(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】圧電振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240404BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240404BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20240404BHJP
H01L 23/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L23/02 B
H01L23/06 B
H01L23/10 B
(21)【出願番号】P 2022533685
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010820
(87)【国際公開番号】W WO2022004069
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020114621
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】松村 威哉
(72)【発明者】
【氏名】河森 慎介
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220749(JP,A)
【文献】特開2001-308217(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H01L 23/02
H01L 23/06
H01L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が搭載されたベース部材と、
前記ベース部材との間に前記圧電振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、
前記ベース部材と前記蓋部材とを接合する、導電性接着剤によって設けられた接合部材と、
を備え、
前記蓋部材は、天壁部と、前記天壁部の外縁から前記ベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、前記側壁部は、前記ベース部材に対向する対向面を有し、
前記ベース部材には、前記圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、前記接地用電極は、前記接合部材を介して前記蓋部材に電気的に接続されており、
前記導電性接着剤は、樹脂系接着剤と、前記樹脂系接着剤に分散した導電性フィラーとを有しており、
前記導電性フィラーの粒径Rは、
4μm≦R≦15μm
の関係を満たし、
前記ベース部材には、少なくとも前記対向面と対向する前記給電用電極の領域を覆う保護膜が絶縁性材料によって設けられ、前記保護膜は、前記接合部材と接触しており、
前記接地用電極と前記対向面との間のギャップG1と、前記保護膜と前記対向面との間のギャップG2とは、
0≦G2-G1≦13μm
の関係を満たす、圧電振動子。
【請求項2】
圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が搭載されたベース部材と、
前記ベース部材との間に前記圧電振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、
前記ベース部材と前記蓋部材とを接合する、導電性接着剤によって設けられた接合部材と、
を備え、
前記蓋部材は、天壁部と、前記天壁部の外縁から前記ベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、前記側壁部は、前記ベース部材に対向する対向面を有し、
前記ベース部材には、前記圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、前記接地用電極は、前記接合部材を介して前記蓋部材に電気的に接続されており、
前記導電性接着剤は、樹脂系接着剤と、前記樹脂系接着剤に分散した導電性フィラーとを有しており、
前記ベース部材には、少なくとも前記対向面と対向する前記給電用電極の領域を覆う保護膜が絶縁性材料によって設けられ、前記保護膜は、前記接合部材と接触しており、
前記接地用電極と前記対向面との間のギャップG1と、前記保護膜と前記対向面との間のギャップG2とは、
0≦G2-G1≦13μm
の関係を満たす、圧電振動子。
【請求項3】
前記保護膜と前記対向面との間のギャップG2は、
2μm≦G2≦20μm
の関係を満たす、
請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記保護膜と前記対向面との間のギャップG2と、前記導電性フィラーの粒径Rとは、
R<G2
の関係を満たす、
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記導電性フィラーは、球状の樹脂コアと、前記樹脂コアを覆う金属膜とを有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項6】
前記樹脂コアは、スチレン系樹脂又はアクリル系樹脂であり、
前記金属膜はニッケルである、
請求項5に記載の圧電振動子。
【請求項7】
前記樹脂系接着剤は、エポキシ系の熱硬化性樹脂である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項8】
前記導電性接着剤は、前記樹脂系接着剤に分散した絶縁性フィラーをさらに有し、
前記導電性フィラーの粒径Rと、前記絶縁性フィラーの粒径rとは、
r<R
の関係を満たす、
請求項1から7のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項9】
前記導電性フィラーの一部は、前記接地用電極と前記蓋部材とに挟まれて変形している、
請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項10】
前記給電用電極は、
前記ベース部材の前記蓋部材側の上面に設けられ、前記上面を平面視したときに前記接合部材によって囲まれた電極パッドと、
前記ベース部材の側面部に設けられた側面電極と、
前記上面に設けられ、前
記電極パッドと前記側面電極とを電気的に接続する配線電極と、
を有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
振動子は、移動通信端末、通信基地局、家電などの各種電子機器において、タイミングデバイス、センサ、発振器などの用途に用いられている。電子機器の高機能化に伴い、安価で高性能な振動素子が求められている。
【0003】
特許文献1には、ベース部材と金属製の蓋部材とを導電性接着剤を介して接合し、この導電性接着剤によって蓋部材をベース部材の接地用電極に電気的に接続し、電磁波の出入りによるノイズを抑制した水晶振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水晶振動子では、導電性フィラーが小さ過ぎると、導電性フィラーと蓋部材との接触不良によって、蓋部材が接地できない場合がある。また、導電性フィラーが大き過ぎると、導電性接着剤の厚みの増大によって、封止性が低下する場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ノイズを抑制しつつ不良品の発生を抑制可能な圧電振動子の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧電振動子は、圧電振動素子と、圧電振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材との間に導電性接着剤の接合部材を挟んで接合され、ベース部材との間に圧電振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、を備え、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、ベース部材には、圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は、接合部材を介して蓋部材に電気的に接続されており、導電性接着剤は、樹脂系接着剤と、樹脂系接着剤に分散した導電性フィラーとを有しており、導電性フィラーの粒径Rは、4μm≦R≦15μmの関係を満たす。
【0008】
本発明の一態様に係る圧電振動子は、圧電振動素子と、圧電振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材との間に導電性接着剤の接合部材を挟んで接合され、ベース部材との間に圧電振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、を備え、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、ベース部材には、圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は、接合部材を介して蓋部材に電気的に接続されており、導電性接着剤は、樹脂系接着剤と、樹脂系接着剤に分散した導電性フィラーとを有しており、ベース部材には、少なくとも対向面と対向する給電用電極の領域を覆う絶縁性材料の保護膜が設けられ、保護膜は、接合部材と接触しており、接地用電極と対向面との間のギャップG1と、保護膜と対向面との間のギャップG2とは、0≦G2-G1≦13μmの関係を満たす。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノイズを抑制しつつ不良品の発生を抑制可能な圧電振動子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】ベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図5】接地用電極を含む水晶振動子の拡大断面図である。
【
図6】給電用電極を含む水晶振動子の拡大断面図である。
【
図7】粒径Rを変化させた場合の接地不良率及びリーク不良率を示す表である。
【
図8】ギャップG1及びギャップG2を変化させた場合のリーク不良率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
図1~
図4を参照しつつ、本発明の実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2は、実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
図3は、実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
図4は、ベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。なお、
図3は、
図2に示した水晶振動子1のIII-III線に沿った断面図である。
【0013】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y´軸及びZ´軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y´軸及びZ´軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に関係している。X軸が水晶結晶の電気軸(極性軸)、Y軸が水晶結晶の機械軸、Z軸が水晶結晶の光学軸に相当する。Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸である。
【0014】
以下の説明において、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y´軸に平行な方向を「Y´軸方向」、Z´軸に平行な方向を「Z´軸方向」という。また、X軸、Y´軸及びZ´軸の矢印の先端方向を「+(プラス)」、矢印とは反対の方向を「-(マイナス)」という。なお、便宜的に、+Y´軸方向を上方向、-Y´軸方向を下方向として説明するが、水晶振動子1の上下の向きは限定されるものではない。
【0015】
水晶振動子1は、水晶振動素子10と、ベース部材30と、蓋部材40と、接合部材50とを備えている。水晶振動素子10は、ベース部材30と蓋部材40との間に設けられている。ベース部材30及び蓋部材40は、水晶振動素子10を収容するための保持器を構成しており、Y´軸方向に沿って重なっている。水晶振動素子10は、ベース部材30に搭載されている。
【0016】
まず、水晶振動素子10について説明する。
水晶振動素子10は、圧電効果により水晶を振動させ、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する圧電振動素子である。水晶振動素子10は、薄片状の水晶片11と、一対の励振電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、一対の引出電極を構成する第1引出電極15a及び第2引出電極15bと、一対の接続電極を構成する第1接続電極16a及び第2接続電極16bとを備えている。
【0017】
水晶片11は、互いに対向する上面11A及び下面11Bを有している。上面11Aは、ベース部材30に対向する側とは反対側、すなわち後述する蓋部材40の天壁部41に対向する側に位置している。下面11Bは、ベース部材30に対向する側に位置している。
【0018】
水晶片11は、例えば、ATカット型の水晶結晶である。ATカット型の水晶片11は、互いに交差するX軸、Y´軸、及びZ´軸からなる直交座標系において、X軸及びZ´軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ´面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Y´軸と平行な方向が厚さとなるように形成される。
【0019】
ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。ATカット型の水晶振動素子10では、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)が主要振動として用いられる。水晶片11は、ATカット以外の異なるカットを適用してもよい。例えばBTカット、GTカット、SCカットなどを適用してよい。また、水晶振動素子は、Z板と呼ばれるカット角の水晶片を用いた音叉型水晶振動素子であってもよい。
【0020】
一例として、水晶片11は、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z´軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y´軸方向に平行な厚さが延在する厚さ方向を有する平板状である。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、水晶片11の平面形状は矩形状をなしている。
【0021】
水晶片11は、平板状に限定されるものではなく、メサ型構造や逆メサ型構造であってもよい。この場合、水晶片11は、厚みが連続的に変化するテーパ形状、厚みが不連続に変化する階段形状、厚みの変化量が連続的に変化するコンベックス形状、又は厚みの変化量が不連続に変化するベベル形状であってもよい。
【0022】
第1励振電極14aは水晶片11の上面11Aに設けられ、第2励振電極14bは水晶片11の下面11Bに設けられている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、水晶片11を挟んで互いに対向している。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ矩形状をなしており、互いの略全体が重なり合うように配置されている。
【0023】
第1引出電極15aは水晶片11の上面11Aに設けられ、第2引出電極15bは水晶片11の下面11Bに設けられている。第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。
【0024】
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、第1励振電極14a及び第2励振電極14bをベース部材30に電気的に接続するための電極であり、水晶片11の下面11Bに設けられている。
【0025】
励振電極、引出電極及び接続電極は、例えば、水晶片11との密着性が良好な下地層と、化学的安定性が良好な最表層とからなる積層体である。励振電極、引出電極及び接続電極を構成する材料は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)、鉄(Fe)などの金属材料から好適に選択される。励振電極、引出電極及び接続電極は、導電性セラミック、導電性樹脂、半導体などを含有してもよい。
【0026】
次に、ベース部材30について説明する。
ベース部材30は、平板状の基体31と、一対の電極パッドを構成する第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bと、上面電極33cと、第1側面電極34aと、第2側面電極34bと、第3側面電極34cと、第4側面電極34dと、第1外部電極35aと、第2外部電極35bと、第3外部電極35cと、第4外部電極35dと、保護膜39とを備えている。
【0027】
基体31は、互いに対向する上面31A及び下面31Bを有している。上面31A及び下面31Bは、基体31の一対の主面に相当する。上面31Aは、水晶振動素子10及び蓋部材40に対向する側に位置し、下面31Bは、例えば、水晶振動子1を外部の回路基板に実装する際に、当該回路基板に対向する側に位置している。基体31は、例えば絶縁性セラミック(アルミナ)などの焼結材であるが、水晶やシリコンなどによって設けられてもよい。
【0028】
上面31Aを平面視したとき、基体31は、X軸方向に延びてZ´軸方向において対向する一対の長辺と、Z´軸方向に延びてX軸方向において対向する一対の短辺とを有している。基体31の4つの角部には扇状の凹部が設けられている。この凹部は、上面31Aから下面31Bに亘って基体31を貫通する貫通孔を分割したものである。
【0029】
第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31の上面31Aに設けられている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース部材30に水晶振動素子10を電気的に接続するための端子である。基体31の上面31Aを平面視したとき、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、接合部材50によって囲まれている。
【0030】
上面電極33cは、蓋部材40と電気的に接続される電極である。上面電極33cは、ベース部材30の+X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられ、ベース部材30の蓋部材40側の最表面に位置している。
【0031】
第1側面電極34a~第4側面電極34dは、ベース部材30の上面31Aの最外縁と下面31Bの最外縁とをつなぐ側面部に設けられている。具体的には、基体31の角部に設けられた凹部の上面31A側の端部から下面31B側の端部に亘って設けられ、基体31の凹部を覆っている。第1側面電極34a~第4側面電極34dのそれぞれは、キャスタレーション電極に相当する。第1側面電極34aは、ベース部材30の-X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。第2側面電極34bは、ベース部材30の+X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。第3側面電極34cは、ベース部材30の+X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。第4側面電極34dは、ベース部材30の-X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。
【0032】
第1側面電極34aは、上面31Aに設けられた配線電極37aを介して第1電極パッド33aに電気的に接続され、第2側面電極34bは、上面31Aに設けられた配線電極37bを介して第2電極パッド33bに電気的に接続されてる。第3側面電極34cは、上面電極33cから連続的に設けられており、上面電極33cと電気的に接続されている。第1側面電極34a、第1電極パッド33a及びこれらを接続する配線電極37aは、水晶振動素子10が接続される給電用電極に相当する。第2側面電極34b、第2電極パッド33b及びこれらを接続する配線電極37bも同様に給電用電極に相当する。第3側面電極34c及び上面電極33cは、蓋部材40の接地に用いられる接地用電極に相当する。
【0033】
給電用電極及び接地用電極は、例えば、基体31との密着性が良好な下地層と、化学的安定性が良好な最表層とからなる積層体である。給電用電極及び接地用電極を構成する材料は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)、鉄(Fe)などの金属材料から好適に選択される。給電用電極及び接地用電極は、導電性セラミック、導電性樹脂、半導体などを含有してもよい。
【0034】
第1外部電極35a~第4外部電極35dは、半田等によって水晶振動子1を外部の回路基板に実装するための電極である。第1外部電極35a~第4外部電極35dは、基体31の下面31Bに設けられている。第1外部電極35aは、ベース部材30の-X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられ、第1側面電極34aに電気的に接続されている。第1外部電極35aは、ベース部材30の+X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられ、第2側面電極34bに電気的に接続されている。第3外部電極35cは、ベース部材30の+X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられ、第3側面電極34cに電気的に接続されている。第4外部電極35dは、ベース部材30の-X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられ、第4側面電極34dに電気的に接続されている。第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、一対の給電用電極に電気信号を供給するために用いられる。第3外部電極35cは、接地用電極を接地するために用いられる。第4外部電極35dは、電気信号等が入出力されないダミー電極である。第4外部電極35dは、第3外部電極35cとともに蓋部材40を接地するために用いられてもよく、省略されてもよい。
【0035】
保護膜39は、ベース部材30の蓋部材40と対向する側であって、接合部材50に接触する領域に設けられている。保護膜39は、絶縁性材料によって設けられている。保護膜39は、給電用電極の一部(蓋部材40の対向面43Bと対向する領域)を覆い、給電用電極と蓋部材40とを電気的に絶縁している。具体的には、保護膜39は、第1側面電極34aと第1電極パッド33aとを接続する配線電極37aの少なくとも一部を覆い、第2側面電極34bと第2電極パッド33bとを接続する配線電極37bの少なくとも一部を覆っている。保護膜39は、上面電極33cの外側の領域に設けられており、上面電極33cは保護膜39から露出している。保護膜39は、例えばソルダーレジストである。
【0036】
なお、後述する接合部材50の導電性が充分な異方性を有し、基体31の上面31Aに沿った方向における導電性が充分に低ければ、保護膜39は省略してもよい。この場合、給電用電極に接合部材50が接触したとしても、水晶振動素子10と蓋部材40との接合部材50を介した短絡は生じ難いためである。
【0037】
ベース部材30は、一対の導電性保持部材を構成する第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを備えている。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、ベース部材30及び蓋部材40から間隔を空けて水晶振動素子10を保持している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10とベース部材30とを電気的に接続している。具体的には、第1導電性保持部材36aが第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを電気的に接続し、第2導電性保持部材36bが第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物である。
【0038】
次に、蓋部材40について説明する。
蓋部材40は、ベース部材30に接合されている。蓋部材40は、ベース部材30との間に水晶振動素子10を収容する内部空間を形成する。蓋部材40はベース部材30の側に開口する凹部49を有しており、本実施形態における内部空間は、凹部49の内側の空間に相当する。凹部49は、液密封止されている。蓋部材40の材質は、導電性材料であり、さらに望ましくは気密性の高い金属材料である。蓋部材40が導電性材料で構成されることによって、内部空間への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が蓋部材40に付与される。熱応力の発生を抑制する観点から、蓋部材40の材質は、基体31に近い熱膨張率を有する材料であることが望ましく、例えば常温付近での熱膨張率がガラスやセラミックと広い温度範囲で一致するFe-Ni-Co系合金である。
【0039】
蓋部材40は、平板状の天壁部41と、天壁部41の外縁に接続された側壁部42とを有している。天壁部41は、基体31の上面31Aに沿って延在し、高さ方向において水晶振動素子10を挟んでベース部材30と対向している。また、側壁部42は、天壁部41からベース部材30に向かって延在しており、基体31の上面31Aと平行な方向において水晶振動素子10を囲んでいる。蓋部材40はさらに、側壁部42のベース部材30側の先端部に接続されており且つ基体31の上面31Aに沿って外側に延在するフランジ部を有してもよい。
【0040】
蓋部材40は、凹部49の側に位置する内面と、凹部49とは反対側であって外部に露出する外面とを有している。内面は、天壁部41及び側壁部42の水晶振動素子10に対向する側であり、外面は、天壁部41及び側壁部42の水晶振動素子10に対向する側とは反対側である。蓋部材40はさらに、ベース部材30に対向する対向面43Bを有している。対向面43Bは、ベース部材30の側壁部42の先端において基体31の上面31Aに沿って延在する面である。対向面43Bの面積は、フランジ部を設けることによって拡張可能である。
【0041】
主面の法線方向から平面視したときの蓋部材40の平面形状は、例えば略矩形状である。蓋部材40の平面形状は上記に限定されるものではなく、多角形状、円形状、楕円形状及びこれらの組合せでもよい。
【0042】
次に、接合部材50について説明する。
接合部材50は、ベース部材30と蓋部材40とを接合している。具体的には、接合部材50は、保護膜39と対向面43Bとを接合し、上面電極33cと対向面43Bとを接合している。また、接合部材50は、内部空間に相当する凹部49を封止している。具体的には、接合部材50は、ベース部材30及び蓋部材40のそれぞれの外縁部の全周に亘って設けられ、水晶振動素子10を囲むように矩形の枠状をなしている。
【0043】
接合部材50は、導電性接着剤であり、接地用電極と蓋部材40とを電気的に接続している。接合部材50の導電性は異方性を有している。具体的には、上面電極33cと対向面43Bとの間の領域において、基体31の上面31Aと交差する方向に沿った接合部材50の電気抵抗は低く、上面電極33cと対向面43Bとが接合部材50を介して電気的に接続されている。一方で、基体31の上面31Aに沿った接合部材50の電気抵抗は高く、接合部材50が給電用電極に接触した場合であっても、給電用電極と蓋部材40とは電気的に絶縁される。
【0044】
次に、
図5及び
図6を参照しつつ、接合部材50による接合部分のより詳細な構成について説明する。
図5は、接地用電極を含む水晶振動子の拡大断面図である。
図6は、給電用電極を含む水晶振動子の拡大断面図である。
【0045】
接合部材50の導電性接着剤は、樹脂系接着剤51と、樹脂系接着剤51に分散した複数の導電性フィラー52と、樹脂系接着剤51に分散した複数の絶縁性フィラー53とを有している。
【0046】
樹脂系接着剤51は、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂である。樹脂系接着剤51は、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、イミド系又はシリコーン系の熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂系接着剤51は、光硬化性樹脂を含んでもよい。
【0047】
導電性フィラー52は、例えば球状の樹脂コアを金属膜で覆った球状フィラーである。導電性フィラー52は変形可能であり、上面電極33cと対向面43Bとによって挟まれた導電性フィラー52は楕円体状に変形している。変形に伴い、導電性フィラー52は上面電極33c及び対向面43Bの両方と確実に接触する。これにより、上面電極33cと対向面43Bとが、導電性フィラー52を介して電気的に接続される。また、変形に伴い、導電性フィラー52と上面電極33cとの接触面積、及び、導電性フィラー52と対向面43Bとの接触面積が増大する。これにより、導電性フィラー52と上面電極33cとの間の電気抵抗は低下する。樹脂コアの材料は、例えば、スチレン系樹脂又はアクリル系樹脂である。これによれば、導電性フィラー52の弾性率を好適に設計可能である。金属膜の材料は、例えばNiである。これによれば、樹脂コアからの金属膜の剥離を抑制可能であり、電気抵抗の上昇を抑制可能である。
【0048】
なお、樹脂コアは変形可能であればスチレン系樹脂及びアクリル系樹脂に限定されるものではない。また、金属膜は、Niに限定されるものではなく、Au、Ag、Cu、Al、Tiなどの金属材料によってもうけられてもよい。金属膜は、複数の金属層からなる多層膜であってもよい。導電性フィラー52は、Cu、Ni、C、Siなどの導電性材料を球状に加工したものであってもよい。
【0049】
絶縁性フィラー53は、硬化前の導電性接着剤の粘度を調整し、硬化前の導電性接着剤の不所望な濡れ広がりによる給電用電極との接触を抑制する。絶縁性フィラー53の材料は、例えば球状シリカである。絶縁性フィラー53の材料は上記に限定されるものではなく、シリコーン、ウレタン、イミド、エポキシ、ビニル、アミン、フェノール、アミノ、アクリル、スチレン等の有機化合物、若しくは、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、グラスファイバー、グラファイト等の無機化合物であってもよい。
【0050】
接合部材50の導電性接着剤の総体積に対する導電性フィラー52の体積の比率(以下、「体積比率」とする。)は、3vol%以上18vol%以下である。
体積比率が3vol%よりも小さい場合、上面電極33cと対向面43Bとの間の領域に導電性フィラー52が存在せず、上面電極33cと対向面43Bとの電気的な接続が得られない場合がある。すなわち、体積比率が3vol%以上である場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
体積比率が18vol%よりも大きい場合、導電性フィラー52同士が接近又は接触し、基体31の上面31Aに沿った接合部材50の電気抵抗が低下する場合がある。すなわち、体積比率が18vol%以下の場合、水晶振動素子10と蓋部材40とが短絡した不良品の発生率を低減できる。
なお、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減する観点から、体積比率は、7vol%以上であることがさらに満たすのが望ましい。また、水晶振動素子10と蓋部材40とが短絡した不良品の発生率を低減する観点から、体積比率は、10vol%以下であることがさらに望ましい。
【0051】
導電性フィラー52を完全な球体と仮定した場合の直径(以下、「粒径R」とする。)は、4μm≦R≦15μmの関係を満たしている。
蓋部材40のうねりに起因して上面電極33cと対向面43Bとの間のギャップG1は平均3.8μm程度変動する。このため、R<4μmの場合、導電性フィラー52が上面電極33c及び対向面43Bの少なくとも一方に接触しない場合がある。すなわち、4μm≦Rの場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。なお、蓋部材40のうねりに起因したギャップG1の変動は最大で6μm程度であるため、6μm≦Rを満たすのがさらに望ましい。
導電性フィラー52はスペーサとして機能するため、15μm<Rの場合、上面電極33cと対向面43Bとの間の領域における接合部材50の厚みが増大し、封止性が低下する場合がある。すなわち、R≦15μmの場合、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率を低減できる。
なお、粒径Rは、導電性フィラー52の樹脂コアのコールターカウンター法によって得た粒径分布から算出した算術平均粒径である。導電性フィラー52の金属膜の厚みは、樹脂コアの粒径に比べて充分小さいため、樹脂コアの粒径を導電性フィラー52の粒径Rとみなすことができる。ここで、導電性フィラー52の金属膜の厚みは、一例として10nm以上500nm以下である。金属膜の厚みが10nmよりも小さい場合、導電性フィラー52の電気抵抗が増大する場合がある。金属膜の厚みが500mよりも大きい場合、金属膜が導電性フィラー52の変形を阻害する場合や、金属膜が樹脂コアから剥離する場合がある。すなわち、金属膜の厚みが10nm以上500nm以下の場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
【0052】
対向面43Bの短手方向の幅Wと、導電性フィラー52の粒径Rとは、4μm≦R≦W/2の関係を満たしている。
接地用電極と蓋部材40との間での導通を確立するために、上面電極33cと対向面43Bとによって挟まれた導電性フィラー52は加圧される。このとき、W/2<Rの場合、導電性フィラー52が上面電極33cと対向面43Bとの間の領域から押し出される場合がある。すなわち、R≦W/2の場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
4μm≦Rの場合、前述の通り蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
【0053】
絶縁性フィラー53を完全な球体と仮定した場合の直径(以下、「粒径r」とする。)と導電性フィラー52の粒径Rとは、r<Rの関係を満たしている。
R≦rの場合、絶縁性フィラー53がスペーサとして導電性フィラー52の変形を阻害する場合がある。例えば、絶縁性フィラー53の弾性率が導電性フィラー52の弾性率よりも大きい場合、R=rであれば導電性フィラー52の変形は絶縁性フィラー53によって阻害される。また、絶縁性フィラー53の弾性率が導電性フィラー52の弾性率よりも小さい場合であっても、R<<rであれば導電性フィラー52の変形は絶縁性フィラー53によって阻害される。したがって、r<Rの場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
なお、粒径rは、マイクロトラック法によって得た粒径分布から算出したメジアン径D50である。
【0054】
粒径Rと粒径rとは、R/20≦r≦R×8/10の関係を満たしている。
r<R/20の場合、導電性フィラー52と上面電極33cとの間に絶縁性フィラー53が侵入し、導電性フィラー52と上面電極33cとの接触が阻害される場合がある。同様に、導電性フィラー52と対向面43Bとの接触が阻害される場合がある。すなわち、R/20≦rの場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
R×8/10<rの場合、上面電極33cと対向面43Bとの間の領域において絶縁性フィラー53がスペーサとして導電性フィラー52の変形を阻害する場合がある。すなわち、r≦R×8/10の場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
なお、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減する観点から、粒径Rと粒径rとは、R/10≦rの関係をさらに満たすのが望ましい。また、r≦R/2の関係をさらに満たすのが望ましい。
【0055】
上面電極33cと対向面43Bとの間のギャップG1と、保護膜39と対向面43Bとの間のギャップG2と、導電性フィラー52の粒径Rとは、G1<R<G2の関係を満たしている。
R≦G1の場合、導電性フィラー52が上面電極33c及び対向面43Bの少なくとも一方に接触しない場合がある。すなわち、G1<Rの場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
G2≦Rの場合、保護膜39と対向面43Bとによって挟まれた導電性フィラー52が変形する。また、上面電極33cと対向面43Bとによって挟まれた導電性フィラー52を変形させるときに、保護膜39と対向面43Bとの間の領域から導電性フィラー52の一部が押し出される。これによれば、不所望な領域で導電性フィラー52同士が接近し、基体31の上面31Aに沿った方向における接合部材50の電気抵抗が低下する場合がある。すなわち、R<G2の場合、水晶振動素子10と蓋部材40とが短絡した不良品の発生率を低減できる。
【0056】
ギャップG1とギャップG2とは、0≦G2-G1≦13μmの関係を満たしている。
G2-G1<0すなわちG2<G1の場合、保護膜39と対向面43Bとの間の領域に位置する導電性フィラー52がスペーサとして機能し、上面電極33cと対向面43Bとの間の領域における導電性フィラー52の充分な変形が阻害される場合がある。すなわち、0≦G2-G1の場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
13μm<G2-G1の場合、保護膜39と対向面43Bとの間の領域における接合部材50の膜厚増大に伴って封止性が低下する場合がある。すなわち、G2-G1≦13μmの場合、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率を低減できる。
【0057】
ギャップG2は、2μm≦G2≦20μmの関係を満たしている。
ギャップG2は、粒径Rによって制限される。このため、ギャップG2を小さくするには、粒径Rを小さくする必要がある。G2<2μmの場合、粒径Rが小さ過ぎるため、蓋部材40のうねりに起因したギャップG1の変動によって、導電性フィラー52が上面電極33c及び対向面43Bの少なくとも一方に接触しない場合がある。すなわち、2μm≦G2の場合、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減できる。
20μm<G2の場合、保護膜39と対向面43Bとの間の領域における接合部材50の膜厚増大に伴って封止性が低下する場合がある。すなわち、G2≦20μmの場合、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率を低減できる。
【0058】
次に、
図7及び
図8を参照しつつ、実施例及び比較例について説明する。
図7は、幅W及び粒径Rを変化させた場合の接地不良率を示す表である。
図8は、粒径R及び粒径rを変化させた場合の接地不良率を示す表である。
【0059】
図7の実施例1~3及び比較例1,2のそれぞれに係る水晶振動子は、本実施形態に係る水晶振動子1であって、導電性フィラー52の添加率を一定にし、粒径Rを変化させたものである。「導電性フィラー52の添加率」は、導電性接着剤の総重量に対する導電性フィラー52の重量の比率である。
(比較例1)
R=3.0μm、導電性フィラー52の添加率は10wt%である。
(実施例1)
R=5μm、導電性フィラー52の添加率は10wt%である。
(実施例2)
R=10μm、導電性フィラー52の添加率は10wt%である。
(実施例3)
R=15μm、導電性フィラー52の添加率は10wt%である。
(比較例2)
R=20μm、導電性フィラー52の添加率は10wt%である。
【0060】
それぞれの水晶振動子1において、蓋部材40と給電用電極とが電気的に接続されていない不良品の発生率(以下、「接地不良率」とする。)、及びリーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率(以下、「リーク不良率」とする。)を測定した。それぞれの測定サンプル数は、20個である。接地不良率の判定において、接地用電極と蓋部材40との間の電気抵抗が10Ω以下のものを良品と判定し、10Ωよりも大きいものを不良品と判定した。接地不良率が5%以下を〇とし、5%より大きいものを×とした。リーク不良率の判定において、ガルデン(登録商標、Solvay社製)に浸漬して減圧してもガルデンが内部に侵入しないものを良品と判定し、ガルデンに浸漬して減圧するとガルデンが内部に侵入するものを不良品と判定した。リーク不良率が5%以下を〇とし、5%より大きいものを×とした。
【0061】
R<4μmを満たす比較例1では、リーク不良率が低かったものの接地不良率が高く、不良品の発生率を充分に低減できなかった。15μm<Rを満たす比較例2では、接地不良率が低かったもののリーク不良率が高く、不良品の発生率を充分に低減できなかった。4μm≦R≦15μmを満たす実施例1~3では、接地不良率及びリーク不のいずれもが低く、不良品の発生が抑制できていた。
【0062】
図8の実施例4~6及び比較例3,4のそれぞれに係る水晶振動子は、本実施形態に係る水晶振動子1であって、ギャップG1及びギャップG2を変化させたものである。
(実施例4)
G1=15μm、G2=20μm、G2-G1=5μm
(実施例5)
G1=10μm、G2=20μm、G2-G1=10μm
(実施例6)
G1=7μm、G2=20μm、G2-G1=13μm
(比較例3)
G1=7μm、G2=22μm、G2-G1=15μm
(比較例4)
G1=15μm、G2=28μm、G2-G1=13μm
【0063】
それぞれの水晶振動子1において、リーク不良率を測定した。それぞれの測定サンプル数は、20個である。リーク不良率の判定において、ガルデンに浸漬して減圧してもガルデンが内部に侵入しないものを良品と判定し、ガルデンに浸漬して減圧するとガルデンが内部に侵入するものを不良品と判定した。リーク不良率が5%以下を〇とし、5%より大きいものを×とした。
【0064】
13μm<G2-G1を満たす比較例3では、リーク不良率が高く、不良品の発生率を充分に低減できなかった。0≦G2-G1≦13μmを満たすが20μm<G2を満たす比較例4では、リーク不良率が高く、不良品の発生率を充分に低減できなかった。
【0065】
以上のように、本実施形態では、4μm≦R≦15μmの関係を満たしている。
これによれば、導電性フィラー52を上面電極33c及び対向面43Bの両方に接触させつつ、接合部材50の厚みを低減できる。したがって、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減しつつ、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率も低減できる。
【0066】
他の実施態様では、0≦G2-G1≦13μmの関係を満たしている。
これによれば、導電性フィラー52を上面電極33c及び対向面43Bの両方に接触させつつ、接合部材50の厚みを低減できる。したがって、蓋部材40が接地できない不良品の発生率を低減しつつ、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率も低減できる。
【0067】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0068】
本発明の一態様によれば、水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材との間に導電性接着剤の接合部材を挟んで接合され、ベース部材との間に水晶振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、を備え、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、ベース部材には、水晶振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は、接合部材を介して蓋部材に電気的に接続されており、導電性接着剤は、樹脂系接着剤と、樹脂系接着剤に分散した導電性フィラーとを有しており、導電性フィラーの粒径Rは、4μm≦R≦15μmの関係を満たす、水晶振動子が提供される。
これによれば、接地によって電磁シールド機能を付与可能な蓋部材によって、電磁波の出入りに起因したノイズが低減できる。また、導電性フィラーを給電用電極及び蓋部材の両方に接触させつつ、接合部材の厚みを低減できる。したがって、蓋部材が接地できない不良品の発生率を低減しつつ、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率も低減できる。
【0069】
一態様として、ベース部材には、少なくとも対向面と対向する給電用電極の領域を覆う絶縁性材料の保護膜が設けられ、保護膜は、接合部材と接触しており、接地用電極と対向面との間のギャップG1と、保護膜と対向面との間のギャップG2とは、0<G2-G1<13μmの関係を満たす。
【0070】
本発明の他の一態様によれば、水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材との間に導電性接着剤の接合部材を挟んで接合され、ベース部材との間に水晶振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、を備え、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、ベース部材には、水晶振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は、接合部材を介して蓋部材に電気的に接続されており、導電性接着剤は、樹脂系接着剤と、樹脂系接着剤に分散した導電性フィラーとを有しており、ベース部材には、少なくとも対向面と対向する給電用電極の領域を覆う絶縁性材料の保護膜が設けられ、保護膜は、接合部材と接触しており、接地用電極と対向面との間のギャップG1と、保護膜と対向面との間のギャップG2とは、0≦G2-G1≦13μmの関係を満たす、水晶振動子が提供される。
これによれば、接地によって電磁シールド機能を付与可能な蓋部材によって、電磁波の出入りに起因したノイズが低減できる。また、導電性フィラーを給電用電極及び蓋部材の両方に接触させつつ、接合部材の厚みを低減できる。したがって、蓋部材が接地できない不良品の発生率を低減しつつ、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率も低減できる。
【0071】
一態様として、保護膜と対向面との間のギャップG2は、2μm≦G2≦20μmの関係を満たす。
これによれば、導電性フィラーを給電用電極及び蓋部材の両方に接触させつつ、接合部材の厚みを低減できる。したがって、蓋部材が接地できない不良品の発生率を低減しつつ、リーク不良によって周波数が変動する不良品の発生率も低減できる。
【0072】
一態様として、保護膜と対向面との間のギャップG2と、導電性フィラーの粒径Rとは、R<G2の関係を満たす。
これによれば、不所望な領域での導電性フィラー同士の接近を抑制できる。したがって、水晶振動素子と蓋部材とが短絡した不良品の発生率を低減できる。
【0073】
一態様として、導電性フィラーは、球状の樹脂コアと、樹脂コアを覆う金属膜とを有している。
【0074】
一態様として、樹脂コアは、スチレン系樹脂又はアクリル系樹脂であり、金属膜はニッケルである。
【0075】
一態様として、樹脂系接着剤は、エポキシ系の熱硬化性樹脂である。
【0076】
一態様として、導電性接着剤は、樹脂系接着剤に分散した絶縁性フィラーをさらに有し、導電性フィラーの粒径Rと、絶縁性フィラーの粒径rとは、r<Rの関係を満たす。
これによれば、絶縁性フィラーによる導電性フィラーの変形の阻害が抑制できる。したがって、蓋部材が接地できない不良品の発生率を低減できる。
【0077】
本発明に係る実施形態は、水晶振動子に限定されるものではなく、圧電振動子にも適用可能である。圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の一例が、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)である。水晶振動素子は、圧電効果によって励振される圧電片として、水晶片(Quartz Crystal Element)を利用するが、圧電片は、圧電単結晶、圧電セラミック、圧電薄膜、又は、圧電高分子膜などの任意の圧電材料によって形成されてもよい。一例として、圧電単結晶は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を挙げることができる。同様に、圧電セラミックは、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3;PZT)、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、メタニオブ酸リチウム(LiNb2O6)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、又は、五酸化タンタル(Ta2O5)などを挙げることができる。圧電薄膜は、石英、又は、サファイアなどの基板上に上記の圧電セラミックをスパッタリング工法などによって成膜したものを挙げることができる。圧電高分子膜は、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は、フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン(VDF/TrFE)共重合体などを挙げることができる。上記の各種圧電材料は、互いに積層して用いられてもよく、他の部材に積層されてもよい。
【0078】
本発明に係る実施形態は、タイミングデバイス、発音器、発振器、荷重センサなど、圧電効果により電気機械エネルギー変換を行うデバイスであれば、特に限定されることなく適宜適用可能である。
【0079】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、ノイズを抑制しつつ不良品の発生を抑制可能な圧電振動子を提供できる。
【0080】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0081】
1…水晶振動子、
10…水晶振動素子、
30…ベース部材、
31…基体、
33a,33b…電極パッド、
33c…上面電極、
34a~34d…側面電極、
35a~35d…外部電極、
39…保護膜、
40…蓋部材、
41…天壁部、
42…側壁部、
43B…対向面、
50…接合部材、
51…樹脂系接着剤、
52…導電性フィラー、
53…絶縁性フィラー、