(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ドローン及びドローンの制御方法
(51)【国際特許分類】
B64D 45/00 20060101AFI20240404BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240404BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240404BHJP
B64U 10/16 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
B64D45/00 A
B64C39/02
B64C27/08
B64U10/16
(21)【出願番号】P 2022515164
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016865
(87)【国際公開番号】W WO2021210163
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0246304(US,A1)
【文献】特開2018-197045(JP,A)
【文献】特表2017-504881(JP,A)
【文献】特開2019-142441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0179344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 45/00
B64U 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンであって、
本体と、
複数の回転翼と、
前記複数の回転翼を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記ドローンの姿勢を水平から所定の角度傾けた傾斜飛行をしている場合に、高さ方向において下側に位置する回転翼の推力と上側に位置する回転翼の推力とに基づいて、前記ドローンの重心位置を算出することにより、重心位置関連情報を取得し、
取得された前記重心位置関連情報が、予め定められた所定条件を満たさない場合に、通知の出力又は飛行の停止の少なくともいずれかを行う
ドローン。
【請求項2】
前記複数の回転翼のうち、発生推力が最小の回転翼の最小推力と発生推力が最大の回転翼の最大推力との差分が所定の値以上異なる場合に、取得された前記重心位置関連情報が前記所定条件を満たさないと判定する
請求項
1に記載のドローン。
【請求項3】
前記複数の回転翼のうち、任意の回転翼の推力の差が所定の範囲を逸脱する場合に、取得された前記重心位置関連情報が前記所定条件を満たさないと判定する
請求項
1に記載のドローン。
【請求項4】
さらに前記ドローン
の姿勢角に基づいて、前記重心位置を算出する請求項
1に記載のドローン。
【請求項5】
前記下側に位置す
る回転翼の推力と上側に位置す
る回転翼の推力との差の値が、通常使用状態におけるそれぞれの差の値よりも大きい場合に、前記重心位置関連情報が前記所定条件を満たさないと判定する
請求項
1又は
4に記載のドローン。
【請求項6】
前記下側に位置す
る回転翼は前記ドローンの進行方向に対して前側
の回転翼であり、前記上側に位置す
る回転翼は前記ドローンの進行方向に対して後ろ側
の回転翼である
請求項1
又は4に記載のドローン。
【請求項7】
前記複数の回転翼の推力は、前記複数の回転翼を回転させる推進器の出力、又は前記推進器への供給電力に基づいて算出される請求項1
又は4に記載のドローン。
【請求項8】
前記ドローンの通常使用状態における通常重心位置は、前記ドローンを初期飛行させる場合に算出され、前記ドローンの記憶部に記憶される請求項1
又は4に記載のドローン。
【請求項9】
前記ドローンの通常使用状態とは、前記ドローンが飛行するためにあらかじめ備え付けられた構成以外何も積載しない状態、又は当該状態に加えて前記ドローンに備えられた液体物タンクに液体物を積載した状態、のいずれかである
請求項1
又は4に記載のドローン。
【請求項10】
ドローンの制御方法であって、
前記ドローンは、
本体と、
複数の回転翼と、
前記複数の回転翼を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記ドローンの姿勢を水平から所定の角度傾けた傾斜飛行をしている場合に、高さ方向において下側に位置する回転翼の推力と上側に位置する回転翼の推力とに基づいて、前記ドローンの重心位置を算出することにより、重心位置関連情報を取得し、
取得された前記重心位置関連情報が、予め定められた所定条件を満たさない場合に、通知の出力又は飛行の停止の少なくともいずれかを行う
ドローンの制御方法。
【請求項11】
ドローンの制御プログラムであって、
前記ドローンは、
本体と、
複数の回転翼と、
前記複数の回転翼を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部に、
前記ドローンの姿勢を水平から所定の角度傾けた傾斜飛行をしている場合に、高さ方向において下側に位置する回転翼の推力と上側に位置する回転翼の推力とに基づいて、前記ドローンの重心位置を算出することにより、重心位置関連情報を取得するステップと、
取得された前記重心位置関連情報が、予め定められた所定条件を満たさない場合に、通知の出力又は飛行の停止の少なくともいずれかを行うステップと、
を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン及びドローンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2019-64544号公報(特許文献1)がある。この公報には、「空中散布装置11(無人飛行体システム10)は、1以上のドローン(無人飛行体)14と、1以上のドローン14の少なくとも1つに有線接続される地上のステーション12と、を含む。ドローン14は、ステーション12又は他のドローン14に接続されるドローン側ケーブル86と、ドローン側ケーブル86の繰り出し又は引き込みを行うドローン側ケーブル機構部108と、を備える。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、散布剤を散布するドローンが記載されている。しかしながら、本特許文献1はステーションから常に給電及び燃料を補充可能な構成であり、想定されていない物体が積載されて輸送されるリスクを考慮していなかった。
そこで、本発明は、ドローンの通常使用状態とは異なる物体の積載を管理する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、ドローンであって、本体と、複数の回転翼と、前記複数の回転翼を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記複数の回転翼の推力、又は前記複数の回転翼の推力の差分、又は前記ドローンの重心位置の少なくともいずれかを含む重心位置関連情報を取得し、取得された前記重心位置関連情報が、予め定められた所定条件を満たさない場合に、通知の出力又は飛行の停止の少なくともいずれかを行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ドローンの通常使用状態とは異なる物体の積載を管理する仕組みを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】ドローンの制御機能を表したブロック図の例である。
【
図7】ドローン管理システム700全体の接続構成図の例である。
【
図8】モバイル端末701に表示される圃場情報表示画面800の例である。
【
図9】モバイル端末701に表示されるドローン操作画面900の例である。
【
図10】モバイル端末701のハードウェア構成の例である。
【
図11】管理サーバ702のハードウェア構成の例である。
【
図12】管理端末703のハードウェア構成の例である。
【
図19】スケジュール管理情報1900の例である。
【
図20】物体積載有り又は無しの場合のホバリング飛行時の状態を示す左側側面図の例である。
【
図21】物体積載有り又は無しの場合のホバリング飛行時の回転翼の推力を示すグラフの例である。
【
図22】中央からずれた場所に物体が積載された場合のホバリング飛行時の状態を示す左側側面図の例である。
【
図23】中央から前方にずれた位置に物体が積載された場合のホバリング飛行時の回転翼の推力を示すグラフの例である。
【
図24】物体積載有り又は無しの場合の傾斜飛行時の状態を示す左側側面図の例である。
【
図25】物体積載有り又は無しの場合の傾斜飛行時の回転翼の推力を示すグラフの例である。
【
図26】フライト判定処理フロー2600の例である。
【
図27】別のフライト判定処理フロー2700の例である。
【
図28】ホバリング飛行中の複数の回転翼の推力によるフライト判定処理フロー2800の例である。
【
図29】重心が機体の中央にある場合のドローンの重量と推力の関係を示すグラフの例である。
【
図30】重心が機体の前方にある場合のドローンの重量と推力の関係を示すグラフの例である。
【
図31】ホバリング飛行中の複数の回転翼の推力による別のフライト判定処理フロー3100の例である。
【
図32】離陸時の各脚にかかる圧力によるフライト判定処理フロー3200の例である。
【
図33】等速移動飛行中の複数の回転翼の推力によるフライト判定処理フロー3300の例である。
【
図34】等速移動飛行中の複数の回転翼の推力による別のフライト判定処理フロー3400の例である。
【
図35】重心位置の算出方法を説明する図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
ドローンは、農機の例である。本明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【実施例1】
【0009】
図1は、ドローンの平面図の例である。
図2は、ドローンの正面図の例である。
図3は、ドローンの右側面図の例である。
図4は、ドローンの背面図の例である。
図5は、ドローンの斜視図の例である。
【0010】
回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は
図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0011】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機であるが発動機等であってもよい)であり、1つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(例えば101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(例えば102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
【0012】
図2、および、
図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0013】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、水などの圃場に散布される液体、粉体又は微粒子である。
【0014】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する。薬剤ホースは硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0015】
図6は、ドローンの制御機能を表したブロック図の例である。
フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリ、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、モバイル端末701から受信した入力情報、および、後述の各種センサから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサ等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0016】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、モバイル端末701上、または、管理サーバ702上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0017】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局710を介してモバイル端末701とやり取りを行ない、必要な指令をモバイル端末701から受信すると共に、必要な情報をモバイル端末701に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止するようにしてもよい。基地局710は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。なお、フライトコントローラー501、基地局710、モバイル端末701間の通信はWi-Fiではなく、LTE等のモバイルネットワークを用いる場合もある。
【0018】
6軸ジャイロセンサ505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する。さらに、加速度の積分により速度を計算する。6軸ジャイロセンサ505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する。地磁気センサ506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する。気圧センサ507は、気圧を測定し、間接的にドローンの高度を測定することもできる。レーザーセンサ508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定するものであり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。
【0019】
ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する。これらのセンサ類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサ(角速度センサ)、風力を測定するための風力センサなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサ類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0020】
流量センサ510は薬剤の流量を測定するものであり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサ511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサである。マルチスペクトルカメラ512は圃場720を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513は障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。
【0021】
スイッチ514はドローン100の使用者が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサ515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサである。なお、障害物接触センサ515は、6軸ジャイロセンサ505で代用してもよい。カバーセンサ516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサである。
【0022】
薬剤注入口センサ517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサである。これらのセンサ類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択されてもよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局710、モバイル端末701、または、その他の場所にセンサを設けて、読み取った情報をドローン100に送信してもよい。たとえば、基地局710に風力センサを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0023】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0024】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519はモバイル端末701とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピュータ等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、フライトコントローラー501、モバイル端末701、基地局710の各機器間の通信は、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。
【0025】
スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0026】
図7は、ドローン管理システム700全体の接続構成図の例である。
ドローン管理システム700は、ドローン100、モバイル端末701、管理端末703及び基地局710を備え、それぞれがネットワークを介して管理サーバ702に接続されている。なお、ネットワークは有線、無線を問わず、それぞれの端末はネットワークを介して情報を送受信することができる。
ドローン100及びモバイル端末701は圃場720において基地局710を介して通信を行うことが可能であり、ドローン100が薬剤の散布フライトを行う。
【0027】
ネットワークは1つの通信規格により通信するネットワークでもよいし、複数の通信規格網が組み合わされたネットワークであってもよい。例えば、ドローン100とモバイル端末701はそれぞれ基地局710が提供するWi-Fiによりネットワーク接続されてもよいし、ドローン100とモバイル端末701はそれぞれLTE等の携帯通信網によりネットワーク接続されてもよい。また、ドローン100が基地局710により提供されるWi-Fiにより接続され、基地局710とモバイル端末701は携帯通信網により接続される構成としてもよい。
【0028】
モバイル端末701は使用者の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(例えば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示する。例えばタブレット端末やスマートフォン等の携帯情報機器によって実現される。ドローン100は管理サーバ702からの指示により自律飛行を行なうが、モバイル端末701により、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作を行うことができる。モバイル端末701は、基地局710と接続されており、基地局710を介して、若しくは直接管理端末703と通信を行うことができる。
【0029】
管理サーバ702は、例えばクラウド上に配置されたサーバであり、圃場管理情報1300に基づいてドローン100の散布飛行ルートを算出し、ドローン100の自立飛行を制御する。また、ドローン100に搭載されたカメラや各種センサから取得された情報を収集し、圃場や作物の状態等、様々な分析を行うことができる。
管理端末703は、管理サーバ702を操作する端末であり、管理サーバ702の各種設定を行う。また、ドローン100やモバイル端末701を制御することも可能である。
【0030】
基地局710は、圃場720に設置され、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっている(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局710は、3G、4G、およびLTE等の携帯通信網を用いて、管理サーバ702と通信可能である。
【0031】
ドローン管理システム700のそれぞれの端末や管理サーバ702は、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末(モバイル端末)でもよいし、メガネ型や腕時計型、着衣型などのウェアラブル端末でもよい。また、据置型または携帯型のコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよい。また、機能としてはVR(仮想現実:Virtual Reality)端末、AR端末、MR(複合現実:Mixed Reality)端末でもよい。あるいは、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能し得る。またこれら以外の情報処理端末であってもよい。
【0032】
ドローン管理システム700のそれぞれの端末や管理サーバ702は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサ(制御部)と、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力、カメラ部の撮像による動き検知による入力などの入力装置と、モニタやディスプレイ等の出力装置とを備える。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0033】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサが実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、これらの各モジュールは集積化する等によりハードウェアで実装してもよい。また、各モジュールはそれぞれ独立したプログラムやアプリケーションでもよいが、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。
【0034】
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載をしているが、実際には各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)を処理するプロセッサが処理を実行する。
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XML、JSONなどのテキストファイルでもよい。
モバイル端末701を情報処理装置と呼ぶこともあるし、管理サーバ702を情報処理装置と呼ぶこともある。
【0035】
図8は、モバイル端末701に表示される圃場情報表示画面800の例である。
モバイル端末701の画面表示モジュール1011は、モバイル端末701に記憶された地図情報1200及び圃場管理情報1300を取得し、圃場情報表示画面800を生成して、画面等の出力装置1005に出力する。
なお、画面表示モジュール1011は、管理サーバ702に記憶された地図情報1200や1200及び圃場管理情報1300をネットワーク経由で取得して、圃場情報表示画面800を生成する構成であってもよい。
【0036】
圃場情報表示画面800の背面には地
図801が表示されており、その中で圃場の情報が圃場管理情報1300に記憶されている圃場802、803、804に、情報が登録されていることを示すアンカー805が表示されている。
圃場とは、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。圃場は、薬剤散布の対象エリアの1つの例である。
【0037】
画面表示モジュール1011は、画面のタップなどにより入力装置1004を介してユーザから圃場802の選択を受け付けると、圃場802に対応する情報を、圃場管理情報1300から取得し、圃場情報表示領域810に表示する。また画面表示モジュール1011は、選択された圃場802の周囲を明るい色の太線に変更するなど、圃場802が選択されていることを示すハイライト表示を行う。
【0038】
圃場情報表示領域810には、圃場名811、住所812、面積813、作付作物名814等、圃場管理情報1300から取得される情報が表示される。
散布情報表示領域820には、薬剤の散布に関連する情報が表示される。作付作物名814や散布時期などによって散布される薬剤は変わり、近い時期に散布すべき薬剤情報を薬剤管理情報1600から取得して表示する。
散布情報表示領域820には、管理サーバ702の散布関連情報管理モジュール1114が取得または算出した薬剤の散布に関連する情報、例えば圃場の散布フライトに必要な薬剤名、散布量、希釈量、エネルギー量などを表示する。
状態830には、選択された圃場802に対する現在の状態として、例えば、「測量済」、「飛行経路あり」などの情報が表示される。
最新飛行日時840には、最新の散布フライト日時の情報が表示される。
飛行ステータス表示欄850には、ドローンの散布飛行の現在のステータスが表示される。
【0039】
コンパス861は、地
図801が表示している方位を示す。
圃場全体表示ボタン862が選択されると、画面表示モジュール1011は、選択された圃場が画面いっぱいになるように表示の縮尺を変更する。
現在地移動ボタン863が選択されると、画面表示モジュール1011は、モバイル端末701のGPSにより取得された現在地が画面の中心になるように表示を変更する。
スケジュール表示ボタン870が選択されると、画面表示モジュール1011は、当日の薬剤散布スケジュールを表示する。
【0040】
図9は、モバイル端末701に表示されるドローン操作画面900の例である。
ドローンバッテリー表示901にはドローンの現在のバッテリー残量が表示される。
ドローン位置902には、ドローン100の現在の位置情報が表示される。
散布フライト進捗情報912には、現在の散布フライトの進捗情報が表示される。例えば散布フライトの飛行ルートの進捗状況や、散布薬剤の残量、バッテリー残量等が表示される。
飛行ステータス表示欄921には、ドローン100の散布飛行の現在のステータスが表示される。
メッセージ表示欄922には、ドローン100との通信内容や飛行状態等を示すメッセージが表示される。
【0041】
高度変更ボタン923、924は、ドローン100の飛行高度を変更するためのボタンである。マイナスを押すと高度が下がり、プラスを押すと高度が上がる。
緊急停止ボタン925は、飛行しているドローン100を緊急停止等するボタンであり、その場でホバリングを行う一時停止の他、飛行開始地点に戻るオプションや、その場でモーターを緊急停止するオプション等も表示可能である。
ドローン操作画面900の例では、薬剤散布の対象となる圃場930が地図上に表示されており、圃場930上の散布フライトの飛行経路931が表示されている。ドローン100は、モバイル端末701または管理サーバ702に記憶された飛行経路管理情報1800に従い、指定された飛行座標を順に飛行する。
【0042】
高度変更ボタン923、924や緊急停止ボタン925等、ドローン100への操作を必要とする操作を受け付けると、ドローン操作モジュール1012が、これらの操作に対応するコマンド等の情報をドローン100に送信し、ドローン100を操作することができる。
次の散布スケジュール表示ボタン940は、現在実行されている散布フライトの次の散布フライトのスケジュールを表示するためのボタンである。このボタンが押されると、スケジュール管理情報1900から取得された次の散布フライトに関する情報が表示される。
【0043】
図10は、モバイル端末701のハードウェア構成の例である。
モバイル端末701は、例えばタブレットやスマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ等の端末である。
主記憶装置1001には、画面表示モジュール1011、ドローン操作モジュール1012、スケジュール管理モジュール1013等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ1003が実行することでモバイル端末701の各機能要素が実現される。
画面表示モジュール1011は、圃場情報表示画面800や、ドローン操作画面900を表示パネルなどの出力装置1005に表示する。
【0044】
ドローン操作モジュール1012は、ユーザによる高度変更ボタン923、924や、緊急停止ボタン925等の操作を受け付けた場合に、これらの操作に対応するコマンド等の情報をドローン100に送信し、ドローンのフライトを操作する。
スケジュール管理モジュール1013は、複数の圃場に連続して散布フライトを行う場合に、それぞれの散布フライトのスケジュールを管理する。
補助記憶装置1002は、地図情報1200、圃場管理情報1300、機器管理情報1400、ユーザ管理情報1500、薬剤管理情報1600、エネルギー管理情報1700、飛行経路管理情報1800、スケジュール管理情報1900等の各種情報を記憶する。
【0045】
図11は、管理サーバ702のハードウェア構成の例である。
管理サーバ702は、例えばクラウド上に配置されたサーバで構成される。
主記憶装置1101には、画面出力モジュール1111、飛行管理モジュール1112、ユーザ・機器管理モジュール1113、散布関連情報管理モジュール1114、飛行経路管理モジュール1115、スケジュール管理モジュール1116が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ1103が実行することで管理サーバ702の各機能要素が実現される。
画面出力モジュール1111は、圃場情報表示画面800や、ドローン操作画面900を表示するための情報を抽出・生成し、モバイル端末701に送信する。画面情報そのものを生成し、モバイル端末701等で表示することとしてもよい。
飛行管理モジュール1112は、圃場管理情報1300や飛行経路管理情報1800等の情報に基づいて、ドローン100の散布フライトを管理する。
【0046】
ユーザ・機器管理モジュール1113は、ドローン100を使用するユーザに関する情報をユーザ管理情報1500に登録し、管理する。
散布関連情報管理モジュール1114は、散布フライトに必要な薬剤散布量や薬剤量、希釈量、希釈に要する水の量、バッテリー数などのエネルギー量を管理する。
飛行経路管理モジュール1115は、圃場管理情報1300に基づいて、ドローン100の散布フライトの飛行経路を算出する。
スケジュール管理モジュール1116は、複数の圃場や、複数日にまたがる散布フライトのスケジュールを生成し、管理する。生成された薬剤散布スケジュールは、スケジュール管理情報1900に記憶される。
【0047】
補助記憶装置1102は、地図情報1200、圃場管理情報1300、機器管理情報1400、ユーザ管理情報1500、薬剤管理情報1600、エネルギー管理情報1700、飛行経路管理情報1800、スケジュール管理情報1900等の各種情報を記憶する。
なお、モバイル端末701と管理サーバ702で同じ情報が記憶されているが、これはそれぞれの情報が同期されてもよいし、単にどちらかの情報をコピーしても構わない。また一部または全ての情報を管理サーバ702上に記憶しておき、モバイル端末701からは必要に応じて管理サーバ702から情報をダウンロードする構成であっても構わない。
【0048】
図12は、管理端末703のハードウェア構成の例である。
管理端末703は、例えばデスクトップPC、ノートPCやタブレット等の端末である。
主記憶装置1201には、ドローン設定モジュール1211や管理サーバ設定モジュール1212等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ1203が実行することで管理端末703の各機能要素が実現される。
ドローン設定モジュール1211は、ドローン100の散布フライト設定や初期設定などの各種操作や設定を行う。
管理サーバ設定モジュール1212は、管理サーバ702の初期設定などの各種設定を行う。
補助記憶装置1202は、ドローン設定情報1221や管理サーバ設定情報1222等の各種情報を記憶する。
【0049】
図13は、圃場管理情報1300の例である。
圃場管理情報1300は、薬剤散布を行う対象である圃場に関する各種情報を記憶しており、圃場ID、圃場名、圃場位置、圃場周囲座標、圃場面積、作付作物等の情報を記憶する。圃場管理情報1300を単に圃場情報と呼ぶこともある。
圃場IDは、圃場を一意に特定する識別情報である。
圃場位置1311は、圃場の位置座標を示し、例えば圃場の中心の緯度・経度の情報を有する。
圃場周囲座標1312は、圃場の周囲の座標を示し、例えば4角形の圃場であれば角の4点の位置座標である。サンプル値のGC007は、位置座標が連続してカンマ区切りなどで記憶された情報へのリンクを示す。
圃場面積1313は、圃場IDに対応する圃場の総面積である。
作付作物1314は、圃場に作付けされている作物等を特定する情報を記憶する。
【0050】
図14は、機器管理情報1400の例である。
機器管理情報1400は、ドローン100を管理するための情報を記憶しており、機器ID、機器名、型番、仕様、ユーザ、エネルギー、飛行可能時間などの情報を記憶する。
機器IDは、ドローン100を一意に特定する識別情報である。
ユーザは、現在そのドローン100を使用しているユーザの情報であり、ユーザ管理情報1500のユーザIDを記憶する。
エネルギー1411は、ドローン100に搭載可能なエネルギーに関する情報であり、エネルギー管理情報1700のエネルギーIDを記憶する。
飛行可能時間1412は、ドローン100に搭載できるエネルギーによる飛行可能時間を示す。例えばバッテリー2個1セットで15分飛行可能であること等の情報が記憶されている。
【0051】
図15は、ユーザ管理情報1500の例である。
ユーザ管理情報1500は、ドローン100を操作するユーザの情報を記憶しており、ユーザID、ユーザ表示ID、名前、メールアドレス、生年月日、性別等の情報を記憶する。
ユーザIDは、ユーザを一意に特定する識別情報である。
ユーザ表示IDは、モバイル端末701等に表示されるユーザの情報であり、例えば、ユーザが登録したニックネーム等である。
【0052】
図16は、薬剤管理情報1600の例である。
薬剤管理情報1600は、散布する薬剤の情報を記憶しており、薬剤ID、薬剤名、品番、仕様、希釈率、散布量等を記憶する。
薬剤IDは、薬剤を一意に特定する識別情報である。
薬剤名1602は、例えば農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種などの圃場に散布される液体、粉体又は微粒子の商品等の名前を示す。
【0053】
仕様1603は、薬剤の使用方法や希釈方法、対象作物、散布方法などの情報が記憶されており、仕様1603に記載された内容に従って、薬剤の希釈や散布処理を実行する。
希釈率1604は、薬剤を希釈する割合が記憶されており、例えば薬剤対水の割合や、希釈に用いる薬剤と水の量等が記憶される。
散布量1605は、希釈された希釈後薬剤(散布薬剤)の散布量を記憶する。例えば1haあたり10Lの散布薬剤を散布することが示されている。
【0054】
図17は、エネルギー管理情報1700の例である。
エネルギー管理情報1700は、ドローン100のフライトに必要な例えばバッテリーなどのエネルギーに関する情報を記憶しており、エネルギーID、エネルギー名、型番、種類、仕様等の情報を記憶する。
エネルギーIDは、エネルギーを一意に特定する識別情報である。
種類は、エネルギーの種類を示し、例えば電池(バッテリー)やガソリン、ジェット燃料等が記憶される。
【0055】
図18は、飛行経路管理情報1800の例である。
飛行経路管理情報1800は、ドローン100のフライトの経路を示す情報を記憶しており、経路ID、対象ID、経路座標、経路合計距離などを記憶する。
経路IDは、飛行経路を一意に特定する識別情報である。
対象IDは、飛行経路を算出した対象である圃場や、圃場と圃場の間の移動経路等を特定する情報である。例えばfarm003は対象が圃場でることを示し、route002は対象が圃場外の移動経路であることを示す。
経路座標1811は、フライトの経路座標を示す情報へのリンクであり、フライトの経路座標は、例えば連続する複数の位置座標の組み合わせで表現される。位置座標としては、緯度と経度の組み合わせや、緯度と経度と高度の組み合わせ等が考えられる。
経路合計距離1812は、フライトの開始からスケジュールまでの飛行経路全体を飛んだ場合の経路の合計距離を示す。
【0056】
図19は、スケジュール管理情報1900の例である。
スケジュール管理情報1900は、複数の圃場を散布フライトする場合のスケジュールを規定する情報であり、スケジュールID、スケジュール名、日時、開始場所、スケジュール等の情報を記憶する。
スケジュール1901は、散布フライトを行う圃場や、圃場間の移動経路などを特定する情報を記憶する。例えばサンプル値の例だと、farm006、farm005で特定される圃場2つを飛行した後に、route001で示される移動経路を飛行した後、farm003で特定される圃場を飛行し、other001で指定されるその他のイベント(例えば昼食時間など)を経過した後、farm002で特定される圃場を飛行するスケジュールである。
【0057】
散布関連情報1902は、全スケジュール総合の薬剤散布量、希釈量、エネルギー量等を記憶する。なお、各圃場毎の薬剤散布量、希釈量、エネルギー量等を記憶してもよい。
スケジュールの規定方法は一例であって、その他のスケジュール管理方法であっても構わない。
【実施例2】
【0058】
近年、観測用、輸送用、ホビー用、薬剤散布用等の様々な用途のドローンが開発されている。しかしながら、従来のドローンでは、通常使用状態とは異なる物体の積載を管理することは行われていなかった。
例えば、観測用、ホビー用のドローンには、通常スマートフォンやカメラ等が積載されることが多いが、これら以外の物体が積載されることについて何ら管理が行われていない。また、薬剤散布用等のドローンでは、薬剤等の液体物を搭載して散布するが、液体物以外の物体が積載されることについて何ら管理が行われていない。
【0059】
輸送用のドローンについては、通常は輸送する物品の内容は管理しているが、管理されている物品以外の不審な物体が併せて積載されてもそれを検知することは行われていない。
もしも、このようなドローンをテロ目的に悪用した場合、爆発物や毒薬等の危険物をドローンを用いて運搬するテロ行為が行われる可能性がある。
【0060】
そこで、本実施例では、ドローンの通常使用状態とは異なる物体の積載を管理する仕組みを提供する。
このような仕組みを提供することにより、想定外の物体が積載されることを防ぎ、常に通常使用状態での飛行を行うことが可能となり、不要なバッテリー等のエネルギーの消費を防ぎ、適切なドローンの飛行運用管理が可能となる。
また、本実施例記載の構成によれば、通常使用状態とは異なる不審な物体の積載及び運搬を防止し、テロ行為を抑止することが可能となる。
【0061】
図26は、フライト判定処理フロー2600の例である。
フライト判定処理フロー2600の例では、通常使用状態における重心位置関連情報と、飛行指示を受け付けた後に算出された重心位置関連情報とが異なる場合に、不審な物体が積載された可能性があると判断し、飛行を停止する。
ドローン100のフライトコントローラー501は、モバイル端末701や管理サーバ702、管理端末703からドローン100の飛行指示を受け付ける(ステップ2610)。
【0062】
フライトコントローラー501は、ドローン100の重心位置関連情報を算出等により取得する(ステップ2620)。
具体的には、フライトコントローラー501は、ドローン100を所定の短い期間ホバリング飛行させる。
ホバリング飛行中の各回転翼の推力の値を取得し合計を算出することで、ドローン100の現在の重量を算出する。
前後若しくは左右の回転翼の推力に違いがある場合には、何らかの物体が、通常使用状態の重心の垂線上とは異なる位置に存在することになり、フライトコントローラー501は、それぞれの推力の値に基づいて重心位置を算出することができる。
【0063】
また、さらに、フライトコントローラー501は所定の短い期間ドローン100を傾斜させた傾斜飛行を行う。
フライトコントローラー501は、傾斜飛行中の各回転翼の推力の値や、水平方向に対する傾きの大きさ(ピッチ角度またはロール角度)に基づいて、ドローン100の重心位置を算出する。
【0064】
フライトコントローラー501は、ドローン100が備える記憶装置内に記憶された通常使用状態の重心位置に関する情報である通常重心位置関連情報を取得し、算出等により取得した現在の重心位置関連情報とこの通常重心位置関連情報とを比較する(ステップ2630)。
これらが一致する場合には(ステップ2640がYes)、通常使用状態の他に不特定の物体が積載されていないと判断し、飛行を継続する(ステップ2650)。
【0065】
ここで、ドローン100は常に飛行し続けているが、それぞれの回転翼の推力は常に一定の出力が出ているわけではなく、その値が微妙に変動し続けることになる。また、風などの外的環境の影響を受け、それに応じて回転翼の出力が変動することもある。従って、例えが通常使用状態と同様に何も積載していない状態であっても、算出した重心位置関連情報と記憶されていた通常重心位置関連情報とは、完全には一致しない場合がある。
そこで、所定の閾値を設け、この範囲内であればこれらの重心位置関連情報が一致するものとして物体が非積載であると判定する。従って、一致とは、算出又は取得した重心位置関連情報と記憶されていた通常重心位置関連情報とが一致する場合と、所定の範囲内(例えば所定の短い距離以内)に存在する場合の両方を含む(これを「ほぼ一致する」と呼ぶこともある)。
【0066】
一方、通常重心位置関連情報と取得された前記重心位置関連情報とが異なっている場合には(ステップ2460がNo)、ドローン100の飛行を停止する(ステップ2660)。
さらに、この場合に不特定の物体が積載されているものとして異常状態を示すアラートや算出された重心位置関連情報等の通知を管理サーバ702又は管理端末703に送信(出力)する構成としてもよい。
なお、通常使用状態の通常重心位置を示す重心位置関連情報は、ドローン100の設計時点で予め求められており、記憶装置に記憶されている、又は、ドローン100を初期飛行させる場合に算出され、記憶装置に記憶される。
【0067】
また、ドローン100が液体物を散布するドローンである場合には、積載した液体物は液体物タンクの中で移動することになる。この場合でもタンク自体はあらかじめ定められたサイズを有しており、液体物の移動範囲はタンク内に限られるため、液体物の量、液体物の比重、ドローン100の飛行角度、が取得できれば、これらの値により液体物を積載している通常使用状態の重心の位置を算出することができる。
従って、例えば薬剤散布をするドローン100である場合には、薬剤管理情報1600等により管理されている薬剤タンク104に収容されている薬剤の情報及び、液量センサ等により取得された液量、飛行中のドローン100の飛行角度等の状況に基づいて、物体を非搭載であった場合の重心位置を算出して、これを通常重心位置関連情報として用いる。
【0068】
なお、ドローン100が液体物を散布するドローンであった場合には、ドローン100の飛行を停止する代わりに、散布フライトを停止してしてもよい。すなわち、フライトコントローラー501は、ドローン100の飛行を禁止する、又は飛行は許可するが吐出ノズルを閉じる等により液体物の散布を禁止する、又は液体物の散布中のドローン100の散布を停止する、若しくは飛行及び散布の両方を停止する、ように構成してもよい。以下、ドローンの飛行を停止する、というときには同様に、散布フライトを停止してもよい。
また、液体物の散布を停止する場合には、フライトコントローラー501は例えば吐出ノズルを閉じることにより散布を停止する、または、吐出のためのポンプの駆動を停止する等により液体物の散布の停止を行うことができる。
【0069】
図20~
図25により、ドローン100の飛行時の回転翼の推力と重心の関係を説明する。
図20は、物体積載有り又は無しの場合のホバリング飛行時の状態を示す左側側面図の例である。
図20の例はドローン100を左側から見た側面図であり、図の左方向がドローン100の前側になる。
Fig.20-Aは、物体を積載していない通常使用状態のドローン100のホバリング飛行を示す。Fig.20-Bは、物体M2を積載した状態のドローン100のホバリング飛行を示す。
ホバリングとは、ドローンが空中に停止し、前後左右に移動していない状態の飛行であり、具体的には、各回転翼で発生する推力が鉛直上向きとなっている、もしくは各回転翼で発生する推力の水平方向成分が互いに打ち消し合っている状態である。
【0070】
なお、ホバリングを行っている場合であっても、横風の影響により完全に静止しない場合もあるため、横風等の外乱の影響により飛行位置が変化する飛行状態もホバリング飛行の定義に含まれるものとする。
また、ホバリングを行っているか否かは、ドローンに搭載された姿勢角センサにより検出することができる。例えば、姿勢角センサで検出した姿勢角がほぼ水平状態であれば、ホバリング飛行を行っていると判断できる。
【0071】
ドローンの通常使用状態とは、ドローンが飛行するためにあらかじめ備え付けられた構成以外何も積載しない状態をいう。例えば、バッテリーやカメラ等、取り外しが可能ではあるが、ドローンが飛行するためにあらかじめ備え付けられる物体については、搭載した状態を指す。液体物を収容する液体物タンクを有する液体物散布ドローンであれば、ドローンにあらかじめ備え付けられた構成以外何も積載しない状態、又はこの状態に加えてドローンに備えられた液体物タンクに液体物を積載した状態、のいずれかをいう。
【0072】
また、様々なオプション装備や、異なるバッテリーを搭載することも想定されるため、使用者が「通常使用状態」の装備を予め設定できる構成としてもよい。
例えば所定の装備を搭載したドローン100を通常使用状態として設定し、これを初期飛行させ、ホバリング飛行や傾斜飛行を行うことで、その通常使用状態での通常重心位置を算出し、この通常重心位置に関する通常重心位置関連情報を記憶部に記憶する構成としてもよい。
【0073】
ここで、重心位置に関する情報とは、重心の位置の情報に限らず、重心を算出するにあたり参照され、重心位置を間接的に特定できる情報であってもよい。すなわち例えば複数の回転翼の推力の情報であってもよく、又は複数の回転翼の推力の情報とドローンの姿勢角を含む情報であってもよい。
ここで記憶部に記憶された通常重心位置に関する通常重心位置関連情報が、フライトコントローラー501により読みだされ、都度算出される重心位置(又は複数の回転翼の推力、又は複数の回転翼の推力の情報とドローンの姿勢角の組合せ情報)を示す重心位置関連情報と比較されることとなる。
【0074】
ドローン100の重心Gにかかる重さを本実施例の例では4組8枚の回転翼による上向きの推力により保持する。重心Gがドローン100の対向する回転翼の中心に位置する場合には、4組の回転翼のそれぞれに、重心Gにかかる重さを均等に4分の1にした推力を発生させることで、上方向の推力と下方向の重さが釣り合い、空中に停止してホバリング飛行することができる。
Fig.20-Aでは、通常使用状態(非積載時)においてドローン100の全自重が重心Gにかかっており、それを2分の1にした推力Fが前側の2組4枚の回転翼で発生され、同じ大きさの推力Rが後ろ側の2組4枚の回転翼で発生されている。
【0075】
Fig.20-Bでは、さらに物体M2がドローン100の中央下部に固定されている。この例では物体のM2の重心がドローン100の重心から降ろした垂線上にくるように物体M2が積載されている。物体M2の積載後のドローン100の重心位置は物体M2の重さの分下方に移動し、非積載時の重心Gの下方G2に、ドローン100と物体M2の重さの合計分の重さがかかることになる。
この重量を打ち消すために、推力F2と推力R2には、非積載時の推力Fと推力Rよりも大きい値が必要になる。
【0076】
図21は、物体積載有り又は無しの場合のホバリング飛行時の回転翼の推力を示すグラフの例である。
本図の例では、約1秒まで推力が徐々に上昇し、1秒を超えたあたりで離陸を行い、2秒を超えたあたりで一定の推力で安定してホバリング飛行が行われている。
図20で説明した通り、通常使用時の前側回転翼の推力F及び後ろ側回転翼の推力Rと比べ、物体積載時の前側回転翼の推力F2及び後ろ側回転翼の推力R2の方が大きい値となる。
【0077】
図22は、中央からずれた場所に物体が積載された場合のホバリング飛行時の状態を示す左側側面図の例である。
物体M3はドローン100の中央Cよりも前方に積載されており、物体M3を積載した状態でのドローン100の重心G3も、中央Cより前方にずれている。本図の例では、説明の簡易化のために、物体M3はドローン100の左右方向についてはドローン100の中央に位置するが、前後方向については前側にずれた位置に積載されている。
この状態でホバリング飛行を行おうとすると、重心G3がドローン100の前側に片寄っているためにピッチ旋回する方向でモーメントが発生し、これを打ち消して釣り合うために、前側左右の回転翼の推力F3を大きくする必要がある。
従って、前側左右の推力F3は後ろ側左右の推力R3よりも大きくなる。
【0078】
図23は、中央から前方にずれた位置に物体が積載された場合のホバリング飛行時の回転翼の推力を示すグラフの例である。本図の例では、約2秒まで推力が徐々に上昇し、2秒を超えたあたりで離陸を行う例である。この場合、離陸前までは各回転翼の出力はほぼ同じであるが、離陸をしてからは機体の姿勢を維持するために、前側左右の推力F3は後ろ側左右の推力R3よりも大きくなっている。
ここで、通常重心位置Gと、物体M3非積載時のドローンの自重と、前側左右の推力F3と、後ろ側左右の推力R3とが分かれば、物体M3積載時の重心G3をこれらの値から算出することができる。
なお、回転翼による推力は、回転翼を回転させるモーター等の推進器の出力や、推進器への供給電力に基づいて算出することが可能である。
【0079】
図22や
図23では、物体M3はドローン100の左右方向から見て中央の位置で前側方向にずれている(すなわち右側と左側の回転翼には同じ推力が発生する)例を説明したが、もちろん、物体M3はドローンのどの位置に積載されていてもよく、前後左右のそれぞれの回転翼の推力の値と、上述したその他の値の一部またはすべてに基づいて、重心の位置を算出することが可能である。
【0080】
例えば、前後方向においては中央に位置し、左右方向について右側若しくは左側にずれた位置に物体M3が積載されている場合には、同様に通常重心位置Gと、物体M3非積載時のドローンの自重と、左側前後の推力と、右側前後の推力とから、物体M3積載時の重心G3を算出することができる。
また、前後方向若しくは左右方向の任意の場所にM3が位置している場合には、通常重心位置Gと、物体M3非積載時のドローンの自重と、全ての回転翼のそれぞれの推力と、から物体M3積載時の重心G3を算出することができる。
重心位置関連情報は、これらの算出された重心位置の座標情報であってもよいし、重心位置を算出するために参照される上述のような回転翼の推力等に関する情報であってもよい。
【0081】
通常重心位置関連情報と算出された重心位置関連情報とが異なっていることの判定は、例えばそれぞれの位置情報(座標情報)を比較し、所定の閾値以上距離が離れている場合に、異なっていると判定する。
他には、通常重心位置Gが水平方向において前記ドローン100の中央C上に位置する場合に、算出された前記重心位置G3が、ドローン100の中央Cから例えば所定の長さdより離れている場合に、通常重心位置関連情報と算出された重心位置関連情報とが異なっていると判定してもよい。逆に、
図22の例では、物体M3積載時の重心G3の垂線と、ドローン100の水平方向における垂線(中央C)との差異の長さdが所定の長さ以下の場合には、通常重心位置関連情報と算出された重心位置関連情報とが同一であるとみなしてよい(すなわちほぼ同一である)。
【0082】
また、例えば重心位置関連情報として回転翼の推力を用いる場合には、通常使用状態で通常重心位置Gがドローンの中央C上にある場合には、複数の回転翼の推力は同一となるはずであるが、複数の回転翼のそれぞれの推力が所定の値以上異なる場合に、通常重心位置関連情報と取得された前記重心位置関連情報とが異なっており、何らかの物体M3が積載されていると判定してもよい。
なお、本実施例の例では、通常使用状態において複数の回転翼の中心の垂線上に重心Gが位置し、ホバリング飛行時には全ての回転翼に均等に推力が発生する構成で説明を行うが、この構成に限られない。
【0083】
例えば、通常使用状態の重心位置を示す通常重心位置が、ドローン100の中央より前側にずれており、通常使用状態のホバリング飛行時であっても、前側左右の回転翼の推力が後ろ側左右の回転翼の推力よりも高い場合も想定できる。このような場合であっても、本実施例で説明したように、通常重心位置と算出された重心位置とが異なっていると判定される場合には、飛行停止とすればよい。
【0084】
また、例えば
図1に示すように、一般的は製品デザインとして、前後方向には非対称であっても左右対称の構造で製造することが多い。従って、通常重心位置がドローン100の中央よりも前後方向に移動することはあっても、左右方向にずれていることは多くはない。従って、左右の回転翼の推力の差を重心位置関連情報とし、これが所定の値以上であった場合に物体M3が積載されていると判断する構成としてもよい。例えば、通常重心位置関連情報として左右の推力の差ゼロを記憶しておき、飛行時の左右の回転翼の推力の差を重心位置関連情報として取得して比較することで、この推力の差がほぼゼロでない場合(すなわち所定の値以上の差がある場合)に飛行を停止する処理を行ってもよい。
【0085】
図24は、物体積載有り又は無しの場合の傾斜飛行時の状態を示す左側側面図の例である。
図24の例はドローン100を左側から見た側面図であり、図の左方向がドローン100の進行方向、すなわちドローン100の前側になる。
Fig.24-Aは、物体を積載していない通常使用状態のドローン100の傾斜飛行を示す。Fig.24-Bは、物体M4を積載した状態のドローン100の傾斜飛行を示す。
ドローン100をピッチ旋回させ傾斜飛行をすることで、推力F4及び推力R4による前側方向への分力に基づいて前方に進行する。
【0086】
ピッチ角Pを生じさせるためには、高さ方向においてドローン100の中央より上側左右に位置する回転翼、すなわち後ろ側回転翼の推力R4を、下側左右に位置する回転翼、すなわち前側回転翼の推力F4、よりも大きくする必要がある。
ここで、さらに物体M4を通常重心位置G付近に積載した場合には、積載後の重心位置G4のように重心位置が下がり、かつ下向きの重力が増加するため、その回転モーメントを打ち消すために後ろ側回転翼の推力R5をさらに大きくする必要がある。
【0087】
図25は、物体積載有り又は無しの場合の傾斜飛行時の回転翼の推力を示すグラフの例である。
Fig.25-Aは、物体を積載していない通常使用状態のドローン100の傾斜飛行の推力の変化を示す。Fig.25-Bは、物体M4を積載した状態のドローン100の傾斜飛行の推力の変化を示す。
本グラフに示すように、物体M4積載時の前側回転翼の推力F5と後ろ側回転翼の推力R5との差は、通常飛行時の前側回転翼の推力F4と後ろ側回転翼の推力R4との差に比べて大きい値となる。
【0088】
このように所定のピッチ角度(姿勢角)で傾けた傾斜飛行をしている場合に、このピッチ角Pと、前側回転翼の推力F5と、後ろ側回転翼の推力R5とに基づいて、重心位置を算出するすることができる。
ここで算出された重心位置に関する重心位置関連情報と、通常重心位置関連情報とが異なっている場合には、不特定の物体が積載されているものとしてドローン100の飛行を停止する。
また、重心位置を算出することなく、この重心位置を算出するために参照される各回転翼の推力と姿勢角の組合せを重心位置関連情報とすることもできる。すなわち各回転翼の推力と姿勢角の組合せからなる重心位置関連情報と、記憶されている通常時各回転翼の推力と姿勢角の組合せである通常重心位置関連情報とを比較し、これらが異なっている場合にドローン100の飛行を停止することもできる。
【0089】
なお、また、各回転翼の推力の組合せを重心位置関連情報とすることもできる。例えば
図25に示したように下側左右に位置する前記回転翼の少なくとも一方の推力と上側左右に位置する回転翼の少なくとも一方の推力との差の値を重心位置関連情報として算出し、これが、通常使用状態におけるそれぞれの差の値である通常重心位置関連情報よりも大きい場合に、物体M4が積載されているものと判定してもよい。この場合当然に通常重心位置と算出された前記重心位置とが異なっている。
また、
図24や
図25の例では物体M4はドローン100の左右から見て中央の位置で前方向にずれている(すなわち右側と左側の回転翼には同じ推力が発生する)例で説明したが、もちろん、物体M4はドローンのどの位置に積載されていてもよく、前後左右のそれぞれの回転翼の推力の値と、上述したその他の値とに基づいて、重心の位置を算出することが可能である。
【0090】
上述のような重心の算出や比較の処理、飛行継続及び停止等の飛行制御の処理等はフライトコントローラー501が実行するが、これは予めこのような機能が組み込まれたハードウェアチップにより実現されてもよいし、このような各処理を実行させるための制御プログラムを汎用的なマイクロコントローラ等が実行することにより実現されてもよい。
本実施例で説明した構成によれば、ドローンの通常使用状態とは異なる物体の積載を管理する仕組みを提供することができ、例えば通常使用状態とは異なる不審な物体の積載及び運搬を防止し、テロ行為を抑止することが可能となる。
【0091】
図27は、別のフライト判定処理フロー2700の例である。
フライト判定処理フロー2700の例では、飛行指示を受け付けた後に取得された重心位置関連情報が所定の条件を満たさない場合に、不審な物体が積載された可能性があると判断し、飛行を停止する。
ドローン100のフライトコントローラー501は、モバイル端末701や管理サーバ702、管理端末703からドローン100の飛行指示を受け付ける(ステップ2710)。
【0092】
フライトコントローラー501は、ドローン100の重心位置関連情報を取得する(ステップ2720)。
フライトコントローラー501は、取得した重心位置関連情報が所定の条件を満たすかどうかを判定し、条件を満たす場合には(ステップ2730がYes)、通常使用状態の他に不特定の物体が積載されていないと判断し、飛行を継続する(ステップ2740)。
一方、条件を満たさない場合には(ステップ2730がNo)、異常状態を通知し、フライトを停止する(ステップ2750)。
【0093】
所定の条件は、ドローン100が備える記憶装置内に予め記憶されており、フライトコントローラー501が、所定の条件を取得し、取得した重心位置関連情報とこの条件とを比較する。
所定の条件としては、例えば通常使用状態での重心位置関連情報がある。この重心位置関連情報には、例えば複数の回転翼の推力、又は前記複数の回転翼の推力の差分、又は前記ドローンの重心位置等が考えられる。
以下
図28~
図35により、重心位置関係情報と所定条件の色々な組み合わせの実施例について説明する。
【0094】
図28は、ホバリング飛行中の複数の回転翼の推力によるフライト判定処理フロー2800の例である。
ドローン100のフライトコントローラー501は、モバイル端末701や管理サーバ702、管理端末703からドローン100の飛行指示を受け付ける(ステップ2810)。
フライトコントローラー501は、ドローン100の姿勢維持制御を開始する(ステップ2820)。姿勢維持制御は、ドローン100の姿勢を維持しながら空中に停止しているホバリング飛行の他、上昇、下降のいずれかの動作を行う制御である。
なお、ドローン100がホバリング飛行を行っているか否かは、ドローン100の飛行速度と姿勢角度の検出情報に基づいて判定することができる。
フライトコントローラー501は、前記ドローンが姿勢を維持してホバリング飛行、上昇、下降のいずれかの動作をしている場合に、ドローン100の重心位置関連情報として各回転翼の推力を取得する(ステップ2830)。
【0095】
フライトコントローラー501は、ドローン100の重量、すなわち取得した各回転翼の推力の合計値が所定範囲内か(すなわち所定条件を満たすか)どうかを判定し、条件を満たさない場合には(ステップ2840がNo)、異常状態を通知し、フライトを停止する(ステップ2870)。
条件を満たす場合には(ステップ2840がYes)、フライトコントローラー501は、各回転翼の推力が所定の範囲内かを判定する(ステップ2850)。
判定の結果、条件を満たさない場合には(ステップ2850がNo)、異常状態を通知し、フライトを停止する(ステップ2870)。
条件を満たす場合には(ステップ2850がYes)、通常使用状態の他に不特定の物体が積載されていないと判断し、飛行を継続する(ステップ2860)。
【0096】
図28のステップ2830で取得された通常使用状態での各回転翼の推力は、重心位置や飛行中の誤差等により、一定の値を取らない場合がある。そこでこれらのズレを許容する所定の範囲を定め、各回転翼の推力がこの所定の範囲内かを判定している(ステップ2850)。この所定の範囲について以下説明する。
通常使用状態での複数の回転翼の推力としては例えば以下の条件が考えられる。
【0097】
1.通常使用時に重量の変化がない場合
すなわち、例えば液体物を積載するタンクが無く、飛行時に重心位置の変化がほとんどない構成の場合。
1-1.通常使用時の重心が機体の中央にある構成
通常時の機体重心が機体中心(各回転翼の中間点)である場合には、各回転翼の発生する推力が一致する。しかし、実際には各回転翼の個体差等の誤差の影響があり、完全に一致した値とはならない。そのため、当該個体差の誤差等を考慮して、各回転翼の推力Tの推力差ΔTが以下に示す所定の範囲内に収まった場合には、所定条件を満たすと判断する。
【0098】
進行方向に対して左前、右前、左後ろ、右後ろの回転翼の推力をそれぞれFL、FR、RL、RRとすると、例えば
許容ΔT=FL-FR=-5~5N
許容ΔT=FL-RL=-5~5N
許容ΔT=FR-RR=-5~5N
許容ΔT=RL-RR=-5~5N
を所定の条件とし、許容ΔTがこの値の範囲に入っている場合に条件を満たすと判断する。
なお、上記の所定範囲は、各推力の差分ではなく、各回転翼の推力の絶対値で定義してもよい。また、推力の単位は、N以外にもエネルギー量を表すWh、仕事率Duty、回転翼の回転数rpmであってもよい。
【0099】
1-2.通常使用時の重心が機体の前方にある構成
通常時の機体重心が機体中心(各回転翼の中間点)よりも前にずれている場合には、前後の回転翼の推力に差が発生する。そのため、当該個体差の誤差等を考慮して設定された、各回転翼の推力Tの推力差ΔTが以下に示す所定の範囲内に収まった場合には、所定条件を満たすと判断する。
許容ΔT=FL-FR=-5~5N
許容ΔT=FL-RL=-5~15N
許容ΔT=FR-RR=-5~15N
許容ΔT=RL-RR=-5~5N
【0100】
1-3.通常使用時に重量変化があり、かつ重心が機体の中央にある構成
例えば、ドローン100が液体散布用の薬剤タンク104を有する構成の場合、散布フライトによる液体物の散布によりドローン100全体の重量(mg)が減少していく。
図29は、重心が機体の中央にある場合のドローンの重量と推力の関係を示すグラフの例である。
重量(mg)が増加すると、ホバリング飛行に必要な各回転翼の推力Tも増加する。通常の散布作業時において、薬剤タンク104内の薬剤も含めた機体重心が機体中心(各プロペラの中間点)となる場合、薬剤タンク104内の薬剤の動揺等の影響を受けて重心がある範囲内で変化するが、ホバリング飛行時の各回転翼(FL、FR、RL、RR)の推力は点線で囲われた範囲内の値となる。
ここで、当該範囲から外れた推力を発生している回転翼がある場合には、所定条件を満たしていないと判断する。
【0101】
1-4.通常使用時に重量変化があり、かつ重心が機体の中央より前方にある構成
図30は、重心が機体の前方にある場合のドローンの重量と推力の関係を示すグラフの例である。
通常の散布フライト時において、薬剤タンク104内の薬剤も含めた機体重心が機体中心(各回転翼の中間点)よりも前方となる場合、前方回転翼(FL、FR)の推力は、後方回転翼(RL、RR)の推力よりも大きくなる。また、タンク内の薬剤の動揺等の影響を受けて重心がある範囲内で変化するが、ホバリング飛行時の各回転翼(FL、FR、RL、RR)の推力は点線で囲われた範囲内の値となる。
ここで、当該範囲から外れた推力を発生している回転翼がある場合には、所定条件を満たしていないと判断する。
なお、
図29と
図30のいずれの場合でも、複数の回転翼のうち、発生推力が最小の回転翼の最小推力と発生推力が最大の回転翼の最大推力の差分が予め記憶されている値以上異なる場合に、取得された重心位置関連情報が所定条件を満たさないと判定することができる。また、推力が最大と最小の回転翼ではなく、任意の回転翼の推力の差が所定条件を逸脱する場合に、取得された前記重心位置関連情報が所定条件を満たさないと判定することもできる。
【0102】
図31は、ホバリング飛行中の複数の回転翼の推力による別のフライト判定処理フロー3100の例である。
このフライト判定処理3100では、各回転翼が予め決められた固定値(固定比率)の推力を出力している推力(比)固定制御を行っている場合に、ドローン100の姿勢角の変化に基づいて、散布フライト可否判定を行う処理について説明する。
ドローン100のフライトコントローラー501は、モバイル端末701や管理サーバ702、管理端末703からドローン100の飛行指示を受け付ける(ステップ3110)。
フライトコントローラー501は、ドローン100の推力(比)固定制御を開始する(ステップ3120)。
フライトコントローラー501は、ドローン100の重心位置関連情報としてドローン100の姿勢角の情報を取得する(ステップ3130)。
【0103】
フライトコントローラー501は、姿勢角が所定範囲内か(すなわち所定条件を満たすか)どうかを判定し、条件を満たさない場合には(ステップ3140がNo)、異常状態を通知し、フライトを停止する(3190)。
条件を満たす場合には(ステップ3140がYes)、フライトコントローラー501は、姿勢維持制御を継続する(ステップ3150)。
つまり、例えば重心がドローン100の中央にある場合には、各回転翼に同一の推力を発生させる場合には、機体の姿勢角はゼロ度(水平を維持)するはずであるが、この姿勢角が水平ではなく閾値以上の角度に傾いていた場合に、フライトを停止する。
【0104】
また、重心位置がドローン100の前方にある場合には、機体を水平に保つ場合に、前方の回転翼の推力が後方の回転翼の推力よりも大きくなる。このような、通常使用状態で何も積載していない状態であれば期待が水平になるような固定推力を前後左右の回転力に与え、この場合に期待が傾いていた場合には、異常状態であるとして散布フライトを停止する。
フライトコントローラー501は、各回転翼の推力を取得し(ステップ3160)、この各回転翼の推力が所定の範囲内であれば散布フライトを継続し(ステップ3180)、範囲外の場合には異常状態を通知し、フライトを停止する(ステップ3190)。なお、各回転翼の推力の合計値に基づいてステップ3170の条件を判定してもよい。
なお、以上説明した様々な実施形態において、回転翼の推力が所定条件を満たすかどうかを判定するのではなく、複数の回転翼の推力に基づいて重心位置を算出し、算出した重心位置が所定条件を満たすかどうかを判定してもよい。
【0105】
図32は、離陸時の各脚にかかる圧力によるフライト判定処理フロー3200の例である。
ドローン100のフライトコントローラー501は、モバイル端末701や管理サーバ702、管理端末703からドローン100の飛行指示を受け付ける(ステップ3210)。
フライトコントローラー501は、重心位置関連情報として、ドローン100の脚にも設けられたセンサから各脚にかかる力の値を取得する(ステップ3220)。
フライトコントローラー501は、各脚にかかる力の合計値からなるドローン100の総重量を算出し、総重量が所定範囲内か(すなわち所定条件を満たすか)どうかを判定し、条件を満たさない場合には(ステップ3230がNo)、異常状態を通知し、フライトを停止する(ステップ3260)。
【0106】
条件を満たす場合には(ステップ3230がYes)、フライトコントローラー501は、各脚にかかる力が所定の範囲内かどうかを判定する(ステップ3240)。
フライトコントローラー501は、各脚にかかる力が所定の範囲内である場合は、散布フライトを継続し(ステップ3450)、所定の範囲内でない場合には、フライトを停止する(ステップ3460)。
つまり、例えば重心がドローン100の中央にある場合には、各脚にかかる力はほぼ同一になるはずであり、全ての脚がほぼ同時に地面から離れるはずである。ここで一部の脚に荷重がかかっていて所定の範囲を満たさない場合には、その足の方向に何らかの物体が積載されていることが考えられるため、警告を出力しフライトを停止する。
【0107】
図33は、等速移動飛行中の複数の回転翼の推力によるフライト判定処理フロー3300の例である。
図28のホバリング飛行中の複数の回転翼の推力によるフライト判定処理フロー2800と同様に、各回転翼の推力による判定を、等速移動飛行中にも行うことが可能である。
ドローン100のフライトコントローラー501は、重心位置関連情報として、ドローン100の各回転翼の推力を取得し(ステップ3320)、これが所定範囲内かどうかを判定し(ステップ3330)、条件を満たす場合にはフライトを継続し(ステップ3340)、条件を満たさない場合には、異常状態を通知してフライトを停止する(ステップ3350)。
【0108】
図34は、等速移動飛行中の複数の回転翼の推力による別のフライト判定処理フロー3400の例である。
図34の例では、フライトコントローラー501が取得した各回転翼の推力に基づいて、重心位置関連情報として重心位置を算出する(ステップ3430)。
フライトコントローラー501は、算出した重心位置が、予め記憶されている所定の範囲内かどうかを判定し(ステップ3440)、範囲内である場合にはフライトを継続し(ステップ3450)、範囲内でない場合には異常状態を通知してフライトを停止する(ステップ3460)。
所定の範囲とは、例えば通常使用状態の重心位置(通常重心位置)から予め定めてある長さ以内の範囲である。
【0109】
図35は、重心位置の算出方法を説明する図の例である。
図35の例ではドローン100が図の左側に向かって等速移動飛行している状態を示す。ドローン100の中心Oに対して、点Aにおける上向き(図において反時計回りの方向)のモーメント、点Bにおける下向き(図において時計回りの方向)のモーメントが釣り合っている状態である。ここでそれぞれのモーメントは、
Aにおける上向きのモーメント=(T
R-T
F)×l
Bにおける下向きのモーメント=L×mg=Dsinθ×mg
となる。なお、T
Rは前側の回転翼の推力、T
Fは後ろ側の回転翼の推力、θは姿勢角、Dは重心位置である。
【0110】
これらが釣り合っているので、
(TR-TF)×l=Dsinθ×mg
従って
D=(TR-TF)×l/mg/sinθ
により重心位置Dを算出することが可能である。
なお、下記式により速度Vを姿勢角θに変換することが可能である。
TFsinθ+TRsinθ=kV2
【0111】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0112】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0113】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0114】
100…ドローン、104…薬剤タンク、701…モバイル端末、702…管理サーバ、703…管理端末、710…基地局