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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】下部開放型フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240404BHJP
   A42B 3/20 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A42B3/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020084286
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2021179037
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】515081040
【氏名又は名称】旭鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義久
(72)【発明者】
【氏名】生田 厚史
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3169951(JP,U)
【文献】特開平09-239050(JP,A)
【文献】米国特許第04965887(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02
A42B 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が開放された状態で顔面の鼻腔および口腔を覆う下部開放型フェイスシールドであって、
前記鼻腔および口腔を覆うためのシールド部材と、
前記シールド部材に取り付けられ、後頭部側が非連結の形状となっており、前記顔面のほぼ頬骨あたりの高さに装着されたときに該顔面または装着された眼鏡を両側から挟み込む弾性力によって、該シールド部材を前記鼻腔および口腔の前面に所定の距離だけ離した状態で保持するための保持部材を備え
前記保持部材は、前記顔面の口腔幅よりも広い範囲で前記シールド部材の内面と密着され、下面が中央から前記シールド部材端部に至るまで連続した溝となっている
下部開放型フェイスシールド。
【請求項2】
請求項1記載の下部開放型フェイスシールドであって、
さらに、前記シールド部材が落下しないよう鼻部で支えるための鼻当て部を備える下部開放型フェイスシールド。
【請求項3】
請求項1または2記載の下部開放型フェイスシールドであって、
前記保持部材は、顔面に装着された眼鏡の弦を外側から挟み込む眼鏡パッドを有し、
前記眼鏡パッドは、眼鏡の弦を保持するための溝であって、深さ方向に幅が狭くなるテーパ溝を有する下部開放型フェイスシールド。
【請求項4】
請求項2記載の下部開放型フェイスシールドであって、
前記保持部材と、前記鼻当て部とは、一体化されている下部開放型フェイスシールド。
【請求項5】
請求項1記載の下部開放型フェイスシールドであって、
前記保持部材は、さらに、装着時に前記顔面にフィットする形状となっている下部開放型フェイスシールド。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載の下部開放型フェイスシールドであって、
前記シールド部材は、前記頬骨よりも低い部分のみを覆う形状であり、
前記保持部材は、前記顔面の左右で、前記シールド部材を上下に回転可能に保持する回転機構を有する下部開放型フェイスシールド。
【請求項7】
請求項1~6いずれか記載の下部開放型フェイスシールドであって、
前記保持部材は、発泡ウレタンまたはシリコン樹脂で形成されている下部開放型フェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部が開放された状態で顔面の鼻腔および口腔を覆う下部開放型フェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルスその他による感染を防止するため、マスクが利用されている。マスクにおいては、眼鏡を掛けた状態で、マスクを使用すると、呼気によって眼鏡が曇るという課題があり、これを防ぐための技術が提案されている。例えば、特許文献1は、マスクの鼻の両側部分に発泡体からなる緩衝材を装着する技術を提案する。特許文献2は、マスクの上縁を顔面に密着させるための粘着部を備える技術を提案する。特許文献3は、マスクの上縁に、鼻に密着する形状を保持するためのアルミ板を装着する技術を提案する。
【0003】
一方、感染防止の手段として、下部が開放された状態で顔面の鼻腔および口腔を覆う下部開放型フェイスシールドも利用されている。
図7は、従来技術としての下部開放型フェイスシールドを示す説明図である。このフェイスシールドは、頭部に装着するヘッドバンドと、それに固定された透明樹脂製のシールドから構成されている。シールドは、鼻腔および口腔を覆うだけのサイズおよび形状となっていながら、シールド自体は顔面に密着しないため、息苦しくなく装着できる利点がある。
下部開放型フェイスシールドでは、呼気が開放部分から外に流出するため、マスクに比べて眼鏡が曇りにくい傾向にはあるとはいえ、やはり眼鏡の曇りは、一つの課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-148984号公報
【文献】特開2006-263172号公報
【文献】特開2006-305279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスクおよび下部開放型フェイスシールドで感染を防止するためには、その脱着にも十分に注意を払う必要がある。脱着時に、身体の各所に触れたり、マスクやシールドの内面に触れることがあっては、感染防止の効果を損ねることがある。
従来の下部開放型フェイスシールドは、ヘッドバンドを用いるため、脱着時に頭部に手が触れる可能性があった。また、使用者は、シールドの位置を修正するために、シールド下部を手でつかむ傾向があり、このとき、シールドの内面を触れることもあった。従って、脱着時の動作によって、感染の危険を招くおそれがあった。
本発明は、かかる課題に鑑み、脱着が容易な下部開放型フェイスシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下部が開放された状態で顔面の鼻腔および口腔を覆う下部開放型フェイスシールドであって、
前記鼻腔および口腔を覆うためのシールド部材と、
前記シールド部材に取り付けられ、後頭部側が非連結の形状となっており、前記顔面のほぼ頬骨あたりの高さに装着されたときに該顔面または装着された眼鏡を両側から挟み込む弾性力によって、該シールド部材を前記鼻腔および口腔の前面に所定の距離だけ離した状態で保持するための保持部材を備える下部開放型フェイスシールドと構成することができる。
【0007】
本発明によれば、保持部材の弾性力によって下部開放型フェイスシールドを顔面に保持することができる。保持部材は、例えばU字型の平面形状など、後頭部側が非連結の形状となっているため、下部開放型フェイスシールドは顔面の前方から脱着可能である。つまり、ユーザは、シールド部材の外面をつかむように把持し、脱着することができる。従って、本発明によれば、脱着を容易にするとともに、その際における感染の危険を抑制することができる。
また、本発明は、頬骨あたりで下部開放型フェイスシールドを保持するため、眼鏡を掛けながらでも支障なく使用することができる利点がある。
【0008】
本発明において保持部材は、顔面を挟み込むものとしてもよいし、眼鏡を挟み込むものとしてもよい。また、顔面または眼鏡に接触する部分と、弾性力を付与する部分とは同一部材であっても異なる部材であってもよい。例えば、顔面等に接触する部分として、シールドに貼付されたパッドを設けるとともに、弾性力を付与する部分として、パッドとは別に、金属製のバネやゴムなどの弾性体を用いても良い。
保持部材の長さは、例えば、耳の前辺りまでで留めてもよい。こうすれば、脱着が一層、容易になる。この態様では、眼鏡を装着しながら下部開放型フィエスシールドを装着することが可能となる利点もある。
また、眼鏡のように耳に掛けられる程度の長さとしてもよい。こうすれば、弾性力だけでなく、耳に掛けることで、より安定して保持することができる。同時に、保持するための弾性力を小さくすることもできるため、圧迫感、違和感ないし長時間装着したときの痛みなどを軽減することもできる。
さらに、保持部材は、耳の外側を挟みながら、または耳の外側を迂回しながら、耳の後方程度まで伸ばしてもよい。こうすることにより、長時間安定して保持することが可能となる。この態様では、耳に掛けることを回避するため、眼鏡を装着しながら下部開放型フィエスシールドを装着することが可能となる利点もある。
【0009】
シールド部材と保持部材とは、部分的に結合されていてもよいし、保持部材の全体にわたって結合されていてもよい。
本発明において、シールド部材は、鼻腔および口腔を覆うものであれば、種々の形状とすることができる。シールド部材は、鼻腔および口腔を含む顔の下半分を覆うものとしてもよいし、眼も含む顔全体を覆うものとしてもよい。感染予防の効果を高めるためには、鼻腔および口腔をできる限り下方まで覆うことができる形状とすることが好ましい。
また、シールド部材は、樹脂、金属、紙など種々の材質を用いることができる。必ずしも透明である必要はない。また、少なくとも鼻腔、口腔を覆った状態で形状が維持できる程度の剛性を有することが好ましい。
【0010】
本発明においては、
さらに、前記シールド部材が落下しないよう鼻部で支えるための鼻当て部を備えるものとしてもよい。
【0011】
こうすることにより、安定して下部開放型フェイスシールドを装着することが可能となる。鼻当て部は、例えば、眼鏡の鼻パッドのように、保持部材とは別の部材としてもよい。鼻当て部は、シールド部材に取り付けても良いし、保持部材に取り付けてもよい。
【0012】
本発明において、
前記保持部材は、顔面に装着された眼鏡の弦を外側から挟み込む眼鏡パッドを有し、
前記眼鏡パッドは、眼鏡の弦を保持するための溝であって、深さ方向に幅が狭くなるテーパ溝を有するものとしてもよい。
【0013】
上記態様によれば、眼鏡パッドに形成されたテーパ溝で、眼鏡の弦を安定して保持することができる。また、テーパ溝によって、溝の幅が変化しているため、種々の太さの弦に対応することが可能となる。
眼鏡パッドは、種々の長さで形成することができるが、長手方向、即ち弦に沿う方向に十分長くしておくことが好ましい。こうすることにより、シールド部材の上下方向のがたつきを抑制することができる。
【0014】
眼鏡パッドを有しない場合も含めて、本発明においては、
前記保持部材と、前記鼻当て部とは、一体化されているものとしてもよい。
【0015】
こうすることにより、保持部材および鼻当て部の構造を簡略化することができる。上記態様としては、例えば、保持部材の一部に鼻に当たる凹部を設けるものとしてもよい。また、保持部材の一部に、鼻当て用のパッドに相当する部分を設けてもよい。
【0016】
本発明においては、
前記保持部材は、前記顔面の口腔幅よりも広い範囲で前記シールド部材の内面と密着されているものとしてもよい。
【0017】
こうすることにより、保持部材がシールド部材の内面に沿って呼気の流れを阻害する壁を形成し、呼気が保持部材よりも上部に流れてくることを抑制できる。従って、眼鏡を装着していても、呼気によって眼鏡が曇ることを抑制できる。かかる効果が十分に得られるよう、保持部材は、シールド部材の法線方向に、十分大きい寸法を有することが好ましい。
【0018】
上記態様においては、
前記保持部材は、さらに、装着時に前記顔面にフィットする形状となっているものとしてもよい。
【0019】
こうすれば、保持部材による壁でシールド部材の内面と顔面との隙間を塞ぐようにできるため、呼気の上部への流れを、一層、防ぐことが可能となる。
【0020】
保持部材が呼気の流れを訴外する壁となる態様においては、
前記保持部材は、下面が中央から前記シールド部材端部に至るまで連続した溝となっているものとしてもよい。
【0021】
こうすることにより、保持部材の下面の溝が、呼気を受ける作用を奏し、保持部材と顔面との隙間からの呼気の漏れを一層、防ぐことが可能となる。また、この溝はシールド部材の端面まで連続して形成されているため、呼気を左右に流し、シールド部材外に排出することを促進できる。
上記態様において、溝は種々の形状をとることができるが、円弧状とすることが呼気の流れの円滑化を図る観点から好ましい。
上記態様では、保持部材下面とシールド部材で形成される溝が、鼻に近い中央部で低く、両側ほど高くなるよう傾斜させてもよい。こうすることで、呼気が鼻の辺りに停留することを抑制するとともに、顔の両側に流す作用が生じ、一層、呼気の漏れを抑制することができる。
【0022】
本発明においては、
前記シールド部材は、前記頬骨よりも低い部分のみを覆う形状であり、
前記保持部材は、前記顔面の左右で、前記シールド部材を上下に回転可能に保持する回転機構を有するものとしてもよい。
【0023】
こうすれば、シールド部材を回転させることで、口腔を露出させることができる。従って、下側開放型フェイスシールドを装着したまま、飲食等を行うことが可能となり、下側開放型フェイスシールドを外してテーブルなどに置くことによる感染の危険を回避することが可能となる。
上記態様では、保持部材とシールド部材との間に隙間が生じても差し支えないが、両者を密着させられればより好ましい。例えば、保持部材を弾性材料で若干、大きめに形成することで、鼻腔および口腔を覆う位置にシールド部材をおろしたときに、弾性力で保持部材がシールド部材の内面に密着させることができる。
【0024】
本発明において、
前記保持部材は、発泡ウレタンまたはシリコン樹脂で形成されているものとしてもよい。
【0025】
こうすれば、比較的、弾性に富み、軽量に保持部材を形成することができる。これに限らず、種々の材料を用いることができる。
【0026】
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全てを備えている必要はなく、その一部を適宜省略したり、組み合わせたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1における下部開放型フェイスシールドの構成を示す説明図である。
図2】実施例1における下部開放型フェイスシールドを装着した状態を示す説明図である。
図3】実施例2における下部開放型フェイスシールドの構成を示す説明図である。
図4】実施例3における下部開放型フェイスシールドの構成を示す説明図である。
図5】実施例3における下部開放型フェイスシールドを装着した状態を示す説明図である。
図6】実施例4における下部開放型フェイスシールドの構成を示す説明図である。
図7】従来技術としての下部開放型フェイスシールドを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
図1は、実施例1における下部開放型フェイスシールド10の構成を示す説明図である。下部開放型フェイスシールド(以下、単に「フェイスシールド」と呼ぶこともある)10は、顔面の下半分を覆うタイプである。図1(a)は、フェイスシールドを、前方から見た状態の斜視図を表している。
【0029】
シールド部材11は、透明の樹脂で形成されており、装着時に鼻腔および口腔を覆うことができる形状となっている。形状は、図示したものに限られるものではない。また、シールド部材11は、不透明の素材で形成してもよいし、樹脂以外にも金属、紙など種々の素材を利用可能である。
【0030】
シールド部材11の上部には、発泡ウレタン製の保持部材12が貼付されている。保持部材12は、シリコン製などとしてもよい。保持部材12は、部分的に貼付するようにしてもよいが、本実施例では全体にわたって貼付するものとした。
また、保持部材12には、頬骨に当たる部分に凸部13が形成されている。本実施例では、保持部材12、凸部13は一体成型としているが、両者を別部材として形成した後、接着等してもよい。
【0031】
図1(b)は、フェイスシールドを、後方、即ち図1(a)中の矢印Aの方向から見た状態を示している。
保持部材12は、フェイスシールド10の全幅にわたって貼付されている。また、環状ではなく、後方が非連結のU字状となっている。保持部材12は、装着時に顔面を左右から挟むように弾性力を加え、フェイスシールド10を保持する役割を果たす。従って、これが可能となるよう、保持部材12の左右方向の幅、顔面の幅よりも、若干、狭くなっている。
フェイスシールド10を装着時に安定させるためには、弾性力を強くすること、即ち、保持部材12の左右方向の幅を狭くすることが好ましい。一方、保持部材12の左右方向の幅を狭くし過ぎると、装着時に両手で保持部材を左右に広げる必要が生じることもある。従って、保持部材12の幅および形状は、これらの要素を考慮して、適宜、定めればよい。
【0032】
また、凸部13の間は、装着時に鼻に当たる凹部14となっている。これが、鼻当て部に相当する。このように凹部14を設けることにより、フェイスシールド10が落下しないよう鼻で支持することができ、フェイスシールド10を安定して装着することができる。鼻当て部を形成しない形状としてもよい。
【0033】
図2は、実施例1における下部開放型フェイスシールド10を装着した状態を示す説明図である。
図示するように、フェイスシールド10は、ユーザの目の下側の頬骨あたりに保持部材12が位置するように装着される。保持部材12は、顔面に、左右から挟み込むように弾性力を与えることにより、フェイスシールド10を保持することができる。また、鼻当て部となる凹部14が、鼻に当たることで、フェイスシールド10を、より安定して保持することができる。
また、頬骨あたりでフェイスシールド10を保持するため、支障なく眼鏡をかけることができる利点もある。
保持部材12の長さも自由に決めることができる。実施例では、耳の前辺りまでとした。こうすることにより、脱着が容易となる。耳の外側を挟みながら、または耳の外側を迂回しながら、耳の後方程度まで伸ばしてもよい。こうすることにより、長時間安定して保持することが可能となる。
また、眼鏡のように耳に掛けられる程度の長さ・形状としてもよい。こうすれば、弾性力だけでなく、耳に掛けることで、より安定して保持することができる。同時に、保持するための弾性力を小さくすることもできるため、圧迫感、違和感ないし長時間装着したときの痛みなどを軽減することもできる。
【0034】
本実施例では、保持部材12は、シールド部材11と接着されている。従って、両者の境界線12Lは、完全に密着した状態である。フェイスシールド10を装着した状態では、呼気はシールド部材11の内面に沿って流れるが、保持部材12は、その流れを阻害する壁となる。従って、呼気が保持部材12より上に流出するのを防ぐことができ、仮に眼鏡をかけていたとしても、呼気によって曇ることを防止できる。
【0035】
さらに、凸部13は、鼻および頬骨に沿う形状となっている。従って、装着時には、保持部材12は顔面に密着するようになり、特に、頬骨のあたりの領域(図中の領域a)や、鼻の側方(図中の領域b)などからの漏れを防止することができる。この結果、眼鏡をかけているときの曇りを、一層、防止することが可能となる。
【0036】
実施例1によれば、フェイスシールド10の外面を手で挟むようにつかみ、顔面の前方から、容易に着脱することができる。従って、着脱時に、手が身体の随所に触れたり、シールド部材11の内面に触れたり、といった原因による感染の危険を抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
図3は、実施例2における下部開放型フェイスシールド20の構成を示す説明図である。実施例1と同様、顔の下半分を覆うタイプとなっている。
フェイスシールド20において、シールド部材21、保持部材22、および凸部23の構造は、実施例1と同様である。従って、実施例1と同様、フェイスシールド20を容易に脱着することが可能となっている。
【0038】
また、実施例2では、保持部材22の端部に回転機構24が設けられており、シールド部材21は、回転機構24によって保持部材22に回転可能に取り付けられている。
シールド部材21は、回転機構24によって、上下に回転可能である。図3(a)は、シールド部材21をおろした状態、図3(b)は、矢印Bのように、シールド部材21を上げた状態を表している。実施例2では、シールド部材21と保持部材22は、接着されていないため、シールド部材21をあげたときでも、保持部材22は、頬骨のあたりに保持された状態である。
【0039】
このようにシールド部材21を回転可能にすることにより、フェイスシールド20を装着したまま、口腔を露出させることができ、そのまま飲食することが可能となる。従って、飲食時にフェイスシールド20を外して不用意にテーブルに置くなどすることによる感染の危険を回避することができる。
【0040】
実施例2では、保持部材22の厚さtは、装着時の顔面とシールド部材21との間隔よりも若干、大きく形成されている。こうすることにより、図3(a)のように、シールド部材21をおろしたとき、保持部材22が弾性力によってシールド部材21の内面に押しつけられるため、両者が密着するようになる。従って、実施例1と同様、呼気がシールド部材21の内面に沿って上に流出してくるのを抑制することができる。
【実施例3】
【0041】
図4は、実施例3における下部開放型フェイスシールド30の構成を示す説明図である。
実施例3では、シールド部材31は、鼻腔、口腔を含む顔面の下半分を覆う下部シールド部材31Lと、眼を含む顔面の上半分を覆う上部シールド部材31Uから構成されている。下部シールド部材31Lと、上部シールド部材31Uとを別々に形成し、両者を接合してもよいし、両者を一体的に形成してもよい。
保持部材32および凸部33は、実施例1と同様の形状となっている。保持部材32は、シールド部材31に貼付されている。
【0042】
図5は、実施例3における下部開放型フェイスシールド30を装着した状態を示す説明図である。
実施例1と同様、フェイスシールド310は、ユーザの目の下側の頬骨当たりに保持部材32が位置するように装着される。保持部材32は、顔面に、左右から挟み込むように弾性力を与えることにより、フェイスシールド30を保持することができる。また、鼻当て部となる凹部34が、鼻に当たることで、フェイスシールド30を、より安定して保持することができる。
また、凸部33は、頬骨との隙間を埋めるよう顔面に密着する。凹部34,凸部33を設けない構成としてもよい。
【0043】
図の下方に、保持部材32のC-C断面を示した。図示するように、保持部材32は、下面に凹部32aが形成されている。この凹部32は、中央部からシールド部材31の端部まで連続した溝を形成し、呼気を受ける作用を奏する。即ち、この凹部32aが存在することにより、呼気を効果的に受け、顔面側に呼気が流れることを抑止することができるため、呼気の漏れによる眼鏡やフェイスシールドの曇りなどを、一層、抑制することが可能となる。また、シールド部材31の端部まで連続した溝となっているから、呼気を顔面の左右に長し、外部に排出することを促進でき、一層、曇りを抑制することが可能となる。
これらの断面形状は、他の実施例においても同様に適用可能である。
【0044】
実施例3のフェイスシールド30は、実施例1と同様、顔面の前方から容易に装着することができる。
実施例3の保持部材32は、耳の前辺りまでとしたが、その長さは自由に決めることができる。図5中に破線で示したように、耳の外側を挟みながら、または耳の外側を迂回しながら、耳の後方程度まで伸ばしてもよい。こうすることにより、長時間安定して保持することが可能となる。
また、眼鏡のように耳に掛けられる程度の長さ・形状としてもよい。こうすれば、弾性力だけでなく、耳に掛けることで、より安定して保持することができる。同時に、保持するための弾性力を小さくすることもできるため、圧迫感、違和感ないし長時間装着したときの痛みなどを軽減することもできる。
これらの構成も、他の実施例においても同様に適用可能である。
【実施例4】
【0045】
図6は、実施例4における下部開放型フェイスシールドの構成を示す説明図である。
実施例4の下部開放型フェイスシールド40は、眼鏡をかけたユーザ用の構成となっている。シールド部材41は、実施例3と同様、顔面の全体を覆うタイプである。
保持部材42は、実施例3よりも短くなっている。実施例3と同様の長さとしてもよい。保持部材42の凸部43は、他の実施例と同様、頬骨とシールド部材41との隙間を埋める役割を果たす。凹部44も、他の実施例と同様、鼻当て部となる。
実施例4では、眼鏡の弦を挟み込むように、パッド45が設けられている。図6(a)には、パッド45を拡大して示した。パッド45には、弦を挟む部分に、テーパ状の溝45aが形成されている。溝45aがテーパ状となっていることにより、図6(b)に示す通り、眼鏡の弦はパッド45に安定して保持される。また、溝45aがテーパ状となっていることにより、パッド45は、種々の太さの弦にも適用することが可能である。
さらに、パッド45は長手方向、即ち弦に沿う方向に十分に長く形成されている。こうすることで、フェイスシールド40が上下方向にがたつくのを抑えることが可能となる。
【0046】
実施例4のフェイスシールドによれば、他の実施例と同様、顔面の前方から容易に脱着することができる。
また、眼鏡の弦を利用して安定的に保持することも可能となる。
【0047】
実施例4において、保持部材42とパッド45とを別の部材として構成したが、両者を連結して一つの部材としてもよい。また、保持部材42を実施例3と同様の長さとし、顔を挟む弾性力を与えるようにすれば、フェイスシールド40を、より安定して保持することが可能となる。
さらに、実施例4では、凹部44が鼻当て部を構成するようにしたが、鼻に当たらないようにしても差し支えない。実施例4では、眼鏡の弦をパッド45で挟み込むことによって、眼鏡の鼻パッドを利用してフェイスシールド40がずれ落ちることを抑制できるからである。
【0048】
以上、本発明の種々の実施例を説明した。実施例のフェイスシールドによれば、脱着を容易にするとともに、その際における感染の危険を抑制することができる。
各実施例で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、その一部を適宜、省略したり組み合わせたりしてもよい。本発明は、上述した実施例の他にも種々の変形例を構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、下部が開放された状態で顔面の鼻腔および口腔を覆う下部開放型フェイスシールドに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 下部開放型フェイスシールド
11 シールド部材
12 保持部材
12L 境界線
13 凸部
14 凹部
20 下部開放型フェイスシールド
21 シールド部材
22 保持部材
23 凸部
24 回転機構
30 下部開放型フェイスシールド
31 シールド部材
31L 下部シールド部材
31U 上部シールド部材
32 保持部材
33 凸部
34 凹部
40 下部開放型フェイスシールド
41 シールド部材
42 保持部材
43 凸部
44 凹部
45 パッド
45a 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7