IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NPW横浜株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図1
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図2
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図3
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図4
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図5
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図6
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図7A
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図7B
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図8
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図9A
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図9B
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図10
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図11
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図12
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図13
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図14
  • 特許-車両シート用のエアサスペンション装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】車両シート用のエアサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/52 20060101AFI20240404BHJP
   F16F 9/05 20060101ALI20240404BHJP
   F16F 9/50 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60N2/52
F16F9/05
F16F9/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021526616
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012887
(87)【国際公開番号】W WO2021192003
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520461602
【氏名又は名称】JAS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英昭
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0140865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/52
F16F 9/05
F16F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面側に設置されるロアフレームと、
該ロアフレームの上部に配置され、前記車両の車両シートの下部に設けられるアッパーフレームと、
前記ロアフレームと前記アッパーフレームとの間の左右側面にそれぞれ配置され、前記ロアフレームと前記アッパーフレームとに接続して前記アッパーフレームを上下移動可能に支持してなる、X字形状に交差する部材で、そのX字形状の交差部分の相互間を結ぶ軸体に枢設される一対のXリンクと、
圧縮空気の供給源からの給気と、外部への排気とによる圧力変化により前記アッパーフレームを上下に移動させるエアスプリングと、
前記供給源に連結される一端と、前記エアスプリングに連結される他端を有し、空気が通気できる通路と、前記通路に連結され、通路内の空気を外に排気できる排気通路と、前記通路を開閉する給気弁及び前記排気通路を開閉する排気弁とを有し、前記給気弁までの前記通路の部分の径と前記排気弁から外への前記排気通路の部分の径が異なり、前記左右側面の何れか一つのXリンクを形成する一方のリンク部材に設けられる給排弁体部と、
前記一方のリンク部材に設けられ、前記給気弁を開閉制御する給気制御カムと、
前記排気弁を開閉制御する排気制御カムと、
前記軸体に枢設され、前記一方のリンク部材と交差する他方のリンク部材に張設されて前記他方のリンク部材と共に回動するカム部材と、
該カム部材と一体に回動可能に前記軸体に枢設され、前記Xリンクの回動の方向に応じて前記給気制御カム又は前記排気制御カムを回動させて給気弁又は排気弁を開閉させるアーム部材と、
前記アッパーフレームを予め設定された基準高さ位置に維持する基準高さ位置維持機構と、
前記基準高さ位置を変更可能とする基準高さ位置変更機構と、
前記基準高さ位置から下限高さ位置まで前記アッパーフレームを下降させる高さ位置下降機構と
を備え、
前記基準高さ位置変更機構は、前記アーム部材を回転させるために、前記アーム部材と一体の前記カム部材に連結された第1のワイヤ部材を引っ張り又は送り出す高さ位置変更操作部を有し、
前記高さ位置変更操作部は、貫通孔を有する固定プレートと、前記貫通孔とほぼ同じ径であって、前記固定プレートの貫通孔と整合する貫通孔をもち、さらに該貫通孔を中心に一定の半径の円周にそって凹凸が形成され、前記固定プレートに固定された第1のギヤプレートと、前記両貫通孔を通過するシャフトと、前記第1のギヤプレートと対面し、前記ギヤプレートの凹凸と着脱自在に噛み合う凹凸を有する、前記シャフトに固定され、前記第1のワイヤ部材に連結された第2のギヤプレートと、前記シャフトの一端の周りに配置され、前記第1のギヤプレートの凹凸と記第二のギヤプレートの凹凸とが噛み合う一方、前記シャフトの回転により噛み合っていた各ギアの凹凸同士が隣にずれて再び噛み合うように、前記シャフトの軸線方向に前記シャフトに力を作用するバネとを有してなり、
前記第1および第2のギヤプレートの凹凸の断面形状が略台形であり、
前記高さ位置変更操作部の前記シャフトを前記バネの力に抗して回転させることで前記第2のギヤプレートが回転し、前記第2のギヤプレートに連結された第1のワイヤ部材が引っ張られ又は送り出されることによる前記カム部材を通じた前記アーム部材の回動により、前記給気制御カム又は前記排気制御カムを回動させて前記給気弁又は前記排気弁を開閉させて前記エアスプリングの圧力変化により前記アッパーフレームを上方向又は下方向に移動させて新たな所定位置を基準高さとする仕組みであり、
前記基準高さ位置維持機構は、前記アッパーフレームが予め基準高さとして設定された位置にあるときには、前記アーム部材が、前記給気制御カム及び前記排気制御カムのいずれにも作用しない中立位置にあり、前記アッパーフレームが前記基準高さより所定の距離以上に下降したときには、その下降に伴う前記Xリンクの回動により、前記アーム部材が前記給気制御カムを回動させて前記給気弁を開き、前記エアスプリングの圧力を上昇させて前記アッパーフレームを前記基準高さに戻し、また前記アッパーフレームが前記基準高さより所定の距離以上に上昇したときには、その上昇に伴う前記Xリンクの回動により、前記アーム部材が前記排気制御カムを回動させて前記排気弁を開き、前記エアスプリングの圧力を低下させて前記アッパーフレームを前記基準高さに戻す仕組みであり、
前記高さ位置下降機構は、前記給排弁体部に接続される第2のワイヤ部材の引張りによる前記給気弁を前記給気制御カムに当接させて開き、前記エアスプリングの圧力を低下させて前記アッパーフレームを下限高さ位置まで下降させる仕組みであることを特徴とする車両シート用のエアサスペンション装置。
【請求項7】
前記カム部材と前記アーム部材が一体に構成される、請求項1に記載の車両シート用のエアサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭乗者の体型等に応じて設定した基準高さ位置に自動調整可能な車両シート用のエアサスペンション装置に関し、特に搭乗者の利便性の他、操作性を向上させた多機能型の、車両シート用のエアサスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の運転を快適かつ安全に行うために、車両シートの高さを搭乗者の体型に適合した所望の位置に設定可能とし、衝撃や振動等を的確に減衰吸収させるエアサスペンション装置が車両シートに使用されている。このエアサスペンション装置は、車両シートの高さ変動に応じた弁制御により、エアスプリングに外部から空気を供給、又はエアスプリングから空気を外部に排気させることで、搭乗者の体重の軽重によらず所定の設定高さの基準位置に調整維持する機能を有するものである。
【0003】
このような高さ位置の調整維持機能を有するエアサスペンション装置は、複雑な装置構成と制御動作を伴うものが多く、コスト増を招くとともに使い勝手が悪く、迅速性、利便性に欠けていたことから、これらの点を解消すべく、本出願人により制御動作を簡便にした使い勝手の良いエアサスペンション装置が出願されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-241270公報
【0005】
【文献】特開2014-162397公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記エアサスペンション装置は、オートレベリング機能(基準高さ位置維持機能)、基準高さ位置変更機能、及びシートの下降機能を備えたものであるが、各機能を実施するためには、機能毎に給気と排気の制御弁を必要とするため、給排制御弁(エアバルブ)を2個以上備えるとともに、コンプレッサ等の給気源から接続された空気の通路となるエアチューブを、コネクタを介して二手に分けて各エアバルブに接続し、さらに各エアバルブから接続されたエアチューブを、コネクタを介して一つに連結してエアスプリングに接続する必要がある。
【0007】
そのため、エアバルブ、コネクタ及びチューブ等の部品点数、及び組付け箇所が多くなることからコストが増大するとともに、接続箇所等でのエア漏れのリスクも増大する。
【0008】
さらに、オートレベリング機能(基準高さ位置維持機能)には、安定して基準の高さに維持できることが要求され、基準高さ位置変更機能には、基準高さを速やかに設定できることが要求され、シートの下降機能には、速やかにシートが下降できることが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明が提供するのは、
車両の床面側に設置されるロアフレームと、
該ロアフレームの上部に配置され、前記車両の車両シートの下部に設けられるアッパーフレームと、
前記ロアフレームと前記アッパーフレームとの間の左右側面にそれぞれ配置され、前記ロアフレームと前記アッパーフレームとに接続して前記アッパーフレームを上下移動可能に支持してなる、X字形状に交差する部材で、そのX字形状の交差部分の相互間を結ぶ軸体に枢設される一対のXリンクと、
圧縮空気の供給源からの給気と、外部への排気とによる圧力変化により前記アッパーフレームを上下に移動させるエアスプリングと、
前記供給源に連結される一端と、前記エアスプリングに連結される他端を有し、空気が通気できる通路と、前記通路に連結され、通路内の空気を外部に排気できる排気通路と、前記通路を開閉する給気弁及び前記排気通路を開閉する排気弁とを有し、前記供給弁までの前記通路の部分の径と前記排気弁から外への前記排気通路の部分の径が異なり、前記左右側面の何れか一つのXリンクを形成する一方のリンク部材に設けられる給排弁体部と、
前記一方のリンク部材に共に設けられ、前記給気弁を開閉制御する給気制御カムと、前記排気弁を開閉制御する排気制御カムと、
前記軸体に枢設され、前記一方のリンク部材と交差する他方のリンク部材に張設されて前記他方のリンク部材と共に回動するカム部材と、
該カム部材と一体に回動可能に前記軸体に枢設され、前記Xリンクの回動の方向に応じて前記給気制御カム又は前記排気制御カムを回動させて給気弁又は排気弁を開閉させるアーム部材と、
前記アッパーフレームを予め設定された基準高さ位置に維持する基準高さ位置維持機構と、
前記基準高さ位置を変更可能とする基準高さ位置変更機構と、
前記基準高さ位置から下限高さ位置まで前記アッパーフレームを下降させる高さ位置下降機構と
を備え、
前記基準高さ位置変更機構は、前記アーム部材を回転させるために、前記アーム部材と一体の前記カム部材に連結された第1のワイヤ部材を引っ張り又は送り出す高さ位置変更操作部を有し、
前記高さ位置変更操作部は、貫通孔を有する固定プレートと、前記貫通孔とほぼ同じ径であって、前記固定プレートの貫通孔と整合する貫通孔をもち、さらに該貫通孔を中心に一定の半径の円周にそって凹凸が形成され、前記固定プレートに固定された第1のギヤプレートと、前記両貫通を通過するシャフトと、前記第1のギヤプレートと対面し、前記ギヤプレートの凹凸と着脱自在に噛み合う凹凸を有する、前記シャフトに固定され、前記第1のワイヤ部材に連結された第2のギヤプレートと、前記シャフトの一端の周りに配置され、前記第1のギヤプレートの凹凸と記第二のギヤプレートの凹凸とが噛み合う一方、前記シャフトの回転により噛み合っていた各ギアの凹凸同士が隣にずれて再び噛み合うように、前記シャフトの軸線方向に前記シャフトに力を作用するバネとを有してなり、
前記第1および第2のギヤプレートの凹凸の断面形状が略台形であり、
前記高さ位置変更操作部の前記シャフトを前記バネの力に抗して回転させることで前記第2のギヤプレートを回転させ、前記第2のギヤプレートに連結された第1のワイヤ部材を引っ張られ又は送り出すことによる前記カム部材を通じた前記アーム部材の回動により、前記給気制御カム又は前記排気制御カムを回動させて前記給気弁又は前記排気弁を開閉させて前記エアスプリングの圧力変化により前記アッパーフレームを上方向又は下方向に移動させて新たな所定位置を基準高さとする仕組みであり、
前記基準高さ位置維持機構は、前記アッパーフレームが予め基準高さとして設定された位置にあるときには、前記アーム部材が、前記給気制御カム及び前記排気制御カムのいずれにも作用しない中立位置にあり、前記アッパーフレームが前記基準高さより所定の距離以上に下降したときには、その下降に伴う前記Xリンクの回動により、前記アーム部材が前記給気制御カムを回動させて前記給気弁を開き、前記エアスプリングの圧力を上昇させて前記アッパーフレームを前記基準高さに戻し、また前記アッパーフレームが前記基準高さより所定の距離以上に上昇したときには、その上昇に伴う前記Xリンクの回動により、前記アーム部材が前記排気制御カムを回動させて前記排気弁を開き、前記エアスプリングの圧力を低下させて前記アッパーフレームを前記基準高さに戻す仕組みであり、
前記高さ位置下降機構は、前記給排弁体部に接続される第2のワイヤ部材の引張りによる前記給気弁を前記給気制御カムに当接させて開き、前記エアスプリングの圧力を低下させて前記アッパーフレームを下限高さ位置まで下降させる仕組みであることを特徴とする車両シート用のエアサスペンション装置である。
【0010】
上記構成によれば、高さ位置変更操作部のシャフトをバネの力に抗して回転させることで第2のギヤプレートが回転し、第2のギヤプレートに連結された第1のワイヤ部材の引っ張り又は送り出しによる前記カム部材を通じた前記アーム部材が回動する。前記アーム部材の回転が、前記給気制御カム又は前記排気制御カムを回動させて前記給気弁又は前記排気弁を開閉させて前記エアスプリングの圧力変化により前記アッパーフレームを上方向又は下方向に移動させて新たな所定位置を基準高さとすることができるので、搭乗者の体格等に応じた基準高さを設定することができる。
【0011】
高さ位置変更操作部のシャフトの前記第1のギヤプレートの凹凸とこれに噛み合う第二のギヤプレートの凹凸は、断面形状が略台形であるため、各プレートが隣の凹凸と順次噛み合うための角度(一度の回転の角度)を大きくとることができ、ワイヤ部材の引張り・送り出しの長さを大きく(長く)することができる。そのため、順次噛み合う回転の数を少なくして、基準高さ位置を設定することができる。
【0012】
また、前記基準高さ位置から下限高さ位置まで前記アッパーフレームを下降させる高さ位置下降機構、すなわち、前記給排弁体部に接続される第2のワイヤ部材の引っ張りによる前記給排弁体部の回動により、前記排気弁を前記排気制御カムに当接させて開き、前記エアスプリングの圧力を低下させて前記アッパーフレームを下限高さ位置まで下降させる仕組みを有する。高さ位置下降機構により搭乗者とハンドルとの間を十分にとることができるので、乗降を容易にすることができる。
【0013】
給排弁本体において、供給弁までの前記通路の部分の径と前記排気弁から外への前記排気通路の部分の径が異なる。たとえば、供給弁までの前記通路の部分の径を、排気弁から外への前記排気通路の部分の径より小さくすると(細くすると)、高さ位置変更操作部により迅速に基準高さを設定することができるが、圧縮空気の供給源からエアスプリングへの給気速度(時間当たりの空気の供給量)が減少し、アッパーフレームの急激な上昇を抑制することができる。一方、高さ位置下降機構により、エアスプリングの圧力を低下させてアッパーフレームを下限高さ位置まで下降させる際に、排気弁から外への排気通路の部分の径は大きい(太い)ため、エアスプリングからの空気の排気速度(時間当たりの空気の排気量)がより早く、そのため、アッパーフレームを下限高さ位置まで迅速に下降させ、アッパーフレームを不使用時の位置に迅速に下降させることができる。
【0014】
搭乗者が車両シートに着座したときの荷重によりアッパーフレームが下降するが、その下降に伴う前記Xリンクの回動により、アーム部材が給気制御カムを回動させて給気弁を開き、エアスプリングの圧力を上昇させて前記アッパーフレームを基準高さに戻すことができる。
【0015】
また、搭乗者の立ち上がりによる荷重の減少によりアッパーフレームが上昇したときには、その上昇に伴うXリンクの回動により、アーム部材が前記排気制御カムを回動させて前記排気弁を開き、前記エアスプリングの圧力を低下させて前記アッパーフレームを前記基準高さに戻すことができるので、搭乗者の体重の軽重によらず、アッパーフレームを予め設定された基準高さ位置に維持することができる。
【0016】
また、前記アッパーフレームの前記基準高さ位置から所定の高さ以上の上昇を制限する高さ位置上昇制限機構、すなわち、一方のリンク部材に回動可能に設けられ、端部のガイドローラがカム部材の斜面部上を転動するように弾性部材により付勢されるプレート部材と、該プレート部材と一体に回動する第1のギア部材と、他方のリンク部材に設けられる第2のギア部材とを含み、アッパーフレームが基準高さ位置から所定の高さ位置に上昇したときに、ガイドローラが前記カム部材の斜面部の端部に形成される壁部への降下により、第1のギア部材と第2のギア部材とが嵌合してアッパーフレームの上昇を停止する仕組みを有することで、アッパーフレームの所定以上の上昇を抑えられるので、ハンドルと搭乗者との間に一定の間隔を確保でき、降車時のハンドルの支障を防止できる。
【0017】
また、前記給気制御カム及び前記排気制御カムは、曲線部を有する板状部材であり、間に凹部が形成されるように前記給気制御カムと前記排気制御カムとを前記曲線部が対称となる配置で前記一方のリンク部材に枢設され、前記アーム部材の先端には回動可能なローラ部材が設けられ、該ローラ部材は、前記アッパーフレームの下降に伴う前記Xリンクの回動により前記給気制御カムが曲線部を押圧、滑動して前記給気制御カムを回動させて前記給気弁を開き、前記アッパーフレームの上昇に伴う前記Xリンクの回動により前記排気制御カムが曲線部を押圧滑動し、前記排気制御カムを回動させて前記排気弁を開き、前記アッパーフレームが前記基準高さにあるときは重ねられた前記凹部に位置して前記中立位置にあるようにする。
【0018】
また、前記一方のリンク部材又は前記他方のリンク部材の何れか一つは前記アッパーフレームに枢設され、他の一つは前記アッパーフレーム内の走行路を摺動又は回転可能なローラ部材を介して前後動可能に枢設され、前記走行路の上下壁間には前記ローラ部材の走行用の離間距離を確保するカラー部材がアッパーフレーム上に設けられる板状の補強部材を介して挿着される。
【0019】
カラー部材の挿着によりアッパーフレーム内の走行路の上下壁間隔を一定に保つことができ、ローラ部材の良好な走行を維持できる。さらに、板状の補強部材を設けることで、アッパーフレームの変形を抑え、ローラ部材の脱落防止、ガタツキの発生を抑えることができる。
【0020】
前記プレート部材及び前記第1のギア部材が一方のリンク部材に、前記第2のギア部材が他方のリンク部材に、それぞれ着脱可能に設けられているので、高さ位置上昇制限機構を容易に追加可能となる。
前記アーム部材と前記アーム部材は一体に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オートレベリング機能である高さ位置維持機構、基準高さ位置変更機構、及びシートの下降機構を備えたエアサスペンション装置を簡潔な構造で、かつ使い勝手の良い装置として提供することができ、さらに基準高さを速やかに設定でき、また、アッパーフレームの上下速度を調整でき装置として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(a)は車両シート用のエアサスペンション装置の斜視図であり、図1(b)は同エアサスペンション装置の平面図である。
【0023】
図2図2(a)は図1(b)のA-A矢視図(正面図)であり、図2(b)は図1(b)のB-B矢視図である。
【0024】
図3図3(a)は図1(b)のC-C矢視図(正面図)であり、図3(b)は図1(b)のD-D矢視図である。
【0025】
図4図4(a)は図1(b)のE-E矢視図(正面図)であり、図4(b)は図1(b)のF-F矢視図である。
【0026】
図5図5(a)は給気制御カムの正面図、図5(b)は給気制御カムの斜視図、図5(c)は排気制御カムの正面図、図5(d)は排気制御カムの斜視図、図5(e)は給気制御カムと排気制御カムとの係止状態の正面図である。
【0027】
図6図6(a)はエアバルブの正面図、図6(b)はエアバルブの斜視図、図6(c)はバルブプレートの正面図、図6(d)はバルブプレートの斜視図、図6(e)はバルブブラケットの正面図、図6(f)はバルブブラケットの斜視図、図6(g)はブラケットの正面図、図6(h)はブラケットの斜視図である。
【0028】
図7A図7A(a)はエアバルブ、バルブプレート、バルブブラケット及びブラケットを組み立てた状態の平面図、図7A(b)は同じく組み立てた状態の正面図、図7A(c)は同じく組み立てた状態の斜視図である。
【0029】
図7B図7B(a)は内部構造を示すエアバルブの断面図であり、図7B(b)は排気作動棒が押圧された結果、エアスプリングからの圧縮空気が排気弁を通り排気される状態を、図7B(c)は給気作動棒が押圧された結果、圧縮空気が給気弁を通りエアスプリングに供給される状態を示す。
【0030】
図8図8(a)はカム部材の正面図、図8(b)はカム部材の斜視図、図8(c)はアーム部材の正面図、図8(d)はアーム部材の斜視図である。
【0031】
図9A図9A(a)は(ダイヤルを外した状態の)高さ位置変更操作部の平面図であり、図9A(b)は(ダイヤルを外した状態の)高さ位置変更操作部の一部断面図であり、図9A(c)は、取り付けられる前のダイヤルの正面図である。
【0032】
図9B図9B(a)は(ダイヤルを外した状態の)高さ位置変更操作部の斜視図であり、図9B(b)は、各ギヤプレートの斜視図であり、図9B(c)は、互いに噛み合ったギヤプレートの円周方向に沿った断面を示す。
【0033】
図10図10(a)は下降装置の正面図であり、図10(b)は下降装置の作動時の正面図である。
【0034】
図11図11はエアスプリングへの給気、排気を行う管路模式図である。
【0035】
図12図12は基準高さ位置維持機構による動作を説明する装置概略図であり、図12(a)はアッパーフレームが基準高さ位置にある状態の装置概略図、図12(b)は基準高さ位置から降下した状態の装置概略図、図12(c)は基準高さ位置から上昇した状態の装置概略図である。
【0036】
図13図13は基準高さ位置変更機構による動作を説明する装置概略図であり、図13(a)はアッパーフレームが基準高さ位置にある状態の装置概略図、図13(b)は基準高さ位置から降下させた状態の装置概略図、図13(c)は基準高さ位置から上昇させた状態の装置概略図である。
【0037】
図14図14は高さ位置下降機構による動作を説明する装置概略図であり、図14(a)は下降前のアッパーフレームが基準高さ位置にある状態の装置概略図、図14(b)は下降装置を作動させて下降した状態の装置概要図、図14(c)は下降装置の作動を解除した状態の装置概要図である。
【0038】
図15図15は高さ位置上昇制限機構が作動した状態の装置概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して本発明に係る車両シート用のエアサスペンション装置の好ましい実施形態について説明する。まず車両シート用のエアサスペンション装置の構成について主として図1図11を参照しつつ説明し、さらにその動作について主として図12図15を参照しつつ説明する。
【0040】
<エアサスペンション装置の全体概略構成>
図1図11に示すように、車両シート用のエアサスペンション装置11(以下、適宜「エアサスペンション装置11」という。)は、車両の床面又は床面上のスライドレールに設置されるロアフレーム12と、ロアフレーム12の上部に配置され、車両の車両シート(図示せず)の下部に設けられるアッパーフレーム13と、ロアフレーム12とアッパーフレーム13との間の左右側面にそれぞれ配置され、ロアフレーム12とアッパーフレーム13とに接続してアッパーフレーム13を上下移動可能に支持してなる、X字形状に交差する一対のXリンク15a、15bとを備える。
【0041】
ロアフレーム12は、左右の側面側が断面U字形状の部材で、前後を板状部材により方形状に組み立てた枠体から成り、前記断面U字形状の部材の開口部がエアサスペンション装置11の内側に向けられている。
【0042】
アッパーフレーム13は、左右の側面側が断面U字形状の部材であるサイドフレーム13a、13bと、これらを接合する部材で前後側にそれぞれ位置する筒状の連結フレーム13c、13dとで方形状に組み立てられた枠体から成り、サイドフレーム13a、13bの開口部がエアサスペンション装置11の内側に向けられている。
【0043】
Xリンク15a、15bは、ロアフレーム12とアッパーフレーム13との間でそれぞれエアサスペンション装置11の左右側面側に配置されており、Xリンク15aは、外側リンク部材16aと内側リンク部材16bとが略中間の位置においてX字形状に交差する形状で(図1図4(a)参照)、Xリンク15bも同様に外側リンク部材16cと内側リンク部材16dとが略中間の位置においてX字形状に交差する形状で(図1図2(a)参照)、交差部分がそれぞれ円筒状の回動軸体20に枢設されている。
【0044】
アッパーフレーム13の高さ位置の上下変動に伴い、アッパーフレーム13を支持部材であるXリンク15a、15bをそれぞれ構成する2本のリンク部材(16a、16b)、(16c、16d)の一方が時計回り、他方が反時計回りの回動を行うことで交差角度が変動する。
【0045】
ロアフレーム12とアッパーフレーム13との間には、容器内への給気と排気とによる圧力調整によりアッパーフレーム13を上下移動させるエアスプリング18が床面上に設置されるエアスプリング下部受け部材19a上に配置されている。エアスプリング18の上部には、Xリンク15aとXリンク15bとに架設されるエアスプリング上部受け部材19bが取り付けられており、エアスプリング18の圧力変動によりエアスプリング上部受け部材19bを上下移動させてXリンク15a、15bを回動させ、アッパーフレーム13を上下移動させる仕組みである。
【0046】
Xリンク15aの外側リンク部材16aの後部側端部、及びXリンク15bの外側リンク部材16cの後部側端部は、それぞれアッパーフレーム13に枢設される連結軸体21bに連結されているが、連結軸体21bの各端部、各後部側端部を貫通して、アッパーフレーム13に枢設されている。
【0047】
外側リンク部材16aの前部側端部及び外側リンク部材16cの前部側端部は、それぞれロアフレーム12に前後移動可能に枢設される連結軸体23aに連結されている(図1図4参照)が、連結軸体23aの各端部は各前部側端部を貫通し、ロアフレーム12に移動可能に収納されている。
【0048】
また、Xリンク15aの内側リンク部材16bの後部側端部、及びXリンク15bの内側リンク部材16dの後部側端部は、それぞれロアフレーム12に枢設される連結軸体21aに連結されているが、連結軸21aの各端部は、各後部側端部を貫通して、ロアフレーム12に枢設されている。
【0049】
内側リンク部材16bの前部側端部及び内側リンク部材16dの前部側端部は、それぞれアッパーフレーム13に前後移動可能に枢設される連結軸体23bに連結されている(図1図4参照)が、連結軸体23bの各端部は各前部側端部を貫通し、アッパーフレーム13に移動可能に収納されている。
【0050】
ロアフレーム12に前後移動可能に枢設される連結軸体23aの端部、及びアッパーフレーム13の前後移動可能に枢設される連結軸体23bの端部には、それぞれローラ部材25が装着されており、ロアフレーム12及びアッパーフレーム13を構成するサイドフレーム13aの断面U字型部分の走行路をこのローラ部材25が転動又は摺動することで、連結軸体23a、23bが前後移動可能となる。
なお、上記とは逆に、連結軸体21a、21bを前後移動に枢設し、連結軸体23a、23bを枢設してもよい。
【0051】
また、ローラ部材25の走行路となるアッパーフレーム13を構成するサイドフレーム13aの上下壁間には、上下壁間の距離を一定に確保するために筒状のカラー部材26が走行路の前後の位置に、外側上部に配置した板状の補強部材27を介してボルトナットにより装着されている(図4(b)参照)。上下壁間の離間距離を一定に保つことで、アッパーフレーム13の上下壁間を走行路として転動するローラ部材25の上下の振れを防止することができる。すなわち、アッパーフレーム13の上下壁間にカラー部材を装着して組付けることによって、上下壁間の寸法の精度を上げることができ、さらには溶接等によるフレームの変形を抑え、ローラ部材25の上下のガタツキをも抑えることができる。カラー部材26は樹脂製、金属製のいずれでも良い。
【0052】
補強板27は、アッパーフレーム13の上部に載置され、上記したようにカラー部材26を装着するボルトナットで取り付けられる。板状の補強部材27を設けることで、アッパーフレームの変形をさらに抑え、ローラ部材の脱落防止、ガタツキの発生を抑えることができる。
【0053】
また、Xリンク15a、15bには、ショックアブソーバ29が取り付けられ、Xリンク15a、15bの回動運動及びアッパーフレーム13の上下運動を減衰している(図1(b)参照)。
【0054】
図1(a)に示すように、ロアフレーム12の側部側には、アッパーフレームの基準高さ位置変更機構を操作するための、ダイヤル部材31を含む高さ位置変更操作部32が取り付けられている。
【0055】
さらに、アッパーフレーム13を構成する連結フレーム13cの端部には、アッパーフレーム13を下降させる高さ位置下降機構を操作するための、レバー部材33を含む下降操作部35が取り付けられている。
【0056】
Xリンク15aを構成する2本のリンク部材のうち、一方のリンク部材である外側リンク部材16a上で、回動軸体20と連結軸体23aとの間には、エアスプリング18からの排気及びそこへの給気を行うための排気弁41及び給気弁42を収納した給排弁体部であるエアバルブ43が、その止着部材であるバルブプレート61、バルブプレート61を枢設するバルブブラケット62、及びバルブプレート61を回動させるバルブブラケット62とともに設けられている(図2(b)、図3(a)、図7Aを参照)。エアバルブ43の外側リンク部材16aへの取り付けの詳細は後述する。
【0057】
エアバルブ43には、排気弁41を作動させる排気弁作動棒51と、給気弁42を作動させる給気弁作動棒52とがエアバルブ43から回動軸体20の方向に突き出た状態に設けられている。
【0058】
更に、外側リンク部材16aには、回動により排気弁作動棒51を押圧して排気弁41を開かせる排気制御カム55と、回動により給気弁作動棒52を押圧して給気弁42を開かせる給気制御カム56とが枢着されている(図2(b)、図3(a)を参照)。
【0059】
<給気制御カム、排気制御カム>
排気制御カム55と給気制御カム56との形状、及びこれらの組合せについて図5を参照して説明する。
【0060】
排気制御カム55の正面図である図5(a)、及び同斜視図である図5(b)に示すように、排気制御カム55は、後述するアーム部材の先端にあるローラ部材が押圧移動する曲線部55aと、ローラ部材の押圧移動により回動する回動軸体が挿着される回動軸孔部55bと、回動により排気弁作動棒51を押圧して排気弁41を開かせる押圧部55cとを備えた板状部材である。
【0061】
給気制御カム56の正面図である図5(c)、及び同斜視図である図5(d)に示すように、給気制御カム56も上記排気制御カム55と同様に、曲線部56aと、回動軸孔部56bと、押圧部56cとを備えた板状部材である。
【0062】
図5(e)に示すように、排気制御カム55と給気制御カム56とは、回動軸の挿着のために回動軸孔部55b、56bを重ねて一体化して回動可能に係止される(図3(a)参照)。一体化したときに、排気制御カム55の曲線部55aと給気制御カム56の曲線部56aとの間に、両カム相互間の隙間となる凹部58が形成される。後述するように、アーム部材の先端に位置するローラ部材が排気制御カム55及び給気制御カム56の何れにも作用しない中立位置である基準高さ位置にあるときには、ローラ部材はこの凹部58に位置している。
【0063】
図5(e)に示すように排気制御カム55と給気制御カム56は、一体のカムとなり、後述するように回動の方向により排気弁作動棒51、又は給気弁作動棒52にそれぞれ作用する(図3(a)参照)。なお排気制御カム55と給気制御カム56との係止を緩めることにより排気制御カム55と給気制御カム56との相対位置を調整することができる。後述するようにXリンク15a、15bの回動とのタイミング調整を図り、排気と給気との切換えをするためである。
【0064】
<エアバルブ>
外側リンク部材16aへのエアバルブ43の取り付けについて、図3(a)、図3(b)を参照して説明する。また、エアバルブ43の外側リンク部材16aへの取り付けに使用する取り付け部品について図6図7Aを参照して説明する。
【0065】
エアバルブ43は、図6(a)及び図6(b)に示すように、排気作動棒51が上部に、給気弁作動棒52が下部に位置するようにバルブプレート61に固着される(図7A(b)、図7A(c)を参照)。
【0066】
バルブプレート61は、図6(c)及び図6(d)に示すように、エアバルブ43が固着される板状の部材であり、バルブブラケット62に対して枢設される。バルブブラケット62に固着される回動軸部63a(図2(b)参照)が回動軸孔部61aに設けられ、この回動軸部63aに対してバルブプレート61が回動可能となる。
【0067】
バルブプレート61には前記の回動を制限するためのバルブピン64(鎖線で示す)を挿着するバルブピン孔部61bが形成され(図6(c)参照)、さらに後述するブラケット65の回動を制限する壁部61cが形成されている。
【0068】
外側リンク部材16aに固着されるバルブブラケット62は、その正面図である図6(e)及びその斜視図である図6(f)に示すように、バルブプレート61の回動範囲を制限するために、バルブプレート61に装着されるバルブピン64が当接する壁部62a、62bが所定間隔をおいて対向するように形成されている。さらに、バルブプレート61の孔部61dとバルブブラケット62の突起部62cとの間を引っ張りばねであるスプリング66aが掛止され(図2(b)、図7A(b)参照)、スプリング66aの弾性力によりバルブピン64がバルブブラケット62の壁部62bに当接して(図7A(c)参照)、バルブプレート61の回動が制限されている。
【0069】
バルブブラケット62には、さらに軸状のピン部材62dが排気制御カム55と給気制御カム56との間の凹部58に位置するように固着されていて、後述するように排気制御カム55と給気制御カム56との回動を制限している(図3(a)参照)。
【0070】
ブラケット65は、その正面図である図6(g)及び斜視図である図6(h)に示すように、屈曲された板状部材であり、略中央部分に回動軸部63b(図2(b)参照)を挿着するための回動軸孔部65aと、引っ張りばねであるスプリング66bを掛止するための孔部65bと、スプリング66c(図2(b)、図3(a)を参照)の一端を掛止するための突起部65cが形成されている。スプリング66cの他端は、下降操作部35のレバー部材33を結ぶワイヤ部材68a(第2のワイヤ部材)に接続される(図3(a)を参照)。
【0071】
エアバルブ43、バルブプレート61、バルブブラケット62及びブラケット65を組み立てた状態の平面図が図7A(a)に、同正面図が図7A(b)に、同斜視図が図7A(c)に示されている。
【0072】
エアバルブ43はバルブプレート61に固着され、バルブプレート61はバルブブラケット62と回動軸63aにおいて枢設される。バルブプレート61は上記したようにバルブブラケット62との間にスプリング66aが掛止されて引っ張られ、バルブピン64が壁部62bに当接して回動が阻止されている。
【0073】
ブラケット65は、回動軸63bにおいてバルブプレート61に枢設され、両端をそれぞれスプリング66bとスプリング66cとにより引っ張られて張接されている。スプリング66cが接続されるワイヤ部材68aが結ぶ下降操作部35のレバー部材33を操作して、ワイヤ部材68aを引っ張ることで、ブラケット65が回動し、さらにバルブプレート61が回動してエアバルブ43の排気弁作動棒51が排気制御カム55の押圧部55cにより押圧されて排気弁41が開く仕組みである(図3(a)参照、詳細は後述する)。
【0074】
なお、ワイヤ部材68aを直接バルブプレート61に接続することも可能であるが、この場合ワイヤ部材68aの長さのバラツキにより下降操作に支障をきたすため、ブラケット65、スプリング66b、66cを設けて調整したものである。すなわち、ワイヤ部材68aを直接バルブプレート61に接続するとき、ワイヤ部材58aが短いとバルブプレート61を反時計回りに引っ張ることになり下降装置が常時ON状態となってしまい、またワイヤ部材68aが長すぎるとたるんで、下降操作部35のレバー部35aに必要以上の遊びが生じてしまうからである。
【0075】
排気弁51及び給気弁52を有するエアバルブ43の基本構造は、図7Bに示されているとおり、従来使用されているエアバルブと同じであるため、詳細は省略するが、本発明で使用するエアバルブ43では、さらに給気弁42側の通路内に、流量を減少させるためのオリフィス42’が組み込まれている(図7B)。オリフィス42’は通路より細い内貫通孔42”を有する。
【0076】
図11に示されているとおり、エアスプリング18の接続部45dと排気弁42側の接続部45cとの間に管44bが連結され、コンプレッサ(図示せず)が連結される接続部45aと給気弁42側の接続部45bと間にエアスプリング18からの管44aが連結されている。
【0077】
エアバルブ43において、図7Bに示されているとおり接続部45bと接続部45cの間に、空気が通気できる通路がある。この通路に連結され、通路内の空気を外に排気できる排気通路がある。通路を開閉する給気弁42と、排気通路を開閉する排気弁41が設けられている。給気弁42は、給気作動棒52が押圧されると、開き、コンプレッサから管44aを流れてきた圧縮空気は、給気弁42を通って通路を流れるが、排気弁41が閉じていると、管44bに流れ、エアスプリング18に供給される。
【0078】
給気作動棒52が押圧されていないときは、図7B(a)に示されているとおり、給気弁42が閉じているため、圧縮空気はエアスプリング18に供給されない。この状態で、図7B(b)に示されているとおり、排気作動棒51が押圧されると、排気弁41が開き、エアスプリング18からの空気が排気通路を通って外に排気される。
【0079】
<下降操作部>
高さ位置下降機構における下降操作部35は、アッパーフレーム13を構成する連結フレーム13cの端部に設けられる(図1(a)参照)。この下降操作部35の正面図を図10(a)及び図10(b)に示す。
【0080】
図10(a)は下降操作OFF時の下降操作部35の正面図で、操作用のレバー部35aは下向きの状態にある。レバー部35の先端を真上に位置するように、レバー部35をR方向に回動させると(図10(b)を参照)、ワイヤ部材68aが円盤状の巻取り部35bに巻き取られ、ワイヤ部材68aが接続されるスプリング66cを介してブラケット65を反時計方向に回動させ、バルブプレート61の壁部61cに当接する。
【0081】
ブラケット65の回動によりブラケット65がスプリング66bを介してバルブプレート61を、回動軸部63aを中心に反時計回りに回動させる。バルブプレート61の反時計回りの回動によりバルブプレート61に設けられたエアバルブ43も反時計回りに回動して排気弁41の排気弁作動棒51が排気制御カムの押圧部55cを押圧するが、排気制御カム55はピン部材62dにより反時計回りの回動が阻止されるので、排気弁作動棒51が押圧される。これにより排気弁41が開かれてエアスプリング18の圧力が低下し、アッパーフレーム13が降下する降下装置ONの状態となる仕組みである。
【0082】
アッパーフレーム13の降下によりアーム部材72が時計回りに回動してアーム部材72の先端のローラ部材71aが給気制御カム56を反時計回りに回動させても、上記したようにエアバルブ43が反時計回りに回動しているので、給気制御カム56と給気弁作動棒52とは所定の間隔が生じていることから、給気弁42を開くことができず、最下端まで降下することになる仕組みである。
【0083】
図10(b)に示すレバー部35aの先端を真下に位置するようにレバー部35aをL方向に回動させると(図10(a)参照)、ワイヤ部材68aがブラケット65側に向けて送り出される。このワイヤ部材68aの送り出しによりブラケット65を通じて反時計回りに回動していたバルブプレートが、時計回りに回動してバルブピン64(図6(d))がバルブブラケット62の壁部62b(図6(f))に当接する位置に至る。
【0084】
排気制御カムと排気弁作動棒51との押圧は解除され、排気弁が閉じる。このとき基準高さ位置よりも低い位置にあるので、アーム部材72のローラ部材72aは給気制御カム56を押圧する位置にあるので(図12(b)、図14(b))、給気弁42が開きエアスプリング18の圧力上昇によりアッパーフレーム13が基準高さ位置に向けて上昇することになる。
【0085】
<カム部材及びアーム部材>
カム部材71及びアーム部材71の形状及びその配置について、図2図3及び図8を参照して説明する。
【0086】
カム部材71の正面図が図8(a)に、その斜視図が図8(b)に示され、アーム部材72の正面図が図8(c)に、その斜視図が図8(d)に示される。また、サスペンション装置11におけるカム部材71及びアーム部材72の配置については、図2(b)、図3(a)及び図3(b)に示されている。
【0087】
カム部材71は、回動軸体20に回動可能に挿着される部材であり、一端に形成される孔部71aには、内側リンク部材16bに取り付けられた引っ張りばねのスプリング66dが掛止され(図3(b))、他端に形成される孔部71bには、高さ位置変更操作部32のダイヤル部材31と結ぶワイヤ部材68b(第1のワイヤ部材)が掛止されている(図9Aを参照)。カム部材71は、孔部71aと孔部71bとにそれぞれ引っ張り力が回動方向を逆とする向きに働くことから内側リンク部材16bに張設された状態にあり、内側リンク16bと同じ角度で回動する。
【0088】
カム部材71のアッパーフレーム13側には、曲面状の斜面部71cと、斜面部71cの端部から回動軸体20側に向けて落ち込む壁部71dが形成されている。
【0089】
図2(b)に示すように、板状部材のプレート70が回動軸70aにより外側リンク部材16aに枢設されると共に、板状ばねのスプリング66fによりカム部材71側に向けて付勢され、プレート70の先端のローラ部材70bが斜面部71cに押圧されている。
【0090】
アッパーフレーム13の上昇により、外側リンク部材16aが時計回りに回動すると、ローラ部材70bが斜面部71cを転動し、アッパーフレーム13が所定の高さに達したときに、斜面部71cを転動するローラ部材70bは、スプリング66fの付勢力の作用により壁部71dを落下する仕組みとなっている。
【0091】
図4(a)に示すように、プレート70と外側リンク部材16aとの間には、プレート70と一体に回動する板状のギア部材73が設けられており、ローラ部材70bが壁部71dで回動軸体20側に落下するときに、ギア部材73も同様に回動軸体20側に落下して、内側リンク部材16bに設けたギア部材74と相互のギア部分が歯合し、それ以上のアッパーフレーム13の上昇が制限される(高さ位置上昇制限)。
【0092】
図8(c)及び図8(d)に示すアーム部材72は、上記したカム部材71と一体となって回動軸体20を回動する構造で、カム部材の先端には円筒状のローラ部材72aが回動可能に挿着されている。
【0093】
この実施形態では、カム部材71とアーム部材72とは別部材で構成されているが、これらは一体となって回動軸体20を回動するものであるから、一つの部材として構成されてもよい。
【0094】
ローラ部材72は、アーム部材72の回動に伴い、排気制御カム55の曲線部55a及び給気制御カム56の曲線部56aを押圧しながら転動し、エアバルブ43の排気弁作動棒51及び給気弁作動棒52を押圧して排気弁41、給気弁42を開くことができる構造となっている(図3(a)、図11参照)。
【0095】
アッパーフレーム13が基準高さ位置から上昇すると、外側リンク部材16aが時計回りに回動し、内側リンク部材16bが反時計回りに回動することから、アーム部材72のローラ部材72aは排気制御カム55を回動させて排気弁作動棒51を押圧して排気弁41を開き、基準高さ位置に戻る仕組みとなっている。
【0096】
逆に、アッパーフレーム13が基準高さ位置から下降すると、外側リンク部材16aが反時計回りに回動し、内側リンク部材16bが時計回りに回動することから、アーム部材72のローラ部材72aは給気制御カム56を回動させて給気弁作動棒52を押圧して給気弁42を開き、基準高さ位置に戻る仕組みとなっている。
【0097】
アッパーフレーム13が基準高さ位置にあるときには、ローラ部材72aは排気制御カム55及び給気制御カム56の何れも押圧しない、中立的位置である凹部58に位置している(図5(e)を参照)。
【0098】
<高さ位置変更操作部>
図1(a)に示すように、回動操作によりアッパーフレーム13の基準高さ位置を変更するダイヤル部材31を備えた高さ位置変更操作部32が、Xリンク15b側のロアフレームに設けられている。
【0099】
高さ位置変更操作部32は、図9A図9Bに示されている。高さ位置変更操作部32のダイヤル部材31をL方向、又はR方向に回動させることで、ワイヤ部材68bに連結されたワイヤ部材68cを引張り又は送り出すことができるものである。
【0100】
ダイヤル部材31の回動操作により、ワイヤ部材68bが接続されるカム部材71と、カム部材71と一体に回動するアーム部材71とを回動させることで、排気制御カム55又は給気制御カム56の回動を通じてエアバルブ43の排気弁41又は給気弁42を開かせて、アッパーフレーム13を上下移動させる構造となっている。
【0101】
図9A及び図9Bに示すように、高さ位置変更操作部32は、ロアフレーム12に取り付けられ、貫通孔36aを有する固定プレート36bを備え、貫通孔36aと同径で、貫通孔36aと整合する貫通孔を有し、固定プレート36bに固定される第1のギヤプレート36cを備える。第1のギヤプレート36cは、貫通孔を中心に一定の半径の円周にそって凹凸36d(図9B(b)を参照)を有する。この凹凸36dは円周にそった断面が一連に続く略台形となっている(図9B(c)。
【0102】
シャフト36eがこれら貫通孔を貫くように設けられ、第1のギヤプレート36cと対面し、その凹凸36dと嵌合可能に噛み合う凹凸37dを有する第2のギヤプレート37cがシャフト36eに固定されている。凹凸37dも円周にそった断面が一連に続く略台形となっている。
【0103】
シャフト36eの端部と固定プレート36bとの間には、バネ36fが設けられている。凹凸37dが凹凸36dと噛み合う一方、シャフト36eの回転により、噛み合っていた各凹凸が外れて、隣にずれ再び噛み合うように、バネ36fは、シャフト36eに固定された第2のギヤプレート37cを第1のギヤプレートへと押し付けるように、シャフト36eに力を作用する。
【0104】
したがって、ダイヤル31を使用して、シャフト36cを回転させると、ギヤプレートの凹凸同士が隣へと段階的に噛み合い、第2のギヤプレート37cに設けられたブラケット37bに取り付けられたワイヤ部材68c(これに取り付けられたワイヤ部材36b)が引っ張られ、又は送りだされる。
【0105】
各凹凸の断面が略台形となっているのは、図9B(c)に示されているように、隣の凹凸と噛み合うときに、ワイヤ部材を引張り、又は送り出す量を、断面が三角形となっている場合より多くとることができ、また噛み合って接する面積が広く、“段跳び”を防止できるからである。
【0106】
第1のギヤプレート36cと第2のギヤプレート37cのそれぞれの外周には、図9B(b)に示されているように、ストッパ36s、ストッパ37sが設けられ、第2のギヤプレート37cが所定以上の回転を防止している。
【0107】
図9Aに示すように、ダイヤル部材31をL方向に回動させると、ワイヤ部材68(68b)の巻取りを通じて、アーム部材72の反時計回りの回動による排気制御カム55の回動が排気弁41を開き、また、ダイヤル部材31をR方向に回動させると、ワイヤ部材68c(68b)の巻取りを通じて、アーム部材72の時計回りの回動による給気制御カム56の回動が給気弁42を開くことで、エアスプリング18の圧力を制御してアッパーフレーム13を上方に、又は下方に移動させ、移動後の高さ位置が、基準高さ維持機構の働きにより新たな基準高さ位置となる。
【0108】
<エアスプリングへの管路>
エアスプリングへの給気とエアスプリングからの排気を行う管路の模式図が図11に示されている。図11に示されているとおり、エアスプリング18の接続部45dと排気弁41側の接続部45cとの間に管44bが連結され、コンプレッサ(図示せず)が連結される接続部45aと給気弁42側の接続部45bと間にエアスプリング18からの管44aが連結されている。
【0109】
エアスプリング18は 1上下に伸縮する容器であり、管44a、給気弁42、管44bを通じた圧縮空気の容器内への流入により上方向に拡大してエアスプリング上部受け皿19bを押し上げ、管44b、排気弁41を通じた圧縮空気の容器内からの排出により下方向に収縮してエアスプリング上部受け皿19bを低下させる構造である。
【0110】
本実施形態のエアスプリング18への管路は、一つのエアバルブ43と、2本の管44a、44b、さらに4箇所の接続部45a、45b、45c、45dにより成る簡潔な構造であり、従来の管路と比べて装置の数、管の数、接続箇所とも最小となり、コストの低減及び空気漏れのおそれの低減を図ることができる。
【0111】
次に本発明に係る車両シート用のエアサスペンション装置11の動作について、主として図12図15を参照して説明する。
【0112】
<基準高さ位置維持機構>
図12は基準高さ位置維持機構による動作を説明する装置概略図、図12(a)はアッパーフレームが基準高さ位置にある状態の装置概略図、図12(b)は基準高さ位置から降下した状態の装置概略図、図12(c)は基準高さ位置から上昇した状態の装置概略図である。
【0113】
図12(a)に示すように、車両シートの基準高さを維持するオートレベリン機能を発揮する基準高さ位置維持機構では、アッパーフレーム13が基準高さ位置にあるときは、アーム部材72の先端にあるローラ部材72aは排気制御カム55及び給気制御カム56の何れも押圧することのない中立位置である、排気制御カム55の曲線部55aと給気制御カム56の曲線部56aとの間に形成される凹部58に位置している(図3(a)、図5参照)。
【0114】
したがって、エアバルブ43の排気弁及び給気弁の何れも開いていない状態にあり、エアスプリング18の内部の圧力は変動しない。
【0115】
次に、図12(b)に示すように、車両シート(図示せず)に搭乗者が着座すると、搭乗者による荷重を受けたアッパーフレーム13は基準高さ位置から下の所定高さ位置まで下降する。このアッパーフレーム13の下降により、外側リンク部材16aは回動軸体20の回りを反時計回りに回動し、内側リンク部材16bは時計回りに回動する。
【0116】
リンク部材16bの回動に伴い、アーム部材72は時計回りに回動し、リンク部材16aの回動に伴い、排気制御カム55及び給気制御カム56は反時計回りに回動するので、アーム部材72の先端に位置するローラ部材72aは中立位置である凹部58から時計回りに回動して、給気制御カム56の曲線部56bを押圧し、給気制御カム56を、回動軸63を中心に反時計回りに回動させる(図3(a)、図5参照)。
【0117】
給気制御カム56の反時計回りの回動は、エアバルブ43の給気弁作動棒52を押圧し、給気弁52を開くので、エアスプリング18内に圧縮空気が流入して圧力が上昇する。エアスプリング18はエアスプリング上部受け皿19bを上昇させて、アッパーフレームを基準高さ位置に向けて上昇させる。
【0118】
ここで、エアバルブ43の給気弁52側のオリフィス42’によりエアスプリング18内への圧縮空気の流入量が制限されるために、アッパーフレームは緩やかに上昇する。
【0119】
アッパーフレーム13が基準高さ位置に戻るときには、外側リンク部材16aが時計回りに回動し、内側リンク部材16bが反時計回りに回動するので、これに伴い、アーム部材72が反時計回り回動し、排気制御カム55及び給気制御カム56が時計回りに回動し、ローラ部材72aが中立位置である凹部58に達したときに給気制御弁42が閉じてアッパーフレーム13の上昇が基準高さ位置で停止する。
【0120】
次に、図12(c)に示すように、搭乗者が車両シート(図示せず)から立ち上がり、搭乗者による荷重が減少したアッパーフレーム13は、エアスプリング18の反力により基準高さ位置から上の所定高さ位置まで上昇する。このアッパーフレーム13の上昇により、外側リンク部材16aは回動軸体20の回りを時計回りに回動し、内側リンク部材16bは反時計回りに回動する。
【0121】
リンク部材16bの上記回動に伴い、アーム部材72は反時計回りに回動し、リンク部材16aの上記回動に伴い排気制御カム55及び給気制御カム56は時計回りに回動するので、アーム部材72の先端に位置するローラ部材72aは中立位置である凹部58から反時計回りに回動して、排気制御カム55の曲線部55bを押圧し、排気制御カム55を、回動軸63を中心にして時計回りに回動させる(図3(a)、図5参照)。
【0122】
排気制御カム55の時計回りの回動は、エアバルブ43の排気弁作動棒51を押圧し、排気弁51を開くので、エアスプリング18内から圧縮空気が流出して圧力が減少する(図3(a)参照)。エアスプリング18はエアスプリング上部受け皿19bを下降させ、アッパーフレームを基準高さ位置に向けて下降させる。
【0123】
ここで、エアバルブ43の排気弁51には、オリフィス42’のような流量を制限するものがないため、エアスプリング18からの圧縮空気が速やかに排気され、アッパーフレームは速やかに下降する。
【0124】
アッパーフレーム13が基準高さ位置に戻るときには、外側リンク部材16aが反時計回りに回動し、内側リンク部材16bが時計回りに回動するので、これに伴い、アーム部材72が時計回り回動し、排気制御カム55及び給気制御カム56が反時計回りに回動し、ローラ部材72aが中立位置である凹部58に達したときに排気制御弁41が閉じてアッパーフレーム13の下降が基準高さ位置で停止する。
【0125】
このように、車両シートに対する搭乗者の着座、立ち上がりによる荷重の変動による車両シートの高さ変動に対して、常に基準高さ位置に戻すことで高さ位置を基準位置に維持する高さ位置維持機構による機能が発揮される。この高さ位置維持機構は、搭乗者の体重の軽重によらず、常に基準位置に維持することができる。
【0126】
<基準高さ位置変更機構>
図13は基準高さ位置変更機構による動作を説明する装置概略図であり、図13(a)はアッパーフレームが基準高さ位置にある状態の装置概略図、図13(b)は基準高さ位置から降下させた状態の装置概略図、図13(c)は基準高さ位置から上昇させた状態の装置概略図である。
【0127】
図13(a)に示すように、アッパーフレーム13が基準高さ位置にあるときは、アーム部材72の先端に位置するローラ部材72aは、排気制御カム55及び給気制御カム56の何れも押圧することのない中立位置である、排気制御カムの曲線部と給気制御カムの曲線部との間に形成される凹部58に位置している(図3(a)、図5参照)。
【0128】
アーム部材72と一体に回動するカム部材71は、その一端の孔部71aが内側リンク部材16bに設けた引っ張りばねのスプリング66dに接続され、スプリング66d方向に引っ張られ、また他端の孔部71bがワイヤ部材68bに接続している(図8参照)。このためカム部材71は内側リンク部材16bに張設された状態にある。
【0129】
上記の一端が孔部71bに接続するワイヤ部材68bは、その他端が高さ位置変更操作部32に繋がるワイヤ部材68cに接続される。
【0130】
高さ位置変更操作部32は、図9A図9Bに示されているとおり、ワイヤ部材68c(ワイヤ部材68b)をダイヤル部材31の回動により引張り、又は送り出す手段を構成する。ダイヤル部材31をL方向に回動させると、ワイヤ部材68bはブラケット36aに巻かれて、ダイヤル部材31の方向に引っ張られる。ダイヤル部材31の回動は、段階的に行われるので段階に応じた長さ分だけワイヤ部材68bが引っ張られる。
【0131】
ワイヤ部材68bがダイヤル部材31に引っ張られると、カム部材71及びアーム部材72が時計回りに回動させられ、アーム部材72の先端のローラ部材72aが中立位置の凹部58から給気制御カム56の曲線部56aを押圧する位置に至る。ローラ部材72aによる押圧により、給気制御カム56は反時計回りに回動してエアバルブ43の給気作動棒52を押圧して給気弁42を開くので、エアスプリング18内に圧縮空気が流入して圧力が上昇する(図3(a)、図11参照)。エアスプリング18はエアスプリング上部受け皿19bを上昇させ、アッパーフレーム13を上昇させる。
【0132】
アッパーフレーム13がダイヤル部材31を回動させた段数に対応する高さまで上昇すると、ローラ部材72aは給気制御カム56を押圧する位置から離れ凹部58の位置に戻るので、エアスプリング18への給気が停止して、アッパーフレーム13の上昇も停止する。このときのアッパーフレーム13の高さ位置が、基準高さ位置変更機構を作動させてなる新たな基準高さ位置となる。
【0133】
上記とは逆に、図9(b)に示すように、ダイヤル部材31をR方向に回動させると、ワイヤ部材68bはカム部材71の方向に押し出されることになる。ダイヤル部材31の回動は、段階的に行われるので段階に応じた長さ分だけワイヤ部材68bが押し出される。
【0134】
ワイヤ部材68bがカム部材71の方向に押し出されると、カム部材71及びアーム部材72が反時計回りに回動させられ、アーム部材72の先端のローラ部材72aが中立位置の凹部58から排気制御カム55の曲線部55aを押圧する位置に至る。ローラ部材72aによる押圧により、排気制御カム55は時計回りに回動してエアバルブ43の排気作動棒51を押圧して排気弁41を開くので、エアスプリング18内から圧縮空気が流出して圧力が低下する。エアスプリング18は下方に収縮してエアスプリング上部受け皿19bを降下させ、さらにアッパーフレーム13を降下させる。
【0135】
アッパーフレーム13がダイヤル部材31を回動させた段数に対応する高さまで降下すると、ローラ部材72aは排気制御カム55を押圧する位置から離れ凹部58の位置に戻るので、エアスプリング18からの排気が停止して、アッパーフレーム13の下降も停止する。このときのアッパーフレーム13の高さ位置が、基準高さ位置変更機構を作動させてなる新たな基準高さ位置となる。
【0136】
このように、基準高さ位置変更機構によると、高さ位置変更操作部32のダイヤル部材31を段階的に回動させることで、段数に応じた高さ位置にアッパーフレーム13を上昇、又は下降させて新たな基準高さ位置とすることができる。
【0137】
<高さ位置下降機構>
図14は高さ位置下降機構による動作を説明する装置概略図であり、図14(a)は下降前のアッパーフレームが基準高さ位置にある状態の装置概略図、図14(b)は下降装置を作動させて下降した状態の装置概要図、図14(c)は下降装置の作動を解除した状態の装置概要図である。
【0138】
高さ位置下降機構は、降車時の搭乗者の降車動作を円滑にするために、アッパーフレーム13を強制的に下方移動させ、シート(図示せず)とハンドル(図示せず)との十分な間隔を確保する仕組みである。また、シートとハンドルとの十分な間隔を確保することで、乗車時の動作も円滑となる。
【0139】
図10に示すように、高さ位置下降機構は、下降操作部35のレバー部35aを回動させることで作動、解除が行える仕組みである。図10(a)に示すレバー部35aの先端部をR方向に回動して、図10(b)に示すようにレバー部35aの先端部を真上に位置させると、巻取り部35bでのワイヤ部材68aの巻取りにより、ワイヤ部材68aが下降操作部35側に引っ張られる。
【0140】
図14(a)、図6(h)及び図7(b)に示すように、ワイヤ部材68aは途中に設けた引っ張りばねのスプリング66cを介してブラケット65の突起部65cに接続されている。また、ブラケット65は孔部65bがバルブプレート61の孔部61eと引っ張りばねのスプリング66bにより接続されている。ワイヤ部材68aの引っ張りにより、ブラケット65は回動軸63bを中心に反時計回りに回動するが、突起部65cがバルブプレート61の壁部61cに当接するので、バルブプレート61を、回動軸63aを中心とする反時計回りに回動させる。
【0141】
バルブブラケット62の突起部62cとバルブプレート61の孔部61dとに接合される引っ張りばねのスプリング66cの弾性力により、バルブプレート61のバルブピン64がバルブブラケット62の壁部62bを押圧している状態から、バルブピン64がバルブブラケット62の壁部62aを押圧する位置までバルブプレート61が反時計回りに回動する。
【0142】
バルブプレート61の反時計回りの回動によりエアバルブ43の排気弁作動棒51が、排気カム55の押圧部55cに当接する。このとき排気カム55はバルブブラケット62のピン部材62dに当接し、反時計回りの回動が阻止されるので、排気弁作動棒51がエアバルブ43内に押し込まれ、排気弁41が開かれる(図5図6図11図14(a)参照)。
【0143】
排気弁41が開き、図14(b)に示すように、エアスプリング18の圧力減少によりアッパーフレーム13が下降する。アッパーフレーム13の下降により、ローラ部材72aは時計回りに回動して給気制御カム56の曲線部56aを押圧して、給気制御カム56を反時計回りに回動させる(図5参照)。しかし、上記したようにバルブプレート61が反時計回りに回動した状態にあることから、給気制御カム56が半時計回りに回動してもエアバルブ43の給気弁作動棒52と所定の間隙を有するので押圧できない。そのため、排気弁41の開放状態が続き、アッパーフレームは最下端まで降下する。
【0144】
図10(b)示すように、先端部を上方に向けたレバー部35をL方向に回動させて、その先端部を下方に向けると(図10(a)参照)、ワイヤ部材68aは巻取り部35bから押し出され、高さ位置下降機構により作用が解除される。
【0145】
ワイヤ部材68aの押し出しにより、ブラケット65がバルブプレート61の壁部61dとの押圧を解除されて時計方向に回動し、さらにバルブプレート61がスプリング66cにより引っ張られ、バルブピン64がバルブブラケット62の壁部62bを押圧する位置に回動する。
【0146】
バルブプレート61の上記時計回りの回動により、排気弁作動棒51に対する排気制御カム55への押圧は解除され、半時計方向に回動した給気制御カム56の押圧部56cにより給気弁作動棒52が押し込まれ、給気弁42が開かれる。
【0147】
給気弁42の開放によりエアスプリング18に圧縮空気が流入し、アッパーフレーム13を上方に押し上げ、設定されている基準高さ位置に戻ることになる。なお、高さ位置下降機構の作動を下降途中で停止しても、設定されている基準高さ位置に戻ることになる。
【0148】
<高さ位置上昇制限機構>
高さ位置上昇制限機構は、車両シートが基準高さ位置にある時に、搭乗者が立ち上がった場合等、サスペンション装置への荷重の減少の際にエアスプリングの反力によりアッパーフレーム13が上昇するが、車両シートとハンドルとの所定間隔を保持するために、基準高さ位置からの上昇距離に制限を設けた仕組みである。
【0149】
図15は高さ位置上昇制限機構が作動した状態の装置概要図であり、本機構の主要部材であるカム部材71、プレート70、ギア部材73、74及びスプリング66fの形状、配置が図3(a)、図3(b)、図4(a)、図8(a)及び図8(b)に示される。
【0150】
図15に示すように、カム部材71の上部に位置する板状部材のプレート70が回動軸70aにおいて外側リンク部材16aに枢設され、さらに板ばねのスプリング66fによりカム部材71に向けて弾性力が付勢されているので、ローラ部材70bがカム部材71を押圧した状態で当接している。
【0151】
さらにプレート70と外側リンク部材16aとの間に、プレート70と一体に回動するギア部材73が設けられている(図4(a)参照)。
【0152】
図15に示すように、搭乗者の立ち上がり等でアッパーフレーム13(図示せず)が基準高さ位置から上昇すると、Xリンク15a、15bの回動によりローラ部材70aは、カム部材71の斜面部71cを壁部71dに向かって押圧走行を開始する(図8(a)、図8(b)参照)。アッパーフレーム13が基準高さ位置から所定の高さまで上昇したときに、ローラ部材70aが斜面部71cから壁部71へと落下し、プレート70が回動軸70aを中心に時計回りに回動する。
【0153】
このときプレート70と一体に回動するギア部材73も同様に時計回りに回動し(図4(a)参照)、内側リンク部材16で回動軸体20の周囲に円弧状に設けたギア部材74とギア部材73とがギア部が噛合うので、Xリンク15aの回動が停止し、アッパーフレーム13の上昇も停止する。
【0154】
アッパーフレーム13の上昇が停止した後は、図15に示すように、基準高さ位置より上に上昇しているため、アーム部材72のローラ部材72aが排気制御カム55を押圧する位置にあることから、基準高さ位置維持機構の働きにより、排気弁が開いてアッパーフレーム13は設定された基準高さ位置に戻ることになる。
【0155】
高さ位置上昇制限機構は、基準高さ位置変更機構により基準高さを変更しても、基準高さからの高さ制限距離は同一である。設定された基準高さから所定の距離上昇したときに上昇制限がかかる仕組みである。なお、カム部材71の斜面部71cと壁部71dの形状、サイズを変更することで制限する高さ距離を変更することができる。
【0156】
上記した高さ位置上昇制限機構は、シートの必要以上の上昇を抑える機能を有するもので、緊急降車時に搭乗者がハンドルとシートとの間に挟まれるのを防止できる。
【0157】
なお、高さ位置上昇制限機構の主要部品であるギア部材、プレート等は着脱可能な部品であり、高さ位置上昇制限機構が不要なサスペンション装置では装着不要なため、コストの低下に寄与することができる。
【符号の説明】
【0158】
11 車両シート用のエアサスペンション装置
12 ロアフレーム
13 アッパーフレーム
15a、15b Xリンク
16a、16c 外側リンク部材
18 エアスプリング
20 回動軸体
21a、21b 連結軸体
23a、23b 連結軸体
31 ダイヤル部材
32 高さ位置変更操作部
35 下降操作部
35a レバー部
41 排気弁
42 給気弁
42’ オリフィス
43 エアバルブ
51 排気弁作動棒
52 給気弁作動棒
55 排気制御カム
56 給気制御カム
68a ワイヤ部材(第2のワイヤ部材)
68b ワイヤ部材(第1のワイヤ部材)
71 カム部材
72 アーム部材
72a ローラ部材
61 バルブプレート
62 バルブブラケット
65 ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15