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  • 特許-鳥獣忌避装置および鳥獣忌避方法 図1
  • 特許-鳥獣忌避装置および鳥獣忌避方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】鳥獣忌避装置および鳥獣忌避方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/26 20110101AFI20240404BHJP
【FI】
A01M29/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020098712
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191249
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505119047
【氏名又は名称】株式会社ミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 泰啓
(72)【発明者】
【氏名】浴 靖典
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215193(JP,U)
【文献】特開平7-99876(JP,A)
【文献】特開平7-143839(JP,A)
【文献】実開昭56-20486(JP,U)
【文献】特開2011-151941(JP,A)
【文献】実開平7-34681(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286956(US,A1)
【文献】登録実用新案第3088514(JP,U)
【文献】特開2013-90627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/26
A01M 29/32
A01M 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に配設された磁石と、
前記磁石の周辺に配設され、導電性の薄膜片が複数設けられて放電可能な放電体と、
を備え、前記磁石のN極とS極が移動するように前記磁石が回転することで前記放電体が放電し、帯電感覚を有するカラスを含む鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする鳥獣忌避装置。
【請求項2】
前記磁石と前記放電体とを任意の位置に配設可能となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鳥獣忌避装置。
【請求項3】
前記鳥獣を検知する検知手段を備え、
前記検知手段で前記鳥獣が検知されると前記磁石が回転する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鳥獣忌避装置。
【請求項4】
回転自在に配設された磁石の周辺に、導電性の薄膜片が複数設けられて放電可能な放電体を配設し、
前記磁石のN極とS極が移動するように前記磁石を回転させることで前記放電体を放電させて、帯電感覚を有するカラスを含む鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする鳥獣忌避方法。
【請求項5】
前記放電体と地面とを電気的に接続することで、前記放電体からの放電効率を高めて前記鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする請求項4に記載の鳥獣忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電感覚を有するカラスなどの鳥獣による有害行動を防止するための鳥獣忌避装置および鳥獣忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラス等の鳥獣によってゴミ集積所が荒らされたり、農作物が食べられたりする被害への対策は、永年の課題となっている。特に、電力事業者においては、カラスによって電柱等に営巣されると、巣が電線に触れて停電を引き起こすおそれがあるため、営巣の有無を定期的に点検して、発見した場合には巣を撤去しなければならず、多大な労力と費用を要している。
【0003】
このため、このようなカラス等による被害を防止するために、従来から様々な忌避手段が考案されている。例えば、光が反射するテープが揺れ動くことでカラスを忌避したり、透明または半透明の線体がテープ状の支持体に多数取り付けられ、線体が揺れ動くことでカラスを忌避したりする装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、並列に配設した2つの電極の一方に電圧を印加し他方を接地することで、両電極を跨るように触れた鳥類に電気ショックを与える、という装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3540270号公報
【文献】実用新案登録第3210518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラスは知能が高いことで知られており、従来の忌避方法では、当初は忌避効果があっても、時間の経過とともに慣れてしまい、忌避効果が低下してしまう、という問題があった。すなわち、見えるものや聞こえるもの、臭うもの、あるいは触るものは、カラスが認識、特定できるため、特許文献1、2に記載の忌避装置などでは、時間の経過とともに危害を受けないと認識したり、危害を避けるための方法を見出したりし、忌避効果が低下してしまう。
【0006】
一方、放電や電気ショックなどでカラスなどを刺激する場合、感電によって人体にも影響を与えるおそれがあるため、安全性が高い装置が望まれる。
【0007】
そこでこの発明は、忌避効果を持続可能で、かつ、安全性が高い鳥獣忌避装置および鳥獣忌避方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、授産施設においては、障がいを抱える方々にとって実施可能な作業が限られること等から、作業所の健全な経営に必要な作業が確保できず、経営破たんする作業所が発生する等の社会問題が発生している。このため、当技術のうち障がいを抱える方々にとって実施可能な作業を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題に取り組むべく、本願発明者は、カラスの生態について調査したところ、カラスの鼻毛の毛根周囲には規則的に並んだ感覚受容体があり、その受容体が帯電等による感覚を受容していることが専門家により指摘されていることを知った。そこで、本願発明者らがカラスに対して放電照射を与える実験を行ったところ、水浴び等により鼻毛が濡れて帯電しにくくなっているカラスを除き、通常の状態のカラスが放電を嫌がり、逃飛行動をとることが確認された。また、実験結果の考察により、カラスが嫌うのは電位の立ち上がり速度の速いスパイク状の放電であることがわかった。また、子連れのカラスのつがいは、子どもを置き去りにしてまで逃飛行動をとらないことも確認され、放電による忌避方法は、鳥獣の損傷には該当せず、鳥獣保護法に抵触しないことが確認された。
【0010】
一方、導電性の薄膜片は電気抵抗が低下する等の特性を有し、電気抵抗が少なく、電子の動きが抑制されにくい導電性の薄膜片の端部からは、電子の放出(放電)がなされやすいという特性を有する。これは、導電性の薄膜片の光沢を有する表面の原子配列が一様となっていることにより生じると考えられるが、その特性から導電性の薄膜片を用いることで、カラスが嫌う放電を行えることが確認された。
【0011】
さらに、本願発明者は、導電性の薄膜片を複数周囲に配置した状態で磁石を回転させると、カラスが忌避行動を起こす程度の放電が薄膜片から発生することを確認した。これは、磁石の回転によって生じる磁場の変化により導電性の薄膜片に電場が発生して放電が発生するものと考えられる。
【0012】
このようなカラスの生態や習性と導電性の薄膜片の特性などを利用し、上記課題を解決するために、請求項1の発明は、回転自在に配設された磁石と、前記磁石の周辺に配設され、導電性の薄膜片が複数設けられて放電可能な放電体と、を備え、前記磁石のN極とS極が移動するように前記磁石が回転することで前記放電体が放電し、帯電感覚を有するカラスを含む鳥獣を刺激する、ことを特徴とする鳥獣忌避装置である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鳥獣忌避装置において、前記磁石と前記放電体とを任意の位置に配設可能となっている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の鳥獣忌避装置において、前記鳥獣を検知する検知手段を備え、前記検知手段で前記鳥獣が検知されると前記磁石が回転する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、回転自在に配設された磁石の周辺に、導電性の薄膜片が複数設けられて放電可能な放電体を配設し、前記磁石のN極とS極が移動するように前記磁石を回転させることで前記放電体を放電させて、帯電感覚を有するカラスを含む鳥獣を刺激する、ことを特徴とする鳥獣忌避方法である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4に記載の鳥獣忌避方法において、前記放電体と地面とを電気的に接続することで、前記放電体からの放電効率を高めて前記鳥獣を刺激する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項4に記載の発明によれば、放電を嫌がるカラスなどの習性を利用して、放電体を放電させることにより、本鳥獣忌避装置の周辺にいるカラスなどの帯電感覚を刺激する。これにより、カラスなどが放電区域に侵入するのを防止、抑制したり、放電区域に留まることを防止、抑制したりすることが可能となる。このため、被害が予想される場所やその周辺において、本鳥獣忌避装置による放電を行うことで、鳥獣による被害を効果的に防止、抑制することが可能となる。また、放電はカラスなどの帯電感覚を刺激するものの、その気中伝達速度が速いため、カラスなどは本鳥獣忌避装置を認識、特定することができず、本鳥獣忌避装置による忌避効果を持続することが可能となる。
【0018】
また、磁石を回転させることで放電体から放電を発生させるため、安全性が高い。すなわち、放電体に直接電圧を印加して放電させる場合に比べて、周辺の人が感電するおそれが少なく、安全性を高めることが可能となる。さらに、放電体は、導電性の薄膜片が複数設けられただけであるため、構成が簡易で、授産施設で制作することが可能であるとともに、製作費や保守費などを低減することが可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、磁石と放電体とを任意の位置に配設可能なため、周囲環境や磁力などに応じて磁石と放電体を所望の位置に配設することで、放電体から適正に放電させて、鳥獣を効果的に忌避することが可能となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、鳥獣を検知したとき、すなわち、鳥獣が現れたときにのみ磁石が回転して放電体から放電されるため、鳥獣に突発的な刺激を与えて忌避効果を向上させることが可能になるとともに、鳥獣が刺激に慣れるのを防いで忌避効果をより持続させることが可能となる。
【0021】
請求項5の発明によれば、放電体からの放電効率が高められるため、鳥獣をより刺激して忌避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施の形態1に係わる鳥獣忌避装置を示す構成図である。
図2図1の鳥獣忌避装置の装置本体の磁石周辺を示す拡大図である。
図3】この発明の実施の形態2に係わる鳥獣忌避装置を示す正面図(a)と平面図(b)である。
図4】この発明の実施の形態における放電体の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る鳥獣忌避装置1を示す概略構成図である。この鳥獣忌避装置1は、帯電感覚を有するカラスKなどの鳥獣を忌避するための装置であり、主として、放電体2と装置本体3とを備える。ここで、この実施の形態では、鳥獣がカラスKの場合について、主として以下に説明する。
【0025】
放電体2は、装置本体3つまり後述する磁石31の周辺に配設され、導電性の薄膜片22が複数設けられて放電可能なものであり、この実施の形態では、ほぼ全方向に放電可能となっている。すなわち、盤状の土台20に、略垂直に真っ直ぐに延びるように導電性の中心導線21が配設され、この中心導線21を中心に放射線状に、かつ、中心導線21の長手方向に沿って多数の薄膜片22が配設されている。これにより、放電体2の全体が略円柱状に形成され、外周から放射線状にほぼ全方向に放電可能となっている。
【0026】
ここで、各薄膜片22は、この実施の形態では、アルミ箔を細長いテープ状に形成した小片で構成され、その中央部が中心導線21に取り付けられて中心導線21と電気的に導通され、中心導線21のほぼ全長にわたって隙間なく密に取り付けられている。そして、薄膜片22は、後述する磁石31が回転することで効率的に放電が行われるように、形状、大きさ、帯電性、配設密度などが設定されている。
【0027】
このような放電体2は、この実施の形態では、設置面に対して中心導線21が略垂直に延びるように、かつ、中心導線21および薄膜片22が地面と電気的に接続されて設置される。この実施の形態では、このような放電体2を2つ備えるが、設置・周囲環境や磁石31の磁力などに応じて3つ以上の放電体2を備えてもよい。また、土台20に磁石を設けて鉄塔などに取り付けられるようにしたり、土台20や中心導線21の上部にクリップを設けて外部部材に取り付けられるようにしたりしてもよい。
【0028】
装置本体3は、回転自在に配設された磁石31を備え、磁石31が回転することで放電体2を放電させるものであり、放電体2を放電させることでカラスKを刺激する。具体的には、耐水性で箱型のベース30内に電動機32が収容され、この電動機32に変速機(変速ギア)を介して回転軸33の下端部が連結され、回転軸33がベース30の上面から略垂直上方に延びるように配設されている。
【0029】
また、回転軸33の上端部に永久磁石である磁石31が配設されている。すなわち、この実施の形態では、図2に示すように、磁石31が略円柱状で、N極とS極との境である中央部に挿入孔31aが形成されている。一方、回転軸33の上端部は小径に形成されて雄ネジが形成され、この雄ネジ部33aが挿入孔31aに挿入されて、磁石31から突出した雄ネジ部33aの先端部にナット34が締め付けられることで、回転軸33の上端部に磁石31が取り付けられている。
【0030】
そして、電動機32が起動されることで、回転軸33が軸心周りに回転し、磁石31が中央部を中心に回転する。すなわち、N極とS極が一平面内の円軌道上で移動するように、磁石31が回転する。
【0031】
また、ベース30内に配設された制御基板(図示せず)には、集音マイク(検知手段)4や赤外線探知装置が着脱自在に装着されている。この集音マイク4は、カラスKの鳴き声などを集音し、制御基板のマイコンでカラスKの鳴き声を検知・検出すると、電動機32を起動して上記のようにして磁石31を回転させて放電体2を放電させる。また、カラスKの鳴き声がなくなって所定時間が経過すると、電動機32つまり磁石31を停止させて放電体2からの放電を止めるようになっている。
【0032】
このような装置本体3つまり磁石31は、放電体2とは別体で、装置本体3と放電体2はそれぞれ任意の位置に配設可能となっている。また、ベース30に磁石やクリップなどを設けて、鉄塔などの外部部材に装置本体3を取り付けられるようにしてもよい。
【0033】
次に、このような構成の鳥獣忌避装置1の動作および、鳥獣忌避装置1による鳥獣忌避方法について説明する。
【0034】
まず、周囲環境などに応じて適正にカラスKを忌避できるように、放電体2と装置本体3を所望の場所に配設する。このとき、磁石31の回転によって放電体2が適正に放電するように、磁石31と放電体2との相対的な位置関係を調整し、装置本体3つまり磁石31の周辺に放電体2を配置する。次に、装置本体3のベース30に設けられた電源スイッチをオンする。
【0035】
そして、放電体2の周辺にカラスKが飛来してコミュニケーション手段などである鳴き声を発すると、鳴き声が集音マイク4で集音されてカラスKの飛来が検知され、電動機32が起動される。これにより、磁石31が回転して周辺に生じる磁場の変化により薄膜片22に電場が発生して放電体2が放電し、カラスKの帯電感覚を刺激する。
【0036】
以上のように、この鳥獣忌避装置1および鳥獣忌避方法によれば、放電を嫌がるカラスKなどの習性を利用して、放電体2を放電させることにより、本鳥獣忌避装置1の周辺にいるカラスKなどの帯電感覚を刺激する。これにより、カラスKなどが放電区域に侵入するのを防止、抑制したり、放電区域に留まることを防止、抑制したりすることが可能となる。このため、被害が予想される場所やその周辺において、本鳥獣忌避装置1による放電を行うことで、鳥獣による被害を効果的に防止、抑制することが可能となる。また、放電はカラスKなどの帯電感覚を刺激するものの、その気中伝達速度が速いため、カラスKなどは本鳥獣忌避装置1を認識、特定することができず、本鳥獣忌避装置1による忌避効果を持続することが可能となる。
【0037】
また、磁石31を回転させることで放電体2から放電を発生させるため、安全性が高い。すなわち、放電体2に直接電圧を印加して放電させる場合に比べて、周辺の人が感電するおそれが少なく、安全性を高めることが可能となる。さらに、放電体2は、導電性の薄膜片22が複数設けられただけであるため、構成が簡易で、授産施設で制作することが可能であるとともに、製作費や保守費などを低減することが可能となる。
【0038】
また、装置本体3つまり磁石31と放電体2とを任意の位置に配設可能なため、周囲環境や磁力などに応じて磁石31と放電体2を所望の位置に配設することで、放電体2から適正に放電させて、鳥獣を効果的に忌避することが可能となる。
【0039】
さらに、鳥獣を検知したとき、すなわち、鳥獣が現れたときにのみ磁石31が回転して放電体2から放電されるため、鳥獣に突発的な刺激を与えて忌避効果を向上させることが可能になるとともに、鳥獣が刺激に慣れるのを防いで忌避効果をより持続させることが可能となる。しかも、放電体2と地面とが電気的に接続されて放電体2からの放電効率が高められるため、鳥獣をより刺激して忌避することが可能となる。
【0040】
(実施の形態2)
図3は、この実施の形態に係る鳥獣忌避装置10を示す概略構成図である。この実施の形態では、放電体2の形状、構造が実施の形態1と異なり、この実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0041】
放電体2は、導電線がリング状に形成されたリング部材51と、導電線が直線状に形成された直線部材52と、が複数連結されて構成されている。すなわち、複数のリング部材51が同心上に上下に所定間隔に配設され、リング部材51の周りに複数の直線部材52が上下に延びて配設され、リング部材51と直線部材52とが連結されることで、円筒状(朝顔のリング支柱状)の組枠が形成されている。そして、この組枠に多数の薄膜片22が配設されて放電体2が構成されている。
【0042】
一方、装置本体3のベース30に各直線部材52の下端部が挿入、固定されて、放電体2と装置本体3とが一体的に組み付けられている。そして、このようにして組み付けられた状態で、放電体2つまり組枠の中央部内に磁石31が配設されている。ここで、磁石31の回転によって放電体2の薄膜片22が適正に放電するように、磁石31と放電体2つまり部材51、52との位置関係が設定されている。
【0043】
このような実施の形態によれば、放電体2と装置本体3とが一体的に組み付けられているため、取り扱いが容易で、一体である鳥獣忌避装置10を所望の場所に配置すればよい。このとき、磁石31と放電体2との位置関係が予め適正に設定、固定されているため、位置関係を調整することなく、放電体2から適正に放電して鳥獣を刺激、忌避することが可能となる。
【0044】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、薄膜片22がアルミ箔で構成されている場合について説明したが、アルミ箔による光の乱反射が好ましくない環境下に設置する場合には、アルミ箔の表面に低反射性のコーティングを施してもよい。また、アルミ箔に代えて、導電性の炭素繊維シートなどで薄膜片22を構成してもよい。さらに、検知手段が集音マイク4の場合について説明したが、近接センサやカメラ(画像認識手段)などで検知手段を構成してもよい。
【0045】
また、磁石31がその中央部周りに回転(自転)する場合について説明したが、その他の回転軌道であってもよい。例えば、放電体2の周りを磁石31が回転するようにしてもよく、磁石31の回転によって放電体2が放電すれば、どのような回転であってもよい。さらに、磁石31を複数設けてもよい。また、磁石31に代って放電体2を回転させてもよい。
【0046】
ところで、放電体2の形状は上記のものに限らず、また、全方向に放電せずに所定の方向にのみ放電するようにしてもよい。例えば、図4(a)に示すように、球状体の全表面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、前後左右上下の全方向に放電するようにしてもよい。また、図4(b)に示すように、環状体の外周面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、略一平面内において放射状に放電するようにしてもよい。また、図4(c)に示すように、球状体の上部の半球面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、上方向に放射状に放電するようにしてもよい。また、図4(d)に示すように、球状体の下部の半球面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、下方向に放射状に放電するようにしてもよい。
【0047】
また、球状体に薄膜片22が密に配設された部位と、疎に配設された部位とを有する放電体2とし、密に配設された部位から放射状に多くの放電を行い、疎に配設された部位から放射状にわずかな放電を行うようにしてもよい。さらに、図4(e)に示すように、円柱状体の端面に薄膜片22を配設し、薄膜片22の周囲を囲うように円筒状で放電遮断性のシールド部材23を配設し、円柱状体の端面に対向する方向のみに放電するようにしてもよい。
【0048】
このように、放電体2の形状や薄膜片22の配設位置、放電方向は、忌避したい場所や周囲環境などによって最適に設定すればよい。例えば、ある限られた場所(忌避対象箇所)だけにスポット的にカラスKを近づけたくない場合には、図4(e)に示す放電体2の薄膜片22を忌避対象箇所に向けて設置すればよい。この際、適正に放電体2が放電するように磁石31を配設して回転させればよい。
【符号の説明】
【0049】
1、10 鳥獣忌避装置
2 放電体
22 薄膜片
3 装置本体
31 磁石
32 電動機
33 回転軸
4 集音マイク(検知手段)
K カラス(鳥獣)
図1
図2
図3
図4