(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物からなる発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20240404BHJP
B29C 45/70 20060101ALI20240404BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240404BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08J9/12 CFD
B29C45/70
B29C44/00 D
C08L67/02
(21)【出願番号】P 2019188575
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森尾 恵梨
(72)【発明者】
【氏名】大谷 顕三
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291277(JP,A)
【文献】特開2016-006159(JP,A)
【文献】特開2014-133810(JP,A)
【文献】特開2018-172535(JP,A)
【文献】特開2019-059858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 - 9/14
C08L 67/00 - 67/08
B29C 45/70
B29C 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合された熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)50~99質量部と、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とする熱可塑性ポリエステル樹脂(B)1~50質量部の割合で含有し、前記(B)の降温結晶化温度(Tc2B)と前記(A)の降温結晶化温度(Tc2A)の差[(Tc2B)-(Tc2A)]が10℃~150℃である
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物からなる、
平均セル径が10~400μmであり、最大セル径が10~500μmである独立した発泡セルからなる発泡層を有し、密度が0.01~0.40g/cm
3
であり、反発弾性率が60~90%であり、硬度が10~60Cであることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントの含有量が45~90質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の
発泡成形体。
【請求項3】
熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合された熱可塑性ポリエステルエラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の
発泡成形体。
【請求項4】
表層に厚みが100~800μmの非発泡スキン層を持ち、内層に樹脂連続相と独立した平均セル径が10~400μmの発泡セルからなる発泡層を持ち、厚み方向に非発泡スキン層と発泡層のサンドイッチ構造を持つ、請求項1
~3のいずれかに記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性が高く機械的特性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物とその発泡成形体に関するものである。さらに詳しくは、発泡成形性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物であり、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物から得られる発泡成形体は、軽量かつ高い反発性を有し、さらに容易な成形方法で良質の発泡成形体の提供が可能である。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、射出成形性、押出成形性に優れ、機械的強度が高く、弾性回復性、耐衝撃性、柔軟性などのゴム的性質、耐寒性に優れる材料として、自動車部品、電気・電子部品、繊維、フィルム、スポーツ部品などの用途に使用されている。
【0003】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、耐熱老化性、耐光性、耐摩耗性に優れていることから、自動車部品、特に高温環境下で使用される部品や自動車内装部品に採用されている。さらに近年樹脂部品の軽量化が進められており、目的を達成する手段の一つとして発泡成形体の適用を挙げることができる。
【0004】
しかしながら、一般に溶融重縮合法で製造されたポリエステルエラストマーは、溶融粘度が比較的低いため、発泡成形、ブロー成形、押し出し成形等の高溶融粘度が必要とされる成形方法に適用した場合、成形性が確保できないという問題が生じる。そのため溶融重縮合法で製造した重合体に、架橋剤や増粘剤を配合することによって、ブロー成形や押し出し成形に適用可能な溶融粘度まで引き上げることが行われている(例えば、特許文献1、2、3)。
【0005】
上記方法によれば、溶融粘度の高いポリエステルエラストマーを得ることができるが、得られるポリエステルエラストマーは反応が充分に制御されていないため溶融粘度の滞留時間依存性が大きい。特に発泡成形体を調製する場合、上記の方法により得られた組成物は、条件によってはゲル化し易く、充分な溶融張力を得るとゲル化傾向を生じて安定した流動性が得難く、均一な厚さの成形品を得難い。さらに、いずれの引用文献も増粘による効果には言及しているが、特に発泡成形体を効率よく生産するための方法や、発泡成形体の調製に適しているポリエステルエラストマー組成物について、詳細は言及していない。
【0006】
特許文献4では、ポリエステルエラストマー組成物の溶融張力を制御し、かつゲルを抑制することにより、高品質な発泡成形体の製造が成されている。しかしながら、溶融粘度が高いために成形加工性が劣る場合がある。
【0007】
特許文献5では、結晶核剤を含有したポリエステルエラストマーにより、高品質な発泡成形体が得られている。しかしながら、結晶核剤として有機金属カルボン酸金属塩を配合した場合、発泡成形体の長期使用においては、含有した有機金属カルボン酸金属塩が成形体表面にブリードアウトし、成形体外観を損ねる恐れがあったり、タルクなどの無機物を含有した場合、柔軟性や反発弾性率を悪化させる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-323110号公報
【文献】特開平5―302022号公報
【文献】特開2009-29895号公報
【文献】特開2012-140532号公報
【文献】特許第6380638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の現状に鑑みなされたものであり、その目的は、軽量性かつ反発弾性率に優れた発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物、及びそれからなる発泡成形体を提供することにある。さらには、発泡セルの粗大化が抑制された良好な発泡成形性が発現できる発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物、及びそれからなる発泡成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため、熱可塑性ポリエステルエラストマーと熱可塑性ポリエステル樹脂の配合について鋭意検討した。その結果、熱可塑性ポリエステルエラストマーと、これより降温結晶化温度差が10℃~150℃高い熱可塑性ポリエステル樹脂を特定の割合で配合することにより、発泡セルの粗大化が抑制された良好な発泡成形性が発現し、高倍率発泡による軽量化が可能となり、均一な発泡状態を形成することにより、高い反発性を有する樹脂発泡体が得られることを見出した。さらに、射出成形によって金型に樹脂を充満した後で金型のコアバックによってキャビティ拡張するプロセスを適用することで、良質なポリエステルエラストマー発泡成形体を容易に製造し提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、[1]~[7]を構成するものである。
[1] 芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合された熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)50~99質量部と、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とする熱可塑性ポリエステル樹脂(B)1~50質量部の割合で含有し、前記(B)の降温結晶化温度(Tc2B)と前記(A)の降温結晶化温度(Tc2A)の差[(Tc2B)-(Tc2A)]が10℃~150℃であることを特徴とする発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[2] 熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントの含有量が45~90質量%であることを特徴とする、[1]に記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[3] 熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合された熱可塑性ポリエステルエラストマーであることを特徴とする[1]または[2]に記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物からなる、平均セル径が10~400μmであり、最大セル径が10~500μmである独立した発泡セルからなる発泡層を有し、密度が0.01~0.40g/cm3であり、反発弾性率が60~90%であり、硬度が10~60Cであることを特徴とする発泡成形体。
[5] 表層に厚みが100~800μmの非発泡スキン層を持ち、内層に樹脂連続相と独立した平均セル径が10~400μmの発泡セルからなる発泡層を持ち、厚み方向に非発泡スキン層と発泡層のサンドイッチ構造を持つ、[4]に記載の発泡成形体。
[6] 型締めされた複数の金型で形成されるキャビティ内に、溶融状態の、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガスとともに射出、充填し、表層に厚み100~800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型を型開き方向へ移動してキャビティの容積を拡大させることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
[7] 超臨界状態の不活性ガスが、窒素であることを特徴とする、[6]に記載の発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物、及びそれからなる発泡成形体は、軽量性に優れるのみならず、極めて高い反発性と柔軟性を発現することが出来る。さらに、高い発泡倍率にもかかわらず均一な発泡状態と、高い耐熱性、耐水性、成形安定性を持つため、高い信頼性の必要な部品にも適用の可能なポリエステル発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の発泡成形体の製造方法の一例を説明するための概略構成図である。
【
図2】Aは、実施例3の断面写真であり、Bは、比較例1の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物およびそれを用いた発泡成形体について詳述する。
【0015】
[熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)]
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は、ハードセグメントとソフトセグメントが結合してなる。ハードセグメントは、ポリエステルからなる。ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸としては、通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、主たる芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸(異性体の中では2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい)であることが望ましい。これらの芳香族ジカルボン酸の含有量は、ハードセグメントのポリエステルを構成する全ジカルボン酸中、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。その他のジカルボン酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられることができ、その量は全酸成分の30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0016】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族又は脂環族ジオールとしては、一般の脂肪族又は脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2~8のアルキレングリコール類であることが望ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールのいずれかであることが好ましい。
【0017】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位(テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)あるいはブチレンナフタレート単位(2,6-ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)よりなるものが、物性、成形性、コストパフォーマンスの点から好ましい。
【0018】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)におけるハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルを事前に製造し、その後ソフトセグメント成分と共重合させる場合、該芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000~40000を有しているものが望ましい。
【0019】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、弾性特性の点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0021】
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。これらの中でも、弾性特性の点から、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペートが好ましい。
【0022】
脂肪族ポリカーボネートは、主として炭素数2~12の脂肪族ジオール残基からなるものであることが好ましい。これらの脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。特に、得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性や低温特性の点から、炭素数5~12の脂肪族ジオールが好ましい。これらの成分は、以下に説明する事例に基づき、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントを構成する、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールとしては、融点が低く(例えば、70℃以下)かつ、ガラス転移温度が低いものが好ましい。一般に、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを形成するのに用いられる1,6-ヘキサンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは、ガラス転移温度が-60℃前後と低く、融点も50℃前後となるため、低温特性が良好なものとなる。その他にも、上記脂肪族ポリカーボネートジオールに、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを適当量共重合して得られる脂肪族ポリカーボネートジオールは、元の脂肪族ポリカーボネートジオールに対してガラス転移点が若干高くなるものの、融点が低下もしくは非晶性となるため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。また、例えば、1,9-ノナンジオールと2-メチル-1,8-オクタンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは、融点が30℃程度、ガラス転移温度が-70℃前後と十分に低いため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。
【0024】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントとしては、本発明の課題を解決する観点から、脂肪族ポリエーテルが好ましい。
【0025】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを主たる成分とする共重合体であることが好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)を構成するジカルボン酸成分中、テレフタル酸が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)を構成するグリコール成分中、1,4-ブタンジオールとポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの合計が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0026】
前記ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、500~4000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、エラストマー特性を発現しにくい場合がある。一方、数平均分子量が4000を超えると、ハードセグメント成分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、800以上3000以下であることがより好ましく、1000以上2500以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)において、ソフトセグメントの含有量は、45~90質量%が好ましく、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。ソフトセグメントの含有量が45質量%よりも低いと、結晶性が高すぎるため、反発性に劣り、90質量%を超えると、結晶性が低下しすぎるため、発泡成形性に劣る傾向にある。
【0028】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の降温結晶化温度(Tc2A)は、30~200℃が好ましく、40~180℃がより好ましい。
【0029】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は、公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコールおよびソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あらかじめハードセグメントのポリエステルを作っておき、これにソフトセグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化させる方法、ハードセグメントとソフトセグメントを鎖連結剤でつなぐ方法、さらにポリ(ε-カプロラクトン)をソフトセグメントに用いる場合は、ハードセグメントにε-カプロラクトンモノマーを付加反応させる方法などのいずれの方法をとってもよい。
【0030】
[熱可塑性ポリエステル樹脂(B)]
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン-1,4-または、-2,6-ジカルボン酸、アジピン酸などから選ばれた1種以上と、グリコール成分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等から選ばれた1種以上からなる熱可塑性ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、熱可塑性ポリエステルエラストマーを含む熱可塑性共重合ポリエステル樹脂であっても良い。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が、熱可塑性ポリエステルエラストマーの場合、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)よりも、降温結晶化温度が10℃~150℃高い必要がある。
【0031】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂であっても良い。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を80モル%以上含有する共重合体であってもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)がポリブチレンテレフタレート樹脂の場合、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよい。エステル交換反応や直接重合も適用できる。カルボキシル末端基量を少なくでき、流動性を制御できる観点から連続重合が好ましく、コスト面からは直接重合が好ましい。成分と構成に関しては、少なくともテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体である低級アルコールエステルなどを含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体を含むグリコール成分とを重縮合して得られることが好ましい。
【0032】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が熱可塑性ポリエステルエラストマーの場合、次の点を除いては、上記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と同様のものを用いることができる。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が熱可塑性ポリエステルエラストマーの場合、ソフトセグメントの含有量は、10~90質量%が好ましく、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは40~60質量%である。ソフトセグメントの含有量が10質量%よりも低いと、結晶性が高すぎるため、反発弾性率が劣り、90質量%を超えると、結晶性が低下しすぎるため、後述する発泡セルの粗大化を抑制する効果が得られにくい。
【0033】
熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の降温結晶化温度(Tc2B)は、50~220℃が好ましく、70~200℃がより好ましい。
【0034】
本発明は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)中に熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が分散することにより、発泡成形過程において結晶化速度の速い(B)の結晶化により、発泡セルの粗大化が抑制される。本発明における発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物中、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の合計を100質量部としたとき、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は50~99質量部であり、好ましくは70~98質量部、より好ましくは80~97質量部、さらに好ましくは90~96質量部である。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は1~50質量部であり、好ましくは2~30質量部、より好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは4~10質量部である。(B)が1質量部よりも少ない場合、発泡成形過程における(B)の結晶化による発泡セルの粗大化を抑制する効果が得られず、(B)が50質量部よりも多いと、狙いとする分散形態にならず、共連続構造を形成による発泡セルの粗大化や(B)がマトリックスになることによる反発弾性率の低下が懸念される。
【0035】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の降温結晶化温度(Tc2A)と、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の降温結晶化温度(Tc2B)の差[(Tc2B)-(Tc2A)]は、10℃以上150℃以下である。該差は、好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。該差は、好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。該差が10℃よりも小さいと、発泡成形過程において、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の発泡セルの成長による粗大化を抑制する効果が少なく、該差が150℃よりも大きいと、発泡成形過程において、熱可塑性ポリエステルエラストマー(B)の局所的な結晶化が進行するため、不均一な発泡状態になったり、発泡倍率が上がらないために軽量性が劣る恐れがある。
【0036】
[増粘剤(C)]
本発明に公知の増粘剤(C)を使用しても良い。増粘剤(C)は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の持つヒドロキシル基あるいはカルボキシル基と反応し得る官能基を有する反応性化合物(以下、単に反応性化合物と称することがある)であり、反応し得る官能基としては、エポキシ基(グリシジル基)、酸無水物基、カルボジイミド基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、該官能基は1分子あたり2個以上含有する。該官能基は、エポキシ基(グリシジル基)がより好ましい。
【0037】
増粘剤(C)が、エポキシ基を持つ化合物の場合、2つ以上のエポキシ基を持つ多官能エポキシ化合物として、具体的には、2つのエポキシ基を持つ1,6-ジハイドロキシナフタレンジグリシジルエーテルや1,3-ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼン、3つのエポキシ基を持つ1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンやジグリセロールトリグリシジルエーテル、4つのエポキシ基を持つ1-クロロ-2,3-エポキシプロパン・ホルムアルデヒド・2,7-ナフタレンジオール重縮合物やペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。中でも、骨格に耐熱性を保有した多官能のエポキシ化合物であることが好ましい。特に、ナフタレン構造を骨格にもつ2官能、もしくは4官能のエポキシ化合物、またはトリアジン構造を骨格にもつ3官能のエポキシ化合物が好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の溶液粘度上昇の程度や、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の酸価を効率良く低下させることができる効果や、エポキシ自身の凝集・固化によるゲル化の発生程度を考慮すると、2官能または3官能のエポキシ化合物が好ましい。
【0038】
その他にも、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%のグリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなる共重合体を挙げることができる。
【0039】
本発明で使用する増粘剤(C)としては、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%のグリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなるスチレン系共重合体が、熱可塑性ポリエステルエラストマーとの相溶性が良く、分子量分布がより広くなる点から好ましい。より好ましくは(X)が20~99質量%、(Y)が1~80質量%、(Z)が0~40質量%からなる共重合体であり、さらに好ましくは(X)が25~90質量%、(Y)が10~75質量%、(Z)が0~35質量%からなる共重合体である。これらの組成は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との反応に寄与する官能基濃度に影響するため、前記範囲に適切に制御することが好ましい。
【0040】
前記(X)ビニル芳香族モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。前記(Y)グリシジル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中でも、反応性の高い点で(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。前記(Z)その他のビニル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1~22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。また(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類等の芳香族系ビニル系単量体、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンモノマーなども前記(Z)その他のビニル基含有モノマーとして使用可能である。
【0041】
前記共重合体の重量平均分子量は、4000~25000であることが好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは5000~15000である。重量平均分子量が4000未満であると、未反応の共重合体が成形工程で揮発し、もしくは成形品表面にブリードアウトし、表面の汚染を引き起こす虞がある。一方、重量平均分子量が25000を超えると、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との反応が遅くなって分子量増大効果が不充分になるだけでなく、共重合体と熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との相溶性が悪くなるため、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が本来持つ耐熱性などの特性が低下する可能性が大きくなる。
【0042】
前記共重合体のエポキシ価は、400~2500当量/1×106gである事が好ましく、より好ましくは500~1500当量/1×106g、さらに好ましくは600~1000当量/1×106gである。エポキシ価が400当量/1×106g未満であると、増粘の効果が発現しないことがあり、一方、2500当量/1×106gを超えると、増粘効果が過剰となり成形性に悪影響を与えることがある。
【0043】
増粘剤(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の合計を100質量部した場合、0.1~4.5質量部が好ましく、より好ましくは0.1~3質量部である。増粘剤(C)が0.1質量部未満であると、分子鎖延長効果が不十分であり、4.5質量部を超えると、増粘効果が過剰となり成形性に悪影響を与えたり、成形品の機械的特性に影響を与える傾向がある。
【0044】
[その他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、芳香族アミン系、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系などの汎用の酸化防止剤を配合することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。本発明の樹脂組成物に用いられる芳香族アミン系酸化防止剤の具体例としては、フェニルナフチルアミン、4,4’-ジメトキシジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、および4-イソプロポキシジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0045】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-トルエン、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6’-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシーベンジルーモノエチル-フォスフェート)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンテリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、N,N’-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’-オキサミドビス〔エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-S-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナアミド)などを挙げることができる。
【0046】
リン系酸化防止剤としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジホスファイト系化合物などのリンを含む化合物が挙げられる。具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0047】
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオンエステル系などの硫黄を含む化合物が挙げられる。具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン)、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイト等が挙げられる。
【0048】
上記の各酸化防止剤の配合(含有)量は、いずれも熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の合計を100質量部した場合、0.01~3質量部が好ましく、より好ましくは0.05~2質量部、さらに好ましくは0.1~1質量部である。酸化防止剤を2種以上配合する場合、酸化防止剤の含有量の合計の上限は5質量部であることが好ましい。
【0049】
本発明に用いる発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の組成、及び組成比を決定する方法としては、試料を重クロロホルム等の溶剤に溶解して測定する1H-NMRのプロトン積分比から算出することも可能である。
【0050】
さらに本発明の樹脂組成物に耐候性を必要とする場合は、紫外線吸収剤および/またはヒンダードアミン系化合物を添加することが好ましい。例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系の光安定剤が使用可能である。添加量は、樹脂組成物の質量基準で、0.1%以上5%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物には、その他各種の添加剤を配合(含有)することができる。添加剤としては、上記以外の樹脂、滑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、帯電防止剤、過酸化物等の分子調整剤、金属不活性剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、有機および無機系の顔料のほか、難燃性付与や熱安定性付与の目的で使用される有機および無機系の燐化合物などが挙げられる。添加剤を含有させる場合、その含有量(複数の添加剤を用いる場合には合計含有量)は、樹脂組成物中30質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0052】
本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の合計が占める割合は、70質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0053】
[発泡成形体]
本発明の発泡成形体は、上述した本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて得られたものである。かかる本発明の発泡成形体は、表層に存在する非発泡スキン層と内層に存在する発泡層を備えており、これら非発泡スキンおよび発泡層は上述した本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物で形成されているので、均一かつ微細なセル状態の発泡構造を有し、優れた軽量性と反発性と柔軟性を発現できる。
【0054】
本発明の発泡成形体は、通常、発泡層の両面に非発泡スキン層が設けられたサンドイッチ構造(換言すれば、発泡層が両面から非発泡スキン層に挟まれた構造)を有するものとなる。発泡成形体のサイズに関しては、特に制限は無いが、サンドイッチ構造の厚み方向は、1~30mm程度が想定される。
【0055】
発泡層は、樹脂連続相と独立した発泡セルとから構成される。ここで、樹脂連続相とは、硬化したポリエステルエラストマー樹脂組成物で形成される空洞をもたない部分を意味する。発泡セルの径(セル径)は、均一でばらつきがない限り、サイズによって特性が異なる。高反発弾性を発現させるには、セル径が小さい方が有利であり、具体的には、平均セル径が10~400μmが好ましい。より好ましくは100~400μm、さらに好ましくは、200~400μmである。平均セル径が10μm未満である場合、成形体の内圧が低く非発泡スキン層形成時の圧力が不足し、ヒケ等の外観が悪くなる傾向にある。一方、平均セル径が400μmを超える場合、耐荷重性が低く、反発性が低くなる傾向にある。
【0056】
本発明の発泡成形体の最大セル径は、10~500μmであり、より好ましくは400μm以下である。本発明の発泡成形体は、最大セル径が500μm以下であるので、セル構造の均一性に優れ、また、粗大セルを含まないことから、反発弾性に優れる。
【0057】
非発泡スキン層は、発泡層に積層されており、厚みが100~800μmであることが好ましい。非発泡スキン層の厚みが100μm未満である場合、良好な外観が得られない傾向があり、一方、800μmを超えると、発泡層の比重が低くなりすぎるため、発泡成形体全体として後述する密度0.01~0.40g/cm3である発泡構造体を均一なセル状態で得られない傾向がある。非発泡スキン層の厚みは、より好ましくは200~600μm、さらに好ましくは300~400μmである。
【0058】
本発明の発泡成形体の密度は、0.01~0.40g/cm3であることが好ましい。一般的なポリエステルエラストマーの密度は凡そ1.0~1.4g/cm3前後であるから、本発明の発泡成形体は十分に軽量化されていると言える。より好ましくは、0.1~0.35g/cm3である。密度が0.01g/cm3未満であると十分な反発性や強度が得られず、機械的特性に劣る傾向にあり、0.40g/cm3を超えると、十分な柔軟性が得られない傾向にある。優れた高反発性と柔軟性を両立させるには、発泡成形体の密度は、0.01~0.25g/cm3であることがより好ましい。
【0059】
本発明の発泡成形体は、平均セル径が特定の範囲内であり、最大セル径が特定の範囲内であり、粗大セルを含まず、密度が特定の範囲内であることから、均一で微細なセル構造を有し、その結果、60~90%の高い反発弾性率と10~60Cの硬度を実現することができる。反発弾性率は、70~90%が特に好ましく、硬度は、10~50Cが特に好ましい。
【0060】
本発明の発泡成形体の発泡方法については、特に限定されないが、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する(圧力を解放する)発泡方法が好ましい。なかでも、成形サイクル性やコスト、均質発泡を得られる成形方法として発泡剤と本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物を溶融混合して射出成形する際にキャビティの容積を拡張させて発泡成形体を得る方法が好ましい。具体的には、
図1に示すように、型締めされた複数の金型1、2で形成されるキャビティ3内に、溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物を化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガス(以下、まとめて「発泡剤」と称することもある)とともに射出、充填し、表層に厚み100~800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型2を型開き方向へ移動してキャビティ3の容積を拡大させることにより、発泡成形体を得る方法である。詳しくは、ポリエステルエラストマー樹脂組成物と発泡剤とをキャビティ3内に充填後、所定の温度で冷却することにより、キャビティ3内に充填されたポリエステルエラストマー樹脂組成物の表層に非発泡スキン層が形成される。この非発泡スキン層が所定の厚み(100~800μm)になった段階で、金型2を型開き方向へ移動してキャビティ3の容積を拡大させるのである。なお、発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物と発泡剤は、キャビティ3内に充填する前に射出成形機4の可塑化領域4aで混合しておくことができる。
【0061】
本発明の発泡成形体を得る際に用いることのできる化学発泡剤は、発泡核となるガス成分もしくはその発生源として成形機の樹脂溶融ゾーンで溶融している樹脂に添加するものである。
具体的には、化学発泡剤としては、炭酸アンモニウム及び重炭素酸ソーダ等の無機化合物、並びにアゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機化合物等が使用できる。上記アゾ化合物としては、ジアゾカルボンアミド(ADCA)、2,2-アゾイソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、及びジアゾアミノベンゼン等が例示でき、中でもADCAが好まれて活用されている。上記スルホヒドラジド化合物としては、ベンゼンスルホヒドラジド、ベンゼン1,3-ジスルホヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3-ジスルホンヒドラジド及びジフェニルオキシド-4,4-ジスルホンヒドラジド-等が例示でき、上記ニトロソ化合物としては、N,N-ジニトロソペンタエチレンテトラミン(DNPT)等が例示でき、上記アジド化合物としては、テレフタルアジド及びP-第三ブチルベンズアジド等が例示できる。
【0062】
発泡剤として化学発泡剤を用いる場合、化学発泡剤は、本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物に均一に分散させるために、当該化学発泡剤の分解温度よりも融点が低い熱可塑性樹脂をベース材とした発泡剤マスターバッチとして使用することもできる。ベースとなる熱可塑性樹脂は、化学発泡剤の分解温度より低い融点であれば特に制限なく、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、等が挙げられる。この場合、化学発泡剤と熱可塑性樹脂の配合比率は、熱可塑性樹脂100質量部に対して化学発泡剤が10~100質量部であるのが好ましい。化学発泡剤が10質量部未満の場合は、本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物に対するするマスターバッチの量が多くなりすぎて物性低下を起す可能性がある。100質量部を超えると、化学発泡剤の分散性の問題よりマスターバッチ化が困難になる。
【0063】
発泡剤として超臨界状態の不活性ガスを用いる場合、不活性ガスとしては二酸化炭素および/または窒素が使用可能である。発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素を用いる場合、それらの量は、本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物100質量部に対して0.05~30質量部が好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましい。超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素が0.05質量部未満であると均一かつ微細な発泡セルが得られにくくなり、30質量部を超えると成形体表面の外観が損なわれる傾向にある。
【0064】
なお、発泡剤として用いられる超臨界状態の二酸化炭素または窒素は単独で使用できるが、二酸化炭素と窒素を混合して使用してもよい。ポリエステルエラストマー樹脂組成物に対して窒素はより微細なセルを形成するのに適している傾向があり、二酸化炭素はよりガスの注入量を比較的多くでき、より高い発泡倍率を得るのに適しているため、発泡構造体の状態を調整するために任意で混合してもよく、混合する場合の混合比率はモル比で1:9~9:1の範囲であることが好ましい。
【0065】
本発明で使用する発泡剤としては、均一な微細発泡という観点から、超臨界状態の窒素がより好ましい。
【0066】
溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物を発泡剤とともにキャビティ3内に射出するには、射出成形機4の可塑化領域4a内で溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物と発泡剤とを混合すればよい。特に、発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素を用いる場合には、例えば
図1に示すようにガスボンベ5から気体状態の二酸化炭素および/または窒素を直接あるいは昇圧ポンプ6で加圧して射出成形機4内に注入する方法等が採用できる。これらの二酸化炭素および/または窒素は、溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物中への溶解性、浸透性、拡散性への観点から、成形機内部で超臨界状態となっている必要がある。
【0067】
ここで、超臨界状態とは、気相と液相とを生じている物質の温度および圧力を上昇させていくに際し、ある温度域および圧力域で前記気相と液相との区別をなくし得る状態のことをいい、この時の温度、圧力を臨界温度、臨界圧力という。すなわち超臨界状態において物質は気体と液体の両方の特性を併せ持つので、この状態で生じる流体を臨界流体という。このような臨界流体は気体に比べて密度が高く、液体に比べて粘性が小さいため、物質中をきわめて拡散しやすいという特性を有する。
【実施例】
【0068】
本発明の効果を実証するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0069】
以下の実施例、比較例においては下記の原料を用いた。
[熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)]
(ポリエステルエラストマーA-1)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が78質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA-1とした。
(ポリエステルエラストマーA-2、B-2)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が72質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA-2、B-2とした。
(ポリエステルエラストマーA-3、B-3)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が44質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA-3、B-3とした。
(ポリエステルエラストマーB-1)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量1500のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が72質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーB-1とした。
(ポリブチレンテレフタレートB-4)
東洋紡社製のポリブチレンテレフタレート、還元粘度0.83dl/gを用いた。
【0070】
[増粘剤(C)]
(スチレン系共重合体1(C-1))
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。一方、スチレン(St)89質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)11質量部、キシレン(Xy)15質量部及び重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド(DTBP)0.5質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。これを一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は、約210℃に保った。反応器内部の温度が安定してから36分経過後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機に導き、連続的に揮発成分を除去して、スチレン系共重合体(C-1)を得た。このスチレン系共重合体(C-1)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると質量平均分子量8500、数平均分子量3300であった。また、下記の測定方法によれば、エポキシ価は670当量/1×106g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は2.2であり、グリシジル基を1分子中に2個以上有するものである。
【0071】
[エポキシ価の測定方法]
100mlのエチレンマイヤーフラスコにサンプルを秤量し、10~15mlのメチレンクロライドを加えて、マグネチックスターラーにて攪拌溶解した。10mlのテトラエチレンアンモニウムブロマイド試薬を加え、さらに6~8滴のクリスタルバイオレット指示薬を加え、0.1規定パークロリック酸で中和した。終点は青から緑に変色して2分間安定な点とした。滴定に要したパークロリック酸の量(ml)をA、サンプル質量をW(g)、パーロリック酸試薬の規定度をNとして、下記式に基づきエポキシ価を算出した。
エポキシ価(当量/1×106g)=(N×A×1000)/W
【0072】
[その他の添加剤]
離型剤:
リコルブWE40(クラリアント製)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
Irganox1010(BASF社製)
リン系酸化防止剤:
アデカスタブPEP36(ADEKA社製)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:
チヌビン234(BASF社製)
ヒンダードアミン系光安定剤:
キマソーブ944FD(BASF社製)
【0073】
実施例1~7、比較例1~3
表1に記載に従って、各種成分を、二軸スクリュー式押出機を用いて溶融混練した後、ペレット化して、実施例1~7及び比較例1~3の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物のペレットを得た。
【0074】
次に、上記で得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて上述した金型拡張法にて発泡成形体を作製した。金型としては、型締めすると幅100mm、長さ100mm、厚み3mmのキャビティを形成することができ、型開き方向へコアバックさせると同幅、同長さで厚みが3mm+コアバック量(mm)であるキャビティを形成することができる固定用金型および稼働用金型からなる平板作製用の金型を用いた。具体的には、金型の型締め力が1800kN、スクリュー径40mm、スクリューストローク180mmのスクリューを持つ電動射出成形機の可塑化領域で、超臨界状態とした窒素を注入し、表面温度50℃に温調された金型に射出充填後、射出外圧と内部からの発泡圧力によって100~800μmの非発泡スキン層が形成された段階で、稼働用金型を型開き方向へ、表1にコアバック量(mm)として示す長さだけ移動させて、キャビティの容積を拡大させて、発泡成形体を得た。
【0075】
各原料成分の特性評価は、下記の方法で行い、その特性値を表1に示す。また、実施例1~7、比較例1~3で得られた発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物と、該樹脂組成物から得られた発泡成形体について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
[還元粘度]
樹脂0.1gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0077】
[降温結晶化温度(TC2)、融点(Tm)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、窒素中にて250℃で2分間溶融した後降温速度20℃/分で20℃まで降温した際に得られた降温結晶化の発熱ピーク温度を降温結晶化温度(TC2)とした。また、上記の測定試料において、20℃から250℃まで20℃/分で昇温し、得られたサーモグラム曲線から融解による、吸熱ピークを融点とした。
【0078】
[密度(見かけ密度)]
発泡成形体の寸法をノギスで測定し、その質量を電子天秤にて測定し、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片の質量/試験片の体積
【0079】
[平均セル径]
日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡SU1510により撮影した断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、少なくとも100個の隣接するセルの円相当径をセル径とし、ノギスで測定した。それら100個の平均値を求め、これを任意の三箇所において行い、三箇所で得られた3つの平均値を平均した値を平均セル径とした。
【0080】
[スキン層厚み]
日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡SU1510により撮影した断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、表層部にみられる一体化した非発泡層の厚みをスキン層厚みとして測定した。
【0081】
[反発弾性率]
JIS K 6400に記載されている方法にて測定を実施した。手動計測試験機を用い、規定高さから試験片に鋼球を落下させ、跳ね返った最大の高さを読み取った。一分間以内に3回の測定を行い、その中央値を求め、反発弾性率を算出した。
【0082】
[硬度]
長さ100mm、幅100mmの発泡成形品の中央をJIS K 7312に準拠し、C型硬度計(高分子計器(株)、アスカーゴム硬度計C型)を用いて測定した。
【0083】
【0084】
表1から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1~7はいずれも、軽量かつ高い反発弾性率と柔軟性を示す。これに対し、ポリエステルエラストマー(A)が多く、ポリエステル樹脂(B)が少ない比較例1は、平均セル径および最大セル径が大きく反発性に劣る。ポリエステルエラストマー(A)が少なく、ポリエステル樹脂(B)が多い比較例2は、比率から(B)分散形態とはならないため、発泡セルの均一性が劣ってしまい、反発弾性率、柔軟性に劣り、結晶性が高過ぎて発泡がコアバック量に追従しないため、軽量性にも劣る。また、比較例2は狙いとする分散形態にならないため、樹脂組成物の融点と降温結晶化温度が2つ現れる。降温結晶化温度の差[(Tc2B)-(Tc2A)]が小さい比較例3は、発泡セルの粗大化抑制効果が少なく最大セル径が大きく反発性に劣る。
【0085】
また、実施例3及び比較例1より得られた発泡成形体を切断し、断面を走査型電子顕微鏡により観察した。実施例3の発泡成形体の発泡層の断面写真(40倍)を
図2Aに示し、比較例1の発泡成形品の発泡層の断面写真(40倍)を
図2Bに示す。
図2A及びBより、実施例3では、発泡セルが極めて微細、かつ均一に形成されていることに対し、比較例1では、発泡セルサイズが格段に大きく、かつ不均一であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物およびそれからなる発泡成形体は、軽量性に優れるのみならず、極めて高い反発性と柔軟性を発現することが出来る。さらに、高い発泡倍率にもかかわらず均一な発泡状態と、高い耐熱性、耐水性、成形安定性を持つため、高い信頼性の必要な部品にも適用の可能なポリエステル発泡成形体を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 金型(固定用)
2 金型(稼働用)
3 キャビティ
4 射出成形機
4a 可塑化領域
5 ガスボンベ
6 昇圧ポンプ
7 圧力制御バルブ