
上記の結果を考慮して、異なるpHを有する交換前溶液から出発して、特定のpHを有する緩衝液非含有溶液中でタンパク質を製剤化するために、以下の多段階プロセスが開発された:1)緩衝製剤を用いて予想されるpHにUF DFを実施し、2)塩を使用して緩衝液を置換し、3)緩衝液非含有溶液を用いてpHを維持する。
【0080】
実施例2:事前pH調整工程ありでのUF DF操作を用いたエタネルセプト組成物の調製
緒言:目的は、緩衝液を含まないSAS製剤溶液(120mMの塩化ナトリウム、25mMのL-アルギニン、1%のスクロース、pH6.3)にエタネルセプトを製剤化することであった。実施例1は、pH7.56の試料中のエタネルセプトから出発する場合、UF DFを使用して目標pH6.3を達成することが困難であったため、緩衝液なしの製剤溶液にエタネルセプトを製剤化するために多段階プロセスが必要であることを実証したことから、SAS製剤への交換の異なるより単純な方法が必要であった。以下の異なる最終UF DF出発材料を利用した2つの方法を評価した:1)出発材料としてカラム3(AEX)中間体プール、及び2)出発材料として、Enbrel原薬を含有するPASS製剤緩衝液(PASS DS中間体プール)中のEnbrel原薬。それぞれの方法を以下に記載し、50g/LのSAS製剤化エタネルセプトを製造するための最終UF DFユニット操作工程の開発を、SAS製剤溶液の調製、最終UF DFのロード調整及び処理を含めて要約する。
【0081】
方法:SAS製剤溶液は、120mMの塩化ナトリウム、25mMのL-アルギニン、1%のスクロース、pH6.3から構成される。10NのNaOHを用い、SAS製剤溶液をpH6.3まで滴定した。特定のpH範囲に達するのに必要な滴定液の容量は、4.4μL/L-SAS製剤溶液であった。SAS最終UF DFユニット操作の実行中、膜をSAS製剤溶液10L/mで平衡化した後、透過液のpHは、SAS製剤溶液のpHよりもWFIのpHに近い値を維持した。特定の理論に束縛されるものではないが、これは、SAS製剤溶液の緩衝能が低いためであると考えられる。SAS製剤溶液調製の範囲から予測された透過液の膜平衡後の導電率範囲は、12~16mS/cmである。平衡後pHがSAS製剤溶液のpHよりも高いことは、予想されることであり、膜が平衡化されていないことを懸念すべきではないか、又はそれを示すべきものではない。
【0082】
AEX中間体プール出発材料:AEX中間体プールをUF/DFタンクの不透過成分タンクに移す前に、2MのHClを使用して、プールを目標pH6.3(許容範囲6.2~6.4)に調整した。特定のpH範囲に達するのに必要な滴定液の容量は、約2.8mL/L AEX中間体プールであった。
【0083】
出発材料としてAEX中間体プールを使用し、SAS最終UF DFユニット操作工程の開発中に実施した8つの例を表2に示す。以下の2つのパラメータを調べた:調整されたAEX中間体プールのpH及びSAS製剤溶液のpH。最初の3回の実験は、pH、導電率、オスモル濃度、タンパク質濃度及び生成物品質について分析した。実験4~7は、製剤溶液pHの影響及びロードpHのUF DFプールpHに対する影響を決定するために、pH、導電率、オスモル濃度及びタンパク質濃度についてのみ測定した。
【0084】
【表2】
【0085】
結果:出発材料としてAEX中間体プールを用いて生成した最終SAS UF DFプールについての生成物品質結果を表3に示す。実験1の工程収率は、許容基準外であったが、これは、ベンチスケール処理の不自然な結果である可能性が最も高く、研究の結論にとって重要ではないと考えられた。上述したように、3つ全ての最終UF DF SAS実験は、SEC及びHIC分析を使用した生成物品質の許容基準にも適合した。
【0086】
【表3】
【0087】
調整AEX中間体プールの安定性
調整したAEX中間体プールは、制御された室温(CRT)で52.6時間まで保管することができる。保管中のプールのpHを図1に示す。
【0088】
UF/DFプールの安定性
AEX中間体プールを出発材料として使用して生成された最終UF DF SASプールは、CRTで96.3時間まで保管することができる。保管中のpH及び導電率を図2A及び2Bに示す。96.3時間の保管にわたり、pH及び導電率は、許容限界内に留まる。
【0089】
PASS DS中間体プール出発材料:PASS DS中間体プールは、既に許容可能なpH範囲内にあるため、PASS DS中間体プールをUF DFの不透過成分タンクに移す前に調整する必要はない。さらに、出発材料は、50mg/mL PASS製剤化Enbrel DSであり、既に透析濾過を行うのに正しい濃度であるため、プールを50g/Lに濃縮する必要はない。
【0090】
出発材料源を評価するために、SAS最終UF DFユニット操作工程の開発中に行われた一例を表4に示す。この例は、出発材料としてDS PASS中間体プールを利用し、pH、導電率、オスモル濃度、タンパク質濃度及び生成物品質について分析した。
【0091】
【表4】
【0092】
結果:出発材料としてPASS DS中間体プールを用いて生成した最終SAS UF DFプールについての生成物品質結果を表5に示す。実験1の工程収率は、許容基準外であったが、これは、ベンチスケール処理の不自然な結果である可能性が最も高く、研究の結論にとって重要ではないと考えられた。上述したように、最終SAS UF DFプールは、SEC及びHIC分析を使用した生成物品質の許容基準にも適合した。
【0093】
【表5】
【0094】
PASS DS中間体プールの安定性
この中間体プールは、既に目標pH(6.3)にあるため、SAS溶液によるUF DF処理前にこのPASSプールを調整する必要はない。プールの状態は、Enbrel PASS DSから変えられていないため、この中間体プールではプール保管試験を実施しなかった。プールは、25℃で96時間まで保管することができる。
【0095】
UF DFプールの安定性
PASS DS中間体プールを出発材料として生成された最終UF DF SASプールは、CRTで96.3時間まで保管することができる。保管中のpH及び導電率を図2A及び2Bに示す。96.3時間にわたる保管にわたり、pH及び導電率は、許容限界内に留まる。
【0096】
SAS製剤溶液の安定性
SAS製剤溶液は、CRTで28日間まで保管することができる。pH及び導電率を図3A及び3Bに示す。非常に小さいヘッドスペースを有する小規模ステンレス鋼安定性チャンバー内での42日間にわたる保管にわたり、SAS製剤溶液は、pHを5.6~6.5内に維持することが示された。35日目及び42日目の時点で沈殿が観察された。21日目の時点の測定値5.09は、その後の時点では提案された許容基準内にあるという事実から、外れ値のようである。
【0097】
結論:最終UF DF操作前にpH調整工程を組み込むことにより、最終UF DFユニット操作は、50g/LのSAS製剤製品を生成し、出発物質としてAEX中間体プール又はPASS DS中間体プールのいずれかを利用するPASS製剤生成物と比較して一貫した生成物品質を達成することができる。以下の観察もなされた:1)SAS溶液は、CRTで少なくとも28日間保管され、pHを5.6~6.5に保つことができ、2)調整AEX中間体プールは、CRTで少なくとも52.6時間保管され、pHを6.3±0.1に保つことができ、3)SAS製剤化UF DFプールは、CRTで少なくとも96.3時間保管され、pHを6.1~6.5に保ち、導電率を10~14mS/cmに保つことができる。
【0098】
実施例3:単一工程による緩衝液なしのタンパク質製剤の調製
製造目的のために規模を拡大することができる緩衝液非含有製剤を開発するために、上の実施例1で記載した多段階プロセスを改変した。驚くべきことに、緩衝剤非含有製剤化プロセスを3段階プロセスから1段階プロセスに転換することが可能であることがわかった。このアプローチでは、交換前材料(例えば、VFプール材料)を、最終的な製剤pHを予想するためにpH調整し、次いでUF DF操作を使用して製剤溶液に交換する。結果は、塩が存在しないか又は最小である、所望のpHの緩衝剤非含有製剤である。このアプローチは、良好に機能し、UF DF操作後に残留する塩が存在しないか又は最小になることがわかった。
【0099】
実施例1で考察した多段階プロセスと比較して、一段階プロセスは、緩衝液を含まないタンパク質組成物(緩衝液非含有組成物)を作製するために必要な工程数を減少させる。
【0100】
実施例4:UF DF操作前にpHを調整することは、UF DF操作後のタンパク質の凝集を減少させることにつながる
この試験に使用したタンパク質は、アダリムマブであり、ウイルス濾過から得た材料(VFプール材料)を試験の交換前材料として使用した。これらの試験では、VFプール材料のpHを緩衝化製剤及び緩衝剤非含有製剤の調製時にpH5.2の目標pH又はその近傍に調整した(表6を参照されたい)。存在する高分子量種(HMW)の濃度を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いてモニターした。このアッセイのために使用するカラムは、TSK-GEL、G3000SWXL、粒径5μm、サイズ7.8×300mm(Tosoh Bioscience、08541)であり、タンパク質は、波長220nm、流量0.5mL/分で検出する。タンパク質の注入ロード量は、35μgであった。
【0101】
一段階アプローチによるUF DF操作後、最終製剤pHは、目標pHと一致した。この実施例では、最終的に存在する凝集量は、図4に示すように、VFプール材料のpHを調整しなかったUF DFアプローチと比較して減少した。さらに、図4は、VFプール材料のpHを調整せずに調製された同じ試料と比較して、pHを目標pH又はその近傍に調整した、緩衝剤非含有製剤及び緩衝化製剤の両方における凝集の低下を示している。図4に示すように、UF DF工程後の凝集は、VFプール材料のpHを調整せずに得られた凝集のレベルと比較して50%を超えて減少していることに留意されたい。
【0102】
緩衝液非含有製剤の調製のためのUF DFプロセスを3段階から1段階の製造プロセスに変更することに加えて、最終UF DF操作前にpHを目標pHに調整することにより、UF DF後の凝集が減少した。さらに、交換前材料(例えば、VFプール材料)のpHを製剤の目標pH又はその近傍に調整することにより、緩衝化製剤及び緩衝剤非含有製剤の両方をこのような方法で調製することができる。総合すると、緩衝化製剤及び緩衝剤非含有製剤の両方のpHは、このアプローチにおいて維持され、また安定性に対して有益な効果を有することが示された。このような発見は、予想外であり、また驚くべきことであると考えられる。
【0103】
【表6】
【0104】
実施例5:事前pH調整工程ありでのUF DF操作を用いたアフリベルセプト組成物の調製
この実施例の目的は、事前のpH調整工程を伴うUF DF操作によりって、緩衝液を含むか又は含まないアフリベルセプト組成物を調製することであった。製剤A~Fを調製したが、製剤Aのみが緩衝液を含有する。全ての製剤は、pH6.2を有する。
【0105】
CEXカラムを用いて、アフリベルセプトを細胞培養物から100mMの酢酸Na、300mMのNaCl、pH5.0中に3.6mg/mLで精製した。初期の研究で観察された初期調整と緩衝液交換後との間のpHドリフトを考慮するため、初期材料のpHを6.5に調整した。次いで、タンパク質を40mg/mLまで濃縮し、表7に示される製剤と緩衝液交換した。界面活性剤をUF DF後の種々の製剤に添加した。緩衝液交換後のpHを試験し、試料を40℃のストレス条件で最大2週間保存した。緩衝液交換後及び保存中の凝集パターンを分析するために、タンパク質安定性をSE-UHPLCによって試験した。
【0106】
【表7】
【0107】
表8に見られるように、目標pHは、初期の調整と緩衝液交換後との間で0.1pH単位内で得られた。出発DS材料の初期pHをpH6.5に調整したため、製剤AのpHは、初期目標pH6.2ではなく、pH6.4であった。T=0と40℃での2週間の保存後との間の差は、最大0.2pH単位において、品質特性への潜在的な影響の点で有意ではないpHシフトでもあり、試験した全ての製剤について、ストレス条件での保存中、pHが安定なままであることを再び示した。
【0108】
【表8】
【0109】
SE-UHPLC分析の結果を表9に示す。全ての緩衝剤非含有製剤は、塩又は界面活性剤の存在にかかわらず、緩衝剤を含有する製剤(製剤A)と比較してより高い主ピークパーセンテージを示し、凝集の減少又は安定性の向上を実証した。それぞれ界面活性剤を含有及び含有しない製剤B及びF間の凝集レベルを比較すると、同等の主ピークパーセントが観察され、アフリベルセプトの自己緩衝化製剤は、SE-HPLCによるその凝集の観点から、界面活性剤の有無に関わらず安定していることを示す。
【0110】
【表9】
【0111】
実施例6:交換前材料のpHを目標pHに調整し、次いでタンパク質を濃縮することが好ましかった
図5に示す4つのオプション(A、B、C及びDと標識される)により、100mMの酢酸塩、300mMのNaCl、pH5からなる緩衝液中に3.6mg/mLの濃度で配合されたアフリベリセプト出発材料(UF DF工程前の製造の最後の工程から)を、50mLのCentriconチューブを用いて緩衝液中に交換し、UF DFプロセスをシミュレーションした。アプローチAでは、3.6mg/mLの出発材料の15mLアリコートを、1M NaOHを用いて、それぞれpH5.0、5.5、5.8、6.2、6.4及び6.8に調整した。次に、各pH調整溶液を50mLのCentriconチューブ中で約40mg/mLに濃縮した。約40mg/mLのpH調整材料を、緩衝液を含まず、5%のスクロース、3.5%のトレハロースを含有する溶液に初期容量の少なくとも10~20倍でcentricon-緩衝液交換した。初期容量の少なくとも20倍の交換後、pHをチェックし、目標pHと比較した。出発材料を最初に約40mg/mLに濃縮し、次いでpHを1M NaOHを用いてアプローチAに示すレベルに調整したことを除いて、Aと同様のアプローチをBにおいて行った。最後に、centricon-緩衝液交換工程を5%スクロース及び3.5%トレハロースを含有する非緩衝溶液中に初期容量の少なくとも20倍で行った。アプローチCは、濃縮工程及び緩衝液交換工程を40mg/mLではなく、10mg/mLで行ったことを除いて、アプローチAの工程と同一であった。交換工程に続いて、溶液を5%スクロース、3.5%トレハロース溶液中で約40mg/mLに濃縮した。アプローチDは、3.6mg/mLの出発材料でpH6.2にpH調整を行い、次いで濃縮工程を行わずにpH6.2に調整された材料のcentricon-緩衝液交換を行った。初期容量の20倍の交換後、材料を5%スクロース、3.5%トレハロース溶液中で約40mg/mLに濃縮した。アプローチA、B及びCのpH5.0、5.5、5.8、6.2、6.4及び6.8に対し、アプローチDではpH6.2のみが調べられた。
【0112】
アプローチA~Dに記載されるように、5%スクロース、3.5%トレハロース溶液に緩衝液交換し、緩衝液非含有製剤を作製した後、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により安定性を評価し、モニターした高分子量種(HMW)レベルを図6に示す。このアッセイに使用したカラムは、Waters BEH200、4.6×250mm、粒径1.7μmであり、タンパク質は、波長280nm、流量0.4mL/分で検出した。タンパク質の注入ロード量は、60μgであった。図6に示すように、オプションA及びCでは、シミュレーションしたUF DF操作後のHMW%は、より減少した。これは、pH5~6.8の広いpH範囲にわたって示された。規模拡大条件の好ましいオプションとして、オプションAを選択した。
【0113】
実施例7:事前pH調整工程ありでのUF DF操作を用いたアダリムマブ組成物の調製
表10に示すように、いくつかのアダリムマブ製剤(製剤18A~18F)を調製した。表に示すように、乳酸及び水酸化カルシウム又は酢酸及びHClを使用して、UF DF操作前にpHを調整した。
【0114】
【表10】
【0115】
安定性を評価するために、CEX-HPLCにより、0日後、輸送ストレス後並びに4℃、25℃及び40℃で1週間後、2週間後及び4週間後に酸性ピーク%を測定した。結果を図7~12に示す。ゼロ時間において、輸送ストレスを受けた試料は、輸送ストレスを受けなかった同じ試料と比較して同様の量の酸性ピーク%を示した。ゼロ時間で酸性ピーク%の相対量にわずかな差が観察されたが、これらの差は、わずかであり、製剤によって意味があるとは考えられなかった。4℃で1ヶ月間保存した後、わずかな量の見かけの増加のみが観察されたが、これに意味があるとは考えられない。25℃及び40℃で1ヶ月後、塩化カルシウム又は乳酸カルシウムを含有する製剤(製剤18B、18D、18E、18F)で最小の増加率が観察された。
【0116】
安定性は、0日後、輸送後並びに非輸送及び輸送試料を4℃、25℃又は40℃で1、2及び4週間保存した後、SE-HPLCによってHMWSを測定することによっても評価した。結果を図13~18に示す。ゼロ時間において及び4℃で1ヶ月後、9%スクロースを含む乳酸製剤及び7.4%スクロース及び15mM乳酸カルシウムを含む乳酸製剤(製剤18A、18E)において最少量のHMWSが観察される。増加率は、25℃及び40℃の両方でわずかに変化するが、25℃及び40℃で1ヶ月後のHMWSの量は、同じ2つの製剤(18A、18E)において最も少なく、ゼロ時間で最少量のHMWSが確認される。一般的な傾向として、UF DF操作前に乳酸で調整された製剤は、HCl及び酢酸で調整された製剤よりもHMWSが少量であった。同様に、乳酸緩衝製剤は、一般的により安定である。
【0117】
安定性は、非輸送及び輸送された試料中のMFIによる5μM、10μM及び25μMのサブビジブル粒子の数を測定することによっても評価した。粒子は、少なくとも5.000の円相当径及び0.700未満のアスペクト比を示した。結果を図19~21に示す。5μm未満の粒径について、全ての製剤で数が少なかった。さらに、輸送ストレス時、製剤18A、18E及び18Fにおいて、粒子の有意な増加は、観察されなかった。粒径<10μm及び<25μmでは、粒子数が少なかったか、又は粒子が検出されなかった。
【0118】
実施例8:乳酸の安定化効果
アダリムマブを含有するVFプール材料のpHを、UF DF操作前に塩酸又は乳酸のいずれかを用いてpH5.2の目標pH又はその近傍に調整した。UF DF操作後、アダリムマブを、以下の表11に示すような所望の組成溶液に交換する。アダリムマブ組成物中に存在する高分子量種(HMW)の濃度を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いてモニターした。このアッセイのために使用するカラムは、TSK-GEL、G3000SWXL、粒径5μm、サイズ7.8×300mm(Tosoh Bioscience、08541)であり、タンパク質は、波長220nm、流量0.5mL/分で検出する。タンパク質の注入ロード量は、35μgであった。
【0119】
表11に示すように、乳酸を用いたpH調整は、HMWのレベルを低下させ、乳酸の安定化効果を示した。
【0120】
【表11】
【0121】
本願に引用される全ての参照文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21