(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ゲートバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 3/18 20060101AFI20240404BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16K3/18 E
F16K51/02 B
(21)【出願番号】P 2024513375
(86)(22)【出願日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2023041746
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233745
【氏名又は名称】入江工研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】矢部 学
(72)【発明者】
【氏名】須賀 悠介
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/225844(WO,A1)
【文献】特開2021-134893(JP,A)
【文献】特表2018-525584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/18
F16K 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱の両側面に設けられた開口部を、前記弁箱内に配置された弁板で開閉するゲートバルブであって、
前記弁板に結合され、前記弁箱内で昇降及び傾倒可能に支持されたバルブロッドと、
前記弁箱外に設けられ、前記バルブロッドを所定ストローク昇降及び傾倒させる駆動機構と、
前記駆動機構のストローク途中に設けられ、圧縮空気の供給又は停止により前記バルブロッドの上昇を規制又は解除するストッパー機構と、を備え、
前記ストッパー機構は、前記バルブロッドを傾倒させる前記駆動機構の高さ位置を可変させることにより、前記バルブロッドの傾斜角度を変更して、前記弁板の押し付け力の強弱を付与するようにしたことを特徴と
し、
前記ストッパー機構は、前記バルブロッドのストローク方向と直交する水平方向にストッパーピンが前進又は後退して前記バルブロッドの上昇を規制又は解除する構造であり、エアピストンの制御によりアームの開閉角度を調節して、アーム先端のストッパーピンの高さ位置を可変する構造であることを特徴とするゲートバルブ。
【請求項2】
弁箱の両側面に設けられた開口部を、前記弁箱内に配置された弁板で開閉するゲートバルブであって、
前記弁板に結合され、前記弁箱内で昇降及び傾倒可能に支持されたバルブロッドと、
前記弁箱外に設けられ、前記バルブロッドを所定ストローク昇降及び傾倒させる駆動機構と、
前記駆動機構のストローク途中に設けられ、圧縮空気の供給又は停止により前記バルブロッドの上昇を規制又は解除するストッパー機構と、を備え、
前記ストッパー機構は、前記バルブロッドを傾倒させる前記駆動機構の高さ位置を可変させることにより、前記バルブロッドの傾斜角度を変更して、前記弁板の押し付け力の強弱を付与するようにしたことを特徴と
し、
前記ストッパー機構は、前記バルブロッドのストローク方向と直交する水平方向にストッパーピンが前進又は後退して前記バルブロッドの上昇を規制又は解除する構造であり、ロータリーアクチュエータの制御によりピストンロッドの回転角度を調節して、ピストンロッド先端のストッパーピンの高さ位置を可変する構造であることを特徴とするゲートバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置において使用され、二つのチャンバ間に設置される両面シール式のゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバルブとして、下記の特許文献1に記載された両方向ゲートバルブが知られている。このゲートバルブは、上下に独立に作動する第1、2ブレードを有し、第1ブレードの故障時、第2ブレードを作動して、移動通路の開閉を継続させながら第1ブレードの修理を可能にしたものである。また、第1ブレードを垂直及び水平移動させるL-モーションブロック及びムービングユニット各々に、第1~3ローラーを形成し、下部ハウジングの両側の内側面に各々の第1~3ローラーが挿入される回転ガイド溝、L-モーションブロック移動溝、ムービングユニット案内溝を形成して第1ブレードの正確な移動を可能にし、第2ローラーがL-モーションブロックの両側面に形成されたガイドリンクによって、L-モーションブロックの上下左右方向への移動時に、第1ブレードの正確な作動を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のゲートバルブによると、上下それぞれ独立的に作動する2枚のブレードを形成することで、第1ブレードが機械的欠陥によって作動しなくても、第2ブレードを作動して、第1、2移動通路を円滑に開閉させて、第1ブレードの修理やメンテナンスが行えるようになっている。ところが、このゲートバルブはブレードのシール動作時の押し付け力を調節することはできず、逆圧シール時にも耐えられるように常に強い押し付け力でシールしなければならない。このため、シール動作に伴うパッキンの摩耗や変形が起こりやすく、頻繁に修理や交換が必要になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シール動作時の弁板の押し付け力の強弱を付与することが可能なゲートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係るゲートバルブは、弁箱の両側面に設けられた開口部を、前記弁箱内に配置された弁板で開閉するゲートバルブであって、前記弁板に結合され、前記弁箱内で昇降及び傾倒可能に支持されたバルブロッドと、前記弁箱外に設けられ、前記バルブロッドを所定ストローク昇降及び傾倒させる駆動機構と、前記駆動機構のストローク途中に設けられ、圧縮空気の供給又は停止により前記バルブロッドの上昇を規制又は解除するストッパー機構と、を備え、前記ストッパー機構は、前記バルブロッドを傾倒させる前記駆動機構の高さ位置を可変させることにより、前記バルブロッドの傾斜角度を変更して、前記弁板の押し付け力の強弱を付与するようにしたことを特徴とし、前記ストッパー機構は、前記バルブロッドのストローク方向と直交する水平方向にストッパーピンが前進又は後退して前記バルブロッドの上昇を規制又は解除する構造であり、エアピストンの制御によりアームの開閉角度を調節して、アーム先端のストッパーピンの高さ位置を可変する構造であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るゲートバルブは、弁箱の両側面に設けられた開口部を、前記弁箱内に配置された弁板で開閉するゲートバルブであって、前記弁板に結合され、前記弁箱内で昇降及び傾倒可能に支持されたバルブロッドと、前記弁箱外に設けられ、前記バルブロッドを所定ストローク昇降及び傾倒させる駆動機構と、前記駆動機構のストローク途中に設けられ、圧縮空気の供給又は停止により前記バルブロッドの上昇を規制又は解除するストッパー機構と、を備え、前記ストッパー機構は、前記バルブロッドを傾倒させる前記駆動機構の高さ位置を可変させることにより、前記バルブロッドの傾斜角度を変更して、前記弁板の押し付け力の強弱を付与するようにしたことを特徴とし、前記ストッパー機構は、前記バルブロッドのストローク方向と直交する水平方向にストッパーピンが前進又は後退して前記バルブロッドの上昇を規制又は解除する構造であり、ロータリーアクチュエータの制御によりピストンロッドの回転角度を調節して、ピストンロッド先端のストッパーピンの高さ位置を可変する構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゲートバルブによれば、バルブロッドを傾倒させる駆動機構の高さ位置を可変させることにより、バルブロッドの傾斜角度を変更して、弁板の押し付け力の強弱を付与するようにしたので、両面シール構造において、同圧シール、逆圧シール、正圧シールに応じて適切な押し付け力でシールすることができる。このため、シール動作に伴うパッキンの摩耗や変形による修理や交換等のメンテナンスサイクルを延ばし、ゲートバルブの高寿命化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るゲートバルブの第1実施形態を示す外観斜視図。
【
図2】同ゲートバルブの全開時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図4】同ゲートバルブの同圧シール時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図6】同ゲートバルブの逆圧シール時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図8】同ゲートバルブの正圧シール時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図10】本発明に係るゲートバルブの第2実施形態を示す外観斜視図。
【
図11】同ゲートバルブの全開時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図13】同ゲートバルブの同圧シール時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図15】同ゲートバルブの逆圧シール時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図17】同ゲートバルブの正圧シール時の状態を示す断面図及び要部拡大図。
【
図19】同ゲートバルブのロータリーアクチュエータを示す断面図及び斜視図。
【
図20】同ゲートバルブのロータリーアクチュエータ(別例)を示す断面図及び斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のゲートバルブ1(1A)は、フラットパネルディスプレイや半導体基板を製造する装置において、真空と真空、あるいは真空と大気を隔離するための機械であって、ディスプレイや基板を製造する際に各種工程を隔離する用途に使用される。このゲートバルブ1(1A)は、いわゆる弁箱タイプの両面シール式ゲートバルブであって、扁平角型の弁箱2と、弁箱2の内部に収容された弁板3と、弁板3に結合されたバルブロッド4と、バルブロッド4を所定ストローク昇降及び傾倒動作させる駆動機構5と、バルブロッド4の上昇を規制又は解除するストッパー機構6を備えて構成されている。
【0014】
図3に示すように、弁箱2の左右両側の壁面には、基板を通過させるために細長い形状の開口部(第1の開口部7と第2の開口部8)が対向して設けられている。第1の開口部7の外壁面にはプロセスチャンバPCが接続され、第2の開口部8の外壁面にはトランスファーチャンバTCが接続される。そして、トランスファーチャンバTCから弁箱2を通過してプロセスチャンバPCへと搬送された基板は、ゲートバルブ1(1A)を閉じることで密閉された環境に保たれ、プロセスチャンバPCの室内で各種製膜のための熱、ガス、プラズマ等の処理が行われる。
【0015】
弁箱2の室内空間9には、開口部7,8を選択的に開閉するために一対の弁板3(第1の弁板10と第2の弁板11)が配置されている。第1の弁板10と第2の弁板11は、その外側面にそれぞれ第1の開口部7と第2の開口部8よりも一回り大きなサイズの弾性シール材として、Oリング12,13が嵌め込み固定されている。
【0016】
第1の弁板10と第2の弁板11は、ボルト14で固定することにより分割可能に結合されており、全体として、弁板面下部から弁板面上部に向かって緩やかに先細りとなるテーパ形状に成形されている。このように弁板3の弁板面が傾斜していることにより、シール時にOリング12,13が弁座に平行に(均等な力で)押し付けられるようになっている。また、第2の弁板11の中央には、ボルト14によってバルブロッド4が着脱可能に取り付けられており、バルブロッド4から弁板3を一式取り外したり、弁板3の片方(例えば第1の弁板10)だけを取り外したりすることが可能である。取り外した弁板3(10,11)は、弁箱2の天面を塞いでいるメンテナンスフランジ15を取り外して蓋を開けることにより、外部へと取り出して、表面のクリーニングやOリング12,13の交換等のメンテナンス作業を行うことができる。
【0017】
バルブロッド4は、弁箱2の底面を塞いでいるボンネットフランジ16の中央を貫通し、弁箱2の外部へと延設されている。バルブロッド4の中間位置には、バルブロッド4を支持し、その動きを案内するロッドガイド17が設けられている。また、ロッドガイド17とボンネットフランジ16との間には、バルブロッド4の周囲を覆うように溶接ベローズや成形ベローズ等の伸縮自在な金属製のベローズ18が取り付けられており、バルブロッド4が外部から完全に遮断されている。
【0018】
ロッドガイド17の上方には支点ローラー19が設けられており、弁箱2を支えるローラーガイド20に回転可能に支持されている。また、バルブロッド4の下端部には方向切換ローラー21が設けられている。方向切換ローラー21は、カム22に設けられた断面「く」の字形状に曲がったカム溝23に係合してスライド可能に支持されており、カム22の下端部にはカム22を支持するカムプレート24が一体に結合されている。また、カムプレート24とロッドガイド17との間にはコイルスプリング25が取り付けられており、カムプレート24の下端中央部には、駆動機構5として昇降用のエアシリンダ26のロッド27が連結されている。なお、カムプレート24の左右両端部の上に力点となる荷重受けローラー28が取り付けられ、ローラーガイド20に沿って昇降可能に支持されている。
【0019】
前記駆動機構5によりエアシリンダ26を駆動すると、カムプレート24に結合されたカム22を介してバルブロッド4が所定ストローク昇降動作し、バルブロッド4に装着された弁板3が弁箱2内の所定高さに移動して停止する。また、方向切換ローラー21がカム溝23の上端位置(中心)にある時にはバルブロッド4が弁箱2の中心に起立し、カム溝23の中間位置(左側)にある時にはバルブロッド4が支点ローラー19を軸に回転して右側に傾倒動作し、カム溝23の下端位置(右側)にある時にはバルブロッド4が支点ローラー19を軸に回転して左側に傾倒動作する。これにより、カム溝23の上端位置では
図3のようにバルブロッド4に装着された弁板3(10,11)が開口部7,8を両方開き、カム溝23の中間位置では
図5や
図7のように第1の弁板10が第1の開口部7を閉じ、カム溝23の下端位置では
図9のように第2の弁板11が第2の開口部8を閉じるように構成されている。
【0020】
ストッパー機構6は、エアシリンダ26のストローク途中に設けられており、圧縮空気の供給又は停止によりストッパーピン30が水平方向に前進又は後退して、バルブロッド4の上昇を規制又は解除する機能を有する。本実施形態では、このストッパー機構6として、駆動機構5の左右両側にエアピストン29を用いた開閉アーム式のストッパーピン30が設けられている。
【0021】
エアピストン29は、ピストンロッド31,31,…を左、中央、右の横一列に並べた多連構造からなり、それぞれシリンダ32にロッドカバー33を装着した密閉空間内に、パッキン34でシールされたピストン35を備えている。また、左右両側のエアピストン29には、密閉空間内にスプリング36で付勢されたピストンロッド31が収容され、ピストンロッド31の先端がロッドカバー33の中央を貫通し、外部に突出した構造になっている。密閉空間内は、ピストンロッド31に備わったピストン35によってヘッド側空間37とロッド側空間38に仕切り形成されており、ヘッド側空間37にはエア配管39(A,B,C)に接続された圧空供給口40が取り付けられている。
【0022】
ストッパーピン30は、ピン先端が高さの異なる当接面(低位置の第1当接面41と高位置の第2当接面42)を有する階段状に成形されており、ジョイント43を介して直線状のアーム44の上端に取り付けられている。アーム44の下端はジョイント45を介してピストンロッド31の先端に連結されており、ピストンロッド31とアーム44とストッパーピン30が一体化されたリンク機構を構成している。ストッパーピン30に対向するカムプレート24の上方には、ピン先端の位置に対応させて荷重受けローラー28が設置されている。なお、図示しないが、ストッパーピン30のピン先端に、振動低減手段として荷重受けローラー28との衝突時の衝撃を緩和するスリット加工やザグリ穴加工が施されていても良い。
【0023】
以上が本実施形態のゲートバルブ1(1A)の構造であるが、次にその動作について説明する。ゲートバルブ1(1A)において、
図2と
図3は全開時の状態、
図4と
図5は同圧シール時の状態、
図6と
図7は逆圧シール時の状態、
図8と
図9は正圧シール時の状態を示したものである。
【0024】
図2と
図3に示すように、ゲートバルブ1(1A)の運転停止時において、トランスファーチャンバTCとプロセスチャンバPCは大気開放されており、両チャンバは同圧である。このとき、駆動機構5は停止しており、バルブロッド4が下降し、方向切換ローラー21がカム溝23の上端位置(中心)にある。このため、バルブロッド4が弁箱2の中心に起立し、第1の弁板10と第2の弁板11がそれぞれ第1の開口部7と第2の開口部8よりも下方に降下した開弁(OPEN)状態である。この「OPEN」状態において、トランスファーチャンバTCから第2の開口部8と第1の開口部7を介してプロセスチャンバPCへと基板を通過させることができる。
【0025】
また、ストッパー機構6のエアピストン29では、エア配管39(A,B,C)からの圧縮空気の供給を停止しており、左右両側のピストンロッド31がスプリング36のばね力により中央に向かって押し付けられている。このため、ピストンロッド31に連結されたアーム44が垂直に起立した状態であり、アーム44の上端に取り付けられたストッパーピン30の先端がローラーガイド20の端面まで後退した状態になっている。したがって、カムプレート24の荷重受けローラー28がストッパーピン30の先端に衝突せず、ストッパー機能が解除されており、バルブロッド4はエアシリンダ27のストローク端まで上昇することが可能である。
【0026】
次に、
図4と
図5に示すように、ゲートバルブ1(1A)の通常運転時には、トランスファーチャンバTCとプロセスチャンバPCが同圧(大気と大気、または、真空と真空)状態でプロセスチャンバPC側のみをシールして密閉する。そのために、ストッパー機構6のエアピストン29において、
図4に示すように、左右両側のエア配管39(AとC)から圧縮空気を供給する。
【0027】
すると、左右両側のエアピストン29では、圧空供給口40からヘッド側空間37内へと圧縮空気が供給され、ピストンロッド31がスプリング36のばね力に抗して外側に押し出される。そして、ピストン35がロッドカバー33の内壁面に突き当たり、ピストンロッド31の先端がロッドカバー33の外壁面から最大量飛び出した状態になる。このため、ピストンロッド31に連結されたアーム44がジョイント45を起点にして最大傾斜角度(開閉角6度)で傾く。これにより、アーム44の上端に取り付けられたストッパーピン30の先端がバルブロッド4のストローク方向と直交する水平方向に前進し、ローラーガイド20の端面から第1当接面41まで飛び出した状態になる。
【0028】
ここで、駆動機構5のエアシリンダ26を駆動することにより、圧縮空気の力でカムプレート24全体が下から押し上げられ、コイルスプリング25を圧縮しながら、バルブロッド4はカムプレート24に結合されたカム22を介して所定ストローク上昇する。また、ロッドガイド17の支点ローラー19がローラーガイド20の溝上端に突き当たると、弁板3(10,11)が開口部7,8に対応する高さ位置まで移動する。このとき、エアシリンダ27はストロークを残している。
【0029】
そして、今度は方向切換ローラー21がカム溝23に沿って動き始め、シール動作を開始する。このとき、荷重受けローラー28がストッパーピン30の第1当接面41に衝突して引っ掛かり、方向切換ローラー21がカム溝23の中間位置(左側)に移動し、バルブロッド4を右側に傾倒動作させる。これにより、第1の弁板10が第1の開口部7に接合して、第1の開口部7を密閉した状態になり、シール動作が完了する。これが「同圧シール」動作である。
【0030】
次に、
図6と
図7に示すように、プロセスチャンバPC内のメンテナンス時には、トランスファーチャンバTCが真空、プロセスチャンバPCが大気であり、逆圧状態でプロセスチャンバPC側のみをシールして密閉する。そのために、ストッパー機構6のエアピストン29において、
図6に示すように、左右両側のエア配管39(AとC)からの圧縮空気の供給を停止し、中央のエア配管39(B)からのみ圧縮空気を供給する。
【0031】
すると、左右両側のエアピストン29では、ピストンロッド31がスプリング36のばね力により中央に向かって押し付けられる。しかし、中央のエアピストン29では、圧空供給口40からヘッド側空間37内へと圧縮空気が供給されるので、中央のエアピストン29のストローク分だけピストンロッド31がスプリング36のばね力に抗して外側に押し戻される。そして、ピストン35が密閉空間内の中間位置で止まり、ピストンロッド31の先端がロッドカバー33の外壁面から少量飛び出した状態になる。このため、ピストンロッド31に連結されたアーム44がジョイント45を起点にして先程よりも小さな傾斜角度(開閉角3度)で傾く。これにより、アーム44の上端に取り付けられたストッパーピン30の先端がバルブロッド4のストローク方向と直交する水平方向に前進し、ローラーガイド20の端面から第2当接面42の部分だけが飛び出した状態になる。
【0032】
ここで、方向切換ローラー21がカム溝23に沿って動き、シール動作を開始する。このとき、荷重受けローラー28がストッパーピン30の第2当接面42に衝突し、方向切換ローラー21がカム溝23の中間位置(左側)から少しだけ下がった位置まで移動し、バルブロッド4を更に右側に傾倒動作させる。これにより、第1の弁板10が第1の開口部7に先程よりも強い力で接合して、第1の開口部7を密閉した状態になり、シール動作が完了する。これが「逆圧シール」動作である。このように、ストッパーピン30の高さ位置を可変させることにより、方向切換ローラー21の高さ位置の違いによって、同圧シール時と逆圧シール時における第1の弁板10の押し付け力の強弱を付けている。
【0033】
最後に、
図8と
図9に示すように、ゲートバルブ1(1A)のメンテナンス時には、トランスファーチャンバTCが真空、プロセスチャンバPCが大気であり、正圧状態でトランスファーチャンバTC側のみをシールして密閉する。そのために、ストッパー機構6のエアピストン29において、
図8に示すように、すべてのエア配管39(A、B、C)からの圧縮空気の供給を停止する。これにより、左右両側のピストンロッド31がスプリング36のばね力で弾性復帰し、中央に向かって押し付けられた状態に戻る。このため、ピストンロッド31に連結されたアーム44が垂直に起立した状態になり、アーム44の上端に取り付けられたストッパーピン30の先端が水平方向に移動し、ローラーガイド20の端面まで後退した状態に戻る。
【0034】
ここで、エアシリンダ26の駆動により、圧縮空気の力でカムプレート24全体が下から押し上げられ、コイルスプリング25を圧縮しながら、バルブロッド4がカムプレート24に結合されたカム22を介して所定ストローク上昇する。このとき、カムプレート24の荷重受けローラー28がストッパーピン30の先端に衝突せず、バルブロッド4の規制が解除されているため、バルブロッド4はエアシリンダ26のストローク端まで上昇動作する。その際に、方向切換ローラー21がカム溝23に沿って動き始め、シール動作を開始する。このとき、方向切換ローラー21がカム溝23の下端位置(右側)に移動し、バルブロッド4を左側に傾倒動作させる。これにより、第2の弁板11が第2の開口部8に接合して、第2の開口部8を密閉した状態になり、シール動作が完了する。これが「正圧シール」動作である。
【0035】
この「正圧シール」状態において、弁箱2のメンテナンスフランジ15を取り外して蓋を開け、ボルト14を緩めて第1の弁板10をバルブロッド4から取り外せば、第1の弁板10を弁箱2の外部へ取り出すことができる。したがって、Oリング12,13に耐性を求める側を「逆圧シール」側とすることで、「正圧シール」状態でチャンバの気密性を保ちながら、第1の弁板10のクリーニングやOリング12,13の交換等のメンテナンス作業を行うことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のゲートバルブ1(1A)は、エアピストン29の制御によってアーム44の開閉角度を調節して、ストッパーピン30の位置を3段階に変更することが可能である。これにより、カム溝23内で方向切換ローラー21の位置を上端位置(中心)、中間位置(左側上)、中間位置(左側下)、下端位置(右側)に切り換えることが可能になる。したがって、(A)OPEN、(B)プロセスチャンバPC側同圧シール、(C)プロセスチャンバPC側逆圧シール、(D)トランスファーチャンバTC側正圧シールの4つの状態に対応することができ、両面シール構造において、片側シールの強弱を付与することができる。
【0037】
以上の実施形態では、ストッパー機構6としてエアピストン29の制御による開閉アーム式のストッパーピン30を採用したが、これに代えて、
図10に示すようなロータリーアクチュエータ50の電気制御又は空気制御による回転式のストッパーピン51を採用したゲートバルブ1(1B)としても良い。
【0038】
本実施形態のロータリーアクチュエータ50は、モータ52を備えた電動式の回転駆動機構であって、モータ52の出力軸53がピストンロッド54の凹部55に嵌め込まれて連結されている。ボディ56にロッドカバー57を装着した密閉空間内には、パッキン58でシールされたピストン59を備えており、ピストン59と一体化されたピストンロッド54が収容されている。ピストンロッド54はスプリング60で付勢され、その先端がロッドカバー57の中央を貫通し、外部に突出した構造になっている。密閉空間内は、ピストン59によってヘッド側空間61とロッド側空間62に仕切り形成されており、ヘッド側空間61にはエア配管63に接続された圧空供給口64が取り付けられている。
【0039】
ストッパーピン51は、
図19に示すように、ピストンロッド54の先端を90度折り曲げて、高さの異なる当接面(低位置の第1当接面65と高位置の第2当接面66)を有するL字型に成形されている。モータ52を駆動して出力軸53が回転すると、出力軸53に連結されたピストンロッド54が軸心周りに回転駆動し、ピストンロッド54の先端のストッパーピン51が一体に回転するように構成されている。なお、本実施形態では、カムプレート24の上面がストッパーピン51に衝突するが、ストッパーピン51のピン先端に、振動低減手段としてカムプレート24との衝突時の衝撃を緩和するスリット加工やザグリ穴加工が施されていても良い。
【0040】
以上が本実施形態のゲートバルブ1(1B)の構造であるが、次にその動作について説明する。ゲートバルブ1(1B)において、
図11と
図12は全開時の状態、
図13と
図14は同圧シール時の状態、
図15と
図16は逆圧シール時の状態、
図17と
図18は正圧シール時の状態を示したものである。
【0041】
図11と
図12に示すように、ゲートバルブ1(1B)の運転停止時において、ストッパー機構6のロータリーアクチュエータ50では、エア配管63からの圧縮空気の供給を停止しており、ピストンロッド54がスプリング60のばね力によりモータ52側に向かって押し付けられている。このため、ピストンロッド54に一体化されたストッパーピン51の先端がカムプレート24の側面よりも外側に後退した状態になっている。したがって、カムプレート24がストッパーピン51の先端に衝突せず、ストッパー機能が解除されており、バルブロッド4はエアシリンダ27のストローク端まで上昇することが可能である。
【0042】
次に、
図13と
図14に示すように、ゲートバルブ1(1B)の通常運転時には、ストッパー機構6のロータリーアクチュエータ50において、エア配管63から圧縮空気を供給する。これにより、圧空供給口64からヘッド側空間61内へと圧縮空気が供給され、ピストンロッド54がスプリング60のばね力に抗して外側に押し出される。そして、ピストン59がロッドカバー57の内壁面に突き当たり、ピストンロッド54の先端がロッドカバー57の外壁面から飛び出した状態になる。これにより、ピストンロッド54に一体化されたストッパーピン51の先端がバルブロッド4のストローク方向と直交する水平方向に前進し、カムプレート24の側面よりも内側まで飛び出した状態になる。また、モータ52を駆動して出力軸53が回転し、出力軸53に連結されたピストンロッド54が軸心周りに回転駆動し、ストッパーピン51は第1当接面65が垂直下向きになる位置まで回転する。
【0043】
ここで、駆動機構5のエアシリンダ26を駆動することにより、圧縮空気の力でカムプレート24全体が下から押し上げられ、コイルスプリング25を圧縮しながら、バルブロッド4はカムプレート24に結合されたカム22を介して所定ストローク上昇する。また、ロッドガイド17の支点ローラー19がローラーガイド20の溝上端に突き当たると、弁板3(10,11)が開口部7,8に対応する高さ位置まで移動する。
【0044】
そして、今度は方向切換ローラー21がカム溝23に沿って動き始め、シール動作を開始する。このとき、カムプレート24の上面がストッパーピン51の第1当接面65に衝突して引っ掛かり、方向切換ローラー21がカム溝23の中間位置(左側)に移動し、バルブロッド4を右側に傾倒動作させる。これにより、第1の弁板10が第1の開口部7に接合して、第1の開口部7を密閉した状態になり、シール動作が完了する。これが「同圧シール」動作である。
【0045】
次に、
図15と
図16に示すように、プロセスチャンバPC内のメンテナンス時には、モータ52を駆動して出力軸53が回転し、出力軸53に連結されたピストンロッド54が軸心周りに回転駆動し、ストッパーピン51は第1当接面65が90度横向きになり、第2当接面66が垂直下向きになる位置まで回転する。
【0046】
ここで、方向切換ローラー21がカム溝23に沿って動き、シール動作を開始する。このとき、カムプレート24の上面がストッパーピン51の第2当接面66に衝突し、方向切換ローラー21がカム溝23の中間位置(左側)から少しだけ下がった位置まで移動し、バルブロッド4を更に右側に傾倒動作させる。これにより、第1の弁板10が第1の開口部7に先程よりも強い力で接合して、第1の開口部7を密閉した状態になり、シール動作が完了する。これが「逆圧シール」動作である。このように、ストッパーピン51の高さ位置を可変させることにより、方向切換ローラー21の高さ位置の違いによって、同圧シール時と逆圧シール時における第1の弁板10の押し付け力の強弱を付けている。
【0047】
最後に、
図17と
図18に示すように、ゲートバルブ1(1B)のメンテナンス時には、ストッパー機構6のロータリーアクチュエータ50において、エア配管63からの圧縮空気の供給を停止する。これにより、ピストンロッド54がスプリング60のばね力で弾性復帰し、モータ52側に向かって押し付けられた状態に戻る。このため、ピストンロッド54に一体化されたストッパーピン51の先端が水平方向に移動し、カムプレート24の側面よりも外側に後退した状態に戻る。
【0048】
ここで、エアシリンダ26の駆動により、圧縮空気の力でカムプレート24全体が下から押し上げられ、コイルスプリング25を圧縮しながら、バルブロッド4がカムプレート24に結合されたカム22を介して所定ストローク上昇する。このとき、カムプレート24がストッパーピン51の先端に衝突せず、バルブロッド4の規制が解除されているため、バルブロッド4はエアシリンダ26のストローク端まで上昇動作する。その際に、方向切換ローラー21がカム溝23に沿って動き始め、シール動作を開始する。このとき、方向切換ローラー21がカム溝23の下端位置(右側)に移動し、バルブロッド4を左側に傾倒動作させる。これにより、第2の弁板11が第2の開口部8に接合して、第2の開口部8を密閉した状態になり、シール動作が完了する。これが「正圧シール」動作である。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のゲートバルブ1(1B)は、ロータリーアクチュエータ50の電気制御によりモータ52を駆動してピストンロッド54の回転角度を調節し、ストッパーピン51の位置を3段階に変更することが可能である。これにより、カム溝23内で方向切換ローラー21の位置を上端位置(中心)、中間位置(左側上)、中間位置(左側下)、下端位置(右側)に切り換えることが可能になる。したがって、(A)OPEN、(B)プロセスチャンバPC側同圧シール、(C)プロセスチャンバPC側逆圧シール、(D)トランスファーチャンバTC側正圧シールの4つの状態に対応することができ、両面シール構造において、片側シールの強弱を付与することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、ロータリーアクチュエータ50について電動式の回転駆動機構としたが、これに代えて、
図20に示すように空気式の回転駆動機構を採用することもできる。このロータリーアクチュエータ50は、ハウジング67内に回転軸68が収容されており、ハウジング67内の空間が回転軸68に一体化されたベーン69によって2室に仕切り形成されている。一方の給排気ポート70から室内に圧縮空気を給気し、他方の給排気ポート71から室外に排気すると、圧縮空気に押されたベーン69がハウジング67の内壁をシールしながら回転する。これにより、回転軸68に連結されたピストンロッド54が軸心周りに回転駆動し、ピストンロッド54の先端のストッパーピン51が一体に回転するように構成されている。このように、ロータリーアクチュエータ50の空気制御により、
図19の電気制御と同様に、ピストンロッド54の回転角度を調節し、ストッパーピン51の位置を3段階に変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
PC:プロセスチャンバ
TC:トランスファーチャンバ
1:ゲートバルブ
2:弁箱
3:弁板
4:バルブロッド
5:駆動機構
6:ストッパー機構
7:第1の開口部
8:第2の開口部
9:室内空間
10:第1の弁板
11:第2の弁板
12:Oリング
13:Oリング
14:ボルト
15:メンテナンスフランジ
16:ボンネットフランジ
17:ロッドガイド
18:ベローズ
19:支点ローラー
20:ローラーガイド
21:方向切換ローラー
22:カム
23:カム溝
24:カムプレート
25:コイルスプリング
26:エアシリンダ
27:ロッド
28:荷重受けローラー
29:エアピストン
30:ストッパーピン
31:ピストンロッド
32:シリンダ
33:ロッドカバー
34:パッキン
35:ピストン
36:スプリング
37:ヘッド側空間
38:ロッド側空間
39:エア配管
40:圧空供給口
41:第1当接面
42:第2当接面
43:ジョイント
44:アーム
45:ジョイント
50:ロータリーアクチュエータ
51:ストッパーピン
52:モータ
53:出力軸
54:ピストンロッド
55:凹部
56:ボディ
57:ロッドカバー
58:パッキン
59:ピストン
60:スプリング
61:ヘッド側空間
62:ロッド側空間
63:エア配管
64:圧空供給口
65:第1当接面
66:第2当接面
67:ハウジング
68:回転軸
69:ベーン
70:給排気ポート
71:給排気ポート
【要約】
【課題】シール動作時の弁板の押し付け力の強弱を付与することが可能なゲートバルブを提供する。
【解決手段】本発明に係るゲートバルブ1(1A)は、弁箱2の両側面に設けられた開口部7,8を、弁箱2内に配置された弁板3(10,11)で開閉するゲートバルブ1であって、弁板3に結合され、弁箱2内で昇降及び傾倒可能に支持されたバルブロッド4と、弁箱2外に設けられ、バルブロッド4を所定ストローク昇降及び傾倒させる駆動機構5と、駆動機構5のストローク途中に設けられ、圧縮空気の供給又は停止によりバルブロッド4の上昇を規制又は解除するストッパー機構6と、を備え、ストッパー機構6は、バルブロッド4を傾倒させる駆動機構5の高さ位置を可変させることにより、バルブロッド4の傾斜角度を変更して、弁板3の押し付け力の強弱を付与するようにした。
【選択図】
図2