(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】回転子アセンブリ及び圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
F04C29/02 361A
(21)【出願番号】P 2022524033
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2021127944
(87)【国際公開番号】W WO2023035382
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】202111056348.9
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519186428
【氏名又は名称】广▲東▼美的▲環▼境科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG MIDEA ENVIRONMENTAL TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.2 Building, 2th Keyuan Road, Shunde High Tech Zone, Ronggui Street Office, Shunde District, Foshan, Guangdong 528311 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】李洋
(72)【発明者】
【氏名】李振浩
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166553(JP,A)
【文献】特開2019-190459(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109555700(CN,A)
【文献】特開2021-071058(JP,A)
【文献】特開2013-108389(JP,A)
【文献】特開2006-125211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00-29/12
F04B 39/00-39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機に適用される回転子アセンブリであって、
クランクシャフトと、
通気孔が設けられた回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の前記圧縮機のオイルプールに近い側の一端に設けられるバランスウェイトと、
前記バランスウェイトの外側に覆設され、前記クランクシャフトを通過させるための中央開口部が設けられたオイルシールドと、を含み、
前記通気孔は前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心を貫通し、
前記オイルシールドと前記回転子鉄心との間に収納空間が限定され、前記収納空間は前記通気孔に連通
し、
前記オイルシールドはオイル止め部及び取付部を含み、前記オイル止め部は円環形を呈し、前記取付部は前記オイル止め部の前記回転子鉄心から離れた側の一端に設けられ、前記取付部は前記バランスウェイトに接続され、
前記通気孔の内縁の回転直径をdとし、前記中央開口部の直径をeとし、前記クランクシャフトの前記取付部に対応する部分の直径をfとしたとき、e≧d且つe≧f+4mmである、
ことを特徴とする回転子アセンブリ。
【請求項2】
前記オイル止め部と前記回転子鉄心との最小軸方向隙間は0.5mmを超えない、
請求項
1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項3】
前記オイル止め部と前記回転子鉄心との最小軸方向隙間は0.1mmを超えない、
請求項
1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項4】
前記取付部は接着という方式により、又はネジを介して前記バランスウェイトに固定される、
請求項
1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項5】
前記通気孔の最大内接円の直径は3mm以上である、
請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項6】
前記回転子鉄心に複数の前記通気孔が設けられ、複数の前記通気孔が前記回転子鉄心の周方向に沿って均等に配置される、
請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項7】
前記バランスウェイトの最小回転直径をDとし、前記中央開口部の直径をeとしたとき、e≦Dである、
請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の回転子アセンブリを含む、
圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月9日に出願された、発明の名称が「回転子アセンブリ及び圧縮機」である中国特許出願第202111056348.9号に関連しその優先権を主張し、そのすべての内容は引用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は圧縮装置の技術分野に関し、特に回転子アセンブリ及び圧縮機に関する。
【背景技術】
【0003】
ロータリ圧縮機の構造では、バランスウェイトが回転する際に高速回転気流を形成することにより、冷媒によって運ばれる油滴は遠心作用で圧縮機軸線中心から徐々に離れてケーシングの壁面に向かって移動し、オイルガス分離効果を達成する。現在、固定子の排気側に近い位置に潤滑油が溜まりやすく、二次油滴の発生源となり、オイル吐出量が大きく且つオイルプールの油面が低下することを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は少なくとも従来技術に存在する技術的課題の1つを解決することを目的とする。このために、本発明は圧縮機の潤滑油の排出量を減少させることができる回転子アセンブリを提供する。
【0005】
本発明は、上記回転子アセンブリを有する圧縮機をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の実施例に係る回転子アセンブリは、クランクシャフト、回転子鉄心、バランスウェイト、及びオイルシールドを含み、前記回転子鉄心に通気孔が設けられ、前記通気孔が前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心を貫通し、前記バランスウェイトは、前記回転子鉄心の前記圧縮機のオイルプールに近い側の一端に位置し、前記オイルシールドは、前記バランスウェイトの外側を覆設し、前記クランクシャフトを通過させるための中央開口部が設けられ、前記オイルシールドと前記回転子鉄心との間に収納空間が限定され、前記収納空間が前記通気孔に連通する。
【0007】
本発明の実施例に係る回転子アセンブリは少なくとも以下の有益な効果を奏する。バランスウェイトの回転により、その回転領域の気体が外側に押し出され、回転領域に局所的な負圧が発生する。バランスウェイトがオイルシールドで覆われると、オイルシールドの中央の穴に局所的な低圧が存在し、オイルシールドの内壁面は冷媒がスムーズに流出できないため、側壁付近に停滞効果による局所的な高圧が発生する。これにより、冷媒は通気孔を介して、オイルシールドに近い側からオイルシールドから離れた側へ流れ、通気孔の流量を増加させる効果を達成する。回転子が高速回転している状態にあるため、冷媒によって運ばれる油滴は通気孔を通過する過程で分離され、その出口で集中的に回転子の外側へ振りとばされ、固定子の外縁とケーシング内壁面との間のエアギャップを通ってオイルプールに戻り、これによってオイル吐出量を減少させる。
【0008】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記オイルシールドはオイル止め部及び取付部を含み、前記オイル止め部は円環形を呈し、前記取付部は前記オイル止め部の前記回転子鉄心から離れた側の一端に設けられ、前記取付部は前記バランスウェイトに接続される。
【0009】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記オイル止め部と前記回転子鉄心との最小軸方向隙間は0.5mmを超えない。
【0010】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記オイル止め部と前記回転子鉄心との最小軸方向隙間は0.1mmを超えない。
【0011】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記取付部は接着という方式により、又はネジを介して前記バランスウェイトに固定される。
【0012】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記通気孔の最大内接円の直径は3mm以上である。
【0013】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記回転子鉄心に複数の前記通気孔が設けられ、複数の前記通気孔が前記回転子鉄心の周方向に沿って均等に配置される。
【0014】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記通気孔の内縁の回転直径をdとし、前記中央開口部の直径をeとし、前記クランクシャフトの前記取付部に対応する部分の直径をfとしたとき、e≧d且つe≧f+4である。
【0015】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記バランスウェイトの最小回転直径をDとし、前記中央開口部の直径をeとしたとき、e≦Dである。
【0016】
本発明の第2の態様の実施例に係る圧縮機は、本発明の第1の態様の実施例の回転子アセンブリを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施例に係る圧縮機は、少なくとも以下の有益な効果を奏する。本発明の第1の態様の実施例に係る回転子アセンブリを用いることで、通気孔の流量を増加させることができ、これによって固定子外縁とケーシング内壁面との間のエアギャップのオイル戻し能力を向上させる。
【0018】
本発明の付加的な態様及び利点は以下の説明において部分的に与えられ、一部は以下の説明により明確になり、或いは本発明の実践により明らかになる。
以下、図面及び実施例に合わせて本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係る回転子アセンブリの概略図である。
【
図2】
図1に示す回転子アセンブリの正面断面図である。
【
図4】
図3に示すオイルシールドの構造概略図である。
【
図5】
図1に示す回転子アセンブリの上面図である。
【
図7】衝撃エネルギーとオイルシールド軸方向組み立て隙間との関係図である。
【
図8】本発明の実施例に係る圧縮機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳しく説明し、前記実施例の例は図面に示されており、同様又は類似する符号は、最初から最後まで、同様又は類似する部品を表すか、或いは同様又は類似する機能を備える部品を表す。以下、図面を参照しながら説明した実施例は例示的なものであり、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明への限定として理解されるべきではない。
【0021】
本発明の説明では、方位に対する説明について、例えば、上、下、前、後、左、右などによって示される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係であり、本発明を容易に説明しかつその説明を簡素化するためのものだけであり、記載された装置又は部品が特定の方位を有し、特定の方位で構造及び操作されなければならないことを示したり暗示したりするものではないため、本発明への制限として理解されるべきではない。
【0022】
本発明の説明では、「若干」の意味は1つ又は複数であり、「複数」の意味は2つ以上であり、「より大きい」、「より小さい」、「超える」などはその数を含まないものとして理解され、「以上」、「以下」、「以内」などはその数を含むものとして理解される。第1、第2に関連する説明がある場合、その説明は、技術的特徴を区別することを目的とし、相対的重要性を指示又は暗示したり、示された技術的特徴の数を暗黙的に示したり、あるいは示された技術的特徴の前後関係を暗黙的に示すものとして理解されるべきではない。
【0023】
本発明の説明では、明確に限定されていない限り、「設置」、「取り付け」、「接続」などの用語は広義に理解すべきであり、当業者は技術案の具体的な内容に合わせて本発明における上記用語の具体的な意味を決定することができる。
【0024】
現在では、回転式圧縮機の構造では、圧縮機はケーシング、モータ及び圧縮機構を含み、密閉されたケーシング内に内部キャビティが形成され、モータ及び圧縮機構はいずれもキャビティ内に設けられ且つクランクシャフトによって接続され、モータは動作中に、クランクシャフトを介して圧縮機構を駆動することで冷媒に対して圧縮作業を行う。
【0025】
モータは固定子、回転子及びそのアセンブリを含み、当該キャビティは、一般に、モータによってモータ下部キャビティ、モータキャビティ及びモータ上部キャビティという3つの部分に分けられる。ほとんどの場合、高圧に圧縮された冷媒はモータキャビティを通らなければ、圧縮機の排出口に入って空調システム内に入ることができない。
【0026】
モータは、圧縮機の中核部品として、圧縮機に回転動力を提供し、その性能は圧縮機の性能に直接影響する。圧縮機は、モータと、モータ軸方向の一端に位置する圧縮構造とを含み、圧縮構造内の高圧キャビティ内の冷媒及び圧縮機内部の潤滑油はモータを通過する。
【0027】
モータ内の回転子は固定子に対して高速回転する時、圧縮構造の一端にある冷媒及び潤滑油のオイルガス混合物は回転子の軸方向端面に流れるとともに、回転子の高速回転による遠心力の作用を受けて、オイルガス混合物は圧縮機のケーシングへ振りとばされ、さらに、ケーシングにおける排気口を通って外界へ排出され、これによって圧縮機のオイル吐出量に影響する。
【0028】
モータの回転子は圧縮機動作時に高速回転状態であり、回転子の軸方向の両端のうちの少なくとも一端にバランスウェイトが設置される。バランスウェイトは通常、不規則な形をしている。以下、回転子の軸方向の両端にそれぞれ1つのバランスウェイトが設けられる場合を例として説明する。
【0029】
圧縮機構は低温冷媒を圧縮し、高圧オイルガス混合物としてケーシング内に排出し、ケーシング内の高圧オイルガス混合物は回転子における気流中央開口部を通過して排気管にたどり着く。ここでは、回転子によって駆動されて上下両端のバランスウェイトが回転する過程で、バランスウェイトはケーシング内の気流をかき混ぜ、バランスウェイトは回転時に高速回転気流を形成し、これにより、冷媒によって運ばれた油滴は遠心作用で圧縮機軸線中心から徐々に離れてケーシングの側壁面に移動し、オイルガス分離の効果を達成する。
【0030】
上部バランスウェイトの風下側に低圧エリアが形成され、下部バランスウェイトの風上側に高圧エリアが形成され、これにより、上部バランスウェイトの低圧エリア及び下部バランスウェイトの高圧エリアに近い箇所の気流中央開口部の冷媒吸引量が多くなり、冷媒は大量の潤滑油を運んで吐き出され、これにより、圧縮機のオイル吐出量が激増し、流れ場が混乱し、エネルギー効率が低い。
【0031】
また、圧縮機の潤滑油は冷媒によって運ばれて圧縮機内であちこち散布されるが、それが素早くオイルプールに戻って、一定の運転油面を確保できるか否かは、圧縮機が確実な潤滑で正常に動作するための重要な保証である。
【0032】
遠心作用により、潤滑油はケーシング内壁面付近に集まる傾向があり、潤滑油がオイルプールに戻る主な通路は、モータ固定子外縁とケーシング内壁面との間に形成されたエアギャップであり、圧縮機のオイルプールはケーシングの底部に位置する。潤滑油が当該エアギャップを通ってオイルプールに戻ることを確保するため、通常、エアギャップ内の冷媒流動方向とオイル戻しの方向が同じであることが望ましく、これによってオイル戻しを促進する役割を果たす。
【0033】
そうでなければ、潤滑油は固定子付近の排気側の位置に溜まりやすく、二次油滴の発生源となり、オイル吐出量の増大およびオイルプール油面が低下する結果を招く。この時、モータ回転子の上下圧力特性によってその冷媒流通能力を調整する必要があり、潤滑油のエアギャップでの流動性を改善し、オイル戻し効率を向上させるという効果を実現する。
【0034】
図1~
図3を参照して理解できるように、本発明の実施例の回転子アセンブリは、クランクシャフト101、回転子鉄心102、バランスウェイト301、及びオイルシールド302を含み、クランクシャフト101は回転子鉄心102に挿設される。バランスウェイト301は回転子鉄心102の下端に取り付けられ、即ちバランスウェイト301は回転子鉄心102のオイルプール804(
図8を参照)に近い側の一端に位置する。オイルシールド302はバランスウェイト301に取り付けられ、また、オイルシールド302はバランスウェイト301を覆う。オイルシールド302には、さらに中央開口部303が設けられ、クランクシャフト101は中央開口部303に挿設される。回転子鉄心102には、回転子鉄心102を貫通する通気孔103が設けられ、通気孔103の軸方向は回転子鉄心102の軸方向に平行であり、即ち、通気孔103は回転子鉄心102の軸方向に沿って回転子鉄心102を貫通する。さらに、オイルシールド302と回転子鉄心102との間に収納空間307が限定され、収納空間307は通気孔103と連通し、それにより、潤滑油は収納空間307から通気孔103に入って、通気孔103から排出されることが可能である。
【0035】
なお、オイルシールド302はクランクシャフト101に取り付けられてもよく、バランスウェイト301が包み込まれ且つオイルシールド302の内壁面に高圧の効果が形成されることを確保すればよい。
【0036】
理解できるように、バランスウェイト301の回転により、その回転領域の気体が外側に押し出され、回転領域に局所的な負圧が発生するため、回転子の上下両側にいずれも局所的な負圧が存在し、片側の負圧がより低くて圧力差が形成されると、冷媒は高圧の側から低圧の側へ流れ、圧力差が高いほど、流量が大きい。
【0037】
図6を参照して理解できるように、オイルシールド302の別の部分はバランスウェイト301に接触しているため、バランスウェイト301に接触しているこの部分の領域は気流作用を受けていないと見なすことができる。そのため、オイルシールド302の内部の圧力分布については、バランスウェイト301に接触していない部分のエリアのみを分析する。
【0038】
図6を参照して理解できるように、オイルシールド302の内部では、オイルシールド302の側壁面近くの圧力が高く、中心部分の圧力が低く、このような圧力分布特徴だからこそ、回転子鉄心102の通気孔103の底部入口に高圧を提供し、冷媒を通気孔103の下端から上へ流動させることができる。
【0039】
図6を参照して理解できるように、図面の左上のエリアでは、色が濃い位置は、バランスウェイト301の風上面に対応する位置であり、気流がバランスウェイト301のヘッドにぶつかり、気流の停滞をもたらし、高圧を生じる。
図6を参照すると、当該位置の圧力は6.701e04 Pa~7.223e04 Paの間に達しており、即ち67010 Pa~72230 Paに達している。
【0040】
図6を参照して理解できるように、図面の右下のエリアでは、色が濃い位置は、バランスウェイト301の風下面に対応する位置、即ち、下方の小さい弧形部と上方の大きい弧形部とが接する位置であり、バランスウェイト301が回転すると、風下面の位置に形成された空間は対応して増加し、低圧を生じる。
図6を参照すると、当該位置の圧力は2.005e4 Pa~2.527e4 Paの間に達しており、即ち20050 Pa~25270 Paに達している。
【0041】
理解できるように、本発明の実施例の回転子アセンブリでは、オイルシールド302はバランスウェイト301を覆い、オイルシールド302の中心に局所的な低圧が存在し、即ち中央開口部303に局所的な低圧が存在する。オイルシールド302の内側壁面が冷媒を妨げることにより、冷媒がスムーズに流出できず、停滞効果により側壁付近に局所的な高圧を形成する。これは冷媒を押してオイルシールド302のある側からオイルシールド302のない側へ流動させ、即ち、冷媒を押して通気孔103のオイルシールド302に近い側からオイルシールド302から離れた側へ流動させることで、冷媒流量を増加させる効果を達成する。
【0042】
回転子が高速回転している状態にあるため、冷媒によって運ばれる油滴は通気孔103を通過する過程で分離され、通気孔103の出口で集中的に回転子の外側へ振りとばされる。即ち、油滴は遠心力の作用で、通気孔103のオイルシールドから離れた側から、回転子鉄心102の径向に沿って流れ、これによってオイル吐出量を減少させる。
【0043】
また、冷媒の流量の増加により、潤滑油は運ばれて、固定子外縁とケーシング内壁面との間に形成されたエアギャップを通って、オイルプール804に戻ることができ、オイル戻しを促進する役割を果たす。
【0044】
本発明の実施例の回転子アセンブリは、回転子鉄心102の軸方向に沿って回転子鉄心102を貫通する通気孔103を回転子鉄心102に設け、且つバランスウェイト301の外側に覆設されるオイルシールド302をバランスウェイト301に増設することにより、回転子の上下圧力差の特性を利用して、通気孔103の冷媒流量を増加させ、これによって固定子のエッジ(固定子外縁とケーシング内壁面との間のエアギャップ)のオイル戻し能力を向上させ、オイル吐出量を減少させる。
【0045】
表1を参照すると、表1はモータ通過流量の改善効果を示す。試験を通じて、改善前の解決案と、オイルシールド302のみを増設する解決案と、オイルシールド302及び回転子通気孔103の組み合せを増設する解決案との効果を比較し、流量比率というパラメータ指標で調べた。流量比率の物理的意味は、固定子-回転子通気孔103を通って排出された冷媒量の圧縮機総排気量に占める質量百分率である。
【0046】
【0047】
表1を参照して理解できるように、改善前の流量比率は19.2%であり、オイルシールド302のみを増設する場合の流量比率は4.6%であり、オイルシールド302及び回転子通気孔103の組み合せを増設する場合の流量比率は67.2%である。オイルシールド302のみを増設する解決案は、オイルシールド302のみを増設し、回転子鉄心102に通気孔103を設置しなかったため、冷媒を押して回転子鉄心102のオイルシールド302に近い側からオイルシールド302から離れた側へ流動させることができず、かえって冷媒をオイルシールド302内に溜め、冷媒流量を減少させ、そのため、改善前の解決案と比較して、流量比率はかえって低下した。
【0048】
オイルシールド302及び回転子通気孔103の組み合せを増設する解決案は、オイルシールド302の内側壁面で冷媒を妨げることにより、冷媒がスムーズに流出できず、停滞効果により側壁付近に局所的な高圧が発生し、さらに、回転子鉄心102の軸方向に沿って回転子鉄心102を貫通する通気孔103を回転子鉄心102に設けることを組み合わせて、通気孔103で冷媒を案内してオイルシールド302のある側からオイルシールド302のない側へ流動させ、即ち冷媒を押して通気孔103のオイルシールド302に近い側からオイルシールド302から離れた側へ流動させることで、冷媒流量を増加させる効果を達成する。
【0049】
冷媒の流量を増加させたため、潤滑油は冷媒に運ばれ固定子外縁とケーシング内壁面との間に形成されたエアギャップを通って、より容易にオイルプール804に戻ることができ、オイル戻しを促進する役割を果たす。
【0050】
【0051】
表2を参照すると、表2は3つの異なる型番のオイル吐出量の改善効果を示す。具体的に、試験は、型番1、型番2、及び型番3の改善前後に測定して得られたオイル吐出量をそれぞれ比較した。この3つの型番は背圧が高くて排気量が異なるスクロール圧縮機である。改善後の解決案は本発明の実施例の回転子アセンブリであり、通気孔103を備える回転子鉄心102及びバランスウェイト301に設けられるオイルシールド302を含む。
【0052】
表2を参照して理解できるように、型番1は、改善前に測定して得られたオイル吐出量が4.7%であり、改善後に測定して得られたオイル吐出量が3.2%であり、オイル吐出量は1.5%低下した。型番2は、改善前に測定して得られたオイル吐出量が5.6%であり、改善後に測定して得られたオイル吐出量が3.3%であり、オイル吐出量は2.3%低下した。型番3は、改善前に測定して得られたオイル吐出量が5.0%であり、改善後に測定して得られたオイル吐出量が3.0%であり、オイル吐出量は2%低下した。
【0053】
上記分析から分かるように、異なる型番では、改善後のオイル吐出量の低下がそれぞれ異なるが、明らかな改善効果が見られ、つまり、本発明の実施例の回転子アセンブリはオイル吐出量を明らかに低下させ、エネルギー効率を著しく向上させる。
【0054】
図2及び
図3を参照して理解できるように、オイルシールド302はオイル止め部304及び取付部305を含み、取付部305は回転子と圧縮機オイルプール804との間に位置し、即ち取付部305はバランスウェイト301のオイルプール804に近い側の一端に位置し、即ち取付部305はバランスウェイト301の回転子鉄心102から離れた側の一端に位置する。なお、取付部305はオイルシールド302の中央開口部303からの気流流出を減少させることができ、オイルシールド302内壁面に高圧が形成される効果を確保し、モータ通過流量を増加させる。
【0055】
図3を参照して理解できるように、オイル止め部304は円環状を呈し、バランスウェイト301の外周側に位置し、潤滑油がバランスウェイト301の外周側に沿ってオイルシールド302によって囲まれたエリアから離脱することを阻止する。取付部305はオイル止め部304の下縁に設けられ、取付部305はバランスウェイト301に接続される。
【0056】
図3及び
図4を参照して理解できるように、取付部305には取付孔401が設けられ、ネジ306を介してバランスウェイト301に固定され、即ちネジ306は取付孔401を貫通した後に、バランスウェイト301に螺合する。ネジ306を介して取り付けると、素早い脱着を実現でき、これにより、オイルシールド302の洗浄又はオイルシールド302の交換を容易にする。
【0057】
図3を参照して理解できるように、取付部305はオイル止め部304に対してほぼ垂直な角度をなすことができ、即ち、取付部305は、オイル止め部304の回転子鉄心102から離れた側の一端から回転子鉄心102の中心に向かって曲がり、即ち、オイル止め部304はバランスウェイト301の端面まで延び、取付部305は回転子鉄心102の径方向に沿って、回転子鉄心102の軸方向に向かって延び、取付部305には取付孔401が設けられ、ネジ306を介してバランスウェイト301の端面に固定される。
【0058】
また、取付部305はさらに接着の方式でバランスウェイト301に固定することもでき、即ち取付部305はバランスウェイト301に接着されてもよい。無論、バランスウェイト301に密着するオイル止め部304がバランスウェイト301に接着されてもよく、又は取付部305及びオイル止め部304はいずれもバランスウェイト301に接着されてもよい。
【0059】
オイル止め部304は取付部305の回転子鉄心102の軸線から離れた側の一端に位置し、オイル止め部304はバランスウェイト301の側面に向かって延びて、バランスウェイト301の側面に密着する。オイル止め部304を設置することで冷媒を妨げ、これによって冷媒はスムーズに流出できず、停滞効果により側壁付近に局所的な高圧が発生する。これは冷媒を押してオイルシールド302のある側からオイルシールド302のない側へ流動させ、即ち冷媒を押して通気孔103のオイルシールド302に近い側からオイルシールドから離れた側へ流動させ、冷媒流量を増加させる効果を達成する。
【0060】
図3を参照して理解できるように、回転子鉄心102の軸方向において、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離はLであり、技術原理に基づいて説明すると、オイルシールド302の側壁面に高圧が存在するため、組み立て隙間が大きすぎると、即ちオイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lが大きすぎると、局所的な漏れの量が増加し、外へ流動する高速気流が存在し、モータ下部の気流に衝撃を与え、最終的に油面の不安定及びオイル吐出の悪化を引き起こす。そのため、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lを合理的に設定することは、油面の安定性の維持及びオイル吐出の悪化の軽減には、極めて重要な意味を持つ。
【0061】
図7を参照して理解できるように、
図7はオイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lの違いに対応する漏れ気流衝撃出力のシミュレーション結果を示す。横座標は異なる軸方向組み立て隙間、即ちオイル止め部304と回転子鉄心102との回転子鉄心102の軸方向における最小距離Lを示し、縦座標は漏れ気流衝撃出力を示し、柱状図は3種の軸方向組み立て隙間の場合の漏れ気流衝撃エネルギー(出力)を示す。
【0062】
図7を参照して理解できるように、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lが0.1mmである場合、漏れ気流衝撃出力は25Wであり、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lが0.5mmである場合、漏れ気流衝撃出力は79Wであり、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lが1.5mmである場合、漏れ気流衝撃出力は90Wである。
【0063】
なお、いくつかの実施例では、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小軸方向隙間が0.5mmを超えないと設定し、即ち、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lが0.5mm以下であるように設定すると、局所的な漏れ現象を改善し、外部へ流動する高速気流を減少させることができ、これによってモータ下部気流に与える衝撃を軽減し、油面の安定性を維持し且つオイル吐出の悪化を軽減する。
【0064】
さらに、いくつかの実施例では、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小軸方向隙間が0.1mmを超えないと設定し、即ち、オイル止め部304と回転子鉄心102との最小距離Lが0.1mm以下であるように設定すると、局所的な漏れ現象を明らかに改善し、外部へ流動する高速気流を明らかに減少させることができ、これによってモータ下部気流に与える衝撃を軽減し、油面の安定性を維持し且つオイル吐出の悪化を軽減し、基本的には、漏れが許容できるものであることを確保できる。
【0065】
図5を参照して理解できるように、通気孔103の横断面では、通気孔103は湾曲した長尺孔状を呈し、即ち、通気孔103の長辺は円弧状を呈し、円弧の円心は回転子鉄心102の円心と重なり、2本の長辺の端部は半円形の短辺によって接続され、これにより、閉じた弧状線で構成される通気孔103を形成する。通気孔103内において最大内接円501を描くことができ、当該最大内接円501の直径はφであり、複数の試験を通して、最大内接円501の直径φが3mm以上である場合、即ちφが3mmより大きいか、又は3mmに等しい場合、冷媒及び潤滑油流出が比較的順調であることは明らかになった。最大内接円501の直径φが3mmより小さければ、通路は潤滑油で塞がれやすく、冷媒流通能力を低下させる。
【0066】
なお、通気孔103は、例えば長穴(長穴は長円穴とも呼ばれ、長穴の両端は半円弧であり、中間部は平行平面であり、最大内接円501の直径φは半円弧の直径に等しい)、丸穴(最大内接円501の直径φは丸穴の直径に等しい)、四角穴(最大内接円501の直径φは四角穴の最短辺の長さに等しい)又は異形穴など、他の形状であってもよい。
【0067】
図5を参照して理解できるように、回転子鉄心102に複数の通気孔103が設けられ、即ち回転子鉄心102の通気孔103の数は少なくとも2つであり、複数の通気孔103は回転子鉄心102の周方向に沿って均等に配置される。回転子鉄心102の上下端面の圧力差で通気冷媒流量の増加を促進するための前提は、回転子が軸方向に貫通する通気孔103を備えることであり、複数の通気孔103を設置することで通気冷媒流量を増加させることができ、さらに、複数の通気孔103が回転子鉄心102の周方向に沿って均等に配置されることは、冷媒の回転子鉄心102への作用力をより均等にし、通気孔103が均等に配置されていないことによって発生した偏心力を減少させる。
【0068】
例えば、
図5を参照すると、回転子鉄心102には6つの通気孔103が均等に配置されており、回転子鉄心102の上下端面の圧力差は、通気冷媒が6つの通気孔103から流出することを促進し、通気冷媒流量を増加させ、さらに、6つの通気孔103は回転子鉄心102の周方向に沿って均等に配置されることにより、6つの通気孔103から流出した通気冷媒の流量も比較的均等であり、これにより、回転子鉄心102が周方向において受ける力が均等で、偏心力の発生を減少させる。
【0069】
なお、回転子鉄心102に他の数の通気孔103を設置してもよく、例えば、2つ、3つ、4つ又は5つ以上であり、以上の図面は例に過ぎず、本発明の実施例を制限するものではない。
【0070】
図5を参照して理解できるように、回転子鉄心102が回転する時、通気孔103の内縁及び外縁はそれぞれ2つの回転軌跡を形成し、ここでは、通気孔103の内縁によって形成された回転軌跡の直径はdである。
【0071】
図3を参照して理解できるように、オイルシールド302の取付部305は水平に設けられ、取付部305が1つの基準面内にあるように理解してもよく、当該基準面がクランクシャフト101と交差すると、交差して形成された断面形状は即ち当該基準面におけるクランクシャフト101の横断面であり、当該位置の横断面では、クランクシャフト101の直径はfである。
【0072】
なお、実際の製品では、取付部305は一定の厚さを有し、クランクシャフト101のテーパ部が上記基準面と交差する場合、基準面とは、取付部305の中間位置が所在する平面を指し、即ち取付部305の上面及び下面の中間位置が所在する平面が基準面である。
【0073】
図3を参照して理解できるように、オイルシールド302の中央開口部303の直径はeであり、中央開口部303は取付部305によって限定される。又は、中央開口部303が取付部305に設けられると理解してもよい。それにより、中央開口部303の位置はクランクシャフト101の位置に対応し、中央開口部303の直径eとクランクシャフト101の直径fとの差分は4(mm)以上であり、即ちe≧f+4(mm)である。また、
図3及び
図5を参照して理解できるように、中央開口部303の直径eはd以上であり、即ちe≧dである。
【0074】
e≧f+4(mm)に設定することにより、クランクシャフト101とオイルシールド302との間は、冷媒がオイルシールド302によって限定された空間内に入るのに十分大きい空間となる。即ち、中央開口部303の直径は十分大きく設定されたため、冷媒が中央開口部303を通って入ることができ、オイルシールド302による冷媒進入方向での妨害を軽減する。そのため、e≧f+4(mm)は、オイルシールド302の中央開口部303とクランクシャフト101との間に形成された環状通路の隙間が4mm以上であるように限定し、その流通能力を確保し、抵抗が大きすぎないようにする。
【0075】
e≧dに設定することで、オイルシールド302による通気孔103への妨害を軽減し、これにより、一部の冷媒は、中央開口部303を通って直接入ることができ、その後、回転子鉄心102の上下圧力差の作用で通気孔103内に直接入り、且つ通気孔103の上端から排出される。従って、気流によってオイルシールド302の側壁に吹き飛ばされる必要がなく、移動距離を短縮し、冷媒の排出効率を向上させる。そのため、e≧dというのは、オイルシールド302内の中央開口部303とクランクシャフト101との間の通路を確保するためのものであり、通気孔103の軸方向の投影面と重なることができる。重なることがなければ、回転子鉄心102に入る気流の流路が増加し、回転子鉄心102の通気流量を減少させる。
【0076】
図3を参照して理解できるように、バランスウェイト301の最小回転半径はRとすると、バランスウェイト301の最小直径Dは2Rであり、中央開口部303の直径e及びバランスウェイト301の最小回転直径Dは、中央開口部303の直径eがバランスウェイト301の最小回転直径D以下であり、即ちe≦D、という条件を満たす。
【0077】
e≦Dに設定することにより、オイルシールド302の中央開口部303の直径がバランスウェイト301の内壁面直径より小さくなり、ひいてはオイルシールド302の取付部305とバランスウェイト301との間で中央開口部303から流出する気流量を減少させ、オイルシールド302の内壁面に高圧が形成される効果を確保し、これによってモータ通過流量を増加させる。
【0078】
本発明の実施例の圧縮機は、本発明の実施例の回転子アセンブリを含む。本発明の実施例の圧縮機は、本発明の第1の態様の実施例の回転子アセンブリを用いることで、通気孔103の流量を増加させることができ、それによって固定子外縁とケーシング内壁面との間のエアギャップのオイル戻し能力を向上させる。
【0079】
なお、本発明の実施例の圧縮機はスクロール圧縮機及びロータリ回転子圧縮機などを含むことができ、ロータリ回転子圧縮機は回転式圧縮機の1種である。
【0080】
図8を参照して、スクロール圧縮機を例とすると、スクロール圧縮機はケーシング、圧縮アセンブリ、モータアセンブリ、クランクシャフト101(軸部)及び他の部品を含む。
【0081】
ケーシングはシリンダ801、トップカバー802及びボトムカバー803を含む。シリンダ801は軸方向に沿って貫通される。トップカバー802はシリンダ801の上部に設けられ、且つ溶接などの方式でシリンダ801の上部に固定される。ボトムカバー803はシリンダ801の下部に設けられ、且つ溶接などの方式でシリンダ801の下部に固定される。これにより、シリンダ801、トップカバー802及びボトムカバー803は共同で1つの密閉された取付空間を形成する。圧縮アセンブリ、モータアセンブリ、クランクシャフト101などの部品はそれぞれ当該取付空間内に取り付けられる。ケーシングのボトムカバー803は下向きに凹んでいるため、ケーシングの底部には、潤滑油を収納するためのオイルプール804が形成される。
【0082】
圧縮アセンブリはケーシング内に固定される。圧縮アセンブリは主に固定スクロール805、可動スクロール806及びメインフレーム807を含む。ここでは、固定スクロール805は固定スクロール本体と、固定スクロール本体から延びる螺旋線状の固定渦巻歯とを含む。可動スクロール806は、可動スクロール本体と、可動スクロール本体から延びる螺旋線状の可動渦巻歯とを含む。固定スクロール805にある固定渦巻歯及び可動スクロール806にある可動渦巻歯は互いに噛み合って、圧縮キャビティを形成する。
【0083】
固定スクロール本体、ケーシングのシリンダ801、及びケーシングのトップカバー802に共同で囲まれて、排気キャビティが形成される。排気キャビティは固定スクロール本体の上方に位置する。また、固定スクロール本体に排気口及び吸気口が設けられる。排気口は圧縮キャビティ及び排気キャビティに連通する。排気口は固定スクロール本体の上部の中央に設置することができ、排気口は圧縮キャビティの高圧エリアの高圧冷媒を排気キャビティ内に排出する。吸気口は固定スクロール本体の縁部に設けられ、圧縮キャビティと吸気管とを連通させる。
【0084】
メインフレーム807は可動スクロール806の下部に取り付けられる。メインフレーム807、固定スクロール805、及び可動スクロール806は共同で背圧室を形成する。いくつかの例では、背圧室は環状に設置されている。背圧室内にガスが充填され、当該ガスは、圧縮キャビティ内からの冷媒であってもよく、スクロール圧縮機の外部機器によって提供されるガスであってもよい。当該ガスは可動スクロール806の可動スクロール本体に背圧を提供することで、可動スクロール806及び固定スクロール805を気密に当接させる。
【0085】
モータアセンブリは固定子アセンブリ808及び回転子アセンブリを含む。固定子アセンブリ808はケーシングのシリンダ801の内壁面に固定され、回転子アセンブリは固定子アセンブリ808の中央に位置する。クランクシャフト101は回転子アセンブリの中央の軸孔を貫通し且つ回転子アセンブリに固定される。スクロール圧縮機に通電すると、回転子アセンブリは固定子アセンブリ808によって駆動されて回転し、クランクシャフト101は回転子アセンブリの回転とともに回転する。
【0086】
クランクシャフト101の回転時に発生する軸方向への変位を抑えるために、シリンダ801はモータアセンブリの下方にサブフレーム809が取り付けられ、サブフレーム809はケーシングのシリンダ801に固定される。クランクシャフト101の第1の端部はサブフレーム809を貫通し、且つボトムカバー803の方向に向かって延びる。これにより、サブフレーム809はクランクシャフト101の径方向に沿ってクランクシャフト101を支持することで、クランクシャフト101の回転時に発生する軸方向への変位を抑える。
【0087】
クランクシャフト101の軸方向の第2の端部は可動スクロール本体の下部に伝動接続される。これにより、クランクシャフト101の回転時に、可動スクロール本体は連動されて偏心回転運動をする。可動渦巻歯は、可動スクロール本体の偏心回転運動とともに偏心回転運動をする。これにより、可動スクロール806における可動渦巻歯と固定スクロール805における固定渦巻歯との相対位置は変化し続け、これによって圧縮キャビティの大きさも絶えずに変化し、したがって、圧縮キャビティ内の低圧冷媒は圧縮されて高圧冷媒となる。形成された高圧冷媒はスクロール圧縮機の排気管を介して排出されて、これによって冷凍装置に冷媒を提供する。
【0088】
以上は図面に合わせて本発明の実施例を詳しく説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲から逸脱しない限り、当業者が有する知識の範囲内で様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
101 クランクシャフト
102 回転子鉄心
103 通気孔
301 バランスウェイト
302 オイルシールド
303 中央開口部
304 オイル止め部
305 取付部
306 ネジ
307 収納空間
401 取付孔
501 最大内接円
801 シリンダ
802 トップカバー
803 ボトムカバー
804 オイルプール
805 固定スクロール
806 可動スクロール
807 メインフレーム
808 固定子アセンブリ
809 サブフレーム