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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】無線通信システム、及び、無線ノード
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/155 20060101AFI20240404BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240404BHJP
   H04W 4/30 20180101ALI20240404BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALN20240404BHJP
【FI】
H04B7/155
H04W16/28 130
H04W4/30
H04B7/0413
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019201596
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021077954
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載アドレス https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000035736.html 掲載日 令和1年9月2日 (2)ウェブサイトの掲載アドレス https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02933/ 掲載日 令和1年9月27日 (3)刊行物名 BE建築設備 2019年10月号 発行日 令和1年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】509266251
【氏名又は名称】PicoCELA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 浩
(72)【発明者】
【氏名】内木場 夕紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智成
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509025(JP,A)
【文献】特開2011-199506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/14-7/22
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の外壁工事が未完了である建築物の外部に配置され、第1水平面に位置するコアノードと、
前記第1水平面よりも高く、前記建築物の前記外壁工事が完了した範囲の最上位層以上の位置に相当する第2水平面に位置し、前記コアノードと通信を行う無線中継器と、
前記建築物の内部に位置し、前記無線中継器と通信を行う無線機と、を備え、
前記コアノードは、
前記無線中継器に向けて指向性を有する第1アンテナを備え、
前記無線中継器は、
前記コアノードに向けて指向性を有する第2アンテナと、
第3アンテナと、
前記第2アンテナで受信された下り無線信号を処理して前記第3アンテナから前記無線機宛へ送信する処理と、前記第3アンテナで受信された上り無線信号を処理して前記第2アンテナから前記コアノードへ送信する処理と、の少なくとも1つを行う処理部と、
を備えた、無線通信システム。
【請求項2】
前記第3アンテナは、前記無線機に向けて指向性を有する、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記処理部は、MIMO(Multi-Input Multi-Output)による送受信回路を有する、
請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記処理部は、
前記無線中継器と前記コアノードとの間、及び、前記無線中継器と少なくとも1つの前記無線機との間の各無線リンクの伝搬損に関する情報に基づく処理によって、前記無線中継器と前記コアノードとの間の無線リンクを中継対象に選択する、
請求項1から3の何れか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線中継器は、前記建築物の上部又は周囲に設置された建機における、前記建築物よりも上方の位置に設けられた、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記建機は、クレーンである、
請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線機は、前記建築物の前記外壁工事が完了した階層の高さの範囲内に位置する、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】
築物の外壁工事が完了した範囲の最上位層以上の位置に相当する第1水平面に位置する無線ノードであって、
少なくとも一部の前記外壁工事が未完了である前記建築物の外部に配置され、前記第1水平面よりも低い第2水平面に位置するコアノードに向けて指向性を有する第1アンテナと、
第2アンテナと、
前記第1アンテナで受信された下り無線信号を処理して前記第2アンテナから無線機宛へ送信する処理と、前記第2アンテナで受信された上り無線信号を処理して前記第1アンテナから前記コアノードへ送信する処理と、の少なくとも1つを行う処理部と、
を備えた無線ノード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、及び、無線ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
セルラー通信システムにおいて、ユーザ装置向けの無線アクセス回線を提供する基地局と、バックボーンネットワーク(コアネットワークと称されることもある)と、を有線のバックホール(BH)ネットワークによって接続することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-143046号公報
【文献】国際公開第2011/105371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、新世代のモバイル通信を実現する1つの形態として、半径が数十メートルの無線通信エリアを提供する複数の無線機器(例えば、基地局又はアクセスポイント)の間を、無線(例えば、無線マルチホップ)によって接続するシステム又はネットワークが検討されている。なお、「無線機器」は、「無線ノード」あるいは「無線通信装置」と称されてもよい。
【0005】
ここで、例えば、建設現場といった工事現場において、建物の異なる階層に無線通信環境を現場作業員のために一時的(あるいは、暫定的)に導入したい場合に、如何にして無線通信環境を容易に構築し撤去できるようにするかについて余地がある。
【0006】
本発明の非限定的な目的の1つは、高さ方向を含む3次元的な無線ルートを容易に構築でき、また、容易に撤去できる無線通信技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る無線通信システムは、第1水平面に位置するコアノードと、前記第1水平面と異なる第2水平面に位置する無線中継器と、第3水平面に位置する無線機と、を備え、前記コアノードは、前記無線中継器に向けて指向性を有する第1アンテナを備え、前記無線中継器は、前記コアノードに向けて指向性を有する第2アンテナと、第3アンテナと、前記第2アンテナで受信された下り無線信号を処理して前記第3アンテナから前記無線機宛へ送信する処理と、前記第3アンテナで受信された上り無線信号を処理して前記第2アンテナから前記コアノードへ送信する処理と、の少なくとも1つを行う処理部と、を備える。
【0008】
一態様に係る無線ノードは、第1水平面に位置する無線ノードであって、前記第1水平面と異なる第2水平面に位置するコアノードに向けて指向性を有する第1アンテナと、第2アンテナと、前記第1アンテナで受信された下り無線信号を処理して前記第2アンテナから前記無線機宛へ送信する処理と、前記第2アンテナで受信された上り無線信号を処理して前記第1アンテナから前記コアノードへ送信する処理と、の少なくとも1つを行う処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非限定的な態様によれば、高さ方向を含む3次元的な無線ルートを容易に構築でき、また、容易に撤去できる無線通信技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】一実施の形態に係る無線通信システムの導入例の第1の状態を示す図である。
図1B】一実施の形態に係る無線通信システムの導入例の第1の状態を示す図である。
図2A】一実施の形態に係る無線通信システムの導入例の第2の状態を示す図である。
図2B】一実施の形態に係る無線通信システムの導入例の第2の状態を示す図である。
図3】一実施の形態に係るノードのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】一実施の形態に係るノードのアンテナの指向性の例を示す図である。
図5】一実施の形態に係るノードの機能的な構成例を示すブロック図である。
図6図5に例示した制御部の機能的な構成例を示すブロック図である。
図7】一実施の形態に係るノード間のリンクセットアップ手順の一例を示すフローチャートである。
図8図1A及び図1Bに示した無線通信システムにおけるメッシュリンクの第1の例を示す図である。
図9図1A及び図1Bに示した無線通信システムにおけるメッシュリンクの第2の例を示す図である。
図10】一実施の形態に係るメッシュリンク上のツリー経路制御を含むコアノード(CN)の動作例を示すフローチャートである。
図11】一実施の形態に係るメッシュリンク上のツリー経路制御を含むスレーブノード(SN)の動作例を示すフローチャートである。
図12図8に示したメッシュリンクの第1の例において構築されるツリー経路の例を示す図である。
図13図9に示したメッシュリンクの第2の例において構築されるツリー経路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、実施の形態について説明する。本明細書の全体を通じて同一要素には、特に断らない限り、同一符号を付す。添付の図面と共に以下に記載される事項は、例示的な実施の形態を説明するためのものであり、唯一の実施の形態を示すためのものではない。例えば、実施の形態において動作の順序が示された場合、動作の順序は、全体的な動作として矛盾が生じない範囲で、適宜に変更されてもよい。
【0012】
複数の実施の形態及び/又は変形例を例示した場合、或る実施の形態及び/又は変形例における一部の構成、機能及び/又は動作は、矛盾の生じない範囲で、他の実施の形態及び/又は変形例に含まれてもよいし、他の実施の形態及び/又は変形例の対応する構成、機能及び/又は動作に置き換えられてもよい。
【0013】
また、実施の形態において、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、説明が不必要に冗長になること、及び/又は、技術的な事項又は概念が曖昧になることを回避して当業者の理解を容易にするために、公知又は周知の技術的な事項の詳細説明を省略する場合がある。また、実質的に同一の構成、機能及び/又は動作についての重複説明を省略する場合がある。
【0014】
添付図面および以下の説明は、実施の形態の理解を助けるために提供されるものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。また、以下の説明で使われる用語は、当業者の理解を助けるために他の用語に適宜に読み替えられてもよい。
【0015】
<本発明に至った知見>
【0016】
モバイル通信のインフラストラクチャの1つであるBHネットワークを無線マルチホップによって無線化することで、有線ケーブルの敷設を不要にでき、モバイル通信システムの導入に要する敷設コストを削減できる。そのため、例えば、モバイル通信システムを一時的(あるいは、暫定的)に導入する場合には、BHネットワークを無線マルチホップによって無線化することが有効である。
【0017】
ここで、例えば、建設現場といった工事現場において、建物の異なる階層に無線通信環境を現場作業員のために一時的(あるいは、暫定的)に導入する場合、工事の進捗状況に応じて無線通信環境が時々刻々と変化する場合がある。
【0018】
例えば、建物の基礎工事や骨組み工事は完了したが外壁工事が未だ行われていない状況では、建物外部に設置された無線ノードと建物内部に設置された無線ノードとは、見通し内(line of sight, LOS)環境あるいはLOS環境に近い環境にある。そのため、無線ノード間において、期待される無線通信品質を確保し易い。
【0019】
しかし、例えば、外壁工事が進むにつれて、当該無線ノード間は、見通し外(non line of sight, NLOS)環境に近づくため、工事の進捗状況に応じて無線通信品質が低下し得る。
【0020】
例えば、ビルの建築工事の現場では、ビルの階層毎に、骨組みの工事と外壁の工事とが順に行われる場合がある。ビル外部に設置された無線ノードの無線電波は、ビル内部の外壁工事が完了していない階層に設置された無線ノードに届く。一方で、ビル外部に設置された無線ノードの無線電波は、外壁工事が進むにつれて遮蔽され易くなるため、外壁工事が完了した階層に設置された無線ノードには届かない場合がある。
【0021】
そこで、本願発明者は、例えば、無線BHネットワークの技術を応用して、高さ方向を含む3次元的な無線ルートを、工事の進捗状況に応じて容易に構築でき、また、容易に撤去できる無線通信技術の開発に至った。
【0022】
かかる無線通信技術によれば、例えば、工事現場における暫定的な無線環境の構築に資する。以下、非限定的な実施例について説明する。
【0023】
本発明では、上述した例のように、外壁工事の前後において、無線ノードの間の電波伝搬環境が変化した場合であっても、その変化に対する無線通信品質の低下を抑制できる。
【0024】
<システム構成例>
図1A及び図1Bは、一実施の形態に係る無線通信システムの導入例の第1の状態を示す図である。図1A及び図1Bは、ビルの建築現場に、無線通信システム1が導入される例を示す。図1A及び図1Bには、それぞれ、3次元空間を表すX軸、Y軸、Z軸が示される。なお、X-Y平面は、地表面に沿って規定される水平面を示す。Z軸は、高さ方向(上下方向)を規定する。また、図1Aは、Y軸の負方向から見た図であり、図1Bは、Z軸の正方向から見た図である。
【0025】
図1A及び図1Bには、1階から4階までの4つのフロアを有する建築中のビルが示される。なお、ビルの4階は、外壁工事が未完了のフロアであり、ビルの1階~3階は、外壁工事が完了したフロアである。また、図1A及び図1Bには、工事車両によって運搬された建築資材を高所に搬入するタワークレーンと、地表における建築資材の搬入場所(集積場所)である作業範囲と、作業範囲を避ける位置に設けられる電源ボックスが示される。
【0026】
電源ボックスは、例えば、電気設備に電力を供給する環境を構築する電源工事が行われていない場合、工事現場の一角に、工事現場で使用する電気設備に電力を供給するために設置される。例えば、電源ボックスは、工事作業エリアの近くで系統電源に接続可能な位置であって、工事車両(あるいは建機)の通行を妨げない位置に設置される。そのため、例えば、電源ボックスは、工事領域から所定の距離だけ離間して設置される。
【0027】
タワークレーンによって資材を牽引するために、タワークレーン直下、クレーンの作業範囲内の地表に資材が集積される。タワークレーンは、集積された資材を順次、高所へ牽引するので、タワークレーンの作業範囲が確保される。したがって、電源ボックスは、工事現場において、例えば、タワークレーンの作業範囲を避けて設置される。なお、作業範囲は、工事車両が進入する「進入範囲」と称されてもよい。
【0028】
工事現場において、暫定的なBHネットワークを構成する複数の無線ノードの少なくとも1つが、例えば、電源ボックスに有線によって接続されて、当該電源ボックスから電力の供給を受けてよい。
【0029】
なお、X-Z平面を横から(Y軸の負方向)見ている側面図である図1Aには、Y軸方向において異なる位置の構成が、同一の面に示される。また、X-Y平面を上から(Z軸の正方向)見ている俯瞰図である図1Bには、Z軸方向において異なる位置の構成が、同一の面に示される。
【0030】
図1A及び図1Bに示す、ビルの1階から3階の外壁工事が完了し、4階の外壁工事が未完了である状態は、以下では、「第1の状態」と記載される場合がある。
【0031】
図1A及び図1Bに示す無線通信システム1は、例示的に、複数の無線ノード(以下「ノード」と略記することがある)3を備える。図1A及び図1Bには、非限定的な一例として、ノード番号#0~#6を付して示す7台のノード3が例示されている。ノード3の数は、2以上かつ7未満でもよいし8以上でもよい。
【0032】
複数のノード3のうちの一部のノード3は、バックボーンネットワーク5に有線接続されてよい。図1A及び図1Bには、ノード#0が、バックボーンネットワーク5に有線接続された態様が例示されている。有線接続には、例えば、LANケーブル、又は光ファイバケーブルが適用されてよい。
【0033】
バックボーンネットワーク5に有線接続されたノード#0は、「コアノード(CN)」と称されてよい。BHネットワークを形成する複数のノード3のうち、CN#0を除いた個々のノード3は、「スレーブノード(SN)」と称されてよい。
【0034】
図1A及び図1Bに示す無線通信システム1において、CN#0とSN#1とは、特定の位置に設けられる。
【0035】
例えば、CN#0は、地表面の電源ボックスの近傍(例えば、電力ケーブルによって接続可能な範囲内)に設けられ、電源ボックスから電力が供給される。CN#0が設けられるX-Y平面は、「第1水平面」と称される場合がある。なお、CN#0の設けられる位置は、電源ボックスの近傍に限られない。CN#0は、バックボーンネットワーク5との有線接続を行う位置に設けられてよい。
【0036】
SN#1は、建築途中のビルにおいて外壁工事が完了していない階層であって電源ボックスに配置されたCN#0に面するビルの側面付近に配置される。SN#1は、例えば、タワークレーンの旋回基部に設けられる。旋回基部とは、例えば、タワークレーンが資材を牽引し旋回してビルの内部に資材を搬入する場合に、旋回しない部分に相当してよい。なお、SN#1が設けられるX-Y平面は、「第2水平面」と称される場合がある。
【0037】
タワークレーンは、建設中のビルの骨組みをくみ上げるための資材等を牽引するために用いられ、典型的には完成した骨組みの最上層よりも更に上に配置される。そして、タワークレーンは、上層の骨組みが完成するに従って、次に建設を進める最上位層より更に上に再配置され、次の最上層の骨組みに用いる資材を牽引する。
【0038】
後述するように、SN#1は、CN#0からの電波を直接受信するので、CN#0とSN#1との間に遮蔽物がないことが望ましい。かかる観点から、タワークレーンの旋回基部は、建築途中のビルにおいて、建築工事の進捗状況(例えば、ビルの高さ)に関わらず、最上層に位置する。そのため、タワークレーンの旋回基部は、SN#1を装着するのに好適である。更に、タワークレーンは、作動部を旋回させる旋回構造を有しているが、旋回する部分にSN#1を配置する場合、クレーンの動作に応じて電波の受信強度が変動し、通信が不安定となる可能性がある。そのため、SN#1は、旋回する部分に設置するよりも、旋回基部のCN#0に面する位置に設置する方が好適である。
【0039】
なお、一例として、CN#0とSN#1とは、同一のX-Z平面に設けられる(図1Bの点線L1参照)。別言すると、本実施の形態では、一例として、CN#0とSN#1とが、同一のX-Z平面に設けられるように、X軸とY軸とを規定する。なお、CN#0とSN#1との位置に対するX軸及びY軸の位置は、相対的なものであるので、これらのノードの位置関係は、図示した位置関係に限定されない。
【0040】
SN#2及びSN#3は、ビルの4階に設けられる。SN#4~SN#6は、それぞれ、ビルの3階~1階に設けられる。ここで、SN#2が設けられるX-Y平面は、「第3水平面」の一例と捉えてよい。なお、第3水平面は、上述した第2水平面と同一であってもよい。また、例えば、SN#2は、CN#0及びSN#1と異なるX-Z平面に設けられる場合がある(図1Bの点線L2参照)。
【0041】
個々のノード3は、無線通信が可能な無線機器の一例である。そのため、ノード3のそれぞれは、「無線ノード3」と称されてもよい。無線通信には、IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad/ayといった無線LAN(Local Area Network)関連規格に準拠した(あるいは、ベースとした)通信プロトコルが適用されてよい。
【0042】
個々のノード3は、無線通信が可能なエリアを形成する。「無線通信が可能なエリア」は、「無線通信エリア」、「無線エリア」、「通信エリア」、「サービスエリア」、「カバレッジエリア」、又は、「カバーエリア」等と称されてもよい。無線LAN関連規格に準拠した、あるいはベースとしたノード3が形成する無線通信エリアは、セルラー通信での呼称である「セル」に対応すると捉えてもよい。例えば、個々のノード3が形成する無線通信エリアは、「スモールセル」に分類される「フェムトセル」に相当すると捉えてもよい。
【0043】
ノード3のそれぞれは、他のノード3のサービスエリアに位置する場合に、当該他のノード3と無線通信することが可能である。複数のノード3は、例えば、バックボーンネットワークと端末装置7との間の通信を無線によって中継する無線バックホール(BH)ネットワークを形成する。「無線BHネットワーク」は、「無線」を省略して「BHネットワーク」と称されてもよい。
【0044】
「BHネットワーク」は、「中継ネットワーク」と称されてもよい。BHネットワークのエンティティである個々のノード3は、「中継ノード」と称されてもよい。
【0045】
BHネットワークにおいて無線信号が伝送される経路又は区間は、「無線BH通信路」、「無線BH伝送路」、「無線BH回線」、「無線BH接続」、又は、「無線BHチャネル」と相互に読み替えられてもよい。これらの用語において、「無線」は省略されてもよく、また、「BH」は「中継(Relay)」に読み替えられてもよい。
【0046】
無線BH回線には、コアノード3からスレーブノード3へ向かう方向の「下り回線」と、スレーブノード3からコアノード3へ向かう方向の「上り回線」と、の少なくとも一方が含まれてよい。「下り回線」及び「上り回線」は、それぞれ、セルラー通信における呼称に倣って「ダウンリンク(DL)」及び「アップリンク(UL)」と称されてもよい。
【0047】
例えば、バックボーンネットワーク5からコアノード3を介して、1以上のスレーブノード3へ向けて情報が報知(通知)される場合、無線BH回線は、下り回線を含み、上り回線を含まなくてよい。また、1以上のスレーブノード3からコアノード3を介して、バックボーンネットワーク5へ向けて情報が報知(通知)され、バックボーンネットワーク5において情報が集約される場合、無線BH回線は、上り回線を含み、下り回線を含まなくてよい。上り回線と下り回線の片方向の情報伝達の場合であっても、本実施の形態の構成はそれらを包含する。
【0048】
「下り回線」における信号(下り信号)の流れは、「ダウンストリーム」と称されてよく、「上り回線」における信号(上り信号)の流れは、「アップストリーム」と称されてよい。「下り信号」及び「上り信号」のそれぞれには、制御信号及びデータ信号が含まれてよい。「制御信号」には、「データ信号」には該当しない信号が含まれてよい。また、無線信号である「下り信号」及び「上り信号」は、それぞれ、「下り無線信号」及び「上り無線信号」と称されてよい。
【0049】
なお、「子ノード」は、「下り回線」に着目した場合の、或るノードの下流に無線リンクによって接続されたノード(下流ノード)に相当すると捉えてもよい。下り回線に着目した場合の、或るノードの上流に無線リンクによって接続されたノードは、「親ノード」又は「上流ノード」と称されてもよい。「上り回線」に着目した場合、「子ノード」(下流ノード)と「親ノード」(上流ノード)との関係は、逆転する。
【0050】
これに対し、例えば、端末装置7とBHネットワークとの間において無線信号が伝送される区間は、「無線アクセス回線」、又は、「無線アクセスチャネル」と称されてよい。これらの用語において、「無線」は省略されてもよい。
【0051】
なお、無線アクセス回線には、BHネットワークに含まれるノード3から端末装置7へ向かう方向の「下り回線」と、端末装置7からBHネットワークに含まれるノード3へ向かう方向の「上り回線」と、の少なくとも一方が含まれてよい。なお、ここで、ノード3は、端末装置7との無線接続が確立されたノードであってよい。
【0052】
例えば、バックボーンネットワーク5から1以上のノード3を介して、端末装置7へ向けて情報が報知(通知)される場合、無線BH回線及び無線アクセス回線は、下り回線を含み、上り回線を含まなくてよい。また、端末装置7から1以上のノード3を介して、バックボーンネットワーク5へ向けて情報が報知(通知)され、バックボーンネットワーク5において情報が集約される場合、無線BH回線及び無線アクセス回線は、上り回線を含み、下り回線を含まなくてよい。上り回線と下り回線の片方向の情報伝達の場合であっても、本実施の形態の構成はそれらを包含する。
【0053】
BHネットワークは、1つのCN3(#0)をルート(根)ノードとした1つ以上のツリー構造(「ツリートポロジ」と称されてもよい)を有してよい。
【0054】
例えば、BHネットワークにおけるツリー構造の経路(ツリートポロジ)は、例えば、CN3から特定のSN3に至る経路のメトリック(以下「経路メトリック」と略称することがある)に基づいて構築されてよい。経路メトリックには、CN3から特定のSN3に至る無線区間の電波伝搬の品質又は性能を示す指標(以下「伝搬品質指標」と称する)が用いられてよい。
【0055】
伝搬品質指標の非限定的な一例としては、無線信号の受信電力又は受信強度(例えば、RSSI;Received Signal Strength Indicator)、電波伝搬損失、及び、伝搬遅延等が挙げられる。
【0056】
例えば、CN3を起点に信号(例えば、制御信号)を送信することで、制御信号の送信ノード3と受信ノード3との間の無線区間毎に、当該無線区間の電波伝搬損失を受信ノード3において求めることができる。
【0057】
そして、受信ノード3のそれぞれが、求めた電波伝搬損失の情報を、制御信号に含めて送信することで、制御信号が伝搬した無線区間の累積的な電波伝搬損失の情報(別言すると、累積値)を、ノード3間で伝達できる。
【0058】
個々のノード3は、例えば、制御信号の送信元である上流ノード候補毎に、累積的な電波伝搬損失に基づいて経路メトリックを計算し、上流ノード候補の中から、経路メトリックが例えば最小を示すノード3を1つ選ぶ。これにより、電波伝搬損失が最小となるツリー構造の経路が構築される。
【0059】
図1A及び図1Bの例では、SN#2とCN#0とは、見通し環境(LOS環境)であるため、無線BH回線を構築可能な位置関係を有する。このように、SN#2とCN#0とが図1A及び図1Bに示す位置関係にある場合、SN#2とCN#0とは直接通信することも可能であるし、SN#1を経由して通信することも可能である。本実施の形態においては、通信しようとする時間における電波状況に応じて、SN#2とCN#0との直接通信とSN#1を経由した通信とを比較し、電波状況の良い経路を選択する。なお、経路の選択については、後述する。
【0060】
ここで、例えば、SN#2が設けられる4階のフロアにおいて外壁工事が完了すると、SN#2とCN#0とは、見通し外環境(NLOS環境)となる。
【0061】
なお、図2A及び図2Bに示す、ビルの4階の外壁工事が完了した状態は、以下では、「第2の状態」と記載される場合がある。
【0062】
図2A及び図2Bは、一実施の形態に係る無線通信システムの導入例の第2の状態を示す図である。図2A及び図2Bは、図1A及び図1Bと同様に、ビルの建築現場に、無線通信システム1が導入される例を示す。なお、図2A及び図2Bでは、図1A及び図1Bにおいて外壁工事が未完了であった4階の外壁工事が完了し、4階の1つ上に外壁工事が未完了のフロア(5階)が設けられる。また、図2A及び図2Bでは、5階のフロアに、SN#7が設けられる。また、図2A及び図2Bでは、図1A及び図1Bよりもタワークレーンが高さ方向(Z軸方向)に延びた状態が示される。
【0063】
図2A及び図2Bに示すように、SN#2が設けられる4階のフロアにおいて外壁工事が完了すると、SN#2とCN#0とは、見通し外環境(NLOS環境)となるため、無線BH回線を直接構築可能な位置関係ではなくなる。そのため、構築された無線BH回線が切断され易くなる。
【0064】
本実施の形態では、構築された無線BH回線の切断を回避するために、SN#1とCN#0との間での無線BH回線が優先的に構築されるシステム設計を行う。
【0065】
例えば、無線BH回線は、SN#1とCN#0との間の電波伝搬損失が、SN#1と異なるSN(例えば、SN#2及びSN#7)とCN#0との間の電波伝搬損失よりも低い状態を保つような構成を有する。
【0066】
例えば、CN#0のアンテナは、SN#1に向けた指向性を有し、SN#1のアンテナは、CN#0に向けた指向性を有する。
【0067】
なお、指向性を有するアンテナは、単一の平面アンテナであってもよいし、複数のアンテナアレイによって指向性制御を行うアンテナであってもよい。アンテナの指向性は、手動で調整されてもよいし、自動で調整されてもよい。例えば、アンテナの向きが機械的に調整されることによって、アンテナの指向性が調整されてもよいし、アンテナによって送受信される信号の信号処理によって、指向性が調整されてもよい。
【0068】
図1Aの例では、CN#0のアンテナは、X-Z平面において、SN#1が設けられた方向(例えば、X軸の正方向を基準にθの方向)に指向性が向けられる。また、SN#1のアンテナの中で上流側のノード(CN#0)と無線通信を行うアンテナは、X-Z平面において、CN#0が設けられた方向(例えば、X軸の負方向を基準にθの方向)に指向性が向けられる。
【0069】
なお、X-Z平面において規定される角度は、「仰角」又は「俯角」と称されてよい。また、X-Y平面において規定される角度は、「方位角」と称されてよい。
【0070】
BHネットワークを構築するために一般的に用いられるアンテナは、ノード3同士をメッシュ状に接続するために、水平面内に電波を放射するように設計される。これに対し、本実施の形態のように、地表に設置されたCN#0と、最上層のSN#1とを無線接続するような高さ方向(図中Z軸方向)への電波放射において、指向性制御できるアンテナアレイによって放射する電波に強い指向性を与える。例えば、指向性をθの方向に向けることによって、CN#0とSN#1との間の無線通信環境を最適化できる。
【0071】
また、図1Aの例では、SN#1のアンテナの中で下流側のノード(SN#2)と無線通信を行うアンテナは、X-Y平面において、SN#2が設けられた方向(例えば、X軸の正方向を基準にθの方向)に指向性が向けられる。
【0072】
指向性を有さないアンテナ(例えば、無指向性アンテナ)は、水平面からの仰角(又は俯角)が20度~30度程度の範囲であれば、水平面よりは弱いが実用に耐える強度の電波を放射可能である。したがって、SN#1とSN#2との間の角度(仰角)が30度以下である間は、良好な通信を確保できる可能性がある。しかしながら、上述したように、タワークレーンに設置されたSN#1は、工事の進展に伴って最上層に再配置される(移動する)ため、SN#1とSN#2との間の仰角が30度を超える可能性がある。このような場合、SN#1とSN#2との間において、指向性を有さないアンテナでの無線通信は困難となる。したがって、SN#1とSN#2との間の無線電波に指向性を与えることが好適である。例えば、SN#1のアンテナには、仰角方向への指向性を持たせることが好適である。
【0073】
なお、SN#1のアンテナに仰角方向への指向性を持たせる代わりに、SN#2のアンテナに仰角方向への指向性を持たせてもよい。あるいは、SN#1とSN#2との双方のアンテナが、仰角方向への指向性を有してもよい。
【0074】
また、ビルの各階層に設けられるSN3のアンテナは、指向性を有してもよいし、有さなくてもよい。例えば、ビルの各階層に複数のSN3が設けられる場合、階層毎に無線メッシュが構築されてもよい。この場合、各階層の特定のSN3が、当該階層の無線メッシュの起点となるノードに設定されてもよい。
【0075】
図1A及び図1Bの例では、SN#2と同じ階層に配置されるSN#3は、SN#2を介してSN#1と通信してよい。すなわち、SN#3からCN#0までの経路は、SN#3からSN#2とSN#1とを結びCN#0へ到達する経路を取りうる。指向性を有するアンテナは、指向性を向けた範囲以外の範囲への電波放射は、通常のアンテナよりも弱い。そのため、例えば、SN#2が4階の無線メッシュの起点となるノードに設定された場合、SN#3(及び図示しない4階に存在する他のSN3)は指向性を有さない通常のアンテナを用いる方が、この階層における無線メッシュを構築する上で好適である。すなわち、工事中の各階層において、SN#1の指向性方向に送受信の指向性を有する特定のSN3が、SN#1の指向性範囲に配置され、各階層の無線メッシュの起点となるノードに設定されてよい。そして、各階層において特定のSN3がカバしないエリアに、水平面内に広く電波を放射するアンテナを有するSN3が配置されてよい。
【0076】
上述したように、通常のアンテナであっても水平面から30度程度であれば、通信を確保することはできる。したがって、本発明は、本実施例のように、地表に配置されたコアノードCN#0と、CN#0と直接無線通信することが想定される無線中継器であるSN#2とのなす角(θの方向)が、30度以上である場合に、好適に実施される。
【0077】
なお、本実施例においては、各スレーブノード間の通信では、電波状況に応じて、最適な経路が選択されるように構成されている。したがって、SN#1とSN#3との間に遮蔽物がなく、仰角(又は、俯角)が大きくない場合には、SN#1からSN#2、SN#3と経由する経路(第1の経路)と、SN#1からSN#3への経路(第2の経路)の電波状況を比較し、第2の経路の方が、第1の経路よりも電波状況が良い場合には、第2の経路が選択されてよい。第2の経路が選択される場合、SN#2の負荷を軽減することが可能である。
【0078】
なお、本実施例において、SN#1をタワークレーンに設置(装着)する方法については限定されない。例えば、タワークレーンにSN#1を設置するのは、完全に固定されなくてもよい。例えば、図示しない固定部材をタワークレーン基部に固定し、かかる固定部材に、着脱自在にSN#1を装着する方式が採用されてよい。例えば、固定部材はねじが切られており、SN#1の外装を貫通するボルトによって固定される。タワークレーンは、工事期間中、風雨にさらされるため、SN#1が外れたり、あるいは、SN#1の向きが変わってしまうことを避けるために、SN#1は強固に装着されることが望まれる。一方で、SN#1が完全に固定されてしまうと、タワークレーンを再配置する場合に、SN#1を装着した状態で巨大なクレーンの移動作業を行うことになってしまう。この場合、移動作業において、SN#2に意図せずに大きな荷重がかかる恐れがあり、精密機器であるSN#2が破損する可能性がある。また、SN#2のアンテナが、アレイ構成を有する場合、アンテナアレイの相互位置関係が、所望の相互位置関係からズレてしまう可能性がある。したがって、SN#1のタワークレーンへの装着は、着脱自在とするのが好ましい。また、電波への悪影響を防止するため、ネオジム磁石等の強力な磁石の使用も避けた方がよい。
【0079】
そして、図1A及び図1Bに示した第1の状態から、図2A及び図2Bに示した第2の状態へ遷移した場合に、アンテナの指向性、各階層の起点となるノードの配置位置が調整されてよい。
【0080】
例えば、図2Aの例では、CN#0のアンテナは、X-Z平面において、SN#1が設けられた方向(例えば、X軸の正方向を基準にθの方向)に指向性が向けられる。また、SN#1のアンテナの中で上流側のノード(CN#0)と無線通信を行うアンテナは、X-Z平面において、CN#0が設けられた方向(例えば、X軸の負方向を基準にθの方向)に指向性が向けられる。
【0081】
また、図2Aの例では、SN#1のアンテナの中で下流側のノード(SN#7)と無線通信を行うアンテナは、X-Z平面において、SN#7が設けられた方向(例えば、X軸の正方向を基準にθの方向)に指向性が向けられる。
【0082】
また、ノード3のアンテナは、X-Z平面における指向性に限られず、X-Y平面においての指向性を有してよい。別言すると、ノード3のアンテナは、X-Y平面とX-Z平面との双方における指向性、所謂、3次元の指向性を有してよい。
【0083】
例えば、図1Bの例では、SN#1のアンテナの中で下流側のノード(SN#2)と無線通信を行うアンテナは、X-Z平面において、SN#2が設けられた方向(例えば、X軸の正方向を基準にφの方向)に指向性が向けられる。そして、第1の状態から第2の状態へ遷移した場合に、SN#1のアンテナの中で下流側のノード(SN#7)と無線通信を行うアンテナは、X-Z平面において、SN#7が設けられた方向(例えば、X軸の正方向を基準にφの方向)に指向性が向けられる。
【0084】
このように、アンテナが指向性を有することによって、構築された無線BH回線の切断を回避するために、SN#1とCN#0との間での無線BH回線が優先的に構築される。
【0085】
<ノード3の構成例>
(ノード3のハードウェア構成例)
次に、図3を参照して、ノード3のハードウェア構成例について説明する。なお、図3に例示した構成例は、CN3及びSN3に共通でよい。図3に示すように、ノード3は、例えば、プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、入出力(I/O)装置34、無線IF35及び36、有線IF37、有線IF39、並びに、バス38を備えてよい。
【0086】
なお、図3に例示したハードウェア構成例において、ハードウェアの増減が適宜に行なわれてもよい。例えば、任意のハードウェアブロックの追加や削除、分割、任意の組み合わせでの統合、バス38の追加又は削除等が、適宜に行なわれてよい。
【0087】
プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、入出力装置34、無線IF35及び36、並びに、有線IF37及び39は、例えば、バス38に接続されて相互に通信することが可能である。バス38の数は、1つでもよいし複数でもよい。
【0088】
プロセッサ31は、ノード3に複数備えられてもよい。また、ノード3における処理は、1つのプロセッサ31によって実行されてもよいし、複数のプロセッサ31によって実行されてもよい。1つ又は複数のプロセッサ31において、複数の処理が、同時に、並列に、又は、逐次に実行されてもよいし、その他の手法によって実行されてもよい。なお、プロセッサ31は、シングルコアプロセッサでもよいし、マルチコアプロセッサでもよい。プロセッサ31は、1つ以上のチップを用いて実装されてよい。
【0089】
ノード3が有する1つ又は複数の機能は、例示的に、プロセッサ31及びメモリ32等のハードウェアに、所定のソフトウェアを読み込ませることで実現される。なお、「ソフトウェア」は、「プログラム」、「アプリケーション」、「エンジン」、又は「ソフトウェアモジュール」といった他の用語に相互に読み替えられてもよい。
【0090】
例えば、プロセッサ31は、メモリ32及びストレージ33の一方又は双方に記憶されたデータの読み出し及び書き込みの一方又は双方を制御することで、プログラムを読み込んで実行する。なお、プログラムは、例えば、無線IF35、無線IF36、及び、有線IF37の少なくとも1つによる電気通信回線を介した通信によって、ノード3に提供されてもよい。
【0091】
プログラムは、ノード3における処理の全部又は一部をコンピュータに実行させるプログラムであってよい。プログラムに含まれるプログラムコードの実行に応じて、ノード3の1つ以上の機能が実現される。プログラムコードの全部又は一部は、メモリ32又はストレージ33に記憶されてもよいし、オペレーティングシステム(OS)の一部として記述されてもよい。
【0092】
例えば、プログラムは、図5及び図6により後述する機能ブロックを具現するプログラムコードを含んでよい。そのようなプログラムコードを含むプログラムは、便宜的に、「無線経路制御プログラム」と称されてよい。
【0093】
プロセッサ31は、処理部の一例であり、例えば、OSを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ31は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)を用いて構成されてもよい。
【0094】
また、プロセッサ31は、例えば、プログラム及びデータの一方又は双方を、ストレージ33からメモリ32に読み出して各種の処理を実行する。
【0095】
メモリ32は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例であり、例えば、ROM、EPROM、EEPROM、RAM、SSDなどの少なくとも1つを用いて構成されてよい。なお、「ROM」は、「Read Only Memory」の略称であり、「EPROM」は、「Erasable Programmable ROM」の略称である。「EEPROM」は、「Electrically Erasable Programmable ROM」の略称であり、「RAM」は、「Random Access Memory」の略称であり、「SSD」は、「Solid State Drive」の略称である。
【0096】
メモリ32は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ、ワークメモリ、又は、主記憶装置と呼ばれてもよい。
【0097】
ストレージ33は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例であり、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フレキシブルディスク、磁気ストリップ等の少なくとも1つを用いて構成されてもよい。ストレージ33は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記録媒体は、例えば、メモリ32及びストレージ33の一方又は双方を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0098】
入出力(I/O)装置34は、ノード3の外部から信号の入力を受け付ける入力デバイス、及び、ノード3から外部へ信号を出力する出力デバイスの一例である。入力デバイスには、例示的に、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、及び、センサの1つ以上が含まれてよい。出力デバイスには、例示的に、ディスプレイ、スピーカ、及び、LED(Light Emitting Diode)のような発光デバイスの1つ以上が含まれてよい。
【0099】
以上に述べたように、本実施例においては、ノード3はプロセッサ31やメモリ32等を有する簡易なPCとしての機能を備えている。このような構成とすることで、いわゆるエッジコンピューティング環境を実現し、一部の情報をノード3のいずれかに保存しておくことにより、SN#1からCN#0を経由して→外部のインターネット(例えば、バックボーンネットワーク5)を介してデータを読み込むことなしに、典型的な作業を行うことも可能である。本実施例の場合、CN#0と無線中継器であるSN#1とが、SN#1以外のほぼ全てのスレーブノード3の通信の経由ルートとなるので、常時用いられるデータ、例えば、工数管理シート及び/又は作業工程マニュアル等は、ノード3のいずれかに保存しておくことも好適である。例えば、各階層に配置される各階層の起点となるノード3には、その階層にて用いられるデータが保存されることによって、データ通信を該当する階層内で完結させることも可能となる。かかる観点から、SN#1に搭載されるストレージ33は、各階層の起点となるノード(図1AではSN#2)のストレージ33よりも大容量としてよい。また、各階層の起点となるノード3のストレージ33は、起点となるノード3に接続されるスレーブノード3(図1AではSN#3)のストレージ33よりも大容量としてよい。
【0100】
ボタンには、例えば、電源ボタン及び/又はリセットボタンが含まれてよい。電源ボタンは、例えば、ノード3の起動及びシャットダウンのために操作される。リセット(又はリルート)ボタンは、例えば、ツリー経路の意図的なリセット、及び/又は、再構築(又は、リルート)を指示するために操作される。
【0101】
なお、入出力装置34は、入力と出力とで個別の構成でもよい。また、入出力装置34は、例えば、タッチパネル式のディスプレイのように、入力と出力とが一体の構成であってもよい。
【0102】
無線IF35は、例示的に、端末装置7との間のアクセス回線における無線信号の送受信を行う。無線IF35には、例えば、1つ以上のアンテナ350、図示を省略した、ベースバンド(BB)信号処理回路、MAC処理回路、アップコンバータ、ダウンコンバータ、及び、増幅器が含まれてよい。
【0103】
無線IF35のBB信号処理回路には、例示的に、送信信号を符号化及び変調するための符号化回路及び変調回路、並びに、受信信号を復調及び復号するための復調回路及び復号回路が含まれてよい。
【0104】
無線IF36は、例示的に、他のSN3との間のBH回線における無線信号の送受信を行う。無線IF36には、無線IF35と同様に、1つ以上のアンテナ360、図示を省略した、BB信号処理回路、MAC処理回路、アップコンバータ、ダウンコンバータ、及び、増幅器が含まれてよい。
【0105】
無線IF36のBB信号処理回路には、例示的に、送信信号を符号化及び変調するための符号化回路及び変調回路、並びに、受信信号を復調及び復号するための復調回路及び復号回路が含まれてよい。
【0106】
なお、図1A図2Bにおいて例示したCN#0及びSN#1において、無線IF36のアンテナ360は、指向性を有する。例えば、無線IF36のアンテナ360は、指向性を制御可能なアンテナアレイであってもよい。複数の指向性アンテナを有するアンテナアレイによって、ビームフォーミングが実施されてもよい。
【0107】
有線IF37は、例示的に、バックボーンネットワーク5、及び/又は、上流ノード3との間で有線による信号の送受信を行う。また、有線IF39は、例示的に、端末装置7、及び/又は、下流ノード3との間で有線による信号の送受信を行う。有線IF37及び39には、例えば、イーサネット(登録商標)規格に準拠したネットワークインタフェースが用いられてよい。なお、有線IF37及び39は、少なくともCN3に備えられていればよく、SN3には備えられなくてもよい(別言すると、SN3にとってはオプションであってもよい)。ただし、BH回線の一部が有線接続される場合、有線IF37及び39が当該有線接続に用いられてよい。
【0108】
ノード3は、マイクロプロセッサ、DSP、ASIC、PLD、FPGAなどのハードウェアを含んで構成されてもよい。例えば、プロセッサ31は、これらのハードウェアの少なくとも1つを含んで実装されてよい。当該ハードウェアにより、図5及び図6にて後述する各機能ブロックの一部又は全てが実現されてよい。
【0109】
なお、「DSP」は、「Digital Signal Processor」の略称であり、「ASIC」は、「Application Specific Integrated Circuit」の略称である。「PLD」は、「Programmable Logic Device」の略称であり、「FPGA」は、「Field Programmable Gate Array」の略称である。
【0110】
(ノード3のアンテナの指向性の例)
次に、図1A及び図1Bに示したCN#0とSN#1との間における、各ノード3の無線IF36のアンテナ360の指向性の一例を示す。
【0111】
図4は、一実施の形態に係るノードのアンテナの指向性の例を示す図である。図4には、図1A及び図1Bに示した無線通信システム1における、CN#0とSN#1とSN#2と、各ノードのアンテナの指向性の例が示される。
【0112】
CN#0が有するアンテナ360は、下流側のノード3であるSN#1に向けた指向性を有する。そして、SN#1が有するアンテナ360-1は、上流側のノード3であるCN#0に向けた指向性を有する。この構成によって、CN#0とSN#1との間の無線リンクの回線状況は、SN#1と異なるSNと、CN#0との間の無線リンクの回線状況よりも良好にできる。
【0113】
また、SN#1が有するアンテナ360-2は、下流側のノード3であるSN#2に向けた指向性を有してよい。この構成によって、SN#1とSN#2との間の無線リンクの回線状況は、SN#2と異なるSNと、SN#1との間の無線リンクの回線状況よりも良好にできる。
【0114】
(ノード3の機能構成例)
次に、図5及び図6を参照して、ノード3の機能的な構成例について説明する。図5は、一実施の形態に係るノード3の機能的な構成例を示すブロック図であり、図6は、図5に例示した制御部の機能的な構成例を示すブロック図である。
【0115】
図5に示すように、ノード3は、機能的な構成に着目した場合、無線アクセス回線用の無線通信部301、無線BH回線用の無線通信部302、有線通信部303、制御部304、及び、記憶部305を備えてよい。
【0116】
無線アクセス回線用の無線通信部301は、図3に例示した無線IF35及びアクセス回線アンテナ350を含む機能ブロックである。無線BH回線用の無線通信部302は、図3に例示した無線IF36及びBH回線アンテナ360を含む機能ブロックである。
【0117】
有線通信部303は、図3に例示した有線IF37及び39を含む機能ブロックである。また、記憶部305は、図3に例示した、メモリ32及びストレージ33の一方又は双方を含む機能ブロックである。
【0118】
無線通信部301は、例えば、端末装置7宛の制御信号及び/又はデータ信号を送信する送信処理部と、端末装置7が送信した制御信号及び/又はデータ信号を受信する受信処理部と、の少なくとも一方を備えてよい。
【0119】
別言すると、処理部の一例である無線通信部301は、アンテナ350から端末装置7へ送信される下り無線信号の処理と、アンテナ350で受信された上り無線信号の処理と、の少なくとも1つを行ってよい。
【0120】
無線通信部302は、例えば、他のノード3との間においてリンクアップしたBH回線へ制御信号及び/又はデータ信号を送信する送信処理部と、リンクアップした無線リンクから制御信号及び/又はデータ信号を受信する受信処理部と、の少なくとも一方を備えてよい。
【0121】
別言すると、処理部の一例である無線通信部302は、アンテナ360で受信された下り無線信号を処理してアンテナ360から下流ノード3へ送信する処理と、アンテナ360で受信された上り無線信号を処理してアンテナ360から上流ノード3へ送信する処理と、の少なくとも1つを行ってよい。なお、ここで、下り無線信号を受信するアンテナ360と、上り無線信号を送信するアンテナ360とは、同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
【0122】
なお、無線通信部301及び/又は無線通信部302の処理は、ノード3毎に異なってよい。例えば、CN3とSN3とは、互いの処理が異なってよい。また、無線通信部301及び/又は無線通信部302の処理は、無線ネットワークの情報伝達の向き及び/又は用途によって変更されてよい。
【0123】
無線通信部301及び/又は無線通信部302は、MIMO機能を有してよい。例えば、無線通信部302がMIMO機能を有することによって、無線通信部302は、BH回線における上流側のノードとの信号の送受信の動作、及び/又は、BH回線における下流側のノードとの信号の送受信の動作の一部を、同時に行ってよい。
【0124】
例えば、上述したSN#1において、無線通信部302は、CN#0に向けた指向性を有するアンテナ360-1(図4参照)と、SN#2に向けた指向性を有するアンテナ360-2(図4参照)とのそれぞれに対して設けられてよい。SN#1には、アンテナ360-1によって送受信される信号とアンテナ360-2によって送受信される信号との2系統分の送受信回路が含まれてよい。例えば、上述したSN#1の無線通信部302が、MIMO機能を有することによって、1系統分の送受信回路(例えば、無線通信部302)で実現できる。
【0125】
有線通信部303は、例えば、バックボーンネットワーク5へ制御信号及び/又はデータ信号を送信する送信部と、バックボーンネットワーク5から制御信号及び/又はデータ信号を受信する受信部と、を備えてよい。
【0126】
制御部304は、ノード3の動作を統括的に制御する。例えば、制御部304は、無線通信部301、無線通信部302、及び、有線通信部303のいずれか1つ以上に制御信号を与えることによって、無線アクセス回線、無線BH回線、及び、有線回線のいずれか1つ以上を介した通信を制御する。
【0127】
制御部304は、例えば図3に示したプロセッサ31が記憶部305に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを実行することによって具現される。
【0128】
記憶部305は、例えば、上述したノード識別情報、及び、後述の経路メトリックを記憶する。後述のように、経路構築パケットに送信元ノード3の送信電力値が含められない場合には、送信元ノード3の送信電力値が記憶部305に記憶されてよい。
【0129】
(制御部304の構成例)
図6に示すように、制御部304は、例示的に、スキャン処理部341と、ノード管理部342と、ツリー経路制御部343と、IPT制御部344と、を備えてよい。
【0130】
スキャン処理部341は、例えば、ノード3の起動に応じて当該ノード3の周辺(近傍)に位置する他のノード3の存在をスキャンして発見する。スキャンは、パッシブスキャンでもよいしアクティブスキャンでもよい。パッシブスキャンを例にすると、スキャン処理部341において、ビーコン信号が生成され、無線通信部302を通じて周辺エリアに送信される。
【0131】
なお、ビーコン信号を受信可能な位置に存在するノード3を、「周辺ノード3」又は「近傍(neighboring)ノード3」と称する。
【0132】
ビーコン信号には、例示的に、SSID(Service Set Identifier)又はBSSID(Basic SSID)、ビーコン信号の送信周期、及び、使用可能なチャネル(周波数)をそれぞれ明示的又は暗示的に示す情報が含まれてよい。これらの情報は、便宜的に、「BSS(Basic Service Set)関連情報と称されてよい。
【0133】
なお、アクティブスキャンの場合には、プローブリクエスト信号が、スキャン処理部341において生成されて、無線通信部302を通じて周辺エリアに送信されてよい。プローブリクエスト信号は、例えば、周辺ノード3にビーコン信号の送信を促すために用いられる。パッシブスキャンにおいてビーコン信号が一定時間内に受信されない場合に、アクティブスキャンが実行されてもよい。
【0134】
ノード管理部342は、例えば、スキャン処理部341によるスキャンによって発見された周辺ノード3の情報(例えば、ノード識別情報及びBSS関連情報)を記憶部305に記憶する。個々のノード3において、周辺ノード3の情報(以下「周辺ノード情報」と略称することがある)が記憶部305に記憶されることによって、後述するように、BHネットワークにおいてノード3間を複数の無線リンクによってメッシュ状にリンクするメッシュリンクが構築される。
【0135】
「メッシュリンクが構築」されることは、相互に無線通信が可能なエリア内に位置するノード3間に利用可能な複数の無線リンクが確立する、又はリンクアップする、ことを意味すると捉えてもよい。そのため、周辺ノード情報は、ノード3間において利用可能な無線リンクの情報を示すと捉えてもよい。「無線リンクの情報」は、便宜的に、「リンク情報」と略称されてもよい。
【0136】
ツリー経路制御部343は、メッシュリンクにおいて経路制御パケットを伝送することによって、メッシュリンク上でのツリー経路の構築及び更新を制御する。
【0137】
IPT制御部344は、例えば、周波数リユース間隔に応じた送信周期に従ってBH回線用の無線通信部302によるパケット送信タイミングを制御する。
【0138】
(ツリー経路制御部343の構成例)
図6に例示したように、ツリー経路制御部343には、例えば、経路制御パケット生成部3431、経路メトリック計算部3432、及び、ツリー経路更新部3433が備えられてよい。
【0139】
経路制御パケット生成部3431は、経路制御パケットを生成する。経路制御パケットは、BHネットワークにおいて、CN3において生成されてCN3を起点に各ノード3に伝搬させる制御信号の一例である。
【0140】
例えば、CN3は、当該CN3においてリンクアップしている無線リンクのそれぞれへ制御信号をフラッディングする。SN3は、当該SN3においてリンクアップしている無線リンクの何れかから制御信号を受信した場合、当該制御信号を当該SN3においてリンクアップしている無線リンクのそれぞれへフラッディングする。このように、CN3から送信された制御信号は、メッシュリンクを、順次、あるいは連鎖的に、伝搬又は伝達する。
【0141】
同様に、SN3は、CN3又は他のSN3との無線リンクのリンクアップ状態を維持したまま制御信号の到来(受信)を待ち受ける。そして、リンクアップ状態の無線リンクから制御信号を受信すると、リンクアップ状態が維持された他の無線リンクに制御信号を送信する。
【0142】
SN3は、リンクアップ状態が維持された他の無線リンクへ送信する制御信号に、他のSN3に伝達する情報を付加してよい。制御信号に付加される情報の非限定的な一例は、経路メトリック計算部3432によって計算された経路メトリックである。また、SN3は、当該SN3においてリンクアップしている無線リンクのうち、制御信号を受信した無線リンクについては制御信号の送信先候補から除外してもよい。これにより、制御信号が、不必要に、あるいは冗長に、メッシュリンクを伝達されることを抑制できる。
【0143】
経路制御パケットには、例示的に、経路構築パケットと、リセットパケットと、が含まれてよい。これらのパケットの種別は、例えば、パケットヘッダのタイプ値によって識別されてよい。
【0144】
経路構築パケットは、例えば、ツリー経路を構築又は更新する際に送信されるパケットである。経路構築パケットには、当該経路構築パケットが伝搬したノード3のそれぞれにおいて計算された経路メトリックが累積的に含められてよい。例えば、ノード3は、コアノードから自ノードの直前のノードまでの経路メトリックを経路構築パケットに含めて送信してもよい。
【0145】
経路構築パケットを受信したSN3は、累積的な経路メトリックを基に、メッシュリンクを成す、周辺ノード3との間で利用可能な無線リンクのうち、ツリー経路に登録する無線リンクの情報を選択する。
【0146】
リセットパケットは、例えば、CN3がSN3に対して、メッシュリンクにおいて構築されたツリー経路のクリアを要求する際に送信されるパケットである。リセットパケットを受信したSN3は、ツリー経路に選択している無線リンクの情報の選択を解除する。
【0147】
経路メトリック計算部3432は、例えば、受信した経路構築パケットの送信元である周辺ノード3との間の無線リンクの伝搬品質指標を計算し、受信した経路構築パケットに含められている経路メトリックに、計算結果を加えることで新経路メトリックを求める。
【0148】
ノード3間の無線リンクの伝搬品質指標には、例示的に、RSSI(Received Signal Strength Indicator)が用いられてよい。
【0149】
ツリー経路更新部3433は、例えば、経路メトリック計算部3432によって計算された新経路メトリックが旧経路メトリックよりも小さい場合に、周辺ノード情報において新経路メトリックに対応する上流の無線リンクを有効なツリー経路に選択する。
【0150】
例えば、SN3において、異なる経路のそれぞれから経路構築パケットが受信された場合、経路構築パケットのそれぞれが伝搬した1つ以上の無線リンクの経路メトリックが、異なる経路の別に、経路メトリック計算部3432において計算される。
【0151】
ツリー経路更新部3433は、異なる経路の別に計算された経路メトリックに基づいて、当該SNにおいてリンクアップした無線リンクのうち、経路構築パケットを受信した異なる経路の1つに対応する無線リンクをデータ信号の伝送に用いる経路に選択する。
【0152】
メッシュリンクにおいて構築されるツリー経路は、ツリー構造であるため、個々のSN3に対する上流ノード3は必ず1つである。したがって、ツリー経路更新部3433は、例えば、メッシュリンクにおいて上流ノード3との間の無線リンク(リンク情報)を、ツリー経路に登録する無線リンクに選択するか、あるいは選択を解除するかによって、ツリー経路を構築又は更新できる。
【0153】
<動作例>
以下、上述した無線通信システム1の動作例について説明する。
【0154】
(リンクセットアップ手順)
図7は、一実施の形態に係るノード3間(別言すると、BHネットワークにおける無線BH回線)のリンクセットアップ手順の一例を示すフローチャートである。
【0155】
図7に例示するように、BHネットワークにおいて、CN及びSNを含むノード3のそれぞれは、起動に応じて例えばIBSSモードによって周辺に存在するノード(以下「周辺ノード」と称することがある)3をスキャンする(S11)。
【0156】
「IBSS」は、「Independent Basic Service Set」の略称である。IBSSモードは、アドホックモードと称されることもある。ノード3の「起動」には、ノード3の電源ON、及び、ノード3のリセットによる再起動が含まれてよい。また、ノード3の「起動」には、無線通信システム1におけるノード3の追加、削除、及び、位置の変更等をトリガにした再起動が含まれてよい。
【0157】
例えば、スキャン処理S11において、ノード3のそれぞれは、起動に応じてビーコン信号の周辺エリアへの送信を開始する。ビーコン信号は、例えば、制御部304のスキャン処理部341において生成されて、BH回線アンテナ360(無線通信部302)から送信される。
【0158】
IBSSモードでのスキャン処理S11では、ビーコン信号どうしの衝突を回避するために、起動したノード3のそれぞれが、交替で(例えば、ノード3において擬似乱数的に管理されるタイミングで)ビーコン信号を送信してよい。
【0159】
他のノード3が送信したビーコン信号を受信したノード3は、受信したビーコン信号に含まれる情報を例えば記憶部305に記憶する(S12)。ビーコン信号の送受信は、ノード3が動作するチャネル(別言すると、利用可能なチャネル)毎に行われてよい。
【0160】
したがって、スキャン処理(S11)は、「チャネルスキャン」と称されてもよい。なお、ビーコン信号を受信したノード3は、ビーコン信号を受信したチャネルについてのビーコン信号の送信を停止してよい。
【0161】
ノード3のそれぞれが、他のノード3から受信できたビーコン信号に含まれるBSS関連情報を記憶することによって、無線リンクによって通信が可能な周辺ノード3の情報(以下「周辺ノード情報」と称することがある)を管理できる。個々のノード3が、周辺ノード情報を記憶及び管理することによって、例えば図7に示すように、利用可能な無線リンク(「チャネル」と読み替えてもよい)が個々のノード3において管理される。これにより、無線BH回線のリンクセットアップが完了し、BHネットワークにおいてメッシュリンクがリンクアップする。
【0162】
以上のようにして、ノード3間においてIBSSモードを利用したメッシュ状の無線リンクが形成(又は構築)される。上述のごとくIBSSモードを利用して構築されたメッシュ状の無線リンクは、IBSSメッシュリンクと称されてもよい。
【0163】
なお、上述したように、図1A及び図1Bの例では、ノード3の中で、CN#0が有するアンテナ360は、下流側のノード3であるSN#1に向けた指向性を有する。そして、SN#1が有するアンテナ360-1は、上流側のノード3であるCN#0に向けた指向性を有する。そのため、リンクセットアップ手順において、CN#0が送信したビーコン信号は、SN#1によって受信され、SN#1と異なるノード3によって受信されなくてよい。また、SN#1が送信したビーコン信号は、CN#0によって受信されてよい。
【0164】
なお、図7に示すリンクセットアップ手順は、ノード3の間でビーコン信号を送受信することによってメッシュリンクを構築する例であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、メッシュリンクの構築には、他の信号が用いられてもよい。あるいは、ノード3の設置位置に応じて、メッシュリンクが、手動で設定されてもよい。
【0165】
図8は、図1A及び図1Bに示した無線通信システムにおけるメッシュリンクの第1の例を示す図である。
【0166】
図8に示すように、CN#0が利用可能な無線リンクは、CN#0とSN#1との間の無線リンクに特定されてよい。また、SN#1~SN#6のそれぞれの利用可能な無線リンクは、各ノード3によって送信されたビーコン信号の到達範囲によって決定されてよい。
【0167】
なお、CN#0が有するアンテナ360が、SN#1に向けた指向性を有する場合でも、CN#0によって送信されたビーコン信号が、SN#1と異なるノード3によって受信される場合がある。また、SN#1とは異なるノード3によって送信されたビーコン信号が、CN#0によって受信される場合がある。このような場合、CN#0が利用可能な無線リンクに、SN#1とは異なるノード3とCN#0との間の無線リンクが含まれてよい。
【0168】
図9は、図1A及び図1Bに示した無線通信システムにおけるメッシュリンクの第2の例を示す図である。
【0169】
図8と異なり、図9では、CN#0が利用可能な無線リンクに、CN#0とSN#2との間の無線リンクが含まれてよい。
【0170】
(ツリー経路制御 over IBSSメッシュリンク)
次に、IBSSメッシュリンク上のツリー経路制御について説明する。
【0171】
(CNの動作例)
図10は、一実施の形態に係るIBSSメッシュリンク上のツリー経路制御を含むCN3の動作例を示すフローチャートである。図10のフローチャートは、CN3の制御部304(例えば、ツリー経路制御部343)において実行されると捉えてよい。
【0172】
図10に示すように、CN3の制御部304は、例えば、特定のイベントが検出されたか否かを監視する(S31;NO)。「特定のイベント」には、例えば、CN3が起動されたこと、リセットボタンが操作されたこと、及び、特定のタイミングが到来したこと、が含まれてよい。「特定のタイミング」の一例は、例えば、経路制御パケットを定期又は不定期に送信するために設定された送信タイミングである。
【0173】
定期的に経路制御パケットを送信する場合の送信周期は一定でもよいし、本実施の形態において構築されるツリー経路は、漸近的に安定することから、図10のフローチャートが実行される回数に応じて変更されてもよい。また、例えば、図1A及び図1Bと、図2A及び図2Bとにおいて示したように、或る階層の外壁工事が完了し、次の階層の工事が開始される場合、タワークレーンの高さが変更される場合、又は、建築工事の進捗に応じてノード3が増加(又は減少)する場合にツリー経路が更新されるように、所定の時刻が「特定のタイミング」に設定されてもよいし、無線通信システム1のユーザによって設定されてもよい。
【0174】
特定のイベントが検出された場合(S31;YES)、CN3の制御部304は、経路制御パケットを生成し、例えば無線通信部302を通じて、周辺ノード情報を基に識別される周辺SN3に経路制御パケットを送信(ブロードキャスト)する(S32)。
【0175】
例えば、CN3の起動が検出された場合、及び、経路構築パケットの送信タイミングが検出された場合には、経路構築パケットが周辺SN3に送信される。リセットボタンの操作が検出された場合、及び、リセットパケットの送信タイミングが検出された場合には、リセットパケットが周辺SN3に送信される。
【0176】
経路制御パケットの送信後、制御部304は、例えば、一定時間が経過(タイムアウト)したか否かを監視する(S33)。タイムアウトが検出されない場合(S33;NO)、制御部304は、処理をS31に移行してよい。
【0177】
一方、一定時間の経過が検出された場合(S33;YES)、制御部304は、データパケットの送信を開始してよい(S34)。
【0178】
以上のように、CN3は、周辺ノード3との間においてリンクアップした複数の無線リンクのそれぞれに経路制御パケットを送信(ブロードキャスト)することで、BHネットワークを構成するSN3のそれぞれに経路制御パケットを伝搬させる。
【0179】
なお、図8に示したように、CN#0が利用可能な無線リンクがCN#0とSN#1との間の無線リンクに特定される場合、CN#0の周辺ノード情報には、SN#1が含まれ、SN#1と異なるSNが含まれない。この場合、CN#0によって送信された経路制御パケットは、SN#1によって受信されてよい。
【0180】
また、図9に示したように、CN#0が利用可能な無線リンクが、CN#0とSN#1との間の無線リンク、及び、CN#0とSN#2との間の無線リンクを含む場合、CN#0の周辺ノード情報には、SN#1とSN#2とが含まれてよい。この場合、CN#0によって送信された経路制御パケットは、SN#1及びSN#2によって受信されてよい。なお、本実施の形態において、CN#0のアンテナ360は、下流側のノード3であるSN#1に向けた指向性を有し、SN#1のアンテナ360-1は、上流側のノード3であるCN#0に向けた指向性を有する。そのため、SN#1が受信した経路制御パケットの受信品質は、SN#2が受信した経路制御パケットの受信品質よりも高い。例えば、SN#1が受信した経路制御パケットの電波伝搬損失は、SN#2が受信した経路制御パケットの電波伝搬損失よりも小さい。
【0181】
(SNの動作例)
次に、図11を参照して、SN3の動作例について説明する。図11は、一実施の形態に係るIBSSメッシュリンク上のツリー経路制御を含むSN3の動作例を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、SN3の制御部304(例えば、ツリー経路制御部343)において実行されると捉えてよい。
【0182】
SN3は、例えば無線通信部302において経路制御パケットが受信されるか否かを監視する(S51;NO)。
【0183】
経路制御パケットの受信が検出された場合(S51;YES)、SN3の制御部304は、経路制御パケットの種別を確認する。例えば、制御部304は、受信した経路制御パケットが、リセットパケットであるか経路構築パケットであるかを確認する(S52及びS54)。
【0184】
受信した経路制御パケットが、リセットパケットの場合(S52;YES)、制御部304は、初期化処理を行う(S53)。初期化処理には、例えば、以下の処理が含まれてよい。
・周辺ノード情報において有効なツリー経路に選択しているリンクの選択解除
・記憶している経路メトリックの初期値(例えば、最大値)への初期化
【0185】
初期化処理の後、制御部304は、例えば、受信したリセットパケットを周辺SN3へ送信(フラッディング)する(S53a)。なお、リセットパケットには、識別子(ID)が含められてよい。ノード3のそれぞれは、受信したリセットパケットに含まれるIDを記憶しておいてよい。
【0186】
ノード3のそれぞれは、受信したリセットパケットのIDが、記憶したIDと一致する場合、別言すると、過去に送信(転送)したリセットパケットであることを示す場合、当該リセットパケットの更なる送信は行わない。これにより、リセットパケットがBHネットワークにおいてループすることを防止できる。
【0187】
一方、受信した経路制御パケットがリセットパケットでない場合(S52;NO)、制御部304は、当該経路制御パケットが経路構築パケットであるか否かを確認する(S54)。
【0188】
受信した経路制御パケットが経路構築パケットの場合(S54;YES)、制御部304は、周辺ノード情報を参照し(S55)、経路構築パケットを受信したリンクの伝搬品質指標(例えば、電波伝搬損失)を計算する(S56)。
【0189】
計算した電波伝搬損失を基に、制御部304は、経路メトリックを計算する(S57)。例えば、制御部304は、計算した電波伝搬損失と、受信した経路構築パケットに含められている伝搬品質指標と、を加算することによって、累積的な電波伝搬損失を新経路メトリックとして計算する。
【0190】
そして、制御部304は、新経路メトリックと、新経路メトリックが計算される前に記憶していた旧経路メトリックと、を比較して、経路メトリックの更新要否を判断する(S58)。
【0191】
例えば、制御部304は、旧経路メトリックよりも新経路メトリックの方が小さい場合に、旧経路メトリックを新経路メトリックに更新すると判断する(S58;YES)。当該判断に応じて、制御部304は、周辺ノード情報において新経路メトリックに対応する上流の無線リンクを有効なツリー経路に選択する(選択リンクの更新;S59)。
【0192】
選択リンクの更新に応じて、制御部304は、例えば、新経路メトリックを含む経路構築パケットを、周辺ノード情報において識別される周辺SN3へ送信(ブロードキャスト)する(S60)。
【0193】
その後、制御部304は、一定時間が経過(タイムアウト)したか否かを監視する(S61)。タイムアウトが検出されない場合(S61;NO)、制御部304は、処理を経路制御パケットの受信監視処理(S51)に移行してよい。タイムアウトが検出された場合(S61;YES)、制御部304は、データパケットの送信処理を開始してよい(S62)。
【0194】
なお、受信した経路制御パケットがリセットパケット及び経路構築パケットのいずれでもない場合(S52及びS54;NO)、制御部304は、処理を経路制御パケットの受信監視処理(S51)に移行してよい。
【0195】
また、計算した新経路メトリックが旧経路メトリック以上であり、選択リンクの更新が不要と判断した場合(S58;NO)も、制御部304は、処理を経路制御パケットの受信監視処理(S51)に移行してよい。
【0196】
以上のように、SN3は、経路構築パケットの受信に応じて、周辺ノード3との間においてリンクアップした複数の無線リンクの1つを経路メトリックに基づいて選択する。これにより、メッシュリンクがリンクアップしたBHネットワークにおいて、経路メトリックに基づいたツリー経路が構築及び更新される。
【0197】
なお、図10及び図11に示すツリー経路制御は、一例であり、本発明はこれに限定されない。例えば、ツリー経路の構築及び更新は、手動で制御されてよい。例えば、無線通信システム1の管理者が、ノード3が設置された後に、ノード3のそれぞれの位置及び/又はノード3の電波状況に応じて、予め、ツリー経路を設定してもよい。なお、この場合、図7に示したリンクセットアップ手順、及び、図10図11とに示したツリー経路制御は、実行されなくてよい。
【0198】
なお、図8に示したように、CN#0が利用可能な無線リンクがCN#0とSN#1との間の無線リンクに特定される場合、SN#1は、CN#0によって送信された経路構築パケットを受信する。この場合、SN#1は、CN#0とSN#1との間の無線リンクを有効なツリー経路に選択するため、CN#0の下流ノード(次のホップ先)にSN#1が選択される。
【0199】
図12は、図8に示したメッシュリンクの第1の例において構築されるツリー経路の例を示す図である。SN#1が、CN#0とSN#1との間の無線リンクを有効なツリー経路に選択することによって、図12に示すような、CN#0を起点にし、CN#0の下流ノード(次のホップ先)にSN#1が選択されたツリー経路が構築される。
【0200】
また、図9に示したように、CN#0が利用可能な無線リンクが、CN#0とSN#1との間の無線リンク、及び、CN#0とSN#2との間の無線リンクを含む場合、SN#1及びSN#2の双方が、CN#0によって送信された経路構築パケットを受信してよい。なお、本実施の形態において、CN#0のアンテナ360は、下流側のノード3であるSN#1に向けた指向性を有し、SN#1のアンテナ360-1は、上流側のノード3であるCN#0に向けた指向性を有する。そのため、SN#1がCN#0から受信した経路構築パケットの受信品質は、SN#2がCN#0から受信した経路構築パケットの受信品質よりも高い。例えば、SN#1がCN#0から受信した経路構築パケットの電波伝搬損失は、SN#2がCN#0から受信した経路構築パケットの電波伝搬損失よりも小さい。
【0201】
このような場合、CN#0とSN#2との間のダイレクトな経路の経路メトリックは、CN#0とSN#1との間の無線リンクを含み、SN#1を経由するCN#0とSN#2との間の経路の経路メトリックよりも大きい。そのため、SN#2は、CN#0とSN#2との間の無線リンクを有効なツリー経路に選択せず、SN#1を経由するCN#0とSN#2との間の無線経路を有効なツリー経路に選択する。
【0202】
図13は、図9に示したメッシュリンクの第2の例において構築されるツリー経路の例を示す図である。SN#2は、SN#1を経由するCN#0とSN#2との間の無線経路を有効なツリー経路に選択することによって、図12に示すような、CN#0を起点にし、CN#0の下流ノード(次のホップ先)にSN#1が選択されたツリー経路が構築される。
【0203】
以上、本実施の形態の無線通信システム1では、CN#0と、SN#1と、SN#2とを含む複数のノード3を有する。CN#0が位置する水平面は、SN#1が位置する水平面と異なる。CN#0は、SN#1に向けて指向性を有するアンテナ360を備える。SN#1は、アンテナ360-1とアンテナ360-2とを有する。アンテナ360-1は、CN#0に向けた指向性を有する。SN#1の制御部304は、アンテナ360-1で受信された下り無線信号を処理してアンテナ360-2からSN#2へ送信する処理と、アンテナ360-2で受信された上り無線信号を処理して360-1からCN#0へ送信する処理と、の少なくとも1つを行う。この構成によって、CN#0がSN#1との無線リンクを確立し、CN#0が、CN#0との直接接続することが困難なSN#2との無線通信を、SN#1を介して行うことができるため、高さ方向を含む3次元的な無線ルートを容易に構築できる。
【0204】
また、上述した実施の形態では、SN#1がタワークレーンに設けられる例を説明した。タワークレーンは、建築工事の進行に応じて、自律して高さの変更を行うため、SN#1がタワークレーンに設けられることによって、例えば、上層階へ工事が進行した場合であっても、SN#1の設置位置を新たに設けなくてよく、3次元的な無線ルートを容易に構築できる。
【0205】
また、上述した実施の形態では、CN#0及びSN#1の指向性を有するアンテナは、指向性の方向に自由度があるため、建築工事の進行に応じて、CN#0とSN#1と位置関係に変化があった場合でも、指向性の方向を微調整することで、無線ルートを維持できる。
【0206】
また、上述した実施の形態では、ノード間を有線で接続せずに無線通信環境を構築できるため、例えば、一時的(あるいは、暫定的)な無線通信環境が役割を終えた場合に、撤去を容易に行うことができる。
【0207】
なお、上述した実施の形態に示したタワークレーンは、タワークレーンの台座がビルの領域の外側に設けられる、所謂、マストクライミング型の例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、タワークレーンは、タワークレーンの台座がビルの領域の内部に存在する、所謂、フロアークライミング型であってもよい。フロアークライミング型のタワークレーンの場合も、マストクライミング型と同様に、タワークレーンの旋回基部は、ビルの最上層よりも上方に存在するため、上述した実施の形態と同様に、SN3が旋回基部に設けられてよい。
【0208】
また、上述した実施の形態では、1台のタワークレーンが設けられる例を示したが、複数のタワークレーンが設けられてもよい。この場合、SN3が、複数のタワークレーンのそれぞれに設けられてもよいし、複数のタワークレーンの一部に設けられてもよいし、1つのSN3が、CN3に最も近いタワークレーンに設けられてもよい。例えば、この場合、CN3のアンテナの指向性は、CN3に最も近いタワークレーンのSN3に向けられてもよいし、CN3との間の無線通信環境が最も良いタワークレーンのSN3に向けられてもよい。例えば、CN3のアンテナが、複数の方向に指向性を向けられる、又は、指向性を時間的に切替えられる構成を有する場合、タワークレーンのSN3のそれぞれに指向性を向けてもよい。また、複数のタワークレーンにSN3が設けられる場合、或るタワークレーンのSN3と、別のタワークレーンのSN3との間の無線リンクが、ツリー経路に含まれてもよい。
【0209】
なお、上述した実施の形態では、ビルの建築現場を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、高さ方向を含む3次元的な無線ルートを構築する環境に対して適用されてよい。例えば、本発明は、地下のトンネルの採掘等の土木工事の現場に適用されてよい。土木工事が、地下の方向へ進捗する場合も、本発明が適用されることによって、例えば、地上に設けられたCNと、地下に設けられたSNとの間で、3次元的な無線ルートを構築できる。
【符号の説明】
【0210】
1 無線通信システム
3 無線ノード
5 バックボーンネットワーク
7 端末装置
31 プロセッサ
32 メモリ
33 ストレージ
34 入出力(I/O)装置
35,36 無線インタフェース(IF)
37,39 有線インタフェース(IF)
38 バス
301,302 無線通信部
303 有線通信部
304 制御部
305 記憶部
341 スキャン処理部
342 ノード管理部
343 ツリー経路制御部
344 IPT制御部
350,360 アンテナ
3431 経路制御パケット生成部
3432 経路メトリック計算部
3433 ツリー経路更新部
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13