(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】無溶剤型ハードコート樹脂組成物及びこれを用いた光学積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20240403BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20240403BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20240403BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C09D4/02
C08F220/26
C08F220/20
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2023125221
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優介
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136737(JP,A)
【文献】特開2012-107225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート(A)と、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(B)の配合量が固形分全量に対し15~70重量%であ
り、前記(C)がα-ヒドロキシアセトフェノン系であることを特徴とする無溶剤型ハードコート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)がグリセリンポリ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及び
ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される(メタ)アクリレートの誘導体を含むことを特徴とする請求項1記載の無溶剤型ハードコート樹脂組成物。
【請求項3】
プラスチック基材の少なくとも片面に、請求項1
又は2いずれか記載の無溶剤型ハードコート樹脂組成物の硬化層が形成された光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希釈溶剤を含まない無溶剤型のハードコート樹脂組成物、及びこれを用いた光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化性樹脂は、プラスチックフィルムやプラスチック成形物表面に機能性を付与するために多くの分野で使用されている。例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布して、高硬度を付与したハードコート(以下HCという)フィルムは、タッチパネル用フィルムや成形用フィルムとして大量に使用されている。
【0003】
こうしたHC樹脂組成物は一般的に高粘度であることが多く、塗工性を改善するため、溶剤で希釈されて使用される場合が多かった。しかしながら、このような溶剤を含む組成物は、塗工後に溶剤を揮散させるため、環境への負荷が大きく、また乾燥炉では大きなエネルギーを消費していた。更に無溶剤型は溶剤型に比較して、密着性促進のため形成された易接着への浸透、膨潤効果が低く、密着性が不十分になりやすいという傾向もあった。
【0004】
こうした問題に対応する無溶剤型のHC用硬化性組成物として、例えば特定構造のウレタン(メタ)アクリレート構造と、多官能化合物と、単官能化合物と、シリコーン化合物と、光ラジカル開始剤を含む組成物が提案されている(特許文献1)。こうした無溶剤型HC剤を用いることで、環境への負荷や、乾燥時のエネルギーロスの問題は解決できるようになってきているが、HCフィルムとして要求される外観、硬化性、耐擦傷性等の諸特性については、一長一短があり、これらの物性を平均的にバランスよくクリアできる組成物は殆どなく、特に屈曲性については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、無溶剤型でありながら塗工外観が安定し、良好な耐擦傷性と共に優れた屈曲性を有するHC樹脂組成物、及びその硬化層が形成された光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート(A)と、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(B)の配合量が固形分全量に対し15~70重量%であり、前記(C)がα-ヒドロキシアセトフェノン系であることを特徴とする無溶剤型ハードコート樹脂組成物を提供する。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記(A)がグリセリンポリ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される(メタ)アクリレートの誘導体を含むことを特徴とする請求項1記載の無溶剤型ハードコート樹脂組成物を提供する。
【0009】
また請求項3記載の発明は、プラスチック基材の少なくとも片面に、請求項1又は2いずれか記載の無溶剤型ハードコート樹脂組成物の硬化層が形成された光学積層体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、無溶剤型でありながら塗工外観が安定し、良好な耐擦傷性と共に優れた屈曲性を有するため、HCフィルム等に用いる無溶剤型のHC樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の組成物の構成は、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート(A)と、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。また無溶剤とは、HC樹脂組成物中に希釈を目的として意図的に溶剤を配合することを除くことであり、HC樹脂組成物の各成分に微量に含まれる揮発成分までをも除くことは意味せず、その溶剤含有量としては5重量%以下、典型的には1重量%以下を指す。
【0014】
本発明で使用されるアルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート(A)は、骨格中にアルキレンオキサイドのブロック構造を有する、硬化皮膜を構成する主要成分である。アルキレンオキサイド変性しているため低粘度で、反応性官能基であるアクリロイル基同士が一定の距離を保てるため、架橋密度が過度に高くならず、塗膜に残留する内部応力や硬化収縮を低減できる。そのため、基材の密着性と塗膜強度の良好なバランスをとることができ、結果として可撓性も付与された硬化皮膜を形成できる。
【0015】
アルキレンオキサイド変性としては、例えばエチレンオキサイド(以下EOという)変性、プロピレンオキサイド(以下POという)変性、ブチレンオキサイド(以下BOという)変性が挙げられる。アルキレンオキサイド変性の平均付加数は2~15が好ましく、3~12が更に好ましい。2以上とすることで耐擦傷性と屈曲性の向上が期待でき、15以下とすることで適度な粘度に調整しやすくなる。
【0016】
前記(A)としては、例えばEO変性グリセリンポリ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンポリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、及びこれらのPO変性物、BO変性物等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、粘度、硬化性、入手性の点でEO変性物が好ましい。また屈曲性と耐擦傷性でバランスが取れている点で、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート(以下DGTAという)、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHAという)、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(以下TMPTAという)が特に好ましい。
【0017】
前記(A)の配合量は、固形分全量に対し20~80重量%が好ましく、25~70重量%が更に好ましく、35~60重量%が特に好ましい。20重量%以上とすることで十分な屈曲性と耐擦傷性を確保することができ、80重量%以下とすることで十分な塗工性と安定した外観を確保することができる。
【0018】
本発明で使用されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート(B)は、(A)を希釈する反応性希釈剤として配合する。酸素による重合阻害がなく良好な希釈性を有するカチオン重合性のビニルエーテル基と、(A)との良好な相溶性と反応性を有する(メタ)アクリロイル基を併せ持つモノマーであり、例えば下記一般式(1)で表すことができる。
CH2=CR1-CO-(OCHR2CHR3)n-O-CH=CHR4 ・・・(1)
(式中、R1、R4は水素原子又はメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は有機残基を示し、nは2以上の整数を表す。)
【0019】
前記(B)としては、例えば(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)プロピル、アクリル酸2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシエトキシ)エチル等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、特に低粘度で希釈能力が高く、硬化性にも優れるアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0020】
前記(B)の配合量は、固形分全量に対し15~70重量%であり、20~65重量%が好ましく、25~60重量%が更に好ましく、30~55重量%が特に好ましい。15重量%未満では塗工性が低下し、外観が安定しない場合があり、70重量%超では十分な耐擦傷性を確保できない場合がある。
【0021】
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシフェノン系を配合することが好ましく、酸素による重合阻害を受けにくく表面硬化性に優れる2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンが更に好ましい。
【0022】
前記(C)の配合量は、ラジカル重合性成分100重量部に対して、0.5~10重量部配合することが好ましく、2~8重量部が更に好ましい。0.5重量部以上とすることで充分な硬化性が発現し、10重量部以下とすることで過剰添加とならず塗膜の黄変や保存性低下を防ぐことができる。市販品としてはOmnirad127(商品名:IGM Resins社製、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)等が挙げられる。
【0023】
更に加えて本組成物には必要に応じ、性能を損なわない範囲で反応性希釈剤、表面調整剤、光安定剤、重合禁止剤、湿潤剤、酸化防止剤、硬化助剤、シランカップリング剤、可塑剤、増感剤、消泡剤、難燃剤、無機フィラー、有機微粒子、顔料や染料や色素などの着色剤、抗菌、抗ウィルス剤などの添加剤を併用することができる。
【0024】
前記反応性希釈剤は、組成物の粘度低減と共に硬化性を向上させる目的で配合する。低粘度で(A)及び(B)との相溶性に優れる点で、多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。例えば4官能ではジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートが、5官能ではジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが、6官能ではジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では硬化性の向上により良好な耐擦傷性を得られる点でDPHAが好ましい。
【0025】
前記反応性希釈剤の配合量としては、固形分全量に対し25重量%以下が好ましく、20重量部以下が更に好ましく、15重量%以下が特に好ましい。25重量%以下とすることで、十分な屈曲性を確保しつつ、耐擦傷性を向上させることが可能となる。
【0026】
前記表面調整剤は、塗工後のレベリング性向上や防汚性(防指紋性)と撥水性を付与する目的で配合する。硬化後の皮膜から経時的に欠落することがなく、効果を長期的に持続させることが可能である点で、(A)や(B)と重合反応する反応性官能基を有しているフッ素系、シリコーン系、フッ素シリコーン系であることが好ましい。
【0027】
本発明のHC樹脂組成物を塗布するプラスチック基材としては、トリアセチルセルロースフィルム、PETフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン(コ)ポリマーフィルム、ポリオレフィンフィルム(PP、PE等)及びこれらの複合フィルムが例示できる。これらの中では価格、加工性、寸法安定性などの全体的なバランスが良好な点から二軸延伸処理されたPETフィルムが好ましく用いられる。
【0028】
本発明のHC樹脂組成物を塗工する方法は、特に制限はなく、フィルムやシートの様な平面形状のものには、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などを利用でき、成形物のように平面形状ではなく凹凸面があるものに対してはスプレー塗布方法が有用である。またこの方法は平面形状に対しても、大きな設備投資をする事なく広い面積を塗布することができる方法として優れている。
【0029】
本発明のHC樹脂組成物の塗工膜厚としては、乾燥時で0.5μm~50μmを例示できるが、これに限定されるものではない。但しプラスチック基材へ塗工する場合は、硬化収縮による反りを防ぐ目的で1~10μmであることが好ましい。
【0030】
本発明のHC樹脂組成物を塗工した後は、紫外線照射機を用いて硬化させる。紫外線を照射する場合の光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプ、LEDランプなどがあげられ、硬化条件としては100mW/cm2~3000mW/cm2の照射強度で、積算光量として50~2,000mJ/cm2が例示される。また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよいが、酸素による硬化阻害を防ぐためには不活性ガス中での硬化が好ましい。
【0031】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお配合量は重量部を示し、表記が無い場合は、室温25℃相対湿度65%の条件下で測定した。
【0032】
実施例1
前記(A)としてM-460(商品名:東亞合成社製、EO変性(変性数4)DGTA)を、(B)としてVEEA(商品名:日本触媒社製、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル)を、(C)としてOmnirad127(商品名:IGM Resins社製、α-ヒドロキシフェノン系)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例1のHC樹脂組成物を調製した。
【0033】
実施例2~8
前記(A)としてA-DPH-12E(商品名:新中村化学工業社製、EO変性(変性数12)DPHA)及びSR454NS(商品名:SARTOMER社製、EO変性(変性数3)TMPTA)を、反応性希釈剤としてM-940(商品名:東亞合成社製、DPHA)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例2~8のHC樹脂組成物を調製した。
【0034】
比較例1~5
実施例で用いた材料の他、(A)に代わるモノマーとしてA-TMMT(商品名:新中村化学工業社製、ペンタエリスリトールテトラアクリレート)及びM-309(商品名:東亞合成社製、TMPTA)を用い、表2記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し比較例1~5のHC樹脂組成物を調製した。
【0035】
【0036】
【0037】
評価方法は以下の通りとした。
【0038】
評価用HCフィルムの作成
上記で調製したHC樹脂組成物を用い、A4300(商品名:東洋紡社製、厚さ50μmのPETフィルム)に乾燥膜厚が4μmとなるように塗工し、FUSION社製の無電極UVランプを用いHバルブで出力600mW/cm2、積算光量が150mJ/cm2(365nm)となる様に紫外線照射し、評価用HCフィルムを作成した。
【0039】
粘度:東機産業製のブルックフィールド型粘度計TVB-10を用い、25±1℃で、ローターNoがM1、回転数は60rpmにより1分後の粘度を測定した。
【0040】
塗工性:上記評価用HCフィルムの作成時において、外観を目視で確認し、高粘度による塗工ムラや塗工スジが無い場合を◎、レベリング性が完全ではないもののほぼ良好な場合を〇、レベリング性が完全でなく塗工スジが若干判る場合を△、塗工スジがはっきりと判りレベリング性が悪い場合を×とした。
【0041】
硬化性:上記評価用HCフィルムの作成時において、紫外線硬化直後の塗膜表面の指触タックを確認し、タックが完全になく硬化している場合を○、タックがあり硬化していない場合を×とした。
【0042】
耐擦傷性:東洋精機社製の摩耗試験機を用い、接触面積が直径25mmφのスチールウール#0000の上に荷重を載せ、往復速度30回/分で10往復させた後、HCフィルムを黒打ちして目視による観察を行い、傷が確認されない荷重量が300g超の場合を◎、200~300gの場合を○、200g未満のを×とした。
【0043】
耐屈曲性:ビック・ガードナー社製の円筒形マンドレルテスタPF-5710を用い、上記HCフィルムを120mm×30mmにカットし、180°の折り曲げ(外曲げ)を1回行い、クラックが入らない最小曲げ半径(Rmm)を測定し、1Rの場合を◎、1.5Rの場合を〇、1.5R超の場合を×とした。
【0044】
【0045】
【0046】
実施例の各配合は、粘度、塗工性、硬化性、耐擦傷性及び屈曲性、全ての面で問題は無く良好であった。
【0047】
一方、(B)の配合量が上限を超えている比較例1は耐擦傷性が劣り、(B)の配合量が下限未満の比較例2は塗工性が劣っていた。また(A)の代わりにEO変性をしていないモノマーを使用した比較例3及び4は屈曲性が劣り、比較例5は耐擦傷性が劣り、いずれの配合も本願発明に適さないものであった。
【要約】
【課題】無溶剤型でありながら塗工外観が安定し、良好な耐擦傷性と共に優れた屈曲性を有するため、ハードコートフィルム等に用いる無溶剤型のハードコート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレートと、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートと、光重合開始剤と、を含み、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートの配合量が固形分全量に対し15~70重量%であることを特徴とする無溶剤型ハードコート樹脂組成物である。
【選択図】なし