(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】価値ベースの支払いのために医師が質の基準を達成するのを支援する患者向けモバイル技術
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240404BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2019564398
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018018428
(87)【国際公開番号】W WO2018152366
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500387560
【氏名又は名称】ヒューメトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】エクスパートン,ベッティナ
(72)【発明者】
【氏名】バロウ,クリストファー ランドルフ
【審査官】木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534494(JP,A)
【文献】国際公開第2017/004438(WO,A1)
【文献】特開2009-136456(JP,A)
【文献】特開2003-099541(JP,A)
【文献】特開2003-178142(JP,A)
【文献】特表2009-523469(JP,A)
【文献】特表2008-541281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療管理システムを用いて医療サービスを管理する方法であって、
前記治療管理システムが、閉ループ制御システムにおいて、患者に接続された少なくとも1つの機器を制御する患者モバイル通信デバイスから治療管理計画に関する測定値を送信されるように構成され、
前記患者モバイル通信デバイスが、前記少なくとも1つの機器および/または前記患者に接続された1以上の医療センサを監視するように構成され、
前記少なくとも1つの機器が、前記患者モバイル通信デバイスによって制御されるインスリンポンプ、酸素源、または持続的気道陽圧装置を有しており、前記治療管理システムによって提供された前記治療管理計画にしたがって動作するように構成されている方法において、
当該方法が、
前記処理システムによって、前記患者についての血圧、血糖、投与したインスリン、酸素、または気道圧力を示す測定値を、前記1以上の医療センサまたは前記少なくとも1つの機器から、前記患者モバイル通信デバイスを介して受信するステップと、
前記測定値を用いて前記患者についての血圧、血糖、投与したインスリン、酸素、または気道圧力の変化が生じたときに、前記処理システムが、治療管理計画を修正し、修正された治療管理計画によって前記患者モバイル通信デバイスを更新して、前記少なくとも1つの機器を修正された治療管理計画にしたがって動作するように再設定するステップと、
前記処理システムによって前記患者モバイル通信デバイスにアプリケーションを提供して、1以上の医療の質の指標を用いて医療の質の情報を生成するように前記患者モバイル通信デバイスを設定するステップであって、前記医療の質は医療サービスの提供者によって患者に提供されるものであるステップと、
前記処理システムによって、前記患者モバイル通信デバイスから前記1以上の医療の質の指標に対応する情報を無線で受信するステップと、
前記処理システムによって、前記医療の質の情報を質追跡システムに報告するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記治療管理計画が前記処理システムによって管理されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法が、さらに、
前記処理システムによって、前記1以上の医療センサまたは前記少なくとも1つの機器から受信した前記測定値に基づいて、前記治療管理計画を修正するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記1以上の医療センサまたは前記少なくとも1つの機器から受信した測定値が、前記患者モバイル通信デバイスによって前記治療管理システムの前記処理システムに自動的に中継されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法が、さらに、
前記処理システムによって、前記患者モバイル通信デバイスを介して、患者の病状に関する1以上の更新を受信するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記病状に関する更新が、前記患者モバイル通信デバイスによって自動的に定期的に送信されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法が、さらに、
前記処理システムによって、前記患者モバイル通信デバイスから医療の質の情報を受信するステップを含み、
前記医療の質の情報が、患者モバイル通信デバイスによって患者に通知されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記医療の質の情報が、医療診断を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記医療の質の情報が、医薬品に関連することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、
前記医療の質の情報が、前記患者に対応する治療データに関連することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法が、さらに、
アプリケーションによって、前記患者モバイル通信デバイスが前記患者に薬を服用するように警告するように設定するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法が、さらに、
アプリケーションによって、前記患者モバイル通信デバイスが、医療の質の指標に関連する、1または複数の疾患、薬、検査、処置または生理学的データを識別するように設定するステップと、
1または複数の疾患が発生したときに、前記アプリケーションによって、前記患者モバイル通信デバイスが、前記患者に医療アドバイスを求めるように警告するように設定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法が、さらに、
前記アプリケーションによって、前記患者モバイル通信デバイスが、医療の質の指標に関連する、1または複数の疾患、薬、検査、処置または生理学的データを識別するように設定するステップと、
前記アプリケーションによって、前記患者モバイル通信デバイスが、1または複数の疾患、薬、検査、処置または生理学的データに関連する医療の質の目標を満たすために提供者がとるべき特定の対策を前記患者に警告するように設定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
前記処理システムによって、前記医療の質の情報を質追跡システムに報告するステップが、
前記処理システムによって、電子医療記録を含む情報を提供者デバイスに転送するステップと、
前記処理システムによって、前記患者モバイル通信デバイスによって維持される患者メタデータに、提供者デバイスへの情報の転送を特徴付ける情報を記録するステップと、
前記処理システムによって、前記患者メタデータを報酬サーバに送信するステップと、を含み、
前記報酬サーバが、医療提供者への電子医療記録の1または複数の転送に基づいて、前記患者に対する経済的利益を計算するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記報酬サーバが、前記電子医療記録の送信に基づいて、前記患者に対する経済的利益を計算するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法が、さらに、
前記処理システムによって、前記電子医療記録をデコードして、医療提供者により実行された1または複数の処置を識別するステップと、
前記処理システムによって、前記患者メタデータに前記1または複数の処置を記録するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医師が特定の医療の質の指標を満たして誘因価ベースの支払いを受け取るのを支援するために、患者のユーザに対する個人向け医療通知を生成するモバイルコンピューティングデバイスの患者による使用に関する。
【0002】
[優先権主張]
本出願は、2017年2月15日に米国特許庁に出願された仮特許出願第62/459,595号、並びに、2017年12月12日に米国特許庁に出願された仮特許出願第62/597,932号に対する優先権および利益を主張するものであり、これら出願の全内容は、すべての該当する目的のために、以下に完全に記載されているかのように、引用により本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
世界中で医療の継続的なコスト上昇に伴い、公的および民間の医療の支払者は、出来高払い制の医療から価値ベースの支払モデルに移行しつつある。これらの新しい医療モデルにより、医師と医療組織は、(不要な検査および治療を注文するリスクのある)提供するサービスの量に対してではなく、患者に提供する医療の価値または質に対して、支払いを受けている。米国では、連邦政府が、Accountable Care Organizations(ACO)、Medicare Access and CHIP Reauthorization Act(MACRA)などによるメディケアプログラムの受益者や、21st Century Cures Actによる一般人に対する価値ベースの支払いを管理するための新しいポリシーおよび規制基準を規定している。英国では、National Health Services(NHS)がQuality Outcomes Framework(QOF)を使用して、一般開業医(GP)が特定の質基準を満足して報告する場合に、年次の奨励金の支払いを行っている。フランスでは、ROSP(Remunerationsur Objectives deSantePublique)と呼ばれる同様のシステムが、使用され、一般開業医が予め規定された質基準を満足する場合に、年末の奨励金の支払いが一般開業医に与えられている。
【0004】
医療提供者への奨励金を促進する品質指標の多くは、慢性疾患を有する患者の医療に関連している。それらの慢性疾患の治療は、診療所だけでなく、診療所の外や、日常生活中に患者の自宅でも行われる。患者は、慢性疾患を最適に管理するために、医師が指定した治療を順守または遵守するだけでなく、疾患に関連する様々な生活ファクタおよび様々な医療提供者によるヘルスケアを時間をかけて定期的に管理する必要もある。そのため、患者に医療を提供する際に予め規定された医療の質の指標を満たすために、医師は、患者の治療に対する遵守と、適切な診断のために患者との効果的かつ緊密なコミュニケーションに頼り、治療の進行とその有効性を監視する。医療提供者は、それらの品質の指標を最適に達成および報告してそれらの奨励金を受け取るために、電子医療記録システム(EMR)などの医療情報技術(HIT)システムを使用して、医療の質の報告プロセスに沿って、それらを導くようにしている。しかしながら、殆どの場合、これらのEMRには、治療に対する患者の遵守、治療の進捗状況に関する患者生成情報、および患者が受けた治療の有効性と質を示す他の患者生成データは含まれていない。これは、特に慢性疾患に苦しむ患者に当てはまるものであり、そうした患者の医療の質は、治療の遵守、ライフスタイルの変更、および自宅での時間をかけた日常的なセルフケアに依存する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示される特定の態様は、提供者、患者および支払者の間の情報の流れを改善して、医療受容者にとって費用対効果が高く、より的を絞った治療を確保することができる。
【0006】
本開示の様々な態様において、電子医療記録を管理する方法は、患者モバイル通信デバイスのユーザと医療提供者との間の遣り取り中に患者モバイル通信デバイスのユーザの身元を認証するステップと、無線通信インターフェースを介して提供者の身元を認証する情報を受信するステップと、複数のソースから患者モバイル通信デバイスのユーザに関連付けられた電子医療記録を照合するステップと、患者の身元を認証する情報の受信に応答して、電子医療記録の一部を含む情報を提供者デバイスに転送するステップと、患者モバイル通信デバイスが保持する患者メタデータに、提供者デバイスへの情報転送を特徴付ける情報を記録するステップと、患者メタデータを報酬サーバに送信するステップとを含む。報酬サーバは、医療提供者との間の電子医療記録の1または複数の転送に基づいて、ユーザに対する経済的利益を計算するように構成される。
【0007】
一態様では、この方法は、患者モバイル通信デバイスのユーザに関連付けられた電子医療記録に対する1または複数の更新を受信するステップと、更新された電子医療記録を複数のソースのうちの少なくとも1つに送信するステップとを含む。報酬サーバは、更新された電子医療記録の送信に基づいてユーザへの経済的利益を計算するように構成される。この方法は、更新された電子医療記録をデコードして、医療提供者によって実行された1または複数の処置を特定するステップと、患者メタデータに1または複数の処置を記録するステップとを含むことができる。更新された電子医療記録のデコードには、医薬品、診断、臨床検査、医療提供者、処置、予防接種または個々の医療専門家についての国際または国内の標準化された健康データコードリストのデコードが含まれる。
【0008】
一態様では、この方法は、GPS位置サービスを使用して、患者モバイル通信デバイスのユーザと医療提供者との間の遣り取りに関連する地理的位置を自動的に取得するステップと、患者メタデータに地理的位置を記録するステップとを含む。
【0009】
様々な態様では、医療サービスを管理する方法は、患者によって操作されるモバイル通信デバイスにより患者メタデータが生成されたときに、患者と医療提供者との間の遣り取りに関連する患者メタデータを受信するステップと、患者と医療提供者との間の遣り取りの間に、患者に関連付けられた電子医療記録が医療提供者に対して又は医療提供者から転送されたことを患者メタデータから判定するステップと、電子医療記録の転送に基づいてユーザに対する経済的利益を計算するステップとを含む。
【0010】
一態様では、患者メタデータが、電子医療記録に対する1または複数の更新が患者によって操作されるモバイル通信デバイスに送信されたことを特定する。この方法は、1または複数の更新の転送に基づいて、ユーザへの経済的利益を計算するステップを含むことができる。この方法は、患者メタデータをデコードして、医療提供者によって実行される1または複数の処置を特定するステップと、医療費請求システムに対する1または複数の処理を特定するステップとを含むことができる。更新された電子医療記録のデコードには、医薬品、診断、医療提供者、臨床検査、処置、予防接種または個々の医療専門家についての国際または国内の標準化された健康データコードリストのデコードが含まれる。
【0011】
一態様では、この方法は、医療提供者によって操作されるコンピューティングデバイスにより提供者メタデータが生成される場合に、患者と医療提供者との間の遣り取りに関連する提供者メタデータを受信するステップと、提供者メタデータが電子医療記録の転送を記録するときに、医療提供者に対する経済的利益を計算するステップとを含む。提供者メタデータは、電子医療記録への1または複数の更新が、医療提供者によって、患者が操作するモバイル通信デバイスに送信されたことを特定することができる。この方法は、1または複数の更新の転送に基づいて、医療提供者への経済的利益を計算するステップを含むことができる。この方法は、患者メタデータと医療提供者メタデータとの間の通信に基づいて患者と医療提供者との間の遣り取りの特性評価を生成するステップと、医療費請求システムに遣り取りの特性評価を提供するステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、処理システムを採用する装置のハードウェア実装の一例を示している。
【
図2】
図2は、本明細書に記載の特定の態様に係る電子記録配信システムの一例を示している。
【
図3】
図3は、本明細書に記載の特定の態様に係る、患者と医師との間の電子健康記録の流れを示している。
【
図4】
図4は、本明細書に記載の特定の態様に係る、クライアントデバイスと提供者デバイスとの間の近接交換の第1の例を示している。
【
図5】
図5は、本明細書に記載の特定の態様に係る、近接交換に関連するEHRメタデータ生成の特定の態様を示している。
【
図6】
図6は、本明細書に記載の特定の態様に従って、安全なEHR交換を提供するとともに、EHRメタデータを処理することができるシステムの一例を示している。
【
図7】
図7は、本明細書に記載の特定の態様に従ってデプロイされたシステムのユーザへの医療記録の配信の一例を示している。
【
図8】
図8は、患者と医療提供者との間の遣り取りを示している。
【
図9】
図9は、本明細書に記載の特定の態様に従って医療の遣り取りを管理する閉ループ制御機構を示している。
【
図10】
図10は、本明細書に記載の特定の態様に従って提供される閉ループ制御機構を実行するように構成されたシステムを示している。
【
図11】
図11は、本明細書に記載の特定の態様に従って提供される閉ループ制御機構を実行するプロセスを示している。
【
図12】
図12は、本明細書に記載の特定の態様に従って構成される処理回路を採用する装置の一例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本明細書に記載の特定の態様に係る医療記録交換の特定の態様を示すフローチャートを含む。
【
図14】
図14は、本明細書に記載の特定の態様に係る特定の機能を実行するように構成された処理システムを採用する装置のハードウェア実装の第1の例を示している。
【
図15】
図15は、本明細書に記載の特定の態様に従って含まれる自動化された医療記録交換の特定の態様を示すフローチャートを含む。
【
図16】
図16は、本明細書に記載の特定の態様に係る特定の機能を実行するように構成された処理システムを採用する装置のハードウェア実装の第2の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成を説明することを意図しており、本明細書に記載の概念が実施され得る唯一の構成を示すことを意図したものではない。詳細な説明には、様々な概念の完全な理解を提供するための具体的な詳細が含まれている。しかしながら、それらの概念が具体的な詳細なしで実施できることは当業者には明らかであろう。時には、そのような概念を不明瞭にしないために、周知の構造および構成要素をブロック図の形式で示している。
【0014】
ここで、記録管理システムのいくつかの態様を、様々な装置および方法を参照して提示する。これらの装置および方法は、以下の詳細な説明で述べるとともに、様々なブロック、モジュール、コンポーネント、回路、ステップ、プロセス、アルゴリズムなど(まとめて「要素」と称する)によって、添付図面に示される。これらの要素は、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェアまたはそれらの任意の組合せを使用して実装することができる。そのような要素がハードウェアとして実装されるか又はソフトウェアとして実装されるかは、特定のアプリケーションとシステム全体に課される設計上の制約に依存する。
【0015】
例として、要素、または要素の任意の部分、または要素の任意の組合せは、1または複数のプロセッサを含む「処理システム」で実装されるものであってもよい。プロセッサの例には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、状態機械、ゲートロジック、ディスクリートハードウェア回路、およびこの開示全体に記載の様々な機能を実行するように構成されたその他の適切なハードウェアが含まれる。処理システムの1または複数のプロセッサはソフトウェアを実行することができる。ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語などの何れかで呼ばれても、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プロシージャ、ファンクションなどを意味するものとして広く解釈される。ソフトウェアは、コンピュータ可読媒体に常駐する場合がある。コンピュータ可読媒体は、例として、磁気記憶装置(例えば、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストリップ)、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD))、スマートカード、フラッシュメモリデバイス(例えば、カード、スティック、キードライブなど)、近距離無線通信(NFC)トークン、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、電気的に消去可能なPROM(EEPROM)、レジスタ、リムーバブルディスク、搬送波、伝送ライン、およびソフトウェアを格納または伝送するためのその他の適切な媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、処理システムに常駐していても、処理システムの外部にあっても、処理システムを含む複数のエンティティに分散していてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラム製品で具現化されるようにしてもよい。例として、コンピュータプログラム製品は、パッケージ材料内にコンピュータ可読媒体を含むことができる。当業者は、特定の用途およびシステム全体に課される全体的な設計上の制約に応じて、本開示全体にわたって提示および説明される機能をどのように実装するのが最善であるかを認識するであろう。
【0016】
概要
本開示の特定の態様は、医療提供者によって施される治療の有効性を改善するために実装され得る制御システムに関する。制御システムは、治療計画を調整および/または修正することにより、状況の変化に対応することができる。場合によっては、制御システムによって生成された傾向、状態またはアラートに基づいて、治療が施されている患者を診察に呼び戻すことができる。
【0017】
本明細書に開示の特定の態様によれば、医療提供者によって施される治療は、患者によって操作される1または複数のモバイル処理デバイスに配布される治療計画を含むことができる。モバイル処理デバイスは、スマートフォン、スマートウォッチおよび/またはウェアラブル処理デバイスなど、患者と連動する又は患者に関連付けられた通信デバイスを含むことができる。モバイル処理デバイスは、医療センサを監視するようにしてもよく、かつ/または患者によって入力された情報、または患者の位置および活動などの自動生成された情報を収集するようにしてもよい。モバイル処理デバイスは、センサ情報および他の情報を制御システムへのフィードバックとして提供するようにしてもよい。一例では、モバイル処理デバイスは、定義されたスケジュールに従って治療計画の要素を実行するように患者に警告し、思い出させることができるとともに、制御システムへのフィードバックとしてタスクの完了の確認を提供することができる。
【0018】
特定の態様では、患者および医療提供者が、制御システムに活動を伝達するように動機付けされる。医師に伝えられる特定の病状について医療の質に関連する個人向けの特定の通知により患者に警告して、支払者が定義した医療の質の指標を患者が満たして報告し、それにより患者が価値ベースの奨励金を受け取ることを可能にする、方法、装置およびコンピュータプログラム製品が開示されている。個人向けの特定の通知は、患者のモバイルデバイスにある又はクラウドで実行されているコンピュータプログラムによって生成されて、モバイルデバイスまたはバーチャルアシスタントを介して患者に伝えられる。これらの定期的な通知を生成するコンピュータプログラムは、ユーザ個人の健康情報のアルゴリズム計算を使用し、その情報には、個人診断、薬、および他の個人治療データが含まれており、それらは、自動入力されるか又は患者の電子健康記録から取得され、その後、奨励金を受け取るために医療提供者が満足および報告する必要がある医療の質の指標に関連する臨床ガイドラインまたはベストプラクティスの基準とともに、ユーザ個人のモバイルデバイスを介して収集される。患者が受け取る通知は、医療の質の指標に固有のものであり、患者に対して、特定の行動を取って自分の病状または指示された治療を最適に管理するとともに、特定の治療または治療目標が実施または達成されたときに医療提供者と遣り取りするように促すことができ、それにより、医療提供者は、特定の医療の質の基準または結果が満たされたことを、獲得した奨励金を支払う支払機関に報告することができる。
【0019】
医師に伝達される特定の病状についての医療の質に関連する個人向けの特定の通知により患者に警告することができる、方法、装置およびコンピュータプログラム製品が開示される。その通知は、医師が価値ベースの奨励金を受け取るために、支払者が定義した医療の質の指標を満たし、報告するために医師が必要とする行為に関連し得る。患者のモバイルデバイスにあるソフトウェア、アプリケーションまたは他の回路またはモジュールにより生成された個人向けの特定の通知、またはコンピューティングクラウドで実行された個人向けの特定の通知は、電子技術を使って患者に伝えられる。特定の通知は、患者のモバイルデバイスを介して伝えることができる。特定の通知は、1または複数の医療の質の指標に関連しており、この通知は、病状または指示された治療を最適に管理するために特定の行動を取るように患者を促すとともに、医療の質の推奨される行動を取ったこと、そのような行動を取ったことの確認を医療提供者に伝え、かつ/または特定の治療または治療目標が実施または達成されたときに医師に伝えるように患者を促すために提供され、それにより、医療提供者は、獲得した奨励金を得るために必要とされる、推奨される医療の質の行動、医師によって取られた医療の質の行動、および/または特定の医療の質の基準または結果の達成について報告することができる。
【0020】
装置の実施例
図1は、本明細書に記載の特定の態様に従って構成される装置(ここでは、モバイルデバイス100)の一例を示している。モバイルデバイス100は、1または複数の集積回路(IC)デバイス104、106、108、110および/または112を有する処理回路102を含むことができる。モバイルデバイス100は、ディスプレイ124およびユーザ入力デバイス126、128、130を提供することができる。処理回路102は、バス118によって一般的に表されるバスアーキテクチャで実装される。バス118は、処理回路102の特定の用途および全体的な設計上の制約に応じて、任意の数の相互接続されたバスおよびブリッジを含むことができる。バス118は、処理デバイス104によって一般的に表される1または複数のプロセッサ、ユーザインターフェースサポートモジュールまたは回路106、ストレージデバイス108によって一般的に表されるコンピュータ可読記憶媒体、無線周波数(RF)トランシーバ110によって一般的に表される1または複数の通信インターフェース、およびカメラデバイス112によって一般的に表される画像化インターフェースを含む、様々な回路および/またはデバイス104、106、108、110および/または112を互いに接続する。バス118は、タイミングソース、周辺機器、電圧調整器および電力管理回路などの様々な他の回路も接続する。それらは、当技術分野で周知であるため、ここでは、それ以上の更なる説明をしない。処理回路102は、バス118と処理回路102との間のインターフェースを提供するバスインターフェース116を含むことができる。ある場合には、バスインターフェース116が、複数のデバイス104、106、108、110および/または112間のアクセスの制御および提供を行う。いくつかの実施形態では、バスインターフェース116が、処理回路102の不可欠な部分となり得る。いくつかの実施形態では、バスインターフェース116が、ユニバーサルシリアルバス(USB)などの標準定義バスと処理システムをインターフェースすることができ、それにより、外部周辺機器をモバイルデバイス100に接続することができる。
【0021】
RFトランシーバ110または他のトランシーバは、伝送媒体を介して様々な他の装置と通信するための手段を提供することができる。別のタイプのトランシーバを使用して、ユニバーサルシリアルバス(USB)、FireWire、イーサネット、シリアルアドバンスドテクノロジーアタッチメント(SATA)などの標準に準拠または整合する専用の有線インターフェースまたは有線インターフェースを提供できる。RFトランシーバ110は、IEEE802.11、WiFi、WiMax、CDMA、WCDMA、Bluetoothなどの専用の又は標準化された信号伝達プロトコルを使用して、アンテナ120を介して無線インターフェースを提供し、無線信号を送受信することができる。一実施例では、RFトランシーバ110およびアンテナ120によって、モバイルデバイス100が無線周波数識別デバイス(RFID)デバイスとして通信することが可能になる。他のトランシーバは、光学、赤外線および他の通信を可能にする。装置の性質に応じて、ユーザインターフェースサポートモジュールまたは回路106(例えば、キーパッド、ディスプレイ、スピーカ、マイクロフォン、ジョイスティック)も提供される。
【0022】
処理デバイス104は、バス118の管理、およびコンピュータ可読媒体108に格納されたソフトウェアの実行を含む一般的な処理に関与している。ソフトウェアは、処理デバイス104により実行されると、特定の装置について後述する様々な機能を処理回路102に実行させる。コンピュータ可読媒体108は、ソフトウェアを実行するときに、処理デバイス104によって操作されるデータを格納するために使用することもできる。
【0023】
電子健康および保険金請求記録を含む電子記録
本開示を通じて提示される様々な概念は、多種多様な通信システム、ネットワークアーキテクチャおよび通信規格とインターフェースおよび/または相互作用するように構成されたデバイスを使用して実装される。
【0024】
本開示の様々な態様は、電子健康記録を含む例に関し、それは、医療提供者EMRシステムまたは保険金請求システムに見られる記録を含むことができる。本発明の範囲は、電子健康記録に限定されるものではなく、本発明の様々な態様は、法的記録、財務記録、雇用記録などを含む他の種類の記録の管理およびアクセスに関連するものであってもよい。例えば、本発明の特定の態様は、取引に対する当事者の販売時点での承認および識別に適用可能である。別の例では、本発明の特定の態様は、クライアントと金融機関との間の安全な取引および情報交換を可能にすることができる。しかしながら、説明を簡単にするために、この開示全体を通じて電子健康記録を含む例を使用する。
【0025】
電子健康記録の例では、ポータブルコンピューティングデバイスを使用して、患者および/または医療提供者を認証し、電子健康記録の有効化および/または認証および交換を行うことができる。患者は、電子医療記録を医療提供者に転送することを選択することができる。医療提供者は、患者に更新および/または新しい記録を転送することを選択することができる。また、医療記録は、X線撮影を使用して最初に撮影されたX線画像、磁気共鳴画像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT-ScanまたはCATSCAN)、超音波画像、またはその他の画像処理などの画像も含むことができる。記録および更新は、Bluetooth接続、無線ネットワークを使用して、ローカルネットワーク経由で、または記録の伝送に使用されるネットワークパスとは異なる別個の通信パスを提供する光学的な情報交換によって、転送することができる。一例では、クイックレスポンスコード(QRC)を医療提供者に提示することができ、それにより、QRCは、記録のネットワーク位置を特定するために使用できる情報、ネットワーク位置から取得したレコードを復号するために必要な暗号化キー、および他の情報を含むことができる。
【0026】
ポータブルコンピューティングデバイスは、ブルートゥース接続、無線ネットワークを使用して電子的に、または中間ネットワークサーバによって、または電子通信または無線通信の他の方法によって、情報の一部を直接伝送することができる。患者と医療提供者との間の記録およびその他の情報の交換は、複数の通信チャネルまたはリンクを使用して行われる。一例では、第1のチャネルが、記録のネットワークアドレスおよび記録を抽出するのに必要な対応する暗号化キーを含む情報を提供し、第2のチャネルが、暗号化された記録および/または暗号化キーを伝送するために使用される。第1のチャネルは、QRCまたは別のバーコードなどの符号化された光学画像を読み取るために、カメラまたは光学スキャナを使用して実装されるようにしてもよい。
【0027】
本明細書に開示される特定の態様によれば、患者は、医療情報を医療提供者および/または支払者に提供するように動機付けられる。スマートフォンまたはウェアラブルデバイスなどのモバイルコンピューティングデバイスを介して容易に行われる医療記録の交換は、医療記録の対象者および/または所有者によって提供される承認を前提条件とすることができる。患者は、スマートフォンまたは別のデバイスのユーザであると識別および認証された後、スマートフォンまたは別のデバイスを介して医療記録を転送するための承認を提供することができる。いくつかの実施形態では、スマートフォンまたは他のデバイスが、医療記録の交換に対して患者に報酬を与えるために、医療記録交換に関する情報(健康記録メタデータと呼ばれる)を報酬システムに送信するように構成される。いくつかの例では、報酬プランに登録するときに、患者が健康記録のメタデータを報酬システムに送信する承認を与えることができる。健康記録メタデータは、医療提供者施設における存在、医療提供者への現在および完全な医療記録の提供、および請求関連情報を確認するために使用することができる。
【0028】
報酬システムは、割引、リベートおよび他の重要な利益を登録者に提供することができる。インセンティブを与えられた患者は、報酬を受け取るために、個人のモバイルコンピューティングデバイスを通じて健康記録をより進んで提供する可能性がある。更新された医療記録を受け取った医療提供者は、患者をより効率的かつ効果的に治療することができ、支払者は重複または不要な処置を排除することで利益を得ることができる。
【0029】
電子健康記録を転送するように構成されたネットワークの例
図2は、本発明の特定の態様に従って構成されたシステム200の簡略例を示している。電子健康記録(EHR)は、様々な物理的位置、および/または医療提供者のEHRシステム202、保険会社によって使用されるような支払者のEHRまたは請求システムおよび/または政府機関により運営されるEHRシステム206を含む複数の異なる当事者によって運営されるEHRシステム202、204、206において維持される。一例では、EHRシステム202、204、206で維持される記録は、EHRシステム202、204、206のうちの2つ以上で維持される重複情報を含むことができる。他の例では、少なくともいくつかのEHR情報が単一のEHRシステム202、204または206に集約、蓄積および/または維持される。
【0030】
ユーザは、スマートフォン、タブレットコンピューティングデバイス、ノートブックコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェアまたは他の適切なモバイルデバイスなどのクライアントデバイス214または216を介して記録にアクセスすることができる。場合によっては、ユーザは、コンピューティングシステムまたは他の処理デバイスを組み込んでいるか又はそれらによって制御される電気器具を介して記録にアクセスすることができる。ユーザは、サービス提供者である場合がある。ユーザは、提供者システムのクライアントまたは患者である個人の記録所有者、および/または保険会社によって保険をかけられたクライアントまたは個人、または記録所有者のエージェントである場合がある。特定の状況では、ユーザは、衰弱した、負傷した、または無力になった個人の記録所有者に代わって行動する緊急対応者である場合がある。多くの場合、記録の所有者は、複数の場所で、かつ/または複数の医療提供者から、医療サービスを受ける患者である。医療提供者は、プライマリケア提供者(医師)、専門医、緊急対応者および薬局のうちの1または複数を含み得る。患者は、民間または公的な健康保険プランで保険に加入している場合がある。これらの様々な医療エンティティの各々は、患者の個別の異なる電子健康記録を保持する場合がある。
【0031】
クライアントデバイス214、216は、個人の電子健康記録にアクセスできるように適合または構成されるものであってもよい。いくつかの例では、アプリケーションまたはエージェントが、クライアントデバイス214、216にインストールおよび/またはダウンロードされて、EHRシステム202、204、206に対応する1または複数の集中データベースで維持されている個人の電子健康記録へのアクセスが可能となっている。ユーザは、トランザクションまたは患者への医療サービスの提供に関連する電子健康記録にアクセスすることができ、アクセスされる記録には、医療記録や保険記録などの個人健康記録が含まれ、それらは、サービス提供者、保険会社または他のエンティティによって運営されるEHRシステム202、204、206に組み込まれた集中データベースに遠隔配置され得る。
【0032】
一例において、1または複数のEHRシステム202、204、206によって維持されるデータベースが、ネットワーク208経由でアクセスされる。ネットワーク208は、無線ネットワーク、セルラーアクセスネットワーク、インターネットおよび/または1または複数のプライベートネットワークなどを使用して実現される。特定の実施形態では、記録の所有者は、特定のアクティビティ、サービスおよび/または提供者に関連する記録を取得するために、EHRシステムまたはデータベースに個別にアクセスできる。一部の実施形態では、記録の所有者が、アクセスおよび集約、結合、照合、またはマージされるEHRシステムまたはデータベースのセットを特定して、組み合わされたEHRのセットおよび/または関連する又は利用可能なEHRを識別するレポートを取得することができる。いくつかの実施形態では、どのEHRシステムまたはデータベースがそのような記録または記録の種類を維持するかにかかわらず、記録のユーザが、アクセスされる記録の種類を指定することができる。いくつかの実施形態では、記録の所有者が、ユーザによる即時アクセスおよび使用のために、または医師などの医療提供者に送るために、結合された個別の記録を生成することができる。記録は、医師個人のコンピューティングデバイス、または医療提供者によって所有または操作されているコンピューティングデバイス(例えば、医師デバイス212など)を介して医師に配信できる。記録の所有者は、オンデマンド(オンザフライ)で結合された記録を作成し、または結合された個々の記録へのアクセスを提供することができ、その記録は、記録の所有者によって維持されるか又は記録の所有者に代わって維持され、かつ自動的および/または定期的に更新される。いくつかの実施形態では、記録の所有者は、提供者が単一のソース、複数のソース、および/またはアグリゲータ210から、EHRにアクセスすることを許可および/または可能にすることができる。いくつかの実施形態では、記録の所有者は、記録の場所に関係なく、提供者が特定の種類の記録にアクセスすることを許可および/または可能にすることができる。コンポーネント、機能およびモジュールの他の構成を実装することができる。例えば、アグリゲータ210は、クライアントデバイス214、216に実装されるものであってもよい。
【0033】
図2に示す例では、個々の記録が、タブレットコンピュータまたはスマートフォンなどの医師デバイス212に配信されるが、結合された個々の記録は、EHRシステム202、204または206のサーバまたは他のコンピュータにも配信され得る。いくつかの実施形態では、記録の所有者が、サーバまたは他のネットワークデバイス(例えば、アグリゲータ210)に、1または複数のEHRシステム202、204または206から供給された結合された個々の記録をデスクトップコンピュータのような医師デバイス212または他のコンピューティングデバイスに配信させることができる。一例では、記録の所有者が個々の記録を作成および配信できるクライアントデバイス214にアクセスできない場合、または記録の所有者のデバイス(クライアントデバイス214、216、218)が医師デバイス212またはEHRシステム202、204または206に接続できない場合に、アグリゲータ210を使用して個々の記録を提供することができる。
【0034】
識別および認証情報は、記録の所有者がEHRシステム202、204、206の各々にアクセスすることを可能にするために、クライアントデバイス214、216上で維持される。記録の所有者のデバイス(クライアントデバイス214または216など)における単一のコマンドおよび識別プロセスによって、EHRシステム202、204、206上の関連記録および/またはアグリゲータ210によって提供される関連記録への自動アクセスを開始することができるため、記録の所有者による識別および認証情報の維持および制御は、システム全体の複雑さを低減することができる。例えば、クライアントデバイス214、216にインストールされたエージェントは、パスワード、チャレンジワード、バイオメトリックスキャンおよび/またはその他の周知の認証手段でクライアントデバイス214、216のユーザを識別および認証するように構成されるものであってもよい。いくつかの例では、信頼できるサードパーティのデバイスまたはサービス提供者によって、認証が確認されるようにしてもよい。記録の所有者に関連するEHR情報へのアクセスを可能にするために、EHRシステム202、204、206および/またはアグリゲータ210の各々に認証情報を提供するようにしてもよい。一例では、記録の所有者のクライアントデバイス214、216が、認証情報を提供するようにしてもよい。別の例では、信頼できるサードパーティのデバイスまたはサービス提供者が認証情報を提供するようにしてもよい。
【0035】
認証のプロセスおよび/または要求の起点は、記録されて、提供者への記録の転送に対する記録の所有者の同意を証明するために使用される。いくつかの実施形態では、記録の所有者としてのユーザの身元の事前の識別および/または認証に基づいて、記録を転送するためのユーザからの要求が、記録の所有者の同意を含むように考慮または構成されるようにしてもよい。記録の所有者に、転送要求を確認する要求が提示されるようにしてもよい。確認の要求は、識別のための要求および/または転送要求の受信者の身元を認証する要求を含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザが、各要求に対して実行される転送の種類を設定することができる。例えば、同意は所有者のEHR記録のサブセットに限定されるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、記録の所有者が、1または複数のサービス提供者に転送できる記録の種類のデフォルト指定を設定するようにしてもよい。情報を転送するための認証された要求およびそのような要求の承認、並びに、要求されたEHRの承認および/または配信の承認は、クライアントデバイス214または216、医師デバイス212、医師管理システム、記録所有者のEHRシステム202、204、206のうちの一つ、および/またはアグリゲータ210で記録されるようにしてもよい。ユーザは、サービス提供者の施設を介してEHRへのアクセスを許可および/または開始することができる。
【0036】
ユーザは、組み合わされたEHRレポートを準備するようにしても、あるいはモバイルデバイスまたはストレージデバイス上の様々なソースからのEHR情報のセットを保存するようにしてもよい。通常、ローカルに保持される情報は暗号化される。記録の所有者は、医療サービスを求める際に、ローカルに保持されている情報の一部またはすべてを医療提供者に転送することができる。また、ユーザは自宅からオンラインで特定の記録にアクセスして、保険の状態、医療の予約、処方薬の補充状況を確認したり、医師と電子メールで遣り取りすることもできる。
【0037】
特定の実施形態は、ユーザとサービス提供者の両方に複数の電子健康記録へのインターフェースを提供する。ユーザは、サービス提供者がユーザの結合された記録の一部またはすべてにアクセスできるようにする承認を提供することができる。第1提供者は、第2提供者が別の医療施設に物理的に位置している場合に、ユーザの裁量で、第2提供者によって維持されるユーザの個々のEHRにアクセスすることができる。一例では、医師は、ユーザの完全な病歴、保険資格ステータスおよび他の情報の現在の見解を得るために必要なユーザの記録のすべてに直接かつ容易にアクセスすることができる。さらに、医師はユーザの記録に直接アクセスして、ユーザの健康情報を更新することもできる。
【0038】
記録を転送するとき、ユーザID、パスワード、チャレンジ質問および生体認証情報の任意の組合せを使用して、ユーザの識別情報を認証することができる。通常、転送は、記録の所有者と医療提供者の相互の識別を条件として行われる。対面での識別は、直接見ることにより行うことができる。さらに、両当事者のポータブルデバイスは、記録の所有者と医療提供者の両方によって確認される接続を確立することができる。一例では、その接続は、ユーザ間で交換される暗号化キーを使用して保護されたセッションを含むことができる。暗号化キーは、ユーザのデバイス間で送信される情報を暗号化および復号化するために使用される。いくつかの実施形態では、近接して配置されたデバイスに送信が制限されるようにしてもよい。一例では、記録の所有者は、Bluetoothの範囲内または同じWiFiドメイン内のデバイスのリストから医師のタブレットコンピュータを選択することにより、コンタクトを始めることができる。医師は通常、送信が開始される前に接続を許可する。
【0039】
特定の実施形態では、受信者の肯定的な身元の確認を最初に得ることなく、記録を交換することはできない。記録の所有者と医療提供者が異なる物理的位置にある場合、物理的位置を識別する情報は、記録の所有者と医療提供者のうちの1または複数によって提供される。物理的位置の識別は、グローバルポジショニングシステム、セルラーネットワークによる三角測量を含む無線ネットワークにより他のソースから提供される位置情報を使用して行うことができる。例えば、特定の無線ネットワーク通信サービスは、モバイルデバイスの三角測量および/または特定の信号特性評価に基づいて、正確な位置情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、認証サービスを使用して記録の所有者と医療提供者の身元を確認することができ、当事者が異なる物理的位置にあっても、認証サービスが当事者の身元を確認するときに、記録の所有者と医療提供者を接続することができる。
【0040】
特定の実施形態では、記録の所有者と医療提供者のユーザデバイスが互換性がなく、直接接続できない場合がある。例えば、Androidベースのデバイスは、異なるオペレーティングシステムを使用して動作するタブレットコンピュータと安全に接続できない場合がある。互換性のないデバイスが使用される場合、デバイスの接続を容易にするためにゲートウェイを使用することができる。ゲートウェイは、両方のデバイスを識別し、デバイス間の安全なリンクを確立する拡張ハンドシェイクサービスを提供することができる。ゲートウェイは、ローカルまたはネットワークサーバおよび/またはクラウドサービスを使用して提供される。
【0041】
特定の実施形態では、記録の所有者と提供者デバイスの具体的な位置および/または近接性を確認するために、全地球測位技術が使用される。いくつかの実施形態では、第4世代ロングタームエボリューション(4G LTE)および第5世代(5G)無線アクセス技術などの無線アクセス技術は、近接性または物理的位置情報を判定するために使用できる位置サービスを含む場合がある。
【0042】
また、コンピューティングデバイス216が記録の所有者に属するものでなくても、医療記録にアクセスするために、ノートブックまたはデスクトップコンピュータなどの汎用コンピューティングデバイス216を使用することもできる。記録の所有者は、コンピューティングデバイス216によって読み取られて使用されるときに、結合された個々の記録の自動アクセスを可能にするクレデンシャル218を提供することができる。クレデンシャル218は、非一時的なメモリおよび埋め込みマイクロプロセッサを有するハンドヘルドデバイスまたは他のプログラム可能なデバイスで構成することができる。クレデンシャルは、スマートカード、USBフラッシュドライブ、無線周波数識別(RFID)デバイス、近距離無線通信(NFC)トークン、Web対応電話などで構成することができる。クレデンシャルは、識別カードに、またはユーザが容易に保存および保護できる他の形式で、組み込まれる。
【0043】
特定の実施形態では、ユーザのEHR情報へのアクセスが、クレデンシャル218をコンピューティングデバイス(例えば、クライアントデバイス214または216)に提示することにより取得され、コンピューティングデバイスは、データの交換を可能にするクレデンシャル218により有線または無線接続を確立することができる。クレデンシャル218は、保険会社、政府機関、一次医療提供者システムなどによって発行された小型ポータブルデバイスで構成することができる。クレデンシャル218は、個人識別子、個人に割り当てられた一意の識別子、EHRロケータアドレス、ログイン情報、および/またはその他の識別情報を含む情報を維持するメモリを備えることができる。ユーザは、クレデンシャル218を使用して、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、スマートフォン、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェアなど)または他の適切に装備された処理デバイスなどのクライアントデバイス214または216を介して、1または複数のEHRシステム202、204、206にアクセスすることができる。一例では、クレデンシャル218は、フラッシュドライブ、スマートカード、またはクライアントデバイス214または216に無線で接続できるデバイスを含む。ユーザは、クレデンシャル218がクライアントデバイス214または216と情報を交換できるようにする適切な方法で、クレデンシャル218をクライアントデバイス214または216に提示することができ、それにより、クライアントデバイス214または216は、記録の所有者の識別子を使用して1または複数のEHRシステム202、204、206に自動的にアクセスしてログインすることができる。ユーザは、EHRシステム202、204、206に維持されている医療記録への自動化された同時リアルタイムアクセスのために、それらEHRシステムへのアクセスを有することができる。一例では、クレデンシャル218に埋め込まれた、またはクレデンシャル218に格納された情報を使用してネットワーク208を介してアクセスされるエージェントまたは他のアプリケーションソフトウェアが、クライアントデバイス214または216にダウンロードされ、それにより、様々なEHRシステム202、204、206から選択されたデータを収集すること可能となり、医師が見て使用するためのオンザフライの要約記録を生成することができる。
【0044】
特定の実施形態は、複数のデータソースへの自動アクセスを可能にする。一例では、クレデンシャル218は、識別子および個人の健康関連情報のソースのリストを含む知識ベースとして維持される、暗号化された「電子キーチェーン」を含む。知識ベースは、インターネットアドレスと、データへのアクセスを可能にするために必要なIDおよび他の資格情報の両方を含むことができる。通常、健康情報は、複数の医療提供者または開業医によって維持され、情報は、保険データベースや医療記録ポータルを含むリポジトリまたはデータベースを通じてアクセス可能となっている。
【0045】
クレデンシャル218は、クレデンシャル218に格納された情報を暗号化および復号化することができるハードウェアとソフトウェアの組合せを有するデバイスを含むことができる。クレデンシャル218は、インテリジェント電子デバイス(例えば、少なくとも1のプログラマブルコントローラを有するデバイス)、例えば、ユニバーサルシリアルデバイス、スマートフォン、ウェアラブルコンピューティングデバイス、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェア、PC、タブレットコンピュータなどに組み込むことができる。電子デバイスは、自己完結型のEHRアクセスポータルとして動作するのに十分な処理能力とストレージを備えることができる。
【0046】
特定の実施形態では、健康情報のオンザフライの要約を医療提供施設または他の場所で提供することができる。複数のEHRシステム202、204、206からの情報へのアクセスと検索を開始するために、電子キーチェーンによって与えられる情報を使用することができる。電子キーチェーンによって与えられる情報には、複数の電子健康記録を単一の要約フォームに集めることができる1または複数のエージェントまたはアプリケーションが含まれる。要約フォームは、HL7 FHIRリソースを含む様々な標準化された形式の診療経過記録(「CCR」)、診療経過文書(「CCD」)のような標準形式や、他の適切な形式で提供される。いくつかの実施形態では、集められた健康記録が、出所によって使用される形式に関係なく、一貫した要約形式で提示される。このため、電子キーチェーンを介して提供またはアクセスされる情報には、様々なEHRシステム202、204、206からのEHR情報をフィルタリングおよび再フォーマットするために使用される、テンプレートおよび変換モジュールが含まれる。
【0047】
図3は、本明細書で開示する特定の態様に係る、EHRの転送に関連するトランザクションに含まれる様々なデータフローをサポートすることができるネットワークアーキテクチャの一例を示す
図300である。第1のシナリオでは、記録の所有者が、パーソナルポータブルコンピューティングデバイス(患者デバイス302)を使用して、結合された記録を第1の提供者デバイス308に直接転送または配信する。例えば、医師の診察室を訪れる患者が、担当医に更新された記録の提供を望む場合がある。一例では、患者デバイスがスマートフォン316および/またはスマートウォッチ318である場合に、患者は、患者デバイス302上のエージェントまたは他のアプリケーションを起動して、転送を実行することができる。ユーザは、ユーザ名、パスワード、チャレンジ質問に対する回答のような識別情報を提供することが要求され、かつ/または指紋、虹彩スキャンなど生体情報を提供すること、または顔認識プロセスへ提出すること等が要求される。ユーザは通常、どの記録を医師に提供するかを選択することができる。
【0048】
エージェントは、認証時に、単一の記録または結合された記録が患者デバイス302上に維持されているか否か、およびその記録が最新であるか否かを判定することができる。エージェントは、1または複数の医療提供者、保険会社、政府機関、公的支払者、またはEHR情報の他のソース(全体として符号304で示す)に記録を要求することができる。個々の記録を結合または更新すると、エージェントは、患者デバイス302に、単一の記録または結合された記録のセットを医師デバイス308に配信させて即時表示させることができる。医師デバイス308上のアプリケーションまたはエージェントは、配信された情報を受信するために手動で起動されるものであってもよい。いくつかの実施形態では、医師デバイス308が、患者デバイス302からの接続要求の受信時に、アプリケーションまたはエージェントを開いて、記録を受信または表示することにより、配信に応答するように構成されている。
【0049】
特定の実施形態では、医師が、医師デバイス308上の記録を更新または他の記録を検索し、更新または他の記録を患者デバイス302に送信させることができる。その後、患者デバイス302は、新しい記録または更新された記録を、1または複数のEHRシステム304に、または別の提供者のコンピューティングデバイスに提供することができる。いくつかの実施形態では、医師が医療情報を患者デバイス302に提供するようにしてもよい。例えば、医師はデバイス308でX線画像を受信して、患者デバイス302に画像を転送するようにしてもよい。別の例では、医師が、デバイス308により、情報を患者デバイスに送信させることができ、その情報が、薬に関する情報、投薬レジメン、および病状に関連する教育情報などの一般情報を含む、指示情報または教育情報へのアクセスを患者デバイス302に提供する。
【0050】
患者デバイス302および医師デバイス308は、WiFi、セルラ通信、Bluetooth、IEEE802.15(ZigBee)および他の短距離無線通信を含む利用可能なネットワークまたは通信方法を使用して通信することができる。特定の実施形態では、デバイス302、308間の通信が、セキュリティを強化するために短距離通信法の使用に制限されるものであってもよい。例えば、医師デバイス308と患者デバイス302間のBluetoothリンクの使用により、通信範囲が単一の部屋に制限され、それにより、医師と患者の両方がデバイス302、308間で通信が適切に確立されていることを確認することができるとともに、患者のプライバシーをより良好に保護することができる。特定の実施形態では、医師と患者が地理的に互いに離れている場合に、患者が、医療施設にある無線LAN306を使用して、かつ/またはインターネット310を通じて、物理的にいない医師に記録の転送を望むことがある。そのような場合、患者と医師は、ビデオ会議接続を確立して身元を検証し、それぞれのデバイス302、308間で通信が適切に確立されたことを確認することができる。
【0051】
図3に示す第2のシナリオでは、プロキシサーバ312が、患者デバイス302と第2の医師デバイス314との間のプロキシとして機能することができる。第1のシナリオについて説明したように、患者は患者デバイス302を使用して記録転送を開始することができる。特定の実施形態では、患者デバイス302がそのような機能を実行するように構成または適合されていない場合に、プロキシサーバ312が、ユーザ識別および認証サービスおよび記録集約サービスを含む1または複数のサービスを提供することができる。例えば、記録の所有者は、クレデンシャル218(
図2を参照)を汎用コンピューティングデバイス216に提供することができ、それにより、クレデンシャル218は、コンピューティングデバイス216により、サービスの要求をプロキシサーバ312に送信させる。一例では、プロキシサーバ312が、コンピューティングデバイス216にウェブページを提供して、患者に代わってプロキシサーバ312により実行される要求を患者が開始することができる。
【0052】
別の例では、患者デバイス302および第2の医師314が、直接通信できない場合がある。プロキシサーバ312は、例えば、広域ネットワーク(インターネットなど)またはローカルエリアネットワークを介して、それぞれのデバイス302、314間で情報の交換を可能にするゲートウェイまたはルーティング機能を実行するように構成されている。デバイス302、314は、第2の医師デバイス314および/または無線LAN306のセキュリティ設定が原因で、直接的なブルートゥースまたはWiFi接続を互いに確立することができない場合がある。一例では、患者デバイス302が異なるドメイン(例えば、ゲストドメイン)に接続され、第2の医師デバイス314が無線LAN306のセキュリティ保護されたプライベートドメインを介して接続されている場合に、中間サーバまたはプロキシサーバ312が、WiFiネットワーク(例えば、無線LAN306)を介してゲートウェイ機能を提供することができる。
【0053】
近接交換
特定の実施形態では、近接性を、場所と時間の両方における近さとして定義することができる。健康記録および/または健康情報のリアルタイム通信が患者デバイス302と医師デバイス308との間で発生し、デバイス302、308が互いに物理的に近接しており、ユーザが互いに直接見て識別できる場合に、近接交換が発生し得る。特定の実施形態では、近接交換を使用して、特定の期間中にローカル無線ネットワークを介して患者デバイス302から医師デバイス308に健康記録および/または健康情報を伝えることができる。特定の実施形態では、近接交換が、特定の期間中に医師デバイス308への健康記録および/または健康情報の配信を開始するために使用され、この近接交換が、認証に使用され、かつ/または医師デバイス308への健康記録および/または健康情報の安全な送信に必要な情報を提供するために使用される。
【0054】
近接交換に関連する期間は、物理的な視線上で、またはビデオ通信セッションを介して互いを見ることによって、通信当事者が互いに直接見て識別できるときの開始時間によって定義されるものであってもよい。通常、情報を交換している2人は、近接交換中、同じ部屋にいると予想される。一例として、スマートフォン316および/またはスマートウォッチ318を有する患者は、同じ診察室で彼女のタブレット(または他の医師デバイス308)を持って待っている医師に健康記録を送ることができる。別の例では、医師が、診察の終わりに患者の治療指示を送ることができ、かつ/または医師によって行われた診断に関連する文献を提供することができる。患者と医師は、空間が近接している(つまり、同じ部屋にいる)ことに加えて、時間的にも近接している。各当事者は、例えば、医師が患者に病歴について尋ねているときなどに、程度の差はあるが直ぐに通信が発生することを期待している。いくつかの実施形態では、ビデオリンクを通じて当事者が互いの顔を見ることができる場合に、仮想識別を行うことができる。場合によっては、ビデオリンクデバイス302、308および/または314は、当事者が直接的および/または間接的な視覚的識別を行うことができないときに、顔認識、虹彩スキャン、指紋スキャンまたは他の生体認証スキャンを実行するように構成されている。いくつかの実施形態では、当事者間で交換されるEHR情報へのアクセスを許可するために、視覚的認識または生体認証の代替手段が必要とされる。
【0055】
近接交換は、EHR交換のセキュリティを改善することができる。近接交換は通常、場所と時間によってEHR交換を制限し、EHR交換の受信者がいるときにEHR所有者がEHR交換を開始できる。さらに、EHR交換を完了する機会は時間的に制限される場合があり、EHR交換は予め設定された時間内に開始する必要がある。EHR交換は、1回限りの配信として特徴付けることができ、そのため、配信を繰り返すことはできず、各配信は記録の所有者による個別の許可を必要とする。
【0056】
近接交換の例
図4は、例えば、患者(クライアント)と医療提供者との間でEHR交換が開始されるときの、改善されたセキュリティを示す近接交換の例400、420を含む。場合によっては、近接交換は、遣り取りの両当事者が同じ場所にいること、および/または相手の身元を視覚的または聴覚的に確認できることが必要とされる。近接交換は、Bluetoothやその他の短距離RF通信技術、NFCインタラクション、RFID、光通信、アドホック接続など、範囲の限られた電子通信を使用することができる。しかしながら、近接交換には、当事者の肯定的な識別ができる場合に、同じ建物および/または無線ネットワークセグメントまたはセル内で発生する遣り取りも含まれる。
【0057】
一例400では、2つのデバイス402、404および/または422、424が直接通信状態にあり、かつ近接して配置されたときに、近接交換が可能になる。クライアントデバイス402は、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルコンピューティングデバイス、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェア、メディアプレーヤ、電気器具または他の適切なデバイスである。クライアントデバイス402には、クライアントに関連付けられたEHR情報へのアクセスを提供するように構成されたエージェントまたは他のダウンロードされたアプリケーションを装備することができる。提供者デバイス404は、パーソナルコンピュータ、ノートブック、スマートフォン、タブレット、メディアプレーヤまたは他の適切なデバイスであり、医院マネジメントシステム、EHRシステム202、204、206(
図2を参照)および/またはアグリゲータ210などの他のシステムを含む1または複数のシステムへの提供者アクセスを提供するエージェントまたはダウンロードされたアプリケーションを装備することができる。EHRを提供者デバイス404に転送することを決定したクライアントは、クライアントデバイス402上のエージェントまたはアプリケーションと対話して、患者の身元を認証し、転送を開始することができる。EHR交換は、クライアントデバイス402によって直接実行されるか、プロキシまたは他のサーバを介して間接的に実行される。クライアントデバイス402は、提供者デバイス404に無線で情報を送信することができ、その情報により、提供者デバイス404上のエージェントまたはアプリケーションがEHRの受信および受け入れを開始することができる。通常、クライアント/患者は、提供者との個人的な遣り取り、および/またはクライアントデバイス402と提供者デバイス404との間の遣り取りを通じて提供される確認に基づいて、配信が提供者デバイス404をターゲットにしていることを確認することができる。
【0058】
別の例420では、クライアントデバイス422がネットワーク接続を介して提供者デバイス424と通信していない場合でも、EHR交換を保護することができる。例えば、デバイス422、424はともにインターネットに独立して接続することができるが、Bluetooth、またはWiFiネットワーク、NFCまたはZigBeeなどのローカルネットワークでは接続できない場合がある。場合によっては、クライアントおよび/または提供者が、無線ネットワーク認証を使用しないことを選択するか、または無線ネットワーク認証の使用を禁止される場合がある。これらの例のいくつかでは、セキュリティで保護されたEHR交換は、有線ネットワークの組合せを利用する認証プロセス、および情報の近接交換を伴う認証プロセスの使用を通じて提供される。
【0059】
図示された例420では、EHR交換が、2つのデバイス422、424間で認証情報を光学的に交換することにより保護される。クライアントデバイス422は、スマートフォン、タブレット、メディアプレーヤ、電気器具、またはカメラまたは光学式リーダを有する他の適切なデバイスである。クライアント422にインストールされたエージェントまたはアプリケーションは、クライアントに関連付けられたEHR情報へのアクセスを提供する。提供者デバイス424は、パーソナルコンピュータ、ノートブック、スマートフォン、タブレット、メディアプレーヤまたは他の適切なデバイスであり、カメラまたは光学式リーダを有している。デバイス424にインストールされたエージェントまたはアプリケーションは、医院マネジメントシステム、EHRシステム202、204、206(
図2を参照)、および/またはアグリゲータ210などの他のシステムを含む1または複数のシステムへの提供者アクセスを提供する。
【0060】
EHRを提供者デバイス424に転送することを決定したクライアントは、クライアントデバイス422上のエージェントまたはアプリケーションと対話して、患者の身元を認証し、転送を開始することができる。EHR交換の当事者を認証するために、クライアントデバイス422は、ディスプレイ上に光学画像を提示するように構成されている。提供者は、提供者デバイス424と一体のカメラ、または提供者デバイス424に取り付けられたカメラを介して画像を撮ることができる。画像は、暗号化キー、ファイルロケーション、および/またはEHR交換中の提供者デバイス424の認証に必要な他の情報を取得するために、デコードすることができる。提供者デバイス424は、エンコードされた画像を生成および表示するように構成され、その画像は、クライアントデバイス422のカメラによって撮られ、応答または肯定応答によりデコードされるものとすることができる。いくつかの実施形態では、交換が提供者デバイス424で開始され、当該デバイスが、識別目的のために、クライアントデバイス422によってキャプチャおよび使用される画像を作成および表示することができ、それにより、EHR交換中にEHRを暗号化し、かつ/または提供者デバイス424に導くことが可能になる。任意の適切なタイプのエンコードされた画像を使用することができ、それには、QRCなどのバーコードが含まれる。
【0061】
電子健康記録メタデータ
図5は、本明細書に開示される特定の態様に係る、EHR近接交換524の間または後にEHRメタデータ504が患者デバイス520によって生成されるシステム500の一例を示している。交換は、携帯電話、スマートフォン、セッション開始プロトコル(SIP)電話、ラップトップ、ノートブック、ネットブック、スマートブック、携帯情報端末(PDA)、衛星ラジオ、全地球測位システム(GPS)デバイス、マルチメディアデバイス、ビデオデバイス、デジタルオーディオプレーヤ(例えば、MP3プレーヤなど)、カメラ、ゲームコンソール、エンターテイメントデバイス、車両コンポーネント、またはウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェアなど)のような患者デバイス520を使用して、患者により開始されるものとすることができる。
【0062】
患者デバイス520は、パスワードチャレンジ、指紋識別、虹彩スキャン、または他の生体測定を通じてユーザ(例えば、患者)を認証するように適合または構成されるものであってもよい。患者デバイス520は、患者デバイス520の認証されたユーザが利用可能なキーを使用して暗号化されたストレージにEHRを維持できる場合に、ユーザに関連するEHRを維持することができる。ユーザデバイスは、EHRの1または複数のソースからの患者デバイス520に維持されるEHRを、アクセス、ダウンロードおよび/または更新する(502)ように構成または適合されるものであってもよい。ソースには、医療提供者、支払者、アグリゲータ、および/またはユーザのEHRを保存できる他のソースが含まれる。ソースへのアクセスは、セキュリティで保護された接続を介して有効にすることができ、ソースは、ユーザとソースが相互に認証できるようにする暗号化キーや他の情報を共有または交換することができる。キーおよび他の識別情報は、ユーザデバイスの信頼できる環境で維持される。信頼できる環境には、患者デバイス520上に提供される通常のアプリケーションへのアクセスが制限されているセキュアなストレージまたはセキュアな実行環境が含まれる。
【0063】
特定の実施形態では、患者デバイス520と提供者または医師デバイス526との間の認証情報の交換をユーザが開始した後に、EHR近接交換524が有効化される。ユーザによる認証情報の交換および受け入れには、ユーザに維持される特定のEHRにアクセスするための医師への許可が本質的に含まれる。いくつかの例では、EHRが、患者デバイス520を介して提供者または医師デバイス526にアクセス可能である。そのアクセスは、提供者と患者との間の遣り取り中、関連する、必要である又は望ましいと判断または予想される特定の記録に制限される。クライアントは、関連する医療記録の一部またはすべてへのアクセスを可能にする許可を与え、クライアントは遣り取りのコンテキストに関連する記録を指定することができる。すべての遣り取りに対して特定の記録が与えられる場合がある。すべての遣り取りについてアクセス可能な記録の一例には、「Medic-Alert」スタイル情報が含まれ、それにより、患者の能力を奪う可能性のある患者の既知の病状を特定し、かつ/または薬物アレルギーまたは患者に苦痛を与える可能性のある薬物に対する耐性または反応を含む、患者が被るアレルギーを特定することができる。
【0064】
実施形態の一例では、iBlueButton(登録商標)アプリケーションなどのアプリケーションを患者デバイス520にインストールすることができる。アプリケーションは、患者デバイス520の特定のディスプレイ画面にメニュー522を提供するように患者デバイス520を設定することができる。クライアント医療記録のProApp528への転送を容易にするために、提供者または医師のデバイス526にiBlueButton(登録商標)アプリケーションの提供者バージョン(iBlueButton Professionalアプリまたは「ProApp528」)をインストールすることができる。いくつかの実施形態では、患者と提供者の遣り取りの終了後にクライアントの記録が削除される。場合によっては、EHRの所有者が、EHRを転送する承認を取り消すことができる。
【0065】
患者デバイス520は、患者EHRメタデータ504を生成することができる(508)。患者EHRメタデータ504は、1または複数の医療提供者によって提供される医療サービスに関連する活動に関する情報を含むことができる。患者EHRメタデータ504は、医療サービスの提供に関連する医療の質に関する情報を含むことができる。患者EHRメタデータ504は、全体的な医療の質のスコアを求めるために使用することができる。
【0066】
患者デバイス520は、患者デバイス520によって維持されるアプリケーションから接触、位置および近接交換に関連する他の情報を収集した後に、患者EHRメタデータ504を生成することができる。時間および/または位置情報512は、患者デバイス520上で動作するクロック、GPSアプリケーションおよび/またはネットワーク管理アプリケーションの何れかの組合せから判定されるようにしてもよい。一例では、無線ネットワーク接続(WiFi、セルラ、Bluetoothなど)を管理するアプリケーションは、近接交換に使用されるネットワークアクセスポイントの識別子を提供することができ、ネットワーク識別子は、医療提供者の地理的位置と身元を示すことができる。
【0067】
患者EHRメタデータ504は、近接交換524に関連する1または複数のトランザクションを識別するトランザクション情報514を含むことができる。時間および/または位置情報516は、患者デバイス520上で動作するクロック、GPSアプリケーションおよび/またはネットワーク管理アプリケーションの何れかの組合せから判定されるようにしてもよい。トランザクション情報514は、iBlueButton(登録商標)アプリケーションなどのEHRアプリケーションから取得することができる。患者デバイス520は、近接交換524を容易にするために、提供者および/または提供者によって使用されるコンピューティングデバイスを識別する情報を含む、医療提供者の認証中に取得される情報を提供することができる。トランザクション情報514は、記録を識別する情報および/または医療提供者に提供される記録の種類を含むことができる。トランザクション情報514は、記録を識別する情報、および/または近接交換524を含む遣り取り中に医療提供者によって更新または提供される記録の種類を含むことができる。いくつかの実施形態では、トランザクション情報514が、医師の推奨および/または治療の特性評価に使用されるコードを含むことができる。例えば、トランザクション情報514は、米国医師会によって規定および維持されている医師診療行為用語(CPT(登録商標))コードを含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、提供者EHRメタデータ510が、提供者または医師デバイス526上で生成される(530)。提供者EHRメタデータ510は、患者との1または複数のトランザクション518に関する同様の情報を含むことができ、かつ患者の身元、患者デバイス520から転送された記録、および/または遣り取り中に提供された承認と同意の詳細を含むことができる。時間および/または位置情報516は、提供者または医師デバイス526上で動作するクロック、GPSアプリケーションおよび/またはネットワーク管理アプリケーションの何れかの組合せから判定されるようにしてもよい。患者EHRメタデータ504および提供者EHRメタデータ510は、提供されるサービスの詳細を確認するために第三者システムによって比較されるようにしてもよい。
【0069】
図6は、安全なEHR交換を提供するとともに、
図5に示す患者EHRメタデータ504および提供者EHRメタデータ510のようなEHRメタデータ620、622を処理することができるシステム600の一例を示している。患者デバイス602は、提供者デバイス604への転送のためにEHR情報のセットを識別および/または準備することができる。例えば、患者デバイス602は、提供者デバイス604に送信される1または複数のソースのなかからEHR情報を選択することができる。EHR情報は、患者デバイス602に格納された記録を含むことができる。EHR情報は、1または複数のEHRシステムおよび/またはアグリゲータ612に格納された記録を含むことができる。記録のタイプ、記録のソース、記録の識別子および/または記録のサブセットが、同意が与えられた場合に、患者EHRメタデータ620に含められる。
【0070】
場合によっては、患者デバイス602は、選択されたEHRをファイルリポジトリ608に格納させることができる。ファイルリポジトリ608は、インターネット606などのネットワークを介して一意に識別されアクセスされるコンテナ614内の複数のファイルおよびオブジェクトの記憶場所を提供するように動作することができる。コンテナ614は、EHR交換の期間中のために作成され、コンテナ614は、コンテンツが提供者デバイス604に転送されたとき、または所定の時間後に破棄されるようにしてもよい。ファイルリポジトリは、Dropbox(商標)やAmazon S3(商標)などのインターネットクラウドサービスを使用して実装することができる。選択されたEHRは、コンテナ614に格納される前に暗号化されるようにしてもよい。患者EHRメタデータ620は、リポジトリがいつ使用されるのかと、EHR転送に使用されるリポジトリの詳細を識別することができる。
【0071】
患者デバイス602および提供者デバイス604は、EHR交換を開始するために使用される近接交換616で、識別情報および/または認証情報を交換することができる。認証は、認証エンティティ610によってサポートおよび/または有効化されるようにしてもよく、認証エンティティは、例えば、暗号化キージェネレータまたはサーバであってもよい。患者EHRメタデータ620および/または提供者EHRメタデータ622は、識別情報および/または認証情報を記録することができる。一例では、患者EHRメタデータ620は、提供者との遣り取りの場所を特定する情報、提供者の身元、提供者組織の身元、および/または提供者デバイス604およびネットワークを特定する情報を記録する。別の例では、提供者EHRメタデータ622は、患者との遣り取りの場所を識別する情報、患者の身元、および/または患者デバイス602および遣り取りで使用される中間物、プロキシまたはリポジトリ608を識別する情報を記録することができる。
【0072】
通常、近接交換616では対面確認応答を利用することができ、患者デバイス602および/または提供者デバイス604は、クライアントおよび/または医師が遣り取りの相手を識別する情報を入力できるように構成されている。そのような識別情報は、患者EHRメタデータ620および/または提供者EHRメタデータ622に記録することができる。少なくともいくつかの実施形態では、電子承認が行われ、そのような承認が患者EHRメタデータ620および/または提供者EHRメタデータ622に記録される。
【0073】
特定の実施形態では、デバイス602または604の1または複数に表示される符号化画像をキャプチャすることにより暗号化キーを交換することができる。EHR交換のセキュリティを改善するために、非対称キー暗号化プロセスを採用することができる。非対称キー暗号化システムは、数学的にリンクされた2つの別個のキーを使用する。それらキーは、EHR交換用の公開キーと秘密キーを生成できる認証サービスによって提供される。場合によっては、認証プロセスに関連する情報を患者EHRメタデータ620および/または提供者EHRメタデータ622に記録することができる。そのような情報には、デバイス602または604および/または当事者の認証を確認するメッセージが含まれる。
【0074】
特定の実施形態では、デバイス602または604が、患者EHRメタデータ620および/または提供者EHRメタデータ622にEHR交換を記述する詳細情報を記録するように構成されるものであってもよい。例えば、患者EHRメタデータ620および提供者EHRメタデータ622は、EHR交換に関係するコンポーネント、受信した情報の肯定的な確認(受信したEHRを含む)、EHR交換のコンテンツのリスト、認証されたユーザ情報、EHR交換の参加者のアドレス、および/またはEHR交換に対応する日時情報を識別することができる。患者EHRメタデータ620および/または提供者EHRメタデータ622内の情報は、患者デバイス602および/または提供者デバイス604によって維持されるトランザクションログから取得することができる。
【0075】
システム600は、スタンドアロンサーバまたはプラットフォームとして実装される、または1または複数のEHRシステムおよび/またはアグリゲータ612に統合される品質/報酬アドミニストレータ618を含むことができる。報酬ベースのシステムの使用は、患者のスマートフォンや他のモバイル通信および/またはコンピューティングデバイスによって開始または有効化された情報フローの改善により、エラー、コストおよび/またはサービスの重複を低減することができる。一例では、支払者は、コストまたは無駄を削減するためのツールとして、品質/報酬アドミニストレータ618を動作させることができる。別の例では、提供者は、提供する医療サービスの効率と有効性を改善するツールとして、品質/報酬アドミニストレータ618を動作させることができる。
【0076】
一態様によれば、患者または支払者のクライアントは、例えば、EHRを提供者と共有すること、およびEHRメタデータ620、622を支払者と共有することを許可することに対して、報酬を得ることができる。提供者とEHRを共有すると、医師または他の提供者がサービスの提供時に患者の完全な関連する医療歴を確実に持つことにより、医療過誤のリスクおよび冗長な医療が提供されるリスクを低減することができる。従来は、3人に1人またはそれ未満の医師が、異なる医療システムの医師または医療提供者と記録を共有している。このため、患者が患者デバイス602を介して維持またはアクセスされた医療記録を共有できる場合、緊急医療施設、緊急治療室、専門医、または新たな診療室で医療サービスを求める患者の治療をより効率的に提供することができる。患者デバイスは、本明細書で説明する医療アプリケーションを使用して重要な情報を照合することができる。
【0077】
患者は、患者デバイス602を介して維持またはアクセスされる医療記録を共有するインセンティブを得ることができる。保険会社または他の支払者は、EHRを医療提供者と実際に共有する見返りとして、顧客に現金で賞金を与え、料金の割引を提供し、または他の価値あるインセンティブを提供することができる。一例では、品質/報酬アドミニストレータ618は、患者EHRメタデータ620を収集し、EHRデータの共有を伴う医療提供者との遣り取りの数に基づいて報酬を計算することができる。EHRデータの共有には、医師または他の医療提供者と出会った日付に対応するEHRのアップロードとダウンロードが含まれる。品質/報酬アドミニストレータ618は、患者EHRメタデータ620を医師EHRメタデータ622および/または請求記録と比較して、EHRの共有が患者と医療提供者との間の遣り取りと一致することを確認することができる。また、提供者は、患者と提供者との間の遣り取り中に、患者デバイス602を介してEHR更新に参加するよう奨励される場合もある。提供者は、EHRの近接交換を含む遣り取りの数または割合に基づいて、何らかの経済的インセンティブを受け取ることができる。
【0078】
品質/報酬アドミニストレータ618は、請求プロセッサとともに使用されるようにしてもよい。請求プロセッサは、医療請求データをデコードして、患者と医療提供者との間の遣り取りの目的および/または結果を特徴付けるように構成されるものであってもよい。品質/報酬アドミニストレータ618は、現在の関連するEHRが患者デバイス602を介して患者によって提供されたかものであるか否かを示す患者および/または提供者からの情報を提供することができる。品質/報酬アドミニストレータ618は、情報の交換が冗長な手順の防止と効率の改善を助けたか否かを評価することができる。その評価に基づいて、EHR交換プロセスの改善を実行することができる。
【0079】
請求プロセッサと協働する品質/報酬アドミニストレータ618は、不正確または不正な請求の事例を排除または削減することができる。例えば、患者EHRメタデータ620は、医療提供者との遣り取りの性質と、遣り取りの結果とを明示的または暗示的に識別する情報を含むことができる。結果は、医療提供者によってEHRに記録され、その後、患者にダウンロードされ、かつ/または品質/報酬アドミニストレータ618に提供される。品質/報酬アドミニストレータ618は、患者EHRメタデータ620を要求および/または定期的に受信することができる。品質/報酬アドミニストレータ618は、患者EHRメタデータ620を解析して、患者と提供者との間の遣り取りおよびイベントを識別することができる。識別されたイベントおよび遣り取りの日付は、医療提供者から受信した請求エントリと照合され、それにより、イベントおよび遣り取りの報告の正確性を確保するとともに、処置の適切かつ正確な会計を利用できるようにする。場合によっては、品質/報酬アドミニストレータ618は、支払者からの要求に応答して、患者と医療提供者との間の遣り取りの発生を確認することができる。品質/報酬アドミニストレータ618は、EHRデータおよび/または以前に受信した患者EHRメタデータ620を検索することができる。品質/報酬アドミニストレータ618は、患者デバイス602上の医療アプリケーションが患者EHRメタデータ620を品質/報酬アドミニストレータ618に転送することを要求することができる。品質/報酬アドミニストレータ618は、以前に受信した提供者EHRメタデータ622を検索し、かつ/または提供者デバイス604または記録システム上の医療アプリケーションが提供者EHRメタデータ622を品質/報酬アドミニストレータ618に転送することを要求することができる。これに関して、患者デバイス602上の医療アプリケーションは、ICD10またはSNOMED診断コード、またはダウンロードされたEHR内に与えられるNLM RxCuiまたはFDA NDC投薬コードなどの他の医療コードを解釈またはデコードするように構成されるものであってもよい。
【0080】
患者と医療提供者との間のEHRの交換は、典型的には患者の同意を必要とする。患者が近接交換を開始したときに、医師の診察中にEHRを共有するという同意を本質的に提供することができる。場合によっては、同意が肯定的に提供される。医療アプリケーションは、EHRを転送することを患者に通知して、EHRを転送したい旨の確認を明示的に要求することができる。場合によっては、医療提供者は、患者と医療提供者との間の遣り取りの前、またはその最中に同意を得ることができる。同意は、例えば、EHRの転送を受け入れる前に医師によって取得される場合がある。患者EHRメタデータ620の収集と転送は、患者からの事前の同意を条件とすることができる。場合によっては、患者は、患者EHRメタデータ620の収集と転送を許可するための同意を与えた後に、報酬プログラムに登録することができる。医師EHRメタデータ622の収集および転送は、提供者および/または患者によって提供される事前の同意を条件とすることができる。場合によっては、提供者は、患者固有のEHRメタデータを生成するのに十分な患者の同意を有していないが、提供者は、提供者の報酬プログラムで使用するメタデータを集約できることがある。患者が報酬プログラムに登録している場合、かつ/または提供者が患者から同意を得た場合、提供者は、患者に固有の提供者EHRメタデータ622を収集して転送することができる。
【0081】
EHRの他の例および他の情報交換
特定の実施形態では、政府および民間の医療ポータルから容易にダウンロードして、標準化された健康概要を患者が利用できるようにするとともに、医療提供者と共有することができる。場合によっては、患者と医師間、または2人の医師間で、健康記録および関連する健康情報の即時かつ安全な近接交換が可能になる。交換は、モバイルデバイス302、308を使用してリアルタイムで行われる(
図3を参照)。本発明の特定の実施形態は、患者の暗示的または明示的な同意に直面している間に、ローカル無線ネットワークを介した患者デバイス302から医師デバイス308へのEHRデータの安全かつ容易な通信を可能にする。交換は、個々のアカウント名、アドレス、セキュリティログインパラメータを使用してネットワークサーバや提供者ワークステーションを設定することを必要とせずに、医師の診療室、緊急治療室、緊急医療センタまたは病院で行われる。近接交換は、交換される情報の送信者と受信者が物理的に互いを認識でき、無線ネットワークなどのネットワークを介して互いに連絡可能である場合に、個々の健康情報の即時アクセスと安全な交換を提供する。
【0082】
特定の実施形態において、医師は、モバイルデバイス302、308、314を使用して、患者または別の医師と健康情報を交換することができる。この交換は、2台の携帯電話、2台のタブレットまたは他のコンピュータ間、または携帯電話とタブレットまたは他のコンピュータとの間で行われる。
【0083】
患者デバイス302は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、個人の健康記録および健康情報を安全に格納および編成するように構成されるようにしてもよい。患者デバイス302は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、患者ポータルアカウントに自動的にアクセスし、自動的にログインして現在のおよび更新された患者の健康記録を取り出すように構成されるようにしてもよい。患者デバイス302は、患者デバイス302によって維持されるログインおよび他の識別および認証を使用して、患者ウェブポータルから健康記録を自動的にダウンロードおよび結合するように、さらに適合されるようにしてもよい。
【0084】
特定の実施形態では、モバイルデバイス302のカメラを使用して健康文書および/または身体の一部の写真を撮るように、患者デバイス302を適合させることができる。患者デバイス302は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、患者のモバイルデバイス上の他のアプリケーションによって作成された記録にアクセスするように構成されるようにしてもよい。近接交換は、1または複数の健康記録と健康情報を医師に転送するために使用することができる。
【0085】
患者デバイス302は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、医師のモバイルデバイス308から近接交換を使用して医師から、診察概要、照会ノート、検査結果、患者への指示などの健康記録を直接受信するように構成されるようにしてもよい。
【0086】
患者デバイス302は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、医師デバイス308から近接交換を使用して医師により転送される文書、写真、音声および/またはビデオ記録を含む様々な種類の記録の受信を可能にするように構成されるものであってもよく、患者デバイス302は、様々な医師との間で交換される記録を保存および編成するように、さらに構成されるものであってもよい。
【0087】
医師デバイス308は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、個々の患者記録および数人の患者に関連する健康情報を安全に保存および編成できるように構成されるようにしてもよい。医師デバイス308は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、医師デバイス308上の電子医療記録(EMR)アプリケーションなどの他のアプリケーションによって作成された記録にアクセスするように構成されるようにしてもよい。
【0088】
医師デバイス308は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、医師デバイス308のカメラにより患者記録および/または患者の身体の一部の写真を撮るように構成されるようにしてもよい。医師デバイス308は、フォローアップ治療の指示を含む音声記録を作成して、そのような記録を医師デバイス308上の患者の記録の一部として保存するように、さらに適合させることができる。
【0089】
医師デバイス308は、アプリケーションまたはエージェントを使用して、患者のモバイルデバイスから近接交換により患者から健康記録を直接受信して、様々な提供者、電子医療記録、健康情報交換および他のポータルから健康関連情報をダウンロードするように構成されるようにしてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、患者または医師の何れかが近接交換を開始することができる。通信のイニシエータは、ボタンを押すかまたは他の方法で、それぞれのモバイルデバイス302または308のエージェントまたはアプリケーションの機能をアクティブにすることができる。その後、イニシエータモバイルデバイス302または308は、無線ネットワークを介して、相手が積極的に特定できる名前を含む識別子をブロードキャストすることができる。受信者は、近接交換の要求が受信された旨の通知を受けて、イニシエータの名前を受信することができる。受信者は、受信者のモバイルデバイス302または308の範囲内で検出されたイニシエータを選択できる(例えば、別の医師と別の患者が近くの診察室で交換を開始する場合がある)。近接交換は、受信者がイニシエータを受け入れたときに、開始するように許可される。
【0091】
一例では、BluetoothおよびWiFiネットワークが存在する。モバイルデバイスは、その無線範囲内でアクセスできる場合に、WiFiアクセスポイント(AP)を使用して近接交換を実行するという要望を最初に通知することを試みることができる。両方の通信当事者のデバイスが同じAPに同時にアクセスできる場合、そのAPを介して近接交換が実行され、そうでない場合は、Bluetoothを介してそれらを接続する試みがなされる。ある実施形態では、Bluetooth接続が最初に試行される。
【0092】
特定の実施形態では、データが、近接交換による転送のために暗号化される。暗号化は、基盤となる無線ネットワークのセキュリティ機能に依存しないセキュリティを提供する。健康記録や個人の健康情報などの患者データは、モバイルデバイス302、308に暗号化された形式で保存される。一例では、モバイルデバイス302または308に固有の秘密暗号化キーでAES暗号化アルゴリズムを使用して暗号化が実行される。暗号化キーは、モバイルデバイス302または308上のエージェントまたはアプリケーションの設定およびインストール中に生成される。暗号化キーは、ユーザパスワードと64バイトの乱数に基づくものであってもよい。暗号化キーは、特別に保護されたハードウェアのデバイスに安全に保存される。この暗号化は、モバイルデバイス302、308のデータの機密性と完全性の両方を保護する。
【0093】
近接交換による送信の前に、暗号化されたデータは、送信デバイスのローカル暗号化キーを使用して最初に解読されるようにしてもよい。その後、送信者と受信者の両方に知られ、かつ通信セッションの存続期間中にのみ存在するように動的に作成される暗号化キーを使用して、解読されたデータを暗号化することができる。例えば、Diffie-Hellmanアルゴリズムを使用して、2台のモバイルデバイス302、308のみがキーを知っているような形で、通信セッション暗号化キーを作成することができる。暗号化されたデータは、宛先モバイルデバイス308または302で受信されると、現在の近接交換に関連付けられたキーを使用して復号され、その後、保存される前に、宛先デバイスのローカル暗号化キーを使用して再暗号化される。
【0094】
特定の実施形態では、予め規定されたネットワークインフラストラクチャを必要とせずに、健康記録および関連する健康情報をリアルタイムで安全に交換することができる。近接交換は、互いに物理的に認識できかつネットワークを介して互いに電子的に通信できる2つの当事者間の安全な通信を提供する。
【0095】
特定の実施形態では、近接交換中のオプションとして、患者デバイス302と医師デバイス308との間で個人の識別情報および連絡先情報を交換することができる。個人の識別情報は、名前、電話番号、電子メールアドレス、写真を含むことができ、そのような情報は、医師と患者間の後の連絡を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、連絡先情報は、各当事者が送信することを要求することなく、自動的に交換される。連絡先情報は、当事者間で交換される記録に自動的に添付され、それにより、ファイリングが容易になるとともに、それぞれのモバイルデバイス302、308上での検索を高速化することが可能になる。
【0096】
記録の所有者および提供者は、モバイルデバイスまたは従来のコンピューティングプラットフォーム上に提供される個人ポータルを通じて記録の所有者のEHRにアクセスすることができる。記録の所有者は、複数の異なるソースからEHR情報にアクセスすることができ、1または複数の提供者にEHR情報への部分的または完全なアクセスを提供することができる。
図7は、本発明の特定の態様に係る、個人ポータルを使用したEHR情報の提示を示している。個人ポータルは、医療従事者、保険会社、サービスの支払いを担当するエンティティおよび他の提供者を含む複数のソースからの情報を含む単一の表示領域を提示することができる。EHR情報は、コンピュータシステムまたはネットワークサーバを使用して複数のEHRシステムにアクセスすることでリモートで結合されてから、情報がフィルタリングされて記録の所有者または提供者に提示される。アグリゲーションサーバは、複数のEHRシステムが記録の所有者および提供者ベースの認証情報を維持することを要求するのではなく、記録の所有者および提供者ベースに関連する識別、認証および資格サービスを集中サービスとして提供することにより、システムの複雑さを低減することができる。いくつかの実施形態では、ポータルまたはエージェントが、複数のEHRシステムからのEHR情報に直接アクセスして結合することができる。
【0097】
認定サービスは、複数のEHRシステムから得られた結果をフィルタリングすることができる。受信した記録は、政府の規制を適用する特定の予め設定されたルールに基づいて、フィルタリングされる。例えば、アクセスにより州または国の管轄区域間で医療情報が転送される場合、特定の記録にアクセスできないことがある。受信した記録は、記録の所有者、提供者、または記録を提供するEHRシステムによって確立されたルールに基づいて、フィルタリングされる場合もある。一例では、記録の所有者が、1または複数の提供者に知らせないようにすべきEHRのセットまたはEHRのクラスを決定することができる。記録の所有者は、足治療医に送られるEHRに、精神医学的治療に関連する記録を含めないように要求することができ、その逆も同様である。
【0098】
アグリゲータは、表示のために情報をフォーマットし、かつ/または医師または他のユーザに表示する最終フォーマットを配信するインターフェースアプリケーションに、情報を提供することができる。インターフェースアプリケーションは、記録の所有者のコンピューティングデバイスにデプロイされたポータルまたはエージェントにおいて具体化することができる。インターフェイスアプリケーションは、提供者の場所にあるネットワークアプリケーションのプラグインとして提供される場合がある。アグリゲータによって提供される情報は、Webブラウザ、カスタムビューアーアプリケーション、またはドキュメントリーダやプレゼンテーションツールなどの任意の適切なオフィスオートメーションアプリケーションで表示することができる。特定の実施形態では、エンドユーザ、システムアドミニストレータ、提供者、支払者、および自分の記録が表示される記録の所有者の嗜好および要求の何れかの組合せに基づいて、表示形式を指定および/またはカスタマイズすることができる。例えば、記録の所有者は、表示するフィールドと保留すべきデータを決定することができる。別の例では、エンドユーザに設定された許可レベルに基づいて、経済的情報が表示用に選択される。
【0099】
特定の実施形態では、記録の所有者が、彼のプライマリケア提供者(医師)、専門医および薬局などの複数の医療提供者から複数の場所で医療サービスを受ける、または受けることを期待する患者である。記録の所有者は、民間または公的な健康保険プランで保険に加入している場合がある。各提供者は、記録の所有者の個別の電子健康記録を保持する場合がある。いくつかの実施形態では、記録の所有者は、アクセスが記録の所有者の使用のためである場合、オンラインで提供者によって維持される記録の少なくとも一部へのアクセスを許可される。例えば、記録の所有者は、自宅から特定の記録にアクセスして、保険のステータスや医療の予約を確認したり、処方薬の補充を確認したり、担当医と電子メールで遣り取りしたりすることができる。
【0100】
特定の実施形態は、継続的に利用可能な記録の所有者の健康記録への、記録の所有者が制御する、実用的で、柔軟な、直接アクセスを提供する。いくつかの実施形態では、記録の所有者が、本明細書に記載の電子配信システムのユーザではない1または複数の提供者にEHRを提示する必要がある場合に、オンライン記録の要約を印刷および/または取外し可能な記憶装置に保存することができる。しかしながら、印刷または保存された記録は通常静的であることから、タイムリーに更新されない場合には、ポイントオブケアで記録が提示される時までに、古くなる可能性がある。さらに、保存または印刷された記録は、通常、緊急時や定期的な医療の予約時を含め、常に利用可能ではなく、安全に保存または携帯されない可能性があり、このため、これらの保存または印刷された記録は、紛失または改竄される可能性がある。さらに、EHRへの電子アクセスは、通常は紙ベースおよび単一施設ベースである、既存の複雑で効果のない患者同意管理ソリューションを解決する可能性がある。
【0101】
同意は、記録の所有者のEHRを配信する要求の一部として記録の所有者によって提供されるものであってもよい。特定の実施形態は、医療提供者による直接アクセスを提供して所有者記録を記録し、それにより現在の記録所有者の記録が提供者システムに直接ダウンロードされる。記録の所有者は、記録所有者の記録の一部またはすべてを提供者システムに直接転送するように要求するときに、認証を提供する必要がある場合がある。いくつかの実施形態では、記録の所有者が、時間制限付き同意を提供して、提供者が別のサービス提供者またはアグリゲータから患者の記録を直接要求およびアクセスできるようにすることもできる。同意は、スマートフォン、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェア、または他のポータブル処理デバイスに実装できるポータルまたはエージェントを使用して、記録の所有者によって直接提供されるものであってもよい。
【0102】
デバイス設定とEHR表示の例
ポータルまたはエージェントは、コンピューティングデバイス上に提供される。ポータルは、ブラウザ、またはコンピューティングデバイスに一時的に保持されるアプリケーションまたはエージェントを介して、記録の所有者のEHR情報へのアクセスを提供することができる。ポータルは、ブラウザを介してダウンロードおよび実行されるアプリケーション、またはUSBドライブなどのポータブルストレージデバイスからロードされるアプリケーションを備えることができる。一例では、USBドライブが、暗号化キー、生体認証情報などを通じて、USBドライブのユーザを識別および/または認証するためのクレデンシャルとして使用でき、記録の所有者がコンピューティングデバイス上にポータルを確立できるようにするアプリケーションを提供することができる。USBドライブまたは別のクレデンシャルは、保険会社、政府、またはプライマリケア提供者システムなどによって発行され、記録の所有者に割り当てられた個人の一意の識別子、記録ロケータアドレスおよびログインのような記録の所有者情報を保持することができる。また、USBドライブは、以前にダウンロードしたEHRドキュメントを、通常は暗号化された形式で保持するように構成することもできる。
【0103】
ポータルは、1または複数のダウンロード可能なアプリケーションを備えるようにしてもよく、ネットワークサーバによって実行されるサービスを配信するようにしてもよい。エージェントは、コンピューティングデバイスによってインストールまたは他の方法で維持される。エージェントは通常、記録の所有者がEHR情報にアクセスできるようにする1または複数の機能を実行する。エージェントは、RFID、Bluetooth対応デバイス、WiFi接続デバイス、またはユーザを識別するのに使用される別のデバイスなどの無線デバイスを識別することができる。エージェントは、スマートフォン、タブレットコンピュータまたはノートブックコンピュータにインストールされたアプリケーションであり、記録の所有者が識別子を使用してEHR情報にアクセスすることができる。識別情報には、ユーザID、パスワード、チャレンジ、指紋、虹彩スキャン、搭載カメラによる顔面スキャンなどの生体情報の組合せなどが含まれる。
【0104】
エージェントまたはポータルは、記録の所有者の識別および認証、EHRへのアクセス、提供者に転送されるEHRの識別および認証、EHRのアグリゲーション、および記録所有者の個人ポータルから提供者システムへのEHRの直接転送を含む複数の機能を実行するように構成されている。
【0105】
特定の実施形態では、記録の所有者が、プロセッサおよびストレージを有するスマートポータブルデバイスを使用する。記録の所有者は、フラッシュドライブ、スマートカード、無線接続可能なストレージデバイスなどをコンピュータに接続することができる。一例では、記録の所有者は、提供者コンピューティングワークステーション上のNFCレシーバに応答するか、またはアクティブ化する、RFID、スマートウォッチ、ヘルスまたはフィットネス・トラッカ、アイウェア、スマートフォンなどのNFCデバイスを提示することができる。また、記録の所有者は、ユーザまたは提供者が表示する光学式リーダまたはカメラキャプチャバーコードを使用して、提供者と認証情報を交換したり、かつ/またはEHR情報へのアクセスを自動的に有効にする生体情報をキャプチャしたりすることができる。さらに、患者のデバイスと提供者のポータブルデバイス間のデバイス間通信プロトコルを使用して、電子医療記録に自動的にアクセスして交換したり、あるいは医療提供者とそのような交換を開始したりすることができる。
【0106】
図7は、コンピューティングデバイス702へのEHR情報の配信の一例を示す図面700である。コンピューティングデバイス702は、医療提供者または患者により操作されるものであってもよく、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータまたは他の適切なコンピューティングデバイスを含むことができる。コンピューティングデバイス702は、患者のEHRに基づいて要約フォーム710を受け取り、表示することができる。通常、要約フォームは「オンザフライ」および/またはオンデマンドで生成される。要約フォーム710は、進行中の活動を反映するために、または情報704、706a-706nの1または複数のソースから受信した遅延情報を追加するために動的に更新されるようにしてもよい。要約フォーム710は、ローカルソースから読み出された情報を使用して生成されるようにしても、またはローカルエリアネットワークおよび/またはインターネットなどの広域ネットワークを含むネットワーク708を介して生成されるようにしてもよい。要約フォーム710は、1または複数のEHRソース706a-706n、保険金請求データベース704、または他のソースから読み出された情報から生成されるものであってもよい。要約フォーム710は、1または複数のEHRソース706a-706n、保険金請求データベース704、または他のソースから読み出された情報を組み合せるアグリゲータ718によって提供される情報から生成されるようにしてもよい。要約フォーム710は、コンピューティングデバイス702またはプロキシデバイスまたはサーバ720に提供されるアプリケーションによって生成されるようにしてもよい。
【0107】
要約フォーム710はナビゲート可能であり、コンピューティングデバイス702のユーザは、より詳細な情報を取得するために要約フォーム710内の特定のアイテム712、716を選択することができる。要約フォーム710は、コンピューティングデバイスのユーザが操作を開始することを許可する操作部714を含むことができる。一例では、操作部714は、起動されたときに、患者、提供者または支払者の連絡先情報を含む追加情報をコンピューティングデバイス702に取得させるボタンまたはボタンアイコンを含むことができる。別の例では、操作部714が、起動されたときに、コンピューティングデバイス702に、家族歴、アレルギー、予防接種および/または移植デバイスを含む患者の履歴に関連する追加情報を提示させるボタンまたはボタンアイコンを含むことができる。別の例では、操作部714は、起動されたときに、コンピューティングデバイス702に、要約フォーム710の情報またはダウンロードされたEHRに提供される他の情報をエクスポートまたは印刷させるボタンまたはボタンアイコンを含むことができる。別の例では、操作部714は、起動されたときに、コンピューティングデバイス702に、条項および条件、同意情報、およびユーザが利用できる現在の報酬を含む報酬プログラムに関連する情報を提示させるボタンまたはボタンアイコンを含むことができる。
【0108】
要約フォーム710は、EHR保有者、保険提供者、政府機関、医師または別の医療提供者の何れであっても、ユーザの要件に合わせて調整することができる。要約フォームは、任意の適切なプラットフォームで見易くするためにフォーマットすることができる。要約フォームは、医師または患者が最小限のナビゲーションにより1か所で所望の情報にアクセスできるように、単一のビュー、ウィンドウおよび/または画面で提示することができる。この単一画面表示は、オンザフライで生成でき、臨床情報(例えば、CCD/CCR形式で)、管理情報、および保険資格情報や過去の利用状況や遭遇情報などの経済的情報を含むことができる。医療提供者は通常、患者が受けたサービスの種類、金額および場所への即時アクセス、並びに、発生した自己負担費用を取得することができる。
【0109】
次に、本発明の特定の態様に係る特定のプロセスを、
図13および
図2を参照して説明する。説明の目的で、軍の退役軍人が使用する本発明の実施形態の一例を説明する。典型的な退役軍人は、様々な退役軍人局(VA)および非VA提供者サイトで医療にアクセスし、退役軍人のEHR情報が政府機関および非政府機関によって維持される。この例では、ポイントオブケア間で交換を行うことができ、ブルーボタン記録などの電子健康記録が、組み込みアプリケーションのインストールを介して構成されるクレデンシャル218またはクライアントデバイス214によって様々な患者ポータルから自動的にダウンロードされる。様々な患者ポータルは、クライアントデバイス214、216および/または218を介してアクセスすることができ、患者ポータルには、VAの「My HealtheVet」、TRICARE Online、およびMyMedicare.gov、および他の例が含まれる。
【0110】
フィードバック制御治療の例
図8は、患者と医療提供者との間の遣り取り800への従来のアプローチを示している。患者は、病状により、医学的治療を求めるように動機付けられる場合がある。患者は、医師または他の医療提供者との診察802に参加することができる。診察802は、通常、患者の医療記録804により通知または案内される。医師は、診察802の間または後に、治療計画806を指示することができる。治療計画806は、薬剤処方、治療、食事、運動および患者によって制御される他のレジメンを含むことができる。診察802の後、患者は、治療計画806の管理808を制御することができる。治療計画806により規定されるある時点で、治療計画806は結果810により終了し、その結果が、患者にとって満足のいくもの、不満足であるものおよび/または医師の期待に応じたものとなり得る。多くの場合、医師は、治療計画806の結果810または管理808の質に関するフィードバック812を受け取ることはない。このため、従来のアプローチは、開ループシステムまたは最小限に制御されたシステムとして動作する。
【0111】
図9は、患者と医療システムとの間の遣り取り900に適用される、本明細書に開示される特定の態様に従って提供される閉ループ制御機構を示している。閉ループ制御機構は、統合EHR交換機構およびインセンティブプログラムを活用して、治療計画904を積極的に管理することができる。閉ループ制御機構は、治療計画904の監視、修正および適応を可能にするフィードバックループ914、916、918、指示された患者の活動906および予想される結果908を効果的に提供することができる。いくつかの態様では、治療計画904の管理が、治療管理システム910によって担われる。いくつかの例では、治療管理システム910は、医師、医師グループ、病院および/または医療システムによって運営される医療管理システムに実装される。他の例では、治療管理システム910が、管理される条件の種類に従って構成できるスタンドアロンシステムとして実装されるようにしてもよい。
【0112】
患者は、医師または他の医療提供者との診察902に参加することができる。場合によっては、患者は、1または複数のEHR管理システム912によって維持される医療記録に医師がアクセスできるように承認を与えることができる。一例では、その承認が、本明細書に開示される近接交換を通じて提供される。医師は、診察902の間または後に治療計画904を立てることができる。治療計画904は、薬剤処方、治療、食事、運動および患者によって制御される他のレジメンを含むことができる。医師は、患者の活動を監視し、インセンティブが与えられた活動を追跡するために、患者モバイル通信デバイスにインストールするアプリケーションを指示することができる。
【0113】
いくつかの例では、治療計画904が、治療管理システム910を使用して生成される。いくつかの例では、治療計画904が、医師により作成されて、治療管理システム910に伝えられる。治療計画904は、患者によって操作されるモバイル通信デバイス(患者デバイス)に送信され、かつ/または適切なEHR管理システム912に記録される。治療管理システム910は、患者デバイスとの関係を確立することができる。治療管理システム910と患者デバイスとの間の関係は、治療計画904が有効である間に治療管理システム910と患者デバイスとの間の電子通信を可能にするために確立されるものであってもよく、通信はスケジュールされるものであっても、あるいは、実際はアドホックであってもよい。
【0114】
いくつかの例では、患者デバイスが、医療の質を評価するために使用できるフィードバック情報を報告することができる。通常、フィードバック情報はモバイル通信デバイスから無線で送信される。患者デバイスは、治療計画904に関連する患者の活動906を報告することができる。治療管理システム910は、治療計画904を時々修正し、それに応じて患者デバイスを更新することができる。患者デバイスと治療管理システム910との間の通信は、第1のタイプの閉ループフィードバック914を提供し、患者の活動906に関する情報が、治療計画904の適応を生じさせることができる。フィードバック914および/またはフィードバック914への応答は適切なEHR管理システム912に記録される。
【0115】
いくつかの例では、患者デバイスによって報告される患者の活動906が、治療管理システム910に、スケジュールを設定させるか、かつ/または追加の診察902のスケジューリングの要求を開始させる。追加の診察902の開始または要求は、第2のタイプ916の閉ループフィードバックと見なされる。医師は、追加の診察902の要求を受け入れることができ、かつ/または患者の活動906の情報を含むフィードバック916を検討することができ、かつ患者と会うことなく、治療計画904を修正、キャンセルまたは拡張することができる。フィードバック916および/またはフィードバック916に対する応答は、適切なEHR管理システム912に記録されるようにしてもよい。
【0116】
第3のタイプの閉ループフィードバック918は、患者によって報告される患者の病状、または患者デバイスに電子的に接続された器具またはセンサによって測定される患者の病状に基づいて、生成される。例えば、測定は、血圧測定装置、血糖値モニタ、インスリンポンプ(例えば、インスリン投与)、酸素源または持続的気道陽圧装置、または他のそのような装置、センサまたは機器から、患者デバイスによって自動的に中継されるものであってもよい。別の例では、患者が、活動、症状および/または測定値を念入りに報告するように動機付けられるようにしてもよい。治療管理システム910は、患者デバイスから受信した情報を監視および照合して、フィードバックパラメータを取得するように構成されるようにしてもよい。フィードバックパラメータを処理して、治療計画904に適用できる補正係数を決定することができる。治療計画904を調整して、所望のまたは予想される結果908を達成する可能性を改善することができる。フィードバックパラメータおよび/または補正係数は、許容可能な結果908がいつ達成されたか否かを判断するために使用される。
【0117】
本明細書に開示される閉ループ制御機構の使用は、結果908を著しく改善し、治療期間を短縮し、効果的な処方を特定し、それにより、治療のコストを削減することができる。本明細書で開示される特定の態様は、正確なフィードバックの提供を容易にする方法論を提供する。閉ループ制御システムに影響する一次フィードバックは、患者のデバイス(通常、スマートフォン)、および/またはデスクトップ、ラップトップ、タブレットコンピュータ、スマートフォンなどの医師のコンピューティングシステムから受け取ることができる。一次フィードバックに応じて二次フィードバックを提供することができ、それにより医師および/または患者に一次フィードバックとしてタイムリーで正確な情報を提供するよう動機付けを与えるか、または他の方法で奨励することができる。場合によっては、患者デバイスは、患者の活動を詳述する情報および医療センサまたは機器によって生成された測定値を自動的に収集するように構成されるようにしてもよい。患者デバイスは、患者にアラームを発することができ、そのアラームが、患者に情報を入力するように要求することができ、入力された情報が一次または二次フィードバックとして機能し得る。患者デバイスは、情報が入力されるまでユーザを促し続けるリマインダとアラームを生成するように構成されている。
【0118】
いくつかの実施形態では、治療計画904の実施が、医師、患者、治療管理システム910、または医師、患者および治療管理システム910の何れかの組合せによって管理または制御されるようにしてもよい。治療計画904の制御および管理は、適切なフィードバックのタイムリーな伝達により促進される。フィードバックに基づいてインセンティブが獲得される場合、医師および/または患者にインセンティブを提供することにより、フィードバックの質と適時性が改善される可能性がある。
【0119】
いくつかの実装形態では、患者のモバイルデバイスにインストールされたアプリケーションによってフィードバックが促されたり引き起こされたりすることがあり、これにより、モバイルデバイスは、医師に伝えられる特定の病状のために医療の質に関連する個別向けの特定の通知で患者に警告することができる。この通知は、医師が価値ベースの奨励金を受け取るために、支払人が規定した医療の質の指標を満たし、それを報告するために医師に求められる行動に関連し得る。場合によっては、患者のモバイルデバイス内にあるソフトウェア、アプリケーション、または別の回路またはモジュールによって、個人向けの特定の通知を生成することができる。場合によっては、コンピューティングクラウドで実行されるアプリケーションによって個人向けの特定の通知を生成し、患者のモバイルデバイスを介して電子的に患者に伝えることができる。特定の通知は、1または複数の医療の質の指標に関連するものであり、かつ病状または指示された治療を最適に管理すべく特定の行動を患者に促すために提供されるものであってもよい。特定の通知は、医療提供者と連絡を取るように患者を促して、取るべき医療の質の推奨行動を伝え、そのような行動が取られたことを確認することができ、かつ/または特定の治療が行われ、または治療目標が達成されたときに、医師と連絡を取るように患者を促して、医療提供者が、獲得した奨励金を得るために必要とされる、推奨される医療の質の行動、医師により取られた実際の医療の質の行動、および/または特定の医療の質の指標または結果の達成についての報告を行うことができる。
【0120】
特定の態様によれば、患者は、彼の医師が取るべき医療行為について、未だ取られていない場合に、自動的に警告を受けることができる。患者は、その行為について医師と話すように促されるようにしてもよい。一例では、患者デバイス(例えば、携帯電話、機器、センサなど)のアプリケーションが、心房細動の診断が入力または検出されたことに気付く。医療の質の通知は、特定の薬の処方が必要であることを患者に警告する。医療の質の通知は、医療の質の通知によって特定される医師を伝えるように患者に助言することができる。場合によっては、医療の質の通知は、患者に、医療の質の通知または関連する医療の質の通知を医師に転送するように促すようにしてもよい。場合によっては、医療の質の通知により、患者のデバイスが、医療の質の通知または関連する医療の質の通知を医師に自動的に転送するようにしてもよい。
【0121】
図10は、本明細書で開示される特定の態様に従って提供される閉ループ制御機構を実装するように適合されるシステム1000を示している。医師または他の医療提供者は、医師または提供者デバイス1002を使用して、診察902中に患者に関連付けられるか、または患者によって操作される患者デバイス1004と遣り取りすることができる(
図9を参照)。いくつかの例では、提供者と患者は、本明細書で開示する特定の態様に係る医療記録の近接交換を含むか又はもたらす認証プロセス1012を使用して、それぞれのデバイス1002、1004間の接続を確立することができる。医療記録は、ネットワーク1006を介して記録の所有者または承認されたユーザがアクセスできる1または複数の電子医療記録管理システム1010から取得することができる。診察902は、医師または提供者デバイス1002、患者デバイス1004および/または電子医療記録管理システム1010に接続された治療管理システム1008を使用して、促進され、監視され、または文書化される。
【0122】
診察902の過程またはその後に、治療計画が医師によって指示される。指示された治療1016は、直接またはネットワーク経由で、かつ/または治療管理システム1008の動作を介して、患者デバイス1004に提供されるものであってもよい。患者デバイス1004は、指示された治療1016の実行を管理するように構成される。患者デバイス1004は、治療管理システム1008と通信して、指示された治療1016に関連するフィードバック情報を中継することができ、かつ/または更新された治療計画を受信することができる。フィードバック情報は、患者デバイス1004に結合または制御される1または複数のセンサまたは機器1014から導出することができる。フィードバック情報は、患者デバイス1004を通じて患者により入力された活動および他の観察のレポートを含むことができる。フィードバック情報は、治療計画に参加している医療提供者、または治療計画の効果を観察している医療提供者によって提供される。治療管理システム1008、医師または提供者デバイス1002および/または患者デバイス1004は、治療中に電子医療記録管理システム1010を更新することができる。
【0123】
図11は、本明細書で開示される特定の態様に従って提供される閉ループ制御機構を実装し得るプロセスフロー1100を示している。プロセスフロー1100は、
図10に示す医師または提供者デバイス1002、患者デバイス1004、治療管理システム1008および/または電子医療記録管理システム1010の何れかの組合せを使用して実装されるプロセスに関連する。このプロセスは、患者の治療に関連するものであり、医師または他の医療提供者との診察中に開始される。
【0124】
患者は、医師が患者の医療管理記録にアクセスすることを承認することができる。医師または提供者デバイス1002と患者デバイス1004との間の近接交換の一部である認証プロセス1102の後に、承認を与えることができる。当事者が承認されると、患者は、承認1104を証明して、電子医療記録管理システム1010が記録1106を医師または提供者デバイス1002に転送することを許可することができる。承認1104は、時間制限されるものであってもよい。
【0125】
一例では、医師は治療を指示することができ、医師または提供者デバイス1002に処方1108を治療管理システムに送信させることができる。医師は、患者に処方を直接提供することもできる。処方は、患者デバイスに、指示された治療を監視させ、時々および/または治療管理システム1008の要求に応じて、または少なくともいくつかの例では医師または提供者デバイス1002からの要求に応じて、フィードバックを提供させるように適合されたアプリケーションを含むことができる。治療管理システム1008は、処方および/または治療計画を電子医療記録管理システム1010に転送することができる。いくつかの実施形態では、治療管理システム1008が、患者デバイス1004に送信される治療計画を生成する。いくつかの例では、治療管理システム1008が、治療計画1112を患者デバイス1004に送信する。その後、治療管理システム1008は、医師または提供者装置1002および/または患者デバイス1004によって提供されるフィードバックを使用して、治療計画の実行を監視することができる。
【0126】
患者デバイス1004は、レポート1114、1116を治療管理システム1008に送信することができる。レポートは、警告、治療計画に関連するイベントについての情報、センサおよび/または機器から得られた情報、患者生成レポート、および他の治療計画に関する情報を含むことができる。医師または提供者デバイス1002は、更新1118を治療管理システム1008と交換することができる。更新1118は、医師によって直接受信される情報、および/または医師または提供者デバイス1002に入力または提供される情報を含むことができる。更新1118は、治療管理システム1008によって患者デバイス1004から受信された情報の中継を含むことができる。更新1118は、治療管理システム1008がフィードバックを処理するときに生成される結果を含むことができる。
【0127】
治療管理システム1008は、治療計画および期待される結果に関してフィードバックを分析するアルゴリズムを使用して、フィードバックを処理するようにしてもよい。アルゴリズムは、治療過程を改善または修正するために、提案、警告および/または修正を生成するように適合されるものであってもよい。治療管理システム1008は、処理の結果に基づいて治療計画1122を更新することができる。一例では、治療管理システム1008が、医師に電話するよう患者を促すことができる。別の例では、治療管理システム1008が、医師が患者に電話するか又は会って状態を確認できるように、医師に分析を提供することができる。別の例では、治療管理システム1008が、医師および/または患者に更なる診察のスケジュール1124を立てるように促すことができる。
【0128】
治療管理システム1008は、電子医療記録管理システム1010を更新1120、1126させて、患者が生成した報告1114、1116、医師の更新1118、フィードバックの分析、更新された治療計画および/または更なる診察1124により生じた情報を反映させることができる。
【0129】
患者向けモバイル技術を使用したインセンティブの例
本開示の特定の態様は、従来のシステムで医師が医療の質の指標について最適に報告するために、患者生成データの包含の欠如と、医療提供者とその患者との間の遣り取りの欠如とを解決するのを補助することができる。医療の質の指標は、患者に提供される医療に基づいて、医療提供者への奨励金を促進するために使用することができる。例えば、患者のモバイルデバイス上で操作できる患者向けのコンピュータアプリケーション、またはバーチャルアシスタントを有する患者向けのコンピュータアプリケーションを使用して、個別化された特定の医療ケア通知を生成し、効果的で質の高い治療を受けるよう患者を導く支援をすることができる。患者向けのコンピュータアプリケーションにより、患者は、医療の質の報告に必要な情報を交換するために、医師と連絡を取ることができる。
【0130】
患者向けコンピューティングアプリケーションは、医療の質の報告システムに直接結び付けられるものであってもよい。一例では、医療の質の報告システムが、
図6に示すシステム600を使用して実施される。他の例では、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(英国)で実施されたQuality and Outcomes Framework(QOF)、またはアメリカ合衆国の2015年のMedicare Access and CHIP Reauthorization Act(MACRA)および/またはMerit Based Incentive Payments Systemのようなシステムにおいて、医療の質のスコアリングと報告が、英国の一般開業医(GP)を含む医療従事者が適切な患者向けコンピューティングアプリケーションを患者に指示するための強力なインセンティブになる。
【0131】
QOFを伴う一例では、開業医は、とりわけ、患者/ユーザへの通知の発行を容易にするために、救急医療用のHumetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームのインストールを指示することができる。Humetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームには、分析システムとアルゴリズムが組み込まれている。Humetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームは、緊急記録の作成時にユーザにより入力される1または複数のQOF固有の条件に基づいて、選択および/または構成される。Humetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームは、患者にQOF固有の行動を実行し、必要に応じてGPとその行動について話し合うよう警告することができる。Humetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームは、患者がQOF関連の治療の問題をGPに持ち込むように案内し、最適なQOFスコアリングを達成するのを支援するように設計された通知を提供するように構成されている。Humetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームは、特に、心房細動(QOF# AF007)、冠動脈疾患の二次予防(QOF# CHD002、CHD005、CHD007)、心不全(QOF# HF003、HF004)、脳卒中およびTIA、てんかんなど、複数の病状に対してQOF値を提供することができる。一例として、ユーザがHumetrix SOS QR(登録商標)モバイルプラットフォームを介して緊急記録を作成する際の条件として心房細動を選択すると、アプリ内で以下の通知を引き起こして、GPが心房細動のためにAF007を満たすのを支援する。
「あなたは抗凝固薬を服用していますか?
はいの場合-この薬剤をあなたの薬剤リストに含めることを忘れないでください。
そうでない場合は、あなたのGPとこれについて話し合いましたか?」
【0132】
QOFを伴う別の例では、開業医は、高血圧管理のためにHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームを指示することができる。高血圧管理用のHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームに組み込まれた分析システムは、患者および/またはユーザに継続的な通知を発して、患者がGP治療計画を順守するように患者を導いたり、支援したりすることができる。高血圧管理用のHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームは、高血圧管理用のHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームによって対処されたQOF固有の状態に関連する最適なQOFスコアリングをGPが達成するのを支援することができる。複数のQOFの状態が、高血圧管理用のHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームによって対処される。高血圧管理用のHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームは、高血圧管理(QOF# HYP006)、および冠動脈疾患の二次予防(QOF# CHD002)、脳卒中およびTIA(QOF# STIA003)、または糖尿病(QOF# DM003)のための患者および臨床医ツールとして動作させることができる。高血圧管理用のHumetrix TENSIOモバイルプラットフォームは、患者ユーザがGPにより設定された血圧目標を達成したときに、次のような種類の通知により、患者ユーザに知らせることができる。
「おめでとうございます!あなたの最新の血圧測定値は、正常に向けての健全な傾向を示しています。指示された目標を達成した最新の血圧測定値をあなたのGPに通知してください。」
QOF高血圧症(HYP 006)150/90mmHg血圧目標のGPによる報告は、TENSIOの使用により患者によって最適化される。
【0133】
処理回路と方法の例
図12は、本明細書で開示される1または複数の機能を実行するように構成された処理回路1202を使用する装置1200のハードウェア実装の簡略化された例を示す概念図である。本開示の様々な態様に従って、本明細書に開示される要素、または要素の任意の部分、または要素の任意の組合せは、処理回路1202を使用して実装される。処理回路1202は、ハードウェアおよびソフトウェアモジュールのいくつかの組合せによって制御される1または複数のプロセッサ1204を含むことができる。プロセッサ1204の例には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、状態機械、シーケンサ、ゲートロジック、ディスクリートハードウェア回路、およびこの開示を通じて説明されている様々な機能を実行するように構成された他の適切なハードウェアが含まれる。1または複数のプロセッサ1204は、特定の機能を実行し、かつソフトウェアモジュール1216の1つにより構成、増強または制御される専用プロセッサを含むことができる。1または複数のプロセッサ1204は、初期化中にロードされるソフトウェアモジュール1216の組合せにより構成され、かつ動作中に1または複数のソフトウェアモジュール1216をロードまたはアンロードすることによってさらに構成される。
【0134】
図示された例では、処理回路1202が、全体としてバス1210によって表されるバスアーキテクチャで実装される。バス1210は、処理回路1202の特定の用途および全体的な設計上の制約に応じて、任意の数のバスおよびブリッジの相互接続を含むことができる。バス1210は、1または複数のプロセッサ1204およびストレージ1206を含む様々な回路を互いにリンクする。ストレージ1206は、メモリデバイスおよび大容量ストレージデバイスを含むことができ、本明細書ではコンピュータ可読媒体および/またはプロセッサ可読媒体と呼ばれることがある。また、バス1210は、タイミングソース、タイマ、周辺機器、電圧調整器および電力管理回路などの様々な他の回路をリンクすることができる。バスインターフェース1208は、バス1210と1または複数のトランシーバ1212との間のインターフェースを提供することができる。トランシーバ1212は、処理回路によってサポートされる各ネットワーキング技術に対して提供することができる。場合によっては、複数のネットワーキング技術が、トランシーバ1212にある回路または処理モジュールの一部またはすべてを共有することができる。各トランシーバ1212は、伝送媒体を介して他の様々な装置と通信する手段を提供する。装置1200の特性に応じて、ユーザインターフェース1218(例えば、キーパッド、ディスプレイ、スピーカ、マイクロフォン、ジョイスティック)も提供され、直接またはバスインターフェース1208を介してバス1210に通信可能に結合されるようにしてもよい。
【0135】
プロセッサ1204は、バス1210の管理を担うとともに、ストレージ1206を含むコンピュータ可読媒体に格納されたソフトウェアの実行を含む全体的な処理を担うことができる。これに関して、プロセッサ1204を含む処理回路1202は、本明細書に開示の方法、機能および技術の何れかを実行するために使用することができる。ストレージ1206は、ソフトウェアの実行時に、プロセッサ1204によって操作されるデータを記憶するために使用することができ、ソフトウェアは、本明細書に開示の方法の何れかを実行するように構成することができる。
【0136】
処理回路1202内の1または複数のプロセッサ1204は、ソフトウェアを実行することができる。ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語などの何れかで呼ばれても、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プロシージャ、ファンクション、アルゴリズムなどを意味するものとして広く解釈される。ソフトウェアは、ストレージ1206または外部のコンピュータ可読媒体にコンピュータ可読形式で存在することができる。外部コンピュータ可読媒体および/またはストレージ1206は、非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。非一時的コンピュータ可読媒体は、例として、磁気記憶装置(例えば、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストリップ)、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD))、スマートカード、フラッシュメモリデバイス(例えば、「フラッシュドライブ」、カード、スティック、キードライブなど)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、電気的に消去可能なPROM(EEPROM)、レジスタ、リムーバブルディスク、およびコンピュータがアクセスして読み取ることができるソフトウェアおよび/または命令を格納または伝送するためのその他の適切な媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体および/またはストレージ1206はまた、例として、搬送波、伝送線、およびコンピュータがアクセスして読み取ることができるソフトウェアおよび/または命令を伝送するための任意の他の適切な媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体および/またはストレージ1206は、処理回路1202内、プロセッサ1204内、処理回路1202の外部に存在するか、処理回路1202を含む複数のエンティティにわたって分散配置されるものであってもよい。コンピュータ可読媒体および/またはストレージ1206は、コンピュータプログラム製品で具現化されるようにしてもよい。例として、コンピュータプログラム製品は、パッケージ材料内にコンピュータ可読媒体を含むことができる。当業者は、特定の用途およびシステム全体に課される全体的な設計上の制約に応じて、本開示全体にわたって提示および説明される機能をどのように実装するのが最善であるかを認識するであろう。
【0137】
ストレージ1206は、本明細書においてソフトウェアモジュール1216と呼ばれることがある、ロード可能なコードセグメント、モジュール、アプリケーション、プログラムなどで維持および/または編成されるソフトウェアを維持することができる。ソフトウェアモジュール1216の各々は、命令およびデータを含むことができ、それらは、処理回路1202にインストールまたはロードされて、1または複数のプロセッサ1204により実行されると、1または複数のプロセッサ1204の動作を制御するランタイムイメージ1214に寄与する。実行されると、特定の命令は、処理回路1202に、本明細書に記載の特定の方法、アルゴリズムおよびプロセスに従って機能を行わせることができる。
【0138】
いくつかのソフトウェアモジュール1216は、処理回路1202の初期化中にロードされ、それらソフトウェアモジュール1216は、本明細書に開示の様々な機能の実行を可能にするように処理回路1202を設定することができる。例えば、いくつかのソフトウェアモジュール1216は、プロセッサ1204の内部デバイスおよび/または論理回路1222を設定し、トランシーバ1212、バスインターフェース1208、ユーザインターフェース1218、タイマ、数値演算コプロセッサなどの外部デバイスへのアクセスを管理することができる。ソフトウェアモジュール1216は、割り込みハンドラおよびデバイスドライバと相互作用し、処理回路1202によって提供される様々なリソースへのアクセスを制御する制御プログラムおよび/またはオペレーティングシステムを含むことができる。リソースは、メモリ、処理時間、トランシーバ1212へのアクセス、ユーザインターフェイス1218などを含むことができる。
【0139】
処理回路1202の1または複数のプロセッサ1204は多機能であってもよく、ソフトウェアモジュール1216のいくつかが、ロードされて、異なる機能または同じ機能の異なるインスタンスを実行するように構成される。1または複数のプロセッサ1204は、例えば、ユーザインターフェース1218、トランシーバ1212およびデバイスドライバからの入力に応答して開始されるバックグラウンドタスクを管理するようにさらに適合させることができる。複数の機能の実行をサポートするために、1または複数のプロセッサ1204は、マルチタスク環境を提供するように構成され、複数の機能の各々が、必要または希望に応じて1または複数のプロセッサ1204によってサービス提供されるタスクのセットとして実装される。一例では、マルチタスク環境は、異なるタスク間でプロセッサ1204の制御を引き渡すタイムシェアリングプログラム1220を使用して実装することができ、各タスクは、未処理の動作の完了時に、かつ/または割り込みなどの入力に応答して、1または複数のプロセッサ1204の制御をタイムシェアリングプログラム1220に戻す。タスクが1または複数のプロセッサ1204の制御を有する場合、処理回路は、制御タスクに関連付けられた機能によって対処される目的のために効果的に特化される。タイムシェアリングプログラム1220は、オペレーティングシステム、ラウンドロビンベースで制御を転送するメインループ、機能の優先順位付けに従って1または複数のプロセッサ1204の制御を割り当てる機能、および/または1または複数のプロセッサ1204の制御をハンドリング機能に提供することにより、外部イベントに応答する割り込み駆動メインループを含むことができる。
【0140】
図13は、医療サービスを管理する方法を説明するフローチャート1300を含む。
【0141】
ブロック1302では、患者モバイル通信デバイスから医療の質情報を無線で受信することができる。医療の質情報は、医療サービスの提供者または消費者を奨励するために使用される1または複数の医療の質の指標に関連する。
【0142】
ブロック1304では、医療の質情報が、質追跡システムに報告される。
【0143】
ブロック1306では、医療の質情報を質追跡システムに報告することに応答して、奨励金を受け取ることができる。
【0144】
特定の例では、治療計画を患者モバイル通信デバイスに送信することができ、フィードバックが治療計画の実行に関連する場合に、フィードバックを患者モバイル通信デバイスから受信することができる。治療計画は、フィードバックに基づいて変更される場合がある。場合によっては、治療計画に基づいて閉ループフィードバックシステムを実装する管理システムに、フィードバックが提供される。フィードバックは、患者モバイル通信デバイスのユーザを監視するために使用される1または複数の医療センサまたは機器から受信した測定値を含むことができる。フィードバックは、医療の質に関する情報を含むことができる。
【0145】
いくつかの例では、患者モバイル通信デバイスから受信した医療の質情報は、患者の病状の1または複数の更新を含む。患者の病状の更新は、定期的に受け取ることができる。医療の質情報は、患者モバイル通信デバイスによって生成された個人向けの通知を含むことができる。医療の質情報は、医療診断を含むことができる。医療の質情報は、薬に関連している場合がある。医療の質情報は、患者モバイル通信デバイスのユーザに対応する治療データに関連していてもよい。
【0146】
様々な実施例では、アプリケーションが、患者モバイル通信デバイスへのインストールのために指示される。アプリケーションは、医療の質情報を生成するように動作させることができる。アプリケーションは、1または複数の医療の質の指標を定義するように構成できる。患者モバイル通信デバイスは、1または複数の医療の質の指標に対応する情報を無線で送信することができる。アプリケーションは、患者モバイル通信デバイスのユーザに薬を服用するように警告する構成とすることができる。アプリケーションは、医療の質の指標に関連する1または複数の状態、薬剤、検査、処置または生理学的データを識別するように構成できる。アプリケーションは、1または複数の状態が発生したときに、患者モバイル通信デバイスのユーザに医療アドバイスを求めるよう警告するように構成できる。アプリケーションは、1または複数の状態、薬剤、検査、処置または生理学的データが発生したときに特定の医療の質が推奨されることを患者モバイル通信デバイスのユーザに警告するように構成できる。アプリケーションは、患者モバイル通信デバイスのユーザに、特定の手段が医師または他の医療提供者によって取られるべきであることを警告して、1または複数の状態、薬剤、検査、処置または生理学的データの発生によって示される医療の質を得るように構成することができる。
【0147】
特定の例では、医療の質情報を質追跡システムに報告することが、電子医療記録の一部を含む情報を提供者デバイスに転送するステップと、患者モバイル通信デバイスによって維持される患者メタデータに、提供者デバイスへの情報の転送を特徴付ける情報を記録するステップと、患者メタデータを報酬サーバに送信するステップとを含む。報酬サーバは、医療提供者への電子医療記録の1または複数の転送に基づいて、ユーザに対する経済的利益を計算するように構成されるものであってもよい。報酬サーバは、更新された電子医療記録の転送に基づいて、ユーザへの経済的利益を計算するように構成されるものであってもよい。更新された電子医療記録は、医療提供者によって実行される1または複数の処置を識別し、患者メタデータに1または複数の処置を記録するようにデコードされるものであってもよい。
【0148】
図14は、処理回路1402を使用する装置1400のハードウェア実装の簡略化された例を示す図である。処理回路1402は、通常、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、シーケンサまたはステートマシンのうちの1または複数を含むことができるプロセッサ1416を有する。処理回路1402は、全体としてバス1420で表されるバスアーキテクチャで実装されるものであってもよい。バス1420は、処理回路1402の特定の用途および全体的な設計上の制約に応じて、任意の数の相互接続されたバスおよびブリッジを含むことができる。バス1420は、プロセッサ1416、モジュールまたは回路1404、1406、1408、1410、アンテナ1414およびコンピュータ可読記憶媒体1418と無線通信するように構成可能なトランシーバ1412によって表される、プロセッサおよび/またはハードウェアモジュールを含む様々な回路を相互接続することができる。バス1420は、タイミングソース、周辺機器、電圧調整器および電力管理回路などの様々な他の回路をリンクすることもできるが、それらは当技術分野で周知であるため、ここではそれ以上説明しない。
【0149】
プロセッサ1416は、コンピュータ可読記憶媒体1418に格納されたソフトウェアの実行を含む、全体的な処理を担うことができる。ソフトウェアは、プロセッサ1416によって実行されると、処理回路1402に、特定の装置について上述した特定の機能を実行させることができる。コンピュータ可読記憶媒体1418は、無線で送信される符号および画像にエンコードされるデータを含む、ソフトウェアの実行時にプロセッサ1416によって操作されるデータを記憶するために使用することができる。処理回路1402は、モジュール1404、1406、1408、1410のうちの少なくとも1つをさらに含む。モジュール1404、1406、1408、1410は、プロセッサ1416で実行され、コンピュータ可読記憶媒体1418に常駐/記憶されるソフトウェアモジュール、プロセッサ1416に結合された1または複数のハードウェアモジュール、またはそれらの何れかの組合せであってもよい。モジュール1404、1406、1408、1410は、マイクロコントローラ命令、状態機械設定パラメータまたはそれらの何れかの組合せを含むことができる。
【0150】
図15は、医療サービスを管理する方法を説明するフローチャート1500を含む。この方法は、サーバにより実行することができる。
【0151】
ブロック1502では、サーバが、患者と医療提供者との間の遣り取りに関係する患者メタデータを受信することができる。患者メタデータは、患者が操作するモバイル通信デバイスによって生成される。
【0152】
ブロック1504では、サーバが、患者と医療提供者との間の遣り取り中に、患者に関連付けられた電子医療記録が医療提供者に転送されたことを患者メタデータから判定することができる。
【0153】
ブロック1506では、サーバが、電子医療記録の転送に基づいて、ユーザに対する経済的利益を計算することができる。
【0154】
特定の例では、患者メタデータは、電子医療記録に対する1または複数の更新が、患者によって操作されるモバイル通信デバイスに送信されたことを識別する。サーバは、1または複数の更新の転送に基づいて、ユーザへの経済的利益を計算することができる。サーバは、患者メタデータをデコードして、医療提供者によって実行された1または複数の処置を特定し、医療費請求システムに対して処置を特定する。更新された電子医療記録のデコードには、医薬品、診断、臨床検査、処置、予防接種または個々の医療専門家向けの国際または国内の標準化された健康データコードリストのデコードが含まれる。
【0155】
特定の例では、サーバが、患者と医療提供者との間の遣り取りに関連する提供者メタデータを受信することができる。提供者メタデータは、医療提供者が操作するコンピューティングデバイスにより、提供者メタデータが電子医療記録の転送を記録するときに医療提供者への経済的利益を計算することによって、生成される。
【0156】
提供者メタデータは、電子医療記録への1または複数の更新が医療提供者によって、患者が操作するモバイル通信デバイスに送信されたことを識別することができる。サーバは、1または複数の更新の転送に基づいて、医療提供者への経済的利益を計算することができる。サーバは、患者メタデータと医療提供者メタデータとの通信に基づいて、患者と医療提供者との間の遣り取りの特性評価を生成し、医療費請求システムに遣り取りの特性評価を提供することができる。
【0157】
図16は、処理回路1602を使用する装置1600のハードウェア実装の簡略化された例を示す図である。処理回路1602は、通常、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、シーケンサまたは状態機械のうちの1または複数を含むことができるプロセッサ1616を有する。処理回路1602は、全体としてバス1620で表されるバスアーキテクチャで実装されるものであってもよい。バス1620は、処理回路1602の特定の用途および全体的な設計上の制約に応じて、任意の数の相互接続されたバスおよびブリッジを含むことができる。バス1620は、プロセッサ1616、モジュールまたは回路1604、1606、1608、1610、アンテナ1614およびコンピュータ可読記憶媒体1618と無線通信するように構成可能なトランシーバ1612によって表される、プロセッサおよび/またはハードウェアモジュールを含む様々な回路を相互接続することができる。バス1620は、タイミングソース、周辺機器、電圧調整器および電力管理回路などの様々な他の回路をリンクすることもできるが、それらは当技術分野で周知であるため、ここではそれ以上説明しない。
【0158】
プロセッサ1616は、コンピュータ可読記憶媒体1618に格納されたソフトウェアの実行を含む、全体的な処理を担うことができる。ソフトウェアは、プロセッサ1616によって実行されると、処理回路1602に、特定の装置について上述した特定の機能を実行させることができる。コンピュータ可読記憶媒体1618は、無線で送信される符号および画像にエンコードされるデータを含む、ソフトウェアの実行時にプロセッサ1616によって操作されるデータを記憶するために使用することができる。処理回路1602は、モジュール1604、1606、1608、1610のうちの少なくとも1つをさらに含む。モジュール1604、1606、1608、1610は、プロセッサ1616で実行され、コンピュータ可読記憶媒体1618に常駐/記憶されるソフトウェアモジュール、プロセッサ1616に結合された1または複数のハードウェアモジュール、またはそれらの何れかの組合せであってもよい。モジュール1604、1606、1608、1610は、マイクロコントローラ命令、状態機械設定パラメータまたはそれらの何れかの組合せを含むことができる。
【0159】
なお、開示したプロセス内のステップの具体的な順序または階層は、例示的なアプローチの一例であることを理解されたい。設計の好みに基づいて、プロセス内のステップの具体的な順序または階層が再配置され得ることを理解されたい。添付の方法の請求項は、サンプルの順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序または階層に限定されることを意図するものではない。
【0160】
開示の特定の態様の追加説明
特定の態様は、ユーザの制御下で情報を安全かつ無線で交換できるようにするシステムおよび方法に関する。画像は、提供者デバイスのカメラで撮るために、モバイルデバイスによって表示することができる。提供者デバイスは、暗号化キーを使用してユーザの電子医療記録にアクセスするように構成できる。画像はQRCまたはバーコードを含むことができる。
【0161】
特定の態様は、使用可能な個人健康情報への即時アクセスを可能にするシステムおよび方法に関する。個人の健康情報は、いつでもどこからでもアクセスすることができる。医療の品質、安全性および費用対効果は、どの時点のケアにおいても、最新の使用可能な個人健康情報が利用できることに依存している。本発明は、個人の健康情報にアクセスし、変換し、集計し、注釈を付けるために、患者のモバイルデバイスで実行されるモバイルアプリケーションに組み込まれた革新的な機能の組合せを提供し、それにより、患者が医療専門家と遣り取りまたは交換するのに必要な医療情報が、インターネットアクセスが利用できないオフラインのときも含め何時でも、医療専門家の話し言葉により利用することができ、適切なタイミングの適切な医療があらゆる医療専門家によって利用されるようにすることができる。
【0162】
いくつかの例では、システムが、モバイルアプリケーションを実行する、個々の患者によって保持されるコンピューティングモバイルデバイスを含むことができ、モバイルアプリケーションが、個人の病歴がオフラインで(インターネット接続なしで)利用可能であることを表示する機能を提供することができる。機能には、健康保険請求または電子医療記録の何れかから抽出された個人の健康情報のローカル(すなわち、ユーザモバイルデバイス上の)解析、デコード、アグリゲーション、カテゴリ(薬剤、診断、臨床検査、イメージングサービス、提供者名、連絡先情報など)による分類および編成が含まれる。
【0163】
個々のデータのデコードに必要な特定のコードセットは、アプリケーションに含まれるか又は提供されて、デコードおよび他の上記アプリケーション機能が、(サーバベースの処理とは異なり)インターネットアクセスを必要とせずに、リアルタイムで発生し、それにより、変換されたデータをいつでも利用することができる。コードセットは、薬、診断、臨床検査、処置、予防接種、個々の専門医などの様々な国際または国内の標準化された健康データコードリストを含むことができる。地理的地域または国に固有のコードセットを提供または維持することができ、アプリケーションによって、ユーザが選択した言語またはそのデータにアクセスする医療専門家の言語で個々のデータを表示することができる。
【0164】
特定の態様によれば、個々のデータは、そのデータを利用する医療専門家の話し言葉で表示することができ、個々のアプリユーザのGPS位置、または様々な手段(QRコードスキャン、ブルートゥース、Bonjourまたは他の「Bump」技術など)でモバイル間通信を介してそのデータにアクセスする医療専門家のGPS位置に基づいて、自動化することができる。翻訳されると、個々の医薬品と予防接種データは、情報がレビューされている対応する特定のデータと照合される(例えば、アメリカのアプリユーザが最初に入力したアメリカの医薬品名、またはアメリカの医療記録システムから抽出したアメリカの医薬品名は、ユーザが訪問した国で医療専門家がそのデータを受信または表示するために、対応する一般名、またはブランド名、またはその両方を表示することとなる)。
【0165】
特定の態様によれば、表示された個々の記録または集約された記録は、個人の注釈を用いて各データ要素を編集できるユーザによって使用可能であり、自身の話し言葉を選択すると、ユーザは、言語および地域固有の健康情報を追加することができる。表示される記録データ要素は、オンライン健康情報データベース(例えば、米国のMedline Plus、イングランドのNHS Choices、またはフランスのAmeli.frなど)に対する各データ要素のリンクによりユーザが検索できるように、様々なコードセットにリンクされるものであってもよい。
【0166】
上述した説明は、当業者が本明細書に記載の様々な態様を実施できるようにするために提供されたものである。これらの態様に対する様々な変更は、当業者にはすぐに明らかであり、本明細書で規定される一般的な原理は、他の態様に適用することができる。このため、特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されることを意図するものではなく、請求項の文言と一致する全範囲が認められるものであり、単数形の要素への言及は、特に明記がなければ、「唯一の」を意味するものではなく、「1または複数」を意味するものとする。特に明記されていない限り、「いくつか」という用語は1または複数を指す。当業者に知られている、または後に当業者に知られるようになる、本開示を通して説明される様々な態様の要素に対するすべての構造的および機能的等価物は、引用により本明細書に明示的に援用されるとともに、特許請求の範囲に含まれることが意図される。さらに、本明細書に開示されているものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かにかかわらず、公衆に捧げられることを意図していない。請求項の要素が「のための手段(means for)」という文言を使用して明示的に記載されていない限り、また、方法の請求項の場合には、「のためのステップ(step for)」という文言を使用して記載されていない限りは、何れの請求項の要素も、米国特許法第112条第6段落の規定に基づいて解釈されるべきではない。