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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240404BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240404BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240404BHJP
   B60L 58/19 20190101ALN20240404BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20240404BHJP
   B60L 58/22 20190101ALN20240404BHJP
【FI】
H02J7/00 K
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/00 302C
H02M7/12 Q
H02M3/28 V
B60L58/19
B60L9/18 P
B60L58/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020118921
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022022883
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】廣田 将義
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082776(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/184630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02M 7/12
H02M 3/28
B60L 58/19
B60L 9/18
B60L 58/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バッテリ部と第2バッテリ部とが直列接続と並列接続とに切り替わる電源装置と、
直流端に入力される直流電力を変換して交流端に交流電力を出力する第1変換回路と、
前記第1変換回路の前記交流端に接続される第1コイルと複数の第2コイルとが磁気結合したトランスと、
前記第1変換回路の前記直流端に接続されるコンデンサと、
を有する電源システムに用いられる変換装置であって、
複数の前記第1変換回路と、
複数の前記第1変換回路にそれぞれ接続される複数の前記トランスと、
複数の第2変換回路と、
複数の第3変換回路と、
を備え、
一の前記第2変換回路は、一の前記トランスの一の前記第2コイルに生じる交流電力を変換して前記第1バッテリ部に直流電力を出力する第1動作と、前記第1バッテリ部から入力される直流電力を変換して一の前記トランスの一の前記第2コイルに交流電力を生じさせる第2動作と、を行い、
他の前記第2変換回路は、他の前記トランスの一の前記第2コイルに生じる交流電力を変換して前記第2バッテリ部に直流電力を出力する第3動作と、前記第2バッテリ部から入力される直流電力を変換して他の前記トランスの一の前記第2コイルに交流電力を生じさせる第4動作と、を行い、
一の前記第3変換回路は、一の前記トランスの他の前記第2コイルに入力される交流電力を変換して共通経路に直流電力を出力する第5動作を行い、
他の前記第3変換回路は、他の前記トランスの他の前記第2コイルに入力される交流電力を変換して前記共通経路に直流電力を出力する第6動作を行う変換装置。
【請求項2】
複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1バッテリ部と前記第2バッテリ部とが直列に接続されている場合に、一の前記第2変換回路に前記第2動作を行わせつつ一の前記第3変換回路に前記第5動作を行わせる第1放電制御と、他の前記第2変換回路に前記第4動作を行わせつつ他の前記第3変換回路に前記第6動作を行わせる第2放電制御と、を行い、
前記第1放電制御による出力電流と前記第2放電制御による出力電流とを調整することにより前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧との差を減少させる請求項1に記載の変換装置。
【請求項3】
一の前記第3変換回路は、前記共通経路からの直流電力を変換して一の前記トランスの他の前記第2コイルに交流電力を出力する第7動作を少なくとも行い、
他の前記第3変換回路は、前記共通経路からの直流電力を変換して他の前記トランスの他の前記第2コイルに交流電力を出力する第8動作を少なくとも行う請求項1又は請求項2に記載の変換装置。
【請求項4】
複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1バッテリ部と前記第2バッテリ部とが直列に接続されている場合に、一の前記第2変換回路に前記第2動作を行わせつつ一の前記第3変換回路に前記第5動作を行わせる制御と、他の前記第3変換回路に前記第8動作を行わせつつ他の前記第2変換回路に前記第3動作を行わせる制御と、を共に行う第1充放電制御と、他の前記第2変換回路に前記第4動作を行わせつつ他の前記第3変換回路に前記第6動作を行わせる制御と、一の前記第3変換回路に前記第7動作を行わせつつ一の前記第2変換回路に前記第1動作を行わせる制御と、を共に行う第2充放電制御と、を選択的に行う請求項3に記載の変換装置。
【請求項5】
複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧との差が一定値以上である場合に、前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧の電圧差を減少させる動作を複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路に行わせる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の変換装置。
【請求項6】
前記第1バッテリ部及び前記第2バッテリ部を前記直列接続と前記並列接続とに切り替える切替部を備え、
前記切替部は、前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧との差が閾値未満であることを条件として前記直列接続から前記並列接続へ切り替える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される蓄電システムが例示されている。この蓄電システムは、直列及び並列に切り替え可能な複数の蓄電モジュールと、外部充電器から供給される電力に基づいて複数の蓄電モジュールを充電し得る車載充電器を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-80473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される蓄電システムは、複数の蓄電モジュールの並列切り替えに先立ち、複数の蓄電モジュール間の電位差が所定の閾値以下となるように電力変換器を動作させる電圧均衡化処理を実施する。しかし、この蓄電システムは、電圧均衡化処理の際に、一次側のスイッチング回路及びコンデンサを経由して電力を還流する必要があり、コンデンサには多大なリップル電流が流れるため、コンデンサの大容量化が必須である。従って、この蓄電システムは、コンデンサの大型化、高コスト化が懸念される。
【0005】
本開示は、第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧の差を減少させる動作を、コンデンサの負荷を抑えつつ行い得る技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである変換装置は、
第1バッテリ部と第2バッテリ部とが直列接続と並列接続とに切り替わる電源装置と、
直流端に入力される直流電力を変換して交流端に交流電力を出力する第1変換回路と、
前記第1変換回路の前記交流端に接続される第1コイルと複数の第2コイルとが磁気結合したトランスと、
前記第1変換回路の前記直流端に接続されるコンデンサと、
を有する電源システムに用いられる変換装置であって、
複数の前記第1変換回路と、
複数の前記第1変換回路にそれぞれ接続される複数の前記トランスと、
複数の第2変換回路と、
複数の第3変換回路と、
を備え、
一の前記第2変換回路は、一の前記トランスの一の前記第2コイルに生じる交流電力を変換して前記第1バッテリ部に直流電力を出力する第1動作と、前記第1バッテリ部から入力される直流電力を変換して一の前記トランスの一の前記第2コイルに交流電力を生じさせる第2動作と、を行い、
他の前記第2変換回路は、他の前記トランスの一の前記第2コイルに生じる交流電力を変換して前記第2バッテリ部に直流電力を出力する第3動作と、前記第2バッテリ部から入力される直流電力を変換して他の前記トランスの一の前記第2コイルに交流電力を生じさせる第4動作と、を行い、
一の前記第3変換回路は、一の前記トランスの他の前記第2コイルに入力される交流電力を変換して共通経路に直流電力を出力する第5動作を行い、
他の前記第3変換回路は、他の前記トランスの他の前記第2コイルに入力される交流電力を変換して前記共通経路に直流電力を出力する第6動作を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一つである変換装置は、第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧の差を減少させる動作を、コンデンサの負荷を抑えつつ行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の第1実施形態の電源システムを含む車載システムを概略的に例示するブロック図である。
図2図2は、図1の車載システムを搭載した車両を模式的に例示する模式図である。
図3図3は、図1の電源システムにおける電力変換部の一部の具体的構成を例示する回路図である。
図4図4は、図1の電源システムにおける電力変換部の一部(図3とは異なる部分)の具体的構成を例示する回路図である。
図5図5は、図1の電源システムにおける外部充電時の動作の一例を説明する説明図である。
図6図6は、制御装置による電圧値差調整制御の流れを例示するフローチャートである。
図7図7は、図1の電源システムにおいて第1充放電制御が行われている状態を説明する説明図である。
図8図8は、図1の電源システムにおいて第1放電制御と第2放電制御とが共に行われている状態を説明する説明図である。
図9図9は、図1の電源システムにおいて第2充放電制御が行われている状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔7〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕第1バッテリ部と第2バッテリ部とが直列接続と並列接続とに切り替わる電源装置と、
直流端に入力される直流電力を変換して交流端に交流電力を出力する第1変換回路と、
前記第1変換回路の前記交流端に接続される第1コイルと複数の第2コイルとが磁気結合したトランスと、
前記第1変換回路の前記直流端に接続されるコンデンサと、
を有する電源システムに用いられる変換装置であって、
複数の前記第1変換回路と、
複数の前記第1変換回路にそれぞれ接続される複数の前記トランスと、
複数の第2変換回路と、
複数の第3変換回路と、
を備え、
一の前記第2変換回路は、一の前記トランスの一の前記第2コイルに生じる交流電力を変換して前記第1バッテリ部に直流電力を出力する第1動作と、前記第1バッテリ部から入力される直流電力を変換して一の前記トランスの一の前記第2コイルに交流電力を生じさせる第2動作と、を行い、
他の前記第2変換回路は、他の前記トランスの一の前記第2コイルに生じる交流電力を変換して前記第2バッテリ部に直流電力を出力する第3動作と、前記第2バッテリ部から入力される直流電力を変換して他の前記トランスの一の前記第2コイルに交流電力を生じさせる第4動作と、を行い、
一の前記第3変換回路は、一の前記トランスの他の前記第2コイルに入力される交流電力を変換して共通経路に直流電力を出力する第5動作を行い、
他の前記第3変換回路は、他の前記トランスの他の前記第2コイルに入力される交流電力を変換して前記共通経路に直流電力を出力する第6動作を行う変換装置。
【0011】
〔1〕の変換装置は、第1バッテリ部と第2バッテリ部とが直列に接続されているときに第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧の差が生じている場合に、第1バッテリ部の充電又は放電と第2バッテリ部の充電又は放電を別々の経路で行い得る。よって、この変換装置は、出力電圧の差を低減する動作が可能である。しかも、この変換装置は、第1バッテリ部の充電又は放電と第2バッテリ部の充電又は放電を別々の経路で行う場合に、第1変換回路の直流端に接続されるコンデンサに対する影響を抑えて行い得る。よって、この変換装置は、第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧の差を減少させる動作を、コンデンサの負荷を抑えつつ行い得る。
【0012】
〔2〕上記の〔1〕に記載の変換装置において、以下の特徴を有する変換装置が〔2〕の変換装置である。複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、前記第1バッテリ部と前記第2バッテリ部とが直列に接続されている場合に、一の前記第2変換回路に前記第2動作を行わせつつ一の前記第3変換回路に前記第5動作を行わせる第1放電制御を行う。前記制御装置は、他の前記第2変換回路に前記第4動作を行わせつつ他の前記第3変換回路に前記第6動作を行わせる第2放電制御を行う。前記制御装置は、前記第1放電制御による出力電流と前記第2放電制御による出力電流とを調整することにより前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧との差を減少させる。
【0013】
上記の〔2〕の変換装置は、第1バッテリ部から電力に基づいて共通経路に放電する第1放電制御と、第2バッテリ部からの電力に基づいて共通経路に放電する第2放電制御と、を別個に行うことができ、別個に放電電流を調整することができる。そして、この変換装置は、コンデンサの負荷を抑えつつ第1放電制御及び第2放電制御を行うことができる。
【0014】
〔3〕上記の〔1〕又は〔2〕に記載の変換装置において、以下の特徴を有する変換装置が〔3〕の変換装置である。一の前記第3変換回路は、前記共通経路からの直流電力を変換して一の前記トランスの他の前記第2コイルに交流電力を出力する第7動作を行う。他の前記第3変換回路は、前記共通経路からの直流電力を変換して他の前記トランスの他の前記第2コイルに交流電力を出力する第8動作を行う。
【0015】
上記の〔3〕の変換装置は、共通経路側から一の第3変換回路、一のトランス、一の第2変換回路を介して第1バッテリ部に電力を供給する充電動作も行い得る。また、この変換装置は、共通経路側から他の第3変換回路、他のトランス、他の第2変換回路を介して第2バッテリ部に電力を供給する充電動作も行い得る。そして、この変換装置は、コンデンサの負荷を抑えつつこれらの充電動作を行うことができる。
【0016】
〔4〕上記の〔3〕に記載の変換装置において、以下の特徴を有する変換装置が〔4〕の変換装置である。〔4〕の変換装置は、複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、第1充放電制御と、第2充放電制御と、を選択的に行う。上記第1充放電制御は、前記第1バッテリ部と前記第2バッテリ部とが直列に接続されている場合に、一の前記第2変換回路に前記第2動作を行わせつつ一の前記第3変換回路に前記第5動作を行わせる制御と、他の前記第3変換回路に前記第8動作を行わせつつ他の前記第2変換回路に前記第3動作を行わせる制御と、を共に行う制御である。上記第2充放電制御は、複数の前記バッテリユニットが直列に接続されている場合に、他の前記第2変換回路に前記第4動作を行わせつつ他の前記第3変換回路に前記第6動作を行わせる制御と、一の前記第3変換回路に前記第7動作を行わせつつ一の前記第2変換回路に前記第1動作を行わせる制御と、を共に行う制御である。
【0017】
上記の〔4〕の変換装置は、第1充放電制御を行うことにより第1バッテリ部からの電力に基づいて第2バッテリ部を充電することができる。また、この変換装置は、第2充放電制御を行うことにより第2バッテリ部からの電力に基づいて第1バッテリ部を充電することができる。
【0018】
〔5〕上記の〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の変換装置において、以下の特徴を有する変換装置が〔5〕の変換装置である。〔5〕の変換装置は、複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧との差が一定値以上である場合に、前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧の電圧差を減少させる動作を複数の前記第2変換回路及び複数の前記第3変換回路に行わせる。
【0019】
上記の〔5〕の変換装置は、第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧との差が一定値以上である場合に制御によって出力電圧の電圧差を減少させることができる。
【0020】
〔6〕上記の〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の変換装置において、以下の特徴を有する変換装置が〔6〕の変換装置である。〔6〕の変換装置は、前記第1バッテリ部及び前記第2バッテリ部を直列接続と並列接続とに切り替える切替部を備える。前記切替部は、前記第1バッテリ部の出力電圧と前記第2バッテリ部の出力電圧との差が閾値未満であることを条件として前記直列接続から前記並列接続へ切り替える。
【0021】
上記の〔6〕の変換装置は、第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧との差が閾値未満であることを条件として電源装置を直列接続から並列接続へ切り替えるため、出力電圧が閾値以上である状態で並列接続に切り替わることを防ぐことができる。
【0022】
〔7〕上記の〔1〕から〔6〕のいずれか一つに記載の変換装置において、以下の特徴を有する変換装置が〔7〕の変換装置である。〔7〕の変換装置は、前記共通経路に蓄電部が接続されている。
【0023】
上記の〔7〕の変換装置は、第1バッテリ部からの電力に基づいて蓄電部に放電する動作と、第2バッテリ部からの電力に基づいて蓄電部に放電する動作とを別々に経路にて個別に行うことができる。
【0024】
<第1実施形態>
1.電源システムの概要
図1には、本開示の第1実施形態に係る変換装置10が示される。変換装置10は車両用の電源システムとして構成されている。
【0025】
(電源システムの構成)
図2に示されるように、変換装置10は、車両1に搭載される車載システム2の一部として用いられる。車両1は、変換装置10を搭載した車両であり、例えば、PHEV、EV等の車両である。図2のように、車載システム2は、電源システム3、高圧負荷4、補機系負荷6などを含む。電源システム3は、変換装置10と低圧バッテリ32と高圧バッテリ34とを有する。車両1は、接続端子を有し、接続端子に対して外部交流電源190(図1)が電気的に接続され得る。変換装置10は、図1のように外部交流電源190が電気的に接続された状態と外部交流電源190が接続されていない状態とに切り替わり得る。
【0026】
図1のように、変換装置10は、電力制御装置12及びスイッチ部14を有する。電力制御装置12は、電力変換部16及び制御装置18を有する。
【0027】
変換装置10は、車両1に対して外部交流電源190が接続された際に、外部交流電源190から供給される交流電力に基づいて高圧バッテリ34及び低圧バッテリ32を充電し得るシステムである。また、変換装置10は、車両走行時に、高圧負荷4や補機系負荷6に電力を供給し得るシステムである。
【0028】
図2に示される高圧負荷4は、高圧バッテリ34から電力供給を受けて動作し得る負荷である。高圧負荷4は、例えば駆動部8と、図示されていないPCU(Power Control Unit)とを含む。このPCUは、高圧バッテリ34の出力電力を、駆動部8を駆動するための電力に変換し、駆動部8に供給する装置である。このPCUは、例えばインバータを備え、直流から交流(例えば三相交流)を生成して、駆動部8に供給する。駆動部8は、主機系モータ等の電気的駆動装置である。駆動部8は、高圧バッテリ34から供給される電力に基づいて車両1の車輪を回転させる駆動力を与える装置である。
【0029】
補機系負荷6は、例えば、エンジン及びモータを稼動するのに必要な付属機器である。この付属機器は、例えば、セルモータ、オルタネータ及びラジエータクーリングファン等である。補機系負荷6は、電動パワーステアリングシステム、電動パーキングブレーキ、照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置等を含んでいてもよい。
【0030】
本明細書において、車両走行時とは、車両が移動している状態を含むが、車両が移動している状態に限らない。車両走行時は、アクセルを踏めば車両が移動する状態も含む。車両走行時は、車両が移動せずに停止しつつ補機系負荷6のいずれか又は全てに電力を供給している状態を含む。車両1がPHEVであれば、車両走行時はエンジンのアイドリング状態をも含む。
【0031】
高圧バッテリ34は、電源装置の一例に相当する。高圧バッテリ34は、第1バッテリ部34Aと第2バッテリ部34Bとが直列接続と並列接続とに切り替わる電源装置である。高圧バッテリ34は、充放電可能に構成されている。高圧バッテリ34は、駆動部8を駆動するための高電圧(例えば、約300V)を出力する。高圧バッテリ34の満充電時の出力電圧は、低圧バッテリ32の満充電時の出力電圧よりも高い。高圧バッテリ34は、リチウムイオン電池によって構成されていてもよく、その他の種類の蓄電池によって構成されていてもよい。
【0032】
低圧バッテリ32は、蓄電部の一例に相当する。低圧バッテリ32は、充放電可能に構成されている。低圧バッテリ32は、補機系負荷6に電力を供給する。低圧バッテリ32は、鉛蓄電池によって構成されていてもよく、その他の種類の蓄電池によって構成されていてもよい。低圧バッテリ32は、満充電時に所定電圧(例えば12V)を出力する。低圧バッテリ32の高電位側の電極は、共通経路62の一方の導電路62Aに電気的に接続され、低電位側の電極は、他方の導電路62Bに電気的に接続されている。
【0033】
制御装置18は、車載システム2内の装置に対して各種制御を行う装置である。制御装置18は、複数の電子制御装置によって構成されていてもよく、単一の電子制御装置によって構成されていてもよい。制御装置18は、電力変換部16の制御を行い得る装置である。具体的には、制御装置18は、PFC(Power Factor Correction)コンバータ40,50、第1変換回路42,52、トランス48,58、第2変換回路44,54、第3変換回路46,56を制御し得る。
【0034】
スイッチ部14は、複数のスイッチ14A,14B,14Cを備える。スイッチ部14は、第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bを直列接続と並列接続とに切り替える切替回路である。スイッチ部14は、スイッチ14Aがオン状態であり且つスイッチ14B,14Cがオフ状態であるときに第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bを直列接続とする。スイッチ部14は、スイッチ14Aがオフ状態であり且つスイッチ14B,14Cがオン状態であるときに第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bを並列接続とする。スイッチ部14は、制御装置18によって制御される。制御装置18は、スイッチ部14の切り替えを制御し、スイッチ14Aをオン状態とし且つスイッチ14B,14Cをオフ状態にする制御と、スイッチ14Aをオフ状態とし且つスイッチ14B,14Cをオン状態にする制御とを行い得る。スイッチ部14及び制御装置18は、切替部の一例に相当する。
【0035】
変換装置10が搭載される車両がEVであれば、図1図2に示される構成によりEVが走行し得る。変換装置10が搭載される車両がPHEVであれば、当該車両は駆動部8の他にエンジンを備えている。従って、車両がPHEVであれば、エンジンと駆動部8とが協調して動作することによりPHEVが走行し得る。
【0036】
電力変換部16は、主に、PFCコンバータ40,50、第1変換回路42,52、トランス48,58、第2変換回路44,54、第3変換回路46,56を備える。更に、電力変換部16は、ノイズフィルタ部91,92,94,96などを備える。ノイズフィルタ部91,92,94、96は経路のノイズを除去する部分である。
【0037】
電力変換部16は、車載用の充電装置として構成されている。電力変換部16は、OBC(On Board Charger)として機能する。電力変換部16は、車両1の外部にある外部交流電源190(例えば商用電源)が車両1に接続された場合に、外部交流電源190から供給される電力に基づき、主電源として機能する高圧バッテリ34を充電する動作を行い得る。電力変換部16は、外部交流電源190が車両1に接続された場合に、外部交流電源190から供給される電力に基づいて低圧バッテリ32を充電する動作も行い得る。図3図4には、電力変換部16の一部についての具体的回路が例示される。
【0038】
PFCコンバータ40,50は、力率改善回路として機能し、交流電力と直流電力とを電力変換する双方向AC/DCコンバータとして構成されている。図1では、PFCコンバータ40,50は、双方向AC/DC PFCとも称される。図3のように、PFCコンバータ40は、インダクタ40A,40Bと、フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子40C,40D,40E,40Fとを含む。スイッチ素子40C,40D,40E,40Fにより構成されるフルブリッジ回路の2つの入力端は、それぞれインダクタ40A,40Bに電気的に接続されている。このフルブリッジ回路の2つの出力端はコンデンサ41の両端に電気的に接続されている。PFCコンバータ40は、外部充電時に、外部交流電源190から端子40M,40Nに入力される交流電圧から直流電圧を生成して、コンデンサ41の両端に直流電圧を印加する。PFCコンバータ40が、コンデンサ41の両端間に直流電圧を印加することに応じて、第1変換回路42の端子42M,42N間に直流電圧が印加される。
【0039】
図4のように、PFCコンバータ50は、PFCコンバータ40と同一の構成をなす。PFCコンバータ50は、インダクタ50A,50Bと、スイッチ素子50C,50D,50E,50Fとを含む。スイッチ素子50C,50D,50E,50Fにより構成されるフルブリッジ回路の2つの入力端は、それぞれインダクタ50A,50Bに電気的に接続されている。PFCコンバータ40は、外部充電時に、外部交流電源190から端子50M,50Nに入力される交流電圧から直流電圧を生成して、コンデンサ51の両端間及び第1変換回路52の端子52M,52N間に直流電圧を印加する。
【0040】
図3のように、コンデンサ41は、第1変換回路42の直流端の一例である端子42M,42Nに電気的に接続される。コンデンサ41の一方の電極は端子42Mに電気的に接続され、コンデンサ41の他方の電極は端子42Nに電気的に接続される。
【0041】
図4のように、コンデンサ51は、第1変換回路52の直流端である端子52M,52Nに電気的に接続される。コンデンサ51の一方の電極は端子52Mに電気的に接続され、コンデンサ51の他方の電極は端子52Nに電気的に接続される。
【0042】
第1変換回路42,52は、DC/ACインバータ回路として機能する。図1では、第1変換回路42,52は、それぞれDC/ACフルブリッジ回路42,52とも称される。第1変換回路42は、PFCコンバータ40から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換回路として機能する。図3のように、第1変換回路42は、フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子42C,42D,42E,42Fとを含む。スイッチ素子42C,42D,42E,42Fにより構成されるフルブリッジ回路の2つの出力端子の一方の端子42Qは、第1トランス48の端部48M(コイル48Aの両端)の一方の端部に電気的に接続されている。上記2つの出力端子の他方の端子42Rは、端部48Mの他方の端部に電気的に接続されている。端子42Q,42Rは、第1変換回路42の交流端の一例に相当する。第1変換回路42は、PFCコンバータ40から端子42M,42Nに入力される直流電圧を交流電圧に変換して端子42Q,42Rから出力し、その交流電圧をトランス48の第1コイル48Aに印加する。
【0043】
図4のように、第1変換回路52は、第1変換回路42と同一の構成をなす。第1変換回路52は、スイッチ素子52C,52D,52E,52Fにより構成されるフルブリッジ回路の一方の出力端子52Qが、トランス58の第1コイル58Aの一方の端部に電気的に接続され、他方の端子52Rが、コイル58Aの他方の端部に電気的に接続されている。端子52Q,52Rは、第1変換回路52の交流端の一例に相当する。第1変換回路52は、PFCコンバータ50から端子52M,52Nに入力される直流電圧を交流電圧に変換して端子52Q,52Rから出力し、その交流電圧をトランス58の第1コイル58Aに印加する。
【0044】
図3図4のように、複数のトランス48,58は、複数の第1変換回路42,52にそれぞれ接続されている。図3のように、トランス48は、第1コイル48Aと、複数の第2コイル48B,48Cとを備える。第1コイル48Aは、第1変換回路42の交流端に電気的に接続されるコイルである。第1コイル48Aと複数の第2コイル48B,48Cとは、磁気結合されている。以下の説明では、トランス48は、一のトランス48とも称される。第2コイル48Bは、一の第2コイル48Bとも称される。第2コイル48Cは、他の第2コイル48Cとも称される。
【0045】
図4のように、トランス58は、第1コイル58Aと、複数の第2コイル58B,58Cとを備える。第1コイル58Aは、第1変換回路52の交流端に電気的に接続されるコイルである。第1コイル58Aと複数の第2コイル58B,58Cとは、磁気結合されている。以下の説明では、トランス58は、他のトランス58とも称される。第2コイル58Bは、一の第2コイル58Bとも称される。第2コイル58Cは、他の第2コイル58Cとも称される。
【0046】
第2変換回路44,54は、双方向AC/DCコンバータとして機能し、双方向に交流電力と直流電力とを変換する機能を有する。図1では、第2変換回路44,54は、それぞれAC/DCフルブリッジ回路44,54とも称される。
【0047】
第2変換回路44は、一の第2変換回路の一例に相当し、一の第2変換回路44とも称される。第2変換回路44は、フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子44C,44D,44E,44Fとコンデンサ44Hとを含む。スイッチ素子44C,44D,44E,44Fにより構成されるフルブリッジ回路の1対の端子の一方は、第2コイル48Bの一端に電気的に接続され、他方は、第2コイル48Bの他端に電気的に接続されている。第2変換回路44は、トランス48の第2コイル48Bに生じる交流電力を変換して第1バッテリ部34Aに直流電力を出力する第1動作を行い得る。第1動作時には、トランス48の端部48N(コイル48Bの両端)に印加された出力電圧(交流電圧)が直流電圧に変換され、その直流電圧が端子44M,44Nに印加される。端子44Mは、第1バッテリ部34Aにおける最も電位の高い電極に電気的に接続され得る導電路である。端子44Nは、第1バッテリ部34Aにおける最も電位の低い電極に電気的に接続され得る導電路である。なお、端子44M,44Nと第1バッテリ部34Aとの間には、図示されないリレーやヒューズが介在していてもよい。第2変換回路44は、第1バッテリ部34Aから入力される直流電力を変換してトランス48の第2コイル48Bに交流電力を生じさせる第2動作も行い得る。第2動作時には、端子44M,44Nに印加された直流電圧が交流電圧に変換され、トランス48の第2コイル48Bに印加される。
【0048】
第2変換回路54は、他の第2変換回路の一例に相当し、他の第2変換回路54とも称される。第2変換回路54は、第2変換回路44と同一の回路構成をなす。第2変換回路54は、フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子54C,54D,54E,54Fとコンデンサ54Hとを含む。スイッチ素子54C,54D,54E,54Fにより構成されるフルブリッジ回路の1対の端子のうちの一方は、第2コイル58Bの一端に電気的に接続され、他方は、第2コイル58Bの他端に電気的に接続されている。第2変換回路54は、トランス58の第2コイル58Bに生じる交流電力を変換して第2バッテリ部34Bに直流電力を出力する第3動作を行い得る。第3動作時には、トランス58の端部58N(コイル58Bの両端)に印加された出力電圧(交流電圧)が直流電圧に変換され、その直流電圧が端子54M,54Nに印加される。端子54Mは、第2バッテリ部34Bにおける最も電位の高い電極に電気的に接続され得る導電路であり、端子54Nは、第2バッテリ部34Bにおける最も電位の低い電極に電気的に接続され得る導電路である。なお、端子54M,54Nと第2バッテリ部34Bとの間には、図示されないリレーやヒューズが介在していてもよい。第2変換回路54は、第2バッテリ部34Bから入力される直流電力を変換してトランス58の第2コイル58Bに交流電力を生じさせる第4動作も行い得る。第4動作時には、端子54M,54Nに印加された直流電圧が交流電圧に変換され、トランス58の第2コイル58Bに印加される。
【0049】
第3変換回路46,56は、双方向AC/DCコンバータとして機能し、双方向に交流電力と直流電力とを変換する機能を有する。図1では、第3変換回路46,56は、それぞれAC/DCフルブリッジ回路46,56とも称される。
【0050】
第3変換回路46は、一の第3変換回路の一例に相当し、一の第3変換回路46とも称される。第3変換回路46は、フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子46C,46D,46E,46Fとコンデンサ46Hとを含む。スイッチ素子46C,46D,46E,46Fにより構成されるフルブリッジ回路の1対の端子の一方は、第2コイル48Cの一端に電気的に接続され、他方は、第2コイル48Cの他端に電気的に接続されている。第3変換回路46は、トランス48の第2コイル48Cに生じる交流電力を変換して共通経路62に直流電力を出力する第5動作を行い得る。第5動作時には、トランス48の端部48P(コイル48Cの両端)に印加された出力電圧(交流電圧)が直流電圧に変換され、その直流電圧が端子46M,46Nに印加される。端子46Mは、共通経路62における一方の導電路62Aに電気的に接続される端子であり、低圧バッテリ32における最も電位の高い電極に電気的に接続される端子である。端子46Nは、共通経路62における他方の導電路62Bに電気的に接続される端子であり、低圧バッテリ32における最も電位の低い電極に電気的に接続される端子である。なお、端子46M,46Nと低圧バッテリ32との間には、図示されないリレーやヒューズが介在していてもよい。第3変換回路46は、共通経路62に入力される直流電力を変換してトランス48の第2コイル48Cに交流電力を生じさせる第7動作も行い得る。第7動作時には、端子46M,46Nに印加された直流電圧が交流電圧に変換され、トランス48の第2コイル48Cに印加される。
【0051】
第3変換回路56は、他の第3変換回路の一例に相当し、他の第3変換回路56とも称される。第3変換回路56は、第3変換回路46と同一の回路構成をなす。第3変換回路56は、フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子56C,56D,56E,56Fとコンデンサ56Hとを含む。スイッチ素子56C,56D,56E,56Fにより構成されるフルブリッジ回路の1対の端子のうちの一方は、第2コイル58Cの一端に電気的に接続され、他方は、第2コイル58Cの他端に電気的に接続されている。第3変換回路56は、トランス58の第2コイル58Cに生じる交流電力を変換して共通経路62に直流電力を出力する第6動作を行い得る。第6動作時には、トランス58の端部58P(コイル58Cの両端)に印加された出力電圧(交流電圧)が直流電圧に変換され、その直流電圧が端子56M,56Nに印加される。端子56Mは、共通経路62を構成する一方の導電路62Aに電気的に接続される端子であり、低圧バッテリ32おける最も電位の高い電極に電気的に接続される端子である。端子56Nは、共通経路62を構成する他方の導電路62Bに電気的に接続される端子であり、低圧バッテリ32における最も電位の低い電極に電気的に接続され得る導電路である。なお、端子56M,56Nと低圧バッテリ32との間には、図示されないリレーやヒューズが介在していてもよい。第3変換回路56は、共通経路62に印加される直流電力を変換してトランス58の第2コイル58Cに交流電力を生じさせる第8動作も行い得る。第8動作時には、端子56M,56Nに印加された直流電圧が交流電圧に変換され、トランス58の第2コイル58Cに印加される。
【0052】
(外部充電時の基本動作)
次の説明は外部充電時の変換装置10の動作に関する説明である。外部充電時には、変換装置10は、図示が省略されたケーブルなどを介して車両の外部にある電源である外部交流電源190に電気的に接続され得る。車両1(図2)に対して外部交流電源190が接続され、外部交流電源190と変換装置10とが電気的に接続されると、例えば、低圧バッテリ32から制御装置18へ電力が供給される。外部交流電源190が変換装置10に電気的に接続されたことの検知、及び制御装置18への電力供給の制御は制御装置18とは別の図示されていない制御装置により行われる。
【0053】
外部交流電源190の接続に応じて制御装置18へ電力が供給され始めると、制御装置18は、電力変換部16を動作させる。具体的には、制御装置18は、外部交流電源190からの交流電圧が高圧の直流電圧に変換されて第1バッテリ部34Aに供給されるようにPFCコンバータ40、第1変換回路42、第2変換回路44のそれぞれに電力変換動作を行わせる。このようにPFCコンバータ40、第1変換回路42、第2変換回路44の経路において電力変換動作(第1経路の変換動作)がなされると、第1バッテリ部34Aは外部交流電源190からの電力に基づいて充電される(図5の矢印A参照)。更に、制御装置18は、外部交流電源190からの交流電圧が高圧の直流電圧に変換されて第2バッテリ部34Bに供給されるようにPFCコンバータ50、第1変換回路52、第2変換回路54のそれぞれに電力変換動作を行わせる。このようにPFCコンバータ50、第1変換回路52、第2変換回路54の経路において電力変換動作(第2経路の変換動作)がなされると、第2バッテリ部34Bは外部交流電源190からの電力に基づいて充電される(図5の矢印B参照)。
【0054】
外部交流電源190からの電力に基づいて高圧バッテリ34の充電を行う外部充電時には、第1バッテリ部34Aと第2バッテリ部34Bとが直列に接続されている場合、上記の第1経路の変換動作によって第1バッテリ部34Aが充電される。そして、上記の第2経路の変換動作によって第2バッテリ部34Bが充電される。制御装置18は、上記の第1経路の変換動作によって第1バッテリ部34Aに供給される出力電流を制御によって増減することができる。制御装置18は、上記の第2経路の変換動作によって第2バッテリ部34Bに供給される出力電流も制御によって増減することができる。つまり、制御装置18は、第1バッテリ部34A、第2バッテリ部34Bのそれぞれに対する出力電流を個別に制御することができる。
【0055】
第1バッテリ部34Aと第2バッテリ部34Bとが並列に接続されている場合、上記の第1経路の変換動作及び上記の第2経路の変換動作のいずれか一方の動作又は両方の動作に応じて第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bが充電される。なお、高圧バッテリ34を上記の直列接続にした上での充電は第1充電条件の成立時(例えば、外部交流電源190の電圧が相対的に高い800Vのとき)に行うことができる。また、高圧バッテリ34を上記の並列接続にした上での充電は第2充電条件の成立時(例えば、外部交流電源190の電圧が相対的に低い400Vのとき)に行うことができる。
【0056】
上述の外部充電時には、低圧バッテリ32を充電することもできる。この場合、制御装置18は、外部交流電源190からの交流電圧が低圧の直流電圧に変換されて低圧バッテリ32に供給されるようにPFCコンバータ40、第1変換回路42、第3変換回路46に電力変換動作(第3経路の変換動作)を行わせてもよい(図5の矢印C参照)。或いは、制御装置18は、外部交流電源190からの交流電圧が低圧の直流電圧に変換されて低圧バッテリ32に供給されるようにPFCコンバータ50、第1変換回路52、第3変換回路56に電力変換動作(第3経路の変換動作)を行わせてもよい(図5の矢印D参照)。
【0057】
(直列接続時の通常動作)
制御装置18は、高圧バッテリ34が上述の直列接続のときに図6に示される電圧値差調整制御を行うことができる。例えば、制御装置18は、車両の始動スイッチがオン状態となっている車両始動中(例えば、上述の車両の走行時)に図6の制御を繰り返し行ってもよい。或いは、制御装置18は、外部交流電源190と変換装置10とが電気的に接続された場合に図6の制御を開始してもよい。
【0058】
制御装置18は、図6の制御を開始した場合、ステップS1において第1バッテリ部34Aの出力電圧値V1及び第2バッテリ部34Bの出力電圧値V2を検出する。出力電圧値V1及び出力電圧値V2の検出方法は、車載バッテリの出力電圧を検出する様々な方法を採用し得る。制御装置18は、ステップS1の後、ステップS2において出力電圧値V1と出力電圧値V2との差が一定値α以上であるか否かを判定する。制御装置18は、ステップS2において、出力電圧値V1と出力電圧値V2との差が一定値α以上であると判定した場合、ステップS3において出力電圧値V1が出力電圧値V2よりも大きいか否かを判定する。
【0059】
制御装置18は、出力電圧値V1が出力電圧値V2よりも大きいと判定した場合、ステップS4において、第2DCDC変換部の出力電流値の上限を現在よりも低下させ、第1DCDC変換部の出力電流値の上限は現在のままとする。第1DCDC変換部は、第2変換回路44とトランス48と第3変換回路46とによって構成される変換部であり、第1バッテリ部34Aの充放電を行う変換部である。第2DCDC変換部は、第2変換回路54とトランス58と第3変換回路56とによって構成される変換部であり、第2バッテリ部34Bの充放電を行う変換部である。ここでの出力電流は、第3変換回路46から低圧バッテリ32に電流が流れる場合の電流値が第1DCDC変換部における正の値の出力電流値であり、低圧バッテリ32から第3変換回路46に電流が流れる場合の電流値が負の値の出力電流値である。そして、第3変換回路56から低圧バッテリ32に電流が流れる場合の電流値が第2DCDC変換部における正の値の出力電流値であり、低圧バッテリ32から第3変換回路56に電流が流れる場合の電流値が負の値の出力電流値である。第2DCDC変換部の出力電流値の上限は現在のままとし、第1DCDC変換部の出力電流値の上限を現在よりも低下させた場合、出力電圧値V2が出力電圧値V1に近づくように第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bの充電電圧が調整される。
【0060】
制御装置18は、ステップS4の後のステップS6では、第2変換回路44に上記の第2動作を行わせつつ第3変換回路46に上記の第5動作を行わせる制御と、第3変換回路56に上記の第8動作を行わせつつ第2変換回路54に第3動作を行わせる制御とを、共に行ってもよい。このように第1充放電制御が行われると、図7のように、第1DCDC変換部では、第1バッテリ部34Aからの電力に基づいて共通経路62に直流電力を供給する制御が行われる。そして、第2DCDC変換部では、共通経路62からの電力に基づいて第2バッテリ部34Bに直流電力を供給する制御が行われる。
【0061】
制御装置18は、ステップS4の後のステップS6では、第2変換回路44に上記の第2動作を行わせつつ第3変換回路46に上記の第5動作を行わせる第1放電制御と、第2変換回路54に上記の第4動作を行わせつつ第3変換回路56に上記の第6動作を行わせる第2放電制御とを共に行ってもよい。この場合、図8のように、第1DCDC変換部では、第1バッテリ部34Aからの電力に基づいて共通経路62に直流電力を供給する制御が行われる。そして、第2DCDC変換部では、第2バッテリ部34Bからの電力に基づいて共通経路62に直流電力を供給する制御が行われる。この場合、第1DCDC変換部によって共通経路62に出力する電流を、第2DCDC変換部によって共通経路62に出力する電流よりも大きくすればよい。即ち、制御装置18は、第1放電制御による出力電流と第2放電制御による出力電流とを調整することにより第1バッテリ部34Aの出力電圧と第2バッテリ部34Bの出力電圧との差を減少させることができる。
【0062】
制御装置18は、ステップS3において出力電圧値V1が出力電圧値V2以下であると判定した場合、ステップS5において、第1DCDC変換部の出力電流値の上限を現在よりも低下させ、第2DCDC変換部の出力電流値の上限は現在のままとする。第1DCDC変換部の出力電流値の上限は現在のままとし、第2DCDC変換部の出力電流値の上限を現在よりも低下させた場合、出力電圧値V2が出力電圧値V1に近づくように第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bの充電電圧が調整される。
【0063】
制御装置18は、ステップS5の後のステップS6では、第2変換回路54に上記の第4動作を行わせつつ第3変換回路56に上記の第6動作を行わせる制御と、第3変換回路46に上記の第7動作を行わせつつ第2変換回路44に上記の第1動作を行わせる制御と、を共に行ってもよい。このように第2充放電制御が行われると、図9のように、第2DCDC変換部では、第2バッテリ部34Bからの電力に基づいて共通経路62に直流電力を供給する制御が行われる。そして、第1DCDC変換部では、共通経路62からの電力に基づいて第1バッテリ部34Aに直流電力を供給する制御が行われる。
【0064】
制御装置18は、ステップS5の後のステップS6では、第2変換回路44に上記の第2動作を行わせつつ第3変換回路46に上記の第5動作を行わせる第1放電制御と、第2変換回路54に上記の第4動作を行わせつつ第3変換回路56に上記の第6動作を行わせる第2放電制御とを共に行ってもよい。この場合、図8のように、第1DCDC変換部では、第1バッテリ部34Aからの電力に基づいて共通経路62に直流電力を供給する制御が行われる。そして、第2DCDC変換部では、第2バッテリ部34Bからの電力に基づいて共通経路62に直流電力を供給する制御が行われる。この場合、第1DCDC変換部によって共通経路62に出力する電流を、第2DCDC変換部によって共通経路62に出力する電流よりも小さくすればよい。即ち、制御装置18は、第1放電制御による出力電流と第2放電制御による出力電流とを調整することにより第1バッテリ部34Aの出力電圧と第2バッテリ部34Bの出力電圧との差を減少させることができる。
【0065】
このように、制御装置18は、第1バッテリ部34Aの出力電圧値と第2バッテリ部34Bの出力電圧値との差が一定値α以上である場合に、この出力電圧値の差を減少させる動作を複数の第2変換回路44,54及び複数の第3変換回路46,56に行わせる。
【0066】
制御装置18は、ステップS4の後のステップS6の制御、又はステップS5の後のステップS6の制御を出力電圧値V1と出力電圧値V2の差が一定値α未満となるまで継続し、出力電圧値V1と出力電圧値V2の差が一定値α未満となった場合には、ステップS4又はステップS5で設定した上限電流値の設定を解除する。
【0067】
(並列切り替え動作)
制御装置18は、高圧バッテリ34が直列接続状態のときに「直列接続から並列接続に切り替える所定条件」が成立した場合に図6の制御を開始してもよい。この場合も上述の流れで図6の制御が行われる。「直列接続から並列接続に切り替える所定条件」は特に限定されないが、例えば、所定の充電方式(上述の400V出力の外部交流電源190に基づいて充電を行う方式)で充電を行う場合が挙げられる。この場合、制御装置18は、図6の制御においてステップS1~S8の処理が終了した後、ステップS8の後にスイッチ部14を並列接続に切り替えればよい。
【0068】
この場合、切替部の一例に相当する制御装置18及びスイッチ部14は、第1バッテリ部の出力電圧と第2バッテリ部の出力電圧との差が閾値(一定値α)未満であることを条件として高圧バッテリ34を上記の直列接続から上記の前記並列接続へ切り替える。
【0069】
(直列切り替え動作)
制御装置18は、高圧バッテリ34を上記の並列接続から上記の直列接続に切り替える所定条件が成立した場合には、スイッチ14Aをオン状態とし、スイッチ14B,14Cをオフ状態とすることで第1バッテリ部34A及び第2バッテリ部34Bを直列接続とする。「高圧バッテリ34を並列接続から直列接続に切り替える所定条件」は特に限定されないが、例えば、所定の充電方式(上述の800V出力の外部交流電源190に基づいて充電を行う方式)で充電を行う場合や並列接続での外部充電が完了した場合などが挙げられる。
【0070】
次の説明は、第1実施形態の効果に関する。
変換装置10は、第1バッテリ部34Aの出力電圧と第2バッテリ部34Bの出力電圧の差が生じている場合に、第1バッテリ部34Aの充電又は放電と第2バッテリ部34Bの充電又は放電を別々の経路で行い得る。よって、この変換装置10は、出力電圧の差を低減する動作が可能である。しかも、この変換装置10は、第1バッテリ部34Aの充電又は放電と第2バッテリ部34Bの充電又は放電を別々の経路で行う場合に、第1変換回路42,52の直流端に接続されるコンデンサ41,51に対する影響を抑えて行い得る。よって、この変換装置10は、第1バッテリ部34Aの出力電圧と第2バッテリ部34Bの出力電圧の差を減少させる動作を、コンデンサ41,51の負荷を抑えつつ行い得る。
【0071】
変換装置10は、第1バッテリ部34Aから電力に基づいて共通経路62に放電する第1放電制御と、第2バッテリ部34Bからの電力に基づいて共通経路62に放電する第2放電制御と、を別個に行うことができ、別個に放電電流を調整することができる。そして、この変換装置10は、コンデンサ41,51の負荷を抑えつつ第1放電制御及び第2放電制御を行うことができる。
【0072】
変換装置10は、共通経路62側から一の第3変換回路46、一のトランス48、一の第2変換回路44を介して第1バッテリ部34Aに電力を供給する充電動作も行い得る。また、この変換装置10は、共通経路62側から他の第3変換回路56、他のトランス58、他の第2変換回路54を介して第2バッテリ部34Bに電力を供給する充電動作も行い得る。そして、この変換装置10は、コンデンサ41,51の負荷を抑えつつこれらの充電動作を行うことができる。
【0073】
変換装置10は、第1充放電制御を行うことにより第1バッテリ部34Aからの電力に基づいて第2バッテリ部34Bを充電することができる。また、この変換装置10は、第2充放電制御を行うことにより第2バッテリ部34Bからの電力に基づいて第1バッテリ部34Aを充電することができる。
【0074】
変換装置10は、第1バッテリ部34Aの出力電圧と第バッテリ部34Bの出力電圧との差が一定値以上である場合に制御によって出力電圧の電圧差を減少させることができる。
【0075】
変換装置10は、第1バッテリ部34Aの出力電圧と第2バッテリ部34Bの出力電圧との差が閾値未満であることを条件として高圧バッテリ34(電源装置)を直列接続から並列接続へ切り替えることができる。よって、この変換装置10は、出力電圧が閾値以上である状態で並列接続に切り替わることを防ぐことができる。
【0076】
変換装置10は、第1バッテリ部34Aからの電力に基づいて低圧バッテリ32(蓄電部)に放電する動作と、第2バッテリ部34Bからの電力に基づいて低圧バッテリ32(蓄電部)に放電する動作とを別々に経路にて個別に行うことができる。
【0077】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0078】
上述された実施形態では、2つの第1変換回路が設けられていたが、3以上の第1変換回路が設けられていてもよい。この場合、3以上の第1変換回路にそれぞれ対応して3以上のトランスが設けられていればよい。そして、3以上のトランスにそれぞれ対応して、3以上の第2変換回路及び3以上の第3変換回路が設けられていればよい。
【0079】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1: 車両
2: 車載システム
3: 電源システム
4: 高圧負荷
6: 補機系負荷
8: 駆動部
10: 変換装置
12: 電力制御装置
14: スイッチ部
14A,14B,14C: スイッチ
16: 電力変換部
18: 制御装置
32: 低圧バッテリ
34: 高圧バッテリ
34A: 第1バッテリ部
34B: 第2バッテリ部
40,50: PFCコンバータ
40A,40B: インダクタ
40C,40D,40E,40F: スイッチ素子
40M,40N: 端子
41,51: コンデンサ
42,52: 第1変換回路
42C,42D,42E,42F: スイッチ素子
42M,42N: 端子(直流端)
42Q,42R: 端子(交流端)
44,54: 第2変換回路
44C,44D,44E,44F: スイッチ素子
44H: コンデンサ
44M,44N: 端子
46,56: 第3変換回路
46C,46D,46E,46F: スイッチ素子
46H: コンデンサ
46M,46N: 端子
48,58: トランス
48A: 第1コイル
48B,48C: 第2コイル
48M: 端部
48N: 端部
48P: 端部
50A,50B: インダクタ
50C,50D,50E,50F: スイッチ素子
50M,50N: 端子
52C,52D,52E,52F: スイッチ素子
52M,52N: 端子(直流端)
52Q,52R: 端子(交流端)
54C,54D,54E,54F: スイッチ素子
54H: コンデンサ
54M,54N: 端子
56C,56D,56E,56F: スイッチ素子
56H: コンデンサ
56M,56N: 端子
58A: 第1コイル
58B,58C: 第2コイル
58N: 端部
58P: 端部
62: 共通経路
62A,62B: 導電路
91,92,94,96: ノイズフィルタ部
190: 外部交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9