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特許7465239故障対応支援者手配システム、及び、故障対応支援者手配方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】故障対応支援者手配システム、及び、故障対応支援者手配方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240403BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B66B5/00 G
G05B23/02 301X
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021044407
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143727
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 繁
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】柴 健一
(72)【発明者】
【氏名】厚沢 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】野中 久典
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100176(JP,A)
【文献】特開2020-149266(JP,A)
【文献】特開2019-116377(JP,A)
【文献】特開2020-075803(JP,A)
【文献】特開2003-104644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機に発生した故障に関して、過去の故障日報に照合して、故障対応時間を算出し、前記故障対応時間に応じて、現地の保守員の作業を支援する支援者を手配する故障対応支援者手配システムにおいて、
昇降機に発生した故障に関して、少なくとも故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、前記昇降機の識別番号を含む過去の故障日報が蓄積された故障日報管理部と、
少なくとも、昇降機の識別番号、機種、構成機器及び住所情報を含む、昇降機の仕様情報が蓄積された昇降機仕様管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準原因調査時間が蓄積された機器別標準原因調査時間管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準対策作業時間が蓄積された機器別標準対策作業時間管理部と、
保守員毎に、少なくとも昇降機の保守作業に関する保有スキルの情報が蓄積されたスキル管理部と、
前記故障日報管理部に蓄積された故障日報と、故障した昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する原因機器候補抽出部と、
前記原因機器候補抽出部で抽出された原因機器候補のうち、前記確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての前記標準原因調査時間を抽出すると共に、前記各原因機器の前記標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出する、原因調査時間算出部と、
前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての前記標準対策作業時間を抽出すると共に、前記各原因機器の前記標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出する、対策作業時間算出部と、
記対策作業時間及び前記原因調査時間に応じて、前記スキル管理部に蓄積された情報から、原因調査スキルを保有する保守員を原因調査支援者、及び/又は、対策作業スキルを保有する保守員を対策作業支援者として選定する支援者手配部と、
を備える故障対応支援者手配システム。
【請求項2】
さらに、前記故障原因機器群の各原因機器の故障の対応に必要である部品が保管されている部品保管拠点の住所と、故障が発生した昇降機の住所と、外部から入力される交通情報とから、部品搬送時間を算出する部品搬送時間算出部とを備え
請求項1に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項3】
前記支援者手配部は、前記対策作業時間及び前記原因調査時間が所定時間よりも長い場合には、前記スキル管理部に蓄積された情報から、前記原因調査スキルを保有する保守員を前記原因調査支援者として選定すると共に、前記対策作業スキルを保有する保守員を前記対策作業支援者として選定する
請求項1に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項4】
前記支援者手配部は、前記原因調査時間のみが、所定時間よりも長い場合には、前記スキル管理部に蓄積された情報から、前記原因調査スキルを保有する保守員を前記原因調査支援者として選定する
請求項1に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項5】
前記支援者手配部は、前記対策作業時間のみが、所定時間よりも長い場合には、前記スキル管理部に蓄積された情報から、前記対策作業スキルを保有する保守員を前記対策作業支援者として選定する
請求項1に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項6】
前記支援者手配部が前記原因調査支援者を選定する場合は、前記原因調査スキルを保有する保守員のうち、故障した昇降機の住所情報と、前記原因調査スキルを保有する保守員の現在地とから、前記原因調査スキルを保有する保守員の移動時間を算出し、最も移動時間の短い前記原因調査スキルを保有する保守員を前記原因調査支援者として選定する
請求項3又は4に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項7】
前記支援者手配部が前記対策作業支援者を選定する場合は、故障した昇降機の住所情報と、前記対策作業スキルを保有する保守員の現在地とから、前記対策作業スキルを保有する保守員の移動時間を算出し、所定の時間までに到着可能な前記対策作業スキルを保有する保守員のうち、最もスキルレベルの高い前記対策作業スキルを保有する保守員を前記対策作業支援者として選定する
請求項5に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項8】
前記原因調査時間が前記部品搬送時間よりも短い場合には、前記部品搬送時間と前記対策作業時間との合計を前記故障対応時間とし、前記原因調査時間が前記部品搬送時間よりも長い場合には、前記原因調査時間と前記対策作業時間との合計を前記故障対応時間として算出する故障対応時間算出部
を備える
請求項2に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項9】
前記故障対応時間算出部により算出された前記故障対応時間をもとに、支援者手配の要否を判断する支援者要否判断部を備える
請求項8に記載の故障対応支援者手配システム。
【請求項10】
昇降機に発生した故障に関して、少なくとも故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、前記昇降機の識別番号を含む過去の故障日報が蓄積された故障日報管理部と、
少なくとも、昇降機の識別番号、機種、構成機器及び住所情報を含む、昇降機の仕様情報が蓄積された昇降機仕様管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準原因調査時間が蓄積された機器別標準原因調査時間管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準対策作業時間が蓄積された機器別標準対策作業時間管理部と、
保守員毎に、少なくとも昇降機の保守作業に関する保有スキルの情報が蓄積されたスキル管理部と、を備える故障対応支援者手配システムにおいて、
前記故障日報管理部に蓄積された故障日報と、故障した昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出し、
前記抽出された原因機器候補のうち、前記確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての前記標準原因調査時間を抽出すると共に、前記各原因機器の前記標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出し、 前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての前記標準対策作業時間を抽出すると共に、前記各原因機器の前記標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出し、
記スキル管理部に蓄積された情報から、前記対策作業時間及び前記原因調査時間に応じて、原因調査支援者、及び/又は、対策作業支援者を選定する
故障対応支援者手配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター等の昇降機の故障対応支援者手配システム、及び、故障対応支援者手配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の機器で構成される昇降機の保全において、昇降機の構成機器に故障が発生した場合、故障状態や、昇降機自体が発報するエラーコードをもとに、故障原因機器候補をリストアップして故障対応者に提示する技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、過去に発生したエラーコードや故障状態を蓄積した故障日報などの故障履歴データから現地の故障状態と類似度の高い同種故障を抽出して集計し、故障原因である可能性が高い機器をリストアップする。これにより、故障の早期復旧を目指すものである。
【0003】
また、特許文献1には、支援依頼内容と同一機種又は類似の機種における同一又は類似の故障事例の故障対応を行った経験がある作業者を、現地作業者の故障対応を支援する支援候補者として選定し、対応可能な支援に当たらせる故障対応支援方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-100176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昇降機の復旧にかかる作業時間は、作業員のスキルに大きく依存する。例えば、故障原因の調査をする原因調査は得意でも、実際の部品の交換や機器の調整等の対策作業が不得手という作業者もいれば、原因調査が不得手でも、実際の対策作業が得意である作業者もいる。したがって、同一機種又は類似の機種における同一又は類似の故障事例の故障対応を行ったことがある作業者を支援候補者として選定した場合にも、支援内容によっては、必ずしも的確な支援候補者が選定されているとは限らないという問題がある。このため、最終的に故障対応に係る総作業時間(故障対応時間)が、想定している故障対応時間よりも長くなってしまう問題も出てくる。
【0006】
そこで、本発明は、より適正な支援候補者を選定可能な昇降機の故障対応支援者手配システム、及び、故障対応支援者手配方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の故障対応支援者手配システムは、故障日報管理部と、昇降機仕様管理部と、機器別標準原因調査時間管理部と、機器別標準対策作業時間管理部、スキル管理部とを有する。また、本発明の故障対応時間演算システムは、原因機器候補抽出部と、原因調査時間算出部と、対策作業時間算出部と、部品搬送時間算出部と、支援者手配部とを備える。故障日報管理部には、少なくとも故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、及び、昇降機の識別番号を含む過去の故障日報が蓄積されている。昇降機仕様管理部には、少なくとも、昇降機の識別番号、機種、構成機器及び住所情報を含む、昇降機の仕様情報が蓄積されている。機器別標準原因調査時間管理部には、昇降機の機種及び構成機器別の標準原因調査時間が蓄積されている。機器別標準対策作業時間管理部には、昇降機の機種及び構成機器別の標準対策作業時間が蓄積されている。原因機器候補抽出部は、故障日報管理部に蓄積された故障日報と、昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する。原因調査時間算出部は、原因機器候補抽出部で抽出された原因機器候補のうち、確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、故障原因機器群に挙げられた各原因機器と機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、各原因機器についての標準原因調査時間を抽出すると共に、各原因機器の標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出する。対策作業時間算出部は、故障原因機器群に挙げられた各原因機器と機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、各原因機器についての標準対策作業時間を抽出すると共に、各原因機器の標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出する。支援者手配部は、スキル管理部に蓄積された情報から、対策作業時間及び原因調査時間に応じて、原因調査支援者、及び/又は、対策作業支援者を選定する。
【0008】
本発明の故障対応支援者手配方法は、故障日報管理部に蓄積された故障日報と、故障した昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する。抽出された原因機器候補のうち、確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、故障原因機器群に挙げられた各原因機器と機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、各原因機器についての標準原因調査時間を抽出すると共に、各原因機器の標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出する。故障原因機器群に挙げられた各原因機器と機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、各原因機器についての標準対策作業時間を抽出すると共に、各原因機器の標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出する。スキル管理部に蓄積された情報から、対策作業時間及び原因調査時間に応じて、原因調査支援者、及び/又は、対策作業支援者を選定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、昇降機の故障時に、現場で作業する保守員を支援する支援者を選定する際に、より適正な支援者を選定することができるため、故障対応にかかる作業効率の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る故障対応支援者手配システムの構成図である。
図2】故障日報DBを構成する情報の一例である。
図3】機器別標準原因調査時間DBを構成する情報の一例である
図4】機器別標準対策作業時間DBを構成する情報の一例である。
図5】部品情報DBを構成する情報の一例である。
図6】保守員XのスキルDBを構成する情報の一例である。
図7】保守員YのスキルDBを構成する情報の一例である。
図8】原因機器候補抽出部で抽出される発生した故障の原因機器及びその確率の一例を示す図である。
図9】運搬手段選定部で選定される運搬手段の選定基準の一例を示した図である。
図10】交通状況提供システムが出力する運搬手段毎の移動距離及び渋滞情報の一例である。
図11】故障対応時間算出部における故障対応時間算出方法を示したフローである。
図12】障対応支援者手配システムにおける故障対応支援者手配方法を説明するためのフローである。
図13】故障対応情報送信部が保守員の携帯端末に送信する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るエレベーターの故障対応支援者手配システム、及び故障対応支援者手配方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通部分には同一の符号を付している。
【0012】
図1は、本実施形態に係る故障対応支援者手配システムの構成図である。図1に示すように、故障対応支援者手配システム100は、エレベーター等の昇降機1と、保守員4、原因調査支援者7及び対策作業支援者8が携帯する携帯端末5と、監視センター2と、交通状況提供システム6とによって構成されている。
【0013】
昇降機1には、昇降機1の運転制御を司る制御盤11、及び、遠隔監視装置12が設けられている。遠隔監視装置12は、制御盤11のエラーコード出力端子に常時接続されており、少なくとも、昇降機1の故障発生時に、昇降機1の識別番号及び故障内容を示すエラーコードを含む異常信号を監視センター2に送信する。
【0014】
保守員4が携帯する携帯端末5は、保守員4が確認した昇降機1の仕様情報及び故障状態情報等を、監視センター2に送信する機能を有する。また、保守員4、原因調査支援者7及び対策作業支援者8の携帯端末5は、故障対応支援者手配システム100によって生成された故障対応に関する故障対応情報を監視センター2から受信する機能を有する。
【0015】
監視センター2は、受信装置21と、情報管理部20と、情報処理部40とを有する。受信装置21は、昇降機1に装備される遠隔監視装置12と専用回線、インターネット回線、その他の有線伝送ライン、又は無線伝送ラインによって接続される。受信装置21は、遠隔監視装置12から送信されてくる昇降機1の識別番号、エラーコードを含む異常発報信号等の故障状態情報、並びに、昇降機1の仕様情報を受信する。また、受信装置21は、昇降機1がある建物の住人、又は、管理者からの電話によって伝送された情報、及び、現地に出動した保守員4によって確認された、昇降機1の故障状態情報及び仕様情報を、携帯端末5を通じて受信する機能も備える。
【0016】
情報管理部20は、昇降機仕様データベース(以下、DBと示す)23、故障日報DB22、機器別標準原因調査時間DB24、機器別標準対策作業時間DB25、部品情報DB26、スキルDB45を有する。情報管理部20の各部の詳細については後で詳述する。
【0017】
情報処理部40は、類似故障日報検索部27、原因機器候補抽出部28、原因調査時間算出部29、対策作業時間算出部30、出庫対象部品選定部31、運搬手段選定部32、部品搬送時間算出部33、自動出庫部34、故障対応時間算出部35を備える。さらに、情報処理部40は、支援者要否判断部36、支援者手配部38、故障対応情報送信部37を備える。
【0018】
情報処理部40では、受信装置21で受信した昇降機1の仕様情報及び故障状態情報と、情報管理部20の各データベースとを照合し、原因調査時間、及び、対策作業時間を算出する。また、情報処理部40では、交通状況提供システム6から提供される交通情報をもとに、部品搬送時間を算出する。情報処理部40における各部の詳しい処理内容については、後で詳述する。
【0019】
交通状況提供システム6は、監視センター2とは別の外部の交通情報会社によって運営されており、住所又は携帯端末のGPSなどの位置情報をもとに、移動手段別の移動時間に関わる情報を監視センター2側にインターネット回線等を通じて提供する。さらに、交通状況提供システム6は、移動手段別に、渋滞情報を加味した情報を監視センター2に提供する。
【0020】
次に、情報管理部20を構成する昇降機仕様DB23、故障日報DB22、機器別標準原因調査時間DB24、機器別標準対策作業時間DB25、部品情報DB26、スキルDB45の各構成例について説明する。昇降機仕様DB23、故障日報DB22、機器別標準原因調査時間DB24、機器別標準対策作業時間DB25、部品情報DB26、スキルDB45は、それぞれ、本発明の昇降機仕様管理部、故障日報管理部、機器別標準原因調査時間管理部、機器別標準対策作業時間管理部、部品情報管理部、スキル管理部に相当する。
【0021】
昇降機仕様DB23は、保全対象の全昇降機の識別番号、機種、構成機器の仕様に関する情報が蓄積されたデータベースである。識別番号は、各昇降機に個別に付された番号等であり、例えば“A1234”(図2参照)等のように記録されている。
【0022】
故障日報DB22は、少なくとも、故障した昇降機に関する故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、識別番号を含む過去の故障日報が、故障発生日毎に蓄積されたデータベースである。図2は、故障日報DBを構成する情報の一例である。図2に示すように、故障日報DB22は、例えば、「故障日報ナンバー」、「故障日時」、「機種」、「識別番号」、「エラーコード」、「原因機器」、「故障時状態」、「初動確認結果」、「原因調査時間」、「対策作業時間」、「交換部品名」、「故障対応者」の項目を有する。
【0023】
「故障日報ナンバー」の項目には、各故障日報に割り振られた番号が記録されている。「故障日時」の項目には、例えば“1999年12月24日14時30分”等の故障が発生した日時が記録される。「機種」の項目には、例えば“EL-2”等、故障した昇降機の機種名が記録される。「識別番号」の項目には、例えば“A12345”等、昇降機を識別するために付されている識別番号が記録される。「エラーコード」の項目には、例えば“TO1”等、故障した昇降機において発報されたエラーコードが記録される。エラーコードが発報されていない場合には、「エラーコード」の項目において、「なし」と記録される。
【0024】
「原因機器」の項目には、例えば“エンコーダ”等、故障の原因となった機器が記録される。「故障時状態」の項目には、故障時における昇降機の状態が記録されており、例えば、乗場階の位置と、乗りかごの停止位置との間に段差がある場合には“段差”と記録され、異常音が発生していた場合には、“異常音”と記録される。「初動確認結果」の項目には、故障時において、現場にいる保守員が確認した初動情報が記録されており、例えば、乗りかごが中間階に停止した場合には、“中間階停止”と記録され、電源が切れている場合には、”電源喪失“等と記録される。
【0025】
「原因調査時間」の項目には、保守員が現場で原因調査にかかった時間が記録され、例えば“10(分)”等と記録される。ここで、原因調査とは、故障状態から詳しい故障原因機器を調査すると共に、交換必要な部品等を調査する作業であり、部品交換や部品調整等の対策作業の前段に行われる作業である。
【0026】
「対策作業時間」の項目には、保守員が現場で部品交換等の対策作業にかかった時間が記録され、例えば“15(分)”等と記録される。ここで、対策作業とは、故障の原因となった原因機器における部品の交換や、調整等、昇降機を復旧するための作業であり、原因調査が行われた後に行われる作業である。
【0027】
「交換部品名」の項目には、“エンコーダA”等、交換した部品名が記録される。「故障対応者」の項目には、“保守員A”等、現場で故障した昇降機の復旧作業を行った保守員を特定可能な形式で記録される。
【0028】
このように、故障日報DB22に記録される各項目はカテゴライズされており、絞り込みや集計が可能な形で蓄積されている。これらの故障日報DB22は、故障対応を行った保守員がそれぞれの携帯端末から随時登録することができるものである。なお、本発明の「故障状態」は、エラーコードから認識可能な故障状態、又は/及び、保守員が確認した故障状態を指す。
【0029】
機器別標準原因調査時間DB24は、昇降機1の機種及び構成機器別に故障対応時の標準的な原因調査時間が格納されたデータベースである。図3は、機器別標準原因調査時間DB24を構成する情報の一例である。図3に示すように、機器別標準原因調査時間DB24は、例えば、「機種」、「原因機器」、「標準原因調査時間」の項目を有する。「機種」、「原因機器」の項目については、故障日報DB22における「機種」、「原因機器」の項目と同じである。
【0030】
「標準原因調査時間」の項目には、昇降機1の機種、故障の原因機器別にかかった故障対応時の標準的な原因調査時間が記録され、例えば“10(分)”と記録される。標準的な原因調査時間は、例えば、故障日報DB22に格納された機種別の原因機器毎に算出した平均値や中央値などであり、統計的に算出した値によって構成されている。
【0031】
機器別標準対策作業時間DB25は、昇降機1の機種及び構成機器別に故障対応時の標準的な対策作業時間が格納されたデータベースである。図4は、機器別標準対策作業時間DB25を構成する情報の一例である。図4に示すように、機器別標準対策作業時間DB25は、例えば、「機種」、「原因機器」、「標準対策作業時間」の項目を有する。「機種」、「原因機器」の項目については、故障日報DB22における「機種」、「原因機器」の項目と同じである。
【0032】
「標準対策作業時間」の項目には、昇降機1の機種、故障の原因機器別にかかった故障対応時の標準的な対策作業時間が記録され、例えば“15(分)”と記録される。標準的な対策作業時間は、例えば、故障日報DBに格納された機種別の原因機器毎に算出した平均値や中央値などであり、統計的に算出した値によって構成されている。また、標準的な対策作業時間は、予め作成された標準的な部品交換手順書に基づいて試算された時間で構成されてもよい。
【0033】
部品情報DB26は、昇降機1の機種及び構成機器別の部品情報、部品保管拠点毎の在庫情報が格納されたデータベースである。図5は、部品情報DB26を構成する情報の一例である。図5に示すように、部品情報DBは、例えば、「機種」、「原因機器」、「重量」、「梱包サイズ」、「在庫情報」の項目を有する。「機種」、「原因機器」の項目については、故障日報DB22における「機種」、「原因機器」の項目と同じである。なお、図5における「原因機器」は、出庫対象部品である。部品情報DBは、昇降機1の識別情報から紐づけできる機種及び機器の情報と照合され、交換が必要な部品群の大きさや、どの拠点から故障した対象となる昇降機1に部品群を搬送するかの判定に用いられる。
【0034】
「重量」の項目には、出庫対象部品の重量が記録され、例えば、“0.3kg”等と記録される。「梱包サイズ」の項目には、出庫対象部品を運搬用に梱包したときのサイズが記録され、例えば、“15×15×5cm”等と記録される。「在庫情報」の項目には、各出庫対象部品の保管拠点(住所)及び、その保管拠点における保管数が記録され、例えば、“部品センター(A地区)1000個、支社(B地区)3個、営業所A(C地区)2個、営業所B(D地区)1個”等と記録されている。
【0035】
スキルDB45は、登録されている全保守員の保有するスキル情報、各保守員の現在地、及び、各保守員の作業状況が格納されたデータベースである。図6及び図7は、それぞれ、各保有者のスキルDB45を構成する情報の一例である。図6は、保守員Xのスキル情報、現在地、及び作業状況を示しており、図7は、保守員Yのスキル情報、現在地、及び、作業状況を示している。
【0036】
図6及び図7に示すように、スキルDB45では、保有者毎にデータ管理されており、それぞれ、例えば「機種」、「部位」、「作業内容」、「位置」、及び、「状態」の項目で構成されている。
【0037】
「機種」の項目には、保有者が過去に故障対応に関わる作業を行った昇降機の機種名が記録され、例えば、“機種A”、“機種B”等と、その機種が判別できるように記録されている。そして、その機種毎に、「部位」、「作業内容」の項目が記録されている。
【0038】
「部位」の項目は、保守員が故障対応した昇降機の部位を示すものであり、例えば、“マシン”、“塔内”等、昇降機の各部位が記録されている。
【0039】
「作業内容」の項目は、保守員が故障対応した際に行った作業内容毎の経験した「回数」と、スキルレベルを示す「ランク」が記録されている。作業内容は、「原因調査」、「修理」、「調整」に項目分けされており、保守員が行った作業内容に応じて、該当する項目の経験した「回数」が随時更新される。また、「ランク」の項目には、例えば、経験した「回数」が、10回以上であればA、6~9回であればB、5回以下であればCが記録されるように、経験回数の応じたランクが記録されている。
【0040】
「位置」の項目は、保守員の現在地が記録されており、例えば、“事務所”、“Aビル”等、住所情報と共に記録されている。「状態」の項目は、保守員の現在の作業状況が記録されており、例えば、“待機中”、“作業中”等と記録されている。
【0041】
例えば、図6に示す保守員Xは、「修理」や「調整」等、対策作業の経験回数よりも、「原因調査」の経験回数が多く記録されており、スキルレベルも、「原因調査」の方が、「修理」及び「調整」よりも高く記録されている。すなわち、保守員Xは、原因調査が得意な原因調査スキル保有者であることがわかる。また、保守員Xは、現在事務所で待機中であることがスキルDB45には記録されている。
【0042】
一方、図7に示す保守員Yは、「原因調査」の経験回数よりも、「修理」や「調整」等、対策作業の経験回数が多く記録されており、スキルレベルも、「修理」及び「調整」の方が、「原因調査」よりも高く記録されている。すなわち、保守員Yは、対策作業が得意な対策作業スキル保有者であることがわかる。また、保守員Yは、現在Aビルで作業中であることがスキルDB45には記録されている。
【0043】
ところで、スキルレベルの「ランク」は、経験した回数に応じてレベル分けされているが、作業内容の難易度には違いがあるため、経験した回数のみでは正確なスキルレベルを記録できない。したがって、難易度が高い作業の場合には、難易度が低い作業に比較して配点の比重を多くし、その配点を経験回数に反映させることで、保守員の技能を適正に評価することできる。さらに、図6及び図7には図示されていないが、直近の作業日の配点比重を高くするなど、作業日時によって、配点の比重を変えることで、より直近の作業内容を、次の作業に反映させることができる構成としてもよい。
【0044】
情報管理部20では、上述した各データベースが管理され、随時、更新されている。
【0045】
2.情報処理部の構成、及び、故障対応支援者手配方法
次に、本実施形態における監視センター2の情報処理部40の各部の構成を、本実施形態の故障対応支援者手配方法の説明と合わせて詳述する。なお、以下で説明する情報処理部40の各処理の内容は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いソフトウエア的に自動で実行されるものである。
【0046】
まず、昇降機1に故障が発生した場合、監視センター2の受信装置21は、昇降機1の識別番号や、故障状態等を含む故障情報を受信する。この故障情報は、昇降機1自体が発報するエラーコードの他、住人又は管理人からの電話からの情報、又は、現地に出動した保守員4の携帯端末5からの情報を含む。
【0047】
例えば、昇降機1に故障が発生すると、この故障が発生した現地に保守員4が出動し、その故障状態を確認する。保守員4は、携帯端末5を用いて、その故障が発生している昇降機の識別番号、機種等の仕様情報と、故障状態情報とを監視センター2に送信する。そして、監視センター2では受信装置21が、故障情報を受信した場合、類似故障日報検索部27に故障情報を入力する。
【0048】
一方、昇降機1自体が発報するエラーコードが受信装置21に入力される場合には、受信装置21は、そのエラーコードや、エラーコードを発報した昇降機1の識別番号を含む仕様情報を類似故障日報検索部27に入力する。また、住人又は管理人からの電話による故障情報を受信装置21が受けた場合にも、受信装置21は、故障情報及び昇降機1の識別番号を含む仕様情報を類似故障日報検索部27に入力する。
【0049】
類似故障日報検索部27は、故障した昇降機1の識別番号を昇降機仕様DB23と照合して、故障した昇降機1の機種及び構成機器の部品型式などの仕様を取得する。さらに、類似故障日報検索部27は、昇降機1の機種と、エラーコードや不具合事象などの故障状態情報とを検索条件として、故障日報DB22の中から、発生した故障に類似する故障(類似故障)を検索して抽出する。ここで、類似故障日報検索部27において、類似故障が無いと判断された場合には、過去の類似事例を故障原因調査に活用する意味がないと判断し、類似故障日報検索部27は、サポートセンター(図示を省略する)に通報する。サポートセンターに通報された場合には、専門技術者と現地の保守員4とが直接やり取りして故障原因を究明する。
【0050】
次に、原因機器候補抽出部28は、発生した故障状態と類似する故障状態が過去の故障日報の中にある場合には、抽出した故障日報を故障原因機器別に集計する。さらに、原因機器候補抽出部28は、抽出した類似故障日報件数を分母とし、集計した故障原因機器を分子として、故障原因機器別の割合を算出し、その割合を、発生した故障の原因機器である確率として出力する。すなわち、原因機器候補抽出部28は、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する。
【0051】
図8は、原因機器候補抽出部28で抽出される発生した故障の原因機器及びその確率の一例を示す図である。図8に示すように、原因機器候補抽出部28では、原因機器が「エンコーダ」である確率が「40%」、原因機器が「ポジテクタ」でる確率が「20%」等、原因機器毎に確率が算出される。原因機器候補抽出部28で算出された結果は、原因調査時間算出部29、対策作業時間算出部30、及び、出庫対象部品選定部31に送られる。
【0052】
原因調査時間算出部29は、原因機器候補抽出部28が算出した確率付きの原因機器について、例えば、確率の高い順から加算して70%に到達するまでの複数の原因機器を、故障原因機器群として、決定する。そして、原因調査時間算出部29は、故障原因機器群に挙げられた複数の原因機器について、機器別標準原因調査時間DB24と照合し、各原因機器についての標準原因調査時間を抽出してその合計時間を算出する。原因調査時間算出部29は、その合計時間を発生した故障の原因調査に要する原因調査時間として記憶する。
【0053】
一方、対策作業時間算出部30は、原因機器候補抽出部28が算出した確率付きの原因機器について、原因調査時間算出部29と同様に、確率の高い順から加算して70%に到達するまでの複数の原因機器を、故障原因機器群として決定する。そして、対策作業時間算出部30は、故障原因機器群に挙げられた原因機器について、機器別標準対策作業時間DB25と照合し、各原因機器についての標準対策作業時間を抽出してその合計時間を算出する。対策作業時間算出部30は、その合計時間を発生した故障の対策作業(部品交換、調整)に要する対策作業時間として記憶する。
【0054】
出庫対象部品選定部31は、原因機器候補抽出部28が算出した確率付きの原因機器について、原因調査時間算出部29及び対策作業時間算出部30と同様、確率の高い順から加算して70%に到達するまでの複数の原因機器を、故障原因機器群として決定する。そして、出庫対象部品選定部31は、故障原因機器群に挙げられた原因機器について、昇降機仕様DB23及び部品情報DB26と照合し、故障した原因機器の修理(交換)及び調整に必要となる可能性が高い候補部品を出庫対象部品として抽出する。そして、出庫対象部品選定部31は、出庫対象部品を記憶する。
【0055】
さらに、出庫対象部品選定部31は、選定した出庫対象部品について、部品情報DB26内で管理される出庫対象部品の部品型式及び部品の大きさと重量を記憶する。また、出庫対象部品選定部31は、各地にある部品保管拠点の在庫状況から出庫可能な部品保管拠点(住所)を選定して記憶する。出庫対象部品選定部31では、出庫可能な部品保管拠点が複数あれば、部品保管拠点の候補地として、複数の部品保管拠点を選定する。
【0056】
次に、運搬手段選定部32は、出庫対象部品選定部31によって選定された出庫対象部品について、各出庫対象部品の重量と大きさ(梱包サイズ)をもとに、自動で運搬手段の候補を選定して記憶する。図9は、運搬手段選定部32で選定される運搬手段の選定基準の一例を示した図である。例えば、出庫対象部品の総重量が10kg未満の場合には、運搬手段は、車、バイク又は自転車とし、10kg以上20kg未満の場合には、車又はバイクとし、20kg以上の場合には、車が選定される。また、梱包された出庫対象部品の大きさについても、30×30×30cm未満である場合には、車、バイク又は自転車、30×30×30cm以上50×50×50cm未満である場合には、車又はバイク、50×50×50cm以上である場合には、車が選定される。このように、運搬手段選定部32においても、各出庫対象部品の重量及び大きさに応じて、可能な運搬手段の候補が選定される。
【0057】
次に、部品搬送時間算出部33は、故障した昇降機1の住所と、出庫対象部品選定部31において選定された出庫対象部品の部品保管拠点の住所と、運搬手段選定部32において選定された運搬手段とを、外部の交通状況提供システム6に入力する。故障した昇降機1の住所については、昇降機仕様DB23に照合した得られた情報が部品搬送時間算出部33に記憶され、交通状況提供システム6に入力される。
【0058】
部品搬送時間算出部33は、出庫対象部品選定部31に選定された部品保管拠点が複数ある場合には、複数の部品保管拠点の候補地を交通状況提供システム6に入力する。同様に、運搬手段選定部32において、複数の運搬手段の候補が選定されている場合には、部品搬送時間算出部33は、複数の運搬手段を交通状況提供システム6に入力する。
【0059】
交通状況提供システム6は、入力された部品保管拠点の住所を出発点、故障した昇降機1の住所を到着地点とし、運搬手段毎に、移動時間と渋滞情報等の付帯情報を、部品搬送時間算出部33に入力する。
【0060】
図10は、交通状況提供システム6が出力する運搬手段毎の移動距離及び渋滞情報の一例である。交通状況提供システム6は、部品保管拠点地と故障した昇降機1との住所から移動距離を算出し、運搬手段毎に、移動距離及び渋滞情報を出力する。また、部品保管拠点の候補が複数ある場合についても、部品保管拠点毎に、移動距離及び渋滞情報を出力する。
【0061】
部品搬送時間算出部33は、交通状況提供システム6が出力した移動距離と渋滞情報等の付帯情報から、最も小さい移動時間で搬送可能となる部品保管拠点と、運搬手段との組み合わせを選定して記憶し、さらに、その移動時間を部品搬送時間として記憶する。そして、部品搬送時間算出部33は、選定した部品保管拠点、運搬手段及び部品搬送時間の情報を自動出庫部34に送信する。
【0062】
自動出庫部34は、部品搬送時間算出部33が選定した部品保管拠点と運搬手段とを指定し、出庫対象部品の出庫手配を自動で行う。自動出庫部34からの出庫手配は、例えば受信装置21から、選定された部品保管拠点に部品出庫の通知が送信されることによって行われる。これにより、自動出庫部34で指定された部品保管拠点から、所定の運搬手段で、出庫対象部品の搬送が開始される。
【0063】
次に、故障対応時間算出部35は、原因調査時間算出部29で算出された原因調査時間、対策作業時間算出部30で算出された対策作業時間、及び、部品搬送時間算出部33で算出された部品搬送時間から、故障対応時間を算出する。故障対応時間とは、故障した昇降機1について、原因調査を開始してから、対策作業(復旧作業)が完了するまでの総合時間である。
【0064】
図11は、故障対応時間算出部35における故障対応時間算出方法を示したフローである。図11に示すように、故障対応時間算出部35には、まず、原因調査時間算出部29で算出された原因調査時間が入力される(ステップS351)。ここでは、故障原因の確率合計が70%となる原因機器に対する原因調査時間が入力される。
【0065】
次に、故障対応時間算出部35に、対策作業時間算出部30で算出された対策作業時間が入力される(ステップS352)。ここでは、故障原因の確率合計が70%となる原因機器に対する対策作業時間が入力される。
【0066】
次に、故障対応時間算出部35に、部品搬送時間算出部33で算出された部品搬送時間が入力される(ステップS353)。ここでは、故障原因の確率合計が70%となる原因機器に対する候補部品の部品搬送時間が入力される。
【0067】
次に、故障対応時間算出部35は、原因調査時間と部品搬送時間とを比較する(ステップS354)。ステップS354において、「YES」と判断された場合、すなわち、原因調査時間が部品搬送時間よりも短いと判断された場合には、部品搬送時間と対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する(ステップS356)。すなわち、この場合には、原因調査が完了した時点でも、部品の到着まで時間があることを考慮して、全体の故障対応時間が算出される。
【0068】
一方、ステップS356、「NO」と判断された場合、すなわち、原因調査時間が部品搬送時間よりも長いと判断された場合には、原因調査時間と対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する(ステップS355)。すなわち、この場合には、原因調査の完了前に、必要な部品が現地に到着していることを考慮して、全体の故障対応時間が算出される。
【0069】
このように、故障対応時間算出部35では、原因調査時間と、対策作業時間と、部品搬送時間との重複部分の関係を考慮することで、より正確な故障対応時間を算出することができる。そして、図11のようにして算出された故障対応時間は、保守員手配部41及び支援者要否判断部36に入力される。
【0070】
保守員手配部41では、現地にまだ保守員が手配されていない場合において、保守員の手配を行う。例えば、昇降機1の故障が発生した後、昇降機1自体が発報したエラーコードや、住人又は管理人による情報から、故障状態が類似故障日報検索部27に入力されている場合、まだ保守員4は現場に手配されていない場合がある。この場合には、保守員手配部41において、保守員4の手配が行われる。例えば、類似故障日報検索部27に入力された故障情報が保守員の携帯端末5からの入力であった場合には、すでに保守員が現場に到着しているものと判断し、保守員手配部41による保守員の手配は行われない。
【0071】
保守員手配部41では、故障した昇降機1の機種、及び、故障原因機器群に挙げられた原因機器を、スキルDB45に照合して、故障原因機器群に挙げられた原因機器の故障対応が可能なスキル保有者を保守員候補として選定する。また、昇降機1の住所情報と保守員候補の現在の位置情報とから、例えば、最も早く現場に到着可能な保守員候補を、保守員として手配する。
【0072】
保守員手配部41によって保守員が選定された場合には、後述する故障対応情報送信部37及び受信装置21を介してその保守員4の携帯端末5に連絡が行く。保守員4は携帯端末5に出動の可否を入力し、可能である場合には、現場に移動し、作業を開始する。保守員4の携帯端末5からの出動可否の応答は、受信装置21を介して保守員手配部41に入力される。
【0073】
一方、保守員手配部41おいて、手配された保守員4の出動が不可能であると保守員4から入力があった場合、又は、一定時間、手配した保守員4からの応答が無いと判断した場合には、保守員手配部41は、スキルDB45を参照して保守員候補の中から次に適正と判断された保守員4を手配する。保守員手配部41による保守員4の手配は、保守員4の出動が可能となるまで行う。
【0074】
支援者要否判断部36は、入力された故障対応時間をもとに、支援者手配の要否を判断する。支援者とは、現地で作業に当たる保守員の作業を支援する保守員を指す。支援者要否判断部36は、故障対応時間が、所定の時間、例えば3時間未満であった場合には、支援者は必要ないと判断する。支援者要否判断部36において、支援者が必要ないと判断された場合には、支援者の手配を行うことなく、故障対応情報送信部37に、各処理で抽出された各種情報を送信する。
【0075】
一方、支援者要否判断部36において、故障対応時間が、所定の時間、例えば3時間以上であった場合には、支援者が必要であると判定し、その判定結果を、支援者手配部38に送信する。
【0076】
支援者手配部38は、原因調査時間及び対策作業時間に応じて、適正な支援者を手配する。図12は、本実施形態の故障対応支援者手配システムにおける故障対応支援者手配方法を説明するためのフローである。
【0077】
支援者要否判断部36において、支援者が必要であると判断された場合に、支援者手配部38において、図12のフローがスタートする。本実施形態では、故障対応時間が3時間以上であった場合に、支援者手配部38による支援者手配が行われることとする。
【0078】
支援者手配部38では、まず、原因調査時間及び対策作業時間が共に90分以上であるか否かを判定する(ステップS381)。ステップS381において、「YES」であった場合、すなわち、原因調査時間及び対策作業時間も共に90分以上であった場合、支援者手配部38は、スキルDB45から原因調査スキル保有者と対策作業スキル保有者を支援者として選定し、手配する(ステップS387)。本実施形態では、原因調査スキル保有者の一例は、図6に示す保守員Xであり、対策作業スキル保有者の一例は、図7に示す保守員Yである。
【0079】
ステップS381において、「NO」であった場合、すなわち、原因調査時間及び対策作業時間のいずれかが90分未満であった場合、原因調査時間のみ90分以上であるか否かを判定する(ステップS382)。ステップS382において、「YES」であった場合、すなわち、原因調査時間のみ90分以上であった場合、支援者手配部38は、スキルDB45から原因調査スキル保有者を支援者として選定し、手配する(ステップS386)。
【0080】
一方、ステップS382において、「NO」であった場合、すなわち、原因調査時間が90分未満であった場合、次に、対策作業時間のみが90分以上であるか否かを判定する(ステップS383)。ステップS383において、「YES」であった場合、すなわち、対策作業時間が90分以上であった場合、支援者手配部38は、スキルDB45から対策作業スキル保有者を支援者として選定し、手配する(ステップS385)。
【0081】
一方、ステップS383において、「NO」であった場合、すなわち、対策作業時間が90分未満であった場合、部品搬送時間に時間を要していることとなるため、支援者手配部38は、支援者手配不要と判断する(ステップS384)。
【0082】
ここで、ステップS387、ステップS386、ステップS385において、原因調査スキル保有者及び/又は対策作業スキル保有者を選定する手順について説明する。原因調査スキル保有者を選定する場合、支援者手配部38は、スキルDB45から、故障した昇降機1の機種及び原因機器について、原因調査の経験回数のランクがより高い保守員(原因調査スキル保有者)を原因調査支援者として選定する。例えば、図6に示した作業経験を有する保守員Xは、図7に示した作業経験を有する保守員Yよりも原因調査のランクが高い。したがって、この場合には、保守員Xが原因調査支援者に選定される。
【0083】
原因調査支援者7を手配する場合には、故障した昇降機1の住所と、原因調査スキル保有者の現在置とから、移動時間が最も早い原因調査スキル保有者を選定するのが好ましい。これにより、より早い段階で、原因調査を開始することができる。したがって、支援者手配部38は、複数の原因調査スキル保有者が存在した場合には、より移動時間が早い原因調査スキル保有者を原因調査支援者7として選定する。
【0084】
また、対策作業スキル保有者を選定する場合、支援者手配部38は、スキルDB45から故障した昇降機1の機種及び原因機器について、修理、調整などの対策作業の経験回数のランクがより高い保守員(対策作業スキル保有者)を対策作業支援者として選定する。例えば、図7に示した作業経験を有する保守員Yは、図6に示した作業経験を有する保守員Xよりも対策作業のランクが高い。したがって、この場合には、保守員Yが対策作業支援者に選定される。
【0085】
対策作業は、原因調査や、部品搬送が終わってから開始される。このため、対策作業が開始されるまでの間に到着可能な対策作業スキル保有者の中から、最も対策作業に関するスキルレベルの高い対策作業スキル保有者が、対策作業支援者8として選定されるのが好ましい。すなわち、支援者手配部38は、対策作業支援者8を選定する場合には、所定の時間までに現場に到着可能な複数の対策作業スキル保有者の中からよりレベルの高い対策作業スキル保有者を選定する。これにより、対策作業の効率化の向上を図ることができる。
【0086】
支援者手配部38において、原因調査支援者及び/又は対策作業支援者が選定された場合、その選定結果が、故障対応情報送信部37及び受信装置21を介して、選定された原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の携帯端末5に送信される。選定された原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8は、各自の携帯端末5から、受信した応援要請に対して出動の可否を入力し、監視センター2に送信する。監視センター2に送信された出動の可否は、支援者手配部38に入力される。
【0087】
選定された原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8が、出動不可能である場合には、支援者手配部38は、再度、原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の選定を行う。この場合の選定についても、出動が不可能であった保守員を除いて、再度、故障した昇降機1の機種及び原因機器と、必要な支援内容とをスキルDB45に照合し、新たな原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の選定を行う。
【0088】
また、選定された原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8が、別の現場で作業中である場合、携帯端末5からの操作ができない可能性もある。したがって、原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8に対する応援要請に対して、一定時間、原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8から応答が無い場合には、支援者手配部38は、選定した原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の出動が不可能であると判断する。この場合にも、出動が不可能であった保守員を除いて、再度、故障した昇降機1の機種及び原因機器と、必要な支援内容とをスキルDB45に照合し、新たな原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の選定を行う。
【0089】
次に、ステップS387及びステップS386において、原因調査スキル保有者を原因調査支援者7として選定し手配した場合、支援者手配部38は、原因調査開始前に手配した原因調査支援者7が現場に到着可能か否かを判定する(ステップS388)。
【0090】
ステップS388では、手配した原因調査支援者7の位置情報、手配した原因調査支援者7の現在の作業状況、及び、移動手段から、手配した原因調査支援者7の現場への到着時間を算出して、その判定に用いる。ステップS388において、「YES」と判定された場合、すなわち、原因調査開始前に原因調査支援者7が到着可能であると判定された場合には、支援者手配部38は、原因調査支援者7の到着待ちの支持を、現場の保守員4に送信する(ステップS390)。
【0091】
一方、ステップS388において、「NO」と判定された場合、すなわち、原因調査開始前に原因調査支援者7が到着できないと判定された場合には、支援者手配部38は、原因調査応援を遠隔による後方支援に切り替える(ステップS389)。この場合、手配されている原因調査支援者7に対して、電話等での対応を依頼してもよく、また、後方支援可能な保守員を新たな原因調査支援者7として手配することとしてもよい。後方支援の場合には、原因調査支援者7を選定する際に、原因調査スキル保有者の現在置を考慮する必要が無い。
【0092】
以上のようにして、支援者手配部38では、原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の選定、及び手配を行う。支援者手配部38から出力される情報は、故障対応情報送信部37及び受信装置21を介して、現場の保守員4、及び、該当する原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の携帯端末5に送信される。
【0093】
故障対応情報送信部37は、情報処理部40で抽出し記憶された各種情報を、受信装置21を介して保守員4、及び、該当する原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の携帯端末5に送信する。図13に、故障対応情報送信部37が保守員4、及び、該当する原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8の携帯端末5に送信する情報の一例を示す。故障対応情報送信部37からは、例えば、図13に示すように、故障原因機器候補群と、各機器が故障原因である確率と、出庫情報と、部品情報と、原因調査時間と、対策作業時間と、部品搬送時間(到着時間)と、支援者手配状況が送信される。保守員4、及び、該当する原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8は、携帯端末5に送信されてきた情報を元に、現場における作業を開始する。
【0094】
保守員4は、作業終了後、携帯端末5から故障日報を入力することで、故障日報DBの更新を行うことができる。また、保守員4、及び、該当する原因調査支援者7及び/又は対策作業支援者8は、作業終了後、それぞれの携帯端末5から、保守作業を行った機種、原因機器、及び、作業内容についての入力を行う。これにより、保守作業に当たった保守員のスキルDB45の更新が為される。
【0095】
本実施形態では、原因調査支援が必要な場合には、原因調査が得意な原因調査スキル保有者を原因調査支援者として選定し、対策作業支援が必要な場合には、対策作業が得意な対策作業スキル保有者を対策作業支援者として選定し手配する。これにより、より適正な保守員を支援者として現場に派遣することができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0096】
また、本実施形態では、故障対応時間算出部35における故障対応時間算出時に、現場への保守員の派遣がまだ為されていない場合には、スキルDB45に、故障した昇降機の機種、原因機器を照合し、適正な保守員を選定し、手配することができる。これにより、現場で作業する保守員の選定をより適切に行うことができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0097】
また、本実施形態では、故障原因を特定するための原因調査時間と、故障原因機器にたいして行う調整や部品交換等の対策作業時間とを分けて算出する。そして、原因調査時間、対策作業時間、及び、部品搬送時間との関係性に基づいて、原因調査の開始から、対策作業(復旧作業)完了までにかかる故障対応時間を算出する。これにより、原因調査時間と部品搬送時間とに重複部分がある場合には、この重複時間は故障対応時間に含まれないため、正確な故障対応時間を求めることができる。これにより、支援者手配などのバックアップ要否の判断を正確に行うことができ、昇降機の復旧効率の向上を図ることができる。
【0098】
また、本実施形態では、故障の原因機器候補を確率付きで抽出し、確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群として、その故障原因機器群における原因調査時間、対策作業時間、部品の搬送時間を推定して求めることができる。これにより、保守員によって、現場での原因調査が開始される前に、予め、原因機器候補を保守員に通知することができると共に、原因機器候補の部品の調整又は交換に必要な部品の搬送を開始することができる。この結果、故障対応時間の短縮を図ることができる。
【0099】
本実施形態では、故障原因機器群を抽出する際、確率の高い順から加算して70%となる一つ以上の原因機器を、故障原因機器群とする例としたが、この割合は一例であり、適宜変更可能である。また、本実施形態では、原因調査支援者、及び/又は、対策作業支援者を必要に応じて1人ずつ選定する例を示したが、作業内容の難易度によって、複数人の支援者を手配する構成としてもよい。
【0100】
なお、本実施形態では、故障対応支援者手配システム100は、エレベーター等の昇降機と、保守員が携帯する携帯端末と、監視センターと、交通状況提供システムとによって構成されているがこの限りではない。本発明は、監視センター内に構成される情報管理部及び情報処理部の構成が実現可能な構成であればよい。
【0101】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…昇降機、2…監視センター、4…保守員、5…携帯端末、6…交通状況提供システム、11…制御盤、12…遠隔監視装置、20…情報管理部、21…受信装置、23…昇降機仕様DB、22…故障日報DB、23…昇降機仕様DB、24…機器別標準原因調査時間DB、25…機器別標準対策作業時間DB、26…部品情報DB、45…スキルDB、27…類似故障日報検索部、28…原因機器候補抽出部、29…原因調査時間算出部、30…対策作業時間算出部、31…出庫対象部品選定部、32…運搬手段選定部、33…部品搬送時間算出部、34…自動出庫部、35…故障対応時間算出部、36…支援者要否判断部、37…故障対応情報送信部、38…支援者手配部、40…情報処理部、41…保守員、手配部100…故障対応支援者手配システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13