(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ドラム式回転槽を有する電気機器
(51)【国際特許分類】
D06F 39/14 20060101AFI20240403BHJP
D06F 37/10 20060101ALI20240403BHJP
D06F 37/28 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
D06F39/14 Z
D06F37/10
D06F37/28
(21)【出願番号】P 2023093633
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2019111773の分割
【原出願日】2019-06-17
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 大輔
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127517(JP,A)
【文献】特開2007-85614(JP,A)
【文献】特開昭54-6662(JP,A)
【文献】特開2011-72456(JP,A)
【文献】特開2015-59310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0135343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/14
D06F 37/10
D06F 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム式回転槽を有し、当該ドラム式回転槽を覆うドアのドア開き方向を変更可能な電気機器であって、
前記ドラム式回転槽に連通する開口部を備えた機器本体と、
左右両側のそれぞれの上部にドア側上ピン保持穴を有し、左右両側のそれぞれの下部にドア側下ピン保持穴を有するドアと、
前記機器本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、前記ドア側上ピン保持穴の上側で当該ドア側上ピン保持穴に重なる本体側上ピン保持穴を有する上ヒンジ保持部と、
前記機器本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、前記ドア側下ピン保持穴の下側で当該ドア側下ピン保持穴に重なる本体側下ピン保持穴を有する下ヒンジ保持部と、
前記本体側上ピン保持穴の上側から当該本体側上ピン保持穴に挿通され、前記ドア側上ピン保持穴に抜き取り自在に差し込まれて、前記ドアの上端を前記機器本体に対して回動可能に取り付ける上ヒンジピンと、
前記本体側下ピン保持穴と前記ドア側下ピン保持穴との両方に抜き取り自在に挿通され、前記ドアの下端を前記機器本体に対して回動可能に取り付ける下ヒンジピンと、
前記機器本体の左右両側に設けられた前記本体側上ピン保持穴の間に前記本体側上ピン保持穴よりも前方で左右に延在する部分を含んで形成され、前記ドアが前記ドラム式回転槽を覆う閉鎖状態において前記ドアの上方に位置する上延在部と、を備えていることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器であって、
前記ドアの内面側に、前記ドアが前記ドラム式回転槽を覆う閉鎖状態において前記開口部を塞ぐように突出する突出閉止部が設けられていることを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気機器であって、
前記機器本体の左右両側に設けられた前記本体側下ピン保持穴の間に前記本体側下ピン保持穴よりも前方で左右に延在する部分を含んで形成され、前記ドアが前記ドラム式回転槽を覆う閉鎖状態において前記ドアの下方に位置する下延在部をさらに備え、
前記ドアが前記ドラム式回転槽を覆う閉鎖状態において、前記ドアが前記上延在部と前記下延在部との間に挟まれるように配置されていることを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機器であって、
前記ドアの前面と、前記上延在部および前記下延在部の少なくとも一方の前面とが、同一面内に位置していることを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の電気機器であって、
前記上延在部に、当該電気機器の操作を行う操作パネルが設けられていることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式回転槽を有する電気機器に関するものであり、特にドラム式回転槽を覆うドアのドア開き方向を変更可能な電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
前開き型のドアを有するドラム式洗濯機では、設置箇所での周囲状況に合わせてドア開き方向(右開き/左開き)が選択される場合がある。このため、ドラム式洗濯機では、通常、右開きおよび左開きの2種類の製品がラインアップされて販売されている。
【0003】
しかしながら、購入時では左開きの製品であったものの、引っ越しなどで設置箇所が変わると右開きが必要になる場合もある。このような場合のために、部品の付け替えなどにより、ドア開き方向を変更できるようにしたドラム式洗濯機が提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-7827号公報
【文献】特開2004-105268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示のドラム式洗濯機では、ドア開き方向を変更するにあたって、ドアヒンジごとの付け替えが必要であり、付け替え部品が多くなっているため、その作業が煩雑となるといった問題がある。ドア開き方向の変更作業が煩雑である場合、ユーザ自身がその変更作業を行うことは困難である。また、ユーザ自身がドア開き方向の変更作業を行えたとしても、作業時にドア落下を生じさせる、もしくは、作業ミス(例えば、ビス固定された部材を付け替えた後のビスの締め忘れ)などによって作業後にドラム式洗濯機が不安全な状態になり得るといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単な作業でドア開き方向を変更することのできるドラム式回転槽を有する電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、ドラム式回転槽を有し、当該ドラム式回転槽を覆うドアのドア開き方向を変更可能な電気機器であって、前記ドラム式回転槽に連通する開口部を備えた機器本体と、左右両側のそれぞれの上部にドア側上ピン保持穴を有し、左右両側のそれぞれの下部にドア側下ピン保持穴を有するドアと、前記機器本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、前記ドア側上ピン保持穴の上側で当該ドア側上ピン保持穴に重なる本体側上ピン保持穴を有する上ヒンジ保持部と、前記機器本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、前記ドア側下ピン保持穴の下側で当該ドア側下ピン保持穴に重なる本体側下ピン保持穴を有する下ヒンジ保持部と、前記本体側上ピン保持穴の上側から当該本体側上ピン保持穴に挿通され、前記ドア側上ピン保持穴に抜き取り自在に差し込まれて、前記ドアの上端を前記機器本体に対して回動可能に取り付ける上ヒンジピンと、前記本体側下ピン保持穴と前記ドア側下ピン保持穴との両方に抜き取り自在に挿通され、前記ドアの下端を前記機器本体に対して回動可能に取り付ける下ヒンジピンと、前記機器本体の左右両側に設けられた前記本体側上ピン保持穴の間に前記本体側上ピン保持穴よりも前方で左右に延在する部分を含んで形成され、前記ドアが前記ドラム式回転槽を覆う閉鎖状態において前記ドアの上方に位置する上延在部と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気機器は、ドア開き方向を変更するときの作業を、上ヒンジピンおよび下ヒンジピンの抜き差し、およびドアの取り外し/取り付けのみによって行うことができ、その作業を簡単なものとすることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ドラム式洗濯機を斜め前方かつ斜め上方から見たときの外観を示す斜視図である。
【
図2】ドラム式洗濯機のドア取付構造を示す分解斜視図である。
【
図3】ヒンジカバーを取り外したドラム式洗濯機を示す分解斜視図である。
【
図4】ヒンジカバーを外されたドラム式洗濯機の前方左側角部を斜め上から見た拡大斜視図である。
【
図5】上ヒンジピンを抜き取ったドラム式洗濯機を示す分解斜視図である。
【
図6】(a)は上ヒンジピンを示す斜視図であり、(b)は
図4の状態から上ヒンジピンが取り外された状態のドラム式洗濯機の前方左側角部の拡大上面図である。
【
図7】ヒンジカバーを外されたドラム式洗濯機の前方左側角部を斜め上から見た拡大斜視図である。
【
図8】ドアを取り外したドラム式洗濯機を示す分解斜視図である。
【
図10】上ヒンジピンとピン抜き取り規制突起との位置関係の一例を示す平面図であり、(a)はドアが閉じている状態、(b)はドアが90°の角度で開いている状態、(c)はドアが最大角度で開いている状態を示す。
【
図11】上ヒンジピンとピン抜き取り規制突起との位置関係の他の例を示す平面図であり、(a)はドアが閉じている状態、(b)はドアが90°の角度で開いている状態、(c)はドアが最大角度で開いている状態を示す。
【
図12】
図3の変形例であり、ヒンジカバーを取り外したドラム式洗濯機を示す分解斜視図である。
【
図13】
図3の変形例であり、ヒンジカバーを取り外したドラム式洗濯機を示す分解斜視図である。
【
図14】上ヒンジピンの抜き取り時におけるドアの落下防止構造の第1具体例を示す斜視図であり、(a)はドアが閉じられた状態、(b)はドアが開かれた状態を示している。
【
図15】上ヒンジピンの抜き取り時におけるドアの落下防止構造の第2具体例を示す斜視図であり、(a)はドアが閉じられた状態、(b)はドアが開かれた状態を示している。
【
図16】ドアに設けられるドア側下ピン保持穴と、下突出部に設けられる下ヒンジピンとの関係を示す図であり、(a)はドアの一端における拡大下面図、(b)は下突出部に載せられたドアの一端における拡大上面図、(c),(d)は(b)のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態1に係るドラム式洗濯機1を斜め前方かつ斜め上方から見たときの外観を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態1に係るドラム式洗濯機1のドア取付構造を示す分解斜視図である。尚、ドラム式洗濯機1は、洗濯と乾燥とを行うことができるドラム式洗濯乾燥機と、乾燥を行わず洗濯のみを行うドラム式洗濯機とを総称したものである。また、本発明は、ドラム式回転槽を有する電気機器に適用されるものであるが、このような電気機器は、ドラム式洗濯機以外にドラム式乾燥機をも含むものである。
【0011】
ドラム式洗濯機(電気機器)1は、大略的には、洗濯機本体(機器本体)10とドア20とにより構成されており、洗濯機本体10は、内部にドラム式回転槽を有し、その前面に洗濯物投入口101を有している。ドア20は、洗濯物投入口101を覆うように洗濯機本体10の前面に設けられている。すなわち、ドア20は洗濯機本体10の前面を開閉する前開きドアとして設けられている。ドラム式洗濯機1におけるドア20は、ドア開き方向(右開きもしくは左開き)を自在に変更可能なものであるが、
図2はドア20が左開きの状態を示している。尚、以下の説明中における左側および右側は、洗濯機本体10を正面から見ての左側および右側を示している。
【0012】
本実施の形態1に係るドラム式洗濯機1では、ドア20は矩形形状のドアとされている。ドア20の内面側には、ドア20の閉鎖時に洗濯物投入口101を液密で閉じるための突出閉止部21が設けられている。また、洗濯機本体10の前面側において、ドア20の上方には上突出部(上ヒンジ保持部)11が設けられ、ドア20の下方には下突出部(下ヒンジ保持部)12が設けられている。ドア20は、その閉鎖時に上突出部11と下突出部12との間に挟まれるようにして配置されるものであり、ドア20が閉じられた状態では、ドア20、上突出部11および下突出部12の前面が同一面内に存在する(ドラム式洗濯機1の前面が、ドア20、上突出部11および下突出部12によってフラットとなる)。
【0013】
ドア20は、左右の何れかの一端側で上下2つのヒンジによって洗濯機本体10に対して回動自在に軸支されている。これらのヒンジにおけるヒンジ軸受は、上突出部11および下突出部12の内部に存在する。また、ドア20は、ドア開き方向を変更するときに、ヒンジピン(上ヒンジピン31および下ヒンジピン35)の差し替えのみでドア開き方向の変更が可能となっている。以下、ドア20の取り付け構造、およびドア開き方向を変更するときの作業手順について
図3~
図9を参照して具体的に説明する。
【0014】
図3は、ヒンジカバー30を取り外したドラム式洗濯機1を示す分解斜視図である。
図3に示すように、ドラム式洗濯機1において、上突出部11の上面前方にはヒンジカバー30が設けられており、ドア20のドア開き方向を変更する場合、最初にヒンジカバー30を取り外す。
【0015】
図4は、ヒンジカバー30を外されたドラム式洗濯機1の前方左側角部を斜め上から見た拡大上面図である。尚、
図4では、ドア20は閉じられた状態となっている。
図4に示すように、ドラム式洗濯機1からヒンジカバー30を取り外すことで、ドラム式洗濯機1の上面において、上ヒンジピン31が外部に露出する。尚、ドア20が左開きであるとき、上ヒンジピン31は左側にのみ取り付けられており、右側では上ヒンジピン31を差し込むための本体側上ピン保持穴32(
図3参照)が露出している。
【0016】
上ヒンジピン31は、上突出部11に設けられた本体側上ピン保持穴32およびドア20に設けられたドア側上ピン保持穴33(
図2参照)の両方に挿通するように差し込まれている。すなわち、ドア20の上端側のヒンジは、上ヒンジピン31をヒンジ軸とし、本体側上ピン保持穴32をヒンジ軸受としている。本体側上ピン保持穴32およびドア側上ピン保持穴33は、ドラム式洗濯機1において左右両側に対称に設けられている。
【0017】
続いて、
図5に示すように、露出した上ヒンジピン31を上方に抜き取る。
図5は、上ヒンジピン31を抜き取ったドラム式洗濯機1を示す分解斜視図である。ドラム式洗濯機1において、上ヒンジピン31は、ドア20が開かれた状態でのみ抜き取り可能な構成とすることが好ましい。これは、ドア20が閉じられた状態で上ヒンジピン31の抜き取りが可能であれば、ドラム式洗濯機1の運転中にも上ヒンジピン31の抜き取りが可能となるためである。ドア20が開かれた状態でのみ上ヒンジピン31の抜き取りを可能とすれば、ドラム式洗濯機1の運転中に上ヒンジピン31が抜き取られることを確実に防止できる。これは、ドラム式洗濯機1の運転中は、ドアロックによりドア20を開くことができないためである。さらに、ドア20が閉じられた状態での上ヒンジピン31の抜き取りを不可とすることで、ドラム式洗濯機1の運転中に生じる振動などで上ヒンジピン31が抜け落ちることも防止できる。
【0018】
具体的には、上ヒンジピン31は、
図6(a)に示すように、上端に上Dカット部(ピン係止部)311、下端に下Dカット部312が形成されている。ドア20には、
図6(b)に示すように、上ヒンジピン31を差し込むドア側上ピン保持穴33の底部に、上ヒンジピン31の下Dカット部312と嵌合するDカット穴331が形成されている。上ヒンジピン31がドア側上ピン保持穴33に差し込まれている状態では、下Dカット部312がDカット穴331に嵌合することにより、上ヒンジピン31はドア20と一体的に回動する。言い換えれば、ドア20と上ヒンジピン31とは、上ヒンジピン31の軸周り方向に相互に位置決めされる。
【0019】
一方、洗濯機本体10側では、上突出部11における本体側上ピン保持穴32の近傍にピン抜き取り規制突起(保持係止部)34が設けられている。ピン抜き取り規制突起34は、上突出部11の左右両側に設けられており、本体側上ピン保持穴32側に向かって突出するように配置されている。そして、ドア20が閉じられた状態では、
図4に示すように、上ヒンジピン31における上Dカット部311の一部がピン抜き取り規制突起34と平面視において重畳(ピン抜き取り規制突起34が上側)するものとなる。このため、ドア20が閉じられた状態で上ヒンジピン31を抜き取ろうとした場合、上ヒンジピン31の上Dカット部311がピン抜き取り規制突起34に当接し、上ヒンジピン31を抜き取ることはできない。これに対し、ドア20が開かれた状態では、
図7に示すように、上ヒンジピン31の上Dカット部311がピン抜き取り規制突起34と重畳せず、上ヒンジピン31の抜き取りが可能となる。
【0020】
上ヒンジピン31が抜き取られると、
図8に示すように、ドア20を洗濯機本体10から取り外すことができる。
図8はドア20を取り外したドラム式洗濯機1を示す分解斜視図である。
【0021】
上ヒンジピン31を抜き取った後は、ドア20の上端を上突出部11よりも外方もしくは前方へ抜き出してから持ち上げることで、ドア20を洗濯機本体10から取り外すことができる。
図8に示すように、ドア20を取り外すことで下突出部12の上面に下ヒンジピン35が露出する。また、下突出部12の上面には下ヒンジピン35を差し込むための本体側下ピン保持穴36が左右両側に設けられており、ドア20が左開きであるとき、下ヒンジピン35は左側にのみ取り付けられている。すなわち、ドア20の下端側のヒンジは、下ヒンジピン35をヒンジ軸とし、本体側下ピン保持穴36をヒンジ軸受としている。ドア20の下面においては、
図9に示すように、下ヒンジピン35を差し込むためのドア側下ピン保持穴37が左右両側に設けられている。
【0022】
ドア20を取り外した後は、下ヒンジピン35および上ヒンジピン31の取り付け位置を左右入れ替えたうえで、上記説明と逆の手順でドア20を洗濯機本体10に取り付けることで、ドア20のドア開き方向を変更することができる。
【0023】
すなわち、上記例のように左開きから右開きへの変更を行う場合は、左側の本体側下ピン保持穴36に差し込まれている下ヒンジピン35を右側の本体側下ピン保持穴36に付け替え、下ヒンジピン35にドア側下ピン保持穴37を差し込むようにしてドア20を取り付ける。そして、右側の本体側上ピン保持穴32およびドア側上ピン保持穴33の両方に挿通するように上ヒンジピン31を差し込む。最後に、取り外していたヒンジカバー30を再び取り付けることで、ドア20の開き方向の変更作業が完了する。
【0024】
以上のように、本実施の形態1に係るドア20の取り付け構造では、ドア20の開き方向を変更するときの作業(但し、ヒンジカバー30の取り外し/取り付け工程は除く)を、上ヒンジピン31および下ヒンジピン35の抜き差し、およびドア20の取り外し/取り付けのみによって行うことができる。この作業では、ドアヒンジごとの付け替えは不要であり、付け替え部品も少ないため、その作業はユーザでも行える簡単なものとなる。
【0025】
また、付け替えの際に一旦取り外すことが必要となる部品(上ヒンジピン31、下ヒンジピン35、およびドア20)において、ビス固定されているものも存在しない。このため、作業ミス(ビス固定された部材を付け替えた後のビスの締め忘れ)によって作業後にドラム式洗濯機1が不安全な状態になることもない。尚、ヒンジカバー30が洗濯機本体10にビス固定されるものであったとして、ヒンジカバー30自体はヒンジの構成部品ではないため、ヒンジカバー30の固定用ビスの締め忘れによってドラム式洗濯機1が不安全な状態になることはない。
【0026】
上記説明では、上ヒンジピン31は、ドア20が開かれた状態でのみ抜き取り可能な構成とすることを説明した。このため、上述のドラム式洗濯機1は、本体側上ピン保持穴32の近傍にピン抜き取り規制突起34を設けており、ピン抜き取り規制突起34の先端は本体側上ピン保持穴32に向かって突出するように配置されている。
【0027】
ここで、
図10は、本体側上ピン保持穴32に挿入された上ヒンジピン31とピン抜き取り規制突起34との位置関係の一例を示す平面図であり、(a)はドア20が閉じている状態、(b)はドア20が90°の角度で開いている状態、(c)はドア20が最大角度で開いている状態を示す。尚、
図10の例は、ピン抜き取り規制突起34の先端エッジ34aが直線状である場合を示している。
【0028】
図10(a)に示すように、ドア20が閉じられた状態では、上ヒンジピン31がピン抜き取り規制突起34と重畳するため、上ヒンジピン31は抜き取り不可である。一方、
図10(b)に示すように、ドア20が開かれた状態では、上ヒンジピン31がピン抜き取り規制突起34と重畳しないため、上ヒンジピン31は抜き取り可能である。但し、この場合、上ヒンジピン31を抜き取り可能なドア20が開かれた状態とは、ドア20がほぼ90°の角度で開かれている状態のみを指す。実際には、ドア20の開放時の最大角度は90°以上(例えば100°)であり、
図10(c)に示すように、ドア20が最大角度で開かれた状態では、上ヒンジピン31の一部がピン抜き取り規制突起34と重畳して上ヒンジピン31は抜き取り不可となる。このため、
図10に示すピン抜き取り規制突起34の形状では、ドア20の開き方向の変更作業において作業性が悪くなる。
【0029】
図11は、本体側上ピン保持穴32に挿入された上ヒンジピン31とピン抜き取り規制突起34との位置関係の他の例を示す平面図であり、(a)はドア20が閉じている状態、(b)はドア20が90°の角度で開いている状態、(c)はドア20が最大角度で開いている状態を示す。尚、
図11の例では、ピン抜き取り規制突起34の先端エッジ34aに斜めの切欠き34bが設けられている。
【0030】
図11に示すピン抜き取り規制突起34の形状では、
図11(a)に示すように、ドア20が閉じられた状態では、上ヒンジピン31がピン抜き取り規制突起34と重畳するため、上ヒンジピン31は抜き取り不可である。一方、
図11(b),(c)に示すように、ドア20が開かれた状態では、ドア20の角度が90°であっても最大角度(例えば100°)であっても、上ヒンジピン31がピン抜き取り規制突起34と重畳せず、上ヒンジピン31は抜き取り可能である。すなわち、
図11に示すピン抜き取り規制突起34の形状では、ドア20の角度が90°から最大角度までの何れの状態でも上ヒンジピン31の抜き取りが可能であり、ドア20の開き方向の変更作業において作業性が向上する。
【0031】
本実施の形態1に係るドラム式洗濯機1では、左右何れかの本体側上ピン保持穴32に上ヒンジピン31が挿入されている否かを検知するセンサ(近接センサなど)を設けていてもよい。これにより、万一、ユーザが上ヒンジピン31の差し込みを忘れた場合には、上記センサの検知に基づいて警告(アラームや警告メッセージなど)を発することができる。尚、上述したドア開き方向の変更作業は、安全のためにドラム式洗濯機1の主電源をオフした状態で行うことが好ましく、ドラム式洗濯機1の主電源がオフされていれば、変更作業のために上ヒンジピン31が抜き取られてもドラム式洗濯機1は警告を発しない。そして、ドラム式洗濯機1の主電源がオンされた時点で、上ヒンジピン31の差し込み忘れがあれば警告が発される。また、ユーザがドラム式洗濯機1の主電源がオンのままで変更作業を行おうとした場合には、上ヒンジピン31を抜き取った時点で警告が発されるため、主電源がオン状態での変更作業を抑制することもできる。
【0032】
尚、上記説明では、ドア20のドア開き方向を変更する場合、最初にヒンジカバー30を取り外すことを説明した。また、
図3では、ヒンジカバー30は上突出部11の上面前方を全体的に覆う1つの部材とされていた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば
図12および
図13に示すように、ヒンジカバーは上突出部11の上面前方における左右端部をそれぞれ覆う2つのヒンジカバー30’や30”とされていてもよい。
【0033】
図12および
図13に示す構成では、例えば、上突出部11の前面に操作パネルが設けられている場合(すなわち、操作パネルの後方に上端側のヒンジが配置されている場合)などに、操作パネルを取り外すことなく、ヒンジカバー30’や30”のみを取り外してドア開き方向の変更作業を行うことができる。また、
図13に示す構成では、ヒンジピン31の挿抜がより容易となる。
【0034】
〔実施の形態2〕
洗濯機においては、動作中にドアや蓋が開放されることを防止するため、ドアロックや蓋ロックが必要である。当然ながら、ドラム式洗濯機1においてもドアロックは設けられている。通常、前開き型のドアを有するドラム式洗濯機において、ドアロックは、ドアヒンジと反対側の端部(開放側端部)に設けられる。このような場合、ドア開き方向を変更すれば、それに伴ってドアロック位置の変更(ドアロックの左右付け替え)が必要となる。ドアロック位置を変更できるドラム式洗濯機自体は公知であるが、ドアロック位置の変更はドア開き方向の変更以上にユーザにとって煩雑な作業である。
【0035】
本実施の形態2に係るドラム式洗濯機1は、ドア20のドア開き方向を変更した場合に、これに伴う煩雑なドアロック位置の変更作業を省略できるものである。
【0036】
第1の具体例としては、ドア20の左右両側のそれぞれに計2つのドアロックを設けることが考えられる。この例では、左開きまたは右開きの何れにおいても、ドア20の開放側端部にドアロックが存在するため、確実なロック効果を得ることができる。
【0037】
第2の具体例としては、ドア20の左右方向中央部(より具体的には洗濯物投入口101の上側もしくは下側)に、1つのドアロックを設けることが考えられる。この例では、1つのドアロックをドア開き方向に関わらず同じように使用できるため、第1の具体例に比べてコスト面で有利となる。
【0038】
〔実施の形態3〕
実施の形態1で説明したように、上ヒンジピン31は、ドラム式洗濯機1の運転中の抜き取りを防止できるように、ドア20が開かれた状態でのみ抜き取り可能な構成とすることが好ましい。この場合、ドラム式洗濯機1は、上ヒンジピン31が抜き取られたときに、ドア20が自重によって落下することを防止する構造を有していることが好ましい。本実施の形態3では、上ヒンジピン31の抜き取り時におけるドア20の落下防止構造について説明する。
【0039】
第1具体例としては、
図14に示すように、ドア20の下方、かつ、下突出部12の上方に、それぞれがドア20のヒンジ軸と同軸上の回動軸を有する2つのサポートバー40をドア落下防止部材として左右両側に配置することが考えられる。この例では、上ヒンジピン31を抜き取るときには、一方のサポートバー40をドア20と同様に回動させ、開かれたドア20の直下にサポートバー40を位置させる。例えば、左開きのドア20において上ヒンジピン31を抜き取るときには、左側のサポートバー40をドア20と同じように回動させる。
【0040】
上ヒンジピン31が抜き取られてドア20の上端の支持が無くなると、ドア20は、自重によって先端側が下がるように傾斜する。第1の具体例では、傾斜したドア20はサポートバー40の上に載って支持されるため、ドア20が自重によって落下することを防止できる。
【0041】
第2具体例としては、
図15に示すように、下突出部12を2枚の下突出パネル121にて構成し、これらの下突出パネル121をドア落下防止部材とすべく観音開きのカバー構造とすることが考えられる。そして、左右それぞれの下突出パネル121が、ドア20のヒンジ軸と同軸上の回動軸を有するものとする。この例では、上ヒンジピン31を抜き取るときには、一方の下突出パネル121をドア20と同様に回動させ、開かれたドア20の直下に下突出パネル121を位置させる。例えば、左開きのドア20において上ヒンジピン31を抜き取るときには、左側の下突出パネル121をドア20と同じように回動させる。
【0042】
これにより、上ヒンジピン31が抜き取られてドア20の上端の支持が無くなり、ドア20の先端側が自重によって下がるように傾いても、傾斜したドア20は下突出パネル121の上に載って支持される。このため、ドア20が自重によって落下することを防止できる。
【0043】
尚、第2の具体例では、一方(
図15の例では左側)の下突出パネル121を、排水フィルター50のカバーとして兼用することも可能である。
【0044】
〔実施の形態4〕
本実施の形態4では、上ヒンジピン31の抜き取り時におけるドア20の落下防止構造の他の例について説明する。
図16は、ドア20に設けられるドア側下ピン保持穴37と、下突出部12に設けられる下ヒンジピン35との関係を示す図であり、(a)はドア20の一端における拡大下面図、(b)は下突出部12に載せられたドア20の一端における拡大上面図、(c),(d)は(b)のA-A断面図である。
【0045】
図16(a)に示すように、ドア20に設けられるドア側下ピン保持穴37は、ドア20の下面では下ヒンジピン35に合わせた円形とされているが、内部はドア20の厚さ方向に拡がった断面長穴状の空間を有している。そして、ドア20下面の円形は内部の長穴の一端側に寄せられて形成されている。
【0046】
このため、
図16(b)に示すように、ドア側下ピン保持穴37に下ヒンジピン35が挿入されているとき、下ヒンジピン35はドア側下ピン保持穴37の内部の長穴に対して一端側に寄せられるような配置となる。具体的には、ドア20が開かれている状態では、下ヒンジピン35はドア側下ピン保持穴37の外側(左右方向の外側)に寄っており、下ヒンジピン35の内側ではドア側下ピン保持穴37との間に空間が生じている。
【0047】
ドア20が開かれている状態で上ヒンジピン31を抜き取るとき、ドア20は上端の支持を失って倒れやすくなる。このとき、ドア20は、内面側に突出閉止部21(
図2参照)を有しているため、ドア20の自重によっては内側に倒れようとする。
【0048】
しかしながら、ドア20が自重によっては内側(左右方向の内側)に倒れようとする場合、
図16(c)に示すように、ドア側下ピン保持穴37の外側内壁に接触した下ヒンジピン35がストッパーとなり、ドア20は倒れにくい(傾斜しにくい)状態となる。このようにしてドア20の自重による傾斜が抑制されることで、結果的にドア20の落下も抑制できる。
【0049】
一方、上ヒンジピン31を抜き取った後、ドア20を取り外すときには、
図16(d)に示すように、ドア20を外側に傾ければよい。すなわち、下ヒンジピン35はドア側下ピン保持穴37の内側内壁とは接触していないため、ドア20を外側に傾ける場合には下ヒンジピン35がストッパーとならない。このため、ユーザは、ドア20を外側に容易に傾けることができ、傾けたドア20を容易に上方に抜き取ることができる。
【0050】
尚、ドア側下ピン保持穴37は、ドア20の下面でも内部と同様に長穴状としてもよい。この場合は、
図16(d)に示すようにドア20を外側に傾け、そのまま傾けた方向にドア20を抜き取ることができるため、より容易にドア20の挿抜が可能となる。
【0051】
以上のように、上記実施の形態に係るドラム式洗濯機は、ドア開き方向を変更可能なドラム式洗濯機であって、洗濯機本体と、左右両側のそれぞれの上部にドア側上ピン保持穴を有し、左右両側のそれぞれの下部にドア側下ピン保持穴を有するドアと、前記洗濯機本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、前記ドア側上ピン保持穴の上側で当該ドア側上ピン保持穴に重なる本体側上ピン保持穴を有する上ヒンジ保持部と、前記洗濯機本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、前記ドア側下ピン保持穴の下側で当該ドア側下ピン保持穴に重なる本体側下ピン保持穴を有する下ヒンジ保持部と、前記本体側上ピン保持穴の上側から当該本体側上ピン保持穴に挿通され、前記ドア側上ピン保持穴に抜き取り自在に差し込まれて、前記ドアの上端を前記洗濯機本体に対して回動可能に取り付ける上ヒンジピンと、前記本体側下ピン保持穴と前記ドア側下ピン保持穴との両方に抜き取り自在に挿通され、前記ドアの下端を前記洗濯機本体に対して回動可能に取り付ける下ヒンジピンと、を備えていることを特徴としている。
【0052】
上記の構成によれば、ドア開き方向を変更するときの作業を、上ヒンジピンおよび下ヒンジピンの抜き差し、およびドアの取り外し/取り付けのみによって行うことができる。この作業では、ドアヒンジごとの付け替えは不要であり、付け替え部品も少ないため、その作業をユーザでも行える簡単なものとすることができる。
【0053】
また、付け替えのために一旦取り外すことが必要となる部品(上ヒンジピン、下ヒンジピン、およびドア)において、ビス固定されているものも存在しないため、作業ミス(ビスの締め忘れ)によって作業後にドラム式洗濯機が不安全な状態になることも防止できる。
【0054】
また、上記ドラム式洗濯機では、前記上ヒンジ保持部は、保持係止部を有しており、前記上ヒンジピンは、ピン係止部を有しており、前記上ヒンジピンが前記ドア側上ピン保持穴に差し込まれた状態で、前記ドアと前記上ヒンジピンとは、前記上ヒンジピンの軸周り方向に相互に位置決めされ、前記ドアの前記洗濯機本体に対する閉状態では、平面視で、前記ピン係止部が前記保持係止部に重なり、前記上ヒンジピンが抜き取り不可となる一方、前記ドアの前記洗濯機本体に対する開状態では、平面視で、前記ピン係止部が前記保持係止部に重ならず、前記上ヒンジピンが抜き取り可能となる構成とすることができる。
【0055】
上記の構成によれば、上ヒンジピンは、ドアが開かれた状態でのみ抜き取り可能となるため、ドラム式洗濯機の運転中に上ヒンジピンが抜き取られることや、ドラム式洗濯機の運転中に生じる振動などで上ヒンジピンが抜け落ちることを防止できる。
【0056】
また、上記ドラム式洗濯機では、前記ドアは、左右両側のそれぞれにドアロックを有している構成とすることができる。
【0057】
上記の構成によれば、ドア開き方向を変更した場合に、これに伴う煩雑なドアロック位置の変更作業を省略することができる。また、この場合、ドアが左開きまたは右開きの何れの場合においても、ドアの開放側端部にドアロックが存在するため、確実なロック効果を得ることができる。
【0058】
また、上記ドラム式洗濯機では、前記ドアは、左右方向の中央部に1つのドアロックを有している構成とすることができる。
【0059】
上記の構成によれば、ドア開き方向を変更した場合に、これに伴う煩雑なドアロック位置の変更作業を省略することができる。また、この場合、1つのドアロックをドア開き方向に関わらず同じように使用できるため、コスト面で有利となる。
【0060】
また、上記ドラム式洗濯機は、前記ドアの下方に、当該ドアのヒンジ軸と同軸上の回動軸を有するドア落下防止部材が、左右両側のそれぞれに配置されている構成とすることができる。
【0061】
上記の構成によれば、上ヒンジピンが抜き取られてドアの上端の支持が無くなるとき、自重によって先端側が下がるように傾斜したドアを、ドア落下防止部材の上に載せて支持することができる。これにより、ドアが自重によって落下することを防止できる。
【0062】
また、上記ドラム式洗濯機では、前記ドア側下ピン保持穴および前記下ヒンジピンは、前記ドアが開かれている状態で前記上ヒンジピンが抜き取られたとき、前記ドアが内側に倒れることを抑制し、前記ドアが外側に倒れることを抑制しない構造とすることができる。
【0063】
上記の構成によれば、ドアが開かれている状態で上ヒンジピンを抜き取るとき、ドアの自重によって倒れやすい内側へは、ドア側下ピン保持穴および下ヒンジピンによってドアが倒れることを抑制できる。一方、ドアを洗濯機本体から取り外すために傾けるときには、ドアを外側に傾ければよい。
【0064】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 ドラム式洗濯機(電気機器)
10 洗濯機本体(機器本体)
101 洗濯物投入口
11 上突出部(上ヒンジ保持部)
12 下突出部(下ヒンジ保持部)
121 下突出パネル(ドア落下防止部材)
20 ドア
21 突出閉止部
30,30’ ヒンジカバー
31 上ヒンジピン
311 上Dカット部(ピン係止部)
312 下Dカット部
32 本体側上ピン保持穴
33 ドア側上ピン保持穴
331 Dカット穴
34 ピン抜き取り規制突起(保持係止部)
35 下ヒンジピン
36 本体側下ピン保持穴
37 ドア側下ピン保持穴
40 サポートバー(ドア落下防止部材)
50 排水フィルター