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特許7465307シミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法、およびプログラム
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  • 特許-シミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240403BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022112574
(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公開番号】P2023053892
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021163067
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 健
(72)【発明者】
【氏名】大口 雄一郎
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-050217(JP,A)
【文献】特開2018-163964(JP,A)
【文献】特開2020-167346(JP,A)
【文献】特開2020-145383(JP,A)
【文献】特開2021-064662(JP,A)
【文献】特開2020-181870(JP,A)
【文献】特開2018-156986(JP,A)
【文献】特開2019-139104(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114833(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置であって、
前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する取得部と、
前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するためのデータを出力する処理部と、
を有し、
前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周および前記膜の端部の情報を含む、ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記外周を、そのサブ領域ごとに、前記硬化性組成物の充填状態の予測結果を視覚的に識別可能なように充填状態に応じた色分け表示またはグラフ表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記外周のサブ領域ごとに、前記充填状態として、前記膜の端部が前記外周に達していない状態を示す未充填、前記膜の端部が前記外周に到達した充填、および、前記膜の端部が前記外周を通過した浸み出し、のいずれかの状態に判定して前記色分け表示またはグラフ表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記処理部は、更に、前記外周の一辺を構成するサブ領域のセットのうち前記充填と判定されたサブ領域が占める割合を示す充填率を表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記処理部は、更に、前記挙動の経過時間を表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記処理部は、更に、前記外周のサブ領域ごとに、前記外周から前記膜の端部までの距離を表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記処理部は、更に、前記挙動の経過時間に対する前記外周と前記膜の端部との間の距離の変化を示すグラフを表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記シミュレーション画像と、膜形成装置において前記形成処理が行われたことにより形成された膜を撮影して得られた撮影画像とを重畳表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記処理部は、更に、前記外周のサブ領域ごとに、前記シミュレーション画像を用いた前記硬化性組成物の充填状態の予測結果と、前記撮影画像に対する前記硬化性組成物の充填状態の判定結果とを表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項8に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記処理部は、各サブ領域に対する前記予測結果および前記判定結果を並べて、充填状態に応じた色分け表示またはグラフ表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項9に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
前記処理部は、各サブ領域に対する前記予測結果と前記判定結果との一致/不一致の情報を更に表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする請求項9に記載のシミュレーション装置。
【請求項12】
基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置であって、
前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する取得部と、
前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するよう表示部を制御する処理部と、
を有し、
前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周の画像および前記膜の端部の画像を含む、ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項13】
基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置の制御方法であって、
前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する工程と、
前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するためのデータを出力する工程と、
を有し、
前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周の画像および前記膜の端部の画像を含む、ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から12のいずれか1項に記載のシミュレーション装置における処理部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に硬化性組成物を配置し、硬化性組成物を型と接触させ、硬化性組成物を硬化させることによって基板上に硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成技術がある。このような膜形成技術は、インプリント技術や平坦化技術に適用される。インプリント技術では、パターン領域を有する型を用いて、基板上の硬化性組成物と型のパターン領域とを接触させて硬化性組成物を硬化させることによって基板上の硬化性組成物に型のパターンが転写される。平坦化技術では、平坦面を有する型を用いて、基板上の硬化性組成物と平坦面とを接触させて硬化性組成物を硬化させることによって平坦な上面を有する膜が形成される。
【0003】
基板上には、硬化性組成物が液滴の状態で配置され、その後、硬化性組成物の液滴に型が押し付けられる。これにより、基板上の硬化性組成物の液滴が広がって硬化性組成物の膜が形成される。この際、厚さが均一な硬化性組成物の膜を形成することや膜に気泡が残存しないことなどが重要であり、これを実現するために、硬化性組成物の液滴の配置や硬化性組成物への型の押し付けの方法及び条件(以降、インプリント条件)などが調整される。このような調整を、装置を用いた試行錯誤によって実現するためには、膨大な時間と費用とを必要とする。そこで、このような調整を支援するシミュレータの利用が望まれている。
【0004】
特許文献1には、硬化性組成物の膜を形成する処理における該硬化性組成物の挙動をより短時間で計算するために有利なシミュレーション方法が記載されている。硬化性組成物の複数の液滴が1つの計算要素に収まるように複数の計算要素からなる計算格子を定義し、各計算要素内における硬化性組成物の挙動を、各計算要素内における硬化性組成物の状態に応じたモデルに従って求めることで計算の高速化を実現している。
【0005】
このように計算の高速化が進められたことにより、実機の調整のためにシミュレーションが積極的に利用され、実機による試行錯誤が軽減されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-123719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インプリント条件を決定する評価項目の一つに、パターン領域外周の充填性がある。硬化性組成物がパターン領域全域に均等に広がっている状態が充填性の良い状態であり、この状態になるようにインプリント条件が調整される。インプリント条件が適切ではない場合、硬化性組成物がパターン領域外周まで広がらずにパターンを正常に形成できない状態(「未充填」)と、硬化性組成物がパターン領域外にはみ出てしまった状態(「浸み出し」)が生じることがある。未充填および浸み出しが発生したパターンは不良となる。特に浸み出しが発生してしまうと、転写するパターンよりも厚みのある部分ができてしまうことがあり、インプリント工程後に行うエッチング工程において影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
充填性の評価は、所定のインプリント条件で実際に基板にインプリントして形成したパターンを顕微鏡で観察し、未充填または浸み出しが無いかを確認することにより行われる。この方法は、実際に形成されているパターンを直接確認できるため信頼性が高い評価方法であるが、インプリント条件を調整する度にインプリントを実行しパターンの観察を行うことが必要になるため、作業工数が増えてしまう。
【0009】
この評価の回数を減らすために、シミュレーションが利用される。シミュレーションによれば、計算により硬化性組成物の膜の形成過程を予測できるため、未充填および浸み出しの発生原因を特定しやすくなり、インプリント条件の調整回数を低減することが期待できる。しかし、シミュレーション結果を効果的に参照できない場合、条件の修正が適切にされず、確認のためのインプリント回数を期待どおりに減らせず作業工数を削減できない。
【0010】
本発明は、硬化性組成物の充填状態を効果的に確認するのに有利なシミュレーション技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置であって、前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する取得部と、前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するためのデータを出力する処理部と、を有し、前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周および前記膜の端部の情報を含む、ことを特徴とするシミュレーション装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性組成物の充填状態を効果的に確認するのに有利なシミュレーション技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】膜形成装置及び情報処理装置の構成を示す図。
図2】シミュレーション条件の指定画面の例を示す図。
図3】シミュレーション結果表示の例を示す図。
図4】シミュレーション結果表示の例を示す図。
図5】シミュレーション結果表示の例を示す図。
図6】シミュレーション結果表示の例を時系列順に示す図。
図7】(a)は未充填の例を示す図、(b)は浸み出しの例を示す図。
図8】シミュレーション結果表示の例を時系列順に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態における膜形成装置IMP及び情報処理装置1の構成を示す概略図である。膜形成装置IMPは、基板Sの上に配置された硬化性組成物IMの複数の液滴と型Mとを接触させ、基板Sと型Mとの間の空間に硬化性組成物IMの膜を形成する形成処理を実行する。膜形成装置IMPは成形装置とよばれてもよい。膜形成装置IMPは、例えば、インプリント装置として構成されてもよいし、平坦化装置として構成されてもよい。ここで、基板Sと型Mとは相互に入れ替え可能であり、型Mの上に配置された硬化性組成物IMの複数の液滴と基板Sとを接触させることで、型Mと基板Sとの間の空間に硬化性組成物IMの膜を形成してもよい。
【0016】
インプリント装置では、パターンを有する型Mを用いて、基板Sの上の硬化性組成物IMに型Mのパターンが転写される。インプリント装置では、パターンが設けられたパターン領域PRを有する型Mが用いられる。インプリント装置では、インプリント処理として、基板Sの上の硬化性組成物IMと型Mのパターン領域PRとを接触させ、基板Sのパターンを形成すべき領域と型Mとの間の空間に硬化性組成物IMを充填させ、その後、硬化性組成物IMを硬化させる。これにより、基板Sの上の硬化性組成物IMに型Mのパターン領域PRのパターンが転写される。インプリント装置では、例えば、基板Sの複数のショット領域のそれぞれに硬化性組成物IMの硬化物からなるパターンが形成される。
【0017】
平坦化装置では、平坦化処理として、平坦面を有する型Mを用いて、基板Sの上の硬化性組成物IMと型Mの平坦面とを接触させ、硬化性組成物IMを硬化させることによって、平坦な上面を有する膜が形成される。平坦化装置では、基板Sの全域をカバーする寸法(大きさ)を有する型Mが用いられる場合、基板Sの全域に硬化性組成物IMの硬化物からなる膜が形成される。
【0018】
硬化性組成物としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。このように、硬化性組成物は、光の照射、あるいは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。硬化性組成物の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0019】
基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスを含む。
【0020】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸およびZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向およびZ方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転およびZ軸周りの回転のそれぞれをθX、θYおよびθZとする。X軸、Y軸およびZ軸に関する制御または駆動は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸およびθZ軸に関する制御又は駆動は、それぞれ、X軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御又は駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸およびZ軸の座標に基づいて特定される情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸およびθZ軸の値で特定される情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。
【0021】
膜形成装置IMPは、基板Sを保持する基板保持部SH、基板保持部SHを駆動することで基板Sを移動させる基板駆動機構SD、および基板駆動機構SDを支持する支持ベースSBを有する。また、膜形成装置IMPは、型Mを保持する型保持部MHと、型保持部MHを駆動することで型Mを移動させる型駆動機構MDとを有する。
【0022】
基板駆動機構SDおよび型駆動機構MDは、基板Sと型Mとの相対位置が調整されるように、基板Sおよび型Mの少なくとも一方を移動させる相対移動機構を構成する。かかる相対移動機構による基板Sと型Mとの相対位置の調整は、基板Sの上の硬化性組成物IMと型Mとの接触のための駆動、および、基板Sの上の硬化した硬化性組成物IMからの型Mの分離のための駆動を含む。また、相対移動機構による基板Sと型Mとの相対位置の調整は、基板Sと型Mとの位置合わせを含む。基板駆動機構SDは、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸およびθZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸およびθZ軸の6軸)に関して駆動するように構成されている。型駆動機構MDは、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸およびθY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸およびθZ軸の6軸)に関して駆動するように構成されている。
【0023】
膜形成装置IMPは、基板Sと型Mとの間の空間に充填された硬化性組成物IMを硬化させるための硬化部CUを有する。硬化部CUは、例えば、型Mを介して硬化性組成物IMに硬化用のエネルギーを与えることによって、基板Sの上の硬化性組成物IMを硬化させる。
【0024】
膜形成装置IMPは、型Mの裏面側(基板Sに対面する面の反対側)に空間SPを形成するための透過部材TRを有する。透過部材TRは、硬化部CUからの硬化用のエネルギーを透過させる材料で構成され、基板Sの上の硬化性組成物IMに対して硬化用のエネルギーを与えることを可能にする。
【0025】
膜形成装置IMPは、空間SPの圧力を制御することによって、型MのZ軸方向への変形を制御する圧力制御部PCを有する。例えば、圧力制御部PCが空間SPの圧力を大気圧よりも高くすることによって、型Mは、基板Sに向けて凸形状に変形する。
【0026】
膜形成装置IMPは、基板Sの上に硬化性組成物IMを配置、供給又または分配するためのディスペンサDSPを有する。ただし、膜形成装置IMPには、他の装置によって硬化性組成物IMが配置された基板Sが供給(搬入)されてもよい。この場合、膜形成装置IMPは、ディスペンサDSPを有していなくてもよい。
【0027】
膜形成装置IMPは、基板S(または基板Sのショット領域)と型Mとの位置ずれ(位置合わせ誤差)を計測するためのアライメントスコープASを有していてもよい。
【0028】
シミュレーション装置として機能する情報処理装置1は、膜形成装置IMPにおいて実行させる処理における硬化性組成物IMの挙動を予測する計算を実行する。具体的には、情報処理装置1は、基板Sの上に配置された硬化性組成物IMの複数の液滴と型Mとを接触させ、基板Sと型Mとの間の空間に硬化性組成物IMの膜を形成する処理における硬化性組成物IMの挙動を予測する計算を実行する。
【0029】
情報処理装置1は、例えば、汎用または専用のコンピュータにシミュレーションプログラム21を組み込むことによって構成される。また、情報処理装置1は、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)によって構成されてもよい。
【0030】
情報処理装置1は、本実施形態では、プロセッサ10と、メモリ20と、ディスプレイ30と、入力デバイス40とを有するコンピュータにおいて、メモリ20にシミュレーションプログラム21が格納されることによって構成される。メモリ20は、半導体メモリであってもよいし、ハードディスクなどのディスクであってもよいし、他の形態のメモリであってもよい。シミュレーションプログラム21は、コンピュータによって読み取り可能なメモリ媒体に格納されて、または、電気通信回線などの通信設備を介して情報処理装置1に提供されてもよい。
【0031】
プロセッサ10は、形成処理のシミュレーションに関する条件(シミュレーション条件)を取得する取得部として機能しうる。また、プロセッサ10は、シミュレーション条件に基づいて、硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求める処理部として機能しうる。プロセッサ10は、更に、シミュレーション計算により得られた硬化性組成物の挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するよう表示部(ディスプレイ30)を制御する表示制御部としても機能しうる。
【0032】
図2は、シミュレーションプログラム21に従ってプロセッサ10によって実行されるシミュレーション方法に関連して、情報処理装置1のディスプレイ30に提供(表示)されるユーザインタフェースの、シミュレーション条件の指定画面を示す図である。本実施形態では、図2に示すように、ユーザがディスプレイ30に提供されるユーザインタフェースを参照しながら、入力デバイス40を介して必要な情報を入力することで、硬化性組成物IMの挙動を予測するシミュレーションが実行される。
【0033】
例えば、シミュレーション条件の入力は、メモリ20に予め記憶されている複数の設定ファイル201から1つの設定ファイルを指定することを含みうる。設定ファイルは、シミュレーションするインプリント処理の条件を統合して管理するファイルである。各設定ファイルは、設定条件として、型Mの設計情報を含む型設計ファイル202と、基板Sの設計情報を含む基板設計ファイル203と、硬化性組成物IMの液滴の吐出量および配置を示す液滴配置ファイル204とを含みうる。
【0034】
なお、本実施形態では、説明を簡略化するために、設定ファイル201に指定されるインプリント処理の条件に関する設定条件として、3つの具体的なファイル(型設計ファイル202、基板設計ファイル203、液滴配置ファイル204)を示した。但し、本実施形態で示していないインプリント処理の条件についても、設定条件としてファイルを作成し、メモリ20に格納してライブラリを構成してもよい。
【0035】
設定ファイル201で指定する各ファイルには、通常、メモリ20に予め格納されているファイルが用いられる。このように、複数のファイルをメモリ20に格納してライブラリ化することで、解析条件の設定を容易にすることが可能となる。設定ファイル201で指定した各ファイルのファイル名は、条件表示ウィンドウ205に表示される。また、ビジュアルウィンドウ206には、設定ファイル201の誤入力を防止するために、設定ファイル201に関する画像情報が表示される。
【0036】
また、設定ファイル201には、シミュレーション条件も設定される。シミュレーション条件には、例えば、基板Sの上に配置された硬化性組成物IMに型Mを接触させる押圧力や硬化性組成物IMに型Mを接触させている時間(充填時間)などのインプリントに関係する情報が設定される。
【0037】
また、設定ファイル201には、計算モードも設定される。計算モードとは、シミュレーションの工程を決めたものであり、計算モードに従ってシミュレーション(の各工程の計算)が実行される。
【0038】
シミュレーションを実行する際、ユーザ(作業者)は、条件表示ウィンドウ205及びビジュアルウィンドウ206に表示される情報を確認する。表示された情報に問題がなければ、例えば、ユーザが実行ボタンを操作することによって、プロセッサ10は、シミュレーションプログラム21に従いシミュレーション計算を実行する。シミュレーション計算により作成されたシミュレーション結果はメモリ20に格納される。
【0039】
図3は、情報処理装置1のディスプレイ30に提供(表示)されるユーザインタフェースのシミュレーション結果表示の一例を示している。ユーザが、ディスプレイ30に提供されたユーザインタフェース(図2)を参照しながら入力デバイス40を介して必要な情報を入力することで、シミュレーションによる硬化性組成物IMの挙動がビジュアルウィンドウ206に表示される。ビジュアルウィンドウ206には、シミュレーション計算により得られた硬化性組成物の挙動、すなわち、硬化性組成物が型と接触することにより硬化性組成物が押し拡げられる現象の時間推移、を模擬したシミュレーション画像が表示される。なお、ビジュアルウィンドウ206に表示されるシミュレーションの結果は、図3に示す大きさ、形状及び数に限定されるものではない。シミュレーションの結果として表示する対象に応じて、大きさ、形状及び数は自由に変更されてディスプレイ30に表示されうる。
【0040】
硬化性組成膜301は、充填シミュレーションによって計算された型Mと基板Sとの間に充填された硬化性組成物IMによって形成される膜をXY平面に投影した面で表示したものである。この膜は、複数の硬化性組成物IMの液滴が充填の過程で結合して形成された膜であり、型Mが硬化性組成物IMと最初に接触した位置から放射状に広がり硬化性組成物IMが繋がることによって形成される。このシミュレーション結果のデータはメモリ20に格納される。
【0041】
図3に示されるように、ビジュアルウィンドウ206に表示されるシミュレーション画像は、型Mのパターン領域PRのパターンが転写されるショット領域の外周303と、膜の端部(膜端部302)の画像とを含む。ショット領域の外周303の画像と膜端部302の画像は、両者の位置が視覚的に識別できる態様で描画される。膜端部302は、硬化性組成物IMの端部を示している。硬化性組成膜301の最も外側にあたるのが膜端部302であり、型Mに対する膜端部302の位置情報が充填の進行過程を示す指標となる。膜端部302は、作業者が目視で確認しやすいように、ビジュアルウィンドウ206には実線として示される。図3の例ではショット領域の外周303は直線で示されているが、型Mのパターンデザインにより曲線を含めて構成される場合もありうる。ショット領域の外周303は硬化性組成物を充填させる目標位置を示しており、膜端部302がショット領域の外周303まで達して、とどまっている状態が充填の理想的な状態である。
【0042】
経過時間304は、挙動の経過時間であって、インプリントプロセスにおける時間を示している。本例では液滴と型との接触を開始した時刻を基準である0[s]と定める。この時刻の基準は任意で変更することが可能である。本例では、経過時間304を変更する操作の一例として、経過時間304の表示の両脇にマイナスボタンとプラスボタンが設置されていて、それらを使用して時間を変更しうる。プラスボタンを押すと経過時間304を進めて、マイナスボタンを押すと経過時間304を戻すことができる。経過時間304を変更することで、ビジュアルウィンドウ206には、その変更後の時刻における硬化性組成膜301の形成状況が表示される。
【0043】
硬化性組成膜301とショット領域の外周303とが、相対的に位置合わせされてビジュアルウィンドウ206に表示される。このような表示処理はプロセッサ10によって行われうる。プロセッサ10は、メモリ20に格納されているシミュレーション結果から硬化性組成膜301の形状および位置の情報を得る。その後、プロセッサ10は、メモリ20に格納されている型設計ファイル202からショット領域の外周303の情報を参照して形状および位置の情報を処理する。プロセッサ10が硬化性組成膜301とショット領域の外周303とを同一画面に表示されるよう表示制御を行うことで、解析結果と目標外周が同一の画面に表示される。これにより、充填状態が視覚的に表示されるため、シミュレーション結果の参照効率が上がる。
【0044】
さらに、プロセッサ10は、充填状態を判定してその判定結果が表示されるようディスプレイ30の表示制御を行う。充填状態はショット領域の外周303の位置によって異なる。そのため、ショット領域の外周303に関連して判定結果を表示する方が効率的に判定結果を参照できるため、本例ではショット領域の外周上に判定結果が表示される。
【0045】
一例において、判定される充填状態には、「未充填」、「充填」、「浸み出し」の3つの状態がありうる。「未充填」は、膜端部302がショット領域の外周303に到達していない状態をいう。「充填」は、膜端部302がショット領域の外周303にちょうど到達した状態をいう。「浸み出し」は、膜端部302がショット領域の外周303を通過した状態をいう。プロセッサ10は、膜端部302およびショット領域の外周303のXY座標値をそれぞれ参照する。プロセッサ10は、両者のXY座標値から、膜端部302がショット領域の外周303より内側にあるか、外周303上にあるか、あるいは外周303より外側にあるかを判定することにより、充填状態を判定する。
【0046】
プロセッサ10は、ショット領域の外周303上に設けられたシミュレーションプログラム21で使用する計算格子の節点に対して充填状態の判定を行う。膜端部302のXY座標における位置情報は、計算格子の節点解として格納されるため、計算格子の節点を判定部分にすると膜端部302の位置情報の把握が容易となる利点がある。判定部分の間隔は調整可能である。例えば計算格子の節点間を新たな計算格子として補間することで判定部分の間隔を小さくすることもできるし、判定に使用する計算格子の節点を間引くことで判定部分の間隔を大きくすることもできる。なお、判定結果は、未充填、充填、浸み出しの3段階に限定されるものではなく、3段階よりも多い判定の基準が定義されてもよい。
【0047】
図3の例において、判定結果である未充填305、充填306、浸み出し307が、ショット領域の外周303上に表示される。判定結果の表示は、視覚的に判別できる態様で行われる。例えば、プロセッサ10は、ショット領域の外周を、そのサブ領域ごとに、硬化性組成物の充填状態の予測(判定)結果を視覚的に識別可能なように充填状態に応じた色分けをして表示するようディスプレイ30を制御する。例えば、判定結果は、充填状態に応じて白、黒、赤または青などの色を用いて色分けされる。あるいは、判定結果は、充填状態に応じて実線、鎖線または一点鎖線のような線の種類で識別されてもよい。
【0048】
図3の例において、ショット領域の外周303は、幅を広く強調して表示されている。これは、ショット領域の外周303に対する判定結果を効果的に示すためである。なお、判定結果を色によって示す場合には、他のシミュレーション結果の表示の邪魔にならないよう、目視による確認が可能であるかぎりにおいて線幅を狭くしてもよい。
【0049】
なお、図3の例では、充填状態を全体的に把握するためにショット領域の外周303の全体が見えるようになっているが、より詳細な情報を得るためにショット領域の外周303が部分的に拡大表示されるようにしてもよい。
【0050】
このように、膜端部302がショット領域の外周303に対してどの位置にあるのかが視覚的に表示されるため、効果的に充填状態を目視確認することができる。例えば、ショット領域の全体をビジュアルウィンドウ206に表示した場合、X方向とY方向は数十mm程度の縮尺で対象物を表示することになる。その縮尺に対して、充填状態で考慮しなくてはならない膜端部302とショット領域の外周303との間の距離は数μm程度の縮尺であるため、俯瞰的な確認は困難となる。これに対し、本実施形態によれば、判定結果が、色などを利用してショット領域の外周上に視覚的に表示されるため、効率よく充填状態を把握することが可能となる。この判定機能の追加により、作業者の結果視認性を高められるため、シミュレーション結果の参照効率は向上する。
【0051】
図3の例において、前述の充填状態の判定結果をより詳細に把握するために、ショット領域の外周303に関連したシミュレーション結果を表示することができる。表示する情報は、ディスプレイ30に表示される表示選択308を介して選択されうる。表示選択308で選択された内容の詳細情報が表示されるようになる。図3の例では、表示選択308は、充填状態、距離詳細、時間詳細、画像判定の4つの選択肢を含み、例えばラジオボタンによって選択可能である。ただし、選択肢の内容や数は一例であり、これらに限定されるものではない。また、選択の方法はラジオボタン以外の方法であってもよい。ラジオボタンによる一択ではなく、例えば、複数の選択肢を選択可能なチェックボックスが用意されてもよい。
【0052】
例えば、図3に示されているように、表示選択308で「充填状態」が選択された場合、充填情報の詳細な情報が表示される。この表示から、ユーザは経過時間と充填率の情報を効果的に把握して、インプリント装置の充填時間の決定に役立てることができる。
【0053】
ユーザは、入力デバイス40を操作してディスプレイ30に表れているカーソル309を動かして、選択対象を指示することができる。カーソル309をショット領域の外周303に合わせて選択決定すると、ポップアップウィンドウ310が出現し、外周303上の当該位置における詳細な情報が表示される。図3の例によれば、ポップアップウィンドウ310には、位置位置(X座標値、Y座標値)および充填状態が表示される。なお、ポップアップウィンドウ310に表示される充填状態以外の表示内容は位置情報に限定されず、充填状態の判定結果にかかわるものであればその他の内容でもよく、追加変更が可能である。
【0054】
図3において、結果リスト311に判定結果の詳細な情報が表示される。ここではショット領域の外周303を上部、下部、左部、および右部と4つのパートに分割して、それぞれのパートを構成するサブ領域における充填状態の情報を参照してプロセッサ10が演算処理し、それぞれのパートの充填率を表示している。なお、充填率とは、例えば、ショット領域の外周303のパート(例えば一辺)を構成するサブ領域のセットのうち「充填」と判定されたサブ領域が占める割合をいう。すなわち、充填率は次式のように表される。
【0055】
充填率=充填/(未充填+充填+浸み出し)
【0056】
結果リスト311では、このようなグループ化した演算処理による判定結果の情報だけではなく、各判定部分の固有の充填状態の判定結果を表示することも可能である。
【0057】
また、これらの結果はテキストファイルとして出力されることも可能である。一例を挙げると、結果リスト311に表示されている情報をCSVファイル形式でメモリの所定の領域に保存することができる。
【0058】
このように、判定結果を視覚的に表現した結果に詳細情報を合わせて表示することで、シミュレーション結果の参照効率をさらに上げることができる。
【0059】
本実施形態によれば、充填状態を視覚的に確認する表示方法によりシミュレーション結果の参照効率が向上するため、ショット領域の外周における硬化性組成物の充填状態を効果的に確認することができる。
【0060】
なお、情報処理装置1において得られたシミュレーション結果に基づいて、膜形成装置IMPのインプリントの設定を適宜修正することができる。こうすることでより適正なインプリント条件を設定することが可能となる。
【0061】
<第2実施形態>
図4を参照して、第2実施形態における情報処理装置について説明する。本実施形態では、膜端部302とショット領域の外周303の位置情報から充填状態の判定を行い、判定結果を表示するところまでについては第1実施形態と同じであるため説明を省略する。他の部分においても、第1実施形態で既に説明した内容に関しては説明を省略する。
【0062】
本実施形態における表示選択308は、表示する詳細情報をチェックボックスで選択することができる。選択は作業者が入力デバイス40を使用して行われる。チェックボックスにより複数の選択が可能であり、図4の例においては時間詳細と距離詳細が選択されている。
【0063】
距離詳細は、ショット領域の外周303のサブ領域における、外周303から膜端部302までの距離を示す。距離は、例えば、ショット領域の外周303に設けられた基準位置から膜端部302までのX方向およびY方向の最短距離で表される。距離の値がマイナスである場合は未充填を示しており、プラスである場合は浸み出しを示している。ただし、距離の定義はこの一例に限定されるものではなく、作業者が自由に定義を変更できる。例えば、浸み出し判定307に該当する評価点においては、距離は、浸み出したことによる膜端部302がZ方向へ移動した距離を示してもよい。
【0064】
時間詳細は、充填状態に関する経過時間の情報を示す。例えば、液滴と型とが接触を開始した時刻を基準である0[s]と定め、各判定部分で充填状態が「充填」とされるまでの最短の経過時間304を時間情報として定義する。なお、距離と同様に時間情報の定義はこの一例に限定されるものではなく、作業者が自由に定義を変更できる。例えば、浸み出しが始まる直前の経過時間304を時間情報と定義してもよい。
【0065】
カーソル309をショット領域の外周303に合わせて選択決定すると、ポップアップウィンドウ310が出現し、選択された判定部分(サブ領域)における距離と時間の情報が表示される。また、図4の例では、外周303と膜端部302との間の距離の時間変化を示すグラフが表示されている。この表示方法により各経過時間304での距離の挙動が視覚的に確認できるため、結果の参照効率は向上する。
【0066】
結果リスト311には、判定部分に関する詳細な情報が表示される。図4の例では、ショット領域の外周303に設定された全てのサブ領域の情報がリスト表示される。表示行数には制限があるため、スクロールバーなどを動かすことで表示行を変更できるようにしてもよい。また、第1実施形態でも説明したように、結果リスト311に表示される情報はテキストファイルとして出力も可能である。
【0067】
このように本実施形態においても、判定結果を視覚的に表現した結果に複数の異なる詳細情報を同時に表示することで、シミュレーション結果の参照効率をさらに上げることができる。
【0068】
本実施形態によれば、充填状態を視覚的に確認する表示方法によりシミュレーション結果の参照効率が向上するため、ショット領域の外周の充填状態を効果的に確認することができる。
【0069】
なお、情報処理装置1において得られたシミュレーション結果に基づいて、膜形成装置IMPのインプリントの設定を適宜修正することができる。こうすることでより適正なインプリント条件を適用することが可能となる。
【0070】
<第3実施形態>
図5を参照して、第3実施形態における情報処理装置について説明する。本実施形態では、膜端部302とショット領域の外周303の位置情報から充填状態の判定を行い、判定結果を表示するところまでについては第1および第2実施形態と同じであるため説明を省略する。他の部分においても、第1および第2実施形態で既に説明した内容に関しても説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、表示選択308において画像判定が選択された場合に関して説明する。本実施形態では、膜形成装置IMPは、形成処理が行われたことにより形成された硬化性組成物IMの膜を撮影する機能を有する。膜の撮影には、アライメントスコープASが利用されてもよいし、専用の撮像装置が利用されてもよい。あるいは、膜の撮影は膜形成装置IMPの外部で顕微鏡等を利用して行われてもよい。
【0072】
表示選択308で画像判定が選択されると、参照する画像情報を指定するための入力部55が表示される。ユーザは入力部55に画像情報を入力することができる。画像情報は、実際の形成処理によって形成された硬化性組成膜301の撮影画像と、その位置および縮尺情報を含みうる。プロセッサ10は、画像情報を参照して硬化性組成膜301の撮影画像とショット領域の外周303との間の縮尺および位置の調整をして表示する。
【0073】
このとき、ディスプレイ30には、硬化性組成物IMの基板Sへの液滴の配置情報が併せて表示されてもよい。液滴配置ファイル204には液滴の吐出量や配置情報が記述されているため、この情報を参照して画像化が行われうる。硬化性組成物IMの液滴配置と充填状態の判定結果を合わせて参照することで、液滴配置ファイル204を作成する際の液滴配置の決定に役立てることができる。
【0074】
膜形成装置IMPではショット領域の外周303近傍が拡大して撮影されるため、撮影画像は複数になることが想定される。図5の例では、サブ画像501a、サブ画像501b、サブ画像501c、およびサブ画像501dが連結されてショット領域の撮影画像501が作成されている。プロセッサ10は、シミュレーション画像と撮影画像501とを重畳表示するようディスプレイ30を制御する。図5において、撮影画像501を構成するサブ画像は硬化性組成膜301やショット領域の外周303と重なるので、いずれかを半透明で表示する等の表示上の工夫が施されるとよい。一例において、シミュレーション画像の硬化性組成膜301が半透明にされる。これにより、その背景にある撮影画像501が確認できるように表示される。
【0075】
図5の例では、シミュレーション判定結果502に、シミュレーションによる判定結果である未充填、充填、浸み出しが表示される。第1および第2実施形態では、ショット領域の外周303上に判定結果が表示されたが、本実施形態では、ショット領域の外周303とは離れたところに判定結果が表示される。
【0076】
画像判定結果503には、インプリント装置IMPによって実際に形成された硬化性組成膜の画像判定結果(撮影画像に対する判定結果)である未充填、充填、浸み出しが表示される。なお、画像判定は作業者による目視で行われてもよいし、画像処理による自動判定によって行われてもよい。
【0077】
本実施形態では、ショット領域の外周303のサブ領域ごとに、シミュレーション画像を用いた充填状態の予測結果(シミュレーション判定結果502)と画像判定結果503とが表示される。例えば、図5に示すように、シミュレーション判定結果502と画像判定結果503とがショット領域の外周303の付近で並べて、充填状態に応じて色分けをして表示される。そのため、画像501に写る充填状態が確認しやすく、かつ、2つの判定結果が比較しやすい。このように、シミュレーションと実際のインプリントによる充填状態を効果的に比較することができ、解析結果と実際の現象との差が明らかになり、解析条件へのフィードバックを効果的に行うことができる。
【0078】
本実施形態においても、結果リスト311には判定部分に関する詳細な情報が表示される。ショット領域の外周303に設定された全ての判定部分の情報がリストとして表示される。表示行数には制限があるため、スクロールバーなどを動かすことで表示行を変更できるようにしてもよい。図5の結果リスト311では、シミュレーション判定結果502の充填状態が「予測」の項目に表示され、画像判定結果503の充填状態が「実績」の項目に表示され、両判定結果の一致/不一致が「比較」の項目に表示される。このようなリスト表示によって、シミュレーション結果の評価を効率よく行うことができる。
【0079】
本実施形態によれば、充填状態を視覚的に確認する表示方法によりシミュレーション結果の参照効率が向上するため、ショット領域の外周の充填状態を効果的に確認することができる。
【0080】
なお、情報処理装置1において得られたシミュレーション結果に基づいて、膜形成装置IMPのインプリントの設定を適宜修正することができる。こうすることでより適正なインプリント条件を適用することが可能となる。
【0081】
<第4実施形態>
次に、ビジュアルウィンドウ206に表示されるシミュレーション結果の他の表示手法の例について説明する。図6(a)~(c)には、シミュレーション結果の例が時系列順に表示されている。図6(a)は時刻t1におけるシミュレーション結果、図6(b)は時刻t2におけるシミュレーション結果、図6(c)は時刻t3におけるシミュレーション結果を示す(t1<t2<t3)。図6(a)~(c)にはそれぞれ、シミュレーション結果としての3次元画像が示されている。図7(a)は、未充填/浸み出しの様子を示す図、図7(b)は、浸み出しが生じた際の型Mと基板Sの断面を示した図である。図8(a)~(c)には、シミュレーション結果を3次元画像で表示する場合の他の例が示されている。図8(a)は時刻t1におけるシミュレーション結果、図8(b)は時刻t2におけるシミュレーション結果、図8(c)は時刻t3におけるシミュレーション結果を示す(t1<t2<t3)。
【0082】
一例において、ビジュアルウィンドウ206における画像の表示態様は、ユーザ選択により2次元画像と3次元画像との間で切り替えることができる。図6(a)~(c)には3次元画像が選択された場合の画像が示されている。図6(a)は、膜端部302の位置で充填が進んでいる途中の時点である時刻t1の状態を示している。図6(b)は、膜端部302の一部がショット領域の外周303に到達し、一部の領域で浸み出しが生じている時刻t2の状態を示している。図6(c)は、充填が完了した時刻3の状態を示している。
【0083】
浸み出しが発生すると、図6(b)および図6(c)に示すように、ショット領域の外周303上に、各位置における浸み出し量を表す折れ線グラフが表示される。図6(a)~図6(c)の表示により、ユーザは充填の進行具合を容易に視認することができる。また、浸み出しが発生すると図6(b)および図6(c)のように折れ線グラフが出現するので、ユーザは浸み出しの分布を容易に把握することができる。なお、グラフの種類としては、図6(c)で示した折れ線グラフのみならず他のグラフ表示形式でもよく、シミュレーション画像上で充填状況が簡便に識別できればよい。
【0084】
図7(a)に示すようなショット領域の外周303と膜端部302のような位置関係の場合、「未充填」の部分には、膜端部302から外周303までの距離である未充填距離610が存在する。充填シミュレーションでは、図7(a)に示す未充填距離610を外周303の各位置において計算することができる。
【0085】
また、図7(b)に示すような「浸み出し」の部分には、ショット領域の外周303から浸み出した硬化性組成物IMの界面620が存在する。そのため、充填シミュレーションにおいては浸み出し高さ621を外周303の各位置において計算することができる。浸み出し高さ621は、型Mと基板Sとの間から浸み出した硬化性組成物IMの界面が型Mと接する位置の、基板Sの表面からの距離(高さ)である。
【0086】
未充填距離610は、図6(a)~(c)に示すように、膜端部302を表示することで外周303までの距離として識別表示することができる。膜端部302の視認性を向上させるため、図6(a)に示すように未充填エリアを黒で表示するようにしてもよい。あるいは、図8(a)~(c)に示すように、未充填距離を棒グラフで表示させることもできる。図8(a)~(c)には、X方向の端の2辺のみについて+X方向に棒グラフが延びている例が示されているが、右側の辺を-X方向に延びる棒グラフを表示するようにしてもよい。あるいは、Y方向の端の2辺についてもY方向に延びる棒グラフを併せて表示するようにしてもよい。また、XY方向ではなくZ方向に延びる棒グラフを表示するようにしてもよい。さらに、折れ線グラフや棒グラフは、浸み出し量または未充填距離に応じた色分け表示がされてもよい。このように視覚的に表示することで、効率よく充填具合を識別することができる。
【0087】
一例において、図6(b)および図6(c)において出現する折れ線グラフ602は、各位置における浸み出し高さ621の違いが分かるように色分け表示されうる。色と浸み出し高さとの対応関係は、カラーバー601によって規定されている。ユーザは、各位置における浸み出し高さ621の相対関係を折れ線グラフ602によって容易に確認することができる。また、ユーザは、注目位置における色についてカラーバー601を参照することにより、当該位置における浸み出し高さ621の具体的な値を確認することができる。
【0088】
このように、折れ線グラフ602をショット領域の外周上に視覚的に表示することで、ユーザは効率よく浸み出しの状況を識別することができる。なお、浸み出し高さ621の計算値は微小であるため、計算値に所定の倍率をかけた調整値に基づいて折れ線グラフ602を表示することにより、グラフの視認性を高めるようにしてもよい。なお、図6(b)、図6(c)、図8(b)、図8(c)の例では、折れ線グラフの表示と色分け表示との両方が行われているが、どちらか一方のみの表示が行われてもよい。
【0089】
「充填」部分に関しては、未充填距離610が許容値以下、かつ、浸み出し高さ620も許容値以下である場合、グラフの部分(このときショット領域の外周にほぼ一致する)を、強調表示するなどしてもよい。
【0090】
本実施形態によれば、充填状態を視覚的に確認する表示方法によりシミュレーション結果の参照効率が向上するため、ショット領域の外周の充填状態を効果的に確認することができる。
【0091】
情報処理装置1において得られたシミュレーション結果に基づいて、膜形成装置IMPのインプリントの設定を適宜修正することができる。これにより適正なインプリント条件を適用することが可能となる。
【0092】
なお、上述の第1乃至第4実施形態では、シミュレーション結果をシミュレーション画像としてビジュアルウィンドウ206に表示する例を用いて説明したが、メモリ20に格納された結果のデータを、他の表示装置を用いて表示してもよい。すなわち、プロセッサ10は、充填状態を視覚的に確認することができるシミュレーション画像のデータを計算し、メモリ20に出力すればよい。
【0093】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0094】
本明細書の開示は、少なくとも以下のシミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法、およびプログラムを含む。
(項目1)
基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置であって、
前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する取得部と、
前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するためのデータを出力する処理部と、
を有し、
前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周および前記膜の端部の情報を含む、ことを特徴とするシミュレーション装置。
(項目2)
前記処理部は、前記外周を、そのサブ領域ごとに、前記硬化性組成物の充填状態の予測結果を視覚的に識別可能なように充填状態に応じた色分け表示またはグラフ表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目1に記載のシミュレーション装置。
(項目3)
前記処理部は、前記外周のサブ領域ごとに、前記充填状態として、前記膜の端部が前記外周に達していない状態を示す未充填、前記膜の端部が前記外周に到達した充填、および、前記膜の端部が前記外周を通過した浸み出し、のいずれかの状態に判定して前記色分け表示またはグラフ表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目2に記載のシミュレーション装置。
(項目4)
前記処理部は、更に、前記外周の一辺を構成するサブ領域のセットのうち前記充填と判定されたサブ領域が占める割合を示す充填率を表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目3に記載のシミュレーション装置。
(項目5)
前記処理部は、更に、前記挙動の経過時間を表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目1から4のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
(項目6)
前記処理部は、更に、前記外周のサブ領域ごとに、前記外周から前記膜の端部までの距離を表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
(項目7)
前記処理部は、更に、前記挙動の経過時間に対する前記外周と前記膜の端部との間の距離の変化を示すグラフを表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目1から6のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
(項目8)
前記処理部は、前記シミュレーション画像と、膜形成装置において前記形成処理が行われたことにより形成された膜を撮影して得られた撮影画像とを重畳表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目2に記載のシミュレーション装置。
(項目9)
前記処理部は、更に、前記外周のサブ領域ごとに、前記シミュレーション画像を用いた前記硬化性組成物の充填状態の予測結果と、前記撮影画像に対する前記硬化性組成物の充填状態の判定結果とを表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目8に記載のシミュレーション装置。
(項目10)
前記処理部は、各サブ領域に対する前記予測結果および前記判定結果を並べて、充填状態に応じた色分け表示またはグラフ表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目9に記載のシミュレーション装置。
(項目11)
前記処理部は、各サブ領域に対する前記予測結果と前記判定結果との一致/不一致の情報を更に表示するための前記データを出力する、ことを特徴とする項目9または10に記載のシミュレーション装置。
(項目12)
基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置であって、
前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する取得部と、
前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するよう表示部を制御する処理部と、
を有し、
前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周の画像および前記膜の端部の画像を含む、ことを特徴とするシミュレーション装置。
(項目13)
基板のショット領域の上に配置された硬化性組成物と型とを接触させ、前記ショット領域の上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成処理における前記硬化性組成物の挙動を予測するシミュレーション装置の制御方法であって、
前記形成処理のシミュレーションに関する条件を取得する工程と、
前記取得された条件に基づいて、前記硬化性組成物の挙動をシミュレーション計算により求め、該シミュレーション計算により得られた前記挙動を模擬したシミュレーション画像を表示するためのデータを出力する工程と、
を有し、
前記シミュレーション画像は、前記ショット領域の外周に対する前記膜の端部の位置が視覚的に識別できる態様で描画された、前記外周の画像および前記膜の端部の画像を含む、ことを特徴とする制御方法。
(項目14)
コンピュータを、項目1から12のいずれか1項に記載のシミュレーション装置における処理部として機能させるプログラム。
【0095】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0096】
IMP:膜形成装置、S:基板、IM:硬化性組成物、M:型、AS:アライメントスコープ、1:情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8