(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20240403BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240403BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
(21)【出願番号】P 2022047000
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】堤 建一
(72)【発明者】
【氏名】内田 達也
(72)【発明者】
【氏名】横内 和城
(72)【発明者】
【氏名】池尾 信行
(72)【発明者】
【氏名】伊木田 木の実
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/007492(WO,A1)
【文献】特開2000-133567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線でプローブを形成し、前記プローブで試料を走査して走査像を取得する荷電粒子線装置であって、
前記プローブで前記試料を走査するための光学系と、
前記プローブで前記試料を走査することによって前記試料で発生した信号を検出する検出器と、
前記光学系を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記プローブで前記試料を走査して得られた参照画像を取得し、前記参照画像と基準画像を比較してドリフト量を求め、前記ドリフト量に基づいて前記試料上における前記プローブの照射位置のずれを補正する補正処理と、
前記ドリフト量に基づいて前記補正処理を実行する頻度を設定する処理と、
を行
い、
前記走査像は、前記プローブで前記試料の観察領域を複数回走査して取得され、
前記制御部は、
1画素あたりの前記プローブの滞在時間を設定し、
前記補正処理を、前記プローブで前記観察領域を走査した後、次に前記プローブで前記観察領域を走査する前に行う、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記頻度を設定する処理、および前記補正処理を繰り返し行う、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1
または2において、
前記制御部は、前記頻度を設定する処理において、
前記ドリフト量が大きいほど、前記頻度を多く設定する、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子プローブで試料を走査して走査像を取得する荷電粒子線装置として、走査電子顕微鏡(SEM)や、走査透過電子顕微鏡(STEM)、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)、オージェ電子分光装置(Auger)などが知られている。
【0003】
このような荷電粒子線装置では、試料において電子プローブが照射された領域に発生する熱とその周辺の温度ムラなどによって、試料がドリフトする場合がある。また、光学系の温度変化などによって、電子プローブの照射位置がドリフトしてしまう場合がある。このように、時間とともに電子プローブと試料の相対的な位置が変動してしまうと、走査像を高い位置精度で取得することができない。そのため、10万倍以上の高い倍率で観察や分析が可能な荷電粒子線装置では、電子プローブの照射位置を補正する機能が必須となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、電子線の走査位置を補正できる電子プローブマイクロアナライザーが開示されている。特許文献1では、補正の基準となる基準画像とX線像(元素マップ)とともに取得された二次電子像を比較し、2つの像の間でずれがある場合には、そのずれを直すように電子線の走査位置を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子プローブの照射位置を補正する頻度は、一般的に、ユーザーが過去の経験などに基づいて設定する。しかしながら、分析を開始する前に試料のドリフトや光学系の安定性を正確に予見することはできないため、ユーザーが電子プローブの照射位置を補正する頻度を適切に設定することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
荷電粒子線でプローブを形成し、前記プローブで試料を走査して走査像を取得する荷電粒子線装置であって、
前記プローブで前記試料を走査するための光学系と、
前記プローブで前記試料を走査することによって前記試料で発生した信号を検出する検出器と、
前記光学系を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記プローブで前記試料を走査して得られた参照画像を取得し、前記参照画像と基準画像を比較してドリフト量を求め、前記ドリフト量に基づいて前記試料上における前記プローブの照射位置のずれを補正する補正処理と、
前記ドリフト量に基づいて前記補正処理を実行する頻度を設定する処理と、
を行い、
前記走査像は、前記プローブで前記試料の観察領域を複数回走査して取得され、
前記制御部は、
1画素あたりの前記プローブの滞在時間を設定し、
前記補正処理を、前記プローブで前記観察領域を走査した後、次に前記プローブで前記観察領域を走査する前に行う。
【0008】
このような荷電粒子線装置では、制御部がドリフト量に基づいて補正処理の頻度を設定するため、適切に補正処理の頻度を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るオージェ電子分光装置の構成を示す図。
【
図3】第1実施形態に係るオージェ電子分光装置の制御部の処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】第2実施形態に係るオージェ電子分光装置の制御部の処理の一例を示すフローチャート。
【
図5】第3実施形態に係るオージェ電子分光装置の制御部の処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 第1実施形態
1.1. オージェ電子分光装置
まず、第1実施形態に係るオージェ電子分光装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るオージェ電子分光装置100の構成を示す図である。
【0012】
オージェ電子分光装置100は、オージェ電子分光法による測定を行う。オージェ電子分光法とは、電子線等により励起されて試料から放出されるオージェ電子のエネルギーを測定することによって、元素分析を行う手法である。
【0013】
オージェ電子分光装置100は、
図1に示すように、光学系20と、試料ステージ30と、インプットレンズ40と、電子分光器50と、オージェ電子検出器60と、二次電子検出器70と、制御部80と、を含む。
【0014】
光学系20は、電子線でプローブを形成し、当該プローブで試料Sを走査する電子光学系である。光学系20は、電子源21と、集束レンズ22と、偏向器24と、走査偏向器25と、対物レンズ26と、を含む。
【0015】
電子源21は、電子線を放出する。電子源21は、例えば、陰極から放出された電子を陰極と陽極との間に印加された加速電圧によって加速させ、電子線を放出する電子銃である。
【0016】
集束レンズ22および対物レンズ26は、電子源21から放出された電子線を集束させて電子プローブを形成する。走査偏向器25は、集束レンズ22および対物レンズ26によって集束された電子線を二次元的に偏向させる。走査偏向器25で電子線を二次元的に偏向させることによって、電子プローブで試料Sを走査できる。偏向器24は、集束された電子線を二次元的に偏向させる。偏向器24は、例えば、走査像の視野を電磁的に移動させるイメージシフトに用いられる。
【0017】
試料ステージ30は、試料Sを保持している。試料ステージ30は、例えば試料Sを水平方向に移動させる水平方向移動機構、試料Sを高さ方向に移動させる高さ方向移動機構、および試料Sを傾斜させる傾斜機構を備えている。試料ステージ30によって、試料S
を位置決めすることができる。
【0018】
インプットレンズ40は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出されたオージェ電子を取り込んで、電子分光器50に導く。例えば、インプットレンズ40で電子を減速させることによってエネルギー分解能を可変にできる。
【0019】
電子分光器50は、オージェ電子を分光する。電子分光器50は、例えば、静電半球型アナライザーである。電子分光器50は、内半球電極と、外半球電極と、を有している。電子分光器50では、内半球電極と外半球電極との間に電圧を印加することで、印加した電圧に応じたエネルギー範囲のオージェ電子を取り出すことができる。オージェ電子検出器60は、電子分光器50で分光されたオージェ電子を検出する。
【0020】
オージェ電子検出器60で検出されたオージェ電子をエネルギーごとに計数することによってオージェスペクトルを得ることができる。また、電子プローブで試料Sを走査し、試料S上の各点でのオージェ電子の量を測定することによって、オージェ像を得ることができる。
【0021】
二次電子検出器70は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出された二次電子を検出する。電子プローブで試料Sを走査し、試料S上の各点での二次電子の量を測定することによって、二次電子像を得ることができる。
【0022】
なお、図示はしないが、オージェ電子分光装置100は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出された反射電子を検出する反射電子検出器を備えていてもよい。電子プローブで試料Sを走査して、試料S上の各点での反射電子の量を測定することによって、反射電子像を得ることができる。
【0023】
制御部80は、オージェ電子分光装置100の光学系20を制御する。制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサと、記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)と、を含む。制御部80では、プロセッサで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行う。
【0024】
図2は、オージェ電子分光装置100における電子プローブの走査を説明するための図である。
【0025】
オージェ電子分光装置100では、電子源21から放出された電子を集束レンズ22および対物レンズ26で集束して電子プローブを形成し、走査偏向器25で電子線を偏向させることによって電子プローブで試料Sを走査する。電子プローブで試料Sを走査し、試料S上の各点から放出されたオージェ電子を電子分光器50で分光し、オージェ電子検出器60で検出することによってオージェ像を取得できる。また、試料S上の各点から放出された二次電子を二次電子検出器70で検出することによって二次電子像を取得できる。
【0026】
オージェ電子分光装置100では、
図2に示すように、試料Sの観察領域S2をラスター走査する。例えば、電子プローブの走査は、
図2に示すように、X軸に沿って走査線Lを引き、走査線Lを引く位置をY軸に沿って移動させることを繰り返すことで行われる。例えば、256×256ピクセルの走査像を得るためには、256ラインの走査線Lを引く。オージェ電子分光装置100では、例えば、観察領域S2を複数回走査し、各画素における信号の強度を積算して、走査像を取得する。
【0027】
1.2. 動作
次に、オージェ電子分光装置100の動作について説明する。
図3は、第1実施形態に係るオージェ電子分光装置100の制御部80の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、オージェ電子分光装置100がオージェ像を取得するときの動作について説明する。
【0028】
オージェ電子分光装置100では、制御部80は、プローブで試料Sを走査して得られた参照画像を取得し、参照画像と基準画像を比較してドリフト量Dを求め、当該ドリフト量Dに基づいて試料S上におけるプローブの照射位置のずれを補正する補正処理と、ドリフト量に基づいて補正処理を実行する頻度を設定する処理S116と、を行う。補正処理は、
図3に示すように、参照画像を取得する処理S112、ドリフト量Dを求める処理S114、およびプローブの照射位置を補正する処理S118を含む。
【0029】
制御部80がオージェ像を取得する処理を実行する前に、ユーザーがオージェ像を取得するための光学系20の条件(加速電圧やプローブ電流)および電子分光器50の条件を設定する。ユーザーは制御部80の設定部(ユーザーインターフェイス等)を操作して、これらの条件を設定する。設定部におけるこれらの条件の設定が制御部80の処理に反映される。
【0030】
また、ユーザーが試料S上の観察領域S2を決定する。ユーザーは、例えば、オージェ電子分光装置100において試料Sの二次電子像を取得して試料Sを観察し、観察領域S2を決定する。
【0031】
ユーザーは、光学系20の条件、電子分光器50の条件、および観察領域S2を決定した後、オージェ電子分光装置100に対して、オージェ像の取得を開始する指示を行う。
【0032】
制御部80は、ユーザーがオージェ像の取得開始の指示を行ったか否かを判定する(S100)。制御部80は、開始ボタンに対する押下操作が行われた場合や、入力機器から開始指示が入力された場合に、ユーザーが開始指示を行ったと判定する。
【0033】
制御部80は、ユーザーが開始指示を行ったと判定した場合(S100のYes)、基準画像を取得する(S102)。
【0034】
基準画像は、ドリフト量Dを求める処理において基準となる画像である。制御部80は、試料S上の観察領域S2で撮影された二次電子像を取得し、基準画像とする。基準画像は、あらかじめ撮影された観察領域S2の像であってもよい。なお、基準画像は、反射電子像であってもよいし、オージェ像であってもよい。
【0035】
次に、制御部80は、補正処理を実行する頻度の初期値A0およびドリフト量Dの閾値Tを設定する(S104)。
【0036】
初期値A0は、プローブの走査を開始してから補正処理を実行するまでの走査線の数として設定される。すなわち、補正処理は、初期値A0として設定された数だけ走査線が引かれたタイミングで行われる。
【0037】
閾値Tは、許容されるドリフト量Dである。初期値A0および閾値Tは、例えば、あらかじめ設定された任意の値である。なお、初期値A0および閾値Tをユーザーが設定してもよい。
【0038】
次に、制御部80は、オージェ像を取得するためのプローブの走査を開始する(S106)。制御部80は、光学系20にプローブの走査を開始させる。
【0039】
プローブの走査が開始されると、制御部80は、試料S上に引かれる走査線の数のカウントを開始し(S107)、走査線が設定された数A(A=A0)だけ引かれたか否かを判定する(S108)。
【0040】
例えば、設定された初期値A0が64ラインである場合、制御部80は、プローブの走査を開始してから64ライン目の走査線が引かれたときに、走査線が設定された数Aだけ引かれたと判定する。
【0041】
制御部80は、走査線が設定された数Aだけ引かれたと判定した場合(S108のYes)、プローブの走査を停止する(S110)。すなわち、制御部80は、光学系20にプローブの走査を停止させる。これにより、オージェ像を取得するためのプローブの走査は中断される。
【0042】
次に、制御部80は、補正処理を開始する。制御部80は、まず、参照画像を取得する(S112)。制御部80は、光学系20に参照画像(二次電子像)を取得するためのプローブの走査を実行させ、二次電子検出器70から参照画像のデータを取得する。
【0043】
制御部80は、処理S102で取得した基準画像と処理S112で取得した参照画像を比較し、ドリフト量Dを求める(S114)。制御部80は、例えば、パターンマッチングにより基準画像と参照画像のずれの大きさとずれの方向を求める。このずれの大きさとずれの方向からドリフト量Dとドリフトの方向を求める。また、例えば、基準画像と参照画像をそれぞれフーリエ変換し、基準画像のフーリエ変換した結果と、参照画像をフーリエ変換した結果の相関関数を求めて、ドリフト量Dとドリフトの方向を求めてもよい。
【0044】
基準画像と参照画像のずれは、時間とともに電子線と試料の相対的な位置が変動すること(ドリフト)で生じる。基準画像と参照画像のずれは、例えば、温度変化や帯電などによる試料Sのドリフトや、光学系20の温度変化などによるプローブの照射位置のドリフトによって生じる。すなわち、ドリフト量Dは、光学系20と試料Sとの相対的な位置の変動量である。
【0045】
制御部80は、ドリフト量Dに基づいて、試料S上のプローブの照射位置のずれを補正する(S118)。制御部80は、ドリフト量Dおよびドリフトの方向に基づいて、ドリフトがキャンセルされるように光学系20を動作させる。例えば、照射位置の補正は、偏向器24によって電子線を偏向させることによって、プローブの照射位置を、ドリフト方向とは反対方向に、ドリフト量Dだけ移動させることで行われる。制御部80は、プローブの照射位置のずれを補正した後、補正処理を終了する。
【0046】
ここで、制御部80は、処理S118が行われる前に、処理S114で求めたドリフト量Dに基づいて、補正処理を実行する頻度を設定する(S116)。
【0047】
具体的には、制御部80は、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでの間に引かれる走査線の数Aを設定する。
【0048】
制御部80は、ドリフト量Dが大きいほど補正処理を実行する頻度を多く設定し、ドリフト量Dが小さいほど補正処理を実行する頻度を少なく設定する。すなわち、制御部80は、ドリフト量Dが大きいほど走査線の数Aを少なく設定し、ドリフト量Dが小さいほど走査線の数Aを多く設定する。頻度は、例えば、i(iは自然数)回目の補正処理を行ってからi+1回目の補正処理を行うまでの間隔として設定される。
【0049】
例えば、i回目の頻度を設定する処理における走査線の数Aiは、次式を用いて求めることができる。
【0050】
Ai=A0(i=1)
Ai=Ai-1×T/D(i≧2)
ただし、Ai-1は、i-1回目の設定処理S116で設定された走査線の数Aである。
【0051】
例えば、走査線の数Aが64ラインに設定されると、制御部80は、補正処理を実行した後、64ラインだけ走査を行ったタイミングで、次の補正処理を実行する。256×256ピクセルの画像を得るためには、256ラインの走査線を引くため、走査線の数Aが64ラインに設定された場合、観察領域S2を1回走査する間に、4回の補正が実行される。
【0052】
閾値Tは、ドリフト量Dの許容値を示す。例えば、オージェ像が、観察倍率10万倍、256×256ピクセルの画像であった場合に、画像サイズを120mm×120mmとすると、1ピクセルの大きさは、120mm÷105倍÷256pixel=4.7×10-6mm/pixelとなり、約5nm/pixelとなる。したがって、閾値Tが10nmに設定された場合、256×256ピクセルの画像を取得する間に、2ピクセル以上のドリフトを許容しない設定となる。
【0053】
例えば、前回設定された走査線の数Aが64ライン、ドリフト量Dが20nm、閾値Tが10nmの場合、走査線の数Aは、Ai=Ai-1×T/D=64×10/20=32となり、走査線の数Aは32ラインに設定される。
【0054】
また、例えば、前回設定された走査線の数Aが64ライン、ドリフト量Dが5nm、閾値Tが10nmの場合、走査線の数Aは、Ai=Ai-1×T/D=64×10/5=128となり、走査線の数Aは128ラインに設定される。
【0055】
なお、上記では、処理S116の後に、処理S118を行う場合について説明したが、処理S116と処理S118が並行して行われてもよいし、処理S118の後に処理S116が行われてもよい。
【0056】
補正処理が終了した後、制御部80は、オージェ像を取得するためのプローブの走査を再開する(S120)。制御部80は、走査偏向器25に、プローブの走査を開始させる。例えば、処理S110において、プローブの走査が64ライン目で停止された場合、65ライン目からプローブの走査を再開する。
【0057】
制御部80は、プローブの走査が再開されると、試料S上に引かれる走査線の数のカウントを開始する(S121)。
【0058】
制御部80は、オージェ像の取得を終了するか否かを判定する(S122)。制御部80は、例えば、あらかじめ設定された積算回数だけ観察領域S2をプローブで走査した場合に、オージェ像の取得を終了すると判定する。例えば、積算回数が10回に設定されている場合、制御部80は、観察領域S2が10回走査されたときに、オージェ像の取得を終了すると判定する。
【0059】
制御部80は、オージェ像の取得を終了しないと判定した場合(S122のNo)、処理S108に戻って、走査線が設定された数Aだけ引かれたか否かを判定する(S108)。このとき、処理S116において走査線の数Aが32ラインに設定された場合、制御
部80は、プローブの走査を再開してから32ライン目の走査線が引かれたときに、走査線が設定された数だけ引かれたと判定する。また、例えば、処理S116において走査線の数Aが128ラインに設定された場合、制御部80は、プローブの走査を再開してから128ライン目の走査線が引かれたときに、走査線が設定された数だけ引かれたと判定する。
【0060】
制御部80は、走査線が設定された数Aだけ引かれたと判定した場合(S108のYes)、プローブの走査を停止し(S110)、補正処理を開始する。制御部80は、参照画像を取得し(S112)、基準画像と参照画像を比較し、ドリフト量Dを求める(S114)。制御部80は、ドリフト量Dに基づいて走査線の数Aを設定し(S116)、ドリフト量Dに基づいて試料S上のプローブの照射位置のずれを補正する(S118)。補正処理を終了した後、制御部80は、プローブの走査を再開し(S120)、走査線の数のカウントを開始する(S121)。そして、制御部80は、オージェ像の取得を終了するか否かを判定する(S122)。
【0061】
このように、制御部80は、オージェ像の取得を終了すると判定されるまで、処理S108、処理S110、処理S112、処理S114、処理S116、処理S118、処理S120、処理S121、処理S122を繰り返す。このように、制御部80は、オージェ像を取得している間、補正処理の頻度の設定、および補正処理を繰り返す。
【0062】
制御部80は、オージェ像の取得を終了すると判定した場合(S122のYes)、処理を終了する。これにより、観察領域S2のオージェ像を取得できる。
【0063】
1.3. 効果
オージェ電子分光装置100では、制御部80は、ドリフト量Dに基づいて補正処理を実行する頻度を設定する。このように、オージェ電子分光装置100では、ドリフト量Dに基づいて補正処理の頻度が設定されるため、適切に補正処理の頻度を設定できる。
【0064】
また、オージェ電子分光装置100では、制御部80は、補正処理の頻度を設定する処理S116および補正処理(処理S112、処理S114、処理S118)を繰り返し行う。そのため、オージェ電子分光装置100では、オージェ像を取得するための分析の途中に頻度を変更できるため、例えば、分析の途中でドリフト量Dが大きく変動した場合であっても、適切な頻度で補正処理を実行できる。
【0065】
ここで、測定を開始する前に試料のドリフトや光学系の安定性などを正確に予見することはできない。そのため、測定の前にあらかじめ、補正処理の頻度を設定することは困難である。例えば、ドリフト量Dに対してプローブの照射位置を補正する頻度が少ないと、基準画像と参照画像との間のすれが大きくなり、2つの像の間のずれを求めることができなくなってしまう場合がある。また、ドリフト量Dに対してプローブの照射位置を補正する頻度が多いと、測定に時間がかかってしまう。
【0066】
オージェ電子分光装置100では、上述したように、制御部80が補正処理の頻度を設定する処理S116を行うため、上記のような問題が生じない。
【0067】
オージェ電子分光装置100では、制御部80は、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでに引かれる走査線の数Aを設定する。そのため、オージェ電子分光装置100では、適切に補正処理の頻度を設定できる。
【0068】
2. 第2実施形態
2.1. オージェ電子分光装置
次に、第2実施形態に係るオージェ電子分光装置について説明する。第2実施形態に係るオージェ電子分光装置の構成は、
図1に示すオージェ電子分光装置100の構成と同様であり、その説明を省略する。
【0069】
2.2. 動作
次に、第2実施形態に係るオージェ電子分光装置100の動作について説明する。以下では、上述した第1実施形態に係るオージェ電子分光装置100の動作の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0070】
上述した第1実施形態では、制御部80は、頻度として、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでに引かれる走査線の数Aを設定した。これに対して、第2実施形態では、制御部80は、頻度として、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでの時間を設定する。
【0071】
図4は、第2実施形態に係るオージェ電子分光装置100の制御部80の処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
制御部80は、ユーザーがオージェ像の取得開始の指示を行ったか否かを判定する(S200)。制御部80は、開始指示を行ったと判定した場合(S200のYes)、基準画像を取得する(S202)。
【0073】
次に、制御部80は、補正処理を行う頻度の初期値B0およびドリフト量の閾値Tを設定する(S204)。初期値B0および閾値Tは、例えば、あらかじめ設定された任意の値である。なお、初期値B0および閾値Tをユーザーが設定してもよい。
【0074】
初期値B
0は、プローブの走査を開始した後、1回目の補正処理が行われるまでの時間として設定される。すなわち、補正処理は、プローブの走査が開始されてから初期値B
0だけ時間が経過したタイミングで行われる。閾値Tは、
図3に示す処理S104と同様に設定される。
【0075】
次に、制御部80は、オージェ像を取得するためのプローブの走査を開始する(S206)。プローブの走査が開始されると、制御部80は、時間の計測を開始し(S207)、設定時間B(B=B0)経過したか否かを判定する(S208)。
【0076】
例えば、初期値B0が30秒である場合、制御部80は、プローブの走査を開始してから30秒経過したときに、設定時間B経過したと判定する。
【0077】
制御部80は、設定時間B経過したと判定した場合(S208のYes)、プローブの走査を停止する(S210)。
【0078】
次に、制御部80は、補正処理を開始する。制御部80は、まず、参照画像を取得し(S212)、基準画像と参照画像を比較してドリフト量Dを求める(S214)。制御部80は、ドリフト量Dに基づいて、試料S上のプローブの照射位置のずれを補正する(S218)。これにより、補正処理を行うことができる。
【0079】
制御部80は、処理S218が行われる前に、処理S214で求めたドリフト量Dに基づいて補正処理を実行する頻度を設定する(S216)。
【0080】
具体的には、制御部80は、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでの時間Bを設定する。
【0081】
制御部80は、ドリフト量Dが大きいほど補正処理を実行する頻度を多く設定し、ドリフト量Dが小さいほど補正処理を実行する頻度を少なく設定する。すなわち、制御部80は、ドリフト量Dが大きいほど時間Bを短く設定し、ドリフト量Dが小さいほど時間Bを長く設定する。
【0082】
例えば、i回目の頻度を設定する処理における時間Biは、次式を用いて求めることができる。
【0083】
Bi=B0(i=1)
Bi=Bi-1×T/D(i≧2)
ただし、Bi-1は、i-1回目の設定処理S216で設定された時間Bである。
【0084】
例えば、前回設定された時間Bが30秒、ドリフト量Dが20nm、閾値Tが10nmの場合、時間Bは、Bi=Bi-1×T/D=30×10/20=15となり、時間Bは15秒に設定される。
【0085】
また、例えば、前回設定された時間Bが30秒、ドリフト量Dが5nm、閾値Tが10nmの場合、時間Bは、Bi=Bi-1×T/D=30×10/5=60となり、時間Bは60秒に設定される。
【0086】
なお、上記では、処理S216の後に、処理S218を行う場合について説明したが、処理S216と処理S218が並行して行われてもよいし、処理S218の後に処理S216が行われてもよい。
【0087】
補正処理が終了した後、制御部80は、オージェ像を取得するためのプローブの走査を再開し(S220)、時間の計測を開始する(S221)。次に、制御部80は、オージェ像の取得を終了するか否かを判定する(S222)。
【0088】
制御部80は、オージェ像の取得を終了しないと判定した場合(S222のNo)、処理S208に戻って、設定時間B経過したか否かを判定する(S208)。このとき、処理S216において設定時間Bが15秒に設定された場合、制御部80は、プローブの走査を再開してから15秒後に、時間B経過したと判定する。また、例えば、処理S216において時間Bが60秒に設定された場合、制御部80は、プローブの走査を再開してから60秒後に、時間B経過したと判定する。
【0089】
制御部80は、時間B経過したと判定した場合(S208のYes)、プローブの走査を停止し(S210)、補正処理を開始する。制御部80は、参照画像を取得し(S212)、基準画像と参照画像を比較し、ドリフト量Dを求める(S214)。制御部80は、ドリフト量Dに基づいて設定時間Bを設定し(S216)、ドリフト量Dに基づいて試料S上のプローブの照射位置のずれを補正する(S218)。補正処理を終了した後、制御部80は、プローブの走査を再開し(S220)、時間Bの計測を開始する(S221)。そして、制御部80は、オージェ像の取得を終了するか否かを判定する(S222)。
【0090】
このように、制御部80は、オージェ像の取得を終了すると判定されるまで、処理S208、処理S210、処理S212、処理S214、処理S216、処理S218、処理S220、処理S221、処理S222を繰り返す。
【0091】
制御部80は、オージェ像の取得を終了すると判定した場合(S222のYes)、処
理を終了する。これにより、観察領域S2のオージェ像を取得できる。
【0092】
2.3. 効果
第2実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、制御部80は、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでの時間Bを設定する。そのため、第2実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、適切に補正処理の頻度を設定できる。
【0093】
第2実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、上述した第1実施形態に係るオージェ電子分光装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
3. 第3実施形態
3.1. オージェ電子分光装置
次に、第3実施形態に係るオージェ電子分光装置について説明する。第3実施形態に係るオージェ電子分光装置の構成は、
図1に示すオージェ電子分光装置100の構成と同様であり、その説明を省略する。
【0095】
3.2. 動作
次に、第3実施形態に係るオージェ電子分光装置100の動作について説明する。以下では、上述した第1実施形態に係るオージェ電子分光装置100の動作の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0096】
上述した第1実施形態では、制御部80は、頻度として、補正処理が終了した後、次の補正処理が行われるまでに引かれる走査線の数Aを設定した。これに対して、第3実施形態では、制御部80は、1画素あたりのプローブの滞在時間Cを設定し、補正処理を、プローブで観察領域S2を走査した後、次にプローブで観察領域S2を走査する前に行う。例えば、制御部80は、観察領域S2の全体を走査するごとに補正処理を行い、滞在時間Cを変更することで、補正処理の頻度を変更する。
【0097】
図5は、第3実施形態に係るオージェ電子分光装置100の制御部80の処理の一例を示すフローチャートである。
【0098】
制御部80は、ユーザーがオージェ像の取得開始の指示を行ったか否かを判定する(S300)。制御部80は、開始指示を行ったと判定した場合(S300のYes)、基準画像を取得する(S302)。
【0099】
次に、制御部80は、補正処理を行う頻度の初期値C0およびドリフト量の閾値Tを設定する(S304)。初期値C0および閾値Tは、例えば、あらかじめ設定された任意の値である。なお、初期値C0および閾値Tをユーザーが設定してもよい。
【0100】
初期値C
0は、1画素あたりのプローブの滞在時間Cとして設定される。ここで、第3実施形態では、補正処理は、観察領域S2を1回走査するごとに行われ、補正処理の頻度がプローブの滞在時間Cとして設定される。プローブの滞在時間Cを変更することで、走査速度が変更され、観察領域S2を走査する走査時間を変更できる。したがって、プローブの滞在時間Cを設定することで、補正処理の頻度を設定できる。閾値Tは、
図3に示す処理S104と同様に設定される。
【0101】
次に、制御部80は、オージェ像を取得するためのプローブの走査を開始する(S306)。制御部80は、走査偏向器25に、1画素あたりの滞在時間が、設定された初期値C0となるようにプローブで観察領域S2を走査させる。これにより、観察領域S2の走査が開始される。
【0102】
制御部80は、観察領域S2の全体が走査されたか否かを判定する(S308)。制御部80は、観察領域S2の全体が走査されたと判定した場合(S308のYes)、プローブの走査を停止する(S310)。
【0103】
例えば、オージェ像が256×256ピクセルの画像であり、初期値C0が256-2秒の場合、観察領域S2の走査時間は、256×256×256-2=1[秒]となる。
【0104】
次に、制御部80は、補正処理を開始する。制御部80は、まず、参照画像を取得し(S312)、基準画像と参照画像を比較してドリフト量Dを求める(S314)。制御部80は、ドリフト量Dに基づいて、試料S上のプローブの照射位置のずれを補正する(S318)。これにより、補正処理を行うことができる。
【0105】
制御部80は、処理S318が行われる前に、処理S314で求めたドリフト量Dに基づいて、補正処理を実行する頻度を設定する(S316)。
【0106】
具体的には、制御部80は、1画素あたりのプローブの滞在時間Cを設定する。
【0107】
制御部80は、ドリフト量Dが大きいほど補正処理を実行する頻度を多く設定し、ドリフト量Dが小さいほど補正処理を実行する頻度を少なく設定する。すなわち、制御部80は、ドリフト量Dが大きいほど滞在時間Cを短く設定し、ドリフト量Dが小さいほど滞在時間Cを長く設定する。
【0108】
例えば、i回目の頻度を設定する処理における滞在時間Ciは、次式を用いて求めることができる。
【0109】
Ci=C0(i=1)
Ci=Ci-1×T/D(i≧2)
ただし、Ci-1は、i-1回目の設定処理S316で設定された滞在時間Cである。
【0110】
例えば、前回設定された滞在時間Cが256-2秒、ドリフト量Dが20nm、閾値Tが10nmの場合、滞在時間Cは、Ci=Ci-1×T/D=256-2×10/20に設定され、観察領域S2の走査時間は、256×256×Ci=0.5[秒]となる。すなわち、補正処理は、0.5秒後に行われる。
【0111】
また、例えば、前回設定された滞在時間Cが256-2秒、ドリフト量Dが5nm、閾値Tが10nmの場合、滞在時間Cは、Ci=Ci-1×T/D=256-2×10/5に設定され、観察領域S2の走査時間は、256×256×Ci=2[秒]となる。すなわち、補正処理は、2秒後に行われる。
【0112】
なお、上記では、処理S316の後に、処理S318を行う場合について説明したが、処理S316と処理S318が並行して行われてもよいし、処理S318の後に処理S316が行われてもよい。
【0113】
次に、制御部80は、オージェ像を取得するためのプローブの走査を再開する(S320)。制御部80は、光学系20にオージェ像を取得するためのプローブの走査を開始させる。制御部80は、走査偏向器25に、1画素あたりの滞在時間が、設定された滞在時間Cとなるように電子線を偏向させる。
【0114】
次に、制御部80は、オージェ像の取得を終了するか否かを判定する(S322)。
【0115】
制御部80は、オージェ像の取得を終了しないと判定した場合(S322のNo)、処理S308に戻って、観察領域S2の全体が走査されたか否かを判定する(S308)。制御部80は、観察領域S2の全体が走査されたと判定した場合(S308のYes)、プローブの走査を停止し(S310)、補正処理を開始する。制御部80は、参照画像を取得し(S312)、基準画像と参照画像を比較してドリフト量Dを求める(S314)。制御部80は、ドリフト量Dに基づいて滞在時間Cを設定し(S316)、ドリフト量Dに基づいて試料S上のプローブの照射位置のずれを補正する(S318)。
【0116】
補正処理を終了した後、制御部80は、プローブの走査を再開し(S320)、オージェ像の取得を終了するか否かを判定する(S322)。
【0117】
このように、制御部80は、オージェ像の取得を終了すると判定されるまで、処理S308、処理S310、処理S312、処理S314、処理S316、処理S318、処理S320、処理S322を繰り返す。
【0118】
制御部80は、オージェ像の取得を終了すると判定した場合(S322のYes)、処理を終了する。これにより、観察領域S2のオージェ像を取得できる。
【0119】
3.3. 効果
第3実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、走査像は、プローブで観察領域S2を複数回走査して取得され、制御部80は、1画素あたりのプローブの滞在時間Cを設定し、補正処理をプローブで観察領域S2を走査した後、次にプローブで観察領域S2を走査する前に行う。このように第3実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、ドリフト量Dに応じて滞在時間Cを設定するため、適切な走査速度で走査像を取得できる。
【0120】
また、第3実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、補正処理をプローブで観察領域S2を走査した後、次にプローブで観察領域S2を走査する前に行われる。すなわち、観察領域S2を走査している途中に、プローブの走査が中断しない。そのため、より良好な観察領域S2の走査像を得ることができる。
【0121】
例えば、観察領域S2を走査している途中でプローブの走査を中断した場合、プローブの走査の中断の前後で位置ずれが生じてしまい、良好な走査像が得られない場合がある。
【0122】
第3実施形態に係るオージェ電子分光装置100では、上述した第1実施形態に係るオージェ電子分光装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0123】
3.4. 変形例
3.4.1. 第1変形例
上述した第3実施形態では、オージェ像を取得するためのプローブの走査を停止した後、制御部80は、光学系20に観察領域S2をプローブで走査させて、参照画像(二次電子像)を取得した。これに対して、制御部80は、参照画像を、オージェ像と同時に取得してもよい。
【0124】
オージェ電子分光装置100では、
図1に示すように、オージェ電子を検出するためのオージェ電子検出器60と二次電子検出器70の両方を備えているため、オージェ電子と二次電子を同時に検出できる。したがって、オージェ像を取得するためのプローブの走査において、オージェ電子検出器60でオージェ電子を検出し、二次電子検出器70で二次電子を検出することによって、オージェ像と参照画像を同時に取得できる。
【0125】
3.4.2. 第2変形例
上述した第3実施形態では、
図5に示すように、観察領域S2を1回走査するごとに頻度を設定する処理および補正処理を行ったが、例えば、頻度を設定する処理および補正処理を、観察領域S2をN回(Nは2以上の整数)走査するごとに行ってもよい。例えば、N=3の場合、観察領域S2を3回走査した後、4回目の走査を行う前に、頻度を設定する処理および補正処理を行う。
【0126】
4. その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0127】
例えば、上述した第1~第3実施形態では、本発明に係る荷電粒子線装置が、オージェ電子分光装置の場合について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線やイオンビームなどの荷電粒子線でプローブを形成し、当該プローブで試料を走査して走査像を取得する装置であればよい。また、プローブで試料を走査して試料で発生した信号は、二次電子や、反射電子、オージェ電子などの電子、特性X線などのX線、カソードルミネッセンスなどの光であってもよい。
【0128】
本発明に係る荷電粒子線装置は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)、集束イオンビーム装置(FIB)であってもよい。
【0129】
また、例えば、上述した第1~第3実施形態では、オージェ像を取得する場合について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、オージェ像以外の様々な走査像を取得してもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、EDS(energy dispersive X-ray spectroscopy)で元素マップを取得してもよいし、WDS(wavelength-dispersive X-ray spectroscopy)で元素マップを取得してもよいし、EELS(electron energy-loss spectroscopy)で元素マップを取得してもよい。
【0130】
また、例えば、上述した第1~第3実施形態では、基準画像および参照画像として二次電子像を用いる場合について説明したが、基準画像および参照画像は、二次電子像に限定されず、反射電子像や、オージェ像、EDSによる元素マップ、EELSによる元素マップなどであってもよい。
【0131】
また、例えば、上述した第1~第3実施形態では、オージェ像を取得する際の、すなわち、面分析を行う際の、補正処理の頻度を設定する場合について説明したが、線分析や点分析を行う際の、補正処理の頻度を設定する場合にも適用可能である。
【0132】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0133】
20…光学系、21…電子源、22…集束レンズ、24…偏向器、25…走査偏向器、26…対物レンズ、30…試料ステージ、40…インプットレンズ、50…電子分光器、6
0…オージェ電子検出器、70…二次電子検出器、80…制御部、100…オージェ電子分光装置