(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】養殖用資材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20240403BHJP
A01G 33/00 20060101ALI20240403BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20240403BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A01K63/04 F
A01G33/00
C12N1/12 Z
C12N1/12 A
C12M1/00 E
(21)【出願番号】P 2021530496
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016136
(87)【国際公開番号】W WO2021005860
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019126252
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彩香
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊吉
(72)【発明者】
【氏名】坂本 好明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信彦
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-042788(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008398(WO,A1)
【文献】特開2008-245617(JP,A)
【文献】特開2016-129512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/04
A01G 33/00
C12N 1/12
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物である、ケイ酸カルシウム水和物及び未反応の石灰質原料を含み、かつ、炭酸カルシウムの含有率が0.1~12.0質量%である多孔質硬化体の粒体からなる
養殖用資材を製造するための方法であって、
上記ケイ酸質原料、上記石灰質原料、炭酸カルシウム、発泡剤、及び水を原料として用いて、スラリーを調製するスラリー調製工程と、
上記スラリーを養生し、発泡及び硬化させて、多孔質硬化体を得る硬化工程と、
上記多孔質硬化体について、水熱反応を生じさせ、水熱反応後の多孔質硬化体を得る水熱反応工程と、
上記水熱反応後の多孔質硬化体を粒状化して、上記養殖用資材を得る粒状化工程、
を含むことを特徴とする養殖用資材
の製造方法。
【請求項2】
上記養殖用資材は、粒度が0.5~5mmの粒体を、50質量%以上の割合で含むものである請求項1に記載の養殖用資材
の製造方法。
【請求項3】
上記ケイ酸質原料が、珪石、珪砂及び珪藻土の中から選ばれる一種以上を含み、上記石灰質原料が、生石灰、消石灰及びセメントの中から選ばれる一種以上を含み、上記発泡剤が、アルミニウム粉末を含む請求項
1又は2に記載の養殖用資材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖用資材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水生生物の成育環境を改善する方法として、種々の方法が知られている。
例えば、特許文献1には、珪藻の増殖が促進され、珪藻を餌とする甲殻類、貝類、動物プランクトンなどの生育を良好にしうる培養液として、水、及び、ケイ酸カルシウム水和物を主成分として含む粉粒状のケイ酸質材料を含み、かつ、上記ケイ酸質材料の量が、水100質量部当たり0.001~2質量部であることを特徴とする珪藻の増殖促進用の培養液が記載されている。
また、特許文献2には、水中の珪藻の増殖をより促進させて、養殖池または閉鎖性水域において、水質の悪化を抑制し、水棲生物の生存率を向上させることができる養殖用資材として、水棲生物の養殖用の水の中に供給するための、ケイ酸カルシウムを含む養殖用資材であって、蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性SiO2の溶出量が、3mg以上であることを特徴とする養殖用資材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-167538号公報
【文献】特開2016-129512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水中にケイ酸を供給することで、水中の珪藻の増殖を促進して、養殖池等の水質悪化の抑制、及び、珪藻を餌とする水生生物の成育の向上を達成しうるとともに、水生生物へのカルシウムの供給源となり、さらには、粒度保持性にも優れる養殖用資材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物である、ケイ酸カルシウム水和物及び未反応の石灰質原料を含み、かつ、炭酸カルシウムの含有率が0.1~12.0質量%である多孔質硬化体の粒体からなる養殖用資材によれば、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
[1] ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物である、ケイ酸カルシウム水和物及び未反応の石灰質原料を含み、かつ、炭酸カルシウムの含有率が0.1~12.0質量%である多孔質硬化体の粒体からなることを特徴とする養殖用資材。
[2] 上記養殖用資材は、粒度が0.5~5mmの粒体を、50質量%以上の割合で含むものである前記[1]に記載の養殖用資材。
[3] 上記多孔質硬化体の粒体が、ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物を炭酸化処理してなる多孔質炭酸化粒体である前記[1]又は[2]に記載の養殖用資材。
[4] 前記[1]又は[2]に記載の養殖用資材を製造するための方法であって、上記ケイ酸質原料、上記石灰質原料、炭酸カルシウム、発泡剤、及び水を原料として用いて、スラリーを調製するスラリー調製工程と、上記スラリーを養生し、発泡及び硬化させて、多孔質硬化体を得る硬化工程と、上記多孔質硬化体について、水熱反応を生じさせ、水熱反応後の多孔質硬化体を得る水熱反応工程と、上記水熱反応後の多孔質硬化体を粒状化して、上記養殖用資材を得る粒状化工程、を含むことを特徴とする養殖用資材の製造方法。
[5] 前記[3]に記載の養殖用資材を製造するための方法であって、上記ケイ酸質原料、上記石灰質原料、発泡剤、及び水を原料として用いて、スラリーを調製するスラリー調製工程と、上記スラリーを養生し、発泡及び硬化させて、多孔質硬化体を得る硬化工程と、上記多孔質硬化体について、水熱反応を生じさせ、水熱反応後の多孔質硬化体を得る水熱反応工程と、上記水熱反応後の多孔質硬化体を用いて、上記養殖用資材を得る粒状化及び炭酸化工程、を含み、かつ、上記粒状化及び炭酸化工程が、(a)上記多孔質硬化体を粒状化して、多孔質粒体を得た後、上記多孔質粒体を炭酸化して、上記養殖用資材を得る方法、または、(b)上記多孔質硬化体を炭酸化して、多孔質炭酸化硬化体を得た後、上記多孔質炭酸化硬化体を粒状化して、上記養殖用資材を得る方法、のいずれかであることを特徴とする養殖用資材の製造方法。
[6] 上記ケイ酸質原料が、珪石、珪砂及び珪藻土の中から選ばれる一種以上を含み、上記石灰質原料が、生石灰、消石灰及びセメントの中から選ばれる一種以上を含み、上記発泡剤が、アルミニウム粉末を含む前記[4]又は[5]に記載の養殖用資材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の養殖用資材は、多孔質でありかつケイ酸カルシウム水和物を含むため、水中に水溶性ケイ酸を供給して、水中の珪藻の増殖を促進することができる。
また、水中の珪藻の増殖が促進された結果、養殖池や閉鎖水域等において、アオコ等の発生を抑えることができ、その結果、養殖池等の水質の悪化を抑制して、養殖の対象である水生生物(例えば、エビ等の甲殻類や、貝類や、魚類)の生存率を高めることができる。さらに、珪藻を餌とする水生生物(例えば、エビ等の甲殻類や、貝類や、魚類)の成育が良好となる。
【0008】
また、本発明の養殖用資材は、該資材に含まれているケイ酸カルシウムが水中に溶解しても、該資材に含まれている難溶解性の炭酸カルシウムは残存するため、粒度保持性に優れている。このため、上記資材が、長期間(例えば、30日間)崩壊せずにその粒度(粒体の大きさ)を維持することができ、その結果、底質の締め固めを防止し、底質の通気性や通水性を向上させて、底質が貧酸素状態になることを抑制することができる。
さらに、残存した炭酸カルシウムは、水生生物(例えば、エビ等の甲殻類や、貝類や、魚類)へのカルシウム供給源となる。
なお、本明細書中、「底質」とは、淡水、汽水または海水の水域において、水底を構成している表層をいう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の養殖用資材は、ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物である、ケイ酸カルシウム水和物及び未反応の石灰質原料を含み、かつ、炭酸カルシウムの含有率が0.1~12.0質量%である多孔質硬化体の粒体からなるものである。
ここで、ケイ酸質原料とは、ケイ酸カルシウム水和物を構成するケイ酸成分(SiO2)を形成させるための原料をいう。
ケイ酸質原料の例としては、珪石、珪砂、珪藻土等が挙げられる。
ケイ酸質原料としては、石灰質原料との反応を向上させる観点から、通常、粉体の形態のものが用いられる。
石灰質原料とは、ケイ酸カルシウム水和物を構成する石灰質(CaO)を形成させるための原料をいう。
石灰質原料の例としては、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)2)、セメント等が挙げられる。なお、セメントは、ケイ酸質原料にも該当する。
石灰質原料としては、通常、粉体または粒体の形態のものが用いられる。
ケイ酸カルシウム水和物とは、CaO-SiO2-H2O系化合物(例えば、軽量気泡コンクリートの主成分として知られているトバモライト)をいう。
ケイ酸質原料と石灰質原料の組み合わせの例としては、(a)ケイ酸質原料が、珪石または珪砂であり、石灰質原料が、生石灰及びセメントである組み合わせ、(b)ケイ酸質原料が、珪石もしくは珪砂、及び、珪藻土であり、石灰質原料が、生石灰及びセメントである組み合わせ、(c)ケイ酸質原料が、珪石または珪砂であり、石灰質原料が、生石灰、消石灰、及びセメントである組み合わせ、等が挙げられる。
【0010】
ケイ酸カルシウム水和物の例としては、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、およびウォラストナイト等が挙げられる。
トバモライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca5・(Si6O18H2)・4H2O(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)・8H2O(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ゾノトライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca6・(Si6O17)・(OH)2(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
【0011】
CSHゲルとは、αCaO・βSiO2・γH2O(ただし、α/β=0.7~2.3、γ/β=1.2~2.7である。)の化学組成を有するものである。具体的には、3CaO・2SiO2・3H2Oの化学組成を有するケイ酸カルシウム水和物等が挙げられる。
フォシャジャイトとは、Ca4(SiO3)3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ジャイロライトとは、(NaCa2)Ca14(Si23Al)O60(OH)8・14H2O等の化学組成を有するものである。
ヒレブランダイトとは、Ca2SiO3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ウォラストナイトとは、CaO・SiO2(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有するものである。
中でも、製造の容易性および経済性の観点から、トバモライトが好適である。
【0012】
未反応の石灰質原料とは、ケイ酸カルシウム水和物を構成する石灰質(CaO)を形成させるための原料のうち、ケイ酸質原料との反応が生じずに、ケイ酸カルシウム水和物の構成成分とならずに残存しているものをいう。
未反応の石灰質原料は、通常、生石灰の水和反応の生成物である水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の形態で、多孔質硬化体の中に存在する。
【0013】
本発明の養殖用資材(多孔質硬化体の粒体)中の炭酸カルシウムの含有率は、粒度保持性の向上とケイ酸の供給量のバランスの観点から、好ましくは0.1~12.0質量%、より好ましくは0.5~11.0質量%、さらに好ましくは1.0~10.0質量%、さらに好ましくは2.0~9.0質量%、さらに好ましくは3.0~8.5質量%、さらに好ましくは4.0~8.2質量%、特に好ましくは5.0~8.0質量%である。
炭酸カルシウムの含有率が0.1質量%以上であれば、水生生物(特に、甲殻類や貝類)が摂取するカルシウム(底質に残存する炭酸カルシウム)の量が多くなり、水生生物の成育や生存率をより向上させることができる。炭酸カルシウムの含有率が12.0質量%以下であれば、養殖用資材に含まれるケイ酸カルシウムの量を相対的に大きくすることができ、水中に供給されるケイ酸の量が大きくなり、水中の珪藻の増殖をより促進することができる。
【0014】
本発明の養殖用資材(多孔質硬化体の粒体)は、ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物を炭酸化処理してなる多孔質炭酸化粒体であってもよい。
炭酸化処理前の、ケイ酸質原料と石灰質原料の反応生成物(多孔質硬化体)の固相中のケイ酸カルシウム水和物の割合は、本発明の養殖用資材の使用時にケイ酸をより多量に水中に供給する観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。
ケイ酸質原料として、珪石、珪砂及び珪藻土の中から選ばれる一種以上を用い、石灰質原料として、生石灰、消石灰及びセメントの中から選ばれる一種以上を用い、ケイ酸質原料の量に対する石灰質原料の量が、後述の多孔質炭酸化粒体中の炭酸カルシウムの含有率の好ましい数値範囲(0.1~12.0質量%)を満たすものである場合、炭酸化処理前の多孔質硬化体の固相中のケイ酸カルシウム水和物の割合は、50質量%以上である。
「炭酸化処理」とは、多孔質硬化体に含まれている未反応の石灰質原料(通常、水酸化カルシウム)と、二酸化炭素(通常、炭酸ガス)の反応によって、炭酸カルシウムを生じさせることをいう。
【0015】
本発明の養殖用資材(多孔質硬化体の粒体)は、多孔質のものである。
ここで、「多孔質」とは、軽量気泡コンクリート(ALC)と同様に、製造時の発泡剤による発泡によって、粒体(硬化体)中に空隙が存在することをいう。
本発明の養殖用資材(多孔質硬化体の粒体)の空隙率は、製造時の炭酸化の程度を大きくし、かつ、使用時の水中へのケイ酸の供給量を増大させるとともに、養殖用資材の十分な強度(例えば、圧壊強度)を確保する観点から、好ましくは50~80体積%、より好ましくは55~75体積%、特に好ましくは60~70体積%である。
ここで、空隙率とは、本発明の養殖用資材を構成する多孔質硬化体の粒体の外表面で囲まれる領域の全体積中の、内部空隙の体積の合計の割合をいう。
【0016】
本発明の養殖用資材は、多孔質であるため、該養殖用資材からのケイ酸の溶出量がより大きくなり、珪藻の増殖をより促進することができる。
また、本発明の養殖用資材は、多孔質であるため、該養殖用資材の多孔質の部分(内部空隙)に存在する空気が、底質中に連行されることによって、底質中に存在する水の溶存酸素量をより大きくすることができる。また、底質の通水性や通気性を、より向上させることができる。
【0017】
本発明の養殖用資材の粒度は、好ましくは0.1~15mm、より好ましくは0.3~10mm、さらに好ましくは0.5~8mm、特に好ましくは0.5~5mmである。該粒度が0.1mm以上であれば、養殖用資材を製造する際の粒状化(例えば、粉砕や、切断)に要するエネルギーをより削減することができ、かつ、底質の締め固めをより抑制することができる。該粒度が15mm以下であれば、水中に供給されるケイ酸の量をより大きくすることができる。
本発明の養殖用資材の粒度分布は、上述の好ましい粒度(例えば、0.5~5mm)を有する多孔質炭酸化粒体の割合が、50質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上)であることが好ましい。
なお、本明細書中、「粒度」とは、篩の目開き寸法に対応する大きさを意味する。例えば、1.0mm以下の粒度とは、目開きが1.0mmのふるいを通過することを意味する。
【0018】
次に、本発明の養殖用資材の製造方法について説明する。
本発明の養殖用資材の製造方法の一例としては、ケイ酸質原料、石灰質原料、発泡剤、及び水を原料として用いて、スラリーを調製するスラリー調製工程と、得られたスラリーを養生し、発泡及び硬化させて、多孔質硬化体を得る硬化工程と、得られた多孔質硬化体について、水熱反応を生じさせ、水熱反応後の多孔質硬化体を得る水熱反応工程と、水熱反応後の多孔質硬化体を用いて、養殖用資材を得る粒状化及び炭酸化工程、を含む方法が挙げられる。
ここで、スラリー調製工程、硬化工程、及び、水熱反応工程は、ケイ酸質原料に対する石灰質原料の量を、軽量気泡コンクリート(ALC)の一般的な製造方法における石灰質原料の量と比較して、過剰になるように定めることを除いて、軽量気泡コンクリート(ALC)の一般的な製造方法におけるこれら各工程と同じである。
なお、軽量気泡コンクリート(空隙率:約80体積%)の一般的な製造方法では、ケイ酸質原料の量を石灰質原料の量に対して過剰になるように定めている。このため、軽量気泡コンクリートの固相(約20体積%)は、13~16体積%のトバモライトと、4~7体積%の未反応のケイ酸分からなる。
【0019】
スラリー調製工程は、例えば、珪石(他のケイ酸質原料として、珪砂、珪藻土等を併用してもよい。)、セメント、生石灰(他の石灰質原料として、消石灰等を併用してもよい。)、発泡剤(例えば、アルミニウム粉末や、界面活性剤)、及び水を混合することによって行われる。任意で配合可能な反応促進剤として、二水石膏を用いてもよい。
各原料の量(特に、石灰質原料の量)は、水熱反応工程で得られる水熱反応後の多孔質硬化体中の水酸化カルシウム(粒状化及び炭酸化工程における炭酸化処理後に炭酸カルシウムとなるもの)の目標とする割合を考慮して、適宜定めればよい。
また、本工程において、養殖用資材中の炭酸カルシウムの含有率を調整する(より大きくする)観点から、炭酸カルシウムを用いてもよい。なお、炭酸カルシウムは、工業的に生産された炭酸カルシウムを用いてもよく、天然の石灰石等の炭酸カルシウム含有物質を用いてもよい。
【0020】
硬化工程は、例えば、スラリー調製工程で得られたスラリーを、型枠内に流し込み、次いで、常温(例えば、15~35℃)及び高湿度(例えば、相対湿度で95~99%)の雰囲気下で4~10時間の養生を行った後、さらに、高温(例えば、75~85℃)及び高湿度(例えば、相対湿度で95~99%)の雰囲気下で6~12時間の養生を行い、最後に脱型して、多孔質硬化体を得ることによって行われる。
型枠の内寸は、特に限定されないが、例えば、5~40cm(長さ)×5~15cm(幅)×5~15cm(高さ)である。
【0021】
水熱反応工程は、例えば、オートクレーブ装置を用いて、多孔質硬化体をオートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)することによって行われる。
オートクレーブ養生の温度は、好ましくは160~210℃、より好ましくは170~200℃、特に好ましくは180~190℃である。
オートクレーブ養生の圧力は、好ましくは0.9MPa~1.2MPa(9~12気圧)、より好ましくは1.0MPa~1.1MPa(10~11気圧)である。
オートクレーブ養生の養生時間(上述の好ましい温度を維持する時間)は、好ましくは3~10時間、より好ましくは4~9時間、より好ましくは5~8時間、特に好ましくは5.5~7時間である。
【0022】
粒状化及び炭酸化工程は、(a)水熱反応後の多孔質硬化体を粒状化して、多孔質粒体を得た後、この多孔質粒体を炭酸化して、養殖用資材を得る方法、または、(b)水熱反応後の多孔質硬化体を炭酸化して、多孔質炭酸化硬化体を得た後、この多孔質炭酸化硬化体を粒状化して、養殖用資材を得る方法、のいずれかによって行われる。
粒状化の方法(粒状化処理方法)の例としては、粉砕、切断等が挙げられる。
炭酸化の方法(炭酸化処理方法)の例としては、多孔質粒体または多孔質硬化体を炭酸ガス雰囲気下に置く方法(大気中に置く場合を含む。)等が挙げられる。この場合、炭酸ガスの濃度は、炭酸化をより促進する観点からは、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、さらに好ましくは4体積%以上、特に好ましくは5体積%以上である。また、炭酸ガスの濃度は、コストが過度に上昇することを防ぐ等の観点からは、好ましくは90体積%以下、より好ましくは70体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、特に好ましくは10体積%以下である。
【0023】
炭酸化処理の時間(例えば、多孔質粒体等を炭酸ガス雰囲気下に置く時間)は、多孔質粒体または多孔質硬化体の大きさ(粒度または寸法)や、養殖資材中の炭酸カルシウムの目標とする割合の大きさによっても異なるが、好ましくは3時間以上、より好ましくは4時間以上、特に好ましくは5時間以上である。該時間の上限値は、炭酸化処理の効率の観点から、好ましくは15時間、より好ましくは12時間、特に好ましくは10時間である。
炭酸化処理は、水熱反応を行うために用いたオートクレーブ装置の中で行ってもよいし、あるいは、水熱反応を行うために用いたオートクレーブ装置とは別の装置等を用いて行ってもよい。
オートクレーブ装置とは別の装置としては、高濃度の炭酸ガス雰囲気を有する炭酸化処理装置が挙げられる。オートクレーブ装置や炭酸化処理装置を用いずに、炭酸化処理前の多孔質粒体または多孔質硬化体を、大気中(空気中;0.04体積%の二酸化炭素を含む気体中)に置くことによって、炭酸化処理を行なってもよい。
【0024】
本発明の養殖用資材の製造方法の他の例としては、ケイ酸質原料、石灰質原料、炭酸カルシウム、発泡剤、及び水を原料として用いて、スラリーを調製するスラリー調製工程と、得られたスラリーを養生し、発泡及び硬化させて、多孔質硬化体を得る硬化工程と、得られた多孔質硬化体について、水熱反応を生じさせ、水熱反応後の多孔質硬化体を得る水熱反応工程と、水熱反応後の多孔質硬化体を粒状化して、養殖用資材を得る粒状化工程を含む方法が挙げられる。
スラリー調製工程、硬化工程、及び水熱反応工程は、スラリー調製工程において、炭酸カルシウムを使用し、炭酸カルシウムの量を、養殖用資材中の目標とする炭酸カルシウムの含有率を考慮して適宜定める以外は、上述した各工程と同じである。
また、粒状化工程における粒状化の方法は、上述した粒状化及び炭酸化工程における粒状化の方法(粒状化処理方法)と同じである。
【0025】
本発明の養殖用資材を用いるための養殖用の水の例としては、特に限定されるものではなく、淡水、汽水および海水のいずれでもよい。
水生生物としては、養殖用の水の中で養殖することができる甲殻類、貝類、及び魚類等が挙げられる。中でも、珪藻を餌とする水生生物(例えば、エビ等の甲殻類)が好適である。
本発明の養殖用資材に含まれている炭酸カルシウムは、水に難溶解性であるため、ケイ酸カルシウム水和物が水中に溶解しても、炭酸カルシウムは残存する。このため、本発明の養殖用資材が崩壊せずにその粒度(粒体の大きさ)を維持することができ、その結果、底質の締め固めを防止し、また、底質の通気性や通水性を向上させて、底質が貧酸素状態になることを抑制することができる。
また、底質に残存した炭酸カルシウムは、水生生物に摂取される。カルシウムが水生生物に摂取されることで、例えば、稚エビの甲殻や稚魚の骨格の強度が高まる等の効果を得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)生石灰
2mm以下の粒度を有するものの割合:90質量%以上
CaOの含有率:95質量%
(2)珪石粉末
ミルを用いて珪石を粉砕したもの
53~150μmの範囲内の粒度を有するものの割合:90質量%以上
SiO2の含有率:98質量%
(3)珪藻土
SiO2の含有率:82質量%
CaOの含有率:1質量%
(4)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
CaOの含有率:63.5質量%
SiO2の含有率:21.5質量%
(5)アルミニウム粉末(高純度化学社製)
(6)炭酸カルシウム粉末(関東化学社製)
【0027】
[粉体原料aの製造、及び、粉体原料aを用いたケイ酸カルシウム含有材料aの評価]
珪石粉末、普通ポルトランドセメント、及び生石灰を、珪石粉末、普通ポルトランドセメント、及び生石灰を混合してなる粉体原料100質量%中、珪石粉末、普通ポルトランドセメント、及び生石灰の含有率が、各々、65質量%、25質量%、及び10質量%となる配合割合で混合して、粉体原料aを得た。
【0028】
得られた粉体原料aを用いて、ケイ酸カルシウム含有材料aを調製し、該材料aに対して、粉末X線回折を行った。
具体的には、「粉体原料a」100質量部に、水40質量部を加えて、混練した後、さらに、アルミニウム粉末0.01質量部を加えて、混練し、スラリーを得た。
得られたスラリーを、10×10×10cmの内寸を有する型枠内に流し込み、30℃かつ相対湿度98%の雰囲気下で6時間の養生を行なった。次いで、80℃かつ相対湿度98%の雰囲気下で8時間養生を行なった後、型枠内の多孔質硬化体を脱型した。
脱型した多孔質硬化体を、オートクレーブ中で、180℃かつ1.0MPa(10気圧)の条件下で6時間水熱養生(水熱反応)を行なった。水熱養生の終了後、直ちにオートクレーブから多孔質硬化体を取り出して、105℃で24時間の乾燥を行った。
乾燥後、多孔質硬化体を粉砕して、ケイ酸カルシウム含有材料aを得た。粉末X線回折によって、ケイ酸カルシウム含有材料aの同定を行ったところ、トバモライトの生成が確認された。水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの生成は確認されなかった。
【0029】
[粉体原料bの製造、及び、粉体原料bを用いたケイ酸カルシウム含有材料bの評価]
珪藻土、珪石粉末、普通ポルトランドセメント、及び生石灰を、これらの材料を混合してなる粉体原料100質量%中、珪藻土、珪石粉末、普通ポルトランドセメント、及び生石灰の含有率が、各々、35質量%、25質量%、25質量%、及び15質量%となる配合割合で混合してなる粉体原料bを、粉体原料aに代えて用いた以外は、上述したケイ酸カルシウム含有材料aの調製方法と同様にして、ケイ酸カルシウム含有材料bを得た。
粉末X線回折によって、ケイ酸カルシウム含有材料bの同定を行ったところ、トバモライトの生成が確認された。水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの生成は確認されなかった。
【0030】
[実施例1~6]
粉体原料aと生石灰を、粉体原料aと生石灰を混合してなる原料混合物100質量%中の各原料(生石灰、珪石粉末、セメント)の含有率が、各々、表1に示す含有率となるように混合して、原料混合物を得た。
具体的には、粉体原料a(生石灰を含むもの)と生石灰の合計量100質量%当たり、生石灰の量が0質量%(比較例1)、0.5質量%(実施例1)、1.0質量%(実施例2)、2.0質量%(実施例3)、4.0質量%(実施例4)、6.0質量%(実施例5)、8.0質量%(実施例6)となるように、粉体原料aと生石灰を混合した。なお、得られた原料混合物(表1中、「養殖用資材の原料」と示す。)中の生石灰の含有率は、粉体原料aに由来する生石灰を含むものである。
【0031】
得られた原料混合物100質量部に、水40質量部を加えて、混練した後、さらに、アルミニウム粉末0.01質量部を加えて、混練し、スラリーを得た。
得られたスラリーを、10×10×10cmの内寸を有する型枠内に流し込み、30℃かつ相対湿度98%の雰囲気下で6時間の養生を行なった。次いで、80℃かつ相対湿度98%の雰囲気下で8時間養生を行なった後、型枠内の多孔質硬化体を脱型した。
脱型した多孔質硬化体を、オートクレーブ中で、180℃かつ1.0MPa(10気圧)の条件下で6時間水熱養生(水熱反応)を行なった。水熱養生の終了後、直ちにオートクレーブから硬化体を取り出して、105℃で24時間の乾燥を行った。
得られた多孔質硬化体は、ケイ酸カルシウム(トバモライト)と水酸化カルシウムを含むものであった。
乾燥後、切断後の各塊が約2×2×2cmの立方体となるように、多孔質硬化体を切断した。得られた立方体状の多孔質硬化体を、炭酸ガス濃度が5体積%である、密閉された容器内において6時間静置することで、炭酸化処理を行い、ケイ酸カルシウム(トバモライト)及び炭酸カルシウムを含む立方体状の多孔質炭酸化硬化体を得た。
【0032】
[多孔質炭酸化硬化体中の炭酸カルシウムの含有率の測定]
上述の立方体状の多孔質炭酸化硬化体を粉砕し、次いで、目開き1mmの篩を用いて、篩い分けを行った。篩を通過した粒度が1mm以下である養殖用資材の粉体を、650℃で加熱し、その後、さらに900℃で加熱した。650~900℃で加熱した際の粉体の質量の減少量(二酸化炭素の脱離によるもの)から、養殖用資材中の炭酸カルシウムの含有率を算出した。
結果を表1に示す。
【0033】
[多孔質炭酸化硬化体からの水溶性ケイ酸の溶出量の測定]
上述の立方体状の多孔質炭酸化硬化体を粉砕し、次いで、目開き1mmの篩を用いて、篩い分けを行った。篩を通過した粒度が1mm以下である多孔質炭酸化硬化体の粉体1gを、蒸留水1リットルに添加し、次いで、70rpmで振盪しながら、24時間ごとに蒸留水を交換した。交換した蒸留水に溶解しているSi濃度を、ICP発光分析装置を用いて測定することによって、養殖用資材の粉体の添加時から7日経過時までの、水溶性ケイ酸(SiO2)の1日毎の溶出量(mg/リットル/日)を算出した。
結果を表2に示す。
【0034】
[粒度保持性の評価(比較例に対する相対評価)]
上述の立方体状の多孔質炭酸化硬化体を粉砕した後、目開き5mmの篩、及び、目開き0.5mmの篩を用いて、粒度が0.5~5mmである養殖用資材を得た。該養殖用資材50gを、ポリエチレン製の通水性を有する袋(養殖用資材は通過しないが、水は通過するもの)に入れて、エビの養殖用の池の底に設置した。
設置時から30日経過後、養殖池から上記袋を回収して、該袋に付着した土や珪藻等を水で除去した後、105℃の条件下で乾燥を行った。乾燥後、該袋内から養殖用資材を取り出し、目開き0.5mmの篩を用いて、篩い分けを行った。
次いで、篩を通過した養殖用資材の質量と、篩上に残存した養殖用資材の質量を、各々、測定した。得られた質量から、以下の式(1)を用いて、篩上に残存した養殖用資材の割合を算出した。
篩上に残存した養殖用資材の割合(%)=(篩上に残存した養殖用資材の質量)×100/(篩に残存した養殖用資材の質量+篩を通過した養殖用資材の質量) ・・・(1)
【0035】
次いで、比較例1(後述)における30日経過後の、篩上に残存した養殖用資材の割合を、前記と同様にして算出した。比較例1における、篩上に残存した養殖用資材の割合を基準(100)として、各実施例(実施例1~6)における、篩上に残存した養殖用資材の割合を、以下の式(2)を用いて、数値で表した。
(比較例1に対する各実施例の相対評価の値)=(各実施例における篩上に残存した養殖用資材の割合)×100/(比較例1における篩上に残存した養殖用資材の割合) ・・・(2)
なお、比較例1に対する実施例の相対評価の値が大きいほど、粒度保持性に優れていることを意味する。
結果を表2に示す。
【0036】
[粒度保持性の評価(絶対評価)]
上述の立方体状の多孔質炭酸化硬化体を粉砕した後、目開き5mmの篩、及び、目開き0.5mmの篩を用いて、粒度が0.5~5mmである養殖用資材を得た。該養殖用資材50gの画像を撮影した後、該養殖用資材をポリエチレン製の通水性を有する袋(養殖用資材は通過しないが、水は通過するもの)に入れて、エビの養殖用の池の底に設置した。
設置時から30日経過後、養殖池から上記袋を回収して、該袋に付着した土や珪藻等を水で除去した後、105℃の条件下で乾燥を行った。乾燥後、該袋内から養殖用資材を取り出して、該養殖用資材の画像を撮影した。
【0037】
養殖用の池に設置する前の養殖用資材の画像と、養殖用の池から回収した後の養殖用資材の画像について、「Vector」(オンラインのソフトウエア流通サイト)によって提供される「面積測定ソフト」を用いて、画像解析を行い、画像から解析された、設置前の養殖用資材の平面積と、回収後(30日経過後)の養殖用資材の平面積の比(%)を、以下の式(3)を用いて算出した。
平面積の比(%)=(30日経過後の養殖用資材の平面積)×100/(設置前の養殖用資材の平面積) ・・・(3)
なお、平面積の比(%)が大きいほど、粒度保持性に優れていることを意味する。
【0038】
[比較例1]
水熱反応後の多孔質硬化体を、各塊が約2×2×2cmの立方体となるように切断した後、炭酸化処理を行わずに、105℃で3時間の乾燥を行った以外は、実施例1と同様にして、多孔質硬化体を得た。
得られた多孔質硬化体について、実施例1と同様にして、炭酸カルシウムの含有率の測定等を行った。また、実施例1と同様に、多孔質硬化体を用いて、養殖用資材を得て、粒度保持性を評価した。
【0039】
[実施例7~13]
粉体原料aの代わりに粉体原料bを使用し、かつ、粉体原料bと生石灰を、粉体原料bと生石灰を混合してなる原料混合物100質量%中の各原料(生石灰、珪石粉末、珪藻土、セメント)の含有率が、各々、表1に示す含有率となるように混合して、原料混合物を得た以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭酸化硬化体を得た。
具体的には、粉体原料b(生石灰を含むもの)と生石灰の合計量100質量%当たり、生石灰の量が0質量%(比較例2)、0.5質量%(実施例7)、1.0質量%(実施例8)、3.0質量%(実施例9)、5.0質量%(実施例10)、7.0質量%(実施例11)、9.0質量%(実施例12)、10.0質量%(実施例13)となるように、粉体原料bと生石灰を混合した。なお、得られた原料混合物中の生石灰の含有率は、粉体原料bに由来する生石灰を含むものである。
得られた多孔質炭酸化硬化体について、実施例1と同様にして、炭酸カルシウムの含有率の測定等を行った。また、実施例1と同様に、多孔質炭酸化硬化体を用いて、養殖用資材を得て、粒度保持性を評価した。
【0040】
[比較例2]
粉体原料aの代わりに粉体原料bを使用した以外は、比較例1と同様にして、多孔質硬化体を得た。
得られた多孔質硬化体について、実施例1と同様にして、炭酸カルシウムの含有率の測定等を行った。また、実施例1と同様に、多孔質硬化体を用いて、養殖用資材を得て、粒度保持性を評価した。
【0041】
[実施例14~16]
粉体原料aと生石灰と炭酸カルシウム粉末と混合してなる原料混合物100質量%中の各原料(生石灰、珪石粉末、セメント、炭酸カルシウム粉末)の含有率が、各々、表1に示す含有率となるように混合して、原料混合物を得た。
具体的には、粉体原料a(生石灰、珪石粉末、及び普通ポルトランドセメントを含むもの)と生石灰と炭酸カルシウム粉末を混合してなる原料混合物100質量%当たり、炭酸カルシウム粉末の量が、各々、1.0質量%(実施例14)、2.0質量%(実施例15)、4.0質量%(実施例16)となるように、粉体原料aと生石灰と炭酸カルシウム粉末を混合した。なお、生石灰の量は、炭酸カルシウム粉末と同じ量とした。生石灰を追加したのは、ケイ酸質原料に対する石灰質原料の量が、軽量気泡コンクリート(ALC)の一般的な製造方法における石灰質原料の量と比較して過剰となるようにするためである。また、得られた原料混合物中の生石灰の含有率は、粉体原料aに由来する生石灰を含むものである。
【0042】
得られた原料混合物を用いて、実施例1と同様にして多孔質硬化体を得た。該多孔質硬化体は、ケイ酸カルシウム(トバモライト)と水酸化カルシウムを含むものであった。
該多孔質硬化体を用いて、実施例1と同様にして炭酸化処理を行い、ケイ酸カルシウム(トバモライト)及び炭酸カルシウムを含む立方体状の多孔質炭酸化粒体(養殖用資材)を得た。
得られた養殖用資材について、実施例1と同様にして、炭酸カルシウムの含有率の測定等を行った。
【0043】
[実施例17~19]
粉体原料aと炭酸カルシウム粉末を混合してなる原料混合物100質量%中の各原料(生石灰、珪石粉末、セメント、炭酸カルシウム粉末)の含有率が、各々、表1に示す含有率となるように混合して、原料混合物を得た。
具体的には、粉体原料a(生石灰、珪石粉末、及び普通ポルトランドセメントを含むもの)と炭酸カルシウム粉末を混合してなる原料混合物100質量%当たり、炭酸カルシウム粉末の量が、各々、2.0質量%(実施例17)、5.0質量%(実施例18)、10.0質量%(実施例19)となるように、粉体原料aと炭酸カルシウム粉末を混合した。なお、得られた原料混合物中の生石灰の含有率は、粉体原料aに由来する生石灰を含むものである。
得られた多孔質硬化体を切断した後、炭酸化処理を行わない以外は実施例1と同様にして、多孔質硬化体の粒体(養殖用資材)を得た。なお、上記多孔質硬化体は、ケイ酸カルシウム(トバモライト)と水酸化カルシウムを含むものであった。
得られた養殖用資材について、実施例1と同様にして、炭酸カルシウムの含有率の測定等を行った。
以上の結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
表2から、本発明の養殖用資材(実施例1~19)によれば、蒸留水1リットルに対して、養殖用資材を1gの量で添加した後、7日間が経過しても、1日当たりの水溶性ケイ酸の溶出量は、0.8mg/リットル以上を維持していることがわかる。
なお、実施例1~6と比較例1の比較、実施例7~13と比較例2の比較、実施例14~16の比較、及び、実施例17~19の比較から、炭酸カルシウムの含有率が小さくなるほど(逆に言えば、ケイ酸カルシウムの含有率が大きくなるほど)、1日当たりの水溶性ケイ酸の溶出量は、大きくなる傾向があることがわかる。
また、粒度保持性の評価(相対評価及び絶対評価)について、実施例1~19と比較例1~2の比較から、本発明の養殖用資材(実施例1~19)は、炭酸カルシウムの含有率が0質量%である養殖用資材(比較例1~2)よりも、粒度保持性に優れていることがわかる。
特に、実施例3~5(炭酸カルシウムの含有率:2.4~8.0質量%)、実施例9~11(炭酸カルシウムの含有率:2.9~7.8質量%)、実施例14~16(炭酸カルシウムの含有率:2.1~9.5質量%)、及び、実施例18~19(炭酸カルシウムの含有率:4.3~9.1質量%)は、粒度保持性に特に優れていることがわかる。