(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】圧電振動素子、圧電振動子及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20240404BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H03H9/19 E
H03H9/02 A
(21)【出願番号】P 2021566791
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028241
(87)【国際公開番号】W WO2021131121
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2019238993
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】大井 友貴
(72)【発明者】
【氏名】岩下 則夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 迅人
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007693(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111037(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/114224(WO,A1)
【文献】特開2015-019127(JP,A)
【文献】特開2017-099025(JP,A)
【文献】特開2017-060054(JP,A)
【文献】特開2012-186639(JP,A)
【文献】特開2013-258452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する圧電片と、
前記圧電片の主面に設けられた励振電極と、
前記圧電片の主面に設けられ前記励振電極と電気的に接続された接続電極と、
を備え、
前記圧電片の主面を平面視したとき、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の領域には、貫通孔が形成されており、
前記貫通孔における前記励振電極の側の内壁が、少なくとも4つの傾斜面を有し、
前記圧電片の前記励振電極が設けられた部分の厚み
が、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の
前記領域の部分の厚みよりも大き
くなるように、
前記圧電片の前記励振電極が設けられた部分は、前記圧電片のそれぞれの主面において、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の前記領域の部分よりも突出している、
圧電振動素子。
【請求項2】
前記貫通孔における前記励振電極の側の内壁は、前記圧電片の主面と平行な面に対して面対称に構成される、
請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記貫通孔における前記励振電極の側の内壁は、前記貫通孔の貫通方向の略中央を起点として前記圧電片の主面と平行な面から角度αで傾斜する第1傾斜面と、前記第1傾斜面と接続され前記圧電片の主面と平行な面から角度βで傾斜する第2傾斜面とを有し、
前記角度αは、前記角度βよりも大きい、
請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記貫通孔の略中央から前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との接続部までの、前記圧電片の主面と交差する方向に沿った距離T1は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との接続部から前記第2傾斜面と前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の主面との接続部までの、前記圧電片の主面と交差する方向に沿った距離T2より小さい、
請求項3に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記角度α及び前記角度βが、
32°<α<80°かつβ=32°の関係を有する、
請求項4に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記角度αが、40°<αの関係を有する、
請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記角度αが、α<65°の関係を有する、
請求項5又は6に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
前記貫通孔の略中央から前記第2傾斜面と前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の主面との接続部までの、前記圧電片の主面と交差する方向に沿った距離T3及び前記距離T2が、0.56≦T2/T3≦0.83の関係を有する、
請求項5から7のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項9】
前記貫通孔における前記接続電極の側の内壁は、前記貫通孔の貫通方向の略中央を起点として前記圧電片の主面と平行な面から角度γで傾斜する傾斜面を有し、
前記角度γは、前記角度αより大きい、
請求項3から8のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項10】
前記貫通孔における前記励振電極の側の内壁は、前記貫通孔における前記接続電極の側の内壁よりも突出している、
請求項1から9のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項11】
主面を有する圧電片と、
前記圧電片の主面に設けられた励振電極と、
前記圧電片の主面に設けられ前記励振電極と電気的に接続された接続電極と、
を備え、
前記圧電片の主面を平面視したとき、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の領域には、貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の前記励振電極の側の内壁は、前記貫通孔の前記接続電極の側の内壁よりも突出しており、
前記圧電片の前記励振電極が設けられた部分の厚み
が、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の
前記領域の部分の厚みよりも大き
くなるように、
前記圧電片の前記励振電極が設けられた部分は、前記圧電片のそれぞれの主面において、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の前記領域の部分よりも突出している、
圧電振動素子。
【請求項12】
前記圧電片は、水晶片である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項13】
前記水晶片は、ATカット水晶片である、
請求項12に記載の圧電振動素子。
【請求項14】
前記圧電片の接続電極が設けられた部分の厚みは、前記圧電片における前記励振電極と前記接続電極との間の領域の部分の厚みよりも大きい、
請求項1から13のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が搭載されるベース部材と、
前記ベース部材との間に前記圧電振動素子を収容する内部空間を形成する蓋部材と、
前記ベース部材と前記蓋部材とを接合する接合部材と
を備える、圧電振動子。
【請求項16】
請求項15に記載の圧電振動子と、
前記圧電振動素子が搭載される外部基板と
を備え、
前記外部基板は、絶縁体層に挟まれた金属層を有する、
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、圧電振動子及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動子は、移動通信端末、通信基地局、家電などの各種電子機器において、タイミングデバイス、センサ、発振器などの用途に用いられている。電子機器の高機能化に伴い、小型且つ薄型な圧電振動素子が求められている。
【0003】
特許文献1には、低背化を企図して圧電基板に設けられた貫通孔によって、輪郭系高次モードに起因する不要振動を抑圧できる圧電振動素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該貫通孔の形状は、例えば振動エネルギーの閉じ込め効果などに影響を与える。しかしながら、特許文献1には貫通孔の形状について記載されておらず、貫通孔の好適な形状については不明であった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ESRが低減した圧電振動素子、圧電振動子及び電子装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧電振動素子は、主面を有する圧電片と、圧電片の主面に設けられた励振電極と、圧電片の主面に設けられ励振電極と電気的に接続された接続電極と、を備え、圧電片の主面を平面視したとき、圧電片における励振電極と接続電極との間の領域には、貫通孔が形成されており、貫通孔における励振電極の側の内壁が、少なくとも4つの傾斜面を有する。
【0008】
本発明の他の一態様に係る圧電振動素子は、主面を有する圧電片と、圧電片の主面に設けられた励振電極と、圧電片の主面に設けられ励振電極と電気的に接続された接続電極と、を備え、圧電片の主面を平面視したとき、圧電片における励振電極と接続電極との間の領域には、貫通孔が形成されており、貫通孔の励振電極の側の内壁は、貫通孔の接続電極の側の内壁よりも突出している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ESRが低減された圧電振動素子、圧電振動子及び電子装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る電子装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した電子装置のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る水晶振動子の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図3に示した水晶振動子のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図6】
図5に示した水晶振動素子のVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】ESRの変動の割合と角度αとの関係を示すグラフである。
【
図8】ベース部材の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図9】外部基板の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図11】第3実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図12】第4実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y´軸及びZ´軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y´軸及びZ´軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に対応している。X軸が水晶の電気軸(極性軸)、Y軸が水晶の機械軸、Z軸が水晶の光学軸に相当する。Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸である。
【0013】
以下の説明において、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y´軸に平行な方向を「Y´軸方向」、Z´軸に平行な方向を「Z´軸方向」という。また、X軸、Y´軸及びZ´軸の矢印の先端方向を「+(プラス)」、矢印とは反対の方向を「-(マイナス)」という。なお、便宜的に、+Y´軸方向を上方向、-Y´軸方向を下方向として説明するが、水晶振動子1及び電子装置100の上下の向きは限定されるものではない。例えば、以下の説明において、外部基板130における+Y´軸方向の側を上面131Aとし、-Y´軸方向の側を下面131Bとするが、電子装置100は、上面131Aが下面131Bの鉛直下側に位置するように配置されてもよい。水晶振動子1のベース部材30の上面31A及び下面31Bについても同様である。
【0014】
<第1実施形態>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電子装置100の概略構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る電子装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示した電子装置のII-II線に沿った断面図である。
【0015】
電子装置100は、水晶振動子1、外部基板130、外部キャップ140、封止枠150、半田153、コンデンサ156、ICチップ160、ダイボンド材163及びボンディングワイヤ166を備えている。水晶振動子1、半田153、コンデンサ156、ICチップ160、ダイボンド材163及びボンディングワイヤ166は、外部基板130と外部キャップ140との間に形成される空間に封止されている。この空間は、例えば液密に封止されるが、真空状態で気密に封止されてもよく、不活性ガスなどの気体が充填された状態で気密に封止されてもよい。
【0016】
水晶振動子1は、圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の一種であり、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)である。水晶振動素子は、圧電効果によって励振される圧電片として、水晶片(Quartz Crystal Element)を利用する。水晶振動子1は、外部基板130に搭載され、外部基板130と外部キャップ140との間に形成される空間に封止されている。
【0017】
外部基板130は、互いに対向する上面131A及び下面131Bを有する、平板状の回路基板である。外部基板130は、例えばアルミナを用いて設けられている。上面131Aには配線層が設けられ、下面131Bには図示を省略した端子が設けられる。外部基板130の側面には、セミスルーホールをメタライズして設けられたキャスタレーション電極が設けられており、上面131Aの配線層と下面131Bの端子とは、当該キャスタレーション電極によって電気的に接続されている。
【0018】
外部キャップ140は、外部基板130の側に水晶振動子1を収容する有底の開口部を有している。言い換えると、外部キャップ140は、平板状の天壁部と、当該天壁部の外縁から外部基板130に向かって延在する側壁部とを有している。当該天壁部は、水晶振動子1を挟んで外部基板130と対向し、当該側壁部は、外部基板130の上面131Aと平行な面方向において水晶振動子1を囲んでいる。
【0019】
封止枠150は、外部基板130と外部キャップ140とを接合している。具体的には、外部基板130の上面131Aと、外部キャップ140の側壁部の先端とを接合している。封止枠150は、矩形状の枠状に設けられており、外部基板130の上面131Aを平面視したとき、水晶振動子1、コンデンサ156、ICチップ160などを囲んでいる。封止枠150は、例えば、電気絶縁性の樹脂製接着剤によって設けられている。
【0020】
コンデンサ156は、外部基板130の上面131Aに搭載されている。コンデンサ156は、外部基板130の配線層を通して、水晶振動子1又はICチップ160に電気的に接続されている。コンデンサ156は、例えば、水晶振動子1を発振させる発振回路の一部である。
【0021】
半田153は、外部基板130の上面131Aに設けられた配線層と、水晶振動子1又はコンデンサ156とを接合している。
【0022】
ICチップ160は、水晶振動子1の上に搭載されている。ICチップ160は、水晶振動子1を制御するASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。ICチップ160は、例えば、水晶振動子1の温度特性を補正する回路の一部である。
【0023】
ダイボンド材163は、水晶振動子1とICチップ160とを接合している。ダイボンド材163は、例えば、樹脂製接着剤によって設けられている。例えば、ダイボンド材163は導電性を有しており、ダイボンド材163を通して水晶振動子1が接地されている。ダイボンド材163は、望ましくは低弾性樹脂を含み、例えばシリコーン系樹脂を含む。これによれば、ICチップ160に作用する応力が緩和できる。また、ダイボンド材163は、望ましくは熱伝導性が高い材料によって設けられる。これによれば、水晶振動子1の温度に対するICチップ160の温度の追従性が高まる。
【0024】
ボンディングワイヤ166は、ICチップ160を外部基板130の配線層に電気的に接続している。
【0025】
次に、
図3及び
図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。
図3は、第1実施形態に係る水晶振動子の構造を概略的に示す分解斜視図である。
図4は、
図3に示した水晶振動子のIV-IV線に沿った断面図である。
【0026】
水晶振動子1は、水晶振動素子10と、ベース部材30と、蓋部材40と、接合部材50とを備えている。水晶振動素子10は、ベース部材30と蓋部材40との間に設けられている。ベース部材30及び蓋部材40は、水晶振動素子10を収容するための保持器を構成している。
図3及び
図4に示した例では、ベース部材30が平板状を成しており、蓋部材40の凹部49に水晶振動素子10が収容されている。但し、水晶振動素子10のうち少なくとも励振される部分が保持器に収容されれば、ベース部材30及び蓋部材40の形状は上記に限定されるものではない。例えば、ベース部材30が蓋部材40の側に水晶振動素子10の少なくとも一部を収容する凹部を有してもよい。
【0027】
まず、水晶振動素子10について説明する。
水晶振動素子10は、圧電効果により水晶を振動させ、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する素子である。水晶振動素子10は、薄片状の水晶片11と、一対の励振電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、一対の引出電極を構成する第1引出電極15a及び第2引出電極15bと、一対の接続電極を構成する第1接続電極16a及び第2接続電極16bとを備えている。
【0028】
水晶片11は、互いに対向する上面11A及び下面11Bを有している。上面11Aは、ベース部材30に対向する側とは反対側、すなわち後述する蓋部材40の天壁部41に対向する側に位置している。下面11Bは、ベース部材30に対向する側に位置している。上面11A及び下面11Bは、水晶片11の一対の主面に相当する。
【0029】
水晶片11は、例えば、ATカット型の水晶片である。ATカット型の水晶片11は、互いに交差するX軸、Y´軸、及びZ´軸からなる直交座標系において、X軸及びZ´軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ´面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Y´軸と平行な方向が厚みとなるように形成される。例えば、ATカット型の水晶片11は、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶体を切断及び研磨加工して得られる水晶基板(例えば、水晶ウェハ)をエッチング加工することで形成される。
【0030】
ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。ATカット型の水晶振動素子10では、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)が主要振動として用いられる。なお、ATカット型の水晶片11におけるY´軸及びZ´軸の回転角度は、35度15分から-5度以上+15度以下の範囲で傾いてもよい。水晶片11のカット角度は、ATカット以外の異なるカットを適用してもよい。例えばBTカット、GTカット、SCカットなどを適用してよい。
【0031】
ATカット型の水晶片11は、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z´軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y´軸方向に平行な厚みが延在する厚み方向とを有する板状である。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、水晶片11の平面形状は矩形状を成している。
【0032】
水晶片11の上面11Aを平面視したとき、水晶片11は、中央に位置し励振に寄与する励振部17と、励振部17に隣接する周辺部18と、ベース部材30に接続される接続部19とを有している。励振部17は、矩形状の島状に設けられ、枠状の周辺部18に囲まれている。接続部19は、水晶片11の+X軸方向の側の端部に位置し、Z´軸方向に沿って並ぶ一対の矩形状の島状に設けられている。励振部17と接続部19との間に、周辺部18の一部が位置している。
【0033】
なお、上面11Aを平面視したときの水晶片11の平面形状は矩形状に限定されるものではない。水晶片11の平面形状は、多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組合せであってもよい。励振部17の平面形状は矩形状に限定されるものではなく、周辺部18の平面形状は枠状に限定されるものではない。例えば、励振部17及び周辺部18は、それぞれ、水晶片11のZ´軸方向に沿った全幅に亘って帯状に形成されてもよい。接続部19の平面形状は、一対の矩形状の島状に限定されるものではない。接続部19の平面形状は、多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組合せであってもよい。また、接続部19は、Z´軸方向に沿って延在する、連続した1つの帯状に設けられてもよい。言い換えると、1つの接続部19に第1接続電極16a及び第2接続電極16bの両方が設けられてもよい。
【0034】
励振部17は上面17A及び下面17Bを有し、周辺部18は上面18A及び下面18Bを有し、接続部19は上面19A及び下面19Bを有する。上面17A,18A,19Aは、それぞれ、水晶片11の上面11Aの一部である。下面17B,18B,19Bは、それぞれ、水晶片11の下面11Bの一部である。上面17A及び下面17Bは、励振部17における水晶片11の一対の主面に相当する。上面18A及び下面18Bは、周辺部18における水晶片11の一対の主面に相当する。上面19A及び下面19Bは、接続部19における水晶片11の一対の主面に相当する。上面17A,18A,19A及び下面17B,18B,19Bは、それぞれ、XZ´面である。
【0035】
水晶片11は、励振部17の厚みが周辺部18の厚みよりも大きい、いわゆるメサ型構造である。励振部17においてメサ型構造を有する水晶片11によれば、励振部17からの振動漏れが抑制できる。水晶片11は両面メサ型構造であり、上面11A及び下面11Bの両側において、励振部17が周辺部18から突出している。励振部17と周辺部18との境界は、厚みが連続的に変化するテーパ形状を成している。言い換えると、励振部17及び周辺部18のそれぞれの上面17A,18A同士を繋ぐ面、及び下面17B,18B同士を繋ぐ面は、傾きが一様な傾斜面である。
【0036】
励振部17と周辺部18との境界は、厚みの変化が不連続な階段形状を成してもよい。当該境界は、厚みの変化量が連続的に変化するコンベックス形状、又は厚みの変化量が不連続に変化するベベル形状であってもよい。言い換えると、励振部17及び周辺部18のそれぞれの上面17A,18A同士を繋ぐ面、及び下面17B,18B同士を繋ぐ面は、複数の傾斜面で構成されてもよく、曲面で構成されてもよい。また、励振部17は、水晶片11の上面11A又は下面11Bの片側において周辺部18から突出する片面メサ型構造であってもよい。また、水晶片11は、励振部17の厚みが周辺部18の厚みよりも小さい、いわゆる逆メサ型構造であってもよい。
【0037】
水晶片11は、接続部19において両面メサ型構造を有している。言い換えると、接続部19の厚みが周辺部18の厚みよりも大きい。接続部19と周辺部18との境界はテーパ形状を成し、接続部19及び周辺部18のそれぞれの上面19A,18A同士を繋ぐ面、及び下面19B,18B同士を繋ぐ面は、傾きが一様な傾斜面である。接続部19においてメサ型構造を有する水晶片11によれば、水晶振動素子10の導電性保持部材36a,36bとの接合強度が向上する。例えば、接続部19におけるメサ型構造は、励振部17におけるメサ型構造と同じプロセスによって同時に形成される。
【0038】
接続部19の厚みは、例えば励振部17の厚みと略同等の大きさである。接続部19の上面19Aは、励振部17の上面17Aと同一平面上に位置し、接続部19の下面19Bは、励振部17の下面17Bと同一平面上に位置している。但し、接続部19の厚みは、励振部17の厚みと異なってもよく、例えば励振部17の厚みよりも小さくてもよい。また、上面17A,19Aは互いにY´軸方向において離れていれもよく、下面17B,19Bも互いにY´軸方向において離れていれもよい。例えば、上面19Aの位置は、上面17Aの位置よりも、Y´軸方向における水晶片11の略中央に近くてもよい。また、下面19Bの位置は、下面17Bの位置よりも、Y´軸方向における水晶片11の略中央に近くてもよい。
【0039】
接続部19と周辺部18との境界は、階段形状、コンベックス形状又はベベル形状であってもよい。言い換えると、接続部19及び周辺部18のそれぞれの上面19A,18A同士を繋ぐ面、及び下面19B,18B同士を繋ぐ面は、複数の傾斜面で構成されてもよく、曲面で構成されてもよい。また、接続部19は、水晶片11の下面11Bにおいて周辺部18から突出する片面メサ型構造であってもよい。
【0040】
励振部17と接続部19との間の周辺部18には、貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、周辺部18をY´軸方向に沿って貫通している。貫通孔20の詳細な構成については後述する。
【0041】
第1励振電極14aは励振部17の上面17Aに設けられ、第2励振電極14bは励振部17の下面17Bに設けられている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、水晶片11を挟んで互いに対向している。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ矩形状をなしており、互いの略全体が重なり合うように配置されている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、一対の励振電極に相当する。
【0042】
なお、水晶片11の上面11Aを平面視したときの第1励振電極14a及び第2励振電極14bのそれぞれの平面形状は矩形状に限定されるものではない。第1励振電極14a及び第2励振電極14bのそれぞれの平面形状は、多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組合せであってもよい。
【0043】
第1引出電極15aは周辺部18の上面18Aに設けられ、第2引出電極15bは周辺部18の下面18Bに設けられている。第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。第1引出電極15aの一端が励振部17において第1励振電極14aに接続され、第1引出電極15aの他端が接続部19において第1接続電極16aに接続されている。また、第2引出電極15bの一端が励振部17において第2励振電極14bに接続され、第2引出電極15bの他端が接続部19において第2接続電極16bに接続されている。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、第1引出電極15aは貫通孔20の+Z´軸方向側に設けられ、第2引出電極15bは貫通孔20の-Z´軸方向側に設けられている。平面視したときに第1引出電極15a及び第2引出電極15bが離れていることで、浮遊容量が低減される。さらに、第1引出電極15aと第2引出電極15bとの間に貫通孔20が形成されていることで、浮遊容量がさらに低減される。
【0044】
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、接続部19の下面19Bに設けられている。第1接続電極16aは、第2接続電極16bの+Z´軸方向側に位置している。第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、接続部19の上面19A及び水晶片11の側面にも設けられている。
【0045】
第1励振電極14a、第1引出電極15a及び第1接続電極16aからなる一方の電極群は、互いに連続的に形成されており、例えば互いに一体的に形成されている。第2励振電極14b、第2引出電極15b及び第2接続電極16bからなる他方の電極群も同様に、互いに連続的に形成されており、例えば互いに一体的に形成されている。このように、水晶振動素子10には一対の電極群が設けられている。水晶振動素子10の一対の電極群は、例えば多層構造であり、下地層と最表層とをこの順に積層して設けられている。下地層は、水晶片11に接触する層であり、水晶片11との密着性が良好な材料で設けられる。最表層は、一対の電極群の最表面に位置する層であり、化学的安定性が良好な材料で設けられる。これによれば、一対の電極群の酸化や水晶片11からの剥離が抑制でき、信頼性の高い水晶振動素子10が提供できる。下地層は例えばクロム(Cr)を含有し、最表層は例えば金(Au)を含有する。
【0046】
励振部17に電圧が印加可能であれば、水晶振動素子10の一対の電極群のうち、少なくとも一方が水晶片11から離れて設けられてもよい。例えば、第1励振電極14aと励振部17との間にギャップが設けられてもよく、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの両方と励振部17との間にギャップが設けられてもよい。水晶振動素子10の一対の電極群を構成する材料はCr及びAuに限定されるものではなく、例えばチタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)、鉄(Fe)などの金属材料を含有してもよい。一対の電極群は、導電性セラミック、導電性樹脂、半導体などを含有してもよい。
【0047】
次に、ベース部材30について説明する。
ベース部材30は、水晶振動素子10を励振可能に保持している。ベース部材30は、互いに対向する上面31A及び下面31Bを有する基体31を備えている。上面31A及び下面31Bは、基体31の一対の主面に相当する。上面31Aは、水晶振動素子10及び蓋部材40に対向する側に位置し、水晶振動素子10が搭載される搭載面に相当する。下面31Bは、外部基板130に対向する側に位置し、外部基板130が接続される実装面に相当する。基体31は、例えば絶縁性セラミック(アルミナ)などの焼結材である。熱応力の発生を抑制する観点から、基体31は耐熱性材料から構成されることが好ましい。熱履歴によって水晶振動素子10にかかる応力を抑制する観点から、基体31は、水晶片11に近い熱膨張率を有する材料によって設けられてもよく、例えば水晶によって設けられてもよい。また、熱応力による基体31の損傷を抑制する観点から、基体31は、蓋部材40に近い熱膨張率を有する材料によって設けられてもよい。
【0048】
ベース部材30は、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bを備えている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31の上面31Aに設けられている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース部材30に水晶振動素子10を電気的に接続するための端子である。酸化による信頼性の低下を抑制する観点から、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bのそれぞれの最表層は金を含有するのが望ましく、ほぼ金のみからなるのがさらに望ましい。例えば、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31との密着性を向上させる下地層と、金を含み酸化を抑制する最表層とを有する積層構造であってもよい。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、一対の電極パッドに相当する。
【0049】
ベース部材30は、第1外部電極35a、第2外部電極35b、第3外部電極35c及び第4外部電極35dを備えている。第1外部電極35a~第4外部電極35dは、基体31の下面31Bに設けられている。第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、外部基板130の配線層と水晶振動子1とを電気的に接続するための端子である。第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、例えば電気信号等が入出力されないダミー電極であるが、蓋部材40を接地させて蓋部材40の電磁シールド機能を向上させる接地電極であってもよい。なお、第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、省略されてもよい。
【0050】
第1電極パッド33aは、基体31をY´軸方向に沿って貫通する第1貫通電極34aを介して、第1外部電極35aに電気的に接続されている。第2電極パッド33bは、基体31をY´軸方向に沿って貫通する第2貫通電極34bを介して、第2外部電極35bに電気的に接続されている。
【0051】
第1外部電極35a及び第2電極パッド33bのそれぞれは、基体31の上面31Aと下面31Bとを繋ぐ側面に設けられた側面電極を介して、第1外部電極35a及び第2外部電極35bに電気的に接続されてもよい。当該側面電極は、キャスタレーション電極でもよい。
【0052】
ベース部材30は、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを備えている。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10を励振可能に保持している。言い換えると、励振部17がベース部材30及び蓋部材40に接触しないように、水晶振動素子10を保持している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10とベース部材30とを電気的に接続している。具体的には、第1導電性保持部材36aが第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを電気的に接続し、第2導電性保持部材36bが第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、一対の導電性保持部材に相当する。
【0053】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物であり、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分は、例えばシリコーン樹脂である。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは導電性粒子を含んでおり、当該導電性粒子としては例えば銀(Ag)を含む金属粒子が用いられる。
【0054】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分は、硬化性樹脂であればシリコーン樹脂に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などであってもよい。また、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの導電性は、銀粒子による付与に限定されるものではなく、その他の金属、導電性セラミック、導電性有機材料などによって付与されてもよい。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分が導電性高分子であってもよい。
【0055】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの樹脂組成物には、任意の添加剤を含有してもよい。添加剤は、例えば、導電性接着剤の作業性や保存性の向上などを目的とする粘着付与剤、充填剤、増粘剤、増感剤、老化防止剤、消泡剤などである。また、硬化物の強度を増加させる目的、あるいはベース部材30と水晶振動素子10との間隔を保つ目的のフィラーが添加されてもよい。
【0056】
次に、蓋部材40について説明する。
蓋部材40は、ベース部材30に接合されている。蓋部材40は、ベース部材30との間に水晶振動素子10を収容する内部空間を形成する。蓋部材40はベース部材30の側に開口する凹部49を有しており、本実施形態における内部空間は、凹部49の内側の空間に相当する。凹部49は、例えば真空状態で封止されているが、窒素や希ガスなどの不活性ガスが充填された状態で封止されてもよい。凹部49は、液密な状態で封止されてもよい。蓋部材40の材質は、望ましくは導電材料であり、さらに望ましくは気密性の高い金属材料である。蓋部材40が導電材料で構成されることによって、内部空間への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が蓋部材40に付与される。また、蓋部材40を通してICチップ160が接地できる。熱応力の発生を抑制する観点から、蓋部材40の材質は、基体31に近い熱膨張率を有する材料であることが望ましく、例えば常温付近での熱膨張率がガラスやセラミックと広い温度範囲で一致するFe-Ni-Co系合金である。なお、蓋部材40の材質は、基体31の材質と同じであってもよく、セラミック、水晶、樹脂などを含んでもよい。
【0057】
蓋部材40は、平板状の天壁部41と、天壁部41の外縁に接続されており且つ高さ方向に沿って延在する側壁部42とを有している。蓋部材40の凹部49は、天壁部41と側壁部42とによって形成されている。具体的には、天壁部41は、基体31の上面31Aに沿って延在し、高さ方向において水晶振動素子10を挟んでベース部材30と対向している。また、側壁部42は、天壁部41からベース部材30に向かって延在しており、基体31の上面31Aと平行な方向において水晶振動素子10を囲んでいる。蓋部材40はさらに、側壁部42のベース部材30側の先端部に接続されており且つ基体31の上面31Aに沿って外側に延在するフランジ部43を有している。言い換えると、側壁部42の上端部に接続された天壁部41と、側壁部42の下端部に接続されたフランジ部43とが、互いに反対方向へ延在している。基体31の上面31Aを平面視したとき、フランジ部43は、水晶振動素子10を囲むように枠状に延在している。
【0058】
次に、接合部材50について説明する。
接合部材50は、ベース部材30及び蓋部材40の各全周に亘って設けられ、矩形の枠状をなしている。ベース部材30の上面31Aを平面視したとき、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、接合部材50の内側に配置されており、接合部材50は水晶振動素子10を囲むように設けられている。接合部材50は、ベース部材30と蓋部材40とを接合し、内部空間に相当する凹部49を封止している。具体的には、接合部材50は、基体31とフランジ部43とを接合している。水晶振動素子10の周波数特性の変動を抑制する観点から、接合部材50の材質は、透湿性が低いことが望ましく、ガス透過性が低いことがさらに望ましい。また、接合部材50を介して蓋部材40を接地電位に電気的に接続するためには、接合部材50が導電性を有することが望ましい。これらの観点から、接合部材50の材質は金属が望ましい。一例として、接合部材50は、基体31の上面31Aに設けられたモリブデン(Mo)からなるメタライズ層と、メタライズ層とフランジ部43との間に設けられた金錫(Au-Sn)系の共晶合金からなる金属半田層とによって設けられている。
【0059】
なお、接合部材50は、水ガラスなどを含むケイ素系接着剤や、セメントなどを含むカルシウム系接着剤などの無機系接着剤によって設けられてもよい。接合部材50の材質は、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系又はシリコーン系の有機系接着剤によって設けられてもよい。接合部材50が無機系又は有機系接着剤によって設けられる場合、ガス透過性を下げるために、接合部材50の外側に当該接着剤よりもガス透過性が低いコーティングが設けられてもよい。ベース部材30と蓋部材40とは、シーム溶接によって接合されてもよい。
【0060】
次に、
図5~
図7を参照しつつ、貫通孔20の構成についてより詳細に説明する。
図5は、第1実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図6は、
図5に示した水晶振動素子のVI-VI線に沿った断面図である。
図7は、ESRの変動の割合と角度αとの関係を示すグラフである。
【0061】
図5に示すように、貫通孔20は、Z´軸方向に沿って延在し、XZ´面方向において全周を水晶片11に囲まれている。貫通孔20は、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの側に内壁21を有し、第1接続電極16a及び第2接続電極16bの側に内壁22を有している。貫通孔20の内壁21,22は、互いの先端が接近するように貫通孔20の内部に向かって突出し、Z´軸方向に沿って延在している。
【0062】
図6に示すように、内壁21は4つの傾斜面21a~21dを有し、内壁22は2つの傾斜面22a,22bを有している。傾斜面21aは第1傾斜面に相当し、傾斜面21cは第2傾斜面に相当する。
【0063】
内壁21の傾斜面21a,21cは、蓋部材40の天壁部41に対向し、内壁21の傾斜面21b,21dは、ベース部材30に対向している。傾斜面21aと傾斜面21bとは、貫通孔20の貫通方向の略中央において互いに接続している。傾斜面21aと傾斜面21cとは互いに接続し、傾斜面21cと周辺部18の上面18Aとは互いに接続している。傾斜面21bと傾斜面21dとは互いに接続し、傾斜面21dと周辺部18の下面18Bとは互いに接続している。
【0064】
内壁22の傾斜面22aは、蓋部材40の天壁部41に対向し、内壁22の傾斜面22bは、ベース部材30に対向している。傾斜面22aと傾斜面22bとは、貫通孔20の貫通方向(Y´軸方向)の略中央において互いに接続している。傾斜面22aと周辺部18の上面18Aとは互いに接続し、傾斜面22bと周辺部18の下面18Bとは互いに接続している。
【0065】
貫通孔20の内壁21,22のそれぞれは、例えば、周辺部18の上面18Aと平行な面に対して面対称に構成されている。面対称の対称面は、傾斜面21aと傾斜面21bとの接続部、傾斜面22aと傾斜面22bとの接続部、及び貫通孔20の略中央を含む、XZ´面である。傾斜面21bは傾斜面21aと面対称な構成であり、傾斜面21cは傾斜面21dと面対称な構成であり、傾斜面22bは傾斜面22aと面対称な構成である。このため、以下の説明においては、傾斜面21b,21d,22bの構成については説明を省略する。
【0066】
内壁21の傾斜面21aは、周辺部18の上面18Aと平行な面から角度αで傾斜している。内壁21の傾斜面21cは、周辺部18の上面18Aと平行な面から角度βで傾斜している。内壁22の傾斜面22aは、周辺部18の上面18Aと平行な面から角度γで傾斜している。角度αは角度βよりも大きく、角度γは角度αよりも大きい(γ>α>β)。
【0067】
距離T1は、傾斜面21aと傾斜面21bとの接続部が位置する貫通孔20の略中央から、傾斜面21aと傾斜面21cとの接続部までの、Y´軸方向に沿った厚みである。距離T2は、傾斜面21aと傾斜面21cとの接続部から、傾斜面21cと周辺部18の上面18Aとの接続部までの、Y´軸方向に沿った厚みである。距離T3は、傾斜面22aと傾斜面22bとの接続部が位置する貫通孔20の略中央から、傾斜面22aと周辺部18の上面18Aとの接続部までの、Y´軸方向に沿った厚みである。距離T1は距離T2よりも小さく、距離T2は距離T3よりも小さい(T1<T2<T3)。
【0068】
幅W21は、傾斜面21aと傾斜面21bとの接続部から、傾斜面21cと上面18Aの接続部までの、X軸方向に沿った距離である。幅W22は、傾斜面22aと傾斜面22bとの接続部から、傾斜面21aと上面18Aとの接続部までの、X軸方向に沿った距離である。幅W21は幅W22よりも大きい(W21>W22)。幅W21は内壁21の突出量に相当し、幅W22は内壁21の突出量に相当する。したがって、W21>W22は、貫通孔20の内壁21が貫通孔20の内壁22よりも突出している、と言い換えることができる。
【0069】
貫通孔20の内壁21,22のそれぞれは、周辺部18の上面18Aと平行な面に対して非対称に構成されてもよい。具体的には、傾斜面21a,21bのそれぞれの大きさが異なっていてもよく、傾斜面21a及び傾斜面21bのそれぞれのXZ´面に対する角度が異なっていてもよい。傾斜面21cと傾斜面21dとが異なる大きさであってもよく、傾斜面21c及び傾斜面21dのそれぞれのXZ´面に対する角度が異なっていてもよい。傾斜面22a,22bについても同様である。
【0070】
内壁21の傾斜面の数は、上記に限定されるものではなく、少なくとも4つあればよい。例えば、内壁21は6つの傾斜面を有してもよい。具体的には、内壁21は、傾斜面21cと上面18Aとを接続する傾斜面と、傾斜面21dと下面18Bとを接続する傾斜面とをさらに有してもよい。また、内壁21の傾斜面の数が内壁22の傾斜面の数よりも多いならば、内壁21,22のそれぞれの傾斜面の数は上記に限定されるものではない。また、内壁21が内壁22よりも突出するならば、内壁21,22のそれぞれの傾斜面の数は同じでもよく、内壁21,22のそれぞれが曲面を有してもよい。
【0071】
図7に示すように、角度α、角度β及び距離T2を変化させることで、ESR(Equivalent Series Resistance)が低減される。
図7に示すグラフは、角度βを32°に固定し、且つ距離T3を14.4μmに固定した上で、角度α及び距離T2を変化させたときの、ESRの変動の割合(ΔESR)を示している。横軸は角度αを示し、縦軸はΔESRを示している。グラフのプロットは、それぞれ、距離T2が4μm、8μm、10.3μm、12μm及び14μmのときのΔESRを示している。
【0072】
図7に示すように、β=32°のとき、32°<α<80°であれば、距離T2を好適に設定することで、α=β=32°である場合に比べて、ESRを低減できる。さらに40°<αであれば、ESRをより効果的に低減できる。さらにα<65°であれば、距離T2が小さくてもESRを低減できる。なお、8μm≦T2≦12μmであれば、ESRをより効果的に低減できる。すなわち、0.56≦T2/T3≦0.83であれば、ESRをより効果的に低減できる。
【0073】
図5に示すように、貫通孔20は、+Z´軸方向側において内壁21と内壁22とを繋ぐ一端23aを有し、-Z´軸方向側において内壁21と内壁22とを繋ぐ他端23bを有している。貫通孔20の一端23a及び他端23bのそれぞれの位置は、接続部19の位置よりも、Z´軸方向における水晶振動素子10の中心部から離れている。言い換えると、水晶片11の上面11Aを平面視したとき、励振部17の中央部と接続部19との間には貫通孔20が位置している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、接続部19に接続されているため、第1導電性保持部材36aは貫通孔20の一端23aから視て他端23bの側に位置し、及び第2導電性保持部材36bは貫通孔20の他端23bから視て一端23aの側に位置している。言い換えると、水晶片11の上面11Aを平面視したとき、励振部17の中央部と第1導電性保持部材36aとの間には貫通孔20が位置し、励振部17の中央部と第2導電性保持部材36bとの間にも貫通孔20が位置している。これによれば、励振部17から第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bへの振動漏れが抑制され、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bからの応力の伝搬が緩和される。
【0074】
次に、
図8及び
図9を参照しつつ、ベース部材30及び外部基板130のより詳細な構成について説明する。
図8は、ベース部材の構成の一例を示す分解斜視図である。
図9は、外部基板の構成の一例を示す分解斜視図である。
【0075】
図8に示すように、ベース部材30は、絶縁材料によって設けられた基板31V,31Wを積層して成る多層構造を備えている。基板31Vの上面はベース部材30の上面31Aに相当し、基板31Wの下面はベース部材30の下面31Bに相当する。基板31Vと基板31Wとの間には配線層31Cが設けられている。基板31Vには貫通電極34a-1,34b-1,34c-1が設けられている。基板31Wには貫通電極34a-2,34b-2,34c-2が設けられている。
【0076】
第1電極パッド33aは、貫通電極34a-1及び貫通電極34a-2を通して、外部電極35aに電気的に接続されている。ベース部材30の上面31Aを平面視したとき、貫通電極34a-1は貫通電極34a-2から離れており、貫通電極34a-1と貫通電極34a-2とは、配線層31Cを通して電気的に接続されている。第2電極パッド33bも同様に、互いに離れた貫通電極34b-1及び貫通電極34b-2と、配線層31Cとを通して、外部電極35bに電気的に接続されている。接合部材50も同様に、互いに離れた貫通電極34c-1及び貫通電極34c-2と、配線層31Cとを通して、外部電極35bに電気的に接続されている。
【0077】
このように、ベース部材30を多層構造とし、層間に配線層を設けることで、浮遊容量が調整できる。
【0078】
図9に示すように、外部基板130は、絶縁材料によって設けられた基板131V,131Wを積層して成る多層構造を備えている。基板131Vの上面は外部基板130の上面131Aに相当し、基板131Wの下面は外部基板130の下面131Bに相当する。基板131Vの上には配線層が設けられ、配線層の上にはバンプ層が設けられている。バンプ層は、絶縁材料によって設けられた複数の枠体からなる。バンプ層は、半田153の過剰な濡れ広がりを抑止し、短絡による不良発生を抑制する。外部基板130の上面131Aを平面視したとき、バンプ層の複数の枠体は、それぞれ、コンデンサ156及び水晶振動子1を囲んでいる。
【0079】
基板131Vの下面には、金属層131Cが設けられている。金属層131Cは、基板131Vの下面の略全面に設けられている。但し、金属層131Cには、外部基板130のキャスタレーション電極が短絡しないように複数のスリットが形成されている。
【0080】
基板131Wの上面には絶縁体層131Dが設けられている。基板131Wの下面には、複数の端子が設けられている。
【0081】
このように、外部基板130を多層構造とし、層間に金属層を設けることで、外部基板130の上面131Aと下面131Bとの間での熱伝導性が向上する。
【0082】
以上のように、第1実施形態では、周辺部18の第1励振電極14aと第1接続電極16aとの間の領域に貫通孔20が形成され、貫通孔20における第1励振電極14aの側の内壁21が4つの傾斜面を有する。
これによれば、内壁21を少なくとも4つの傾斜面で形成することにより、主要振動である厚みすべり振動モードの、励振部17と接続部19との間の領域における振動変位が減衰され、エネルギー閉じ込め効果が向上し、ESRが低減される。また、内壁21がコンベックス形状に近付くため、輪郭寸法に起因した厚み屈曲振動モードが抑制され、ESRが低減される。貫通孔20が励振部17と接続部19との間で伝搬する応力を緩和することにより、振動漏れや水晶振動素子10の脱落を抑制できる。
【0083】
貫通孔20における第1励振電極14aの側の内壁21は、水晶片11の主面と平行な面に対して面対称に構成される。
【0084】
水晶片11の励振部17の厚みは、水晶片11の周辺部18の厚みよりも大きい。
これによれば、励振部17からの振動漏れが抑制できる。また、励振部17のメサ型構造を形成する工程において、内壁22が加工できるため、製造工程が簡略化できる。
【0085】
周辺部18の上面18Aに対して、第1傾斜面21aが成す角度αは、第2傾斜面21cが成す角度βよりも大きい。
これによれば、内壁21がコンベックス形状に近付くため、より効果的にESRが低減される。
【0086】
水晶片11の厚み方向における中央から、第1傾斜面21aと第2傾斜面21cとの接続部までの厚み方向に沿った距離T1は、第1傾斜面21aと第2傾斜面21cとの接続部から、周辺部18の上面18Aまでの厚み方向に沿った距離T2よりも大きい。
これによれば、内壁21がコンベックス形状に近付くため、より効果的にESRが低減される。
【0087】
角度α及び角度βが、32°<α<80°かつβ=32°の関係を有する。
これによれば、距離T2を好適に設定することで、α=β=32°である場合に比べて、ESRを低減できる。
【0088】
角度αが、40°<αの関係を有する。
これによれば、ESRをより効果的に低減できる。
【0089】
角度αが、α<65°の関係を有する。
これによれば、距離T2が小さくてもESRを低減できる。
【0090】
距離T2及び距離T3が、0.56≦T2/T3≦0.83の関係を有する。
これによれば、ESRをより効果的に低減できる。
【0091】
貫通孔20における第1接続電極16aの側の内壁22は、第1励振電極14aの側の内壁21の傾斜面の数よりも少ない傾斜面を有する。内壁22は、2つの傾斜面を有する。周辺部18の上面18Aに対して内壁22の傾斜面が成す角度γは、角度αよりも大きい。
水晶片11には貫通孔20を設けるためのスペースが必要でることから、本実施形態に係る水晶振動素子10は、貫通孔20を設けない構成に比べて大型化する。しかしながら、内壁22を2つの傾斜面で形成することにより、接続部19近傍の寸法が小さくできるため、水晶片11の大型化が抑制できる。特に、角度γが角度αよりも大きいことにより、水晶片11の大型化が、より効果的に抑制できる。
【0092】
内壁21は、内壁22よりも突出している。
これによれば、内壁21がコンベックス形状に近付くため、輪郭寸法に起因した厚み屈曲振動モードが抑制され、ESRが低減されるとともに、接続部19近傍の寸法が小さくできるため、水晶片11の大型化が抑制できる。また、貫通孔20が励振部17と接続部19との間で伝搬する応力を緩和することにより、振動漏れや水晶振動素子10の脱落を抑制できる。
【0093】
接続部19の厚みは、周辺部18の厚みよりも大きい。
これによれば、水晶振動素子10の導電性保持部材との接合強度が向上するため、水晶振動素子10の実装姿勢が安定し、また、水晶振動素子10の脱落が抑制できる。接続部19のメサ型構造を形成する工程において、内壁22が加工できるため、製造工程が簡略化できる。
【0094】
以下に、本発明の他の実施形態に係る水晶振動素子10の構成について説明する。なお、下記の実施形態では、上記の第1実施形態と共通の事柄については記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0095】
<第2実施形態>
図10を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶振動素子10の構成について説明する。
図10は、第2実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【0096】
水晶振動素子10には、2つの貫通孔20a,20bが形成されている。貫通孔20aは、貫通孔20bの+Z´軸方向側に位置している。貫通孔20aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとの間の領域に形成され、+Z´軸方向側の側面に開口している。貫通孔20bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとの間の領域に形成され、-Z´軸方向側の側面に開口している。
【0097】
<第3実施形態>
図11を参照しつつ、第3実施形態に係る水晶振動素子10の構成について説明する。
図11は、第3実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【0098】
第2接続電極16bが第2励振電極14bの-X軸方向側に設けられている。水晶振動素子10には、2つの貫通孔20a,20bが形成されている。貫通孔20aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとの間の領域に形成されている。貫通孔20bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとの間の領域に形成されている。
【0099】
<第4実施形態>
図12を参照しつつ、第4実施形態に係る水晶振動素子10の構成について説明する。
図12は、第4実施形態に係る水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【0100】
第2接続電極16bが第2励振電極14bの-X軸方向側に設けられている。水晶振動素子10には、2つの貫通孔20a,20bが形成されている。貫通孔20aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとの間の領域に形成されている。貫通孔20bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとの間の領域に形成されている。貫通孔20a,20bは、励振部17の外縁に沿ってU字状に形成されている。これにより、貫通孔20a,20bは、第1引出電極15a及び第2引出電極15bが設けられた部分を除いて、励振部17を囲んでいる。
【0101】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0102】
本発明の一態様によれば、主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極と、水晶片の主面に設けられ励振電極と電気的に接続された接続電極と、を備え、水晶片の主面を平面視したとき、水晶片における励振電極と接続電極との間の領域には、貫通孔が形成されており、貫通孔における励振電極の側の内壁が、少なくとも4つの傾斜面を有する、水晶振動素子が提供される。
これによれば、励振電極の側の内壁を少なくとも4つの傾斜面で形成することにより、主要振動である厚みすべり振動モードの、励振電極と接続電極との間の領域における振動変位が減衰され、エネルギー閉じ込め効果が向上し、ESRが低減される。また、励振電極の側の内壁がコンベックス形状に近付くことによって、輪郭寸法に起因した厚み屈曲振動モードが抑制され、ESRが低減される。貫通孔が励振電極と接続電極との間で伝搬する応力を緩和することにより、振動漏れや水晶振動素子の脱落を抑制できる。
【0103】
一態様として、貫通孔における励振電極の側の内壁は、水晶片の主面と平行な面に対して面対称に構成される。
【0104】
一態様として、水晶片の励振電極が設けられた部分の厚みは、水晶片における励振電極と接続電極との間の領域の部分の厚みよりも大きい。
これによれば、励振電極が設けられた部分からの振動漏れが抑制できる。また、励振電極と接続電極との間の領域の部分の厚みを、励振電極が設けられた部分の厚みよりも小さくする工程において、貫通孔の内壁が加工できるため、製造工程が簡略化できる。
【0105】
一態様として、貫通孔における励振電極の側の内壁は、貫通孔の貫通方向の略中央を起点として水晶片の主面と平行な面から角度αで傾斜する第1傾斜面と、第1傾斜面と接続され水晶片の主面と平行な面から角度βで傾斜する第2傾斜面とを有し、角度αは、角度βよりも大きい。
これによれば、励振電極の側の内壁がコンベックス形状に近付くため、より効果的にESRが低減される。
【0106】
一態様として、貫通孔の略中央から第1傾斜面と第2傾斜面との接続部までの、水晶片の主面と交差する方向に沿った距離T1は、第1傾斜面と第2傾斜面との接続部から第2傾斜面と水晶片における励振電極と接続電極との間の主面との接続部までの、水晶片の主面と交差する方向に沿った距離T2より小さい。
これによれば、励振電極の側の内壁がコンベックス形状に近付くため、より効果的にESRが低減される。
【0107】
一態様として、角度α及び角度βが、32°<α<80°かつβ=32°の関係を有する。
これによれば、第1傾斜面と第2傾斜面との接続部から第2傾斜面と水晶片における励振電極と接続電極との間の主面との接続部までの、水晶片の主面と交差する方向に沿った距離を好適に設定することで、α=β=32°である場合に比べて、ESRを低減できる。
【0108】
一態様として、角度αが、40°<αの関係を有する
これによれば、ESRをより効果的に低減できる。
【0109】
一態様として、角度αが、α<65°の関係を有する
これによれば、第1傾斜面と第2傾斜面との接続部から第2傾斜面と水晶片における励振電極と接続電極との間の主面との接続部までの、水晶片の主面と交差する方向に沿った距離が小さいときでも、ESRが低減できる。
【0110】
一態様として、距離T2及び距離T3が、0.56≦T2/T3≦0.83の関係を有する。
これによれば、ESRをより効果的に低減できる。
【0111】
一態様として、貫通孔における接続電極の側の内壁は、貫通孔の貫通方向の略中央を起点として水晶片の主面と平行な面から角度γで傾斜する傾斜面を有し、角度γは、角度αより大きい。
水晶片には貫通孔を設けるためのスペースが必要であることから、本実施形態に係る水晶振動素子は、貫通孔を設けない構成に比べて大型化する。しかしながら、角度γが角度αよりも大きいことにより、接続電極近傍の寸法が小さくできるため、水晶片の大型化が抑制できる。
【0112】
一態様として、貫通孔における励振電極の側の内壁は、貫通孔における接続電極の側の内壁よりも突出している。
これによれば、励振電極の側の内壁がコンベックス形状に近付くため、輪郭寸法に起因した厚み屈曲振動モードが抑制され、ESRが低減されるとともに、接続電極近傍の寸法が小さくできるため、水晶片の大型化が抑制できる。
【0113】
本発明の他の一態様によれば、主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極と、水晶片の主面に設けられ励振電極と電気的に接続された接続電極と、を備え、水晶片の主面を平面視したとき、水晶片における励振電極と接続電極との間の領域には、貫通孔が形成されており、貫通孔の励振電極の側の内壁は、貫通孔の接続電極の側の内壁よりも突出している、水晶振動素子が提供される。
これによれば、励振電極の側の内壁がコンベックス形状に近付くため、輪郭寸法に起因した厚み屈曲振動モードが抑制され、ESRが低減されるとともに、接続電極近傍の寸法が小さくできるため、水晶片の大型化が抑制できる。また、貫通孔が励振電極と接続電極との間で伝搬する応力を緩和することにより、振動漏れや水晶振動素子の脱落を抑制できる。
【0114】
一態様として、水晶片は、ATカット水晶片である。
【0115】
一態様として、水晶片の接続電極が設けられた部分の厚みは、水晶片における励振電極と接続電極との間の領域の部分の厚みよりも大きい。
これによれば、水晶振動素子の導電性保持部材との接合強度が向上するため、水晶振動素子の実装姿勢が安定し、また、水晶振動素子の脱落が抑制できる。励振電極と接続電極との間の領域の部分の厚みを接続電極が設けられた部分の厚みよりも小さくする工程において、貫通孔の内壁を加工できるため、製造工程が簡略化できる。
【0116】
一態様として、前述の水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載されるベース部材と、ベース部材との間に水晶振動素子を収容する内部空間を形成する蓋部材と、ベース部材と蓋部材とを接合する接合部材とを備える、水晶振動子が提供される。
【0117】
一態様として、前述の水晶振動子と、水晶振動素子が搭載される外部基板とを備え、外部基板は、絶縁体層に挟まれた金属層を有する、電子装置が提供される。
これによれば、外部基板の上面と下面との間での熱伝導性が向上することにより、外気温に対する水晶振動子の温度の追従性が向上する。
【0118】
本発明に係る実施形態は、水晶振動子に限定されるものではなく、圧電振動子にも適用可能である。圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の一例が、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)である。水晶振動素子は、圧電効果によって励振される圧電片として、水晶片(Quartz Crystal Element)を利用するが、圧電片は、圧電単結晶、圧電セラミック、圧電薄膜、又は、圧電高分子膜などの任意の圧電材料によって形成されてもよい。一例として、圧電単結晶は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を挙げることができる。同様に、圧電セラミックは、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O
3
;PZT)、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、メタニオブ酸リチウム(LiNb2O6)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、又は、五酸化タンタル(Ta2O5)などを挙げることができる。圧電薄膜は、石英、又は、サファイアなどの基板上に上記の圧電セラミックをスパッタリング工法などによって成膜したものを挙げることができる。圧電高分子膜は、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は、フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン(VDF/TrFE)共重合体などを挙げることができる。上記の各種圧電材料は、互いに積層して用いられてもよく、他の部材に積層されてもよい。
【0119】
本発明に係る実施形態は、タイミングデバイス、発音器、発振器、荷重センサなど、圧電効果により電気機械エネルギー変換を行うデバイスであれば、特に限定されることなく適宜適用可能である。
【0120】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、ESRが低減された圧電振動素子、圧電振動子及び電子装置が提供できる。
【0121】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0122】
1…水晶振動子、
10…水晶振動素子、
11…水晶片、
14a,14b…励振電極、
15a,15b…引出電極、
16a,16b…接続電極、
17…励振部、
18…周辺部、
19…接続部、
11A,17A,18A,19A…上面、
11B,17B,18B,19B…下面、
20…貫通孔、
21,22…内壁、
21a~21d、22a,22b…傾斜面、
T1~T3…距離、
α、β、γ…角度、
W21,W22…幅、
30…ベース部材、
40…蓋部材、
50…接合部材、
130…外部基板、
140…外部キャップ、
150…封止枠、
160…ICチップ、