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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】移植片対宿主病を処置し予防する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240403BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P37/06
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022095164
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2021067193の分割
【原出願日】2014-10-24
(65)【公開番号】P2022133302
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】61/895,981
(32)【優先日】2013-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/973,176
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/910,945
(32)【優先日】2013-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/973,173
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515255733
【氏名又は名称】ファーマサイクリックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミクロス,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】バード,ジョン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥボフスキー,ジェイソン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ムスサミー,ナタラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,エイミー,ジョー
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特許第7090396(JP,B2)
【文献】特表2010-504324(JP,A)
【文献】国際公開第2013/059738(WO,A1)
【文献】BRUCE D. CHESON. et al.,Journal of Clinical Oncology,2012年08月10日,Vol.30, No.23,pp.2820-2822
【文献】JENNIFER A. WOYACH. et al.,BLOOD,2012年08月09日,Vol.120, No.6,pp.1175-1184
【文献】MARTIN F. M. DE ROOIJ. et al.,BLOOD,2012年03月15日,Vol.119, No.11,pp.2590-2594
【文献】SABINE PONADER. et al.,BLOOD,2012年02月02日,Vol.119, No.5,pp.1182-1189
【文献】ERIC S WINER. et al.,Expert Opin. Investig. Drugs,2012年03月,Vol.21, Np.3,pp.355(1)-361(7)
【文献】SARAH E. M. et al.,BLOOD,2011年06月09日,Vol.117, No.23,pp.6287-6296
【文献】JENNIFER R BROWN. et al.,Curr Hematol Malig Rep,2013年03月,Vol.8, No.1,pp.1-9
【文献】LEE A. HONIGBERG. et al.,PNAS,2010年06月20日,Vol.107, No.29,pp.13075-13080
【文献】MARINA CETKOVIC-CVRLJE et al.,British Journal of Haematology,2004年06月29日,Vol.126,pp.821-827
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイド性の慢性移植片対宿主病(GVHD)または難治性の慢性GVHDを処置するための、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オン(イブルチニブ)を含む医薬組成物であって、前記処置は、慢性GVHDを有する患者に治療上有効な量のイブルチニブを投与することによって患者の慢性GVHDを処置することを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物は、耐ステロイド性の慢性GVHDを処置するためである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、難治GVHDを処置するためである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記イブルチニブの投与後、前記患者は部分応答(PR)を達成し、前記PRは、どこにも進行の証拠が無く、かつ補足全身治療を必要としない、前記患者の1つの関連する臓器における客観的な反応である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記イブルチニブの投与後、前記患者は完全寛解(CR)を達成し、前記CRはGVHDに起因する症状の完全な回復である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記イブルチニブの投与後、前記GVHDの重症度が減少される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2013年10月25日に出願された米国仮特許出願第61/895,981号、2013年12月2日に出願された米国仮特許出願第61/910,945号、2014年3月31日に出願された米国仮特許出願第61/973,173号、及び2014年3月31に出願された米国仮特許出願第61/973,176号の優先権の利益を主張し、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、同種幹細胞移植(SCT)後の最も一般的な長期的合併症であり、最初の100日を越えて生存する患者の30-70%に影響する。cGVHDとその関連する免疫欠乏は、同種SCT生存者の非再発死亡率(NRM)の主要原因であると確認されている。健康な兄弟と比較して、cGVHDであるSCT生存者は重篤あるいは生命に危険のある健康状態になる可能性が4.7倍であり、活性型のcGVHDである患者は、cGVHDの病歴のない同種SCT生存者よりも有害な健康状態、精神的健康、機能障害、活動制限及び疼痛がより多く報告される可能性がある。いかなる臓器系も影響される場合があり、さらなる病的状態は、症状を処置するために必要なコルチコステロイド及びカルシニューリン阻害剤への長期的な曝露によって頻繁にもたらされる。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、ITK又はBTK阻害剤)の投与を含む、細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する、あるいはGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、ITK又はBTK阻害剤)の投与を含む、細胞移植を必要とする患者のGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は式(A)の化合物である。いくつかの実施形態では、治療上有効な量の以下の構造を有する式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩の投与を含む、細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する、あるいはGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書に開示され:
【0004】
【化1】
【0005】
式中:
AはNであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;
とRは独立してHであり;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換された又は非置換型のアルキル、随意に置換された又は非置換型のシクロアルキル、随意に置換された又は非置換型のアルケニル、随意に置換された又は非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-、-NH-、-NR-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-S(=O)NH-、-NHS(=O)-、-S(=O)NR-、-NRS(=O)-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル-、アリ-ル-、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のアルケニル、置換された又は非置換型のアルキニル、置換された又は非置換型のアリ-ル、置換された又は非置換型のヘテロアリ-ル、置換された又は非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、XおよびLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0006】
【化2】
【0007】
であり、ここで、
、R及びRは、H、ハロゲン、CN、OH、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のヘテロアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のヘテロシクロアルキル、置換された又は非置換型のアリール、あるいは置換された又は非置換型のヘテロアリールの中から独立して選択され;
各々のRは、H、置換されたまたは非置換型の低級アルキルおよび置換されたまたは非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換された又は非置換型の低級アルキルあるいは置換された又は非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hあるいは置換された又は非置換型のアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成する。いくつかの実施形態では、窒素含有複素環はピペリジン基である。いくつかの実施形態では、Gは、
【0008】
【化3】
【0009】
である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は再発した又は難治性の血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性あるいは難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性あるいは難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性あるいは難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きいCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けている。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチン、エベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ(FCR)である。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブ(OFAR)である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)の量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに有効な移植片対白血病(GVL)反応を維持すると同時にGVHDを予防する又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは、強皮症様の(sclerodermatous)GVHD、耐ステロイド性のGVHD、耐シクロスポリン性のGVHD、難治性のGVHD、口腔GVHD、慢性口腔GVHD、網状の口腔GVHD、びらん性のGVHDあるいは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者はGVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は経口で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は他の予防薬との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は1つ以上の補足治療薬との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、補足治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、治療薬はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、患者はドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けたあるいは受ける。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、患者は2つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後、1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後、DLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後、DLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後、DLIに続いて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)はイブルチニブである。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者に同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞、並びに治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、ITK又はBTK阻害剤)を投与する工程を含む、骨髄介在性疾患の緩和のために患者を処置する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、患者に同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞、並びに治療上有効な量の式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩を投与する工程を含み、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置する方法が本明細書に開示され、式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩が同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞に先立って、同時に、あるいは後に続いて投与され:
【0011】
【化4】
【0012】
式中:
AはNであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;
とRは独立してHであり;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換された又は非置換型のアルキル、随意に置換された又は非置換型のシクロアルキル、随意に置換された又は非置換型のアルケニル、随意に置換された又は非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-、-NH-、-NR-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-S(=O)NH-、-NHS(=O)-、-S(=O)NR-、-NRS(=O)-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル-、アリ-ル-、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のアルケニル、置換された又は非置換型のアルキニル、置換された又は非置換型のアリ-ル、置換された又は非置換型のヘテロアリ-ル、置換された又は非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、XおよびLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0013】
【化5】
【0014】
であり、ここで、
、R及びRは、H、ハロゲン、CN、OH、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のヘテロアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のヘテロシクロアルキル、置換された又は非置換型のアリール、あるいは置換された又は非置換型のヘテロアリールの中から独立して選択され;
各々のRは、H、置換された又は非置換型の低級アルキル及び置換された又は非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換された又は非置換型の低級アルキルあるいは置換された又は非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hあるいは置換された又は非置換型のアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成する。いくつかの実施形態では、窒素含有複素環はピペリジン基である。いくつかの実施形態では、Gは、
【0015】
【化6】
【0016】
である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は再発性の又は難治性の血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きいCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けている。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ(FCR)である。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブ(OFAR)である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)の量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに効果的な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを防ぐ又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は、GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄又は造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄又は造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄又は造血幹細胞の移植の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は経口で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は補足治療薬との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、補足治療薬はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、患者はドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けたあるいは受ける。いくつかの実施形態では、患者は2つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けたあるいは受ける。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄又は造血幹細胞の移植に続いて1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞移植に続いてDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いてDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いてDLIの後に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)はイブルチニブである。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療上有効な量のイブルチニブ(1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オン)の投与を含む、細胞移植を必要とする患者のGVHD発生の重症度を低下させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は再発性の又は難治性の血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きいCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けている。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブである(FCR)。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブである(OFAR)。いくつかの実施形態では、イブルチニブの量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに効果的な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを防ぐ又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は、GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄又は造血幹細胞の移植を受けたあるいは受ける。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄又は造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄又は造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄又は造血幹細胞の移植の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、イブルチニブは経口で投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは他の予防薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは1つ以上の補足治療薬との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、補足治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、治療薬はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、患者はドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けたあるいは受ける。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、患者は2つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続く1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を処理される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄あるいは造血幹細胞移植に続くDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに続いて投与される。
【0018】
<参照による組み込み>
個々の出版物、特許あるいは特許出願がそれぞれ参照によって組込まれるために具体的に個々に示されたように、本明細書で言及される全ての出版物、特許、および特許出願は、同じ程度の参照によって本明細書に組込まれる。
【0019】
発明の新規の特徴は、添付の請求項で詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】同種移植の後にcGVHDの総体的症状を改善するイブルチニブを例証する。C57BL/6マウスは、850cGyの致死照射の後にLP/J骨髄を移植された。移植後25日目のマウスは、イブルチニブ、ビヒクル又はシクロスポリン群に無作為に割り当てられた。移植後36日目で脱毛、強皮症及び繊維症の病変を含むcGVHDの外見的兆候を示す画像を示す。ビヒクル又はシクロスポリンの群と比較して、イブルチニブ処置群は、cGVHDの進行の外見的兆候をほとんど示さなかった。
図1B】同種移植の後にcGVHDの総体的症状を改善するイブルチニブを例証する。C57BL/6マウスは、850cGyの致死照射の後にLP/J骨髄を移植された。移植後25日目のマウスは、イブルチニブ、ビヒクル又はシクロスポリン群に無作為に割り当てられた。体重、姿勢、毛の状態、皮膚状態及び運動性を組み込むCookeらのものを改良した身体評価システムを用いたcGVHDマウス群の分析を示す。評価は移植後36日目に実施された。
図1C】同種移植の後にcGVHDの総体的症状を改善するイブルチニブを例証する。C57BL/6マウスは、850cGyの致死照射の後にLP/J骨髄を移植された。移植後25日目のマウスは、イブルチニブ、ビヒクル又はシクロスポリン群に無作為に割り当てられた。LP/J→C57BL/6のcGVHDの評価を示す。各カテゴリー:毛の状態、皮膚状態、体重、姿勢、運動性及び生命力は、個々に採点され、総合的なcGVHDの状態の評価を得るために合計した。評価は処置コホートの情報を持っていない一貫して公平な観察者によって得られる。
図1D】同種移植の後にcGVHDの総体的症状を改善するイブルチニブを例証する。C57BL/6マウスは、850cGyの致死照射の後にLP/J骨髄を移植された。移植後25日目のマウスは、イブルチニブ、ビヒクル又はシクロスポリン群に無作為に割り当てられた。HSCT後39日目のcGVHDマウス群の画像を提供する。
図1E】同種移植の後にcGVHDの総体的症状を改善するイブルチニブを例証する。C57BL/6マウスは、850cGyの致死照射の後にLP/J骨髄を移植された。移植後25日目のマウスは、イブルチニブ、ビヒクル又はシクロスポリン群に無作為に割り当てられた。cGVHDと一致する、皮膚線維症、表皮過形成、血清細胞痂皮(serocellular crusting)、びらん、及びリンパ組織球性浸潤の程度を示す、強皮症の皮膚病変のH&Eで染色された皮膚標本の画像を提供する。
図2】Tregはイブルチニブによって阻害されないことを例証する。パネルAは、9週間イブルチニブ(25mg/kg/日)又はビヒクルで処置されたC57BL/6マウスのFoxP3+CD4+細胞のプロットを提供する。FoxP3+CD4+細胞の割合は末梢血のフローサイトメトリーによって分析された。スチューデントt検定は、2つの群間に有意差がないことを示す。パネルBは、様々なレスポンダー:サプレッサーの比率のCD8T細胞分裂インデックス(division index)のプロットを提供する。精製されたCD4+CD25hiCD127dim CD49d-FoxP3+Tregは、1μMのイブルチニブ又はビヒクルで前処理され、図示した比率でCFSE標識自家CD8+キラー(responder)細胞と混合された。抗CD3/CD28/CD2刺激ビーズ(stimulation beads)が添加され、刺激は6日後にCFSE希釈計算分裂インデックスによって評価された。負の対照のウェルは刺激ビーズを含んでいなかった。n=7;エラーバー:s.e.m。
図3】Th2免疫はイブルチニブによって阻害されたことを例証する。パネルAは、イブルチニブで前処理され、抗CD3/抗CD28で刺激されて得られた、IL4(オープンバー n=6)及びIFNγ(クローズバー n=9)CD4+細胞の標準化された細胞内染色分析のプロットを提供する。エラーバー=s.e.m。パネルBは、飲水を介してイブルチニブ(25mg/kg/日)(n=12)あるいはビヒクル(n=13)の7か月連続の投与後に8か月齢のC57BL/6 EμTCL1マウスの血漿IgG1(Th2)及びIgG2c(Th1)のサブアイソタイプ分析のプロットを提供する。
図4】Th17免疫はイブルチニブによって阻害されたことを例証する。Th17細胞は、CXCR3-CD4+CCL6+単離を用いて、新たに単離された健康なドナーPBMCから濃縮された。濃縮後の細胞が薬剤の洗い流しに先立って30分間イブルチニブ又はビヒクルで処置された。細胞は、GOLGISTOPタンパク質輸送阻害剤と共に12時間抗CD3及び抗CD28で刺激された。生きているCD4+T細胞の合計の割合としてIL17産生細胞が定量され、最終割合がDMSO群で標準化された。n=3;エラーバー:s.e.m。
図5】イブルチニブがcGVHDの自己免疫総体的症状及び進行を阻害したことを例証する。パネルAは、体重、姿勢、生命力、運動性、毛及び皮膚を含むcGVHDの外部測定基準(external metrics)の毎週の盲検分析のプロットを提供する。すべてのcGVHD評価は、処置の開始時点(25日目)での個々の評価のために校正された。パネルBは、cGVHDの無増悪生存率のKaplan Meierプロットを提供する。進行は25日目のcGVHD評価において、>2点の増加として定義される。=p<0.01、エラーバー=s.e.m。
図6A】イブルチニブ治療が、cGVHDのT細胞依存モデルの内臓の自己免疫の浸潤と戦っていることを例証する。HSCT後125日で屠殺されたマウスからのH&E、B220、あるいはCD3で染色された肺及び腎臓の組織の代表的な20X画像を示す。画像は、動物コホートを知らされていなかった熟練の獣医病理学者によって得られた。
図6B】イブルチニブ治療が、cGVHDのT細胞依存モデルの内臓の自己免疫の浸潤と戦っていることを例証する。cGVHDコホートから得られたH&Eで染色された肺組織の盲検の病理学的分析を示す。リンパ組織球性浸潤は各動物の0-4の段階で類別された。
図6C】イブルチニブ治療が、cGVHDのT細胞依存モデルの内臓の自己免疫の浸潤と戦っていることを例証する。cGVHDコホートから得られたH&Eで染色された肝臓組織の盲検の病理学的分析を示す。肝門の肝炎及び血管炎は各動物の0-4の段階で類別された。
図6D】イブルチニブ治療が、cGVHDのT細胞依存モデルの内臓の自己免疫の浸潤と戦っていることを例証する。継続的なイブルチニブ治療からの持続した利益を決定することを目標とした別個の実験におけるcGVHDの無増悪生存率のKaplan-Meierプロットを示す。実験の間に、イブルチニブは、イブルチニブ(25日目から60日目)コホートの動物から60日目で休薬された。**P<0.001。
図7】イブルチニブが、活性型のcGVHDである患者からのT細胞及びB細胞の活性化を制限することを例証する。主なCD4+T細胞は活性型のcGVHDである患者から単離され、1μMのイブルチニブ(あるいはDMSO)で前処理され、抗CD3を用いて6時間刺激された。パネルAは、各患者のCD69+CD4+T細胞の割合を表すグラフを示す。「」はp<0.05を示す。パネルBは、1μMのイブルチニブ(あるいはDMSO)で前処理され、抗IgMを用いて45分間刺激された、cGVHDである患者から単離されたB細胞のBTK、ERK及びPLCγ2の免疫ブロット分析の画像を示す。データは3人の異なる患者の3つの実験を代表するものである。
図8】同種のHCT移植後の中咽頭の慢性GVHDと難治性CLLの患者のイブルチニブ(PCI-32765)処置の臨床研究を例証する。CLLの微少残存病変(MRD)及び血液CD3+T細胞ドナーのキメラ化は、同種のHCT移植後、経時的に示される。ドナーリンパ球輸注療法(DLI)及びイブルチニブ処置の開始が示される(代表的な処置プロトコルの実施例5を参照されたい)。
図9】OVAトランスジェニックマウスと交差性(crossed)のAMLのマウスモデルにおいて、同種移植及びイブルチニブ、シクロスポリン又はビヒクル(図において示すように)での処置の後に再発及び急性のGVHDにより死んだプロットを示す。
図10A】1年を超えるイブルチニブ処置を受けた2人の患者の絶対的なリンパ球(ALC)の数の割合変化を表すプロットを示す。SPN=スタンフォード患者番号(Stanford Patient Number)。
図10B】イブルチニブ開始後の4人の患者のリンパ節の直径(SPD)の積(product)の合計によって報告されたようにリンパ節の大きさの割合の減少を示す。
図10C】患者SPN 3975のために示されたCLL MRD(WBCの割合として報告された)及び血液ドナーのCD3 T細胞レベルを示す。
図10D】IgH HTSによって測定されるような患者SPN 3975のPBMCの合計の割合としてのB細胞(CLLクローンを除く)を示す。
図10E】同種HCT後の異なる時点(D=日)での患者SPN 3975のIgH分子の合計及び特有のIgHクローンの数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、ITK又はBTK阻害化合物)の投与を含む、細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発生を防ぐ又はGVHD発生の重症度を減少させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、治療上有効な量の以下の構造を有する式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩の投与を含み、細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発生を防ぐ又はGVHD発生の重症度を減少させる方法が本明細書に開示され:
【0022】
【化7】
【0023】
式中:
AはNであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;
とRは独立してHであり;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換された又は非置換型のアルキル、随意に置換された又は非置換型のシクロアルキル、随意に置換された又は非置換型のアルケニル、随意に置換された又は非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-、-NH-、-NR-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-S(=O)NH-、-NHS(=O)-、-S(=O)NR-、-NRS(=O)-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル-、アリ-ル-、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のアルケニル、置換された又は非置換型のアルキニル、置換された又は非置換型のアリ-ル、置換された又は非置換型のヘテロアリ-ル、置換された又は非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0024】
【化8】
【0025】
であり、ここで、
、R及びRは、H、ハロゲン、CN、OH、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のヘテロアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のヘテロシクロアルキル、置換された又は非置換型のアリール、あるいは置換された又は非置換型のヘテロアリールの中から独立して選択され;
各々のRは、H、置換された又は非置換型の低級アルキル及び置換された又は非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換された又は非置換型の低級アルキルあるいは置換された又は非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hあるいは置換された又は非置換型のアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成する。いくつかの実施形態では、窒素含有複素環はピペリジン基である。いくつかの実施形態では、Gは、
【0026】
【化9】
【0027】
である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きなCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けた。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ(FCR)である。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブ(OFAR)である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物の量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに有効な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを予防する又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者はGVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄又は造血幹細胞の移植を受けたあるいは受ける。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄又は造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄又は造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は同種骨髄又は造血幹細胞の移植に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は補足治療薬との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、補足治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、補足治療薬はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は経口で投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いて1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに続いて投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物はイブルチニブである。
【0028】
いくつかの実施形態では、患者に同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を投与する工程を含む、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置する方法が本明細書に開示され、ここで、治療上有効な量の式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩は、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、同時に、あるいは続いて投与され:
【0029】
【化10】
【0030】
式中:
AはNであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;
とRは独立してHであり;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換された又は非置換型のアルキル、随意に置換された又は非置換型のシクロアルキル、随意に置換された又は非置換型のアルケニル、随意に置換された又は非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-、-NH-、-NR-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-S(=O)NH-、-NHS(=O)-、-S(=O)NR-、-NRS(=O)-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル-、アリ-ル-、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のアルケニル、置換された又は非置換型のアルキニル、置換された又は非置換型のアリ-ル、置換された又は非置換型のヘテロアリ-ル、置換された又は非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0031】
【化11】
【0032】
であり、ここで、
、R及びRは、H、ハロゲン、CN、OH、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のヘテロアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のヘテロシクロアルキル、置換された又は非置換型のアリール、あるいは置換された又は非置換型のヘテロアリールの中から独立して選択され;
各々のRは、H、置換された又は非置換型の低級アルキル及び置換された又は非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換された又は非置換型の低級アルキルあるいは置換された又は非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hあるいは置換された又は非置換型のアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成する。いくつかの実施形態では、窒素含有複素環はピペリジン基である。いくつかの実施形態では、Gは、
【0033】
【化12】
【0034】
である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態の中で、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きなCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けた。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブである(FCR)。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブである(OFAR)。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物の量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに有効な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを予防する又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は、GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は補足治療薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、補足治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、補足治療薬はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は経口で投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いて1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞移植に続くDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに続いて投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物はイブルチニブである。
【0035】
いくつかの実施形態では、細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主疾患(GVHD)の発生を防ぐ又はGVHD発生の重症度を低下させるための式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩の使用が提供され、ここで、式(A)の化合物は以下の構造を有し:
【0036】
【化13】
【0037】
式中:
AはNであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;
とRは独立してHであり;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換された又は非置換型のアルキル、随意に置換された又は非置換型のシクロアルキル、随意に置換された又は非置換型のアルケニル、随意に置換された又は非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-、-NH-、-NR-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-S(=O)NH-、-NHS(=O)-、-S(=O)NR-、-NRS(=O)-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル-、アリ-ル-、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のアルケニル、置換された又は非置換型のアルキニル、置換された又は非置換型のアリ-ル、置換された又は非置換型のヘテロアリ-ル、置換された又は非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0038】
【化14】
【0039】
であり、
、R及びRは、H、ハロゲン、CN、OH、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のヘテロアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のヘテロシクロアルキル、置換された又は非置換型のアリール、あるいは置換された又は非置換型のヘテロアリールの中から独立して選択され;
各々のRは、H、置換された又は非置換型の低級アルキル及び置換された又は非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換された又は非置換型の低級アルキルあるいは置換された又は非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hあるいは置換された又は非置換型のアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成する。いくつかの実施形態では、窒素含有複素環はピペリジン基である。いくつかの実施形態では、Gは、
【0040】
【化15】
【0041】
である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は再発性又は難治性の血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きなCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けた。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブである(FCR)。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブである(OFAR)。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)の量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに有効な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを予防する又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は、GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は経口で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は他の治療薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は1つ以上の補足治療薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、補足治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、治療剤はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、患者はドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、患者は2つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いて1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞移植に続くDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに続いて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)はイブルチニブである。
【0042】
いくつかの実施形態では、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置するための同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞と共に式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩の使用が提供され、ここで、式(A)の化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩は以下の構造を有し、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、同時に、あるいは続いて投与され:
【0043】
【化16】
【0044】
式中:
AはNであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;
とRは独立してHであり;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換された又は非置換型のアルキル、随意に置換された又は非置換型のシクロアルキル、随意に置換された又は非置換型のアルケニル、随意に置換された又は非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-、-NH-、-NR-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-S(=O)NH-、-NHS(=O)-、-S(=O)NR-、-NRS(=O)-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル-、アリ-ル-、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のアルケニル、置換された又は非置換型のアルキニル、置換された又は非置換型のアリ-ル、置換された又は非置換型のヘテロアリ-ル、置換された又は非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0045】
【化17】
【0046】
であり、
、R及びRは、H、ハロゲン、CN、OH、置換された又は非置換型のアルキル、置換された又は非置換型のヘテロアルキル、置換された又は非置換型のシクロアルキル、置換された又は非置換型のヘテロシクロアルキル、置換された又は非置換型のアリール、あるいは置換された又は非置換型のヘテロアリールの中から独立して選択され;
各々のRは、H、置換された又は非置換型の低級アルキル及び置換された又は非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換された又は非置換型の低級アルキルあるいは置換された又は非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hあるいは置換された又は非置換型のアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、ともに得られたL、X及びLは、窒素含有複素環を形成する。いくつかの実施形態では、窒素含有複素環はピペリジン基である。いくつかの実施形態では、Gは、
【0047】
【化18】
【0048】
である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロプ-2-エン-1-オンである。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は再発性の又は難治性の血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は、骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きなCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けた。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ(FCR)である。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブ(OFAR)である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)の量は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに有効な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを予防する又は減少させる。いくつかの実施形態では、細胞移植は造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは強皮症様のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐ステロイド性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは耐シクロスポリン性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは難治性のGVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は、GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は経口で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(1つの)の化合物)は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、約40mg/日、約140mg/日、約280mg/日、約420mg/日、約560mg/日、あるいは約840mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は他の予防薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約120日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植後、1日から約1000日まで投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は1つ以上の補足治療剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、補足治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、治療薬はシクロスポリン(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、患者はドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、患者は2つ以上のDLIを投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いて1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄あるいは造血幹細胞移植に続くDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄または造血幹細胞の移植に続くDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)は、同種骨髄または造血幹細胞の移植に続くDLIに続いて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、式(A)の化合物)はイブルチニブである。
【0049】
<特定の用語>
前述の一般的な記載と以下の詳細な記載が典型的で、単に説明するためのものであり、請求されるいずれの発明特定事項にも限定されないことが理解されるべきである。本出願では、単数の使用は、特に別記しない限り、複数を含む。明細書及び添付の請求項内で用いられる通り、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が他に明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。本出願において、「又は」の使用は特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。更に、用語「含んでいる(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」といった他の形態と同じく、制限はない。
【0050】
本明細書で使用されるように、「ACK」と「接触できる(Accessible)システインキナ-ゼ」は同義語である。それらは、接触できるシステイン残基を備えたキナ-ゼを意味する。ACKはBTK、ITK、Bmx/ETK、TEC、EFGR、HER4、HER4、LCK、BLK、C-src、FGR、Fyn、HCK、Lyn、YES、ABL、Brk、CSK、FER、JAK3、SYKを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ACKはTECファミリーキナーゼである。いくつかの実施形態では、ACKはHER4である。いくつかの実施形態では、ACKはBTKである。いくつかの実施形態では、ACKはITKである。
【0051】
本明細書で使用されるように、「改善」は、化合物あるいは組成物の投与に寄与又は関連し得る、持続的か一時的か、永続的か瞬間的かどうかに係わらず、HER2増幅性乳癌の重症度、発病の遅れ、成長の緩和化、転移の緩和化、あるいは、期間の短縮を指す。
【0052】
本明細書で使用されるように、用語「ブルトン型チロシンキナ-ゼ」は、例えば米国特許第6,326,469号(GenBank Accession No.NP_000052)に開示されているようなヒト(homo sapiens)からのブルトン型チロシンキナ-ゼを指す。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語「ブルトン型チロシンキナ-ゼホモログ」は、例えばマウス(GenBank Accession No.AAB47246)、犬(GenBank Accession No.XP_549139)、ラット(GenBank Accession No.NP_001007799)、ニワトリ(GenBank Accession No.NP_989564)あるいはゼブラフィッシュ(GenBank Accession No.XP_698117)からのオ-ソログ、およびブルトン型チロシンキナ-ゼの1つ以上の基質に対してキナ-ゼ活性を示す上述のいずれかの融合タンパク質(例えばアミノ酸配列「AVLESEEELYSSARQ」SEQ ID NO:1を有するペプチド基質)のブルトン型チロシンキナーゼのオーソログを指す。
【0054】
用語「HER4」は、ERBB4としても知られ、又は「V-erb-b2赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ4」としても知られ、(a)上皮成長因子受容体サブファミリ-のメンバ-である受容体チロシンキナ-ゼをコ-ドする核酸配列、あるいは(b)そのタンパク質のどちらか一方を意味する。ヒトHER4遺伝子を含む核酸配列については、GenBank Accession No.NM_001042599を参照されたい。ヒトHER4タンパク質を含むアミノ酸配列については、GenBank Accession No.NP_001036064を参照されたい。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「相同な(homologous)システイン」は、本明細書で定義されるように、ブルトン型チロシンキナ-ゼのシステイン481に相同である配列位置内に発見されたシステイン残基を指す。例えば、システイン482は、ブルトン型チロシンキナ-ゼのラットのオ-ソログに相同なシステインであり、システイン479はニワトリのオ-ソログに相同なシステインであり、及びシステイン481はゼブラフィッシュのオ-ソログに相同なシステインである。別の例において、ブルトン型チロシンに関連するTecキナ-ゼファミリ-メンバーであるTXKに相同なシステインはCys350である。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「不可逆的BTK阻害剤」は、BTKのアミノ酸残基と共有結合を形成することができるBTKの阻害剤を指す。1つの実施形態では、BTKの不可逆的阻害剤は、BTKのシステイン残基と共有結合を形成することができ、特定の実施形態では、不可逆的阻害剤はBTKのシステイン481残基(またはそのホモログ)と、あるいは、図7に示されるような、別のチロシンキナ-ゼの相同的な位置のシステイン残基と共有結合を形成することができる。
【0057】
本明細書で使用されるように、用語「pERK」は、市販のリン酸化部位特異的抗体(例えば、Cell Signaling Technologies #4377)によって検出されるようなThr202/Tyr204でリン酸化されたERK1及びERK2を指す。
【0058】
用語「個体」、「患者」及び「対象」は交換可能に使用される。これらの用語は、処置、又は観察の対象である哺乳動物(例えばヒト)を指す。前記用語は、医療専門家(例えば医師、医師の助手、看護師、看護助手、ホスピスケア従事者)の監督を必要とするものと解釈されるものではない。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」あるいは「処置(treatment)」は、GVHDの重症度の減少、GVHDの発病の遅延、GVHDの退縮を引き起こすこと、GVHDによって引き起こされた状態を緩和すること、又はGVHDに起因する症状を止めることを含む。前記用語「処置する」、「処置すること」あるいは「処置」は、予防的な及び/又は治療的な処置を含むが、これに限定されない。
【0060】
本明細書で使用されるように、口腔GVHDは口腔、中咽頭、咽頭あるいは食道領域中のGVHDの局所的な徴候を指す。
【0061】
<移植片対宿主病>
治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)を含む組成物を患者に投与することを含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する又はGVHD発症の重症度を低下させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、患者は造血細胞移植を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は末梢血幹細胞移植を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は骨髄移植を必要とする。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は細胞移植の実施に先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は細胞移植の実施の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は細胞移植の実施と同時に投与される。いくつかの実施形態では、患者はGVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は急性GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は慢性GVHDの1つ以上の症状を示す。GVHDの典型的な症状は、発疹あるいは皮膚の赤くなった部位、皮膚の隆起、水疱形成、皮膚の肥厚あるいは張り(tightening)、皮膚及び/又は目の黄変、異常な血液検査結果、悪心、嘔吐、下痢、腹部膨満、腹部痙攣、目の増加した乾燥あるいは刺激、視覚変化、口渇、口内の白い斑、辛い食べ物に対する疼痛あるいは過敏性、息切れ、困難嚥下、嚥下の疼痛、体重減少、疲労、筋脱力、筋肉痛、頻尿、放尿の灼熱感あるいは出血、腟乾燥あるいは張り、又はペニスの機能不全を含むが、これに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、患者は口腔GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は急性口腔GVHDの1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は慢性口腔GVHDの1つ以上の症状を示す。口腔GVHDの典型的な症状は、口腔組織の炎症、口渇、点状あるいは汎発性の粘膜の紅斑、口腔粘膜と唇の白い皮膚線条あるいは丘疹、粘液性びらん剥離潰瘍、辛い食べ物に対する疼痛あるいは過敏性、困難嚥下、嚥下の疼痛、咽頭-食道狭窄、口内乾燥、扁平苔癬、貧弱な食塊制御、咽頭の貯留(retention)、過度の粘液分泌、口腔組織の炎症、及び潰瘍を含むが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、患者は難治性のGVHDを患っている。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは網状の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDはびらん性の口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは潰瘍性の口腔GVHDである。
【0063】
いくつかの実施形態では、患者は耐ステロイド性のGVHDを患っている。いくつかの実施形態では、耐ステロイド性のGVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、耐ステロイド性のGVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は耐シクロスポリン性のGVHDを患っている。
【0064】
治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)を含む組成物を患者に投与することを含む幹細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する又はGVHD発症の重症度を低下させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、患者は造血幹細胞移植を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は末梢血幹細胞移植を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は骨髄移植を必要とする。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は幹細胞移植の実施に先立って投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は幹細胞移植の実施の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は幹細胞移植の実施と同時に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、続いて、あるいは同時に投与される。
【0065】
同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を患者に投与する工程を含み、治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、続いて、あるいは同時に投与される、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置する方法が本明細書にさらに開示される。
【0066】
白血病、リンパ腫及び骨髄腫等の増殖性の血液疾患の処置は、通常、化学療法及び/又は放射線療法の1つ以上の形態を含む。これらの処置は悪性細胞を破壊するだけでなく、健康な血球も破壊する。同種の造血細胞移植は、例えば、B細胞とT細胞の悪性腫瘍を含む、多くの血液悪性腫瘍の処置に有効な治療である。同種の造血細胞移植において、血縁関係がないあるいは血縁関係がある(しかし一卵性双生児ではない)ドナーからの骨髄(あるいは、いくつかの場合、末梢血)は、癌患者の中で破壊された健康な血球を交換するために使用される。骨髄(あるいは末梢血)は、血液中で確認されるすべての様々な細胞タイプ(例えば、赤血球、食細胞、血小板及びリンパ球)の前駆体である幹細胞を含む。同種の造血細胞移植は、回復効果と治療効果の両方を有することが知られている。回復効果は、血液の細胞組成を再配置する幹細胞の能力から生じる。同種の造血細胞移植の治療特性は、主に移植片対白血病(GVL)効果に由来する。ドナーから移植された造血細胞(具体的にはTリンパ球)は、処置の他の形態の抑制効果を増強して、癌細胞を攻撃する。本質的に、GVL効果は、移植に由来する血球による癌細胞への攻撃を含み、移植後に悪性腫瘍が再発しにくくする。GVL効果の制御は、GVHDへのGVL効果の拡大を防ぐ。腫瘍(移植片対腫瘍)に対する同様の結果も知られている。
【0067】
同種の造血細胞移植はしばしば患者に毒となる。この毒性は、同種のBMTの多くの場合の致死的な合併症である移植片対宿主病(GVHD)からGVL又はGVT効果を引き離すことの困難さから生じる。
【0068】
GVHDは同種の造血細胞移植(HCT)の主な合併症である。GVHDは宿主の組織適合性と他の組織抗原を認識するドナー移植組織のT細胞によって引き起こされる炎症性疾患であり、GVHDは様々なエフェクター細胞と炎症性サイトカインによって媒介される。GVHDは急性及び慢性の両方の形態で存在する。最も一般的な症候性の器官は、皮膚、肝臓、及び口腔と中咽頭領域を含む消化管である。GVHDは肺等の他の器官を含み得る。GVHDの処置は一般的に50-75%のみ成功し;残りの患者は一般的に生存しない。この免疫介在性疾患のリスクと重症度は、直接的に宿主とドナー間の造血細胞のミスマッチの程度に関連する。例えば、ヒト白血球抗原(HLA)がマッチした同胞間骨髄のレシピエントの30%以内、HLAがマッチした血縁関係の無いドナーの骨髄のレシピエントの60%以内、及びHLAがミスマッチした骨髄のレシピエントにおいてはより高い割合でGVHDが発症する。軽度の腸のGVHDの患者は、食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛及び下痢があり、重篤なGVHDの患者はこれらの症状によって不具(disabled)になる。治療しない場合、腸のGVHDの症状は持続し、しばしば進行し、自然緩解は珍しい。その最も重篤な形態では、GVHDは、腸管粘膜の大部分の上皮細胞の壊死及び剥離を引き起こし、たびたび致命的な状態を引き起こす。急性GVHDの症状は、通常、移植の100日以内に現れる。慢性GVHDの症状は、通常、多少遅れて、同種のHCT後3年以内に現れ、急性GVHDの病歴によってしばしば進行する。
【0069】
GVHDの口腔発症は急性GVHD(aGVHD)と慢性GVHD(cGVHD)の両方で見られる。口腔の合併症は、aGVHDの患者の33%から75%、cGVHDの患者の約80%までに及ぶ。唾液腺の合併症は、口腔粘膜の乾燥を引き起こし得、口腔内痛は最初の主症状であり得る。GVHDにおける口腔病変は、見かけは苔癬状あるいは狼瘡様であり得る。aGVHDの口腔所見は、痛みを伴う剥離性の、紅斑性の、及び潰瘍性の粘膜病変を含む。cGVHDでは、それらは紅斑及び潰瘍に関連する苔癬状であり、さらにそれらは、口内乾燥及び進行性の唾液腺萎縮によって特徴付けられる乾燥症候群に関連し得る。口腔合併症は、粘膜の変化による疼痛、味覚の変化あるいは減少を含み、発声、嚥下及び口腔の補綴の使用(存在する場合)に潜在的な影響を与え得る。口腔感染、特にカンジダ属種によるもの、及び歯の鉱質消失と齲歯がさらに起こり得る。cGVHDの口腔発症は、栄養障害と疾病率の増加を引き起こす経口摂取の不快感と障害によって患者の生活の質に著しく影響し得る。
【0070】
口腔cGVHDの従来の処置は、適切な口腔衛生と局所用のステロイドの分別のある使用を組み合わせた全身性の免疫抑制療法からなる。しかしながら、最も重要な臨床所見としての口腔cGVHDの患者において、全身性の免疫抑制薬の使用は、付随する全身性の合併症を備えた宿主の免疫抑制をもたらし得る。加えて、複数の患者は、全身性の免疫抑制薬の最大投与量でさえ、相当な難治性の口腔合併症を経験する。
【0071】
口腔GVHDの第一選択療法は、本質的に、シクロスポリンとステロイドからなる主に全身性のものである。cGVHDの最も一般的な救済治療は、サリドマイド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、Campath-1によるT細胞除去及び光線療法である。口腔GVHDはしばしば従来の処置に対して難治性であり、それゆえに相補的な局所療法が必要とされる。現在、いくつかの薬剤は、口腔GVHDの緩和的なすすぎ、局所的な免疫抑制薬、サリドマイド、レチノイド及び光線療法等の局所療法に使用されている。
【0072】
治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)を含む組成物を患者に投与する工程を含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する又はGVHD発症の重症度を低下させる方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、患者は造血細胞移植を必要とする。同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を患者に投与する工程を含み、治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、同時に、あるいは続いて投与され、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置する方法が本明細書にさらに開示される。いくつかの実施形態では、患者は癌に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は血液悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性は再発性の又は難治性のCLLである。いくつかの実施形態では、患者はハイリスクCLLに罹患している。いくつかの実施形態では、患者は17番染色体欠失である。いくつかの実施形態では、患者は骨髄生検によって決定されるような10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%あるいはより大きなCLLである。いくつかの実施形態では、患者は以前に1つ以上の抗癌剤を受けた。いくつかの実施形態では、抗癌剤は、アレムツズマブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、CAL-101、クロラムブチル、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンドスタチンエベロリムス、エトポシド、フルダラビン、ホスタマチニブ、ヒドロキシダウノルビシン、イブリツモマブ、イホスファミド、レナリドミド、メサラジン、オファツムマブ、パクリタキセル、ペントスタチン、プレドニゾン、リツキシマブ、テムシロリムス、サリドマイド、トシツモマブ、ビンクリスチンあるいはその組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態では、抗癌剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はアレムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗癌剤はフルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブである(FCR)。いくつかの実施形態では、抗癌剤はオキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブである(OFAR)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は、患者の血液中の癌細胞の数を減らす又は除去するのに有効な移植片対白血病(GVL)反応を維持する間にGVHDを予防する又は減少させる。いくつかの実施形態では、GVHDは急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDは慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDは口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、経口のGVHDは中咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは咽頭領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは食道領域のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDは慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植受けた又は受ける。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるACK阻害化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるACK阻害化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に先立って投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるACK阻害化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植の後に続いて投与される。いくつかの実施形態では、患者は、HLA不適合造血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、患者は、血縁関係のないドナーの造血幹細胞、臍静脈造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を受け取る候補である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるACK阻害化合物は、口腔GVHDの1つ以上の症状を示す患者に続けて投与され、患者は同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植を受けた又は受ける。
【0073】
いくつかの実施形態では、患者はドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。ドナーリンパ球輸注療法は、移植後に、抗腫瘍免疫反応を増大させるあるいはドナー幹細胞が移植されたままであることを保証するために、元の幹細胞ドナーからのCD3+リンパ球が注入される血球注入である。これらの提供された白血球は、癌細胞を認識し破壊することができる免疫系の細胞を含む。いくつかの実施形態では、本治療は、移植片対腫瘍効果(GVT)によって患者の癌の寛解を引き起こす。いくつかの実施形態では、ドナーT細胞は、GVT効果を提供する残存癌細胞の増殖を攻撃し制御し得る。いくつかの実施形態では、患者は1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、DLIはCD3+リンパ球を含む。いくつかの実施形態では、患者は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続いて1つ以上のドナーリンパ球輸注療法(DLI)を投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞移植に続くDLIと同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに先立って投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、同種骨髄あるいは造血幹細胞の移植に続くDLIに続いて投与される。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物はイブルチニブである。
【0074】
いくつかの実施形態では、患者は非ホジキンリンパ腫に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はホジキンリンパ腫に罹患している。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、B細胞活性化大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)、胚中心びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(GCB DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、プラスマ細胞骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫あるいはリンパ腫様肉芽腫症である。いくつかの実施形態では、患者はT細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、T細胞悪性腫瘍は、末梢性T細胞リンパ腫-非特定型(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、芽球型ナチュラルキラー細胞リンパ腫、腸疾患タイプT細胞性リンパ腫、肝脾γデルタT細胞性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻型NK/T細胞性リンパ腫あるいは治療関連T細胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態では、被検体は多発性骨髄腫に罹患している。
【0075】
いくつかの実施形態では、患者は再発性の又は難治性の血液癌に罹患している。いくつかの実施形態では、再発性の又は難治性の血液癌は白血病、リンパ腫あるいは骨髄腫である。いくつかの実施形態では、再発性の又は難治性の血液癌は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、再発性の又は難治性の血液癌はホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、再発性の又は難治性の血液癌はB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、B細胞活性化大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)、胚中心びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(GCB DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、プラスマ細胞骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫あるいはリンパ腫様肉芽腫症である。いくつかの実施形態では、再発性又は難治性の血液癌はT細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、T細胞悪性腫瘍は、末梢性T細胞リンパ腫-非特定型(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、芽球型ナチュラルキラー細胞リンパ腫、腸疾患タイプT細胞性リンパ腫、肝脾γデルタT細胞性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻型NK/T細胞性リンパ腫あるいは治療関連T細胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態では、被検体は再発性の又は難治性の多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、患者はB細胞悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は再発性の又は難治性のCLLである。
【0076】
いくつかの実施形態では、患者は血液癌の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、被験体はB細胞悪性腫瘍の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、被験体は白血病、リンパ腫、又は骨髄腫の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、被検体は異常なB細胞機能、異常なB細胞のサイズ又は形状、異常なB細胞の数、疲労、熱、寝汗、頻繁な感染、リンパ節腫大、蒼白、貧血、容易な出血又は挫傷、食欲不振、体重減少、骨又は関節の痛み、頭痛及び点状出血等の1つ以上の症状を示すが、これに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態では、被検体は癌の再発の高いリスクを有する。いくつかの実施形態では、被検体は、ヒト、人類以外の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、犬、猫あるいは雌牛等の哺乳類であるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、癌の再発の高いリスクは、バイオマーカーの発現又は存在に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーはPMSB1 P11A G/Cヘテロ接合体、CD68、サイトカインシグナル1抑制因子(SOCS1)、LIM domain only 2(LMO2)、CD137あるいはその組み合わせを含む。
【0078】
<併用療法>
治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)と補足治療薬を含む組成物を個体に共に投与する工程を含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する又はGVHD発症の重症度を低下させる方法が本明細書に開示される。治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)と補足治療薬を含む組成物が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞に先立って、続いて、あるいは同時に個体に共に投与される工程を含む、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した口腔移植片対宿主病(GVHD)の緩和のために患者を処置する方法が本明細書にさらに開示される。いくつかの実施形態では、個体は体外のフォトフェレーシス又は間葉系幹細胞あるいはドナーリンパ球の注入等の補足治療を施されるが、これに限定されない。
【0079】
いくつかの実施形態では、補足治療薬は抗GVHD治療薬である。いくつかの実施形態では、抗GVHD治療剤は免疫抑制薬である。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬はシクロスポリン、タクロリムス、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、アザチオプリンあるいは抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を含む。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、モノクローナル抗体(例えば抗CD3、抗CD5及び抗IL-2抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、ミコフェノール酸モフェチル、アレムツズマブ、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、シロリムス、タクロリムス、サリドマイド、ダクリズマブ、インフリキシマブあるいはクロファジミンであり、慢性GVHDを処置するために使用される。いくつかの実施形態では、補足治療薬は、デニロイキンディフティトックス、デフィブロタイド、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾンあるいはペントスタチンである。
【0080】
いくつかの実施形態では、補足治療薬はIL-6受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、補足治療薬はIL-6受容体抗体である。
【0081】
いくつかの実施形態では、補足治療薬はTLR5アゴニストである。
【0082】
いくつかの実施形態では、患者は、体外のフォトフェレーシス、又は間葉系幹細胞あるいはドナーリンパ球の注入等の補足治療を受ける。
【0083】
いくつかの実施形態では、補足治療薬は局所作用性コルチコステロイド(TAC)である。いくつかの実施形態では、TACは、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、アルクロメタゾンジプロピオナート、ブデソニド、22Sブデソニド、22Rブデソニド、ベクロメタゾン-17-モノプロピオン酸塩、ベータメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、デキサメタゾン、酢酸ジフロラゾン、フルニソリド、フルオシノニド、フルドロキシコルチド、プロピオン酸フルチカゾン、ハロベタゾールプロピオン酸塩、ハルシノサイド、フランカルボン酸モメタゾン、 トリアムシノロンアセトニドあるいはその組み合わせである。
【0084】
いくつかの実施形態では、補足治療薬は抗真菌薬である。いくつかの実施形態では、補足治療薬は、ナイスタチン、クロトリマゾール、アンフォテリシン、フルコナゾールイトラコナゾールあるいはその組み合わせである。
【0085】
いくつかの実施形態では、補足治療薬は唾液分泌促進薬である。いくつかの実施形態では、補足治療薬はセビメリン、ピロカルピン、ベタネコールあるいはその組み合わせである。
【0086】
いくつかの実施形態では、補足治療薬は局所麻酔薬である。いくつかの実施形態では、補足治療薬は、リドカイン、ディクロニン、ジフェンヒドラミン、ドキセピンあるいはその組み合わせである。
【0087】
本明細書に開示される方法において、当該技術分野において既知の化学療法、生物療法、免疫抑制および放射線療法の適切な手枝が使用され得る。例えば、化学療法剤は、被検体の癌細胞あるいは新生細胞に対する腫瘍崩壊効果を示すいずれかの薬剤であり得る。例えば、化学療法剤は、限定されないが、アントラサイクリン、アルキル化薬、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミン、メチルアミン(methyhnelamine)、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、抗生物質、代謝拮抗薬、葉酸アナログ、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有薬剤あるいはサイトカインであり得る。好ましくは、化学療法剤は、癌あるいは新生物の特定の細胞タイプに対して効果的であると知られている1つである。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、チオテパ、シスプラチンベースの化合物及びシクロホスファミド等の血液悪性腫瘍の処置に効果的である。サイトカインはインターフェロン、G-CSF、エリスロポイエチン、GM-CSF、インターロイキン、副甲状腺ホルモン等を含む。生物療法はアレムツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、血管破壊剤、レナリドミド等を含む。放射線増感剤はニコチンアミド(nicotinomide)等を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は、抗体、B細胞受容体経路阻害剤、T細胞受容体阻害剤、PI3K阻害剤、IAP阻害剤、mTOR阻害剤、放射免疫療法、DNA傷害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、プロテインキナーゼ阻害薬、ヘッジホッグ阻害剤、Hsp90阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、Jak1/2阻害剤、プロテアーゼインヒビター、IRAK阻害剤、PKC阻害剤、PARP阻害剤、CYP3A4阻害剤、AKT阻害剤、Erk阻害剤、プロテオソーム阻害剤、アルキル化剤、抗代謝産物、植物アルカロイド、テルペノイド、細胞毒素、トポイソメラーゼ阻害剤あるいはその組み合わせの中から選択される化学療法剤又は生物学的薬剤との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、B細胞受容体経路阻害剤は、CD79A阻害剤、CD79B阻害剤、CD19阻害剤、Lyn阻害剤、Syk阻害剤、PI3K阻害剤、Blnk阻害剤、PLCγ阻害剤、PKCβ阻害剤、CD22阻害剤、Bcl-2阻害剤、IRAK 1/4阻害剤、JAK阻害剤(例えばルキソリチニブ、バリシチニブ、CYT387、レスタウリチニブ(lestauritinib)、パクリチニブ、TG101348、SAR302503、トファシチニブ(ゼルヤンツ)、エタネルセプト(エンブレル)、GLPG0634、R256)、微小管阻害剤、TopoII阻害剤、抗TWEAK抗体、抗IL17二重特異性抗体、CK2阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)及びc-Met阻害剤、デメチラーゼ等のデメチラーゼ酵素阻害剤、HDM、LSDI及びKDM、スピロ環状ピペリジン誘導体等の脂肪酸シンターゼ阻害剤、グルココルチコステロイド受容体アゴニスト、融合抗CD19細胞毒性薬抱合体、代謝拮抗薬、p70S6K阻害剤、免疫調節剤、AKT/PKB阻害剤、プロカスパーゼ-3活性剤PAC-1、BRAF阻害剤、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)阻害剤、CCR2阻害剤、CXCR4阻害剤、ケモカインレセプターアンタゴニスト、DNA二重鎖切断修復阻害剤、NOR202、GA-101、TLR2阻害剤、あるいはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、T細胞受容体阻害剤はムロモナブ-CD3である。いくつかの実施形態では、化学療法剤はリツキシマブ(リツキサン)、カーフィルゾミブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニザロン(prednisalone)、クロラムブチル、イホスファミド、ドキソルビシン、メサラジン、サリドマイド、レブリミド、レナリドミド、テムシロリムス、エベロリムス、ホスタマチニブ、パクリタキセル、ドセタキセル、オファツムマブ、デキサメタゾン、ベンダムスチン、プレドニゾン、CAL-101、イブリツモマブ、トシツモマブ、ボルテゾミブ、ペントスタチン、エンドスタチン、リトナビル、ケトコナゾール、抗VEGF抗体、ハーセプチン、セツキシマブ、シスプラチン、カルボプラチン、ドセタキセル、エルロチニブ、エトピシド(etopiside)、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩(グリベック)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、プロカルバジン、プレドニゾン、イリノテカン、ロイコボリン、メクロレタミン、メトトレキセート、オキサリプラチン、パクリタキセル、ソラフェニブ、スニチニブ、トポテカン、ビンブラスチン、GA-1101、ダサチニブ、シプロイセルT、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガリウム酸塩、サリノスポラミドA、ONX0912、CEP-18770、MLN9708、R-406、レナリノミド(lenalinomide)、スピロピペリジン誘導体、キナゾリンカルボキサミドアゼチジン化合物、チオテパ、DWA2114R、NK121、IS 3 295、254-S、スルホン酸アルキル(ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど)、アジリジン(ベンゾデパ(benzodepa)、カルボコン、メツレデパ(meturedepa)、及びウレデパ(uredepa)など)、エチレンイミン、メチルメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチルメラミンなど)、クロルナファジン、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、オキシド塩酸塩、ノボビオシン、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド、ウラシルマスタード、ニトロソウレア(カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど)、抗生物質(アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリチアマイシン、カルビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど)、代謝拮抗剤(メソトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など)、葉酸アナログ(デノプテリン、メソトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート)、プリンアナログ(フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなど)、ピリミジンアナログ(アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど)、男性ホルモン剤(カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン(Dromostanolone propionate)、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど)、抗副腎性製剤(アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど)、葉酸補給剤(フォリン酸など)、アセグラトン、アルドフォスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトレキサート、デホスファミド、デメコルチン、ジアジクオン、エフロルニチン、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エトグルシド、ガリウム硝酸塩、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジン、プロカルバジン、ポリサッカリドK、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、シトシンアラビノサイド、タキソイド(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金アナログ、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT1 1、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチン酸、エスペラマイシン(esperamycins)、カペシタビン、及びそれらの薬学的に許容可能な塩、酸あるいは誘導体、抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン(onapristone)及びトレミフェン(フェアストン)などを含む抗エストロゲンなど)、抗男性ホルモン剤(フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなど)、ACK阻害剤(AVL-263(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-292(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-291(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、BMS-488516(Bristol-Myers Squibb)、BMS-509744(Bristol-Myers Squibb)、CGI-1746(CGI Pharma/Gilead Sciences)、CTA-056、GDC-0834(Genentech)、HY-11066(さらに、CTK4I7891、HMS3265G21、HMS3265G22、HMS3265H21、HMS3265H22、439574-61-5、AG-F-54930)、ONO-4059(小野薬品工業株式会社)、ONO-WG37(小野薬品工業株式会社)、PLS-123(Peking University)、RN486(Hoffmann-La Roche)、HM71224(Hanmi Pharmaceutical Company Limited))、又はこれらの組み合わせの中から選択される。
【0089】
補足薬剤がACK阻害剤と共に投与される場合、補足薬剤とACK阻害剤は同じ医薬組成物として投与される必要はなく、異なる物理的・化学的特性による随意に異なる経路によって投与される。最初の投与は、例えば確立しているプロトコルに基づいてなされ、その後、観察された結果に基づいて、用量、投与のモードおよび投与の回数が修正される。
【0090】
単に例として、ACK阻害剤を受け取ることによって個体が経験した副作用が悪心である場合、ACK阻害剤と組み合わせて抗嘔吐性薬剤を投与することが適切である。
【0091】
あるいは、単に例として、本明細書中で記載されているACK阻害剤の治療有効性は、アジュバントの投与によって向上される(即ち、アジュバントは単独では最小の治療上の利益しかないが、他の治療薬と組み合わせると患者への総合的な治療上の利益は向上する)。あるいは、単に例として、個体への利益は、本明細書中に記載されているACK阻害剤を、治療上の利益を有する他の治療薬(治療レジメンも含む)とともに投与することで向上する。どんな場合も、治療される疾患や障害にかかわらず、患者への総合的な利益は、いくつかの実施形態において単にある2つの治療薬の添加剤であり、あるいは他の実施形態においては、患者は相乗的な利益を得る。
【0092】
使用される化合物の特定の選択は、主治医の診断書と、彼らによる患者の状態の判断及び適切な処置プロトコルの判断に依存する。化合物は障害の性質、患者の状態および使用する化合物の実際の選択に依存して、同時に(例えば、同時に、本質的に同時に、あるいは同じ処置プロトコル内で)あるいは連続して随意に投与される。投与の順番と、処置プロトコルにおける各治療薬の投与の反復回数の決定は、治療される疾患と患者の状態の評価に基づく。
【0093】
いくつかの実施形態では、医薬品が複数の処置の組み合わせにおいて使用される場合、治療上有効量は変わる。併用処置レジメンで使用される治療上有効な投与量の薬物及び他の薬剤を試験的に決定するための方法が文献に記載されている。例えばメトロノーム投薬(metronomic dosing)の使用、つまり有毒な副作用を最小限に抑えるためにより頻繁でより低い投与量を提供することは、文献において広範囲に述べられている。併用療法は、患者の臨床上の管理を支援するために、様々な時点で始めて止める周期的な処置をさらに含む。
【0094】
本明細書中に記載されている併用療法について、共同投与される化合物の用量は、使用する共同薬のタイプ、使用する特定の薬、治療する障害等に依存してもちろん異なる。加えて、補足治療薬と共に投与された場合、本明細書に記載されているACK阻害剤は補足治療薬と同時にあるいは連続してのいずれかで投与される。もし連続して投与されるならば、主治医は生物学上活動的な薬剤と組み合わせてタンパク質を投与する適切な順番を決める。
【0095】
補足治療薬とACK阻害剤が同時に投与される場合、複数の治療薬は単一の、統一された形態、又は複数の形態(単に例として単一の丸剤として又は2つの別々の丸剤として)で随意に提供される。いくつかの実施形態では、治療薬のうちの1つは複数回投与で与えられる、あるいは、治療薬の両方が複数回投与で与えられる。同時でなければ、複数回投与間のタイミングは、約0週以上から約4週未満まである。さらに、併用の方法、組成物及び製剤は、2つの薬剤のみの使用に限定されない:複数の治療の組み合わせの使用も考えられる。
【0096】
軽減したい症状を治療する、予防する又は改善するための投与レジメンは、様々な因子に基づいて変更することができる。これらの要因は、被験体の年齢、体重、性別、食事および病状と同様に、対象が苦しむ障害も含む。したがって、実際に使用される投与レジメンは広範囲に変わる場合があり、したがって本明細書中に述べられた投与レジメンから逸脱し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されている併用療法を構成する医薬製剤は、組み合わせた剤形又は実質的な同時投与を意図した別々の剤形で投与される。いくつかの実施形態では、併用療法を構成する医薬製剤は、2段階投与を要求するレジメンによって投与されている一方の治療用化合物と共に、連続して投与される。いくつかの実施形態では、2段階投与レジメンは、活性薬剤の連続した投与又は別々の活性薬剤の間隔が置かれた投与を要求する。複数の投与工程間の期間は、医薬品の潜在能力、溶解度、バイオアベイラビリティ、血漿半減期および動態学的プロファイルのような各医薬品の特性に依存して、数分から数時間までの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、標的分子濃度の日周期の変化は、最適な投与間隔を決定する。
【0098】
いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物と補足治療薬は一体になった剤形の中で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物と補足治療薬は別々の剤形の中で投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物と補足治療薬は同時にあるいは連続して投与される。
【0099】
<投与>
治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の投与を含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する、あるいはGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書に開示される。
【0100】
治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の投与を含む細胞移植を必要とする患者のGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書にさらに開示される。
【0101】
同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を患者に投与する工程を含み、治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、続いて、あるいは同時に投与される、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置する方法が本明細書にさらに開示される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は、(R)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン(つまりPCI-32765/イブルチニブ)である。
【0102】
ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、GVHDの進行の前、最中、あるいは後に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、予防薬として使用され、GVHDが進行する傾向を備えた対象(例えば、同種移植患者)に継続的に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、GVHDの進行の最中、あるいは進行の後できるだけすぐに個体に投与される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の投与は、症状の発症の最初の48時間以内に、症状の発症の最初の6時間以内に、あるいは症状の発症の3時間以内に開始される。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の最初の投与は、例えば静脈内注射、ボ-ラス投与、5分以上から約5時間の点滴、丸剤、カプセル、経皮貼布、口腔送達等、あるいはその組み合わせのような実際的な任意の経路を介する。ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、病気の発症が検出されたまたは疑われた後、実行可能になって、できるだけすぐに、及び例えば約1か月から約3か月等の病気の処置に必要な時間の長さにおいて投与されるべきである。処置の長さは各対象によって変わり得、その長さは既知の基準を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、少なくとも約2週間、約1か月から約5年の間、あるいは約1か月から約3年の間投与される。
【0103】
治療上有効な量は、疾患の重症度と経過、以前の治療、患者の健康状態、体重、および医薬品に対する反応、並びに治療する医師の判断に依存する。予防的に有効な量は、患者の健康状態、体重、疾患の重症度と経過、以前の治療、医薬品に対する反応、および治療する医師の判断に依存する。
【0104】
いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、あるいは3日おきに定期的に患者に投与される。他の実施形態では、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、例えば、1日2回に続いて1日1回に続いて1日3回;あるいは毎週の最初の2日;あるいは1週間の第1日、第2日および第3日に間欠的に患者に投与される。いくつかの実施形態では、間欠性の投薬は定期的な投薬と同じくらい有効である。更なるまたは他の実施形態では、患者が、例えば疼痛の発症、熱の発症、炎症の発症、あるいは皮膚障害の発症といった特定の症状を示す場合に、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が投与される。各化合物の投薬スケジュ-ルはその他に依存し得、あるいはその他に依存しないことがあり得る。
【0105】
患者の状態が改善しない場合に、医者の裁量に際して、化合物は慢性的に投与されることがあり、すなわち、患者の障害を緩和させるために、さもなければ患者の障害の症状を制御または制限するために、患者の生涯を通して、を含む長期間の間投与される。
【0106】
患者の状態が改善する場合に、医者の裁量に際して、化合物は継続的に与えられ得る;代わりに、投与されている薬の用量は一時的に減少されるか、あるいはある時間の長さのために一時的に休止されることがある(つまり「休薬日」)。休薬日の長さは、例のみとして、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日あるいは365日を含む、2日から1年の間で変わり得る。休薬日中の用量の減少は、例のみとして、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%あるいは100%を含む、10%-100%であり得る。
【0107】
一旦患者の状態の改善が生じたならば、必要な場合、維持治療レジメンで投与される。続いて、ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の投与の用量又は頻度あるいはその両方は、個人の改善された状態が保持されるレベルにまで症状に比例して減少され得る。しかしながら、個人はいずれかの症状の再発に際して、長期間にわたり間欠性の処置を要求できる。
【0108】
ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、特定の化合物、病気およびその重症度、対象の同一性(例えば体重)あるいは処置を必要とする宿主等の要因に依存して変化し、例えば投与されている特定の薬剤、投与経路および処置されている対象あるいは宿主を含む、その事例を取り巻く特定の状況によって決定される。しかしながら、一般に、成人の処置のために使用される用量は、典型的に1日当たり0.02-5000mg、あるいは1日当たり約1-1500mgの範囲になるだろう。所望の用量は、単回用量あるいは同時に(あるいは短期間で)、または例えば1日当たり2、3あるいは4回以上のサブ用量で適切な間隔で投与される分割用量のように存在し得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の治療上の量は、100mg/日から2000mg/日までを含む。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、140mg/日から840mg/日までを含む。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、420mg/日から840mg/日までを含む。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約40mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約140mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約280mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約420mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約560mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約700mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約840mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約980mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約1120mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約1260mg/日である。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の量は、約1400mg/日である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約100mg/kgの間の用量で投与される。
【0110】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の用量は、経時的に増大される。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の用量は、例えば、所定の期間にわたって約1.25mg/kg/日から約12.5mg/kg/日に増大される。いくつかの実施形態では、所定の期間は、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、18か月以上、24か月以上、またはそれを超える期間である。
【0111】
ACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、正確な用量の単剤投与に適している単位用量の剤形に製剤化され得る。単位用量の剤形では、製剤は、1あるいは両方の化合物の適正量を含んでいる単位用量に分割される。単位用量は、製剤の離散量を含んでいる包装の形であり得る。非限定的な例は、包装された錠剤またはカプセル剤、および、バイアルまたはアンプル中の粉末である。水性懸濁液の組成物は、単回投与の再密閉できない容器で包装され得る。あるいは、複数回投与の再密閉できる容器が使用され得、その場合には、組成物に保存剤を含むことが典型的である。例のみとして、注射剤のための製剤は、限定されないが、アンプルあるいは複数用量の容器を含む単位用量剤形中で追加の保存剤と共に存在し得る。
【0112】
医療従事者が様々な要因に従って投与レジメンを決定することが理解される。これらの要因は、対象の体重、性別、食事及び病状と同様に、対象のGVHDの重症度も含む。
【0113】
<化合物>
いくつかの実施形態では、治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、ITK又はBTK阻害剤)の投与を含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する、あるいはGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書に開示される。
【0114】
同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を患者に投与する工程を含み、治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、続いて、あるいは同時に投与される、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置する方法が本明細書にさらに開示される。
【0115】
本明細書に記載される方法での使用に適する不可逆的BTK化合物の以下の記載において、参照する標準化学用語の定義は、Carey and Sundberg「ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4TH ED」Vols.A(2000)and B(2001),Plenum Press,New Yorkを含む参考資料(本明細書に別段の記載がないとする場合)で見られる。特に示さない限り、本技術分野の通常の技術の範囲内で、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法が使用される。加えて、BTK(例えば、ヒトBTK)の核酸とアミノ酸配列は、例えば、米国特許第6,326,469号で開示されるように本技術分野において既知である。特定の定義が与えられない限り、本明細書に記載されている分析化学、有機合成化学、医薬並びに薬化学に関連する命名法と、検査の方法および技術は当業者に既知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤及び送達、並びに患者の処置に随意に使用される。
【0116】
本明細書に記載されるBTK阻害化合物は、BTKの中のシステイン481のアミノ酸配列位置と相同であるチロシンキナーゼのアミノ酸配列位置にシステイン残基を有するBTK及びキナーゼに選択的である。一般的に、本明細書に記載される方法の中で使用されるBTKの不可逆的阻害化合物は、例えば、無細胞生化学分析あるいは細胞機能分析といったインビトロ分析で同定される又は特徴づけられる。そのような分析は不可逆的BTK阻害化合物用のインビトロでのIC50を決定するために有用である。
【0117】
例えば、無細胞キナーゼ分析は候補不可逆的BTK阻害化合物の濃度ある範囲がない又はある状態におけるキナーゼのインキュベーション後のBTKの活性を決定するために使用され得る。候補化合物が実際に不可逆的BTK阻害剤である場合、BTKキナーゼ活性は阻害剤のない培地で洗浄を繰り返すことによっては回復しない。例えば、J.B.Smaill,et al.(1999),J.Med.Chem. 42(10):1803-1815を参照されたい。さらに、BTKと候補不可逆的BTK阻害剤の間の共有結合複合体の形成は、本技術分野において既知の多くの方法(例えば、質量分析法)によって容易に決定することができるBTKの不可逆阻害の有用な指標である。例えば、いくつかの不可逆的BTK阻害化合物は、BTKのシステイン481に共有結合を形成することができる(例えば、ミカエル反応によって)。
【0118】
BTKの阻害の細胞機能分析は、候補不可逆的BTK阻害化合物の濃度のある範囲が無い又はある状態での細胞株中のBTK介在性経路を刺激する(例えば、Ramos細胞のBCR活性化)ことに応じて1つ以上の細胞のエンドポイントを測定することを含む。BCR活性化に対する反応を決定するための有用なエンドポイントは、例えば、BTKの自動リン酸化、BTK標的タンパク質(例えばPLC-γ)のリン酸化、及び細胞質のカルシウム流量を含む。
【0119】
多くの無細胞生化学分析(例えば、キナーゼ分析)及び細胞機能分析(例えば、カルシウム流出)のためのハイスループット分析が当業者に周知である。加えて、ハイスループットスクリーニングシステムは市販されている(例えば、Zymark Corp.,Hopkinton,MA;Air Technical Industries,Mentor,OH;Beckman Instruments,Inc.Fullerton,CA;Precision Systems,Inc.,Natick,MA等を参照されたい)。これらのシステムは、典型的には、分析に適切な検出器中でサンプルと試薬のピペット操作、液体の分注、時間が測定されているインキュベーション、及びマイクロプレートの最終的な測定の全てを含む手順全体を自動化する。自動化システムは、そのために過度の努力なしに多くの不可逆的BTK化合物の同定及び特徴付けを可能にする。
【0120】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、有機小分子、高分子、ペプチドあるいは非ペプチドからなる群から選択される。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるBTK阻害剤は、可逆的あるいは不可逆的阻害剤である。ある実施形態では、BTK阻害剤は不可逆的阻害剤である。
【0122】
いくつかの実施形態では、不可逆的BTK阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼホモログあるいはBTKチロシンキナーゼシステインホモログのシステイン側鎖と共有結合を形成する。
【0123】
不可逆的BTK阻害剤は、前述の疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患、B細胞増殖疾患あるいは血栓塞栓障害)のいずれかを処置するための薬剤の製造のために使用され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された方法に使用される不可逆的BTK阻害化合物は、10μM未満(例えば、1μM未満、0.5μM未満、0.4μM未満、0.3μM、0.1μM未満、0.08μM未満、0.06μM未満、0.05μM未満、0.04μM未満、0.03μM未満、0.02μM未満、0.01μM未満、0.008μM未満、0.006μM未満、0.005μM未満、0.004μM未満、0.003μM未満、0.002μM未満、0.001μM未満、0.00099μM未満、0.00098μM未満、0.00097μM未満、0.00096μM未満、0.00095μM未満、0.00094μM未満、0.00093μM未満、0.00092μM未満、あるいは0.00090μM未満)のインビトロでのIC50でBTK又はBTKホモログのキナーゼ活性を阻害する。
【0125】
いくつかの実施形態では、不可逆的BTK阻害化合物は、イブルチニブ(PCI-32765)、PCI-45292、PCI-45466、AVL-101、AVL-291、AVL-292あるいはONO-WG-37の中から選択される。いくつかの実施形態では、不可逆的BTK阻害化合物はイブルチニブである。
【0126】
1つの実施形態では、不可逆的BTK阻害化合物は、その標的チロシンキナーゼの活性化型(例えば、チロシンキナーゼのリン酸化型)を選択的に及び不可逆的に阻害する。
例えば、活性化されたBTKは、チロシン551でリン酸化(transphosphorylated)される。したがって、これらの実施形態では、不可逆的BTK阻害剤は、一度標的キナーゼがシグナル伝達現象によって活性化されたときのみ、細胞の標的キナーゼを阻害する。
【0127】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるBTK阻害剤は、式(A)のうちのいずれかの構造を有する。また、そのような化合物の薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、薬学的に活性な代謝物、及び薬学的に許容可能なプロドラッグが本明細書に記載される。そのような化合物あるいは薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、薬学的に活性な代謝物又は薬学的に許容可能なプロドラッグの少なくとも1つを含む医薬組成物が提供される。
【0128】
標準化学用語の定義は、Carey and Sundberg「ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4TH ED」Vols.A(2000)and B(2001),Plenum Press,New Yorkを含む参考資料で見られる。特に示さない限り、本技術分野の技術の範囲内で、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法が使用される。特定の定義が与えられない限り、本明細書に記載されている分析化学、有機合成化学、医薬並びに薬化学に関連する命名法と、検査の方法および技術は当業者に既知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤および送達、並びに患者の処置に随意に使用される。標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養と形質転換(例えばエレクトロポレ-ション、リポフェクション)に随意に使用される。反応と精製技術は文書化された方法論、あるいは本明細書に記載されたものを使用して実施される。
【0129】
本明細書に記載される方法と組成物は、本明細書に記載される特定の方法論、手順、細胞株、構築物、および試薬に限定されず、随意に変わることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態についてのみ記載する目的のものであり、本明細書に記載される方法および組成物の範囲を限定することは意図されず、添付された請求項によってのみ限定されることが理解される。
【0130】
特に明記しない限り、複雑な部分(つまり複数鎖の部分)に使用される用語は、左から右へ、あるいは右から左へのいずれか一方と等しく読みとられる。例えば、アルキレンシクロアルキレン基は、アルキレン基に続くシクロアルキレン基、あるいはシクロアルキレン基に続くアルキレン基の両方を指す。
【0131】
基に追加された接尾辞「エン(ene)」は、そのような基がジラジカルであることを示す。例のみとして、メチレンはメチル基のジラジカル、すなわち、それは-CH-基であり;およびエチレンはエチル基のジラジカル、つまり-CHCH-である。
【0132】
「アルキル」基は脂肪族炭化水素基を指す。アルキルの部分は「飽和アルキル」基を含み、それはアルケンの部分またはアルキンの部分のいずれも含まないことを意味する。アルキルの部分はさらに「不飽和アルキル」部分を含み、それは少なくとも1つのアルケンあるいはアルキンの部分を含むことを意味する。「アルケン」部分は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する基を指し、「アルキン」部分は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する基を指す。アルキル部分は、飽和または不飽和でも、分枝鎖、直鎖あるいは環状の部分を含む。構造によって、アルキル基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりアルキレン基)を含み、「低級アルキル」は1-6個の炭素原子を有する場合を指す。
【0133】
本明細書で使用されるように、C-CはC-C、C-C...C-Cを含む。
【0134】
「アルキル」の部分は1-10個の炭素原子を随意に有する(本明細書で表される場合は常に、「1-10」等の数の範囲は、与えられた範囲の各整数を指し、この定義はまた数の範囲が指定されない場合の用語「アルキル」を包含するが、例えば「1-10個の炭素原子」は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、10個の炭素原子までを有する部分から選択されるアルキル基を意味する)。本明細書に記載される化合物のアルキル基は「C-Cアルキル」としての指定、あるいは同様の指定あり得る。例のみとして、「C-Cアルキル」は、アルキル鎖に1個-4個の炭素原子があることを示す、つまり、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルの中から選択される。したがって、C-CアルキルはC-CアルキルとC-Cアルキルを含む。アルキル基は随意に置換されているあるいは置換されていない。典型的なアルキル基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含む。
【0135】
用語「アルケニル」は、アルキル基の最初の2つの原子が芳香族基の一部ではない二重結合を形成するアルキル基のタイプを指す。すなわち、アルケニル基は、原子-C(R)=C(R)-Rで始まり、ここでRは同じか異なるアルケニル基の残りの部分を指す。アルケニルの部分は随意に分枝鎖、直鎖、あるいは環状(その場合、それは「シクロアルケニル」基としても知られる)である。構造によって、アルケニル基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりアルケニレン基)を含む。アルケニル基は随意に置換される。アルケニル基の限定しない例は、-CH=CH、-C(CH)=CH、-CH=CHCH、-C(CH)=CHCHを含む。アルケニレン基は、-CH=CH-、-C(CH)=CH-、-CH=CHCH-、-CH=CHCHCH-、および-C(CH)=CHCH-を含むが、これに限定されない。アルケニル基は随意に2-10個の炭素を有し、「低級アルケニル」は2-6個の炭素原子を有する場合を指す。
【0136】
用語「アルキニル」は、アルキル基の最初の2つの原子が三重結合を形成するアルキル基のタイプを指す。すなわち、アルキニル基は、原子-C≡CRで始まり、ここでRは同じか異なるアルケニル基の残りの部分を指す。アルキニルの部分の「R」部分は分枝鎖、直鎖あるいは環状であり得る。構造によって、アルキニル基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりアルキニレン基)を含む。アルキニル基は随意に置換される。アルキニル基の限定しない例は、-C≡CH、-C≡CCH、-C≡CCHCH、-C≡C-、および-C≡CCH-を含むが、これに限定されない。アルキニル基には随意に2~10個の炭素を有し、「低級アルキニル」は2-6個の炭素原子を有する場合を指す。
【0137】
「アルコキシ」基は(アルキル)O-基を指し、アルキルは本明細書で定義された通りである。
【0138】
本明細書で定義されるように、「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換されたアルキルラジカルを指す。ヒドロキシアルキルの限定しない例は、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル、および2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピルを含むが、これに限定されない。
【0139】
本明細書で定義されるように、「アルコキシアルキル」は、本明細書で定義されるようにアルコキシ基で置換されたアルキルラジカルを指す。
【0140】
用語「アルキルアミン」は、xとyがx=1、y=1およびx=2、y=0の中から選択される、-N(アルキル)xHy基を指す。x=2の場合、アルキル基は、それらに結合しているN原子と共に随意に環状の環系を形成する。
【0141】
本明細書で定義されるように、「アルキルアミノアルキル」は、本明細書で定義されるようにアルキルアミンで置換されたアルキルラジカルを指す。
定義されるように、
【0142】
本明細書で定義されるように、「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」は、本明細書で定義されるようにアルキルアミンとアルキルヒドロキシで置換されたアルキルラジカルを指す。
【0143】
本明細書で定義されるように、「アルコキシアルキルアミノアルキル」は、本明細書で定義されるようにアルキルアミンで置換されたおよびアルキルアルコキシで置換されたアルキルラジカルを指す。
【0144】
「アミド」は、式-C(O)NHRあるいは-NHC(O)Rを備えた化学物質の部分であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル(環炭素を介して結合した)およびヘテロ脂環式(環炭素を介して結合した)の中から選択される。いくつかの実施形態では、アミド部分は、アミノ酸またはペプチド分子と、本明細書に記載される化合物の間に結合を形成し、それによってプロドラッグが形成される。本明細書に記載される化合物の任意のアミンまたはカルボキシル側鎖はアミノ化され得る。そのようなアミドを作る手順と特定の基は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999等の情報源に見られ、それは本開示において引用によって組み込まれる。
【0145】
用語「エステル」は式-COORを備えた化学物質の部分を指し、Rはアルキル、シクロアルキル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル(環炭素を介して結合した)およびヘテロ脂環式(環炭素を介して結合した)の中から選択される。本明細書に記載される化合物の任意のヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、エステル化され得る。そのようなエステルを作る手順と特定の基は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999等の情報源に見られ、それは本開示において引用によって組み込まれる。
【0146】
本明細書で使用されるように、用語「環」は、任意の共有結合で閉じた構造を指す。環は例えば、炭素環式化合物(例えばアリ-ルとシクロアルキル)、複素環(例えばヘテロアリ-ルと非芳香族複素環)、芳香族(例えばアリ-ルとヘテロアリ-ル)および非芳香族(例えばシクロアルキルと非芳香族複素環)を含む。環は、随意に置換され得る。環は、単環式または多環式でもよい。
【0147】
本明細書で使用されるように、用語「環系」は1つ以上の環を指す。
【0148】
用語「員環」は任意の環状構造を包含できる。用語「員」は、環を構成する骨格原子の数を示すことを意味する。したがって、例えば、シクロヘキシル、ピリジン、ピランおよびチオピランは6員環であり、シクロペンチル、ピロ-ル、フランおよびチオフェンは5員環である。
【0149】
用語「縮合した」は、2つ以上の環が1つ以上の結合を共有する構造を指す。
【0150】
用語「炭素環式の」あるいは「炭素環式化合物」は、環を形成する原子の各々が炭素原子である環を指す。炭素環式化合物はアリ-ルとシクロアルキルを含む。それゆえに、前記用語は、環骨格が炭素とは異なる少なくとも1つの原子(つまりヘテロ原子)を含む複素環(「ヘテロ環式」)から炭素環式化合物を区別する。複素環はヘテロアリ-ルとヘテロシクロアルキルを含む。炭素環式化合物と複素環は随意に置換され得る。
【0151】
用語「芳香族」は、nが整数である場合に、4n+2πの電子を含んでいる、非局在化されたπ-電子系を有する平面環を指す。芳香環は5、6、7、8、9、あるいは9を超えた子から形成され得る。芳香族は随意に置換され得る。用語「芳香族」は炭素環式アリ-ル(例えばフェニル)とヘテロ環式アリ-ル(あるいは「ヘテロアリ-ル」あるいは「複素芳香環」)基(例えばピリジン)の両方を含む。前記用語は単環式または縮合環の多環式(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)基を含む。
【0152】
本明細書で使用されるように、用語「アリ-ル」は環を形成する原子の各々が炭素原子である芳香環を指す。アリ-ル環は5、6、7、8、9、あるいは9を超えた炭素原子によって形成され得る。アリ-ル基は随意に置換され得る。アリ-ル基の例は、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニルおよびインデニルを含むが、これに限定されない。構造によって、アリ-ル基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりアリ-レン基)であり得る。
【0153】
「アリ-ルオキシ」基は(アリ-ル)O-基を指し、アリ-ルは本明細書で定義される通りである。
【0154】
本明細書で使用されるように、用語「カルボニル」は、-C(O)-、-S(O)-、-S(O)-、および-C(S)-からなる群から選択される部分を含む基を指し、少なくとも1つのケトン基、および/または少なくとも1つのアルデヒド基、および/または少なくとも1つのエステル基、および/または少なくとも1つのカルボン酸基、および/または少なくとも1つのチオエステル基を包含する基を含むが、これに限定されない。そのようなカルボニル基はケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステルおよびチオエステルを含む。いくつかの実施形態では、そのような基は直鎖状、分枝状あるいは環状分子の一部である。
【0155】
用語「シクロアルキル」は、炭素と水素のみを含む単環式か多環式のラジカルを指し、随意に飽和、部分的に不飽和、あるいは完全に不飽和である。シクロアルキル基は、3-10個の原子を含む環を有する基を包含する。シクロアルキル基の実例は以下の部分:
【0156】
【化19】
【0157】
【化20】
【0158】
等を含む。構造によって、シクロアルキル基は、モノラジカルあるいはジラジカル(例えばシクロアルキレン基)のいずれかであり、「低級シクロアルキル」の場合は3-8個の炭素原子を有する。
【0159】
本明細書で定義されるように、「シクロアルキルアルキル」はシクロアルキル基で置換されたアルキルラジカルを意味する。限定しないシクロアルキルアルキル基は、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル等を含む。
【0160】
用語「複素環」は、O、SおよびNからそれぞれ選択される1-4個のヘテロ原子を含む複素芳香環およびヘテロ脂環式基を指し、それぞれの複素環基は、前記基の環が2つの隣接したOあるいはS原子を含まないという条件を備え、その環系中に4-10個の原子を有する。本明細書に、複素環中の炭素原子数が示される(例えばC-C複素環)場合は常に、少なくとも1個の他の原子(ヘテロ原子)は必ず環の中に存在する。「C-C複素環」等の指定は、環の炭素原子数のみを指し、環の原子の総数を指さない。ヘテロ環は環中に追加のヘテロ原子を有し得ることが理解される。「4-6員複素環」等の名称は、環に含まれる原子の総数(つまり、少なくとも1つの原子が炭素原子であり、少なくとも1個の原子がヘテロ原子であり、残りの2-4個の原子が炭素原子またはヘテロ原子のいずれかである、4、5、または6員環)を指す。2個以上のヘテロ原子を有する複素環では、それらの2個以上のヘテロ原子は互いに同じか別であり得る。複素環は随意に置換され得る。複素環への結合はヘテロ原子で、あるいは炭素原子を介し得る。非芳香族複素環基は、それらの環系に4個の原子のみを有する基を含むが、芳香族複素環基はそれらの環系に必ず少なくとも5個の原子を有する。複素環基は、ベンゾ縮合した環系を含む。4員複素環基の例は、アゼチジニル(アゼチジンに由来する)である。5員複素環基の例は、チアゾリルである。6員複素環基の例はピリジルであり、10員複素環基の例はキノリニルである。非芳香族複素環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルフォリノ、チオモルフォリノ、チオオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリルおよびキノリジニルである。芳香族複素環基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。上に挙げられた基に由来するような前述の基は、可能であれば随意にC-付加あるいはN-付加であり得る。例えば、ピロ-ルに由来する基は、ピロ-ル-1-イル(N-付加)あるいはピロ-ル-3-イル(C-付加)を含む。さらに、イミダゾ-ルに由来する基は、イミダゾ-ル-1-イルまたはイミダゾ-ル-3-イル(両方共N-付加)、あるいはイミダゾ-ル-2-イル、イミダゾ-ル-4-イルまたはイミダゾ-ル-5-イル(すべてC-付加)を含む。複素環基はベンゾ縮合した環系と、ピロリジン-2-オン等の1つあるいは2つのオキソ(=O)部分で置換された環系を含む。構造によって、複素環基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりヘテロシクレン基)であり得る。
【0161】
用語「ヘテロアリ-ル」あるいは代わりに「ヘテロ芳香族」は、窒素、酸素および硫黄から選択される1個以上の環ヘテロ原子を含む芳香族基を指す。N-を含む「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリ-ル」の部分は、環の骨格原子の少なくとも1個が窒素原子である芳香族基を指す。ヘテロアリ-ル基の実例は以下の部分:
【0162】
【化21】
【0163】
等を含む。構造によって、ヘテロアリ-ル基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりヘテロアリ-レン基)であり得る。
【0164】
本明細書で使用されるように、用語「非芳香族複素環」、「ヘテロシクロアルキル」あるいは「ヘテロ脂環式」は、非芳香環を指し、環を形成する1個以上の原子はヘテロ原子である。「非芳香族複素環」あるいは「ヘテロシクロアルキル」基は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むシクロアルキル基を指す。いくつかの実施形態では、ラジカルはアリ-ルまたはヘテロアリ-ルと縮合される。ヘテロシクロアルキル環は3、4、5、6、7、8、9個あるいは9個を超える原子によって形成され得る。ヘテロシクロアルキル環は随意に置換される。特定の実施形態では、非芳香族複素環は、例えば、オキソ-とチオ-を含む基等の1つ以上のカルボニルまたはチオカルボニルを含む。ヘテロシクロアルキルの例は、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、環状カルバマ-ト、テトラヒドロチオピラン、4H-ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキシン、1,4-ジオキサン、ピペラジン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツ-ル酸、チオバルビツル酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3-ジオキソ-ル、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチオ-ル、1,3-ジチオラン、イソキサゾリン、イソキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、および1,3-オキサチオランを含むが、これに限定されない。
非芳香族複素環としても示される、ヘテロシクロアルキル基の実例は:
【0165】
【化22】
【0166】
等を含む。用語ヘテロ脂環式は、単糖類、二糖類およびオリゴ糖類を含むが、これに限定されず、炭水化物のすべての環形状も含む。構造によって、ヘテロシクロアルキル基はモノラジカルあるいはジラジカル(つまりヘテロシクロアルキレン基)であり得る。
【0167】
用語「ハロ」あるいは代わりの「ハロゲン」あるいは「ハロゲン化物」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨ-ドを意味する。
【0168】
用語「ハロアルキル」は、少なくとも1つの水素がハロゲン原子と置き替えられたアルキル構造を指す。ある実施形態では、2つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き替えられ、ハロゲン原子は互いに同じである。他の実施形態では、2つ以上の水素原子がハロゲン原子に置き換えられ、ハロゲン原子は互いにすべて同じではない。
【0169】
本明細書で使用されるように、用語「フルオロアルキル」は、少なくとも1つの水素がフッ素原子で置き替えられたアルキル基を指す。フルオロアルキル基の例は、-CF、-CHCF、-CFCF、-CHCHCF等を含むが、これに限定されない。
【0170】
本明細書で使用されるように、用語「ヘテロアルキル」は、1つ以上の骨格鎖の原子が例えば酸素、窒素、硫黄、シリコン、リンあるいはその組み合わせのヘテロ原子である、随意に置換されたアルキルラジカルを指す。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の任意の内部、あるいは分子の残りに付加されるヘテロアルキル基の位置に配置される。例は、-CH-O-CH、-CH-CH-O-CH、-CH-NH-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-N(CH)-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、および-CH=CHN(CH)-CHを含むが、これに限定されない。加えて、いくつかの実施形態では、例として、-CHNH-OCHおよび-CHO-Si(CH等の2個までのヘテロ原子が連続する。
【0171】
用語「ヘテロ原子」は炭素または水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、典型的に酸素、硫黄、窒素、シリコンおよびリンの中から独立して選択されるが、これらの原子に限定されない。2個以上のヘテロ原子が存在する実施形態では、2個以上のヘテロ原子は互いに全て同じであるか、2個以上のヘテロ原子のうちのいくつかまたは全てがそれぞれ互いに異なり得る。
【0172】
結合によって連結される原子は、より大きな部分構造の一部であると考えられる場合、用語「結合」または「単結合」は、2個の原子間あるいは2つの部分の化学結合を指す。
【0173】
用語「部分」は、分子の特定のセグメントまたは官能基を指す。化学物質の部分は、分子に埋め込まれたまたは付加された化学物質としばしば認識される。
【0174】
「チオアルコキシ」あるいは「アルキルチオ」基は-S-アルキル基を指す。
【0175】
「SH」基もチオ-ル基またはスルフヒドリル基としてのどちらかを指す。
【0176】
用語「随意に置換された」あるいは「置換された」は、アルキル、シクロアルキル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリ-ルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホキシド、アリルスルホキシド、アルキルスルホン、アリ-ルスルホン、シアノ、ハロ、アシル、ニトロ、ハロアルキル、フルオロアルキル、モノ-およびジ-置換のアミノ基を含むアミノ、およびその保護された誘導体から個々に独立して選択される1つ以上の追加の基で置換され得る参照基(referenced group)を意味する。例によると任意の置換基はLであり得、各々のLは、単結合、-O-、-C(=O)、-S、-S(=O)、-S(=O)-、-NH-、-NHC(O)、-C(O)NH、S(=O)NH、-NHS(=O)、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-(置換されたまたは非置換型のC-Cアルキル)、あるいは-(置換されたまたは非置換型のC-Cアルケニル)から独立して選択され;および、各々のRは、H、(置換されたまたは非置換型のC-Cアルキル)、(置換されたまたは非置換型のC-Cシクロアルキル)、ヘテロアリ-ル、あるいはヘテロアルキルから独立して選択される。上記の置換基の保護誘導体を形成する保護基は、上記のGreene and Wuts等の情報源で見られるものを含む。
【0177】
<ACK阻害化合物>
いくつかの実施形態では、治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、ITK又はBTK阻害剤)の投与を含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する、あるいはGVHD発症の重症度を減少させる方法が本明細書に開示される。
【0178】
同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を患者に投与することを含み、治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、続いて、あるいは同時に投与される、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に、骨髄介在性疾患の緩和のために患者を処置する方法が本明細書にさらに開示される。
【0179】
本明細書に記載されるACK阻害化合物は、阻害化合物のMichael受容体部分と共有結合を形成することができる接触可能なシステインを有するキナーゼに選択的である。いくつかの実施形態では、システイン残基は接触可能か、あるいは不可逆的阻害剤の結合部位の部分がキナーゼに結合する場合、接触可能になる。すなわち、不可逆的阻害剤の結合部位の部分はACKの活性部位に結合し、不可逆的阻害剤のMichael受容体部分は接触が増える(1つの実施形態では、結合の工程はACKの中の立体構造の変化をもたらし、それゆえにシステインが露出する)か、そうでなければ、ACKのシステイン残基にさらされ;その結果、共有結合は、システイン残基の「S」と不可逆的阻害剤のMichael受容体の間で形成される。従って、不可逆的阻害剤の結合部位の部分は、結合されたまマーカー、あるいはそうでなければACKの活性部位をブロックする。
【0180】
ACKは、BTK、BTKのホモログあるいはBTKの中のシステイン481のアミノ酸配列位置と相同であるアミノ酸配列位置にシステイン残基を有するチロシンキナーゼである。いくつかの実施形態では、ACKはITKである。いくつかの実施形態では、ACKはHER4である。本明細書に記載される阻害化合物は、Michael受容体部分、結合部位の部分、および結合部位の部分とMichael受容体部分を連結するリンカ-を含む(また、いくつかの実施形態では、リンカ-の構造は立体構造を提供するか、あるいはそうでなければ特定のACKの不可逆的阻害剤の選択性を改善するようにMichael受容体部分を配向する)。いくつかの実施形態では、ACK阻害剤はITK及びBTKを阻害する。
【0181】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は式(A)の化合物及びその薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容可能な溶媒和物、薬学的に許容可能な塩類あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグであって:
【0182】
【化23】
【0183】
式中、
Aは、NまたはCRから独立して選択され;
は、H、L-(置換されたまたは非置換型のアルキル)、L-(置換されたまたは非置換型のシクロアルキル)、L-(置換されたまたは非置換型のアルケニル)、L-(置換されたまたは非置換型のシクロアルケニル)、L-(置換されたまたは非置換型の複素環)、L-(置換されたまたは非置換型のヘテロアリ-ル)、あるいはL-(置換されたまたは非置換型のアリ-ル)であり、ここで、Lは、単結合、O、S、-S(=O)、-S(=O)、C(=O)、-(置換されたまたは非置換型のC-Cアルキル)、あるいは-(置換されたまたは非置換型のC-Cアルケニル)であり;
とRは、H、低級アルキル、および置換された低級アルキルから独立して選択され;
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、随意に置換されたまたは非置換型のアルキル、随意に置換されたまたは非置換型のシクロアルキル、随意に置換されたまたは非置換型のアルケニル、随意に置換されたまたは非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、O、-C(=O)、S、-S(=O)、-S(=O)、-NH、-NR、-NHC(O)、-C(O)NH、-NRC(O)、-C(O)NR、-S(=O)NH、-NHS(=O)、-S(=O)NR-、-NRS(=O)、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル、アリ-ル、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換されたまたは非置換型のアルキル、置換されたまたは非置換型のシクロアルキル、置換されたまたは非置換型のアルケニル、置換されたまたは非置換型のアルキニル、置換されたまたは非置換型のアリ-ル、置換されたまたは非置換型のヘテロアリ-ル、置換されたまたは非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、XおよびLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0184】
【化24】
【0185】
であり、ここで、
、RおよびRは、H、低級アルキルまたは置換された低級アルキル、低級ヘテロアルキルまたは置換された低級へテロアルキル、置換されたまたは非置換型の低級シクロアルキル、および置換されたまたは非置換型の低級へテロシクロアルキルから独立して選択され;
は、H、ハロゲン、-L-(置換されたまたは非置換型のC-Cアルキル)、-L-(置換されたまたは非置換型のC-Cアルケニル)、-L-(置換されたまたは非置換型のヘテロアリ-ル)、あるいは-L-(置換されたまたは非置換型のアリ-ル)であり、ここでLは、単結合、O、S、-S(=O)、S(=O)、NH、C(O)、-NHC(O)O、-OC(O)NH、-NHC(O)あるいは-C(O)NHであり;
各々のRは、H、置換されたまたは非置換型の低級アルキルおよび置換されたまたは非置換型の低級シクロアルキルの中から独立して選択され;
各々のR10は、独立して、H、置換されたまたは非置換型の低級アルキルあるいは置換されたまたは非置換型の低級シクロアルキルである;あるいは
2つのR10基がともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
10とR11はともに5-、6-、7-あるいは8-員複素環を形成することができる;あるいは、
各々のR11は、Hまたはアルキルから独立して選択される。
【0186】
いくつかの実施形態では、式(A)の化合物はBTK阻害剤である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物はITK阻害剤である。いくつかの実施形態では、式(A)の化合物はITK及びBTKを阻害する。
【0187】
いくつかの実施形態では、式(A)の化合物は以下の構造を有し:
【0188】
【化25】
【0189】
式中:
AはNであり;
とRは各々Hであり;
はフェニル-O-フェニルあるいはフェニル-S-フェニルであり;および
はL-X-L-Gであり、ここで、
は随意であり、存在する場合、単結合、置換されたまたは非置換型のアルキル、随意に置換されたまたは非置換型のシクロアルキル、随意に置換されたまたは非置換型のアルケニル、随意に置換されたまたは非置換型のアルキニルであり;
Xは随意であり、存在する場合、単結合、O、-C(=O)、S、-S(=O)、-S(=O)、-NH、-NR、-NHC(O)、-C(O)NH、-NRC(O)、-C(O)NR、-S(=O)NH、-NHS(=O)、-S(=O)NR-、-NRS(=O)、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)O-、-CH=NO-、-ON=CH-、-NR10C(O)NR10-、ヘテロアリ-ル、アリ-ル、-NR10C(=NR11)NR10-、-NR10C(=NR11)-、-C(=NR11)NR10-、-OC(=NR11)-、あるいは-C(=NR11)O-であり;
は随意であり、存在する場合、単結合、置換されたまたは非置換型のアルキル、置換されたまたは非置換型のシクロアルキル、置換されたまたは非置換型のアルケニル、置換されたまたは非置換型のアルキニル、置換されたまたは非置換型のアリ-ル、置換されたまたは非置換型のヘテロアリ-ル、置換されたまたは非置換型の複素環であり;
あるいは、ともに得られたL、XおよびLは、窒素含有複素環を形成し;
Gは、
【0190】
【化26】
【0191】
であり、ここで、
、RおよびRは、H、低級アルキルまたは置換された低級アルキル、低級ヘテロアルキルまたは置換された低級へテロアルキル、置換されたまたは非置換型の低級シクロアルキル、および置換されたまたは非置換型の低級へテロシクロアルキルから独立して選択される。
【0192】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は(R)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン(つまりPCI-32765/イブルチニブ)である。
【0193】
【化27】
【0194】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は、AVL-263(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-292(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-291(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、BMS-488516(BristolMyers Squibb)、BMS-509744(BristolMyers Squibb)、CGI-1746(CGI Pharma/Gilead Sciences)、CTA-056、GDC-0834(Genentech)、HY-11066(CTK4I7891、HMS3265G21、HMS3265G22、HMS3265H21、HMS3265H22、439574-61-5、AG-F-54930でもある)、ONO-4059(小野薬品工業株式会社)、ONO-WG37(小野薬品工業株式会社)、PLS-123(Peking University)、RN486(Hoffmann-La Roche)、あるいはHM71224(Hanmi Pharmaceutical Company Limited)である。
【0195】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は、4-(tert-ブチル)-N-(2-メチル-3-(4-メチル-6-((4-(モルホリン-4-カルボニル)フェニル)アミノ)-5オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)フェニル)-ベンズアミド(CGI-1746);7-ベンジル-1-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)-2-(4-(ピリジン-4-イル)フェニル)-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6(5H)-オン(CTA-056);(R)-N-(3-(6-(4-(1,4-ジメチル-3-オキソピペラジン-2-イル)フェニルアミノ)-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)-2-メチルフェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド(GDC-0834);6-シクロプロピル-8-フルオロ-2-(2-ヒドロキシメチル-3-{1-メチル-5-[5-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-ピリジン-2-イルアミノ]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-イル}-フェニル)-2H-イソキノリン-1-オン(RN-486);N-[5-[5-(4-アセチルピペラジン-1-カルボニル)-4-メトキシ-2-メチルフェニル]スルファニル-1,3-チアゾ-ル-2-イル]-4-[(3,3-ジメチルブタン-2-イルアミノ)メチル]ベンズアミド(BMS-509744,HY-11092);あるいはN(5-((5-(4-アセチルピペラジン-1-カルボニル)-4-メトキシ-2-メチルフェニル)チオ)チアゾ-ル-2-イル)-4-(((3-メチルブタン-2-イル)アミノ)メチル)ベンズアミド(HY11066)である。
【0196】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤は以下の化式の通りである:
【0197】
【化28】
【0198】
【化29】
【0199】
【化30】
【0200】
いくつかの実施形態では、ACK阻害剤はITK阻害剤である。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2002/0500071に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2005/070420に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2005/079791に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2007/076228に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2007/058832に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2004/016610に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2004/016611に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2004/016600に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2004/016615に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2005/026175に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2006/065946に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2007/027594に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2007/017455に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2008/025820に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2008/025821に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2008/025822に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2011/017219に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2011/090760に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2009/158571に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤はWO2009/051822に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ITK阻害剤は米国公開特許出願第13/177657号に記載されたITK阻害化合物であり、引用によってその全体に組み込まれる。
【0201】
いくつかの実施形態では、ITK阻害剤は以下からなる群から選択される構造を有する:
【0202】
【化31】
【0203】
<医薬組成物/製剤>
本明細書の特定の実施形態において開示されているのは、治療上有効な量のACK阻害化合物と薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物(例えばイブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)は、式(A)の化合物である。いくつかの実施形態では、ACK阻害化合物は、(R)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン(つまりPCI-32765/イブルチニブ)である。
【0204】
ACK阻害化合物(例えばイブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)の医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物において、活性化合物のプロセシングを促進する賦形剤と助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用して、従来の方法で処方される。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。本明細書に記載される医薬組成物の要約は、例えば:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)(Lippincott Williams & Wilkins1999)で見られる。
【0205】
本明細書中で使用される医薬組成物は、ACK阻害化合物(例えばイブルチニブのようなITK又はBTK阻害剤)と、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤のような他の成分の混合物を指す。
【0206】
医薬組成物は、例えば単に例として従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ生成、すりつぶし、乳化、カプセル化、封入又は圧縮プロセスのような従来の方法で随意に製造される。
【0207】
本明細書に記載されている医薬製剤は、任意の適切な投与経路によって投与され、限定されないが、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)、鼻腔内、口腔、局所、直腸又は経皮投与経路を含む。
【0208】
本明細書に記載される医薬組成物は、任意の適切な剤形に処方され、限定されないが処置される個体による経口摂取のための水性の経口分散剤、液体、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー、懸濁およびその他同種、固体経口剤形、エアゾール剤、制御放出製剤、速溶解製剤、発泡性の製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、散剤、丸剤、ドラジェ、カプセル剤、遅延放出性製剤、拡張放出製剤、拍動性放出製剤、多微粒子製剤、および混合即時放出と制御放出製剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物はカプセル剤に処方される。いくつかの実施形態では、組成物は(例えばIV投与用の)溶液に処方される。
【0209】
本明細書に記載される薬学的な固体の剤形は、本明細書に記載されている化合物、及び化合物と混合可能な担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香料添加剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、潤滑剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、湿潤剤、可塑剤、安定化剤、経皮吸収促進剤、湿潤剤、消泡剤、抗酸化剤、保存剤、あるいはそれらの1つ以上の組み合わせのような薬学的に許容可能な添加剤を随意に含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition(2000)に記載されているような標準的なコーティング手順を使用して、フィルムコーティングが組成物のまわりに提供される。いくつかの実施形態では、組成物は粒子(例えばカプセルによる投与のため)に処方され、粒子の一部又は全部がコーティングされている。いくつかの実施形態では、組成物は粒子(例えばカプセルによる投与のため)に処方され、粒子の一部又は全部がマイクロカプセル化されている。いくつかの実施形態では、組成物は粒子(例えばカプセルによる投与のため)に処方され、粒子の一部又は全部がマイクロカプセル化されておらず、コーティングされていない。
【0211】
いくつかの実施形態では、各単位剤形中のACK阻害剤(例えばイブルチニブのようなBTK阻害剤)の量は、1単位当たり約140mgであるように、医薬組成物は処方される。
【0212】
<キット/製品>
いくつかの実施形態では、治療上有効な量のACK阻害剤(例えば、ITK又はBTK阻害剤)の投与を含む細胞移植を必要とする患者の移植片対宿主病(GVHD)の発症を予防する、あるいはGVHD発症の重症度を減少させるキットが本明細書に開示される。
【0213】
同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞を患者に投与する工程を含み、治療上有効な量のACK阻害化合物(例えば、イブルチニブ等のITK又はBTK阻害剤)が、同種の造血幹細胞及び/又は同種のT細胞の投与に先立って、続いて、あるいは同時に投与される、骨髄介在性疾患の緩和のために、結果的に発症した移植片対宿主病(GVHD)の緩和と共に患者を処置するキットが本明細書にさらに開示される。
【0214】
本明細書に記載されている治療上の適用で使用するために、キットと製品も本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、そのようなキットは、バイアル、チューブ、およびその他同種のもの(各容器は本明細書に記載されている方法において使用される別々の要素の内1つを含む)のような1つ以上の容器を受けるために仕切られる担体、包装あるいは容器を含んでいる。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成され得る。
【0215】
本明細書に提供される製品は包装材料を含んでいる。医薬用包装材料としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、及び選択された製剤及び意図された様式による投与や処置に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される化合物及び組成物の製剤の広範囲のアレイは、Btkの阻害によって利益を得る、あるいはBtkが症状又は病因の媒介物質又は寄与物質である、任意の障害の様々な処置として考慮される。
【0216】
容器には無菌のアクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓がある静脈用注射液バッグあるいはバイアルである)が随意にある。このようなキットは、本明細書に記載される方法におけるその使用に関する解説書、又はラベル、或いは説明書を有する化合物を任意に含む。
【0217】
キットは典型的には、本明細書に記載されている化合物を使用するために商業的に又は使用者の立場から必要な様々な材料(例えば随意に濃縮した状態の試薬、及び/又はデバイス)の1つ以上を各々が備える1つ以上の追加の容器を含んでいる。こうした材料の非限定的な例としては、限定されないが、緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ;担体、包装、容器、内容物および/または使用の説明書を列挙したバイアルおよび/またはチューブラベル、及び使用の説明書を備えた添付文書が挙げられる。1セットの説明書も典型的に含まれる。
【0218】
いくつかの実施形態では、ラベルは容器上にある、あるいは結び付けられている。ラベルを形成する文字、数字、または他の字が容器自体に付けられているか、成型されているか、あるいは、エッチングされている場合、ラベルは容器上にあり得る;ラベルは、容器を保持する入れ物または運搬装置内に存在する場合、例えば、添付文書として容器に結び付けられる。ラベルは内容物が具体的な治療適用に使用されることを示すために使用され得る。ラベルはさらに、例えば、本明細書に記載される方法で、内容物の使用のための指示を示すことができる。
【0219】
ある実施形態では、ACK阻害化合物(例えばイブルチニブのようなITK又はBTK阻害剤)を含む医薬組成物は、1以上の単位剤形を含むことができるパックまたはディスペンサーデバイス中に存在する。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属ホイル又はプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与説明書を添付することが可能である。パックまたはディスペンサに、製薬の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式で包装容器に付随した通知が添えられることもある。その通知は、人間または獣医学の投与のため薬の形式の機関による承認を反映する。こうした通知書は、例えば、処方薬又は承認された生成物の挿入物に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルである。化合物と混合可能な薬学的な担体において処方された、本明細書提供の化合物を含んでいる組成物はまた、適切な包装容器において調合、入れることができ、示された疾病の処置のためにラベル化される。
【実施例
【0220】
<実施例1:免疫再構築とcGVHDの発症>
cGVHD発症後の同種のSCT後30日目と100日目のリンパ球再構築の影響を、細胞活性化マーカー、記憶T細胞の状態、Tregサブセット、ナチュラルキラー細胞サブセット及びTh1対Th2細胞サブセットの変化の監視を可能にする、広範囲な免疫再構築フローサイトメトリー「immunome」分析を使用して評価した。cGVHDを発症した患者は、経時的に、cGVHDを発症しなかった患者と比較してCD4+T細胞の大きな増加とCD8+T細胞の小さな増加を有しており、これはCD4+T細胞の選択的な増大を示唆する。さらに、ナチュラルキラー細胞の有意な減少と、同時に起こる活性化されたB細胞の割合の増加に着目した。CD4+細胞の増加は炎症性の表現型に関連し、Th2の偏った(skewed)炎症誘発性の反応はB細胞活性化に寄与し得る。CCR3はTh2細胞において優先的に発現されるので、Th2の偏った表現型の存在は、cGVHDである患者の中で増加したCD4+/CD193+細胞の存在によって支持された。
【0221】
<実施例2:cGVHDのマウスモデル中のイブルチニブ>
確立されたインビボ同種骨髄移植(BMT)モデルシステムを、cGVHDの治療として前臨床的にイブルチニブをテストするために使用した。LP/J→C57BL/6モデルは、脱毛、発赤、剥離、痂皮、猫背(hunched posture)及び肥厚した皮膚によって特徴付けられる皮膚病変を発症する強皮症のcGVHDのマウスモデルである。このマウスモデルにおいて、外部症状は造血幹細胞移植(HSCT)後20から25日目の間に現れ、37から47日目にピークに達する。
【0222】
C57BL/6マウスは致死X線照射(850cGy)を受け、続いてMHC適合LP/Jマウスに由来する同種BMTを受けた。cGVHDの発症させるために、少数の成熟した脾臓細胞を移植に含めた。本研究は、移植後25日目及びその時点まで生存したマウスの約1/3が、強皮症、脱毛、猫背、体重減少及び皮膚の繊維症を含むcGVHDの古典的な外部徴候を発症し始めたことを実証した。それゆえに、BMT後25日目が処置の時点に選択された。
【0223】
イブルチニブは同種移植後のcGVHDの総体的症状を改善する。
【0224】
C57BL/6マウスに、850cGyの致死照射後、LP/J骨髄を移植した。移植後25日目のマウスを、ビヒクル、シクロスポリンあるいはイブルチニブのコホートに無作為に割り当て、薬剤を、水を飲む又は腹腔内注射によって投与した。体重、姿勢、毛の状態(coat condition)、皮膚の状態及び運動性を組み込むCookeらのものを改良した身体評価システムを使用して、移植後36日目あるいは39日目に評価付けを実施した。
【0225】
これらの研究は、ビヒクル又はシクロスポリンの処置群と比較して、強皮症、脱毛、体重減少及び麻痺を引き起こすcGVHDの完全な回復を可能にしたイブルチニブへの劇的な治療反応を確認した(図1A、D)。cGVHDに罹患したマウスの脱毛、強皮症、体重減少、姿勢及び運動性の評価のための以前に確立された評価モデルを使用して、治療反応の質を定量的に評価した(図1B)。本評価モデルにおいて、評価は、cGVHDである生存しているマウスの最高点を示す18を含む0(健康なマウス)から19(cGVHDにより死んだマウス)に及ぶ(図1C)。cGVHDの進行は、処置ベースラインからの全体のcGVHD評価における>2ポイントの変化として定義された。強皮症の皮膚病変の組織学的な調製は、表面の検査(図1E)と一致する、皮膚の繊維症、表皮の増殖、血清細胞痂皮(serocellular crusting)、びらん及びリンパ組織球性浸潤を明らかにした。正常な皮膚の組織学的検査を治療上のイブルチニブを受け取るマウスで観察した。
【0226】
イブルチニブは、14日目までにcGVHDの進行までの平均期間を著しく延長し、イブルチニブで処置されたマウスの33%(18のうちの6)は、ビヒクルを受け取るマウスの12%(18のうちの2)と、10mg/kg/日のシクロスポリンを受け取るマウスの10%(11のうちの1)と比較して進行しないままであった(p<0.02)(図5)。シクロスポリンとビヒクルの群の82%及び88%のそれぞれの生存と比較して、イブルチニブのコホートの100%の生存を観察した。マウスの体重の毎週の評価は、イブルチニブで処置された、平均より若干重いマウスの群間の変動がほとんどないことを明らかにした。
【0227】
Tregはイブルチニブによって阻害されなかった。
【0228】
同種BMTレシピエントにおいて、Treg(調節性T細胞)は、末梢内の自己反応性のT細胞を積極的に抑制することによりcGVHDを制御するが、残念なことに、最新の治療はTregの発生あるいは機能性を破壊する。Tregに対するイブルチニブの効果を検討するために、C57BL/6マウスを、イブルチニブ(25mg/kg/日)あるいはビヒクルで9週間処置し、FoxP3+CD4+細胞の割合を末梢血上のフローサイトメトリーによって分析した。加えて、精製したCD4+CD25hiCD127dim CD49d-FoxP3+Tregを、1μMのイブルチニブあるいはビヒクルで前処理し、1:0、1:1、2:1、4:1、8:1及び16:1の異なるレスポンダー:サプレッサーの比率で、CFSEで標識された自己由来のCD8+レスポンダー細胞と混合した。抗CD3/CD28/CD2刺激ビーズ(beads)を加え、刺激を6日後にCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)希釈計算分裂インデックスによって評価した。負の対照のウェルは刺激ビーズを含んでいなかった。
【0229】
インビトロのデータは、9週間の連続的なイブルチニブ治療の後にイブルチニブが全体のTreg数を減らさなかったことを示した(図2A)。インビトロのデータは、インビトロのT細胞抑制分析によって分析されるようなイブルチニブ処置の後にヒトTregの抑制機能が維持されたことを示した(図2B)。データは、イブルチニブが、移植片対腫瘍効果にとって重要であるTregの機能を維持すると同時に抗宿主免疫を抑える能力を有することを示した。
【0230】
Th2免疫はイブルチニブによって阻害された。
【0231】
細胞内染色は、イブルチニブで処置され、TCRで刺激されたCD4+T細胞中のIFNγとIL4で実施した。刺激に続いて、有意な減少は、CD4+T細胞のIL4を生産するTh2母集団の中で確認したが、IFNγを生産するTh1細胞は大部分で影響を受けなかった(図3A)。これらのデータは、2つの細胞集団の有意な相違(divergence)が0.1-1μMに及ぶイブルチニブ投与量で精製されたT細胞培養物の中で達成されたことを確認した。この投与量範囲は、マウスとヒト臨床試験の両方においてイブルチニブの薬物動態試験の間にインビボで観察された血清中濃度と一致していた。イブルチニブが引き起こすTh1サイトカインの偏りの長期的な意味を評価するために、IgGサブアイソタイプ分析を、8か月齢のC57BL/6 EμTCL1マウスのコホートで実施した。これらのマウスはイブルチニブ(25mg/kg/日)あるいはビヒクルで7か月間続けて処置された。結果は、インビボのイブルチニブに関連するTh1の偏りを確認して、IgG1(Th2)及びIgG2c(Th1)の相対的なレベルによって測定されるようなTh1/Th2比率の有意な(p=0.002)反転(inversion)を明らかにした(図3B)。
【0232】
Th17免疫はイブルチニブによって阻害された。
【0233】
cGVHDでは、不完全な胸腺の前処置(conditioning)の結果、同種反応性Th2及びTh17 T細胞が、線維症促進経路とB細胞自己抗体産生を駆動するという一般の関連がある。Th17細胞の役割を与えられる、この特定のT細胞サブタイプに対するイブルチニブの効果を調査した。健康なドナーのTh17細胞を、ビヒクル又は1μMのイブルチニブでの30分の前処理に続いて、CXCR3-CD4+CCL6+の単離と12時間のTCRの刺激を使用して、新たに単離された健康なドナーPBMCから磁気的に単離した。CD4+T細胞を分泌するIL17の割合を、細胞内のサイトカインの染色によって定量化し、ビヒクル処置で標準化した(図4)。データは、イブルチニブがTh17細胞のTCRに引き起こされる活性化を制限することを示した。
【0234】
イブルチニブはcGVHDに引き起こされる器官損傷を治療的に制御した。
【0235】
外部的に測定可能なcGVHDの測定基準に加えて、LP/J→C57BL/6モデルが肺及び腎のcGVHDを発症したことが組織学的な評価で明白に分かった。H&Eで染色された切片の評価は、イブルチニブ治療が肺実質の至る所及び腎臓間質内の細気管支と微小血管の周囲のリンパ球、形質細胞及び組織球のcGVHDに引き起こされる凝集体を全身的に制限したことを明らかにした。免疫組織化学は、イブルチニブ処置群中で観察されなかったビヒクルとシクロスポリン両群中のCD3+T細胞の腎の浸潤に加えてB220+B細胞とCD3+T細胞の肺浸潤を明らかにした(図6A)。熟練の獣医病理学者によるコード化された病理学の分析は、イブルチニブがこのモデルの内部全身性のcGVHDを改善することを確認した(図6B及びC)。
【0236】
追加の長期治療の実験を実施した(図6D)。
もう一度、ビヒクル対照と比較して、イブルチニブは有意にcGVHDの進行を制限した(P=0.0019)。
さらに、60日での治療の中止が、単一のマウス(6のうちの1)の臨床上の大きな進歩となるcGVHDを許容することもわかった;しかしながら、これは統計的に有意ではなかった。同様の傾向は外部のcGVHDの評価によって観察された。75日の肺及び腎組織内の内部cGVHD病状の分析は、連続的な長期的なイブルチニブがcGVHDの制御においてより効果的であることを示唆した;特に、肺と腎臓の内部病状は、BMのみのレシピエントの中で軽減されず、これはヒト同種HSCTレシピエントで観察されるものに似ている移植片からのT細胞の排除にもかかわらず、このモデルにおいて一定のcGVHD内部病状が持続することを示している。HSCTの2日前に開始し、25日目で終えた予防的なイブルチニブの処置は、cGVHDの進行における有意な改善をもたらさず、これはT及びB細胞の反応がより完全に発生した際に、イブルチニブが最も有効になることを示唆する。
【0237】
<実施例3:cGVHDである患者の細胞のCD4 T細胞及びB細胞活性化のイブルチニブの阻害>
イブルチニブによって阻害されたcGVHD患者の細胞のCD4+T細胞活性化。
【0238】
主なCD4+T細胞は活性型のcGVHDである患者から単離され、1μMのイブルチニブ(あるいはDMSO)で前処理され、抗CD3を用いて6時間刺激された。各患者の活性型T細胞の割合の定量化は、DMSOと比較して、イブルチニブで前処理された細胞でCD69+CD4+T細胞の母集団の有意な減少を示した(図7A)。
【0239】
イブルチニブによって阻害されたcGVHD患者の細胞のB細胞活性化。
【0240】
cGVHDである患者から単離されたB細胞は、1μMのイブルチニブで前処理され、抗IgMで45分間刺激された。pERK1/2、pBTK及びpPLCγ2のリン酸化部位特異的抗体を使用するB細胞受容体経路活性化の分析は、イブルチニブがB細胞受容体経路を阻害するのに有効であることを明らかにした(図7B)。これらのデータは、イブルチニブが、活性型のcGVHDの状況において、ヒトB及びT細胞の免疫の受容体の活性化を削減することを確認した。
【0241】
<実施例4:CLL及びリンパ腫におけるイブルチニブの臨床研究>
CLLの16人を含む56人の患者が、イブルチニブの初期第I相試験で処置された。7つのコホートが評価された:1日当たり8.3mg/kg又は1日当たり560mgの固定用量で、28日間処置され7日間休薬するスケジュールの患者の5つのコホート、及び連続的な服薬スケジュールで処置される患者の2つのコホート。患者は、中央値として以前に3つのレジメンを受けており、年齢の中央値は65で、最年長の患者が82歳であった。最大耐量に到達していない量で、2つの用量制限毒性だけが観察され:それは薬剤過敏症の病歴のある患者においてグレード3のアレルギー性過敏症;及び一時的なグレード2の好中球減少症による7日以上の投与の中断であった。評価するために競合結合測定法を使用したところ、≧95%のBTKの占有率は、2.5mg/kg/日を受け取るすべての患者において投与後4時間で達成された。したがって、1日当たりに与えられる420mg及び840mgの投与量が、更なる研究のために選択された。腫瘍反応を評価できる50人の患者のうち、60%が客観的反応(CR又はPR)を達成した。CLL/SLLの16人の患者のうちの11人を含めて、すべての組織学的検査に渡って反応を観察した。反応したCLLのすべての患者は、絶対的なリンパ球数の増大が伴った最初のサイクルの間に、リンパ節腫大の迅速な減少を有し、1人以外のすべての患者は、IWCLL基準のPRを満たすALCの最終的な減少を有していた。反応は13.6か月の中央無増悪生存期間を備え、耐久性(durable)があった。
【0242】
第I相試験で見られたCLL患者の印象的な反応に基づいて、第Ib/II相試験をCLLの患者で実施した。1日当たり420mgあるいは1日当たり840mgの固定用量でイブルチニブを評価する5つのコホートのうちの1つに患者を登録した。コホートは、以下の患者を評価した。該患者は、65歳以上の治療未経験の患者、プリンヌクレオシドアナログを含む以前に2つ以上の選択処置後再発した又は難治性である患者、あるいは化学免疫療法を受けた2年以内に再発のおそれがある又はdel17pの存在があるハイリスクの患者を含む。116人の患者を登録した:31人の治療未経験の患者、再発性又は難治性のコホートの61人及び24人のハイリスクの患者。全体の中央値の追跡は16.6か月であり、再発性/難治性及びハイリスクのコホートの両方において中央値が4つの以前の治療を備えていた。注目した最も一般的な有害事象は、下痢、疲労、上気道感染症、発疹、悪心及び関節痛であり、大部分はグレード2あるいは2より低かった。重要なことには、累積的な毒性の証拠は報告されなかった。進行した病期、以前の治療の増加、より高いベータ-2-ミクログロブリン、あるいは予後不良(poor-risk)の細胞遺伝を含む予後不良因子に依存しない反応を観察し、再発性/難治性のコホートのdel17pを有する患者において67%のORRだった。再発性/難治性及びハイリスクのコホートにおける85人の患者の推定された22か月のPFSは76%であり、31人の治療未経験の患者では96%だった。これらの2つの群の推定された22か月の全生存期間はそれぞれ85%及び96%だった。いずれのコホートも無増悪及び全生存期間の中央値は、その期間を満たしていなかった。
【0243】
<実施例5:ステロイド耐性又は難治性の慢性移植片対宿主病(cGVHD)患者におけるイブルチニブの臨床研究>
cGVHDとその関連する免疫不全は同種のSCT生存者の非再発期死亡(NRM)の主要原因であることを確認した。健康な兄弟姉妹と比較して、cGVHDのSCT生存者は重症あるいは生命に危険のある健康状態に4.7倍程度なりやすく、活性型のcGVHDの患者は、cGVHDの病歴のない同種SCT生存者より、悪い健康状態、精神衛生、機能障害、活動制限及び疼痛がより報告されやすいようである。リツキシマブにかかわらず、ステロイド難治性のcGVHDの多くの治験薬のこれまでの奏効率は約30%であり、これは、ステロイドによる依存を減らし生活の質及び生存を改善する、効果的な関与を明確に必要とする患者集団である。イブルチニブは、BCR経路の阻害によってBリンパ球のアポトーシスを引き起こし、BAFF等のサイトカインによって媒介される多数の外部微環境生存信号に拮抗し、それはTh2の偏りを逆にすることができる。それゆえに、それは、下痢、疲労、上気道感染症及び発疹、並びにグレード2以下の最も一般的な毒性を備えた、再発性あるいは難治性のB細胞リンパ腫及びCLL患者の処置において安全であることをこれまでに示した。重要なことに、蓄積毒性が無いことが認められ、これは薬の長期使用を可能にする。それに比べて、cGVHDを治療するために使用されるステロイド及びカルシニューリン阻害剤の長期使用は副作用を引き起こすことが知られており、これはcGVHD患者で見られた病的状態及び死亡率の多くをもたらす。初期の臨床試験におけるイブルチニブの耐用性とその作用機序に基づいて、これが耐容性の良好な薬剤であり、cGVHDに対する臨床的有効性を備えていることが期待された。
【0244】
cGVHDに使用された際の、イブルチニブの安全性及び有効性を評価するという主要目的において、イブルチニブがステロイド依存/難治性のcGVHD患者においてよく許容され、30%のこれまでの奏効率と比較して、12週での応答を改善することが期待される。さらに、イブルチニブの使用がステロイドのより速い減量を可能にし、これまでの制御と比較して、1年及び2年での生活の質の向上に寄与することが期待される。患者がより少量のコルチコステロイドにさらされるため、原疾患の再発率は、第II相試験においてイブルチニブが裏付けられた有効性を有するリンパの悪性腫瘍のための移植を受ける患者においてとりわけイブルチニブで改善することが期待される。イブルチニブはITKに対して効果があるため、制度的管理と比較して、この調整でのイブルチニブの使用は、フローサイトメトリーによる免疫再構成の連続的な評価を通じて評価されるTh1表現型の方へ傾く。さらに、機能と多くのTregを維持している間、それはTh17細胞の活性化を阻害し、それによって、GVHDを処置する間に移植片対腫瘍効果を維持する。
【0245】
研究の目的:
【0246】
1.主要評価項目:
【0247】
慢性GVHDのために与えられた場合のイブルチニブの安全性を決定すること(第Ib相部分)
【0248】
ステロイド難治性又は-抗ステロイド性の慢性GVHDの処置としてイブルチニブを使用して、12週での奏効率(CR+PR)を評価すること(第II相部分)
【0249】
2.副次的評価項目:
【0250】
12週、6か月、1年、及び2年でのステロイドの用量へのイブルチニブの影響を評価すること
【0251】
6か月、1年及び2年での応答を評価すること
【0252】
1年及び2年での全生存率を評価すること
【0253】
1年での再発率(原疾患とcGVHDの症状の両方)を評価すること
【0254】
処置中のグレード3-5の感染の発生率を評価すること
【0255】
1年及び2年での生活の質を評価すること
【0256】
1年及び2年での免疫再構成に対する効果を評価すること
【0257】
選択基準:
【0258】
1.コルチコステロイド(処置の少なくとも1か月間の少なくとも0.5mg/kg/日あるいは1mg/kg/1日おきのプレドニゾンと同等)に対して耐性又は難治性である代表的あるいは重複した慢性のGVHD。臓器特異的な局所両方が許される。
【0259】
2.血液悪性腫瘍のための同種の幹細胞移植の経歴
【0260】
3.登録時点で18-75歳
【0261】
4.イブルチニブの最初の用量の投与の7日間以内では、患者は、次のとおりの適切な臓器の機能とパフォーマンスステータスを有していなければならない:
【0262】
好中球絶対数(ANC)≧500/μL
【0263】
血小板≧30,000/μL
【0264】
cGVHDに起因せずジルベール病によらなければ、総ビリルビン≦施設の標準上限値の2.5x
【0265】
cGVHDに起因しなければ、AST(SGOT)≦施設の標準上限値の2.5x
【0266】
クレアチニンクリアランス≧40mL/分
【0267】
5.ECOGパフォーマンスステータス≦2
【0268】
6.平均余命≧12週
【0269】
7.本試験プロトコルにおいて必要とされるすべての評価と手順に参加することができ、自発的である
【0270】
8.試験の目的とリスクを理解し、署名と日付をつけたインフォームドコンセント及び保護された健康情報(国及び地方の被検者のプライバシー規制に従って)を使用する認可を提供することができる
【0271】
除外基準:
【0272】
1.イブルチニブの開始4週間以内の新しい免疫抑制
【0273】
「現在活性のある」悪性腫瘍。但し、移植の主な徴候のほかに、適切に処置され、被検者が少なくとも2年間無病であった基底細胞あるいは扁平上皮細胞皮膚癌、インサイチュ子宮頸癌、あるいはその他の癌であって寿命を2年未満に制限しないものは除く。
【0274】
3.治験責任医師の見解において、被検者の安全性を危険にさらす、あるいは試験結果を過度の危険にさらす生命にかかわる病気、病状あるいは臓器系の機能不全
【0275】
4.活性があり制御できない細菌、真菌あるいはウイルス感染
【0276】
5.スクリーニングの6か月以内の重要な素因の欠乏(つまり重症の自己免疫性溶血性貧血あるいは敗血症)における制御できない又は徴候的な不整脈、うっ血性心不全あるいは心筋梗塞等の重要な心疾患、あるいはニューヨーク心臓協会機能別分類によって定義されるようなクラス3又は4のいずれかの心臓病
【0277】
6.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、あるいはC型肝炎ウイルス(HCV)又はB型肝炎ウイルス(HBV)の活性のある感染、あるいはいずれかの制御できない活性のある全身感染症の既知の病歴
【0278】
7.造血幹細胞移植後の併用的な抗悪性腫瘍の治療
【0279】
8.授乳中、あるいは妊娠している
【0280】
9.試験の間及び治験薬の最終投与後30日間、非常に効果的な避妊(例えば、コンドーム、インプラント、注射剤、混合経口避妊薬、いくつかの子宮内避妊器具[IUD]、禁欲、あるいは不妊化したパートナー)を使用することに合意しない(注:出産の見込みのある男性と女性にのみ当てはまる)
【0281】
試験デザイン:
【0282】
1.概要
【0283】
これは、耐ステロイド性又は難治性の慢性移植片対宿主病(cGVHD)患者のための非無作為化、非盲検第Ib/II相試験であり、血液悪性腫瘍のための同種幹細胞移植後の少なくとも1か月間の少なくとも0.5mg/kg/日あるいは1mg/kg/1日おきのプレドニゾン処置と同等である。患者がカルシニューリン阻害剤使用中であり、そのレベルが、試験開始時で5ng/ml未満ならば、それは中止される。登録に続いて、患者は、投与量がよく許容され、BTK活性部位の90%がこの投与量に占められることを実証するための血液悪性腫瘍の第I相及び第II相試験に基づいて、1日当たり420mgのイブルチニブで開始される。文書化と追跡の容易さのため、1サイクルは28日として定義される。処置は経口であり、外来患者方式で投与される。最初の6人の患者は、用量制限毒性(DLT)評価期間の対象である。DLT期間は薬剤の最初の投与に続く28日間であり、6番目の患者は、増加(accrual)が継続できる前に、DLT期間を完了しなければならない。DLTは下記のように定義される:グレード2の急性移植片対宿主病(生検で証明されることが望ましいが必須ではない);疾患進行の無い無処置期間の14日間に続いて、ベースラインの80%又はそれ以上にまで改善しないグレード4の血小板減少症;グレード4の発熱性好中球減少症あるいは感染;7日以内に回復しないグレード3の発熱性好中球減少症あるいは感染;感染を除く全てのグレード4の非血液毒性;及び最適な置換療法によって治療されなければならないグレード4の電解質異常。
【0284】
最初のステロイド減量はイブルチニブの開始に続く4週間でスタートし得るが、ステロイドの用量は第3サイクルの終わり(12週)までに開始用量の50%未満ではないことがある。患者は、各サイクルの初めに、包括的なcGVHDの評価を備えた身体検査を受ける。患者はサイクル3の終わりに反応を評価され、症状に改善がなければ治療不成功と考えられ、彼らは試験を終了する。さらに、サイクル3の終わりの反応評価に先立って、cGVHDのための補足処置を必要とする患者は治療不成功と考えられ、これらの患者は試験から取り除かれる。患者が12週の評価でCR又はPRであれば、彼らは毎日のイブルチニブを継続し、一方でステロイドは減量される。一旦ステロイドが減量されると、イブルチニブは中止することができる。患者が、1年の評価時点でステロイド投与量の減少を可能にする臨床上の利益を得ていれば、彼らは最長で24か月間試験を継続することが許される。GVHDは毎月評価され、免疫の再構成、B及びT細胞活性化、血清免疫グロブリン及び血清BAFFレベルを含む関連研究が3か月毎に評価される。LEEのcGVHD症状スケール、10段階のcGVHD活性評価、FACT-BMT、SF36及びヒト活性プロファイルを含む症状の負荷と生活の質の試験は、12週、6か月、1年及び2年で評価される。
【0285】
2.イブルチニブ治療
【0286】
イブルチニブは28日のサイクルの毎日、投与される。イブルチニブの最初の投与はC1D1を定義する。固定服量の420mgが投与される。NIH consensus criteria35による包括的な慢性移植片対宿主の評価は、臓器特異及び・全体的な評価を決定するためにベースラインで行なわれる。包括的な評価はサイクル3の終わりに繰り返される。この試験は、第Ib/II相試験のデザインを使用して実施され、第II相部分は、Simon optimal 2 stage designとして行われる。第Ib相部分に登録された6人を含む、最初の15人の患者の多くとも5人が、12週の評価でCR又はPRの証拠を持っていれば、試験が無駄のために中止される。臨床反応が見られる場合、処置する医師の裁量で、プレドニゾンの最初の減量はイブルチニブの開始後2週間で始まることがある。プレドニゾンは12週の評価期間までに最初の投与量の50%未満に減量されないことがあり、最初の投与量以下のステロイド投与量の増大を必要とするステロイド減量中のcGVHD症状の増大は、進行と考えられない。しかしながら、患者がどの時点でも最初の投与量より多いステロイド投与量あるいはcGVHDの新しい処置の追加を必要とする場合、これが疾患進行の証拠と考えられ、試験からの除外を必要とする。cGVHD患者のおよそ66%が進行すると予想されるため、患者の75%以上がサイクル3の終わりに評価に先立って進行すれば、治療にかかわらず、中止規則のトリガーとなる。ステロイドが減量されるまで、毎日のイブルチニブは継続する。特定のプレドニゾン減量スケジュールは決められていない。一旦ステロイドが止まったら、イブルチニブはさらに4週間継続し、その後中止する。患者は2年間イブルチニブを継続することがあり、イブルチニブを中止することができる患者は、副次的評価項目のための処置のスタートから2年間追跡される。
【0287】
エンドポイント/統計考察:この試験は、第Ib相部分及び第II相部分の2部で実施される。6人の患者が、試験の第Ib相部分に最初に登録される。最大耐量(MTD)評価と類似しているので、これらの6人の患者の多くとも1人が28日間の観察期間にDLTを経験すれば、レジメンは十分に耐えられると考えられ、その場合には、試験は第II相部分に進む。Simon optimal two-stage phase II designを使用して全奏効率が50%になる対立仮説に対して、全奏効率が30%になる帰無仮説をテストするために、有意水準片側0.1で検出力80%の場合、32人の患者が必要である。発明者によって毎年実施する100以上の同種移植の、これらのおよそ半分が結局cGVHDを発症する。これらのおよそ50%は、ステロイドによる最初の処置に反応しない疾患を有し、これは、オハイオ州でcGVHDのおよそ20の症例を毎年もたらしている。試験が一つの施設で行なわれる場合にほぼ3年の増加期間(accrual period)をもたらす、1か月当たりおよそ1人の患者を得ると予想される。移植量は、ノースカロライナ大学とシカゴ大学でわずかに低いため、これら2施設の追加で、それがおよそ24か月で完全に得られると予想される。第1期の15人の患者の多くとも5人が12週の評価点で反応すれば、試験は終了する。多くとも12人の患者が全面的に反応すれば、この処置は一層の追跡に価値があると考えられない。一般に、処置にかかわらず、処置開始後6か月までに、患者のおよそ66%が疾患の進行を持つことが予想される。したがって、中間解析のカットオフに先立って登録された患者の75%以上が、最初の12週(4人の患者のうちの3人、8人の患者のうちの6人、及び12人の患者のうちの9人)以内に処置の拡大を必要とする悪化しているcGVHDを発症した場合、中止規則のトリガーとなる。
【0288】
反応はGVHDのグレード分けのNIHコンセンサス判定基準によって評価される。
【0289】
完全寛解(CR)はGVHDに起因する症状の完全な回復として定義される。
【0290】
部分応答(PR)は、どこにも進行の証拠が無く、補足全身治療を必要としないことを備えた、1つの関連する臓器において客観的な反応の存在として定義される。
【0291】
追跡の長さは24か月になり、推定された増加期間は2年になる。
【0292】
患者の特徴は、連続変数の中央値と範囲、及びカテゴリー変数の頻度と割合として示される。研究の相関は、記述統計を使用して各時間点で要約される。ノンパラメトリックウィルコクサン符号付順位検定は、関連する試験のベースライン値と比較するために使用される。生活の質の相関において、0.5の標準偏差の変化は統計的に有意であると考えられる。ロジスティク回帰モデルは、将来の試験においてより進んだ研究が検討するその価値の相関を見つけることを可能にする。時間経過プロットは各患者で作成され、反復測定分散分析は関連性を探るために使用される。κ統計量は、生活の質の測定でNIH反応と臨床的に意味のある改善の間の一致を評価するために使用される。
【0293】
<実施例6:CLL/GVHD症例研究>
ハイリスク17p del型CLLである52歳の男性を、2002年11月に初めて診断した。2003年に、彼は、フルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ(FCR)の6サイクルで最初に処置され、完全奏効を達成した。彼は1年後、右胸水及び後腹膜/腸間膜リンパ節を再発した。2006年12月、末梢血蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、細胞の23パーセントで17pが欠失していることを示し、CTスキャンはアデノパシーの増加を示した。2007年3月に、彼の骨髄は富細胞性となり、CLLが広がって浸潤した(CD45+細胞の62パーセント)。2007年4月までに、彼はFCRを再開し、部分奏効(44パーセントのCD45+細胞を備えた持続的な疾患を示す骨髄)を備えた4サイクルを受けた。彼の持続的な疾患とp17 delの診断のために、彼は合計20用量のキャンパス(アレムツズマブ)を受け取った。また、続く2007年10月の骨髄生検はCLLを示さず、PET/CTは陰性だった。
【0294】
2007年11月、患者は全身リンパ組織放射線照射と抗胸腺細胞グロブリン(TLI/ATG)を使用して、彼のマッチした血縁関係のある兄弟ドナー(姉妹)からの末梢血幹細胞を動員したGCSFの注入を備えた、非骨髄破壊性同種造血幹細胞移植を受けた。彼の口腔移植片対宿主疾患(GVHD)の予防はシクロスポリン(CSA)とミコフェノール酸モフェチル(MMF)からなった。彼は、移植後56、63、70及び77日目にリツキシマブ375mg/m2が注入されることを組込んだスタンフォード研究プロトコル(BMT 172)において移植された。
【0295】
患者の移植後の経過は、2008年にリツキシマブの9用量で処置された感染合併症(多肺葉性の菌による肺炎、インフルエンザA型、水痘帯状疱疹再活性化)及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)によって悪化した。患者はHCT移植後に十分なドナーキメリズムを達成しなかった。2008年9月までのHCT後およそ9か月、彼は、先の試験から複数の腹膜後のアデノパシー拡大を示したフローサイトメトリーとCTスキャンによって疾患が進行していることが分かった。患者の混合ドナーキメリズムと疾患進行により、患者は合計5つのドナーリンパ球輸注療法(DLI)を受けた。
【0296】
患者の最初のDLIは、1x107ドナーCD3+細胞/kgレシピエント体重の投与量で2008年9月に与えられた。GVHDまたは疾患反応はない。彼は、3x107ドナーCD3+細胞/kgレシピエント体重の投与量で2008年11月に第2のDLIを受けた。彼は、DNAのmcg当たり268,000のクローンIgH配列から120までの減少という、彼の対立遺伝子特有オリゴヌクレオチド(ASO)定量の結果において、それが減少していることが分かった。軽度の中咽頭慢性GVHDに関連して、2009年1月に90%までのドナー血液T細胞キメリズムの増大がさらにあった。2009年4月の骨髄生検は10%のみのCLLを示した。彼は、5x107ドナーCD3+細胞/kgレシピエント体重の投与量で2009年5月に第3のDLIを受けた。患者は、さらにリツキシマブのサイクル(この期に4用量分)を受けた。彼の第3のDLIのおよそ18日後に、彼は、DLI注入の日の71パーセントから、11日後に87パーセント、25日後に97パーセントまでのドナーT細胞キメリズムの劇的な増大に関連した紅斑と潰瘍を備えた、口腔GVHDを発症した。彼は、GVHDの全身性ステロイド治療を必要としなかったが、必要な局所治療とそれは、約1年間続いた。
【0297】
2009年の夏、患者のPET/CTスキャンは、40から50パーセントのCLLを備えた、胸/腹と骨髄生検の大きな(bulky)疾患を備えた疾患進行を示した。この持続的な疾患については、患者は、続いて、OFAR(オキサリプラチン、フルダラビン、シタラビン、リツキシマブ)の4サイクルの併用化学療法で処置された。2009年12月、患者は、5x107ドナーCD3+細胞/kgレシピエント体重の投与量で第4のDLIを受けた。OFARに続いて、彼のドナーキメリズムが95パーセント以上に達した時、GVHDは再燃した。しかしながら、彼の疾患は持続し、そのため、彼は、1x106ドナーCD3+細胞/kgレシピエント体重の投与量で2010年2月に第5のDLIを受けた。彼の口腔GVHDは局所的なステロイド処置を必要とした。5月に実施された彼の骨髄生検はまだ50パーセントのCLLを示した。
【0298】
2010年8月までに、患者のPET/CTは、直径12センチメートルまでの腹部腫瘤を含む、迅速に進行する疾患と重症のリンパ節症再発の再発を示した。2010年9月、患者はスタンフォードの血液学グループによってイブルチニブ(口腔BTK阻害剤)を備えた臨床試験に登録され、イブルチニブの3年以上の治療を完了し、骨髄及びCTの両方で完全寛解を達成した(図8を参照されたい)。加えて、彼の口腔GVHDの症状は完全に回復し、彼は永続性の十分なドナーキメリズムを達成した(図8を参照されたい)。
【0299】
要約すると、この同種HCT後のCLL患者は、イブルチニブ治療で回復した中咽頭慢性GVHDを備えた難治性のCLLに罹患していた。彼のCLLは、B細胞IgHシーケンシング(CLONOSIGHT微小残存病変テスト(Sequenta,Inc.))を使用しても検出できなかった。また、彼は慢性GVHDのない十分なドナー移植を達成した。
【0300】
<実施例7:OVAトランスジェニックマウスと交雑させたAMLのネマウスモデルの研究>
研究は、OVAトランスジェニックマウスと交雑させたAMLのFLT3ITDMLLPTDモデルを使用して実施し、これは、免疫追跡タンパク質のOVAを発現する移植可能な白血病を発症する。マウスが末梢循環中で総CD45+細胞の20%を超える白血病の負荷に達した時、それらはイブルチニブ、ビヒクルあるいはシクロスポリン処置コホートに無作為に割り当てられた。処置開始の2日後に、それらは致死照射と、これに続いて生存可能なAML白血病細胞と共にマイナーMHCミスマッチLP/Jマウスから骨髄細胞及び脾細胞の移植を受けた。抗腫瘍免疫と再発は、OVA四量体陽性CD8 T細胞の分析と、白血病細胞を循環させる存在によってモニターされた。現在までに処置されたマウス中で、シクロスポリン群と比較して、イブルチニブ群ではより再発が少ないという明確なシグナルがあった。
【0301】
<実施例8:同種間移植に続く、再発したCLLのイブルチニブ処置:維持された疾患反応と期待できるドナーの免疫調整>
この実施例は、同種の造血細胞移植(allo-HCT)に続いて再発した5人のCLL患者のイブルチニブのサルベージ療法の効果を実証する。微小残存病変(MRD)反応測定に加えて、イブルチニブ治療に続くドナーT細胞キメリズムとドナーB細胞の免疫再構成も評価された。ハイリスクCLLの5人の患者が、同種HCTに続く1-8.5年で再発した4人の患者は、減少した移植の効力に続いて、ドナーCD3 T細胞キメリズム>95%を達成したことがない。1日当たり420mgのイブルチニブは、臨床的再発の後、1か月-2年で開始された。5人の患者のうちの4人は、3-17か月に及ぶ処置コースのイブルチニブにとどまった。CLL MRDはCLONOSIGHT微小残存病変テスト(Sequenta,Inc.)を使用して、IgH高性能配列解読装置(HTS)によって測定され、それは、100万の白血球当たり1つのCLLクローンを検知する感度を持っている。リンパ節(LN)のサイズはCTスキャンによって評価され、LN直径(SPD)の生成物の合計として報告した。ドナーB細胞の再構成は、合計のIgH分子と特有のIgHクローン型のIgH HTS定量によって決定された。リンパ球増加症は、イブルチニブ処置の開始に続く5人の患者すべてで観察され、これは以前の報告と一致している。イブルチニブ処置を>1年受けた2人の患者では、リンパ球増加症は、処置の開始後3週及び8週でピークに達し、その後ゆっくり減少し、1年以内に完全に回復した(図10A)。処置に先立った病的なリンパ節症の4人の患者はみな劇的なLN減少(図10B;イブルチニブの3か月後のLNサイズの68%の平均的な減少)を経験した。追跡の最長期間は、患者SPN 3975において報告され、この患者は17p欠失であり、39ヶ月間イブルチニブを受けた。CLL MRDがCLONOSIGHT微小残存病変テストによって検出できなくなった後、処置が中止された(図10C)。ドナーT細胞の免疫調整の証拠は、6か月後の口腔及び皮膚の慢性移植片対宿主病(GVHD)の回復と、1年後の十分なドナーCD3キメリズムの達成を含んだ。この患者は>8か月イブルチニブから離れていたが、十分なドナーのキメリズムは持続され、CLL MRDは検出できないままであった(図10C)。イブルチニブ処置の前に、ドナーB細胞(患者のCLLクローンを除く)は、IgH HTSによって決定されるような総PBMCの<0.2%を占めた。イブルチニブの中止に続いて、ドナーB細胞の割合はPBMCの>1%まで6か月以内に増加した(図10D)。さらに、B細胞の回復には多様な低頻度のIgHクローン型があった(図10E)。これらの発見物はともに、イブルチニブ中止に続くCLL再発のない迅速で、維持された、多様な免疫再構成を示す。イブルチニブは同種HCTに続くCLL再発に効果的なサルベージ療法を提供した。移植CLL再発後は、しばしば余分な結節点であり、我々の経験は、イブルチニブが結節点及び余分な結節点の疾患の両方を取り除くのに効果的なことを示す。MRD陰性を達成した後に治療を止めた1人の患者は、イブルチニブ中止に続く8か月間検出できない疾患を維持する。イブルチニブの処置は、慢性GVHDの十分なドナーキメリズム及び回復の促進により、ドナーの免疫調整を見込めることを実証した。これらのデータは、同種HCTに続いて再発したCLL患者のイブルチニブの使用を支持した。
【0302】
<実施例9:以前に同種の幹細胞移植を受けた、再発性/難治性(R/R)の慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者のイブルチニブの安全性と有効性>
同種の造血幹細胞移植(alloHCT)後に再発するCLL患者は、障害のある造血の蓄え、感染、及び移植片対宿主疾患(GVHD)の懸念のため、化学療法で処置することが難しい。イブルチニブは、以前に≧1の治療を受けたCLL又はMCLの患者、及びdel17pを有するCLLの患者に対してアメリカで承認されている。前臨床試験では、イブルチニブは確立された慢性GVHD(cGVHD)を回復に向かわせた(reversed)。以前にalloHCTを受けた患者のサブセットにおけるイブルチニブの安全性と有効性を、本実施例において評価した。4つの臨床試験(PCYC-1102、PCYC-1109、PCYC-1112及びPCYC-1117)のうちの1つに登録された、以前に同種のHSCTを受けたR/R患者のデータを収集した。PCYC-1112及びPCYC-1117は、GVHDのない、HCT後>6か月の患者のみを登録した。有効性評価は全奏効率(ORR;iwCLL基準)、奏功期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)を含めた。安全性評価は、重篤なAE(SAE)を含む有害事象(AE)を含めた。4つの臨床試験の16人の患者が以前にalloHCTを受けていた(年齢中央値、54.5歳;16人の患者はECOGパフォーマンスステータスが0又は1;10人の患者がdel17pを有し、3人の患者がdel11qを有し、12人の患者が以前に≧4の治療を受けた)。最近のHCTの中央時間は27か月(8-115の範囲)だった。ベースラインの好中球減少症、貧血及び血小板減少症は、それぞれ31%、25%及び38%と報告された。>12か月間処置された12人の患者において、イブルチニブの中央時間は18.1か月(0.4-38.8の範囲)だった。データカットオフでは、11人の患者の処置が継続していた。中止の理由は、疾患進行(n=2)、AE(n=2)及び同意撤回(n=1)を含んでいた。治験責任医師が評価した反応は、2つの完全寛解、9つの部分応答(PR)及びリンパ球増加症を備えた3つのPRを含み、これは87.5%の最良のORRをもたらした。DOR、PFS及びOSの中央値は23か月の追跡の中央値に到達しなかった。24か月のPFS及びOSの割合は、それぞれ77%と75%だった。処置で出現したグレード≧3のSAEが11人の患者で観察され、感染(n=6)、発熱性好中球減少症、心房粗動、大腸炎、腎周囲血腫、硬膜下血腫、処置後(hemorrhage)出血、高カルシウム血症、骨病変、失神、血尿、尿閉、及び呼吸困難(n=夫々1、同じ患者で報告された複数の事象)を含んでいた。イブルチニブの中止をもたらすただ一つのAEは肺炎(n=2)であった;両方とも致命的な事象だった。さらに2人の死亡が疾患進行により24及び28か月で試験中に生じた。イブルチニブは、全面的なR/R CLL母集団の中で観察されたものに似ている安全性プロファイルと共に、先の同種HCTを受けた患者でよく許容された。最良のORR(87.5%)は全体的な/幅広い母集団の中で観察された結果と一致していた。
【0303】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され記載される一方、そのような実施形態が例のみとして提供されることは当業者にとって明白である。多くの変更、変化及び置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。当然のことながら、本明細書に記載される発明の実施形態に対する様々な代替物が本発明を実行するために用いられてもよい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法及び構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E