(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】極低温実験及び超高真空(XHV)状態のための極低温冷却真空チャンバ放射線シールド
(51)【国際特許分類】
F04B 37/14 20060101AFI20240404BHJP
F04B 37/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F04B37/14
F04B37/08
(21)【出願番号】P 2021513776
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 US2019050871
(87)【国際公開番号】W WO2020056177
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-29
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル デッサウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン グリフィス
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-275231(JP,A)
【文献】特開昭61-205382(JP,A)
【文献】特開2008-051279(JP,A)
【文献】特表2014-521920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/14
F04B 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)システムであって:
真空チャンバと;
前記真空チャンバ内のターゲットと;
前記真空チャンバの内部真空空間内に配置された2つ以上の重なり合う放射線シールドであって、前記ターゲットの少なくとも一部を取り囲む前記2つ以上の重なり合う放射線シールドと;
前記2つ以上の重なり合う放射線シールドの第1放射線シールドに熱的に結合される第1冷却素子ユニットであって、前記第1放射線シールドの温度を少なくとも100K未満に低下させるように構成される、第1冷却素子ユニットと;
前記2つ以上の重なり合う放射線シールドの第2放射線シールドに熱的に結合される第2冷却素子ユニットであって、前記第2放射線シールドの温度を少なくとも25K未満に低下させるように構成される、第2冷却素子ユニットと;
前記ターゲットに熱的に結合される第3冷却素子ユニットであって、前記第1放射線シールド及び前記第2放射線シールドの両方から熱的に絶縁され、前記ターゲットの温度を少なくとも4K未満に低下させるように構成される、第3冷却素子ユニットと;
を備える、システム。
【請求項2】
前記第1冷却素子ユニット及び前記第2冷却素子ユニットは、それぞれ、
単段式コールドヘッド、又は
2段式コールドヘッド
である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記2つ以上の放射線シールドが、個々に又は組み合わせて、前記ターゲットの周囲の少なくとも4πステラジアンの90%を被覆する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2放射線シールドが、前記第2放射線シールドの内面に付着された収着材料を有し、前記収着材料は、前記第2放射線シールドの有効表面積を増加させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2冷却素子ユニットは、前記第2放射線シールドの温度を少なくとも15K未満に低下させるように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2冷却素子ユニットは、前記第1冷却素子ユニットがスイッチオンされた後、一定時間スイッチオンされ、
又は、前記真空チャンバ内の1つ又は複数の
低温凝縮性ガスの分圧
が閾値を下回った後、一定時間スイッチオンされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第3冷却素子ユニットは、2段式閉サイクルのコールドヘッドであり、前記第3冷却素子ユニットの第1コールドヘッドは、前記ターゲットを取り囲む第3の放射線シールドに熱的に結合され、前記第3冷却素子ユニットの第2コールドヘッドは、前記ターゲットに熱的に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1コールドヘッドと前記第2コールドヘッドは、異なる時間にスイッチが入る、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記真空チャンバの前記内部真空空間内に配置される1つ又は複数の高透磁率シールドであって、前記1つ又は複数の高透磁率シールドは、前記第1及び第2放射線シールドを取り囲む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)の方法であって:
真空チャンバの内部真空空間内に2つ以上の重なり合う放射線シールドを設け、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドは、ターゲットの周囲に少なくとも4πステラジアンの90%を被覆すること;
第1冷却素子ユニットを前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうち第1放射線シールドに熱的に結合すること;
第2冷却素子ユニットを前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうち第2放射線シールドに熱的に結合すること;
第3冷却素子ユニットを前記ターゲットに熱的に結合し、前記第3冷却素子ユニットを前記第1放射線シールド及び前記第2放射線シールドから熱的に絶縁すること;
前記第1放射線シールドを100K未満に冷却すること;
前記第2放射線シールドを25K未満に冷却すること;
前記ターゲットを4K未満に冷却すること;
前記第1及び第2放射線シールドにおける1つ又は複数の開口部を通して、前記ターゲットの周囲に少なくとも4πステラジアンの90%の範囲を維持しつつ、前記ターゲットと伸長された手段とを相互作用させること、
を含む方法。
【請求項11】
前記第1冷却素子ユニット及び前記第2冷却素子ユニットは、それぞれ、
単段式コールドヘッド、又は
2段式コールドヘッド
である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2放射線シールドが、前記第2放射線シールドの内面に取り付けられた収着材料を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2放射線シールドが、15K未満に冷却される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1冷却素子ユニット及び前記第2冷却素子ユニットは、異なる時間にスイッチが入る、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)用の装置であって:
真空チャンバの内部真空空間内において2つ以上の重なり合う放射線シールドであって、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドは、ターゲットの少なくとも一部を取り囲み、それによって黒体放射の大部分が前記ターゲットに到達するのを阻止する、2つ以上の重なり合う放射線シールドと;
前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうち第1放射線シールドの温度を100K未満に低下させる手段と;
前記第1放射線シールドの内側の第2放射線シールドの温度を25K未満に低下させる手段と;
前記ターゲットの温度を4K未満に低下させる手段であって、前記第1放射線シールドの温度を低下させる手段と、前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段との両方から熱的に絶縁される、前記ターゲットの温度を低下させる手段と;
前記第1及び第2放射線シールド内の1つ以上の開口部を介して前記ターゲットと相互作用する手段と、
を備える、装置。
【請求項16】
前記第2放射線シールドが、前記第2放射線シールドの内面上に収着材料を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段が、前記第2放射線シールドの温度を15K未満に低下させるように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記第1放射線シールドの温度を低下させる手段は、前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段を作動する前に作動される、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記開口部が、前記ターゲットの周囲の放射線範囲の少なくとも4πステラジアンの90%を維持するように形成される、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2018年9月12日に出願された「超低温実験及び極高真空(XHV)状態のためのCRYOGENICALLY COOLED VACUUM CHAMBER RADIATION SHIELDs for ULTRA-LOW TEMPERATURE EXPERITION ANDs and EXTREME HIGH VACUUM (XHV) CONDIS」と題する仮出願第62/730,233号、及び2019年4月26日に出願された「超低温実験及び極高真空(XHV)状態のためのCRYOGENICALLY COOLLY COOLED VACUUM CHAM RADIATION SHIELDs」と題する仮出願第62/838,999号の優先権を主張するものであり、いずれも本明細書の譲受人に譲渡され、本明細書において明示的に組み込まれる。
【0002】
(開示の分野)
本開示は、概して、超低温及び超高真空及び極高真空システムに関する。特に、制限としてではないが、本開示は、チャンバ内の圧力を低減するため、及び/又は低温実験のための極低温環境を提供するために、1つ又は複数の極低温冷却放射線シールドを用いる真空チャンバ用のシステム、方法、及び装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1は、チャンバ、放射線シールド、専用シールドクライオスタット(dedicated shield cryostat)、ターゲット付きクライオスタット、及び任意選択的に実験ツール(experimental tool)を含む超高真空又は極高真空システムを示す図である。
【
図2】
図2は、第2の専用クライオスタット及び第2のシールドを追加した
図1と同じUHV又はXHV真空システムを示す図である。
【
図3】
図3は、2段式専用シールドクライオスタットを備えた
図2の同じUHV又はXHV真空システムを示す図である。
【
図4】
図4は、3つの放射線シールド、3つのシールドクライオスタット、及びターゲット付きクライオスタットを備えたUHV又はXHV真空システムを示す図である。
【
図5】
図5は、クライオスタット、真空ポンプ、及びターゲットを備えた従来技術の真空システムを示す図である。
【
図6】
図6は、単一の冷却放射線シールドを備えたUHVチャンバの別の実施形態を示す図である。
【
図7】
図7は、2つの放射線シールド、2段式クライオスタット、任意選択の収着材料、真空ポンプ、及び一般的な装置を備えたUHV又はXHV真空システムを示す図である。
【
図8】
図8は、2つの放射線シールド、2段式クライオスタット、任意選択の収着材料、真空ポンプ、及び低温冷却されたターゲットを備えたUHV又はXHV真空システムを示す図である。
【
図9】
図9は、2つの低温冷却された放射線シールドを有するUHV又はXHV真空システムを、断面図を介して示す図である。
【
図10】
図10は、2つの低温冷却された放射線シールドを有する別のUHV又はXHV真空システムを、断面図を介して示す図である。
【
図11】
図11は、2つの低温冷却放射線シールド、冷却ターゲット、及び半球型ARPES分析装置を有するUHV又はXHV真空システムの断面の斜視図である。
【
図12A】
図12は、独立型半球型分析器及びタイム・オブ・フライト(time-of-flight)(TOF)分析器に関する従来技術を示す図である。
【
図12B】
図12は、独立型半球型分析器及びタイム・オブ・フライト(time-of-flight)(TOF)分析器に関する従来技術を示す図である。
【
図13】
図13は、半球型分析器がターゲットを備えたUHVチャンバに主に接続されている場合の、半球型分析器の他の従来技術の実施形態を示す図である。
【
図14】
図14は、単段式クライオヘッドを用いた、極低温冷却半球型分析装置に関する新しい概念を示す図である。
【
図15】
図15は、単段式クライオヘッドを用いた、極低温冷却TOF分析装置に関する新しい概念を示す。
【
図16】
図16は、2段式クライオヘッドを用いた、極低温冷却半球型分析装置の別の実施形態を示す図である。
【
図17】
図17は、2段式クライオヘッドを用いた、極低温冷却TOF分析装置の別の実施形態を示す図である。
【
図18】
図18は、極低温冷却XHV真空チャンバに取り付けられた
図16の2段式冷却半球型分析装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図19】
図19は、極低温冷却XHV真空チャンバに取り付けられた
図16の2段式冷却半球型分析装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図20】
図20は、
図1の分析装置への拡張を示す。 延長された検出器が利用される16又は17。
【
図24】
図24は、
図23における分析装置の詳細図であり、熱バスバー及び電気的破断の内部ルーティングの実施形態を示す。
【
図25】
図25は、単一及び複数のクライオヘッドの両方を有する分析装置及びクライオヘッド構成の様々な例を示す。これから、開示は、多種多様な実験セットアップをカバーしようとするものであることが分かる。
【
図26】
図26は、1つ又は複数の電極の第1の設定に熱的に結合された第1ステージと、1つ又は複数の電極の第2の設定に熱的に結合された第2ステージとを有する、2段式冷却半球分析装置である。
【
図27】
図27は、1つ又は複数の電極の第1の設定に熱的に結合された第1ステージと、1つ又は複数の電極の第2の設定に熱的に結合された第2ステージとを有する2段式冷却TOF分析装置である。
【
図28】
図28は、
図1に示されているXHVチャンバの模式図である。
図2,3,7及び8は、中間の隙間に対するチャンバの例示的な相対的サイズを示す。また、中間の隙間に存在する真空準位と粒子種を示した。
【発明の概要】
【0004】
以下では、本明細書に開示される1つ以上の態様及び/又は実施形態に関連する簡略化された発明の概要を提示する。そのように、以下の要約は、意図された全ての態様及び/又は実施形態に関連する広範な概観と考えてはならない。また、意図された全ての態様及び/又は実施形態に関連する重要な要素を特定するため、又は、任意の特定の態様及び/又は実施形態に関連する範囲を描写するために、以下の要約を考慮してはならない。従って、以下の要約は、本明細書に開示される機構に関連する1つ以上の態様及び/又は実施形態に関する特定の概念を、以下に提示される詳細な説明に先行するように簡略化された形で提示することのみを目的とする。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内のターゲットと、真空チャンバの内部真空空間内に配置された2つ以上の重なり合う放射線シールドであって、前記ターゲットの少なくとも一部を取り囲む前記2つ以上の重なり合う放射線シールドと、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドの第1放射線シールドに熱的に結合される第1冷却素子ユニットであって、前記第1放射線シールドの温度を少なくとも100K未満に低下させるように構成される、第1冷却素子ユニットと、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドの第2放射線シールドに熱的に結合される第2冷却素子ユニットであって、前記第2放射線シールドの温度を少なくとも25K未満に低下させるように構成される、第2冷却素子ユニットと、前記ターゲットに熱的に結合される第3冷却素子ユニットであって、前記第1放射線シールド及び前記第2放射線シールドの両方から熱的に絶縁され、前記ターゲットの温度を少なくとも4K未満に低下させるように構成される、前記第3の冷却素子ユニットと、を備える、超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)システムとして特徴付けることができる。
【0006】
本開示の他の実施形態は、真空チャンバの内部真空空間内に2つ以上の重なり合う放射線シールドを設け、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドは、ターゲットの周囲に少なくとも4πステラジアンの90%を被覆すること、第1冷却素子ユニットを前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうちの第1のものに熱的に結合すること、第2冷却素子ユニットを前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうち第2のものに熱的に結合すること、第3の冷却素子ユニットを前記ターゲットに熱的に結合し、前記第3冷却素子ユニットを前記第1放射線シールド及び前記第2放射線シールドから熱的に絶縁すること、前記第1放射線シールドを100K未満に冷却すること、前記第2放射線シールドを25K未満に冷却すること、前記ターゲットを4K未満に冷却すること、前記第1及び第2放射線シールドにおける1つ又は複数の開口部を通して、前記ターゲットの周囲に少なくとも4πステラジアンの90%の範囲を維持しつつ、前記ターゲットと伸長された手段とを相互作用させること、を含む、UHV又はXHVの方法として特徴付けることができる。
【0007】
開示されるいくつかの他の実施形態は、真空チャンバの内部真空空間内において2つ以上の重なり合う放射線シールドであって、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドは、ターゲットの少なくとも一部を取り囲み、それによって黒体放射の大部分が前記ターゲットに到達するのを阻止する、2つ以上の重なり合う放射線シールドと、前記第1放射線シールドの温度を100K未満に低下させる手段と、前記第2放射線シールドの温度を25K未満に低下させる手段と、前記ターゲットの温度を4K未満に低下させる手段であって、前記第1放射線シールドの温度を低下させる手段及び前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段の両方から熱的に絶縁される、前記ターゲットの温度を低下させる手段と、前記第1及び第2放射線シールド内の1つ以上の開口部を介して前記ターゲットと相互作用する手段と、を備える、UHV又はXHV用の装置として特徴付けることができる。
【0008】
(関連技術の説明)
超高真空(UHV)は約10-7パスカル又は100ナノパスカル(10-9mbar、~10-9torr)より低い圧力で特徴づけられる真空の形態(vacuum regime)であるが、極高真空(XHV)は約10-10パスカルより低い圧力で特徴づけられる真空の形態である。UHV及びXHV状態は、UHV/XHVチャンバからガスをポンプで排出することによって形成される。これらの低圧では、気体分子の平均自由行程は40kmより大きいので、気体は自由分子流に存在し、気体分子が互いに衝突する前にチャンバ壁に何回も衝突する可能性がある。従って、いくつかの態様では、ほぼすべての分子間相互作用がチャンバ内のさまざまな表面で生じる。
【0009】
UHV/XHV状態は、現代技術と同様に科学研究に不可欠である。表面科学の実験では、望ましくない吸着物が一切ない化学的に清浄な試料表面を必要とすることが多い。X線角度分解光電子分光法(X-ray angle-resolved photoemission spectroscopy)(ARPES)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、及び低エネルギーイオン散乱等の表面分析ツールは、電子又はイオンビームの伝達のためのUHV状態を必要とする。同じ理由で、大型ハドロン衝突型加速器等の粒子加速器のビームパイプ(beam pipe)はUHVに保たれる。場合によっては、MBE成長チャンバは、成長中に本来の結晶を乱すであろう汚染物質を除去するために、UHV状態を必要とする。状況によっては、量子情報の実験のためのイオントラップは、残留ガス粒子がトラップから抜け出したイオンに衝突するのを防ぐほど低くないUHVレベルによって妨害され、従って、実験の寿命が短くなる可能性がある。
【0010】
UHV/XHV状態を維持することは、しばしば、高温に耐えることができる装置のための特殊な材料の使用、並びに低い気体放出速度(out-gassing rate)及び蒸気圧を維持することを伴う。場合によっては、装置を雰囲気に通気した後、システム全体を100℃以上に長時間加熱して(「ベーキング」)、チャンバの表面に吸着する水及び他の微量ガスを除去して、運転中に材料が真空中に粒子を放出するのを防止することができる。従って、長期運転(すなわち、ベーキングなし)はまだ達成されていない。
【0011】
場合によっては、低圧(又は高真空)状態は、多くの場合、1つ又は複数のポンプをチャンバに固定し、ポンピングを介してガス粒子を除去することによって達成される。従って、圧力又は真空は、チャンバの容積にわたるポンプの数及び品質の関数であり、圧力フロア(pressure floor)は、更なるポンプの追加のために作成できるチャンバ内の穴の数及びサイズによって実用上制限される。換言すれば、所与のチャンバサイズに関して、ポンピング速度に制限がある。
【0012】
低温状態は、最も低い温度に到達するチャンバの部分の周り(例えば、試料又は実験ツール等のターゲットの周り)の1つ又は複数の放射線シールドの使用を介して、しばしば達成される。場合によっては、これらの放射線シールドを冷却(例えば、77Kまで)して、それらの熱黒体放射線を減少させ、シールド体の外部(例えば、一般的には300K付近であるチャンバ壁からの放射線をブロックすることができる。)してもよい。従って、冷却作用は、入射する熱放射から付与される熱エネルギーの対処に手を焼く必要がなく、シールドによって囲まれた体積内から熱エネルギを除去することに集中することができる。場合によっては、放射線シールドは、ターゲット又は実験ツールの冷却にも使用される同じクライオスタット(例えば、
図5参照;US5339650、US20100219832、US4765153も参照)と直接接触することによって冷却されてもよい。例えば、放射線シールドは、2段式コールドヘッド(クライオヘッドとも呼ばれる)の第1ステージに熱的に結合されてもよく、第2ステージはターゲットに熱的に結合され、第2ステージとターゲットは放射線シールドに囲まれている。しかしながら、これらの放射線シールドのうちの1つ以上が冷却素子に熱的に結合される場合、冷却素子の温度の任意の変化(例えば、ターゲットの意図的な温度走査)はシールド内に伝播され、吸着粒子による望ましくないガス放出、熱膨張による位置の不安定性、又は組み合わせをもたらし得る。
【0013】
場合によっては、分子ビームエピタキシーシステム(又はMBEs)におけるように、サンプル成長中に真空チャンバから残留ガス粒子を除去することが望ましい場合がある。これを行うために、MBEsは、液体窒素との直接的な接触を介して低温冷却(例えば、77K以下)され、真空から残留ガスを「凍結」させる1つ以上のパネルを使用することができる。換言すれば、「暖かい」ガス粒子がクライオパネルに「接触」すると、それらは凝縮してクライオパネル(cryopanel)に凍結し、それによって「暖かい」ガス粒子がチャンバから効果的に除去される。場合によっては、これらのクライオパネルは、高いガス負荷下において迅速に粒子で飽和し、真空から粒子を取り除くことができなくなるため、周期的に再生する必要があるかもしれない。いくつかの例では、再生は、クライオパネルを周期的に昇温して、凍結ガス/粒子をクライオパネル及びシステムから除去できるようにすることを含む。これは、クライオパネルが所望の真空圧力を限られた時間だけ維持できることを意味する。
【0014】
他のいくつかのケースでは、角度分解光電子分光(ARPES)ツールが、真空中に保持された低温ターゲットからの電子放出を検出するためにしばしば使用される。ターゲットはしばしば冷却されるが、ARPESツールは冷却されず、従って、ターゲットへの黒体放射及び粒子放出(例えば、不適切な真空による)の源として作用する。ターゲット(又は試料)が低温シールドされた真空チャンバ内に封入されている場合、ARPESツールの「暖かい」表面は、(a)低温ターゲットへの熱源(黒体放射を介して)として機能できる。場合によっては、この黒体放射がターゲットへの熱負荷を支配し、得られる最低のターゲット温度に影響を与える可能性がある。(b)加えて、又は代替的に、温かい分析装置内の真空レベルは極低温真空チャンバ内のものほど良好ではないため、ARPESツールは、低温ターゲットの表面に直接狙いを定めたガス汚染源として機能する可能性がある。いくつかの態様では、これは、理想的な状況と比較して、クリーンなターゲットの寿命(ターゲットが真空から非常に多くの粒子を凍結させて、ターゲットを浄化又は交換しなければならないまでの期間)を減少させる。(c)他の場合には、ARPESツールは、システム内の、例えば交換-散乱スピン検出器(exchange-scattering spin detector)内の、ある種のガスに敏感な構成要素、に向かってガス汚染源として作用することもある。
【発明の詳細な説明】
【0015】
「例示的」という語は、本明細書では、「例示的、例えば、又は図示としての役割を果たす」ことを意味するために使用され、「例示的」として本明細書に記載される任意の実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好ましい、又は有利と解釈されるとは限らない。
【0016】
現代の真空システムでは、真空チャンバと真空ポンプは、互いに取り付けられた2つの別々の装置であると考えられている。最低限の真空が必要なとき、真空ポンプは、チャコールフィン(charcoal fins)内の容積が全ての方向で15K未満で囲まれ、真空レベルがXHV圧力を達成できるクライオポンプ(cryopump)等の、利用可能な最高の排気速度と最低の到達圧力を持つタイプに選択される。この開示の背後の動機は、チャンバ壁をクライオポンプに変換することにより、クライオポンプの内部に存在する熱的及び真空状態を生成する真空チャンバを作ることである。これは、真空チャンバの内部表面積の実質的な部分、例えば、>90%、>95%、>99%を覆うクライオ冷却放射線シールド(cryo-cooling radiation shields)によって達成される。放射線シールドがチャンバ自体とほぼ同じ大きさである範囲では、内部表面のほとんどすべてがクライオポンプの内部と同様にポンピング表面となる。さらに、これらの放射線シールドは、任意の内部実験装置又はプロセスがシールド体及びチャンバから完全に切り離されるように、専用クライオスタットによって冷却することができる。チャンバ、放射線シールド、及び専用クライオスタットを単一ユニットとして見ると、真空チャンバ及び真空ポンプは、チャンバ自体がポンプになったため、もはや別個の装置ではない。
【0017】
専用かつ分離したクライオスタット(例えば、クライオヘッド又はコールドヘッド)によって冷却される放射線シールドは、77K未満にまでほとんど又はこれまで冷却されておらず、閉サイクル冷凍機を利用しておらず、UHV/XHVチャンバ内のターゲット空間を完全に包囲していない(すなわち、「完全に囲まれた」とは、ターゲットの周囲を少なくとも4πステラジアンの90%を覆うことを意味する)。
【0018】
これらの目的のために、本開示は、ターゲット又は実験ツールを冷却するために使用される冷却素子から熱的に隔離された、2つ以上の重り合う極低温冷却放射線シールドを使用するUHV又は極高真空(XHV)チャンバ用のシステム、方法及び装置に関する。換言すれば、本明細書に記載されるシステム、方法、及び装置は、チャンバの(増加したポンピング表面積を介して)ポンピング速度を増加させるために、放射線シールドを2つ以上使用するUHV又はXHVチャンバを含む。一実施形態では、2つ以上の極低温冷却放射線シールドをターゲット又は実験ツールの周囲に配置することができ、外側の放射線シールドは<77K、<70K、<50K、又は<35Kに冷却することができ、内側の放射線シールドは<20K、<15K、<4.4K、又は<4Kに冷却することができる。開示の1つの態様において、そのようなシステムは、検出器表面の冷却を助け、改善された黒体放射線シールド、改善された電気シールド、及び/又は減少した真空レベルを提供するために、粒子検出器システム(例えば、ARPESシステム)に適用され得る。
【0019】
場合によっては、77K未満(例えば、25K又は15K又は4K又は2.8K)の放射線シールドを冷却する能力によって、現行のUHVシステムが真のXHV圧力に達するのを妨げる支配的なガスである水素を含む全てのガス種の効果的なポンピングが可能になり得る。閉サイクル冷凍機を使用する利点は二つの要素がある。すなわち、より低温の第2ステージの放射線シールド上に収着材料を使用することができるため、ガス飽和を最小限に抑え、再生の頻度を減らすことができる(すなわち、収着剤パネルを再生するために必要なクライオパネルで見られる停止時間)。また、液体窒素(LN2)や液体ヘリウム(LHe)のような高価で不経済な液体の寒剤が不要になるため、従来技術よりも便利で長期的な費用対効果が高い。場合によっては、ほぼ完全な真空ポンプ(すなわち、放射線パネルは、ガス/粒子を凍結することによってポンプとして作用する)によって、ターゲット空間を完全に囲むことによって、真空チャンバが、最大排気速度、従って最低真空レベルの理論限界に到達することを可能にする。さらに、低温(例えば、4K未満)での放射線シールドにおけるこの完全な囲いはまた、ターゲットへの熱放射負荷を実質的にゼロに減少させ、ここに開示されるターゲットクライオスタットが、シールドによって積極的に冷却されるドア、シャッタ及びバッフルを介して、実験システムのための作業環境へのアクセス及び操作を依然として維持しながら、その最低基準温度(minimum base temperature)を達成することを可能にする。上述したように、「完全な囲い」は、ターゲットの周囲の4πステラジアンの少なくとも90%を覆う放射線シールドとして定義されてもよい。
【0020】
図1は、チャンバ102、放射線シールド120、専用シールドクライオスタット112、第2のクライオスタット110、試料(又はターゲット)130、及び任意選択的に実験ツール140を含む超高(UHV)又は極高真空(XHV)システム100を示す。
図2は、付加的な専用シールドクライオスタット及び付加的な放射線シールドを備えた同じUHV又はXHV真空システムを示す。試料130は、第2のクライオスタット110の「マニピュレータ」に結合することができ、それによって、第2のクライオスタット110に熱的に結合することができる。場合によっては、試料は、超電導回路、又は絶対零度又はその近傍(すなわち、~0K温度)及び/又はUHV又はXHV内で操作される任意の他の物体を含むことができる。
【0021】
図1に示すように、第2のクライオスタット110は、放射線シールド120から熱的に絶縁されてもよく、一方、専用シールドクライオスタット112は、放射線シールド120に熱的に結合されてもよい。状況によっては、このような構成により、専用シールドクライオスタット112は、第2のクライオスタット110の変化から独立して放射線シールド120の温度を制御することができる。図示の例では、試料130は、チャンバ102を介して大気から完全に隔離されてもよい。場合によっては、チャンバ102は、ステンレス鋼、ミューメタル(mu-metal)、スーパーマロイ(supermalloy)、スーパーミューメタル(supermu-metal)、又はモリブデンパーマロイ等の高透磁率材料で構成されてもよい。いくつかの例では、第2のクライオスタット110は、試料130を室温から10mK以下のオーダーの温度まで任意の温度に冷却することができる。
【0022】
図示されるように、放射線シールド120は、試料130の大部分を取り囲み、封入することができる。さらに、放射線シールド120は、第2のクライオスタット110、ロードロック(load lock)、任意の実験ツール140、観察窓、ポンプ開口部等の導入を可能にするために、1つ又は複数の開口部又は隙間を含むのが適当であるが、一実施形態では、放射線シールド120は、試料130の周囲の4πステラジアンの90%、又は95%、又は99%、又は99.5%をカバーしてもよい。
【0023】
場合によっては、専用シールドクライオスタット112は、第2のクライオスタット110から熱的に絶縁されてもよい。更に、専用シールドクライオスタット112は、放射線シールドが<77K、<70K又は<50K又は<45Kに冷却されるように放射線シールド120に結合することができる。これらの温度では、チャンバ102内の1つ以上のガス種が放射線シールド120上に凍結する可能性がある。このような場合、放射線シールド120は、分散した真空ポンプとして作用してもよい。
【0024】
図示のように、放射線シールド120は、小さな隙間(例えば、0.5”~3”)によって分離されるように、チャンバ102と同程度の大きさであってもよい。チャンバサイズに対するこの小さな隙間のアスペクト比は、好ましくは、300Kチャンバ壁から離脱するガス分子が、別の300K表面に当たるよりも、シールドに当たって凍結する可能性がはるかに高い(例えば、>75%)ように、十分に小さい(例えば、隙間/チャンバ<10%)。シールドが、あるガス種をポンピングするのに十分に冷えているならば、この小さな隙間は、それらの種のほぼ全てのガス分子を、数百又は数千の離脱後ではなく、それらの第1又は第2の離脱時にポンピングさせることを余儀なくされる。
【0025】
本開示の目的のために、放射線シールド(放射線シールド120等)は、その母材、物理的な隔離、及び表面仕上げが、周囲の300Kチャンバから試料上への熱放射を低減するように、又は、はるかに優れた真空状態、又はその両方を可能にするように、システムの周囲の有効排気速度を大きく改善するように設計されてもよいため、他のタイプの真空シールドと構造的に異なる場合がある。いくつかの例では、母材は、入射熱が急速に除去され、非常に低いベース温度を維持できるように、300K未満の温度(例えば、OFHC銅、99.999%アルミニウム等)で優れた熱伝導体となるように選択され得る。加えて、又は代替的に、シールドは、ベース温度を上昇させる可能性がある熱漏れを最小限に抑えるために、常温のチャンバから(例えば、特殊な機械的接続を介して)物理的に隔離され得る。他のいくつかの例では、表面仕上げは、外側の表面(例えば、ニッケル又は金メッキ)が高反射性になる(又は低放射率を有する)ように選択され、300K放射を可能な限り反射させることができる。反対に、内面(又は任意の表面)の一部は、吸収性が高い(例えば、黒色の仕上げ)ように選択され、任意の放射線がターゲットに向かってシステム内により深く反射するのを防止する一方、他の部分は、ターゲットへの放射率を下げるために反射的にすることもできる。クライオスタットは、本明細書に開示されるターゲット又は放射線シールドのいずれかを冷却するために使用することができる「冷却素子」の単なる一例であることに留意されたい。実施形態において、本開示において言及されるクライオスタットのうちの1つ以上は、閉サイクル(closed-cycle)とすることができる。
【0026】
本開示の関連する利点は、作業空間及び試料130を収容する冷却された放射線シールド120が、作業空間及び試料に衝突する熱放射又は「黒体」放射の劇的な低減を与えることである。これは、黒体放射のT
4スケーリングに従うため、周囲温度を300K(室温)から10Kに下げると、30
4又は810,000の係数で熱負荷を低減する。このように劇的に低減された熱負荷は、例えば、はるかに低温の到達可能な温度、極低温マニピュレータのより少ない液体ヘリウム消費、及び/又は、別個に冷却された放射線シールドを有さずに、チャンバ内の極低温マニピュレータを大幅に凌ぐ小サイズの効果的な閉サイクルマニピュレータを設計することを可能にする、別個の第2のクライオスタット110(すなわち、試料クライオスタット)のための、はるかに効果的でより簡単な設計を可能にする。このための応用には、XHV ARPES(後述され、
図12-22を参照)及び超低温試料マニピュレータを備えたSTMチャンバの開発が含まれる。
【0027】
図6は、単一冷却放射線シールドを備えたUHVチャンバの別の実施形態を示す図である。
【0028】
2つよりも多い放射線シールドを提供することができ、
図1、6、14、及び15の単一シールドの実施形態は、XHV真空レベルを達成するのに十分な低温を得られない場合があるが、単一シールド実施形態は、真空システムから除去するのに最も問題となるものの一つである水を含む最も重いガスをポンピングするのに十分な低温シールドを有することができる。ある場合には、放射線シールドに連結された閉サイクル冷却素子を使用する単一シールドの実施形態は、一部の現行のMBEシステムにおける液体窒素冷却シールドの潜在的な代替となり得る。
【0029】
他の実施形態では、
図2、3、4、7、8、9、10、及び11に見られるように、2つ以上の放射線シールドを使用することができる。そのような場合、各放射線シールドは、それ自体の冷却素子(例えば、別個の閉サイクルクライオヘッド)に熱的に結合されてもよい。例えば、
図2では、放射線シールド120、122は、それぞれクライオスタット112及び114の独立した冷却素子に熱的に結合されている。他の実施形態では、単一の2段式クライオスタット(例えば、
図3のクライオスタット112及び
図7及び
図8の閉サイクルクライオヘッド(2段式(dual-stage))を使用して、2つの放射線シールド120、122のそれぞれを冷却することができ、第2ステージ(内側放射線シールド122に接続)は、<25K、又は<15K、又は<11K、又は<4.4K、又は<4K、又は<3.5K、又は<2.8Kの温度に達する。通常、15K未満の温度ではXHVの運転につなげることができる。
【0030】
300Kでは、4πステラジアンの1%であっても、極低温の試料に向けられたものは、低温(例えば4K)である他の99%よりも優勢であり得るので、低温用途及びXHV状態の場合、サンプル移送、蒸発乾燥、観察等に使用される全ての開口ポートを、冷却シールド(図示せず)で覆うことは、有益であり得ることに留意されたい。いくつかの態様において、これらのポートは、2ピースの「クラムシェル」設計(例えば、
図9参照)を介して、閉鎖され、又は部分的に閉鎖することができ、クラムシェルの各ピースは冷却される。ある状況では、2ピースクラムシェル設計は、各ポート用の又は観察用の別個の冷却されたシャッタ、及びサファイア等の熱伝導性材料で作られた冷却された透明窓も含んでもよい。
【0031】
真空ポンプは、真空外のガスを放射線シールド上に「凍結」又は冷却トラップ(cryosorb)する効果と組み合わせることができるので、これらの実施形態のそれぞれにおいて、重なり合う放射線シールドを冷却し、それらをチャンバ内に配置し、チャンバの内壁に近づけることは、チャンバの有効なポンピング速度を最適化することができる。場合によっては、放射線シールドは、有限の表面積を有し、最終的には吸着ガスで飽和することになり、その結果、シールド上の任意の追加の衝突ガスは、もはやシールドに吸着しなくなる。いくつかの例では、例えば、放射線シールドの1つ又は複数に(例えば、内側の放射線シールドに)熱的に沈む(例えば、熱的に結合され、接着され、固着され)収着材料を加えることによって、利用可能な低温の表面積を増加させることによって、収着ガスの合計量を大幅に増加させることができる。
【0032】
1つの例では、収着材料は、例えば、材料のバルクを貫通する無数の微小空洞及び相互に接続する経路のために、高い有効表面積(例えば、グラムあたり1,000m2以上)を有する微小多孔性材料(例えば、活性ココナッツチャーコール、分子ふるい、陽極酸化アルミニウム等)であってもよい。収着材料を放射線シールドの温度まで冷却することによって、シールド体の全冷却排気面積を増加させることができる(例えば、10,000倍以上)。冷却トラップされた表面上でまだかなり移動可能であるより軽いガス(例えば、H2)の場合、これはまた、シールドが飽和するまでの時間を増加させる(例えば、同じ時間の10,000倍以上)。例えば、収着されたガスは、そのガスが捕捉される収着材料のところまで、放射線シールドの表面に沿って移動する可能性がある。
【0033】
より高い温度(例えば、77K)で作動するクライオパネルは、低温凝縮性ガス(例えば、H
2O、O
2、CO
2等)をポンピングする傾向があり、内部細孔が完全に装填される前に収着剤の表面を塞ぐので、このような「暖かい」クライオパネルは、本明細書に開示される収着材料に適合しないことに留意されたい。従って、当業者は、約77Kまで冷却されたクライオパネル上の収着材料の使用を考慮しないであろう。この課題は、本開示では、それがない場合に収着材料を詰まらせるであろう低温凝縮性ガスを凍結させる暖かい温度(例えば、<100K)に冷却された外側シールド、次いで、より低い温度(例えば、<25K、又は<15K)に冷却され、詰まりの影響を受けない間、内側シールドの表面積を大幅に増加させる収着材料に熱的に結合される内側放射線シールド、という2つの放射線シールドの使用を介して克服される。実施例は、
図7及び
図8で見ることができる。
【0034】
上述のように、収着材料が詰まることを更に防止するために、収着材料を別個の放射線シールド(例えば、
図7及び
図8の外側の放射線シールド)内に封入することができ、その結果、全ての低温凝縮性ガスが、内側シールド(例えば、
図7及び
図8の内側の放射線シールド)上の収着材料に向かってより深く移動する前に、外側の放射線シールド上に凍結する。放射線シールド上の収着材料の被覆量は、小さな部分(例えば、
図7及び8のように)からシールド全体の完全な被覆まで、任意の場所に偏向することができ、収着材料は、シールドの内面(又はシールド上の任意の場所)、シールドの外面、又は両方の組み合わせの上に配置することができる。シールド及び収着材料の配置は、極低温凝縮性ガスが内側の放射線シールドに到達する前に、全てではないとしてもほとんどの極低温凝縮性ガスを最も外側の放射線シールド上に凍結させることを可能にすることが好ましい。いくつかの例では、収着材料をシールドの最も低温の部分(例えば、
図7及び
図8のようにクライオヘッドへの接続部の近く)に熱的にシンクさせること、又はシールドの全ての部分がほぼ同じベース温度に到達する場合にはシールド全体に熱的に埋め込むことが有益であり得る。
【0035】
シールド及び収着材料のこのような配置は、
図28に模式図として示されている。真空チャンバ2809は、外側放射線シールド2806を囲み、前記外側放射線シールド2806は、内部が収着材料2812でライニングされた内側放射線シールド2802を囲む。白抜きの丸印は、低温凝縮性ガス2803(例えば、H
2O、O
2、CO
2等)を表し、塗りつぶしの丸印は、低温吸着性ガス2805(例えば、H
2、He等)を表す。低温凝縮性ガスが、バッフル、シャッター等からより深く移動できる前に、外側シールドに衝突して捕捉されるため(図示せず)、収着材料2812は低温凝縮性ガスから保護される。
【0036】
また、
図28は、任意の所与の表面から離脱するガス分子が、それらが離脱した場所から同じ表面に当たるよりも、より低温の表面に当たって凍結する可能性がはるかに高い(例えば、>75%)ように、シールド間の隙間が十分小さく(例えば、隙間/チャンバ<10%)選択されることを示す。これは、それぞれ、外側及び内側の放射線シールド2806、2802上への低温凝縮性ガス2803及び低温収着性ガス2805の両方について当てはまる。これにより、すべてのガス種に対して最大の排気速度が確保される。
【0037】
図示されるように、シールド2806、2802間の間隙は、異なるガス種及び真空レベルが主に存在する別個の真空容積も画定する。高真空容積は、低温凝縮性ガス2803が外側シールド2806を優先的に覆っていることを除いて、全ての種が存在する未焼付(un-baked)チャンバの典型である。超高真空(UHV)容積は、低温凝縮性ガス2803の大部分が除去され、一方、より軽い低温収着性ガス2805が支配的である焼付け(baked)チャンバの典型である。最も内側の極高真空(XHV)容積は、全ての種の大部分を除去した典型的な焼付けUHVチャンバよりも桁違いに低い圧力を提供する。この構造のクライオシールド及び隔離された隙間容積は、それぞれが最大限のポンピング速度を有し、真のUHV/XHVレベルを未焼成チャンバ内で達成することを可能にするので、当該技術分野で見られる特別な高温材料及び長い焼付け期間の要求が取り除かれる。
【0038】
場合によっては、2つの放射線シールドに熱的に結合されたコールドヘッドは、異なる時間に起動されてもよい。例えば、外側の放射線シールドに接続された第1コールドヘッドのスイッチを入れ、外側の放射線シールドを<100Kに冷却することができる。場合によっては、外側の放射線シールドは、真空チャンバから低温凝縮性ガスをポンプで排出することがある。さらに、収着材料を貼り付けた内側の放射線シールドに接続された第2のコールドヘッドは、第1コールドヘッドがスイッチオンされた後、又は真空チャンバ内の1つ以上の低温凝縮性ガスの分圧が閾値を下回った後、特定の持続時間でスイッチオンされてもよい。
【0039】
いくつかの例では、収着材料は、小さな固体塊又はペレット(例えば、1cm3未満)として供給することができる。このような場合、構成要素が密に充填された単層は、低温ポンピング表面積を最大にし、一方、全ての構成要素が低温状態になることも保証する。収着材料とシールドとの間の熱接触がほぼ完全になるように、陽極酸化によって、収着材料をシールドの全表面に電気化学的に塗布することができる。場合によっては、収着材料の電気化学的な塗布は、例えば、シールドが高導電率アルミニウムから作られる場合に特に有効であり得る。このような場合には、表面全体を陽極酸化し、収着剤とシールドとの間の本質的に完全な熱接触を維持しながら、収着材料として作用する多孔質表面を作り出すことができる。場合によっては、2つの放射線シールドを使用したときにXHV状態を満たすことができる。1つは他方より低温のもので、低温の内側シールドには収着材が含まれており、収着材と内側シールドは少なくとも15Kまで冷却される。
【0040】
閉サイクルコールドヘッドは、本明細書に開示される冷却素子の1つの例であり、その主要な構成要素は、膨張機、コンプレッサ、真空シュラウド、及び放射線シールドを含むことができる。場合によっては、コールドヘッドをクライオヘッドと呼ぶこともあり、2つの用語を交換可能に使用することもできる。一般にコールドフィンガー(cold finger)と呼ばれる膨張機は、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon)、パルスチューブ、又は任意の他のスタイルの極低温冷凍サイクルが行われる場所である。場合によっては、膨張機は、2本のガスライン及び電力ケーブルによってコンプレッサに接続されてもよい。いくつかの例では、ガスラインの1つは、膨張機に高圧ヘリウムガスを供給することができ、他方、他のガスラインは、膨張機から低圧ヘリウムガスを戻すことができる。このような場合、圧縮機は膨張機が所望の冷凍能力に変換するために必要なヘリウムガス流量を高圧及び低圧で供給することができる。
【0041】
場合によっては、真空シュラウドは、真空中で膨張機の低温端部を取り囲み、伝導及び対流によって生じる膨張機への熱負荷を制限することができる。場合によっては、放射線シールドは、膨張機の第1ステージによって積極的に冷却することができ、真空シュラウドから放出される室温(~300K)の熱放射から第2ステージを絶縁することができる。放射線シールドは、1つの連続的な要素であることが要求されず、内部にアクセスするための開口部を含むことができることに留意されたい。これらの開口部は、好ましくは、重なり合う構成要素(例えば、バッフル又はシャッター)を含み、暖かい真空シュラウドからより冷たい第2ステージへの直接の視線を妨げる。
【0042】
これらの主要コンポーネントに加えて、閉サイクルコールドヘッドにはいくつかのサポートシステムを伴うことができる。一般的には、実験室システムは、真空ポート及び電気フィードスルーを提供する計装機器スカート、並びに目標温度を測定及び調整するための温度コントローラを有するであろう。また、システムは、コンプレッサ用の電力、冷却水、及びターゲット空間用の1つ以上の真空ポンプを含んでもよい。
図6、
図7、及び
図8に描かれているように、真空ポンプはチャンバの一端に接続されてもよいが、閉サイクルクライオヘッドはチャンバの異なる他端に接続されてもよい。
【0043】
(荷電粒子分析装置への応用)
図12Aは、公知の半球型ARPES分析装置を示し、一方、
図12Bは、公知のタイム・オブ・フライト(TOF)ARPES分析装置を示す。いずれの場合も、分析器は、真空で囲まれたチャンバの一端に検出器を含み、ターゲットを配置できる対向端にある電極に開口部を備えたツールの長さに沿って延びる電極を含む。電極は、ターゲットを離れて電極開口部を通過する電子の動きを制御するようにバイアスされることができる。一般的なARPES分析装置は、内側及び外側のミューメタルシールドと、ステンレス鋼(又は他の材料)の真空ジャケットとを含むことができる。分析装置の電極は、互いに電気的に絶縁することができる。
【0044】
図13は、UHVチャンバに連結された公知の半球型ARPES分析装置を示す。UHVチャンバは、ターゲット及び極低温ターゲットマニピュレータ(すなわち、ターゲット又は試料をコールドヘッドに結合する)を放射線シールドと共に備えることができる。ARPES分析装置の「暖かい」表面がターゲットに及ぼす望ましくない影響を減らすために、ターゲットに隣接する放射線シールド内の開口部がしばしば最小化される。
【0045】
黒体放射を低下し、ARPES真空チャンバシステムにおいて低真空を達成する従来の試みにもかかわらず、
図1~
図11に関連して論じられているような冷却された放射線シールドの適用は、既知のARPESシステムの黒体放射及び真空圧をさらに低下することができる。特に、閉サイクル低温ヘッド(複数可)は、分析器の電極及び/又は真空ジャケット内の1つ以上の放射線シールドに連結されて、任意の既存の真空装置の有効コールドポンピング表面積を増加させることができる。更に、冷却された放射線シールドは、ターゲット及びターゲットマニピュレータ空間であるだけでなく、ARPES分析装置の内側部分全体のまわりに完全に封入された電気的「ファラデーケージ」として作用するという更なる利点を有する。これは、真空チャンバの外側から分析器に漏れる電子ノイズを減少させる。これはまた、実験システムの内部のための高安定な電子基準点を可能にする。本開示は、典型的な荷電粒子分析器としてARPES分析装置を使用するが、本開示は、任意の荷電粒子分析器システム、静電分析器、又は真空を利用する任意の他のタイプの電子分析器にも同様に適用可能である。
【0046】
図14は、極低温冷却半球型ARPES分析装置1400の実施形態を示し、
図15は、極低温冷却TOF ARPES分析装置1500の実施形態を示す。両方の実施形態は、1つ以上の分析器電極(例えば、分析器の電極1402又は分析器の電極1502)に結合された第1閉サイクル単段クライオヘッド又はコールドヘッド(例えば、クライオヘッド1401-a又はクライオヘッド1501-a)を含むことができる。ある場合には、この結合は、サファイアのブロック又は高い熱伝導率を有するが低い電気伝導率を有する任意の他の材料から構成され得る電気絶縁部品(例えば、電気遮断1403又は電気遮断1503)を介して作成することができる。場合によっては、ARPES分析装置1400及びTOF分析装置1500は、分析装置の一端(すなわち、ターゲットの反対側の端部)に検出器1405又は検出器1505を含んでもよい。場合によっては、ARPES分析装置又はTOF分析装置は、外側金属シールド1407又は1507、内側金属シールド1408又は1508、及び真空ジャケット1409又は1509も含んでもよい。
【0047】
同時に、分析装置電極が互いに絶縁されているため、各電極が同じ温度に冷却されるように、熱伝導経路(例えば、銅編組、サーマルロープ(thermal rope)、サーマルストラップ、熱バスバー(thermal busbar)1404又は1504、又は任意の他の剛性又は可撓性の熱経路)をクライオヘッド1401又はクライオヘッド1501と各種電極1402又は電極1502との間に設けることができる。いくつかの例では、熱伝導経路は、コールドヘッドと同様に、電気絶縁部品(例えば、サファイア電気遮断)を介して各電極に結合することができる。他の設定を使用して、種々の電極間で熱平衡を維持することもできるが、その間の電気的絶縁も可能である。
【0048】
場合によっては、例えば、単一のコールドヘッドが使用される場合、分析装置の半球状部分の2つの電極間に熱伝導性の経路が必要となることがある。任意に、半球のバリエーションでは、第2のクライオヘッド1401-bは、分析装置の半球状部分内の電極のいずれか又は全てに結合され得る。熱バスバー1404-bを(図示のように)使用して、第2のクライオヘッド1401-bと全ての電極との間に熱経路を備えることができる。
【0049】
図16は、2段式クライオヘッドと冷却放射線シールドとを使用する、極低温冷却半球ARPES分析装置1600の実施形態を示す。
図17は、2段式クライオヘッド及び冷却放射線シールドを使用する、極低温冷却TOF ARPES分析装置1700の実施形態を示す。ARPES分析装置1600及びTOF ARPES分析装置1700は、それぞれ、
図14及び15を参照してさらに説明されるように、ARPES分析装置1400及びTOF ARPES分析装置1500の態様を実装してもよい。
【0050】
図16の半球型ARPES分析装置は、1つ以上のクライオヘッド1601(すなわち、クライオヘッド1601-a及びクライオヘッド1601-b)、1つ以上の分析装置の電極1602、1つ以上の電気遮断1603、1つ以上の熱バスバー1604(すなわち、熱バスバー1604-a及び熱バスバー1604-b)、ARPES分析装置の一端における検出器1605、外側放射線シールド1606、外側金属シールド1607、内側金属シールド1608、及び真空ジャケット1609を含んでもよい。
【0051】
図17のTOF ARPES分析装置は、2段式クライオヘッド1701、1つ以上の分析装置の電極1702、1つ以上の電気遮断1703、熱バスバー1704、ARPES分析装置の一端の検出器1705、外側放射線シールド1706、外側金属シールド1707、内側金属シールド1708、及び真空ジャケット1709を含んでもよい。
【0052】
場合によっては、内側及び外側の金属シールドは、高透磁率シールドの例であってよく、ミューメタル、スーパーマロイ、スーパーミューメタル、モリブデンパーマロイ、又は閾値を超える比透磁率を有する任意の他の材料(例えば、比透磁率>10,000)で構成されてもよい。場合によっては、透磁率は、材料が当該材料内で磁場の形成を支持する能力(すなわち、材料が印加磁場に応じて得る磁化の程度)に関連してもよい。いくつかの態様において、高い透磁率を有する材料は、磁場を引き付け、それ自体を通して磁気エネルギーの方向を変えて、敏感な機器又は実験装置をシールドすることができる。場合によっては、配置される高透磁率シールド体は、分析装置内で非常に低い磁場レベル(例えば、<0.5μT、又は<0.1μT)を可能にしてもよく、電子のような荷電粒子の運動エネルギーの高分解能測定に極めて重要である。場合によっては、試料(又はターゲット)からの電子放出は、紫外線(UV)又はレーザー励起を介して促進され得る。
【0053】
ある場合には、冷却された外側放射線シールド1606又は外側放射線シールド1706は、外側金属シールド1607又は外側金属シールド1707及び内側金属シールド1608又は内側金属シールド1708の両方と、電極1602又は電極1702の外側に配置することができる。これらの実施形態では、外側放射線シールド1606又は1706は、第1温度(例えば、<77K)まで冷却することができるが、電極1602又は1702は、第1温度(例えば、<4K)より低い第2温度まで冷却することができる。このようにして、電極1602又は1702は、例えば、
図3、
図4、
図7~
図11に見られる冷却された内側シールドとして作用する。場合によっては、分析装置の電極1602又は1702は、低温ヘッドに熱的に結合されるので、クライオソーブションポンプ(cryosorbtion pump)として作用し得る。いくつかの他の場合では、
図7及び8を参照してさらに記載されるように、電極1602又は1702に収着材料を付加して、それらの低温ポンピング表面積を増加させてもよい。
【0054】
ある場合には、2段式クライオヘッド1601又は1701は、より複雑であるためにコストが増えるが、単一段式クライオヘッド1401又は1501と比較して、全体的により低温且つより良好な熱的及び真空性能を可能にすることができる。
【0055】
図18は、低温冷却極高真空(XHV)チャンバ1800に連結された
図16の実施形態を示す。XHVチャンバ1800に結合された半球状ARPES分析装置1816は、1つ以上のクライオヘッド1801(すなわち、クライオヘッド1801-c、及びクライオヘッド1801-d)、1つ以上の分析装置の電極1802、1つ以上の電気遮断1803、1つ以上の熱バスバー1804(すなわち、熱バスバー1804-a、及び熱バスバー1804-b)、ARPES分析装置の一端における検出器1805、外側放射線シールド1806-b、外側金属シールド1807-b、内側金属シールド1808-b、及び真空ジャケット1809を含んでもよい。さらに、XHVチャンバ1800は、1つ以上のクライオヘッド1801(すなわち、クライオヘッド1801-a、及びクライオヘッド1801-b)、外側金属シールド1807-a、内側金属シールド1808-a、外側放射線シールド1806-a、内側放射線シールド1810、ターゲット(又は試料1811)を取り囲む任意選択の放射線シールド1806-c、及び内側放射線シールド1810に付設される任意選択の収着材料1812を含んでもよい。場合によっては、内側放射線シールドに付設された任意選択の収着材料は、真空品質を最適化するように機能させてもよい。場合によっては、内側及び外側の金属シールドは、
図16を参照して説明したように、高透磁率シールドの例であってもよい。場合によっては、ARPES分析装置からの1つ以上の分析装置の電極1802は、XHVチャンバ1800内に延在してもよい。
【0056】
ある場合には、クライオヘッド1801-c及び1801-dのような2段式クライオヘッドを使用して、外側放射線シールド1806-bを第1温度まで冷却し、電極1802を第1温度よりも低い第2温度まで冷却することができる。場合によっては、荷電粒子を検出器1805に向かって導くことに加えて、電極1802は、例えば、
図3、
図4、
図7~
図11に見られる冷却された内側シールドとしても挙動し得る。
【0057】
電極1802は、XHVチャンバ1800の全体を覆わないため、第2放射線シールド1810は、XHVチャンバ1800の外側放射線シールド1806-aの内側に配置され得る。図示されるように、XHVチャンバ1800は、XHVチャンバの内側及び外側放射線シールドの両方を冷却する2段式クライオヘッド1801-aを含んでもよい。さらに、XHVチャンバは、試料1811用の別個の2段式クライオヘッド1801-bを含んでもよく、ここで、クライオヘッド1801-bの第1の「より暖かい」ステージは、試料を囲む放射線シールド1806-cに熱的に結合され、第2の「より寒い」ステージは、試料1811に熱的に結合される。
【0058】
場合によっては、XHVチャンバ1800の外側放射線シールド1806-aは、ARPES分析装置の外側放射線シールド1806-bに熱的に結合されてもよく、又は重複してもよい。例えば、そのような接続又は重複の3つの異なる詳細図が、
図18の挿入図に示されている。これらは、インターリーブ非接触接続1813、緊密嵌合重複接続1814、及びフランジ接続1815を示す。この接続で放射線漏れの低減を達成する限り、他の接続及び重複の選択も可能である。
【0059】
図19は、高透磁率(例えば、ミューメタル)シールドの1つが除去され、真空ジャケット(例えば、ステンレス鋼)の代わりに、高透磁率真空ジャケット1909が使用される、
図18上のバリエーションを示す。場合によっては、これにより、真空ジャケット1909内のシールドがより少ない層を有する、よりコンパクトなシステムを可能にし得る。場合によっては、XHVチャンバ1900に結合された半球状ARPES分析装置1916は、1つ以上のクライオヘッド1901(すなわち、クライオヘッド1901-c及びクライオヘッド1901-d)、1つ以上の分析器電極1902、1つ以上の電気遮断1903、1つ以上の熱バスバー1904(すなわち、熱バスバー1904-a、及び熱バスバー1904-b)、ARPES分析装置の一端における検出器1905、外側放射線シールド1906-b、内側金属シールド1908-b、及び高透磁率真空ジャケット1909を含んでもよい。
【0060】
さらに、XHVチャンバ1900は、1つ以上のクライオヘッド1901(すなわち、クライオヘッド1901-a、及びクライオヘッド1901-b)、内側金属シールド1908-a、外側放射線シールド1906-a、内側放射線シールド1910、ターゲット(又は試料1911)を囲む任意選択の放射線シールド1906-c、及び内側放射線シールド1910に付設される任意選択の収着材料1912を含んでもよい。場合によっては、任意選択の収着材料は、XHVチャンバ1900内の真空品質を最適化する役割を果たしてもよい。場合によっては、内側金属シールドは、
図16及び
図18を参照して説明したように、高透磁率シールドの一例であってもよい。場合によっては、ARPES分析装置1916からの1つ以上の分析装置の電極1902は、XHVチャンバ1900内に延在してもよい。
【0061】
場合によっては、ミューメタルカプラ1913等の高透磁率カプラを使用して、ARPES分析装置1916とXHVチャンバ1900との間の高透磁率(例えば、ミューメタル)のギャップをブリッジしてもよい。
【0062】
図20は、3Dスピン分解電子検出器又は3Dスピン超低速電子回折(VLEED)等の、任意選択の拡張検出器(extended detector)2005-bが利用される、
図18の別のバリエーションを示す。場合によっては、
図20のARPES分析装置及びXHVチャンバは、
図7、8、14、16、及び/又は18の態様を有してもよい。
図20は、XHVチャンバ2000に連結された半球状ARPES分析装置2016を図示し、1つ以上のクライオヘッド2001(すなわち、クライオヘッド2001-c及びクライオヘッド2001-d)、1つ以上の分析装置の電極2002、1つ以上の電気遮断2003、1つ以上の熱バスバー2004(すなわち、熱バスバー2004-a、及び熱バスバー2004-b)、ARPES分析装置2016の一端における検出器2005-a、任意選択の検出器2005-b、外側放射線シールド2006-b、外側金属シールド2007-b、内側金属シールド2008-b、及び真空ジャケット2009を含んでもよい。
【0063】
さらに、XHVチャンバ2000は、1つ以上のクライオヘッド2001(すなわち、クライオヘッド2001-a、及びクライオヘッド2001-b)、外側金属シールド2007-a、内側金属シールド2008-a、外側放射線シールド2006-a、内側放射線シールド2010-a、ターゲット(又は試料2011)を取り囲む任意選択の放射線シールド2006-c、及び内側放射線シールド2010-aに付設される任意選択の収着材料2012を含んでもよい。場合によっては、内側放射線シールドに付設された任意選択の収着材料は、真空品質を最適化するように機能してもよい。場合によっては、内側及び外側金属シールドは、
図16及び
図18を参照して説明されるように、高透磁率シールドの例であり得る。場合によっては、ARPES分析装置2016からの1つ以上の分析装置電極2002は、XHVチャンバ2000内に延在してもよい。
【0064】
場合によっては、オプションの拡張検出器2005-b内にXHV状態を有するように、追加の冷却をこのシステムに追加してもよい。特に、拡張検出器2005-bは、拡張検出器の一部であるクライオヘッド2001-e、又は半球型ARPES分析装置2016に結合されているオプションの追加のクライオヘッド2001-eのいずれかによって冷却された外側放射線シールド2006-dを含んでもよい。場合によっては、オプションの拡張検出器2005-bは、拡張検出器のクライオヘッド2001-eによって冷却される内側放射線シールド2010-bも含んでもよい。
【0065】
本開示の全体を通して、スリットを有する分析器電極(例えば、分析装置の電極1402、1502、1602、1702、1802、1902又は2002)も、クライオヘッドに熱的に結合され、<4Kに冷却されてもよく、又は他の電極と同じ温度に冷却されてもよく、また、ターゲット(又は試料)に向かって電極内を進行する黒体放射線に対する有効な放射線シールドとなることに留意されたい。
【0066】
【0067】
【0068】
図23は、
図18におけるARPESシステムの断面の斜視図であり、
図24は、この実施形態のさらなる詳細を提供する。特に、
図24は、熱バスバーの内部経路及び電気遮断の実施形態を示す。内部の硬質なバスバー及び可撓性バスバーは、さまざまなコールドヘッド構成及び数に対応するために、様々な方法で配置することができる。
【0069】
場合によっては、
図24のARPESシステムは、2段式閉サイクルクライオヘッド2401-aと、1つ以上の分析器電極2402と、熱バスバー2404-aと、熱バスバー2404-aと分析器電極2402との間の1つ以上の電気アイソレータ2403(例えば、電気アイソレータ2403-a)と、検出器2405と、外側放射線シールド2406と、内側放射線シールド2410と、外側金属シールド2407(例えば、ミューメタル)と、内側金属シールド2408(例えば、ミューメタル)と、1つ以上の可撓性熱バスバー2409(例えば、銅編組又はロープ)と、スリットカルーセル(slit carousel)2411とを含んでもよい。さらに、ARPESシステムの直線部分、すなわち、ターゲット又は試料により近い部分は、第2の閉サイクルクライオヘッド2401-b、熱バスバー2404-b、及び1つ以上の電気アイソレータ2403(例えば、電気アイソレータ2403-b)を含んでもよい。場合によっては、電気アイソレータ2403は、サファイア等の熱伝導性及び電気絶縁材料で構成されてもよい。
【0070】
図25は、単一及び複数のクライオヘッドの両方の半球状ARPES分析装置及びクライオヘッド構成の様々な例を示す。これから、開示は、多種多様な実験用の配置をカバーしようとするものであることが分かる。
【0071】
図26は、2段式冷却半球型分析装置2616を図示し、一方、
図27は、2段式冷却TOF分析装置2716を図示する。このような分析装置における主要な考慮事項は、試料での放射及び熱を最小限に抑えることである。このバリエーションは、先に示した実施形態のいくつかとほぼ同じ結果を達成するために、分析装置全体を最低温度に維持する必要がないことを認識している。従って、このバリエーションは、試料においてXHV状態を依然として維持しながら、放射線シールドだけでなくクライオヘッドの数を減らそうとするものである。これを行うために、単一の2段式クライオヘッド2601又はクライオヘッド2701が使用される。ここで、冷却器の第2ステージ(例えば、3K)は、分析装置の直線(直線)部分内の1つ又は複数の分析装置の電極2602-a又は電極2702-a、ならびにこの直線部分内の中間スリット2610-a又は2710を有する電極に熱的に結合される。第2ステージの熱バスバー2604-a又は他の熱伝導経路は、クライオヘッド2601又は2701の第2ステージを、直線部分の電極2602-a又は2702-aに熱的に結合することができる。
【0072】
検出器2605又は検出器2705に向かって、2段式クライオヘッドの第1ステージ(例えば、45K)は、スリット2610-a又は2710を有する電極の検出器側にある1つ以上の電極2602-b又は2702-bに熱的に結合することができる。この接続は、熱バスバー2604-b又は2704-bを介して行われてもよい。換言すれば、クライオヘッドの第2冷却ステージは、試料により近い1つ以上の分析器の電極(すなわち、分析器の電極2602-a又は2702-a)の第1のセットを第1の温度に冷却することができ、クライオヘッドの第1ステージは、検出器2605又は2705により近い1つ以上の分析器の電極(すなわち、分析器の電極2602-b又は2702-b)の第2のセットを、第1の温度よりも高い第2の温度に冷却することができる。クライオヘッドの第1ステージは、1つ以上の電極2602-b又は2702-bの第2のセットと、さらに、外側放射線シールド2606又は外側放射線シールド2706との両方に熱的に結合されることに留意されたい。
【0073】
このバリエーションは、スリット2610-bを有する電極(又は放射線シールド)が、半球部分からの300K放射線の大部分をブロックするとともに、半球部分から直線部分に入ろうとする大部分の粒子をポンプで送り込むので、分析装置の半球部分の電極2602-cを冷却する必要がない。
【0074】
上記の別の方法により、試料から分かるように、ほぼすべての黒体立体角が試料では遮断されるように、クライオヘッドの第2冷却ステージは、スリット2610-a又は2710を有する電極まで冷却することができる。クライオヘッドの第1ステージ(すなわち、より暖かいステージ)は、前述の実施形態のように、再び、外側放射線シールド2606又は2706を冷却することができるが、ここでは、電極2602-b又は2702-bを、スリット2610-a又は2710を有する電極と、スリット2610-b(半球型)を有する電極(又は放射線シールド)、又は検出器(タイム・オブ・ブライト型)のいずれかとの間で冷却することもできる。スリット2610-bを有する第2放射線シールドが実装される場合、第1ステージは、このシールド体に熱的に結合することもできる。この構成は、300Kの放射及び試料に当たるガス負荷のみが、(半球の変形例において)立体角が極端に低いように離間した2つの狭いスリットを通過しなければならず、TOFの変形例において試料から遠く離間した1つの狭いスリットを通過しなければならないので、この構成は、ほとんどすべての要素を冷却するのと同じくらい有効である。そのため、立体角も非常に低い。
【0075】
クライオヘッドの第1ステージと、検出器により近い1つ又は複数の電極2602-b又は2702-bの第2のセットとの間、又はスリット2610-bを有する第2放射線シールドと1つ又は複数の電極2602-b又は2702-bの第2のセットとの間の熱経路の位置は、変更することができ、
図26又は27の図示の位置と合致する必要はないことに留意されたい。
【0076】
本明細書で使用されるように、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」の表記は、「A、B、C、又はA、B及びCのいずれかの組合せ」を意味することを意図しており、開示される実施形態の前述の説明は、当業者が本開示を行うか、又は使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な改変は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に定義される一般的原理は、開示の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用されてもよい。従って、本開示は、本明細書に示される実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲に従うことが意図される。
なお、本発明の実施形態の態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)システムであって:
真空チャンバと;
前記真空チャンバ内のターゲットと;
真空チャンバの内部真空空間内に配置された2つ以上の重なり合う放射線シールドであって、前記ターゲットの少なくとも一部を取り囲む前記2つ以上の重なり合う放射線シールドと;
前記2つ以上の重なり合う放射線シールドの第1放射線シールドに熱的に結合される第1冷却素子ユニットであって、前記第1放射線シールドの温度を少なくとも100K未満に低下させるように構成される、第1冷却素子ユニットと;
前記2つ以上の重なり合う放射線シールドの第2放射線シールドに熱的に結合される第2冷却素子ユニットであって、前記第2放射線シールドの温度を少なくとも25K未満に低下させるように構成される、第2冷却素子ユニットと;
前記ターゲットに熱的に結合される第3冷却素子ユニットであって、前記第1放射線シールド及び前記第2放射線シールドの両方から熱的に絶縁され、前記ターゲットの温度を少なくとも4K未満に低下させるように構成される、第3冷却素子ユニットと;
を備える、システム。
[態様2]
前記第1冷却素子ユニット及び前記第2冷却素子ユニットは、それぞれ、1つ以上のコールドヘッド、又は単一のコールドヘッドの2つのステージを備える、態様1に記載のシステム。
[態様3]
前記2つ以上の放射線シールドが、個々に又は組み合わせて、前記ターゲットの周囲の少なくとも4πステラジアンの90%を被覆する、態様1に記載のシステム。
[態様4]
前記第2放射線シールドが、前記第2放射線シールドの内面に付着された収着材料を有し、前記収着材料は、前記第2放射線シールドの有効表面積を増加させるように構成される、態様1に記載のシステム。
[態様5]
前記第2冷却素子ユニットは、前記第2放射線シールドの温度を少なくとも15K未満に低下させるように構成される、態様4に記載のシステム。
[態様6]
前記第2冷却素子ユニットは、前記第1冷却素子ユニットがスイッチオンされた後、一定時間スイッチオンされ、前記一定時間は、少なくとも部分的に、前記真空チャンバ内の1つ又は複数のガスの分圧に基づく、態様1に記載のシステム。
[態様7]
前記第3冷却素子ユニットは、2段式閉サイクルのコールドヘッドであり、前記第3冷却素子ユニットの第1コールドヘッドは、前記ターゲットを取り囲む第3の放射線シールドに熱的に結合され、前記第3冷却素子ユニットの第2コールドヘッドは、前記ターゲットに熱的に結合される、態様1に記載のシステム。
[態様8]
前記第1コールドヘッドと前記第2コールドヘッドは、異なる時間にスイッチが入る、態様7に記載のシステム。
[態様9]
前記真空チャンバの前記内部真空空間内に配置される1つ又は複数の高透磁率シールドであって、前記1つ又は複数の高透磁率シールドは、前記第1及び第2放射線シールドを取り囲む、態様1に記載のシステム。
[態様10]
超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)の方法であって:
真空チャンバの内部真空空間内に2つ以上の重なり合う放射線シールドを設け、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドは、ターゲットの周囲に少なくとも4πステラジアンの90%を被覆すること;
第1冷却素子ユニットを前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうち第1放射線シールドに熱的に結合すること;
第2冷却素子ユニットを前記2つ以上の重なり合う放射線シールドのうち第2放射線シールドに熱的に結合すること;
第3冷却素子ユニットを前記ターゲットに熱的に結合し、前記第3冷却素子ユニットを前記第1放射線シールド及び前記第2放射線シールドから熱的に絶縁すること;
前記第1放射線シールドを100K未満に冷却すること;
前記第2放射線シールドを25K未満に冷却すること;
前記ターゲットを4K未満に冷却すること;
前記第1及び第2放射線シールドにおける1つ又は複数の開口部を通して、前記ターゲットの周囲に少なくとも4πステラジアンの90%の範囲を維持しつつ、前記ターゲットと伸長された手段とを相互作用させること、
を含む方法。
[態様11]
前記第1冷却素子ユニット及び前記第2冷却素子ユニットは、それぞれ、1つ以上のコールドヘッド、又は単一のコールドヘッドの2つのステージを備える、態様10に記載の方法。
[態様12]
前記第2放射線シールドが、前記第2放射線シールドの内面に取り付けられた収着材料を備える、態様10に記載の方法。
[態様13]
前記第2放射線シールドが、15K未満に冷却される、態様10に記載の方法。
[態様14]
前記第1冷却素子ユニット及び前記第2冷却素子ユニットは、異なる時間にスイッチが入る、態様10に記載の方法。
[態様15]
超高真空(UHV)又は極高真空(XHV)用の装置であって:
真空チャンバの内部真空空間内において2つ以上の重なり合う放射線シールドであって、前記2つ以上の重なり合う放射線シールドは、ターゲットの少なくとも一部を取り囲み、それによって黒体放射の大部分が前記ターゲットに到達するのを阻止する、2つ以上の重なり合う放射線シールドと;
第1放射線シールドの温度を100K未満に低下させる手段と;
第2放射線シールドの温度を25K未満に低下させる手段と;
前記ターゲットの温度を4K未満に低下させる手段であって、前記第1放射線シールドの温度を低下させる手段と、前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段との両方から熱的に絶縁される、前記ターゲットの温度を低下させる手段と;
前記第1及び第2放射線シールド内の1つ以上の開口部を介して前記ターゲットと相互作用する手段と、
を備える、装置。
[態様16]
前記第2放射線シールドが、前記第2放射線シールドの内面上に収着材料を備える、態様15に記載の装置。
[態様17]
前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段が、前記第2放射線シールドの温度を15K未満に低下させるように構成される、態様15に記載の装置。
[態様18]
前記第1放射線シールドの温度を低下させる手段は、前記第2放射線シールドの温度を低下させる手段を作動する前に作動される、態様15に記載の装置。
[態様19]
前記開口部が、前記ターゲットの周囲の放射線範囲の少なくとも4πステラジアンの90%を維持するように形成される、態様15に記載の装置。