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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】変速機及び変速機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/14 20060101AFI20240403BHJP
   F16H 59/72 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16H61/14 601H
F16H61/14 601B
F16H59/72
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021562566
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043361
(87)【国際公開番号】W WO2021111899
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019221652
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 武顕
(72)【発明者】
【氏名】井上 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小渡 翔
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-057756(JP,A)
【文献】特開2001-200928(JP,A)
【文献】特開昭49-026663(JP,A)
【文献】特開2004-293704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14
F16H 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックアップクラッチを有するトルクコンバータを備えた変速機構と、
前記変速機構に供給する油を吐出するオイルポンプと、
前記オイルポンプから吐出される油を調圧して前記ロックアップクラッチに供給するロックアップ油圧制御弁と、
前記オイルポンプから吐出される油を調圧して、前記変速機構のうち、潤滑される部位に油を供給する潤滑油圧制御弁と、
前記ロックアップ油圧制御弁及び前記潤滑油圧制御弁を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
油温が低くなるほど前記潤滑油圧制御弁から供給される油圧である潤滑油圧が高くなるよう前記潤滑油圧制御弁を制御し、
前記ロックアップクラッチに油を供給するプリチャージを行う際、前記潤滑油圧が第1の潤滑油圧のときのプリチャージ時間が、前記潤滑油圧が前記第1の潤滑油圧よりも低い第2の潤滑油圧のときのプリチャージ時間よりも短くなるよう前記ロックアップ油圧制御弁を制御する、
変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機であって、
前記コントローラは、前記プリチャージ時間が経過する前に前記潤滑油圧が変動し、変動した潤滑油圧に対応するプリチャージ時間が、変動する前の潤滑油圧に対応するプリチャージ時間よりも短ければ、前記変動した潤滑油圧に対応するプリチャージ時間を新たなプリチャージ時間として更新する、
変速機。
【請求項3】
請求項1に記載の変速機であって、
前記コントローラは、前記変速機構の潤滑油圧が特定の潤滑油圧以上の場合には、前記ロックアップクラッチのロックアップを禁止する、
変速機。
【請求項4】
請求項3に記載の変速機であって、
前記コントローラは、前記変速機構の潤滑油圧が特定の潤滑油圧以上の場合であっても、油温が特定の高油温を超える場合には前記ロックアップクラッチのロックアップを許可する、
変速機。
【請求項5】
ロックアップクラッチを有するトルクコンバータを備えた変速機構と、
前記変速機構に供給する油を吐出するオイルポンプと、
前記オイルポンプから吐出される油を調圧して前記ロックアップクラッチに供給するロックアップ油圧制御弁と、
前記オイルポンプから吐出される油を調圧して、前記変速機構のうち、潤滑される部位に油を供給する潤滑油圧制御弁と、を備えた変速機の制御方法であって、
油温が低くなるほど前記潤滑油圧制御弁から供給される油圧である潤滑油圧が高くなるよう前記潤滑油圧制御弁を制御し、前記ロックアップクラッチに油を供給するプリチャージを行う際、前記潤滑油圧が第1の潤滑油圧のときのプリチャージ時間が、前記潤滑油圧が前記第1の潤滑油圧よりも低い第2の潤滑油圧のときのプリチャージ時間よりも短くなるよう前記ロックアップ油圧制御弁を制御する、
変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機におけるトルクコンバータのロックアップクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2014-114910Aには、変速機の潤滑が必要な部分に潤滑油を供給する潤滑油路と、ロックアップクラッチに油を供給する油路とが繋がっている油圧回路を有する油圧制御装置を備える変速機が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
このような変速機では、潤滑が必要な部分の末端まで油が行き届くように潤滑油路の油圧を制御することも考えられる。しかしながら、潤滑油路とロックアップクラッチに油を供給する油路とが繋がっている油圧回路構成の変速機で潤滑油路の油圧を制御すると、当該制御による油圧の変動がロックアップピストンに油を供給する油路の油圧にも影響し、ロックアップクラッチの制御に影響が及ぶおそれがある。
【0004】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、潤滑油圧を制御する油圧回路を有する変速機において、ロックアップクラッチの制御を精度よく行えるようにすることを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータを備えた変速機構と、前記変速機構に供給する油を吐出するオイルポンプと、前記オイルポンプから吐出される油を調圧して前記ロックアップクラッチに供給するロックアップ油圧制御弁と、前記オイルポンプから吐出される油を調圧して、前記変速機構のうち、潤滑される部位に油を供給する潤滑油圧制御弁と、前記ロックアップ油圧制御弁及び前記潤滑油圧制御弁を制御するコントローラと、を備える変速機が提供される。前記コントローラは、油温が低くなるほど前記潤滑油圧制御弁から供給される油圧である潤滑油圧が高くなるよう前記潤滑油圧制御弁を制御し、前記ロックアップクラッチに油を供給するプリチャージを行う際、前記潤滑油圧が第1の潤滑油圧のときのプリチャージ時間が、前記潤滑油圧が前記第1の潤滑油圧よりも低い第2の潤滑油圧のときのプリチャージ時間よりも短くなるよう前記ロックアップ油圧制御弁を制御する。
【0006】
上記態様によれば、変速機構の潤滑油圧が、第2の潤滑油圧よりも高い第1の潤滑油圧のときには、プリチャージ時間を、第2の潤滑油圧のときのプリチャージ時間をよりも短くする。すなわち、潤滑油圧を踏まえてプリチャージ時間を設定してプリチャージを行う。これにより、潤滑油圧に起因して変化するロックアップクラッチへ至る油圧回路の油の充填状態を踏まえてプリチャージを行うため、意図せずロックアップクラッチが締結することを防ぐことができる。すなわち、ロックアップクラッチの制御を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に係る変速機の油圧回路の構成概要図である。
図2図2は、潤滑油圧を設定するためのマップである。
図3図3は、コントローラによる潤滑油圧制御の処理内容のフローチャートである。
図4図4は、特定のタービン回転速度、特定のタービントルク、及び特定のオイルパン油温において設定される潤滑油圧の外気温に応じた変化を示した図である。
図5図5は、ロックアップクラッチ制御の処理内容のフローチャートである。
図6図6は、ロックアップクラッチのロックアップ許可を判断するマップである。
図7図7は、ロックアップクラッチのプリチャージ時間を算出するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る変速機100の油圧回路の構成を示した図である。変速機100は、オイルパン1と、オイルポンプ2と、潤滑油圧制御弁3aとロックアップ油圧制御弁3bとを有するコントロールバルブユニット3と、ロックアップクラッチ4bを有するトルクコンバータ4aを備えた変速機構4と、クーラ5と、潤滑部6と、コントローラ7と、を備える。
【0010】
オイルパン1は、変速機構4や潤滑部6などに供給するための油を所定量貯留する。また、変速機100に供給された油は、後述する変速機構4や潤滑部6などから排出されて、オイルパン1に回収される。オイルパン1には、オイルパン1に貯留された油の温度(オイルパン油温To)を検出するオイルパン油温センサ11が設けられる。
【0011】
オイルポンプ2は、オイルパン1に貯留される油を吸い上げ、油圧を発生させて油を吐出し、コントロールバルブユニット3へ油を供給する。オイルポンプ2は、動力源から入力される動力によって駆動するメカオイルポンプであってもよいし、電力の供給によって駆動する電動オイルポンプであってもよい。
【0012】
コントロールバルブユニット3は、オイルポンプ2から供給された油を調圧して変速機構4へ供給する。コントロールバルブユニット3は、潤滑油圧制御弁3aとロックアップ油圧制御弁3bとを有する。潤滑油圧制御弁3aとロックアップ油圧制御弁3bとは、それぞれ弁体と弁体を制御するソレノイドより構成される。コントロールバルブユニット3は、オイルポンプ2から供給された油を潤滑油圧制御弁3aによって調圧して、後述する潤滑部6へ供給する。コントロールバルブユニット3は、オイルポンプ2から供給された油をロックアップ油圧制御弁3bによって調圧して、トルクコンバータ4aのロックアップクラッチ4bへ供給する。
【0013】
変速機構4は、トルクコンバータ4aと図示しない変速段機構とを有する。
【0014】
トルクコンバータ4aは、動力源としてのエンジン(図示省略)から回転動力が入力されると、入力側と出力側の回転速度差に応じてトルクを増幅し、変速段機構へ回転動力を伝達する。トルクコンバータ4aは、ロックアップクラッチ4bを締結(ロックアップ)することで、エンジンから入力される回転動力の伝達効率を高めることができる。トルクコンバータ4aの内部には、トルクコンバータ4aの内圧を検出する内圧センサが設けられる(図示省略)。なお、トルクコンバータ4aの内圧は、油圧回路の油圧などに基づいてコントローラ7によって推定する構成としてよい。
【0015】
ロックアップクラッチ4bは、トルクコンバータ4aの内圧とロックアップクラッチ4bのピストン圧との差圧が所定の値となると締結する。ロックアップクラッチ4bの締結は、後述するコントローラ7によるロックアップクラッチ4bのピストン圧の制御によって、制御される。トルクコンバータ4aのタービンには、タービン回転速度Ntを検出するタービン回転速度センサ41が設けられる。
【0016】
変速段機構は、コントロールバルブユニット3から供給される油の油圧に応じて摩擦締結要素の締結状態を変更し、所定のギア段を実現する。変速段機構は、トルクコンバータ4aから伝達された回転動力をギア段に対応する変速比で変速する。
【0017】
変速機構4には、変速機構4内の油温(以下、ATF油温と称する)を検出するATF油温センサが設けられる(図示省略)。
【0018】
クーラ5は、油圧回路において潤滑油圧制御弁3aと潤滑部6の間に設けられる。クーラ5は、潤滑油圧制御弁3aによって調圧された油を冷却して、潤滑部6へ供給する。本実施形態では、クーラ5は空冷式の熱交換器である。クーラ5に供給された油は、熱交換器を構成する複数の細管内を通過するときに、細管外壁に接触する外気によって冷却される。
【0019】
潤滑部6は、変速機構4のうち、回転部、摺動部、軸受部などといった油によって潤滑される部位を総括的に示したものである。図1では便宜上潤滑部6が変速機構4の外に描かれているが、潤滑部6は変速機構4の一部である。潤滑部6は、クーラ5から供給された油によって潤滑される。なお、潤滑部6を潤滑した油は、その後、オイルパン1へと排出される。
【0020】
コントローラ7は、変速機100を制御する制御装置であり、中央演算装置(CPU)、記憶装置(RAM及びROM)および入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。コントローラ7には、変速機100が搭載される車両に設けられている車速センサやアクセルペダル開度センサから検出信号が入力される。コントローラ7は、これらの信号に基づいて変速段機構がとるべきギア段を決定する。そして、コントローラ7は、当該ギア段を実現するために、コントロールバルブユニット3を制御して変速機構4に供給する油を調圧する。また、コントローラ7は、所定のロックアップ条件(例えば、車速が所定車速以上)が成立するとロックアップクラッチ4bを締結するためにコントロールバルブユニット3を制御してロックアップクラッチ4bに供給する油を調圧する。
【0021】
コントローラ7には、オイルパン油温センサ11、タービン回転速度センサ41のそれぞれから、オイルパン油温To、タービン回転速度Ntの検出信号が入力される。コントローラ7は、オイルパン油温To、タービン回転速度Ntおよびエンジントルクとトルクコンバータのトルク比より演算されたタービントルクTtに基づいて潤滑部6の末端まで油を供給するために必要な油圧、言い換えれば、潤滑部6が潤滑不良を起こさない油圧の下限値(以下、「必要潤滑油圧」と称する)が確保されるよう、潤滑油圧制御弁3aから潤滑部6に供給される油の油圧(以下、「潤滑油圧」と称する)を制御する。
【0022】
コントローラ7には、ロックアップクラッチ4bの締結を制御するための目標値(トルクコンバータ4aの内圧とロックアップクラッチ4bのピストン圧との差圧の値)が記憶されている。ロックアップクラッチ4bは、トルクコンバータ4aの内圧とロックアップクラッチ4bのピストン圧との差圧が、当該目標値になると締結する。そのため、コントローラ7は、ロックアップクラッチ4bを締結させる場合には、目標値と内圧センサから入力されるトルクコンバータ4aの内圧の検出信号とに基づいて、トルクコンバータ4aの内圧とロックアップクラッチ4bのピストン圧との差圧を目標値とするためにロックアップクラッチ4bのピストンへ供給すべき油を算出し、当該油がロックアップクラッチ4bのピストンへ供給されるよう、ロックアップ油圧制御弁3bを制御する。なお、以降の説明では、上記の制御を差圧制御と称する。コントローラ7が差圧制御を行い、トルクコンバータ4aの内圧とロックアップクラッチ4bのピストン圧との差圧が目標値となると、ロックアップクラッチ4bが締結する。
【0023】
また、コントローラ7は、変速機構4の摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bなどを締結させる制御を行う際に、予め、変速機構4の摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bなどへ、これらのピストンの初動が速やかに行われるようにバルブを解放状態にして油を供給するプリチャージを行う。詳細には、コントロールバルブユニット3の制御弁3a,3bを制御して、変速機構4の摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路へ、変速機構4の摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bのピストンを解放位置から摩擦要素が互いに接触する位置(トルクの伝達容量がない状態)にストロークするよう油を供給する。この変速機構4の摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bのピストンを解放位置から摩擦要素が互いに接触する位置にするため(間隙を詰めるため)に、油圧を目標油圧(締結のために必要な油圧 )よりも高く設定して油を供給することを「プリチャージ」と呼び、プリチャージを所定時間行った後は、油圧を低くして急な締結が発生しないようにしている。プリチャージを行うことで、プリチャージを行なっていない状態から油を供給して変速機構4の摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bを締結する場合と比べて短い時間で摩擦締結要素やロックアップクラッチ4bを締結できる。
【0024】
ところで、変速機100は、外気温が低温な環境下におかれると、クーラ5にて油が冷却されて油の粘度が上昇し、油を潤滑部6に供給する際の圧力損失が増加し、潤滑部6の末端まで油が十分に行き届かず、潤滑部6にて潤滑が不足するおそれがある。そのため、コントローラ7は、オイルパン油温To、タービン回転速度Nt、タービントルクTtに加え、外気温も考慮にいれて、潤滑油圧を制御する。
【0025】
ここで、潤滑部6と変速機構4(トルクコンバータ4a、ロックアップクラッチ4b)とが繋がっている油圧回路である変速機100で潤滑油圧の制御を行うと、当該制御による潤滑油圧の変動がロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路の油圧にも影響する。当該影響によってロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路内へ油が充填される場合、ロックアップクラッチ4bへ油をプリチャージする際に既に油が充填されている油圧回路に油を供給するため、プリチャージ中にロックアップクラッチ4bが締結するおそれがある。そこで、本実施形態では、コントローラ7は、潤滑油圧を制御するとともに、ロックアップクラッチ4bのプリチャージについても制御を実施する。
【0026】
まず、図2から図4を参照して、コントローラ7が実行する潤滑油圧の制御について説明する。
【0027】
図2に示すように、コントローラ7の記憶装置には、外気温、オイルパン油温To、タービン回転速度Nt及びタービントルクTtに基づき潤滑油圧の指令値を算出するためのマップが複数記憶されている(マップX1~Xn、以下、これらを「マップX」と総称する)。
【0028】
データ量を抑えるために、外気温及びオイルパン温度については、所定の外気温範囲毎(-20℃未満、-20℃以上-10℃未満、-10℃以上15℃未満、15℃以上)及び所定のオイルパン温度範囲毎(-10℃未満、-10℃以上0℃未満、0℃以上10℃未満、10℃以上20℃未満、20℃以上)にマップXが用意されている。コントローラ7は、外気温、オイルパン油温To、タービン回転速度Nt及びタービントルクTtに対応するマップを選択・参照し、潤滑油圧の指令値を算出する。
【0029】
必要潤滑油圧は、外気温が低くなるほど、また、オイルパン油温Toが低くなるほど高くなる傾向を有する。このため、各マップXには、対応する外気温範囲の最も低い値(下限値がない範囲では想定される最低外気温)、及び、対応するオイルパン油温範囲の最も低い値(下限値がない範囲では想定される最低オイルパン温度)に対応する必要潤滑油圧が潤滑油圧の指令値として格納される。これにより、指令値に基づき実現される潤滑油圧が、必要潤滑油圧を下回らないようにしている。
【0030】
例えば、外気温が-20℃未満、かつ、油温Toが20℃以上に対応するマップX1においては、想定される最低外気温である-40℃、及び、オイルパン温度が20℃に対応する必要潤滑油圧が潤滑油圧の指令値として格納される。
【0031】
また、必要潤滑油圧は、タービン回転速度Ntが高くなるほど、また、タービントルクTtが高くなるほど高くなる傾向を有するので、各マップXに格納される潤滑油圧の指令値も同じ傾向となる。
【0032】
このように、コントローラ7は、潤滑油圧の指令値を、タービン回転速度Nt、タービントルクTt、オイルパン油温Toに加えて、外気温を考慮して設定する。すなわち、コントローラ7は、外気温の変化に起因するクーラ5での油の温度および粘度の変化を踏まえて、潤滑油圧の指令値を設定する。
【0033】
次に、図3を参照して、コントローラ7による潤滑油圧制御の具体的な処理内容について説明する。
【0034】
まず、ステップS1では、コントローラ7は、エンジンの吸気温センサの検出信号から得られるエンジンの吸気温Teをエンジンコントローラから入手し、エンジンの吸気温Teに基づいて、外気温を推定する。エンジンの吸気温Teが低いほど外気温が低いという相関関係があるので、コントローラ7は、エンジンの吸気温Teが低いほど外気温を低く推定する。コントローラ7は、外気温を推定すると、コントローラ7は、処理をステップS2に進める。
【0035】
なお、外気温の取得方法はこれに限定されず、例えば、フロントバンパー、ドアミラー等に取り付けられる外気温を検知する外気温センサによって外気温を検出するようにしてもよい。また、外気温は、無線通信(携帯電話回線、ラジオ等)を介して取得した気象情報から入手するようにしてもよい。
【0036】
ステップS2では、コントローラ7は、ステップS1で推定した外気温と、オイルパン油温センサ11から入力された信号によって算出したオイルパン油温Toとに対応するマップを複数のマップXの中から選択し、処理をステップS3に進める。
【0037】
ステップS3では、コントローラ7は、ステップS2で選択したマップXと、タービン回転速度センサ41から入力される信号によって算出したタービン回転速度Ntと、エンジントルクとトルクコンバータのトルク比より算出されたタービントルクTtと、から潤滑油圧の指令値を算出する。必要潤滑油圧の指令値を算出したら、コントローラ7は、処理をステップS4に進める。
【0038】
ステップS4では、コントローラ7は、ステップS3で算出した潤滑油圧の指令値に基づいて、潤滑油圧が指令値になるよう潤滑油圧制御弁3aを制御する。これにより、潤滑油圧は、必要潤滑油圧以上に制御される。
【0039】
図4は、特定のタービン回転速度Nt、特定のタービントルクTt、及び特定のオイルパン油温Toにおいて設定される潤滑油圧が、外気温に応じてどのように変化するかを示した図である。実線は、滑油油圧の指令値を示しており、指令値に基づき制御される実際の潤滑油圧もこれに略等しくなる。破線は、必要潤滑油圧を示している。
【0040】
図4に示されるように、潤滑油圧は外気温が低くなるほど高くなる傾向を有する。所定の外気温範囲毎にマップXを用意したため潤滑油圧が外気温に応じてステップ的に変化するが、各外気温範囲においては、対応する外気温範囲の最も低い値(下限値がない範囲では想定される最低外気温)に対応する必要潤滑油圧が潤滑油圧の指令値として設定されるので、潤滑油圧は必ず必要潤滑油圧よりも高く設定される。
【0041】
これにより、外気温が低く油の粘度が高い状況であっても潤滑部6の末端まで油を供給し、潤滑部6を適切に潤滑することができる。
【0042】
なお、ここでは用意したマップXの数に影響で潤滑油圧が外気温に応じてステップ的に変化しているが、ステップ的に変化させる必要はなく、マップXの数を増やす、あるいは、関数を用いて潤滑油圧の指令値を設定するようにし、潤滑油圧を外気温に応じてなめらかに変化させるようにしてもよい。
【0043】
続いて、図5から図7を参照して、コントローラ7が実行するロックアップクラッチ4bの制御について説明する。図5は、コントローラ7によるロックアップクラッチ4bの制御の具体的な処理内容を示すフローチャートである。本制御の処理は、ロックアップクラッチ4bの締結の可否を判断する段階(ステップS11~ステップS13)と、ロックアップを行う際のプリチャージの制御の段階(ステップS14~S19)と、ロックアップクラッチ4bを締結する段階(ステップS20~S21)と、に大別される。
【0044】
まず、ステップS11では、コントローラ7は、外気温を取得する。外気温の取得方法は、図3のステップS1のように、エンジンの吸気温センサの検出信号から得られるエンジンの吸気温Teをエンジンコントローラから入手し、エンジンの吸気温Teに基づいて、外気温を推定する方法があげられる。また、例えば、フロントバンパー、ドアミラー等に取り付けられる外気温を検知する外気温センサによって外気温を取得してもよい。また、外気温は、無線通信(携帯電話回線、ラジオ等)を介して取得した気象情報から取得してもよい。
【0045】
それとともに、ステップS11では、コントローラ7は、ATF油温センサから入力される信号よりATF油温を取得する。コントローラ7は、外気温とATF油温を取得すると、処理をステップS12に進める。
【0046】
ステップS12では、コントローラ7は、ステップS11で取得した外気温およびATF油温と、図6に示すマップに基づいて、変速機100がロックアップクラッチ4bの締結を許可できる状態であるかを判断する。
【0047】
図6は、ロックアップクラッチ4bのロックアップの許可を判断するマップである。当該マップは、コントローラ7の記憶装置に記憶されている。
【0048】
コントローラ7は、ステップS11で取得した外気温およびATF油温を図6のマップにあてはめ、外気温が特定の低温度以下、かつ、ATF油温が特定の高油温以下の場合(図6のロックアップ禁止領域に該当する場合)には、処理をS13に進めて、ロックアップクラッチ4bの締結を禁止する。特定の低温度は例えば-20℃である。特定の高油温は例えば110℃である。
【0049】
外気温が特定の低温度(本実施形態では-20℃)以下、かつ、ATF油温が特定の高油温(本実施形態では110℃)以下の場合にロックアップクラッチ4bの締結を禁止する理由は以下の通りである。図4に示すように、外気温が-20℃以下の場合には、潤滑油圧が高く設定され、特定の潤滑油圧以上に設定される。変速機100の油圧回路の構成上、潤滑油圧とトルクコンバータ4aの内圧とは相関関係にあるため、潤滑油圧が高く設定されるとトルクコンバータ4aの内圧も高くなる。このトルクコンバータ4aの内圧が高い状況下で、ロックアップクラッチ4b以外のクラッチ(例えば、変速機構4の摩擦締結要素)へ油をプリチャージさせる必要がある場面(例えば、変速段を変更する場面)となり当該クラッチへ油を供給すると、潤滑油圧も変動する。ここで、特定の潤滑油圧以上に設定されている潤滑油圧が変動するとトルクコンバータ4aの内圧も大きく変動するため、ロックアップクラッチ4bを締結させるための差圧制御の精度を維持することが難しくなり、ロックアップクラッチ4bの締結状態を所望の状態に制御することが困難となる。そこで、外気温が-20℃以下の場合、換言すれば、潤滑油圧が特定の潤滑油圧以上の場合には、ロックアップクラッチ4bのロックアップを原則禁止する。
【0050】
ただし、外気温が-20℃以下の場合(潤滑油圧が特定の潤滑油圧以上の場合)であってもATF油温が110℃を超える場合には、耐熱性が低い部材を保護するためにATF油温を下げる必要があるため、ATF油温が上昇する原因であるロックアップクラッチ4bの開放を禁止する。すなわち、当該場合では、コントローラ7はロックアップクラッチ4bの締結を許可する。
【0051】
そのため、コントローラ7は、外気温が-20℃以下、かつ、ATF油温が110℃以下の場合(図6のロックアップ禁止領域に該当する場合)には、処理をステップS13に進め、ロックアップクラッチ4bの締結を禁止する。また、外気温が-20℃未満である場合または外気温が-20℃以下であってもATF油温が110℃を超える場合(図6のロックアップ許可領域に該当する場合)には、処理をステップS14に進める。
【0052】
ステップS14では、コントローラ7は、ロックアップクラッチ4bの締結制御のうちのプリチャージ制御を行うために、潤滑油圧とATF油温とを取得する。潤滑油圧の取得方法は、図3のステップS3で算出した潤滑油圧の指令値に基づいて算出してもよいし、潤滑部6に至る回路に油圧センサを設けて潤滑油圧を測定し、当該油圧センサからコントローラ7に検出信号を出力する構成にしてもよい。ATF油温は、ATF油温センサから入力される信号より取得する。潤滑油圧とATF油温とを取得したら、処理をステップS15に進める。
【0053】
ところで、上記したように、本実施形態に係る変速機100では、油圧回路によって潤滑部6と変速機構4(トルクコンバータ4a、ロックアップクラッチ4b)とが繋がっている。そのため、図3に示す潤滑油圧の制御を行って潤滑部6の潤滑油圧が高くなると、それにつれてロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路内に油が充填される。この状況において、仮に、コントローラ7が油圧回路の油の充填状態を鑑みずに、プリチャージ時間を一律の時間に設定してプリチャージを行うと、既に油が充填されている油圧回路に油を供給することになり、プリチャージ中にロックアップクラッチ4bが締結してしまうことになる。
【0054】
そこで、ステップS15では、コントローラ7は、ステップS14で取得した潤滑油圧およびATF油温と、図7に示すロックアップクラッチ4bのプリチャージ時間を算出するためのマップとに基づいて、ロックアップクラッチ4bのプリチャージ時間T1を算出する。当該マップは、コントローラ7の記憶装置に記憶されている。
【0055】
プリチャージ時間T1の設定について、図7を用いて例示をあげながら説明する。図7に示すマップには、所定の潤滑油圧および所定のATF油温のときに設定すべきロックアップクラッチ4bへのプリチャージ時間が格納される。すなわち、潤滑油圧およびATF油温が分かれば、設定すべきロックアップクラッチ4bへのプリチャージ時間を求めることができる。プリチャージ時間は、第1の時間tp1、第2の時間tp2、第3の時間tp3の順に長くなる。第1の時間tp1、第2の時間tp2、第3の時間tp3は、例えば0.1秒から0.2秒程度で設定される。なお、図7に示すプリチャージ時間は本実施形態を説明するための一例を示すものであり、設定されるプリチャージ時間が図7に表記の範囲に限定されるものではない。例えば、プリチャージ時間をより細かい刻みで設定したり、潤滑油圧およびATF油温を複数の温度領域に分けて領域毎にプリチャージ時間を設定したりするようにしてもよい。
【0056】
図7に示すように、例えば、コントローラ7が取得したATF油温がTx[℃]、潤滑油圧がPx[kPa](第1の潤滑油圧)であった場合、プリチャージ時間T1は第1の時間tp1に設定される。この場合では、第1の時間tp1の間プリチャージを行えば、ロックアップクラッチ4bが意図せず締結することなくプリチャージを行うことができる。
【0057】
また、例えば、ATF油温がTx[℃]であって変速機構4の潤滑油圧がPx[kPa]よりも低いPy[kPa](第2の潤滑油圧)であった場合、プリチャージ時間T1は、第1の時間tp1よりも長い第2の時間tp2に設定される。この場合では、第2の時間tp2の間プリチャージを行えば、ロックアップクラッチ4bが意図せず締結することなくプリチャージを行うことができる。
【0058】
このように、コントローラ7は、潤滑油圧が第1の潤滑油圧Pxのときのプリチャージ時間を、潤滑油圧が第1の潤滑油圧Pxよりも低い第2の潤滑油圧Pyのときのプリチャージ時間である第2の時間tp2秒よりも短い第1の時間tp1となるように、ロックアップ油圧制御弁3bを制御する。換言すれば、コントローラ7は、ロックアップクラッチ4bへのプリチャージ時間を、潤滑油圧が高くなるほどプリチャージ時間を短く設定する。本実施形態では、外気温が低くなるほど潤滑油圧が高くなるので、外気温が低いほどプリチャージ時間が短く設定されることになる。
【0059】
潤滑油圧を踏まえてプリチャージ時間を設定することは、潤滑油圧に起因して変化するロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路の油の充填状態を踏まえてプリチャージ時間を設定することを意味する。すなわち、変速機100は、ロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路の油の充填状態に応じて設定した時間の間プリチャージを行うため、プリチャージ中にロックアップクラッチ4bが意図せず締結してしまうことを防ぐことができる。
【0060】
また、図7に示すように、コントローラ7は、プリチャージ時間をATF油温も踏まえて設定する。すなわち、油温が高くなるほど低下する油の粘度も考慮してATF油温が高くなるほどプリチャージ時間T1を短く設定する。コントローラ7は、プリチャージ時間T1を設定すると、処理をステップS16に進める。
【0061】
ステップS16では、コントローラ7は、ロックアップ油圧制御弁3bを制御して、プリチャージを開始するとともに、タイマTのカウントを行う。タイマTは、プリチャージの経過時間をカウントする。そして、処理をステップS17に進める。
【0062】
ステップS17では、タイマTがプリチャージ時間T1以上であるかを判断する。すなわち、ステップS15で設定したプリチャージ時間T1が経過したかを判断する。タイマTがプリチャージ時間T1未満であれば、処理をステップS18に進める。タイマTがプリチャージ時間T1以上であれば処理をステップS19に進める。
【0063】
ステップS18では、コントローラ7は、プリチャージ時間T1の更新を以下の通り行う。
まず、コントローラ7は、ステップS14およびステップS15と同様に、潤滑油圧およびATF油温を取得し、図7のマップに当該潤滑油圧およびATF油温をあてはめてステップS18の時点での変速機100の状態に対応したプリチャージ時間T2を設定する。次に、プリチャージ時間T2とステップS15で設定したプリチャージ時間T1と比較し、プリチャージ時間T2がプリチャージ時間T1よりも短いならば、プリチャージ時間T2を新たなプリチャージ時間T1として更新して、処理をステップS17に進める。一方、プリチャージ時間T2がプリチャージ時間T1以上であるならば、ステップS15で設定したプリチャージ時間T1を維持して(プリチャージ時間T1は更新しないで)、処理をステップS17に進める。
【0064】
上記のステップS18を行う理由は以下の通りである。上記で説明した潤滑油圧の制御によって設定される潤滑油圧は、外気温、オイルパン油温To、タービン回転速度Nt、タービントルクTtが変動するのに応じて、更新される。潤滑油圧が更新されると、それに伴いトルクコンバータ4aの内圧も変動するため、ロックアップクラッチ4bの適切なプリチャージ時間も変動する。もし、変動した潤滑油圧に対応するプリチャージ時間がステップS15で設定したプリチャージ時間よりも短い場合だと、ステップS15で設定したプリチャージ時間でプリチャージを続けると、ロックアップクラッチ4bに過剰に油が供給されることになり、ロックアップクラッチ4bが締結してしまうおそれがある。そこで、ステップS18では、ステップS18の時点でのプリチャージ時間T2とステップS15で設定したプリチャージ時間T1とを比較し、潤滑油圧に対応するプリチャージ時間が短くなっているのであれば、プリチャージ時間を更新する。これにより、プリチャージ中に意図せずロックアップクラッチ4bが締結することを防ぐことができる。
【0065】
ステップS19では、コントローラ7は、ロックアップ油圧制御弁3bを制御して、プリチャージを終了する。このように、潤滑油圧に起因して変化するロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路の油の充填状態を踏まえてプリチャージ時間を設定してプリチャージを行うため、プリチャージ中の意図しないロックアップクラッチ4bの締結を防ぐことができる。すなわち、ロックアップクラッチ4bのプリチャージ制御を精度よく行うことができる。
【0066】
コントローラ7は、プリチャージを終了後、処理をステップS20に進める。ステップS20では、コントローラ7はロックアップ条件が成立したかを判断する。ロックアップ条件が成立したと判断する場合とは、例えば車速が所定車速(例えば10km/h)に達した場合である。ロックアップ条件が成立したと判断すれば、処理をステップS21に進めて、ロックアップクラッチ4bを締結する。プリチャージ終了後のロックアップクラッチ4bの締結制御は、プリチャージが終了した時点で所定の油圧まで締結油圧を低下させ、ロックアップクラッチ4bが所望のトルク伝達容量を有するまで、所定のランプ(上昇率)で油圧を高くすることで行われる。ロックアップ条件が成立していないと判断すれば、処理をステップS20に進めて、再度ロックアップ条件が成立したかを判断する。
【0067】
続いて、これまで説明した実施形態の作用効果について説明する。
【0068】
(1)本実施形態では、変速機100は、ロックアップクラッチ4bを有するトルクコンバータ4aを備えた変速機構4と、変速機構4に供給する油を吐出するオイルポンプ2と、オイルポンプ2から吐出される油を調圧してロックアップクラッチ4bに供給するロックアップ油圧制御弁3bと、オイルポンプ2から吐出される油を調圧して、変速機構4のうち、潤滑される部位に油を供給する潤滑油圧制御弁3aと、ロックアップ油圧制御弁3bを制御するコントローラ7と、を備える。また、コントローラ7は、ロックアップクラッチ4bがロックアップ直前の状態となるようロックアップクラッチ4bに油を供給するプリチャージを行う際、潤滑油圧制御弁3aから供給される油圧である潤滑油圧が第1の潤滑油圧Pxのときのプリチャージ時間が、潤滑油圧が第1の潤滑油圧Pxよりも低い第2の潤滑油圧Pyのときのプリチャージ時間よりも短くなるようロックアップ油圧制御弁3bを制御する。
【0069】
この構成によれば、潤滑油圧に起因して変化するロックアップクラッチ4bへ至る油圧回路の油の充填状態を踏まえてプリチャージ時間を設定するため、プリチャージ中に限らずロックアップクラッチ4bの締結制御中の意図しないロックアップクラッチ4bの締結を防ぐことができる。すなわち、ロックアップクラッチ4bの制御を精度よく行うことができる。
【0070】
(2)また、コントローラ7は、プリチャージ時間T1が経過する前に潤滑油圧が変動した場合には、プリチャージ時間T1を更新する。
【0071】
(3)また、コントローラ7は、プリチャージ時間T1を更新する際に、変動した潤滑油圧に対応するプリチャージ時間T2が、変動する前の潤滑油圧に対応するプリチャージ時間T1よりも短ければ、変動した潤滑油圧に対応するプリチャージ時間T2を新たなプリチャージ時間T1として更新する。
【0072】
これらの構成によれば、潤滑油圧の更新に応じて適切なプリチャージ時間を更新するため、意図しないロックアップクラッチ4bの締結をより防ぐことができる。
【0073】
(4)また、コントローラ7は、変速機構4の潤滑油圧が特定の潤滑油圧以上の場合には、ロックアップクラッチ4bの締結(ロックアップ)を禁止する。
【0074】
この構成によれば、ロックアップクラッチ4bを締結させるための差圧制御を正しく行うことが難しくなる状況では、ロックアップクラッチ4bの締結を許可しないため、意図しないロックアップクラッチ4bの締結を防ぐことができる。
【0075】
(5)また、コントローラ7は変速機構4の潤滑油圧が特定の潤滑油圧以上の場合であっても、ATF油温が特定の高油温(例えば110℃)を超える場合にはロックアップクラッチ4bの締結を許可する。
【0076】
この構成によれば、ATF油温が上昇する原因であるロックアップクラッチ4bの開放を禁止してロックアップクラッチ4bの締結を許可することで高温となっているATF油温が低下するため、耐熱性が低い部材を適切に保護することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
本願は、2019年12月6日付けで日本国特許庁に出願した特願2019-221652号に基づく優先権を主張し、その出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7