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特許7465561胸部体液レベルおよび心肺機能を監視するための携帯型超広帯域レーダー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】胸部体液レベルおよび心肺機能を監視するための携帯型超広帯域レーダー
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0507 20210101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B5/0507
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021500834
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019042267
(87)【国際公開番号】W WO2020018707
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】62/699,076
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーティン,エムレ
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム,ウイリアム ティー.
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0258366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/08
A61B 5/113
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信(TX)および受信(RX)アンテナ対の配列を備える、超広帯域(UWB)センサーを介して送信される、連続するUWBパルスに対する、反射後方散乱データのセットと、前記UWBセンサーの中のキャリブレーションチャネルからの対応するキャリブレーション測定値とを収集することと、
前記反射後方散乱データのセットに基づいて、各組織界面に対する反射係数を決定することであって、前記反射係数は、前記受信(RX)アンテナに反射され、前記対応するキャリブレーション測定値を使用して補正された連続するUWBパルスに対する前記反射後方散乱データに示される反射境界から生成される反射曲線からの大きさおよび位相情報から決定され、前記反射曲線は、前記UWBセンサーと肺組織との間にある、前記体の中の組織層の推定EM伝播モデルと関連付けられることと、
前記反射係数に基づいて、前記肺組織の呼吸サイクルの中の頂点、中間点、および底点で、肺組織界面の深さを特定することによって、前記反射係数に基づいて、前記肺組織の体液レベル容量を決定することと、を含み、
前記肺組織の前記体液レベル容量を決定することが、前記呼吸サイクルの中の前記頂点、中間点、および底点での体液レベル容量を決定することを含むことを特徴とする、身体的特徴を決定するための方法。
【請求項2】
前記反射後方散乱データのセットが、反射後方散乱データの各セットに対して、広帯域ビーム形成信号を生成するように組み合わせられる前記UWBセンサーの中の、前記TXおよびRXアンテナ対の各々に対して取得される、反射後方散乱データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反射曲線が、前記対応するキャリブレーション測定値に基づく、補正UWBパルス波形を使用して、その反射後方散乱データのセットの前記広帯域ビーム形成信号のスパースデコンボリューションに基づいて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記広帯域ビーム形成信号の前記スパースデコンボリューションが、K個の周波数帯の各々に対して実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記UWBセンサーと前記肺組織との間に位置する、組織層の特徴を決定することを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記組織層の前記特徴が、少なくとも一つの組織層界面の場所、または少なくとも一つの組織層の誘電特性を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
送信(TX)および受信(RX)アンテナの対を含むアンテナの配列と、キャリブレーションチャネルとを備える、超広帯域(UWB)センサーであって、使用者の体の上に位置付けられるように構成される、UWBセンサーと、
前記アンテナの配列のうちの前記TXアンテナへ連結されるUWBパルス発生器と、前記アンテナの配列のうちの前記RXアンテナへ連結されるUWB受信機とを備える、無線周波数(RF)フロントエンドであって、前記UWBパルス発生器によって生成されるUWBパルスが、前記TXアンテナを介して前記使用者の前記体の中へ順次送信され、反射後方散乱信号が、そのTXおよびRXアンテナの対のうちの前記RXアンテナを介して受信される、無線周波数(RF)フロントエンドと、
前記反射後方散乱と関連付けられるデータと、前記キャリブレーションチャネルからの対応するキャリブレーション測定値とを伝達するように構成される、無線送信機と、
前記データを受信し、前記反射後方散乱および対応するキャリブレーション測定に基づいて、前記使用者の身体的特徴を決定するように構成される、計算デバイスと、
備え、
前記計算デバイスが、
前記連続して送信されるUWBパルスに対する、前記反射後方散乱と関連付けられる前記データと、前記対応するキャリブレーション測定値とに基づいて、反射曲線を決定し、前記反射曲線が、前記UWBセンサーと標的組織との間で前記体の中にある組織層のモデルと関連付けられ、
前記反射曲線に基づいて、反射係数を決定し、
生成された前記標的組織のデータから、前記標的組織の特徴を決定する、
ように構成される、携帯型身体監視システム。
【請求項8】
前記標的組織の前記特徴が、前記標的組織との界面の深さ、または前記標的組織の誘電特性を含む、請求項に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項9】
前記標的組織が肺組織である、請求項に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項10】
前記計算デバイスが、前記肺組織の前記特徴に基づいて、肺液量の尺度を特定するように構成される、請求項に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項11】
前記計算デバイスが、心拍、心拍変動、呼吸数、または一回換気量のうちの一つ以上を同時に特定するように構成される、請求項10に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項12】
前記計算デバイスが、前記肺組織の呼吸サイクル中の、肺組織界面の上下深さを特定するように構成される、請求項に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項13】
前記計算デバイスが、前記肺組織の前記呼吸サイクルにおける、前記上下深さおよび平均深さでの誘電特性を特定するように構成される、請求項12に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項14】
反射曲線は、前記連続するUWBパルスに対する前記反射後方散乱と関連付けられる前記データに基づいて、平均化された広帯域後方散乱信号のスパースデコンボリューションによって決定される、請求項13のいずれかに記載の携帯型身体監視システム。
【請求項15】
前記計算デバイスが、一連の反射後方散乱データセットの各々に対して、反射曲線を決定するように構成され、前記反射後方散乱データセットの各々が、そのセットと関連付けられる前記連続して送信されるUWBパルスに対する、前記反射後方散乱と関連付けられるデータを含む、請求項13のいずれかに記載の携帯型身体監視システム。
【請求項16】
前記キャリブレーションチャネルが、前記アンテナの配列に隣接して位置付けられる、既知のインピーダンスの負荷を有する、温度キャリブレーションループを含む、請求項13のいずれかに記載の携帯型身体監視システム。
【請求項17】
前記送信されるUWBパルスの変動は、前記対応するキャリブレーション測定値に基づいて補正される、請求項16に記載の携帯型身体監視システム。
【請求項18】
前記計算デバイスへの送信のために、前記反射後方散乱信号および前記対応するキャリブレーション測定値を取得し処理するように構成される、デジタル信号処理(DSP)回路を含む、請求項17のいずれかに記載の携帯型身体監視システム。
【請求項19】
前記UWBパルスが、毎秒10,000の速度で前記体の中へ送信される、請求項17のいずれかに記載の携帯型身体監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月17日出願の「Mobile Ultrawideband Radar for Monitoring Thoracic Fluid Levels and Cardio-Respiratory Function」と題する、同時係属の米国仮特許出願第62/699,076号の優先権および利益を主張し、全体を参照することによって本明細書に援用される。
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記載
【0002】
関連出願の相互参照
本発明は、国立衛生研究所の認可を受けたU54 EB020404、および情報、ロボット工学、および知的システム(IIS)のNSF部門の認可を受けたISS1231577の下、政府支援により成された。政府は発明のある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
うっ血性心不全(CHF)は、およそ6百万人の米国人が発症し、毎年670,000人が診断される。心不全は、米国(US)における入院および再入院、ならびに死亡の主な原因の一つであり、また、最も費用のかかる疾患症候群のうちの一つでもあり、治療の直接費および間接費は、1年に344億USドルと推定される。この高額な治療費の約80%は、病院での心不全代償不全のエピソード管理に関係する。心不全の予後を改善し、治療費を下げることを対象とする取り組みが必要である。外来診療でより早期に心不全の悪化を特定し治療することによって、罹患率の上昇および入院加療の増加につながる、心不全増悪の発生を防止しうる。現在の心不全悪化の識別子、すなわち、体重増加および呼吸困難は信頼性に乏しく、疾患が進行するタイムラインにおいて発生するのがしばしば遅すぎて、予後を変えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の態様は、超広帯域レーダーを使用する、携帯型身体監視用のシステム、装置、および方法に関する。一態様では、数ある中で、身体的特徴を決定するための方法は、使用者の体の上に位置付けられる、送信(TX)および受信(RX)アンテナ対の配列を備える、超広帯域(UWB)センサーを介して送信される、連続するUWBパルスに対する、反射後方散乱データのセットと、UWBセンサーの中のキャリブレーションチャネルからの対応するキャリブレーション測定値とを収集することと、反射後方散乱データのセットに基づいて、各組織界面に対する反射係数を決定することであって、反射係数は、その連続するUWBパルスに対する反射後方散乱データ、および対応するキャリブレーション測定値に基づく、反射曲線から決定され、反射曲線は、UWBセンサーと肺組織との間にある、体の中の組織層のモデルと関連付けられることと、反射係数に基づいて、肺組織の体液レベル容量を決定することとを含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つ以上の態様では、反射後方散乱データのセットが、反射後方散乱データの各セットに対して、広帯域ビーム形成信号を生成するように組み合わせられるUWBセンサーの中の、TXおよびRXアンテナ対の各々に対して取得される、反射後方散乱データを含むことができる。反射曲線を、対応するキャリブレーション測定値に基づく、補正UWBパルス波形を使用して、その反射後方散乱データのセットの広帯域ビーム形成信号のスパースデコンボリューションに基づいて決定することができる。広帯域ビーム形成信号のスパースデコンボリューションを、K個の周波数帯の各々に対して実施することができる。様々な態様では、方法が、反射係数に基づいて、肺組織の呼吸サイクルの中の頂点(吸息)、中間点、および底点(呼息)で、肺組織界面の深さを特定することを含むことができ、肺組織の体液レベル容量を決定することが、呼吸サイクルの中の頂点、中間点、および底点での体液レベル容量を決定することを含むことができる。一部の態様では、方法が、UWBセンサーと肺組織との間に位置する、組織層の特徴を決定することを含むことができる。組織層の特徴が、少なくとも一つの組織層界面の場所、または少なくとも一つの組織層の誘電特性を含むことができる。
【0006】
別の実施形態では、数ある中で、携帯型身体監視システムは、送信(TX)および受信(RX)アンテナの対を含むアンテナの配列と、キャリブレーションチャネルとを備える、超広帯域(UWB)センサーであって、使用者の体の上に位置付けられるように構成される、UWBセンサーと、アンテナの配列のうちのTXアンテナへ連結されるUWBパルス発生器と、アンテナの配列のうちのRXアンテナへ連結されるUWB受信機とを備える、無線周波数(RF)フロントエンドであって、UWBパルス発生器によって生成されるUWBパルスが、TXアンテナを介して使用者の体の中へ順次送信され、反射後方散乱信号が、そのTXおよびRXアンテナの対のうちのRXアンテナを介して受信される、無線周波数(RF)フロントエンドと、反射後方散乱と関連付けられるデータと、キャリブレーションチャネルからの対応するキャリブレーション測定値とを伝達するように構成される、無線送信機と、データを受信し、反射後方散乱および対応するキャリブレーション測定値に基づいて、使用者の身体的特徴を決定するように構成される、計算デバイスとを備える。
【0007】
一つ以上の態様では、計算デバイスを、連続して送信されるUWBパルスに対する、反射後方散乱と関連付けられるデータと、対応するキャリブレーション測定値とに基づいて、反射曲線を決定し、反射曲線が、UWBセンサーと標的組織との間で体の中にある組織層のモデルと関連付けられ、反射曲線に基づいて、反射係数を決定し、生成された標的組織データから、標的組織の特徴を決定するように構成することができる。標的組織の特徴が、標的組織との界面の深さ、または標的組織の誘電特性を含むことができる。標的組織が肺組織でありうる。計算デバイスを、肺組織の特徴に基づいて、肺液量の尺度を特定するように構成することができる。計算デバイスを、心拍、心拍変動、呼吸数、または一回換気量のうちの一つ以上を同時に特定するように構成することができる。計算デバイスを、肺組織の呼吸サイクル中の、肺組織界面の上下深さを特定するように構成することができる。計算デバイスを、肺組織の呼吸サイクルにおける、上下深さおよび平均深さでの誘電特性を特定するように構成することができる。
【0008】
様々な態様では、反射曲線は、連続するUWBパルスに対する反射後方散乱と関連付けられるデータに基づいて、平均化された広帯域後方散乱信号のスパースデコンボリューションによって決定することができる。計算デバイスを、一連の反射後方散乱データセットの各々に対して、反射曲線を決定するように構成することができ、反射後方散乱データセットの各々が、そのセットと関連付けられる連続して送信されるUWBパルスに対する、反射後方散乱と関連付けられるデータを含む。一部の態様では、キャリブレーションチャネルが、アンテナの配列に隣接して位置付けられる、既知のインピーダンスの負荷を有する、温度キャリブレーションループを含むことができる。送信されるUWBパルスの変動は、対応するキャリブレーション測定に基づいて補正することができる。一つ以上の態様では、携帯型身体監視システムが、計算デバイスへの送信のために、反射後方散乱信号および対応するキャリブレーション測定値を取得し処理するように構成される、デジタル信号処理(DSP)回路を含むことができる。様々な態様では、UWBパルスを、毎秒約10,000の速度で体の中へ送信することができる。
【0009】
本開示の他のシステム、方法、特徴、および利点は、当業者には、以下の図面および発明を実施するための形態を検討すると明らかになる、または明らかになるであろう。すべてのこうしたさらなるシステム、方法、特徴、および利点が、本記載内に含まれ、本開示の範囲内であり、付随する請求項により保護されることが意図される。加えて、記載する実施形態のすべての任意で好ましい特徴および修正は、本明細書に教示する開示の全態様で使用可能である。さらに、従属請求項の個々の特徴、ならびに記載する実施形態のすべての任意で好ましい特徴および修正は、互いに組み合わせ可能であり、取り換え可能である。
【0010】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してより良く理解することができる。図面の中の構成要素は、必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに、本開示の原理を明白に図示することに重点が置かれている。そのうえ、図面では、類似の参照番号は、いくつかの図にわたって対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、本開示の様々な実施形態にしたがう、携帯型身体監視システムの例を示す概略図である。
【0012】
図1B図1Bは、本開示の様々な実施形態にしたがう、図1Aの携帯型身体監視システムの一部分の画像である。
図1C図1Cは、本開示の様々な実施形態にしたがう、図1Aの携帯型身体監視システムの一部分の画像である。
【0013】
図2A図2Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムの超広帯域(UWB)センサーの例を示す。
図2B図2Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムの超広帯域(UWB)センサーの例を示す。
図2C図2Cは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムの超広帯域(UWB)センサーの例を示す。
図2D図2Dは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムの超広帯域(UWB)センサーの例を示す。
図2E図2Eは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムの超広帯域(UWB)センサーの例を示す。
図2F図2Fは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムの超広帯域(UWB)センサーの例を示す。
【0014】
図3A図3Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図2A~2FのUWBセンサーを使用する、組織の感知を示す。
図3B図3Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図2A~2FのUWBセンサーを使用する、組織の感知を示す。
【0015】
図4A図4Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図2A~2FのUWBセンサーによって送信される、UWBパルスの後方散乱応答を示す。
図4B図4Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図2A~2FのUWBセンサーによって送信される、UWBパルスの後方散乱応答を示す。
図4C図4Cは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図2A~2FのUWBセンサーによって送信される、UWBパルスの後方散乱応答を示す。
【0016】
図5A図5Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、多層モデル、および図2A~2FのUWBセンサーの位置付けを示す。
図5B図5Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、多層モデル、および図2A~2FのUWBセンサーの位置付けを示す。
【0017】
図6図6は、本開示の様々な実施形態にしたがう、システムイメージングモデルの例を示す概略図である。
【0018】
図7A図7Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、測定した後方散乱データ、回収されたまばらな反射曲線、および学習されたパルス波形の例を示す。
図7B図7Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、測定した後方散乱データ、回収されたまばらな反射曲線、および学習されたパルス波形の例を示す。
図7C図7Cは、本開示の様々な実施形態にしたがい、測定した後方散乱データ、回収されたまばらな反射曲線、および学習されたパルス波形の例を示す。
【0019】
図8A図8Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、後方散乱データの周波数帯の例を示す。
図8A図8Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、後方散乱データの周波数帯の例を示す。
【0020】
図9A図9Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、後方散乱データから処理された位相帰還の例を示す。
図9B図9Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、後方散乱データから処理された位相帰還の例を示す。
【0021】
図10図10は、本開示の様々な実施形態にしたがう、図1Aの身体監視システムの動作例を示すフローチャートである。
【0022】
図11図11は、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムと共に使用できる、計算デバイスの例を示す。
【0023】
図12A図12Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
図12B図12Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
図13図13は、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
図14A図14Aは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
図14B図14Bは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
図14C図14Cは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
図14D図14Dは、本開示の様々な実施形態にしたがい、図1Aの身体監視システムを使用する、パイロット研究結果の例を示す。
【0024】
図15図15は、本開示の様々な実施形態にしたがい、多組織ファントムを使用して測定された反射係数の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に開示するのは、超広帯域レーダーを使用する携帯型身体監視用のシステム、装置、および方法に関する様々な例である。これから、図面に示すような実施形態について記載を詳細に参照し、類似の参照番号は、いくつかの図を通して類似の部分を示す。
【0026】
体液貯留が症状より前に発生するため、心不全の早期検出における技術的進歩は、経胸壁および胸腔内のインピーダンスの測定を中心に展開してきた。概念は、体液の増加に伴い導電性が増加し、それに対応してインピーダンスが減少することに基づく。植え込み型除細動器(ICD)から導き出される、OptiVol体液指数のような現行の方法は、侵襲的にインピーダンスを測定する際には助けとなっているが、肺浮腫の検出または入院加療の推測についての正確性は、非常に変わりやすい。別の手法では、肺動脈圧を監視するように、専用の植え込み型血行動態センサーを使用する。これらの手法は、最も心不全が進行した患者を除いたすべての人へ限定的に適用されうる、植え込み型デバイスから提供される情報に依存する。それゆえ、これらのデバイスをベースとした診断システムの有用性を再現できる、より優れた非侵襲的な道具へのニーズがある。
【0027】
本開示では、超広帯域無線周波数パルスを送信し、後方散乱波を分析することによって、心臓および肺の動きに加えて、胸部体液レベルを測定する、容易に身体感知をするために開発された非侵襲的な技術を提示する。身体監視システムは、使用者の胸の前側に配置される単一のセンサーユニットを用いて、測定を行うことができる。センサーユニットは、他の場所に配置して、他の組織の特徴を決定してもよい。類似の技術とは異なり、携帯型身体監視システムは、胸部組織の中の体液の量およびその空間分布の両方を査定するように使用し、血管内外の容積、つまり、臨床的に意義を持つ可能性がある尺度について情報を与えることができる。加えて、身体監視システムの速い獲得速度によって、心臓および肺の動きの追跡が可能になり、それによって、心拍、心拍変動、呼吸数、および一回換気量を継続して監視できる。肺および心臓の測定値を相関させて、さらに使用者の状況を評価してもよい。胸部体液レベルと共に使用される、心臓血管系状態のこれらマーカーによって、高感度、低い誤認警報率、および充分なリードタイムで心不全イベントを予測するように使用できる、包括的な尺度一式を提供することができる。
【0028】
図1Aを参照すると、示していうのは、計算デバイスインターフェース、例えば、スマートフォンインターフェースなどによって制御されうる、携帯型身体監視システム100の例を示す概略図である。身体監視システム100は、短パルス(例えば、0.5~3.5GHzのUWBで持続時間0.3~0.4ns)を、使用者103の体の中へ送り、組織からの後方散乱を記録する、超広帯域(UWB)レーダーシステムである。無線周波数(RF)感知は、組織の中へのその透過能力ゆえに、体内における微粒子の動きを監視するのに理想的である。例えば、空気/皮膚、皮膚/脂肪、脂肪/筋肉、および/または筋肉/肺の移行時の各組織界面から、後方散乱エコー信号の処理によって、リアルタイムで追跡できる反射点が提供される。
【0029】
携帯型身体監視システム100は、低電力のマイクロUWBプラットフォームを利用して、組織が反射する後方散乱エネルギーおよびその移行を検出し、心臓および肺の動きを測定し、CHFでのうっ血を検出する際に使用できる、胸部体液レベルなどの他の身体的特徴を決定することができる。図1Aに示す通り、携帯型身体監視システム100は、送信(TX)スイッチングマトリックス112を通って連結されるアンテナ109tによって、使用者103の組織の中へ送信される一つ以上のUWBパルスを生成する、UWBパルス発生器106を含むことができる。例えば、UWBパルス発生器106は、0.45~3.55GHzで動作するUWBパルスを生成できる。組織界面からの後方散乱は、受信(RX)スイッチングマトリックス115へ連結するアンテナ109rによって受信される。RXスイッチングマトリックス115は、受信した後方散乱信号を、広帯域低雑音増幅器(LNA)124を介して、UWB受信機121へ方向付ける。圧縮サンプリングスケジューラ118は、UWBレーダーパルスの送信用および後方散乱の受信用の異なるアンテナ109間のスイッチングを調整できる。多重入出力(MIMO)の多様性を使用して、動きの源、すなわち関心領域に信号を集中することができる。図1Bは、アンテナ109と連結するための、TXスイッチングマトリックス112およびRXスイッチングマトリックス115用のプラットフォームの例を示す画像である。
【0030】
デジタル信号処理(DSP)および無線送信回路127は、後方散乱信号を処理し、信号データを(例えば、Bluetooth(登録商標)、WLAN、または他の適切な無線リンクを介して)、限定するものではないが、続く処理のためにコンピュータ、スマートフォン、タブレット、または他のモバイル処理ユニットなどの別個の計算デバイスへ無線で送信できる。DSP回路127は、データの効率的な送信のために、後方散乱信号を圧縮するか、または他の方法で処理することができる。また、慣性測定ユニット(IMU)130は、配向および/または運動情報をDSP回路127へ提供することができ、情報はまた、別個の処理ユニットへ送信することもできる。図1Bは、UWBプラットフォームの例を示す画像であり、その全体サイズを図示するために25セントコインを伴っている。
【0031】
次に図2Aを参照すると、示しているのは、アンテナ109の円形配列を有するUWBのRFセンサーを含む、携帯型身体監視システム100の例示の画像である。図2Aに示す通り、UWBのRFセンサーは、送信されるUWBパルスを組織の中へ方向付け、反射後方散乱を受信するように、皮膚に隣接するアンテナの配列を伴い、使用者の胸の上に位置付けることができる。UWBのRFセンサーの配置は、例えば、計算デバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、または他のモバイルデバイス)上のインターフェースによって容易に行うことができる。センサーを使用者の胸に向けて保持し、インターフェースによってキャリブレーションを開始することができる。フィードバックが使用者へ提供されて、必要であれば、身体組織と適切に連結するように、センサーの位置を調節できる。N対のアンテナの配列は、対象となる広帯域の周波数にわたって、優れたインピーダンス整合を有するように設計することができる。設計で、電磁(EM)伝送が、各周波数帯に対して送信アンテナの中間点で起こるように、位相中心を最適化して、確実にすべての周波数帯で、同じ組織組成(例えば、厚さなど)を調べることができる。図2Bは、6対のアンテナ109を含む円形配列の画像であり、図2Cは、TXアンテナを中心に置いて開始するEM波の放射パターンの例を示す。TXおよびRXの対であるアンテナ109は、組織を通る1次元(1D)の切れ目を見つけるように平均化することができる。より大きな線形または平面配列を使用して、組織(例えば、脂肪、皮膚、筋肉、骨、肺など)の2Dおよび3D画像を監視することができる。
【0032】
後方散乱信号の測定は、経時的な温度および他の環境影響による、ハードウェアの小さな変動に敏感である。これらの影響を補正するために、UWBのRFセンサーは、DSPおよび無線送信回路127と通信する、キャリブレーションチャネル(またはループ)を含むことができる。キャリブレーションチャネルは、アンテナの配列に隣接して位置付けられる、既知のインピーダンスの負荷を含み、デジタルトリガーに対するタイミングを含む、送信パルスの変動をキャリブレーションするのに使用する、ループバック測定値を取得するように使用される。図2Dは、UWBのRFセンサーのケーシング上に位置付けられる負荷を示す画像であり、組み立てるとアンテナ109に隣接する。ループバック信号は、送信パルスの瞬時推定値と、トリガーに対する送信パルスのタイミングとを抽出するように処理され、そして、その送信パルスの後方散乱エコーから、組織の特性を推定する際に使用できる。
【0033】
図2Eおよび2Fは、人間工学に基づいた等角のUWBのRFセンサーとして使用されうる、6対のアンテナ109を含む、可撓性のある円形配列の画像である。UWBのRFセンサーは、送信されるUWBパルスを組織の中へ方向付け、反射後方散乱を受信するように、皮膚に固定される(例えば、接着パッチを使用して)アンテナの配列を伴い、使用者の胸の上に位置付けることができる。UWBのRFセンサーの配置は、例えば、計算デバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、または他のモバイルデバイス)上のインターフェースによって容易に行いうる。センサーを使用者の胸の上に位置付け、インターフェースによってキャリブレーションを開始することができる。フィードバックが使用者へ提供されて、必要であれば、身体組織と適切に連結するように、センサーの位置を調節できる。N対のアンテナの配列は、対象となる広帯域の周波数にわたって、優れたインピーダンス整合を有するように設計することができる。図2Eおよび2Fの人間工学的RFパッチによって、容易に使用者の前側の、例えば、右胸上に適用され、測定値を取得した後に除去できる可撓性基体の上に、アンテナ素子109を統合する。コネクターによって、アンテナ109の各々への連結が可能になる。例えば、RF電子回路およびデジタルバックエンドが、薄型のRFコネクターを使用して可撓性のあるアンテナ配列へ接続する、センサーポッドの中に位置することができる。スイッチング回路(例えば、TXスイッチングマトリックス112およびRXスイッチングマトリックス115)、ならびに/もしくはUWBパルス発生器およびサンプラーもまた、基体上へ統合できるか、またはアンテナ109用のコネクターに連結するためのコネクターアセンブの一部として提供できる。デジタル信号処理(DSP)および無線送信回路127もまた、基体上へ統合できる。これにより、DSPまたは他の集積処理回路が実装するソフトウェア(および/またはファームウェア)によって、リアルタイムのポイントオブケアで、肺水分測定および肺水分の体液推定が可能となりうる。
【0034】
RFエネルギーを連結し体の中へ集中させるために、中央のグラウンドプレーンと釣り合うパッチアンテナを備えるアンテナ配列を使用することができる。図2Eおよび2Fの例に示す通り、六つの円形パッチを、交互に並ぶ送信-受信対の中の円形グラウンドの周りに配設できる。この技術は皮膚接触を必要としないが、軽量の接着パッチの形態で、可撓性基体上にアンテナ配列を実装することで、ベストまたはハーネスなどの外部支持手段を必要とすることなく、頑強で一貫した配置方法を支援することができる。制御された誘電体から成るRFパッチアンテナは、空隙を排除し、皮膚からの最初の反射を最小化することができ、それゆえ、測定のダイナミックレンジが増大する。
【0035】
図2Aおよび2Bは、例えば、スイッチングマトリックスおよびレーダーチップセットの電子部品(または回路)も統合できる可撓性基体上に、アンテナ配列を実装するための二つの例を示す。図2Aは、セラミック中子および銅表面を持つ、可撓性のあるRF積層板を示す。これら可撓性のある積層板は、フライス盤を使用して銅を除去して、アンテナ表面、信号トレース、および集積回路(IC)用パッドを作成する、サブトラクティブ法で処理することができる。標準的なフロー半田を適用して、電子部品をアンテナパッチ上へ統合することができる。本技術によって、電子部品の統合を容易にし、可撓性のある二層の基体へ半田付けされる、多層硬質IC基板またはチップを組み合わせる設計が可能になる。
【0036】
図2Bは、アンテナを形成する、ポリエステルフィルム上の銀インクのスクリーン印刷を示す。銀インクは、優れた伝導率を有し、導電性インクおよび絶縁層をポリエステルフィルム上に堆積して、プリント基板を相加的に作成することを可能にする。このプロセスは低コストであり、多層構造(例えば、信号トレースおよびアンテナパッチ)の形成を可能にするが、しかしながら、半田で使用される標準的な合金は、導電性インクに接着せず、ポリエステル基体が熱に敏感であるため、構成要素の統合はより難しくなる。そのため、導電性エポキシ接着剤を使用して、コネクターおよび構成要素を付着する。また、導電性インクは脆く、パッチへ印加されうるせん断応力およびねじれの量を、限定する場合がある。しかしながら、これらは単一または限定的な用途については問題とならない場合がある。
【0037】
図2Aおよび2Bの画像に示す通り、両方のプロセスを使用して、アンテナ配列の試作版が製造された(統合電子回路なし)。エネルギーを体の中へ連結するアンテナ配列の能力は、ネットワークアナライザを使用して各事例で特徴付けられてきた。両設計によって、システムが使用する広帯域の周波数(例えば、0.5GHz~3.5GHz)にわたって、優れたインピーダンス整合および利得を提供する。様々な実装で、レーダーチップセットは、前側の右胸部正面上に付着できる等角の接着RFパッチで、アンテナ層に統合することができる。小型センサーポッドは、デジタルバックエンド、電池、および例えば、RFパッチに電力を供給し、測定値を取得する自己誘導磁石コネクターを使用して、RFパッチに付着するBluetooth(登録商標)送受信機を含むことができる。患者および介護者が、ポイントオブケア(POC)の状況でだけでなく、自宅でリアルタイムに体液状態レベルを査定することを可能にするために、制御および記憶用のモバイルデバイス上にあるワイヤレスインターフェースを用いて、肺液推定技法を、センサーデバイスまたはセンサーノード内で実施することができる。クラウドに接続することなく、リアルタイムでのPOC測定を提供するために、プロセッサをセンサー(例えば、ARM Cortex M4F)の中に構築して、分析を実施してもよい。これにより、センサーからスマートフォン、タブレット、または他のモバイルデバイスへのデータ経路を合理化し、データ速度および関連するレイテンシを最小化できる。
【0038】
図3Aは、TXおよびRXアンテナ対109を使用する、組織の感知を示す。UWBレーダーパルス303は、図1AのTXスイッチングマトリックス112を通って連結されるTXアンテナ109tから、体の中へ発射することができる。UWBパルス303が体の組織を伝播すると、組織界面からの後方散乱306が、反射してRXアンテナ109rに戻る。図1Aの断面像に見られる通り、人体は、異なる誘電特性の様々な組織から成り、UWBパルス303が体を伝播するとき、異なる誘電特性による影響が、UWBパルス303および後方散乱306に及ぶ。例えば、比誘電率が組織によって伝搬遅延に影響を与え、損失正接が、組織によってRFエネルギーの吸収に影響を及ぼす。図に示すように、例えば、皮膚、脂肪、筋肉、骨、肺などの異なる層に対して、複数の組織界面が存在する。図3Bの表は、組織のうちの一部の損失正接および比誘電率の例を提供している。反射してRXアンテナ109rに戻り受信される後方散乱は、これらの重複する帰還を含み、それらの帰還を、様々な組織界面の場所および関連する複素反射係数を解決するように処理して、界面を構成する組織の特徴を明らかにすることができる。UWBパルスの高帯域幅および短い持続時間(例えば、0.3~0.4ns)によって、例えば、ドップラレーダーより高い空間分解能が可能となり、関心対象の組織深さに対する、帰還のゲート制御を行うことができる。
【0039】
携帯型身体監視システム100の動作中、毎秒何千ものパルス(例えば、毎秒10,000)を、TXアンテナ106tから送ることができる。各パルスの帰還は、体内への深さを示す、時間遅延のあるいくつかのエコーを包含する。図4A(Radar Principles、N. Levanon、1988年)に示す通り、後方散乱応答には、異なる深さ(またはレンジ)からの帰還を含み、これらは、短時間(例えば、0.1秒ごと)または間隔(例えば、100パルスごと)にわたって平均化できる。60秒間隔が15~20回の呼吸サイクルを網羅すると考えると、こうした短時間にわたる応答を平均化することによって、深さ情報を犠牲にすることなく、帰還信号対雑音比が強化される。このように、身体監視システム100によって、呼吸サイクル中に数回、組織を通る1Dのエコーを提供する。
【0040】
一部の実施形態では、身体監視システム100は、後方散乱信号を処理して、100Hzのレートでレンジプロファイルを生み出すことができる。図4Bに示す通り、各レンジプロファイルは、送信パルス波形でコンボリューションすると、反射境界の位置を示すことができる。心臓の動き(例えば、0.5~2Hz)および/または肺の動き(例えば、0.1~0.3Hz)と一致する周波数に対して、パルスの信号をフィルタリングすることで、図4Cに示すような構造が明らかになる。
【0041】
皮膚、脂肪、筋肉、肺、および/または他の組織の特性が、肺水分または肺液量を決定するのに使用できる、肺組織の誘電率を推定するために、モデル化され推定される。図5Aに示すものなど、EM波が伝播する組織(例えば、皮膚、脂肪、および筋肉)について、多層モデルを考えると、肺パラメータ(例えば、厚さおよび組成)を推定することができる。図5Bは、UWBのRFセンサーを使用者の胸の上で位置付ける例を示し、UWBパルスが体の中へ伝播する経路を示す。肺組織の反射/透過係数は、反射レーダーパルス(0.5~3.5Ghz)からの広帯域測定値、およびUWBのRFセンサーと肺との間にある組織の推定多層EM伝播モデルを使用して、推定することができる。肺組織の誘電特性は、呼吸サイクル中に変化するため、肺組織の誘電特性を、肺組織の全体評価のために、呼吸サイクルの中の三つの時点(呼息の底、吸息の頂点、および呼吸サイクルの中間(または平均))で推定する。
【0042】
界面(例えば、皮膚、脂肪、筋肉、および/または骨)の数学モデルは、ノンパラメトリックであり、組織の厚さおよび順番についての事前情報なしで、センサーデータ自体から学習することができる。UWBのRFセンサーと肺組織との間にK個の層がある(例えば、K=3またはK=4)と仮定すると、各層の厚さおよび誘電率が推定され、損失正接の平均値を推定できる。これらのパラメータは周波数に依存しうるため、センサーの測定値は、例えば、組織の特性が一定であると仮定できる500MHzの幅で、M個の周波数帯に分割することができる。その後、複数のTXおよびRXアンテナ対からの帰還を、各帯域に対して組み合わせ、キャリブレーションチャネル(またはループ)からの測定を使用して、トリガー遅延のドリフトに対して補正することができる。キャリブレーション測定を使用して、ハードウェアによって生み出される歪みおよび遅延は説明できるが、アンテナ対と体との間にある透過界面は説明されない。この透過機能は、システムモデルを使用して明らかになる。
【0043】
図6は、RF画像化に対するシステムモデルの例を示す概略図である。モデルは以下のように表すことができる。
【数1】

式中、
は、フレームiに対するレーダー帰還(または後方散乱)であり、xは、フレームiに対する推定反射(または反射率)曲線であり、p(i)は、レーダーのインパルス応答であり、Qは、m番目のチャネルに対するバイスタティック射影行列であり、H(p)は、送信パルスpとのコンボリューションを表すコンボリューションであり、Gは、アンテナ/体の伝達関数である。同様に、参照チャネル応答は以下のように表すことができる。
【数2】
【0044】
第一に、スパースデコンボリューション反転アルゴリズム(または他の正則化反転)を使用して、送信パルスの推定値を得るように参照チャネルを反転させることができ、温度および他の環境因子の存在下で、電力および帯域を限定する周波数サポートに関する制約を施行し、l1ノルムを使用して、参照チャネルで反射のスパースセットを施行する(理想的には単一の反射だが、実際は不完全なコネクターの不一致のため数回の反射)。
【0045】
通過帯域外で
【数3】

となるような、
【数4】

スパースデコンボリューション反転を式中に使用して、反射曲線をはっきりさせる一方、また、他の正規化された反転方法も利用して、この結果を達成してもよい。例えば、Tikhonov正則化、TV(全変動)ノルム、Lpノルムなどの正規化された反転方法、および敵対的生成ネットワークなどの機械学習ベースの反転方法、すなわち、ディープニューラルネットワークを使用して、レンジプロファイルをはっきりさせることができる。次に、参照チャネルからの推定パルス
【数5】
を使用して、組織界面およびアンテナ伝達関数に対応する、反射物のスパースセットを推定することができる。混合L21ノルムによってグループスパース性が課され、短い時間フレームにわたって、組織境界の場所がレンジビンに対して固定しているという知識を符号化するが、それらの複素振幅は、呼吸および他の体内の動きに基づいて変化してもよい。
【0046】
【数6】
となるような、
【数7】
であり、Gは単位電力であり、帯域制限される。
【0047】
内部反射によって、K層モデルが概して、Kより大きいいくつかの個別の帰還を生み出すであろうことに留意すべきである。組織/体液の推定では、各組織界面からの最初の帰還にのみ着目しうる。
【0048】
両方の最適化問題の解決は、様々な制約に対応する、複数の凸状問題の最小化を交互に行うことによって達成され、複素反射係数
【数8】
の絶対測定をもたらして、アンテナを離調する、交換および体によるアンテナ伝達関数の変動に対してだけでなく、パルス歪みに対しても、広帯域(本事例では3GHz帯域幅を超える)キャリブレーションを実施できる。
【0049】
図7Aは、測定された後方散乱データの例を示し、図7Bおよび7Cは、それぞれ回収されたスパース反射曲線および学習されたパルス波形を示す。反射曲線の決定は、送信される応答の歪みおよび遅延を調整するように、キャリブレーション回路からのループバック測定値を使用することによって大きく改善することができる。
【0050】
例えば、2つの周波数帯からの帰還が、図8Aおよび8Bで、それぞれ中心周波数1.25GHzおよび2GHzで与えられている。体内への深さ(またはレンジ)がy軸、呼吸サイクルの時間がx軸に付与されている。呼吸サイクル上の異なる点および平均帰還を、1分間の呼吸周期にわたる、呼吸サイクルの頂点、底、および中間に対して特定できる。
【0051】
その後、多層組織モデル(例えば、皮膚、脂肪、筋肉、および/または骨を含む)の影響を推定し、測定値から除去することができ、肺組織の帰還の反射および透過のみが残る。図9Aは、全組織からの位相帰還を示し、図9Bは、界面(例えば、皮膚、脂肪、筋肉、および/または骨)を除去した結果を示す。
【0052】
次に、反射係数を反射曲線から決定することができ、肺容量に対応する深さ(またはレンジ)にわたる肺の応答を集約して、肺水分または肺液量の尺度を提供することができる。組織および界面の場所を通る伝搬遅延のため、反射係数は、後方散乱信号に関する大きさおよび位相情報の両方を含む、複素数値であることに留意すべきである。後方散乱に基づく監視システムは、遅延に基づいて組織を分解する能力の点で独特であり、したがって、体液の量に加えて、液量の変化がどこ(どの組織の中)で発生しているかを伝えることができる。これは、体の後方および前方に配置される送信機および受信機を使用する、パススルー測定を使用する代替システムでは不可能である。
【0053】
図10を参照すると、示しているのは、携帯型身体監視システム100の動作例を図示するフローチャートである。前に論じた通り、身体監視システム100は、図1Aに示すように、使用者103の組織の中へ送信するためのUWBパルスを生成する、UWBパルス発生器106を備える。1003から開始すると、後方散乱データサンプルが、使用者の胸の上に位置付けられるUWBセンサーの中にある、TX-RXアンテナ対109を使用して収集される。後方散乱は、TX-RXアンテナ対109に対する、N個の空間チャネルの各々について収集される。包括的サンプリングスケジューラ118は、TXスイッチングマトリックス112を制御して、生成されたUWBパルスを各TXアンテナへ方向付け、RXスイッチングマトリックス115を制御して、各対の中の対応するRXアンテナによって、反射後方散乱を受信することができる。UWB受信機121が異なる空間チャネルから取得する、捕捉された後方散乱データは、1006で遅延し、DSP回路127(図1A)によって合計されて、1009でK個の周波数帯に分割される、平均化された広帯域ビーム形成信号を生成する。
【0054】
1003でアンテナ対109の各々を通るTX-RXサイクルを完了した後、UWBパルスは、1012でUWBパルス発生器106から、キャリブレーション回路(またはループ)を通るように方向付けられて、ハードウェアにより生み出される歪みおよび遅延、ならびに温度効果を説明するのに使用できる、ループバック測定値を取得することができる。測定されたキャリブレーション信号はその後、1015でK個の周波数帯に分割される。測定されたキャリブレーション信号の周波数帯情報を利用して、計算デバイス(またはDSP回路)が、1018で回路のハードウェアにより歪められ遅延する、瞬間的なUWBパルスを判定することができる。
【0055】
1021で、瞬間的なUWBパルスを、計算デバイス(またはDSP回路)が使用して、ビーム形成チャネル信号について、組織層に対する反射物のスパースセットおよび対応する反射係数の決定をブートすることができる。スパースデコンボリューションを使用して、前に論じた通り、K個の周波数帯についてUWBパルス波形および反射曲線を特定することができる。周波数帯に対する反射曲線を組み合わせて、平均化した反射曲線を決定することができる。1018で決定した瞬間的なUWBパルスを使用することで、動作中のUWBのRFセンサーへの温度効果を補正し、決定した反射曲線の正確性および一貫性を向上させる。反射係数は、反射曲線から抽出することができる。
【0056】
図10に示す通り、プロセス(1003から1021)は、定義された時間にわたって複数回、TX-RXアンテナ対109用のN個の空間チャネルの各セットに対して繰り返される。例えば、後方散乱データサンプル(およびキャリブレーション回路を通る対応する測定値)を、一連のP個の送信パルスについて、TX-RXアンテナ対109を使用して収集することができる。所定数のデータセットに対して、または所定の時間にわたって、データを収集することができる。P個のセットの後方散乱データに対して決定された反射曲線および反射係数を用いて、計算デバイスは、決定された情報に基づいて、1024で呼吸サイクルにわたって肺の位置および特徴を追跡することができる。例えば、吸息および呼息により生み出される、肺組織の特徴だけではなく肺組織界面の深さの変化も、経時的に判定することができる。吸息の頂点または呼息の底であると特定された結果を平均して、肺組織の特徴のより良い尺度を提供することができる。加えて、呼吸サイクル中の中間(または平均)点での結果を決定および平均して、肺組織の評価に共通点を提供できる。
【0057】
1027で、反射係数を、肺組織の体液レベル推定値に変換することができる。呼吸サイクルの底、頂点、および中間の平均化データを使用することによって、組織の場所および特徴の正確性を向上させることができる。肺組織に加えて、周辺組織(例えば、皮膚、脂肪、筋肉、骨、および心臓)についての情報もまた、反射係数から判定することができる。一部の場合、異なる組織間の相関を分析および評価することができる。情報は、計算デバイスによって、リアルタイム(またはほぼリアルタイム)で表示用に変換できる。
【0058】
理解されうる通り、後方散乱データの処理は、DSP回路127(図1A)および計算デバイスの組み合わせによって遂行できる。例えば、後方散乱データおよびキャリブレーション測定を、DSP回路によって処理して、周波数帯情報を提供(1003から1015)し、次いで周波数帯情報を、後続の組織情報の処理および決定(1018から1027)のために、計算デバイスへ送信できる。他の実施では、追加の処理を、計算デバイスへ送信する前に、DSP回路127を使用して遂行できる。
【0059】
ここで図11を参照すると、示しているのは、携帯型身体監視システム100に含むことができる、計算デバイス1103の例である。計算デバイス1103は、例えば、プロセッサ1109およびメモリ1112を有し、両方がローカルインターフェース1115へ連結する、少なくとも一つのプロセッサ回路を含む、一つ以上の計算デバイス1103でありうる。この目的のために、計算デバイス(複数可)1103は、例えば、コンピュータ、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット、または計算能力を提供する他のモバイル処理ユニットを備えてもよい。計算デバイス(複数可)1103は、例えば、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)画面、気体プラズマベースの平面パネル型ディスプレイ、LCD投影機、または他のタイプの表示デバイスなど、一つ以上の表示デバイスを含んでもよい。計算デバイス(複数可)1103はまた、例えば、様々な周辺デバイスを含んでもよい。特に、周辺デバイスは、例えば、キーボード、キーパッド、タッチパッド、タッチパネル、マイク、スキャナー、マウス、ジョイスティック、または一つ以上の押しボタンなどの入力デバイスを含んでもよい。計算デバイス1103が単数形で言及されたとしても、複数の計算デバイス1103が、上に記載するような様々な配列で用いられてもよいことが理解される。ローカルインターフェース1115は、例えば、理解されうるように、付随のアドレス/制御バスまたは他のバス構造を伴うデータバスを備えてもよい。
【0060】
メモリ1112に記憶するのは、プロセッサ1109によって実行可能な、データおよびいくつかの構成要素の両方である。特に、メモリ1112に記憶し、プロセッサ1109により実行可能であるのは、身体監視アプリケーション1118、および潜在的には他のアプリケーションである。また、メモリ1112に記憶されるのが、データ記憶部1121および他のデータであってもよい。データ記憶部1121に記憶されるデータは、例えば、様々なアプリケーションの動作、および/または以下に記載する機能エンティティと関連付けられる。例えば、データ記憶部は、データサンプル、反射曲線、および理解されうるような他のデータまたは情報を含んでもよい。加えて、オペレーティングシステム1124は、メモリ1112の中に記憶され、プロセッサ1109によって実行可能であってもよい。データ記憶部1121は、単一の計算デバイスの中に位置してもよく、または多くの異なるデバイスの間に分散してもよい。
【0061】
身体監視システム100は、無線通信リンクまたはネットワークを通って、計算デバイス1103へ通信連結されてもよい。一部の実施形態では、身体監視システム100は、計算デバイス1103へ直接接続してもよい。
【0062】
計算デバイス1103上で実行される構成要素には、例えば、身体監視アプリケーション1118、および本明細書で詳細には論じない他のシステム、アプリケーション、サービス、プロセス、エンジン、または機能性を含む。理解されうるように、メモリ1112の中に記憶され、プロセッサ1109によって実行可能な他のアプリケーションがあってもよいことはが理解される。本明細書で論じるいかなる構成要素も、ソフトウェアの形態で実装される場合、例えば、C、C++、C#、Objective C、Java、Java Script、Perl、PHP、Visual Basic、Python、Ruby、Delphi、Flash、または他のプログラミング言語など、いくつかのプログラミング言語のうちのいずれか一つを採用してもよい。
【0063】
いくつかのソフトウェア構成要素は、メモリ1112の中に記憶され、プロセッサ1109によって実行可能である。この点において、「実行可能」という用語は、最終的にプロセッサ1109によって動かすことができる形態のプログラムファイルを意味する。実行可能なプログラムの例は、例えば、メモリ1112のランダムアクセス部分にロードされ、プロセッサ1109によって動かすことができるフォーマットの機械語、メモリ1112のランダムアクセス部分にロードされ、プロセッサ1109によって実行することができるオブジェクトコードなど、適切なフォーマットで表現されうるソースコード、またはプロセッサ1109によって実行されるように、メモリ1112のランダムアクセス部分で命令を生成する、別の実行可能なプログラムによって解釈されてもよいソースコードなどに変換できるコンパイルされたプログラムであってもよい。実行可能なプログラムは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、USBフラッシュドライブ、メモリカード、コンパクトディスク(CD)もしくはデジタル多目的ディスク(DVD)などの光ディスク、フロッピーディスク、磁気テープ、または他のメモリ構成要素を含む、メモリ1112のいかなる部分または構成要素に記憶されてもよい。
【0064】
メモリ1112は、揮発性ならびに不揮発性メモリおよびデータ記憶構成要素の両方を含むとして、本明細書では定義される。揮発性構成要素は、電力損失時にデータ値を保持しない構成要素である。不揮発性構成要素は、電力損失時にデータを保持する構成要素である。したがって、メモリ1112は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、USBフラッシュドライブ、メモリカードリーダーを介してアクセスされるメモリカード、関連付けられたフロッピーディスクドライブを介してアクセスされるフロッピーディスク、光ディスクドライブを介してアクセスされる光ディスク、適切なテープドライブを介してアクセスされる磁気テープ、および/もしくは他のメモリ構成要素、またはこれらのメモリ構成要素のうちのいずれか二つ以上の組み合わせを備えてもよい。加えて、RAMは、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、または磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)、および他のこうしたデバイスを備えてもよい。ROMは、例えば、プログラム可能な読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、または他の類似のメモリデバイスを備えてもよい。
【0065】
またそれぞれ、プロセッサ1109は、複数のプロセッサ1109を表してもよく、メモリ1112は、並列処理回路で動作する、複数のメモリ1112を表してもよい。こうした場合には、ローカルインターフェース1115は、複数のプロセッサ1109のうちのいずれか二つの間、いずれのプロセッサ1109とメモリ1112のうちのいずれかとの間、またはメモリ1112のうちのいずれか二つの間などの通信を促進する適切なネットワークであってもよい。ローカルインターフェース1115が、例えば、負荷分散を行うことを含め、この通信を調整するように設計される、追加のシステムを備えてもよい。プロセッサ1109は、電気構造または何らかの他の利用可能な構造から成ってもよい。
【0066】
身体監視アプリケーション1118、および本明細書に記載する他の様々なシステムは、上で論じたような汎用ハードウェアにより実行される、ソフトウェアまたはコードに具体化されてもよいものの、代替として、専用ハードウェア、またはソフトウェア/汎用ハードウェアと専用ハードウェアとの組み合わせの中に具体化されてもよい。専用ハードウェアの中に具体化される場合、各々を、いくつかの技術のうちのいずれか一つ、もしくはそれらの組み合わせを用いる回路またはステートマシンとして実装することができる。これらの技術としては、一つ以上のデータ信号を印加するときに様々な論理機能を実装するための論理ゲートを有する、別々の論理回路、適切な論理ゲートを有する特定用途向け集積回路、または他の構成要素などが挙げられてもよいが、それらに限定されない。こうした技術は、概して、当業者にはよく知られており、このため本明細書に詳細には記載していない。
【0067】
図10のフローチャートは、身体監視アプリケーション1118の複数部分の実装の機能性および動作を示している。ソフトウェアに具体化される場合、各ブロックは、特定の論理機能(複数可)を実施するようにプログラム命令を含む、モジュール、セグメント、またはコードの一部分を表してもよい。プログラム命令が、コンピュータシステムまたは他のシステムの中のプロセッサ1109など、好適な実行システムにより認識可能な数値命令を含む、プログラミング言語または機械語で書かれた人間が読み取れるステートメントを含む、ソースコードの形態で具体化されてもよい。機械語は、ソースコードなどから変換されてもよい。ハードウェアに具体化される場合、各ブロックは、特定の論理機能(複数可)を実施する、回路またはいくつかの相互接続した回路を表してもよい。
【0068】
図10のフローチャートは特定の実行順を示しているが、実行順が描写するものとは異なってもよいことは理解される。例えば、二つ以上のブロックの実行順が、示す順と比べて混ざっていてもよい。また、図10に連続して示す二つ以上のブロックが、同時にまたは部分的に一致して実行されてもよい。さらに、一部の実施形態では、図3および/または6に示すブロックのうちの一つ以上が、スキップされるか、または省略されてもよい。加えて、有用性の強化、アカウンティング、性能測定、またはトラブルシューティング支援機能の提供などのために、いくつかのカウンター、状態変数、警告用セマフォ、またはメッセージが、本明細書に記載する論理フローに追加される可能性がある。すべてのこうした差異は、本開示の範囲内であることは理解される。
【0069】
また、身体監視アプリケーション1118を含め、ソフトウェアもしくはコードを備える、本明細書に記載するいかなる論理またはアプリケーションも、例えば、コンピュータシステムまたは他のシステムの中のプロセッサ1109など、命令実行システムによって、またはそれに関連して使用するために、いかなる非一時的コンピュータ可読媒体の中に具体化することができる。この意味で、論理は、例えば、コンピュータ可読媒体からフェッチされ、命令実行システムによって実行できる、命令および宣言を含むステートメントを含んでもよい。本開示の文脈では、「コンピュータ可読媒体」は、命令実行システムによって、もしくはそれに関連して使用するために、本明細書に記載する論理もしくはアプリケーションを包含するか、記憶するか、または維持することができるいかなる媒体でもありうる。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、または半導体媒体など、多くの物理的な媒体のうちのいずれか一つを含むことができる。好適なコンピュータ可読媒体のより具体的な例には、磁気テープ、磁気フロッピーディスケット、磁気ハードドライブ、メモリカード、ソリッドステートドライブ、USBフラッシュドライブ、または光ディスクが挙げられるであろうが、それらに限定されない。また、コンピュータ可読媒体が、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)およびダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、または磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)を含む、ランダムアクセスメモリ(RAM)であってもよい。加えて、コンピュータ可読媒体が、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラム可能な読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、または他のタイプのメモリデバイスであってもよい。
【0070】
携帯型身体監視システム100のパイロット研究は、急性非代償性心不全の一次診断を受けた患者で行われた。患者は、胸部体液測定を、うっ血性心不全の臨床シナリオと相関させるために、身体監視技術で査定された。携帯型身体監視システム100は、患者に対して個別化された測定を提供することができ、測定を使用して、患者が「乾燥」状態にどれだけ近いかを判定するのを手助けできる。身体監視システム100により取得された体液レベルは、入院加療中の純体液喪失量合計と比較された。患者は、胸部体液測定を、うっ血性心不全の臨床シナリオと相関させるために毎日査定された。図12Aは、画像として捕捉された未加工のセンサー示度を示し、エコーを生み出す界面の深さが一つの軸に沿い、時間(T)が第二の軸に沿って表示され、トランスデューサに向かい、かつトランスデューサから離れる組織界面の動き(M)である(超音波のTMモードに類似)。呼吸による肺組織の動きを目で見ることができ、関連する組織の移行を特定するのに役立つことに留意すること。図12Bは、純体液喪失量(単位リットル)と、携帯型身体監視システム100により提供された、標準化した胸部体液尺度との比較を示すプロットである。データは、8日間にわたって研究対象から収集された。
【0071】
図13は、体内への深さ(またはレンジ)にわたる、反射係数の平均位相例のプロットを示す。0を上回っている曲線1303は、特に二つの区画における肺の乾燥を示す。制御され繰り返す実験はまた、ターンテーブルを用いて遂行された。図14Aおよび14Bは、それぞれ後方散乱の大きさおよび位相の未加工データを示す。大きさが組織の層状構造を示し、一方位相が呼吸による時間の変動を示す。呼吸にわたる平均について、回収された層状構造の大きさおよび位相を、図14Cおよび14Dにそれぞれプロットしている。図に示すように、大きさおよび位相の両方で、体の奥深くでの体液レベルの変化が示されている。呼吸サイクルの上がり下がりもまた、回復させることができる。
【0072】
携帯型身体監視システムにより提供される測定の妥当性を試験するために、三つの組織層(皮膚、骨、および筋肉)から成る多層ファントムが作成され、既知の誘電係数の発泡層に対して配置された。エミュレートされた組織層の誘電係数(誘電率および伝導率)は、ポリエチレンパウダー(PEP)および塩化ナトリウムをそれぞれ使用して調節した。寒天を使用して混合物を固体層に自己成形し、TX-151パウダーを使用して混合物の粘度を増加させた。エミュレートされた組織の比誘電率は、Agilent85070E誘電体プローブキットを使用して検証された。エミュレートされた組織の測定された誘電係数が、基準値と比較され、測定された伝導率および誘電率が、これらの組織タイプに対する報告値と一致することがわかった。図15は、深さ対反射振幅測定値(超音波Aモードに類似)を示す。観察された遅延および反射振幅を使用して、多層組織プロファイルの誘電特性を推定することができる。三層(皮膚、骨、筋肉)について、推定された誘電係数の大きさは(41、12、55)であり、平均誤差は4.5%であった。
【0073】
本開示の上記の実施形態が、開示の原理についての明確な理解のために説明する、可能な実装の例にすぎないことは強調されるべきである。多くの差異および修正が、開示の精神および原理から実質的に逸脱することなく、上記の実施形態(複数可)になされてもよい。すべてのこうした修正および差異は、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることを意図している。
【0074】
「実質的」という用語は、意図される目的にマイナスの影響を与えない、記述用語からの逸脱を許容することを意味する。記述用語は、実質的に言葉によって明示的に修正されない場合であっても、実質的に言葉によって修正されると黙示的に理解される。
【0075】
比率、濃度、量、および他の数値データは、範囲フォーマットで本明細書に表されてもよいことに留意すべきである。こうした範囲フォーマットが、便宜上、簡潔にするために使用され、それゆえ、範囲の限定として明示的に列挙する数値だけでなく、各数値および部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内で網羅される、すべての個々の数値または部分範囲をも含むように、柔軟に解釈されるべきであることは理解されるものとする。図示するように、「約0.1%から約5%」の濃度範囲は、約0.1wt%から約5wt%の明示的に列挙した濃度だけでなく、示された範囲内の個々の濃度(例えば、1%、2%、3%、および4%)および部分範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%、および4.4%)をも含むように解釈されるべきである。「約」という用語は、数値の有効数字にしたがって、従来の丸めを含むことができる。加えて、「約「x」から「y」」という句は、「約「x」から約「y」」を含む。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15