IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロッテ ケミカル コーポレイションの特許一覧

特許7465216熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造された成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20240403BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L51/04
C08K3/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020567507
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 KR2019006977
(87)【国際公開番号】W WO2020004830
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0075315
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ,ユン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨン チュル
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070884(JP,A)
【文献】特開2018-070881(JP,A)
【文献】特開平11-035787(JP,A)
【文献】特開平10-036620(JP,A)
【文献】特開2002-146149(JP,A)
【文献】国際公開第2004/046243(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036043(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103665614(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/04
C08L 25/12
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体15~35重量%、アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体1~10重量%、および芳香族ビニル系共重合体樹脂64~84重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部;ならびに
平均粒子径が0.5~3μmであり、比表面積BETが1m/g~10m/gである酸化亜鉛0.1~5重量部;を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であって、
前記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ジエン系ゴム質重合体30~60重量%に芳香族ビニル系単量体40~90重量%およびシアン化ビニル系単量体10~60重量%を含む単量体混合物40~70重量%がグラフト重合された重合体であり、
前記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、平均粒径が200~500nmであるアクリレート系ゴム質重合体30~60重量%に芳香族ビニル系単量体40~90重量%およびシアン化ビニル系単量体10~60重量%を含む単量体混合物40~70重量%がグラフト重合された重合体であり、
前記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、芳香族ビニル系単量体30~80重量%およびシアン化ビニル系単量体20~70重量%の重合体であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体と前記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体との重量比は3:1~10:1であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化亜鉛は、フォトルミネッセンス(Photo Luminescence)の測定時、370~390nm領域のピークAと450~600nm領域のピークBとの大きさの比(B/A)が0.01~1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸化亜鉛は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)の分析時、ピーク位置2θの値が35~37゜の範囲であり、下記式1による微小結晶の大きさが1,000~2,000Åであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数1】

前記式1において、Kは形状係数であり、λはX線波長であり、βはX線回折ピークのFWHM値であり、θはピーク位置の値である。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物は、50mm×90mm×3mmの大きさの射出試験片に対して色差計で初期色相(L 、a 、b )を測定し、前記射出試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後で色相(L 、a 、b )を測定し、下記式2によって算出した色相変化(ΔE)が1~2であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数2】

前記式2において、ΔLは曝露前後のL値の差(L -L )であり、Δaは曝露前後のa値の差(a -a )であり、Δbは曝露前後のb値の差(b -b )である。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式3によって算出したノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率が70%以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数3】

前記式3において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、前記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式4によって算出した引張強度維持率が60%以上であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数4】

前記式4において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、前記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式5によって算出したノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率が50%以上であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数5】

前記式5において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、前記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式6によって算出した引張強度維持率が80%以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数6】

前記式6において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、前記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が10~30kgf・cm/cm(98~294J/m)であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の引張強度が500~600kgf/cm(49~58.8MPa)であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造された成形品に関する。より具体的には、本発明は、耐候性、耐衝撃性、剛性、難燃性、抗菌性などに優れた熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)などのゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂は、機械的物性、加工性、外観特性などに優れ、電気/電子製品の内/外装材、自動車の内/外装材、建築用外装材などに広く使用されている。
【0003】
しかし、これらのゴム変性芳香族スチレン系共重合体樹脂で製造された製品においては、使用時間の経過と共に、黄変現象、亀裂、機械的物性の低下などが発生するおそれがあり、表面に各種菌が繁殖するおそれがあるので、製品を屋外環境で使用することが困難であった。
【0004】
したがって、耐候性、耐衝撃性、剛性、難燃性、抗菌性などに優れた熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【0005】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第2017-0103726号公報などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐候性、耐衝撃性、剛性、難燃性、抗菌性などに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品を提供することにある。
【0008】
本発明の前記目的およびその他の目的は、下記で説明する本発明によって全て達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関する。前記熱可塑性樹脂組成物は、ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体約15~約35重量%、アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体約1~約10重量%、および芳香族ビニル系共重合体樹脂約64~約84重量%を含む熱可塑性樹脂約100重量部;および平均粒子径が約0.5~約3μmであり、比表面積BETが約1~約10m/gである酸化亜鉛約0.1~約5重量部;を含む。
【0010】
2.前記1の具体例において、前記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体と前記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体との重量比は、約3:1~約10:1であってもよい。
【0011】
3.前記1または2の具体例において、前記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたものであってもよい。
【0012】
4.前記1~3の具体例において、前記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、平均粒径が約200~約500nmであるアクリレート系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたものであってもよい。
【0013】
5.前記1~4の具体例において、前記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、芳香族ビニル系単量体および前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体の重合体であってもよい。
【0014】
6.前記1~5の具体例において、前記酸化亜鉛は、フォトルミネッセンス(Photo Luminescence)の測定時、370~390nm領域のピークAと450~600nm領域のピークBとの大きさの比(B/A)が、約0.01~約1であってもよい。
【0015】
7.前記1~6の具体例において、前記酸化亜鉛は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)の分析時、ピーク位置2θの値が35~37゜の範囲であり、下記式1による微小結晶の大きさが、約1,000~約2,000Åであってもよい:
【0016】
【数1】
【0017】
前記式1において、Kは形状係数であり、λはX線波長であり、βはX線回折ピークのFWHM値であり、θはピーク位置の値である。
【0018】
8.前記1~7の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、50mm×90mm×3mmの大きさの射出試験片に対して色差計で初期色相(L 、a 、b )を測定し、前記射出試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後で色相(L 、a 、b )を測定し、下記式2に基づいて算出した色相変化(ΔE)が約1~約2であってもよい:
【0019】
【数2】
【0020】
前記式2において、ΔLは曝露前後のL値の差(L -L )であり、Δaは曝露前後のa値の差(a -a )であり、Δbは曝露前後のb値の差(b -b )である。
【0021】
9.前記1~8の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式3によって算出したノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率が約70%以上であってもよい:
【0022】
【数3】
【0023】
前記式3において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、前記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【0024】
10.前記1~9の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式4によって算出した引張強度維持率が、約60%以上であってもよい:
【0025】
【数4】
【0026】
前記式3において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、前記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【0027】
11.前記1~10の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式5に基づいて算出したノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率が約50%以上であってもよい:
【0028】
【数5】
【0029】
前記式5において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、前記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【0030】
12.前記1~11の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、下記式6に基づいて算出した引張強度維持率が約80%以上であってもよい:
【0031】
【数6】
【0032】
前記式6において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、前記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【0033】
13.前記1~12の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が約10~約30kgf・cm/cmであってもよい。
【0034】
14.前記1~13の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の引張強度が約500~約600kgf/cmであってもよい。
【0035】
15.本発明の他の観点は成形品に関する。前記成形品は、前記1~14のいずれか一つによる熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、耐候性、耐衝撃性、剛性、難燃性、抗菌性などに優れた熱可塑性樹脂組成物およびこれから形成された成形品を提供するという発明の効果を有する。
【0037】
発明を実施するための最良の形態
以下では、本発明を詳細に説明する。
【0038】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(A1)ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、(A2)アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、および(A3)芳香族ビニル系共重合体樹脂を含む(A)熱可塑性樹脂;ならびに(B)酸化亜鉛;を含む。
【0039】
本明細書において、数値の範囲を示す「a~b」は「≧aで、≦b」と定義する。
【0040】
(A)熱可塑性樹脂
本発明の熱可塑性樹脂は、(A1)ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、(A2)アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、および(A3)芳香族ビニル系共重合体樹脂を含むゴム変性ビニル系共重合体樹脂であってもよい。
【0041】
(A1)ジエン系ゴム変性芳香族ビニル系グラフト共重合体
本発明の一具体例に係るジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性((低温)耐衝撃性、剛性など)を向上できるものであって、ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたものであってもよい。例えば、上記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合して得ることができ、必要に応じて、上記単量体混合物に加工性や耐熱性を付与する単量体をさらに含ませてグラフト重合することができる。上記重合は、乳化重合、懸濁重合などの公知の重合方法によって行われ得る。また、上記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、コア(ゴム質重合体)-シェル(単量体混合物の共重合体)構造を形成することができる。
【0042】
具体例において、上記ジエン系ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)などの通常のゴム変性ビニル系グラフト共重合体に使用されるジエン系ゴムを使用してもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
具体例において、前記ジエン系ゴム質重合体(ゴム粒子)は、粒度分析機で測定した平均粒子径(Z-平均)が約0.05~約6μm、例えば、約0.15~約4μm、具体的には、約0.25~約3.5μmであってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、外観特性などが優秀になり得る。ここで、前記ゴム質重合体(ゴム粒子)の平均粒子径(Z-平均)は、ラテックス(latex)状態で光散乱(light scattering)方法を用いて測定することができる。具体的には、ゴム質重合体ラテックスをメッシュにろ過し、ゴム質重合体の重合中に発生する凝固物を除去し、ラテックス0.5gおよび蒸留水30mlを混合した溶液を1,000mlのフラスコに注ぎ、蒸留水を満たし試料を製造した後、試料10mlを石英セルに移し、これに対して、光散乱粒度測定機(Malvern社、nano-zs)でゴム質重合体の平均粒子径(Z-平均)を測定することができる。
【0044】
具体例において、上記ジエン系ゴム質重合体の含有量は、ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の全体100重量%のうち、約20~約70重量%、例えば、約30~約60重量%であってもよく、上記単量体混合物(芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む)の含有量は、ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の全体100重量%のうち、約30~約80重量%、例えば、約40~約70重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の外観特性、加工性、耐衝撃性などが優秀になり得る。
【0045】
具体例において、上記芳香族ビニル系単量体は、上記ゴム質重合体にグラフト共重合可能なものであって、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどを例示することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。上記芳香族ビニル系単量体の含有量は、上記単量体混合物の全体100重量%のうち、約10~約90重量%、例えば、約40~約90重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の加工性、耐衝撃性などが優秀になり得る。
【0046】
具体例において、上記シアン化ビニル系単量体は、上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能なものであって、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリルなどを例示することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。例えば、上記シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを使用してもよい。上記シアン化ビニル系単量体の含有量は、上記単量体混合物100重量%中、約10~約90重量%、例えば、約10~約60重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性、機械的特性などが優秀になり得る。
【0047】
具体例において、上記加工性や耐熱性を付与するための単量体としては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミドなどを例示できるが、これらに限定されない。上記加工性や耐熱性を付与するための単量体を使用する場合、その含有量は、上記単量体混合物100重量%中、約15重量%以下、例えば、約0.1~約10重量%であってもよい。上記範囲では、他の物性が低下することなく、熱可塑性樹脂組成物に加工性や耐熱性を付与することができる。
【0048】
具体例において、上記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体としては、ブタジエンゴム質重合体にスチレンおよびアクリロニトリルがグラフト重合されたアクリロニトリル-スチレン-ブタジエングラフト共重合体(g-ABS)などを例示することができる。
【0049】
具体例において、上記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体(A1)は、全体の熱可塑性樹脂(A)100重量%のうち、約15~約35重量%、例えば、約17~約30重量%で含まれてもよい。上記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の含有量が約15重量%未満である場合には、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性、成形加工性、耐薬品性などが低下するおそれがあり、約35重量%を超える場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、成形加工性、難燃性などが低下するおそれがある。
【0050】
(A2)アクリレート系ゴム変性芳香族ビニル系グラフト共重合体
本発明の一具体例に係るアクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、耐衝撃性などを向上できるものであって、アクリレート系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたものであってもよい。例えば、上記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、アクリレート系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合して得ることができ、必要に応じて、上記単量体混合物に加工性や耐熱性を付与する単量体をさらに含ませてグラフト重合することができる。上記重合は、乳化重合、懸濁重合などの公知の重合方法によって行われ得る。また、前記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、コア(ゴム質重合体)-シェル(単量体混合物の共重合体)構造を形成することができる。
【0051】
具体例において、上記アクリレート系ゴム質重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートゴム、アルキル(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニル系化合物の共重合体などを例示することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。例えば、炭素数2~10のアルキルアクリレートゴム、炭素数2~10のアルキルアクリレートおよびスチレンの共重合体、これらの組み合わせなどが使用されてもよく、具体的には、ブチルアクリレートゴム、ブチルアクリレートおよびスチレンの共重合体、これらの組み合わせなどが使用されてもよい。ここで、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニル系化合物の共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート約70~約90重量%、および芳香族ビニル系化合物約10~約30重量%が重合されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0052】
具体例において、上記アクリレート系ゴム質重合体(ゴム粒子)は、粒度分析装置(Malvern DLS装置(Nano ZS))で測定した平均粒子径(Z-平均)が約200~約500nm、例えば、約250~約400nmであってもよい。ここで、上記ゴム質重合体(ゴム粒子)の平均粒子径(Z-平均)は、ラテックス状態で光散乱法を用いて測定することができる。具体的には、ゴム質重合体ラテックスをメッシュにろ過し、ゴム質重合体の重合中に発生する凝固物を除去し、ラテックス0.5gおよび蒸留水30mlを混合した溶液を1,000mlのフラスコに注ぎ、蒸留水を満たすことによって試料を製造した後、試料10mlを石英セルに移し、これに対して、光散乱粒度測定装置(Malvern社、nano-zs)を用いてゴム質重合体の平均粒子径(Z-平均)を測定することができる。
【0053】
具体例において、上記アクリレート系ゴム質重合体の含有量は、アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の全体100重量%のうち、約20~約70重量%、例えば、約30~約60重量%であってもよく、上記単量体混合物(芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む)の含有量は、アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の全体100重量%のうち、約30~約80重量%、例えば、約40~約70重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、外観特性、耐衝撃性などが優秀になり得る。
【0054】
具体例において、上記芳香族ビニル系単量体は、前記ゴム質重合体にグラフト共重合することができるものであって、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどを例示することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。上記芳香族ビニル系単量体の含有量は、上記単量体混合物100重量%中、約10~約90重量%、例えば、約40~約90重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の加工性、耐衝撃性などが優秀になり得る。
【0055】
具体例において、上記シアン化ビニル系単量体は、上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能なものであって、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリルなどを例示することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを使用してもよい。上記シアン化ビニル系単量体の含有量は、上記単量体混合物100重量%中、約10~約90重量%、例えば、約10~約60重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性、機械的特性などが優秀になり得る。
【0056】
具体例において、上記加工性や耐熱性を付与するための単量体としては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミドなどを例示できるが、これらに限定されない。上記加工性や耐熱性を付与するための単量体を使用する場合、その含有量は、上記単量体混合物100重量%中、約15重量%以下、例えば、約0.1~約10重量%であってもよい。上記範囲では、他の物性が低下することなく、熱可塑性樹脂組成物に加工性や耐熱性を付与することができる。
【0057】
具体例において、上記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体としては、アルキルアクリレートゴム質重合体にスチレンおよびアクリロニトリルがグラフト重合されたアクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体(g-ASA)などを例示することができる。
【0058】
具体例において、上記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体(A2)は、全体の熱可塑性樹脂(A)100重量%中、約1~約10重量%、例えば、約3~約7重量%で含まれてもよい。上記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の含有量が約1重量%未満である場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、耐薬品性などが低下するおそれがあり、約10重量%を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の低温耐衝撃性、着色性などが低下するおそれがある。
【0059】
具体例において、上記ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体と上記アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体との重量比(A1:A2)は、約3:1~約10:1、例えば、約3:1~約6:1であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、機械的物性、成形加工性などが優秀になり得る。
【0060】
(A3)芳香族ビニル系共重合体樹脂
本発明の一具体例に係る芳香族ビニル系共重合体樹脂は、通常のゴム変性ビニル系共重合体樹脂に使用される芳香族ビニル系共重合体樹脂であってもよい。例えば、上記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、芳香族ビニル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体などの上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体を含む単量体混合物の重合体であってもよい。
【0061】
具体例において、上記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、芳香族ビニル系単量体、および芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体などを混合した後、これを重合して得ることができ、上記重合は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などの公知の重合方法によって行われ得る。
【0062】
具体例において、上記芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどを使用してもよい。これらは、単独でもまたは2種以上を混合して使用されてもよい。上記芳香族ビニル系単量体の含有量は、芳香族ビニル系共重合体樹脂の全体100重量%中、約20~約90重量%、例えば、約30~約80重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性などが優秀になり得る。
【0063】
具体例において、上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体などを使用してもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体の含有量は、芳香族ビニル系共重合体樹脂の全体100重量%中、約10~約80重量%、例えば、約20~約70重量%であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性などが優秀になり得る。
【0064】
具体例において、上記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、GPC(gel permeation chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)が約10,000~約300,000g/mol、例えば、約15,000~約150,000g/molであってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度、成形性などが優秀になり得る。
【0065】
具体例において、上記芳香族ビニル系共重合体樹脂(A3)は、全体の熱可塑性樹脂(A)100重量%中、約64~約84重量%、例えば、約65~約80重量%で含まれてもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の外観特性、流動性(成形加工性)、耐候性、機械的物性、これらの物性バランスなどが優秀になり得る。
【0066】
(B)酸化亜鉛
本発明の酸化亜鉛は、特定の含有量のジエン系およびアクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体と共に、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、抗菌性、耐衝撃性、難燃性などを向上できるものであって、粒度分析装置(ベックマン・コールター株式会社、レーザー回折式粒度分布測定装置(Laser Diffraction Particle Size Analyzer) LS I3 320装置)を用いて測定した単一粒子(粒子が固まって2次粒子を形成しない)の平均粒子径(D50)が約0.5~約3μm、例えば、約0.8~約3μmであってもよい。また、上記酸化亜鉛は、窒素ガス吸着法を用いてBET分析装置(Micromeritics社、表面積および細孔分布測定装置(Surface Area and Porosity Analyzer) ASAP 2020装置)で測定した比表面積BETが約1~約10m/g、例えば、約1~約7m/gであってもよく、純度が約99%以上であってもよい。上記範囲を外れた場合、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、抗菌性などが低下するおそれがある。
【0067】
具体例において、上記酸化亜鉛は、多様な形態を有することができ、例えば、球状、プレート状、棒状、これらの組み合わせなどを全て含み得る。
【0068】
具体例において、上記酸化亜鉛は、フォトルミネッセンスの測定時、370~390nm領域のピークAと450~600nm領域のピークBとの大きさの比(B/A)が約0.01~約1.0、例えば、約0.1~約1.0、具体的には、約0.1~約0.5であってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、抗菌性、耐衝撃性などが優秀になり得る。
【0069】
具体例において、上記酸化亜鉛は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)の分析時、ピーク位置2θの値が35~37゜の範囲であり、測定されたFWHM値(回折ピークの半値全幅(Full width at Half Maximum))を基準にしてシェラーの式(Scherrer’s equation)(下記式1)に適用して演算された微小結晶の大きさが約1,000~約2,000Å、例えば、約1,200~約1,800Åであってもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の初期色相、耐候性、抗菌性などが優秀になり得る。
【0070】
【数7】
【0071】
上記式1において、Kは形状係数であり、λはX線波長であり、βはFWHM値であり、θはピーク位置の値である。
【0072】
具体例において、上記酸化亜鉛は、金属形態の亜鉛を溶かした後、約850~約1,000℃、例えば、約900~約950℃に加熱して蒸気化させ、酸素ガスを注入して約20~約30℃に冷却した後、約400~約900℃、例えば、約500~約800℃で約30~約150分、例えば、約60~約120分間加熱して製造することができる。
【0073】
具体例において、上記酸化亜鉛(B)は、上記熱可塑性樹脂(A)約100重量部に対して、約0.1~約5重量部、例えば、約0.3~約3重量部、具体的には、約0.5~約2重量部で含まれてもよい。上記酸化亜鉛の含有量が上記熱可塑性樹脂約100重量部に対して約0.1重量部未満である場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、抗菌性などが低下するおそれがあり、約5重量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、機械的物性などが低下するおそれがある。
【0074】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐候性を向上させるために、ヒンダードアミン系光安定剤(hindered amine light stabilizer:HALS)などの耐候安定剤をさらに含んでもよい。
【0075】
具体例において、上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-2-ピペリジル)セバケート、これらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0076】
具体例において、上記ヒンダードアミン系光安定剤は、上記熱可塑性樹脂約100重量部に対して、約0.05~約5重量部、例えば、約0.1~約3重量部、具体的には、約0.3~約2重量部で含まれてもよい。上記範囲では、熱可塑性樹脂組成物の耐候性などが優秀になり得る。
【0077】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれる添加剤をさらに含んでもよい。上記添加剤としては、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、滴下防止剤、滑剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、顔料、染料、これらの混合物などを例示できるが、これらに制限されない。上記添加剤を使用する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂約100重量部に対して約0.001~約40重量部、例えば、約0.1~約10重量部であってもよい。
【0078】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記構成成分を混合し、通常の二軸押出機を用いて約200~約280℃、例えば、約220~約250℃で溶融・押出しを行ったペレット状であってもよい。
【0079】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、50mm×90mm×3mmの大きさの射出試験片に対して色差計(spectrophotometer、メーカー:コニカミノルタ株式会社、装置名:CM-3700A)で初期色相(L 、a 、b )を測定し、上記射出試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後で色相(L 、a 、b )を測定し、下記式2によって算出した色相変化(ΔE)が約1~約2、例えば、約1.2~約1.8であってもよい。
【0080】
【数8】
【0081】
上記式2において、ΔLは曝露前後のL値の差(L -L )であり、Δaは曝露前後のa値の差(a -a )であり、Δbは曝露前後のb値の差(b -b )である。
【0082】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、下記式3によって算出したノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率が約70%以上、例えば、約70~約90%であってもよい。
【0083】
【数9】
【0084】
上記式3において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、上記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【0085】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、下記式4によって算出した引張強度維持率が約60%以上、例えば、約70~約90%であってもよい:
【0086】
【数10】
【0087】
上記式4において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、上記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【0088】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、下記式5によって算出したノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率が約50%以上、例えば、約70~約80%であってもよい。
【0089】
【数11】
【0090】
上記式5において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、上記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【0091】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、下記式6によって算出した引張強度維持率が約80%以上、例えば、約80~約95%であってもよい。
【0092】
【数12】
【0093】
上記式6において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、上記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【0094】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が約10~約30kgf・cm/cm、例えば、約12~約20kgf・cm/cmであってもよい。
【0095】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の引張強度が約500~約600kgf/cm、例えば、約500~約570kgf/cmあってもよい。
【0096】
本発明に係る成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物から形成される。上記熱可塑性樹脂組成物は、ペレット状に製造可能であり、製造されたペレットは、射出成形、押出成形、真空成形、キャスティング成形などの多様な成形方法を通じて多様な成形品(製品)に製造され得る。このような成形方法は、本発明の属する分野で通常の知識を有する者によく知られている。上記成形品は、屋外環境で使用が可能な程度に耐候性に優れ(UL 746Cのf1条件(紫外線曝露(UV exposure)および浸水テスト(water immersion test)合格)満足)、耐衝撃性、剛性、難燃性、抗菌性、流動性(成形加工性)、これらの物性バランスなどに優れるので、電気/電子製品の内/外装材などとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものとして解釈してはならない。
【0098】
実施例
以下、実施例および比較例で使用された各成分の仕様を説明する。
【0099】
(A)熱可塑性樹脂
下記表2および表3に記載した含有量で、(A1)ジエン系ゴム変性芳香族ビニル系グラフト共重合体、(A2)アクリレート系ゴム変性芳香族ビニル系グラフト共重合体、および(A3)芳香族ビニル系共重合体樹脂を混合したゴム変性ビニル系共重合体樹脂を使用した。
【0100】
(A1)ジエン系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
55重量%の平均粒子径が200nmであるブタジエンゴムに45重量%のスチレンおよびアクリロニトリル(重量比:75/25)がグラフト共重合されたg-ABSを使用した。
【0101】
(A2)アクリレート系ゴム変性芳香族ビニル系グラフト共重合体
50重量%の平均粒子径が400nmであるブチルアクリレートゴムに50重量%のスチレンおよびアクリロニトリル(重量比:75/25)がグラフト共重合されたg-ASAを使用した。
【0102】
(A3)芳香族ビニル系共重合体樹脂
スチレン71重量%およびアクリロニトリル29重量%が重合されたSAN樹脂(重量平均分子量:130,000g/mol)を使用した。
【0103】
(B)酸化亜鉛
(B1)金属形態の亜鉛を溶かし、900℃に加熱して蒸気化させた後、酸素ガスを注入し、常温(25℃)に冷却することによって1次中間物を得た。次に、該1次中間物を700℃で90分間熱処理した後、常温(25℃)に冷却して製造した酸化亜鉛を使用した。
【0104】
(B2)酸化亜鉛(メーカー:Ristecbiz Co.,Ltd.、製品名:RZ-950)を使用した。
【0105】
(B3)酸化亜鉛(メーカー:Hanil Chemical Ind.Co.,Ltd.、製品名:TE30)を使用した。
【0106】
下記表1には、酸化亜鉛(B1、B2およびB3)の平均粒子径、比表面積BET、純度、フォトルミネッセンスの測定時、370~390nm領域のピークAと450~600nm領域のピークBとの大きさの比(B/A)、および微小結晶の大きさの値を示した。
【0107】
【表1】
【0108】
物性測定方法
(1)平均粒子径(単位:μm):粒度分析装置(ベックマン・コールター株式会社、レーザー回折式粒度分布測定装置(Laser Diffraction Particle Size Analyzer) LS I3 320装置)を用いて平均粒子径(体積平均)を測定した。
【0109】
(2)比表面積BET(単位:m/g):窒素ガス吸着法を用いてBET分析装置(Micromeritics社、表面積および細孔分布測定装置(Surface Area and Porosity Analyzer) ASAP 2020装置)で比表面積BETを測定した。
【0110】
(3)純度(単位:%):TGA熱分析法を用いて、800℃の温度で残留する重さにより純度を測定した。
【0111】
(4)PLの大きさの比(B/A):フォトルミネッセンス測定法によって、室温で325nm波長のHe-Cdレーザー(株式会社金門光波、30mW)を試験片に入射したときに発光されるスペクトルを、CCD検出器を用いて検出し、このとき、CCD検出器の温度は-70℃に維持した。そして、370~390nm領域のピークAと450~600nm領域のピークBとの大きさの比(B/A)を測定した。ここで、射出試験片に対しては別途の処理を施さず、レーザーを試験片に入射させることによってPL分析を行い、酸化亜鉛粉末は、6mmの直径のペレタイザー(pelletizer)に入れて圧着し、試験片を平らに製作した後で測定した。
【0112】
(5)微小結晶の大きさ(単位:Å):高分解能X-線回折分析装置(High Resolution X-Ray Diffractometer)、メーカー:X'pert社、装置名:PRO-MRD)を使用し、ピーク位置2θの値が35~37゜の範囲であり、測定されたFWHM値(回折ピークの半値全幅)を基準にしてシェラーの式(下記式1)に適用して演算した。ここで、粉末形態および射出試験片のいずれも測定が可能であり、さらに正確な分析のために、射出試験片の場合は、600℃、エア状態で2時間熱処理し、高分子樹脂を除去した後、XRD分析を行った。
【0113】
【数13】
【0114】
上記式1において、Kは形状係数であり、λはX線波長であり、βはFWHM値であり、θはピーク位置の値である。
【0115】
実施例1~実施例5および比較例1~比較例6
上記各構成成分を下記表2および表3に記載した含有量で添加した後、230℃で押出しを行うことによってペレットを製造した。押出しは、L/D=36、直径45mmの二軸押出機を用いて行い、製造されたペレットは80℃で2時間以上乾燥した後、6Oz射出機(成形温度:230℃、金型温度:60℃)で射出して試験片を製造した。製造された試験片に対して下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表2および表3に示した。
【0116】
物性測定方法
(1)耐候性(耐変色性)評価(色相変化(ΔE)):50mm×90mm×3mmの大きさの射出試験片に対して色差計(spectrophotometer、メーカー:コニカミノルタ株式会社、装置名:CM-3700A)を用いて初期色相(L 、a 、b )を測定し、前記射出試験片をASTM G155に基づいて1000時間曝露した後で色相(L 、a 、b )を測定し、下記式2によって色相変化(ΔE)を算出した。
【0117】
【数14】
【0118】
上記式2において、ΔLは曝露前後のL値の差(L -L )であり、Δaは曝露前後のa値の差(a -a )であり、Δbは曝露前後のb値の差(b -b )である。
【0119】
(2)耐候性および耐衝撃性評価(紫外線曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率(単位:%)):下記式3によってノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率を算出した。
【0120】
【数15】
【0121】
上記式3において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、上記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【0122】
(3)耐候性および剛性評価(紫外線曝露後の引張強度維持率(単位:%)):下記式4によって引張強度維持率を算出した。
【0123】
【数16】
【0124】
上記式4において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、前記試験片をASTM G155に基づいて1,000時間曝露した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【0125】
(4)耐候性および耐衝撃性評価(水浸評価後のノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率(単位:%)):下記式5によってノッチ付きアイゾット衝撃強度維持率を算出した。
【0126】
【数17】
【0127】
上記式5において、IZは、ASTM D256に基づいて測定した1/8”厚の試験片の初期ノッチ付きアイゾット衝撃強度であり、IZは、前記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D256に基づいて測定した曝露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度である。
【0128】
(3)耐候性および剛性評価(水浸評価後の引張強度維持率(単位:%)):下記式6によって引張強度維持率を算出した。
【0129】
【数18】
【0130】
上記式6において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した3.2mm厚の試験片の初期引張強度であり、TSは、前記試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、ASTM D638に基づいて5mm/minの条件で測定した曝露後の引張強度である。
【0131】
(4)難燃性評価:UL-94垂直試験方法で1.5mm厚の試験片の難燃性を測定した。
【0132】
(5)難燃性評価(水浸評価後の難燃性):1.5mm厚の試験片を70±1℃の脱イオン水に7日間浸漬し、123±2℃の脱イオン水に30分間浸漬した後、UL-94垂直試験方法で難燃性を測定した。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
上記結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐候性、耐衝撃性、剛性、難燃性などに全て優れることが分かる。
【0136】
その一方で、アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体を少量適用した比較例1の場合は、耐候性(耐変色性、水浸評価後の難燃性など)などが低下したことが分かり、アクリレート系ゴム変性ビニル系グラフト共重合体を過量適用した比較例2の場合は、耐候性(紫外線曝露後の機械的物性、水浸評価後の難燃性など)などが低下したことが分かる。また、本発明の酸化亜鉛(B1)の代わりに酸化亜鉛(B2)および酸化亜鉛(B3)を使用したり、酸化亜鉛を使用しなかったりした比較例3~比較例5の場合は、耐候性(耐変色性、水浸評価後の難燃性など)などが低下したことが分かり、本発明の酸化亜鉛を過量使用した比較例6の場合は、耐候性(紫外線曝露後の機械的物性、水浸評価後の難燃性など)などが低下したことが分かる。
【0137】
本発明の単純な変形および変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。