(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】流体注射器具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240403BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20240403BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61M5/142 504
A61M5/20 560
A61M5/24 530
(21)【出願番号】P 2021500914
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 FR2019051746
(87)【国際公開番号】W WO2020012132
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ダヴィッド
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110711(JP,A)
【文献】特開2017-074080(JP,A)
【文献】特表2014-519900(JP,A)
【文献】米国特許第05113906(US,A)
【文献】特開2014-012123(JP,A)
【文献】特表2013-544162(JP,A)
【文献】特表2010-501283(JP,A)
【文献】国際公開第2018/067734(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 5/20
A61M 5/24
A61M 5/28
A61M 39/22
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体注射器具であって、
注射部位(SI)に接触するための本体、
複数の流体リザーバ(210)、
前記複数の流体リザーバと同数のチューブ(145)、
1個又は複数のリザーバ(210)の内容物を内部に注射するために、注射部位(SI)に貫通する注射針(120)を備え、
各チューブ(145)の一端は、対応する流体リサーバ(210)に接続され、
前記器具は、さらに、単一のロータリアクチュエータ(130)を備えることを特徴とし、
前記単一のロータリアクチュエータ(130)が第1の回転方向に回るとき、流体を供給すべきリザーバ(210)の選択を起動し、それが逆方向に回るとき、ディスペンサシステム、特に、ペリスタポンプ(150)を作動させ、
前記
各チューブ(145)の他端は、合流して、前記ペリスタポンプ(150)を介して、注射針(120)に接続し、
前記
ロータリアクチュエータ(130)は、本体の長円形の開口(1500)を貫通して延在する中央ピン(1300)を含み、それによって揺動コグを形成し、
前記ロータリアクチュエータ(130)は、第1の回転方向に回るとき、前記供給が選択されたリザーバ(210)に対応するチューブ(145)を開放し、選択されなかったリザーバに対応するチューブ(145)を閉鎖し、逆方向に回るとき、揺動コグの作用により、各チューブ(145)の前記開放及び前記閉鎖の状態は、維持される
流体注射器具。
【請求項2】
前記
ロータリアクチュエータ(130)は、前記長円形の開口(1500)の第1端に存する場合、流体を供給するべきリザーバ(210)の選択を作動するために、特に、中間コグ(133)を介して、回転部材(132、135)と噛み合い、前記長円形の開口(1500)の他端に存する場合、ペリスタポンプ(150)を作動させるために、クランクシャフト(131)と噛み合う
ことを特徴とする請求項1に記載の流体注射器具。
【請求項3】
液体を投与する前に、各プライミング針(125)は、各リザーバ(210)に対応し、当該リザーバ(210)に貫通し、
各チューブ(145)は、一端において、プライミング針(125)に接続し、他端において、マニホールド(140)に接続し、
前記マニホールド(140)は、チューブ(148)の一部分によって、前記注射針に接続されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体注射器具。
【請求項4】
1個又は複数のリザーバ(210)を選択するリザーバ選択手段を含み、
前記リザーバ(210)の内容物は、次の作動中に投与され、
前記リザーバ選択手段は、回転部材(132、135)を備え、
前記回転部材(132、135)は、各チューブ(145)を通る流体の流れを開閉するように、リザーバ(210)のチューブ(145)と協働するように構成されたカム手段(1320、1350)を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の流体注射器具。
【請求項5】
前記回転部材は、カム手段(1320)を備えたセレクタコグ(132)である
ことを特徴とする請求項4に記載の流体注射器具。
【請求項6】
前記カム手段(1320)は、周方向一部に間隙(1321)を有した円弧状に形成され、カム高さは、円弧の両端が低く、中央部が高いアーチ状をしていて、前記カム手段(1320)がチューブ(145)と接触すると、流体の流れを遮断するようにそれを挟み込み、チューブ(145)が前記間隙(1321)に対向した位置に存在すると、流体を流すことを可能とする
ことを特徴とする請求項5に記載の流体注射器具。
【請求項7】
前記カム手段(1320)は、前記セレクタコグ(132)の中央孔(1325)の径方向に形成され、前記チューブ(145)は、前記中央孔(1325)を通過し、前記カム
手段(1320)は、より大きな径の部分(1321)を含み、チューブ(145)が小さな径の部分と協働する際に、チューブ(145)が挟まれ、チューブ(145)が、より大きな径の部分(1321)と協働する際に、チューブ(145)が挟まれることがない
ことを特徴とする請求項5に記載の流体注射器具。
【請求項8】
前記回転部材は、カム手段(1350)を備えたシャフト(135)である、
ことを特徴とする請求項4に記載の流体注射器具。
【請求項9】
前記カム手段(1350)は、複数の可撓性ブレードを備えるピンチ部材(1360)と協働し、前記可撓性ブレードは、各リザーバチューブ(145)に対して1つずつ存在し、カム手段(1350)が前記ピンチ部材の可撓性ブレードを変形させると、前記可撓性ブレードは、その対応するチューブ(145)を挟み込んで、流体の流れを遮断する
ことを特徴とする請求項8に記載の流体注射器具。
【請求項10】
前記ディスペンサシステムは、クランクシャフト(131)上で回転するように取り付けられたリング(150)を含むペリスタポンプを備え、
前記リング(150)は、前記クランクシャフト(131)の回転軸(X)に対してオフセットされた回転軸(Y)の周りを回転し、前記クランクシャフト(131)の周囲に延伸するチューブ(148)の一部分を徐々に圧縮する
ことを特徴とする請求項3~9のいずれかに記載の流体注射器具。
【請求項11】
前記リング(150)は、前記クランクシャフト(131)の中心シリンダ(1310)の周囲を回転する
ことを特徴とする請求項10に記載の流体注射器具。
【請求項12】
各リザーバは、1mL-10mLの範囲の、好ましくは、約3mLの流体内容物を収容する
ことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の流体注射器具。
【請求項13】
前記器具は、電子モジュール(300)を含む
ことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の流体注射器具。
【請求項14】
前記電子モジュール(300)は、
電源、特に、オプションとして充電可能なバッテリ、
マイクロプロセッサ、
記憶手段、
信号送受信手段及び
モータ
を備えることを特徴とする請求項13に記載の流体注射器具。
【請求項15】
前記電子モジュール(300)は、再利用可能であり、器具上で取り外し可能な方法で取り付けられる
ことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の流体注射器具。
【請求項16】
流体注射器具であって、
注射部位(SI)に接触するための本体、
複数の流体リザーバ(210)、
前記複数の流体リザーバと同数のチューブ(145)、
1個又は複数のリザーバ(210)の内容物を内部に注射するために、注射部位(SI)に貫通する注射針(120)を備え、
各チューブ(145)の一端は、対応する流体リサーバ(210)に接続され、
前記器具は、さらに、単一のロータリアクチュエータ(130)を備えることを特徴とし、
前記単一のロータリアクチュエータ(130)が第1の回転方向に回るとき、流体を供給すべきリザーバ(210)の選択を起動し、それが逆方向に回るとき、ディスペンサシステム、特に、ペリスタポンプ(150)を作動させ、
前記各チューブ(145)の他端は、合流して、前記ペリスタポンプ(150)を介して、注射針(120)に接続し、
前記
ロータリアクチュエータ(130)は、本体の長円形の開口(1500)を貫通して延在する中央ピン(1300)を含み、それによって揺動コグを形成し、
さらに、1個又は複数のリザーバ(210)を選択するリザーバ選択手段を含み、
前記リザーバ(210)の内容物は、次の作動中に投与され、
前記リザーバ選択手段は、回転部材(132、135)を備え、
前記回転部材(132、135)は、各チューブ(145)を通る流体の流れを開閉するように、リザーバ(210)のチューブ(145)と協働するように構成されたカム手段(1320、1350)を備え、
前記回転部材は、カム手段(1320)を備えたセレクタコグ(132)であり、
前記カム手段(1320)は、前記セレクタコグ(132)の中央孔(1325)の径方向に形成され、前記チューブ(145)は、前記中央孔(1325)を通過し、前記カム手段(1320)は、より大きな径の部分(1321)を含み、チューブ(145)が小さな径の部分と協働する際に、チューブ(145)が挟まれ、チューブ(145)が、より大きな径の部分(1321)と協働する際に、チューブ(145)が挟まれることがない
ことを特徴とする流体注射器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体注射器具に関する。
【背景技術】
【0002】
流体注射器具は、周知である。特に、流体注射器具には、自動注射器が含まれる。自動注射器のリザーバ(一般的には、シリンジ)の内容物は、装填されたばねを一般に含むアクチュエータシステムの手段によって自動的に注射される。トリガされると、リザーバ内のピストンを動かして流体を注射する。
【0003】
このような先行技術の器具について、特に、投与される容量が大きい場合、流体が比較的粘性を有する場合、又は、単一の治療で複数の流体を組み合わせる必要がある場合に、問題が発生する可能性がある。従って、一例として、粘性流体の注射器具は、特に複数のリザーバを含む場合に、一般に、全くコンパクトではなく、重く、かさばる。さらに、1又は複数のリザーバ内に含まれる流体は、一般に、リザーバの出口と注射針との間の多数の異なる材料と接触しており、これは、流体の潜在的な汚染のリスクをもたらす可能性がある。加えて、そのような器具は、複雑であり、しばしば、電子機器を組み込んでいるが、一般に、使用後に、器具全体が廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2011/158823号明細書
【文献】米国特許第4273260号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3165253号明細書
【文献】国際公開第2013/070259号
【文献】欧州特許出願公開第2221084号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2179754号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/088271号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上記欠点を有しない注射器具を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、大容量及び/又は高粘度であっても、流体を投与することを可能にする注射器具を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、コンパクトで、かさばらない流体注射器具を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、別々に再利用及び/又はリサイクルすることができる部分を含む流体注射器具を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、投与される流体が、医薬用流体を供給するように適合された全ての、可能な限り少ない数の異なる材料と接触することを確実にする流体注射器具を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、製造及び組立が簡単で安価な流体注射器具を提供することである。
【0011】
本発明は、流体注射器具であって、注射部位に接触するための本体、少なくとも2個の流体リザーバ、1個又は複数のリザーバの内容物を内部に注射するために、注射部位に貫通する注射針を備え、前記器具は、さらに、単一のロータリアクチュエータを備えることを特徴とし、前記単一のロータリアクチュエータが第1の回転方向に回るとき、流体を供給すべきリザーバの選択を起動し、それが逆方向に回るとき、ディスペンサシステム、特に、ペリスタポンプを作動させることを特徴とする。
【0012】
ここで、好ましくは、前記アクチュエータは、本体の長円形の開口を貫通して延在する中央ピンを含み、それによって揺動コグを形成してもよい。
【0013】
ここで、好ましくは、前記アクチュエータは、前記長円形の開口の第1端に存する場合、流体を供給するべきリザーバの選択を作動するために、特に、中間コグを介して、回転選択部材と噛み合い、前記長円形の開口の他端に存する場合、ペリスタポンプを作動させるために、クランクシャフトと噛み合う、としてもよい。
【0014】
ここで、好ましくは、液体を投与する前に、各プライミング針は、各リザーバに対応し、当該リザーバに貫通し、各リザーバは、一端において、そのプライミング針に接続し、他端において、マニホールドに接続するチューブを含み、前記マニホールドは、チューブの一部分によって、前記注射針に接続されている、としてもよい。
【0015】
ここで、好ましくは、前記流体注射器具は、1個又は複数のリザーバを選択するリザーバ選択手段を含み、前記リザーバの内容物は、次の作動中に投与され、前記リザーバ選択手段は、回転部材を備え、前記回転部材は、各チューブを通る流体の流れを開閉するように、リザーバのチューブと協働するように構成されたカム手段を備える、としてもよい。
【0016】
ここで、第一の実施の形態において、前記回転部材は、カムを備えたセレクタコグである、としてもよい。
【0017】
ここで、好ましくは、前記カムは、周方向一部に間隙(1321)を有した円弧状に形成され、カム高さは、円弧の両端が低く、中央部が高いアーチ状をしていて、前記カムは、少なくとも1つの間隙によって遮断され、前記カムがチューブと接触すると、流体の流れを遮断するようにそれを挟み込み、チューブが前記間隙に対向した位置に存在すると、流体を流すことを可能としてもよい。
【0018】
ここで、変形例において、前記カムは、前記セレクタコグの中央孔の径方向に形成され、前記チューブは、前記中央孔を通過し、前記カムは、より大きな径の部分を含み、チューブが小さな径の部分と協働する際に、チューブが挟まれ、チューブが、より大きな径の部分と協働する際に、チューブが挟まれることがない、としてもよい。
【0019】
ここで、第二の実施の形態において、前記回転部材は、カム要素を備えたシャフトである、としてもよい。
【0020】
ここで、好ましくは、前記カム要素は、複数の可撓性ブレードを備えるピンチ部材と協働し、前記可撓性ブレードは、各リザーバチューブに対して1つずつ存在し、カム要素が前記ピンチ部材の可撓性ブレードを変形させると、前記可撓性ブレードは、その対応するチューブを挟み込んで、流体の流れを遮断してもよい。
【0021】
ここで、好ましくは、前記ディスペンサシステムは、クランクシャフト上で回転するように取り付けられたリングを含むペリスタポンプを備え、前記リングは、前記クランクシャフトの回転軸(X)に対してオフセットされた回転軸(Y)の周りを回転し、前記クランクシャフトの周囲に延伸するチューブの一部分を徐々に圧縮してもよい。
【0022】
ここで、好ましくは、前記リングは、前記クランクシャフトの中心シリンダの周囲を回転してもよい。
【0023】
ここで、好ましくは、各リザーバは、1mL(ミリリットル)-10mLの範囲の、好ましくは、約3mLの流体内容物を収容してもよい。
【0024】
ここで、好ましくは、前記器具は、電子モジュールを含む、としてもよい。
【0025】
ここで、好ましくは、前記電子モジュールは、電源、特に、オプションとして充電可能なバッテリ、マイクロプロセッサ、記憶手段、信号送受信手段及びモータを備える、としてもよい。
【0026】
ここで、好ましくは、前記電子モジュールは、再利用可能であり、器具上で取り外し可能な方法で取り付けられる、としてもよい。
【0027】
これらの又は他の特性及び利点は、限定されない例として、また、添付図面を参照して、以下の詳細な説明から、より明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、好ましい実施の形態における自動注射器具の分解斜視図である。
【
図2】(a)は、組立中を示す、
図1と同様の斜視図である。(b)は、変形例を示す、(a)と同様の斜視図である。
【
図3】
図3は、組立後かつ使用前を示す、
図2と同様の斜視図である。
【
図4】
図4は、注射部位に適用される場合を示す、
図3と同様の斜視図である。
【
図5】
図5は、注射針の注射システムを部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図6】
図6は、好ましい実施の形態における切替モジュールの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6の切替モジュールの要部透視斜視図である。
【
図8】
図8は、好ましい実施形態におけるリザーバモジュールの斜視図である。
【
図9】
図9は、
図6及び
図8における切替モジュールがどのように動作するかを示す透視斜視図である。
【
図10】
図10は、
図6及び
図8における切替モジュールがどのように動作するかを示す透視斜視図である。
【
図11】
図11は、
図6及び
図8における切替モジュールがどのように動作するかを示す、部分的に切り取った断面斜視図である;
【
図12】
図12は、
図6及び
図8における切替モジュールがどのように動作するかを示す、部分的に切り取った断面斜視図である;
【
図18】
図18は、好ましい実施の形態におけるペリスタポンプを部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図24】
図24は、好ましい実施の形態における切替モジュールを部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図25】
図25は、
図24の切替モジュールの揺動コグの断面図であり、その作動モードでペリスタポンプが示されている。
【
図27】
図27は、別の好ましい実施の形態における切替モジュールを部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図30】
図30は、さらに別の好ましい実施の形態における切替モジュールの分解斜視図である。
【
図32】
図32は、
図30及び31における切替モジュールがどのように動作するかを、部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図33】
図33は、
図30及び31における切替モジュールがどのように動作するかを、部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図38】
図38は、さらに別の好ましい実施の形態における切替モジュールを部分的に切り取って示す斜視図である。
【
図40】
図40は、
図38及び
図39における切替モジュールがどのように動作するかを、部分的に切り取って示す側面図である。
【
図41】
図41は、
図38及び
図39における切替モジュールがどのように動作するかを、部分的に切り取って示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、典型的には、数ミリリットル程度の、さらに典型的には、1mLから10mLの範囲、例えば、3mLの、比較的大容量の流体を投与するように特に適合された注射器具に関する。本発明の本器具は、また、比較的粘性のある流体を投与するように適合している。
【0030】
好ましくは、本器具は、複数のモジュールを備える。従って、
図1、
図2(a)、
図3及び
図4に示す例では、本器具は、以下において、切替モジュール100及びリザーバモジュール200として参照されるメインモジュール並びに電子モジュール300を備える。切替モジュール100及びリザーバモジュール200は、好ましくは使い捨て可能であり、一方、電子モジュール300は、好ましくは、再利用可能である。
図2(b)に示す変形例では、切替モジュール100及びリザーバモジュール200は、単一のモジュールを構成する。
【0031】
本実施形態では、リザーバモジュール200は、好ましくは、特に空間を節約するように、三角形に配置された3個のリザーバ210を備えるが、当然ながら、例えば、単一のリザーバ、2個のリザーバ又は3個以上のリザーバのように、任意の数のリザーバを備えることができる。複数のリザーバ210を備える場合、図中の複数の例のように、前記複数のリザーバは、同一又は異なる薬品を収容してもよい。
図2(b)及び
図38-
図41に示す例では、複数のリザーバ210の数は、3個であり、三角形ではなく、並んで配置されている。従来の方法では、各リザーバ210は、作動中に、当該リザーバ内で移動するピストンを含んでもよい。
【0032】
1個又は複数のリザーバを有する器具を使用することにより、特に、以下の利点を提供することが可能になる:
- 異なる容量の投与を必要とする可能性のある2つ以上のタイプの流体のための単一の器具;
- カクテル又は2つ以上の流体の混合物を投与する可能性;
- 鎮痛薬(麻酔薬、酸中和剤など)と注射薬とを関連づける可能性;
- 異なる投薬治療の頻度を有する可能性;例えば、複数の異なる薬品を服用する第1シーケンスS1、続いて単一の薬品を服用する第2シーケンスS2など;
- 数種類の治療のための注射器具の標準化の可能性;
- 器具の開発コストの低減;
- 流体の調合を調整する可能性;
- 様々な流体製剤を1つの器具に収納することができる;
- 注射回数の減少。
【0033】
図2(a)、
図3及び
図4は、本器具の使用中の連続した工程を示す。
【0034】
このように、
図2(a)に見られるように、最初に、電子モジュール300及びリザーバモジュール200は、切替モジュール100上に取り付けられる。最初に電子モジュール300を取り付ける、又は、逆に、最初にリザーバモジュール200を取り付ける形態で実施することができる。好ましくは、いったん組み立てると、電子モジュール300を作動させる形態で実施することができ、その結果、エネルギー消費が少ない「スタンバイ」又はOFFモードから、もしあれば、それが作動可能である「アクティブ」モードへと移行することができる。代わりに、電子モジュール300は、前記リザーバモジュールが最後に組み立てられたとき、リザーバモジュール200の組み立て中に、起動されてもよい。オプションとして、
図3に示すように、本器具が注射部位SIに当てられるときにのみ、電子モジュールを起動するように、本器具は、注射部位SIに当てられる表面にセンサ102を含むようにしてもよい。
【0035】
図2(b)に示す変形例では、本器具は、電子モジュール300とメインモジュールとの2つのモジュールのみを含むとしてもよい。メインモジュールは、切替モジュール100とリザーバモジュール200との両方を組み合わせてなる。
【0036】
本器具が組み立てられると、切替モジュール100の後面に設けられた保護フィルム101が除去され(
図3)、本器具が注射部位SIに当てられ(
図4)、そこで、公知の方法により、適切な接着剤によって保持される。
【0037】
次いで、利用者は、切替モジュール100又は電子モジュール300のアクチュエータボタン110を押して、本器具を作動させ、注射部位SIに流体を注射する。
【0038】
好ましくは、本器具は、電子モジュール300によって、制御される。特に、電子モジュールは、電源、特にオプションとして充電可能なバッテリ、マイクロプロセッサ、記憶手段及び信号送受信手段を備える。
【0039】
好ましくは、本器具は、独立している。しかし、本器具は、特に、流体を供給すべき1又は複数のリザーバの選択及び/又は順序、投与速度などに関して、当該器具の作動中に、制御命令を電子モジュールに送信することによって、遠隔制御することができる。
【0040】
好ましくは、電子モジュールは、作動サイクルを実行するように、本器具の可動要素を作動させるモータ350(
図7)を制御する。
【0041】
電子モジュール300の電子手段は、本器具の動作に関与するが、本器具の本質的な特性を形成するものではなく、当業者に周知の如何なる方法でも製造することができるので、ここでは、より詳細には説明しない。
【0042】
変形例では、電子モジュールの代わりに及び電子モジュールを置き換えて、本器具を作動させるために、例えば、1つ以上のバネを使用する、機械的アクチュエータシステムの形態で実施することが可能である。
【0043】
注射の終了時に、本器具は注射部位SIから取り外され、電子モジュール300は、特に、再利用できるように、本器具から取り外され、切替モジュール100及びリザーバモジュール200は廃棄される。
【0044】
図5は、この実施形態における、切替モジュール100の本体上で、軸を中心として揺動(枢動)するレバーの形態のアクチュエータボタン110の一例を示す。前記レバーを枢動させることにより、まず、注射針120を注射部位内に挿入させ、注射針120を通して流体を投与するように、本器具を作動させる。
【0045】
好ましくは、作動前に、1又は複数のリザーバ210は、隔壁形成膜によって閉じられている。作動中にプライミング針125によって、隔壁形成膜に穴が開けられる。
図7及び
図8に示す例では、切替モジュール100は、各リザーバ210に対して1本ずつ、合計で3本のプライミング針125を含む。リザーバモジュール200が切替モジュール100に取り付けられたときに、1又は複数の隔壁形成膜に穴を開けることによってプライミング(呼び水)する。
【0046】
図7及び
図8の例に示すように、複数のリザーバ210が用いられる場合、すべてのリザーバ210のプライミング針125は、単一の注射針120(
図15)に結合される。
【0047】
切替モジュール100は、いくつかの好ましい実施形態を参照して説明される。
【0048】
好ましくは、切替モジュール100は、以下のように動作する:
- 流体を供給すべき1又は複数のリザーバ210を選択し、及び
- 選択された1又は複数のリザーバ210に含まれる薬品を投与する。
【0049】
1又は複数のリザーバ210は、各リザーバに接続されたチューブを挟む又は閉じることによって選択される。
【0050】
選択された1又は複数のリザーバ210の内容物は、好ましくは、
図18-
図23を参照してより完全に後述される、ペリスタポンプ150の形態のディスペンサシステムの手段によって投与される。
【0051】
好ましくは、切替モジュール100は、コグシステム131、132、133、134、135を備えた単一のロータリアクチュエータ130を含む(
図24-
図30)。アクチュエータ130が第一の回転方向に回ると、それは、流体を供給すべき1又は複数のリザーバ210の選択を起動し、それが逆方向に回ると、ディスペンサシステム、すなわち、
図18-
図23の例におけるペリスタポンプ150を作動させる。好ましくは、前記アクチュエータ130を回動させるのは、
図7に示される電子モジュール300のモータ350である。
【0052】
アクチュエータ130は、切替モジュール100の本体内の長円形の開口1500を貫通して延在する中央ピン1300を含む。
【0053】
アクチュエータ130の回転方向に依存して、中央ピン1300は、長円形の開口1500の一方の端部又は他方の端部から平行状態でシフトする。
【0054】
第一の端部では、
図26に見られるように、アクチュエータ130は、特に中間コグ133を介して、セレクタコグ132と噛み合い、流体を供給すべき1又は複数のリザーバの選択を作動させる。
【0055】
他端では、
図25に見られるように、アクチュエータ130は、ペリスタポンプを作動させるように、クランクシャフト131と噛み合う。
【0056】
図25、
図26及び
図38、
図39の例では、アクチュエータ130を一方の回転方向又は他方の回転方向に回転させるように、駆動コグ134が設けられている。駆動コグ134は、モータに接続してもよい。変形例では、駆動コグを省略することができ、モータをアクチュエータ130に直接接続することができる。
【0057】
このように、アクチュエータ130は、揺動コグである。それは、その回転方向の機能として、及び上述の他の回転要素からの反対向きのトルクの結果として、長円形の開口1500に沿った平行移動においてシフトされる。
【0058】
好ましくは、切替モジュール100は、各々のリザーバ210から出ている各チューブ145を含むマニホールド140も含む(
図6)。各チューブ145は、一端がそのリザーバ210に接続され、他端がディスペンサシステムに接続され、具体的には、この実施形態では、一組のチューブ147、148、149を介して、ペリスタポンプ150、次いで注射針120(
図5)に接続される。
【0059】
複数のリザーバ210が存在する場合、特に、図中の例のように、3個のリザーバ内において、複数のチューブ145は、注射針120内に放出するように、ディスペンサシステムから下流で、ともに結合される。チューブ145、147、148、149のセットは、配管を形成し、そのいくつかの変形例が、特に、
図6、
図15及び
図30に示される。
【0060】
好ましくは、チューブ145、147、148、149は、投与される流体に適合する材料、例えば、カテーテルを製造するために一般的に使用される材料から作られる。
【0061】
好ましくは、作動中に流体を供給すべき1又は複数のリザーバ210は、リザーバ210に接続された1つ以上のチューブ145を挟むこと又は平坦化することによって、選択される。チューブ145が「挟まれる」と、流体がチューブに沿って流れることが妨げられる。対応するリザーバ210の内容物は、注射針120に向かって流れることができない。
【0062】
1又は複数のチューブ145は、可動部、特に、回転部材上に、形成されるカム手段によって挟まれることが好ましい。
【0063】
図11は、挟まれていないチューブ145を示し、その結果、流体は、チューブ145に沿って流れることができる。一方、
図12は、挟まれ又は平坦化されたチューブ145を示す。従って、流体は、流れることができない。
【0064】
図11-
図16に示す例では、単一のロータリアクチュエータ130のコグシステムの一部を形成するセレクタコグ132は、周方向一部に間隙(1321)を有した円弧状に形成され、カム高さは、円弧の両端が低く、中央部が高いアーチ状をしたカム1320を含む。
図16に見られるように、カム1320の前記突起は、間隙1321によって中断している。カム1320がチューブ145と接触すると、流体の流れを遮断するように、カム1320は、チューブ145を挟む。これに対して、チューブ145が間隙1321と対向した位置に存在すると、流動が可能である。
【0065】
図13及び
図14は、3本のチューブ145のうちの2本が挟まれ、1本のチューブ145が「開放」されている例を示す。ポンプが作動すると、開放されたチューブ145に接続されているリザーバ210から、薬品が吸引される。
【0066】
当然、
図27-
図41に示すように、他の変形された実施形態を示す他の構成も可能である。
【0067】
従って、
図27-
図29において、カム1320は、セレクタコグ132の中央孔1325内に半径方向に形成される。カム1320は、より大きな直径の部分1321を含む。この例において、3本存在するチューブ145は、中央孔1325を通過する。1本のチューブ145がより小さな直径の部分と協働すると、当該チューブ145は、挟まれる。一方、当該チューブ145がより大きな直径の部分1321と協働すると、当該チューブ145は、挟まれない。
【0068】
図30-
図37は、別の実施形態を示す。この実施形態では、セレクタコグは、複数のカム要素1350を支持する回転セレクタシャフト135に置き換えられる。具体的には、図示の例では、3個のカム要素1350が示されている。ピンチ部材1360が、複数のカム要素1350と複数のチューブ145との間に設けられている。ピンチ部材1360は、好ましくは、各チューブ145に対して1つの可撓性ブレードを備え、当該ブレードは、セレクタシャフト135のカム要素1350によって、弾性変形される。これは、カム要素がチューブに対して擦れることを回避し、これは、それら(ブレード)を変形させるという欠点を有し、各チューブ145の挟み込みをあまり効果的にしないという欠点を有し得る。
【0069】
図32及び35は、挟まれないチューブ145を示し、その結果、チューブ145は、流体の流れを通過させることができる。一方、
図33及び34は、ピンチ部材1360のブレードによって挟まれ又は平坦化されたチューブ145を示す。ピンチ部材1360自体がセレクタシャフト135のカム要素1350によって押され、従って、流体が流れることはできない。
【0070】
図38-
図41の例は、3個のリザーバが並行して配置されていて、
図30-
図37の実施の形態と非常に類似している。
図39に示すように、同じ平面内に、3本のプライミング針125が平行に配置されている。
【0071】
図示した実施例では、ピンチ部材1360は、単一のピース部品を形成する。しかし、変形例では、それぞれが可撓性ブレードによって形成される複数の別個のピンチ部材の形態で実施することが可能である。
【0072】
ディスペンサシステムは、ペリスタポンプを備えることが好ましい。前記ペリスタポンプは、リング150(
図6、
図22-
図23)を備え、前記クランクシャフト131の回転軸Xに対してオフセットされた回転軸Yを中心としてクランクシャフト131を作動(turn on)する(
図22-
図23)。好ましくは、
図22に見られるように、クランクシャフト131の回転軸Xは、リング150がその周囲を回ることができる中心軸方向シリンダ1310によって形成される。マニホールド140から注射針120へと進むチューブ148の一部は、クランクシャフト131の周囲に延び、その結果、リング150は、そのオフセット回転軸Yを中心に回るにつれて、クランクシャフト131の前記中心軸方向シリンダ1310を中心に回り、チューブ148に沿って圧縮を移動させ、それによって、該チューブ148内を通過する流体が投与されるようになる。
図19-
図21は、ペリスタポンプがどのように作動するかを示す。
【0073】
流体の投与が終了すると、注射針120は、好ましくは自動的に、本器具内に引き込まれる。流体の投与の終了は、機械的及び/又はソフトウェアモニタリングによって、識別することができる。
【0074】
図に示される実施の形態は、1個、2個又は3個のリザーバ210を含むように適合された器具を示す。リザーバモジュール200上のマスクを使用するための準備を行うことができる。器具の組み立て中に、リザーバの存在によってマスクが穿孔/貫通される。リザーバが存在しないとき、そのマスクは、チューブのそれぞれの分岐をシールするように作用し、投与中に、薬品が漏れることを防止する。
【0075】
上述の実施の形態は、特に、以下の利点を提供する:
- 流体を投与する速度は、個々の治療を最適化するように、調節されてもよく、また、時間の経過とともに変化してもよく、
- 複数のリザーバは、異なる速度及び異なる瞬間に、投与され得る薬品の組み合わせを使用することを可能にする。
【0076】
同時注射又は連続注射の使用は、次のために、複数のカートリッジを有するシステムにおいて適用することができる:
- 流体の流量を減らし、患者の痛みを和らげ、
- ある種の薬品のカクテルの調合の効果を改善することを可能にする。
【0077】
いくつかの好ましい実施の形態及び変形例を参照して、本発明について、上述したが、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲を超えることなく、当然のことながら、当業者であれば、任意の変形例を適用することができる。