(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】手動工作機械のための蓄電池パック、手動工作機械、および、蓄電池パックを充電するための充電器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240403BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240403BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240403BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
B25F5/00 H
H01M10/42 P
H02J7/02 F
(21)【出願番号】P 2022546348
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2021051315
(87)【国際公開番号】W WO2021151773
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】102020201116.8
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クレー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルネルス,ホルガー
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0353041(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104638313(CN,A)
【文献】特開2014-091176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0167246(US,A1)
【文献】特開2012-055043(JP,A)
【文献】特開2000-032677(JP,A)
【文献】特開平06-333604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169271(US,A1)
【文献】米国特許第05184059(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
H01M10/42-10/48
H01M50/20-50/298
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動工作機械(300)のための蓄電池パック(100)であって、
前記蓄電池パック(100)は、前記手動工作機械(300)および/または充電器
(700)と前記蓄電池パック(100)との電気接続を成立させるための少なくとも1つのインターフェース(180)を有し、
前記インターフェース(180)は
、前記手動工作機械(300)の対応する対応接触部材(340)および/または
前記充電器
(700)の対応する対応接触部材と電気接触するための接触部材(140)を有し、
少なくとも1つの
前記接触部材(140)は
、前記蓄電池パック(100)の少なくとも1つのコーディング部材(141)と電気接続される信号接触部材(143)であり、
前記蓄電池パック
(100)は
、蓄電池パックエレクトロニクス(800)を有し、
前記蓄電池パックエレクトロニクス(800)は、少なくとも1つの前記信号接触部材(143)を介して前記蓄電池パック(100)に関する情報を提供するために設計され、前記蓄電池パック(100)に関する前記情報は
、少なくとも1つの前記コーディング部材(141)に少なくとも部分的に保存さ
れ、
前記蓄電池パックエレクトロニクス(800)で少なくとも1つの前記コーディング部材(141)
が動的電流経路と並列につながれ
、
前記コーディング部材(141)は、コーディング値としての抵抗値を有する抵抗であり、
前記蓄電池パックエレクトロニクス(800)は、複数の前記動的電流経路を含み、
複数の前記動的電流経路の各々は、少なくとも1つの前記コーディング部材(141)に対して並列につながれ、抵抗値Rxを有する少なくとも1つの抵抗(241)およびキャパシタンスCxを有する少なくとも1つのコンデンサ(243)を直列回路で有する
ことを特徴とする、蓄電池パック。
【請求項2】
前記蓄電池パックエレクトロニクス(800)は、
前記手動工作機械
(300)または
前記充電器
(700)の前置抵抗を介して供給電圧(Vcc)を少なくとも1つの前記コーディング部材(141)に転送するためにセットアップされ、
前記動的電流経路は、少なくとも1つの前記コーディング部材(141)での測定電圧(Vc)の時間的推移に影響を及ぼすためにセットアップされる
ことを特徴とする、請求項1に記載の蓄電池パック(100)。
【請求項3】
前記動的電流経路は、
前記手動工作機械(300)および/または
前記充電器(700)から
前記供給電圧(Vcc)が印加された後の定義された時間帯の内部でのみ、少なくとも1つの前記コーディング部材(141)での
前記測定電圧(Vc)の時間的推移に影響を及ぼすためにセットアップさ
れる
ことを特徴とする、請求項2に記載の蓄電池パック(100)。
【請求項4】
前記蓄電池パックエレクトロニクス(800)で前記信号接触部材(143)と前記動的電流経路が共通のアース端子
につながれる
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の蓄電池パック(100)。
【請求項5】
前記動的電流経路の少なくとも1つの前
記コンデンサ(243)のキャパシタンス
Cxと少なくとも1つの前
記抵抗(241)の抵抗値
Rxは、前
記コンデンサ(
243)の時間定数τ=Rx*Cxがτ<10msの
値を有するように選択される
ことを特徴とする、請求項
1から4までのいずれか1項に記載の蓄電池パック(100)。
【請求項6】
保護コンデンサ(145)または保護ダイオード
が少なくとも1つの前記コーディング部材(141)
と並列につながれる
ことを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の蓄電池パック(100)。
【請求項7】
請求項1から
6までのいずれか1項に記載の蓄電池パック(100)と、前記蓄電池パック(100)の前記信号接触部材(143)と対応する少なくとも1つの信号対応接触部材を含む
インターフェースを介して電気的に結合される前記手動工作機械(300)
であって、
制御ユニッ
トを含み、
前記制御ユニットは、前記蓄電池パック(100)に関する情報を少なくとも1つの前記信号対応接触部材を介して受信するために構成され、
前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記信号対応接触部材に印加される測定電圧(Vc)の時間的推移を検出して評価するために構成される、
手動工作機械。
【請求項8】
プルアップ抵抗(341)が少なくとも1つの前記信号対応接触部材と電気接続される
ことを特徴とする、請求項
7に記載の手動工作機械(300)。
【請求項9】
請求項1から
6までのいずれか1項に記載の蓄電池パック
(100)を充電するための
前記充電器
(700)であって、
前記蓄電池パック(100)の前記信号接触部材(143)と対応する少なくとも1つの充電対応接触部材を含む、前記蓄電池パック(100)と
前記充電器
(700)を電気的に結合するためのインターフェース
と、
制御ユニット
と、
を含み、
前記制御ユニットは、前記蓄電池パック(100)に関する情報を少なくとも1つの前記充電対応接触部材を介して受信するために構成され、
前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記充電対応接触部材に印加される測定電圧(Vc)の時間的推移を検出して評価するために構成される、
充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の手動工作機械のための蓄電池パックに関し、ならびに、請求項13に記載の手動工作機械、および請求項15に記載の充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式の手動工作機械は基本的に周知であり、電源接続を通じて電流の供給を受ける。その代替として、蓄電池式の器具は作業時の高いフレキシビリティを可能にする。蓄電池式の器具は、特に電源電流に依存することがないからである。このようにして、たとえば屋外作業でも楽に行うことができるので、手動工作機械の作動時には蓄電池パックを使用することが多方面で意図される。
【0003】
このような種類の蓄電池パックは基本的に周知であり、通常、並列回路および/または直列回路で接続された再充電可能な複数の蓄電池を有し、たとえば、たとえばそれぞれ3.6Vで10.8Vの総電圧を有する直列につながれた3つの円筒状のLiイオン電池を有している。接続された蓄電池は、一方では蓄電池パックエレクトロニクスと接続されなければならず、他方では相互に接続されなければならない。蓄電池パックは、通常、蓄電池パックハウジングを含んでいて、その中に蓄電池が特に電池ホルダによって全面的または部分的に収納される。その代替として、電池ホルダ自体が蓄電池パックハウジングの蓄電池パックハウジング部材を形成する。
【0004】
このように本出願の枠内において蓄電池パックとは、手動工作機械の作動のために必要なエネルギーを供給する電気エネルギーを蓄えることができ、手動工作機械のチャンバ、インターフェースなどに交換可能に取付可能である、特に電気的に相互につながれた複数の蓄電池からなる蓄電池パッケージであると理解される。特にインターフェースとは、充電器および/または放電側との間で、すなわち手動工作機械との間で、電気的かつ必要である限りにおいて機械的な結合を直接的または間接的に成立させるために意図される装置であると理解される。
【0005】
手動工作機械への蓄電池パックの連結は、器具ハウジングの相補的な差込ブッシュまたはインターフェースに蓄電池パックのインターフェースが差し込まれることによって、またはスライド挿入されることによって、行われる。インターフェースは接触スリットを有していて、その中に接触部材が配置されていてよい。蓄電池パックのエネルギーが使い尽くされると、これを取り出して、相応の対応接触部材を有する充電ステーションと接続することができる。複数の蓄電池パックが利用できる場合、放電された蓄電池パックを手動工作機械から取り出して、充電済みのものと交換することが可能である。このとき通常、それぞれ使用される蓄電池パックの公称電圧とキャパシタンスが、手動工作機械の出力と使用時間を規定する。したがって重要なのは、たとえば最大の充電電流や放電電流といった蓄電池パックに関する情報を、ならびに蓄電池パックの最新の動作温度や内部抵抗などに関する情報を、工具と充電器が利用できることである。
【0006】
従来技術より、1つの電圧クラスの異なる手動工作機械は相互に互換性のない蓄電池パックを有しているが、それとは逆に、たとえばスクリュードライバー、蓄電池式ドリル、打撃穿孔機械、回しびき鋸、多機能工具、および/またはドリルドライバーなどのさまざまな手動工作機械の蓄電池パックは、1つのボルトクラス内部ではしばしば互換性があることが知られている。
【0007】
さらに、充電器具や手動工作機械に対するコーディングを用いて蓄電池パックを識別できることが知られており、それにより、蓄電池パックおよび/または手動工作機械が損傷を受けないようにするために、その手動工作機械のために意図されるのでない蓄電池パックが、たとえば異なる公称電圧を有する蓄電池パックが、手動工作機械の側で受け入れられないようになっている。別のケースでは、情報伝達は、蓄電池パックと手動工作機械ないし充電器との協同作用を最適化するための役目を果たす。
【0008】
このことは従来技術では、たとえば蓄電池パックのインターフェースに配置された信号接触部材によって実現され、これを介して蓄電池パック固有の情報を、手動工作機械および/または充電器の対応する接触部材に伝送することができる。いくつかのケースでは、蓄電池パックと手動工作機械および/または充電器との間の情報交換も可能であり、すなわち、情報を両方の方向へ伝送することができる。
【0009】
信号接触部材は、従来技術では、蓄電池パック側でたとえばコーディング抵抗などのコーディング部材と接続されるのが普通である。手動工作機械および/または充電器の対応する対応接触部材に、典型的にはプルアップ抵抗が配置されていて、これを介して蓄電池パック側のコーディング抵抗が電圧の供給を受ける。そして手動工作機械ないし充電器の測定回路が、信号接触部材と接続されている抵抗を判定し、これが手動工作機械ないし充電器の相応の制御部によって、蓄電池パック固有の情報として解釈される。
【0010】
蓄電池パックエレクトロニクスではコーディング抵抗に対して並列に、たとえばコンデンサやダイオードが静電気放電(ESD)への防護としてつながれることが多い。
【0011】
この関連で原理的に欠点であることが判明しているのは、上に説明したコーディング部材の方式では、限られた数の情報しかコーディング部材によって伝送できないことにある。蓄電池パックだけでなく手動工作機械および充電器でも、およびこれに伴ってそれぞれのインターフェースでも、連続的な動向変化が起こるからであり、このことはしばしば、追加の情報をそれぞれの器具の間で交換するために、追加の接触部材と対応接触部材を各インターフェースに実装することを必要にする。しかし蓄電池パックと手動工作機械の両方の利便性や取扱性の理由から、インターフェースのために必要な設計スペースは可能な限りコンパクトに保つのが望ましい。これに加えて先行モデルとの互換性という理由から、場合により、インターフェースのジオメトリーを先行モデルに対して可能な限りわずかしか変更したくないという要請が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上に挙げた欠点を改善して、多数の異なる手動工作機械で適用可能である、冒頭に述べた種類の改良された蓄電池パックを提供することにあり、以前のモデルシリーズの手動工作機械との完全な互換性のもとで、可能な限り多くの情報が可能な限りコンパクトな蓄電池パックインターフェースを介して伝送されるのがよい。その際に、正しいコーディング部材の認識と、場合により同じ回線を通じて行われるデジタル式の通信とが、いずれも制約を受けないのがよい。
【0013】
本発明のさらに別の課題は、従来の蓄電池パックとの完全な適合性のもとで、可能な限り多くの情報を蓄電池パックから読み出すことができる、対応する手動工作機械および対応する充電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの課題は請求項1に記載の蓄電池パックによって解決され、ならびに、請求項13に記載の手動工作機械および請求項15に記載の充電器によって解決される。本発明の好ましい実施形態、変形例、および発展例は従属請求項から読み取ることができる。
【0015】
手動工作機械のための本発明による蓄電池パックは、手動工作機械および/または充電器と蓄電池パックとの電気接続を成立させるための少なくとも1つのインターフェースを有し、インターフェースは手動工作機械の対応する対応接触部材および/または充電器の対応する対応接触部材と電気接触するための接触部材を有し、少なくとも1つの接触部材は、蓄電池パックの少なくとも1つのコーディング部材と電気接続される信号接触部材であり、
蓄電池パックは蓄電池パックエレクトロニクスを有し、
蓄電池パックエレクトロニクスは、少なくとも1つの信号接触部材を介して蓄電池パックに関する情報を提供するために設計され、蓄電池パックに関する情報は少なくとも1つのコーディング部材に少なくとも部分的に保存され、蓄電池パックエレクトロニクスで少なくとも1つのコーディング部材が電気的な並列回路で動的電流経路と並列につながれる。
【0016】
動的電流経路とは、本件出願の枠内では、特定の電気的特性に関して、特に電流経路に印加される電圧に関して、および/または電流経路を通って流れる電流強さに関して、時間的に変化する、すなわち可変である、電流経路であると理解される。本件出願の枠内では、このような動的電流経路の特性のことを時間挙動とも呼ぶ。
【0017】
コーディング部材に対して並列につながれた電流経路のこのようなダイナミクスは、すなわちこのような時間挙動は、コーディング抵抗に追加して少なくとも1つの別の1ビット情報を信号接触部材を介してコーディングして、手動工作機械および/または充電器に伝送するという可能性をもたらし、それにより、このような追加の情報を伝送するための別の信号接触部材の配置が不要になることを当業者は認識する。このことは、手動工作機械ないし充電器の制御部がダイナミクスを認識して相応に解釈することによって可能となる。
【0018】
このような時間挙動が電気的に好ましく調整され、それにより、蓄電池パックと手動工作機械ないし充電器との間のデジタル式の通信のために必要なダイナミクスが、最大でも有意な仕方では変化しないようにされるのが好ましい。具体的には、必要な切換閾値が時間的に有意に影響を受けることがないことが保証される。それによっていかなる機能低下も生じることがなく、それと同時に、少なくとも1つの別の情報をコーディングインターフェースを介して伝送できることが保証される。
【0019】
1つの実施形態では、蓄電池パックエレクトロニクスは、手動工作機械または充電器の前置抵抗を介して供給電圧を少なくとも1つのコーディング部材に転送するためにセットアップされ、動的電流経路は、コーディング部材での測定電圧の時間的推移に影響を及ぼすためにセットアップされる。この実施形態では、上述した時間挙動の存在がたとえばマイクロコントローラを通じて手動工作機械または充電器の側で測定され、それは、回路の充電プロセスの途中と後とでコーディング部材における電圧推移が測定されることによる。これを通じて任意の1ビット情報をコーディングすることができる。いっそう高い情報深度のために、たとえば上述した時間挙動の特徴を評価することができる。
【0020】
動的電流経路は、対応する手動工作機械および/または対応する充電器から供給電圧が印加された後の定義された時間帯の内部でのみ、少なくとも1つのコーディング部材での測定電圧の時間的推移に影響を及ぼすためにセットアップされるのが好ましく、定義された時間帯は好ましくは0msから10msの間であり、特別に好ましくは0msから1msの間である。このようにして、時間挙動が電気的に好ましく調整されることを具体的なケースで実現することができ、それにより、コーディング部材が静的に認識されている間にすでに時間挙動が最終値に達することになり、それはたとえば、動的電流経路によって生成される信号接触部材での電圧差の最終値がおよそゼロボルトになるような形式においてである。換言すると、時間挙動の完了後にコーディング部材における電圧は、コーディング部材に対して並列につながれた動的電流経路がなくても生じるはずの電圧に相当する。
【0021】
蓄電池パックエレクトロニクスで信号接触部材と動的電流経路が共通のアース端子と信号接触部材との間に電気的な並列回路でつながれるのが好ましい。
【0022】
好ましい実施形態では、時間的なダイナミクスは、動的電流経路が少なくとも1つの第1のコンデンサと第1の抵抗とを直列回路で含むことによって実現される。このとき第1のコンデンサと第1の抵抗は、当業者にそれ自体として周知の方式で、R-C直列回路またはC-R直列回路として配置されていてよい。このとき動的電流経路のダイナミクスは、第1のコンデンサが直流供給電圧を印加されたときに、たとえば手動工作機械または充電器のインターフェースに配置されるプルアップ抵抗を介して定義された時間の内部で充電され、充電中にそれ自体周知の方式で、第1のコンデンサの完全な充電のもとで電流がゼロに等しくなるまで、第1の抵抗に印加される電圧が低下していくことによって生起される。そして、第1の抵抗を介して印加される電圧も同じくゼロに等しくなる。
【0023】
具体的な実施形態では、少なくとも1つの第1のコンデンサのキャパシタンスCxと少なくとも1つの第1の抵抗の抵抗値Rxは、第1のコンデンサの時間定数τ=Rx*Cxがτ<10msの値、好ましくはτ<1msの値を有するように選択される。
【0024】
本発明の1つの実施形態では、動的電流経路は並列回路および/もしくは直列回路で接続された2つもしくはそれ以上の第1のコンデンサを含み、ならびに/または並列回路および/もしくは直列回路で接続された2つもしくはそれ以上の第1の抵抗を含む。
【0025】
別の実施形態では、動的電流経路は1つの蓄電池パックまたは蓄電池パック型式について、信号接触部材で手動工作機械または充電器から供給電圧(Vcc)が印加されたときにコーディング部材で測定電圧に関して定義された時間挙動を生成する、定義されたキャパシタンス値Cxおよび/または定義された抵抗値Rxを有し、この時間挙動は、たとえば動的電流経路を有さない、または別の種類の動的電流経路を有する、他の蓄電池パックまたは蓄電池パック型式の時間挙動から区別可能である。
【0026】
このようにして、たとえば8ビットコーディングを実現するために、理論上は任意の数の異なるキャパシタンス値Cxおよび/または抵抗値Rxを時間的推移に関して区別することができる。
【0027】
別の実施形態では、蓄電池パックエレクトロニクスは2つまたはそれ以上の動的電流経路を含み、2つまたはそれ以上の動的電流経路の各々は電気的な並列回路で少なくとも1つのコーディング部材に対して並列につながれ、2つまたはそれ以上の動的電流経路の各々は、抵抗値Rx,iを有する少なくとも1つの第1の抵抗およびキャパシタンスCx,iを有する少なくとも1つの第1のコンデンサを直列回路で有し、2つまたはそれ以上の動的電流経路の各々の組合せがそれぞれ区別されるべき蓄電池パックの内部で、手動工作機械および/または充電器に対するインターフェースで区別可能な時間挙動を生起する。上で検討した実施形態と同じく、このようにして原理的に任意の数のビットをコーディングすることができる。
【0028】
一般的に言うと、1つの実施形態では、蓄電池パックエレクトロニクスは2つまたはそれ以上の動的電流経路を含むことが意図され、2つまたはそれ以上の動的電流経路の各々が電気的な並列回路で少なくとも1つのコーディング部材に対して並列につながれ、2つまたはそれ以上の動的電流経路の各々がその電気コンポーネントと配線に関して第1の動的電流経路に準じて構成される。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、保護コンデンサまたは保護ダイオードが電気的な並列回路で少なくとも1つのコーディング部材に対して並列につながれる。このことは、静電放電に対して回路を保護することを可能にする。
【0030】
少なくとも1つのコーディング部材はコーディング抵抗であるのが好ましく、特別に好ましくはオーム抵抗である。この実施形態では、オーム抵抗のオーム抵抗値を、少なくとも1つの第1のコーディング部材のコーディング値として援用することができる。
【0031】
別の態様において本発明は、上に説明した蓄電池パックと、蓄電池パックの信号接触部材と対応する少なくとも1つの信号対応接触部材を含む、手動工作機械と蓄電池パックとを電気的に結合するためのインターフェースと、制御ユニットとを含む手動工作機械を含み、制御ユニットは、蓄電池パックに関する情報を少なくとも1つの信号対応接触部材を介して受信するために構成され、制御ユニットは、少なくとも1つの信号対応接触部材に印加される測定電圧の時間的推移を検出して評価するために構成される。
【0032】
同様に本発明は、上に説明した蓄電池パックを充電するための充電器を含み、この充電器は、蓄電池パックの信号接触部材と対応する充電対応接触部材を含む、蓄電池パックと充電器を電気的に結合するためのインターフェースを含み、および制御ユニットを含み、制御ユニットは、蓄電池パックに関する情報を少なくとも1つの充電対応接触部材を介して受信するために構成され、制御ユニットは、少なくとも1つの充電対応接触部材に印加される測定電圧の時間的推移を検出して評価するために構成される。
【0033】
本発明による手動工作機械および本発明による充電器は、単純なコーディング部材を有する従来技術と比較したとき、少なくとも1つの別の情報を読み取ることができ、区別可能な複数の時間推移の生起に関して蓄電池パックが上に記述した説明に基づいて相応に製作されていれば、相応にさらに多くの情報を読み取ることもできる。
【0034】
このとき手動工作機械ないし充電器の側で、少なくとも1つの信号対応接触部材ないし少なくとも1つの充電対応接触部材と、プルアップ抵抗とが電気接続されることが意図されていてよい。
【0035】
本発明のその他の構成要件、適用可能性、および利点は、図面に示されている本発明の実施例についての以下の説明から明らかとなる。その際に留意すべきは、図示している構成要件は説明的な性格を有しているにすぎず、上に説明した他の発展例の構成要件との組合せで適用することもでき、何らかの形で本発明を限定するように想定されてはいないことである。
【0036】
次に、添付の図面を参照しながら本発明について詳しく説明するが、同じ構成要件には同じ符号が使われている。図面は模式的なものであり、次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による蓄電池パックを有する手動工作機械を例示として示す図である。
【
図2】本発明による蓄電池パックの実施形態を示す斜視分解図である。
【
図3】従来技術に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を示す模式図である。
【
図4a】本発明の実施形態に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を、異なる時点で示す模式図である。
【
図4b】本発明の実施形態に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を、異なる時点で示す模式図である。
【
図4c】本発明の実施形態に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を、異なる時点で示す模式図である。
【
図5a】本発明の実施形態に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を、異なる時点で示す模式図である。
【
図5b】本発明の実施形態に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を、異なる時点で示す模式図である。
【
図5c】本発明の実施形態に基づく蓄電池パック側の信号接触部材と機械側の対応信号接触部材との間の電気接触を、異なる時点で示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に基づいて信号接触部材で測定された電圧推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、手動工作機械300として構成された電気器具を示しており、これは、例示として蓄電池式ドリルドライバーとして構成されている。それに応じて手動工作機械300は、図示した実施形態では、電源非依存的な電流供給のために蓄電池パック100と機械的および電気的に結合される。しかしながら指摘しておくと、本発明は蓄電池式ドリルドライバーだけに限定されるものではなく、むしろ、さまざまに異なる手動工作機械300で適用することができる。手動工作機械300は、駆動モータ335により生成されるトルクを、図示しない工具のための工具マウント320が取り付けられた軸xを中心として回転する駆動軸へと伝達するためにハウジング305の中に配置された伝動装置330と、ハンドグリップ315とを有している。ハウジング305の中に、駆動モータ335および/または伝動装置330と電子式および/または機械式に接触するエレクトロニクス370が配置されている。ハンドグリップ315は、手動工作機械300の操作者の手のための載置面としての役目を果たし、通常、長軸y、軸xに沿って工具マウント320の方向を向く前面317、裏面316、および2つの側面318を有する。
【0039】
ハンドグリップ315の領域に、駆動モータ335へのエネルギー供給のための第1の操作部材310が配置されており、第1の操作部材310は利用者にとって手作業でアクセス可能となるようにハウジング305から突出し、それにより、それ自体として周知の方式で、好ましくは第1の操作部材310の調節ストロークに依存して、第1の操作部材310の押圧運動により駆動モータの制御および/またはコントロールを可能にすることができ、駆動モータ335のための電圧供給もスイッチオンおよび/またはスイッチオフすることができる。さらに手動工作機械300は、手動工作機械300の駆動モータ335の回転を調整するための第2の操作部材312をスライドスイッチの形態で有している。第2の操作部材312は、特に手動工作機械300の工具マウント320の駆動軸の回転軸xに対して垂直にスライド可能なように配置され、それにより第2の操作部材312は操作されたときに第1の位置と、第2の位置と、第3の位置との間で往復運動をすることができる。ここでは第1および第2の位置はそれぞれ駆動モータの回転方向を設定する。このように手動工作機械300の利用者は、第2の操作部材312の位置を見るだけで、どの作業モードで手動工作機械300が作動するのかをすでに認識することができる。これに加えて第2の切換部材は、第1の位置と第2の位置との間に、たとえば中間位置の第3の位置を有しており、第3の位置では電気式、電気機械式、および/または機械式のモータ電流の中断が行われる。たとえば第1の切換部材310の操作は機械式にロックされていてよく、第2の操作部材312が第3の位置へと動いたときに、第1の切換部材310に対してロックをするように作用する。このとき第2の操作部材312は、図示しているように、スライドスイッチまたはその代替としてタンブラスイッチとして製作されていてよい。
【0040】
第1の操作部材310と第2の操作部材312は回転軸xに沿って、第1および第2の操作部材310,312をいずれも人差し指または中指で操作することが可能であるように配置されている。ここでは第1の操作部材310と第2の操作部材312との間の間隔は、手動工作機械300の片手操作が可能であるように選択されている。さらに、両方の操作部材310,312は回転軸xよりも下方の領域に配置され、ハウジング305から突出している。
【0041】
図1に示す位置では、蓄電池パック100が手動工作機械300のハンドグリップ315に取り付けられており、ロック手段によりロックされている。ハンドグリップ315よりも下方に蓄電池パック100が配置されることで、手動工作機械300の操作が妨げられることがない。詳細には示さないロック手段は、特に、ロック部材と操作部材220とを含んでいる。操作手段220を操作することで、蓄電池パック100を手動工作機械300のハンドグリップ315から外すことができる。さらに、手動工作機械300はインターフェース380を有している。
【0042】
図1に示す蓄電池パック100はスライド式蓄電池パックとして製作されており、手動工作機械300のインターフェース380と対応するインターフェース180を有している。スライド式蓄電池パックの代替として、回転式または旋回式の蓄電池パックとしての実施形態も可能であり、このとき蓄電池パック100は旋回軸と向かい合う側で、ロック、ねじ止め、クランプ、または応力固定によって手動工作機械300のハウジング305に取外し可能に係止することができる。このようにして、ハウジング305からの蓄電池パックの考えられる落下に対して有効に対処することができる。
【0043】
手動工作機械300または充電器へ蓄電池パック100を取外し可能に取り付けるために、蓄電池パック100は、手動工作機械300の対応するインターフェース380または充電器の対応するインターフェースと取外し可能に機械式および電気式に結合するためのインターフェース180を有している。蓄電池パック100を取り付けるときには、手動工作機械300または充電器のたとえば案内溝や案内リブなどの収容手段を、蓄電池パック100の対応する案内部材を収容するためにこれと係合させ、このとき蓄電池パック100を収容手段に沿って挿入し、蓄電池パック100のインターフェース180を、手動工作機械300の対応するインターフェース380または充電器の対応するインターフェースへ差し込む。それぞれのインターフェース180,380の機械的な構成を通じて、蓄電池パック100を手動工作機械300および/または充電器に割り当てることができる。
【0044】
便宜上、
図2から
図5についての以下の説明では、蓄電池パックと結合される器具として手動工作機械300を取り上げることとし、蓄電池パック100と結合される器具が充電器700でもあり得ることを毎回言及することはしない。しかし
図3から
図5についての説明は、充電器700への蓄電池パック100の配置についても準用される。
【0045】
手動工作機械300のハンドグリップ315に蓄電池パック100をロックするために、蓄電池パック100をハンドグリップ315に沿ってスライドさせ、すなわち、ハンドグリップ315の長手方向yに対して実質的に垂直に向くハンドグリップ315の下側の外面に沿ってスライドさせる。
図1に示す位置にあるとき、蓄電池パック100はロック手段によってハンドグリップ315にロックされている。ロック手段は、特に、
図2に示すロック部材210と操作手段とを含んでいる。操作手段を操作することで、蓄電池パック100を手動工作機械300のハンドグリップ315から外すことができる。蓄電池パック100がロック解除された後に、これをハンドグリップ315から分離することができる。手動工作機械300に蓄電池パック100を取り付けるときには、手動工作機械300のハンドグリップ315にある詳しくは図示しない対応する収容部と、ロック部材210を係合させる。
【0046】
図2の分解図に見られるとおり、さらにインターフェース180は、手動工作機械300または充電器と蓄電池パック100との電気接触のための接触部材140を含んでいる。接触部材140は、充電接触部材および/または放電接触部材としての役目を果たす電圧接触部材だけでなく、蓄電池パック100から手動工作機械300への、および/または手動工作機械300から蓄電池パック100への信号伝送を可能にする信号接触部材も含んでおり、ここでの「信号伝送」は、もっとも単純なケースでは「0」または「1」の1ビット情報であるが、たとえば電圧や抵抗の値であってもよい情報の伝送として理解されるべきものである。
【0047】
冒頭で説明したとおり、特定の信号接触部材が蓄電池パック側でコーディング部材と、たとえばコーディング抵抗と接続され、コーディング部材は、たとえば最大の充電電流と放電電流、蓄電池パックの最新の動作温度と内部抵抗などの、手動工作機械300または充電器についての情報を符号化する。手動工作機械および/または充電器の対応する対応接触部材に、典型的にはプルアップ抵抗が配置されていて、これを介して蓄電池パック側のコーディング抵抗が電圧の供給を受ける。
【0048】
このような周知の構造の簡略化した回路図が
図3に掲げられている。ここでは
図4および
図5と同じく、破線は、蓄電池パック100ないし蓄電池パックエレクトロニクス800と、手動工作機械300ないし充電器との間のインターフェースを表す。
図3から
図5では、蓄電池パックのエレクトロニクスと手動工作機械300のエレクトロニクスとの間の接続が連続する線として表されており、蓄電池パック側と機械側のインターフェースの、それぞれの器具の間に配置された接触部材は図示していない。蓄電池パック100に関する情報を少なくとも1つの信号接触部材143を介して手動工作機械300に提供するために設計される、蓄電池パックエレクトロニクスのその他の具体的事項も同様に図示していない。蓄電池パック100に関するこれらの情報は、少なくとも1つのコーディング部材141に少なくとも部分的に保存されており、これについて以下にさらに詳細に説明する。
【0049】
図3に示す例では、コーディング部材141は抵抗値Rcを有する抵抗である。手動工作機械300の側にプルアップ抵抗341が示されていて、これを介してコーディング部材141が電流の供給を受ける。図示した実施形態では、プルアップ抵抗341とコーディング部材141にわたって供給電圧Vccが印加される。手動工作機械ないし充電器の測定回路が、供給電圧Vccの印加後に信号接触部材と接続された抵抗を判定し、これが手動工作機械ないし充電器の相応の制御部によって蓄電池パック固有の情報として解釈される。
【0050】
冒頭で説明したとおり、このような方式の情報伝送は、図示した実施形態では抵抗値だけに限定されている。
【0051】
このような欠点を取り除くと同時に、従来技術の器具との完全な適合性と機能性を保証するために、本発明によると、一方では、蓄電池パックエレクトロニクス800を通じて測定電圧を少なくとも1つのコーディング部材141に印加するという点は維持される。これに加えて本発明では、
図4bに示すように蓄電池パックエレクトロニクス800において、コーディング部材141が電気的な並列回路で動的電流経路に対して並列につながれており、このことについて、
図4に示されている本発明の実施形態を参照しながら説明する。
図4および
図5では、すでに
図3で説明した構成要件は
図3と同じ符号を有している。
【0052】
図4の実施形態では、動的電流経路は、抵抗値Rxを有する少なくとも1つの第1の抵抗241と、キャパシタンスCxを有する第1のコンデンサ243とを直列回路で含んでいる。このとき本発明の実施形態に応じて、第1の抵抗241はインターフェースから見て第1のコンデンサ243の前(R-C直列回路)または第1のコンデンサの後(C-R直列回路)に配置されるが、このことは、ここで期待される技術的効果に関しては何ら相違をもたらさない。
【0053】
すなわち蓄電池パックエレクトロニクス800では、信号接触部材143と動的電流経路とが、電気的な並列回路で共通のアース端子と信号接触部材143との間につながれており、このことは、相応のアース記号によって図面で示唆されている。
【0054】
そして
図4bに示す回路に電圧Vccが印加されると、当初は完全に放電されている第1のコンデンサ243のもとで電気的に見て
図4aに示す状況が生じ、この状況では、電圧が動的電流経路を介して、および時間的に変化しないコーディング部材141を含む静的経路を介して、プルアップ抵抗341と、RcおよびRxからなる並列回路とで構成される分圧器に類して分割される。このことが特別に好ましい理由は、蓄電池パック100と手動工作機械300との間のデジタル式の通信のために状況によっては必要となる切換閾値が有意な追加の時間遅延なしに超過されることを、それによって保証することができるからである。
【0055】
コンデンサ234は、測定電圧Vcが印加されたとき、そのキャパシタンスCxとコーディング部材141の抵抗Rxとに依存して、時間定数τ=Rx
*Cxをもってその最終値まで充電されることを当業者は認識する。この最終値に達すると、動的電流経路を介して電流が流れることはなくなり、定常的な電圧値は、プルアップ抵抗341とコーディング部材141とで構成される分圧器に相当し、このことは
図4cに模式的に示されている。それに伴い、電気的に見るとこの定常的な系は、ちょうど動的電流経路が存在しないのと同じことになる。
【0056】
時間定数τ=Rx
*Cxは、本発明の実施形態では、コーディング部材141が定常的に測定される時点で第1のコンデンサ243がすでに十分に充電され、それに伴い、従来技術から知られている
図3に示す定常的な系との偏差を無視できるように設計される。少なくとも1つの第1のコンデンサ243のキャパシタンスCxは、および少なくとも1つの第1の抵抗241の抵抗値Rxは、第1の動的電流経路の時間定数τ=Rx
*Cxがτ<10msの値、好ましくはτ<1msの値を有するように選択されるのが好ましい。
【0057】
すなわちこの実施形態では動的電流経路は、対応する手動工作機械300または対応する充電器700と蓄電池パック100との接続後の定義された時間帯の内部でのみ、測定電圧Vcの時間的推移に影響を及ぼすためにセットアップされる。測定電圧Vcの時間的推移へのこのような影響を、手動工作機械300または充電器の相応に構成された制御ユニットによって検出して評価することができる。
【0058】
このような状況を図解するために、
図6は、
図4との関連で説明したような供給電圧Vccの印加後にコーディング部材141に印加される電圧Vcの時間推移を例示として示している。水平方向のx軸には時間がプロットされ、これと垂直なy軸にはコーディング部材141における正規化された電圧がプロットされている。
【0059】
点が付されている曲線1001によって表されている時間推移に、プルアップ抵抗341と、コーディング部材141と、第1の抵抗241および第1のコンデンサ243とをR-C回路で含む、
図4bに示す回路の例示コンフィグレーションが割り当てられている。詳しくは表示していない実線の曲線1002は、従来技術に基づいて施工された動的電流経路のない回路に相当し、それ以外の点では変わらないコンポーネントすなわちプルアップ抵抗341およびコーディング部材141を有する。
【0060】
供給電圧Vccの印加直後での、および両方の時間推移1001,1002が再び互いに近似する定常状態での、時間推移1001,1002における立ち上がりエッジにわずかな相違を当業者は認識する。これらの間のタイムスロットΔTでの測定可能な電圧推移は、領域1003における両方の時間推移1001,1002の誤差によって特徴づけられ、この誤差は動的電流経路の電気的特性によって影響を受け、キャパシタンスCxおよび/または抵抗値Rxの推定を可能にする。上述した時間挙動の存在は、たとえば手動工作機械300または充電器のマイクロコントローラを通じて監視することができ、それは、コーディング部材141における電圧が回路の充電プロセス中に測定されることによる。これに関して、任意の1ビット情報をコーディングすることができる。さらに、いっそう高い情報深度のために、上述した時間挙動の特徴を評価することができる。
【0061】
静電放電に対して蓄電池パックエレクトロニクス800を保護するために、従来技術では保護コンデンサ145または保護ダイオードが電気的な並列回路で少なくとも1つのコーディング部材141に対して並列につながれていてよく、このことは
図5bに示されている。さらに
図5bは、
図4bに示すように抵抗値Rxを有する第1の抵抗241とキャパシタンスCxを有する第1のコンデンサ243とを直列回路で含む動的電流経路を有する、この回路の本発明による発展例を示している。
【0062】
図5bに示す回路に電圧Vccが印加されると、当初は完全に放電されている第1のコンデンサ243および完全に放電されている保護コンデンサ145のもとで、電気的に見て、保護コンデンサ145がアースに対する短絡を許容し、通電によって充電を開始する
図5aに示す状況が生じる。
【0063】
この充電プロセスは、供給電圧Vccの印加の直後には第1のコンデンサ241における通電がゼロに等しく、保護コンデンサ145の充電の増大に伴って初めて第1のコンデンサ241が充電を開始することにつながる。保護コンデンサ145と第1のコンデンサ241が完全に充電されると、電気的に見て、
図4cと同一である
図5cに示す系が生じる。
【0064】
好ましい実施形態では、動的電流経路は、手動工作機械ないし充電器から供給電圧が印加されたときに信号接触部材で当該蓄電池パックについて典型的な測定電圧の時間挙動をコーディング部材で生成する、蓄電池パックについて典型的なキャパシタンス値Cxおよび/または抵抗値Rxによって特徴づけられ、この時間挙動は、たとえば相違するキャパシタンス値Cxおよび/または抵抗値Rxによって特徴づけられる、または動的電流経路を含んでいない、他の蓄電池パックまたは蓄電池パック型式の時間挙動から区別可能である。
【0065】
別の実施形態では、蓄電池パックエレクトロニクス800は2つまたはそれ以上の動的電流経路を含み、複数の動的電流経路の各々は電気的な並列回路で少なくとも1つのコーディング部材141に対して並列につながれ、複数の動的電流経路の各々は、抵抗値Rx,iを有する少なくとも1つの第1の抵抗241と、キャパシタンスCx,iを有する少なくとも1つのコンデンサ243とを直列回路で有する。上で検討した実施形態と同じく、このようにして原則として任意の数のビットをコーディングすることができる。
【0066】
一般的に言うと、1つの実施形態では蓄電池パックエレクトロニクス800が2つまたはそれ以上の動的電流経路を有することが意図され、複数の動的電流経路の各々は電気的な並列回路で少なくとも1つのコーディング部材141に対して並列につながれ、複数の動的電流経路の各々がその電気コンポーネントと配線に関して第1の動的電流経路に準じて構成される。
【0067】
本発明について好ましい実施例によって具体的に詳細に説明してきたが、本発明の権利保護範囲を逸脱することなく、当業者によって上掲の構成要件の別の組合せが意図されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100 蓄電池パック
140 接触部材
141 コーディング部材
143 信号接触部材
180 インターフェース
241 第1の抵抗
243 第1のコンデンサ
300 手動工作機械
340 対応接触部材
341 プルアップ抵抗
700 充電器
800 蓄電池パックエレクトロニクス