(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】導電性高分子用ドーパント溶液、導電性高分子製造用モノマー液、導電性組成物およびその製造方法、並びに電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20240403BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20240403BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20240403BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01G9/028 G
C08G61/12
H01B1/12 F
H01B1/12 G
H01G9/00 290H
H01G9/028 E
H01G9/028 F
(21)【出願番号】P 2023501487
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2022021491
(87)【国際公開番号】W WO2022255209
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2021091411
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【氏名又は名称】三輪 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴元 雄平
(72)【発明者】
【氏名】関 恵実
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-142070(JP,A)
【文献】特開2020-070400(JP,A)
【文献】国際公開第2006/085601(WO,A1)
【文献】特開平06-318775(JP,A)
【文献】国際公開第2007/142051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/028
C08G 61/12
H01B 1/12
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子用ドーパントが溶媒に溶解してなる導電性高分子用ドーパント溶液であって、
上記導電性高分子用ドーパントとして、アントラキノン骨格を有するスルホン酸と、下記一般式(1)で表されるアルキルアミン、下記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、下記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物との塩(A)を含有し、
上記溶媒として、水または低級アルコールを含有することを特徴とする導電性高分子用ドーパント溶液。
【化1】
〔上記一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ炭素数が1~6のアルキル基であり、R
3は、水素原子または炭素数が1~6のアルキル基である〕
【化2】
〔上記一般式(2)中、R
4は、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基で、R
5およびR
6は、それぞれ、水素原子、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基または炭素数が1~6のアルキル基である〕
【化3】
〔上記一般式(3)中、R
7はヒドロキシル基で、R
8およびR
9は、それぞれ炭素数が1~6のアルキル基である〕
【請求項2】
上記塩(A)の濃度が5質量%以上である請求項1に記載の導電性高分子用ドーパント溶液。
【請求項3】
導電性高分子製造用モノマーと導電性高分子用ドーパントとを含有し、上記導電性高分子用ドーパントが溶解してなる導電性高分子製造用モノマー液であって、
上記導電性高分子用ドーパントとして、アントラキノン骨格を有するスルホン酸と、下記一般式(1)で表されるアルキルアミン、下記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、下記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物との塩(A)を含有することを特徴とする導電性高分子製造用モノマー液。
【化4】
〔上記一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ炭素数が1~6のアルキル基であり、R
3は、水素原子または炭素数が1~6のアルキル基である〕
【化5】
〔上記一般式(2)中、R
4は、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基で、R
5およびR
6は、それぞれ、水素原子、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基または炭素数が1~6のアルキル基である〕
【化6】
〔上記一般式(3)中、R
7はヒドロキシル基で、R
8およびR
9は、それぞれ炭素数が1~6のアルキル基である〕
【請求項4】
溶媒として低級アルコールをさらに含有する請求項3に記載の導電性高分子製造用モノマー液。
【請求項5】
導電性高分子製造用モノマーとして、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、およびアニリンまたはその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項3または4に記載の導電性高分子製造用モノマー液。
【請求項6】
上記塩(A)の濃度が5質量%以上である請求項3~5のいずれかに記載の導電性高分子製造用モノマー液。
【請求項7】
請求項1または2に記載の導電性高分子用ドーパント溶液の存在下で、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合してなるものであることを特徴とする導電性組成物。
【請求項8】
上記導電性高分子製造用モノマーが、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、およびアニリンまたはその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の導電性組成物。
【請求項9】
請求項3~6のいずれかに記載の導電性高分子製造用モノマー液を用いて、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合してなるものであることを特徴とする導電性組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の導電性高分子用ドーパント溶液の存在下で、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【請求項11】
上記導電性高分子製造用モノマーが、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、およびアニリンまたはその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載の導電性組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項3~6のいずれかに記載の導電性高分子製造用モノマー液を用いて、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【請求項13】
固体電解質を含有する電解コンデンサであって、
請求項7~9のいずれかに記載の導電性組成物を、上記固体電解質として有することを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項14】
固体電解質を含有する電解コンデンサを製造する方法であって、
請求項10~12のいずれかに記載の導電性組成物の製造方法によって製造された導電性組成物を、上記固体電解質として用いることを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れた電解コンデンサおよびその製造方法、上記電解コンデンサを構成し得る導電性組成物およびその製造方法、並びに上記導電性組成物を製造するためのドーパント溶液およびモノマー液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、その高い導電性により、例えば、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどの電解質(固体電解質)として用いられている。
【0003】
この用途における導電性高分子としては、例えば、チオフェンまたはその誘導体などを化学酸化重合または電解酸化重合することによって得られたものが用いられている。
【0004】
上記チオフェンまたはその誘導体などの化学酸化重合を行う際のドーパントとしては、主として有機スルホン酸が用いられており、その中でも、ナフタレンスルホン酸類が多く利用されているが、例えば電解コンデンサの耐熱性向上の観点から、アントラキノンスルホン酸などのアントラキノン骨格を有するスルホン酸の適用も検討されている(特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-12394号公報
【文献】特開2007-142070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電解コンデンサの製造に際しては、例えば、モノマーや酸化剤、ドーパントなどをコンデンサ素子に付着させた状態で、モノマーを重合して導電性高分子(導電性組成物)をコンデンサ素子上に形成し、これを固体電解質として利用することが行われているが、アントラキノン骨格を有するスルホン酸は酸性度が高く、素材によってはコンデンサ素子の腐食の問題が生じてしまう。
【0007】
一方、特許文献1に示されているように、アントラキノンスルホン酸ナトリウムやアントラキノンスルホン酸アンモニウムのような塩を使用した場合には、上記のようなコンデンサ素子の腐食の問題は回避できるものの、このような塩は、導電性高分子の重合用の溶媒として通常使用されている低級アルコールへの溶解性や、ドーパントを溶液の形態とする際に溶媒として使用される水への溶解性が極めて低い。そのため、アントラキノンスルホン酸ナトリウムやアントラキノンスルホン酸アンモニウムなどの塩をドーパントに使用する場合、一回の重合で導電性高分子に導入できるドーパントの量が限定的になることから、導電性に優れた導電性高分子を一回の重合で形成できる量も制限され、電解コンデンサの固体電解質の層を形成するには、重合を多数繰り返す必要がある。
【0008】
よって、上記のような問題を回避しつつ、電解コンデンサの耐熱性を高める技術の開発が求められる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性に優れた電解コンデンサおよびその製造方法、上記電解コンデンサを構成し得る導電性組成物およびその製造方法、並びに上記導電性組成物を製造するためのドーパント溶液およびモノマー液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の導電性高分子用ドーパント溶液(以下、単に「ドーパント溶液」という場合がある)は、導電性高分子用ドーパントが溶媒に溶解してなり、上記導電性高分子用ドーパントとして、アントラキノン骨格を有するスルホン酸と、下記一般式(1)で表されるアルキルアミン、下記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、下記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物との塩(A)を含有し、上記溶媒として、水または低級アルコールを含有することを特徴とするものである。
【0011】
【0012】
上記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ炭素数が1~6のアルキル基であり、R3は、水素原子または炭素数が1~6のアルキル基である。
【0013】
【0014】
上記一般式(2)中、R4は、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基で、R5およびR6は、それぞれ、水素原子、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基または炭素数が1~6のアルキル基である。
【0015】
【0016】
上記一般式(3)中、R7はヒドロキシル基で、R8およびR9は、それぞれ炭素数が1~6のアルキル基である。
【0017】
また、本発明の導電性高分子製造用モノマー液(以下、単に「モノマー液」という場合がある)は、導電性高分子製造用モノマーと導電性高分子用ドーパントとを含有し、上記導電性高分子用ドーパントが溶解してなり、上記導電性高分子用ドーパントとして、アントラキノン骨格を有するスルホン酸と、上記一般式(1)で表されるアルキルアミン、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、上記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物との塩(A)を含有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の導電性組成物は、本発明の導電性高分子用ドーパント溶液の存在下で、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合してなるか、または、本発明の導電性高分子製造用モノマー液を用いて、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合してなることを特徴とするものである。
【0019】
さらに、本発明の導電性組成物の製造方法は、本発明の導電性高分子用ドーパント溶液の存在下で、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合するか、または、本発明の導電性高分子製造用モノマー液を用いて、導電性高分子製造用モノマーを酸化重合することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の電解コンデンサは、本発明の導電性組成物を固体電解質として有することを特徴とするものである。
【0021】
そして、本発明の電解コンデンサの製造方法は、本発明の製造方法によって製造された導電性組成物を固体電解質として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐熱性に優れた電解コンデンサおよびその製造方法、上記電解コンデンサを構成し得る導電性組成物およびその製造方法、並びに上記導電性組成物を製造するためのドーパント溶液およびモノマー液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<導電性高分子用ドーパント溶液>
本発明のドーパント溶液は、導電性高分子用ドーパントが溶媒に溶解してなり、上記導電性高分子用ドーパントとして、アントラキノン骨格を有するスルホン酸と、上記一般式(1)で表されるアルキルアミン、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、上記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物との塩(A)を含有し、上記溶媒として、水または低級アルコールを含有する。上記ドーパント溶液を用いて導電性高分子製造用モノマーを酸化重合することで、導電性高分子と上記塩(A)由来の成分とを含む導電性組成物が得られる。
【0024】
上記塩(A)であれば、アントラキノンスルホン酸ナトリウムやアントラキノンスルホン酸アンモニウムなどとは異なり、水や低級アルコールに対する溶解度が高いため、例えば上記塩(A)を5質量%以上の高濃度で含有するドーパント溶液とすることができ、導電性に優れた導電性組成物〔上記塩(A)由来のドーパントなどを含む導電性高分子〕の、一回の重合で形成できる量を多くすることが可能となる。また、アントラキノンスルホン酸とは異なり、アルミニウムのように酸の作用で腐食しやすい素材で構成されたコンデンサ素子に塗布しても、その腐食が生じ難い。
【0025】
そして、上記塩(A)由来のドーパントを含有する導電性組成物を固体電解質とすることで、耐熱性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
【0026】
ドーパント溶液に使用する上記塩(A)は、アントラキノン骨格を有するスルホン酸と、上記一般式(1)で表されるアルキルアミン、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、上記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物との塩である。
【0027】
上記塩(A)を形成するアントラキノン骨格を有するスルホン酸としては、アントラキノン-1-スルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸といったアントラキノンスルホン酸;アントラキノン-1,5-ジスルホン酸、アントラキノン-1,8-ジスルホン酸、アントラキノン-2,6-ジスルホン酸、アントラキノン-2,7-ジスルホン酸などのアントラキノンジスルホン酸;などが挙げられる。
【0028】
上記塩(A)を形成する上記一般式(1)で表されるアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミンといった第二級アルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、鳥プロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミンといった第三級アルキルアミン;が挙げられる。
【0029】
上記塩(A)を形成する上記一般式(2)で表されるアルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、1,2-プロパンジオールアミンなどの第一級アルカノールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ブタノールエタノールアミンなどの第二級アルカノールアミン;トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ブチルジヒドロキシルエチルアミン、ジメチルヒドロキシルエチルアミンなどの第三級アルカノールアミン;が挙げられる。
【0030】
上記塩(A)を形成する上記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミンとしては、ジエチルヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
【0031】
上記塩(A)を形成する環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-ウンデシルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0032】
上記塩(A)は、例えば、水に溶解させたアントラキノン骨格を有するスルホン酸を、上記一般式(1)で表されるアルキルアミン、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、上記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、もしくは環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物を中和剤として中和するか、または上記一般式(2)で表されるアルカノールアミンの塩(リン酸塩など)と反応させることで得ることができる。
【0033】
上記塩(A)を形成するために中和剤として使用される上記一般式(1)で表されるアルキルアミン、上記一般式(2)で表されるアルカノールアミン、上記一般式(3)で表されるヒドロキシルアミン、または環内に窒素原子を1~3個含有する複素環を有する化合物は、水への溶解性がより高い塩(A)を得ることが可能となることから、その塩基解離定数pKbが、6以上であることが好ましく、また、12以下であることが好ましい。
【0034】
ドーパント溶液は、上記塩(A)のうちの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0035】
ドーパント溶液の溶媒には、水、低級アルコールが使用される。また、低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールといった炭素数が1~4のアルコールが挙げられる。ドーパント溶液には、上記例示の各種溶媒のうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0036】
ドーパント溶液における上記塩(A)の濃度は、導電性に優れる導電性高分子の重合効率を高める観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、ドーパント溶液における上記塩(A)の濃度の上限値については、特に制限はないが、通常は50質量%程度である。
【0037】
ドーパント溶液には、上記塩(A)および溶媒以外の成分を含有させることもできる。このような成分としては、例えば乳化剤が挙げられる。ドーパント溶液に乳化剤を含有させておくことで、導電性高分子の重合反応をより均一に進行させることができる。
【0038】
上記乳化剤としては、種々のものを用いることができるが、特にアルキルアミンオキサイドが好ましい。アルキルアミンオキサイドは、たとえ導電性組成物中に残ったとしても、導電性組成物の導電率を大きく低下させたり、その導電性組成物を電解コンデンサの固体電解質として用いた場合に、電解コンデンサの機能を著しく低下させたりするようなことはない。上記アルキルアミンオキサイドにおけるアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。また、チオフェンまたはその誘導体の重合反応が進行すると、それに伴って反応系のpHが低下するが、上記アルキルアミンオキサイドはそのようなpHの低下を抑制する作用も有している。そのため、上記アルキルアミンオキサイドのドーパント溶液での使用は、例えば導電性高分子を生成させるために使用される基材(上記析出物を析出させる基材、コンデンサ素子など)の耐酸性があまり良好でない場合に、特に効果的である。
【0039】
上記ドーパント溶液における上記乳化剤濃度は、例えば、0.01~2質量%とすることが好ましい。
【0040】
<導電性高分子製造用モノマー液>
本発明の導電性高分子製造用モノマー液は、導電性高分子製造用モノマー(以下、単に「モノマー」という場合がある)と導電性高分子用ドーパントとを含有し、かつ上記導電性高分子用ドーパントが溶解してなるものであり、上記導電性高分子用ドーパントとして、上記塩(A)を含有するものである。
【0041】
導電性高分子製造用モノマーとして一般に使用されるチオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、およびアニリンまたはその誘導体は常温で液状であるが、上記塩(A)は、ドーパント溶液の溶媒として使用される水や低級アルコールのみならず、これらのモノマーに対する溶解性も良好である。よって、導電性高分子製造用モノマーおよび上記塩(A)のみでモノマー液を構成する場合においても、モノマー液中の上記塩(A)の濃度を高くすることができる。
【0042】
また、モノマー液に溶媒として低級アルコールを使用する場合や、上記塩(A)を含む本発明のドーパント溶液の形でモノマー液に使用した場合にも、モノマー液中の上記塩(A)の濃度を高くすることができる。
【0043】
よって、本発明のモノマー液であれば、導電性に優れた導電性高分子(導電性高分子とドーパントなどとを含む導電性組成物)を効率よく製造することができ、この導電性高分子(導電性組成物)を固体電解質として使用することで、耐熱性に優れた電解コンデンサを形成することができる。
【0044】
モノマー液に使用するモノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、アニリンまたはその誘導体などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができるが、特にチオフェンまたはその誘導体を用いることが好ましい。これは、チオフェンまたはその誘導体を重合して得られる導電性高分子が導電性および耐熱性のバランスがとれていて、他のモノマーに比べて、コンデンサ特性の優れた電解コンデンサが得られやすいためである。
【0045】
チオフェンまたはその誘導体におけるチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3-アルキル-4-アルコキシチオフェン、3,4-アルキルチオフェン、3,4-アルコキシチオフェンや、上記の3,4-エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェン(アルキル化EDOT)などが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数としては、1以上であることが好ましく、また、16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0046】
上記のEDOTをアルキル基で修飾したアルキル化EDOTについて詳しく説明すると、EDOTやアルキル化EDOTは、下記の一般式(4)で表される化合物に該当する。
【0047】
【0048】
一般式(4)中、R10は水素または炭素数1~10のアルキル基である。
【0049】
そして、上記一般式(4)中のR10が水素の化合物がEDOTであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3-Dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4-エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本明細書では、この「2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)」と表示している。そして、上記一般式(4)中のR10がアルキル基の場合、このアルキル基としては、炭素数が1~10のものが好ましく、特に炭素数が1~4のものが好ましい。つまり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が特に好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(4)中のR10がメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-メチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Methyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン(メチル化EDOT)」と表示する。一般式(4)の中のR10がエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-エチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Ethyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン(エチル化EDOT)」と表示する。
【0050】
一般式(4)の中のR10がプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-プロピル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Propyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン(プロピル化EDOT)」と表示する。そして、一般式(4)の中のR10がブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-ブチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Butyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン(ブチル化EDOT)」と表示する。また、「2-アルキル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン」を、本明細書では、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン(アルキル化EDOT)」と表示する。そして、それらのアルキル化EDOTの中でも、メチル化EDOT、エチル化EDOT、プロピル化EDOT、ブチル化EDOTが好ましい。
【0051】
そして、EDOT(すなわち、2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)とアルキル化EDOT(すなわち、2-アルキル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)とは混合して用いることが好ましく、その混合比は、モル比で0.05:1~1:0.1であることが好ましく、0.1:1~1:0.1であることがより好ましく、0.2:1~1:0.2であることがさらに好ましく、0.3:1~1:0.3であることが特に好ましい。
【0052】
チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体およびアニリンまたはその誘導体といったモノマーは、常温で液状であるため、これらのモノマーおよび上記塩(A)のみでモノマー液を調製することもできるが、重合反応をよりスムーズに進行させるために、モノマー液は溶媒をさらに含んでいることが好ましい。
【0053】
モノマー液の溶媒としては、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールといった炭素数が1~4のアルコール)が好ましい。
【0054】
モノマー液においては、上記塩(A)とモノマーとの比率が、質量基準で、上記塩(A):モノマー=5:1~15:1となるようにすることが好ましい。
【0055】
また、モノマー液における上記塩(A)の濃度は、導電性に優れる導電性高分子の重合効率を高める観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。またモノマー液における上記塩(A)の濃度の上限値については、特に制限はないが、通常は50質量%程度である。
【0056】
また、モノマー液に溶媒を使用する場合、モノマーの濃度は、通常、15~50質量%である。
【0057】
モノマー液は、モノマーと上記塩(A)とを混合して、モノマー中に上記塩(A)を溶解させる方法;モノマーと上記塩(A)と溶媒とを混合して、溶媒中にモノマーおよび上記塩(A)を溶解させる方法;本発明のドーパント溶液にモノマーを混合する方法;などによって調整することができる。
【0058】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、本発明のドーパント溶液の存在下で導電性高分子製造用モノマーを酸化重合するか、または本発明のモノマー液を用いて導電性高分子製造用モノマーを酸化重合してなるものである。これにより得られる導電性組成物は、モノマーが重合して形成された導電性高分子と、ドーパントである上記塩(A)由来の成分とを含む。
【0059】
導電性組成物は、より具体的には、例えば以下の方法(a)または(b)によって得ることができる。
【0060】
方法(a):
工程(a-1):まず、コンデンサ素子などの導電性組成物を形成する基材に、本発明のドーパント溶液を塗布する。
【0061】
基材には、コンデンサ素子のほか、導電性組成物からなるフィルムを得るような場合には、セラミックプレートなどを使用することができる。
【0062】
基材へのドーパント溶液の塗布方法については、特に制限はなく、ドーパント溶液中に基材を浸漬する方法や、スプレー塗布などによりドーパント溶液を基材に塗布する方法などが採用できる。
【0063】
また、ドーパント溶液を基材に塗布した後には、必要に応じて乾燥してドーパント溶液の溶媒を除去してもよい。
【0064】
工程(a-2):工程(a-1)を経た基材に、モノマーを付着させる。
【0065】
基材にモノマーを付着させる方法については、特に制限はなく、液状のモノマー中またはモノマーを溶媒(本発明のモノマー液と同様の溶媒が使用できる)で希釈した希釈液中に基材を浸漬し、引き上げる方法や、液状のモノマーまたは上記希釈液をスプレー塗布などにより基材に塗布する方法などが採用できる。
【0066】
基材に付着させるモノマーの量は、例えば、ドーパントである上記塩(A)との比率を、質量基準で、上記塩(A):モノマー=5:1~15:1とすることが好ましい。
【0067】
また、モノマーを基材に付着させた後には、必要に応じて乾燥してモノマー液の溶媒やドーパント溶液の溶媒を除去してもよい。
【0068】
工程(a-3):工程(a-2)を経て上記塩(A)およびモノマーを付着させた基材に、酸化剤を付着させてから酸化重合を行って、基材上に導電性組成物を形成する。
【0069】
酸化剤には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどの過硫酸塩;硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄などの鉄系酸化剤;などが使用できる。
【0070】
酸化剤の使用量は、例えば、ドーパントである上記塩(A):1モルに対して、酸化剤が、好ましくは0.4モル以上、より好ましくは0.5モル以上であって、好ましくは4.0モル以下、より好ましくは3.5モル以下となるように調整すればよい。
【0071】
基材に酸化剤を付着させる方法については、特に制限はなく、酸化剤を溶媒に溶解させた溶液(例えば水溶液)を調製し、これに基材を浸漬し、引き上げて乾燥する方法や、上記酸化剤溶液をスプレー塗布などにより基材に塗布した後に乾燥する方法などが採用できる。
【0072】
酸化重合は、例えば、5~95℃で、1~72時間酸化重合することによって行うことできる。
【0073】
酸化重合終了後には、導電性組成物を表面に形成した基材を洗浄し、乾燥する。
【0074】
方法(a)によって導電性組成物を製造する場合には、必要に応じて上記工程(a-1)から工程(a-3)までを複数回繰り返すことができる。例えばコンデンサ素子の表面に導電性組成物の層を形成して、これを電解コンデンサの固体電解質とする場合には、上記工程(a-1)から工程(a-3)までを複数回繰り返すことで、より良好な性状の固体電解質の層を形成することができる。
【0075】
なお、上記の通り、アントラキノンスルホン酸ナトリウムやアントラキノンスルホン酸アンモニウムなどの塩をドーパントとして用いる場合には、ドーパント溶液への溶解性が低く、その濃度を高め難いことから、導電性に優れた導電性組成物を製造して、電解コンデンサの固体電解質の層を形成するには、その重合回数を多数繰り返す必要があるが、本発明のドーパント溶液であれば、上記塩(A)の濃度を上記のように高くできるため、その重合回数〔方法(a)の場合の工程(a-1)から工程(a-3)までの繰り返し回数〕を少なくしても、高い導電性を有する固体電解質の層を効率よく形成することができる。
【0076】
方法(b):
工程(b-1):まず、コンデンサ素子などの導電性組成物を形成する基材〔方法(a)で使用し得るものと同様の基材〕に、本発明のモノマー液を塗布する。
【0077】
基材へのモノマー液の塗布方法については、特に制限はなく、モノマー液中に基材を浸漬する方法や、スプレー塗布などによりモノマー液を基材に塗布する方法などが採用できる。
【0078】
工程(b-2):工程(b-1)を経た基材に、酸化剤を付着させる。
【0079】
酸化剤の具体例およびその使用量は、方法(a)の場合と同様である。また、基材に酸化剤を付着させる方法としては、工程(a-3)で例示した方法と同じ方法が採用できる。
【0080】
工程(b-3):工程(b-2)を経た基材に付着させたモノマーを酸化重合によって重合して、基材上に導電性組成物を形成する。
【0081】
酸化重合の条件については、工程(a-3)と同様とすることができる。また、酸化重合終了後には、導電性組成物を表面に形成した基材を洗浄し、乾燥する。
【0082】
方法(b)によって導電性組成物を製造する場合には、必要に応じて上記工程(b-1)から工程(b-3)までを複数回繰り返すことができる。例えばコンデンサ素子の表面に導電性組成物の層を形成して、これを電解コンデンサの固体電解質とする場合には、上記工程(b-1)から工程(b-3)までを複数回繰り返すことで、より良好な性状の固体電解質の層を形成することができる。
【0083】
なお、本発明のモノマー液であれば、ドーパントである上記塩(A)の濃度を上記のように高くできるため、方法(a)の場合と同様に、その重合回数〔方法(b)の場合の工程(b-1)から工程(b-3)までの繰り返し回数〕を少なくしても、高い導電性を有する固体電解質の層を効率よく形成することができる。
【0084】
<電解コンデンサ>
本発明の電解コンデンサは、本発明の導電性組成物を固体電解質として有するものである。
【0085】
本発明の電解コンデンサには、巻回型アルミニウム電解コンデンサ、積層型もしくは平板型アルミニウム電解コンデンサといったアルミニウム電解コンデンサ;タンタル電解コンデンサ;ニオブ電解コンデンサ;などが含まれる。
【0086】
例えば巻回型アルミニウム電解コンデンサの場合、そのコンデンサ素子としては、アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理して誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して作製したものを使用することが好ましい。
【0087】
そして、上記コンデンサ素子を用いての巻回型アルミニウム電解コンデンサの製造は、例えば、次のように行われる。
【0088】
上記コンデンサ素子の表面に、例えば上記方法(a)または方法(b)によって導電性組成物からなる固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層を形成したコンデンサ素子を外装材で外装して、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造する。
【0089】
上記巻回型アルミニウム電解コンデンサ以外の電解コンデンサ、例えば、積層型もしくは平板型アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどの製造にあたっては、コンデンサ素子としてアルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の多孔体からなる陽極と、それらの弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有するものを用い、そのコンデンサ素子を、上記巻回型アルミニウム電解コンデンサの場合と同様に、例えば上記方法(a)または方法(b)によって導電性組成物からなる固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層を形成したコンデンサ素子にカーボンペースト、銀ペーストを付け、乾燥した後、外装することによって、積層型もしくは平板型アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどを製造する。
【0090】
また、電解コンデンサの製造にあたっては、上記のように、基材上に導電性組成物を製造した後、その導電性導電性組成物上にπ共役系導電性高分子の分散液を用いて導電性高分子層を形成して、その両者で固体電解質を構成した電解コンデンサとしてもよい。
【0091】
上記のπ共役系導電性高分子としては、ポリマーアニオンをドーパントとして用いたπ共役系導電性高分子が用いられる。このポリマーアニオンは、主として高分子スルホン酸で構成されるが、その具体例としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマー(メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物など)との共重合体などが挙げられる。
【0092】
また、電解コンデンサの固体電解質には、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤とヒドロキシル基またはカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族系化合物とを含む導電性補助液を含ませることもできる。
【0093】
上記導電性補助液に使用可能な沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン(沸点:203℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、リン酸トリエチル(沸点:215℃)、リン酸トリブチル(289℃)、リン酸トリエチルヘキシル〔215℃(4mmHg)〕、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0094】
また、上記の、ヒドロキシル基(芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基をいい、カルボキシル基中などの-OH部分を意味するものではない)またはカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族系化合物としては、ベンゼン系のもの、ナフタレン系のもの、アントラセン系のもののいずれも用いることができ、その具体例としては、例えば、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシアニソール、ヒドロキシジニトロベンゼン、ジヒドロキシジニトロベンゼン、アルキルヒドロキシアニソール、ヒドロキシニトロアニソール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、トリヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸、ニトロナフトール、アミノナフトール、ジニトロナフトール、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンカルボン酸、トリヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンジカルボン酸、ジヒドロキシアントラセンジカルボン酸、テトラヒドロキシアントラセンジオン、ベンゼンカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0095】
また、上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または導電性補助液にエポキシ化合物またはその加水分解物、シラン化合物またはその加水分解物およびポリアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の結合剤を含有させることもできる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0097】
〔ドーパント溶液の調製〕
実施例1
アントラキノン-2-スルホン酸:30gを70gの水に溶解させ、これを5gのジメチルアミン(pKb=11)で中和して、アントラキノン-2-スルホン酸とジメチルアミンとの塩を5質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0098】
実施例2
実施例1と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とジメチルアミンとの塩を10質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0099】
実施例3
実施例1と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とジメチルアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0100】
実施例4
ジメチルアミンに代えてジエチルアミン(pKb=11)を8g使用した以外は実施例3と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とジエチルアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0101】
実施例5
ジメチルアミンに代えてジヘキシルアミン(pKb=11)を19g使用した以外は実施例3と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とジヘキシルアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0102】
実施例6
アントラキノン-1,5-ジスルホン酸:30gを70gの水に溶解させ、これを5gのトリメチルアミン(pKb=10)で中和して、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸とトリメチルアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0103】
実施例7
トリメチルアミンに代えてエタノールアミン(pKb=9)を5g使用した以外は実施例6と同様にして、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸とエタノールアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0104】
実施例8
トリメチルアミンに代えてジエチルヒドロキシルアミン(pKb=6)を7g使用した以外は実施例6と同様にして、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸とジエチルヒドロキシルアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0105】
実施例9
ジメチルアミンに代えてジエタノールアミン(pKb=9)を9g使用した以外は実施例3と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とジエタノールアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0106】
実施例10
ジメチルアミンに代えてトリエタノールアミン(pKb=8)を16g使用した以外は実施例3と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とトリエタノールアミンとの塩を50質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0107】
実施例11
ジメチルアミンに代えてトリイソプロパノールアミン(pKb=9)を20g使用した以外は実施例3と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とトリイソプロパノールアミとの塩ンを60質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0108】
実施例12
ジメチルアミンに代えて1-メチルイミダゾール(pKb=7)を9g使用した以外は実施例3と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸と1-メチルイミダゾールとの塩を70質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0109】
実施例13
水の量を変更した以外は実施例11と同様にして、アントラキノン-2-スルホン酸とトリイソプロパノールアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0110】
比較例1
アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム1gを99gの水に溶解させてドーパント溶液を調製したが、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムの多くが溶け残り、濃度を1質量%未満にしかできなかった。
【0111】
比較例2
アントラキノン-2-スルホン酸:30gを70gの水に溶解させ、これを2gのメチルアミンで中和して、ドーパント溶液を調製しようとしたが、アントラキノン-2-スルホン酸とメチルアミンとの塩の溶解性が低いため析出し、調製できなかった。
【0112】
比較例3
アントラキノン-2-スルホン酸:30gを70gの水に溶解させ、これを濃度が28質量%のアンモニア水:7gで中和して、ドーパント溶液を調製しようとしたが、アントラキノン-2-スルホン酸とアンモニアとの塩の溶解性が低いため析出し、調製できなかった。
【0113】
比較例4
2-ナフタレンスルホン酸:30gを70gの水に溶解させ、これを11gのブチルアミン(pKb=11)で中和して、2-ナフタレンスルホン酸とブチルアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0114】
比較例5
パラトルエンスルホン酸30gを70gの水に溶解させ、これを33gのトリイソプロパノールアミン(pKb=9)で中和して、パラトルエンスルホン酸とトリイソプロパノールアミンとの塩を30質量%の濃度で含むドーパント溶液を調製した。
【0115】
実施例および比較例のドーパント溶液の構成を表1に示す。なお、表1では、ドーパント〔上記塩(A)など〕について、これを構成する芳香族スルホン酸(アントラキノン-2-スルホン酸など)と中和剤(ジメチルアミンなど)とに分けて記載する(後記の表4においても同様である)。また、表1における芳香族スルホン酸の欄の「AQS」はアントラキノン-2-スルホン酸を、「AQDS」はアントラキノン-1,5-スルホン酸を、「NS」は2-ナフタレンスルホン酸を、「PTS」はパラトルエンスルホン酸を、それぞれ意味している(後記の表4においても同様である)。
【0116】
【0117】
〔タンタル電解コンデンサの作製〕
実施例14
コンデンサ素子であるタンタル焼結体を2質量%濃度のリン酸水溶液中に浸漬し、10Vの電圧を印加することで、タンタル焼結体の表面に誘電体層(誘電体酸化皮膜)を形成した。
【0118】
上記タンタル焼結体を実施例1で調製したドーパント溶液中に浸漬してから取り出し、105℃で10分乾燥させた。乾燥後の上記タンタル焼結体を濃度が35質量%のEDOTのエタノール溶液中に浸漬し、1分後に取り出し、5分間放置した。その後、このタンタル焼結体を濃度が30質量%の過硫酸アンモニウム水溶液中に浸漬し、30秒後に取り出し、室温で30分間放置した後、50℃で10分間加熱して、重合を行った。重合後、水中に上記タンタル焼結体を浸漬し、30分間放置した後、取り出して70℃で30分間乾燥した。この操作を6回繰り返して、タンタル焼結体からなるコンデンサ素子の表面に、導電性組成物からなる固体電解質層を形成した。
【0119】
そして、上記コンデンサ素子の固体電解質層をカーボンペーストおよび銀ペーストで覆った後に外装材で外装して、タンタル電解コンデンサを得た。なお、実施例1のタンタル電解コンデンサの設計静電容量は、250μFである(後記の各実施例および比較例のタンタル電解コンデンサおよび積層型アルミニウム電解コンデンサも同様である)。
【0120】
実施例15~25および比較例6、7
ドーパント溶液を実施例2~12または比較例1、4のものに変更した以外は、実施例14と同様にしてタンタル電解コンデンサを作製した。
【0121】
実施例14~25および比較例6、7のタンタル電解コンデンサについて、初期特性および耐熱性を、以下の方法で評価した。
【0122】
(初期特性)
各タンタル電解コンデンサの静電容量を、HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、120Hzで測定した。
【0123】
また、各タンタル電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を、HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、100kHzで測定した。
【0124】
なお、上記の静電容量およびESRは、各試料とも10個ずつについて測定を行い、10個の測定値の小数点第1位で四捨五入した平均値を求めた。
【0125】
(耐熱性)
実施例および比較例のタンタル電解コンデンサ各10個について、150℃で400時間貯蔵した後、上記と同じ方法で静電容量およびESRを測定して、各10個の測定値の小数点第1位で四捨五入した平均値を求めた。
【0126】
そして、静電容量については、下記式によって求めた静電容量の初期特性評価時の平均値からの変化率(%)を、ESRについては、この耐熱性評価時の平均値を初期特性評価時の平均値で除して求めた変化率(倍)を、それぞれ求めた。
静電容量の耐熱性評価平均値の初期特性評価平均値からの変化率(%):
変化率(%) = 100 × (耐熱性評価平均値-初期特性評価平均値)
÷ 初期特性評価平均値
【0127】
上記の評価結果を表2に示す。
【0128】
【0129】
比較例7のタンタル電解コンデンサは、従来から知られているナフタレンスルホン酸のブチルアミン塩をドーパントとして含むドーパント溶液を用いて形成した導電性組成物を固体電解質とするものであるが、上記塩(A)をドーパントとして含むドーパント溶液を用いて形成した導電性組成物を固体電解質とした実施例14~25のタンタル電解コンデンサを、この比較例7の電解コンデンサと比べると、初期特性評価時の静電容量およびESRは同等である一方で、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が小さく、優れた耐熱性を有していた。
【0130】
また、ドーパント溶液における上記塩(A)の濃度のみを変えた実施例14~16の電解コンデンサを比較すると、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が、実施例14、実施例15、実施例16の順に小さくなっており、ドーパント溶液における上記塩(A)の濃度が高いほど、電解コンデンサの耐熱性をより高めることができていた。
【0131】
なお、アントラキノンスルホン酸ナトリウムをドーパントとして含み、濃度を高くできなかったドーパント溶液を用いて形成した導電性組成物を固体電解質とした比較例6の電解コンデンサは、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が、実施例の電解コンデンサだけでなく比較例7の電解コンデンサよりも大きく、耐熱性が劣っていた。
【0132】
実施例26
実施例14などと同様にして表面に誘電体層(誘電体酸化皮膜)を形成したタンタル焼結体を、実施例13で調製したドーパント溶液に2分間浸漬し、引き出した後、105℃で10分乾燥させた。乾燥後の上記タンタル焼結体を濃度が20質量%の硫酸第二鉄水溶液に浸漬し、105℃で10分乾燥させた。乾燥後の上記タンタル焼結体を濃度が35質量%のEDOTのエタノール溶液中に浸漬し、1分後に取り出し、室温で30分間放置した後、50℃で10分間加熱して、重合を行った。重合後、水中に上記タンタル焼結体を浸漬し、30分間放置した後、取り出して70℃で30分間乾燥した。この操作を6回繰り返して、タンタル焼結体からなるコンデンサ素子の表面に、導電性組成物からなる固体電解質層を形成した。そして、上記コンデンサ素子の固体電解質層をカーボンペーストおよび銀ペーストで覆った後に外装材で外装して、タンタル電解コンデンサを得た。
【0133】
実施例27および比較例8
ドーパント溶液を実施例7または比較例5のものに変更した以外は、実施例26と同様にしてタンタル電解コンデンサを作製した。
【0134】
実施例26、27および比較例8のタンタル電解コンデンサについて、実施例14のタンタル電解コンデンサなどと同様にして初期特性および耐熱性を評価した。これらの結果を表3に示す。
【0135】
【0136】
実施例26、27および比較例8のタンタル電解コンデンサは、鉄系酸化剤である硫酸第二鉄を用いて製造した導電性組成物を固体電解質とするものであるが、上記塩(A)をドーパントとして含むドーパント溶液を用いた実施例26、27のタンタル電解コンデンサは、実施例14の電解コンデンサなどと同様に、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が小さく、優れた耐熱性を有していた。
【0137】
これに対し、アントラキノン骨格を持たないパラトルエンスルホン酸の塩をドーパントとして含むドーパント溶液を用いた比較例8の電解コンデンサは、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が大きく、耐熱性が劣っていた。
【0138】
〔モノマー液の調製〕
実施例28
EDOT:25gと、アントラキノン-2-スルホン酸をエタノールアミンで中和して得られたアントラキノン-2-スルホン酸とエタノールアミンとの塩:30gと、メタノール:45gとを、1時間攪拌して混合し、モノマー液を調製した。
【0139】
実施例29
EDOTとエチル化EDOTとの1:3(質量比)の混合物:25gと、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸をジエタノールアミンで中和して得られたアントラキノン-1,5-ジスルホン酸とジエタノールアミンとの塩:30gと、エタノール:45gとを、1時間攪拌して混合し、モノマー液を調製した。
【0140】
実施例30
EDOTとプロピル化EDOTとの1:3(質量比)の混合物:25gと、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸をトリエタノールアミンで中和して得られたアントラキノン-1,5-ジスルホン酸とトリエタノールアミンとの塩:30gと、エタノール:45gとを、1時間攪拌して混合し、モノマー液を調製した。
【0141】
実施例31
EDOTとブチル化EDOTとの1:3(質量比)の混合物:25gと、アントラキノン-2-スルホン酸をトリイソプロパノールアミンで中和して得られたアントラキノン-2-スルホン酸とトリイソプロパノールアミンとの塩:30gと、ブタノール:45gとを、1時間攪拌して混合し、モノマー液を調製した。
【0142】
比較例9
アントラキノン-2-スルホン酸とエタノールアミンとの塩に代えてアントラキノン-2-スルホン酸を用いた以外は、実施例28と同様にしてモノマー液を調製した。
【0143】
比較例10
アントラキノン-2-スルホン酸とエタノールアミンとの塩に代えてアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムを用い、メタノールに代えてエタノールを用いた以外は、実施例28と同様にしてモノマー液を調製しようとしたが、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムが多く溶け残って、これを高濃度で含むモノマー液が調製できなかった。
【0144】
比較例11
アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムに代えて2-ナフタレンスルホン酸とブチルアミンとの塩を用い、メタノールに代えてエタノールを用いた以外は、実施例28と同様にしてモノマー液を調製した。
【0145】
実施例28~31および比較例9~11のモノマー液について、ドーパントに関する構成を表4に示し、モノマーおよび溶媒に関する構成を表5に示す。なお、表5における「EDOT/Et-EDOT」は、EDOTとエチル化EDOTとの混合物を、「EDOT/Pr-EDOT」は、EDOTとプロピル化EDOTとの混合物を、「EDOT/Bu-EDOT」は、EDOTとブチル化EDOTとの混合物を、それぞれ意味している。
【0146】
【0147】
【0148】
〔積層型アルミニウム電解コンデンサの作製〕
実施例32
コンデンサ素子であるアルミニウム箔を2質量%濃度のアジピン酸アンモニウム水溶液中に浸漬し、10Vの電圧を印加することで、アルミニウム箔の表面に誘電体層(誘電体酸化皮膜)を形成した。
【0149】
上記アルミニウム箔を実施例28で調製したモノマー液に2分間浸漬し、引き出した後、50℃で10分間乾燥した。次に上記アルミニウム箔を濃度が30%の過硫酸アンモニウム水溶液に2分間浸漬し、30秒後に取り出し、室温で30分間放置した後、50℃で10分間加熱して、重合を行った。重合後、水中に上記アルミニウム箔を浸漬し、30分間放置した後、取り出して70℃で30分間乾燥した。この操作を6回繰り返して、アルミニウム箔からなるコンデンサ素子の表面に、導電性組成物からなる固体電解質層を形成した。
【0150】
そして、上記コンデンサ素子の固体電解質層をカーボンペーストおよび銀ペーストで覆った後に外装材で外装して、積層型アルミニウム電解コンデンサを得た。
【0151】
実施例33~35および比較例12、13
モノマー液を実施例29~31または比較例9、11のものに変更した以外は、実施例32と同様にして積層型アルミニウム電解コンデンサを作製した。
【0152】
実施例32~35および比較例12、13の積層型アルミニウム電解コンデンサについて、実施例14のタンタル電解コンデンサなどと同様にして初期特性および耐熱性を評価した。これらの結果を表6に示す。
【0153】
【0154】
上記塩(A)をドーパントとして含むモノマー液を用いて形成した導電性組成物を固体電解質とした実施例32~35の積層型アルミニウム電解コンデンサは、従来から知られているナフタレンスルホン酸のブチルアミン塩をドーパントとして含むドーパント溶液を用いて形成した導電性組成物を固体電解質とした比較例13の電解コンデンサと比べると、初期特性評価時の静電容量およびESRは同等である一方で、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が小さく、優れた耐熱性を有していた。
【0155】
なお、上記塩(A)に代えてアントラキノンスルホン酸をドーパントして用いた比較例12の電解コンデンサは、耐熱性評価時の静電容量およびESRの、初期特性評価時からの変化率が大きく、耐熱性が劣っていた。これは、コンデンサ素子の表面に導電性組成物を形成する際に、酸性度が高くなってコンデンサ素子の腐食が生じたためと考えられる。
【0156】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、前記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、本発明は、これらの実施形態には限定されない。本発明の範囲は、前記の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の電解コンデンサは、従来から知られている電解コンデンサと同じ用途に適用できるが、耐熱性に優れていることから、高温に晒されることがある用途にも好ましく適用できる。また、本発明の導電性組成物は、電解コンデンサの固体電解質として好適である。さらに、本発明の導電性高分子用ドーパント溶液および本発明の導電性高分子製造用モノマー液は、耐熱性に優れた電解コンデンサの固体電解質を構成する導電性組成物の製造に適している。