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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】動釣合い試験機用の被試験体固定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/02 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01M1/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020130683
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026962
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西脇 清
(72)【発明者】
【氏名】北村 博志
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350270(JP,A)
【文献】特開昭63-247105(JP,A)
【文献】実開昭62-115117(JP,U)
【文献】米国特許第06575030(US,B1)
【文献】特開平07-174656(JP,A)
【文献】実公昭47-001115(JP,Y1)
【文献】特開2019-163979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00- 1/38
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通穴と、前記挿通穴の少なくとも一部を区画するテーパー状の基準内周部とを有する被試験体を動釣合い試験機に固定するための被試験体固定装置であって、
上側へ向かうにつれて小径になったテーパー面が外周面に設けられた円筒部を有するセンタリングコーンと、
前記円筒部内に挿通されて前記センタリングコーンに対して上下方向に相対移動可能なスリーブと、
前記スリーブにおいて前記円筒部から上側へはみ出た部分によって支持された押えピンであって、前記円筒部の中心軸線を基準とする径方向において前記スリーブの外周面よりも外側へ張り出した進出位置と、前記進出位置よりも前記径方向の内側へ引っ込んだ退避位置との間で進退可能な押えピンと、
前記センタリングコーンに対して上下方向に位置決めされた状態で前記スリーブ内に挿通されて前記押えピンに連結されたガイド軸であって、前記スリーブの下降に応じて前記押えピンを前記退避位置から前記進出位置まで進出させて、前記スリーブの上昇に応じて前記押えピンを前記進出位置から前記退避位置まで退避させるガイド軸とを含み、
前記基準内周部が上側へ向かうにつれて小径になった状態における被試験体の前記挿通穴に前記円筒部が下側から挿通されると、前記テーパー面が前記径方向の内側から前記基準内周部に対向して、前記押えピンが前記基準内周部よりも高い位置に配置され、
前記挿通穴に前記円筒部が挿通されてから前記スリーブが下降すると、前記押えピンが、前記退避位置から前記進出位置まで進出して、被試験体において前記基準内周部よりも上側の部分を押し下げる、動釣合い試験機用の被試験体固定装置。
【請求項2】
前記スリーブとともに昇降可能な押し上げ部材であって、前記挿通穴に前記円筒部が挿通される被試験体を前記スリーブの上昇に応じて押し上げる押し上げ部材をさらに含む、請求項1に記載の動釣合い試験機用の被試験体固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被試験体を動釣合い試験機に固定するための被試験体固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動釣合い試験機では、固定された被試験体を所定速度で回転させることによって、被試験体の不釣合いが測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
挿通穴と、この挿通穴を区画するテーパー状の基準内周部とを有するローター等の被試験体が想定される。この被試験体を動釣合い試験機に固定する場合には、動釣合い試験機側において上側へ向かうにつれて小径になったテーパー軸が、基準内周部が上側へ向かうにつれて小径になった状態における被試験体の挿通穴に下側から挿通される。
【0004】
従来では、作業者が、テーパー軸において被試験体の挿通穴から上側へはみ出た部分に固定用のナットを締め付けることによって、手作業で被試験体をテーパー軸に固定するので、作業者の負担が大きい。一方、別の従来例として、コレットによって構成されたテーパー軸が被試験体の挿通穴内で拡径して圧入されることによって被試験体がテーパー軸に自動で固定される場合がある。この場合には、拡径するコレットからの押圧力が被試験体を浮かそうとするので、テーパー軸が被試験体を把持する力(以下、「把持力」という。)を十分に得られない。そのため、被試験体を動釣合い試験機に強固に固定することが困難である。
【0005】
この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、挿通穴と、この挿通穴の少なくとも一部を区画するテーパー状の基準内周部とを有する被試験体を自動で強固に動釣合い試験機に固定することができる被試験体固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、挿通穴(4B)と、前記挿通穴の少なくとも一部を区画するテーパー状の基準内周部(4D)とを有する被試験体(4)を動釣合い試験機(1)に固定するための被試験体固定装置(3)であって、上側へ向かうにつれて小径になったテーパー面(12E)が外周面に設けられた円筒部(12B)を有するセンタリングコーン(12)と、前記円筒部内に挿通されて前記センタリングコーンに対して上下方向に相対移動可能なスリーブ(14)と、前記スリーブにおいて前記円筒部から上側へはみ出た部分(14D)によって支持された押えピン(16)であって、前記円筒部の中心軸線(J)を基準とする径方向(R)において前記スリーブの外周面(14B)よりも外側へ張り出した進出位置と、前記進出位置よりも前記径方向の内側へ引っ込んだ退避位置との間で進退可能な押えピンと、前記センタリングコーンに対して上下方向に位置決めされた状態で前記スリーブ内に挿通されて前記押えピンに連結されたガイド軸(13)であって、前記スリーブの下降に応じて前記押えピンを前記退避位置から前記進出位置まで進出させて、前記スリーブの上昇に応じて前記押えピンを前記進出位置から前記退避位置まで退避させるガイド軸とを含み、前記基準内周部が上側へ向かうにつれて小径になった状態における被試験体の前記挿通穴に前記円筒部が下側から挿通されると、前記テーパー面が前記径方向の内側から前記基準内周部に対向して、前記押えピンが前記基準内周部よりも高い位置に配置され、前記挿通穴に前記円筒部が挿通されてから前記スリーブが下降すると、前記押えピンが、前記退避位置から前記進出位置まで進出して、被試験体において前記基準内周部よりも上側の部分(4F)を押し下げる、動釣合い試験機用の被試験体固定装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成によれば、被試験体を動釣合い試験機に固定する場合には、まず、被試験体固定装置のセンタリングコーンの円筒部が、挿通穴の少なくとも一部を区画するテーパー状の基準内周部が上側へ向かうにつれて小径になった状態における被試験体の当該挿通穴に下側から挿通される。その際、スリーブにおいて円筒部から上側にはみ出た部分によって支持された押えピンは、被試験体に引っ掛からないように退避位置にあるので、円筒部は、円滑に挿通穴に挿通される。円筒部が挿通穴に挿通されると、円筒部のテーパー面が、若干の隙間を隔てて径方向の内側から基準内周部に対向するとともに、押えピンが、基準内周部よりも高い位置に配置される。この状態でスリーブが下降すると、押えピンが、スリーブの下降に連動して退避位置から進出位置まで進出し、被試験体において基準内周部よりも上側の部分を押し下げる。これにより、基準内周部が上側から円筒部に押し付けられて基準内周部と円筒部のテーパー面との間の隙間がなくなるので、円筒部が、基準内周部に圧入されて十分な把持力で被試験体を把持するとともに、この被試験体をセンタリングする。そのため、被試験体固定装置は、この被試験体を自動で強固に動釣合い試験機に固定することができる。
【0008】
また、本発明は、前記被試験体固定装置が、前記スリーブとともに昇降可能な押し上げ部材(17C)をさらに含み、前記押し上げ部材が、前記挿通穴に前記円筒部が挿通される被試験体を前記スリーブの上昇に応じて押し上げることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、被試験体を動釣合い試験機から取り外す場合には、スリーブを上昇させる。すると、押えピンが退避位置まで退避して被試験体に引っ掛からなくなる。さらに、スリーブの上昇に連動して押し上げ部が被試験体を押し上げるので、被試験体の基準内周部を、今まで被試験体を強固に把持していた円筒部のテーパー面から容易に分離させることができる。その後、円筒部が被試験体の挿通穴から外れると、被試験体の取り外しが完了する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態に係る被試験体固定装置が用いられた動釣合い試験機における要部の縦断面図である。
図2図1の状態における被試験体固定装置の平面図である。
図3】被試験体固定装置が被試験体をクランプした状態における動釣合い試験機の縦断面図である。
図4図3の状態における被試験体固定装置の平面図である。
図5図3のB-B矢視断面図である。
図6図3のC-C矢視断面図である。
図7図3のD-D矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、動釣合い試験機1における要部の縦断面図である。図1の上下方向は、動釣合い試験機1の上下方向である。図1の左右方向を動釣合い試験機1の横方向という。横方向は、水平方向に含まれる。図1では、動釣合い試験機1におけるスピンドル2および被試験体固定装置3が図示されている。スピンドル2は、上下方向に延びる中心軸線Jを有する中空の円柱状に形成され、動釣合い試験機1の本体(図示せず)によって振動可能かつ中心軸線Jまわりに回転可能に保持されている。
【0012】
被試験体固定装置3は、被試験体4を動釣合い試験機1に固定するためのものであって、スピンドル2の上端部に固定されている。動釣合い試験機1において動釣合い試験を行う場合には、被試験体4が被試験体固定装置3を介してスピンドル2に固定された状態で、スピンドル2が所定速度で駆動回転され、この状態における被試験体4の振動が検出される。検出された振動から、被試験体4の不釣合いが得られる。
【0013】
被試験体4は、例えば円筒状のローターである。被試験体4には、円管状の中心部4Aが設けられている。中心部4Aには、その内部空間として中心部4Aを貫通した円形状の挿通穴4Bが形成されている。挿通穴4Bでは、その深さ方向における一方側領域(図1における略下半分)が、他方側領域(図1における略上半分)よりも小径である。これにより、被試験体4において挿通穴4Bを区画した内周面4Cには、当該一方側領域に相当する円筒状の基準内周部4Dと、当該他方側領域に相当して基準内周部4Dよりも大径の円筒をなす大径部4Eと、基準内周部4Dと大径部4Eとをつなぐ円環部4Fとが同軸状で設けられている。
【0014】
基準内周部4Dは、大径部4Eから離れるにつれて大径になるテーパー状に形成される。基準内周部4Dには、挿通穴4Bの深さ方向に延びるキー溝4Gが形成されている。円環部4Fは、挿通穴4Bの深さ方向と直交する方向に平坦である。この実施形態では基準内周部4Dが内周面4Cの一部だけを占めることによって挿通穴4Bの一部を区画するが、基準内周部4Dは、内周面4Cの全域を占めることによって挿通穴4Bの全域を区画してもよく、この場合の円環部4Fは、中心部4Aの端面4Hによって構成される。
【0015】
このような被試験体4を動釣合い試験機1に固定するための被試験体固定装置3について、詳しく説明する。被試験体固定装置3は、スピンドル2の上端部に固定されたベース10と、ベース10から立ち上がったケース11と、ケース11の上端部に固定されたセンタリングコーン12と、ケース11内でケース11に固定されたガイド軸13とを含む。被試験体固定装置3は、ガイド軸13を取り囲んだ状態でセンタリングコーン12によって取り囲まれたスリーブ14と、スリーブ14の上端に固定されたキャップ15と、スリーブ14の上端部によって支持された押えピン16と、スリーブ14の下端部に固定されて被試験体4を下側から支持する受け台17とをさらに含む。被試験体固定装置3は、大部分がスピンドル2内に配置されて上端部がケース11内に配置されたドローバー18と、スリーブ14とドローバー18とをつなぐコネクタ19とをさらに含む。
【0016】
ベース10は、上下方向に一致した板厚方向を有する円板状であり、その中心部には、ベース10を上下方向に貫通した貫通穴10Aが形成されている。ボルトB1がベース10及びスピンドル2の両方に組み付けられることによって、ベース10がスピンドル2の上端部に上側から同軸状で固定されている。そのため、被試験体固定装置3では、横方向および上下方向におけるベース10の位置(スピンドル2に対する相対位置)が固定されている。この状態におけるベース10の中心軸線は、スピンドル2の中心軸線Jと一致している。なお、図1以降の各図では、ボルトB1等のボルトの断面におけるハッチングが省略されている。
【0017】
ケース11は、円筒状に形成され、ベース10と同軸状に配置されている。ケース11の下端部11Aは、前述した中心軸線Jを基準とする径方向Rの外側へ折り曲げられ、ボルトB2によってベース10に固定されている。なお、径方向Rは、横方向に含まれる。ケース11の内周面において上下方向における途中部には、横方向に延びる円形状の仕切壁11Bが設けられる。ケース11の内部空間は、仕切壁11Bよりも上側の上空間11Cと、仕切壁11Bよりも下側の下空間11Dとに二分されている。
【0018】
仕切壁11Bの中心部には、仕切壁11Bを上下方向に貫通した中心穴11Eが1つ形成されている。仕切壁11Bには、仕切壁11Bを上下方向に貫通したガイド穴11Fが複数形成されている。この実施形態では、3つのガイド穴11Fが、中心軸線Jまわりの周方向Pに等間隔で並んで配置され、中心穴11Eを取り囲んでいる。それぞれのガイド穴11Fは、周方向Pに延びる円弧状に形成されている(図5を参照)。
【0019】
センタリングコーン12は、上下方向に一致した板厚方向を有する円板部12Aと、円板部12Aの中心部から立ち上がった円筒部12Bとを一体的に有する。センタリングコーン12には、円形状の中心穴12Cが形成されている。中心穴12Cは、円筒部12Bの内部空間を構成して円筒部12Bの上端から上側へ開放され、かつ、円板部12Aの中心部を上下方向に貫通している。ボルトB3が円板部12A及びケース11の上端部の両方に組み付けられることによって、センタリングコーン12がケース11に上側から同軸状で固定されている。ケース11がベース10を介してスピンドル2と同軸状に配置されているので、円筒部12Bの中心軸線は、スピンドル2の中心軸線Jと一致している。
【0020】
円板部12Aは、ケース11の上空間11Cを上側から塞いでいる。円板部12Aには、円板部12Aを上下方向に貫通したガイド穴12Dが複数形成されている。この実施形態では、3つのガイド穴12Dが、周方向Pに等間隔で並んで配置され、中心穴12Cを取り囲んでおり、それぞれのガイド穴12Dは、周方向Pに延びる円弧状に形成されている(図2参照)。なお、図1は、図2のA-A矢視断面図である。円筒部12Bの外周面のほぼ全域、具体的には、この外周面における上寄りの領域には、上側へ向かうにつれて小径になったテーパー面12Eが設けられている。円筒部12Bの外周面においてテーパー面12Eよりも下側の部分の外径は、上下方向における全域にわたって一定である。テーパー面12Eには、径方向Rの外側へ突出して上下方向に延びるキー20が設けられている。
【0021】
ガイド軸13は、上下方向に細長い円柱状の本体部13Aと、本体部13Aの下部の外周面から張り出した円環状のフランジ部13Bとを一体的に有する。本体部13Aの外径は、センタリングコーン12の中心穴12Cにおける内径よりも小さい。本体部13Aの下部及びフランジ部13Bは、ケース11の上空間11Cに配置されている。本体部13Aの下端部は、フランジ部13Bよりも下側へ突出し、ケース11の仕切壁11Bの中心穴11Eに上側から挿入されている。これにより、ガイド軸13は、ケース11と同軸状に配置されている。
【0022】
ガイド軸13の本体部13Aの外周面の上端部には、上側へ向かうにつれて小径になったテーパー面13Cが設けられている。テーパー面13Cには、その傾斜に沿って延びるガイド溝13Dが複数形成される。この実施形態では、3つのガイド溝13Dが、周方向Pに等間隔で並んで配置されていて、それぞれのガイド溝13Dは、例えばアリ溝であって、径方向Rの外側へ向かうにつれて幅狭になった台形状の断面を有する(図6参照)。本体部13Aの外周面においてテーパー面13Cよりも下側の領域には、径方向Rの外側へ突出して上下方向に延びるキー21が設けられている。フランジ部13Bは、ケース11の仕切壁11Bの上に載っている。ボルトB4がフランジ部13B及び仕切壁11Bの両方に組み付けられることによって、ガイド軸13がケース11に固定されている。前述したようにセンタリングコーン12もケース11に固定されているので、ガイド軸13は、センタリングコーン12に対して上下方向に位置決めされた状態にある。
【0023】
スリーブ14は、上下方向に細長い円管状の本体部14Aと、本体部14Aの外周面14Bの下端から張り出した円環状のフランジ部14Cとを一体的に有する。本体部14Aの外径は、センタリングコーン12の中心穴12Cにおける内径よりも僅かに小さい。本体部14Aの内径は、ガイド軸13の本体部13Aの外径よりも僅かに大きい。本体部14Aは、センタリングコーン12の中心穴12Cつまり円筒部12B内に挿通されて、ガイド軸13の本体部13Aを取り囲んでいる。この状態におけるスリーブ14は、センタリングコーン12及びガイド軸13のそれぞれに対して、同軸状に配置されるとともに上下方向に相対移動可能である。
【0024】
本体部14Aの上部14Dは、円筒部12Bから上側へはみ出している。上部14Dには、本体部14Aの周壁を径方向Rに貫通した支持穴14Eが、ガイド軸13のガイド溝13Dと同数形成されている。この実施形態では、円形状の3つの支持穴14Eが、周方向Pに等間隔で並んで配置されている。フランジ部14Cの下面の中央部には、上側へ窪む円形状の凹部14Fが形成されている。凹部14Fは、本体部14Aの内部空間に下側から連通している。ガイド軸13の本体部13Aは、スリーブ14内、つまり本体部14Aの内部空間及び凹部14Fに挿通されている。本体部14Aの下端部及びフランジ部14Cは、ケース11の上空間11Cに配置されている。本体部14Aの内周面には、上下方向に延びるキー溝14Gが形成されており、ガイド軸13のキー21がキー溝14Gに嵌っている、これにより、スリーブ14は、ガイド軸13に対して上下方向に相対移動可能であるものの、中心軸線Jまわりにガイド軸13と一体回転可能である。
【0025】
キャップ15は、スリーブ14の本体部14Aと同じ外径を有する円盤形状であり、本体部14Aの上端にねじ止めされ、本体部14Aの内部空間を上側から塞いでいる。キャップ15において本体部14Aの内部空間に対向する部分には、上側へ窪んだ凹部15Aが形成されている。
【0026】
押えピン16は、スリーブ14の上部14Dにおける支持穴14Eに一致した形状を有するピンであり、この実施形態では、円形状の支持穴14Eに応じて径方向Rに延びる円柱状に形成される。なお、支持穴14Eが四角形であれば、押えピン16は、四角柱状に形成される。押えピン16は、支持穴14Eと同数設けられ、それぞれの支持穴14Eに1つずつ挿通されている。この実施形態では、3つの押えピン16が、中心軸線Jを基準として放射状に配置された状態で、スリーブ14の上部14Dによって支持されている(図6参照)。それぞれの押えピン16において径方向Rにおける内側の根元部16Aは、ガイド軸13において周方向Pで同じ位置にある1つのガイド溝13Dに嵌ることによってガイド軸13に連結されている。根元部16Aは、ガイド溝13Dのアリ溝形状と一致した台形状に形成されているので、ガイド溝13Dから外れ不能である(図6参照)。
【0027】
図1におけるそれぞれの押えピン16は、退避位置にあって、スリーブ14内に収納されている。具体的には、退避位置にある押えピン16では、根元部16Aがガイド溝13Dの上端部に位置し、押えピン16における径方向Rの外側の先端面16Bが、スリーブ14の上部14Dの外周面14Bと面一又は外周面14Bよりも径方向Rの内側に配置される。先端面16Bは、外周面14Bと同じ曲率を有する湾曲面である(図2参照)。押えピン16が退避位置にある状態でスリーブ14が下降すると、それぞれの押えピン16は、スリーブ14とともに下降し、その際にガイド溝13Dによって径方向Rの外側へ押し出される。スリーブ14が下降を停止すると、それぞれの押えピン16は、進出位置に配置される(図3を参照)。
【0028】
進出位置にある押えピン16では、根元部16Aがガイド溝13Dの下端部に位置し、押えピン16の先端面16Bが、スリーブ14の上部14Dの外周面14Bよりも径方向Rの外側へ張り出す(図3及び図6参照)。この状態でスリーブ14が上昇すると、それぞれの押えピン16は、スリーブ14とともに上昇し、その際にガイド溝13Dによって径方向Rの内側へ引き込まれる。スリーブ14が上昇を停止すると、それぞれの押えピン16は、退避位置に戻る。退避位置は、進出位置よりも径方向Rの内側へ引っ込んだ位置である。
【0029】
このように、それぞれの押えピン16は、進出位置と退避位置との間で径方向Rに進退可能である。そして、ガイド溝13Dにおいてそれぞれの押えピン16に連結されたガイド軸13は、スリーブ14の下降に応じて押えピン16を退避位置から進出位置まで進出させて、スリーブ14の上昇に応じて押えピン16を進出位置から退避位置まで退避させる。
【0030】
受け台17は、円環状のリング部17Aと、リング部17Aの上面から上側へ突出したストッパー17Bと、リング部17Aの上面からストッパー17Bよりも上側へ突出した押し上げ部材17Cとを一体的に有する。リング部17Aは、ケース11の上空間11Cに配置され、スリーブ14の本体部14Aの下端部を取り囲みつつ、フランジ部14C上に載っている。ボルトB5がリング部17A及びフランジ部14Cの両方に組み付けられることによって、受け台17がスリーブ14に対して同軸状で固定されている。そのため、受け台17全体がスリーブ14ととともに昇降可能である。リング部17AにおいてボルトB5と周方向Pで異なる位置には、リング部17Aを上下方向に貫通した挿通穴17Dが形成されている(図7も参照)。
【0031】
ストッパー17B及び押し上げ部材17Cは、径方向RにおいてボルトB5及び挿通穴17Dよりも内側に配置されている。ストッパー17B及び押し上げ部材17Cは、センタリングコーン12のガイド穴12Dと同数ずつ(この実施形態では3つずつ)設けられ、周方向Pに交互に並んでいる(図7参照)。ストッパー17Bは、周方向Pに延びる円弧状であり、ケース11の上空間11Cに配置され、センタリングコーン12の円板部12Aに下側から対向している。ストッパー17Bの上端面は、ボルトB5の頭部よりも高い位置にある。
【0032】
押し上げ部材17Cは、周方向Pに延びる円弧状である。それぞれの押し上げ部材17Cは、円板部12Aにおいて周方向Pで同じ位置にあるガイド穴12Dに対して遊びを持って下側から挿通されている(図2参照)。これらの押し上げ部材17Cの略上半分は、ガイド穴12Dから上側へはみ出した状態で、センタリングコーン12の円筒部12Bを取り囲んでいる。押し上げ部材17Cの上端面は、平坦面である。
【0033】
ドローバー18は、中心軸線Jと一致した中心軸線を有する細長い円柱状に形成されている。ドローバー18は、ベース10の貫通穴10Aに挿通されている。ドローバー18は、スピンドル2の中心部に形成された挿通穴2Aにも挿通されている。ドローバー18は、この状態で昇降可能である。ドローバー18の上端部は、ケース11の下空間11Dに配置されている。
【0034】
コネクタ19は、ケース11の下空間11Dに配置された円環状のリング部19Aと、リング部19Aの外周部から上側へ延びる柱部19Bとを一体的に有する。リング部19Aの内周部が、ドローバー18の上端部の外周面に形成された溝18Aに嵌っている。これにより、コネクタ19は、ドローバー18に対して同軸状で固定されている。
【0035】
柱部19Bは、ケース11の仕切壁11Bのガイド穴11Fと同数設けられている。この実施形態では、3つの柱部19Bが、周方向Pに等間隔で並んで配置されている。それぞれの柱部19Bは、周方向Pで同じ位置にあるガイド穴11Fに対して遊びを持って下側から挿通されている(図5参照)。それぞれの柱部19Bの略上半分は、ケース11の上空間11Cに配置され、スリーブ14のフランジ部14Cの外周部に下側から接触している。受け台17のリング部17Aの各挿通穴17Dに上側から差し込まれたボルトB6が、フランジ部14C及び柱部19Bの両方に組み付けられることによって、スリーブ14とコネクタ19とは同軸状で固定されている。ボルトB6の頭部は、挿通穴17Dに収容されている。
【0036】
動釣合い試験機1において動釣合い試験が実施される場合には、その準備として、図1に示す待機状態の被試験体固定装置3に対して、被試験体4がセットされる。被試験体4のセットは、作業者の手作業によって行われてもよいし、ロボット等によって自動で行われてもよい。
【0037】
被試験体固定装置3にセットされた被試験体4では、挿通穴4Bが上下方向に延びて基準内周部4Dが上側へ向かうにつれて小径になった状態にあって、挿通穴4Bには、センタリングコーン12の円筒部12Bが下側から挿通されている。押えピン16は、被試験体4に引っ掛からないように退避位置にあるので(図2も参照)、円筒部12Bは、円滑に挿通穴4Bに挿通される。挿通穴4Bに挿通された状態にある円筒部12Bのテーパー面12Eは、若干の隙間を隔てて径方向Rの内側かつ下側から基準内周部4Dに対向しているので、被試験体4は、センタリングコーン12による把持が未だのアンクランプ状態にある。また、押えピン16が、基準内周部4Dよりも高い位置に配置されている。そして、被試験体4の中心部4Aが、受け台17の押し上げ部材17Cの上端面に載り、受け台17によって下側から支持されている。
【0038】
次に、動釣合い試験機1に設けられたアクチュエータ(図示せず)が作動し、アクチュエータに連結されたスプリング(図示せず)を引き下げる。すると、このスプリングに連結されたドローバー18が下降する。これにより、コネクタ19を介してドローバー18に連結されたスリーブ14が、押えピン16及び受け台17を伴ってドローバー18とともに下降する。すると、今まで退避位置にあった押えピン16が、図3に示すように下降しながら進出位置まで進出して、スリーブ14の外周面14Bよりも径方向Rの外側に張り出す(図4も参照)。なお、図3は、図4のE-E矢視断面図である。
【0039】
進出位置にある押えピン16は、被試験体4において基準内周部4Dよりも上側の部分、具体的には中心部4A内の円環部4Fに接触する。そして、スリーブ14の更なる下降に応じて、押えピン16は、円環部4Fを押し下げる。これにより、基準内周部4Dが上側から円筒部12Bに押し付けられて基準内周部4Dと円筒部12Bのテーパー面12Eとの間の隙間がなくなる。これにより、ドローバー18の下降が停止し、アクチュエータ(図示せず)の作動が停止する。なお、ガイド軸13のフランジ部13BとボルトB4の頭部とは、ドローバー18の下降を邪魔しないように、スリーブ14のフランジ部14Cの下面の凹部14F内に受け入れられる。また、ガイド軸13の上端部は、キャップ15の凹部15A内に受け入れられる。
【0040】
図3に示すようにドローバー18の下降が停止した状態における被試験体固定装置3では、円筒部12Bが、基準内周部4Dに圧入されて十分な把持力で被試験体4を把持するとともに、この被試験体4をセンタリングした状態にある。そのため、被試験体固定装置3は、この被試験体4を自動で強固に動釣合い試験機1に固定することができる。このように被試験体4がクランプされた状態では、動釣合い試験の際において、被試験体4がスピンドル2に対して回転方向に滑ったり、スピンドル2の中心軸線Jに対して傾いたりすることが防止されるので、動釣合い試験を精度良く行うことができる。さらに、テーパー面12Eに設けられたキー20が基準内周部4Dのキー溝4Gに嵌っているので、被試験体4がスピンドル2に対して回転方向に滑ることを確実に防止できる。ただし、キー20及びキー溝4Gは、適宜省略できる。
【0041】
以上のように被試験体4がクランプされた状態において、動釣合い試験後に、動釣合い試験機1におけるシリンダ等のアクチュエータ(図示せず)が作動してドローバー18が上昇すると、スリーブ14が、押えピン16及び受け台17を伴ってドローバー18とともに上昇する。すると、今まで退避位置にあった押えピン16が、上昇しながら退避位置まで退避して被試験体4から離れるので、被試験体4の円環部4Fに引っ掛からなくなる。
【0042】
さらにドローバー18が少し上昇すると、ドローバー18とともに上昇する受け台17の押し上げ部材17Cが、図1に示すように、被試験体4において円筒部12Bが挿通された挿通穴4Bを有する中心部4Aを押し上げる。これにより、被試験体4の基準内周部4Dを、今まで被試験体4を強固に保持していた円筒部12Bのテーパー面12Eから容易に分離させることができる。このようにドローバー18の上昇に応じて被試験体4の基準内周部4Dに対する円筒部12Bの圧入状態が解除されると、被試験体4がアンクランプ状態になる。くさび効果によって基準内周部4Dとテーパー面12Eとの密着度が高いので、これらを分離するのに大きな力が必要だが、被試験体固定装置3では、特別な分離機構を設けなくても、被試験体4をアンクランプする動作によって基準内周部4Dとテーパー面12Eとを分離させることができる。
【0043】
アンクランプ状態になった被試験体4は、ドローバー18の上昇の停止後に、被試験体固定装置3から取り外すことができる。この際、押えピン16が退避位置にあるので、被試験体4の取り外しの邪魔にならない。円筒部12Bが被試験体4の挿通穴4Bから外れると、被試験体4の取り外しが完了する。被試験体4の取り外しは、作業者の手作業によって行われてもよいし、ロボット等によって自動で行われてもよい。なお、受け台17のストッパー17Bがセンタリングコーン12の円板部12Aに下側から接触することによって、ドローバー18の上昇を停止させてもよい。この場合、ストッパー17Bは、ボルトB5の頭部よりも先に円板部12Aに接触するので、ボルトB5の頭部が円板部12Aに接触して破損することを防止できる。
【0044】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 動釣合い試験機
3 被試験体固定装置
4 被試験体
4B 挿通穴
4D 基準内周部
4F 円環部
12 センタリングコーン
12B 円筒部
12E テーパー面
13 ガイド軸
14 スリーブ
14B 外周面
14D 上部
16 押えピン
17C 押し上げ部材
J 中心軸線
R 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7