(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ガラスロールの製造方法、及びガラスロールの製造装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/038 20060101AFI20240404BHJP
B65H 39/16 20060101ALI20240404BHJP
B65H 20/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B65H39/16
B65H20/10 B
(21)【出願番号】P 2020049184
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】秋山 修二
(72)【発明者】
【氏名】石田 直也
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/038
B65H 39/16
B65H 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻出し部で帯状のガラスフィルムを巻き出して、巻き出した前記ガラスフィルムを巻取り部で巻き取ってガラスロールを得る、ガラスロールの製造方法であって、
前記巻出し部と前記巻取り部との間に、前記巻出し部により巻き出された前記ガラスフィルムが前記巻取り部に向けて搬送される際の搬送速度を調整する搬送速度調整部が設けられ、
前記搬送速度調整部と前記巻取り部との間に、前記ガラスフィルムの搬送方向
が水平方向から下方向に変換される搬送方向変換領域が配設され、
前記搬送方向変換領域に、前記ガラスフィルムの搬送距離を前記ガラスフィルムの幅方向で変更可能な搬送距離変更部が設けられていることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項2】
前記巻出し部と前記搬送速度調整部との間に前記ガラスフィルムの製造関連処理部が設けられている請求項1に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項3】
前記搬送速度調整部と前記巻取り部との間に、前記ガラスフィルムに接着層を介して保護フィルムを貼り付けることで前記ガラスフィルムに前記保護フィルムを積層する積層部が設けられ、
前記搬送速度調整部と前記積層部との間に前記搬送距離変更部が設けられている請求項1又は2に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項4】
前記搬送距離変更部は、前記ガラスフィルムの幅方向端部で前記ガラスフィルムの搬送距離を変更可能に構成されている請求項1~3の何れか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項5】
前記搬送距離変更部は、前記ガラスフィルムの搬送方向で異なる複数の位置に設けられている請求項1~4の何れか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項6】
前記搬送速度調整部が相対的に上方の領域に配設され、前記巻取り部が相対的に下方の領域に配設され
ている請求項1~5の何れか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項7】
前記搬送距離変更部は、前記ガラスフィルムと面接触可能なローラで構成され、
前記ローラは、その回転軸線に直交する軸線まわりに回動可能に構成されている請求項1~6の何れか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項8】
帯状のガラスフィルムを巻き出す巻出し部と、巻き出した前記ガラスフィルムを巻き取ってガラスロールを得る巻取り部と、前記巻出し部と前記巻取り部との間に設けられ、前記巻出し部により巻き出された前記ガラスフィルムが前記巻取り部に向けて搬送される際の搬送速度を調整する搬送速度調整部とを備えたガラスロールの製造装置であって、
前記搬送速度調整部と前記巻取り部との間に、前記ガラスフィルムの搬送方向
が水平方向から下方向に変換される搬送方向変換領域が配設され、
前記搬送方向変換領域に、前記ガラスフィルムの搬送距離を前記ガラスフィルムの幅方向で変更可能な搬送距離変更部が設けられていることを特徴とするガラスロールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスロールの製造方法、及びガラスロールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスロールは、帯状のガラスフィルムをロール状に巻き取ることにより製造される。製造された帯状のガラスフィルムを搬送しながら、当該帯状のガラスフィルムに対して、切断や成膜、表面処理、洗浄などの製造関連処理が施される。
【0003】
また、上述のように搬送しながら製造関連処理を行う場合、製造関連処理領域又はその搬送方向前後領域で、ガラスフィルムをベルトコンベアのベルト表面に吸着した状態で搬送する場合がある(例えば、特許文献1を参照)。吸着可能なベルトコンベアを用いることで、ガラスフィルムを安定的に保持できるので、ガラスフィルムの搬送速度を上記ベルトコンベアの送り速度によって制御することができる。そのため、製造関連処理を精度よく安定的に行うことが可能となり、これにより高品質のガラスロールを得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の如き吸着可能なベルトコンベアを設けるに際しては、巻取り部でガラスフィルムを幅方向へのずれ等なく正確に巻き取るために、巻取り部に比較的近い位置に上記ベルトコンベアを配置して巻取り部に供給されるガラスフィルムに十分な張力を作用させ得る形態をとることが考えられる。この場合、当該ベルトコンベア上を通過するガラスフィルムはベルトコンベアよりも上流側に位置するガラスフィルムに対していわば縁切りされた状態となる。そのため、ベルトコンベアを通過したガラスフィルムにしわなどの変形が生じた場合、ガラスフィルムを継続して搬送するのに伴い、上述した類の変形が蓄積され、大きくなり易い。また、ベルトコンベアから巻取り部までの距離が短いために、一旦生じたしわ等の変形が解消されにくい。よって、この状態のガラスフィルムを巻取り部でロール状に巻取ることでガラスフィルムの破損に至るおそれが高まる。
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明は、ガラスフィルムの搬送速度を調整しながらガラスフィルムを巻き取ってガラスロールを製造するに際し、ガラスフィルムの搬送中に生じたしわ等の変形を解消又は抑制可能として、ガラスフィルムを破損することなく正確にロール状に巻き取ることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係るガラスロールの製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、巻出し部で帯状のガラスフィルムを巻き出して、巻き出したガラスフィルムを巻取り部で巻き取ってガラスロールを得る、ガラスロールの製造方法であって、巻出し部と巻取り部との間に、巻出し部により巻き出されたガラスフィルムが巻取り部に向けて搬送される際の搬送速度を調整する搬送速度調整部が設けられ、搬送速度調整部と巻取り部との間に、ガラスフィルムの搬送距離をガラスフィルムの幅方向で変更可能な搬送距離変更部が設けられている点をもって特徴付けられる。なお、本明細書において、ガラスフィルムの幅方向とは、当該ガラスフィルムの長手方向と厚み方向の双方に直交する向きを意味する。
【0008】
このように、本発明に係るガラスロールの製造方法では、搬送速度調整部と巻取り部との間に、ガラスフィルムの搬送距離をガラスフィルムの幅方向で変更可能な搬送距離変更部を設けるようにした。この構成によれば、搬送速度調整部を経て搬送距離変更部に至るガラスフィルムに対してその幅方向でガラスフィルムの搬送距離を異ならせることができる。そのため、例えばガラスフィルムの幅方向一方側にしわ等の変形が生じ、拡大する傾向が見られる場合、ガラスフィルムの幅方向一方側における搬送距離を当該ガラスフィルムの幅方向他方側における搬送距離よりも大きくすることによって、幅方向一方側におけるしわ等の変形を解消し又は抑制することができる。よって、しわ等の変形が蓄積されて巨大化する事態を防止することができる。従って、この状態のガラスフィルムを巻き取ることで巻き取り時の破損を防止して高品質のガラスロールを安定的に得ることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るガラスロールの製造方法においては、巻出し部と搬送速度調整部との間にガラスフィルムの製造関連処理部が設けられてもよい。
【0010】
本発明に係るガラスロールの製造方法によれば、ガラスフィルムの搬送速度調整部を設けた場合においても、ガラスフィルムの搬送中に生じたしわ等の変形を解消又は抑制可能として、ガラスフィルムを破損することなく正確にロール状に巻き取ることが可能となる。ガラスフィルムの製造関連処理部が巻出し部と搬送速度調整部との間に設けられることで、ガラスフィルムに対する製造関連処理後に搬送速度調整部においてガラスフィルムを拘束することとなり、ガラスフィルムに対する拘束の影響が製造関連処理部に及ぶことを防止することができる。結果的に搬送速度調整部が巻取り部に近い位置に配設されるため、当該製造関連処理を施したガラスフィルムを安全に巻き取って高品質なガラスロールを安定的に得ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法において、搬送速度調整部と巻取り部との間に、ガラスフィルムに接着層を介して保護フィルムを貼り付けることでガラスフィルムに保護フィルムを積層する積層部が設けられ、搬送速度調整部と積層部との間に搬送距離変更部が設けられてもよい。
【0012】
ガラスフィルムに保護フィルムを積層する積層部では、ガラスフィルムの両面にニップロール等が配置されることにより、ガラスフィルムが固定搬送される。積層部と搬送速度調整部との間のような、ガラスフィルムが固定搬送される二ヶ所の間では、ガラスフィルムに特にしわ等の変形が蓄積し易い傾向にある。本発明に係るガラスロールの製造方法によれば、積層部と搬送速度調整部との間に搬送距離変更部を設けることで、しわ等の変形が蓄積される事態を効果的に防止することができる。
【0013】
また、本発明に係るガラスロールの製造方法において、搬送距離変更部は、ガラスフィルムの幅方向端部でガラスフィルムの搬送距離を変更可能に構成されてもよい。
【0014】
ガラスロールから巻き出したガラスフィルムの搬送速度を調整しながら再びガラスロールに巻き取る形態をとる場合、しわ等の変形はガラスフィルムの幅方向端部で特に顕著に現れる傾向にある。この点を踏まえて、本発明では、ガラスフィルムの幅方向端部でガラスフィルムの搬送距離を変更可能なように搬送距離変更部を構成した。このように構成することで、搬送距離をガラスフィルムの幅方向で異ならせることによる効果をより効果的に享受することができる。よって、しわ等の変形をより効果的に解消又は抑制して、より確実に高品質なガラスロールを得ることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るガラスロールの製造方法において、搬送距離変更部は、ガラスフィルムの搬送方向で異なる複数の位置に設けられてもよい。
【0016】
上述のように搬送方向の複数箇所に搬送距離変更部を設けることにより、ガラスフィルムの搬送距離をより大きく変更することができる。言い換えると、同じガラスフィルムの幅方向で搬送距離をより大きく異ならせることができる。よって、しわ等の変形が大きい場合にあっても、当該変形を効果的に解消又は抑制することが可能となる。また、搬送距離変更部が複数箇所に設けられることで、それぞれガラスフィルムの幅方向の異なる位置で搬送距離を変更することができるので、例えば上流側の搬送距離変更部でガラスフィルムの幅方向一方側における搬送距離を大きくして当該幅方向一方側に生じたしわ等の変形を解消又は抑制しつつ、下流側の搬送距離変更部でガラスフィルムの幅方向他方側における搬送距離を少し大きくしてガラスフィルムの搬送距離を微調整することも可能となる。よって、上記構成によれば、より高精度な搬送距離の調整が可能になる。
【0017】
また、本発明に係るガラスロールの製造方法において、搬送速度調整部が相対的に上方の領域に配設され、巻取り部が相対的に下方の領域に配設され、搬送速度調整部と巻取り部との間に、搬送速度調整部を通過したガラスフィルムの搬送方向が変換される方向変換領域が配設される場合に、搬送距離変更部は方向変換領域に配設されてもよい。
【0018】
このように搬送速度調整部と巻取り部とが高さ方向で互いに異なる位置に配設される場合、搬送速度調整部と巻取り部との間でガラスフィルムの搬送方向を変える(方向変換領域を設ける)必要が生じる。方向変換領域では、通常、ガラスフィルムの搬送方向が水平方向(水平方向に対して多少の傾斜角度を有する場合も含まれる)から鉛直下方(鉛直方向に対して多少の傾斜角度を有する場合も含まれる)に変換されることから、搬送方向変換領域では、ガラスフィルムが曲面状に変形する部分が生じ得る。そのため、搬送距離変更部を方向変換領域に設けることにより、ガラスフィルムのうち曲面状に変形する部分の搬送距離を幅方向で変更することができる。ガラスフィルムのうち曲面状に変形する部分であれば、例えば凹面側から当該曲面状をなす部分を押圧することで、ガラスフィルムの平坦状をなす部分よりも容易にガラスフィルムの搬送距離をその幅方向で異ならせることが可能となる。
【0019】
また、本発明に係るガラスロールの製造方法において、搬送距離変更部は、ガラスフィルムと面接触可能なローラで構成され、ローラは、その回転軸線に直交する軸線まわりに回動可能に構成されてもよい。
【0020】
このように、搬送距離変更部を、ガラスフィルムと面接触可能なローラで構成することによって、当該ローラを、ガラスフィルムを搬送しながら支持する支持ローラとすることができる。言い換えると、既存の支持ローラを搬送距離変更部のローラとすることができる。また、この場合に、ローラをその回転軸線に直交する軸線まわりに回動可能に構成することによって、ガラスフィルムの幅方向に対してローラを傾けた状態でガラスフィルムに面接触させることができる。これにより、ガラスフィルムをローラで支持しつつ、当該ガラスフィルムの幅方向一方側における搬送距離を幅方向他方側における搬送距離よりも大きくできる。よって、ガラスフィルムの円滑な搬送を確保しつつもガラスフィルムに生じたしわ等の変形を効果的に解消又は抑制することが可能となる。
【0021】
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラスロールの製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、帯状のガラスフィルムを巻き出す巻出し部と、巻き出したガラスフィルムを巻き取ってガラスロールを得る巻取り部と、巻出し部と巻取り部との間に設けられ、巻出し部により巻き出されたガラスフィルムが巻取り部に向けて搬送される際の搬送速度を調整する搬送速度調整部とを備えたガラスロールの製造装置であって、搬送速度調整部と巻取り部との間に、ガラスフィルムの搬送距離をガラスフィルムの幅方向で変更可能な搬送距離変更部が設けられている点をもって特徴付けられる。
【0022】
このように、本発明に係るガラスロールの製造装置においても、搬送速度調整部と巻取り部との間に、ガラスフィルムの搬送距離をガラスフィルムの幅方向で変更可能な搬送距離変更部を設けるようにした。この構成によれば、搬送速度調整部を経て搬送距離変更部に至るガラスフィルムに対してその幅方向でガラスフィルムの搬送距離を異ならせることができる。そのため、例えばガラスフィルムの幅方向一方側にしわ等の変形が生じ、拡大する傾向が見られる場合、ガラスフィルムの幅方向一方側における搬送距離をガラスフィルムの幅方向他方側における搬送距離よりも大きくすることによって、幅方向一方側におけるしわ等の変形を解消し又は抑制することができる。よって、しわ等の変形が蓄積されて巨大化する事態を防止することができる。従って、この状態のガラスフィルムを巻き取ることで巻き取り時の破損を防止して高品質のガラスロールを安定的に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上に述べたように、本発明によれば、ガラスフィルムの搬送速度を調整しながらガラスフィルムを巻き取ってガラスロールを製造するに際し、ガラスフィルムの搬送中に生じたしわ等の変形を解消又は抑制可能として、ガラスフィルムを破損することなく正確にロール状に巻き取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラスロールの製造装置の全体構成を側方から見た図である。
【
図2】
図1に示す搬送距離変更部を側方から拡大して見た図である。
【
図3】
図2に示す搬送距離変更部及びその駆動機構を正面視した図である。
【
図4】
図2に示す搬送距離変更部及びその駆動機構を平面視した図である。
【
図5】
図2に示す搬送距離変更部の一調整例を説明するための平面図である。
【
図6】
図2に示す搬送距離変更部の他の調整例を説明するための平面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る搬送距離変更部及びその駆動機構を平面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るガラスロールの製造方法の第一実施形態を、
図1~
図6に基づいて説明する。
【0026】
本発明の第一実施形態に係るガラスロールの製造装置1は、
図1に示すように、第一ガラスロールGR1からガラスフィルムGを巻き出す巻出し部2と、巻き出されたガラスフィルムGに対して所定の製造関連処理を施す製造関連処理部3と、製造関連処理を施されたガラスフィルムGを巻き取って第二ガラスロールGR2を得る巻取り部4と、ガラスフィルムGの搬送速度を調整する搬送速度調整部5と、搬送距離変更部6とを備える。また、ガラスロールの製造装置1は、本実施形態では、ガラスフィルムGに保護フィルムFを積層する積層部7をさらに備える。
【0027】
本実施形態では、
図1に示すように、製造関連処理部3が搬送速度調整部5よりもガラスフィルムGの搬送方向上流側に配設され、搬送速度調整部5と巻取り部4との間に搬送距離変更部6が配設されている。また、搬送距離変更部6と巻取り部4との間に積層部7が配設されている。
【0028】
また、本実施形態では、巻出し部2と製造関連処理部3との間に、ガラスフィルムGの搬送方向を上方向から水平方向に変換する第一方向変換領域8が配設されると共に、搬送速度調整部5と積層部7(巻取り部4)との間に、ガラスフィルムGの搬送方向を水平方向(水平方向に対して所定の傾斜角度を有する場合を含む)から下方向に変換する第二方向変換領域9が配設される。これにより、製造関連処理部3と搬送速度調整部5が相対的に上方の領域に位置し、巻出し部2と巻取り部4が相対的に下方の領域に位置している。なお、また、
図1に示すXYZ座標系でいえば、X方向及びY方向が水平方向に一致し、Z方向が鉛直方向(上方向、下方向)に一致している。また、Y方向がガラスフィルムGの幅方向に一致している。
【0029】
巻出し部2は、第一ガラスロールGR1からガラスフィルムGを巻き出して、巻き出したガラスフィルムGを製造関連処理部3に供給する。ここで、ガラスフィルムGは、図示しない所定の成形部により帯状に成形された母材ガラスフィルム又は母材ガラスフィルムに所定の製造関連処理を施してなるガラスフィルムである。
【0030】
製造関連処理部3は、本実施形態では、第一ガラスロールGR1から巻き出されたガラスフィルムGの端面に所定の化学処理を施す化学処理装置10と、化学処理が施されたガラスフィルムGに所定の表面処理を施す表面処理装置11と、表面処理が施されたガラスフィルムGを洗浄する洗浄装置12とを有する。なお、
図1に示す製造関連処理部3の構成は一例に過ぎない。必要に応じて二以下又は四以上の処理装置を設けてもよい。また、処理装置の種類も図示に限られず、例えば切断装置、成膜装置など凡そガラスフィルムGの製造に関連すると認められる処理一般に用いられる装置であれば任意に配設することが可能である。
【0031】
巻取り部4は、巻芯13を回転させることで、製造関連処理部3による製造関連処理を施したガラスフィルムGをロール状に巻き取る。本実施形態では、巻取り部4よりもガラスフィルムGの搬送方向上流側に配設した積層部7により、ガラスフィルムGに保護フィルムFが積層され、これにより得られた積層フィルムGFをロール状に巻き取る。よって、巻取り部4により得られる第二ガラスロールGR2は、ガラスフィルムGと保護フィルムFとを交互に重ね合わせた形態をなしている。図示しないポリエチレンテレフタレートシート等の樹脂シートを緩衝シートとして、ガラスフィルムGと保護フィルムFの間に介装して巻取ることで、第二ガラスロールGR2を作製しても良い。
【0032】
搬送速度調整部5は、ガラスフィルムGを支持して搬送する搬送装置であって、ガラスフィルムGの搬送速度を調整可能に構成されている。本実施形態では、搬送速度調整部5は、ガラスフィルムGを吸着可能なベルトコンベア14であって、例えばベルトコンベア14のベルトに設けた穴を介して吸気を行う吸気装置と、ベルトに駆動力を付与するモータなどの駆動源と、駆動源を制御する制御部(何れも図示は省略)とを有する。ここで、ベルトコンベア14の搬送支持面14aは、水平方向(本図示例であればX方向)に一致する向きであってもよい。あるいは、
図2に示すように、搬送支持面14aが搬送支持面水平方向に対して所定の傾斜角度を有するように(下流側に向かうにつれて下位となるように)、ベルトコンベア14を傾けて配置してもよい。
【0033】
なお、本実施形態では、搬送速度調整部5を、ガラスフィルムGを吸着可能なベルトコンベア14とした場合を例示したが、もちろんこれには限られない。ガラスフィルムGを保持した状態で当該ガラスフィルムGに所望の搬送速度を付与可能な限りにおいて任意の構成をとることが可能である。
【0034】
また、図示は省略するが、搬送装置としての搬送速度調整部5に加えて、ガラスフィルムGを搬送する他の搬送装置を巻出し部2と巻取り部4との間に設けてもよい。この場合、当該他の搬送装置は、ベルトコンベアに限らず、ローラコンベアその他の各種搬送機構であってもよい。
【0035】
積層部7は、ガラスフィルムGに接着層(図示は省略)を介して保護フィルムFを貼り付けることでガラスフィルムGに保護フィルムFを積層可能とするもので、一対の挟持ローラ15a,15bと、保護フィルムFをロール状に巻き取ってなる保護フィルムロールFRとを有する。保護フィルムロールFRは、図示は省略するが、帯状の保護フィルムFの一方の面に形成された接着層にセパレータを重ねたものを巻芯16によりロール状に巻き取ったものである。保護フィルムロールFRは一対の挟持ローラ15a,15bの近傍に配置され、一対の挟持ローラ15a,15b間に保護フィルムFを供給可能に構成されている。なお、接着層の種類や粘着力によっては、セパレータを省略することも可能である。
【0036】
図2は、搬送距離変更部6の要部を側方から見た図である。
図2に示すように、この搬送距離変更部6は、搬送中のガラスフィルムGに面接触可能な可動ローラ17,18を有する。本実施形態では、二本の可動ローラ17,18がともに、第二方向変換領域9に配設されている。この場合、各可動ローラ17,18のガラスフィルムGに対する面接触の形態を変化させることにより、ガラスフィルムGのうち搬送距離変更部6を通過する部分の搬送距離を、ガラスフィルムGの幅方向(本図示例でいえばY方向)で変更可能としている。
【0037】
ここで、上述した面接触の形態の変化は、例えば
図3に示すように、可動ローラ17,18を軸回転の中心軸線A1とは異なる向き(例えば軸回転の中心軸線A1と直交する向き)の軸線A2まわりに回動することにより達成することが可能である。
図3は、上流側の第一可動ローラ17の上述した動作(軸線A2まわりの回動)を実現するための駆動機構19の一例を示している。この駆動機構19は、第一可動ローラ17をその軸方向両端で回転支持する軸受20,20と、モータ21と、軸受20,20とモータ21とを連結する連結部22とで構成される。この場合、モータ21の回転軸線が軸線A2と一致する。また、軸線A2の向きがZ方向に一致している。
【0038】
上記構成の駆動機構19において、モータ21を駆動させることにより、連結部22を介してモータ21と連結されている軸受20,20及び第一可動ローラ17は、モータ21の回転軸線である鉛直方向の軸線A2まわりに回動する(
図4を参照)。よって、この場合、モータ21による回転量を調整することにより、第一可動ローラ17の姿勢を制御(例えば
図4の二点鎖線で示す姿勢に制御)することが可能となる。第二可動ローラ18についても、
図3に示す駆動機構19と同じ駆動機構(図示は省略)を設けることで、第一可動ローラ17と同様に姿勢を制御することが可能となる。
【0039】
上記構成の製造装置1に供給されるガラスフィルムGの材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0040】
また、ガラスフィルムGの厚み寸法は、10μm以上300μm以下とされ、好ましくは30μm以上200μm以下であり、最も好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0041】
上述したガラスフィルムGは、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等により成形できるが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。
【0042】
また、一対の挟持ローラ15a,15b間に供給される保護フィルムFの材質としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン-メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン(登録商標)フィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)等を使用でき、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を使用することが好ましい。
【0043】
保護フィルムFの厚みは、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下である。
【0044】
以下、上記構成の製造装置1を使用してガラスロール(第二ガラスロールGR2)を製造する方法について説明する。本方法は、巻出し工程S1と、第一方向変換工程S2と、製造関連処理工程S3と、搬送速度調整工程S4と、第二方向変換工程S5と、搬送距離変更工程S6と、積層工程S7と、巻取り工程S8とを備える。
【0045】
巻出し工程S1では、製造装置1の所定位置に設置された巻出し部2の第一ガラスロールGR1からガラスフィルムGを巻き出し、搬送速度調整部5と、必要に応じて図示しない搬送装置とにより第一ガラスロールGR1の下流側に位置する製造関連処理部3へと搬送する。本実施形態では、巻出し部2が相対的に下方の領域に位置し、製造関連処理部3が相対的に上方の領域に位置する(
図1を参照)。そのため、巻出し部2と製造関連処理部3との間に第一方向変換領域8が設けられ、この第一方向変換領域8において、上方向(
図1のZ方向)に搬送されるガラスフィルムGの搬送方向が水平方向(
図1のX方向)に変換されて製造関連処理部3に搬送される(第一方向変換工程S2)。
【0046】
製造関連処理工程S3では、製造関連処理部3を通過するガラスフィルムGに対して所定の製造関連処理を施す。本実施形態では、ガラスフィルムGの搬送方向上流側から順に、化学処理装置10と、表面処理装置11と、洗浄装置12とが配設されている。そのため、第一ガラスロールGR1から巻き出されたガラスフィルムGに対して、化学処理装置10による端面の化学処理、表面処理装置11による表面処理、そして洗浄装置12による洗浄処理が順に施される。また、製造関連処理部3の下流側に搬送速度調整部5が配設されていることによって、製造関連処理部3を通過するガラスフィルムGの搬送速度が所定の大きさに調整される(搬送速度調整工程S4)。これにより、上述した各種製造関連処理をガラスフィルムGに対して安定的に施すことが可能となる。
【0047】
製造関連処理部3による所定の処理を施したガラスフィルムGは、搬送速度調整部5を経て第二方向変換領域9に到達する。ここで、第二方向変換領域9には、搬送距離変更部6が設けられている。また、搬送距離変更部6は、二本の可動ローラ17,18を有し、これら二本の可動ローラ17,18の少なくとも一方が基準状態(
図5中の二点鎖線で示す状態)から所定の状態に変位している。本実施形態では、
図5に示すように、相対的に上流側に位置する第一可動ローラ17は、軸回転の中心軸線A1がガラスフィルムGの幅方向(ここではY方向)に一致する状態から、中心軸線A1に直交する向きの軸線A2(ここではZ方向)まわりに所定の角度θ1だけ回動した状態にある。また、相対的に下流側に位置する第二可動ローラ18は、軸回転の中心軸線A1がガラスフィルムGの幅方向(Y方向)に一致する状態から、中心軸線A1に直交する向きの軸線A2(Z方向)まわりに所定の角度θ2だけ回動した状態にある。また、この際の回動の向きは、ガラスフィルムGの幅方向においてしわ等の変形が生じ易い側(例えば
図5の左側)の搬送距離が相対的に長くなるように設定される。本実施形態では、
図2及び
図5に示すように、第一及び第二可動ローラ17,18の軸方向一端側17a,18aとガラスフィルムGの幅方向一方側Gaの搬送距離が長くなるように、各可動ローラ17,18の回動の向きが設定される。
【0048】
このように搬送距離変更部6を通過するガラスフィルムGの搬送距離を幅方向で異ならせることによって、ガラスフィルムGに生じたしわ等の変形が解消又は抑制した状態となる。よって、この第二方向変換領域9においては、搬送距離変更部6により上述したようにガラスフィルムGに生じたしわ等の変形を解消又は抑制しつつ、水平方向(
図1のX方向)又は
図2に示すように少し斜め下方に搬送されるガラスフィルムGの搬送方向が下方向(
図1のZ方向)に変換されて積層部7に搬送される(第二方向変換工程S5、搬送距離変更工程S6)。
【0049】
積層工程S7では、各可動ローラ17,18の下流側に位置する積層部7に到達したガラスフィルムGに対して保護フィルムFの積層を行う。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、ガラスフィルムGの搬送路上に一対の挟持ローラ15a,15bを配設すると共に、一対の挟持ローラ15a,15bの近傍に配置した保護フィルムロールFRから保護フィルムFを巻き出して一対の挟持ローラ15a,15b間に供給する。ここで、保護フィルムFには接着層(図示は省略)が一体的に設けられているので、ガラスフィルムGと保護フィルムFとを一対の挟持ローラ15a,15bで挟み込むことで接着層を介して保護フィルムFがガラスフィルムGに貼り付けられる。これにより、ガラスフィルムGと保護フィルムFとが積層されてなる積層フィルムGFが得られる。また、上流側の搬送距離変更工程S6で、ガラスフィルムGに生じたしわ等の変形は解消又は抑制しているので、平坦な形状のガラスフィルムGを安定して保護フィルムFに貼り付けることができる。
【0050】
続く巻取り工程S8では、積層工程S7で得た積層フィルムGFを巻芯13に巻き取ることにより、第二ガラスロールGR2が得られる。本実施形態では、この第二ガラスロールGR2が最終製品としてのガラスロールとして出荷される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るガラスロール(第二ガラスロールGR2)の製造方法では、搬送速度調整部5と巻取り部4との間に、ガラスフィルムGの搬送距離をガラスフィルムGの幅方向で変更可能な搬送距離変更部6を設けるようにした。この構成によれば、搬送速度調整部5を経て搬送距離変更部6に至るガラスフィルムGに対してその幅方向でガラスフィルムGの搬送距離を異ならせることができる(
図5を参照)。そのため、例えばガラスフィルムGの幅方向一方側Gaにしわ等の変形が生じ、拡大する傾向が見られる場合、ガラスフィルムGの幅方向一方側Gaにおける搬送距離を当該ガラスフィルムGの幅方向他方側Gbにおける搬送距離よりも大きくすることによって、幅方向一方側Gaにおけるしわ等の変形を解消し又は縮小することができる。よって、しわ等の変形が蓄積されて巨大化する事態を防止することができる。従って、この状態のガラスフィルムG(本実施形態では積層フィルムGF)を巻き取ることで巻き取り時の破損を防止して高品質のガラスロール(第二ガラスロールGR2)を安定的に得ることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、搬送速度調整部5と巻取り部4との間に、保護フィルムFの貼り付けによる積層を行う積層部7を設けると共に、搬送速度調整部5と積層部7との間に搬送距離変更部6を設けるようにした。本実施形態のように、ガラスフィルムGと保護フィルムFとを一対の挟持ローラ15a,15bにより挟み込んで積層する場合には、一対の挟持ローラ15a,15bによりガラスフィルムGが挟み込まれた位置で縁切りされた状態となる。搬送速度調整部5を吸着可能なベルトコンベア14とした場合には、上述したようにベルトコンベア14上でガラスフィルムGが縁切りされた状態となるため、ベルトコンベア14と巻取り部4との間に一対の挟持ローラ15a,15bが配設される場合には、ガラスフィルムGのうち異なる二箇所で縁切りされた領域間の距離が短くなり、しわ等の変形が容易に発生し、拡大し得る。また、次に縁切りされるまでのガラスフィルムGの搬送距離が短いため、一旦発生したしわ等の変形が解消又は抑制される可能性も小さい。これに対して、本実施形態に係るガラスロール(第二ガラスロールGR2)の製造方法によれば、搬送距離変更部6によりガラスフィルムGの搬送中に生じたしわ等の変形を解消又は抑制可能として、ガラスフィルムGを破損することなく正確にロール状に巻き取ることが可能となる。そのため、本実施形態のように、搬送速度調整部5と積層部7とが相互に近い位置に配設される場合においても、しわ等の変形が生じる心配をすることなく精度よくガラスフィルムGに製造関連処理を施すことができる。
【0053】
以上、本発明に係るガラスロールの製造方法及び製造装置の第一実施形態を説明したが、この製造方法及び製造装置は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0054】
例えば第一実施形態では、搬送距離変更部6を二本の可動ローラ17,18で構成すると共に、各可動ローラ17,18を鉛直方向の軸線A2まわりに回動するように駆動機構19を構成した。そして、このような構成をとる場合に、二本の可動ローラ17,18をともに同じ向きに回動させることで、各可動ローラ17,18の軸方向一端側17a,18aとガラスフィルムGの幅方向一方側Gaとが大きく接触するように調整した場合を例示したが、もちろん可動ローラ17,18とガラスフィルムGとの接触形態はこれには限られない。例えば
図6に示すように、上流側の第一可動ローラ17を
図5と同様の向きに回動させると共に、下流側の第二可動ローラ18を第一可動ローラ17とは逆向きに回動させる調整を図ることも可能である。この場合、第一可動ローラ17の軸方向一端側17aとガラスフィルムGの幅方向一方側Gaとが相対的に大きく接触し、第二可動ローラ18の軸方向他端側18bとガラスフィルムGの幅方向他方側Gbとが相対的に大きく接触する。よって、この場合、ガラスフィルムGは、第一可動ローラ17の軸方向一端側17aと接触する幅方向一方側Gaで搬送距離が相対的に長くなり、第二可動ローラ18の軸方向他端側18bと接触する幅方向他方側Gbで搬送距離が相対的に長くなる。このようにして、二本以上の可動ローラ17,18で搬送距離変更部6を構成することにより、ガラスフィルムGの搬送距離を微調整することができる。従って、一本の可動ローラ17(18)のみで搬送距離を調整するよりも精度よく搬送距離を調整することが可能となる。
【0055】
また、上記実施形態では、二本の可動ローラ17,18をその軸回転の中心軸線A1に直交する鉛直方向の軸線A2まわりに回動可能に構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の可動形態をとることも可能である。
図7は、その一例(本発明の第二実施形態)に係る搬送距離変更部30の要部を平面視した図を示している。
図7に示すように、本実施形態に係る搬送距離変更部30は、可動ローラ31の駆動機構32において、第一実施形態のそれと相違する。すなわち、この駆動機構32は、可動ローラ31の軸方向両端に設けられた軸受33a,33bをスライドガイド34a,34bの長手方向に沿ってスライド可能に構成した点において、第一実施形態の駆動機構19と相違する。この場合、軸受33a,33bはそれぞれスライドガイド34a,34bに対するスライド部としても機能する。ここで、軸受33a,33bのスライドガイド34a,34bに対するスライドを可能とするための機構は任意であり、リニアモータやラックアンドピニオン機構など公知の直動機構を用いて構成することが可能である。なお、
図7では一本の可動ローラ31のみが開示されているが、実際には、二本の可動ローラ31,31で搬送距離変更部30が構成されている。
【0056】
このように可動ローラ31の駆動機構32を構成することによって、第一実施形態よりも可動ローラ31の位置自由度を高めることができる。よって、ガラスフィルムGとの接触形態をより幅広く設定することができ、ひいては搬送距離の幅方向での変更をより柔軟に行うことが可能となる。
【0057】
なお、上述した可動ローラ17,18,31の調整は任意のタイミングで行うことが可能である。例えば搬送されるガラスフィルムGのサイズ(幅方向寸法、厚み寸法)、材質等の変更に合わせて実施してもよい。あるいは、実際にガラスフィルムGが搬送されている最中(一時的に停止している場合)に実施してもよい。
【0058】
また、可動ローラ17,18(31)の本数は二本には限られない。一本の可動ローラ17(18,31)で搬送距離変更部6(30)を構成してもよく、あるいは三本以上の可動ローラで搬送距離変更部6を構成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、第二方向変換領域9に搬送距離変更部6を設けて、方向変換時のガイドローラを可動ローラ17,18(31)が兼ねる場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば第二方向変換領域9の搬送方向前後でガラスフィルムGと面接触するように、可動ローラ17,18(31)を配置してもよい。
【0060】
また、以上の説明では、搬送距離変更部6(30)として何れも、可動ローラ17,18(31)を有する場合を例示したが、もちろんこれには限られない。ガラスフィルムGに対する何らかの働きかけによりガラスフィルムGの幅方向で搬送距離を変更可能な限りにおいて、任意の構成をとることが可能である。よって、例えばローラ以外の形態をなす可動式の面接触部で搬送距離変更部を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ガラスロールの製造装置
2 巻出し部
3 製造関連処理部
4 巻取り部
5 搬送速度調整部
6 搬送距離変更部
7 積層部
8 第一方向変換領域
9 第二方向変換領域
10 化学処理装置
11 表面処理装置
12 洗浄装置
13 巻芯
14 ベルトコンベア
15a,15b 挟持ローラ
16 巻芯
17,18 可動ローラ
19 駆動機構
20,20 軸受
21 モータ
22 連結部
30 搬送距離変更部
31 可動ローラ
32 駆動機構
33a,33b 軸受(スライド部)
34a,34b スライドガイド
A1 中心軸線(可動ローラ)
A2 鉛直方向軸線(可動ローラ)
F 保護フィルム
FR 保護フィルムロール
G ガラスフィルム
GF 積層フィルム
GR1 第一ガラスロール
GR2 第二ガラスロール