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特許7465261硫化ジレゾルシノールを含む加硫可能な組成物、およびそれから調製される加硫物
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  • 特許-硫化ジレゾルシノールを含む加硫可能な組成物、およびそれから調製される加硫物 図1
  • 特許-硫化ジレゾルシノールを含む加硫可能な組成物、およびそれから調製される加硫物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】硫化ジレゾルシノールを含む加硫可能な組成物、およびそれから調製される加硫物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240403BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 5/375 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/06
C08K5/375
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021519523
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019037246
(87)【国際公開番号】W WO2019241668
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】62/685,558
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520492994
【氏名又は名称】オキシー ユーエスエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼラー, ロバート エル ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】エスコバー, テナー
(72)【発明者】
【氏名】タキー, マイケル エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホステトラー, ジェニファー
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508605(JP,A)
【文献】特表2014-525974(JP,A)
【文献】特開昭58-122941(JP,A)
【文献】特公昭48-014175(JP,B1)
【文献】特開昭51-121050(JP,A)
【文献】特開昭53-138447(JP,A)
【文献】COMPTES RENDUS, 1934, vol.198, p.1791-1793,1934年,vol.198,p.1791-1793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物の調製方法であって、
(i)ゴムと、
(ii)硫化ジレゾルシノールと、
を混合する工程を含み、
前記硫化ジレゾルシノールは、
(a)硫黄とレゾルシノールを150℃~200℃の温度で反応させて反応混合物を形成し、当該反応混合物を205℃~250℃の温度に加熱する方法、または
(b)アルカリ触媒または酸性触媒の存在下で硫黄をレゾルシノールと反応させる方法
のいずれかの方法により調製される硫化ジレゾルシノールである、
ゴム組成物の調製方法。
【請求項2】
前記硫化ジレゾルシノールに加えて硫黄供与体化合物をさらに含む、請求項1に記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項3】
前記硫化ジレゾルシノールが、以下の式
【化1】
で定義され、式中、nは1~8の整数である、請求項1または2に記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項4】
前記硫化ジレゾルシノールが、以下の式
【化2】
で定義され、式中、nは2~7の整数である、請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項5】
前記ゴムが、天然ゴムである、請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項6】
前記ゴムが、天然ゴムと合成ゴムのブレンドである、請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項7】
前記ゴムが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ブチルゴム、ハロブチルゴム、ポリクロロプレン、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3-ブタジエンまたはイソプレンとスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートからなる群より選択されるモノマーとのコポリマー、エチレン/プロピレンターポリマー、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項8】
前記組成物が、0.1phr~15phrの硫化ジレゾルシノールを含む、請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項9】
前記硫黄供与体化合物が、元素硫黄である、請求項2に記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項10】
促進剤を含む加硫パッケージをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項11】
加硫組成物を調製する方法であって、
(i)ゴム、硫化ジレゾルシノール、および硫化ジレゾルシノール以外の任意の加硫剤を含むゴム組成物を調製する工程であって、前記硫化ジレゾルシノールは、
(a)硫黄とレゾルシノールを150℃~200℃の温度で反応させて反応混合物を形成し、当該反応混合物を205℃~250℃の温度に加熱する方法、または
(b)アルカリ触媒または酸性触媒の存在下で硫黄をレゾルシノールと反応させる方法
のいずれかの方法により調製される硫化ジレゾルシノールである、ゴム組成物を調製する工程と、
(ii)前記ゴム組成物を加硫させる工程と、を含む、調製方法。
【請求項12】
硫化ジレゾルシノールを調製するための方法であって、アルカリ触媒または酸性触媒の存在下で硫黄をレゾルシノールと反応させることを含む、調製方法。
【請求項13】
前記硫黄が、Sである、請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
対レゾルシノールのモル比は、0.045:1~0.45:1である、請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
対レゾルシノールのモル比は、0.01:1~0.35:1である、請求項13に記載の調製方法。
【請求項16】
硫化ジレゾルシノールを調製するための方法であって、
(i)硫黄とレゾルシノールを150℃~200℃の温度で反応させて反応混合物を形成することと、
(ii)前記反応混合物を205℃~250℃の温度に加熱することと、を含む、調製方法。
【請求項17】
前記硫化ジレゾルシノールが、以下の式
【化1】
で定義され、式中、nは3~6の整数である、請求項1に記載のゴム組成物の調製方法。
【請求項18】
工程(i)がアルカリ触媒または酸性触媒の存在下で硫黄をレゾルシノールと反応させることを含む、請求項16に記載の調製方法。
【請求項19】
前記アルカリ触媒または酸性触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、パラトルエンスルホン酸から選択される、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
工程(i)において、前記反応混合物は、前記硫黄の少なくとも80%を消費するのに十分な時間、150℃~200℃の温度範囲内に維持し、その後、前記反応混合物を工程(ii)により加熱する、請求項16に記載の調製方法。
【請求項21】
前記アルカリ触媒または酸性触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、パラトルエンスルホン酸から選択される、請求項12に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年6月15日に出願された米国仮出願第62/685,558号の利益を主張し、該仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、硫化ジレゾルシノールを含む加硫可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴムの加硫には、ゴム分子(すなわち、架橋可能なポリマー)の架橋が含まれ、この架橋は、一般に、軟質または粘着性の天然または合成ゴム組成物をより耐久性のある材料に変換する。加硫ゴムは、未加硫ゴムと比較して、引っ張り強度の増加、粘着性の減少、弾性の増加、ならびに破断点伸びおよび硬度の改善など特性が改善され得る。典型的な加硫プロセスは、ゴムを架橋するために熱とともに使用される硫黄や過酸化物などの加硫剤の使用を含む。加硫剤に加えて、他の成分、または助剤が、加硫を助けるために使用されることも多い。加硫プロセスで使用される加硫剤および助剤は、加硫パッケージ(cure package)と呼ばれる場合がある。加硫パッケージの他の助剤には、活性剤、遅延剤、促進剤、および共促進剤が含まれ得る。
【0004】
硫黄加硫ゴム組成物は、加硫戻りと呼ばれる現象が起こりやすい。加硫戻りとは、硫黄架橋が破壊されることにより、架橋されたゴムネットワークが柔らかくなったり弱くなったりすることである。加硫戻りは、天然ゴムと合成加硫ゴムの両方で発生する可能性があるが、天然ゴム系で特に多い。特定の加硫パッケージを使用する場合、加硫戻りが発生する可能性が高くなることも知られている。例えば、一部の促進剤、特に加硫中にアミンを放出する可能性のある促進剤を使用すると、戻りをより引き起こしやすい加硫ゴムとなる。
【0005】
ゴムが過加硫または過度に加熱されると、加硫プロセス中に加硫戻りが発生する可能性がある。加硫戻りは、例えば、加硫サイクル中に組成物の弾性率を監視することによって、加硫プロセス中に監視することができる。また、加硫ゴム製品の使用中にも加硫戻りが発生する場合がある。例えば、加硫戻りは、飛行機のタイヤが濡れた滑走路または凍った滑走路でハイドロプレーニングする際に発生すると考えられている。タイヤが日常的に過度の走行温度で運転する場合にも、加硫戻りは問題となる。例えば、重い荷を積んで高速走行するトラックのタイヤでは、加硫戻りが発生する可能性がある。
【0006】
したがって、ゴム加硫物のゴム改質を低減したいという要望がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態は、ゴムと、硫化ジレゾルシノールと、を含むゴム組成物を提供する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、(i)ゴム、硫化ジレゾルシノール、および任意選択で硫化ジレゾルシノール以外の加硫剤を含むゴム組成物を調製することと、(ii)当該ゴム組成物を加硫させることと、を含む、加硫組成物を調製する方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態は、硫黄をレゾルシノールと反応させることを含む、硫化ジレゾルシノールを調製するための方法を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態は、(i)硫黄とレゾルシノールを約150℃~約200℃の温度で反応させて反応混合物を形成することと、(ii)当該反応混合物を約205℃~250℃の温度に加熱することと、を含む、硫化ジレゾルシノールを調製するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の様々な実施形態および対照の30分間にわたるトルクの変化を示すレオロジー曲線である。
図2】本発明の様々な実施形態およびレゾルシノールを含む2つの対照の60分間にわたるトルクの変化を示すレオロジー曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、少なくとも部分的に、硫化ジレゾルシノールを含む加硫可能な組成物、およびそれから調製される加硫物の発見に基づいている。1つまたは複数の実施形態では、ゴムの加硫をもたらすために、硫化ジレゾルシノールを硫黄加硫剤と組み合わせて使用してよい。他の実施形態では、硫化ジレゾルシノールが加硫における硫黄の唯一の供給源として使用される。硫化ジレゾルシノールの存在が、望ましい特性のバランスを維持しつつ、加硫戻りが減少していることを特徴とする加硫物を提供することが、予想外に発見された。したがって、本発明の実施形態は、加硫性ゴム、ならびに硫化ジレゾルシノールおよび任意選択で加硫剤を含む加硫パッケージを含む、加硫可能なゴム組成物を対象とする。他の実施形態は、これらの加硫可能な組成物から調製された加硫物を対象とする。
【0013】
加硫可能なゴム組成物
1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物と呼ばれ得る本発明の加硫可能な組成物は、加硫性ゴムおよび硫化ジレゾルシノールを含む加硫パッケージを含む。任意選択で、ゴム組成物は、充填剤、加工油、粘着付与剤樹脂、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、ワックス、脂肪酸、解膠剤、および/または他の従来の配合添加剤などの他の成分を含み得る。ゴム組成物はまた、例えば、加硫パッケージの一部として、促進剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)などであるがこれらに限定されない、加硫に影響を与える追加の加硫剤および成分も含み得る。
【0014】
ゴム
ゴム組成物に使用するのに適したゴムは、硫黄加硫剤で加硫させることができるゴムを含む。硫黄加硫剤で加硫させることができるゴムは、天然ゴムまたは不飽和炭素-炭素結合を有する合成ゴムを含む。好適な合成ゴムの例には、ポリブタジエンゴム(高または低シス含有量)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、ブチルゴム、ハロブチルゴム(すなわち、クロロブチルゴムまたはブロモブチルゴム)、ポリクロロプレン、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3-ブタジエンまたはイソプレンと、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートなどのモノマーとのコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られるエチレン/プロピレンターポリマー、特に、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマー、ならびにそれらの組み合わせ、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
1つまたは複数の実施形態では、ゴムは、天然ゴムと1つまたは複数の合成ゴムとのブレンドであり得る。これらまたは他の実施形態では、天然ゴムは、上記の合成ポリマーのうちの1つまたは複数とブレンドすることができる。天然ゴムのブレンドの具体例には、天然ゴム-ポリブタジエンブレンドおよび天然ゴム-スチレン-ブタジエンゴムブレンドが挙げられる。
【0016】
硫化ジレゾルシノール
1つまたは複数の実施形態では、硫化ジレゾルシノールは、硫黄原子または硫黄原子の鎖を介して第2のレゾルシノール基につながれた、ベンゼン-1,3-ジオール基とも呼ばれ得るレゾルシノール基を有するそれらの化合物を含む。1つまたは複数の実施形態では、硫黄原子の鎖は、少なくとも2個の硫黄原子を含む。1つまたは複数の実施形態では、硫化ジレゾルシノールは、以下の式
【化1】
によって定義され得、式中、nは約1~約8の整数である。1つまたは複数の実施形態では、nは、約2~約7の整数であり、他の実施形態では、約3~約6の整数である。硫黄原子または硫黄原子の鎖が各レゾルシノール基の4位に結合している他の実施形態では、硫化ジレゾルシノールは、以下の式
【化2】
によって定義され得、式中、nは約1~約8の整数である。1つまたは複数の実施形態では、nは、約2~約7の整数であり、他の実施形態では、約3~約6の整数である。
【0017】
当業者であれば、硫化ジレゾルシノールを含む組成物が複数のジレゾルシノール分子を含み、この組成物は硫黄原子の平均鎖長(すなわち、レゾルシノール基をつなぐ鎖中の硫黄原子の平均数)によって特徴付けることができることを理解するであろう。1つまたは複数の実施形態では、硫化ジレゾルシノール組成物は、約1.5個の硫黄原子~約8個の硫黄原子、他の実施形態では約2個の硫黄原子~約7個の硫黄原子、および他の実施形態では約3個の硫黄原子~約6個の硫黄原子の平均硫黄原子鎖長を有し得る。
【0018】
1つまたは複数の実施形態では、硫化ジレゾルシノールは、触媒の存在下でレゾルシノールと硫黄を混ぜ合わせて反応混合物を形成し、これを加熱して硫化ジレゾルシノールおよび硫化水素を生成することによって調製することができる。1つまたは複数の実施形態では、反応物の無溶媒混合物を調製するか、または少量の水または他の溶媒を使用して、反応物を可溶化または移動させることができる。他の実施形態では、反応は、トルエンなどの溶媒中で起こり得る。
【0019】
1つまたは複数の実施形態では、反応混合物は、硫黄(例えばS8)が実質的に消費されるまで加熱してもよい。例えば、反応混合物は、硫黄の少なくとも80%、他の実施形態では少なくとも90%、他の実施形態では少なくとも95%、および他の実施形態では少なくとも99%の硫黄が消費される(すなわち、レゾルシノールと反応する)まで加熱することができる。1つまたは複数の実施形態では、反応混合物は、反応混合物が遊離硫黄を欠くまで加熱され、これは、反応物硫黄とも呼ばれ得る。これらまたは他の実施形態では、反応混合物は、約0.5時間~約10時間加熱することができ、他の実施形態では、約6時間~約8時間加熱することができる。反応混合物は、約160℃~約200℃の温度範囲で加熱することができ、他の実施形態では、約170℃~約190℃で加熱することができる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態では、硫化ジレゾルシノールは、プロセスの第1の工程が第1の温度で実施され、プロセスの第2の工程が第2の温度で実施される2段階の工程によって形成される。これらの実施形態によれば、硫黄(例えば、S8)は、約150℃~約200℃の範囲の温度で、他の実施形態では約160℃~約185℃で、他の実施形態では約170℃~約180℃の温度でレゾルシノールと反応する。反応は、少なくとも80%、他の実施形態では少なくとも90%、他の実施形態では少なくとも95%、および他の実施形態では少なくとも99%の硫黄(例えばS8)を消費するのに十分な時間、この温度範囲内に維持される。特定の実施形態では、反応物硫黄(例えばS8)が実質的に消費されるまで、そして他の実施形態では硫黄反応物が完全に消費されるまで、この第1の温度範囲に維持される。第1の温度で反応して所望の量の反応物硫黄がプロセスの第1の工程で消費されると、次に温度をプロセスの第2の工程のために上昇させる。すなわち、反応混合物の温度を、約205℃~約250℃、他の実施形態では約210℃~約240℃、他の実施形態では約215℃~約235℃の範囲の温度に上昇させる。この温度上昇は、硫化レゾルシノールを安定化するのに十分な時間維持される。1つまたは複数の実施形態では、この温度は、少なくとも10分間、他の実施形態では少なくとも20分間、および他の実施形態では少なくとも30分間維持される。特定の実施形態では、温度は、約160℃~約200℃の範囲で約6時間~約8時間維持され、その後、約230℃~約250℃まで約0.2時間~約1時間上昇させる場合がある。
【0021】
硫化ジレゾルシノールの製造に使用するのに適した塩基性触媒は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ塩基を含む。好適な酸性触媒は、パラトルエンスルホン酸(PTSA)を含む。特定の実施形態では、反応物の総重量に基づいて約0.5重量%~約3重量%などの少量の水を使用して、触媒を可溶化または移動させることができる。
【0022】
1つまたは複数の実施形態では、硫化ジレゾルシノールを調製するために使用される反応物は、反応物と触媒の合計重量である100重量部に基づく重量部によって定量化され得る。1つまたは他の実施形態では、硫黄の量は、反応物と触媒の合計重量である100重量部あたり約10重量部~約50部、他の実施形態では約15部~約40部、および他の実施形態では約20部~約30部であり得る。これらまたは他の実施形態では、レゾルシノールの量は、反応物と触媒の合計重量である100重量部あたり約50部~約90部、他の実施形態では約60部~約85部、および他の実施形態では約70部~約80部であり得る。これらまたは他の実施形態では、触媒の量は、反応物と触媒の合計重量である100重量部あたり、約0.001重量部~約1.5重量部、他の実施形態では約0.005重量部~約1.4重量部、他の実施形態では約0.01重量部~約1.3重量部、他の実施形態では約0.05重量部~約1.0重量部、および他の実施形態では約0.1重量部~約0.8重量部であり得る。
【0023】
8が硫黄反応物として使用される1つまたは複数の実施形態では、硫黄の量は、レゾルシノールに対するS8のモル比として説明することができる。1つまたは複数の実施形態では、S8とレゾルシノールのモル比は、約0.045:1~約0.45:1、他の実施形態では約0.1:1~約0.35:1、および他の実施形態では約0.15:1~約0.3:1であり得る。
【0024】
他の実施形態では、硫化ジレゾルシノールは、好適な溶媒中でレゾルシノールを二塩化硫黄または二塩化多硫黄と反応させることによって調製することができる。硫化ジレゾルシノールを調製するためのプロセスは、米国特許第2,760,989号および米国特許第3,429,814号に開示されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
加硫パッケージ
1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物(または特定の実施形態では、加硫パッケージ)は、硫化ジレゾルシノールに加えて加硫剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、加硫剤は硫黄系の加硫剤を含む。1つまたは複数の実施形態では、硫黄供与体と呼ばれ得る硫黄系の加硫剤は、元素硫黄(遊離硫黄)、硫黄の同素体(S8など)、アミンジスルフィド、高分子多硫化物、および硫黄オレフィン付加物を含む。
【0026】
助剤
1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物(または特定の実施形態では、加硫パッケージ)は、加硫に多大な影響を与える化合物を指す、加硫助剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、助剤は、反応速度を改善し、加硫系がその完全な架橋能に到達することを可能にするために使用され得る活性剤を含み得る。好適な活性剤には、亜鉛化合物、ステアリン酸、またはそれらの組み合わせが含まれる。亜鉛化合物の例には、酸化亜鉛(ZnO)および亜鉛脂肪酸カルボン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
1つまたは複数の実施形態では、遅延剤が助剤として使用される。遅延剤を使用して、スコーチ遅延を増加させることにより、ゴム化合物が早期に加硫する傾向を低減することができる。好適な遅延剤には、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミドおよびステアリン酸が含まれる。
【0028】
1つまたは複数の実施形態では、促進剤が加硫パッケージに使用される。促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために使用される。一実施形態では、単一の促進剤系(すなわち、一次促進剤)を使用することができる。他の実施形態では、促進剤の組み合わせ(すなわち、一次促進剤および二次促進剤)を使用することができる。促進剤の組み合わせは、最終的な特性に相乗効果をもたらす可能性があり、多くの場合、いずれかの促進剤のみを使用して得られるものよりもいくらか優れている。これらまたは他の実施形態では、促進剤のうちの1つは、遅効性促進剤であり得る。通常の処理温度の影響を受けないが、通常の加硫温度で十分な加硫をもたらす遅効性促進剤を使用することができる。例示的な促進剤には、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、ジチオカルバミン酸、アルデヒドアミン、アルデヒドアンモニア、イミダゾリン、およびキサントゲン酸塩が含まれる。促進剤の組み合わせが使用される1つまたは複数の実施形態では、一次促進剤はスルフェンアミドであり得、二次促進剤はグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であり得る。
【0029】
スルホンアミド促進剤の具体例には、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N、N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、およびN、N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミドが挙げられる。
【0030】
チアゾール促進剤の具体例には、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアシルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールの銅塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、および2-(2,6-ジエチル-4-モエルホリノチオ(moerpholinothio))ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0031】
チウラム促進剤の具体例には、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチエルンチウラムヘキサスルフィド(dipentamethyelnethiuram hexasulfide)、テトラブチルチウラムジスルフィド、およびペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられる。
【0032】
チオ尿素促進剤の具体例には、チアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、およびジオルトトリルチオ尿素が挙げられる。
【0033】
グアニジン促進剤の具体例には、ジフェニルグアニジン、ジオルト-トリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルト-トリルビグアニド、およびフタル酸ジフェニルグアニジンが挙げられる。
【0034】
ジチオカルバミン酸促進剤の具体例としては、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛ペンタメチレンジチオカルバメートとピペリジンの複合塩、ヘキサデシルイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、オクタデシルイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルリウム、およびジアミルジチオカルバミン酸カドミウムが挙げられる。
【0035】
アルデヒド-アミン系およびアルデヒド-アンモニア系促進剤の具体例には、アセトアルデヒド-アニリン反応生成物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、およびアセトアルデヒド-アンモニア反応生成物が挙げられる。
【0036】
イミダゾリン促進剤の具体例は、2-メルカプトイミダゾリンである。キサントゲン酸塩促進剤の具体例は、キサントゲン酸ジブチルである。
【0037】
充填剤(FILLERS)
上記のように、本発明の加硫可能な組成物はまた、強化充填剤および非強化充填剤を含む充填剤を含み得る。好適な充填剤には、シリカ、カーボンブラック、粘土、有機繊維、無機金属粉末、鉱物粉末、タルク、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例示的なシリカには、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、および表面処理されたシリカ製品が挙げられる。例示的なカーボンブラックには、ファーネスブラック、サーマル、ブラック、およびチャネルブラックが挙げられる。
【0038】
油および増量剤
上記のように、本発明の加硫可能な組成物はまた、油および/または増量剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、加工油を含み得る。特定の実施形態では、加工油は、エラストマーを伸長するための伸長油としてゴム組成物に使用され得る。使用される加工油は、エラストマー中に存在する伸長油と、配合中に添加される加工油の両方を含み得る。好適な加工油には、芳香族、パラフィン系、ナフテン系、植物油、およびMES、TDAE、SRAEおよび重質ナフテン系油などの低PCA油を含む、当技術分野で知られている様々な油が挙げられる。
【0039】
成分量
1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の総重量中のゴムの重量パーセントによって定量化することができる。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の総重量に基づいて、10重量%を超え、他の実施形態では25重量%を超え、他の実施形態では35重量%を超えるゴムを含む。これらまたは他の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の総重量に基づいて、99重量%未満、他の実施形態では90重量%未満、および他の実施形態では80重量%未満のゴムを含む。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の総重量に基づいて、約10重量%~約99重量%、他の実施形態では約25重量%~約90重量%、および他の実施形態では約10重量%~約80重量%のゴムを含む。
【0040】
ゴムが天然ゴムおよび1つまたは複数の合成ゴムを含む特定の実施形態では、ゴム組成物は、天然ゴムおよび合成ゴムの総重量に基づく天然ゴムの重量パーセントによって特徴付けられ得る。1つまたは複数の実施形態では、天然ゴムは、天然ゴムおよび合成ゴムの総重量に基づいて、1重量%を超え、他の実施形態では5重量%を超え、他の実施形態では10重量%を超え、他の実施形態では15重量%を超え、他の実施形態では30重量%を超える。これらまたは他の実施形態では、天然ゴムは、天然ゴムと合成ゴムの総重量に基づいて99重量%未満、他の実施形態では90重量%未満、他の実施形態では80重量%未満、他の実施形態では70重量%未満、および他の実施形態で60重量%未満である。1つまたは複数の実施形態では、天然ゴムは、天然および合成ゴムの総重量に基づいて、約1重量%~約99重量%であり、他の実施形態では約5重量%~約90重量%であり、他の実施形態では約10重量%~約80重量%であり、他の実施形態では約15重量%~約70重量%であり、他の実施形態では約30重量%~約60重量%である。
【0041】
1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物の成分は、100重量部のゴムあたりの成分の重量部(phr)で記述され得る。
【0042】
1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の硫化ジレゾルシノールの量は、0.1phrを超えてもよく、他の実施形態では0.2phrを超え、他の実施形態では硫化ジレゾルシノールが0.4phrを超えてもよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、15phr未満、他の実施形態では12phr未満、他の実施形態では10phr未満、他の実施形態では8phr未満、他の実施形態では6phr未満、他の実施形態では4phr未満、他の実施形態では2phr未満、および他の実施形態では1phr未満の硫化ジレゾルシノールを含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.1phr~約15phr、他の実施形態では約0.2phr~約12phr、および他の実施形態では約0.4phr~約10phrの硫化ジレゾルシノールを含み得る。
【0043】
ゴム組成物が追加の加硫剤(例えば、硫化ジレゾルシノール以外の硫黄供与体加硫剤)を含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の加硫剤の量は、0.5phrを超えてもよく、他の実施形態では1phrを超え、他の実施形態では硫黄加硫剤は1.5phrを超えてよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、8phr未満、他の実施形態では6phr未満、および他の実施形態では4phr未満の加硫剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.5phr~約8phr、他の実施形態では約1phr~約6phr、および他の実施形態では約1.5phr~約4phrの硫剤を含み得る。
【0044】
1つまたは複数の実施形態では、本発明のゴム組成物は、組成物内の全硫黄を参照して説明することもできる。当業者であれば理解するように、硫黄は、硫化ジレゾルシノールおよび加硫剤などの他の硫黄供与体化合物によってもたらされる。1つまたは複数の実施形態では、本発明のゴム組成物は、0.5phrを超え、他の実施形態では1phrを超え、および他の実施形態では1.5phrを超える全硫黄を含む。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、8phr未満、他の実施形態では6phr未満、および他の実施形態では4phr未満の硫黄を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.5phr~約8phr、他の実施形態では約1phr~約6phr、および他の実施形態では約1.5phr~約4phrの硫黄を含み得る。
【0045】
ゴム組成物が活性剤を含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の活性剤の量は、0.1phrを超えてもよく、他の実施形態では0.5phrを超え、他の実施形態は1phrを超える活性剤である。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、20phr未満、他の実施形態では10phr未満、および他の実施形態では6phr未満の活性化剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.1phr~約20phr、他の実施形態では約0.5phr~約10phr、および他の実施形態では約1phr~約6phrの活性化剤を含み得る。
【0046】
ゴム組成物が遅延剤を含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の遅延剤の量は、0.01phrを超えてもよく、他の実施形態では、0.05phrを超え、他の実施形態では遅延剤は0.1phrを超えてもよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、5phr未満、他の実施形態では3phr未満、および他の実施形態では2phr未満の遅延剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.01phr~約5phr、他の実施形態では約0.5phr~約5phr、および他の実施形態では約0.1phr~約2phrの遅延剤を含み得る。
【0047】
ゴム組成物が一次促進剤を含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の一次促進剤の量は、0.3phrを超え、他の実施形態では0.5phrを超え、他の実施形態では一次促進剤は0.8phrを超えてよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、4phr未満、他の実施形態では3phr未満、および他の実施形態では1.5phr未満の一次促進剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.3phr~約4phr、他の実施形態では約0.5phr~約3phr、および他の実施形態では約0.8phr~約1.5phrの一次促進剤を含み得る。
【0048】
ゴム組成物が二次促進剤を含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の二次促進剤の量は、0.5phrを超えてもよく、他の実施形態では、0.8phrを超え、他の実施形態では1phrを超える二次促進剤であってよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、3phr未満、他の実施形態では2phr未満、および他の実施形態では1.5phr未満の二次促進剤を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約0.5phr~約3phr、他の実施形態では約0.8phr~約2phr、および他の実施形態では約1phr~約1.5phrの二次促進剤を含み得る。
【0049】
ゴム組成物がシリカを含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中のシリカの量は5phrを超えてもよく、他の実施形態では10phrを超え、他の実施形態ではシリカは20phrを超えてよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、150phr未満、他の実施形態では100phr未満、および他の実施形態では80phr未満のシリカを含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約5phr~約150phr、他の実施形態では約10phr~約100phr、および他の実施形態では約20phr~約80phrのシリカを含み得る。
【0050】
ゴム組成物がカーボンブラックを含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中のカーボンブラックの量は5phrを超えてもよく、他の実施形態では10phrを超え、他の実施形態ではカーボンブラックは20phrを超えてよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、150phr未満、他の実施形態では100phr未満、および他の実施形態では80phr未満のカーボンブラックを含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約5phr~約150phr、他の実施形態では約10phr~約100phr、および他の実施形態では約20phr~約80phrのカーボンブラックを含み得る。
【0051】
ゴム組成物が加工油を含む1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物中の加工油の量は、1phrを超えてもよく、他の実施形態では5phrを超え、他の実施形態では加工油は20phrを超えてよい。これらの他の実施形態では、ゴム組成物は、70phr未満、他の実施形態では50phr未満、および他の実施形態では35phr未満の加工油を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、ゴム組成物は、約1phr~約70phr、他の実施形態では約5phr~約50phr、および他の実施形態では約20phr~約35phrの加工油を含み得る。
【0052】
加硫可能な組成物の調製
1つまたは複数の実施形態では、本発明の加硫可能な組成物は、従来のゴム混合(配合とも呼ばれる)技術を使用して様々な成分を混合することによって調製することができる。例えば、組成物は、バンバリーミキサー、混練機またはローラーなどの混合機を使用して、ゴム、加硫パッケージ、および他のゴム組成物成分を混練することによって混合することができる。特定の実施形態では、成分は少なくとも2段階で混合される。例えば、1つまたは複数の非生産的段階の後に、生産的混合段階が続く場合がある。生産的混合段階は、前の非生産的混合段階の混合温度よりも低い温度または最終温度で実行される段階である。1つまたは複数の実施形態では、ゴムおよび充填剤は、第1の非生産的混合段階で含まれる。これらまたは他の実施形態では、加硫剤は、最終の生産的混合段階で添加される。特定の実施形態では、ゴム組成物のいくつかの成分は、ゴムと混合される前に予混合され得る。例えば、シリカとカーボンブラックの両方が充填剤として使用される場合、それらは、ゴム組成物中に含まれる前に予混合され得る。
【0053】
ゴム加硫
ゴム組成物の加硫は、一般に、従来の温度で行われる。1つまたは複数の実施形態では、加硫は、約100℃~200℃、他の実施形態では約110℃~180℃、および他の実施形態では約120℃~170℃の範囲の温度で実施され得る。プレスもしくは金型での加熱、過熱蒸気もしくは熱風での加熱、または塩浴での加熱など、任意の従来の加硫プロセスを使用することができる。
【0054】
産業上の利用可能性
1つまたは複数の実施形態では、加硫ゴムをタイヤまたはタイヤ部品に使用することができる。タイヤ部品の具体例には、トレッドおよびサイドウォールが挙げられるが、これらに限定されない。加硫ゴムを含み得る例示的なタイヤには、自転車用タイヤ、乗用車用タイヤ、バスまたはトラック用タイヤ、航空機用タイヤ、および重機用タイヤが挙げられる。加硫ゴムで調製できるゴム製品の他の例には、靴底、ゴムホース、機械ベルト、コンベヤーベルトが挙げられる。
【0055】
本発明の実施を実証するために、以下の実施例が準備され、試験された。しかしながら、実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。特許請求の範囲は、本発明を定めるのに役立つであろう。
【実施例
【0056】
サンプル1~5
加硫ゴム組成物の加硫戻りに対する硫化ジレゾルシノールの影響を調べるために、サンプルの第1のセット(すなわちゴム組成物)を調製した。サンプルを、硫化ジレゾルシノールを含まない対照と比較した。
【0057】
この第1の加硫戻り実験に使用した硫化ジレゾルシノールは、0.94モルのS8を3.28モルのレゾルシノールと反応させ、反応物比0.29:1として作製した。反応物を窒素環境で加熱および撹拌した。混合物が170℃に達したら、0.15モルの水中の0.01モルの水酸化ナトリウムを反応器に加えて反応を触媒した。170℃で8時間後、硫化ジレゾルシノールを冷却した。冷却後、硫化ジレゾルシノールを窒素雰囲気下で保存した。硫化ジレゾルシノールの試験では、生成物の最終硫黄含有量は34.2重量%であり、最終的なS8とレゾルシノールの比率は0.22:1であった。
【0058】
ゴム組成物を、天然ゴム、50phrのカーボンブラック、3phrのステアリン酸、5phrの酸化亜鉛、および0.6phrのMBTSを混ぜ合わせることによって調製した。各ゴム組成物中の硫黄および硫化ジレゾルシノールの量を表1に示す。使用した硫化ジレゾルシノールの硫黄含有量は34.2重量%であった。引っ張り、破断点伸び、および弾性率の値は、ASTM D412に類似の手順に従って、T90+2分で加硫したスラブを用いて決定した。
【表1】
【0059】
サンプル6~8
加硫中に各サンプルのトルクを監視してレオロジー曲線を作成した。これを図1に示す。図1で見ることができるように、対照は、最大トルクが達成された後、最大のトルク減少率を示した。それに比べ、硫化ジレゾルシノールを含むサンプルは、最大トルクが達成された後、わずかなトルク減少またはトルク減少がないことを示した。これは、硫化ジレゾルシノールが加硫戻りを低減するのに役立つことを示している。表1の機械的特性を比較することにより、硫化ジレゾルシノールの添加は機械的特性に影響を与えなかったことがわかる。
【0060】
加硫ゴム組成物の加硫戻りに対する硫化ジレゾルシノールの長期間にわたる影響を調べるために、サンプルの第2のセットを調製した。さらに言うと、硫化ジレゾルシノールを含まないがレゾルシノールを含む対照と比較するサンプルである。
【0061】
サンプルを、天然ゴム、50phrのカーボンブラック、3phrのステアリン酸、5phrの酸化亜鉛、および0.6phrのMBTSを混ぜ合わせて調製した。各ゴム組成物中の硫黄および硫化ジレゾルシノールの量を表2に示す。使用した硫化ジレゾルシノールの硫黄含有量は34.2重量%であった。引っ張り、破断点伸び、および弾性率の値は、ASTM D412に類似の手順に従って、T90+2分で加硫したスラブを用いて決定した。
【表2】
【0062】
加硫中に各サンプルのトルクを監視してレオロジー曲線を作成した。これを図2に示す。図2で見ることができるように、遊離レゾルシノールを含む2つの対照は、最大トルクを達成した後、最大のトルク減少率を示した。それに比べ、硫化ジレゾルシノールを含むサンプルは、最大トルクを達成した後、わずかなトルク減少を示した。これは、レゾルシノールではなく硫化ジレゾルシノールが加硫戻りを低減するのに役立つことを示している。前のサンプルと同様、硫化ジレゾルシノールの添加は機械的特性に影響を与えなかった。
【0063】
サンプル9~10
硫化ジレゾルシノールのサンプル(サンプル9)は、0.94モルのS8を3.28モルのレゾルシノールと反応させて作製し、0.29:1の反応物比を得た。反応物を窒素環境で加熱および撹拌した。混合物が170℃に達したら、0.12モルの水中の0.01モルの水酸化ナトリウムを反応器に加えて反応を触媒した。170℃で8時間後、硫化ジレゾルシノールを冷却した。冷却後、硫化ジレゾルシノールのアリコートを大気下で保存し、残りのジレゾルシノールを窒素下で保存した。大気下で保存した(すなわち、空気にさらされた)製品は、表面の黄変によって示されるように、5日以内に不安定性を示した。窒素下で保存した製品は、無期限に安定性を示した。
【0064】
硫化ジレゾルシノールの第2のサンプル(サンプル10)は、0.94モルのS8を3.29モルのレゾルシノールと反応させ、反応物比0.29:1として作製した。反応物を窒素環境で加熱および撹拌した。混合物が170℃に達したら、0.13モルの水中の0.02モルの水酸化ナトリウムを反応器に加えて反応を触媒した。反応物の硫黄を実質的にすべて消費すると考えられている170℃で8時間後、反応を245℃まで上昇させた。温度に達すると、反応を0.5時間保持し、次に冷却した。硫化ジレゾルシノールのアリコートを大気下で保存し、残りのジレゾルシノールを窒素下で保存した。表面の外観が変化しないことからわかるように、両方のサンプルは無期限に安定性を示した。
【0065】
サンプル9とサンプル10を比較すると、反応物の硫黄を大量に消費した後に反応温度を上げることで、硫化ジレゾルシノールは大気条件下で安定するが、等温条件下で単純に反応させて完成させた場合、大気にさらされると硫化ジレゾルシノールは安定しないことがわかる。
【0066】
本発明の範囲および趣旨から逸脱しない様々な修正および変更は、当業者には明らかである。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正当に限定されるものではない。
図1
図2