(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】カードリーダー
(51)【国際特許分類】
G06K 7/00 20060101AFI20240404BHJP
G07F 7/08 20060101ALI20240404BHJP
G07G 1/12 20060101ALI20240404BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G06K7/00 069
G07F7/08 R
G07G1/12 321P
G06K7/00 030
G06K7/00 004
G06K7/08 040
(21)【出願番号】P 2020057189
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000177346
【氏名又は名称】三和ニューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】黒木 周二
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158946(WO,A1)
【文献】特開昭62-214488(JP,A)
【文献】特開2004-227371(JP,A)
【文献】特開昭62-179084(JP,A)
【文献】特開昭64-076291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K7/00-7/14
G06K13/00-13/30
G07F5/00-9/10
G07G1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
決済用カードの挿入と排出の出入り口となる挿入口を備えた筐体と、
挿入された前記決済用カードを前記挿入口と逆側に搬送するとともに、前記決済用カードを前記挿入口から外部に排出すべく、前記挿入口に向けて搬送する搬送機構と、
前記決済用カードに備わる磁気記憶領域から前記決済用カードによる決済に必要となる個人情報を読み出す磁気読み出し部と、
前記決済用カードに備わるICチップの電気端子に導通する電極を備える電極ホルダーと、
前記電極ホルダーでの導通を介して、前記ICチップから個人情報を読み出すICチップ読み出し部と、
前記電極ホルダーの移動に伴い、前記電極ホルダーの第1位置への到達を検知する検知部と、を備え、
前記電極ホルダーは、前記決済用カードの搬送に伴って、前記検知部に向けて移動可能であり、
前記ICチップ読み出し部は、前記検知部が前記電極ホルダーの第1位置への到達を検知すると、前記ICチップから個人情報を読み出し、
前記決済用カードの挿入と排出の出入り口となる挿入口を更に備え、
前記搬送機構は、挿入された前記決済用カードからの読み出しにおいては、前記決済用カードを挿入口と逆である先端側に搬送し、
前記検知部は、前記先端側に備わり、
前記電極ホルダーは、通常状態においては第2位置に位置しており、
前記決済用カードは、前記搬送機構により前記先端側に搬送される際に、前記電極ホルダーを前記先端側に移動させ、
前記検知部は、前記電極ホルダーの前記第1位置への到達を検知し、
前記第1位置は、前記第2位置よりも先端側にあり、
前記検知部は、前記電極ホルダーの前記第1位置への到達の検知結果を、前記ICチップ読み出し部に通知し、
前記ICチップ読み出し部は、前記検知結果を受けると、前記電極を介して前記ICチップから個人情報を読み出し、
前記決済用カードが搬送される搬送領域を更に備え、
前記検知部は、前記搬送領域より物理的に上方に備わり、
前記電極ホルダーは、前記第2位置においては、前記搬送領域を搬送される前記決済用カードと離隔しており、
前記電極ホルダーが前記決済用カードとともに前記第2位置から第1位置に移動するのに伴い、前記電極を前記電気端子に接触させ、
前記電極ホルダーは、前記第2位置では、前記検知部より上側の第2平面に位置し、前記第1位置では、前記検知部と同じ第1平面に下降し、
前記第1平面に下降した前記電極ホルダーは、前記決済用カードと略平行となり、前記電極は、前記電気端子に略平行に接触し、
前記電極ホルダーを前記第2平面から前記第1平面へ下降させる下降駆動部を更に備え、
前記下降駆動部は、前記挿入口と逆側の方向かつ斜め下方向に向けた溝と前記電極ホルダーに備えられ前記溝に嵌合する突起とを含み、
前記決済用カードが前記第2位置に対応する位置に到達すると、前記下降駆動部は、前記電極ホルダーを前記第2平面から前記第1平面に下降させ、
前記電極ホルダーは、前記第1平面に下降すると、前記決済用カードと略平行状態を維持し、
前記磁気読み出し部は、前記決済用カードが搬送される搬送過程で、前記磁気記憶領域から個人情報を読み出す、カードリーダー。
【請求項2】
前記決済用カードは、前記第2位置に
対応する位置に到達した後で、前記電極ホルダーを前記第1位置に向けて押し動かす、請求項1記載のカードリーダー。
【請求項3】
前記電極ホルダーは、先端に凸部を有し、
前記検知部は、前記凸部を受け入れ可能な凹部を有すると共に、凹部の一方に発光部と他方に受光部とを有し、
前記凸部が前記凹部に入り、前記発光部からの光を前記受光部が受光できない場合に、
前記検知部は、前記電極ホルダーが前記第1位置に到達したと検知する、請求項1または2記載のカードリーダー。
【請求項4】
前記検知部からの検知結果を電気的に出力する出力信号線と、前記ICチップ読み出し部からの読み出し結果を電気的に出力する読み出し信号線とは、物理的に別体である、請求項1から3のいずれか記載のカードリーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップと磁気記憶との両方を備える決済用カードを取り込んで読み込むカードリーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のキャッシュレス社会の進展により、様々な場所で現金による支払ではなく現金以外での支払いが増えてきている。中には、情報携帯端末のコードを用いた支払処理や決済が行われることも増えてきているが、現金以外での支払い処理としては、クレジットカードが多く使われている。従来から、クレジットカードは非常に普及しており、現金の代わりとしての支払処理やいわゆる分割払いの手段としての支払処理としても、様々な場面で使われている。
【0003】
クレジットカードは過去から多く普及しており、従来のような高額の商品購入だけでなく近年では、小規模商店やスーパーマーケットなど日常の場面でも使用される。また、ガソリンスタンド、機械式駐車場、ホテルの清算処理などのような人員削減が必要となってきている場面では、機械式精算機においてクレジットカードで支払い処理が行われるようになってきている。
【0004】
例えば、ガソリンスタンドは、人員削減やコスト削減などの必要性から、機械式精算機が設置されており、利用者はこの機械式精算機で支払い処理を行うことが増えてきている。このような機械式精算機では、利用者は、クレジットカードを用いて支払いを行う。
【0005】
また、機械式駐車場などは、そもそも無人となっており、出入り口などに機械式精算機が設置されている。利用者は、やはりこの機械式精算機で支払い処理を行う。このとき、クレジットカードを用いることも多い。
【0006】
あるいは、ホテルのチェックインやチェックアウトも自動精算機が用いられるようになってきている。チェックインやチェックアウトの手続きと合わせて、宿泊費用の清算が、この自動精算機で行われる。あるいは、チェックインの手続きだけは対面で行われて、宿泊費用の清算だけがこの自動精算機で行われることもある。
【0007】
この自動精算機での清算処理(あるいはチェックインやチェックアウトなど)も、やはりクレジットカードで行われる。
【0008】
このように、様々な場面でクレジットカードを用いた支払処理が一般的になってきている。上述したような場面だけでなく、一般的な商店や小型の商店でも、クレジットカードを用いた支払処理が行われるようになってきている。特に、外国においては、治安面や通貨への信頼性などの懸念から、日常生活の様々な場面で、クレジットカードでの支払い処理が行われている。
【0009】
一方で、クレジットカードそのものも技術的・処理システム的に進歩してきている。一つには、偽造や他人による使用を防止するために、所有者の識別子を複雑化・暗号化して、セキュリティを強化している。
【0010】
従来のクレジットカードは、所有者の識別子を磁気記憶領域に記憶していた。しかしながら、クレジットカードの盗難やスキミングで、磁気記憶領域に記憶されている所有者の識別子などの個人情報が盗難されてしまう問題が生じていた。こういった問題から、磁気記憶領域に記憶される識別子などの個人情報のセキュリティ耐性を強化したり、磁気記憶領域からの読み取りを困難にしたりするなどの技術的な改良がくわえられてきている。
【0011】
加えて、磁気記憶領域に個人情報を記憶するだけでなく、クレジットカードにICチップを搭載して、このICチップに識別子などの個人情報を記憶するようになってきている。このため、近年に発行されているクレジットカードの大半は、ICチップのみ、ICチップと磁気記憶領域の両方のいずれかのパターンで構成されている。
【0012】
このように、ICチップや磁気記憶領域のいずれかあるいは両方を備えることで、クレジットカードによる支払処理を行う場合には、ICチップからの個人情報の読み取りと、磁気記憶領域からの個人情報の読み取りの両方が必要となってきている。また、支払処理の迅速化と安全確保の観点から、磁気記憶領域からの読み取りでもICチップからの読み取りでも、正確に個人情報を読み取ることが求められている。また、偽造カードへの対応や、クレジットカードの不正使用への対応も求められている。
【0013】
また、クレジットカードによる支払処理が広まるにつれて、利用者におけるリスク管理の必要性も高まっている。例えば、クレジットカードを用いて清算機械で支払い処理をする際に、クレジットカードの個人情報が盗み取られたり漏洩したりしないような対応が求められている。さらには、上述したような様々な場面での普及により、安全性および正確性に加えて、高速処理できるカードリーダーが求められている。
【0014】
特に、クレジットカードなどでの清算が増加するにつれて、店舗などにおいて読み取りエラー(通信エラー)などの操作問題が少なく、処理時間の短いカードリーダーが求められている。カードリーダーは、挿入されたクレジットカードなどを読み取ったうえで、サーバーと通信して決済処理をするからである。
【0015】
このような状況で、クレジットカードを用いた清算機械や清算装置を構成する要素である、クレジットカードなどの決済用カードの読み込みを行うカードリーダーについての技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2012-118893号公報
【文献】特開2014-228906号公報
【文献】特開2015-130181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1は、磁気クレジットカードによるクレジット決済を行い、クレジット決済金額を含むクレジット決済内容が印字されたレシートを発行する決済端末10であて、前記磁気クレジットカードに磁気的に記録されているクレジットカード番号から、前記レシートに前記クレジット決済内容を印字する言語を決定する制御部3と、該制御部3にて決定された言語にて前記クレジット決済内容が印字されたレシートを発行するプリンタ部1とを有することを特徴とする決済端末を、開示する。
【0018】
特許文献1は、磁気クレジットカードの個人情報から、利用者に最適な言語を選択して利用者に提供できる技術を開示している。
【0019】
しかしながら、特許文献1は、ICチップと磁気記憶領域の両方に対応する技術を開示していない。特に、処理の高速化に関する技術を開示していない。
【0020】
上述したように、現在では、ICチップと磁気記憶領域の両方に対応して個人情報を読み取ることが求められている。また、様々な場面で使用され、対面型で使用されたり、清算機械に組み込まれて使用されたりすることが求められている。加えて、ICチップと磁気記憶領域の両方に対応して、一度でいずれかからでも個人情報を読み取ることが求められている。
【0021】
特許文献1は、このような要求に対応できない問題を有している。もちろん、上述の通り処理時間の短縮化などにも対応していない問題を有している。
【0022】
特許文献2は、SAMチップによってICカードの認証を行うICカードリーダライタにおいて、ICカードの挿入及び排出を行うカード挿入口と、挿入されたICカードの情報の読み取り及び書き込みを行うIC接点部と、SAMチップを搭載するSAMチップ搭載部とを有し、カード挿入口を介してSAMチップを装填可能とした。SAMチップ搭載部は、カード挿入口から挿入されSAMチップが搭載されたICカードと同一形状のSAMチップホルダを維持する機構を有し、SAMチップホルダーは、ICカードの搬送機構によってSAMチップ搭載部へ搬送されるICカードリーダーライターを開示する。
【0023】
特許文献2は、ICチップの決済用カードを読み取ることができる。しかしながら、ICカードと同一形状のホルダを維持する機構によって読み取ることで、装置が大型になってしまう。さらに、ICカードリーダーライターのメンテンナンス性が悪い問題もある。小型ではないことや、構造が複雑になっているからである。
【0024】
また、磁気記憶領域しか備えていない決済用カードに対してもデュアルに対応することが難しい。特に、処理速度を向上させたり読み取りエラーを少なくしたりするなどの対応が含まれていないので、決裁処理においての処理時間が長くなり、多数の顧客の清算に対応が必要な場面での使用が難しい問題があった。
【0025】
特許文献3は、決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かの認証に用いられる認証情報が入力されるセキュア入力部及びセキュア入力部による入力に関連して、読取り部により読取られた媒体の認証に必要な認証情報のセキュア入力部による入力を可能とする表示を行うセキュア表示部を備えた耐タンパ性を有するセキュアな第2の情報処理部3は、決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行する非セキュアな第1の情報処理部2と結合可能である決済端末装置を、開示する。
【0026】
特許文献3も、特許文献1、2と同様に、ICチップおよび磁気記憶領域の両方にデュアルに対応することができにくい問題がある。加えて、処理速度を早める構成も含まれておらず、多数の清算処理を行う必要のある店舗などで、多数の顧客を効率よく処理することが難しい問題もあった。
【0027】
このように、従来技術では、ICチップと磁気記憶領域の両方を読み取ることができない、処理時間が長くなるなどの問題があった。この問題が、店舗などにおいてクレジットカードなどでの決裁処理に用いるカードリーダーを導入しにくいあるいは導入後の不便などの問題につながっていた。
【0028】
以上の課題に鑑み、ICチップと磁気記憶領域を一度の取り込みで読み出し可能であり、小型化と高速処理に優れたカードリーダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題に鑑み、本発明のカードリーダーは、決済用カードの挿入と排出の出入り口となる挿入口を備えた筐体と、
挿入された決済用カードを挿入口と逆側に搬送するとともに、決済用カードを挿入口から外部に排出すべく、挿入口に向けて搬送する搬送機構と、
決済用カードに備わる磁気記憶領域から決済用カードによる決済に必要となる個人情報を読み出す磁気読み出し部と、
決済用カードに備わるICチップの電気端子に導通する電極を備える電極ホルダーと、
電極ホルダーでの導通を介して、ICチップから個人情報を読み出すICチップ読み出し部と、
電極ホルダーの移動に伴い、電極ホルダーの第1位置への到達を検知する検知部と、を備え、
電極ホルダーは、決済用カードの搬送に伴って、検知部に向けて移動可能であり、
ICチップ読み出し部は、検知部が電極ホルダーの第1位置への到達を検知すると、ICチップから個人情報を読み出し、
決済用カードの挿入と排出の出入り口となる挿入口を更に備え、
搬送機構は、挿入された決済用カードからの読み出しにおいては、決済用カードを挿入口と逆である先端側に搬送し、
検知部は、先端側に備わり、
電極ホルダーは、通常状態においては第2位置に位置しており、
決済用カードは、搬送機構により先端側に搬送される際に、電極ホルダーを先端側に移動させ、
検知部は、電極ホルダーの第1位置への到達を検知し、
第1位置は、第2位置よりも先端側にあり、
検知部は、電極ホルダーの第1位置への到達の検知結果を、ICチップ読み出し部に通知し、
ICチップ読み出し部は、検知結果を受けると、電極を介してICチップから個人情報を読み出し、
決済用カードが搬送される搬送領域を更に備え、
検知部は、搬送領域より物理的に上方に備わり、
電極ホルダーは、第2位置においては、搬送領域を搬送される決済用カードと離隔しており、
電極ホルダーが決済用カードとともに第2位置から第1位置に移動するのに伴い、電極を電気端子に接触させ、
電極ホルダーは、第2位置では、検知部より上側の第2平面に位置し、第1位置では、検知部と同じ第1平面に下降し、
第1平面に下降した電極ホルダーは、決済用カードと略平行となり、電極は、電気端子に略平行に接触し、
電極ホルダーを第2平面から第1平面へ下降させる下降駆動部を更に備え、
下降駆動部は、挿入口と逆側の方向かつ斜め下方向に向けた溝と電極ホルダーに備えられ溝に嵌合する突起とを含み、
決済用カードが第2位置に対応する位置に到達すると、下降駆動部は、電極ホルダーを第2平面から第1平面に下降させ、
電極ホルダーは、第1平面に下降すると、決済用カードと略平行状態を維持し、
磁気読み出し部は、決済用カードが搬送される搬送過程で、磁気記憶領域から個人情報を読み出す。
【発明の効果】
【0030】
本発明のカードリーダーは、ICチップと磁気記憶領域のいずれをも一度のカードの取り込みで読み出し処理できる。決済用カードが、ICチップと磁気記憶領域の両方を備えている場合でも、いずれか片方しか備えていない場合でも、一度の取り込み処理で、いずれかから支払処理に必要となる個人情報を読み出すことができる。このため、二重の作業の手間や作業ミスをなくすことができる。
【0031】
また、カードの挿入作業中に磁気記憶領域からの読み出しが行われ、その後にカードの挿入が進むと、ICチップ電極ホルダーが、カードによって押し出される。この押し出しによって、ICチップ電極ホルダーが、検知部において検知状態となる。この検知状態によって、磁気記憶領域からの読み出しが完了し、カードのICチップからの読み出しが可能となったことが把握される。
【0032】
このような把握に基づいて、カードのICチップからの読み出しもすぐさま行える。結果として、処理の高速化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるカードリーダーの側面図である。カードリーダー1の内部状態が分かるように可視状態で示している。
【
図2】、本発明の実施の形態1におけるカードリーダーを上から見た模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における電極ホルダーとICチップとの相対関係を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における電極ホルダーの移動を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における決済用カードが第2位置に到達した状態を示すカードリーダーの側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における電極ホルダー6がICチップに導通接触した状態でのカードリーダーの側面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における電極ホルダーが第1位置に到達した状態を示す拡大図である。
【
図8】本発明の実施の形態2におけるカードリーダーの内部図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の発明に係るカードリーダーは、挿入された決済用カードを搬送する搬送機構と、
決済用カードに備わる磁気記憶領域から個人情報を読み出す磁気読み出し部と、
決済用カードに備わるICチップの電気端子に導通する電極を備える電極ホルダーと、
電極ホルダーでの導通を介して、ICチップから個人情報を読み出すICチップ読み出し部と、
電極ホルダーの移動に伴い、電極ホルダーの第1位置への到達を検知する検知部と、を備え、
電極ホルダーは、決済用カードの搬送に伴って、検知部に向けて移動可能であり、
ICチップ読み出し部は、検知部が電極ホルダーの第1位置への到達を検知すると、ICチップから個人情報を読み出す。
【0035】
この構成により、ICヒップからの読み出しタイミングを確実に検知して、読み出すことができる。
【0036】
本発明の第2の発明に係るカードリーダーでは、第1の発明に加えて、決済用カードの挿入と排出の出入り口となる挿入口を更に備え、
搬送機構は、挿入された決済用カードからの読み出しにおいては、決済用カードを挿入口と逆である先端側に搬送し、検知部は、先端側に備わる。
【0037】
この構成により、決済用カードが筐体内部に収まってICチップからの読み出しが可能な位置になることを、検知部が検知できる。
【0038】
本発明の第3の発明に係るカードリーダーでは、第2の発明に加えて、電極ホルダーは、通常状態においては第2位置に位置しており、
決済用カードは、搬送機構により先端側に搬送される際に、電極ホルダーを先端側に移動させ、
検知部は、電極ホルダーの第1位置への到達を検知し、
第1位置は、第2位置よりも先端側にある。
【0039】
この構成により、決済用カードが電極ホルダーを押し出して導通したことを、検知部は電極ホルダーの位置から検知することができる。
【0040】
本発明の第4の発明に係るカードリーダーでは、第3の発明に加えて、検知部は、電極ホルダーの第1位置への到達の検知結果を、ICチップ読み出し部に通知し、
ICチップ読み出し部は、検知結果を受けると、電極を介してICチップから個人情報を読み出す。
【0041】
この構成により、読み出しが確実に可能となった状態で、ICチップからの読み出しが可能となる。このため、読み出しエラーが防止できると共に、読み出し可能状態から読み出しまでの時間を短縮できる。
【0042】
本発明の第5の発明に係るカードリーダーでは、第3または第4の発明に加えて、決済用カードは、第2位置に到達した後で、電極ホルダーを第1位置に向けて押し動かす。
【0043】
この構成により、決済用カードが電極ホルダーを押し出しながら導通状態に持っていくことができる。
【0044】
本発明の第6の発明に係るカードリーダーでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、電極ホルダーは、先端に凸部を有し、
検知部は、凸部を受け入れ可能な凹部を有すると共に、凹部の一方に発光部と他方に受光部とを有し、
凸部が凹部に入り、発光部からの光を受光部が受光できない場合に、検知部は、電極ホルダーが第1位置に到達したと検知する。
【0045】
この構成により、読み出し可能な状態を、確実に検知できる。
【0046】
本発明の第7の発明に係るカードリーダーでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、決済用カードが搬送される搬送領域を更に備え、
検知部は、搬送領域より物理的に上方に備わる。
【0047】
この構成により、決済用カードの搬送により、検知部に汚れなどが到着したり付着したりすることを防止できる。
【0048】
本発明の第8の発明に係るカードリーダーでは、第7の発明に加えて、電極ホルダーは、第2位置においては、搬送領域を搬送される決済カードと離隔しており、
第2位置から第1位置に移動するのに伴い、電極を電気端子に接触させる。
【0049】
この構成により、決済用カードの搬送に伴って電極が導通する。それ以外の場合には離隔していることで、電極の保護が図られる。
【0050】
本発明の第9の発明に係るカードリーダーでは、第8の発明に加えて、電極ホルダーは、第2位置では、検知部より上側の第2平面に位置し、第1位置では、検知部と同じ第1平面に下降し、
第1平面に下降した電極ホルダーは、決済用カードと略平行となり、電極は、電気端子に略平行に接触する。
【0051】
この構成により、決済用カードの搬送に合わせて、電極と電気端子とが導通するようになる。
【0052】
本発明の第10の発明に係るカードリーダーでは、第9の発明に加えて、電極ホルダーを第1平面から第2平面へ下降させる下降駆動部を更に備え、
決済用カードが第2位置に対応する位置に到達すると、下降駆動部は、電極ホルダーを第1平面から第2平面に下降させる。
【0053】
この構成により、電極ホルダーは、通常状態では搬送領域と離隔して保護されており、決済用カードが搬送されるのに伴って電極との導通が図られる。
【0054】
本発明の第11の発明に係るカードリーダーでは、第9または第10の発明に加えて、電極ホルダーは、第1平面に下降すると、決済用カードと略平行状態を維持する。
【0055】
この構成により、読み出し中においては、導通が維持される。
【0056】
本発明の第12の発明に係るカードリーダーでは、第4から第10の発明に加えて、検知部からの検知結果を電気的に出力する出力信号線と、ICチップ読み出し部からの読み出し結果を電気的に出力する読み出し信号線とは、物理的に別体である。
【0057】
この構成により、読み出しエラーが生じた場合に、検知に係る電極ホルダーの移動に原因があるのか、電極ホルダーの検知に原因があるのか、ICチップ読み出しに原因があるのかを、容易かつ確実に区別できる。
【0058】
本発明の第13の発明に係るカードリーダーでは、第1から第12のいずれかの発明に加えて、磁気読み出し部は、決済用カードが搬送される搬送過程で、磁気領域から個人情報を読み出す。
【0059】
この構成により、磁気記憶領域からも決済に必要な個人情報を読み出せる。
【0060】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0061】
(実施の形態1)
【0062】
(発明者による解析)
発明者は、従来技術のカードリーダーの解析を行った。従来技術では、ICチップを備える決済用カードが挿入されると、挿入された決済用カードは内部を搬送される。内部を搬送された決済用カードは、ICチップの読み出し可能な場所にまで搬送される。ICチップには、電気端子が備わっており、この電気端子とカードリーダーの内部に備わっている電極とが電気的に接続することで、ICチップからの読み出しが可能となる。
【0063】
ここで、従来技術のカードリーダーは、決済用カードが所定の位置まで到達したことを、想定で検出している。この想定での検出により、ICチップの電気端子と電極とが電気的に接続しているものと判断する。この想定での判断により、カードリーダーは、ICチップからの必要な個人情報を読み出す。
【0064】
このとき、ICチップが読み出し可能な位置に到達したことを想定して読み出しを行っているに過ぎない。このため、ICチップが読み出し可能な位置に到達していない場合でも読み出しを開始してしまうこともあり得る。これは、読み出しを実行して、個人情報が適正に読み出せないことが分かってから初めて判明する。
【0065】
このような読み出しができない場合(読み出しエラー)では、決済用カードを挿入しなおしてから再度読み出すか、搬送機構による再搬送を行ってから読み出すかなどの処理が必要となる。このため、カードリーダーでの操作が不便となるほか、利用者は不安を覚えることもある。結果として、カードリーダーによる決済用カードでの決済における信頼性が低くなることもある。
【0066】
従来技術のカードリーダーが、例えば有人店舗に設置されている場合には、決済用カードの挿入のやり直しや、手作業を含む再読出しを行うことは可能である。しかし、カードリーダーがガソリンスタンドの自動決済装置に組み込まれていたり、無人レジの自動決済装置に組み込まれていたりする場合には、このようなやり直しの作業が難しい問題もある。
【0067】
また、決済用カードの挿入のやり直しなどの手作業ではなく、電気的な読み出しのやり直しをカードリーダーが行うこともある。この場合にも、読み出しエラーが繰り返されて、やはり決済が進まない問題も生じる。
【0068】
発明者は、従来技術のカードリーダーは、ICチップの読み出し位置を確実に検出できないままに読み出しエラーやこれに伴う不便を生じていることを、解析した。この解析に基づいて、ICチップの読み出し位置を確実に検出することが、カードリーダーにおいて必要であることを見出し、本発明に至った。
【0069】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1におけるカードリーダーの側面図である。カードリーダー1の内部状態が分かるように可視状態で示している。
図2は、本発明の実施の形態1におけるカードリーダーを上から見た模式図である。カードリーダー1は、決済用カード100の挿入がなされると、決済用カード100による決済に必要となる個人情報の読み出しを行う。
【0070】
決済用カード100は、個人情報を磁気的に記憶する磁気記憶領域101と、個人情報を電子的に記憶するICチップ102とを備える。すなわち、決裁処理において必要となる個人情報を、磁気記憶領域101とICチップ102のそれぞれに記憶している。それぞれに記憶していることで、決済用カード100での決済時に、いずれからでも個人情報を読み出せるようにしている。
【0071】
もちろん、決済用カード100は、磁気記憶領域101とICチップ102とのいずれかのみを備えることでもよい。この場合には、備えている要素から、個人情報が読み出されればよい。
【0072】
カードリーダー1は、決済用カード100の磁気記憶領域101かICチップ102のいずれかから、あるいは両方から個人情報を読み出せる。カードリーダー1は、決済用カード100による決済処理に用いられる。実際の決裁処理のすべてを処理してもよいし、決済用カード100から決済に必要となる個人情報を読み出すことまでを処理してもよい。
【0073】
カードリーダー1は、筐体2、搬送機構3、磁気読み出し部5、電極ホルダー6、ICチップ読み出し部7、検知部8と、を備える。
【0074】
筐体2は、搬送機構3や電極ホルダー6などの決済用カード100からの読み出しに必要となる各要素を格納する。また、カードリーダー1としての使用を可能とする外形を作る。筐体2は、カードリーダー1が独立して使用される場合に対応した形状や外形であってもよいし、カードリーダー1が決済用装置に組み込まれる場合に対応した形状や外形であってもよい。
【0075】
筐体2には、決済用カード100の挿入と排出の出入り口となる挿入口45が備わっている。
図1、
図2では、この挿入口45から決済用カード100が挿入される状態が示されている。挿入口45から挿入された決済用カード100は、搬送領域4内部を搬送される。
【0076】
搬送機構3は、挿入された決済用カード100を搬送領域4において搬送する。挿入されて読み出される処理に進む場合には、搬送機構3は、搬送領域4において、決済用カード100を奥側(挿入口45と逆側)に、搬送する。逆に、決済用カード100が挿入口45から外部に排出される際には、搬送機構3は、決済用カード100を、奥側から挿入口45に向けて搬送する。搬送領域4は、決済用カード100が搬送される領域である。決済用カード100の形状や厚みに合わせた形態を有していればよい。
【0077】
磁気読み出し部5は、決済用カード100の磁気記憶領域101から個人情報を読み出す。磁気記憶領域101は、磁気により個人情報を記憶する。磁気記憶領域101は、決済用カード100の一部に一定の長さと面積をもって備わっている。一般的には、
図2のように、決済用カード100の一方側の長手方向に沿って備わっている。
【0078】
磁気読み出し部5は、この磁気記憶領域101に合わせた位置に備わり、磁気記憶領域101に記憶されている個人情報を読み出す。決済用カード100が挿入されて奥側に向けて挿入される際に、磁気読み出し部5が磁気記憶領域101に接触する。搬送に合わせて接触および接触状態での決済用カード100の移動に合わせて、接触状態を継続する。この接触状態の継続により、磁気読み出し部5は、磁気記憶領域101から個人情報を読み出す。
【0079】
電極ホルダー6は、ICチップ102の電気端子103に導通する電極61を備える。電極ホルダー6は、筐体2内部に備わる。また、通常状態においては、電極ホルダー6は、決済用カード100が搬送される搬送領域4とは、その高さ方向で異なる位置に備わる。
図1のカードリーダー1は、側面から見た状態を示している。この側面から見た状態での上下が、カードリーダー1の上下である。
【0080】
図1に示されるように、決済用カード100が搬送される搬送領域4に対して、電極ホルダー6は、上方の位置にある。決済用カード100が奥側まで到達する前においては、電極ホルダー6は、搬送領域4の上方にあって決済用カード100と離隔した状態である。
【0081】
図3は、本発明の実施の形態1における電極ホルダーとICチップとの相対関係を示す模式図である。
【0082】
後述するように、電極ホルダー6は、決済用カード100の挿入の進行に合わせて、決済用カード100のICチップ102と接触するようになる。この接触において、ICチップ102の電気端子103と電極ホルダー6の電極61とが接触するようになる。この接触は、電気的な接続である。すなわち、ICチップ102の電気端子103とが導通する。
【0083】
ICチップの電気端子103と電極ホルダー6の電極61とは、対応する位置関係にある。このため、電極ホルダー6がICチップ102の位置に接触する状態で、電気端子103と電極61とが導通するようになる。
図3では、この対応する位置関係を示している。この位置関係にあることで、電気端子103と電極61とが接触により導通できる。
【0084】
ICチップ読み出し部7は、電極ホルダー6での電極61の導通を介して、ICチップ102から個人情報を読み出す。ICチップ読み出し部7は、電極61を介して電気的な信号を用いて、個人情報を読み出す。このとき、ICチップ読み出し部7そのものあるいはこれに繋がる電子要素(例えば、プロセッサ等)からの指示信号により、電極61を介して、ICチップ102に記憶されている個人情報を読み出す。
【0085】
この読み出しにより、決済用カード100による決済を実行することができるようになる。
【0086】
電極ホルダー6は、決済用カード100が搬送領域4において奥側に向けて搬送されるにしたがって、決済用カード100により押し出されるように移動可能である。決済用カード100が、電極ホルダー6を押すことによる。すなわち、決済用カード100の搬送に伴って、電極ホルダー6は、奥側に向けて移動可能である。この移動によって、電極ホルダー6は、奥側に備わる検知部8に近づいていく。すなわち、決済用カード100の搬送に伴って、電極ホルダー6は、検知部8に向けて移動可能である。
【0087】
検知部8は、検知部8が備わり電極ホルダー6を検知可能な第1位置41に、電極ホルダー6が到達したかどうかを検知できる。検知部8は、電極ホルダー6が検知部6のある第1位置41に到達していない場合には、未検知として判断する。到達している場合には、検知として判断する。
【0088】
検知部8は、電極ホルダー6が第1位置41に到達した検知結果を、ICチップ読み出し部7に通知する。あるいはICチップ読み出し部7を制御する電子要素などに通知する。電極ホルダー6が第1位置41に到達していることは、電極ホルダー6の電極61とICチップ102の電気端子103とが導通のための接触をしている状態である。
【0089】
検知部8が、電極ホルダー6が第1位置41に到達していることを検知することは、電極ホルダー6の電極61が、ICチップ102から読み出し可能となった状態を示している。この検知結果がICチップ読み出し部7に通知されることで、ICチップ読み出し部7は、ICチップ102から個人情報を読み出すことができるようになる。
【0090】
電極ホルダー6は、決済用カード100の搬送に合わせて移動する。このとき、検知部8に向けた方向への移動および搬送領域4の上から下に向けた下方の移動とが合わせて行われる。この両方の移動により、電極ホルダー6は、決済用カード100に近づいていく。この近付いていく過程で、電極ホルダー6が決済用カード100に接触するようになっていく。電極ホルダー6の底面(決済用カード100側)に、電極61が備わっている。電極ホルダー6が接触するように近付くと、電極61も決済用カード100に近づいていく。
【0091】
この近付いていく過程で、電極61はICチップ102の電気端子103に対応する位置において接触するように構成されている。これは、電極ホルダー6の位置と、移動経路によって実現できる。ここで、電極ホルダー6が第1位置41にまで到達する状態は、電気端子103に電極61が確実に導通する状態で接触している状態である。
【0092】
決済用カード100は、検知部8に向けて搬送される。この搬送の過程で、電極ホルダー6を搬送領域4側であって検知部8にむけて移動させる。この移動経路によって、電極61が電気端子103と導通接触する状態に近づいていく。近付いた結果、電極ホルダー6が、第1位置41に到達するタイミングでは、電気端子103と電極61とが確実に導通する接触状態となっている。検知部8は、電極ホルダー6の位置の検出によりこの状態を検知できる。
【0093】
この検知によって、ICチップ読み出し部7は、正しいタイミングでICチップ102からの読み出しを開始・実行できる。従来技術のように、予測のみでICチップ102からの読み出しをして読み出しエラーを生じさせることが抑制される。検知部8による検知により、電気端子103と電極61との導通が確立していることが判断できる。この検知結果を受けて、ICチップ読み出し部7が読み出しを開始するので、読み出しエラーなどを生じさせることが大きく抑制できるからである。
【0094】
以上のように、カードリーダー1は、読み出しエラーなどを防止して、確実にICチップ102から個人情報を読み出すことができる。
【0095】
(カードの挿入など)
【0096】
筐体2は、上述の通り、挿入口45を更に備える。搬送機構3は、挿入された決済用カード100を第1位置41の奥側(先端側)に搬送する。挿入された決済用カード100が読み出しされる場合においては、この方向に向けて搬送する。このため、検知部8は、先端側に備わる。この先端側であって検知部8は、第1位置41に備わる。
【0097】
(第1位置と第2位置)
電極ホルダー6は、通常状態においては第2位置42に位置する。第2位置42は、電極ホルダー6に対して決済用カード100による移動圧力が加わっていない状態での、電極ホルダー6の位置である。すなわち、決済用カード100が挿入されて電極ホルダー6を押し出すまでには、電極ホルダー6は第2位置42に位置する。
【0098】
決済用カード100は、挿入されて搬送されると搬送領域4を搬送される。電極ホルダー6の電極61の底面は、搬送領域4の上方に位置するが、電極ホルダー6を構成する一部は、搬送領域4に位置する。搬送領域4を搬送される決済用カード100は、この搬送過程で電極ホルダー6を先端側に移動させる。
【0099】
この移動の結果、検知部8は、電極ホルダー6が第1位置41へ到達することを検知できる。この検知により、ICチップ読み出し部7が、ICチップ102の電気端子103からの読み出しを行わせる。
【0100】
(電極ホルダーと検知部の構成関係)
図4に示されるように、電極ホルダー6は、先端に凸部63を備えることも好適である。対応するように、検知部8は、凸部63を受け入れ可能な凹部83を有することが好適である。
図4は、本発明の実施の形態1における電極ホルダーの移動を示す模式図である。
【0101】
上述したように、決済用カード100の搬送に応じて、電極ホルダー6は第2位置42から第1位置41に向けて移動する。決済用カード100が挿入されていない状態である通常状態では、電極ホルダー6は、第2位置42にある。決済用カード100は、搬送に伴い電極ホルダー6を押す。これにより、電極ホルダー6は、第1位置41に近づいていく。さらに、第1位置41に到達する。
図4は、この移動と第1位置41までの到達を示している。
【0102】
決済用カード100は、第2位置42に到達すると、この位置で電極ホルダー6を押し出すことが可能となる。この状態に続いて、決済用カード100は、電極ホルダー6を、第2位置42から第1位置41に向けて押し動かして、移動させるようになる。
【0103】
第1位置41に到達すると、凸部63は凹部83に入り込む。ここで、検知部8は、凹部83の一方に発光部と他方に受光部を有する。すなわち、凹部83においては、発光と受光をやり取りできる状態である。この凹部83に凸部63が入り込んでいる場合には、発光部からの光を受光部が受光できない。この受光できない状態は、電極ホルダー63が第1位置41に到達したものと判断できる。
【0104】
発光部からの光を受光部が受光できる状態であれば、凸部63が凹部83に入り込んでいないので、電極ホルダー6は、まだ第1位置41に到達できていない状態であると判断できる。このように、検知部8は、発光部からの光を受光部が受光できるかどうかに基づいて、電極ホルダー63が第1位置41に到達したかを検知する。
【0105】
このような凸部63と凹部83との組み合わせに基づくことで、検知部8は、電極ホルダー6が第1位置41に確実に到達したことを検知できる。上述したように、第1位置41に到達する電極ホルダー6は、その電極61を確実にICチップ102の電気端子103に導通させることができている状態である。この検知結果により、ICチップ読み出し部7は、ICチップ102からの個人情報の読み出しを開始できる。この開始のタイミングは、読み出しエラーを生じさせることが無い。
【0106】
もちろん、発光部と受光部による光学的処理以外で、電極ホルダー6の第1位置への到達を検出してもよい。例えば、凸部63と凹部83との嵌合を電気信号で検出するスイッチにより、検知してもよい。
【0107】
なお、筐体2は、決済用カード100が搬送される搬送領域4を備える。この搬送領域4を、決済用カード100は搬送される。ここで、検知部8は、この搬送領域4よりも物理的に上方に備わる。
図1では、この態様が示されている。搬送領域4は、決済用カード100が搬送される厚みや大きさに合わせた領域である。なので、薄い空間である。
【0108】
この搬送領域4よりも物理的に上方に検知部8が備わることで、搬送領域8を搬送される決済用カード100からの汚れが、検知部8に付着しにくいメリットがある。決済用カード100は、外部から挿入される。このとき、決済用カード100は、様々な使用者により所有されており、汚れなどが付着していることもある。また、挿入の際に、外部から汚れを筐体2内部に持ち込むこともあり得る。
【0109】
搬送領域4においては、この決済用カード100に付着していた汚れや持ち込まれた汚れが搬送されることもあり得る。このとき、検知部8が、搬送領域4と同じ高さにあると、搬送された汚れが、検知部8に付着してしまうこともあり得る。検知部8にこのような汚れが持ち込まれてしまうと、光学的処理や電気スイッチなどの感度が低下してしまうこともあり得る。
【0110】
これに対して、搬送領域4よりも物理的に上方に検知部8が備わることで、決済用カード100が搬送において運ぶ汚れが、検知部8に持ち込まれにくくなる。異なる高さであることで、決済用カード100が直接的に汚れを検知部8に付着させることが無い。また、上方に位置することで、決済用カード100が持ち込んだ汚れが落下して検知部8に付着することも防止できる。これらにより、検知部8の汚れ付着を防止でき、検知部8での検知感度の低下を防止できる。
【0111】
(動作フローの説明)
次に、カードリーダー1の動作フローについて説明する。開始時は、
図1に示される通り、決済用カード100が、挿入口45から挿入開始されている。決済用カード100が挿入されることで、カードリーダー1による情報読み出しが開始される。勿論、カードリーダー1での情報読み出しに続いて、決済用カード100による実際の決裁が行われる。この決済については、カードリーダー1の内部で行われてもよいし、カードリーダー1を含む決済装置により行われてもよい。決済については、読み出された個人情報をやり取りするサーバーからの指示により行われる。サーバーとの通信が行われる。
【0112】
図5は、本発明の実施の形態1における決済用カードが第2位置に到達した状態を示すカードリーダーの側面図である。
【0113】
決済用カード100が、
図1のように、挿入口45から挿入開始される。挿入を受けて、搬送機構3は、決済用カード100を搬送する。搬送領域4内部を、決済用カード100は搬送されて移動する。決済用カード100の搬送が進むと、
図5のように、決済用カード100が第2位置42に対応する位置に到達する(決済用カード100そのものが厳密に第2位置42に到達するということに限定するものではない。通常状態においては、電極ホルダー6は、第2位置42に位置する。決済用カード100が、電極ホルダー6を押し出し可能な位置に到達することを、ここでは、決済用カード100が第2位置42に到達していると説明している)。
【0114】
電極ホルダー6は、この時点では(その前の時点でも)、搬送領域4を搬送される決済用カード100と離隔している。すなわち、決済用カード100のICチップ102と電極61とは非接触状態である。
【0115】
一方で、決済用カード100が第2位置42に対応する位置に到達すると、
図5のように、決済用カード100が電極ホルダー6を押し出せるようになる。電極ホルダー6は、決済用カード100を受ける構造部分を有している。この構造部分に、決済用カード100が当たる。搬送により、決済用カード100は、そのまま電極ホルダー6を移動させる。
【0116】
また、電極ホルダー6は、第2位置42では、検知部8よりも上側の第2平面に位置する。検知部8は、第2平面の下の第1平面に位置する。すなわち、決済用カード100で押し出される前においては、電極ホルダー6は、検知部8のある第1平面よりも高い第2平面に位置している。
【0117】
図5のように、第2位置42に対応する位置に決済用カード100が到達すると、決済用カード100は、電極ホルダー6を押し出し始める。このとき、電極ホルダー6は、第2平面から第1平面に向けて下降も始める。下降しつつ検知部8に向けた方向にも移動する。
【0118】
この下降により、次第に電極ホルダー6は、上側の第2平面から下側の第1平面に下降する。第1平面は、搬送領域4と重なる平面である。すなわち、第1平面に下降した電極ホルダー6は、その底面に備える電極61を、ICチップの電気端子103に近づけて接触させる。さらに、下降と移動を進めると、
図6のような状態となる。
【0119】
図6は、本発明の実施の形態1における電極ホルダー6がICチップに導通接触した状態でのカードリーダーの側面図である。
【0120】
電極ホルダー6は、第1平面まで下降する。この下降によって、底面の電極61をICチップの電気端子103に接触させるようになる。また、
図6のように、電極ホルダー6は、下降しながら検知部8に向けて移動するので、次第に、電極ホルダー6は、決済用カード100と略平行の状態となっていく。
図6では、この略平行状態を示している。
【0121】
電極ホルダー6が決済用カード100と略平行の状態となることで、電極ホルダー6の底面に備わる電極61も、ICチップの表面と略平行になる。この略平行状態となることで、電極61は、ICチップ102の電気端子103に略平行に接触する。この略平行の接触により、電極61と電気端子103とは、確実に導通状態となる。
【0122】
この状態で、電極ホルダー6は、第1位置41に到達する。すなわち、
図4で説明したように、検知部8が電極ホルダー6の第1位置41への到達を検知できるようになる。
図6では、電極ホルダー6は、第1位置41に到達しており検知部8がこれを検知できる状態である。
【0123】
この状態で、検知部8の検知結果に基づいて、ICチップ読み出し部7がICチップ102から個人情報を読み出す。既述したように、読み出しエラーが防止できる。
【0124】
以上のような動作フローによって、カードリーダー1は、確実に読み出しできる態様とタイミングで、ICチップ102から個人情報を読み出すことができる。
【0125】
(下降駆動部)
電極ホルダー6を第2平面から第1平面へ下降する下降駆動部62を更に備えることも好適である。
図6において、下降駆動部62が示されている。下降駆動部62は、電極ホルダー6が、決済用カード100により前方に押し出されると、電極ホルダー6を上側の第2平面から下側の第1平面に向けて下降させる。
【0126】
例えば、前方斜め下方向に向けた溝が備わり、電極ホルダー6が、この溝に沿って移動できる構成であればよい。溝に嵌合する突起を持っており、前方に移動するにつれて前方斜め下方向に向けた溝に沿って、突起が移動する。この突起の移動により、突起を備える電極ホルダー6は、第2平面から第1平面に下がっていく。
【0127】
このように、下降駆動部62は、決済用カード100が第2位置42に対応する位置に到達すると、電極ホルダー6は第2平面から第1平面に下降させる。この下降によって、最終的には電極61と電気端子103とが導通可能に接触する。
【0128】
また、電極ホルダー6は、第1平面に下降すると、決済用カード100と略平行状態を維持する。
図6は、この略平行状態である。この略平行状態が維持されることで、電極61と電気端子103との導通状態が確実に維持される。これにより、ICチップ読み出し部7からの個人情報の読み出しが確実に行われる。
【0129】
図7は、本発明の実施の形態1における電極ホルダーが第1位置に到達した状態を示す拡大図である。
図7のように、電極ホルダー6が第1位置41に到達すると、電極ホルダー6の凸部63が検知部8の凹部83に入り込んでいる。この状態となれば、検知部8は、ICチップ読み出し部7からの読み出し開始の指示を出せる。このとき、
図7に示すように、電極61は、確実に電気端子103に接触しており、導通している。
【0130】
以上のように、実施の形態1におけるカードリーダー1は、読み出しエラーなどを生じさせることなく、ICチップからの情報読み出しを行える。特に、その開始タイミングが確実であることで、読み出しエラーを減少させると共に、読み出し可能となったタイミングですぐに読み出し開始できる。結果として、読み出しに要する時間を短縮化できる。
【0131】
(実施の形態2)
【0132】
次に実施の形態2について説明する。
【0133】
(信号線)
検知部8からの検知結果を電気的に出力する出力信号線と、ICチップ読み出し部7からの読み出し結果を電気的に出力する読み出し信号線とは、物理的に別体であることも好適である。
【0134】
検知部8およびICチップ読み出し部7は、それぞれ検知結果や読み出し結果を、電気的信号で処理する。また電気的信号を出力する。それぞれ、カードリーダー1の制御部であったり、決裁処理装置の制御部であったりに対して、電気信号を出力する。この電気信号を出力する電気信号線のそれぞれが、別体であることが好適である。
【0135】
これらの電気信号線が別体であることで、仮に読み出しエラーが生じた場合に、検知部8での検知エラーに原因があるのか、電極ホルダーの検知部8への移動に原因があるのか、ICチップ読み出し部7での読み出しに原因があるのか(あるいは電極61と電気端子103との導通に問題があるのか)を、区別できる。例えば、カードリーダー1の制御部や決済装置の制御部が、これを区別できるようになる。
【0136】
この区別ができることで、読み出しエラーが生じた場合の対応が容易に判断できる。この容易な判断により、読み出しエラー時に対応すべき処理が行える。
【0137】
(磁気読み出し)
【0138】
図8は、本発明の実施の形態2におけるカードリーダーの内部図である。
図1などのカードリーダー1内部を上から見た状態を示している。
【0139】
カードリーダー1は、磁気読み出し部5を備える。磁気読み出し部5は、決済用カード100の磁気記憶領域101に対応する位置に設けられる。このとき、決済用カード100が搬送される過程で、磁気読み出し部5は、磁気記憶領域101に接触して磁気記憶を読み出す。磁気記憶領域101にも、個人情報が記憶されているので、磁気読み出し部5は、磁気記憶領域101から個人情報を読み出せる。
【0140】
磁気読み出し部5も備わっていることで、挿入された決済用カード100が、磁気記憶領域101を備えている場合、あるいは磁気記憶領域101のみを備えている場合に、磁気読み出し部5が決裁に必要となる個人情報を読み出す。勿論、ICチップ102と並行して読み出されてもよい。
【0141】
なお、実施の形態1、2で説明したカードリーダーは、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲を排除するものではない。
【符号の説明】
【0142】
1 カードリーダー
2 筐体
3 搬送機構
4 搬送領域
41 第1位置
42 第2位置
45 挿入口
5 磁気読み出し部
6 電極ホルダー
61 電極
63 凸部
7 ICチップ読み出し部
8 検知部
83 凹部
100 決済用カード
101 磁気記憶領域
102 ICチップ
103 電気端子