(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電気手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240404BHJP
A61B 18/18 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/18 100
(21)【出願番号】P 2020566758
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063489
(87)【国際公開番号】W WO2019228928
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラブ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149072(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/008020(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/174513(WO,A1)
【文献】特表2014-531265(JP,A)
【文献】国際公開第2017/202737(WO,A1)
【文献】特表2017-531511(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02550414(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、前記同軸給電ケーブルは内部導体、外部導体、ならびに前記内部導体及び前記外部導体を分離させる第一誘電材料を含む、前記同軸給電ケーブルと、
前記マイクロ波エネルギー及び前記高周波エネルギーを受信するために前記同軸ケーブルの遠位端部に配置される放射先端部であって、
第二誘電材料から作製される先端部本体であって、前記先端部本体が前記同軸給電ケーブルの遠位端部に接続される近位端部、及び前記同軸給電ケーブルに背向する遠位端部を有し、前記先端部本体は前記先端部本体の前記遠位端部に端面を有する、前記先端部本体、ならびに
前記先端部本体の前記端面上に配置される第一電極及び第二電極であって、前記第二電極が露出した第二誘電材料の一部分によって前記第一電極から離隔される、前記第一電極及び前記第二電極、
を含む、前記放射先端部と、
を備える、電気手術器具であって、
前記第一電極は前記先端部本体内のチャネルを通り延出する導電素子によって前記同軸給電ケーブルの前記内部導体に電気的に接続され、
前記第二電極は前記先端部本体内に、または前記先端部本体上に形成される電場整形導電性構造体によって前記同軸ケーブルの前記外部導体に電気的に接続され、
前記第一電極及び前記第二電極は前記高周波エネルギーを送達するために能動電極及び戻り電極として構成され、
前記第二電極は、前記第一電極を取り囲む導電性リングであり、前記第二電極の外径は、前記先端部本体の外径と同じである、
前記導電素子及び前記電場整形導電性構造体は前記マイクロ波エネルギーを放出するためにアンテナとして構成され、
前記電場整形導電性構造体は前記放射先端部から放出されるマイクロ波エネルギーの放射プロファイルを
画定するように構成される、
前記電気手術器具。
【請求項2】
前記電場整形導電性構造体は、前記放射先端部の長さ沿いに延在する細長い導体を含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記電場整形導電性構造体は、スロット付き導電性構造体を含み、前記スロット付き導電性構造体は、前記導電素子の周囲に形成される、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記スロット付き導電性構造体は、前記先端部本体の外面の周囲に巻かれて、前記第二誘電材料が露出する螺旋状スロットを形成する、螺旋状導電素子を含む、請求項3に記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記螺旋状スロットのピッチが、前記スロット付き導電性構造体の長さに沿って変化する、請求項4に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記螺旋状スロットの幅は、長手方向に、前記先端部本体の前記遠位端部に向かい、または前記遠位端部とは逆に延伸するにつれてテーパ状になる、請求項4または5に記載の電気手術器具。
【請求項7】
前記スロット付き導電性構造体は、前記マイクロ波エネルギーを放出するための複数のスロットを含む、請求項3に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記複数のスロットのそれぞれは同一の幅を有し、前記スロットは前記放射先端部の長手方向に沿って等間隔に配置される、請求項7に記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記複数のスロットのそれぞれは異なる幅を有し、前記複数のスロットは幅を増加させる順に前記放射先端部の長手方向に沿って配置される、請求項7に記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記スロット付き導電性構造体は、前記先端部本体の外面上に形成される、請求項3~9のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記スロット付き導電性構造体は、前記先端部本体上に前記外部導体の延長部によって形成される、請求項3~10のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項12】
前記スロット付き導電性構造体は、前記同軸給電ケーブルの前記遠位端部に配置される
第2の導電性リングによって前記外部導体に電気的に接続される、請求項3~10のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項13】
前記導電素子は、前記先端部本体を通過して前記第一電極に接続する内部導体の遠位部を含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項14】
前記第一電極は、前記内部導体の前記遠位部の露出した遠位先端部である、請求項13に記載の電気手術器具。
【請求項15】
前記先端部本体は円筒形である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項16】
前記先端部本体の前記端面は、前記同軸給電ケーブルの長手方向軸に垂直である平面内にある、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項17】
前記先端部本体は、ドーム形状または円錐形である、請求項1~15のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項18】
前記導電性リングは、前記先端部本体の前記遠位端部上に取り付けられる導電性キャップを含み、前記導電性キャップは、前記第一電極が露出する露出したアパーチャを除いて前記先端部本体の前記端面を覆う、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項19】
マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを供給するように配置される電気手術用発生器と、
前記電気手術用発生器からの前記マイクロ波エネルギー及び前記高周波エネルギーを受信するように接続される請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の電気手術器具と、
を含む、電気手術システム。
【請求項20】
患者の体内への挿入用の可撓性挿入コードを含む手術用スコーピングデバイスをさらに備え、前記可撓性挿入コードはその長さに沿って延びる器具チャネルを含み、前記電気手術器具は前記器具チャネル内に適合して入る寸法に形成される、請求項19に記載の電気手術システム。
【請求項21】
請求項3から5のいずれか1項に記載の電気手術器具を備え、前記スロット付き導電性構造が、生体内へのマイクロ波エネルギーの波長の10分の1の幅を有するスロットを備える、請求項19または20に記載の電気手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的組織を焼灼するために、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを生体組織に送達するための電気手術器具に関する。プローブは、内視鏡もしくはカテーテルのチャネルを通して挿入することができる、または経皮的手術、腹腔鏡手術もしくは開腹手術で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
電磁(EM)エネルギー、そして特にマイクロ波及び高周波(RF)エネルギーは、体組織を切断して、凝固させ、そして焼灼する能力があるため、電気外科手術に有用であることが見いだされている。典型的には、EMエネルギーを体組織に送達するための装置は、このエネルギーを組織に送達するために、EMエネルギー源を含む発生器、及びこの発生器に接続される電気手術器具を備える。従来の電気手術器具は、多くの場合、患者の体内に経皮的に挿入されるように設計されている。しかし、例えば標的部位が動いている肺内にある場合、この器具を体内に経皮的に配置することは困難である場合がある。他の電気手術器具は、気道などの体内のチャネルを介して通すことができる手術用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡)によって標的部位に送達させることができる。これにより、低侵襲治療が可能になり、患者の死亡率を低下させ、術中及び術後の合併症率を低下させることができる。
【0003】
マイクロ波EMエネルギーを使用する組織焼灼は、生体組織が主に水から構成されているという事実に基づいている。人間の軟器官組織は、通常、70%から80%の間の含水量である。水分子は、永久的な電気双極子モーメントを有し、これは、分子全体に電荷不均衡が存在することを意味する。この電荷不均衡により、時間変動電場の印加によって生成される力に応答して、これらの分子が回転し、それらの電気双極子モーメントが印加された電場の極性とアライメントを取るように、これらの分子を移動させる。マイクロ波周波数では、急速な分子振動は、摩擦加熱、そしてその結果として熱形態での電場エネルギー散逸をもたらす。これは誘電加熱として知られている。
【0004】
この原理は、マイクロ波焼灼療法に利用される。マイクロ波焼灼療法では、マイクロ波周波数での局所的な電磁場の印加によって、標的組織内の水分子が急速に加熱され、組織の凝固及び細胞死をもたらす。肺及び他の臓器におけるさまざまな状態を治療するために、マイクロ波放射プローブを使用することが知られている。例えば、肺では、喘息の治療、及び腫瘍または病変の焼灼にマイクロ波放射を用いることができる。
【0005】
RF EMエネルギーは、生体組織の切断及び/または凝固に使用することができる。RFエネルギーを使用して切断する方法は、電流が組織マトリックスを通過するときに(細胞のイオン含有量によって支援される)、組織を横切る電子の流れに対するインピーダンスが熱を発生するという原理に基づいて動作する。純粋な正弦波が組織マトリックスに適用されると、組織の水分を気化させるのに十分な熱が細胞内で発生する。したがって、細胞の内圧が大幅に上昇して細胞膜では制御できなくなり、その結果、細胞が破裂する。これが広範囲にわたって発生すると、組織が切断されたことがわかることができる。
【0006】
RF凝固は、組織に異なる波形を適用することによって機能することにより、気化する代わりに、細胞の内容物が約65℃に加熱される。これは、乾燥によって組織を完全に乾かし、またタンパク質を変性させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
最も一般的には、本発明は、電極構造体を電気手術器具の遠位先端部に提供し、この電極構造体は、前(遠位)方向での高周波(RF)エネルギーのための効率的な送達と、遠位先端部を囲む領域内の焼灼のためのマイクロ波エネルギーの均一な送達との両方を可能にする。例えばRFエネルギーが組織を正確に切断して遠位先端部の位置決めを容易にするように動作するように、RFエネルギーは、焦点を合わせた方法で送達することができる。対照的に、マイクロ波エネルギーは、効果的な焼灼を容易にするために、例えば全方向性の方法で、より広く送達することができる。
【0008】
マイクロ波エネルギーを送達する前に放射先端部を標的組織内に挿入することにより、健康な組織に送達されるマイクロ波エネルギーの量を最小限にしながら、マイクロ波エネルギーを標的組織に送達する効率を高めることが可能である。電気手術器具は、RF及びマイクロ波エネルギーを同時に、または別々に、例えば交互に適用するために使用することができる。
【0009】
通常、腫瘍の外壁部に切り込み、腫瘍を焼灼するためにさまざまな器具が使用される。本発明者らは、このため、腫瘍に切り込むためのツールが体から引き抜かれるときに、体の健康な部分にがん細胞を播種するリスクがあることに気付いた。本発明では、単一の電気手術器具が組織の切断及び焼灼の両方に使用されるので、体の健康な領域にがん細胞を播種するリスクが低減され得る。本発明の電気手術器具のさらなる利点は、外科手技中に器具を交換するのに費やす時間を減少させることができることである。特に、本発明は、RF切断とマイクロ波焼灼との間の器具の機能の迅速な変更を可能にする。
【0010】
本発明の第一態様によれば、マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、この同軸給電ケーブルが内部導体、外部導体、ならびに内部導体及び外部導体を分離する第一誘電材料を含む、同軸給電ケーブルと、マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを受信するために同軸ケーブルの遠位端部に配置される放射先端部とを含む電気手術器具が提供され、この放射先端部は、第二誘電材料から作製される先端部本体であって、この先端部本体が同軸給電ケーブルの遠位端部に接続され、遠位端部が同軸給電ケーブルと背向する、先端部本体と、先端部本体の遠位端部上に配置される第一電極及び第二電極であって、第二電極が露出した第二誘電材料の一部分によって第一電極から離隔される、第一電極及び第二電極とを含み、第一電極は先端部本体を通って延出する導電素子によって同軸給電ケーブルの内部導体に電気的に接続され、第二電極は先端部本体内に、または先端部本体上に形成される電場整形導電性構造体によって同軸ケーブルの外部導体に電気的に接続され、第一電極及び第二電極は高周波エネルギーを送達するための能動電極及び戻り電極として構成され、導電素子及び電場整形導電性構造体はマイクロ波エネルギーを放出するためのアンテナとして構成され、電場整形導電性構造体は放射先端部から放出されるマイクロ波エネルギーの放射プロファイルを整形するように構成される。
【0011】
この構造体により、器具は体内の標的組織を切断して焼灼することができる。この器具は、肺内の組織の焼灼に特に適し得るが、肝臓、腎臓及び筋肉を含むがこれらに限定されない、他の臓器内の組織を焼灼するために使用することもできる。標的組織を効率的に焼灼するために、放射先端部が標的組織の可能な限り近くに(そして多くの場合、内部に)配置することが望ましい。標的組織(例えば、肺内)に到達するために、器具は、通路(例えば、気道)を通って、障害物の周りを回って誘導される必要がある場合がある。これは、器具が理想的には可撓性であり、小さい断面積を有することを意味する。特に、装置は、その先端部近くで非常に可撓性である必要があり、そこで狭く屈曲している可能性がある細気管支などの通路に沿って操舵される必要がある場合がある。
【0012】
同軸給電ケーブルは、1つの端部が電気手術用発生器に接続可能である従来の同軸ケーブルであってよい。特に、内部導体は、同軸給電ケーブルの長手方向軸に沿って延在する細長い導体であることができる。第一誘電材料は、内部導体の周りに配置することができ、例えば、第一誘電材料は、内部導体が延出するチャネルを含むことができる。外部導体は、第一誘電材料の表面上に配置される導電材料から作製されるスリーブであることができる。同軸給電ケーブルは、ケーブルを絶縁して保護するための外部保護シースをさらに含むことができる。いくつかの例では、保護シースは、組織がケーブルに固着するのを防ぐために、非固着材料から作製され得る、またはこの非固着材料によってコーティングされ得る。放射先端部は、同軸給電ケーブルの遠位端部に位置している。放射先端部は、同軸給電ケーブルに恒久的に取り付けられてもよい、または同軸給電ケーブルに取り外し可能に取り付けられてもよい。例えば、コネクタは、同軸給電ケーブルの遠位端部に提供することができ、放射先端部を受容して必要な電気的接続を形成するように配置される。
【0013】
先端部本体は、第一及び第二電極、ならびに電場整形導電性構造体についての支持体として機能する。第二誘電材料は、第一誘電材料と同じであっても異なっていてもよい。第二誘電材料は、マイクロ波エネルギーを標的組織に送達する効率を改善するために、標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択することができる。いくつかの例では、先端部本体は、マイクロ波放射プロファイルを所望の方法で整形するように選択されて配置される、複数の異なる誘電材料から作製することができる。第一及び第二誘電材料が同じである例では、先端部本体は、同軸給電ケーブルの遠位端部を越えて突出する第一誘電材料の一部分によって形成することができる。これは、放射先端部の構成を単純化し、放射先端部と同軸給電ケーブルとの間の境界でEMエネルギーを反射しないようにすることができる。
【0014】
第一及び第二電極は、先端部本体上に配置される、すなわち、これらは、先端部本体の表面上に露出する。第一及び第二電極は、それぞれ同軸給電ケーブルの内部導体及び外部導体に電気的に接続される。したがって、第一及び第二電極は、同軸給電ケーブルに沿って伝達される高周波エネルギーを受信することができるので、双極RF切断電極として使用することができる。高周波エネルギーを第一及び第二電極に伝達することにより、電極間に位置している生体組織は、上記の機構を介して切断する、及び/または凝固することができる。
【0015】
先端部本体は、導電素子が第一電極を内部導体に電気的に接続するために延出するチャネルを含むことができる。チャネルは、先端部本体の一部分を通るトンネルのような通路であることができる。したがって、導電素子の一部分は、先端部本体によって囲まれ得る。チャネルの断面は、導電素子がチャネル内の先端部本体と接触するように、導電素子の断面と一致することができる。追加で、または代替に、導電素子は、接着剤またはエポキシを使用してチャネル内側に固定することができる。以下に説明されるように、導電素子は、内部導体の遠位に突出する部分であることができる。
【0016】
電場整形導電性構造体は、第二電極を同軸給電ケーブルの外部導体に接続するのに役立つ。電場整形導電性構造体は、先端部本体の第二誘電材料によって第一導体から絶縁される。したがって、導電素子と電場整形導電性構造体との間に、第二誘電材料の厚さがあることができる。電場整形導電性構造体及び導電素子は同軸に配置され得、その間に第二誘電体が形成される。
【0017】
導電素子及び電場整形導電性構造体を合わせて、マイクロ波エネルギーを放出するためのアンテナとして構成する。電場整形導電性構造体は、放出されるマイクロ波エネルギーの放射プロファイルを整形するのに役立つ。例えば、マイクロ波エネルギーを特定の方向に優先的に放出することが望ましい場合、電場整形導電性構造体は、先端部本体の側面上に配置される導電材料の一部分であり、マイクロ波エネルギーが放射先端部のその側面から放出されるのを遮断することができる。より複雑な放射プロファイルを、電場整形導電性構造体を適切に整形して位置決めすることによって得ることができる。
【0018】
したがって、この放射先端部の構成により、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーの両方を使用した組織の治療が可能になる。特に、電場整形導電性構造体は、第二電極への電気的接続を維持しながら、放射先端部からのマイクロ波エネルギーの放出を可能にし、第一電極と第二電極との間のRF切断を可能にする。
【0019】
いくつかの実施形態では、電場整形導電性構造体は、放射先端部の長さに沿って延在する細長い導体を含むことができる。例えば、電場整形導電性構造体は、外部導体を第二電極に接続する導電材料のワイヤまたはストリップであることができる。細長い導体は、電気手術器具の長手方向に平行であることができる。細長い導体は、放射プロファイルが器具の長手方向軸に対して非対称であるように、マイクロ波エネルギーの放出を部分的に遮断するように作用することができる。これは、マイクロ波エネルギーを放射先端部の一側面から放出することを可能にし、指向性マイクロ波焼灼を提供することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、電場整形導電性構造体は、導電素子の周囲に形成されるスロット付き導電性構造体を含むことができる。例えば、スロット付き導電性構造体は、スリーブ内に形成されるスロットを含む導電性スリーブであることができる。別の例では、導電性構造体は、先端部本体の周りに巻かれる螺旋状導電素子によって形成することができる。この例では、スロットは、隣接する巻線間の間隙によって形成される螺旋状スロットである。
【0021】
導電性構造体内のスロットは、マイクロ波エネルギーが放射先端部から漏洩することを可能にする。スロットは、スロット付き導電性構造体を構成する導電材料内の開口部または間隙であることができる。導電性構造体の残りの部分(すなわち、導電性構造体を構成する導電材料)は、マイクロ波エネルギーが放射先端部から漏洩するのを遮断するように作用することができる。マイクロ波エネルギーが器具の放射先端部に沿って伝達されるときに、マイクロ波エネルギーは、スロットを通して放出され得る。特に、スロットは、外部導体及び導電性構造体に沿って延びる電気力線を遮断し、スロットにマイクロ波エネルギーを放射させることができる。したがって、第一導体及びスロット付き導電性構造体は、スロット付き(または「漏洩」)マイクロ波アンテナとして機能することができる。スロットの寸法及び形状は、所望のマイクロ波放射プロファイルを取得するように配置することができる。例えば、放射先端部の1つの側面からのみマイクロ波エネルギーを放出することが望ましい場合、スロットは、導電性構造体の対応する側面に置くことができる。スロットの幅は、スロットからのマイクロ波エネルギーの効率的な放出を確実にするために、マイクロ波エネルギーの波長よりも短い、またはこの波長と同等であることができる。スロットの電気長は、先端部本体内に充填された誘電材料(すなわち、誘電率>1を有する)を使用することによって調整することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、スロット付き導電性構造体は、第二誘電材料が露出する螺旋状スロットを形成するために、先端部本体の外面の周囲に巻かれる、螺旋状導電素子を含むことができる。螺旋状スロットは、電気手術器具の長手方向軸に関して実質的に対称に放射先端部からマイクロ波エネルギーを放出することを可能にすることができる。これにより、放射先端部を囲む明確に画定された体積内で組織を焼灼することが可能にすることができる。螺旋状スロットは、先端部本体の近位端部から先端部本体の遠位端部まで延在することができるので、マイクロ波エネルギーは、先端部本体の全長の周囲に放出され得る。螺旋状スロットは、先端部本体の周囲に導電材料を巻いて、もしくは析出させて螺旋形状の導体を形成することによって、または導電性スリーブから螺旋状スロットを切削する、もしくはエッチングすることによって形成することができる。
【0023】
導電性構造体内に螺旋状スロットを含む結果として、導電性構造体は、第二電極と外部導体との間に電路を提供する螺旋状導体を含む。螺旋状スロットの幅は、マイクロ波エネルギーの効率的な放出を可能にするために、マイクロ波エネルギーの波長よりも短い、または同等であることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、螺旋状スロットのピッチは、導電性構造体の長さに沿って変化することができる。本明細書では、螺旋状スロットのピッチは、螺旋における完全な1回転に対応する長手方向内の長さを指す。導電性構造体の「長さ」は、電気手術器具の長手方向内の長さを指す。一例では、螺旋状スロットのピッチは、導電性構造体の近位端部から導電性構造体の遠位端部に向かって増加することができる。換言すれば、螺旋状スロット内の隣接する回転間の間隔は、導電性構造体の遠位端部に向かい増加することができる。代替の一例では、螺旋状スロットのピッチは、導電性構造体の近位端部から導電性構造体の遠位端部に向かって減少することができる、すなわち、隣接する回転間の間隔は、遠位端部に向かい減少する。導電性構造体の長さに沿って螺旋状スロットのピッチを変えることにより、マイクロ波エネルギーの放射プロファイルを調整することを可能にすることができる。例えば、遠位端部近くの螺旋状スロットのピッチを増加させることにより、より多くのマイクロ波エネルギーを、放射先端部の遠位端部から放射することができる。特に、螺旋状スロットは、マイクロ波放射の位置を決定する(導電性構造体内の間隙から)。ピッチを変えることにより、放射先端部に対して間隙の位置/場所が変わる。これにより、放射プロファイルへの変化をもたらすことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、螺旋状スロットは、導電性構造体の長さに沿って先細りとすることができる。換言すれば、螺旋状スロットの幅は、導電性構造体の長さに沿って変化する(例えば、増加する、または減少する)ことができる。これは、例えば導電性構造体の長さに沿って螺旋状導体の幅を変えることによって、達成することができる。螺旋状導体のピッチを変えることと同様に、螺旋状導体の幅を変えることにより、放射先端部のマイクロ波放射プロファイルを所望の方法で整形するのに役立つことができる。エネルギーは、放射先端部の近位端部から放射されるので、放射先端部の長さ方向に伝わる残りのエネルギーはより少ない。螺旋状スロットの幅を放射先端部の遠位端部に向けて増加させることにより、残りのエネルギーのより大きな部分が、周囲の組織に伝播/結合することができる。これは、放射先端部の長さに沿ってより均一な焼灼プロファイルを提供するのに役立ち得る。換言すれば、放射先端部の近位端部では、大量のエネルギーの小さい部分を放射することができ、遠位端部では、小量のエネルギーの大きな部分を放射することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、導電性構造体のスロットの幅は、生体組織内のマイクロ波エネルギーの波長の約10分の1であることができる。これは、放射先端部の長さに沿って周囲の組織内に放射/結合されるエネルギーの量の平衡を保つのに役立ち得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、スロット付き導電性構造体は、マイクロ波エネルギーを放出するために複数のスロットを含むことができる。したがって、マイクロ波エネルギーは、複数のスロットのそれぞれから放出され得る。例えば、スロットをスロット付き導電性構造体の異なる領域に配置することにより、マイクロ波エネルギーを放射先端部の異なる部分から放出することができる。さらに、複数のスロットのそれぞれに放出されるマイクロ波エネルギー間の干渉は、マイクロ波エネルギーの高度に指向性の放出を達成することができるように、放射プロファイルに影響することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、複数のスロットのそれぞれは同一の幅を有することができ、これらのスロットは放射先端部の長手方向に沿って等間隔に配置することができる。換言すれば、複数のスロットは、放射先端部の長手方向に沿って周期的なアレイで配置することができる。スロットのこの配置は、放射先端部におけるマイクロ波エネルギーの共振をもたらすことができる。マイクロ波エネルギーが放射先端部方向に伝わると、マイクロ波エネルギーがスロットから放射され得る。放射先端部の遠位端部では、マイクロ波エネルギーの部分反射が起き得る。反射されたマイクロ波エネルギーは、放射先端部方向に戻って伝わると、スロットから放射され得る。このような反射サイクルは、放射先端部の内部で繰り返され得る。このようにして、放射先端部は、共振マイクロ波アンテナとして挙動することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、複数のスロットのそれぞれは異なる幅を有することができ、複数のスロットは幅を増加させる、または減少させる順に放射先端部の長手方向に沿って配置することができる。したがって、スロットの幅は、放射先端部の近位端部からその遠位端部に向かって増加する、または減少することができる。好ましくは、最小幅を有するスロットが近位端部に位置し得、最大幅を有するスロットが遠位端部に位置し得る。スロットのこの配置は、放射先端部が進行波マイクロ波アンテナとして挙動することを可能にすることができる。これは、スロットのこの配列が放射先端部内から周囲の組織への結合効率の正の勾配をもたらすことができるためである。
【0030】
いくつかの実施形態では、スロット付き導電性構造体は、先端部本体の外面上に配置することができる。したがって、先端部本体の外面は、スロット付き導電性構造体についての支持体として機能することができる。例えば、スロット付き導電性構造体は、先端部本体の外面に接着され得る、または他の方法で固定され得る。これは、放射先端部の構成を容易にすることができる。また、これは、導電性構造体が先端部本体の外側にありながら、第一導体が先端部本体の内側のチャネルを通過するので、第一導体と導電性構造体との間の絶縁を改善することができる。放射先端部は、スロット付き導電性構造体をその周囲のものから保護するために、スロット付き導電性構造体上に配置される保護層(例えば、絶縁材料から作製される)をさらに含むことができる。しかしながら、代替の実施形態では、スロット付き導電性構造体は、先端部本体内に部分的に埋め込まれることができ、例えば、スロット付き導電性構造体は、先端部本体の外面より下に配置することができる。このようにして、先端部本体の外面は、スロット付き導電性構造体を保護するように作用することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、導電素子は、先端部本体を通り突出して第一電極に接続する内部導体の遠位部を含む。換言すれば、導電素子は、同軸給電ケーブルの遠位端部を越えて延出し、先端部本体内のチャネルを通過する内部導体の延長部であることができる。これにより、放射先端部と同軸給電ケーブルとの間の界面で、導電素子と内部導体との間に電気的接続を形成する必要がなくなる。これにより、第一電極への電気的接続の信頼性を向上させることができる。また、これにより、同軸給電ケーブルの内部導体を使用して同軸給電ケーブルの端部に放射先端部を作製することができるので、放射先端部の構成を単純化することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第一電極は、内部導体の露出した遠位先端部によって形成することができる。換言すれば、内部導体は先端部本体内のチャネルを通り延出することができるので、内部導体の遠位先端部はチャネル内の開口部を通して露出する。例えば、チャネルは、先端部本体の遠位端部に開口部を含むことができ、その開口部では内部導体の遠位先端部が露出している。内部導体の遠位先端部はチャネルから突出することができ、例えば、それは先端部本体の遠位端部を越えて延出することができる。代替に、内部導体の遠位先端部は先端部本体と同一平面上にあることができるので、それは先端部本体の遠位端部を越えて突出しない。これにより、組織に引っかかる可能性のある内部導体の遠位先端部周囲の鋭いエッジを回避することができる。内部導体の遠位先端部を第一電極として使用することにより、放射先端部の構成を単純化することができる。これは、内部導体が第一導体及び第一電極の両方として機能するので、放射先端部を作製するために必要な構成要素の数、及び電気的接続の数を減らすことができるからである。
【0033】
いくつかの実施形態では、導電性構造体は、先端部本体上の外部導体の延長部によって形成することができる。換言すれば、外部導体は、同軸給電ケーブルから放射先端部まで、いかなる分断もなく、連続的に延びることができる。例えば、外部導体は、先端部本体上を通るスリーブを形成することができる。スロットは、先端部本体上に延在する外部導体の部分内に形成することができる。これは、スロットを容易に切削することができる導電性構造体を外部導体が提供するので、同軸給電ケーブルの端部に放射先端部を形成することを容易にすることができる。また、同軸給電ケーブルの遠位端部に別個の導電性構造体を取り付けて電気的に接続する必要をなくす。
【0034】
いくつかの実施形態では、スロット付き導電性構造体は、同軸給電ケーブルの遠位端部に配置される導電性リングによって外部導体に電気的に接続することができる。導電性リングの一方の側面は、外部導体に電気的に接続する(例えば、はんだ付けされる、または溶接される)ことができ、導電性リングの他方の側面は、導電性構造体に電気的に接続することができる。導電性リングは、外部導体への電気的接続を容易にし、この接続の信頼性を向上させるために、電気的接続を行うことができる大きな表面を提供することができる。導電性リングは、外部導体(同軸給電ケーブルの可撓性のために可撓性材料から作製され得る)への電気的接続をさらに容易にするために剛性材料から作製することができる。また、導電性リングは、外部導体に接続される導電材料の領域を提供するので、放射先端部のマイクロ波放射プロファイルを整形するのに役立ち得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、先端部本体は、先端部本体の遠位端部に端面を含むことができ、第一電極及び第二電極は、第二誘電材料の端面上に配置することができる。この端面は、第一及び第二電極が配置される平面であることができる。したがって、先端部本体の端面に隣接する生体組織を、RFエネルギーを使用して切断することができる。端面は、所望の切断方向を得るために特定の方向に向けることができる。先端部本体の遠位端部で組織を切断することにより、放射先端部の標的組織中へのトンネリングを容易にすることができ得るので、マイクロ波エネルギーを標的組織に効率的に送達することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、端面は、同軸給電ケーブルの長手方向軸に垂直である平面内にあることができる。したがって、先端部本体の端面は、前方に対向する、すなわち、同軸給電ケーブルに背向することができる。この構成は、第一及び第二電極に送達されるRFエネルギーを使用して、放射先端部の直前に位置している生体組織を切断することを可能にすることができる。これは、器具の標的組織中へのトンネリングを容易にすることができる。例えば、標的組織中へのトンネリングは、RFエネルギーを使用して器具の前の組織を切断し、標的ゾーンに到達するまで切断した組織を通して器具を前方に押し込むことによって達成することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、第二電極は、第一電極を囲む導電性リングであることができる。換言すれば、第二電極は、第一電極周囲に配置される導電材料のループであることができる。これにより、第一電極周囲の領域内で組織を切断することが可能になり、その領域は第二電極の形状によって画定される。これにより、標的組織中への放射先端部のトンネリングを容易にする方法では組織内の切断部を整形することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第二電極の外径は、先端部本体の外径と実質的に同じであることができる。これにより、第一及び第二電極によって行われる切断が先端部本体とほぼ同じサイズを有することが可能になるので、放射先端部を切断された組織を通して容易に押し込むことができる。さらに、導電性リングの形状は、先端部本体の断面とほぼ一致して、放射先端部の切断された組織中へのトンネリングをさらに容易にすることができる。例えば、先端部本体が円形断面を有する場合、第二電極は、先端部本体の外径と一致する外径を有する円形リングであることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、先端部本体は円筒形であることができ、先端部本体の長手方向軸は同軸給電ケーブルの長手方向軸とアライメントを取る。したがって、先端部本体は、手術用スコーピングデバイスの作業チャネルを介した電気手術器具の挿入を容易にする、円形断面を有することができる。また、先端部本体の円筒形状は、放射先端部の前の組織を切断するために第一及び第二電極を配置することができる便利な端面を提供することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、円筒形の先端部本体の外径は、同軸給電ケーブルの外径と実質的に同じであることができる。したがって、先端部本体及び同軸給電ケーブルは、ほぼ同じである断面を有することができる。このように、先端部本体は、同軸給電ケーブルの延長部として見え得る。結果として、電気手術器具は、その全長に沿って実質的に一定の外径を有することができる。これは、手術用スコーピングデバイス内での電気手術器具の使用、ならびに器具の標的組織中へのトンネリングをさらに容易にすることができる。
【0041】
上記に考察される電気手術器具は、電気手術システム全体の部分を形成することができる。例えば、このシステムは、マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを供給するように配置される電気手術用発生器と、この電気手術用発生器からマイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを受信するように接続される本発明の電気手術器具とを含むことができる。電気手術装置は、患者の体内への挿入のための可撓性挿入コードを含む手術用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡)をさらに備えることができ、そこでは可撓性挿入コードはその長さに沿って延びる器具チャネルを含み、そこでは電気手術器具は器具チャネル内に適合して入る寸法に形成される。
【0042】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すように概括的に使用され得るが、1GHz~60GHzの範囲が好ましい。マイクロ波EMエネルギーについての好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz及び24GHzを含む。5.8GHzが好ましい場合がある。対照的に、本明細書は、「高周波」または「RF」を使用して、少なくとも3桁低い、例えば300MHzまでの周波数範囲を示す。好ましくは、RFエネルギーは、神経刺激を防止するのに十分に高い周波数(例えば、10kHz超)、及び組織の脱色または熱拡散を防止するのに十分に低い周波数(例えば、10MHz未満)を有する。RFエネルギーについての好ましい周波数範囲は、100kHz~1MHzであり得る。
【0043】
本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、それぞれ、治療部位からより遠い電気手術器具の端部、及び治療部位により近い電気手術器具の端部を指す。したがって、使用中、電気手術器具の近位端部はRF及び/またはマイクロ波エネルギーを提供するための発生器により近いのに対し、遠位端部は治療部位、すなわち、患者内の標的組織により近い。
【0044】
本明細書では、「導電性」という用語は、文脈による別段の指示がない限り、電気伝導性を意味するために使用される。
【0045】
以下で使用される「長手方向」という用語は、同軸伝送線路の軸に平行な、電気手術器具の長さに沿った方向を指す。「内部」という用語は、器具の中心(例えば、軸)に半径方向により近いことを意味する。「外部」という用語は、器具の中心(軸)から半径方向により遠いことを意味する。
【0046】
「電気手術」という用語は、手術中に使用され、マイクロ波及び/または高周波電磁(EM)エネルギーを利用する器具、装置またはツールに関連して使用される。
【0047】
本発明の実施例が、添付の図面を参照して以下に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の一実施形態である、組織焼灼のための電気手術システムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態である電気手術器具の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態である電気手術器具の側断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である電気手術器具の側断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態である電気手術器具のシミュレートされたマイクロ波放射プロファイルを示す図解である。
【
図5B】本発明の一実施形態である電気手術器具のシミュレートされたマイクロ波放射プロファイルを示す図解である。
【
図6】本発明の一実施形態である電気手術器具のシミュレートされたリターンロスのプロットである。
【
図7】本発明の一実施形態である電気手術器具についての等価回路図を示す。
【
図8A】本発明の別の実施形態である電気手術器具の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図に示されている実施形態は一定の比率で描かれていないことに留意されたい。
図1は、低侵襲電気手術器具の遠位端部にマイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを供給することができる電気手術システム100の全体の概略図である。システム100は、マイクロ波及び高周波エネルギーを制御可能に供給するための発生器102を含む。この目的のために適切な発生器は、参照により本明細書に援用されるWO2012/076844に記載されている。この発生器は、送達に適切な電力レベルを決定するために、器具からの返信される反射信号を監視するように配置することができる。例えば、発生器は、最適な送達電力レベルを決定するために、器具の遠位端部に見られるインピーダンスを計算するように配置することができる。発生器は、患者の呼吸サイクルに一致するように変調された一連のパルスで電力を送達するように配置することができる。これにより、肺が収縮したときに電力送達が起こることを可能にする。
【0050】
発生器102は、インタフェースケーブル104によってインタフェースジョイント106に接続される。必要に応じて、インタフェースジョイント106は、例えば1つ以上の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向(前後方向)の動きを制御するために、トリガー110を摺動させることによって動作可能である器具制御機構を収容することができる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御を提供するために、インタフェースジョイント上に複数の摺動トリガーがある場合がある。インタフェースジョイント106の機能は、発生器102及び器具制御機構からの入力を、インタフェースジョイント106の遠位端部から延出する単一の可撓性シャフト112へと結合することである。他の実施形態では、他のタイプの入力もまた、インタフェースジョイント106に接続することができる。例えば、いくつかの実施形態では、流体供給部をインタフェースジョイント106に接続することができるので、流体を器具に送達することができる。
【0051】
可撓性シャフト112は、内視鏡114の器具(作業)チャネルの全長を通して挿入可能である。可撓性シャフト112は、内視鏡114の器具チャネルを通過し、内視鏡の管の遠位端部で(例えば、患者の内部に)突出するように形成される遠位組立体118(
図1では一定の比率で描かれていない)を含む。遠位端部組立体は、マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを生体組織に送達するための能動先端部を含む。先端部の構成は、以下により詳細に考察される。
【0052】
遠位組立体118の構造は、作業チャネルを通過するのに適している最大外径を有するように配置することができる。通常、内視鏡などの手術用スコーピングデバイス内の作業チャネルの直径は、4.0mm未満であり、例えば、2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのいずれか1つである。可撓性シャフト112の長さは、0.3m以上、例えば、2m以上であることができる。他の実施例では、遠位組立体118は、可撓性シャフト112が作業チャネルを通して挿入された後(及び器具コードが患者に導入される前)、このシャフトの遠位端部に取り付けることができる。代替に、可撓性シャフト112は、その近位接続を行う前に、遠位端部から作業チャネル内に挿入することができる。これらの配置では、遠位端部組立体118は、手術用スコーピングデバイス114の作業チャネルよりも大きい寸法を有することが可能となり得る。
【0053】
上述のシステムは、器具を患者の体内に導入する1つの方法である。他の技法も可能である。例えば、この器具は、カテーテルを使用して挿入することもできる。
【0054】
図2は、本発明の一実施形態である電気手術器具200の遠位端部の斜視図である。
図3は、同じ電気手術器具200の側断面図を示す。電気手術器具200の遠位端部は、例えば、上記で考察される遠位組立体118に対応することができる。電気手術器具200は、マイクロ波エネルギー及びRFエネルギーを伝達するために、その近位端部で発生器(発生器102など)に接続可能である同軸給電ケーブル202を含む。同軸給電ケーブル202は、第一誘電材料208によって分離される内部導体204及び外部導体206を含む。同軸給電ケーブル202は、マイクロ波エネルギーに対して好ましくは低損失である。チョーク(図示せず)を同軸給電ケーブル204に設けて、遠位端部から反射されるマイクロ波エネルギーの逆伝播を抑制することで、デバイスに沿った後方加熱を制限することができる。同軸ケーブルは、同軸ケーブルを保護するために外部導体206の周りに配置される可撓性外部シース210をさらに含む。外部シース210は、外部導体206をその周囲から電気的に絶縁するために絶縁材料から作製することができる。外部シース210は、組織が器具に固着するのを防ぐために、PTFEなどの非固着材料から作製される、またはこの非固着材料によってコーティングすることができる。
【0055】
同軸給電ケーブル202は、同軸給電ケーブル202によって伝達されるマイクロ波エネルギー及びRFエネルギーを生体組織に送達するために、その遠位端部で放射先端部212によって終端する。放射先端部212は、同軸給電ケーブル202の遠位端部に取り付けられる先端部本体214を含む。先端部本体214は、第一誘電材料208と同じである、またはこの第一誘電材料とは異なることができる第二誘電材料から作製される。第二誘電材料は、標的組織へのマイクロ波エネルギー送達の効率を改善するために、放射先端部212と標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択することができる。いくつかの実施例では、先端部本体214は、同軸給電ケーブル202の遠位端部を越える第一誘電材料208の延長部を構成することができる。
【0056】
示されている実施例では、先端部本体214は円筒形である。それは、同軸給電ケーブル202と実質的に同じ外径を有することができる。先端部本体214の寸法は、所望のインピーダンスを示すように選択することができる。先端部本体214の長手方向軸は、同軸給電ケーブル202の遠位部の長手方向軸とアライメントを取る。先端部本体214は、
図2及び
図3に示されるように、近位面216、端面218、及び外面220を有する。近位面216及び端面218は、円筒形の先端部本体214の反対の端部にある。先端部本体214は、先端部本体214の近位面216が同軸給電ケーブル202内の第一誘電材料208と接触するように、同軸給電ケーブル202の遠位端部に取り付けられる。先端部本体214の端面218は、同軸給電ケーブル202の長手方向軸に垂直である平面内にある。同軸給電ケーブル202の内部導体204の遠位部221は、先端部本体214内のチャネルを通って延出する。内部導体204の遠位端部は、先端部本体214の端面218に露出して、第一電極222を形成する。第一電極222は、先端部本体214の端面216と同一平面にある。これは、鋭いエッジが第一電極222の周りに生じるのを回避する。
図2に示される実施例では、内部導体204は、円形の断面を有するので、第一電極222は円形の形状を有する。先端部本体214及び同軸給電ケーブル202の中心軸がアライメントを取ると、第一電極222は、先端部本体214の端面218上で実質的に中心に置かれる。
【0057】
第二電極224もまた、先端部本体214の端面218上に配置される。第二電極224は、リング形状であり、第一電極222を取り囲むように配置される。第二電極の外径は、先端部本体214の外径とほぼ一致する、例えば、この外径に隣接して、またはこの外径上に延在する。一実施例では、第二電極224は、先端部本体214の遠位端部上に取り付けられる導電性キャップに類似する。このキャップは、先端部本体の外面220の遠位部に沿って長手方向に延在する短いカラーを含むことができる。キャップは、第一電極222が露出している露出した(例えば、切削された、またはエッチングされた)アパーチャを除いて、先端部本体の遠位端面を覆うことができる。
【0058】
円形の第一電極222、及びリング形状の第二電極224は、それらが同心であるように配置される。例えば、第一電極222は約0.5mmの外径を有することができ、第二電極224は1.25mmの内径を有することができる。したがって、第一電極222及び第二電極224は、先端部本体214の端面218の露出部によって相互に絶縁される。示される実施形態では、端面218は平らである。ただし、他の実施形態(図示せず)では、標的組織への挿入を容易にするために、端面を丸くする、または尖らせることができる。
【0059】
第二電極224は、螺旋状導体226によって形成される導電性構造体を介して、同軸給電ケーブル202の外部導体206に接続される。螺旋状導体226は、先端部本体214の外面220上に配置される。螺旋状導体226が先端部本体214の外面220の周りに巻かれるように、螺旋状導体226は、その中心軸が先端部本体214の長手方向軸とアライメントを取る螺旋を形成する。したがって、螺旋状導体226は、放射先端部212内のチャネルを通って延出する内部導体204の部分の周りに配置される。螺旋状導体226は、第二誘電材料の半径方向の厚さによって内部導体204から絶縁される。螺旋状導体226は、同軸給電ケーブル202の遠位端部に配置され、外部導体206に電気的に接続される導電性リング225を介して外部導体206に接続される。
【0060】
いくつかの実施例では、螺旋状導体226は、1本の導電材料を先端部本体214の外面220の周りに巻き付け、導電材料を先端部本体214に接着する(例えば、エポキシを使用する)ことによって形成することができる。他の実施例では、螺旋状導体226は、導電材料のスリーブを先端部本体214の外面220の周りに配置し、導電材料のスリーブ内に螺旋状スロットを切削することによって形成することができる。さらなる実施例では、螺旋状導体226は、先端部本体214上に同軸給電ケーブル202の外部導体206の延長部を構成することができ、そこで螺旋状スロットが先端部本体214上に延在する外部導体206の部分内に切削されている。さらに別の実施例では、螺旋状導体226は、先端部本体214の表面上に直接にめっき加工される/金属被覆することができる(例えば、螺旋状導体226は先端部本体214上に金属層を析出させ、パターン形成することによって形成され得る)。
【0061】
螺旋状スロット228は、螺旋状導体226の隣接する巻線の間に形成され、それを通して、先端部本体214の外面220の一部分が露出する。換言すれば、外面220は、螺旋状導体226の隣接する巻線の間に露出する。螺旋状導体のピッチ、及び螺旋状スロット228の幅は、放射先端部212に送達されるマイクロ波エネルギーが漏洩して外に向けて放射することができるようなものである。したがって、放射先端部212は、マイクロ波周波数でスロット付き(「漏洩」としても知られている)同軸アンテナのように挙動する。したがって、同軸給電ケーブル202に沿って伝達されるマイクロ波エネルギーは、放射先端部212で放出され得、マイクロ波エネルギーを標的組織に送達する。マイクロ波エネルギーが放射先端部212から放出されることを可能にするために、螺旋状スロットの幅は、マイクロ波エネルギーの波長よりも短い、または同等であることができる。螺旋状スロット228の幅は、
図3の線227によって示される。螺旋状スロット228は先端部本体214の外面220の周りに幅広く巻かれているので、マイクロ波エネルギーは、放射先端部212の中心軸に関して外面の周りに均一に放出することができる。したがって、螺旋状導体226は、放射先端部212から放出されるマイクロ波エネルギーを整形するための電場整形導電性構造体として機能する。
【0062】
したがって、放射先端部212は、先端部本体214の端面218上の第一及び第二電極222、224への電気的接続を維持しながら、マイクロ波放射を可能にする。第一電極222及び第二電極224は、RFエネルギーを使用して組織を切断する、及び/または凝固させるための双極RF電極として使用することができる。例えば、第一電極222は能動電極として機能することができ、第二電極224はRFエネルギーについての戻り電極として機能することができる。したがって、放射先端部212は、第一及び第二電極222、224に送達されるRFエネルギーを使用する組織の切断及び/または凝固、ならびに放射先端部212の「漏洩」アンテナ構造体を介して放出されるマイクロ波エネルギーを使用する組織の焼灼という、RF及びマイクロ波エネルギーの両方を使用する標的組織の治療を可能にする。
【0063】
先端部本体214の端面218上の第一及び第二電極222、224の位置は、第一及び第二電極222、224をRF切断及び組織内へのトンネリングに使用することを可能にする。RFエネルギーを第一及び第二電極222、224に伝達することにより、放射先端部212の直前に位置している生体組織(すなわち、端面218に隣接する組織)を切断することができる。さらに、第二電極224が第一電極222の周りのリングとして形成されるので、組織は、第一電極222の周りの領域で切断することができる。放射先端部212の前の組織が切断されると、放射先端部212を切断された組織を通して押し込み、標的ゾーンにトンネルを作成することが可能である。第二電極224の外径が先端部本体214の外径とほぼ一致するので、組織内の切断部は、先端部本体214の断面とほぼ同じ形状を有することができる。これにより、組織内へのトンネリングがさらに容易になり得る。次に、標的ゾーンに到達するときに、放射先端部212を介してマイクロ波エネルギーを標的ゾーンに送達することによって、標的ゾーン内の組織を焼灼することができる。これにより、放射先端部212を、マイクロ波エネルギーを使用して焼灼するべき標的ゾーンの内側(例えば、中心近く)に置くことが可能になる。例えば、RF切断を使用して、放射先端部212は、マイクロ波エネルギーを適用する前に、焼灼するべき標的組織(例えば、肝臓、腎臓、筋肉または血液中の組織)にトンネリングすることができる。次に、放射先端部212が標的組織の内側に位置している場合、マイクロ波エネルギーを標的組織に送達することによって標的組織を焼灼することができる。このようにして、健康な組織に送達されるマイクロ波エネルギーの量を減らしながら、マイクロ波エネルギーを組織に送達する効率を改善することが可能である。
【0064】
螺旋状導体226のピッチ、及び螺旋状スロット228の幅は、放射先端部212の性能にとって重要である。放射先端部212についての設計上のトレードオフは、螺旋状スロット228をマイクロ波放射のために十分に広くするが、第一及び第二電極222、224へのRFエネルギーの伝播を容易にするのに十分に狭くすることからなる。特に、螺旋状導体の幅が小さいほど(
図3に線230によって示される)、螺旋状導体226のインピーダンスが大きくなり、その結果として、RFエネルギーによって放射先端部212に大量の熱が発生する可能性がある。放射先端部212の構成における別の重要な考慮事項は、第二誘電材料の絶縁破壊強度、及び第一電極222と第二電極224との間の分離である。第一電極222と第二電極224との間でRF切断が発生するために、RFエネルギーのピーク電圧は、第二誘電材料に絶縁破壊を引き起こすことなく、電極間の空隙または組織の破壊電圧を越えるのに十分である必要がある。また、放射先端部212に使用される材料は、RF切断によって引き起こされる高温による、高い作業温度に耐えることができる必要がある。第二誘電材料に適している材料は、MACOR(登録商標)(約45MV/mの絶縁耐力)、アルミナ(約23MV/mの絶縁耐力)及びジルコニアを含む。
【0065】
図4は、電気手術器具200の放射先端部212のいくつかの寸法を示す。
図4は、
図3と同じ電気手術器具200の図を示すが、理解しやすいように、
図3に示されるラベルのいくつかは、
図4から省略されている。本発明者らは、次の寸法が放射先端部212に適していることを見出した。長手方向の放射先端部212の長さ(数字232でラベル付けされる線で示される):6mm、円筒形先端部本体214の外径(数字234でラベル付けされる線で示される):2.55mm、円形の第一電極222の外径(数字236でラベル付けされる線で示される):0.5mm、リング形状の第二電極224の内径(数字238でラベル付けされる線で示される):1.25mm、螺旋状スロット228の幅(数字227でラベル付けされる線で示される):1.17mm、螺旋状導体226の幅(230とラベル付けされる線で示される):0.4mm。もちろん、放射先端部212について他の寸法も可能であり、これらの寸法は単に例として与えられる。
【0066】
図5Aは、
図2~4の電気手術器具200について周囲組織における計算された放射プロファイルを示す(すなわち、
図4に関連して上記で考察される寸法を有する放射先端部212による)。放射プロファイルは、有限要素解析を使用して、5.8GHzのEMエネルギー周波数に対して計算された。この計算は、放射先端部212の側面及び遠位端部から、すなわち、螺旋状スロット228を通して、マイクロ波エネルギーが放射されることを示す。放射プロファイルは、放射先端部212の周りのほぼ球形の領域にわたる。したがって、放射先端部212の「漏洩」アンテナ構造体は、放射先端部212の周りのマイクロ波エネルギーの実質的に均一な放出を可能にするので、組織は、放射先端部212の周りの明確に画定された体積内で焼灼することができる。
図5Bは、
図5Aの計算された放射プロファイルの軸方向断面を示す(すなわち、
図5Bは器具の長手方向軸に垂直な平面における放射プロファイルを示す)。
図5Bから見ることができるように、放射先端部の放射プロファイルは、器具の長手方向軸に対して実質的に対称である。
【0067】
図6は、電気手術器具200についてのマイクロ波エネルギーの周波数に対するSパラメータ(「リターンロス」としても知られている)のシミュレートされたプロットを示す。技術分野でよく知られているように、Sパラメータは、インピーダンス不整合によるマイクロ波エネルギーのリターンロスの尺度であり、したがって、Sパラメータは、標的組織と放射先端部との間のインピーダンス不整合の程度を示す。Sパラメータは、式P
I=SP
Rによって定義することができ、式中P
Iは器具中で組織に向かう送出電力であり、P
Rは組織から反射される電力であり、SはSパラメータである。
図6に示されるように、Sパラメータは、5.8GHzで-24.6dBであり、この周波数では、組織から反射されたマイクロ波エネルギーが非常に小さかったことを意味する。これは、5.8GHzの動作周波数ではインピーダンス整合が良好であり、この周波数ではマイクロ波エネルギーが放射先端部から組織に効率的に送達されることを示す。
【0068】
図7は、
図2~
図4の電気手術器具200についての等価回路700の図を示す。同軸給電ケーブル202は、インダクタンスL1、L2及びL3、ならびに静電容量C1、C2及びC3によって理想的な伝送線路として表されている。放射先端部212のアンテナ構造体は、インダクタンスL4及びL5、抵抗R1ならびに静電容量C4によって表される。螺旋状スロット228は、同軸給電ケーブル202の外部導体206に沿って電流経路を分断し、追加のインダクタンスをもたらす。螺旋状スロット228によって引き起こされるこの追加のインダクタンスは、
図7でインダクタンスL4によって表される。等価回路700の特性は、放射先端部の物理的特性、例えば、螺旋状導体の幅、先端部の材料、先端部の寸法などを制御することによって最適化することができる。例えば、螺旋状スロット228の幅は、インダクタンスL4に影響を与え得る。同軸伝送線路インタフェースからのスロットの長さまたは距離は、負荷の位相、したがって観測されるインピーダンスを変化させ得る。有限要素解析シミュレーションを実行して、放射先端部の幾何学的形状及び材料の変更の影響を評価することができる。
【0069】
RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーの両方を使用して組織の治療を可能にするために、上記の実施形態に説明される構造体に対する代替構造体も可能である。上述された実施形態では、螺旋状導体226のピッチは、放射先端部212の長さに沿って一定である。しかし、他の実施例では、螺旋状導体のピッチが放射先端部の長さに沿って変化することが可能である。例えば、螺旋状導体のピッチは、放射先端部の遠位端部に向かい増加する(または減少する)ことができる。別の実施例として、螺旋状スロットは、例えば放射先端部の遠位端部に向かい螺旋状導体の幅を増加させる、または減少させることによって、放射先端部の長さに沿って先細りとすることができる。螺旋状導体のピッチを変化させること、及び/または螺旋状スロットを先細りにすることは、放射先端部のマイクロ波放射プロファイルを整形するのに役立ち得る。
【0070】
さらなる代替の実施形態では、螺旋状導体以外のスロット付き導電性構造体を使用して、同軸給電ケーブルの外部導体を第二電極に接続することができる。例えば、第二電極は、先端部本体の周りに配置される導電性スリーブを介して外部導体に接続することができる。一連のスロットを導電性スリーブ内に切削して、第二電極への電気的接続を依然として維持しながらマイクロ波エネルギーを放出することを可能にすることができる。例えば、特定の方向にのみマイクロ波エネルギーを放出することが望ましい場合、スロットは、導電性スリーブの1つの側面にのみ提供することができる。
【0071】
図8A及び8Bは、本発明の別の実施形態である電気手術器具800を示す。電気手術器具800は、電気手術器具200と比較して、外部導体及び第二電極を接続する異なるタイプの電場整形導電性構造体を含む。
図8Aは電気手術器具800の側断面図を示し、
図8Bは電気手術器具800の正面図を示す。電気手術器具800は、第一誘電材料808によって分離される内部導体804及び外部導体806を含む同軸給電ケーブル802を備える。また、同軸給電ケーブル802は、外部シース210を含む。同軸給電802は、電気手術器具200の同軸給電ケーブル202と同様であり得る。
【0072】
同軸給電ケーブル802は、その遠位端部で放射先端部812によって終端する。放射先端部812は、同軸給電ケーブル802の遠位端部に取り付けられる先端部本体814を含む。先端部本体814は、第一誘電材料808と同じである、またはこの第一誘電材料とは異なることができる第二誘電材料から作製することができる。内部導体804の一部分は、先端部本体814内のチャネルを通って延出するので、内部導体の遠位端部は、先端部本体814の端面816で露出する。内部導体804の露出した遠位端部は、端面816上に第一電極818を形成する。導電材料から作製されるワイヤ820は、同軸ケーブル802の遠位端部から放射先端部812の端面816まで、放射先端部812の長さに沿って延在する。ワイヤ820は、1つの端部で外部導体806に電気的に接続される。
図8Bに示されるように、ワイヤ820は、先端部本体814に部分的に埋め込まれる。ワイヤ820の遠位端部は、端面816で露出し、第二電極822を形成する。
【0073】
第一電極818及び第二電極822がそれぞれ内部導体804及び外部導体806に電気的に接続されるので、RF切断電極として機能することができる(電気手術器具200の電極222、224に類似して)。さらに、同軸給電ケーブル802から放射先端部812に送達されるマイクロ波エネルギーは、放射先端部812によって放出することができる。しかし、器具200の螺旋状導体226とは対照的に、ワイヤ820は、放射先端部812の1つの側面上にのみ配置される(すなわち、それは先端部本体周囲に巻き付いていない)。結果として、ワイヤ820は、マイクロ波放射プロファイルが器具の長手方向軸に対して対称ではないように、放射先端部814の1つの側面上でマイクロ波エネルギーを部分的に遮断するように機能する。したがって、マイクロ波エネルギーは、ワイヤ820の反対側にある放射先端部812の側面(例えば、
図8Bの矢印824によって示される側面)から優先的に放出することができる。したがって、ワイヤ820は、外部導体806を第二電極822に接続すること、及びマイクロ波放射プロファイルを整形することという2つの機能を果たす。