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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】磁気ヘッド及び磁気記録装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20240403BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 E
G11B5/02 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021028527
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129729
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕治
(72)【発明者】
【氏名】成田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】高岸 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】永澤 鶴美
(72)【発明者】
【氏名】首藤 浩文
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-149737(JP,A)
【文献】特開2012-119027(JP,A)
【文献】特開2014-130672(JP,A)
【文献】特開2013-048000(JP,A)
【文献】特開2013-222485(JP,A)
【文献】特開2012-014791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第2磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁層との間に設けられた第3非磁性層と、
前記第2磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第4非磁性層と、
を含み、
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さよりも厚く、
前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さは、前記第2厚さよりも厚
前記第3厚さは、前記第1厚さの0.7倍以上1.7倍以下であり、
前記第1磁性層の第1磁化及び前記第3磁性層の第3磁化は、発振する、磁気ヘッド。
【請求項2】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第2磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁層との間に設けられた第3非磁性層と、
前記第2磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第4非磁性層と、
を含み、
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さよりも厚く、
前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さは、前記第2厚さよりも厚
前記第3厚さは、前記第1厚さの0.7倍以上1.7倍以下であり、
前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きの電流が前記積層体に供給されたときに、前記第1磁性層の第1磁化、及び、前記第3磁性層の第3磁化は、互いに逆位相で回転する、磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1厚さは、5nm以上15nm以下である、請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第3厚さは、5nm以上15nm以下である、請求項1~のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第2磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁層との間に設けられた第3非磁性層と、
前記第2磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第4非磁性層と、
を含み、
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さよりも厚く、
前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さは、前記第2厚さよりも厚
前記第3厚さは、前記第1厚さの0.7倍以上1.7倍以下であり、
前記第1厚さは、5nm以上15nm以下であり、
前記第3厚さは、5nm以上15nm以下である、磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第1非磁性層は、前記第1磁性層及び前記第1磁極と接し、
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第1磁性層と接し、
前記第3非磁性層は、前記第3磁性層及び前記第2磁性層と接し、
前記第4非磁性層は、前記第2磁極及び前記第3磁性層と接した、請求項1~5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記第1非磁性層は、Cu、Au、Cr、Al、V及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第4非磁性層は、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記第3非磁性層は、Cu、Au、Cr、Al、V及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項7に記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
第1端子と、第2端子と、をさらに備え、
前記第1端子は、前記積層体の一部と電気的に接続され、
前記第2端子は、前記積層体の他部と電気的に接続され、
前記第1端子と前記第2端子との間に電流が供給可能である、請求項1~のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
電気回路と、
を備え、
前記電気回路は、前記積層体に電流を供給可能であり、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
【請求項11】
前記電気回路が、前記積層体に電流を供給したときに、
前記積層体から交流磁界が生じる、請求項10に記載の磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ヘッド及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを用いて、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記録媒体に情報が記録される。磁気ヘッド及び磁気記録装置において、記録密度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-277586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気ヘッドは、第1磁極と、第2磁極と、前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、を含む。前記積層体は、第1磁性層と、前記第2磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、前記第2磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、前記第1磁性層と前記第1磁極との間に設けられた第1非磁性層と、前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、前記第3磁性層と前記第2磁層との間に設けられた第3非磁性層と、前記第2磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第4非磁性層と、を含む。前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さよりも厚い。前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さは、前記第2厚さよりも厚い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1(a)及び図1(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図3図3は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図4図4(a)~図4(c)は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図6図6は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図9図9は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図10図10は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図11図11は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図12図12は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図1(a)は、断面図である。図1(b)は、図1(a)の矢印AR1から見た平面図である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図2に示すように、実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド110と、電気回路20Dと、を含む。磁気記録装置210は、磁気記録媒体80を含んでも良い。磁気記録装置210において、少なくとも記録動作が行われる。記録動作において、磁気ヘッド110を用いて磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0009】
磁気ヘッド110は、記録部60を含む。後述するように、磁気ヘッド110は、再生部を含んでも良い。記録部60は、第1磁極31と、第2磁極32と、積層体20と、を含む。積層体20は、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。
【0010】
例えば、第1磁極31及び第2磁極32は、磁気回路を形成する。第1磁極31は、例えば、主磁極である。第2磁極32は、例えば、トレーリングシールドである。第1磁極31がトレーリングシールドで、第2磁極32が主磁極でも良い。
【0011】
磁気記録媒体80から磁気ヘッド110への方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。Z軸方向は、例えばハイト方向に対応する。X軸方向は、例えば、ダウントラック方向に対応する。Y軸方向は、例えば、クロストラック方向に対応する。ダウントラック方向に沿って、磁気記録媒体80と磁気ヘッド110とが相対的に移動する。磁気記録媒体80の所望の位置に、磁気ヘッド110から生じる磁界(記録磁界)が印加される。磁気記録媒体80の所望の位置の磁化が、記録磁界に応じた方向に制御される。これにより、磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0012】
第1磁極31から第2磁極32への方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、実質的にX軸方向に沿う。実施形態において、第1方向D1は、X軸方向に対して、小さい角度で傾斜しても良い。
【0013】
図2に示すように、コイル30cが設けられる。この例では、コイル30cの一部は、第1磁極31と第2磁極32との間にある。この例では、シールド33が設けられている。X軸方向において、シールド33と第2磁極32との間に第1磁極31がある。コイル30cの別の一部が、シールド33と第1磁極31との間にある。これらの複数の要素の間に、絶縁部30iが設けられる。シールド33は、例えば、リーディングシールドである。磁気ヘッド110は、サイドシールド(図示しない)を含んでも良い。
【0014】
図2に示すように、記録回路30Dから、コイル30cに記録電流Iwが供給される。第1磁極31から、記録電流Iwに応じた記録磁界が磁気記録媒体80に印加される。
【0015】
図2に示すように、第1磁極31は、媒体対向面30Fを含む。媒体対向面30Fは、例えば、ABS(Air Bearing Surface)である。媒体対向面30Fは、例えば、磁気記録媒体80に対向する。媒体対向面30Fは、例えば、X-Y平面に沿う。
【0016】
図2に示すように、電気回路20Dが、積層体20に電気的に接続される。この例では、積層体20は、第1磁極31及び第2磁極32と電気的に接続される。磁気ヘッド110に、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、第1配線W1及び第1磁極31を介して積層体20と電気的に接続される。第2端子T2は、第2配線W2及び第2磁極32を介して積層体20と電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流(例えば、直流電流)が積層体20に供給される。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に示すように、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42、第3非磁性層43及び第4非磁性層44を含む。図1(a)及び図1(b)においては、絶縁部30iは省略されている。
【0018】
第1磁性層21は、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。第2磁性層22は、第2磁極32と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第2磁極32と第2磁性層22との間に設けられる。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第1磁極31との間に設けられる。第2非磁性層42は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第3非磁性層43は、第3磁性層23と第2磁層22との間に設けられる。第4非磁性層44は、第2磁極32と第3磁性層23との間に設けられる。
【0019】
例えば、第1非磁性層41は、第1磁性層21及び第1磁極31と接して良い。第2非磁性層42は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接して良い。第3非磁性層43は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接して良い。第4非磁性層42は、第2磁極32及び第3磁性層23と接して良い。
【0020】
第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23は、Fe、Co及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つ含む第1元素を含む。これらの磁性層は、例えば、FeCo合金などを含んで良い。
【0021】
第1非磁性層41は、例えば、Cu、Au、Cr、Al、V及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第4非磁性層44は、例えば、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このように、積層体20において、第1非磁性層41及び第4非磁性層44は非対称である。
【0022】
第3非磁性層43は、例えば、Cu、Au、Cr、Al、V及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含んで良い。第2非磁性層42は、例えば、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含んで良い。このように、積層体20において、第3非磁性層43と第2非磁性層42は非対称で良い。
【0023】
図1(b)に示すように、このような積層体20に電流icが供給される。電流icは、例えば、上記の電気回路20Dから供給される。図1(b)に示すように、電流icは、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。図1(b)に示すように、電流icに伴う電子流jeは、第2磁性層22から第1磁性層21への向きを有する。電流icの向きは、第1磁極31から第2磁極32への向きである。
【0024】
例えば、しきい値以上の電流icが積層体20を流れることで、積層体20に含まれる磁性層の磁化が発振する。積層体20は、例えばSTO(Spin-Torque Oscillator)として機能する。発振に伴い、積層体20から交流磁界(例えば高周波磁界)が発生する。積層体20で発生した交流磁界が磁気記録媒体80に印加され、磁気記録媒体80への書き込みがアシストされる。例えば、MAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)が実施可能である。
【0025】
磁気ヘッド110においては、第1磁性層21及び第3磁性層23は、例えば、発振層として機能する。例えば、第1磁性層21の磁化、及び、第3磁性層23の磁化は、逆位相(例えば、逆向きを保った状態)で回転する。第2磁性層22は、例えば、スピン注入層として機能する。動作中において、第2磁性層22の磁化の向きは、変化可能である。
【0026】
図1(b)に示すように、第1方向D1(第1磁極31から第2磁極32への方向)に沿う第1磁性層21の厚さを第1厚さt1とする。第1方向D1に沿う第2磁性層22の厚さを第2厚さt2とする。第1方向D1に沿う第3磁性層23の厚さを第3厚さt3とする。実施形態において、第1厚さt1は、第2厚さt2よりも厚い。第3厚さt3は、第2厚さt2よりも厚い。これにより、後述するように、発振が得やすくなる。
【0027】
第1方向D1に沿う第1非磁性層41の厚さを厚さt41とする。第1方向D1に沿う第2非磁性層42の厚さを厚さt42とする。第1方向D1に沿う第3非磁性層43の厚さを厚さt43とする。第1方向D1に沿う第4非磁性層44の厚さを厚さt44とする。これらの厚さは、例えば、0.5nm以上6nm以下である。これらの厚さが0.5nm以上であることにより、例えば、磁気的な結合を小さくし易い。例えば、高い発振強度が得易い。これらの厚さが6nm以下であることにより、例えば、スピン透過率が高くなりやすい。例えば、高い発振強度が得易い。例えば、記録ギャップを小さくできる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0028】
以下、積層体20における発振の挙動についてのシミュレーション結果の例について説明する。シミュレーションの第1モデルにおいて、図1(b)に示す構成が設けられる。すなわち、第1磁極31、第2磁極32、第1~第3磁性層21~23、及び、第1~第4非磁性層41~44が設けられる。第1、第3磁性層21、23の物性値として、Fe70Co30合金の物性値が用いられる。第1厚さt1は、6.5nmである。第3厚さt3は、6.5nmである。第2厚さt2は、3nmである。第2磁性層22の物性値として、FeNi合金の物性値が用いられる。この例では、FeNi合金は、Fe78Ni22である。このように、第1モデルにおいては、第1厚さt1及び第3厚さt3は、第2厚さt2よりも厚い。第1非磁性層41及び第3非磁性層43の物性値としてCuの物性値が用いられる。第2非磁性層42及び第4非磁性層44の物性値としてTaの物性値が用いられる。厚さt41~t44は、2nmである。
【0029】
シミュレーションの第2モデルにおいて、第1磁極31、第2磁極32、第1~第3磁性層21~23、及び、第1~第4非磁性層41~44が設けられる。第1厚さt1は、6.5nmである。第2厚さt2は、6.5nmである。第3厚さt3は、3nmである。第1、第2磁性層21、22の物性値として、Fe70Co30合金の物性値が用いられる。第3磁性層23の物性値として、Fe78Ni22合金の物性値が用いられる。このように、第2モデルにおいては、第1厚さt1及び第2厚さt2は、第3厚さt3よりも厚い。第2モデルにおけるこれ以外の構成は、第1モデルと同様である。第2モデルにおいては、第1磁性層21及び第2磁性層22は、例えば、発振層として機能する。
【0030】
これらのモデルにおいて、図1(b)に例示する電流icが供給されたときの磁化の発振特性がシミュレーションされる。
【0031】
図3は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図3の横軸は電流ic(相対値)である。縦軸は、発振強度OSである。発振強度OSは、シミュレーションの第1モデルにおいては、第1磁性層21の磁化の振動の振幅と第1厚さt1との積と、第3磁性層23の磁化の振動の振幅と第3厚さt3との積と、の和である。シミュレーションの第2モデルにおいては、第1磁性層21の磁化の振動の振幅と第1厚さt1との積と、第2磁性層22の磁化の振動の振幅と第2厚さt2との積と、の和である。発振強度OSが高い場合に、例えば、MAMRによる記録密度が向上し易い。
【0032】
図3に示すように、電流icが小さい領域において、第1モデルMD1の発振強度OSは、第2モデルMD2の発振強度OSよりも高い。このように、第1厚さt1及び第3厚さt3が第2厚さt2よりも厚いことで、高い発振強度OSが得られることが分かった。例えば、第1モデルMD1では、発振状態において、第2磁性層22の磁化と第3磁性層の磁化とが第1方向に関して同じ向きの成分を有する。例えば、第2モデルMD2では、発振状態において、第2磁性層22の磁化と第3磁性層の磁化とが第1方向に関して異なる向きを有する。このような違いが、発振強度OSの違いに関係している可能性がある。例えば、第2モデルMD2では、第2磁性層22の磁化と第3磁性層の磁化とが第1方向に関して異なる向きを有するための電流が必要であることが、発振強度OSの違いに関係していると考えられる。
【0033】
実施形態によれば、例えば、高い発振強度OSが得られる。より安定した発振が得られる。実施形態によれば、安定したMAMRが実施できる。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドを提供できる。
【0034】
図4(a)~図4(c)は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図4(a)の横軸は、第1厚さt1である。図4(a)において、第2厚さt2は、3nmであり、第3厚さt3は、12nmである。図4(b)の横軸は、第2厚さt2である。図4(b)において、第1厚さt1は、8nmであり、第3厚さt3は、8nmである。図4(c)の横軸は、第3厚さt3である。図4(c)において、第1厚さt1は、12nmであり、第2厚さt2は、3nmである。これらの図において、積層体20に供給される電流icは、1.2×10A/cmである。これらの図の縦軸は、発振強度OSである。
【0035】
図4(a)に示すように、第1厚さt1は、5nm以上15nm以下であることが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。
【0036】
図4(c)に示すように、第3厚さt3は、5nm以上15nm以下であることが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。
【0037】
図4(b)に示すように、第2厚さt2が1nmから10nmの範囲において、発振強度OSは実質的に変化しない。このため、第2厚さt2は薄くて良い。例えば、第2厚さt2は、5nm以下でよい。第2厚さt2が薄いことで、積層体20の厚さが薄くなる。例えば、第1磁極31と第2磁極32との間の距離(記録ギャップ)が小さくできる。これにより、高い記録密度が得易くなる。例えば、第2厚さt2は、3nm以下でも良い。例えば、第2厚さt2は、2nm以下でも良い。
【0038】
図5(a)及び図5(b)は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図5(a)の横軸は、比RR3である。比RR3は、第3厚さt3の第1厚さt1に対する比である。図5(b)の横軸は、比RR2である。比RR2は、第2厚さt2の第1厚さt1に対する比である。図5(a)において、比RR2は、0.3である。図5(b)において、比RR3は、1である。
【0039】
図5(a)に示すように、比RR3は、1に近いことが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。例えば、第3厚さt3は、第1厚さt1の0.7倍以上1.7倍以下であることが好ましい。例えば、第3厚さt3は、第1厚さt1の0.6倍以上1.25倍以下でも良い。高い発振強度OSが得られる。
【0040】
図5(b)に示すように、比RR2が0.2~1.3の範囲において、発振強度OSは実質的に変化しない。比RR2は、低いことが好ましい。記録ギャップを小さくし易い。例えば、第2厚さt2は、例えば、第1厚さt1の0.7倍以下であることが好ましい。第2厚さt2は、例えば、第1厚さt1の0.5倍以下でも良い。第2厚さt2は、例えば、第3厚さt3の0.7倍以下であることが好ましい。第2厚さt2は、例えば、第3厚さt3の0.5倍以下でも良い。例えば、記録ギャップを小さくし易い。例えば、高い記録密度が得やすい。
【0041】
上記のように、第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23は、Fe、Co及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つ含む第1元素を含む。実施形態において、第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を実質的に含まない。または、第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23における第2元素の濃度は、10atm%未満である。例えば、第1~第3磁性層21~23は、例えば、正の分極を有する。このような磁性層において、安定した発振が得やすい。
【0042】
図6は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図6の横軸は時間tmである。縦軸は、磁化Mz(規格化値)である。図6には、第1磁性層21の第1磁化Mz1と、第2磁性層22の第2磁化Mz2と、第3磁性層23の磁化Mz3と、に関する例が示されている。図6に示すように、第1磁性層21から第2磁性層22への向きの電流icが積層体20に供給されたときに、第1磁化Mz1及び第3磁化Mz3は、逆位相(例えば、逆向きを保った状態)で回転する。図6には、第2磁性層22の第2磁化Mz2も例示されている。この例では、第2磁化Mz2も回転する。第2磁化Mz2の位相は、第1磁化Mz1の位相とは異なり、第3磁化Mz3の位相とは異なる。第2磁化Mz2の周期は、第1磁化Mz1の周期と同じであり、第3磁化Mz3の周期と同じである。
【0043】
図7(a)及び図7(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
これらの図は、積層体20に電流ixが供給され、コイル30cに記録電流Iwが供給されているときの磁気ヘッド110の特性の例を示している。この場合、第1磁極31及び第2磁極32の少なくともいずれかから記録磁界が生じている。記録磁界の一部が積層体20に印加されている。電流ixの向きは、図1(c)に例示した電流icの向きとは逆である。電流ixの向きは、第2磁性層22から第1磁性層21への向きを有する。電流ixは、負の電流である。
【0044】
図7(a)及び図7(b)の横軸は、積層体20に供給される電流ixである。電流ixは、相対的な値により示されている。図7(a)の縦軸は、積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaである。時間的な平均により、例えば、ノイズなどの影響も抑制される。図7(b)の縦軸は、電流ixの絶対値を減少したときの積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値の変化率Rxdである。
【0045】
図7(a)に示すように、第1電流ix1において、積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaは、第1抵抗Rxa1である。第2電流ix2において、平均値Rxaは、第2抵抗Rxa2である。第3電流ix3において、平均値Rxaは、第3抵抗Rxa3である。第1電流ix1の絶対値は、第2電流ix2の絶対値よりも大きく、第3電流ix3の絶対値よりも小さい。第1抵抗Rxa1は、第2抵抗Rxa2よりも高く、第3抵抗Rxa3よりも低い。
【0046】
図7(b)に示すように、第1電流ix1において、電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaの変化率Rxdは、第1変化率Rxd1である。第2電流ix2において、変化率Rxdは、第2変化率Rxd2である。第3電流ix3において、変化率Rxdは、第3変化率Rxd3である。第1変化率Rxd1の絶対値は、第2変化率Rxd2の絶対値よりも大きく、第3変化率Rxd3の絶対値よりも大きい。第2変化率Rxd2の絶対値は、第3変化率Rxd3よりも小さくても良い。
【0047】
図7(a)に示すように、第4電流ix4において、積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaは、第4抵抗Rxa4である。第4電流ix4の絶対値は、第3電流ix3の絶対値よりも大きい。第4抵抗Rxa4は、第1抵抗Rxa1よりも高くても良い。
【0048】
図7(b)に示すように、第4電流ix4において、電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaの変化率Rxdは、第4変化率Rxd4である。第1変化率Rxd1の絶対値は、第4変化率Rxd4の絶対値よりも大きくても良い。第4電流ix4において、第3磁性層23は発振層として機能しても良い。
【0049】
このような特性は、第3磁性層23の第3厚さt3が、第2磁性層22の第2厚さt2よりも厚いことに関係している可能性がある。このような組み合わせにおいて、電流ixを負方向に供給したときに、第3磁性層23で反射したスピントルクが第2磁性層22に作用する。例えば、電流ixの絶対値が増大したとき、第2磁性層22の磁化が反転し、第2磁性層22と第3磁性層23とが互いに反平行に近くなり、抵抗が増大すると考えられる。抵抗の変化率が増大すると考えられる。
【0050】
図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
これらは、積層体20に電流ixが供給され、コイル30cに記録電流Iwが供給されているときの磁気ヘッド110の特性の別の例を示している。これらの図の場合も、積層体20に電流ixが供給され、コイル30cに記録電流Iwが供給される。電流ixの向きは、図1(c)に例示した電流icの向きとは逆である。図8(a)及び図8(b)の横軸は、積層体20に供給される電流ixである。図8(a)の縦軸は、積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaである。図8(b)の縦軸は、電流ixの絶対値を減少したときの積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値の変化率Rxdである。
【0051】
図8(a)に示すように、電気抵抗Rxの平均値Rxaは、電流ixに対して全体的に傾斜(例えば2次関数の特性)しても良い。このような特性は、例えば、電流ixによる積層体20の温度上昇に基づく。
【0052】
図8(a)に示すように、第1~第3電流ix1~ix3において、平均値Rxaは、それぞれ、第1~第3抵抗Rxa1~Rxa3である。第1電流ix1の絶対値は、第2電流ix2の絶対値よりも大きく、第3電流ix3の絶対値よりも小さい。第1抵抗Rxa1は、第2抵抗Rxa2よりも高く、第3抵抗Rxa3よりも低い。
【0053】
図8(b)に示すように、第1~第3電流ix1~ix3において、電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaの変化率Rxdは、それぞれ第1~第3変化率Rxd1~Rxd3である第1変化率Rxd1の絶対値は、第2変化率Rxd2の絶対値よりも大きく、第3変化率Rxd3の絶対値よりも大きい。第2変化率Rxd2の絶対値は、第3変化率Rxd3よりも小さい。
【0054】
図8(a)に示すように、第4電流ix4において、積層体20の電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaは、第4抵抗Rxa4である。第4電流ix4の絶対値は、第3電流ix3の絶対値よりも大きい。第4抵抗Rxa4は、第1抵抗ix1よりも高くても良い。図8(b)に示すように、第4電流ix4において、電気抵抗Rxの時間的な平均値Rxaの変化率Rxdは、第4変化率Rxd4である。第4変化率Rxd4の絶対値は、第3変化率Rxd3の絶対値よりも大きくても良い。第4電流ix4において、第3磁性層23は発振層として機能しても良い。
【0055】
例えば、図8(a)及び図8(b)に例示した特性から、2次関数の特性の成分が除去されて、図7(a)及び図7(b)の特性が得られても良い。例えば、積層体20の温度上昇を抑制する方法(例えばパルス状の電流による測定)により、図7(a)及び図7(b)に例示する特性が得られても良い。
【0056】
実施形態において、第1磁極31は、X軸方向に沿って並ぶ複数の磁性領域を含んでも良い。第2磁極32は、X軸方向に沿って並ぶ複数の磁性領域を含んでも良い。複数の磁性領域の間の境界は、明確でも不明確でも良い。例えば、複数の磁性領域は、連続している。
【0057】
以下、実施形態に係る磁気記録装置210に含まれる磁気ヘッド及び磁気記録媒体80の例について説明する。
図9は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図9に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)において、第1磁極31から第2磁極32への第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。第1方向D1は、積層体20の積層方向に対応する。X軸方向は、媒体対向面30Fに沿う。第1方向D1と媒体対向面30Fとの間の角度の絶対値を角度θ1とする。角度θ1は、例えば、15度以上30度以下である。角度θ1は、0度でも良い。
【0058】
第1方向D1が、X軸方向に対して傾斜する場合、層の厚さは、第1方向D1に沿う長さに対応する。第1方向D1がX軸方向に対して傾斜する構成は、実施形態係る任意の磁気ヘッドに適用されて良い。例えば、第1磁極31と積層体20との界面、及び、積層体20と第2磁極32との界面は、X軸方向に対して傾斜しても良い。
【0059】
以下、実施形態に係る磁気記録装置210に含まれる磁気ヘッド及び磁気記録媒体80の例について説明する。
【0060】
図10は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図10に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)は、磁気記録媒体80と共に用いられる。この例では、磁気ヘッド110は、記録部60及び再生部70を含む。磁気ヘッド110の記録部60により、磁気記録媒体80に情報が記録される。再生部70により、磁気記録媒体80に記録された情報が再生される。
【0061】
磁気記録媒体80は、例えば、媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を含む。磁気記録層81の磁化83が記録部60により制御される。
【0062】
再生部70は、例えば、第1再生磁気シールド72a、第2再生磁気シールド72b、及び磁気再生素子71を含む。磁気再生素子71は、第1再生磁気シールド72aと第2再生磁気シールド72bとの間に設けられる。磁気再生素子71は、磁気記録層81の磁化83に応じた信号を出力可能である。
【0063】
図10に示すように、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が制御される。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が再生される。
【0064】
図11は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図11は、ヘッドスライダを例示している。
磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159に設けられる。ヘッドスライダ159は、例えばAl/TiCなどを含む。ヘッドスライダ159は、磁気記録媒体の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0065】
ヘッドスライダ159は、例えば、空気流入側159A及び空気流出側159Bを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159の空気流出側159Bの側面などに配置される。これにより、磁気ヘッド110は、磁気記録媒体の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0066】
図12は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図12に示すように、実施形態に係る磁気記録装置150においては、ロータリーアクチュエータが用いられる。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mに装着される。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mにより矢印ARの方向に回転する。スピンドルモータ180Mは、駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録装置150は、記録媒体181を含んでもよい。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。例えば、磁気記録装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)でも良い。
【0067】
ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180に記録する情報の、記録及び再生を行う。ヘッドスライダ159は、薄膜状のサスペンション154の先端に設けられる。ヘッドスライダ159の先端付近に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0068】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ159の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がバランスする。ヘッドスライダ159の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の間の距離が、所定の浮上量となる。実施形態において、ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180と接触しても良い。例えば、接触走行型が適用されても良い。
【0069】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、ボビン部などを有する。ボビン部は、駆動コイルを保持する。アーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられる。ボイスコイルモータ156は、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、駆動コイル及び磁気回路を含む。駆動コイルは、アーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、永久磁石及び対向ヨークを含む。永久磁石と対向ヨークとの間に、駆動コイルが設けられる。サスペンション154は、一端と他端とを有する。磁気ヘッドは、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端に接続される。
【0070】
アーム155は、ボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アーム155は、ボイスコイルモータ156により回転及びスライドが可能である。磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能である。
【0071】
図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図13(a)は、磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。図13(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0072】
図13(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157から延びる。支持フレーム161の延びる方向は、ヘッドジンバルアセンブリ158の延びる方向とは逆である。支持フレーム161は、ボイスコイルモータ156のコイル162を支持する。
【0073】
図13(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0074】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ159が設けられる。ヘッドスライダ159に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0075】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが設けられたヘッドスライダ159と、サスペンション154と、アーム155と、を含む。ヘッドスライダ159は、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端と接続される。
【0076】
サスペンション154は、例えば、信号の記録及び再生用のリード線(図示しない)を有する。サスペンション154は、例えば、浮上量調整のためのヒーター用のリード線(図示しない)を有しても良い。サスペンション154は、例えばスピントランスファトルク発振子用などのためのリード線(図示しない)を有しても良い。これらのリード線と、磁気ヘッドに設けられた複数の電極と、が電気的に接続される。
【0077】
磁気記録装置150において、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。信号処理部190の入出力線は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に接続される。
【0078】
実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドと、可動部と、位置制御部と、信号処理部と、を含む。可動部は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とする。位置制御部は、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする。信号処理部は、磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。
【0079】
例えば、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、例えば、ヘッドスライダ159を含む。上記の位置制御部は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158を含む。
【0080】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第2磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁層との間に設けられた第3非磁性層と、
前記第2磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第4非磁性層と、
を含み、
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さよりも厚く、
前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さは、前記第2厚さよりも厚い、磁気ヘッド。
【0081】
(構成2)
前記第1非磁性層は、前記第1磁性層及び前記第1磁極と接し、
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第1磁性層と接し、
前記第3非磁性層は、前記第3磁性層及び前記第2磁性層と接し、
前記第4非磁性層は、前記第2磁極及び前記第3磁性層と接した、構成1記載の磁気ヘッド。
【0082】
(構成3)
前記第3厚さは、前記第1厚さの0.6倍以上1.7倍以下である、構成1または2に記載の磁気ヘッド。
【0083】
(構成4)
前記第3厚さは、前記第1厚さの0.8倍以上1.25倍以下である、構成1または2に記載の磁気ヘッド。
【0084】
(構成5)
前記第2厚さは、前記第1厚さの0.7倍以下である、構成1~4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0085】
(構成6)
前記第2厚さは、前記第1厚さの0.5倍以下である、構成1~4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0086】
(構成7)
前記第2厚さは、前記第3厚さの0.7倍以下である、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0087】
(構成8)
前記第2厚さは、前記第3厚さの0.5倍以下である、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0088】
(構成9)
前記第1厚さは、5nm以上15nm以下である、構成1~8のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0089】
(構成10)
前記第3厚さは、5nm以上15nm以下である、構成1~9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0090】
(構成11)
前記第1非磁性層は、Cu、Au、Cr、Al、V及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第4非磁性層は、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0091】
(構成12)
前記第3非磁性層は、Cu、Au、Cr、Al、V及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0092】
(構成13)
前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つ含む第1元素を含む、構成1~12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0093】
(構成14)
前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含まない、
または、
前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層における前記第2元素の濃度は、10atm%未満である、構成13記載の磁気ヘッド。
【0094】
(構成15)
前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きの電流が前記積層体に供給される、構成1~14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0095】
(構成16)
前記電流が前記積層体に供給されたときに、前記積層体から交流磁界が生じる、構成15記載の磁気ヘッド。
【0096】
(構成17)
前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きの電流が前記積層体に供給されたときに、前記第1磁性層の第1磁化、及び、前記第3磁性層の第3磁化は、互いに逆向きで回転する、構成1~14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0097】
(構成18)
第1端子と、第2端子と、をさらに備え、
前記第1端子は、前記積層体の一部と電気的に接続され、
前記第2端子は、前記積層体の他部と電気的に接続され、
前記第1端子と前記第2端子との間に電流が供給可能である、構成1~17のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0098】
(構成19)
構成1~14のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
電気回路と、
を備え、
前記電気回路は、前記積層体に電流を供給可能であり、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
【0099】
(構成20)
前記電気回路が、前記積層体に電流を供給したときに、
前記積層体から交流磁界が生じる、構成19記載の磁気記録装置。
【0100】
実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置が提供できる。
【0101】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドに含まれる、磁極、積層体、磁性層、非磁性層、及び配線などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0103】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0104】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド及び磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気ヘッド及び磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0105】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
20…積層体、 20D…電気回路、 21~23…第1~第3磁性層、 30D…記録回路、 30F…媒体対向面、 30c…コイル、 30i…絶縁部、 31、32…第1、第2磁極、 33…シールド、 41~44…第1~第4非磁性層、 60…記録部、 70…再生部、 71…磁気再生素子、 72a、72b…第1、第2再生磁気シールド、 80…磁気記録媒体、 81…磁気記録層、 82…媒体基板、 83…磁化、 85…媒体移動方向、 θ1…角度、 110…磁気ヘッド、 150…磁気記録装置、 154…サスペンション、 155…アーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 159…ヘッドスライダ、 159A…空気流入側、 159B…空気流出側、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 180M…スピンドルモータ、 181…記録媒体、 190…信号処理部、 210…磁気記録装置、 AR、AR1…矢印、 D1…第1方向、 Iw…記録電流、 MD1、MD2…第1、第2モデル、 Mz磁化、 Mz1~Mz3…第1~第3磁化、 OS…発振強度、 RR2、RR3…比、 Rx…電気抵抗、 Rxa1~Rxa4…第1~第4電気抵抗、 Rxa…平均値、 Rxd…変化率、 Rxd1~Rxd4…第1~第4変化率、 T1、T2…第1、第2端子、 W1、W2…第1、第2配線、 ic…電流、 ix…電流、 ix1~ic4…第1~第4電流、 je…電子流、 t1~t3…第1~第3厚さ、 t41~t44…厚さ、 tm…時間
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