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特許7465411バイポーラプレートおよび燃料電池スタック
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  • 特許-バイポーラプレートおよび燃料電池スタック 図1
  • 特許-バイポーラプレートおよび燃料電池スタック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】バイポーラプレートおよび燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0267 20160101AFI20240403BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20240403BHJP
   H01M 8/0252 20160101ALI20240403BHJP
   H01M 8/0254 20160101ALI20240403BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20240403BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
H01M8/0267
H01M8/0258
H01M8/0252
H01M8/0254
H01M8/2483
H01M8/2484
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023520120
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2021076817
(87)【国際公開番号】W WO2022073824
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】102020212726.3
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュマイサー,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】クノル,フロリアン アレクサンダー
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511059(JP,A)
【文献】特表2016-503223(JP,A)
【文献】特開2006-156216(JP,A)
【文献】特開2017-130437(JP,A)
【文献】特開平09-223505(JP,A)
【文献】特開平06-231774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(100)のためのバイポーラプレート(10)であって、前記バイポーラプレート(10)は、主延在平面(HE)および前記主延在平面(HE)における主流動方向(HR)と、第1のバイポーラプレート半体(12)および第2のバイポーラプレート半体(14)と、活性区画(40)と、分配領域(50)と、ポート領域(60)とを有し、前記ポート領域(60)は前記主延在平面(HE)へと少なくとも1つの流体(F)を引き込むための少なくとも1つのポートを有し、前記活性区画(40)は、冷却流体(KF)による冷却をするための少なくとも1つの冷却流体通路構造(42)と、前記燃料電池スタック(100)の少なくとも1つの隣接する膜電極機構(110)に少なくとも1つの流体(F)を供給するための少なくとも1つの燃料通路構造(44)とを有する、バイポーラプレートにおいて、
前記第1のバイポーラプレート半体(12)と前記第2のバイポーラプレート半体(14)は前記分配領域(50)で少なくとも1つの分配通路構造(52)を形成し、前記分配通路構造(52)は冷却流体(KF)による貫流のために前記主延在平面(HE)における前記主流動方向(HR)に対して角度をなして構成され、前記バイポーラプレート(10)は前記分配領域(50)で、前記活性区画(40)における前記バイポーラプレート(10)の最大厚み(D2)よりも大きい厚み(D1)を有することを特徴とする、バイポーラプレート。
【請求項2】
少なくとも1つの前記分配通路構造(52)は冷却流体(KF)を分配するための少なくとも1つの前記冷却流体通路構造(42)の各々との流体連通式の接続を有することを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項3】
前記活性区画(40)の前記燃料通路構造(44)は多数の通路(45)を有し、それぞれ少なくとも2つの通路(45)が流体(F)を供給するための共通の燃料供給通路(64)によって少なくとも1つの前記ポートと流体連通式に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの共通の前記燃料供給通路(64)は前記分配領域(50)で少なくとも区域的に前記分配通路構造(52)の上方に配置されることを特徴とする、請求項3に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項5】
前記第1のバイポーラプレート半体(12)および/または前記第2のバイポーラプレート半体(14)は前記分配通路構造(52)を構成するために前記主流動方向(HR)に沿った延在において少なくとも2回折曲されて構成され、特に、前記第1のバイポーラプレート半体(12)および/または前記第2のバイポーラプレート半体(14)は前記主流動方向(HR)に沿った延在において少なくとも1回相互に折曲されて構成されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項6】
前記バイポーラプレート(10)は少なくとも1つの冷却流体供給通路構造(43)を有し、少なくとも1つの前記冷却流体供給通路構造(43)は少なくとも1つの前記ポート領域(60)から前記分配通路構造(52)への流体連通式の接続を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項7】
前記冷却流体供給通路構造(43)は中空ウェブ状に構成され、特に、少なくとも1つの前記冷却流体供給通路構造(43)の中空ウェブ状の構成は前記分配領域(50)における前記バイポーラプレート(10)の厚み(D1)を定義し、または実質的に定義することを特徴とする、請求項6に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項8】
少なくとも1つの前記冷却流体供給通路構造(43)は少なくとも区域的に少なくとも2つの燃料供給通路(64)を流体連通式に互いに分離することを特徴とする、請求項6または7に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記冷却流体供給通路構造(43)は少なくとも部分的に前記分配通路構造(52)の上方に配置され、特に、前記冷却流体供給通路構造(43)は下方に向かって流体連通式に前記分配通路構造(52)と接続されることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項10】
少なくとも1つのバイポーラプレート(10)と少なくとも1つの膜電極機構(110)とを有する燃料電池スタック(100)において、
少なくとも1つの前記バイポーラプレート(10)は請求項1から9までのいずれか1項に基づいて構成され、特に、少なくとも1つの前記膜電極機構(110)は厚み(D3)を有し、前記膜電極機構(110)の厚み(D3)は、前記分配領域(50)における前記バイポーラプレートの厚み(D1)と、前記活性区画(40)における前記バイポーラプレート(10)の最大厚み(D2)との差異に相当することを特徴とする、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラプレートおよび燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は移動用の用途のためのエネルギー貯蔵体として、バッテリに代わる優れた選択肢の1つとなる。この貯蔵体の製造には環境負荷のある原材料(たとえばリチウム)を使わなくてよく、水素で充填された圧力容器は、同じエネルギー含有量のもとで、同等のバッテリの何分の1かの重さしかないからである。燃料電池での電流生成のために、水素がたとえば移動用の用途では空気酸素とともにHOをなすように酸化される。遊離するエネルギーは大部分が電気エネルギーとして生成され、移動用の用途の電力消費部へと提供される。
【0003】
周知の燃料電池では、多くの場合、燃料流体および/または冷却流体の流動案内のためにバイポーラプレートが利用される。このときバイポーラプレートの目的は、セルの活性面にわたってガスと冷却剤を均一に分布させることにある。各々のセルが、ポートとも呼ばれる各々の媒体のための流入通路と流出通路とを介して、スタックにある別のセルと接続される。ポートから、ガスが活性面へと案内されなければならない。このことは、分配区画にある分配通路を介して実現することができる。型押しされた金属製のバイポーラプレートでは、冷却剤の通路構造が、空気ないし水素のための通路構造の雌型として得られる。反応物の圧力損失を低減するために、しばしば1つの分配通路と、活性面にある複数の通路とが接続される。このような状況は、通路構造の適合化がなされなければ、活性面にある冷却剤のすべてのウェブが接続されるのではなく、分配区画にウェブを有しているものだけが接続されることにつながり、すなわち、たとえば供給を受ける3つの活性通路と1つの分配通路の場合、この3つ組パッケージのウェブのうち2つはこのハーフプレートから冷却剤の供給を受けない。流入領域と流出領域とでそれぞれ相違する周辺条件に基づき、特に、少なくとも1つのポートから活性面への接続に基づき、活性区画で特に冷却流体について同じではない質量流量分布が発生する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は燃料電池スタックのためのバイポーラプレートを開示し、および、少なくとも1つのバイポーラプレートと少なくとも1つの膜電極機構とを有する燃料電池スタックを開示する。バイポーラプレートは、請求項1の構成要件に基づいて構成される。燃料電池スタックは、請求項10の構成要件に基づいて構成される。本発明のその他の構成要件や詳細は、従属請求項、明細書、および図面から明らかとなる。
【0005】
第1の態様では、本発明は燃料電池スタックのためのバイポーラプレートを提示する。バイポーラプレートは、主延在平面および主延在平面における主流動方向と、第1のバイポーラプレート半体および第2のバイポーラプレート半体と、活性区画と、分配領域と、ポート領域とを有する。ポート領域は、主延在平面へと少なくとも1つの流体を引き込むための少なくとも1つのポートを有する。活性区画は、冷却流体による冷却をするための少なくとも1つの冷却流体通路構造と、燃料電池スタックの少なくとも1つの隣接する膜電極機構に少なくとも1つの流体を供給するための少なくとも1つの燃料通路構造とを有する。第1のバイポーラプレート半体と第2のバイポーラプレート半体は分配領域で少なくとも1つの分配通路構造を形成し、分配通路構造は冷却流体による貫流のために主延在平面における主流動方向に対して角度をなして構成され、バイポーラプレートは分配領域で、活性区画におけるバイポーラプレートの最大厚みよりも大きい厚みを有する。
【0006】
上述した厚みは、本発明の枠内では、バイポーラプレートの主延在平面に対して直交する延在として理解される。主延在平面はバイポーラプレートの寸法によって定義され、バイポーラプレートの長さと幅に沿って広がる。主流動方向は、バイポーラプレートおよび/または燃料電池スタックの膜電極機構に対して平行に、もしくは実質的に平行に、少なくとも1つの流体の、特に燃料および/または反応物の流動を可能にする、バイポーラプレートの活性区画の通路構造によって定義される。本発明による燃料電池スタックでは、バイポーラプレートはスタック方向で好ましくは膜電極機構と交互に積み重ねられる。このときバイポーラプレートおよび/または膜電極機構の主延在平面は、それぞれ互いに平行または実質的に平行に配置される。「Xまたは実質的にX」という表現は、本発明の枠内では、構成要件の根底にある意図される機能を変えることなしに、たとえば製造公差および/または材料特性に基づいて考えられる僅少な誤差として理解されるべきである。
【0007】
分配区画と活性区画は主延在平面の内部で隣接して配置されるのが好ましく、特に、分配区画は活性区画を取り囲み、および/または2つの側で、特に2つの向かい合う側で、活性区画に接する。分配区画は、バイポーラプレートの主延在平面でポート領域と活性区画との間に配置されるのが好ましい。
【0008】
バイポーラプレートの冷却流体通路構造と燃料通路構造は、主流動方向に沿って冷却流体ないし燃料を貫流させるために構成される。本発明による燃料電池スタックでバイポーラプレートに接する膜電極機構に燃料を供給するために、燃料通路構造は、バイポーラプレートの主延在平面に対して直交する、または実質的に直交する、特に膜電極機構および/またはガス拡散層への燃料の流動を追加的に可能にするのが好ましい。
【0009】
冷却流体を貫流させるための分配通路構造は、主延在平面における主流動方向に対して角度をなして、特に直角に、または実質的に直角に、構成される。すなわち視覚的に表現すると、分配通路構造はバイポーラプレートの主延在平面において活性区画、冷却流体通路構造、および/または燃料通路構造の手前で横向きに延びるのが好ましい。本発明の流体として、本発明による燃料電池スタックのための本発明によるバイポーラプレートの反応物としての水素および酸素が理解されるのが好ましい。
【0010】
本発明によるバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、バイポーラプレートが分配領域で、活性区画におけるバイポーラプレートの最大厚みよりも大きい厚みを有するからである。活性区画におけるバイポーラプレートの厚みは、バイポーラプレートの通路構造を通る断面で見て変化するように構成される。第1のバイポーラプレート半体と第2のバイポーラプレート半体は、大抵、バイポーラプレートが形成されたときに通路構造を形成する高エンボス領域と低エンボス領域とを有する。活性区画におけるバイポーラプレートの最大厚みは、たとえば活性区画を通る断面で見て冷却流体通路構造の深さでもたらされる。本発明によるバイポーラプレートがスタックされて燃料電池スタックをなすとき、各バイポーラプレートの間に膜電極機構が配置される。したがって膜電極機構の厚みが、活性区画でのバイポーラプレートの設計上の構成にあたって考慮される。しかしこのことは、膜電極機構の厚みが存在しない、および/または考慮しなくてよい分配領域については、分配領域におけるバイポーラプレートの厚みに関する潜在的な設計空間が存在することを意味する。この設計空間が本発明のバイポーラプレートにより、特に分配通路構造について、主延在平面における主流動方向に対して角度をなす冷却流体による貫流のために好ましく利用される。換言すると、本発明によるバイポーラプレートの設計上の構成は、分配通路構造についての膜電極機構の厚みの考慮に基づき、活性区画と分配領域との間の厚みの差を、主延在平面における主流動方向に対して角度をなす冷却流体による貫流のために好ましく利用する。
【0011】
それに伴って本発明によるバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、特に分配通路構造が設計スペース最適化されて構成され、それに伴って活性区画での冷却流体の均等な質量流量分布が可能となり、および/または改善されることにある。
【0012】
本発明によるバイポーラプレートの上述した構成要件は、本発明の枠内では、当然ながら燃料電池の周知のエンドバイポーラプレート(一部では「モノポーラプレート」とも呼ばれる)にも適用可能であり、本発明の開示によって同じくカバーされる。
【0013】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、少なくとも1つの分配通路構造は、冷却流体を分配するための少なくとも1つの冷却流体通路構造の各々との流体連通式の接続を有することが意図される。バイポーラプレートの活性区画の少なくとも1つの冷却流体通路構造のすべてが分配通路構造に接続されることは、冷却流体通路構造への、およびそれに伴って活性区画への、冷却流体の特別に好ましい分配を可能にする。このように構成されたバイポーラプレートは、主流動方向に対して横向きに、および/または活性区画にわたって、圧力補償を可能にするという利点がある。このようにして、バイポーラプレートの冷却流体の等しくない質量流量分布が低減され、および/またはさらには防止される。視覚的に表現すると、このように構成されたバイポーラプレートの分配通路構造は冷却流体通路構造を、特にすべての冷却流体通路構造を、活性区画にわたって互いに短絡し、そのようにして、特別に好ましい冷却流体の交換を可能にする。
【0014】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、活性区画の燃料通路構造は多数の通路を有することが意図され、それぞれ少なくとも2つの通路が流体を供給するための共通の燃料供給通路によって少なくとも1つのポートと流体連通式に接続される。本発明によるバイポーラプレートが多数の燃料通路を有していると好ましい。さらに、多数の燃料通路がそれぞれ少なくとも2つまたはそれ以上の燃料供給通路をなすように束ねられると好ましく、それにより、このように束ねられた燃料通路にわたって燃料の均一な流動が行われるという利点がある。活性区画のたとえば2つの燃料通路を束ねて分配領域および/またはポート領域で1つの燃料供給通路にすることは、本発明の枠内では、たとえば共通の通路構造によって、それぞれの流体流の間に物理的な分離がないように流体流を束ねることとして理解される。
【0015】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、少なくとも1つの共通の燃料供給通路は分配領域で少なくとも区域的に分配通路構造の上方に配置され、および/または延在することが意図される。このように構成されたバイポーラプレートは、上に説明した分配領域での利用可能な設計スペースを、特に分配領域での利用可能な厚みを、活用するという利点がある。分配通路構造の上方に少なくとも1つの燃料供給通路が配置されることは、本発明の枠内では、分配通路構造の上方に少なくとも1つの燃料供給通路が少なくとも区域的に配置されることとして理解される。上と下は、主延在平面を通る直交軸の方向として理解され、バイポーラプレートは当然ながら主延在平面に沿って鏡像対称に構成されていてよく、そのようにして少なくとも1つの燃料供給通路が分配通路構造の下方にも、または下方にのみ、配置されていてよい。このように構成されたバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、分配通路構造による冷却流体の分配が活性区画に対して横向きに可能となり、分配通路構造の上方への燃料供給通路の配置によって活性区画への燃料の好ましい供給が可能となるからであり、このときバイポーラプレートの設計スペース利用が改善される。
【0016】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、第1のバイポーラプレート半体および/または第2のバイポーラプレート半体は分配通路構造を構成するために主流動方向に沿った延在において少なくとも2回折曲されて構成されることが意図され、特に、第1のバイポーラプレート半体および/または第2のバイポーラプレート半体は主流動方向に沿った延在において少なくとも1回相互に折曲されて構成される。バイポーラプレートの設計スペースの特別に好ましい活用のために、本発明によるバイポーラプレートは活性区画と分配領域との間で厚み差を有する。バイポーラプレートの設計上の構成でこのような厚み差を考慮するために、本発明の発展例に基づくバイポーラプレートは主流動方向に沿って少なくとも2回折曲されて構成されるのが好ましい。このようにして生じる2回の曲げは互いに逆向きであるのが好ましく、それにより、バイポーラプレートが2回の曲げの前と後で好ましく平行に構成され、および/またはバイポーラプレートの2つの平行な平面の間で曲げがバイポーラプレートの傾斜を生起する。第1のバイポーラプレート半体と第2のバイポーラプレート半体は互いに鏡像対称に構成されるのが好ましく、および/または主流動方向に沿った延在において少なくとも1回相互に折曲されて構成される。このように構成されたバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、特別に簡易な設計上の手段を有する分配通路構造が低コストに構成されるからであり、このときバイポーラプレートが特別に設計スペース最適化されて構成される。
【0017】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、バイポーラプレートは少なくとも1つの冷却流体供給通路構造を有することが意図され、少なくとも1つの冷却流体供給通路構造は少なくとも1つのポート領域から分配通路構造への流体連通式の接続を有する。冷却流体供給通路構造は、冷却流体ポートと分配通路構造との間の流体連通式の接続を可能にし、それに伴い、バイポーラプレートの活性区画のための冷却媒体の提供を可能にする。冷却流体供給通路構造は、バイポーラプレートの主延在平面に配置されるのが好ましい。冷却流体供給通路構造は個々の通路構造で、または束ねられた通路構造で、構成されていてよい。
【0018】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、冷却流体供給通路構造は中空ウェブ状に構成されることが意図され、特に、少なくとも1つの冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成は分配領域におけるバイポーラプレートの厚みを定義し、または実質的に定義する。冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成は、冷却流体供給通路構造がウェブおよび/またはウェブ状の構造に構成されることとして理解される。さらにこのウェブおよび/またはウェブ状の構造は、長尺状の延在を有する周囲の構造に対する細い隆起部である。冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成が特別に好ましい理由は、これが僅少な所要設計スペースしか有さず、内側に位置する冷却流体供給通路構造についても外側に位置する流動についても、好ましい流動案内を可能にするからである。特に冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成は、分配領域でのバイポーラプレートの厚みが冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成によって定義および/または規定されるように、バイポーラプレートの残りの設計上の構成から突き出す。換言すると、冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成は、分配領域におけるバイポーラプレートの最大厚みとなる。
【0019】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、少なくとも1つの冷却流体供給通路構造は少なくとも区域的に少なくとも2つの燃料供給通路を流体連通式に互いに分離することが意図される。冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成により、少なくとも2つの燃料供給通路が流体連通式に互いに分離されるのが特別に好ましい。特に、冷却流体供給通路構造の各々の中空ウェブ状の構成により、それぞれ少なくとも2つの燃料供給通路が流体連通式に互いに分離される。このように構成されたバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成が、そのようにして結果的に内側の構造によっても外側の構造によっても、流動案内機能を果たすからである。一方では、冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成の内部で冷却媒体が案内され、他方では、冷却流体供給通路構造の中空ウェブ状の構成の外側の構造に沿って、少なくとも2つの燃料供給通路が流体連通式に互いに分離される。
【0020】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態では、少なくとも1つの冷却流体供給通路構造は少なくとも部分的に分配通路構造の上方に配置されることが意図され、特に、冷却流体供給通路構造は下方に向かって流体連通式に分配通路構造と接続される。このように構成されたバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、少なくとも1つの冷却流体供給通路構造が少なくとも部分的に分配通路構造の上方に、設計スペース効率的に好ましく配置されるからである。さらに、このように構成されたバイポーラプレートでは、分配通路構造への冷却流体供給通路構造の流体連通式の接続を下方に向かって、すなわち主延在平面に対して少なくとも区域的に直交するように、行うことができる。このように構成されたバイポーラプレートが特別に好ましい理由は、冷却流体供給通路構造と分配通路構造との間の流体連通式の接続のために別途の通路構造が必要なく、それに伴って、設計スペースが最適化されて節減される利点があるからである。
【0021】
第2の態様では、本発明は燃料電池スタックを提示する。燃料電池スタックは少なくとも1つのバイポーラプレートと少なくとも1つの膜電極機構とを有し、少なくとも1つのバイポーラプレートは第1の態様に基づいて構成され、特に、少なくとも1つの膜電極機構は厚みを有し、膜電極機構の厚みは、分配領域におけるバイポーラプレートの厚みと、活性区画におけるバイポーラプレートの最大厚みとの差異に相当し、または実質的に相当する。特に、隣接するバイポーラプレートの間に少なくとも1つのサブガスケットおよび/またはその他のシール材料が配置されていてよい。少なくとも1つのサブガスケットおよび/またはその他のシール材料は、活性区画と分配領域との間の本発明によるバイポーラプレートの厚み差の考察にあたって顧慮しなくてよいという利点がある。サブガスケットおよび/またはその他のシール材料は活性区画にも分配領域にも配置されていてよく、および/またはこれらに対して平行または実質的に平行に配置されていてよいという利点があるからである。それに伴い、少なくとも1つの膜電極機構のガス拡散層は厚みを有するのが好ましく、ガス拡散層の厚みは、分配領域におけるバイポーラプレートの厚みと活性区画におけるバイポーラプレートの最大厚みとの差異に相当し、または実質的に相当する。
【0022】
さらに、本発明による燃料電池スタックでは、第1のバイポーラプレート半体、第2のバイポーラプレート半体、および膜電極機構がプレート状に構成されることが意図されていてよく、膜電極機構は第1のバイポーラプレート半体および/または第2のバイポーラプレート半体の底面よりも小さい底面を有する。さらに、本発明による燃料電池スタックでは、燃料電池スタックが、特に少なくとも1つのバイポーラプレートが、冷却のための、および/または少なくとも1つの膜電極機構に少なくとも1つの流体を供給するための活性区画と、少なくとも1つの流体を分配するための分配区画とを有することが意図されていてよい。さらに、本発明による燃料電池スタックでは、少なくとも1つの膜電極機構は活性区画の領域に配置され、特に活性区画の領域にのみ配置されることが意図されていてよい。この燃料電池スタックは、本発明によるバイポーラプレートとの関連で上ですでに説明した上記の利点を同じく有する。したがって本発明による燃料電池スタックは、特に分配通路構造が設計スペース最適化されて構成され、そのようにして、活性区画での冷却流体の均等な質量流量分布が可能となり、および/または改善されるという理由から特別に好ましい。
【0023】
次に、本発明によるバイポーラプレートならびに本発明による燃料電池スタックについて、図面を参照しながら詳しく説明する。それぞれ次のものを模式的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】3つのバイポーラプレートを有する燃料電池スタックを示す側面図である。
図2】バイポーラプレートを示す斜視図である。
図3】別のバイポーラプレートを示す別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
機能や作用形態が同じ部材には、図1から3ではそれぞれ同一の符号が付されている。
【0026】
図1には、3つのバイポーラプレート10を有する燃料電池スタック100が側面図で示されている。バイポーラプレート10は、主流動方向HRと、第1のバイポーラプレート半体12と、第2のバイポーラプレート半体14と、活性区画40と、分配領域50と、ポート領域60とを有している。活性区画40は、冷却流体KFによる冷却のための少なくとも1つの冷却流体通路構造42(図示せず)と、燃料電池スタック100の少なくとも1つの隣接する膜電極機構110に少なくとも1つの流体F(図示せず)を供給するための少なくとも1つの燃料通路構造44(図示せず)とを有している。第1のバイポーラプレート半体12と第2のバイポーラプレート半体14はそれぞれ分配領域50で分配通路構造52を形成し、分配通路構造52は、ここでは例示として紙面の主流動方向HRに対して角度をなして冷却流体KFで貫流されるために構成されており、バイポーラプレート10は分配領域50で、活性区画40におけるバイポーラプレート10の最大厚みD2よりも大きい厚みD1を有している。膜電極機構110は厚みD3を有しており、ここでは膜電極機構110の厚みD3は、分配領域50におけるバイポーラプレートの厚みD1と、活性区画40におけるバイポーラプレート10の最大厚みD2との差異にそれぞれ相当する。第1のバイポーラプレート半体12と第2のバイポーラプレート半体14は、分配通路構造52を構成するために、主流動方向HRに沿った延在において2回折曲されて構成されており、第1のバイポーラプレート半体12と第2のバイポーラプレート半体14は、主流動方向HRに沿った延在において少なくとも1回相互に折曲されて構成される。
【0027】
図2には、バイポーラプレート10が斜視図で示されている。この斜視図は、冷却流体KFによる冷却のための冷却流体通路構造42と、燃料電池スタック100の少なくとも1つの隣接する膜電極機構110(図示せず)に少なくとも1つの流体Fを供給するための燃料通路構造44とを活性区画40が有する様子を示している。さらに図2は、活性区画40の燃料通路構造44が多数の通路45を有することを示しており、それぞれ3つの通路45が共通の燃料供給通路64によって、流体Fの供給のために少なくとも1つのポートと流体連通式に接続されており、共通の燃料供給通路64は分配領域50で分配通路構造52の上方に配置されている。さらに図2は、バイポーラプレート10が多数の冷却流体供給通路構造43を有することを示しており、冷却流体供給通路構造43は、少なくとも1つのポート領域60から分配通路構造52への流体連通式の接続を有している。冷却流体供給通路構造43は中空ウェブ状に構成されており、冷却流体供給通路構造43の中空ウェブ状の構成は、分配領域50におけるバイポーラプレート10の厚みD1(図示せず)を定義する。さらに冷却流体供給通路構造43は、燃料供給通路64を流体連通式に互いに分離する。冷却流体供給通路構造43は少なくとも部分的に分配通路構造52の上方に配置され、冷却流体供給通路構造43は下方に向かって分配通路構造52と流体連通式に接続されている。
【0028】
図3には、別のバイポーラプレート10が別の斜視図で示されている。バイポーラプレート10の主延在平面HEは破線で図示されている。図3は、活性区画40から主流動方向HEと反対向きに、横向きに配置された分配通路構造52を有する分配領域50およびその後に位置するポート領域60を見た斜視図である。冷却流体通路構造42は部分的に分配通路構造52へと直接連通し、部分的に、ここではそれぞれ3番目の通路が分配通路構造52を介して案内される。分配通路構造52の上方での設計上の構成は、一方では、燃料供給通路64を好ましく流体連通式に互いに分離し、他方では、燃料電池スタック100(図示せず)でバイポーラプレート10を好ましくスタックするために、分配領域50における定義された厚みD1を可能にする。冷却流体KFは冷却流体供給通路構造43を通って分配通路構造52へと案内され、そこから好ましくはすべての冷却流体通路構造42に分配される。
【符号の説明】
【0029】
10 バイポーラプレート
12 第1のバイポーラプレート半体
14 第2のバイポーラプレート半体
40 活性区画
42 冷却流体通路構造
43 冷却流体供給通路構造
44 燃料通路構造
45 通路
50 分配領域
52 分配通路構造
60 ポート領域
64 共通の燃料供給通路
100 燃料電池スタック
110 膜電極機構
D1,D2,D3 厚み
HE 主延在平面
HR 主流動方向
図1
図2
図3