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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】複合摩耗部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 29/10 20060101AFI20240403BHJP
   C22C 1/10 20230101ALI20240403BHJP
   B22D 19/14 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C22C29/10
C22C1/10 G
B22D19/14 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022153747
(22)【出願日】2022-09-27
(62)【分割の表示】P 2021564218の分割
【原出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022188142
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】20166110.5
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500425242
【氏名又は名称】マゴット アンテルナショナル エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】デシレ, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ルポワン, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】タス, ブルハン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502802(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108380850(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103878346(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102159740(CN,A)
【文献】米国特許第04146080(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00-19/16
C22C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗に対して最も露出される部分に強化材を含む階層複合鋳造摩耗部品であって、前記強化材が、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを含み、前記セラミック-金属複合粒子が、第一金属マトリックス中に埋め込まれた炭化チタンのマイクロメートルレベルの粒子を少なくとも52容量%含み、前記セラミック-金属複合粒子が、5容量%未満の多孔率を有し、ただし、第一金属マトリックス中に埋め込まれた粒子の多孔率の容積画分は、ISO 13383-2:2012に従って測定され、前記ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークが、第二金属マトリックス中に埋め込まれ、前記第二金属マトリックスが、三次元的に相互接続されたネットワークの相互接続されたセラミック-金属複合粒子の間の隙間に浸透して前記隙間を充填し、前記強化材が45~65容量%のセラミック-金属複合粒子の容積量を含み、第一金属マトリックスの組成が、第二金属マトリックスの組成とは異なり、第二金属マトリックスが、鉄系鋳造合金を含む、階層複合鋳造摩耗部品。
【請求項2】
埋め込まれたセラミック-金属複合粒子が、0.5~10mmの平均粒子サイズd50を有する、ただし、平均粒子サイズd50は、写真顕微鏡パノラマ図によって、光学顕微鏡を使用して、かつグレースケール画像及び背景における粒子のセグメント化を可能にするコンピュータソフトウエアを使用して測定される、請求項1に記載の階層複合鋳造摩耗部品。
【請求項3】
埋め込まれた炭化チタン粒子が、0.1~50μmの平均粒子サイズd50を有する、ただし、埋め込まれた炭化チタン粒子の平均粒子サイズd50は、ISO 4499-3:2016による直線切断法によって計算される、請求項1に記載の階層複合鋳造摩耗部品。
【請求項4】
第一金属マトリックスが、鉄系合金、鉄マンガン系合金、鉄クロム系合金、及びニッケル系合金からなる群から選択される、請求項1に記載の階層複合鋳造摩耗部品。
【請求項5】
第二金属マトリックスが、高クロム白鋳鉄又は鋼を含む、請求項1に記載の階層複合鋳造摩耗部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗と衝撃応力の組み合わせに対して改良された耐性を有する鋳造技術によって得られる階層複合摩耗部品に関する。摩耗部品は、本発明ではミリメートルレベルの隙間を有する凝集されたミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子の三次元ネットワークを含み、そこでは、TiCベースのマイクロメートルレベルの粒子が、第一金属マトリックスと称される結合剤に埋め込まれ、ミリメートルレベルの隙間が、第二金属マトリックスと称される鋳造金属によって充填されている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、セメント工場、採石場及び鉱山のような粉砕及び破砕工業に使用される摩耗部品に関する。これらの部品は、バルクで高い機械応力を受け、作用面に高い摩耗を受けることが多い。それゆえ、これらの部品は、高い耐摩耗性、及び衝撃のような機械応力に耐えることができる幾らかの延性を示すことが望ましい。
【0003】
これらの二つの特性が同じ材料組成で達成されることは難しいことを考えて、良好な耐摩耗性のセラミックインサートが埋め込まれる相対的に延性の合金から作られた芯を持つ複合部品が過去において提案されている。
【0004】
文献US4119459(Sandvik,1977)は、鋳鉄及び焼結セメント化炭化物粉砕粒子から構成された複合摩耗体を開示する。結合剤金属中のセメント化炭化物は、Ti,Ta,Nb又は他の金属の炭化物の可能な添加を有するWC-Coタイプのものである。粒子又は複合摩耗体の強化部に存在可能なTiCの容積百分率についての示唆は全く与えられていない。
【0005】
文献US4626464(Krupp,1984)は、金属合金基材、及び鉄系合金に加えて硬質金属粒子を含有する耐摩耗領域を含むハンマーに設置されるビーターを開示し、硬質金属粒子は、0.1~20mmの直径を有し、耐摩耗領域中の硬質金属粒子の百分率割合は、25~95容量%であり、前記硬質金属粒子は、前記金属合金基材内にしっかりと埋め込まれている。強化部において存在可能なTiCの平均容積濃度は、この文献には開示されていない。
【0006】
US5066546(Kennametal,1989)は、一連の炭化物材料の少なくとも一つの層を含む階層耐摩耗体を開示し、それらの中には炭化チタンが鋳造鋼マトリックスに埋め込まれている。炭化物材料は、4.7~9.5mmの粒子サイズを有し、前記炭化物材料は、不規則な形状を有する粉砕された部分、粉末、又は圧縮体の形である。この文献は、摩耗体の強化部におけるTiCの平均濃度も強化構造の構成も何ら開示しない。
【0007】
文献US8999518B2は、規定された幾何学形状に従って炭化チタンで強化された鉄系合金を含む階層複合材料を開示し、そこでは前記強化部分は、炭化チタンのマイクロメートルレベルの球状粒子を本質的に含まないミリメートルレベルの領域によって分離された炭化チタンのマイクロメートルレベルの球状粒子で濃縮されたミリメートルレベルの領域の交互マクロ-マイクロ構造を含み、前記領域は、鉄系合金によって充填される。この特許では、最大TiC濃度は、TiC及びCの粉末ブレンドが95%の最大相対密度で圧縮されるときに72.2容量%である。粒子の多孔率は、5容量%より高く、反応調整剤がない場合には一つだけの金属マトリックス、つまり鋳造金属が存在する。階層複合材料は、自己伝播高温合成(SHS)によって得られ、そこでは反応温度は、一般に1500℃以上、あるいは2000℃にさえなる。反応を局所的に開始するためには小さいエネルギーだけが必要とされる。次いで、反応は、試薬の混合物の全体に自発的に伝播するだろう。
【0008】
この文献の階層複合体は、炭素及びチタン粉末の混合物を含む粒子の型での反応によって得られる。反応の開始後、反応の先端が発現し、それは、自発的に伝播し(自己伝播)、炭化チタンがチタン及び炭素から得られることを可能にする。それによって得られた炭化チタンは、「その場で得られた」と言われる。なぜならそれは、鋳造鉄系合金から与えられないからである。この反応は、全体部分、従って非強化部分と強化部分の両方を鋳造するために使用される鋼又は鋳造鉄の鋳造熱によって開始される。Ti+C→TiCのSHS反応は、3290Kの理論断熱温度で極めて発熱性である。
【0009】
不幸にも、温度上昇は、反応体の脱ガス(即ち、そこに含まれる揮発分(炭素中のHO、チタン中のH,N)の揮発)を起こす。反応体粉末に含まれる全ての不純物(つまり、粉末/圧縮粒子のまわり又は内側の有機又は無機成分)が揮発される。炭素とチタンの反応の強さを弱めるために、鉄系合金の粉末が調整剤としてそこに添加され、熱を吸収し、温度を低下する。それでもなお、これはまた、最終摩耗部において得られるTiCの最大濃度を減少させる。そのため、72.2%の上述の理論濃度は、実際の生産規模ではもはや達成できない。
【0010】
文献WO2010/031663A1は、パーカッションクラッシャーのための複合インパクターに関し、前記インパクターは、前述の文献US8999518B2と同じ方法に従って規定された形状の炭化チタンで少なくとも部分的に強化された鉄系合金を含む。炭素とチタンの反応の強さを弱めるために、鉄系合金粉末が加えられる。この文献の実施例では、強化領域は、TiCの約30%の球状容積%を含む。この目的のため、85%相対密度のストリップが圧縮によって得られる。ストリップを粉砕した後、得られた粒子は、1~5mm、好ましくは1.5~4mmの寸法に到達するようにふるいにかけられる。2g/cmの範囲のバルク密度が得られる(粒子の間の45%空間+粒子中の15%多孔率)。従って、強化される摩耗部品における粒子は、55容量%の多孔性粒子を含む。かかる場合において、強化された領域におけるTiCの濃度は、30%にすぎず、それは、特にSHS反応前の高い多孔性の粒子での鋳造の摩耗性能に対してマイナスの影響を持ちやすく、必ずしも十分でない。
【0011】
文献US2018/0369905A1は、調整剤を使用することによって鋳造中のSHSプロセスのより正確な制御を与える方法を開示する。鋳造インサートは、TiC形成の反応体、及び21%Mnを含む鋳造高マンガン鋼の組成を有する調整剤を含む粉末混合物から作られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、低い多孔率のセラミック-金属複合粒子を形成する金属結合剤(第一金属マトリックス)に埋め込まれた高濃度のマイクロメートルレベルの炭化チタン粒子を強化構造に統合する、鋳造鉄又は鋼中に金属マトリックスを含む従来の鋳造によって製造された階層複合摩耗部品を提供することを目的とする。強化部分のマイクロメートルレベルの炭化チタン粒子を含む第一金属マトリックスは、複合摩耗部品の残りに存在する金属マトリックスとは異なる。
【0013】
本発明の別の目的は、ガスの放出を避け、良好な耐衝撃性及び耐腐食性を有する改良された複合摩耗部品を与える、強化複合摩耗部品の安全な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一態様は、摩耗に対して最も露出される部分に強化材を含む階層複合摩耗部品であって、前記強化材が、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを含み、前記セラミック-金属複合粒子が、第一金属マトリックス中に埋め込まれた炭化チタンのマイクロメートルレベルの粒子を少なくとも52容量%、好ましくは少なくとも61容量%、より好ましくは少なくとも70容量%含み、前記セラミック-金属複合粒子が、少なくとも4.8g/cmの密度を有し、前記セラミック-金属複合粒子がそのミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークが、第二金属マトリックス中に埋め込まれ、前記強化材が、炭化チタンを平均で少なくとも23容量%、より好ましくは少なくとも28容量%、最も好ましくは少なくとも30容量%含み、第一金属マトリックスが、第二金属マトリックスとは異なり、第二金属マトリックスが、鉄系鋳造合金を含む、階層複合摩耗部品に関する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれは、複合摩耗部品は、以下の特徴の一つ又はそれらの好適な組み合わせによってさらに特徴づけられる:
- セラミック-金属複合粒子が、5容量%未満、好ましくは3容量%未満、より好ましくは2容量%未満の多孔率を有する、
- 埋め込まれたセラミック-金属複合粒子が、0.5~10mm、好ましくは1~5mmの平均粒子サイズd50を有する、
- 埋め込まれた炭化チタン粒子が、0.1~50μm、好ましくは1~20μmの平均粒子サイズd50を有する、
- 第一金属マトリックスが、鉄系合金、鉄マンガン系合金、鉄クロム系合金、及びニッケル系合金からなる群から選択される、
- 第二金属マトリックスが、鉄系合金、特に高クロム白鋳鉄又は鋼を含む。
【0016】
本発明は、以下の工程を含む、セラミック-金属複合粒子の製造のための方法をさらに開示する:
- 好ましくは、1~20μm、より好ましくは1~10μmの平均粒子サイズd50を達成するように溶媒の存在下でTiC及び第一金属マトリックスを含む粉末組成物を粉砕する、
- 1~10%、好ましくは1~6%のワックスを粉末組成物に混合する、
- 真空乾燥によって溶媒を除去して、凝集された粉末を得る、
- 凝集された粉末をストリップ、シート又はロッドへと圧縮する、
- ストリップ、シート又はロッドを、好ましくは、0.5~10mm、より好ましくは1~5mmの平均粒子サイズd50の粒子へと圧砕する、
- 少なくとも4.8g/cmの密度に達するまで真空又は不活性雰囲気炉で1000~1600℃の温度で焼結する。
【0017】
本発明は、以下の工程を含む、本発明の複合摩耗部品の製造のための方法をさらに開示する:
- 本発明に従って得られたセラミック-金属複合粒子を約1~8重量%、好ましくは2~6重量%の接着剤と混合する、
- 第一型に混合物を注ぎ、圧縮する、
- 混合物を、接着剤の溶媒を除去するか又は硬化を可能にするために適切な温度及び時間で乾燥する、
- 乾燥された混合物を脱型し、階層複合摩耗部品の摩耗に露出される部分において強化材として使用される、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、摩耗部品の製造のための方法は、以下の工程の一つ又はそれらの好適な組み合わせによってさらに特徴づけられる:
- 鋳造される階層複合摩耗部品の型の容積の部分に、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを配置する、
- 第二金属マトリックスを、鋳造階層部品である第二型中に注ぎ、三次元的に相互接続されたネットワーク中のミリメートルレベルの隙間に同時に浸透させる、
- 鋳造された階層複合摩耗部品を脱型する。
【0019】
本発明は、本発明の方法によって得られた階層複合鋳造摩耗部品をさらに開示する。
具体的には、本発明は、以下の(1)~(12)の構成を有する。
(1)摩耗に対して最も露出される部分に強化材を含む階層複合摩耗部品であって、前記強化材が、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを含み、前記セラミック-金属複合粒子が、第一金属マトリックス中に埋め込まれた炭化チタンのマイクロメートルレベルの粒子を少なくとも52容量%、好ましくは少なくとも61容量%、より好ましくは少なくとも70容量%含み、前記セラミック-金属複合粒子が、少なくとも4.8g/cmの密度を有し、前記ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークが、第二金属マトリックス中に埋め込まれ、前記強化材が、炭化チタンを平均で少なくとも23容量%、より好ましくは少なくとも28容量%、最も好ましくは少なくとも30容量%含み、第一金属マトリックスが、第二金属マトリックスとは異なり、第二金属マトリックスが、鉄系鋳造合金を含む、階層複合摩耗部品。
(2)セラミック-金属複合粒子が、5容量%未満、好ましくは3容量%未満、より好ましくは2容量%未満の多孔率を有する、(1)に記載の階層複合摩耗部品。
(3)埋め込まれたセラミック-金属複合粒子が、0.5~10mm、好ましくは1~5mmの平均粒子サイズd50を有する、(1)又は(2)に記載の階層複合摩耗部品。
(4)埋め込まれた炭化チタン粒子が、0.1~50μm、好ましくは1~20μmの平均粒子サイズd50を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の階層複合摩耗部品。
(5)第一金属マトリックスが、鉄系合金、鉄マンガン系合金、鉄クロム系合金、及びニッケル系合金からなる群から選択される、(1)~(4)のいずれかに記載の階層複合摩耗部品。
(6)第二金属マトリックスが、高クロム白鋳鉄又は鋼を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の階層複合摩耗部品。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載のセラミック-金属複合粒子の製造のための方法であって、以下の工程を含む方法:
- 溶媒の存在下でTiC及び第一金属マトリックスを含む粉末組成物を粉砕する;
- 1~10%、好ましくは1~6%のワックスを粉末組成物に混合する;
- 真空乾燥によって溶媒を除去して、凝集された粉末を得る;
- 凝集された粉末をストリップ、シート又はロッドへと圧縮する;
- ストリップ、シート又はロッドを粒子へと圧砕する;
- 少なくとも4.8g/cmの密度に達するまで真空又は不活性雰囲気炉で1000~1600℃の温度で焼結する。
(8)溶媒の存在下でTiC及び第一金属マトリックスを含む粉末組成物を粉砕する工程が、1~20μm、好ましくは1~10μmの平均粒子サイズd50が得られるまで実施される、(7)に記載の方法。
(9)ストリップ、シート又はロッドから圧砕された粒子が、0,5~10mm、好ましくは1~5mmの平均粒子サイズd50を有する、(7)又は(8)に記載の方法。
(10)ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークの製造のための方法であって、以下の工程を含む方法:
- (7)に記載の方法に従って得られたセラミック-金属複合粒子を約1~8重量%、好ましくは2~6重量%の接着剤と混合する;
- 第一型に混合物を注ぎ、圧縮する;
- 混合物を、接着剤の溶媒を除去するか又は硬化を可能にするために適切な温度及び時間で乾燥する;
- 乾燥された混合物を脱型し、階層複合摩耗部品の摩耗に露出される部分において強化材として使用される、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを得る。
(11)以下の工程を含む、(1)に記載の階層複合摩耗部品の製造のための方法:
- 鋳造される階層複合摩耗部品の型の容積の第一部分に、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークを配置する;
- 第二金属マトリックスを、鋳造される階層摩耗部品の型の容積の第二部分中に注ぎ、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワーク中のミリメートルレベルの隙間に第二金属マトリックスを同時に浸透させる;
- 鋳造された階層複合摩耗部品を脱型する。
(12)(11)に記載の方法によって得られる階層複合摩耗部品。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、試験が本発明のために実施されたミリングマシーンのアンビルリングを示す。
【0021】
図2図2は、図1のアンビルリングの個々のアンビルを表わす。
【0022】
図3図3は、摩耗した個々のアンビルを表わす。
【0023】
図4図4は、個々のアンビルの摩耗に対して最も露出される部分における強化構造の配置の概略図である。
【0024】
図5図5は、ミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子がミリメートルレベルの隙間と周期的に交互に配置されて三次元的に相互接続されたネットワークとして規定される強化構造の全体図を表わす。
【0025】
図6-7】図6-7は、図5の強化構造の拡大図を表わす。
【0026】
図8図8は、第二金属マトリックス(鋳造金属マトリックス)によって充填された隙間(間隙)を含むミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子を有する鋳造摩耗部品の断面図を表わす。
【0027】
図9図9は、第一金属マトリックス(TiC粒子の結合剤)に埋め込まれた顕微鏡サイズの球状TiC粒子を表わす。写真は、図8に表わされた単一のセラミック-金属複合粒子の高倍率である。
【0028】
図10図10は、摩耗部品の強化部において三次元ネットワークの形で統合されたセラミック-金属複合体のミリメートルレベルの粒子を形成する第一金属マトリックスにおいて埋め込まれたマイクロメートルレベルのTiC粒子間の縮尺差に基づく本発明の概念の概略図である。
【0029】
図11図11は、粒子を含む試料の断面を表わし、この断面は、(以下に説明するように)セラミック-金属粒子の平均粒子サイズを得るための方法に使用される。
【0030】
図12図12は、直径Feret(最小及び最大Feret直径を有する)を測定するための方法の概略図である。Feretのこれらの直径は、(以下に説明するように)セラミック-金属粒子の平均粒子サイズを得るための方法に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、従来の鋳造によって製造された階層複合摩耗部品に関する。それは、0.5~10mm、好ましくは0.8~6mm、より好ましくは1~4mm、さらにより好ましくは1~3mmのミリメートルレベルのサイズの平均値を有する密な(低い多孔率<5%)不規則セラミック-金属複合粒子を含む特定の強化構造を含む金属マトリックスからなる。
【0032】
セラミック-金属複合体は、金属結合剤(本発明では第一金属マトリックスと称する)によって結合されたセラミック粒子から構成される。摩耗用途について、セラミックは、高い耐摩耗性を与える一方、金属は、とりわけ靭性を改良する。TiCセラミック-金属複合体は、例えばFe,Ni又はMoベースであることができる金属相(第一金属マトリックス)によって結合された炭化チタンのマイクロメートルレベルの球状粒子(52~95容量%、好ましくは61~90容量%、より好ましくは70~90容量%の粒子、0.1~50μm、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~10μmのサイズ)を含む。鉄系合金、好ましくはクロム鋳造鉄又は鋼(第二金属マトリックス)が型に注がれ、前記強化構造の隙間にのみ浸透する。
【0033】
本発明では、TiCという表現は、厳密に化学量論的な化学的意味として理解されるべきでなく、結晶学的構造における炭化チタンとして理解されるべきである。炭化チタンは、0.47から1までで変化するC/Ti化学量論を有する幅広い組成範囲を持ち、0.8より大きいC/Ti化学量論が好ましい。
【0034】
摩耗部品の強化容積を形成するインサート中のセラミック-金属複合粒子の容積量(中空部分又は凹所は、もしあっても除外される)は、一般的に45~65容量%、好ましくは50~60容量%であり、それは、23~62容量%、好ましくは28~60容量%、より好ましくは30~55容量%の強化容積における平均TiC濃度に導く。
【0035】
摩耗部品の階層強化部分は、約0.5~10mm、好ましくは0.8~6mm、より好ましくは1~4mm、さらにより好ましくは1~3mmの平均サイズを有する不規則なミリメートルレベルのセラミック-金属複合粒子の凝集体から製造される。
【0036】
セラミック-金属複合粒子は、接着剤(良く知られたナトリウム(又はカリウム)シリケートガラス無機接着剤のような無機のもの又はポリウレタンもしくはフェノール樹脂のような有機接着剤)とともに、又は容器内又はバリヤーの背後で(通常金属であるが、前記容器又はバリヤーは、セラミックの性質(一般に無機)を有するか、又は有機であることもできる)、希望の三次元形状へと凝集されることが好ましい。この希望の形状は、結合剤によって結合されるか又は容器もしくはバリヤーによって形状維持された弱凝集(agglomerated)/強凝集(aggregated)されたセラミック-金属複合粒子の三次元的に相互接続されたネットワークから形成された開放構造を形成し、粒子の充填は、粒子間にミリメートルレベルの開放隙間を残し、ミリメートルレベルの隙間は、液体鋳造金属によって充たされることができる。この凝集物は、摩耗部品の強化部分を形成するために鉄系合金の注ぎ前に型中に配置又は位置される。液体金属は、次いで型中に注がれ、液体金属は、粒子間の開放隙間を充たす。ミリメートルレベルの隙間は、強化構造の圧縮及び粒子のサイズに依存して0.1~5mm、好ましくは0.5~3mmの隙間として理解されるべきである。
【0037】
セラミック-金属複合粒子は、従来の方法で、粉末冶金(即ち、適切なサイズ分布のセラミック及び金属粉末のブレンドを造形した後に液相焼結)によって製造されることが普通である。
【0038】
一般的に、粉末は、0.1~50μmの直径であり、主成分としてTiCを含み、個々の構成粉末又は既に合金化された粉末であることができる金属結合剤(第一金属マトリックス)を5~48%含む。粉末はまず、ボールミル、乾式又は湿式粉砕で(例えば金属粉末の酸化を避けるためにアルコールとともに)混合され、及び/又は(最初の粉末サイズに依存して)粉砕される。一部の有機酸は、分散又は造形補助目的のために加えられてもよい。乾燥工程は、湿式粉砕の場合には必要とされてもよい。これは、例えば真空乾燥又はスプレー乾燥によってなされることができる。造形は、ストリップ、ロッド又はシートを形成するために冷間一軸、等方加圧又は射出成形又は他のいずれかの造形法によって実施される。
【0039】
例えばシートのストリップは、粒子に粉砕され、おそらくふるい分けされることができる。それは、容易な引き出し配向(pull out orientation)のない不規則な粒子形状(鋳造金属に機械的に極めて良好に保持される粒子)を達成するためには有利である。加圧、押出、又は粉砕された粒子は、次いで好適な温度で低又は高真空の不活性ガス、水素又はそれらの組み合わせの下で焼結される。液相焼結中、毛管力によって駆動される粒子再配置が起こる。
【0040】
摩耗部品のセラミック-金属複合粒子を埋め込む鋳造合金(第二金属マトリックス)は、鉄系合金(クロム白鋳鉄、鋼、マンガン鋼…)又はニッケルもしくはモリブデン合金であることが好ましい。この合金は、摩耗部品上の最終的な要請に依存して局所的に最適化された特性を達成するために選択されることができる(例えばマンガン鋼は、高い衝撃性を与え、高クロム白鋳鉄は、高い耐摩耗性を与え、ニッケル合金は、優れた耐熱性及び耐腐食性を与えるだろう)。
【0041】
利点
本発明は、従来の鋳造の中で、自己伝播発熱反応(SHS、上記参照)におけるTiCのその場での形成の場合のような制御されない危険な反応及び投射、又は鋳造構造の内側の欠陥(ガス穴、クラック、不均質)の危険なしで、セラミック-金属複合粒子中の極めて高いTiCの濃度(52~95容量%)を得ることを可能にする。
本発明では、TiCの良好な平均濃度は、セラミック-金属複合粒子の低い多孔率によって、摩耗部品の強化容積において達成されることができる。約62容量%までの値が、強化容積におけるセラミック-金属複合粒子の圧縮/パイリングに依存して達成されることができる。
【0042】
本発明の階層摩耗部品は、実質的に多孔性でなく、クラックもなく、従って良好な機械特性及び摩耗特性をもたらす。
【0043】
本発明の炭化チタン及びセラミック-金属複合粒子(TiC+結合剤)の粒子のサイズは、(原材料、粉砕、造形プロセス及び焼結条件の選択により)製造プロセス中に広範に制御されることができる。周知の粉末冶金によって作られた焼結されたミリメートルレベルのTiCベースのセラミック-金属複合粒子は、粒子サイズ及び多孔率の制御、第一金属マトリックスとしての金属合金の様々な組成の使用、高濃度のTiC、人手の広範な必要なしでのインサートの容易な造形、及び高熱衝撃条件であっても注ぎ後の粒子の良好な内部健康を可能にする。
【0044】
セラミック-金属複合粒子の製造
無機TiC粉末(52~95容量%、好ましくは61~90容量%、より好ましくは70~90容量%)と、第一金属マトリックスとしての金属粉末(5~48容量%、好ましくは10~39容量%、より好ましくは10~30容量%)の粉砕及び/又は混合は、酸化に対する金属結合剤の感受性に依存して、水又はアルコールであることができる液体とともにボールミル中で上述のように実施される。また、種々の目的のために様々な添加剤(酸化防止剤、分散剤、結合剤、可塑剤、滑剤、加圧のためのワックス…)を使用することができる。
【0045】
いったん希望の平均粒子サイズが達成されたら(通常20μm以下、好ましくは10μm、より好ましくは5μm以下)、スラリーは、有機酸を含有する粉末の凝集を避けるために(真空乾燥又はスプレー乾燥によって)乾燥される。
【0046】
凝集された粉末は、ホッパーを通して造粒装置に導入される。この機械は、圧力下の二つのローラーを含み、それらを粉末が通過して圧縮される。出口では、圧縮された材料の連続ストリップ(シート)が得られ、それは、次いでセラミック-金属複合粒子を得るために粉砕される。これらの粒子は、次いで希望の粒子サイズにふるい分けされる。希望しない粒子サイズの画分は、所望によりリサイクルされる。得られた粒子は、(圧縮レベル、粉末特性及びブレンド組成に依存して)通常40~70%の相対密度を有する。
【0047】
粉砕方法に依存して、粉末のサイズ分布、並びに多かれ少なかれ立方体形状又は平坦形状へそれらの造形を調整することも可能である(衝撃粉砕は、より立方体の粒子をもたらすが、圧縮粉砕は、より平坦な粒子をもたらすだろう)。得られた粒子は、全体として、焼結後に0.5~10mm、好ましくは0.8~6mm、より好ましくは1~4mm、さらにより好ましくは1~3mmの粒子を与えるサイズを持つ。粒子はまた、焼結の前又は後に、粒子にさらに粉砕される大きな部分又は粒状物として直接的に粉末混合物の従来の一軸加圧又は粒状化によって得られることができる。
【0048】
最後に、液相焼結は、希望の多孔率、好ましくは5%以下、より好ましくは3%未満、最も好ましくは2%未満を達成するまで金属相(結合剤のタイプ及び品質)に依存して、真空、N,Ar,H又はこれらの混合物下で数分又は数時間、1000~1600℃の温度で炉中で実施されることができる。
【0049】
三次元強化構造(芯)の実現
上述のように、セラミック-金属複合粒子は、接着剤によって又はそれらを容器中に閉じ込めることによって又は他のいずれかの手段によって凝集される。接着剤の割合は、粒子の全重量に対して10重量%を越えず、2~7重量%が好ましい。接着剤は、無機又は有機であってもよい。ケイ酸ナトリウムもしくはカリウムに基づく接着剤又はポリウレタンもしくはフェノール樹脂に基づく接着剤を使用することができる。
【0050】
低い多孔率のセラミック-金属複合粒子は、接着剤(通常は、無機ケイ酸塩接着剤)と混合され、希望の形状の型(例えばシリコーン)中に置かれる。接着剤の固化後(例えば無機ケイ酸塩接着剤の水乾燥後に100℃で得られる、但し接着剤の固化は、例えばポリウレタンベースの接着剤についてはアミンベースのガス又はCOでのガス発生によっても得られることができる)、芯が硬化され、脱型させることができる。粒子サイズ、サイズ分布、粒子の配置中の振動又は芯を作りながらの粒子床のタッピングに依存して、芯は、通常30~70容量%、好ましくは40~60容量%の密な粒子、及び70~30容量%、好ましくは60~40容量%の間隙(ミリメートルレベルの隙間)を3D相互接続ネットワーク中に含む。
【0051】
摩耗部品の鋳造
芯(三次元強化構造)は、強化される摩耗部品の型部分において配置されかつねじもしくは他のいずれかの手段で固定される。熱間液体鉄系合金、好ましくはクロム白鋳鉄又は鋼は、次いで型中に注がれる。
【0052】
従って、熱間液体鉄系合金は、芯の粒子間のミリメートルレベルの隙間を充たすだけである。もし無機接着剤が使用されるなら、粒子表面上での金属結合剤(第一金属マトリックス)の限定された溶融は、粒子と第二マトリックス合金の間の極めて強い結合を導く。ケイ酸ナトリウムを含む有機接着剤を使用するとき、金属結合は、限定されるが、接着剤によってカバーされない粒子表面上でなお起こりうる。
【0053】
従来技術とは逆に、注ぎ中に反応(発熱反応又はガス放出)又は収縮(Ti+C→TiC反応による24%容積収縮)が全くなく、鋳造金属は、隙間(粒子間のミリメートルレベルの空間)に浸透するが、セラミック-金属複合粒子は、多孔質でないのでそれには浸透しないだろう。
【0054】
測定方法
多孔率、粒状又は粒子サイズの測定について、金属組織学的試験のために粉砕及び研磨きずがない試料が作られる。多孔率の誤った評価に導きうる粒子からのはがれを避けるために注意しなければならない。標本調製のためのガイドラインは、ISO 4499-1:2020及びISO 4499-3:2016,8.1及び8.2に見い出されることができる。
【0055】
多孔率の決定
自由粒子の多孔率の容積画分は、粒子の測定密度及び理論密度から計算されることができる。
【0056】
金属マトリックスに埋め込まれた粒子の多孔率の容積画分は、ISO 13383-2:2012に従って測定される。この標準規格は、特に微細なセラミックに適用されるが、多孔率の容積画分を測定するために記載された方法はまた、他の材料にも適用されることができる。ここでの試料は、純粋に微細なセラミックではなく硬い金属複合体であるので、試料調製は、ISO 4499-1:2020及びISO 4499-3:2016,8.1及び8.2に従ってなされるべきである。エッチングは、多孔率測定のために必要でないが、測定の結果を変化させないので、実施されてもよい。
【0057】
炭化チタンの平均粒子サイズ
埋め込まれた炭化チタン粒子の平均粒子サイズは、ISO 4499-3:2016による直線切断法(linear intercept method)によって計算される。五つの異なる粒子の微小構造からの五つの画像が、光学又は電子顕微鏡で、視野中に10~20個の炭化チタン粒子があるような既知の倍率でとられる。個々の粒子が一つの直線により一回より多く交差されないように各校正画像を横切る四つの直線切断線が引かれる。
【0058】
一つの直線が炭化チタンの一つの粒子を切断する場合、直線の長さ(li)は、校正された規則を使用して測定される(i=1,2,3…nの場合、nは、第1、第2、第3、…第n番目の粒子)。画像の縁に接触する不完全な粒子は、無視されなければならない。少なくとも200個の粒子がカウントされなければならない。
【0059】
平均-直線-切断粒子サイズは、以下のように規定される:
【0060】
セラミック-金属粒子の平均粒子サイズ
試料の研磨された断面の、視野を横切る少なくとも250個のセラミック-金属粒子があるような写真顕微鏡パノラマが、コンピュータプログラム及び光学顕微鏡(例えばAlicona Infinite Focusによって得られる汎用画像視野パノラマ)を使用して、スティッチング(対象の異なる部分の一連のデジタル画像を組み合わせて良好な解像度を保持する対象全体のパノラマ図にする方法)によって作成される。適切な画像二値化法により、グレースケール画像の関心のある特徴(粒子)及び背景へのセグメント化を可能にする(図11参照)。もし画像二値化が劣った画像品質のために首尾一貫しないなら、粒子、スケールバー(もし存在するなら)、及び画像境界をトレーシングペーパー上に手で描き、次いでトレーシングペーパーを走査することを含む手動工程が使用される。
【0061】
測定方向に対して直角に配置される二つの接線間の距離であるFeret直径は、画像分析ソフトウエア(例えばImage J)によって各粒子について全ての方向で測定される。一例は、図12に与えられる。
【0062】
画像の各粒子の最小及び最大のFeret直径が決定される。最小Feret直径は、Feret直径の測定された組のうち最も短いFeret直径である。最大Feret直径は、Feret直径の測定された組のうち最も長いFeret直径である。画像の縁に接触する粒子は、無視されなければならない。各粒子の最小及び最大のFeret直径の平均値は、等価直径xとしてとられる。粒子の容量サイズ分布q(x)は、次いで直径xの球体に基づいて計算される。粒子のD50は、ISO 9276-2:2014に従って容量で重み付けされた平均サイズx 1,3として理解されるべきである。
【0063】
粒子の製造時のセラミック-金属粒子の平均粒子サイズ
粒子サイズは、RetschからのCamsizerによってISO 13322-2:2006に従った動的画像分析によって測定される。サイズ分布のために使用される粒子直径は、(スクリーニング/ふるい分けに近い結果のために)粒子投影の最大コードの組で測定された最も短いコードであるXc minである。
【0064】
粒子d50は、Xc minに基づく容量分布の容量で重み付けされた平均サイズである。
【0065】
粉砕時の粉末の粒子サイズ測定
粉砕時の粉末の粒子サイズは、MalvernからのMastersizer 2000によってISO 13320:2020に与えられたガイドラインに従ってMIE理論でのレーザー回析によって測定される。TiCについての屈折率は3に設定され、吸収率は1に設定される。オブスキュレーションは、10~15%の範囲でなければならず、秤量された残留物は、1%未満でなければならない。
【0066】
焼結された粒子の密度測定
焼結された粒子の密度の決定は、ISO 3369:2006に従って水を使用して実施される。いかなる開放した多孔性を有さない粒子について、ガス変位比重計(MicromeriticsからのAccuPyc II 1345比重計のようなもの)が使用されることができ、それは、実質的に同じ密度値を与える。
【0067】
発明の具体化-アンビル摩耗部品
立軸インパクターに使用されるアンビル摩耗部品は、本発明に従って実現された。摩耗部品の強化された容積は、約30~50容量%のTiCの異なる平均容量%を含む。それらは、発明者のUS8999518B2の実施例4に従って作られた摩耗部品(強化された容積中に約32容量%のTiCの全体容積百分率を有する)と比較された。
【0068】
この比較のための理由は、上記の実施例4が注ぎ中に多くの火炎、ガス及び熱い液体金属投射をなお作っているという事実にかかわらず、工場で注意して管理されることができる典型的な「その場での(in-situ)」組成(自己伝播反応におけるTi+C及び調整剤)であることである。
【実施例
【0069】
粒子製造
三つの異なるタイプのセラミック-金属複合粒子のために以下の原材料が使用された:
・ 325メッシュ未満のTiC粉末
・ 325メッシュ未満の鉄粉末
・ 325メッシュ未満のマンガン粉末
・ 325メッシュのニッケル粉末
【0070】
表1の組成による粉末は、3μmの平均粒子サイズを達成するためにアルコール及び金属ボールを有するボールミルで24時間混合及び粉砕された。
【0071】
有機ワックス結合剤(粉末の4重量%)が加えられ、粉末と混合される。アルコールは、回転翼を有する真空乾燥機によって除去される(アルコールは、再使用されるために濃縮される)。得られた凝集粉末は、次いで100μmふるいで分けられる。無機/金属粉末混合物の理論密度の60%のストリップが、ローラー圧縮造粒機の回転ローラー間での圧縮によって作られる。ストリップは、それらを適切なメッシュサイズを有するふるいに強制的に通すことによって不整粒子に破砕される。破砕後、粒子は、1.4~4mmの寸法を得るようにふるい分けされる。これらの不整多孔粒子は、次いで最小の多孔率(<5容量%)及び5g/cmより高い密度を達成するまでアルゴンの低い分圧を有する真空炉で高温(1000~1600℃)で数分又は数時間、焼結される。
【0072】
5容量%未満の低い多孔率を有する焼結された粒子は、次いで約4重量%の無機ケイ酸塩接着剤と混合され、100×30×150mmの希望形状のシリコーン型中に注がれる(充填を容易にし、全ての粒子がきっちりと充填されることを確実にするために振動が付与されることができる)。ケイ酸塩接着剤から水を除去するためにストーブ中で数時間100℃で乾燥した後、芯は、十分に硬く、脱型されることができる。
【0073】
これらの芯は、図5で表わされるように、約55容量%の密な粒子(45容量%の粒子間の間隙/ミリメートルレベルの隙間)を含む。各芯/三次元強化構造は、(図4に表わされるように)強化される摩耗部品の一部の型に配置される。熱間液体高クロム白鋳鉄が、次いで型中に注がれる。従って、熱間液体高クロム白鋳鉄は、芯の粒子間の約45容量%のミリメートルレベルの隙間を充填している。注いだ後、強化された部分では、鋳造合金(第二金属マトリックス)が存在する摩耗部品の残りとは異なる金属相(第一金属マトリックス)によって結合された炭化チタン粒子の約57容量%~90容量%の高濃度を有する領域が55容量%得られる。摩耗部品の強化マクロ-マイクロ構造中のTiCの全体容積量は、実施例1~3では約32~50容量%で変化するが、さらに高い値を達成することができる。
【0074】
従来技術との比較
本発明による摩耗部品は、US8999518B2の実施例4と類似する方法で得られた摩耗部品と比較される。これらの試験が実施されたミリング機のアンビルリングが図1に示される。
【0075】
この機械では、本発明者は、正確に同じ条件下で摩耗を評価するために、本発明による(図2及び3に表わされるような)インサートを含むアンビルのいずれかの側に、従来技術のUS8999518B2の実施例4に従って強化されたアンビルを配置し、両者が交互に配置されるようにした。破砕される材料は、高スピードでアンビルの作用面の上に投射される(摩耗前の個々のアンビルは、図2に表わされる)。破砕中、作用面は摩耗される。摩耗されたアンビルは、図3に表わされる。
【0076】
各アンビルについて、重量損失は、使用前後の各アンビルを秤量することによって測定される。
重量損失=(最終重量-初期重量)/初期重量
性能指数は、以下のように規定される。以下の式中、参照物の重量損失は、試験アンビルの各側上のUS8999518B2の実施例4のアンビルの平均重量損失である。
PI=参照物の重量損失/試験アンビルの重量損失
【0077】
性能指数が1より上である場合、試験アンビルが参照物より少なく摩耗されることを意味し、1より下である場合、試験アンビルが参照物より多く摩耗されることを意味する。
・ 本発明の実施例1による強化されたアンビル(炭化チタンを57容量%(45重量%)含有するセラミック-金属複合粒子)の性能指数(PI):1.05(これは、US8999518B2の実施例4に近い局所的な容積量を有するセラミック-金属複合粒子の高い性能であり、この高い性能は、部品中のクラックや多孔性のような欠陥が少ないことによって説明されうる)
・ 本発明の実施例2による強化されたアンビル(炭化チタンを75容量%(65重量%)含有するセラミック-金属複合粒子)の性能指数(PI):1.16
・ 本発明の実施例3による強化されたアンビル(炭化チタンを90容量%(85重量%)含有するセラミック-金属複合粒子)の性能指数(PI):1.24
【0078】
化合物(炭化チタン及び合金)の多孔率及び密度の関数としての複合体の密度
(鉄及びニッケルベース合金についての)TiCの容量%及び多孔率の容量%の関数としての複合体の密度を有する二つの表を以下に示す。
【0079】
本発明の利点
本発明は、一般に従来技術と比較して以下の利点を有する:
・ 粒子中のTiCの局所的に高い容量%のために良好な摩耗性能(従来技術のSHS技術では実際に達成不可能なレベル)、
・ 炭化チタンのサイズ及び容積量を調整することによる、及び摩耗部品のために例えば高クロム白鋳鉄のような鋳造合金(第二金属マトリックス)に組み合わされたTiCセラミック-金属複合粒子中の例えば高い機械特性のマンガン鋼のような金属相結合剤(第一金属マトリックス)を使用することによる摩耗部品の良好な摩耗性能又は機械特性(但し、第一金属マトリックスは、第二金属マトリックスとは異なる)、
・ 注ぎ中にガスの発生が全くなく、TiC分散が均一であるので、低い多孔率及び/又は少ないクラック欠陥による摩耗部品の良好な摩耗性能又は機械特性、
・ 可燃性のガス放出を伴なう危険な発熱反応又は注ぎ中の溶融液体金属投射が全く起こらないことによる、製造時の良好な安全性、
・ 粒子を作るための危険の少ない原材料の取扱いによる製造時の安全性(Fe粉末は、極めて高い露出度の粉末であるTiより低い露出度の粉末である)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-7】
図8
図9
図10
図11
図12