(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】食品製造装置
(51)【国際特許分類】
A21C 3/02 20060101AFI20240404BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20240404BHJP
A23L 11/45 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
A21C3/02 A
A23L7/109 J
A23L11/45 A
A23L11/45 Z
(21)【出願番号】P 2020218953
(22)【出願日】2020-12-28
(62)【分割の表示】P 2020001684の分割
【原出願日】2020-01-08
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】513051508
【氏名又は名称】株式会社優食
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】李 振生
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-134(JP,A)
【文献】実開昭60-141995(JP,U)
【文献】特開2013-138683(JP,A)
【文献】特開2005-261369(JP,A)
【文献】特開2007-135490(JP,A)
【文献】特開平8-144184(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A23L 2/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断して麺を形成するためのシート状の食品を製造する食品製造装置であって、
搬送経路に対して通水性を有する第1のシート部材を供給する第1のシート部材供給部と、
前記第1のシート部材上に食品のペーストを供給して、前記第1のシート部材上に薄板状に広がったペースト層を形成するペースト供給部と、
前記第1のシート部材との間で前記ペースト層を挟むように通水性を有する第2のシート部材を供給する第2のシート部材供給部と、
前記第1のシート部材、前記ペースト層、及び前記第2のシート部材による積層シートを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部での圧縮後の前記ペースト層から前記第1のシート部材及び前記第2のシート部材を剥離させるシート部材剥離部と、を備え
、
前記圧縮部は、前記積層シートを挟んで圧縮する一対の圧縮ローラを有し、
前記シート部材剥離部は、折り畳まれてのプレスがなされていない状態の前記ペースト層から、前記第1のシート部材及び前記第2のシート部材を剥離させる、食品製造装置。
【請求項2】
前記圧縮部は、前記一対の圧縮ローラを複数組、有する、請求項1に記載の食品製造装置。
【請求項3】
前記一対の圧縮ローラの組は、他の前記一対の圧縮ローラの組と異なる高さ位置に配置される、請求項2に記載の食品製造装置。
【請求項4】
前記ペースト供給部は、
前記ペーストを供給する供給部と、
前記供給部からの前記ペーストを前記第1のシート部材の幅方向に広げた状態で、前記第1のシート部材上に供給する枠体と、を有する、請求項1~3に記載された何れか一項に記載の食品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切断して麺を形成するためのシート状の食品を製造する装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この装置では、作業者が、型内に木綿のシート部材を敷き、その上から豆乳を供給して薄板状に広げ、その上から木綿のシートを折り返して覆い、更にその上に豆乳を薄板状に広げる。作業者は、そのような作業を繰り返し、積層体を形成した後に型内でプレスすることで、豆腐を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の装置においては、作業者が木綿シートの折り返し、豆乳を薄板状に広げる作業を繰り返さなくては、シート状の食品を製造できない。従って、安定した品質の食品を大量に製造することが難しいという問題があった。従って、切断して麺を形成するためのシート状の食品を安定した品質で大量に製造することが求められていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、切断して麺を形成するためのシート状の食品を安定した品質で大量に製造する食品製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る食品製造装置は、切断して麺を形成するためのシート状の食品を製造する食品製造装置であって、搬送経路に対して通水性を有する第1のシート部材を供給する第1のシート部材供給部と、第1のシート部材上に食品のペーストを供給して、第1のシート部材上に薄板状に広がったペースト層を形成するペースト供給部と、第1のシート部材との間でペースト層を挟むように通水性を有する第2のシート部材を供給する第2のシート部材供給部と、第1のシート部材、ペースト層、及び第2のシート部材による積層シートを圧縮する圧縮部と、を備える。
【0007】
この食品製造装置において、第1のシート部材供給部は、搬送経路に対して通水性を有する第1のシート部材を供給する。ペースト供給部は、第1のシート部材上に食品のペーストを供給して、第1のシート部材上に薄板状に広がったペースト層を形成する。そして、第2のシート部材供給部は、第1のシート部材との間でペースト層を挟むように通水性を有する第2のシート部材を供給する。以上より、作業者がペーストを手作業でシート部材上に広げるようなことを行わなくとも、各供給部が搬送経路に沿ってシート部材及びペーストを流すような動作によって、積層シートを自動的に形成することが可能となる。このような積層シートは、ペースト層を両面側からシート部材で挟むものであるため、圧縮部で圧縮する際の取り扱い性が高い。このため、作業者の手作業によらずに、圧縮部によってペースト層を圧縮する工程を自動化することが可能となる。以上のように、各工程の自動化を図ることによって、シート状の食品を安定した品質で大量に製造することができる。
【0008】
圧縮部は、積層シートを型内で往復させて多層に重ねることで積層体を形成する積層体形成部と、積層体を型内でプレスすることによって、積層シートを圧縮するプレス部と、を有してよい。これにより、圧縮部は、型内で積層体をプレス部でプレスすることで、積層シート内のペースト層を一括で圧縮することができる。
【0009】
圧縮部は、積層シートを挟んで圧縮する圧縮ローラを有してよい。これにより、圧縮部は、圧縮ローラを回転させながら積層シートを挟むことで、積層シートを搬送しながら圧縮することができる。このため、圧縮部は、積層シートを折り畳むような工程を経ることなくペースト層を圧縮することができる。
【0010】
ペースト供給部は、ペーストを供給する供給部と、供給部からのペーストを第1のシート部材の幅方向に広げた状態で、第1のシート部材上に供給する枠体と、を有する。この場合、ペースト供給部は、枠体内でペーストを幅方向に広げた後で、第1のシート部材上に供給することができる。ペースト供給部は、第1のシート部材上でペーストを広げる場合に比して、容易にペースト層の厚みを均一にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切断して麺を形成するためのシート状の食品を安定した品質で大量に製造する食品製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る食品製造装置を示す概念図である。
【
図2】食品製造装置での各工程における食品の状態を示す概念図である。
【
図3】食品製造装置の積層体製造装置の概略側面図である。
【
図4】ペースト供給部付近の構成を示す斜視図である。
【
図5】圧縮部の構成を説明するための概略図である。
【
図6】変形例に係る食品製造装置の圧縮部を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る食品製造装置100を示す概念図である。食品製造装置100は、切断して麺を形成するためのシート状の食品を製造する装置である。本実施形態では、食品製造装置100は、切断部9を有しているため麺にした状態の食品を製造できる。また、本実施形態では、食品製造装置100は、豆腐麺を製造するものとする。従って、食品製造装置100は、シート状の食品として豆腐シートを製造する。
図2は、食品製造装置100での各工程における食品の状態を示す概念図である。
図1に示すように、食品製造装置100は、第1のシート部材供給部1と、ペースト製造部2と、ペースト供給部3と、第2のシート部材供給部4と、水切り部6と、圧縮部7と、シート部材剥離部8と、切断部9と、を備える。なお、本明細書では、特段の説明がない場合、各動作については機械の駆動部が自動的に行ってもよく、作業者の手作業で動かしてもよい。作業者が手作業で動かす場合でも、食品製造装置100を用いることで、各作業を各段に精度良く、簡単に行うことが可能となる。
【0015】
第1のシート部材供給部1は、搬送経路に対して通水性を有する第1のシート部材10(
図2(a))を供給する。第1のシート部材10の材質は、食品のペースト層12(
図2(b))からの水分を透過させることが出来るものであれば特に限定されないが、例えば、木綿布などを採用してよい。第1のシート部材供給部1は、長手方向に連続的に延びた状態の第1のシート部材10を供給する。第1のシート部材10の幅は、製造したい豆腐シート13(
図2(e))の幅よりも僅かに広い寸法に設定される。
【0016】
ペースト製造部2は、豆腐のペースト11(食品のペースト)を製造する。ペースト製造部2は、大豆から豆乳を製造し、当該豆乳に凝固剤(塩化マグネシウムを主成分とするにがり、硫酸カルシウムを主成分とする澄まし粉などの豆乳に対し凝固作用を示す処理剤)を加えて撹拌することで、ペーストを製造する。ペースト供給部3は、第1のシート部材10上にペースト製造部2で製造したペースト11を供給して、第1のシート部材10上に薄板状に広がったペースト層12を形成する(
図2(a))。ペースト供給部3の詳細な構成については後述する。
【0017】
第2のシート部材供給部4は、第1のシート部材10との間でペースト層12を挟むように通水性を有する第2のシート部材16を供給する(
図2(b))。第2のシート部材16は、第1のシート部材10と同様な材質、大きさのものが用いられる。このように、ペースト層12を第1のシート部材10及び第2のシート部材16で挟むことによって、積層シート17が形成される。
【0018】
水切り部6は、第1のシート部材10及び第2のシート部材16で挟まれた積層シート17の状態のペースト層12から、水分を取り除く。水切り部6は、第1のシート部材10及び第2のシート部材16を透過した水分が、再びペースト層12に入り込まないように、積層シート17から出て来た水を排出する。水切り部6は、重力の影響でペースト層12の水切りをしてもよいし、積極的に積層シート17に圧力を付与して水切りを行ってもよい。
【0019】
圧縮部7は、積層シート17を圧縮する(
図2(c))。これにより、積層シート17の中のペースト層12は、水切り部6での水切りよりも更に強く水切りされると共に、圧搾されることで豆腐シート13(
図2(d))として固まる。
【0020】
シート部材剥離部8は、圧縮後の豆腐シート13から第1のシート部材10及び第2のシート部材16を剥離させる。シート部材剥離部8は、豆腐シート13を搬送することに伴って、第1のシート部材10及び第2のシート部材16を両面側からそれぞれローラで巻き取ることなどによって、剥離を行う。
【0021】
切断部9は、豆腐シート13を切断することによって麺18を製造する(
図2(e))。切断部9は、押し出しによって切断したり、ブレードで切断したりするなどの装置によって構成され、切断方法は特に限定されない。
【0022】
上述の構成要素のうち、第1のシート部材供給部1と、ペースト供給部3と、第2のシート部材供給部4と、水切り部6と、圧縮部7の一部とは、
図3に示すように積層体製造装置110としてユニット化された状態で構成されている。従って、
図3を参照して積層体製造装置110の構成を説明することにより、各構成要素の具体的な構成について更に詳細に説明する。
図3は、食品製造装置100の積層体製造装置110の概略側面図である。
図3に示すように、積層体製造装置110は、搬送コンベア20(搬送経路)を有しており、当該搬送コンベア20で各種部材を搬送しながら、第1のシート部材10、ペースト層12、及び第2のシート部材16を積層させた積層シート17を製造する。
【0023】
搬送コンベア20は、ベルト21と、ローラ22と、を備える。ベルト21は、積層シート17を搬送する無端の帯状部材である。ローラ22は、少なくともベルト21の長手方向における両端に配置される。搬送コンベア20の両端の一対のローラ22の上端部同士の間には、ベルト21が架け渡された状態となり、当該部分の上面が搬送面21aとなる。ローラ22が回転することによって、搬送面21aは、搬送方向D1(
図3における紙面右側から左側へ向かう方向)へ移動する。なお、
図3における紙面右側を搬送方向D1における上流側と称し、
図3における紙面左側を搬送方向D1における下流側と称する場合がある。本実施形態では、搬送面21aは水平に広がり、搬送方向D1に延びる面となっている。搬送方向D1と直交する水平方向を幅方向D2と称する。
【0024】
第1のシート部材供給部1は、搬送コンベア20の搬送方向D1の上流側の端部付近に設けられる。第1のシート部材供給部1は、供給ロールR1を支持する回転軸23と、第1のシート部材10を案内するガイドローラ24と、を備える。回転軸23は、搬送コンベア20の搬送面21aから上方へ離間した位置にて幅方向D2に延びる。供給ロールR1は、第1のシート部材10をロール状に巻き取ったロール体である。供給ロールR1は、回転軸23を中心として回転し、搬送面21aへ向けて第1のシート部材10を連続的に巻き出す。ガイドローラ24は、搬送面21aと僅かな隙間をあけて、搬送面21aの上方に設けられる。ガイドローラ24は、搬送面21aとの間の隙間に第1のシート部材10をガイドする。以上より、第1のシート部材供給部1は、搬送面21a上に第1のシート部材10を供給する。第1のシート部材10の長手方向は搬送方向D1と平行になり、第1のシート部材10の幅方向は幅方向D2と平行になる。
【0025】
ペースト供給部3は、ペースト11を供給する供給部26と、供給部26からのペースト11を幅方向D2に広げる枠体27と、を備える。枠体27は、供給部26からのペースト11を第1のシート部材10の幅方向D2に広げた状態で、第1のシート部材10上に供給する。
【0026】
図4を参照して、ペースト供給部3の構成について更に詳細に説明する。
図4は、ペースト供給部3付近の構成を示す斜視図である。供給部26は、ペースト11を流通させる供給管によって構成される。枠体27は、搬送面21aの上方に設けられた箱状の部材である。枠体27は、底壁部31、側壁部32,32、後壁部33、前壁部34、及び邪魔板36を備える。
【0027】
底壁部31は、搬送面21aと対向するように広がる壁部である。底壁部31は、搬送方向D1の上流側から下流側へ向かうに従って、搬送面21a側に近づくように僅かに傾斜している(
図2(a)参照)。底壁部31は、搬送方向D1における上流側の端部付近にて、供給部26から落下するペースト11を受け止める。これにより、底壁部31は、ペースト11を受け止めて幅方向D2へ広げると共に、広がった状態のペースト11を搬送方向D1の下流側へ流す。側壁部32,32は、底壁部31の幅方向D2の両端部から上方へ延びる壁部である。側壁部32,32の搬送方向D1の下流側の端部32a,32aは、下方に向かうに従って搬送方向D1の下流側へ向かうように傾斜する。後壁部33は、底壁部31の搬送方向D1の上流側の端部から上方へ延びる壁部である。
【0028】
前壁部34は、側壁部32,32の搬送方向D1の下流側の端部32a,32a間において、幅方向D2に広がる壁部である。前壁部34は、下方に向かうに従って搬送方向D1の下流側へ向かうように傾斜する。また、前壁部34の上端部は、側壁部32,32の端部32a,32aの上端のヒンジ部38にて、回転可能に支持されている。前壁部34の下端部34aは、底壁部31から上方へ離間することによって、スリットを形成するように配置される。従って、前壁部34は、ペースト11を一部堰き止めることによって、ペースト層12の厚みを調整した状態で、当該ペースト層12を底壁部31との間のスリットから流出させる(
図2(a)参照)。このように、前壁部34は、ペースト層12を幅方向D2に厚みが均一になるように調整を行うと共に、ペースト層12の厚みを調整する調整機構として機能する。当該スリットの大きさは、前壁部34をヒンジ部38周りに回転させることで微調整可能である。
【0029】
邪魔板36は、前壁部34と後壁部33との間の位置で、側壁部32,32間において、幅方向D2に広がる板部材である。邪魔板36は、下方に向かうに従って搬送方向D1の下流側へ向かうように傾斜する。邪魔板36の下端部36aには、凹凸パターンが形成される。邪魔板36の下端部36aは、底壁部31から上方に離間した位置に配置される。邪魔板36は、供給部26からのペースト11が落下する箇所よりも、搬送方向D1における下流側に配置される。従って、ペースト11は、邪魔板36の下端部36aと底壁部31との間の隙間を通過する。落下したペースト11が落下箇所において波立つため、邪魔板36は、ペースト11の飛散を防止したり、ペースト11の流れの勢いを抑制するなどの機能を有する。
【0030】
図3に戻り、第2のシート部材供給部4は、ペースト供給部3よりも搬送方向D1の下流側の位置に設けられる。第2のシート部材供給部4は、供給ロールR2を支持する回転軸41と、第2のシート部材16を案内するガイドローラ42と、を備える。回転軸41、ガイドローラ42、及び供給ロールR2の構成は、回転軸23、ガイドローラ24、及び供給ロールR1と同様の構成を有するため、説明を省略する。第2のシート部材供給部4は、ペースト層12上に第2のシート部材16を供給する。これにより、ペースト層12がシート部材10,16に挟み込まれて、積層シート17が形成される。
【0031】
ここで、ペースト層12が搬送面21aで搬送されている間、ペースト層12からシート部材10,16を介して水分がしみ出す。ここで、搬送コンベア20のベルト21は、金網や多孔質の部材などによって構成されることで、しみ出した水分を下方へ落下させることができる。この場合、ベルト21のうち、ペースト層12を搬送する領域E1は、水切り部6として機能する。従って、搬送コンベア20は、第2のシート部材供給部4よりも搬送方向の下流側において、十分な長さで構成されている。搬送コンベア20の搬送方向D1の下流側の端部と第2のシート部材供給部4との間には、搬送面21aとの間で積層シート17を押圧するローラ43が設けられる。当該ローラは、ペースト層12の水分を除去する水切り部6として機能する。搬送コンベア20の搬送方向D1の下流側の端部まで到達した積層シート17は、落下して圧縮部7の積層体形成部51に供給される。
【0032】
次に、
図5を参照して、圧縮部7の構成について詳細に説明する。圧縮部7は、積層体形成部51と、プレス部52と、を備える。
図5(a)(b)は、積層体形成部51を示す概略側面図であり、
図5(c)は、プレス部52を示す概略側面図である。
【0033】
図5(a)(b)に示すように、積層体形成部51は、積層シート17を型53内で往復させて多層に重ねることで積層体19を形成する機構である。型53は、上方及び下方に開口部を有し、四方を側壁部54で囲まれた矩形筒状の部材である。型53の側壁部54は、プレス時にしみ出した水分を型53の外に排出するための多数の貫通孔を有してよい。積層体形成部51は、型53内に水平方向に広がるように配置されて、積層体19を載せるための底板56と、底板56の高さ位置を変更する昇降機構57と、を備える。
【0034】
積層体形成部51は、型53を搬送方向D1と平行な方向へ往復移動させる駆動機構58を有する。駆動機構58は、積層シート17の落下位置に対して相対的に型53及び底板56を往復移動させる。駆動機構58は、図示しないレールなどのガイド上を往復移動する台車によって構成される。駆動機構58は、落下してくる積層シート17が、型53の搬送方向D1における上流側の端部53aから下流側の端部53bへ向かって積層体19上(または底板56上)に敷かれるように、往動方向D3へ移動する(
図5(a))。次に、駆動機構58は、落下してくる積層シート17が、型53の端部53bから端部53aへ向かって積層体19上(または底板56上)に敷かれるように、復動方向D4へ移動する(
図5(b))。駆動機構58が当該往復移動を繰り返すことで、積層シート17が多層に積み重ねられた積層体19が完成する。なお、積層シート17が折り返される箇所には、折り返し部BDが形成される(
図2(c)参照)。
【0035】
昇降機構57は、積層済みの積層体19の厚さに応じて、底板56の高さ位置を調整する。昇降機構57は、底板56の高さ位置を段階的に変更してよい。具体的に、
図5(a)に示すように、側壁部54の高さに対応する空間を領域Aとした場合、積層体形成部51は、側壁部54の上から一定の範囲の領域Bの中で積層シート17を折り畳む動作を繰り返す。ここで、側壁部54の上端にはセンサが設けられており、当該センサは、領域Bが積層体19で一杯になったことを検知できる。当該検知のタイミングで、昇降機構57は、底板56を高さ位置L1まで降ろす(
図5(b)参照)。これにより、領域Bは、再び空の空間となる。従って、積層体形成部51は、領域Bの中での積層シート17の折り畳みを繰り返す。同趣旨の動作を繰り返しながら、昇降機構57は、底板56を段階的に降ろし、最終的には、側壁部54の下端まで底板56が降りる。なお、昇降機構57の動作は、必ずしも上述の動作に限定されるものではなく、底板56を連続的に徐々に降ろしてもよい。また、側壁部54の高さによっては、昇降機構57を省略し、底板56が常時側壁部54の下端に配置されていてもよい。
【0036】
図5(c)に示すように、プレス部52は、積層体19を型53内でプレスすることによって、積層シート17を圧縮する機構である。なお、プレス部52は、積層体形成部51とは異なる位置に配置されている。プレス部52は、積層体19を収容した型53をベース部材60に配置した状態で、型53内の積層体19をプレスする。プレス部52は、積層体19の上面と接触して押圧する押圧部材52aと、押圧部材52aに押圧力を付与する押圧機構52bと、を備える。積層体19は、押圧部材52aとベース部材60との間で圧力P(
図2(c)参照)を付与されることで、ペースト層12の水分が除去されて豆腐シート13として固まる。
【0037】
なお、プレス後の積層体19は、型53から取り出され、シート部材剥離部8及び切断部9へ搬送される。なお、シート部材剥離部8でシート部材10,16を剥離する際は、積層体19から一枚の積層シート17として引き出される。
【0038】
次に、本実施形態に係る食品製造装置100の作用・効果について説明する。
【0039】
この食品製造装置100において、第1のシート部材供給部1は、搬送コンベア20に対して通水性を有する第1のシート部材10を供給する。ペースト供給部3は、第1のシート部材10上に食品のペースト11を供給して、第1のシート部材10上に薄板状に広がったペースト層12を形成する。そして、第2のシート部材供給部4は、第1のシート部材10との間でペースト層12を挟むように通水性を有する第2のシート部材16を供給する。以上より、作業者がペーストを手作業でシート部材上に広げるようなことを行わなくとも、各供給部1,3,4が搬送コンベア20に沿ってシート部材10,16及びペースト11を流すような動作によって、積層シート17を自動的に形成することが可能となる。このような積層シート17は、ペースト層12を両面側からシート部材10,16で挟むものであるため、圧縮部7で圧縮する際の取り扱い性が高い。例えば、第1のシート部材10上にペースト層12を形成しただけの積層シートである場合、型53に積層シートを入れる際に、
図5(a)(b)に示すような動作をしてしまっては、ペースト層12がシート部材から剥がれる可能性があり、作業者が手作業を行う必要性が生じる。また、片方だけにシート部材があるような積層シートでは、後述の
図6に示すような圧縮方法も採用できない。以上のように、本実施形態のような積層シート17であれば、作業者の手作業によらずに、圧縮部7によってペースト層12を圧縮する工程を自動化することが可能となる。以上のように、各工程の自動化を図ることによって、シート状の食品を安定した品質で大量に製造することができる。
【0040】
圧縮部7は、積層シート17を型53内で往復させて多層に重ねることで積層体19を形成する積層体形成部51と、積層体19を型53内でプレスすることによって、積層シート17を圧縮するプレス部52と、を有する。これにより、圧縮部7は、型53内で積層体19をプレス部52でプレスすることで、積層シート17内のペースト層12を一括で圧縮することができる。例えば、圧縮部7として積層体形成部51を採用した場合、
図6に示すような圧縮ローラに比して、圧力の調整と圧力の時間の調整とを容易に行うことができる。
【0041】
ペースト供給部3は、ペーストを供給する供給部26と、供給部26からのペースト11を第1のシート部材10の幅方向に広げた状態で、第1のシート部材10上に供給する枠体27と、を有する。この場合、ペースト供給部3は、枠体27内でペースト11を幅方向に広げた後で、第1のシート部材10上に供給することができる。ペースト供給部3は、第1のシート部材10上でペースト11を広げる場合に比して、容易にペースト層12の厚みを均一にすることができる。例えば、供給部26が第1のシート部材10の上に直接ペースト11を流し、その後でペースト11を広げようとすると、ペースト11がシート部材10上で広がりにくくなったり、ペースト11を所望の幅に調整するための機構が複雑になるなどの可能性がある。これに対し枠体27は、滑らかな平板で構成される底壁部31上でペースト11をスムーズに広げ、側壁部32,32で幅方向D2のペースト11の広がりを規制して所望の幅とした上で、ペースト11を第1のシート部材10上に供給できる。また、前壁部34が、ペースト層12の厚みを均一に整えた状態で第1のシート部材10上に供給できる。
【0042】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、
図6に示すように、圧縮部7は、積層シート17を挟んで圧縮する圧縮ローラを有してよい。例えば、搬送コンベア20(
図3参照)の下流側で水切りがなされた積層シート17は、圧縮ローラ70Aに沿って旋回しながら、圧縮ローラ70A,70B間に挟まれる。これによって、積層シート17のペースト層12は、圧縮ローラ70A,70Bに圧縮されながら、下流側へ搬送される。更に、積層シート17は、圧縮ローラ71A、71Bによって同様な動作によって圧縮される。このような圧縮ローラによる圧縮が、必要な回数だけ繰り返し行われる。圧縮部7で圧縮された後の積層シート17からは第1のシート部材10及び第2のシート部材16が剥離されることで、豆腐シート13が得られる。これにより、圧縮部7は、圧縮ローラ70A,70B,71A,71Bを回転させながら積層シート17を挟むことで、積層シート17を搬送しながら圧縮することができる。このため、
図5で示すような積層シート17を折り畳むような工程を経ることなくペースト層12を圧縮することができる。
【0044】
例えば、
図5に示すように積層シート17を折り畳んだ場合、折り返し部BD(
図2(c)参照)にて豆腐シート13が切れるか、切れ易くなる場合がある。これに対し、
図6に示すような圧縮ローラを用いて圧縮を行う場合、豆腐シート13が途中で略切れることなく、連続的に製造される。また、
図5に示す方法では、型53が満杯になったら、積層シート17の搬送を一時停止して、型53をプレス部52へ移動させる必要がある。この間、ラインが停止する。これに対し、
図6に示す圧縮部7は、ラインを止めることなく、連続的にペースト層12を圧縮できる。また、
図5に示す方法では、積層体19の上方に存在する豆腐シート13と底方に存在する豆腐シート13とを比較した場合、底方に存在する豆腐シート13の方が大きな圧力が付与される。すなわち、上方の豆腐シート13より底方の豆腐シート13が硬くなる可能性がある。これに対し、
図6に示す圧縮ローラを採用した場合、豆腐シート13に対してコンスタントに圧力を付与することができるため、豆腐シート13の品質の均一化が容易となる。
【0045】
上述の実施形態では、豆腐の麺を形成する装置について説明した。しかし、このような豆乳製品のみならず、穀物ペーストに野菜をいれるような食品を製造する装置に、本発明が適用されてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、第1のシート部材10をまず始めに搬送し、その上にペースト層12を形成し、最後に第2のシート部材16で覆っていた。しかし、各部材を供給するタイミングは特に限定されず、シート部材10,16が重なるタイミングと、ペースト11が供給されるタイミングが同じであってもよい。例えば、第1のシート部材10と第2のシート部材16との間に、ペースト11を流し込む構成でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…第1のシート部材供給部、3…ペースト供給部、4…第2のシート部材供給部、7…圧縮部、10…第1のシート部材、16…第2のシート部材、17…積層シート、19…積層体、26…供給部、27…枠体、51…積層体形成部、52…プレス部、70A,70B,71A,71B…圧縮ローラ、100…食品製造装置。