(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】高屈折率光学材料で使用するための低ヘイズポリマー組成物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/76 20060101AFI20240403BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20240403BHJP
G02C 7/00 20060101ALN20240403BHJP
G02B 1/04 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C08G18/76 014
C08G18/38 076
G02C7/00
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2022559588
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 US2021023900
(87)【国際公開番号】W WO2021202197
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘイブンス, バリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダビディーン, ダリン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ルチャンスキー, マシュー エス.
(72)【発明者】
【氏名】キダー-ウォルフ, ナイジェル ディー.
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234430(JP,A)
【文献】特開平05-078441(JP,A)
【文献】特開2019-119861(JP,A)
【文献】特開2010-214754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
71/00- 71/04
G02C 1/00- 13/00
G02B 1/00- 1/08
3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を調製する方法であって、
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチの純粋試料のパーセント透過率を310nm±2nmで決定することと;100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)、および必要に応じて100%の単位%Tを有する水に合わせて較正され、かつ320nm±2nmの波長で測定された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60%Tを有する前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを選択することと;選択された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料と少なくとも1つのポリオールまたはポリチオールとの混合物を含む重合性組成物を重合することを含み、
ここで、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、方法。
【請求項2】
前記混合物に添加された前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも40%Tを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物に添加された前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも50%Tを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオールまたはポリチオールが、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、またはそれらのうちの2つもしくは2つより多くの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合性組成物を重合する前に、前記重合性組成物を成形型に注入して、光学物品を形成することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学物品が、眼科用物品である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記眼科用物品が、レンズである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記眼科用物品が、眼鏡レンズである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチの前記パーセント透過率を決定することが、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体
純粋試料を、310nm±2nmの波長で光を含む光源で照射することと、
310nm±2nmで%Tを測定することと、
によって実行される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の前記バッチの液体
純粋試料を、310nm±2nmで光を生成する光源で照射することと、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を通過する前記光の透過率または吸光度値を取得することと、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するかどうかを、前記透過率または吸光度値から決定することと
を含み、
ここで、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときにそれが低い起泡および/または低い黄色度指数の高屈折率光学物品を生成
し、
ここで、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、方法。
【請求項11】
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の前記バッチを、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のポリオールもしくはポリチオールとの共重合によって生成されたコポリマーから調製された高屈折率光学物品中に許容可能もしくは許容不可能な起泡および/または低い黄色度指数を生成するその能力に従って分類することを更に含み、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の前記バッチが、許容可能に低い起泡および/または低い黄色度指数を生成する、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料組成物がまた、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で60パーセント透過率(%T)を有するとき、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物の前記バッチが、許容可能に低い起泡および/または黄色度指数を生成する、請求項1
0または1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記光学物品が、レンズである、請求項
10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリオールまたはポリチオールが、
4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール;
1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン;
2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;または
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンの混合物である、請求項
10~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月30日に出願された米国仮出願第63/001,643号に対する優先権を主張し、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリウレタンおよびポリチオウレタンを調製する方法が、ポリウレタンおよびポリチオウレタン組成物、ならびに高屈折率光学部品の製造に使用するためのイソシアネートモノマーの品質を評価する方法とともに提供される。
【0003】
芳香族ポリイソシアネート(例えば、m-キシリレンジイソシアネート(mXDI))またはポリイソチオシアネート(総称して、「ポリイソ(チオ)シアネート」)などのイソシアネートは、レンズなどの高屈折率光学部品の製造に使用され得る。例えば、および限定されないが、ジイソシアネートなどのイソシアネートは、ジオールまたはポリオールと重合して、ポリウレタンを生成し、ジ-またはポリ-チオールと重合して、ポリチオウレタンを生成することができる(ポリ(チオ)ウレタン-ポリウレタンおよびポリチオウレタンの両方を総称して指す)。m-キシリレンジイソシアネートなどのある特定のイソシアネートは、非常に不安定であり、非常に少量の水に敏感であり、気泡、ヘイズ、および黄変などの許容不可能な特性を有するポリマー生成物をもたらす。
【0004】
レンズなどの光学物品は、品質管理プロセスの一部として重合後に分析され、ここで、気泡、ヘイズ、および黄変は、目視検査、または特定の波長での吸光度によって決定することができるが、このプロセスは、製造時間および費用の観点から無駄であり、製品を市場に出す際に著しい遅延につながる場合がある。
【0005】
例がm-キシリレンジイソシアネートである、ポリイソ(チオ)シアネートまたは芳香族ジイソシアネートなどのイソシアネートが、最終的なレンズ製品中で起泡または変色、例えば黄変を生成するかどうかを決定する方法が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示の一態様によれば、ポリマー組成物を調製する方法が提供される。本方法は、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料と少なくとも1つのポリオールまたはポリチオールとの混合物を含む重合性組成物を重合することを含み、重合性組成物を調製するために使用される芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のパーセント透過率(%T)が、310nm±2nmの波長で測定され、混合物に添加された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する。
【0007】
別の態様では、重合性組成物は、ポリマー組成物を調製する際に使用するために提供される。重合性組成物は、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物とポリオールまたはポリチオール化合物との混合物を含み、混合物を調製するために使用されるポリイソ(チオ)シアネート組成物の透過率が、310nm±2nmの波長で決定され、重合性組成物に添加された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する。
【0008】
なお別の態様では、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法が提供される。本方法は、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体試料を、310nm±2nmで光を生成する光源で照射することと、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を通過する光の透過率または吸光度値を取得することと、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するかどうかを、透過率または吸光度値から決定することとを含み、ここで、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときにそれが低い起泡および/または低い黄色度指数の高屈折率光学物品を生成する。
【0009】
更なる態様では、重合性組成物を調製することと、重合性組成物を成形型に導入することと、成形型内で重合性組成物を少なくとも部分的に硬化させることと、を含む、成形物品を製造する方法が提供される。重合性組成物は、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物とポリオールまたはポリチオール化合物との混合物を含み、混合物を調製するために使用されるポリイソ(チオ)シアネート組成物の透過率が、310nm±2nmの波長で決定され、重合性組成物に添加された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する。
【0010】
更なる態様は、以下のように提供される。
【0011】
第1の態様によれば、ポリマー組成物を調製する方法であって、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料と少なくとも1つのポリオールまたはポリチオールとの混合物を含む重合性組成物を重合することを含み、重合性組成物を調製するために使用される芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のパーセント透過率(%T)が、310nm±2nmの波長で測定され、混合物に添加された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する、方法が提供される。
【0012】
第2の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、芳香族ジイソシアネートである、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様に従って提供される。
【0013】
第3の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、ポリマー組成物を調製する方法が第2の態様に従って提供される。
【0014】
第4の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールが、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、またはそれらのうちの2つもしくは2つより多くの混合物から選択される、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様~第3の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0015】
第5の態様によれば、重合性組成物を重合する前に、重合性組成物を成形型に注入して、光学物品を形成することを更に含む、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様~第4の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0016】
第6の態様によれば、光学物品が、眼科用物品である、ポリマー組成物を調製する方法が第5の態様に従って提供される。
【0017】
第7の態様によれば、眼科用物品が、レンズである、ポリマー組成物を調製する方法が第6の態様に従って提供される。
【0018】
第8の態様によれば、眼科用物品が、眼鏡レンズである、ポリマー組成物を調製する方法が第6の態様に従って提供される。
【0019】
第9の態様によれば、重合性組成物を重合する前に、ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチのパーセント透過率を310nm±2nmで決定することと、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを選択することと、選択されたバッチからの芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料をポリチオールと組み合わせて、重合性組成物を生成することと、を更に含む、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様~第8の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0020】
第10の態様によれば、ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチのパーセント透過率を決定することが、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体試料を、310nm±2nmの波長で光を含む光源で照射することと、310nm±2nmで%Tを測定することと、によって実行される、ポリマー組成物を調製する方法が第9の態様に従って提供される。
【0021】
第11の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも40パーセント透過率(%T)を有する、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様~第10の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0022】
第12の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも50パーセント透過率(%T)を有する、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様~第10の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0023】
第13の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正され、かつ320nm±2nmの波長で測定された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60パーセント透過率(%T)を有する、ポリマー組成物を調製する方法が第1の態様~第12の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0024】
第14の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物とポリオールまたはポリチオール化合物との混合物を含むポリマー組成物を調製する際に使用するための重合性組成物であって、混合物を調製するために使用されるポリイソ(チオ)シアネート組成物の透過率が、310nm±2nmの波長で決定され、重合性組成物に添加された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する、重合性組成物が提供される。
【0025】
第15の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、芳香族ジイソシアネートである、重合性組成物が第14の態様に従って提供される。
【0026】
第16の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、重合性組成物が第14の態様に従って提供される。
【0027】
第17の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールが、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン;2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;または5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンの混合物である、重合性組成物が第14の態様~第16の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0028】
第18の態様によれば、重合性組成物に添加されたポリイソ(チオ)シアネートが、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも40パーセント透過率(%T)を有する、重合性組成物が第14の態様~第17の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0029】
第19の態様によれば、重合性組成物に添加されたポリイソ(チオ)シアネートが、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも50パーセント透過率(%T)を有する、重合性組成物が第14の態様~第17の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0030】
第20の態様によれば、重合性組成物に添加されたポリイソ(チオ)シアネートが、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60パーセント透過率(%T)を有する、重合性組成物が第14の態様~第19の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0031】
第21の態様によれば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチのパーセント透過率を決定することが、芳香族イソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体試料を、310nm±2nmの波長で光を含む光源で照射することと、310nm±2nmで%Tを測定することと、によって実行される、重合性組成物が第14の態様~第20の態様のいずれか1つに従って提供される。
【0032】
第22の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体試料を、310nm±2nmで光を生成する光源で照射することと、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を通過する光の透過率または吸光度値を取得することと、芳香族イソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するかどうかを、透過率または吸光度値から決定することとを含み、ここで、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときにそれが低い起泡および/または低い黄色度指数の高屈折率光学物品を生成する、方法が提供される。
【0033】
第23の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のポリオールもしくはポリチオールとの共重合によって生成されたコポリマーから調製された高屈折率光学物品中に許容可能もしくは許容不可能な起泡および/または低い黄色度指数を生成するその能力に従って分類することを更に含み、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチが、許容可能に低い起泡および/または低い黄色度指数を生成する、方法が第22の態様に従って提供される。
【0034】
第24の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料組成物がまた100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で60パーセント透過率(%T)を有するとき、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物のバッチが、許容可能に低い起泡および/または黄色度指数を生成する、方法が第22または第23の態様に従って提供される。
【0035】
第25の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、光学物品が、レンズである、方法が第22~24の態様に従って提供される。
【0036】
第26の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、方法が第22~25の態様に従って提供される。
【0037】
第27の態様によれば、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、ポリオールまたはポリチオールが、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン;2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;または5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンの混合物である、方法が第22~26の態様に従って提供される。
【0038】
第28の態様によれば、第14~21の態様のいずれか1つに従って重合性組成物を調製することと、重合性組成物を成形型に導入することと、成形型内で重合性組成物を少なくとも部分的に硬化させることと、を含む、成形物品を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施例で説明されるようなmXDI試料についてのUV可視%透過率対波長を示すグラフ。
【0040】
【
図2】実施例で説明されるようなmXDI試料についての310nmでの重合物の黄色度指数対パーセント透過率(%T)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本明細書で使用するとき、冠詞「a」、「an」、および「the」は、別途明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0042】
別途指示されない限り、本明細書に開示される全ての範囲または比率は、その中に属する任意および全てのサブ範囲またはサブ比率を包含するものとして理解されたい。例えば、「1~10」の記述された範囲または比率は、1の最小値と10の最大値との間の(およびこれらを含む)任意および全てのサブ範囲、つまり、1~6.1、3.5~7.8、および5.5~10などであるが、これらに限定されない、1または1より大きい最小値で始まり、10または10より小さい最大値で終わる、全てのサブ範囲またはサブ比率を含むとみなされるべきである。
【0043】
動作例において、または別途指示される場合以外は、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の分量、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されたい。
【0044】
本明細書に提供される方法は、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物の試料を分析して、mXDIなどの芳香族ポリイソ(チオ)シアネートの、ジチオールまたはジオールなどの好適なポリチオールまたはポリオールとの重合によって生成されたコポリマーから生成された、レンズなどの光学物品中の気泡または黄変の存在を予測するために、透過率の尺度を使用する。mXDIなどの芳香族ポリイソ(チオ)シアネートは、芳香族ポリイソ(チオ)シアネートの好適なポリチオールまたはポリオールとの重合反応からもたらされる重合物から調製された光学物品中の気泡または黄変の形成につながる水および不純物に非常に敏感であり得る。mXDI組成物などの芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物中の不純物としては、フェノール、ジクロロベンゼン、ビス(クロロメチル)ベンゼン、および/またはクロロ-キシリレンイソシアネート、とりわけ、イソ(チオ)シアネートモノマー化合物に依存する分解生成物などの不純物が挙げられ得る。化合物または組成物に関する「ポリイソ(チオ)シアネート」という用語は、ポリイソシアネート化合物または組成物、およびポリイソチオシアネート化合物または組成物の両方を総称して指す。
【0045】
態様では、ポリマー組成物を調製する方法が提供される。ポリマー組成物は、モノマーおよびマクロマーなどの前駆体から調製される。任意の好適な反応条件、触媒、補助因子、または架橋剤は、ポリマー組成物を作製するために使用される重合反応を実施するために利用され得る。本明細書に提示される重合方法では、重合反応を実施する前、および典型的には、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を重合反応混合物(重合性組成物)に添加する前に、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を分析して、重合反応混合物中で使用される芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチが、重合物(重合反応の反応生成物)中の黄変および/または気泡形成を阻止するのに十分な品質のものであるかどうかを決定する。「バッチ」とは、組成物の任意の体積を意味し、例えば、受け取ったままの組成物の完全なロット、またはその任意の部分を指す。
【0046】
バッチの透過率は、例えば、製造直後、出荷時、一定の時間間隔で、または使用直前に、1回または複数回試験され得る。任意の好適な分光光度法を使用して、パーセント透過率を決定することができる。同じように、吸光度値などのパーセント透過率に関連する特性をパーセント透過率に変換して、試料が、例えば、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された石英キュベットを通る1センチメートルの光路を用いて310nmの波長で測定された、少なくとも35パーセント透過率(%T)の要件を満たすかどうかを決定することができる。例えば、および限定されないが、ベール-ランベルトの法則および適切な等式を使用して、透過率および吸光度値を相互変換することができる。
【0047】
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの品質の尺度として、バッチは、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)、少なくとも40%T、または少なくとも50%Tの透過率を有する。測定したままの芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料は、追加の溶媒を除いて、「純粋」であり得る。交互に、材料は、本明細書で説明されるように、これらの他の成分が芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の品質を決定する能力に干渉しない限り、溶媒、および/または他の成分を含み得る。
【0048】
透過率は、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内で、310nmで測定することができる。代替的に、透過率を、任意の好適な波長、例えば310nm±2nmで、および任意の好適なキュベットまたは分光光度システム内で、任意の好適な較正標準または較正方法を用いて測定して、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長での測定値と等価のものを得ることができる。
【0049】
310nm±2nmでの透過率の測定に加えて、またはその代替として、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物のバッチの透過率はまた、320nm±2nmなどの第2の波長で測定することができる。重合反応で使用するために、バッチは、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60パーセント透過率(%T)の透過率を有し得る。310nmでの透過率の測定と同様に、任意の適切な測定方法を使用して、バッチが、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60パーセント透過率(%T)の透過率を有する要件を満たすかどうかを決定することができる。
【0050】
本明細書に提供される方法および組成物では、重合性組成物は、記述された透過率要件を満たすように、製造後および重合前に、少なくとも1回、試験および検証、確認、または認証された芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を含む。この検証、確認、または認証は、重合反応において組成物の使用前にいつでも行うことができる。
【0051】
態様では、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低ヘイズ、無気泡、および/または低い黄色度指数(例えば、ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法も本明細書で提供される。本方法は、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料(例えば、芳香族ポリイソ(チオ)シアネートモノマー組成物)のバッチの液体試料を、310nm±2nmで光を生成する光源で照射することを含み得る。次に、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を通過する光の透過率または吸光度値を取得することができる。透過率または吸光度値から、イソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するかどうかを決定することができる。芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料は、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、少ない気泡を有する低い黄色度指数の高屈折率光学物品を生成し得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「イソシアネート」という用語、および関連する用語は、少なくとも1つのイソシアネート基(-NCO)を含む化合物を指す。「ポリイソシアネート」は、少なくとも2つのイソシアネート(-NCO)基を含む。「芳香族イソシアネート」は、少なくとも1つのイソシアネート(-NCO)基が、直接的に、または1つもしくは1つより多くのメチレン基などを通して間接的に芳香族基に結び付く、芳香族基を含むイソシアネートを指す。「芳香族ジイソシアネート」は、2つのイソシアネート(-NCO)基および芳香族基を含む、mXDIなどのイソシアネートを指し、「芳香族ポリイソシアネート」は、少なくとも2つのイソシアネート(-NCO)基および芳香族基を含む、mXDIなどのイソシアネートを指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「イソチオシアネート」という用語、および関連する用語は、少なくとも1つのイソチオシアネート基(-NCS)を含む化合物を指す。「ポリイソチオシアネート」は、少なくとも2つのイソチオシアネート(-NCS)基を含む。「芳香族イソチオシアネート」は、少なくとも1つのイソチオシアネート(-NCS)基が、直接的に、または1つもしくは1つより多くのメチレン基などを通して間接的に芳香族基に結び付く、芳香族基を含むイソチオシアネートを指す。「芳香族ジイソチオシアネート」は、2つのイソチオシアネート(-NCS)基および芳香族基を含むイソチオシアネートを指し、「芳香族ポリイソチオシアネート」は、少なくとも2つのイソチオシアネート(-NCS)基および芳香族基を含むイソチオシアネートを指す。
【0054】
本発明の方法によって評価され得るか、またはそれに採用され得る芳香族ポリイソ(チオ)シアネートの部類としては、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、1つまたは1つより多くのチオエーテル連結を含む芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、1つまたは1つより多くのジスルフィド連結を含む芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、ならびに少なくとも1つのイソチオシアネート基および少なくとも1つのイソシアネート基の両方を含む芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
芳香族ポリイソ(チア)シアネート化合物が選択され得る芳香族ポリイソシアネート化合物の例としては、1,2-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、トリレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェニルイソシアネート)、ビベンジル-4,4’-ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン(bis(isocyanatemethyl)benzene)、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、2,5-ジ(イソシアナトメチル)フラン、およびそれらのうちの2つまたはそれより多くの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物が選択され得る芳香族ポリイソシアネート化合物の非限定的な例は、m-キシリレンジイソシアネート(mXDI)である。
【0057】
芳香族ポリイソチオシアネート化合物が選択され得る芳香族ポリイソシアネート化合物の例としては、1,2-ジイソチオシアナトベンゼン、1,3-ジイソチオシアナトベンゼン、1,4-ジイソチオシアナトベンゼン、2,4-ジイソチオシアナトトルエン、2,5-ジイソチオシアナト-m-キシレン、4,4’-メチレンビス(フェニルイソチオシアネート)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’-メチレンビス(3-メチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’-ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4’-ジイソチオシアナト-3,3’-ジメチルベンゾフェノン、またはビス(4-イソチオシアナトフェニル)エーテル、およびそれらのうちの2つもしくは2つより多くの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物が選択され得る1つまたは1つより多くのスルフィド連結を含む芳香族ポリイソシアネート化合物の例としては、2-イソシアナトフェニル-4-イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物が選択され得る1つまたは1つより多くのジスルフィド連結を含む芳香族ポリイソシアネート化合物の例としては、ビス(4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-6-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メトキシ-3-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、およびそれらのうちの2つまたは2つより多くの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用される場合、直鎖もしくは分岐アルキルなどの「直鎖または分岐」基の記載は、本明細書では、メチレン基またはメチル基、直鎖C2~C10アルキル基などの直鎖である基、および分岐C3~C10アルキル基などの適切に分岐している基を含むと理解される。
【0061】
好適なポリオールまたはポリチオールは、本明細書で説明される芳香族ポリイソ(チオ)シアネートと結合されるか、または重合性組成物中で重合して、ポリウレタンおよびポリチオウレタンポリマーなどのコポリマーを生成することができる。好適なポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;水素化ビスフェノールA;シクロヘキサンジオール;1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールを含むプロパンジオール;1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、および2-エチル-1,4-ブタンジオールを含むブタンジオール;トリメチルペンタンジオールおよび2-メチルペンタンジオールを含むペンタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール;1,6-ヘキサンジオールを含むヘキサンジオール;2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、カプロラクトンジオール(例えば、エプシロン-カプロラクトンとエチレングリコールとの反応生成物);ヒドロキシアルキル化ビスフェノール;ポリエーテルグリコール、例えばポリ(オキシテトラメチレン)グリコール;トリメチロールプロパン、ジ-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、ジメチロールシクロヘキサン、グリセロール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
好適なポリチオール組成物としては、少なくとも2つのチオール基を含むポリチオール化合物(A)が挙げられる。いくつかの実施形態の場合には、ポリチオール化合物(A)は、少なくとも3つのチオール基を含む。いくつかの更なる実施形態の場合には、ポリチオール化合物(A)は、記載された数を含む、2~10個のチオール基、または2~8つのチオール基、または2~6つのチオール基、または2~5つのチオール基を含む。いくつかの追加の実施形態の場合には、ポリチオール化合物(A)は、2、3、4、5、または6つのチオール基を含む。ポリチオール化合物(A)は、いくつかの実施形態の場合には、必要に応じて、0、1、2、または3つのヒドロキシル基などであるが、これらに限定されない、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。
【0063】
ポリチオール化合物(A)は、いくつかの実施形態の場合には、以下の式(A-II)で表される。
【化1】
【0064】
ポリチオール化合物(A)は、いくつかの更なる実施形態の場合には、以下の式(A-III)で表される。
【化2】
【0065】
式(A-III)を参照すると、pは、0~4であり、x、t、t’、z、およびz’は、各々独立して、各pについて0~4である。いくつかの実施形態の場合には、および式(A-III)を参照すると、pは、0~3であり、x、t、t’、z、およびz’は、各々独立して、各pについて0~3である。
【0066】
ポリチオール化合物(A)が選択され得るポリチオールの例としては、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、7-(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアシクロヘキサン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、およびそれらのうちの2つまたは2つより多くの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
ヒドロキシル基を含むポリチオール化合物(A)の例としては、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール;1,3-ジメルカプトプロパン-2-オール;2,3-ビス((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-オール;1,3-ビス((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-2-オール;3-メルカプト-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-オール;2-((2-メルカプトエチル)チオ)-3-((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;グリセリンビス(2-メルカプトアセテート);グリセリンビス(3-メルカプトプロピオネート);1,3-ジメルカプト-2-プロパノール;トリメチロールプロパンビス(2-メルカプトアセテート);トリメチロールプロパンビス(3-メルカプトプロピオネート);ペンタエリスリトールビス(2-メルカプトアセテート);ペンタエリスリトールトリス(2-メルカプトアセテート);ペンタエリスリトールビス(3-メルカプトプロピオネート);およびペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
ポリチオール化合物(A)は、いくつかの実施形態の場合には、式(A-3)~(A-8)で表される以下のポリチオール化合物:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
およびそれらのうちの2つまたは2つより多い組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される。
【0069】
ポリチオール化合物(A)を調製することができる方法は、いくつかの実施形態の場合には、ポリチオール化合物(A)の単離中に酸および/または塩基の使用を伴い得る。そのため、ポリチオール化合物(A)は、いくつかの実施形態の場合には、酸性pHまたは塩基性pHを有し得る。非限定的な例示の目的のために、HClなどの過剰な酸が使用される場合、単離されたポリチオール化合物(A)は、酸性pHを有し得る。更なる非限定的な例示の目的のために、NaOHなどの過剰な塩基が使用される場合、得られたポリチオール化合物(A)は、塩基性pHを有し得る。
【0070】
本明細書では、(i)本明細書に上述されるような芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料、および(ii)ポリチオール化合物(A)などのポリチオールまたはポリオール組成物を含む重合性組成物も提供される。芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料は、少なくとも2つのイソ(チオ)シアネート基を含む。いくつかの実施形態の場合には、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料は、2~6、または2~5、または2~4、または2または3つのイソ(チオ)シアネート基を含む。
【0071】
本明細書では、重合性組成物の重合物も提供される。重合物は、本明細書で説明される多くの態様または実施形態による重合性組成物を重合(または硬化)することによって調製される。
【0072】
重合性組成物は、重合物を形成するために、任意の好適な方法によって硬化され得る。いくつかの更なる実施形態の場合には、重合性組成物は、約25℃の室温などの周囲条件など、25℃~90℃の範囲の温度で硬化する。いくつかの更なる実施形態の場合には、重合性組成物は、(周囲の室温を超える)高温に曝露されることによって硬化する。本明細書で使用される場合、「硬化した」とは、ポリチオール組成物のチオール基と芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のイソ(チオ)シアネート基との間などの共有結合形成によって三次元架橋ネットワークが形成されることを意味する。重合性組成物が硬化する温度は変更可能であり、硬化が実施される時間量に部分的に依存する。いくつかの実施形態の場合には、重合性組成物は、20~240分の期間、90℃~204℃、または100℃~177℃、または110℃~140℃の高温で硬化する。
【0073】
本発明によれば、重合性組成物の重合物を含む光学素子も提供される。光学素子の部類としては、眼科用物品、ディスプレイ物品、窓、鏡、能動的液晶セル物品、および受動的液晶セル物品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
眼科用物品の例としては、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼球内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、およびバイザーが挙げられるが、これらに限定されない。ディスプレイ物品の例としては、スクリーン、モニター、およびセキュリティ要素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書では、説明された透過率要件を満たす本明細書で説明されるような芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料とポリチオールまたはポリオール組成物とを一緒に混合し、それによって重合性組成物を形成することを含む、成形物品を形成する方法も提供される。必要に応じて、本方法は、重合性組成物を成形型に導入することと、上記成形型内で重合性組成物を硬化させることと、を含む。
【0076】
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物およびポリチオールまたはポリオール組成物は、任意の適切な混合方法を使用して一緒に混合され得る。好適な混合方法の例としては、1つまたは1つより多くのインペラを含む混合タンクなどの適切な容器内などでのバッチ混合、静的ミキサーおよび/または押出機内などでの連続混合、成形型射出ヘッドの混合チャンバ内などでの衝突混合、ならびにそのような混合方法の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
混合によって形成した後、重合性組成物は、任意の適切な方法によって成形型に導入することができる。重合性組成物は、ビーカーまたは他の容器などからの注ぎ込み、および/または成形型射出ヘッドなどからの射出が挙げられるが、これらに限定されない、方法によって、成形型に導入することができる。いくつかの実施形態の場合には、成形型は、少なくとも1つの注入ポート、および必要に応じて、1つまたは1つより多くのガスケットを含む2部品成形型などの複数部品成形型である。
【0078】
成形型に導入した後、重合性組成物は、成形型内で硬化させることができる。「硬化した」という用語は、本明細書に前に定義された通りである。重合性組成物は、20~240分の期間、約25℃などの室温、90℃~204℃、もしくは100℃~177℃、もしくは110℃~140℃などの高温、またはそれらの任意の組み合わせで、成形型内で硬化させることができる。いくつかの実施形態の場合には、重合性組成物は、成形型内で実質的に完全に硬化する。
【0079】
いくつかの実施形態の場合には、硬化後、成形型内の重合性組成物、得られた重合物は、典型的には、成形型から取り出される。重合物は、研磨;表面洗浄;エッチングおよび/またはプラズマ処理などの表面処理;保護層、着色層、および/または反射防止層などであるが、これらに限定されない、重合物の少なくとも1つの表面上に1つまたは1つより多くの層を形成すること、ならびにそれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない、1つまたは1つより多くの追加のステップを受けることができる。
【0080】
本明細書に提示される実施例では、300nm~325nmの波長範囲内、または310nmの単一波長での光のパーセント透過率を使用して、低い起泡および黄色度指数の重合物を調製するための試料の好適性を予測する。理論に束縛されるものではないが、他の標準的な方法では検出不可能である微小な不純物が、バルク試料に対する屈折率においてわずかな差を呈し、その結果、紫外線スペクトルの選択された部分にわたってパーセント透過率が低減すると考えられる。%Tは、多様な様式で定量化することができる。一例では、異なる光学系が使用され得る。透過率値を取得するために使用される波長の選定は、本明細書で説明されるように重合されるとき、低い起泡および黄変を有するポリウレタンおよびポリチオウレタンポリマー組成物ならびに光学物品を生成することができる芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を効果的に区別するために、ある程度変更することができる。100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された石英キュベットを通る1センチメートルの光路を用いて310nmの波長で測定された、少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の試料は、透過率または吸光度の任意の等価尺度によって特定することができる。
【0081】
劣化した芳香族ポリイソ(チオ)シアネート中に見られる不純物の性質、ならびに透過率および吸光度の物理特性により、mXDI以外の芳香族ポリイソ(チオ)シアネートは、mXDIとほぼ同じ波長範囲で透過率を変化させると予想される。不純物の非限定的な例としては、ポリイソ(チオ)シアネートが水分に曝露されるときに形成される尿素およびビウレット生成物が挙げられ得る。
【0082】
本明細書における方法のために、パーセント透過率(%T)、または310nm、311nm、312nm、313nm、314nm、もしくは315nmなど、300nm~325nmの任意の波長で光の吸光度などのスペクトル特性を測定するために使用することができる任意の他の光学特性を測定することができるか、あるいは300nm~400nm、300nm~375nm、300nm~350nm、300nm~325nm、もしくは305nm~315nmなど、300nm~325nmの範囲内の任意の範囲について、または例えば、および限定されないが、305nm~320nm、306nm~318nmなどの前述のいずれかのサブ範囲については、低い黄色度指数および/もしくは起泡を有するポリウレタンおよびポリチオウレタンポリマー組成物ならびに高屈折率(例えば、η>1.6)光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を、許容不可能なほど高い黄色度指数または起泡を有するポリウレタンおよびポリチオウレタンポリマー組成物ならびに高屈折率光学物品を生成するために重合され得る芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料と効果的に区別するために使用することができる。
【0083】
「光源」は、任意の記述されたスペクトル中で光を発し、コヒーレント(例えば、レーザ)または非コヒーレント(例えば、ランプ)であり得る。本明細書における目的のために、光源は、300nm~325nmの紫外線(UV)範囲内で発光するが、より広いまたはより狭いスペクトルを生成することができる。例えば、本明細書で説明される方法のための好適なUV発光とともに、光の可視範囲の大部分をカバーする広いスペクトル光源を使用することができる。典型的な分光光度計は、本明細書で説明される方法のための透過または吸光度スペクトルを測定するために使用することができ、単一波長で、または波長の範囲にわたって測定するように構成することができる。
【0084】
本発明は、その中で多数の修正形態および変形形態が当業者には明らかであるため、以下の実施例においてより詳細に説明され、これらは例示のみを意図している。特に明記されない限り、全ての部および全てのパーセンテージは、重量によるものである。
【実施例】
【0085】
mXDIのパーセント透過率(%T)の測定
m-キシリレンジイソシアネート(mXDI)の試料を、以下の手順に従って、310nmおよび320nmでのパーセント透過率について評価した。ベースライン補正したパーセント透過率測定を、Cary 300 UV-Vis分光光度計を用いて行った。紫外線可視(UV-Vis)パーセント透過率値を、+/-0.2nmの波長精度で800~200nmの波長範囲にわたって取得した。スペクトル帯域幅および波長軸データポイント間隔を、それぞれ2.0nmおよび1.0nmに設定した。分析には、一対の適合した1cm経路長のUVグレード石英キュベットを使用した。1つ目のキュベットにイソシアネートモノマーを充填し、試料ビーム位置に配置し、2つ目に脱イオン水を充填し、器具の基準ビーム位置に配置した。各試料のパーセント透過率を、表1に記録するように、310nmおよび320nmで記録した。
【表1】
【0086】
図1は、波長に対する、試験したmXDIバッチの各々についての%T間の関係を示すグラフを提供する。このグラフは、310nm、または311nm、312nm、313nm、314nm、315nm、316nm、317nm、318nm、319nm、もしくは320nmなど、305~320nmでの%Tを使用して、許容可能な黄色度指数および起泡を生成することができるmXDIなどの芳香族ポリイソ(チオ)シアネートのバッチを識別することができることを示す。
【0087】
キャスティング手順
試料A~Fの各々を、以下の一般のキャスティング手順に従って5kgのバッチの中に配合し、実施例1~6のキャスト物品を得た。
【表2】
【0088】
最初に、表2に従って、指示されたm-キシリレンジイソシアネート(mXDI、52重量部)、二塩化ジメチルスズ(全バッチに対して110ppm)、およびZELEC(登録商標)UN(Stepan Companyから入手可能な離型剤;全バッチに対して1200ppm)を18℃に設定した10L反応器に投入した。内容物を真空下(<15トール)で30分間混合した。真空を解除し、2,3-ビス((2-メルカプトエチル)チオ)-1-プロパンチオール(42重量部、650±100ppmの水含有量を有する)を導入し、得られた均質溶液を真空下(<15トール)で、140rpmで1時間混合した。真空を解除し、窒素を導入した。40rpmでの混合を2.5時間継続した。得られた溶液を5μmのPolycap(商標)HD濾過カプセルを通して濾過し、テープで固定したガラス成形型に注入した。ガラス成形型を、直径85mm、中心の厚さ8mmを有するBase5プラノレンズを生成するように構成した。成形型をオーブンに入れ、約16時間の期間にわたって15℃から120℃まで徐々に加熱し、次いで、重合反応を完了するのに十分な時間、通常少なくとも4時間、120℃で保持した。重合完了後、成形型をオーブンから取り出し、キャストレンズを成形型から取り外した。実施例1~6の各々について合計55個のレンズを成形した。
【0089】
結果
Hunter Associates Laboratory,Incから購入したHunter UltraScan(登録商標)Pro Instrumentによって、各実施例組成物の10個のレンズのランダムな試料を黄色度指数について測定した。黄色度指数は、EasyMatchQCソフトウェアを使用することによって取得した。測定値を以下の等式によって確認し、
YI E313=100(CxX-CzZ)/Y
式中、Cxは、D65/10℃についての1.3013の標準係数であり、Czは、D65/10℃についての1.1498の標準係数である。X、Y、およびZは、各試料に関連付けられた出力値であった。平均10個の代表的な試料の平均として、結果を表3に示す。
【0090】
各キャスト組成物についての全55個のキャストレンズを、気泡について目視で検査した。次いで、レンズ内に存在し、肉眼で見える任意の気泡を、レンズの外縁から測定した。レンズの外縁の3mm以内に収容された任意の気泡は許容可能であると判断し、測定したレンズの中で外縁から3mmより遠くに見つかった任意の気泡は、中心気泡および検査不合格とみなした。3mmの縁部領域を超えて目に見える気泡を有していないレンズは、3mmの縁部に沿って気泡が存在したとしても合格とみなした。中心気泡試験の結果を、表3に示す。
【表3】
【0091】
図2は、試験したmXDIバッチについての黄色度指数と%Tとの間の関係を示すグラフを提供し、mXDIの増加した%T(例えば、310nmで少なくとも35%T、および/または320nmで少なくとも60%T)が許容可能な黄色度指数と相関していることを示す。
【0092】
本明細書で言及され、別段の指示がない限り、発行された特許および特許出願などであるが、これらに限定されない、全ての文書は、それらの全体が「参照により組み込まれる」ものとみなされるべきである。
【0093】
本実施形態は、様々な実施例を参照して説明されている。前述の実施例を読んで理解すると、修正形態および変形形態が他に生じるであろう。したがって、前述の実施例は、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ポリマー組成物を調製する方法であって、芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料と少なくとも1つのポリオールまたはポリチオールとの混合物を含む重合性組成物を重合することを含み、前記重合性組成物を調製するために使用される前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のパーセント透過率(%T)が、310nm±2nmの波長で測定され、前記混合物に添加された前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)、少なくとも40%T、または少なくとも50%T、および必要に応じて、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正され、かつ320nm±2nmの波長で測定された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60%Tを有する、方法。
(項目2)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、芳香族ジイソシアネートである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ポリオールまたはポリチオールが、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、またはそれらのうちの2つもしくは2つより多くの混合物から選択される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記重合性組成物を重合する前に、前記重合性組成物を成形型に注入して、光学物品を形成することを更に含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記光学物品が、眼科用物品である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記眼科用物品が、レンズである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記眼科用物品が、眼鏡レンズである、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記重合性組成物を重合する前に、
前記ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチのパーセント透過率を310nm±2nmで決定することと、
100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有する前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを選択することと、
前記選択されたバッチからの芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を前記ポリチオールと組み合わせて、前記重合性組成物を生成することと、を更に含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチの前記パーセント透過率を決定することが、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体試料を、310nm±2nmの波長で光を含む光源で照射することと、
310nm±2nmで%Tを測定することと、
によって実行される、項目9に記載の方法。
(項目11)
芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物とポリオールまたはポリチオール化合物との混合物を含むポリマー組成物を調製する際に使用するための重合性組成物であって、前記混合物を調製するために使用される前記ポリイソ(チオ)シアネート組成物の透過率が、310nm±2nmの波長で決定され、前記重合性組成物に添加された前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)、少なくとも40%T、または少なくとも50%T、および必要に応じて、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正され、かつ320nm±2nmの波長で測定された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で少なくとも60%Tを有する、重合性組成物。
(項目12)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、芳香族ジイソシアネートである、項目11に記載の重合性組成物。
(項目13)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、項目11に記載の重合性組成物。
(項目14)
前記ポリオールまたはポリチオールが、
4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール;
1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン;
2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;または
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンの混合物である、項目11~13のいずれか一項に記載の重合性組成物。
(項目15)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の1つまたは1つより多くのバッチの前記パーセント透過率を決定することが、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチの液体試料を、310nm±2nmの波長で光を含む光源で照射することと、
310nm±2nmで%Tを測定することと、
によって実行される、項目11~14のいずれか一項に記載の重合性組成物。
(項目16)
ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときに、低い起泡および/または低い黄色度指数(ASTM方法E313)の高屈折率光学物品を生成する芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のバッチを特定する方法であって、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の前記バッチの液体試料を、310nm±2nmで光を生成する光源で照射することと、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料を通過する前記光の透過率または吸光度値を取得することと、
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するかどうかを、前記透過率または吸光度値から決定することと
を含み、
ここで、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、ポリオールまたはポリチオールを有する重合性組成物中で重合したときにそれが低い起泡および/または低い黄色度指数の高屈折率光学物品を生成する、
方法。
(項目17)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の前記バッチを、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料のポリオールもしくはポリチオールとの共重合によって生成されたコポリマーから調製された高屈折率光学物品中に許容可能もしくは許容不可能な起泡および/または低い黄色度指数を生成するその能力に従って分類することを更に含み、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料組成物が、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での310nmの波長で少なくとも35パーセント透過率(%T)を有するとき、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料の前記バッチが、許容可能に低い起泡および/または低い黄色度指数を生成する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート材料組成物がまた、100%の単位%Tを有する水に合わせて較正された、1センチメートルの光路を有する石英キュベット内での320nmの波長で60パーセント透過率(%T)を有するとき、前記芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物の前記バッチが、許容可能に低い起泡および/または黄色度指数を生成する、項目16または17に記載の方法。
(項目19)
前記光学物品が、レンズである、項目16~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記ポリイソ(チオ)シアネートが、m-キシリレンジイソシアネートである、項目16~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記ポリオールまたはポリチオールが、
4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール;
1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン;
2,3-ビス((2-((2-メルカプトエチル)チオ)エチル)チオ)プロパン-1-オール;または
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンの混合物である、項目16~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
項目11~15のいずれか一項に記載の重合性組成物を調製することと、前記重合性組成物を成形型に導入することと、前記成形型内で前記重合性組成物を少なくとも部分的に硬化させることと、を含む、成形物品を製造する方法。