(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 19/00 20060101AFI20240404BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240404BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20240404BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F25D19/00 510D
F04B39/00 102U
F04B39/12 101J
F25D19/00 510B
F25D23/00 305D
(21)【出願番号】P 2019128520
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】町田 典正
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-028355(JP,A)
【文献】実開平05-017479(JP,U)
【文献】特開2018-115818(JP,A)
【文献】特開2003-151024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 ~ 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱及び内箱を有する冷蔵庫本体と、
前記外箱及び前記内箱の間の領域に配置された発泡断熱材と、
前記内箱の内部に配置された蒸発器と、
前記外箱の外部に配置された圧縮機と、
前記蒸発器及び前記圧縮機の間を繋ぐサクションパイプと、
を備え、
前記サクションパイプが、前記圧縮機に接続される第1の金属パイプ、前記蒸発器に接続される第3の金属パイプ、並びに前記第1の金属パイプ及び前記第3の金属パイプに接続されて前記第1の金属パイプ及び第3の金属パイプを繋ぐ第2の金属パイプを含み、
前記第1の金属パイプ、前記第2の金属パイプ及び前記第3の金属パイプが、それぞれ一体的に形成されたパイプであり、
前記第1の金属パイプ及び前記第2の金属パイプの接続部、並びに前記第2の金属パイプ及び前記第3の金属パイプの接続部が発泡断熱材の中に位置し、
前記第1の金属パイプ及び前記第3の金属パイプが銅から形成され、前記第2の金属パイプがアルミニウムから形成されることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記第1の金属パイプ及び前記第2の金属パイプの接続部が、
前記第1の金属パイプが前記外箱及び前記内箱の間の領域に入る挿入口から5cm以上20cm以下の距離離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第1の金属パイプが前記外箱及び前記内箱の間の領域に入る挿入口において、前記第1の金属パイプの外周にクッション材が巻き付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
異種金属で接合されたサクションパイプを備える冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫の圧縮機に接続されるサクションパイプに用いられる材料に関し、コスト低減のため、銅製のパイプからアルミニウム製などのパイプに変更することが試みられてきた。特許文献1には、サクションパイプにアルミニウムを用いる冷蔵庫が記載されている。しかし溶接性や接合強度を考慮すると、圧縮機と接合部分及びその近傍については、銅製パイプを用いる必要があるため、アルミニウム製パイプに銅製パイプを接合したサクションパイプを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷蔵庫の組み立て時において、凝縮機等の機械室に配置された機器との干渉を避ける取り回しのため、サクションパイプを一時的に曲げる必要がある。このため、アルミニウム製パイプと銅製パイプとの接合部が損傷する可能性がある。さらに稼働時における圧縮機の振動で接合部が損傷する可能性がある。
【0005】
本発明は、機械室での取り回しのため、曲げ作業を行っても損傷する可能性が低く、振動にも強い低コストのサクションパイプを備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵庫は、
外箱及び内箱を有する冷蔵庫本体と、
前記外箱及び前記内箱の間の領域に配置された発泡断熱材と、
前記内箱の内部に配置された蒸発器と、
前記外箱の外部に配置された圧縮機と、
前記蒸発器及び前記圧縮機の間を繋ぐサクションパイプと、
を備え、
前記サクションパイプが、前記圧縮機に接続される第1の金属パイプ、及び前記第1の金属パイプに接続される第2の金属パイプを含み、
前記第1の金属パイプ及び前記第2の金属パイプの接続部が前記発泡断熱材の中に位置することを特徴とする。
【0007】
第1の金属パイプ及び第2の金属パイプの接続部が発泡断熱材の中に位置するので、冷蔵庫の組み立て時における機械室での取り回しのため、曲げ作業を行っても損傷する可能性が低く、圧縮機等による振動にも強い低コストのサクションパイプを備えた冷蔵庫を提供できる。
【0008】
また、本発明は、前記第1の金属パイプが銅から形成され、前記第2の金属パイプがアルミニウムから形成されることを特徴とする。
【0009】
第2の金属パイプがアルミニウムから形成されることで、安価な部品を提供できる。第1の金属パイプが第2の金属パイプより剛性の高い銅を含む金属から形成されることで、圧縮機との接合の信頼性を高めることができる。
【0010】
また、本発明は、前記第1の金属パイプが前記外箱及び前記内箱の間の領域に入る挿入口において、前記第1の金属パイプの外周にクッション材が巻き付けられていることを特徴とする。
【0011】
挿入口において、第1の金属パイプの外周に振動防止のクッション材を設けることで、曲げや振動に強いサクションパイプを実現できる。
【0012】
また、本発明は、前記接続部が、前記第1の金属パイプが前記外箱及び前記内箱の間の領域に入る挿入口から5cm以上20cm以下の距離離れた位置に配置されていることを特徴とする。
【0013】
このような位置に接続部を配置することで、コスト低減とともに、曲げや振動に強いサクションパイプを実現できる。
【0014】
また、本発明は、前記サクションパイプが、一端が前記蒸発器に接続され、他端が前記第2の金属パイプに接続される第3の金属パイプを含み、前記第2の金属パイプ及び前記第3の金属パイプの接続部が前記発泡断熱材の中に位置することを特徴とする。
【0015】
第2の金属パイプと第3の金属パイプの接続部を発泡断熱材の中に配置することで、蒸発器側においても、取り回しのための曲げ作業におけるサクションパイプの損傷の可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、機械室での取り回しのため、曲げ作業を行っても損傷する可能性が低く、振動にも強い低コストのサクションパイプを備えた冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫の概観図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫本体の背面側下部を横側から見た概略断面図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫本体の背面側下部を背面横側から見た概略断面図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫のサクションパイプを設置した様子を示す図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫のサクションパイプの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための様々な実施の形態を、図面を参照して説明する。要点の説明または理解の容易性を考慮して、異なる図面で便宜上符号を同一にして示す。
【0019】
(冷蔵庫の全体の構成)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101の概観図である。
図1を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101の全体の構成を説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の1つの実施形態の冷蔵庫101は、その内部に食品等の貯蔵ができる冷蔵庫本体103を備える。冷蔵庫本体103は、その前方の開口を開閉する扉105、107を備える。扉105は冷蔵室を開閉し、扉107は冷凍室を開閉する。
【0021】
(本発明のサクションパイプの説明)
図2は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫本体103の背面側下部を横側から見た概略断面図である。
図3は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫本体103の背面側下部を背面横側から見た概略断面図である。
図2及び3を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101のサクションパイプ119を説明する。
【0022】
図2に示すように、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫本体103は、外箱109と内箱111とを備える。外箱109と内箱111との間の領域131は、発泡断熱材113を備える。内箱111の内部には、蒸発器115を備える。また、外箱109の外部は、圧縮機117を備える。圧縮機117の吐出口は、凝縮器118、図示しない毛細管を介して、蒸発器115と流体連通している。
【0023】
図2に示すように、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫本体103では、圧縮機117吸入口135は、サクションパイプ119により、蒸発器115の戻り口と流体連通している。
【0024】
図3に示すように、サクションパイプ119は、圧縮機117に接続される第1の金属パイプ121、及び第1の金属パイプ121に接続される第2の金属パイプ123を含み、第1の金属パイプ121及び第2の金属パイプ123の第1の接続部127が発泡断熱材113の中に位置する。
【0025】
第1の金属パイプ121は、第2の金属パイプ123より剛性の高い、例えば銅から形成される。第1の金属パイプ121は、外箱109の外部の領域133、すなわち機械室で取り回されて圧縮機117に接続される。
【0026】
第1の金属パイプ121は、直接圧縮機117に接続されるのではなく、吸入口135と接続される。第1の金属パイプ121は、外箱109と内箱111の間の領域131に入る挿入口で発泡断熱材113を封止する封止体137により固定される。
【0027】
図3に示すように、外箱109と内箱111の間の領域131に入る挿入口すなわち封止体137から、圧縮機117の間にファン116と凝縮器118が設置される。そのため、サクションパイプ119は、ファン116と凝縮器118を避けるように、第1の金属パイプ121を一時的に曲げて、圧縮機117に繋いで接続する必要がある。
【0028】
ここでは、封止体137と圧縮機117の間にファン116と凝縮器118が設置される例を示したが、封止体137と圧縮機117の間にファン116のみが設置されてもよい。その場合もファン116を避けるため第1の金属パイプ121を一時的に曲げる必要がある。また、封止体137と圧縮機117の間にファン116と凝縮器118が設置されなくてもよい。その場合も第1の金属パイプ121を圧縮機117に接続するため、第1の金属パイプ121を一時的に曲げる必要がある。
【0029】
第2の金属パイプ123は、第1の金属パイプ121より安価な例えばアルミニウムで形成される。
【0030】
第1の接続部127は、第1の金属パイプ121と第2の金属パイプ123を例えば電気溶接で接続する。また、第1の接続部127は、コネクタなどの接合部品により接続されてもよい。
【0031】
第1の接続部127は、外箱109と内箱111の間の領域131、すなわち、発泡断熱材113に配置される。この第1の接続部127は、第1の金属パイプ121が外箱109及び内箱111の間の領域131に入る挿入口から5cm以上20cm以下の距離離れた位置に配置されている。
【0032】
このように、第1の接続部127が発泡断熱材113の中にあることにより、機械室での取り回しのため、曲げ作業を行っても損傷する可能性が低くできる。また、第1の接続部127が圧縮機117から離れているので、振動に強いサクションパイプ119が得られる。
【0033】
また、コスト削減のためにはアルミニウムの長さを長く、すなわち、挿入口近くに第1の接続部127を配置する必要がある。しかしながら、曲げ作業での損傷や振動を考えると、第1の接続部127が第1の金属パイプ121が外箱109及び内箱111の間の領域131に入る挿入口から離れている方がよい。
【0034】
したがって、そのバランスをとって、第1の接続部127が挿入口から5cm以上20cm以下の距離離れた位置に配置されていることがよい。このようにすることで、コスト低減とともに、曲げや振動に強いサクションパイプ119を実現できる。
【0035】
(サクションパイプの配置及びクッション材について)
図4は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101のサクションパイプ119を設置した様子を示す図である。
図4を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101のサクションパイプ119の配置について説明する。
【0036】
図4に示すように、第1の金属パイプ121が外箱109及び内箱111の間の領域131に入る挿入口は、冷蔵庫本体103の背面で、かつ側面に沿った領域に形成される。外箱109の外部の領域133で、第1の金属パイプ121が曲げて取り回され、ここでは図示しない圧縮機117に接続される。
【0037】
このような位置に挿入口を設けることで、冷蔵庫101の組み立て時において機械室での取り回しのため曲げ作業を行ってもサクションパイプ119が損傷する可能性が低くなる。また、挿入口が壁に近くなるので、圧縮機117等の振動に強くなる。
【0038】
また、
図4を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101のサクションパイプ119の封止体137について説明する。
【0039】
図4に示すように、サクションパイプ119は、第1の金属パイプ121が外箱109及び内箱111の間の領域131に入る挿入口において、第1の金属パイプ121の外周に封止体137としてクッション材が巻き付けられている。このようにすることで、曲げや振動に強いサクションパイプ119を実現できる。
【0040】
(蒸発器とサクションパイプの接続)
図2を参照しながら、サクションパイプ119と蒸発器115の接続を説明する。サクションパイプ119は、蒸発器115と接続する側に第2の金属パイプ123と接続された第3の金属パイプ125を備える。すなわち、第3の金属パイプ125は、一端が蒸発器115と接続され、他端が第2の金属パイプ123と接続される。
【0041】
第3の金属パイプ125は、銅で形成される。第2の接続部129は、第2の金属パイプ123と第3の金属パイプ125を例えば電気溶接で接続する。また、第2の接続部129は、コネクタなどの接合部品により接続されてもよい。
【0042】
第2の接続部129は、発泡断熱材113の中に位置する。このようにすることで第2の接続部129が発泡断熱材113に覆われ、取り回しのための曲げ作業におけるサクションパイプ119の損傷の可能性を低減できる。
【0043】
また、蒸発器115からある程度離れた位置に第2の接続部129が配置されるため、蒸発器115と第3の金属パイプ125を溶接で接続する際に熱が第2の接続部129に伝わらないので、接続が熱膨張によって破壊されることを防ぐ。
【0044】
(サクションパイプの作製方法)
図5は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101のサクションパイプ119の製造方法を示すフローチャートである。
図5を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫101のサクションパイプ119の製造方法を説明する。
【0045】
<ステップ601>
最初に、直線状のサクションパイプ119を用意する。サクションパイプに119は、第1の金属パイプ121と第2の金属パイプ123が接続され、第2の金属パイプ123と第3の金属パイプ125が接続されている。
【0046】
<ステップ603>
次に、冷蔵庫101に配置される形にサクションパイプ119を曲げる。
【0047】
<ステップ605>
その後、サクションパイプ119を圧縮機117及び蒸発器115に溶接して冷蔵庫101を組み立てる。
図3に示すように、サクションパイプ119は、蒸発器115から圧縮機117の間をつなげるように配置される。そのときサクションパイプ119の挿入口から機械室側に出た領域は、凝縮器118等の機械室の部材との干渉を避けるため、一時的に曲げる必要がある。そして、サクションパイプ119を圧縮機117及び蒸発器115に接続する。
【0048】
<ステップ607>
最後に内箱と外箱の間の領域で、サクションパイプ119の周りの発泡断熱材を発泡させて冷蔵庫101が完成する。
【0049】
本発明は、機械室での取り回しのため、曲げ作業を行っても損傷する可能性が低く、振動にも強い低コストのサクションパイプ119を備えた冷蔵庫101を提供できる。
【0050】
本発明により、第1の金属パイプ121及び第2の金属パイプ123の第1の接続部127が発泡断熱材113の中に位置するので、冷蔵庫101の組み立て時における機械室での取り回しのため、曲げ作業を行っても損傷する可能性が低く、圧縮機117等による振動にも強い低コストのサクションパイプを備えた冷蔵庫101を提供できる。
【0051】
本発明は、第2の金属パイプ123がアルミニウムから形成されることで、安価な部品を提供できる。また、本発明は、第1の金属パイプ121が第2の金属パイプ123より剛性の高い銅を含む金属から形成されることで、圧縮機117との接合の信頼性を高めることができる。
【0052】
本発明は、挿入口において、第1の金属パイプ121の外周に振動防止のクッション材を設けることで、曲げや振動に強いサクションパイプ119を実現できる。
【0053】
本発明は、挿入口から5cm以上20cm以下の距離離れた位置に第1の接続部127を配置することで、コスト低減とともに、曲げや振動に強いサクションパイプ119を実現できる。
【0054】
本発明は、第2の金属パイプ123と第3の金属パイプ125の第2の接続部129を発泡断熱材113の中に配置することで、蒸発器115側においても、取り回しのための曲げ作業におけるサクションパイプ119の損傷の可能性を低減できる。
【0055】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、冷蔵庫、特に安価なアルミニウムをサクションパイプに用いた冷蔵庫に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
101 冷蔵庫
103 冷蔵庫本体
105 扉
107 扉
109 外箱
111 内箱
113 発泡断熱材
115 蒸発器
116 ファン
117 圧縮機
118 凝縮器
119 サクションパイプ
121 第1の金属パイプ
123 第2の金属パイプ
125 第3の金属パイプ
127 第1の接続部
129 第2の接続部
131 外箱と内箱の間の領域
133 外箱の外部の領域
135 吸入口
137 封止体