(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】神経障害を検出するためのリン酸化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 9/59 20060101AFI20240403BHJP
C07D 295/155 20060101ALI20240403BHJP
A61K 31/4453 20060101ALI20240403BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20240403BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07F9/59 CSP
C07D295/155
A61K31/4453
A61K31/661
A61K49/00
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/28
A61P43/00 123
(21)【出願番号】P 2021525185
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 US2019059538
(87)【国際公開番号】W WO2020093008
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521197586
【氏名又は名称】アミディス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サッラーフ, ステラ
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ, リンジー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラスール, スハイル
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512834(JP,A)
【文献】特表2013-513619(JP,A)
【文献】国際公開第2016/040891(WO,A2)
【文献】特表2021-525875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩であって、
【化17】
式中、R
1は、以下から選択され、
【化18】
各Xは独立して、OまたはSであり、
各R
11は独立して、水素、C
1-10アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリールおよび4~10員ヘテロシクリルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルは、任意に1~4個のR
21で置換されており、または、各XR
11が独立して、-XP(X)(R
12)
2であってもよく、
各R
12は独立して、ヒドロキシ、チオール、-XP(X)(R
13)
2、C
1-10アルキル、-O-C
1-10アルキル、および-S-C
1-10アルキルから選択され、
各R
13は独立して、ヒドロキシ、チオール、C
1-10アルキル、-O-C
1-10アルキル、および-S-C
1-10アルキルから選択され、
各R
21は独立して、ハロ、ヒドロキシ、チオール、-NO
2、-N
3、シアノ、C
1-10アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル
、C
1-8ハロアルキル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、4~10員ヘテロシクリル、-O-C
1-10アルキル、-O-C
2-6アルケニル、-O-C
2-6アルキニル、-O-C
3-10シクロアルキル、-O-C
1-8ハロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NH
2、-NH(R
31)、-N(R
31)
2、-C(O)(R
31)、-C(O)O(R
31)、-C(O)OH、-C(O)NH
2、-C(O)NH(R
31)、-C(O)N(R
31)
2、-NHC(O)(R
31)、-NHC(O)O(R
31)、-NHC(O)NH(R
31)、-S(R
31)、-NHS(O)
y(R
31)、-N(C
1-10アルキル)S(O)
y(R
31)、-S(O)
yN(R
31)
2、-S(O)NH(R
31)、および-S(O)
y(R
31)から選択され、
各R
31は独立して、C
1-10アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
1-8ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択され、
各yは独立して、1または2である、化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1が、
【化19】
である、請求項1に記載の化合物
、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
各Xが独立して、Oである、請求項1または2に記載の化合物
、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
1が、
【化20】
である、請求項1に記載の化合物
、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
1が、
【化21】
である、請求項1に記載の化合物
、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
一塩基性塩としての、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
二塩基性塩としての、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、または亜鉛塩から選択される塩としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
ナトリウム塩としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
カリウム塩としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
アンモニウム塩またはジアンモニウム塩としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
以下の化合物、
【化22】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
アンモニウム塩またはジアンモニウム塩としての、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
以下の化合物、
【化23】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物
もしくはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定する方法
における使用のための、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物
もしくはその薬学的に許容される塩
を含む組成物、または請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記
組成物または薬学的組成物が静脈内投与される
ことを特徴とする、請求項16に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項18】
前記
組成物または薬学的組成物が前記患者の眼に投与される
ことを特徴とする、請求項16に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項19】
前記方法が、前記化合物またはその親化合物と検出可能な標的タンパク質との結合の有無を検出することをさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項20】
前記検出が、光による検査される前記患者の組織の活性化を含み、それによって、検出可能なシグナルの放出を生成し、前記検出可能なシグナルを検出する、請求項19に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項21】
前記検出可能なシグナルが、蛍光シグナルである、請求項20に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項22】
前記神経疾患または障害が、アルツハイマー病または外傷性脳損傷(TBI)である、請求項16~21のいずれか一項に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項23】
前記神経疾患または障害が、加齢性疾患または障害、遺伝性疾患または障害、損傷関連疾患または障害、および精神疾患または障害から選択される、請求項16~21のいずれか一項に記載の
組成物または薬学的組成物。
【請求項24】
前記加齢性疾患または障害がパーキンソン病、血管性認知症、および筋萎縮性側索硬化症から選択され、前記遺伝性疾患または障害がダウン症候群であり、前記損傷関連疾患または障害が外傷性脳損傷および慢性外傷性脳症から選択され、前記精神疾患または障害が統合失調症および鬱病から選択される、請求項23に記載の
組成物または薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/755,331号および2019年5月31日に出願された米国仮出願第62/855,442号に対する35USC§119(e)に基づく利益を主張し、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
神経障害は、脳、脊髄、および末梢神経系の疾患である。疫学および個人の罹患率の観点から言えば、神経学的状態は、最大の社会的コストを課している。これらの中で最も有名なものに、アルツハイマー病およびパーキンソン病がある。他の神経変性状態には、加齢性の状態(例えば、パーキンソン型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症)、遺伝性症候群(例えば、ダウン症候群)、損傷関連状態(例えば、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症)、ならびに統合失調症および鬱病など通常、性質上は純粋に精神医学的なものと考えられる状態が含まれる。
【0003】
これらおよびその他の神経障害の検出のための化合物は、これらの疾患の検出、診断、監視および治療に有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、神経疾患または障害を検出および治療するための化合物を提供する。神経障害の検出に有用な特定の診断化合物は、理想的とは言えない物理化学的特性、例えば、低い水溶性および高い結晶化度に悩まされることがわかっている。本明細書に開示されるのは、神経障害の診断および治療に有用な改善された物理化学的特性を有する化合物である。
【0005】
いくつかの実施形態では、患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定するための方法が提供され、本明細書に記載の化合物を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、患者における神経疾患または障害を検出するための方法であって、検出可能な標的タンパク質に結合することができる本明細書に記載の化合物を患者に投与すること、または患者に投与した後に検出可能な標的タンパク質に結合することができる化合物を生成させることと、結合の有無を決定することと、を含み、結合の存在が、患者が神経疾患または障害を有している、または発症するリスクがあることを示す、方法を提供する。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはこれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、または化合物10である。したがって、本明細書で提供されるのは、患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定するための方法および組成物であり、患者の組織または試料において、検出可能な標的タンパク質、またはその蓄積体(accumulated mass)、例えば、アミロイドベータタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体の存在を検出することを含む。検出は、標的タンパク質を本明細書に記載の化合物と接触させることを含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、患者は、検出されるべき疾患または障害のいかなる症状も有さない。いくつかの実施形態では、患者は、検出されるべき疾患または障害の1つ以上の症状を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に記載の化合物を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内投与であるか、または眼の網膜に局在化させる。いくつかの実施形態では、投与はボーラス注入である。いくつかの実施形態では、投与は局所的である。
【0008】
いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、加齢性疾患または障害、遺伝性疾患または障害、損傷関連疾患または障害、および精神疾患または障害から選択される。いくつかの実施形態では、加齢性疾患または障害が、パーキンソン病、血管性認知症、および筋萎縮性側索硬化症から選択され、遺伝性疾患または障害がダウン症候群であり、損傷関連疾患または障害は、外傷性脳損傷および慢性外傷性脳症から選択され、精神疾患または障害は、統合失調症および鬱病から選択される。この方法のいくつかの実施形態では、神経疾患または障害が、アルツハイマー病または外傷性脳損傷(TBI)である。
【0009】
この方法のいくつかの実施形態では、神経疾患または障害が、プリオン病である。したがって、患者のプリオン沈着を検出するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、検出は網膜で行われる。ある特定の実施形態では、患者の網膜におけるプリオン沈着を検出するための方法が提供され、この場合、患者は、クロイツフェルト・ヤコブ病(例えば、行動変化、錯乱、認知機能障害、運動障害、視覚障害、脊椎後弯症、運動失調、つま先歩行など)などのそれに関連する疾患または障害の臨床症状を示す場合と示さない場合がある。
【0010】
この方法のいくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、脳アミロイド血管症(CAA)である。脳アミロイド血管症(CAA)は、脳血管壁内のアミロイド沈着を特徴とする老化の疾患である。したがって、ある特定の実施形態では、患者のAβ40を検出するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、検出は網膜で行われる。
【0011】
ある特定の実施形態では、検出は、AβアイソフォームAβ40とAβ42とを区別する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】化合物8の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図1B】化合物8の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図1C】化合物8の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図2A】化合物9の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図2B】化合物9の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図3】CCI前後のマウスで化合物10を使用したライブ網膜撮像の画像を提示する。上段:化合物10の静脈内投与後、CCI前の3ヶ月齢のマウスの経時的な網膜撮像である。上部に表示した時間経過は、化合物10の静脈内投与前(t=0)および投与後のインビボ網膜撮像の時点を示している。下段:CCIの24時間後の同じマウスの化合物10による経時的な網膜撮像である。
【
図4】発症前(
図4)および末期(
図5)のGPIアンカーレスマウスの網膜蛍光画像を示す。化合物10の全身投与の前(注射前、t=0)および後(注射後)に、画像をPhoenix Micron IVげっ歯類網膜撮像システムで取得した。画像の明るい部分は、網膜プリオン沈着物が観察される領域を示す。
【
図5】発症前(
図4)および末期(
図5)のGPIアンカーレスマウスの網膜蛍光画像を示す。化合物10の全身投与の前(注射前、t=0)および後(注射後)に、画像をPhoenix Micron IVげっ歯類網膜撮像システムで取得した。画像の明るい部分は、網膜プリオン沈着物が観察される領域を示す。
【
図6】家族性アルツハイマー病患者の海馬におけるアミロイド沈着物の染色を示す。
図6A)化合物7による染色。
図6B)抗A抗体である6E10による染色。
図6C)化合物7と6E10の共染色を示すAおよびBのマージ画像(白い矢印)。
【
図7】化合物10の静脈内投与後のマウスからのインビボ網膜画像およびエクスビボIHCを示す。化合物10を静脈内注射した後、t=0(1段目)またはt=5分(2段目)での、APPSwDI(10か月齢、F)、PSAPP(10か月齢、F)、または野生型(9か月齢、F)の網膜画像。明視野画像(挿入図)または蛍光網膜画像は、Phoenix Micron IVげっ歯類網膜撮像システムを使用して取得した。最下段:DAPI核染色または6E10抗体で染色された網膜のエクスビボIHC。化合物7の標識は、化合物10のインビボ注射からのものである(すなわち、それ以上の染色は行われなかった)。各チャネルは個別に表示され、3つのチャネルすべてがマージされて、化合物7と6E10の共局在が示される。白い矢印は、沈着物が観察される領域を示す。
【
図8】化合物10の静脈内投与を受けてから15分後のマウスのエクスビボIHCの脳切片を示す。脳切片をDAPI核染色および6E10で染色した。化合物7の標識は、インビボでの化合物10の注射からのものである。APPSwDI:白い矢印は、化合物7および6E10で標識された血管に沿ったアミロイド沈着を示している。PSAPP:化合物7および6E10によるアミロイドプラークの標識(白い矢印)。
【
図9】CAAと診断された4人の異なる患者および4人の健常対照群からのヒト脳組織のエクスビボ染色を示す。染色は以下の通りである:青=DAPI核染色、赤=6E10染色、緑/黄色=化合物7で染色。スケールバー=50μm。白い矢印は、緑/黄色が観察される領域を示す。
【
図10】ライン61(Line 61)モデルを使用したパーキンソン病に関連する網膜α-syn沈着物のインビボ検出を示す。
【
図11】DAPIおよびSYN1抗体で染色されたマウスから死後に抽出された網膜組織を示す。
【
図12】化合物10の投与により、同じ動物の網膜α-syn沈着物を再現性よく検出できることを示す。
【
図13】化合物10の投与により、3mg/kgのより低い用量で網膜α-syn沈着を検出できることを示す。
【
図16】化合物7およびSYN-1 Ab(アルファ-シヌクレイン)で染色されたパーキンソン病(PD)と診断された71歳の男性から抽出された右網膜の各領域からの例示的な画像を示す。
【
図17】化合物7およびSYN-1 Ab(アルファ-シヌクレイン)で染色されたパーキンソン病(PD)と診断された71歳の男性から抽出された左網膜の各領域からの例示的な画像を示す。
【
図18】化合物7が、パーキンソン病の眼の4つの象限すべてにおいてSYN1と共局在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
以下の説明は、本技術の例示的な実施形態を説明する。しかしながら、このような説明は、本開示の範囲の限定を意図しておらず、むしろ、例示的な実施形態の説明として提供されていると認識されるべきである。
【0014】
本明細書で使用される場合、以下の語、句、および記号は、それらが使用される文脈がそうではないことを示す範囲を除いて、概して以下に記載される意味を有することを意図する。
【0015】
ダッシュ(例えば、「-(-)」または「-(-)」)は結合を示し、置換基の結合点であり得る。例えば、-C(O)NH2は、炭素原子を介して結合されている。化学基は、1つ以上のダッシュの有無にかかわらず、通常の意味を失うことなく、表現することができる。構造内の線を介して描かれる波線は、置換基または基の結合点を示す。
【0016】
接頭辞「Cu-v」は、次に続く基が、u~v個の炭素原子を有することを示す。例えば、「C1-6アルキル」は、アルキル基が、1~6個の炭素原子を有することを示す。
【0017】
本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそれ自体に関する実施形態を含む(および説明している)。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量±10%を含む。他の実施形態では、「約」という用語は、示された量の±5%を含む。ある特定の他の実施形態では、「約」という用語は、示された量の±1%を含む。また、「約X」という用語は、「X」という記述を含む。また、単数形の「a」および「the」は、文脈が明確に別途指示しない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(the compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含み、「アッセイ(the assay)」への言及は、1つ以上のアッセイ、および当業者に既知のそれらの均等物への言及を含む。
【0018】
「アルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐鎖、またはそれらの組み合わせを表し、完全に飽和、一価または多価不飽和であり得、指定された炭素原子の数(すなわち、C1-C10は、1~10個の炭素を意味する)を有する二価および多価ラジカルを含み得る。飽和炭化水素ラジカルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、(シクロヘキシル)メチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体の基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、2~20個の炭素原子(すなわち、C2-20アルケニル)、2~8個の炭素原子(すなわち、C2-8アルケニル)、2~6個の炭素原子(すなわち、C2-6アルケニル)、または2~4個の炭素原子(すなわち、C2-4アルケニル)を有する脂肪族基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、ブタジエニル(1,2-ブタジエニルおよび1,3-ブタジエニルを含む)が挙げられる。
【0020】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有し、2~20個の炭素原子(すなわち、C2-20アルキニル)、2~8個の炭素原子(すなわち、C2-8アルキニル)、2~6個の炭素原子(すなわち、C2-6アルキニル)、または2~4個の炭素原子(すなわち、C2-4アルキニル)を有する脂肪族基を指す。「アルキニル」という用語には、1つの三重結合および1つの二重結合を有する基が含まれる。
【0021】
「アリール」は、単一の環(例えば、単環式)または縮合系を含む複数の環(例えば、二環式または三環式)を有する芳香族炭素環式基を指す。本明細書で使用される場合、アリールは、6~20個の環炭素原子(すなわち、C6-20アリール)、6~12個の炭素環原子(すなわち、C6-12アリール)、または6~10個の炭素環原子(すなわち、C6-10アリール)を有する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、およびアントリルが挙げられる。しかしながら、アリールは、以下に定義するヘテロアリールを包含しないか、またはヘテロアリールと決して重複しない。1つ以上のアリール基が、ヘテロアリール環と縮合する場合、得られる環系はヘテロアリールである。
【0022】
「シアノ」は、-CNを指す。
【0023】
「シクロアルキル」は、縮合、架橋、およびスピロ環系を含む単一の環または複数の環を有する飽和または部分的不飽和の環状アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を指す。シクロアルキルはまた、互いに縮合した複数の炭素環を含む環系を指し、縮合した環の1つは芳香族環であるが、環系は完全に芳香族ではない。本明細書で使用される場合、シクロアルキルは、3~20個の環炭素原子(すなわち、C3-20シクロアルキル)、3~12個の環炭素原子(すなわち、C3-12シクロアルキル)、3~10個の環炭素原子(すなわち、C3-10シクロアルキル)、3~8個の環炭素原子(すなわち、C3-8シクロアルキル)、または3~6個の環炭素原子(すなわち、C3-6シクロアルキル)を有する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルが含まれる。
【0024】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0025】
「ハロアルキル」は、上で定義されたように、非分枝状または分枝状アルキル基を指し、1個以上の水素原子がハロゲンで置き換えられている。例えば、アルキル残基が2つ以上のハロゲンで置換されている場合、結合したハロゲン部分の数に対応する接頭辞を使用することによって言及することができる。ジハロアルキルおよびトリハロアルキルは、それぞれ2つ(「ジ」)または3つ(「トリ」)のハロ基で置換されたアルキルを指し、これらは、同じハロゲンであってもよいが、同じハロゲンでなくてもよい。ハロアルキルの例には、これらに限定されないが、ジフルオロメチル(-CHF2)、トリフルオロメチル(-CF3)、フルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、および3-ブロモプロピルが含まれる。
【0026】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、少なくとも1個の炭素原子、ならびにN、O、S、PおよびSiからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子から構成される直鎖もしくは分岐鎖を意味し、これらのNおよびS原子は、任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子(複数可)N、O、S、P、およびSiは、ヘテロアルキル基の任意の非末端位置、またはヘテロアルキル基が結合する位置に含まれ得る。2個以上のヘテロ原子が鎖内で連続していてもよい。ヘテロアルキル基の例には、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、O-CH3、および-O-CH2-CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「ヘテロアリール」は、N、O、およびSから独立して選択される1個以上の環ヘテロ原子とともに、単一の環、複数の環、または複数の縮合環を有する、芳香族互変異性体または共鳴構造を有する基を含む芳香族基を指し、これらの窒素原子および硫黄原子は任意に酸化され、窒素原子(複数可)は任意に四級化される。本明細書で使用される場合、ヘテロアリールは、3~20個の環原子(すなわち、3~20員ヘテロアリール)、3~12個の環原子(すなわち、3~12員ヘテロアリール)、または5~10個の環原子(すなわち、5~10員ヘテロアリール)、ならびにN、O、およびSから独立して選択される1~5個のヘテロ原子を含む。ヘテロアリールは、上記で定義されたアリールを包含または重複しない。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、トリアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリル、ピリジン-2(1H)-オン、ピリダジン-3(2H)-オン、ピリミジン-4(3H)-オン、キノリン-2(1H)-オン、ピリミジニル、プリニル、ピリジル、ピリダジニル、ベンゾチアゾリル、およびピラゾリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系の各々の置換基は、以下に記載される許容可能な置換基の群から選択される。
【0028】
「ヘテロシクリル」という用語は、「ヘテロアルキル」の環状バージョンを意味する。さらに、ヘテロシクリルの場合、ヘテロ原子は、ヘテロシクリルが分子の残りの部分に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクリルの例には、テトラヒドロピラン、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクリルの例には、グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、ガラクトース、およびタロースが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクリルの例には、
【化1】
などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「ヒドロキシル」および「ヒドロキシ」は互換的に使用され、-OHを指す。「オキソ」は、例えば(=O)または(O)と表記される二重結合したOを指す。化合物の互変異性型が存在する場合、ヒドロキシル基およびオキソ基は交換可能である。
【0030】
「チオール」は、-SHを指す。
【0031】
「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」は、単独で、または別の置換基の一部として、それぞれ、アリールおよびヘテロアリールに由来する二価ラジカルを意味する。
【0032】
上記の用語の各々(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)は、示されたラジカルの置換型および非置換型の両方を含み得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」または「環ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0034】
特定の一般的に使用される代替化学名が使用される場合がある。例えば、二価の「アルキル」基、二価の「アリール」基などのような二価の基は、それぞれ「アルキレン」基または「アルキレニル」基、「アリーレン」基または「アリーレニル(arylenyl)」基と称されてもよい。また、特に明記しない限り、基の組み合わせが本明細書で1つの部分、例えばアリールアルキルと称される場合、最後に述べた基は、その部分が分子の残りの部分に結合する原子を含有する。
【0035】
「任意の」または「任意に」という用語は、その後に説明される事象または状況が発生しても、または発生しなくてもよく、説明は、該事象または状況が発生した場合と発生しない場合とを含むことを意味する。また、「任意に置換された」という用語は、指定された原子または基上の任意の1個以上の水素原子が、水素以外の部分によって置き換えられても、または置き換えられなくてもよいことを指す。
【0036】
一部の化合物は、互変異性体として存在する。互変異性体は、互いに平衡状態にある。例えば、アミド含有化合物は、イミド酸互変異性体と平衡状態で存在し得、カルボニル含有化合物は、エノール互変異性体と平衡状態で存在し得る。どの互変異性体が示されるかに関係なく、また互変異性体間の平衡の性質に関係なく、化合物は、当業者によって、すべての互変異性体を含むと理解される。したがって、アミド含有化合物は、それらのイミド酸互変異性体を含むと理解される。同様に、イミド酸含有化合物は、それらのアミド互変異性体を含むと理解される。
【0037】
本明細書で与えられる任意の式または構造はまた、化合物の非標識形態ならびに同位体標識形態を表すことを意図している。同位体標識化合物は、1個以上の原子が、選択された原子量または質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて、本明細書に与えられる式によって示される構造を有する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が挙げられるが、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iには限定されない。本開示の様々な同位体標識化合物、例えば3H、13C、および14Cなどの放射性同位体が組み込まれているもの。そのような同位体標識化合物は、代謝研究、反応速度論研究、薬物もしくは基質組織分布アッセイを含む、陽電子放射断層撮影(PET)もしくは単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)などの検出もしくは撮像技法、または患者の放射性治療において有用であり得る。
【0038】
本開示はまた、例えば炭素原子に結合した1~n個の水素が重水素に置き換えられている式Iの化合物の重水素化類似体も含み、ここで、nは分子中の水素の数である。このような化合物は、代謝に対する耐性の増加を示し得、哺乳動物、特に、ヒトに投与された場合、式Iの任意の化合物の半減期を増加させるのに有用であり得る。例えば、Foster、「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」、Trends Pharmacol.Sci.5(12):524-527(1984)を参照されたい。このような化合物は、当技術分野で周知の手段によって、例えば、1個以上の水素が重水素によって置き換えられている出発物質を用いることによって合成される。
【0039】
本開示の重水素標識または置換化合物は、分布、代謝、および排泄(ADME)に関連して、改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有し得る。重水素などのより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から生じる特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増加、必要投与量の低減、および/または治療指数の改善をもたらし得る。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは、一般に、容易に入手可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬に置き換えることにより、スキームまたは下に記載される実施例および調製に開示された手順を実行することによって調製され得る。この文脈における重水素は、本明細書に記載される化合物における置換基とみなされることが理解される。
【0040】
そのようなより重い同位体、具体的には重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義することができる。本開示の化合物では、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定した同位体を表すことを意味する。特に明記しない限り、位置が具体的に「H」または「水素」と指定される場合、その位置は、その天然存在度同位体組成に水素を有すると理解される。したがって、本開示の化合物では、重水素(D)として具体的に指定される任意の原子は、重水素を表すことを意味する。
【0041】
いくつかの実施形態では、化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれらに類似する基の存在により、酸および/または塩基塩を形成することができる。
【0042】
本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性形態、多形、およびプロドラッグも提供される。「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」は、獣医学的またはヒトの薬学用途に適した薬学的組成物を調製するのに有用な化合物、塩、組成物、剤形および他の材料を指す。
【0043】
所与の化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、所与の化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的ないしは別の方法で望ましくない塩を指す。「薬学的に許容される塩」または「生理学的に許容される塩」としては、例えば、無機酸との塩および有機酸との塩が挙げられる。加えて、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、酸性塩の溶液を塩基性化することにより遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、遊離塩基を好適な有機溶媒に溶解し、該溶液を酸で処理することによって作られ得る。当業者は、毒性のない薬学的に許容される付加塩を調製するために使用することができる、様々な合成方法論を認識するであろう。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製できる。無機酸に由来する塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸に由来する塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエン-スルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。同様に、薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製できる。無機塩基に由来する塩としては、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が挙げられる。有機塩基に由来する塩としては、アルキルアミン(すなわち、NH2(アルキル))、ジアルキルアミン(すなわち、HN(アルキル)2)、トリアルキルアミン(すなわち、N(アルキル)3)、アルケニルアミン(すなわち、NH2(アルケニル))、ジアルケニルアミン(すなわち、HN(アルケニル)2)、トリアルケニルアミン(すなわち、N(アルケニル)3)、モノ-、ジ-もしくはトリシクロアルキルアミン(すなわち、NH2(シクロアルキル)、HN(シクロアルキル)2、N(シクロアルキル)3)、モノ-、ジ-もしくはトリ-アリールアミン(すなわち、NH2(アリール)、HN(アリール)2、N(アリール)3)、または混合したアルキル、アルケニル、シクロアルキル、および/またはアリールアミン、などの第一級、第二級および第三級アミンの塩が含まれるが、これらに限定されない。好適なアミンの特定の例には、ほんの一例として、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N-エチルピペリジンなど、が含まれる。
【0044】
「置換された」という用語は、指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で、指定された原子または基上の任意の1個以上の水素原子が水素以外の1個以上の置換基で置き換えられることを意味する。特に明記しない限り、1つ以上の置換基は、本明細書で提供される任意の置換基、またはそれらの組み合わせであり得る。追加の置換基が無限に付加された置換基を定義することによって到達する、ポリマーまたは類似の不定構造(例えば、それ自体が置換アリール基で置換され、さらに置換ヘテロアルキル基で置換された置換アルキルを有する置換アリールなど)を、本明細書に含めることは意図していない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に活性な物質として、このような媒体および薬剤を使用することは、当技術分野において周知である。従来の媒体または薬剤が有効成分と適合しない場合を除いて、薬学的組成物におけるその使用が企図される。補助的な有効成分も組成物に組み込むことができる。
【0046】
「溶媒和物」は、溶媒と化合物との相互作用によって形成される。本明細書に記載の化合物の塩の溶媒和物も提供される。本明細書に記載の化合物の水和物も提供される。
【0047】
「プロドラッグ」は、生物系に投与されたときに、自発的な化学反応(複数可)、酵素触媒化学反応(複数可)、光分解、および/または代謝化学反応(複数可)の結果として親化合物を生成する任意の化合物を指す。したがって、プロドラッグは、生物学的に活性な親化合物の共有結合的に修飾された類似体または潜在型である。いくつかの実施形態では、親化合物は化合物7である。
【0048】
化合物
本開示は、神経疾患および障害の検出および治療に有用な化合物を提供する。本明細書に開示される化合物は、患者の疾患もしくは障害の検出、疾患もしくは障害の発症のリスクがある患者を特定するためのスクリーニング、疾患もしくは障害の診断、または疾患もしくは障害の監視に有用であり得る。本開示の化合物は、プロドラッグとして作用することができ、したがって、本明細書に記載の化合物への言及は、患者への化合物の投与時に形成される代謝産物および親化合物を含むことを意図する。
【0049】
化合物7などの化合物の水溶性が低く、粒子サイズが大きいため、これらの化合物のプロドラッグ誘導体を調査した。化合物7のリン酸プロドラッグは、溶解性および結晶化度の低減において利点を示すことが見出された。具体的には、化合物7にリン酸官能基を付加すると水溶性が増加することが見出された。リン酸官能基はホスファターゼによって体内で切断され、その結果、親化合物が送達されることが見出された。
【0050】
化合物は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩であり得、
【化2】
式中、R
1は、以下から選択され、
【化3】
各Xは独立して、OまたはSであり、
各R
11は独立して、水素、C
1-10アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリールおよび4~10員ヘテロシクリルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルは、任意に1~4個のR
21で置換されており、または、各XR
11は独立して、-XP(X)(R
12)
2であり、
各R
12は独立して、ヒドロキシ、チオール、-XP(X)(R
13)
2、C
1-10アルキル、-O-C
1-10アルキル、および-S-C
1-10アルキルから選択され、
各R
13は独立して、ヒドロキシ、チオール、C
1-10アルキル、-O-C
1-10アルキル、および-S-C
1-10アルキルから選択され、
各R
21は独立して、ハロ、ヒドロキシ、チオール、-NO
2、-N
3、シアノ、C
1-10アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
1-8ハロアルキル、C
6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、4~10員ヘテロシクリル、-O-C
1-10アルキル、-O-C
2-6アルケニル、-O-C
2-6アルキニル、-O-C
3-10シクロアルキル、-O-C
1-8ハロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NH
2、-NH(R
31)、-N(R
31)
2、-C(O)(R
31)、-C(O)O(R
31)、-C(O)OH、-C(O)NH
2、-C(O)NH(R
31)、-C(O)N(R
31)
2、-NHC(O)(R
31)、-NHC(O)O(R
31)、-NHC(O)NH(R
31)、-S(R
31)、-NHS(O)
y(R
31)、-N(C
1-10アルキル)S(O)
y(R
31)、-S(O)
yN(R
31)
2、-S(O)NH(R
31)、および-S(O)
y(R
31)から選択され、
各R
31は独立して、C
1-10アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
1-8ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択され、
各yは独立して、1または2である。
【0051】
いくつかの実施形態では、R
1は、
【化4】
である。
【0052】
いくつかの実施形態では、各Xは独立して、Oである。
【0053】
いくつかの実施形態では、R
1は、
【化5】
であり、式中、X
1、X
2、およびX
3のそれぞれは、独立してOまたはSである。
【0054】
いくつかの実施形態では、R
1は、
【化6】
である。
【0055】
いくつかの実施形態では、各R11は独立して、水素である。
【0056】
いくつかの実施形態では、R
1は、
【化7】
である。
【0057】
いくつかの実施形態では、化合物は一塩基性塩である。
【0058】
いくつかの実施形態では、化合物は二塩基性塩である
【0059】
いくつかの実施形態では、化合物は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、または亜鉛塩から選択される塩である。
【0060】
いくつかの実施形態では、化合物はナトリウム塩である。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物はカリウム塩である。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物はアンモニウム塩である。いくつかの実施形態では、化合物はジアンモニウム塩である。
【0063】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下の化合物、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0064】
いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、
【化9】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0065】
いくつかの実施形態では、化合物は、化合物8、
【化10】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0066】
いくつかの実施形態では、化合物は、化合物9、
【化11】
またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、塩はジアンモニウム塩である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物10である。
【化12】
【0067】
一般的な合成
本開示の化合物は、本明細書に開示される方法および本明細書の開示を考慮すると明らかであるそのルーチンの変形例、ならびに当該技術分野で既知の方法を使用して調製することができる。本明細書の教示に加えて、従来の周知の合成方法を使用することができる。式(I)の典型的な化合物、例えば、式(I)によって記載される構造を有する化合物、または本明細書に開示される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、の合成は、実施例に記載されるように、また、糖技術分野で知られているように達成することができる。
【0068】
本開示による化合物の典型的な実施形態は、以下に記載される反応スキームおよび/または実施例を使用して合成することができる。本明細書の説明を考慮すると、材料を同様の構造を有する他の材料で置換することによってスキームが変更され、対応する異なる製品をもたらすことができることが明らかであろう。以下、合成の説明は、所望の生成物を提供するために工程がどのように変化するかについての例を提供する。本明細書の反応スキームで使用される基の表示(例えば、R1)は、例示のみを目的としており、特に明記しない限り、式(I)の化合物、またはその態様または断片を説明するために他の場所で使用される表示と名前または機能が必ずしも一致しない。
【0069】
プロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、特に明記しない限り、他のプロセス条件も使用できることが理解されよう。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒によって異なり得るが、そのような条件は、当業者が日常的な最適化手順によって決定することができる。さらに、当業者には明らかであるように、特定の官能基が望ましくない反応を受けるのを防ぐために、従来の保護基が必要な場合がある。様々な官能基に適した保護基、ならびに特定の官能基を保護および脱保護するための好適な条件は、当技術分野でよく知られている。例えば、多数の保護基が、T.W.Greene and G.M.Wuts(1999)Protecting Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,Wiley,New Yorkおよびそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0070】
以下の反応のための材料および試薬は、一般に既知の化合物であるか、または既知の手順またはその明らかな変更によって調製することができる。例えば、出発物質の多くは、Aldrich Chemical Co.(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)などの商用供給業者から入手可能である。他のものは、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-15(John Wiley,and Sons,1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5,and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989)organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley,and Sons,1991)、March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley,and Sons,5thEdition,2001)、およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)などの標準的な参照テキストに記載されている手順またはその明らかな変更によって調製することができる。
【0071】
スキーム1は、本明細書で提供される化合物(例えば、式Iの化合物)の合成のための例示的な合成経路を示す。式Iの化合物、例えば、化合物11、または本明細書に開示される他の式もしくは化合物は、最初に化合物7を提供し、次に好適な条件(例えば、求核置換)を使用して所望のR
1置換基を結合することによって調製することができる。スキーム1において、R
1は本明細書で定義されている通りであり、一方、Yは好適な脱離基である。
【化13】
【0072】
スキーム1において、化合物7は、求核置換条件下で(例えば、塩基を使用して)、好適な溶媒(例えば、THF、DMFなど)中、任意に不活性雰囲気下で、化合物12と反応して、化合物11を提供する。場合によっては、化合物7は、水素化ナトリウムまたはブチルリチウムなどの塩基を使用して脱プロトン化させ、次に化合物12と接触させる。反応は、約-78~0℃の温度で約5分~約1時間、または約0~50℃の温度で約1時間~約12時間実施することができる。反応が実質的に完了したとき、生成物化合物11を従来の手段によって単離する。
【0073】
検出可能な標的タンパク質
本明細書に記載の化合物は、神経疾患または障害を検出または治療するのに有用であり得る。これに関して、本明細書に記載の化合物はプロドラッグであり得る。したがって、本明細書に記載の化合物は、化学的または酵素的経路を介して親化合物に変換され得、親化合物は、次に、神経疾患または障害を検出または治療するのに有用であり得る。
【0074】
神経変性疾患および損傷関連障害を含む多くの神経疾患は、本明細書に記載の化合物および方法によって検出され得る。神経疾患または障害は、本明細書で検出可能なタンパク質として記載される、特定のペプチド、タンパク質、またはタンパク質の蓄積体によって特徴付けられ得る。検出可能なタンパク質、またはその蓄積体は、例えば、アミロイドベータタンパク質またはリン酸化タウタンパク質を含み得る。アミロイドベータタンパク質またはリン酸化タウタンパク質は、本明細書に記載されているように、化合物と接触させることによって検出することができる。一般に、本明細書に記載の化合物および方法は、患者の組織または試料中のアミロイドベータタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体の検出に有用である。アミロイドベータタンパク質またはリン酸化タウタンパク質のそのような存在は、アミロイドベータタンパク質またはリン酸化タウタンパク質に結合する化合物で検出することができ、その後、その結合を検出することができる。
【0075】
アミロイドベータタンパク質(Aβ)は、一般に約40アミノ酸残基、例えば、約36~43、約39~43、または約40~42アミノ酸残基を含有するポリペプチドである。アイソフォームには、Aβ(1~40)およびAβ(1~42)が含まれる。いくつかの実施形態では、AβはAβ(1~42)である。Aβは、ヒト21番染色体上の遺伝子によってコードされている、より大きな前駆体タンパク質であるベータアミロイド前駆体タンパク質(APP)の酵素的切断によって生成されると考えられている。APPアイソフォームには、NP_000475.1、NP_001129488.1、NP_001129601.1、NP_001129602.1、NP_001129603.1、NP_001191230.1、NP_001191231.1、NP_001191232.1、NP_958816.1、およびNP_958817.1が含まれる。Aβは、APPに対する酵素βおよびγセクレターゼの作用によって生成されると考えられている。Aβは、アルツハイマー病を有する個体の脳の沈着物、例えば、プラークに見出されている。Aβは神経疾患の原因に関与していると考えられている。Aβは神経細胞に対しても毒性があると考えられている。
【0076】
本開示の化合物によって検出されるタンパク質には、アミロイドベータペプチド(Aβ)、プリオンペプチド(PrP)、アルファ-シヌクレイン、IAPP(アミリン)、ハンチンチン、カルシトニン(ACal)、心房性ナトリウム利尿因子(AANF)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、血清アミロイドA(SAA)、メディン(medin)(AMed)、プロラクチン(APro)、トランスチレチン(ATTR)、リゾチーム(ALys)、ベータ2ミクログロブリン(Aβ2M)、ゲルゾリン(AGel)、ケラトエピテリン(Aker)、シスタチン(ACys)、免疫グロブリン軽鎖AL(AL)、S-IBMまたはスーパーオキシドジスムターゼが含まれる。いくつかの実施形態では、検出されるアミロイドペプチドは、Aβペプチド、プリオンペプチド、アルファ-シヌクレイン、またはスーパーオキシドジスムターゼである。
【0077】
「微小管結合タンパク質タウ」、「MAPT」、「タウタンパク質」、または「タウ」は、構築および解体中に微小管を安定化するタンパク質のファミリーであり、微小管結合タンパク質(MAP)として分類される。タウアイソフォーム配列には、NP_001116538.2、NP_001116539.1、NP_001190180.1、NP_001190181.1、NP_005901.2、NP_058518.1、NP_058519.3、およびNP_058525.1が含まれる。タウタンパク質は、微小管の安定化および構築に重要であり、次に、カーゴのニューロン内輸送に影響を与える。タウはまた、酸性N末端を介してアクチンと相互作用し、脳の発達中の神経突起の伸長および安定化のために微小管から突出することにより、シグナル伝達経路に関与している可能性がある。本明細書で提供されるタウタンパク質は、任意のアイソフォーム、またはアイソフォームの任意の組み合わせを含み得る。MAPT転写産物は、ニューロン成熟段階およびニューロンのタイプに応じて、神経系で異なって発現する。MAPT遺伝子変異は、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺などのいくつかの神経障害に関連している。タウタンパク質には、翻訳後修飾が含まれる場合と含まれない場合がある。タウタンパク質ファミリーは、すべてのメンバーで共有するN末端セグメント、脳内で発生的に調節されるN末端セグメントに挿入された約50アミノ酸の配列、31~32アミノ酸の3または4つのタンデムリピートからなる特徴的なタンデムリピート領域、およびC末端テールで特徴付けられる。
【0078】
ヒトタウ遺伝子は、17番染色体の長腕の17q21の位置にある。この遺伝子は16個のエクソンを含有し、プロモーターの一部としてエクソン21が含有されていると考えられている。タウの一次転写産物には13個のエクソンが含有されており、エクソン4A、6、および8はヒトでは転写されない。エクソン21および14は転写されるが、翻訳されない。エクソン1、4、5、7、9、11、12、13は構成的であり、エクソン2、3、および10は選択的にスプライシングされ、6つの異なるmRNAが生成され、6つの異なるタウアイソフォームに翻訳される。これらのアイソフォームは、アミノ末端部分のエクソン2および3によってコードされる1つまたは2つの29アミノ酸リピート(0N、1N、または2N)の有無と、カルボキシ末端部分の3つの微小管結合リピート(R1、R3、およびR4)または4つの(R1~R4)リピート領域の組み合わせによって異なる。4番目の微小管結合ドメインはエクソン10によってコードされている。6つのタウタンパク質アイソフォームがヒトの脳組織に存在することが知られている:(2+3+10+)アイソフォーム(441-アミノ酸を有する)、(2+3+10-)アイソフォーム(410-アミノ酸を有する)、(2+3-10+)アイソフォーム(412-アミノ酸を有する)、(2+3-10-)アイソフォーム(381-アミノ酸を有する)、(2-3-10+)アイソフォーム(383-アミノ酸を有する)、および(2-3-10-)アイソフォーム(352-アミノ酸を有する)。タウは変異体タウであり得る。変異はFTDP-17変異であり得る。変異の例には、G272V、N279K、N296、P201L、P301S、G303V、S305N、L315R、S320F、P332L、V337M、E342V、S352L、K369I、G389R、R5H、R5L、K257T、I260V、L266V、G272V、delK280、N296H、N296N、delN296、P301L、P301S、K317M、G335V、Q336R、R406WおよびR427Mが含まれる。
【0079】
「リン酸化タウタンパク質」または「リン酸化タウ」は、リン酸基によって修飾された少なくとも1つのアミノ酸残基を有するタウタンパク質である。タウは、リン酸化に適合する85ものアミノ酸残基を含むと考えられている。通常、リン酸基は翻訳後修飾であり、アミノ酸残基の側鎖に結合していてもよい。リン酸化アミノ酸残基は、例えば、セリン(S)、スレオニン(T)、またはチロシン(Y)残基、またはそれらの組み合わせであり得る。リン酸化タウタンパク質は、タンパク質1モルあたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50モルのリン酸を含み得る。リン酸化タウタンパク質は、タンパク質1モルあたり少なくとも3モルのリン酸を含み得る。リン酸化タウタンパク質は、Thr39、Ser46Pro、Thr50Pro、Thr69Pro、Thr153Pro、Thr175Pro、Thr181Pro、Ser198、Ser199、Ser202Pro、Thr205Pro、Ser208、Ser210、Thr212Pro、Ser214、Thr217Pro、Thr231Pro、Ser235Pro、Ser237、Ser241、Ser262、Ser285、Ser305、Ser324、Ser352、Ser356、Ser396Pro、Ser400、Thr403、Ser404Pro、Ser409、Ser412、Ser413、Ser416、およびSer422Proから選択される1つ以上のリン酸化アミノ酸残基を含み得る。リン酸化タウタンパク質は、リン酸化されたSer422を含み得る。本明細書で提供されるリン酸化タウタンパク質は、凝集していても、凝集していなくてもよい。本明細書で提供されるリン酸化タウタンパク質は、可溶性であり得る。タウタンパク質、またはリン酸化タウタンパク質は、3リピートタウ、4リピートタウ、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、タウタンパク質、またはリン酸化タウタンパク質は、4リピートタウがより多くみられる、3リピートタウおよび4リピートタウの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、タウタンパク質、またはリン酸化タウタンパク質は、3リピートタウがより多くみられる、3リピートタウおよび4リピートタウの混合物を含み得る。リン酸化タウタンパク質は、例えば神経原線維変化(neurofibrillary tangle)(NFT)として線維状であり得る。NFTは、ニューロンの体細胞樹状突起コンパートメントに見られる場合がある。
【0080】
「接触する」は、その単純な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子を含む化合物または細胞)が、相互作用するのに十分に近接することを可能にするプロセスを指す。「接触する」という用語は、2つの分子種が反応するか、または物理的に接触することを可能にすることを含み得、ここで、2つの種は、例えば、本明細書に記載の化合物、生体分子、タンパク質または酵素であり得る。いくつかの実施形態では、接触は、本明細書に記載の化合物を、タンパク質(例えば、Aβタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質)または酵素と相互作用させることを含む。
【0081】
したがって、本開示のいくつかの実施形態によれば、患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定するための方法が提供される。この方法は、患者の組織または試料を本明細書に記載の化合物と接触させることにより、患者の組織または試料中のアミロイドベータタンパク質、もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体の存在を検出することを伴う。接触は、インビボまたはエクスビボであり得る。接触は、患者への化合物の投与、例えば、局所投与または静脈内投与によるものであり得る。
【0082】
別の実施形態では、神経疾患または障害の診断のために患者を準備するための方法が提供され、この方法は、患者に本明細書に記載の化合物を投与し、アミロイドベータタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体に結合させることを含む。化合物は静脈内投与することができる。化合物が患者に投与されると、アミロイドベータタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体への、その結合、および/または親化合物の結合は、本明細書に記載の方法を含む任意の方法で検出することができる。いくつかの実施形態では、結合は、患者が神経疾患または障害を有する可能性を示す。
【0083】
神経疾患および障害ならびにその治療
いくつかの実施形態では、本開示は、患者における神経疾患または障害の有無を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、有効量の本明細書に記載の化合物またはその薬学的組成物を患者に投与することを含む。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、または化合物9である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。いくつかの実施形態では、患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定するための方法であって、本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の薬学的組成物を患者に投与することを含む、方法が提供される。この方法のいくつかの実施形態では、化合物は静脈内投与される。この方法のいくつかの実施形態では、化合物は患者の眼に投与される。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、タンパク質凝集またはタンパク質の誤った折り畳みを特徴とする疾患または障害である。
【0084】
患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定するための方法であって、患者の組織または試料中のアミロイドベータタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体の存在を検出することを含み、検出することが、組織または試料を本明細書に記載の化合物と接触させることを含む、方法もまた本明細書で提供される。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、または化合物9である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。接触はインビボであり得る。組織は眼の組織であり得る。試料は尿試料であり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、加齢性疾患または障害、遺伝性疾患または障害、損傷関連疾患または障害、および精神疾患または障害から選択される。いくつかの実施形態では、加齢性疾患または障害が、パーキンソン病、血管性認知症、および筋萎縮性側索硬化症から選択され、遺伝性疾患または障害がダウン症候群であり、損傷関連疾患または障害は、外傷性脳損傷および慢性外傷性脳症から選択され、精神疾患または障害は、統合失調症および鬱病から選択される。神経疾患または障害はタウオパチーであり得る。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、アルツハイマー病または外傷性脳損傷(TBI)である。
【0086】
神経疾患または障害はタウオパチーであり得る。タウオパチーは、人間の脳の神経原線維変化またはグリア原線維変化(gliofibrillary tangle)におけるタウタンパク質の病理学的凝集に関連する神経疾患のクラスである。変化(tangle)は、タウの過剰リン酸化によって形成され、タウタンパク質を微小管から解離させ、不溶性形態で凝集体を形成させる可能性がある。過剰リン酸化タウタンパク質の凝集は、対になったらせん状フィラメントと呼ばれることもある。変化形成(tangle formation)の正確なメカニズムは完全には理解されておらず、変化が疾患の主要な原因要因であるのか、それともより末梢的な役割を果たすのかについてはまだ議論の余地がある。タウオパチーは、外傷後の変性、感染症、代謝性疾患、運動ニューロン変性など、多くの神経障害で発見されている。タウタンパク質の空間分布、時間的外観、および構造変化は、さまざまな神経疾患間で異なって現れる。AD患者は、ねじれた、過剰リン酸化された、単一の非周期的タウフィラメントを有しているが、進行性核上性麻痺および前頭側頭型認知症(FTD)を有する患者は、まっすぐなタウフィラメントしか有さない傾向がある。タウオパチーは、おそらくシヌクレインとタウタンパク質間の相互作用が原因で、シヌクレイノパチーと重複することがよくある。非アルツハイマー病型タウオパチーは、前頭側頭型認知症または前頭側頭葉変性症と関連しているため、「ピック・コンプレックス(Pick’s complex)」としてグループ化されることがある。タウの過剰リン酸化のマーカーは、タウpS422である。慢性外傷性脳症(CTE)は、反復性の軽度の外傷性脳損傷(mTBI)に関連しており、神経原線維変化(NFT)などのタウの過剰リン酸化および凝集など、タウオパチーと多くの類似点がある。
【0087】
いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位の老人性認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底変性症(CBD)、17番染色体に関連する前頭側頭型認知症およびパーキンソニズム(FTDP-17)、リチコ・ボディグ病(Lytico-bodig disease)(グアムのパーキンソン-認知症複合)、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、鉛脳症、結節性硬化症、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、およびリポフスチン症から選択される。
【0088】
神経疾患または障害は、神経変性疾患または障害であり得る。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、アルツハイマー病(AD)である。ADは続発性タウオパチーとして分類される場合がある。アルツハイマー病は、疾患の初期段階での記憶喪失の症状を特徴とする。神経原線維変化はADの初期の記述子(descriptor)であった。タウが過剰リン酸化されると、タンパク質は軸索の微小管から解離する。その後、タウは誤って折りたたまれて凝集し始め、神経原線維変化(NFT)を形成し得る。タウが解離すると微小管も不安定になり、神経原線維変化と不安定化した微小管の組み合わせにより、軸索輸送および神経伝達などのプロセスが破壊される。ADにおけるNFTの関与の程度は、ブラークステージによって定義される。ブラークステージIおよびIIは、NFTの関与が主に脳の経嗅内領域(transentorhinal region)に限定されている場合に使用され、海馬などの辺縁系領域が関与されるようになる場合はステージIIIおよびIV、広範な新皮質への関与が示される場合はステージVおよびVIである。ADはまた、老人斑(senile plaques)の存在のためにアミロイドーシスとして分類される。さらに、特定のApoε4キャリアは、ADを発症するリスクが高くなる。APOε4は、Aεの除去において他のアイソフォームよりも効率が低いと考えられており、したがって、アミロイド負荷の増加、タウのリン酸化、シナプス毒性、およびシナプス密度の低減と相関している可能性がある。外傷性脳損傷(TBI)を経験することは、ADを発症するもう1つの危険因子であり、研究によると、TBIを経験した人はADのリスクが大幅に増加することが示されている。
【0089】
ADが進行するにつれて、症状には、錯乱、長期記憶の喪失、錯語、語彙の喪失、攻撃性、易怒性、および/または気分変動が含まれる。疾患のより進行したステージでは、身体機能の喪失がある。アルツハイマー病(AD)の患者は、酸化ストレスの増加、ミトコンドリア機能障害、シナプス機能障害、カルシウム恒常性の破壊、老人斑および神経原線維変化の沈着、ならびに脳の萎縮など、多くの特徴的な神経障害を呈する。AD関連障害には、AD型の老年期認知症(SDAT)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、軽度の認知機能障害(MCI)、加齢性記憶障害(AAMI)が含まれる。いくつかの実施形態では、患者がアルツハイマー病を患っているかどうかを決定することは、患者の組織または試料中のリン酸化タウタンパク質の存在を検出することを含み、検出は、リン酸化タウタンパク質を本明細書に記載の化合物と接触させることを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、神経疾患または神経障害疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、FTLD-タウ、FTLD-TDP、またはFTLD-FUS)である。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は前頭側頭型認知症である。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は記憶喪失を含む。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は加齢性記憶喪失である。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害はFTLD-TDPタイプAである。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害はFTLD-TDPタイプBである。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害はFTLD-TDPタイプCである。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害はFTLD-TDPタイプDである。
【0091】
いくつかの実施形態では、神経疾患または障害はパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害はパーキンソン型認知症である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、アミロイドプラークの蓄積体に関連する(例えば、それによって特徴付けられる)。いくつかの実施形態では、神経疾患もしくは障害を有する患者は、神経疾患もしくは障害の発症前、発症中、または発症後に外傷性脳損傷を負ったことがある。いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、ニューロンの機能障害を含む。ニューロンの機能障害は、ニューロンの有効な機能の萎縮またはその他の低下を含み得る。例えば、アルツハイマー病では、特に海馬ニューロンおよび海馬に近接するニューロンなどの皮質ニューロンにおいて、ニューロンの機能障害を呈することが知られている。
【0092】
いくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、外傷性軸索損傷(TAI)、外傷性脳障害(TBD)、認知症(例えば、一般的な認知症)、17番染色体に関連するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、神経原線維変化優位の老人性認知症、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症、リチコ・ボディグ病(グアムのパーキンソン-認知症複合)、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、リポフスチン症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、または大脳皮質基底核変性症、である。
【0093】
神経疾患または障害は、外傷性脳損傷(TBI)または慢性外傷性脳症(CTE)などの損傷関連状態であり得る。外傷性脳損傷(TBI)は、衝突、打撃、衝撃、急激な加速もしくは減速、または発射体の貫通などの外力によって引き起こされる脳への傷害による慢性疾患である。TBIにつながる損傷は、意識状態の低下または変化を引き起こし、認知、感覚運動、および心理社会的機能に一時的または永続的な欠陥をもたらす可能性がある。CTEは、TBI症状を引き起こさなかった頭部への打撲を含む、繰り返し脳外傷を受けた人々に見られる進行性の変性疾患である。CTEの物理的側面には、脳の収縮、前頭葉および側頭葉の萎縮、脳室の拡大、海馬、視床、脳幹、および小脳の萎縮が含まれる。CTEの個体は、認知症、記憶喪失、攻撃性、錯乱、鬱病、自殺念慮の症状があり、これらは損傷の何年も後に発生する可能性がある。
【0094】
神経疾患または障害は、眼に関するもの、例えば、緑内障、高眼圧症、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)または網膜色素変性症である可能性がある。
【0095】
この方法のいくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、プリオン病である。プリオン病は致命的で伝染性の神経障害であり、その中で最も顕著なのはクロイツフェルト・ヤコブ病またはCJDである。CJDは、他の多くの神経疾患で発生する症状を引き起こすため、「グレートミミッカー(great mimicker)」と呼ばれることもある。一般的なCJD症状には、行動の変化、錯乱、認知機能障害、運動障害、および視覚障害などのさまざまな神経学的および精神医学的兆候が含まれる。CJDは診断が難しく、現在の慣行は脳脊髄液検査に依存している。興味深いことに、最近の報告では、CJD患者の死後の網膜組織にプリオンタンパク質が含まれていることが示されている。
【0096】
したがって、患者のプリオン沈着を検出するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、検出は網膜で行われる。ある特定の実施形態では、患者の網膜におけるプリオン沈着を検出するための方法が提供され、この場合、患者は、クロイツフェルト・ヤコブ病(例えば、行動変化、錯乱、認知機能障害、運動障害、視覚障害、脊椎後弯症、運動失調、つま先歩行など)などのそれに関連する疾患または障害の臨床症状を示す場合と示さない場合がある。
【0097】
脳アミロイド血管症(CAA)は、脳血管壁内のアミロイド沈着を特徴とする老化の疾患である。これらの沈着物は皮質および軟髄膜動脈に発生し、高齢世代における自発性の脳内出血、虚血性病変、および進行性認知症のリスクの増加につながる。CAAの診断は、症状が一過性脳虚血発作または「軽度の卒中(mini-stroke)」に類似した症状を示すため、医師に見逃されることがよくある。CAAはアルツハイマー病患者の最大90%に見られるため、診断はさらに複雑になる可能性がある。いくつかのアミロイド形成ペプチドがCAAを引き起こす可能性があり、それらの中でも、アミロイドベータ(Aβ)は群を抜いて最も一般的な形態である。Aβ沈着は、重度のCAAヒト脳組織の細動脈、毛細血管、および動脈の壁内で検出されている。Aβ42アイソフォームはアルツハイマー病患者の実質プラークに優先的に存在するのに対し、Aβ40アイソフォームはCAAの脳血管壁沈着物内でより高密度であることが確立されている。この方法のいくつかの実施形態では、神経疾患または障害は、脳アミロイド血管症(CAA)である。脳アミロイド血管症(CAA)は、脳血管壁内のアミロイド沈着を特徴とする老化の疾患である。
【0098】
したがって、ある特定の実施形態では、患者のAβ40を検出するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、検出は網膜で行われる。ある特定の実施形態では、検出は、CAA(Aβ40)およびアルツハイマー病(Aβ42)に関連するAβアイソフォームを区別する。
【0099】
神経疾患または障害のさらなる例としては、アレキサンダー病、アルパース病、鬱病、周産期仮死、パーキンソン病認知症(「PD認知症」)、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病としても知られている)、海綿状脳症(例えば、牛海綿状脳症(狂牛病)、クールー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、致死性家族性不眠症、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、脆弱X症候群、前頭側頭型認知症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、マシャド・ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、ペリツェウス・メルツバッヘル病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、統合失調症、脊髄小脳失調症(様々な特徴を持つ複数のタイプ)、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄ろう、薬剤性パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、特発性パーキンソン病、常染色体優性パーキンソン病、家族性、1型(PARK1)、パーキンソン病3、常染色体優性レビー小体(PARK3)、パーキンソン病4、常染色体優性レビー小体(PARK4)、パーキンソン病5(PARK5)、パーキンソン病6、常染色体劣性早発性(PARK6)、パーキンソン病2、常染色体劣性若年性(PARK2)、パーキンソン病7、常染色体劣性早発性(PARK7)、パーキンソン病8(PARK8)、パーキンソン病9(PARK9)、パーキンソン病10(PARK10)、パーキンソン病11(PARK11)、パーキンソン病12(PARK12)、パーキンソン病13(PARK13)、またはミトコンドリアパーキンソン病が挙げられる。
【0100】
患者の神経疾患または障害を決定すると、神経疾患または障害の症状を治療または改善するために、あるいはその進行を遅らせるかまたは停止するために、特定の手順を提供することができる。神経疾患または障害が診断されると、本明細書に記載の方法によって疾患または障害の進行はまた監視され得る。診断されると、治療医師はまた、本明細書に記載されるものを含む、専門家に既知の追加の治療を提案することができる。
【0101】
「治療」または「治療する」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチである。有益なまたは望ましい臨床結果には、以下の1つ以上が含まれ得る:a)疾患または状態を阻害する(例えば、疾患もしくは状態に起因する1つ以上の症状を減少させ、かつ/または疾患もしくは状態の程度を減少させる)、b)疾患または状態に関連する1つ以上の臨床症状の発症を改善、遅延または阻止する(例えば、疾患または状態を安定化させ、疾患または状態の悪化もしくは進行を予防または遅延させ、かつ/または疾患もしくは状態の広がり(例えば、転移)を予防もしくは遅延させる)、かつ/あるいはc)疾患を軽減する、すなわち、臨床症状の退行を引き起こす(例えば、病状を改善し、疾患または状態の部分的もしくは完全な寛解を提供し、別の薬物の効果を増強させ、疾患の進行を遅延させ、生活の質を向上させ、かつ/または生存期間を延長させる。
【0102】
「予防」または「予防する」とは、疾患または状態の臨床症状を発症させない疾患または状態の任意の治療を意味する。いくつかの実施形態では、化合物は、疾患もしくは状態のリスクがあるか、または疾患もしくは状態の家族歴を有する患者(ヒトを含む)に投与され得る。
【0103】
「患者」とは、治療、観察または実験の対象であったか、または対象となるであろう哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載の方法は、ヒトおよび/または獣医学的適用において有用であり得る。いくつかの実施形態では、患者は、哺乳動物である。一実施形態では、患者は、ヒトである。
【0104】
本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、もしくは重水素化類似体の「有効量」という用語は、患者または患者の試料に投与した場合に、アミロイドベータタンパク質もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体を検出するのに十分な量、または症状の改善もしくは疾患の進行の遅延などの治療効果を提供するのに十分な量を意味する。例えば、有効量は、神経学的疾患または障害の疾患または状態の症状を減少させるのに十分な量であり得る。有効量は、患者、および治療を受ける疾患または状態、患者の体重および年齢、疾患または状態の重症度、ならびに投与方法に応じて異なり得るが、当業者によって容易に決定することができる。
【0105】
本明細書に記載の方法は、インビボまたはエクスビボで細胞集団に適用することができる。「インビボ」は、動物またはヒト体内のように、生きている個体の体内を意味する。これに関連して、本明細書に記載の方法を、個体に使用することができる。「エクスビボ」は、生きている個体の外を意味する。エクスビボ細胞集団の例としては、インビトロ細胞培養物、および個体から得られた体液または組織試料を含む生物学的試料が挙げられる。このような試料は、当技術分野において周知の方法によって得ることができる。例示的な生体液試料には、血液、脳脊髄液、尿、および唾液が含まれる。これに関連して、本明細書に記載の化合物および組成物を、治療および実験的な目的を含む様々な目的に使用することができる。例えば、本明細書に記載の化合物および組成物をエクスビボで使用して、所与の適応症、細胞型、個体、および他のパラメータに対する本開示の化合物の投与の最適な投与量を決定することができる。このような使用から収集された情報を、実験的な目的または診療所で、インビボ使用のプロトコルを設定するために使用することができる。本明細書に記載の化合物および組成物が適するであろう他のエクスビボ用途を以下に記載するが、当業者には明らかであろう。選択された化合物は、ヒトまたは非ヒト患者における安全性または耐容投与量を調べるためにさらに特徴付けされてもよい。このような特性は、当業者に一般的に知られている方法を使用して調べることができる。
【0106】
標的タンパク質の検出
本明細書で提供されるのは、患者の神経疾患または障害の診断のための方法であって、患者の組織に本明細書に記載の化合物を投与することを含む、方法である。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、または化合物9である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。この方法は、化合物の結合、および/または親化合物の、検出可能な標的タンパク質、例えば、アミロイドベータタンパク質、もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体への結合を検出することを含み得る。投与は静脈内投与であり得る。この方法は、化合物の検出可能な標的タンパク質への結合を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、この方法は、光による活性化および検出可能なシグナルの放出をさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、シグナルを対照値と比較することを含み、対照値と比較したシグナルの増加は、検出可能な標的タンパク質の存在を示し、対照値は、検出可能な標的タンパク質の非存在下でのシグナルである。この方法のいくつかの実施形態では、検出可能なシグナルは、蛍光または赤外線シグナルである。いくつかの実施形態では、光はレーザーである。
【0107】
いくつかの実施形態では、本開示は、検出可能な標的タンパク質、例えば、アミロイドベータタンパク質、もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体を検出する方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の化合物を、検出可能な標的タンパク質、例えば、アミロイドベータタンパク質、もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体を潜在的に含む組織または試料と接触させることを含み、化合物は、検出可能な標的タンパク質と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の化合物またはその親化合物と、検出可能な標的タンパク質との結合の存在または非存在を検出する方法であり、患者に、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、治療に対する検出可能な標的タンパク質の存在を特徴とする疾患または状態を有する患者の応答を監視するための方法であり、治療後に有効量の本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を検出可能な標的タンパク質に結合させることと、結合に応答して生成されたシグナルを検出することを含み、治療前と比較したシグナルの減少が、患者が治療に応答することを示す、方法である。いくつかの実施形態では、検出可能な標的タンパク質は、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質、例えば、Aβペプチド、プリオンペプチド、アルファ-シヌクレイン、またはスーパーオキシドジスムターゼである。いくつかの実施形態では、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質は、ベータアミロイド(1-42)(Aβ(1-42))である。いくつかの実施形態では、検出可能な標的タンパク質は、リン酸化タウタンパク質である。いくつかの実施形態では、リン酸化タウタンパク質は、3リピートタウまたは4リピートタウである。
【0108】
いくつかの実施形態では、検出は、化合物と検出可能な標的タンパク質との接触、または化合物の投与の約1秒、約5秒、約1分、約10分、約30分または約60分以内に行われる。いくつかの実施形態では、検出は、化合物の接触または化合物の投与から約1~5分以内に行われる。
【0109】
検出可能な標的タンパク質、例えば、アミロイドベータタンパク質、もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体と、本明細書に記載の化合物との結合のインサイチュ検出は、好ましくはハンドヘルド型または携帯型である撮像デバイスで容易にすることができる。撮像デバイスは、レンズおよび画像センサー、ならびに任意にレーザー光源を含むことができる。光源が例えば網膜などの組織にレーザー光を発すると、検出可能な標的タンパク質がそこに蓄積され、本明細書に記載の化合物が結合している場合、標的タンパク質は蛍光シグナルを収集ならびに感知するレンズおよび画像センサーによって容易に検出および定量化することができる。撮像デバイスは、光を検出することができる任意のデバイス、例えば、カメラであり得る。撮像デバイスは、共焦点レンズを含み得る。撮像デバイスは、網膜撮像デバイスであり得る。撮像デバイスは、眼底カメラを含み得る。検出は、共焦点レーザー走査顕微鏡を含み得る。検出は非散瞳性(non-mydriatic)であり得る。網膜撮像技術の概要については、例えば、M.D.Abramoff et al,Retinal Imaging and Image Analysis(2010),IEEE Rev Biomed Eng.3:169-208を参照されたい。
【0110】
アミロイドベータタンパク質またはリン酸化タウタンパク質は、患者の眼に蓄積する可能性がある。いくつかの実施形態では、接触は、光によって活性化されると、検出可能なシグナルの放出を引き起こす。シグナルは、蛍光シグナルまたは赤外線シグナルであり得る。
【0111】
本明細書で提供されるのは、患者の神経疾患または障害を治療するための方法であって、本明細書に記載の化合物を患者に投与することを含む、方法である。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、または化合物9である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。
【0112】
投与および薬学的組成物
患者に投与するための、本明細書に記載の化合物の薬学的組成物もまた提供される。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、または化合物9である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。化合物を、単回投与または複数回投与のいずれかで投与することができる。化合物は、例えば、直腸、口腔内、鼻腔内および経皮経路を含む様々な方法によって投与することができる。ある特定の実施形態では、化合物は、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口、局所、または吸入剤として投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、静脈内投与される。静脈内投与は、ボーラス投与または連続注射であり得る。追加の注射のモードには、動脈内、心臓内、髄腔内、骨内、関節内、滑液嚢内、皮内(intracutaneous)、皮下、筋肉内、および皮内(intradermal)、頭蓋内、病変内、および腫瘍内が含まれる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、眼に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は眼に局所投与される。いくつかの実施形態では、投与は、例えば、注射による非経口的である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、例えば、腕に、ボーラス注射として投与される。いくつかの実施形態では、化合物は眼に局所投与される。いくつかの実施形態では、投与は経口である。
【0114】
本化合物は、広い投与量範囲にわたって有効であり得る。いくつかの実施形態では、用量は、0.01~1000mg、0.5~100mg、1日あたり1~50mg、または5~40mgである。例示的な投与量には、10、20、30、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、および1000mgが含まれる。いくつかの実施形態では、化合物の有効量は、約50~500mgに相当する。有効量は個々の患者によって異なり得る。正確な投与量は、投与経路、化合物が投与される形態、治療される患者、治療される患者の体重または体表面積、および主治医の好みならびに経験に依存するであろう。
【0115】
いくつかの実施形態では、化合物の有効量は、用量あたり約0.01~1000mgである。いくつかの実施形態では、化合物の有効量は、用量あたり50~500mgである。いくつかの実施形態では、有効量は、用量あたり、約0.01~100mg、0.01~200mg、0.01~300mg、0.01~400mg、0.01~500mg、0.01~600mg、0.01~700mg、0.01~800mg、0.01~900mg、0.01~1000mg、0.1~100mg、0.1~200mg、0.1~300mg、0.1~400、0.1~500mg、0.1~600mg、0.1~700mg、0.1~800mg、0.1~900mg、0.1~1000mg、1~100mg、1~200mg、1~300mg、1~400mg、1~500mg、1~600mg、1~700mg、1~800mg、1~900mg、100~200mg、100~300mg、100~400mg、100~500mg、100~600mg、100~700mg、100~800mg、100~900mg、100~1000mg、200~300mg、200~400mg、200~500mg、200~600mg、200~700mg、200~800mg、200~900mg、200~1000mg、300~400mg、300~500mg、300~600mg、300~700mg、300~800mg、300~900mg、300~1000mg、400~500mg、400~600mg、400~700mg、400~800mg、400~900mg、400~1000mg、500~600mg、500~700mg、500~800mg、500~900mg、500~1000mg、600~700mg、600~800mg、600~900mg、600~1000mg、700~800mg、700~900mg、700~1000mg、800~900mg、800~1000mg、または約900~1000mgである。いくつかの実施形態では、有効量は、用量あたり、約50~100mg、50~400mg、50~500mg、100~200mg、100~300mg、100~400mg、100~500mg、200~300mg、200~400mg、200~500、300~400mg、300~500mg、または400~500mgである。
【0116】
いくつかの実施形態では、化合物は、単一用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、複数用量で投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、化合物は、例えば、静脈内投与のために、液体担体を含む薬学的組成物で投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物の体積は、約10μL~約1000mLである。例えば、体積は、約10μL、50μL、100μL、300μL、500μL、1mL、10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、または1000mLであり得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、化合物は滴剤として投与される。いくつかの実施形態では、投与される滴のサイズは、約10~100μL、約20~50μL、または約50~80μLの範囲である。いくつかの実施形態では、滴剤は、投与あたり数滴、例えば、1回あたり1~3滴、1回あたり3~10滴、または1投与あたり7~10滴が投与される。一例では、本開示の製剤は、1回あたり約1滴および1日あたり1~6回投与される。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、薬学的組成物に製剤化される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、活性化合物を薬学的に使用できる調製剤に加工することを容易にする賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方法で製剤化される。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。任意の薬学的に許容される技術、担体、および賦形剤は、本明細書に記載の薬学的組成物を製剤化するのに好適なものとして使用される:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0120】
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の化合物および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含む薬学的組成物である。化合物は、式Iの化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、または化合物9である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物7、化合物8、化合物9、またはそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。いくつかの実施形態では、化合物は、併用療法の場合のように、1つ以上の化合物が他の有効成分と混合される薬学的組成物として投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に記載されるような1つ以上の化合物を含む。
【0121】
本明細書で使用される場合、薬学的組成物は、本明細書に記載の化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。薬学的組成物は、患者への化合物の投与を容易にし得る。本明細書で提供される治療または使用の方法を実施するためのいくつかの場合では、有効量の本明細書に記載の1つ以上の化合物が、検出、診断もしくは治療される疾患または状態を有する患者に薬学的組成物で投与される。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。有効量は、疾患の重症度、患者の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力、および他の要因に応じて異なる。本明細書に記載の化合物は、混合物の成分として、単独で、または1つ以上の診断薬または治療薬と組み合わせて使用される。
【0122】
注射による投与のために、本明細書に記載の化合物は、液体の薬学的に許容されるビヒクルに分散させることができる。液体の薬学的に許容されるビヒクルは、当技術分野で知られている任意の水性または非水性ビヒクルであり得る。水性ビヒクルの例には、生理食塩水、デキストロースまたはマンニトールなどの糖の溶液、および薬学的に許容される緩衝液が含まれる。いくつかの実施形態では、水性ビヒクルは、例えば、ハンクス液、リンガー液、水性酢酸塩緩衝液、水性クエン酸塩緩衝液、水性炭酸塩緩衝液、水性リン酸緩衝液、水性コハク酸塩緩衝液、水性乳酸塩緩衝液または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液である。非水性ビヒクルの例には、不揮発性植物油、グリセリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびオレイン酸エチルが含まれる。ビヒクルは、抗菌性防腐剤、抗酸化剤、張性剤、緩衝液、安定剤、界面活性剤、および他の成分をさらに含み得る。薬学的組成物は、シクロデキストリン、例えば、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンを含み得る。
【0123】
本明細書に記載の化合物の薬学的組成物は、例えば注射による非経口投与用であり得る。注射による投与のための化合物は、例えば、注射媒体中の水性または油性懸濁液または乳濁液として調製することができる。注射媒体は、ヒマシ油(リシナス油)、ヒマシ油(エトキシル化)、ゴマ油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、またはピーナッツ油、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、ベンジルアルコール、PEG400、エチレン、グリコール、ポリソルベート20、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、10%水性ポロキサマー-188、グリセロール、10%水性ポロキサマー-407、またはポロキサマー124を含み得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、1つ以上の界面活性剤を含む。界面活性剤は、疎水性または両親媒性(すなわち、親水性および疎水性の成分または領域の両方を含む)である材料である。界面活性剤を使用して、粒子の表面特性を変更し、粒子を分散、乳化、または懸濁する方法を変更することができる。いくつかの実施形態では、界面活性剤は脂質を含む。使用できる脂質には、次のクラスの脂質が含まれる:脂肪酸および誘導体、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、テルペン、プロスタグランジンおよびビタミン。脂肪酸の例には、ラウリン酸、フィセテリック酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、およびオレイン酸、ならびにそれらのモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドが含まれる。そのようなモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドには、例えば、ジガラクトシルジグリセリド、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール、1,2-ジパルミトイル-sn-3スクシニルグリセロール、および1,3-ジパルミトイル-2-スクシニルグリセロールが含まれる。いくつかの実施形態では、界面活性剤はリン脂質を含む。使用できるリン脂質には、ホスファチジン酸、飽和脂質と不飽和脂質の両方を含むホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびβ-アシル-γ-アルキルリン脂質が含まれる。使用できるステロイドには、コレステロール、コレステロール硫酸、コレステロールヘミサクシネート、6-(5-コレステロール3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-α-D-ガラクトピラノシド、6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ]-1-チオ-α-Dマンノピラノシド、コレステリル(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノエート、およびデオキシコール酸ナトリウム(NaDOC)が含まれる。界面活性剤製品には、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、およびNeobeeM-5が含まれる。
【0125】
他の界面活性剤には、エトキシル化ソルビタンエステル、ソルビタンエステル、脂肪酸塩、糖エステル、プルロニック(登録商標)、テトロニクス(tetronics)、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、プロピレンオキシド、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、モノおよびジアシルグリセロール、モノおよびジアシルエチレングリコール、モノおよびジアシルソルビトール、モノおよびジアシルグリセロールサクシネート、アルキルアシルホスファチド、脂肪アルコール、脂肪アミンおよびそれらの塩、脂肪エーテル、脂肪エステル、脂肪アミド、脂肪カーボネート、コレステロールエステル、コレステロールアミドおよびコレステロールエーテル、モノステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸カルシウム、ジオクチルカルシウムスルホサクシネート、ジオクチルカリウムスルホサクシネート、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート、乳化ワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸カリウム、キャスターオイルナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、臭化セトリミド、および塩化セチルピリジニウムが含まれる。
【0126】
経口投与は、本明細書に記載の組成物を投与するための別の経路であり得る。薬学的組成物は、例えば、カプセルまたは腸溶性コーティング錠の形態を蓋付きの容器(bin)に入れることができる。したがって、本明細書に記載の化合物は、賦形剤によって、および/または担体内で希釈することができる。賦形剤が希釈剤として働く場合、それは、有効成分のビヒクル、担体、または媒体として機能し、固体、半固体、または液体材料の形態であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体として)、例えば、最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、ソフトおよびハードゼラチンカプセル剤、滅菌注射液、ならびに滅菌包装された散剤の形態であり得る。
【0127】
好適な賦形剤、担体、およびビヒクルのいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれる。製剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油などの滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、メチルおよびプロピルヒドロキシ安息香酸などの保存剤、甘味剤、ならびに風味剤を追加で含むことができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、眼投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態では、眼用製剤は液体(溶液、懸濁液、再構成用の粉末、ゾルからゲル系の形態)、半固体(軟膏およびゲル)、固体(眼球インサート)、および眼内投薬形態(注射、灌流液およびインプラント)である。
【0129】
本明細書に記載の化合物および眼科的に許容される成分を含む眼科用製剤が、本明細書に提供される。眼科用製剤は、眼薬投与に適した任意の形態で、例えば、溶液、懸濁液、軟膏、ゲル、リポソーム分散液、コロイド状微粒子懸濁液などとして、または眼球インサート、例えば、任意に生分解性の制御放出ポリマーマトリックスで投与され得る。
【0130】
「薬学的に許容される」または「眼科的に許容される」成分とは、生物学的ないしはその他の点で望ましくないものではない成分を意味し、すなわち、成分は、本開示の眼科用製剤に組み込まれ、望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、またはそれが含有される製剤組成物の他の成分のいずれかと有害な方法で相互作用することなく、患者の眼に局所投与され得る。「薬学的に許容される」という用語が薬理学的に活性な薬剤以外の成分を指すために使用される場合、その成分が毒物学的および製造試験の必要な基準を満たしていること、またはそれが米国食品医薬品衛生局(U.S.Food and Drug Administration)によって作成された不活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)に含まれていることを意味する。
【0131】
眼科用製剤は、懸濁液または乳濁液の形で眼への局所投与に適合させることができる。眼科用製剤は、眼科的に許容される担体を含み得る。このような担体には、例えば、水、例えばリン酸緩衝液、ホウ酸、塩化ナトリウム、およびホウ酸ナトリウムなどの水の混合物、ならびに低級アルコール、アリールアルコール、ポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびミリスチン酸イソプロピルなどの水混和性溶媒が含まれる。眼科用製剤はまた、乳化剤、保存剤、湿潤剤、増ちょう剤などの1つ以上の賦形剤を含み得る。例えば、眼科用製剤は、ポリエチレングリコール200、300、400および600、カルボワックス1,000、1,500、4,000、6,000および10,000、抗菌成分、例えば第四アンモニウム化合物、フェニル水銀塩、チメロサール、メチルおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、緩衝剤、例えばホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸塩緩衝液、ならびに他の薬剤、例えばモノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、オレイン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、モノチオグリセロール、チオソルビトール、およびエチレンジアミン四酢酸を含み得る。眼科用製剤は等張性であり得る。眼科用製剤はまた、界面活性剤または安定剤を含み得る。界面活性剤にはCarbopol(登録商標)が含まれる。安定剤には、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、およびチオ硫酸ナトリウムが含まれる。
【0132】
製剤はまた、角膜を含む、細胞膜、組織、および細胞外マトリックスを介した製剤成分の浸透を促進する有効量の浸透促進剤を含む。浸透促進剤の「有効量」は、今説明したように、膜、組織、および細胞外マトリックスを通る1つ以上の製剤成分の浸透の測定可能な増加を提供するのに十分な濃度を表す。好適な浸透促進剤には、例として、メチルスルホニルメタン(MSM;メチルスルホンとも呼ばれる)、MSMとジメチルスルホキシド(DMSO)との組み合わせ、またはあまり好ましくない実施形態ではMSMとDMSOとの組み合わせが挙げられるが、MSMが得に好ましい。
【0133】
キットおよびパッケージ
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の化合物、撮像デバイス、および任意に好適なパッケージを含むキットである。撮像デバイスは、網膜撮像デバイスであり得る。いくつかの実施形態では、キットは、使用説明書をさらに含む。
【0134】
撮像デバイスは、発信されたシグナルを検出するためのレンズ(複数可)および画像センサーを含み得る。いくつかの実施形態では、撮像デバイスは、蛍光シグナルを検出する。いくつかの実施形態では、撮像デバイスは、蛍光シグナルを活性化するために使用することができるレーザー光源をさらに含む。撮像デバイスは、好適な網膜スキャナを含み得る。
【表12-1】
【表12-2】
【実施例】
【0135】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を示すために含まれている。以下の実施例に開示される技術は、開示の実施においてうまく機能する技術を表し、したがって、その実施のための特定のモードを構成するとみなすことができることを当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでも開示の精神および範囲から逸脱することなく類似のまたは同様の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0136】
実施例1
化合物7のメチルエステル誘導体のさまざまな製剤を用いた予備的なウサギの薬物動態研究に基づいて、特定の物理化学的特性を変更および改善するための研究が行われた。ヒドロキシ化合物、すなわち化合物7は、従来の機器での使用に適した蛍光特性を示すことが見出された。重要なことに、化合物7は、ヒトアルツハイマー病の脳組織においてインビトロおよびエクスビボで凝集したAβを検出する能力も示した。
【0137】
合成
【化14】
(6-ブロモナフタレン-2-イル)メタノール(2)の合成
LiAlH
4(8.2g、500mLのTHF中217mmol)の0℃の溶液に、N
2下で、500mLの無水THF中のメチル6-ブロモ-2-ナフトエート(1)(50.0g、189mmol)の溶液を滴加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌させた。TLCで反応が完了したことを監視したら、混合物をH
2O、15%のNaOH、H
2O(1:1:3、v/v/v)で処理した。濾過後、濾液を濃縮し、EAで抽出し、NaSO
4上で乾燥させた。粗生成物を(PE:EA=3:1)から精製して、表題化合物を得た。
【0138】
6-ブロモ-2-ナフトアルデヒド(3)の合成
(6-ブロモナフタレン-2-イル)メタノール(2)(42.0g、177mmol)およびDCM(500mL)中のシリカゲル(76.4g)の懸濁液中に、PCC(76.4g、354mmol)を添加した。反応物をRT(室温、25±5℃)で1.5時間撹拌した。完了したら、それをシリカのパッドを通して濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物を得た。
【0139】
6-(ピペリジン-1-イル)-2-ナフトアルデヒド(4)の合成
乾燥および脱気したトルエン(300mL)に、Pd(OAc)2(1.5g、6.3mmol)、BINAP(4.4g、7.1mmol)、6-ブロモ-2-ナフトアルデヒド(3)(30.0g、127.8mmol)、Cs2CO3(60.0g、183.9mmol)およびピペリジン(12.7g、149.5mmol)を添加した。反応物を115℃で8時間撹拌させた。冷却後、混合物を濾過し、EAで洗浄し、次いで、体積の3分の1に濃縮し、これに、完全に撹拌しながら200mlの6N塩酸を添加した。水相を分離し、DCMで3回抽出した後、5NのNaOHでアルカリ性に調整し、EAで抽出した。有機相を濃縮して粗物質を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(PE:EA=20:1~2:1)によりさらに精製して、表題化合物を得た。
【0140】
2-シアノ-N-(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド(6)の合成
ナシ型フラスコにおいて、5(6.0g、40mmol)を2-シアノ酢酸メチル(4.0g、40mmol)に撹拌しながら添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮して粗物質にした。粗物質を、次の工程で直接使用した。
【0141】
(E)-2-シアノ-N-(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)-3-(6-(ピペリジン-1-イル)ナフタレン-2-イル)アクリルアミド(化合物7)の合成
無水THF(250mL)中の6-(ピペリジン-1-イル)-2-ナフトアルデヒド(4)(7.0g、29.3mmol)および2-シアノ-N-(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド(6)(7.9g、36.5mmol)の溶液に、ピペリジン(0.5g、5.9mmol)を添加し、得られた混合物を12時間還流した。次いで、反応物を減圧下で濃縮して粗物質とし、これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。精密質量437.23;m/e437.23(100%)、438.23(28.9%)、439.24(4.7%);元素分析(C25H31N3O4):C 68.63%、H 7.14%、N 9.60%、O 14.63%。
【0142】
化合物7の特性
化合物7の物理的性質を測定した。表1にさまざまな媒体への化合物7の溶解度を示す。
【表1】
【0143】
水溶性が低いため(表1)、可能なナノ懸濁液製剤が調査された。目的は、<0.5μmの平均粒子サイズを目標とすることであった。懸濁液製剤中の化合物7の粒子サイズに関するデータを表2に示す。
【表2】
【0144】
実施例2
【化15】
化合物8の合成
POCl
3およびトリエチルアミンなどの塩基などの従来の方法を使用して化合物9を調製する試みは、成功しなかったことが証明された。POCl
3との悪い反応を示すことがわかったNHアミドなど、化合物7に存在する特定の官能基の反応性が高いため、別の合成経路が必要であった。LDAおよびLiHMDSなどの他の塩基は、TLCによる生成物の混合物を生成したが、生成物は分離されなかった。水素化ナトリウムと合わせたテトラベンジルピロホスフェートは化合物8を提供することが判明した。化合物8は、以下の手順に従って調製した。
【0145】
0度で15mLのTHF中の1g(2.3mM)の化合物7に、Merck Organic Synthesis調製物を使用して調製した1.6g(3mM)のテトラベンジルピロホスフェートを添加して、深紅の溶液を得た。水素化ナトリウム(100mg、2.5mM、油中60%)を添加した。15分後に室温まで温めた後、固体が沈殿し始めた。DMF(5mL)を添加し、室温で1時間撹拌した。水(200mL)および酢酸エチル(200mL)を添加した。酢酸エチル層を乾燥させ、蒸発させた。0~100%ヘキサン/酢酸エチルを使用する80gのシリカゲルカートリッジでのISCO(登録商標)による精製により、表題化合物を得た。化合物8の
1H NMRスペクトルを、
図1A~1Cに提示する。MS(m/z)701.3[M+H]
+。
【0146】
化合物9の合成
1グラムの(化合物8)に、アルゴンで脱気した95%エタノール(150mL)を添加した。120mgの10%Pd/Cを添加し、水素ガスを反応混合物中で5分間バブリングした。次いで、混合物を水素バルーン下で3時間撹拌した。反応混合物をアルゴンで脱気し、蒸発させた。2g/Lの酢酸アンモニウムを含有する0~100%の水を使用して、25X250mmのC18カラムでの分取LC/MSによる精製を行った。自由乾燥後、化合物9が得られた。化合物9の
1H NMRスペクトル(D
2O)を、
図2A~
図2Bに提示する。
【0147】
水素ガスによる水素化を使用する上記の合成は、例えば、二重結合の還元を介して副生成物を生成することが見出された。この還元により、HPLCによる長く退屈な精製が行われる。
【0148】
化合物9のジアンモニウム塩(化合物10とも呼ばれる)の合成
臭化トリメチルシリルを0度で短時間使用すると、副反応が減少しクロマトグラフィーの必要性が減少することが見出された。
【化16】
【0149】
無水CH2Cl2(100ml)中の化合物8(5mmol、3.49g、1当量)の溶液をアルゴン下で0℃に冷却し、臭化トリメチルシリル(50mmol、6.8ml、10当量)をシリンジを介して添加した。反応混合物を、0℃で30分間撹拌し、変換の完了を、HPLCによって監視した。次いで、混合物をMeOH(約50mL)でクエンチし、10分間撹拌した。溶液を蒸発乾固させた。この工程を4回繰り返した。
【0150】
有機溶媒を真空下で蒸発させ、残留物を微量のMeOHに懸濁し、そしてEtOAcを添加してホスホン酸の沈殿を誘導した。残留物を濾過し、EtOAc(×2)で洗浄した。次いで、残留物を真空下で乾燥させて、所望のリン酸を得た。
【0151】
ホスホン酸をNH4OAc(25mmol、1.93g、5当量)および150mLの水で室温で処理し、さらに15分間撹拌し続け、クリアレッド/オレンジ色の溶液を得た。次いで、反応混合物を凍結乾燥して、最終生成物を得た。LC-MS:(ES、m/z)518[M+1]+。1H-NMR:(400MHz,CD3OD)δ 8.31-8.22(m,2H),8.08(dd,J=8.8,1.9 Hz,1H),7.81(d,J=9.2 Hz,1H),7.74(d,J=8.8 Hz,1H),7.40(dd,J=9.2,2.5 Hz,1H),7.18(d,J=2.5 Hz,1H),4.08-3.98(m,2H),3.79-3.65(m,8H),3.58(t,J=5.5 Hz,2H),3.45-3.39(m,4H),1.86-1.63(m,6H)。
【0152】
化合物9の溶解度
化合物9の溶解度は、pH7.4のリン酸緩衝液で20~30mg/mLであることがわかった。
【0153】
化合物9の薬物動態
化合物9を、0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4の溶液としてウサギに注射し、ウサギに30mgの化合物9(研究1)または28mgの化合物9(研究2)のいずれかを与えるようにした。これらの研究の目的は、化合物9がインビボで化合物7に容易に変換できることを確認することであった。
【0154】
研究1:ウサギに、0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4中の化合物9の20mg/mL溶液を1.5mL注射した。以下の表の特定の時点(時点ごとにN=3)でウサギを屠殺し、網膜(表3)、脳(表4)、および血液(表5)における化合物9および化合物7の平均濃度を測定した。
【表3】
【表4】
【表5】
【0155】
研究2:この研究の目的は、指定された組織のより早い時点で、より高濃度の化合物9および/または化合物7が存在するかどうかを決定することであった。ウサギに、0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4中の化合物9の20mg/mL溶液を1.4mL注射した。化合物9を投与してから2分後にウサギ(N=6)から血液を採取し、この時点での血中濃度を測定した(表8)。次に、以下の表の特定の時点(時点あたりN=3)でウサギを屠殺し、網膜(表6)、脳(表7)、および血液(表8)における化合物9および化合物7の平均濃度を測定した。
【表6】
【表7】
【表8】
【0156】
このデータに基づいて、健常なウサギモデルにおいて、化合物9はインビボで化合物7に急速に変換されると結論付けられる。
【0157】
化合物7の末端アルコール基のリン酸塩への修飾により、水溶性が大幅に増加した。化合物9のジアンモニウム塩の1つの有益な特徴は、血中のホスファターゼがすぐにリン酸基を切断し、化合物7を生成することである。化合物7は、血液脳関門(BBB)を通過し、さらに重要なことに、化合物9のジアンモニウム塩の投与を介して網膜組織に送達されることが実証されている。化合物9は急速に化合物7に変換され(化合物7のKp、脳は投与後5分で最高であった)、30分までに検出不可能な値まで有意に減少した。化合物9のKp、脳は<0.001であり、脳に到達する前に主に化合物7に変換されたことを示唆している。網膜における化合物7の循環時間は比較的短く、プローブのレベルは1時間で大幅に減少する。重要なことに、化合物7は高濃度で網膜組織に送達された(682ng/g)が、化合物9は検出不能のままであった。さらに、この研究の時間経過中にウサギに有害反応は認められなかった。以下に示すデータに基づいて、化合物9は化合物7に迅速に変換されると結論付けられ、この化合物は1)インビトロでAβ40を蛍光検出することができ、2)従来の機器を使用して検出可能な波長で蛍光を発することができ、3)化合物9(例えば、化合物9ジアンモニウム塩)として全身投与された場合に網膜に浸透することができる。
【0158】
実施例3
検出可能な標的タンパク質、例えば、アミロイドベータタンパク質、もしくはリン酸化タウタンパク質、またはそれらの蓄積体を有するモデルマウスに、化合物9を静脈内投与する。マウスの網膜を取り出し、スライドに載せる。網膜をPBSで2回5分間洗浄する。98%ギ酸の溶液を加える-抗原回復のために5分。採取したものを蒸留水で2回5分間洗浄する。試料を1xPBSで15分間平衡化した後、1xPBST(抗体に依存)中の10%ヤギ/ロバ血清で1時間ブロックする。試料をホイルで覆い、1xPBSで3回、各5分間洗浄する。試料をDAPI(300nMまたは100ng/mL)で暗所で10分間染色した後、組織をPBSで3x10分間洗浄する。退色防止DAKO封入剤を添加し、カバースリップして、撮像までホイル下に保持する。
【0159】
試料の蛍光撮像研究は、TCS SPEカメラとLeica10、20、および40X対物レンズを備えたLeica DMI 4000B顕微鏡(Leica、ドイツ)で実施される。次のレーザーは、DAPI(青、核染色)、化合物7(緑)、および過剰リン酸化タウ(赤)に関連する蛍光プローブを視覚化するために使用される:408、488、および568nm。組織の厚さ全体を視覚化するために、Zスタック画像を0.5μm刻みの増分で40倍で撮影した。過剰リン酸化された3リピートタウタンパク質が網膜で検出され、検出可能な蛍光シグナルを生成するが、同等の年齢の野生型マウスでは、3リピートタウ抗体による免疫染色は検出されない。結論として、この研究は、化合物9がアミロイドベータタンパク質または過剰リン酸化タウタンパク質を検出するための診断薬として使用できることを示している。
【0160】
実施例4
本実施例は、化合物9がTBIマウスモデルの網膜でAβを検出するかどうかを決定するために実施される。
【0161】
損傷24時間後の爆風(blast)モデルマウスおよび未損傷のマウスに化合物9を静脈内投与する。マウスの網膜は、走査型レーザー検眼鏡検査(SLO)によって走査される。Aβプラークの存在を示す画像が生成される。
【0162】
あるいは、または網膜スキャンに加えて、網膜組織を取り出し、抗Aβ抗体(6E10)で染色する。爆傷を受けたマウスは、未損傷のマウスが6E10に対して反応性を示さなかった網膜組織において、Aβに対して免疫反応性を示した。化合物7は、蛍光活性化時に可視化される網膜沈着物を蛍光標識するが、未損傷のマウスの組織では蛍光増強を示さない。
【0163】
実施例5
インビボでの網膜Aβ凝集の検出
制御された皮質衝撃(CCI)を受ける前後のマウスを使用してインビボ網膜撮像研究を実施した。CCIモデルには、開頭術後の無傷の硬膜に制御された衝撃を適用し、これは一般的に使用されるTBI動物モデルである。
【0164】
ベースラインの網膜画像を得るために、CCIによるTBIを受ける前にマウスを画像化した。麻酔をかけたマウスは、CCIの前およびCCIの24時間後に、化合物9のジアンモニウム塩(化合物10)(0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4中の20mg/mL溶液の15mg/kg)の静脈内投与を受けた。
図3に示すように、無傷(CCI前)のマウスの化合物10の投与の3分後に、網膜血管系においてバックグラウンド蛍光増強が観察された。この増強は、化合物10を投与してから15分後にはもはや観察されなかった(
図3、上段)。
【0165】
ベースライン撮像の24時間後に、CCIを実行するために、マウスを麻酔し、頭を定位固定フレームに取り付け、運動皮質の右側にわたって開頭術を行った。定位インパクターを使用して、マウスは5m/秒の速度、2mmの深さ、3mmの直径のピストンを使用して運動皮質の右側に衝撃を受けた。損傷後、切開部をステッチで閉じ、麻酔を終了し、動物を加熱されたパッドに入れて、正常な核心温度を維持した。CCIの24時間後、化合物10の静脈内投与後に麻酔したマウスでライブ網膜撮像を実施した。
図3に示すように、網膜血管系は、15分間の撮像期間の間、照明されたままであり、血管内にAβが存在し得ることを示した(
図3、下段)。これは、血管の蛍光増強が注射の3分後に見えたが、15分間の撮像期間にわたって減少するCCI前の撮像とは対照的である。
【0166】
この実施例は、CCI後24時間以内に、化合物9のジアンモニウム塩(化合物10)を使用して、TBIによるAβ蓄積の指標となり得る網膜血管系における変化を検出できることを示している。
【0167】
実施例6
眼によるプリオンの早期診断
インビボ蛍光網膜撮像実験は、Phoenix Micron IV蛍光げっ歯類網膜撮像システム(フルオレセイン血管造影で使用される市販のヒト網膜カメラに類似)を使用して、ケタミン麻酔した生きたマウスで実施された。疾患の臨床症状が現れる前(マウスプリオン接種後50%潜伏(N=5+N=4対照)およびマウスプリオン接種後75%潜伏(N=3+N=4対照))、および末期プリオン病(N=4+N=4対照)において、化合物10を全身投与した後に、マウスを検査した。
図4および
図5に示すように、化合物10として投与した場合、化合物7は、発症前(
図4)および末期疾患(
図5)の両方のマウスの網膜内のプリオン沈着物であると考えられる視神経乳頭および血管系の周囲の大きな対象物の標識に成功した。模擬感染マウス(陰性対照)は、予想通り、網膜アミロイド沈着の兆候を示さなかった。このマウスモデルの網膜プリオンは、疾患の発症前の段階で初めて同定され、化合物10として投与された場合、化合物7が臨床診断の前にプリオン沈着物を標識できることを示している。
【0168】
実施例7
アルツハイマー病の診断における網膜Aβの検出。
ヒトアルツハイマー病組織を用いたエクスビボ分析:アルツハイマー病が確認された、またはその可能性のあるヒトの死後の網膜組織および脳が得られた(マイアミ大学、フロリダ州)。この研究は、1)アルツハイマー病患者の脳と網膜のアミロイドーシスとの間に相関関係があるかどうか、および2)本明細書に開示されている化合物がアルツハイマー病の患者を診断する方法として網膜の蛍光検査を通じて脳内のアミロイド蓄積のある患者を特定できるかどうか、を決定するために実施された。
【0169】
家族性アルツハイマー病と診断された患者の脳組織に対して共局在実験が実施された。この患者の死後の海馬領域からの自由浮遊切片を、化合物7とともにAβ配列特異的抗体(6E10)で染色した。
図6Aの蛍光顕微鏡画像は、化合物7がAβの高密度コアプラークにサイズおよび形態が一致する対象物に結合することを示している。重要なことに、化合物7の結合は、6E10の高密度コアアミロイドプラークの免疫反応性と実際に共局在していたが(
図6Cの白い矢印)、6E10で染色された拡散性対象物ではなかった。6E10の限界の一つは、Aβの凝集ではなく、アミノ酸の特定の配列を認識することであり、これは
図6BおよびCで観察された高密度コアプラークと他の拡散性対象物の両方の蛍光を説明する。
【0170】
これらの結果は、化合物7がアルツハイマー病に関連するAβプラークに結合することを裏付けている。重要なことに、これは、化合物7がヒトアルツハイマー病患者の脳と網膜組織の両方のAβプラークに結合する能力を示している。このデータは、化合物7がヒト組織のAβに結合できることを示しており、したがって、化合物9またはその塩(化合物10)を使用して、化合物7をインビボで投与してアルツハイマー病を診断できると考えられる。
【0171】
実施例8
脳アミロイド血管症(CAA)
全身投与後のインビボでのAβ40の検出
CAAに関連する網膜の血管アミロイド沈着物の発生のための2つの異なるTgマウスモデルが開発された。APPSwDIおよびPSAPPマウスは、脳内の血管系アミロイド沈着物の蓄積に基づいて選択されたが、これまで、網膜は調査されていなかった。APPSwDIマウスは、マウスThy1プロモーターの制御下で、スウェーデン(K670N/M671L)、オランダ(E693Q)、およびアイオワ州(D694N)変異を含有するヒトAPP遺伝子(アイソフォーム770)を発現する。PSAPPマウスは、キメラマウス/ヒトアミロイド前駆体タンパク質(Mo/HuAPP695swe)および変異型ヒトプレセニリン1(PS1-dE9)を発現し、両方ともマウスプリオンタンパク質プロモーターによってCNSニューロンに向けられる。マウスのコロニーを繁殖させ、網膜における血管アミロイド沈着物の発生について経時的にスクリーニングした。両性の12~16ヶ月齢の範囲のマウスを最初に調べた。この年齢範囲で、マウスは白内障を発症し始め、インビボで網膜を画像化する能力を不可能にした。したがって、若いマウスを選択し化合物10で試験した。
【0172】
網膜画像は、生後8~10か月のAPP
SwDI(N=6、オス1匹、メス5匹)、PSAPP(N=2、メス)、および野生型対照マウス(N=3メス)から取得した。25μLの化合物10(0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4中20mg/mL)を静脈内(i.v.)尾静脈注射した5分後にマウスを画像化した。10ヶ月齢のメスのAPP
SwDIマウスは、主に血管系に沿って小さく、明るい蛍光沈着物を明示した(
図7の白い矢印)。蛍光は15分の時間経過で減少し、その時点でマウスを屠殺し、免疫組織化学(IHC)のために脳および網膜組織を採取した。
図7に示すように、これらの沈着物は網膜内で化合物7で蛍光標識され、重要なことにAβに対する配列特異的抗体(6E10)と共局在した。興味深いことに、化合物7を化合物10として投与する場合、このAPP
SwDIマウスの網膜組織の血管および拡散性沈着物の両方が標識されることを示している(
図7、右上隅)。
【0173】
脳と眼の相関関係をよりよく理解するために、IHCによって脳を検査した。APP
SwDIマウスは、網膜IHCで観察されたと同様に、血管内のアミロイド沈着と脳内の拡散性アミロイドプラークを示し(
図8、白い矢印)、良好な相関関係を示した。化合物10を注射したPSAPPマウスでは、網膜の右下の象限(quadrant)に大きな沈着物がインビボで観察された(
図7)。化合物7と6E10の共局在によって示されるように、その同じ沈着物がAβであることが確認された。脳では、アルツハイマー病と同様に高密度のコアプラークが観察されたが、このマウスの脳では血管アミロイド沈着は観察されなかった(
図8)。繰り返すが、このPSAPPマウスの網膜では血管病変が観察されなかったため、これは良好な脳/眼の相関関係を示した。最後に、予想通り、化合物10を注射した野生型マウスでは沈着物は観察されなかった(
図7、下段)。
【0174】
死後CAA患者からのヒト脳組織のエクスビボ分析
CAAと診断された患者の死後脳組織を調べて、限られた堅牢な前臨床動物モデルからヒトへの橋渡しのリスクを軽減(de-risk)した。この研究は、ヒト組織を使用してアミロイドを蛍光検出する基本的原理を理解するために設計された。
図9は、本明細書に開示される化合物が、ヒトCAA患者の脳内のアミロイド沈着物を検出できることを示している。
【0175】
ヒトCAA脳組織と健常な対照脳組織を取得した(カリフォルニア大学、カリフォルニア州、サンディエゴ)。表9は、化合物7で試験した死後のヒト脳組織の年齢、性別、および診断を含む患者集団をまとめたものである。すべてのCAA患者は女性であり、年齢は70~93歳であった。対照の脳は、男性と女性の両方のドナーから、年齢が82~94歳の範囲の認知的に正常な患者から得られた。ヒトCAA脳および対照脳からの正中前頭皮質の自由浮遊切片を、化合物7とともにAβ配列特異的抗体(6E10)で染色した。
【表9】
【0176】
図9の蛍光顕微鏡画像は、化合物7がCAAアミロイド病理に関連する一貫したパターンで対象物に結合することを示している。重要なことに、化合物7の結合は、血管内のCAAを含むプラークにおける6E10の免疫反応性と実際に共局在したが(
図9)、6E10によって染色された拡散性対象物ではなかった。6E10の限界の一つは、Aβの凝集ではなく、アミノ酸の特定の配列を認識することであり、これはCAAの脳および健常な対照で観察されるプラークと他の拡散性対象物の両方の免疫反応性を説明する。重要なことに、化合物7による染色は、CAA脳でのみ観察され、健常な対照脳では見られなかった(
図9)。結果は、化合物7がヒト組織のCAAに関連するアミロイド沈着物を首尾よく染色することを示した。
【0177】
この実施例は、開示された化合物が、インビボでtg動物において(静脈内-ボーラス注射として投与された、
図7)、およびエクスビボでヒトCAA疾患組織で(
図9)Aβ40を検出することを実証する。罹患したマウスの網膜における血管アミロイド沈着物の死前撮像を、化合物10を使用して行った。同じ罹患した網膜のエクスビボ分析により、沈着物が実際にAβであるというインビボ所見を確認した。したがって、開示された化合物は、CAAの診断のための効果的で手頃な造影剤を提供することができる。
【0178】
実施例9
パーキンソン病の非侵襲的眼科診断
次の実施例は、本明細書に記載の化合物がパーキンソン病の診断試験を提供することを示しており、これは2つの主要な影響を及ぼし得る。第一に、ここに開示される診断化合物は、現在の基準よりも潜在的に数年早くパーキンソン病の患者を特定し、現在の治療法による早期介入を可能にすることが企図されている。第二に、ここに開示される診断化合物は、治療する患者の選択を最適化することによって疾患修飾治療薬の開発を支援し、それによってパーキンソン病の薬剤候補の臨床結果が成功する可能性を向上する。
【0179】
α-synが網膜に蓄積するという前提に基づいて、以下のモデルを作成し、パーキンソン病の進行を診断および監視するための眼中のα-synを標的にすることができる診断プローブを開発するために、ここに開示される診断化合物の有効性を試験するのに利用した。
【0180】
パーキンソン病の2つのトランスジェニックマウスモデル(D-ライン(D-line)およびライン61(Line 61))を網膜α-syn沈着物について調べた。選択されたモデルは脳内でα-syn沈着を生成するが、網膜での生成はこれまで決定されていなかった。マウスの網膜画像は、化合物10の静脈内投与の前後に得られた。ライブ撮像の後、マウスを屠殺し、免疫蛍光抗体法および生化学のために脳および網膜を採取した。
【0181】
D-ラインパーキンソン病Tgマウスモデル:
SYN1による予備的なエクスビボ網膜染色では、網膜組織でα-synは検出されなかった。予想通り、化合物10はインビボまたはエクスビボで網膜沈着物を検出しなかった。したがって、D-ラインモデルは、網膜のα-syn沈着物を探索するための実行可能なモデルではない。
【0182】
ライン61パーキンソン病Tgマウスモデル:
化合物10の全身投与後、4/14マウスにおいて網膜α-syn沈着物がインビボで観察された。抗体SYN1によるエクスビボ網膜染色により、沈着物がインビボで観察されたマウスの網膜組織にα-synが存在することが確認された。したがって、ライン61モデルは、マウスの約30%で網膜α-synを示し、開示された化合物の有用性を示すのに役立った。WTマウス(N=10)を対照として評価し、予想通り、インビボまたはエクスビボで網膜α-synは検出されなかった。脳組織は、最後の撮像セッション後にマウスから死後に抽出され、DAPIおよびSYN1抗体で染色され、ライン61マウスの脳においてα-synの存在することが確認された。
【0183】
ライン61モデルを使用して、化合物7は、化合物10の投与により、パーキンソン病に関連するα-syn沈着物に特異的であり、網膜α-syn沈着物をインビボで検出できることが確認された(
図10)。
【0184】
インビボで検出された対象物がα-synであることを確認するために、最後の撮像セッション後にマウスから網膜組織を死後に抽出し、DAPIおよびSYN1抗体で染色した(
図11)。
【0185】
この例は、化合物10の静脈内投与がライン61マウスを用いて網膜α-synをインビボで検出できること、および蛍光増強がα-synに特異的であることを示している。したがって、化合物7は、Tgマウスの脳および網膜組織において抗アルファ-シヌクレイン抗体(SYN1)と共局在する。
【0186】
パーキンソン病の網膜診断薬としての化合物10の投与の理解と有用性を広げるために、以下の研究を行った。
【0187】
化合物10の投与が網膜α-syn沈着物を再現性よく検出できることを確認するために、ライン61 Tgマウスは、7日間のウォッシュアウト期間をおいて、15mg/kgの化合物10の2回の静脈内投与を受けた。両方の撮像セッション中に、同様の数の沈着物が観察された。
図12は、化合物10の投与により、同じ動物の網膜α-syn沈着物を再現性よく検出できることを示している。
【0188】
網膜α-synを検出できる化合物10の最低用量を理解するために、ライン61 Tgマウスに3mg/kgおよび15mg/kgの化合物10を、6日間のウォッシュアウト期間をおいて、注射した。両方の用量濃度で同じ数の沈着物が観察された。
図13は、化合物10の投与により、3mg/kgの低用量で網膜α-syn沈着物を検出できることを示している。
【0189】
ヒトパーキンソン病の眼のエクスビボ染色
化合物7(活性薬剤)が人間の眼の網膜α-synを検出できるかどうかを理解するために、健常な患者とパーキンソン病と診断された患者の両方から死後にヒト網膜組織を抽出し、化合物7、DAPIおよびSYN1抗体で染色した。
【0190】
眼の解剖:角膜、虹彩、水晶体をアイカップから取り出し、眼を4%PFAに1時間入れた。眼の向きを推定するためのガイドとして黄斑を使用してアイカップを解剖し、次に網膜を回収し、リーフレットを4つの部分(上部、下部、側頭部、および鼻側部)に分割した。異なる領域は別々のスライドにマウントした。
【0191】
フラットマウント網膜染色:組織を室温4%PFAで20分間固定し、洗浄し、透過処理し、ブロックし(PBST中の2.5%ヤギ血清)、1:1000希釈のアルファ-シヌクレイン抗体(SYN-1)で染色して、4℃で一晩インキュベートし、PBSTで洗浄し(5分間で3回)、二次抗体(Alexa fluor 647抗マウス)とともに暗所で室温で1時間インキュベートした。次に、組織をPBSTで洗浄し(5分間で3回)、60μMの化合物7とともに室温で30分間インキュベートし、PBSで洗浄し(10分間で3回)、DAPI(300nMまたは100ng/mL)とともに暗所で10分間インキュベートして、PBSで洗浄した(5分間で3回)。次に、退色防止DAKO封入剤を使用して組織をマウントした。
【0192】
対照として、神経障害、脳腫瘍、または眼に関連する疾患のない白血病で死亡した72歳の男性から一対の網膜を抽出した。網膜を化合物7およびSYN-1 Ab(アルファ-シヌクレイン)で染色した。健常なヒト患者の死後網膜組織では、化合物7とアルファ-シヌクレイン(SYN-1 Ab)の共局在はほとんどまたはまったくなかった。
図14および
図15は、左右の網膜の各領域からの画像の例を示している。
【0193】
パーキンソン病(PD)と診断された71歳の男性から一対の網膜を抽出した。網膜を化合物7およびSYN-1 Ab(アルファ-シヌクレイン)で染色した。ヒトPD患者の網膜では、すべての領域で化合物7とアルファ-シヌクレイン沈着物(SYN-1 Ab)の共局在がある。
図16および
図17は、左右の網膜の各領域からの画像の例を示している。
【0194】
化合物7およびSYN1で共染色された対象物の数を決定するために、化合物7およびSYN1で共染色された対象物の平均数を定量化した。これは、左眼と右眼の両方の象限ごとに完了した(表10および表11)。
【表10】
【表11】
【0195】
共局在化した対象物は、化合物7およびSYN-1 Abで共染色されたフラットマウント網膜試料で蛍光的に視覚化することができる。化合物7とSYN-1Abの共局在は、視神経からの距離の約2/3と鋸状縁に近い網膜の端で最も頻繁であった。化合物7とSYN-1Abの共局在はすべての領域で頻繁であり、共局在のほとんどは左網膜の上部領域で観察された。
【0196】
図18は、化合物7が一対のパーキンソン病の眼の4つの象限すべてでSYN1と共局在することを示している。これらのデータは、化合物7がヒト網膜組織のα-synを検出できることを示している。
【0197】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0198】
本明細書に例示的に記載されている開示は、本明細書に具体的に開示されないあらゆる要素(複数可)、限定(複数可)もない状態で好適に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広範かつ非限定的に読まれるべきである。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、示されるおよび記載される特徴のあらゆる同等物またはその一部を除外する、そのような用語および表現の使用を意図するものではないが、特許請求される本開示の範囲内で様々な修正が可能であることを認識されたい。
【0199】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、各々が参照により個別に組み込まれるのと同じ程度まで、それらの全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0200】
本開示は上記の実施形態に関連して説明されてきたが、前述の説明および実施例は、本開示の範囲を説明することを意図しており、限定するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点、および修正は、本開示が関係する当業者には明らかであろう。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩であって、
【化17】
式中、R
1
は、以下から選択され、
【化18】
各Xは独立して、OまたはSであり、
各R
11
は独立して、水素、C
1-10
アルキル、C
2-6
アルケニル、C
2-6
アルキニル、C
3-10
シクロアルキル、C
6-10
アリール、5~10員ヘテロアリールおよび4~10員ヘテロシクリルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルは、任意に1~4個のR
21
で置換されており、または、各XR
11
が独立して、-XP(X)(R
12
)
2
であってもよく、
各R
12
は独立して、ヒドロキシ、チオール、-XP(X)(R
13
)
2
、C
1-10
アルキル、-O-C
1-10
アルキル、および-S-C
1-10
アルキルから選択され、
各R
13
は独立して、ヒドロキシ、チオール、C
1-10
アルキル、-O-C
1-10
アルキル、および-S-C
1-10
アルキルから選択され、
各R
21
は独立して、ハロ、ヒドロキシ、チオール、-NO
2
、-N
3
、シアノ、C
1-10
アルキル、C
2-6
アルケニル、C
2-6
アルキニル、C
3-10
シクロアルキル
、C
1-8
ハロアルキル、C
6-10
アリール、5~10員ヘテロアリール、4~10員ヘテロシクリル、-O-C
1-10
アルキル、-O-C
2-6
アルケニル、-O-C
2-6
アルキニル、-O-C
3-10
シクロアルキル、-O-C
1-8
ハロアルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル、-NH
2
、-NH(R
31
)、-N(R
31
)
2
、-C(O)(R
31
)、-C(O)O(R
31
)、-C(O)OH、-C(O)NH
2
、-C(O)NH(R
31
)、-C(O)N(R
31
)
2
、-NHC(O)(R
31
)、-NHC(O)O(R
31
)、-NHC(O)NH(R
31
)、-S(R
31
)、-NHS(O)
y
(R
31
)、-N(C
1-10
アルキル)S(O)
y
(R
31
)、-S(O)
y
N(R
31
)
2
、-S(O)NH(R
31
)、および-S(O)
y
(R
31
)から選択され、
各R
31
は独立して、C
1-10
アルキル、C
2-6
アルケニル、C
2-6
アルキニル、C
3-10
シクロアルキル、C
1-8
ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択され、
各yは独立して、1または2である、化合物、またはその薬学的に許容される塩。
(項2)
R
1
が、
【化19】
である、上記項1に記載の化合物。
(項3)
各Xが独立して、Oである、上記項1または2に記載の化合物。
(項4)
R
1
が、
【化20】
である、上記項1に記載の化合物。
(項5)
R
1
が、
【化21】
である、上記項1に記載の化合物。
(項6)
一塩基性塩としての、上記項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
(項7)
二塩基性塩としての、上記項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
(項8)
ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、または亜鉛塩から選択される塩としての、上記項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
(項9)
ナトリウム塩としての、上記項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
(項10)
カリウム塩としての、上記項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
(項11)
アンモニウム塩またはジアンモニウム塩としての、上記項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
(項12)
以下の化合物、
【化22】
またはその薬学的に許容される塩。
(項13)
アンモニウム塩またはジアンモニウム塩としての、上記項11に記載の化合物。
(項14)
以下の化合物、
【化23】
またはその薬学的に許容される塩。
(項15)
上記項1~14のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
(項16)
患者が神経疾患または障害を有するかどうかを決定する方法であって、上記項1~14のいずれか一項に記載の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、または上記項15に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
(項17)
前記化合物が静脈内投与される、上記項16に記載の方法。
(項18)
前記化合物が前記患者の眼に投与される、上記項16に記載の方法。
(項19)
前記化合物またはその親化合物と検出可能な標的タンパク質との結合の有無を検出することをさらに含む、上記項16~18のいずれか一項に記載の方法。
(項20)
前記検出が、光による検査される前記患者の組織の活性化を含み、それによって、検出可能なシグナルの放出を生成し、前記検出可能なシグナルを検出する、上記項19に記載の方法。
(項21)
前記検出可能なシグナルが、蛍光シグナルである、上記項20に記載の方法。
(項22)
前記神経疾患または障害が、アルツハイマー病または外傷性脳損傷(TBI)である、上記項16~21のいずれか一項に記載の方法。
(項23)
前記神経疾患または障害が、加齢性疾患または障害、遺伝性疾患または障害、損傷関連疾患または障害、および精神疾患または障害から選択される、上記項16~21のいずれか一項に記載の方法。
(項24)
前記加齢性疾患または障害がパーキンソン病、血管性認知症、および筋萎縮性側索硬化症から選択され、前記遺伝性疾患または障害がダウン症候群であり、前記損傷関連疾患または障害が外傷性脳損傷および慢性外傷性脳症から選択され、前記精神疾患または障害が統合失調症および鬱病から選択される、上記項23に記載の方法。