(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置および方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/16 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B21D22/16 C
B21D22/16 Z
(21)【出願番号】P 2022557763
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2020121361
(87)【国際公開番号】W WO2021189824
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202010211625.8
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】夏 琴香
(72)【発明者】
【氏名】陳 燦
(72)【発明者】
【氏名】程 秀全
(72)【発明者】
【氏名】肖 剛鋒
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-074062(JP,A)
【文献】特表2018-500173(JP,A)
【文献】特開2005-040814(JP,A)
【文献】特開昭59-092123(JP,A)
【文献】特開2019-171410(JP,A)
【文献】特開2001-269742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/14 - 22/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピニングコア型(4)、心押し台(6)、およびスピニングコア型(4)の周方向に均等に配置された複数のスピニングローラー(3)を備えたディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
各スピニングローラー(3)は、スピニングコア型(4)の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっており、
各スピニングローラー(3)のスピニング面は、深絞りスピニング面(1)、流動スピニング段および整形スピニング面(2)を含み、
前記オフセット配置とは、各スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)、流動スピニング段および整形スピニング面(2)がスピニングコア型(4)の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっていることであり、
前記スピニングローラー(3)は、少なくとも3個であり、
前記オフセット配置は、具体的に、
各スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)の断面線が円弧線であり、かつ各深絞りスピニング面(1)の円弧半径が順次徐々に減少し、
各スピニングローラー(3)の整形スピニング面(2)の断面形状が直線であり、回転順に応じて、最初の2つの隣接するスピニングローラー(3)の整形スピニング面(2)のスピニングコア型(4)の軸線に対する傾斜角度が同一または順次減少し、一方、3番目のスピニングローラー(3)の整形スピニング面(2)のスピニングコア型(4)の軸線に対する傾斜角度が最初の2つのスピニングローラー(3)の傾斜角度より小さく、
深絞りスピニング面(1)の円弧線と整形スピニング面(2)とが直線的に接する先端アールである各流動スピニング段がテーパ構造であり、かつ各流動スピニング段の先端アールが順次徐々にずれていき、
前記最初の2つの隣接するスピニングローラー(3)の傾斜角度が同一であることは、2°~3°の範囲で同じであることを意味し、順次減少することは、2°~3°の範囲で順次減少することを意味し、前記3番目のスピニングローラー(3)の傾斜角度は、0.5°~1°であり、
前記ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置は、
ワークピース(7)の縁に当接する逆押し板(5)をさらに含み、
逆押し板(5)と心押し台(6)にそれぞれ電極が設けられ、心押し台(6)に正電極があり、逆押し板(5)が負極であり、
スピニング中に、ワークピース(7)の中心領域から心押し台(6)および逆押し板(5)を介してエッジへパルス電流が流れ、電流補助スピニングとなることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
前記ワークピース(7)は、合金構造鋼であり、電流補助スピニング時のパルス電流は、1100A~1400Aであることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【請求項3】
請求項
2に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
スピニングローラー(3)は、3個である場合、スピニングコア型(4)の周方向に120°に均一に配置されていることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【請求項4】
スピニングコア型(4)、心押し台(6)、およびスピニングコア型(4)の周方向に均等に配置された複数のスピニングローラー(3)を備えたディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置で実現されるディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法であって、
前記ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置において、各スピニングローラー(3)は、スピニングコア型(4)の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっており、各スピニングローラー(3)のスピニング面は、深絞りスピニング面(1)、流動スピニング段および整形スピニング面(2)を含み、前記オフセット配置とは、各スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)、流動スピニング段および整形スピニング面(2)がスピニングコア型(4)の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっていることであり、
円板状のワークピース(7)を心押し台(6)でスピニングコア型(4)にセンタリングして押し付ける工程と、
ワークピース(7)の方向に向かって逆押し板(5)をワークピース(7)のエッジに押し付けるように、スピニングコア型(4)の軸方向に沿ったスラスト力を逆押し板(5)に付与し、ワークピース(7)の中心領域からエッジへ流れるパルス電流を心押し台(6)および逆押し板(5)に付与し、電流補助スピニングとする工程と、
スピニングローラー(3)が3個である場合、各深絞りスピニング面(1)の円弧半径および整形スピニング面(2)の傾斜角度が順次徐々に減少し、それに応じて、流動スピニング段のテーパ構造の先端アールとスピニングコア型(4)との隙間も徐々に減少するように、スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)を動作ポジションにする工程と、
スピニングローラーの円弧半径の大きい順に、深絞りスピニング面(1)がワークピース(7)を順次徐々に深絞りスピニングを行い、深絞りスピニングが流動スピニング段の先端アールまで達したときにワークピース(7)の流動スピニングが完了し、ワークピース(7)の深絞り、薄肉化を完了し、次に整形スピニング面(2)に入り、薄肉されたワークピース(7)の表面に対して徐々に光整形を行うことによって、ワークピース(7)の深絞りスピニング、流動スピニングおよび整形スピニング過程が完了し、ディープカップ状部品全体の所望の肉厚が得られるまで、スピニングローラーの1回の送りで深絞り、流動および整形スピニングの3つの工程が完成するように、スピニングコア型(4)を回転させる工程とを含むことを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法。
【請求項5】
請求項
4に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法であって、
流動スピニング段の先端アールとスピニングコア型(4)の軸面との間の隙間が最も小さいスピニングローラー(3)は、ディープカップ状部品の成形後の最終的な肉厚を決定することを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法。
【請求項6】
請求項
5に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法であって、
ディープカップ状部品の所望の肉厚に達した後、ディープカップ状部品の口部の余辺を切除することを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械工学の塑性加工成形分野に関し、特にディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディープカップ状薄肉部品は、有底で長さと直径の比が比較的大きい薄肉の複雑部材である。長さと直径の比が大きいため、スピニング工程で成形することができ、一般的には多パスの深絞りスピニング成形で浅カップ状部材を得てから、多パスの流動スピニング成形で肉厚を薄くしてディープカップ状薄肉部品を得る。
【0003】
主に次のような問題がある。
1.深絞りスピニングと流動スピニングの2つのスピニング工程は、互いに独立して完全に分離して作業するため、ワークピースの加工の流れおよび作業時間が長すぎる。しかも深絞りスピニングの作業後に、セットアップを新たに交換して調整してから、流動スピニング作業ができるようになるので、加工時間が遅れるだけでなく、部品の精度も一定の影響を受ける。
2.深絞りスピニング成形の際に、単一のスピニングローラーによる多パスを用いるか、同じ幾何パラメータの2つ(または複数)のスピニングローラーを用いて、繰り返し多パス成形を行い、各スピニングローラーの幾何パラメータが同じであるため、パス圧下量が制限され、この場合にはパス数を増加せざるを得ない。これは、作業時間の増加にもつながる。さらに重要なのは、ワークピース加工時間およびセットアップの交換および調整時間の延長により、ワークピースの製造工程が不連続になり、ワークピースが硬化して材料が破壊される。
3.電流補助スピニング成形を採用している場合もあるが、いずれも一方の電極をワークピースであるワークピースの表面に印加し、回転時に動的に接触して発生するスパークによりワークピース表面をアブレーションさせ、成形後の部品表面の損傷が深刻になり、製品の品質に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置および方法を提供する。ワークピースの生産工程における深絞りスピニング、流動スピニング(または整形スピニング)の作業過程が不連続であることから、ワークピースが硬化して材料が破壊され、工程を替える際にセットアップを新たに調整する必要があり、生産サイクルが長いといった従来技術の問題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の手段により実現される。
ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置は、スピニングコア型4、心押し台6、およびスピニングコア型4の周方向に均等に配置された複数のスピニングローラー3を備える。各スピニングローラー3は、スピニングコア型4の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっている。各スピニングローラー3のスピニング面は、深絞りスピニング面1、流動スピニング段および整形スピニング面2を含む。前記オフセット配置とは、各スピニングローラー3の深絞りスピニング面1、流動スピニング段および整形スピニング面2がスピニングコア型4の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっている。
【0006】
前記スピニングローラー3は、少なくとも3個であり、前記オフセット配置は、具体的に、以下である。各スピニングローラー3の深絞りスピニング面1の断面線が円弧線であり、かつ各深絞りスピニング面1の円弧半径が順次徐々に減少する。各スピニングローラー3の整形スピニング面2の断面形状が直線であり、回転順に応じて、最初の2つの隣接するスピニングローラー3の整形スピニング面2のスピニングコア型4の軸線に対する傾斜角度が同一または順次減少し、一方、3番目のスピニングローラー3の整形スピニング面2のスピニングコア型4の軸線に対する傾斜角度が最初の2つのスピニングローラー3の傾斜角度より小さい。深絞りスピニング面1の円弧線と整形スピニング面2とが直線的に接する先端アールである各流動スピニング段がテーパ構造であり、かつ各流動スピニング段の先端アールが順次徐々にずれていく。
【0007】
前記最初の2つの隣接するスピニングローラー3の傾斜角度が同一であることは、2°~3°の範囲で同じであることを意味し、順次減少することは、2°~3°の範囲で順次減少することを意味し、前記3番目のスピニングローラー3の傾斜角度は、0.5°~1°である。
【0008】
前記ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置は、ワークピース7(工作物)の縁に当接する逆押し板5をさらに含む。逆押し板5と心押し台6にそれぞれ電極が設けられ、心押し台6に正電極があり、逆押し板5が負極である。スピニング中に、ワークピース7の中心領域から心押し台6および逆押し板5を介してエッジへパルス電流が流れ、電流補助スピニングとなる。
【0009】
スピニングローラー3は、3個である場合、スピニングコア型4の周方向に120°に均一に配置されている。
【0010】
ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法は、
円板状のワークピース7を心押し台6でスピニングコア型4にセンタリングして押し付ける工程と、
ワークピース7の方向に向かって逆押し板5をワークピース7のエッジに押し付けるように、スピニングコア型4の軸方向に沿ったスラスト力を逆押し板5に付与し、ワークピース7の中心領域からエッジへ流れるパルス電流を心押し台6および逆押し板5に付与し、電流補助スピニングとする工程と、
スピニングローラー3が3個である場合、各深絞りスピニング面1の円弧半径および整形スピニング面2の傾斜角度が順次徐々に減少し、それに応じて、流動スピニング段のテーパ構造の先端アールとスピニングコア型4との隙間も徐々に減少するように、スピニングローラー3の深絞りスピニング面1を動作ポジションにする工程と、
スピニングローラーの円弧半径の大きい順に、深絞りスピニング面1がワークピース7を順次徐々に深絞りスピニングを行い、深絞りスピニングが流動スピニング段の先端アールまで達したときにワークピース7の流動スピニングが完了し、ワークピース7の深絞り、薄肉化を完了し、次に整形スピニング面2に入り、薄肉されたワークピース7の表面に対して徐々に光整形を行うことによって、ワークピース7の深絞りスピニング、流動スピニングおよび整形スピニング過程が完了し、ディープカップ状部品全体の所望の肉厚が得られるまで、スピニングローラーの1回の送りで深絞り、流動および整形スピニングの3つの工程が完成するように、スピニングコア型4を回転させる工程とを含む。
【0011】
流動スピニング段の先端アールとスピニングコア型4の軸面との間の隙間が最も小さいスピニングローラー3は、ディープカップ状部品の成形後の最終的な肉厚を決定する。
【0012】
ディープカップ状部品の所望の肉厚に達した後、ディープカップ状部品の口部の余辺を切除する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来技術に対して、次のような利点および効果を有する。
(1)本発明は、深絞りスピニングと流動スピニング(または整形スピニング)機能を、1つのスピニングローラーにオフセット配置方式で巧みに集積して複合化し、深絞りスピニング、流動スピニング(または整形スピニング)の複数のスピニング工程の間のセットアップの交換、工程の切り替えおよび調整の時間を省いた。そして、セットアップを交換するたびにセットアップを再調整するという煩雑なプロセスを効果的に克服した。
(2)従来技術において、深絞りスピニング成形の際に、単一のスピニングローラーによる多パスを用いるか、同じ幾何パラメータの2つ(または複数)のスピニングローラー旋輪を用いて、繰り返し多パス成形を行い、各スピニングローラーの幾何パラメータが同じであるため、パス圧下量が制限され、この場合にはパス数を増加せざるを得ない。これは、作業時間の増加にもつながる。さらに重要なのは、ワークピース加工時間およびセットアップ交換および調整時間の延長により、ワークピースの製造工程が不連続になり、ワークピースが硬化して材料が破壊される。
本発明は、各スピニングローラーのオフセット配置を採用し、すなわちスピニングローラーの深絞りスピニング面1の弧面半径の差異が異なるか、整形スピニング面2の傾斜角度の差異が異なるか、流動スピニング段のテーパ構造の先端アールの位置が異なる。そのため、各スピニングローラーでは、深絞りスピニングに用いる弧状型面形状構造の相違により、スピニングコア型が1回転する周期毎に、各スピニングローラーは、ワークピースの異なる部位に圧力をかけ、パス圧下量を増加させ、スピニングパス(spinning pass)を減少させることに有利であり、生産効率を向上させるだけでなく、材料の加工過程が不連続であることから、最終的にワークピースが硬化して材料が破壊され、使用できないなどの欠陥を減少させることにも有利である。
(3)本発明は、オフセットスピニングを採用し、かつ各パスのスピニング毎に部分的に深絞りスピニング、流動スピニングおよび整形スピニング工程を完成させることができ、作業過程が連続するだけでなく、材料の硬化を効果的に防止し、生産効率を最大限に高めることができる。
(4)心押し台および逆押し板を利用してワークピースの中心領域およびエッジにパルス電流を印加することにより、ワークピースの有用表面と電極との動的接触による放電焼付を避けることができ、部品表面の仕上がりや精度の要求を図ることができる。最終的なトリミング工程では、アブレーションされた不要なエッジが切除され、高品質のスピニング部品が得られる。
電流補助成形を採用したことも材料の可塑性をさらに高めた。
逆押し板を設けることで、上記目的に加えて、深絞りスピニング成形の安定性を向上させて材料の座屈しわを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の全体構造を示す図であり、ここでは、オフセット配置原理を比較するために、3つのスピニングローラーが積み重ねられている。
【
図2】本発明の3つのスピニングローラーの実際のレイアウト構成を示す図である。
【
図3】本発明に係るスピニングローラーの一部断面構成を示す図である。
【
図4】本発明の3つのスピニングローラーを積み重ねたときの輪郭構造の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0016】
(実施例)
図1~
図4に示すように、本発明は、ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置を開示し、スピニングコア型4、心押し台6、およびスピニングコア型4の周方向に均等に配置された複数のスピニングローラー3を備える。各スピニングローラー3は、スピニングコア型4の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっている。各スピニングローラー3のスピニング面は、深絞りスピニング面1、流動スピニング段、整形スピニング面2を含む。前記オフセット配置とは、各スピニングローラー3の深絞りスピニング面1、流動スピニング段、整形スピニング面2がスピニングコア型4の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっている。
【0017】
図1は、本発明で3つのスピニングローラー(スピニングローラーA、スピニングローラーB、スピニングローラーCの順)の径方向および軸方向の相対位置の比較を容易にするために、3つのスピニングローラーを周方向の同一位置に配置したものである。実際の3つのスピニングローラーの円周位置は、
図2に示すようにスピニングコア型4の周囲に均一に配置されている。各スピニングローラーの型面形状は、
図3に示すように、図中のI段が主に深絞りスピニングに用いられ、II段が主に流動スピニングおよび/または整形スピニングに用いられる。
図1の左から右へのA、B、Cの3つのスピニングローラーのうち、スピニングローラーA、Bは、主に深絞りスピニングと流動スピニングに用いられ、スピニングローラーCは、主に深絞りスピニングと整形スピニングに用いられる。
【0018】
前記スピニングローラー3は、少なくとも3個である。前記オフセット配置は、以下である。
各スピニングローラー3の深絞りスピニング面1の断面線が円弧線であり、かつ各深絞りスピニング面1の円弧半径が順次徐々に減少する。
各スピニングローラー3の整形スピニング面2の断面形状が直線であり、回転順に応じて、最初の2つの隣接するスピニングローラー3の整形スピニング面2のスピニングコア型4の軸線に対する傾斜角度が同一または順次減少し、一方、3番目のスピニングローラー3の整形スピニング面2のスピニングコア型4の軸線に対する傾斜角度が最初の2つのスピニングローラー3の傾斜角度より小さい。
図3において、各スピニングローラーの整形スピニング面2は、その機能別に異なる傾斜角αに設計され、スピニングローラーAおよびBが流動スピニングに用いられ、α
A=α
B=3°を従来のパラメータで設計することができる。各パスのスピニング時に深絞りスピニング、流動スピニングが存在するため、明らかなスピニングローラー螺旋痕の発生を避けるため、3つのスピニングローラー3は、いずれも深絞りスピニングと整形スピニングの機能を持つように設計されており、α
C=0.5°とすることで、部品表面の整形効果を高めることができる。もちろん、具体的な応用要求に応じて、角度は、柔軟に変動する。
深絞りスピニング面1の円弧線と整形スピニング面2とが直線的に接する先端アールである各流動スピニング段がテーパ構造であり、かつ各流動スピニング段の先端アールが順次徐々にずれていく。
【0019】
上述した技術的特徴からわかるように、本発明のオフセット配置は、スピニングローラーの深絞りスピニング面1の弧面半径の差異が異なるか、整形スピニング面2の傾斜角度の差異が異なるか、流動スピニング段のテーパ構造の先端アールの位置が異なる。このように相違化することにより、深絞りスピニングと流動スピニング(または整形スピニング)機能を、1つのスピニングローラーにオフセット配置方式で巧みに集積して複合化し、深絞りスピニング、流動スピニング(または整形スピニング)の複数のスピニング工程の間のセットアップの交換、工程の切り替えおよび調整の時間を省いた。
【0020】
従来技術において、深絞りスピニング成形の際に、単一のスピニングローラーによる多パスを用いるか、同じ幾何パラメータの2つ(または複数)のスピニングローラー旋輪を用いて、繰り返し多パス成形を行い、各スピニングローラーの幾何パラメータが同じであるため、パス圧下量が制限され、この場合にはパス数を増加せざるを得ない。これは、作業時間の増加にもつながる。さらに重要なのは、ワークピース加工時間およびセットアップ交換および調整時間の延長により、ワークピースの製造工程が不連続になり、ワークピースが硬化して材料が破壊される。
【0021】
上述のように、本発明において、各スピニングローラーでは、深絞りスピニングに用いる弧状型面形状構造の相違により、スピニングコア型が1回転する周期毎に、各スピニングローラーは、ワークピースの異なる部位に圧力をかけ、パス圧下量を増加させ、スピニングパスを減少させることに有利であり、生産効率を向上させるだけでなく、材料の加工過程が不連続であることから、最終的にワークピースが硬化して材料が破壊され、使用できないなどの欠陥を減少させることにも有利である。
【0022】
本発明の最初の2つの隣接するスピニングローラー3(深絞りスピニング面1の円弧半径が最も大きいものを1つ目とし、すなわちスピニングローラーAである)の傾斜角度が同一であることとは、2°~3°の範囲で同じであることを意味し、順次減少することとは、2°~3°の範囲で順次減少することを意味し、前記3番目のスピニングローラー3(深絞りスピニング面1の円弧半径が最も小さく、すなわちスピニングローラーCである)の傾斜角度は、0.5°~1°である。しかし、ワークピースの実際の状況に応じて、他の角度であってもよい。
【0023】
上述したように、深絞りスピニングの1パス当たりの圧下量を増加させるために、深絞りスピニングを3つのスピニングローラーで同時に行い、3つのスピニングローラーの円弧型面を異なる円弧半径Rに設計している(
図4参照)。
【0024】
図4において、各スピニングローラーが深絞りスピニングの圧下量に寄与できるようにするためには、前から後ろ(すなわちスピニングローラーAからスピニングローラーC)へ円弧半径Rを徐々に小さくし、すなわちR
1>R
2>R
3とし、かつ後のスピニングローラーの深絞りスピニング段の円弧輪郭が前のスピニングローラーの深絞りスピニング段の円弧輪郭を超えるようにし、前のスピニングローラーによる深絞りスピニング後のワークピース表面の局部に再び圧力をかけ、パスの圧下量を増加する効果を奏する。
【0025】
本発明のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置は、ワークピース7の縁に当接する逆押し板5をさらに含む。逆押し板5と心押し台6にそれぞれ電極が設けられ、心押し台6に正電極があり、逆押し板5が負極である。スピニング中に、ワークピース7の中心領域から心押し台6および逆押し板5を介してエッジへパルス電流が流れ、電流補助スピニングとなる。ワークピースの有用表面と電極との動的接触による放電焼付を避けることができ、部品表面の仕上がりや精度の要求を図ることができる。最終的なトリミング工程では、アブレーションされた不要なエッジが切除され、高品質のスピニング部品が得られる。ワークピース7に合金構造鋼材料が用いられる場合、電流補助スピニング時のパルス電流は、1100A~1400Aである。他の材料に必要な電流は、実際の用途に依存する。
【0026】
電流補助成形を採用したことも材料の可塑性をさらに高め、特に、ディープカップ状薄肉部品のスピニング成形には、より良好な材料の可塑性が要求される。電流補助スピニング成形の際、従来の電極接続方式は、2つの電極の一方を部材表面に接続していたが、このような動的接触がスパークを発生させ、部材表面をアブレーションする現象は、今のところ克服できていない。そこで本発明では、電流補助スピニング方法として、上述したように、心押し台6および逆押し板5を介して、ワークピース7の中心領域からエッジにパルス電流を流す方法を提案する。
【0027】
そのために、本発明は、逆押し板5および心押し台6に電流を印加する方法を提案し、その原理や構造について、
図1に示されている。逆押し板を設けることで、上記目的に加えて、心絞りスピニング成形の安定性を向上させて材料の座屈しわを防止することができる。
【0028】
本発明の実施例において、スピニングローラー3は、3個であり、スピニングコア型4の周方向に120°に均一に配置されている。実際の必要性に応じて、その数を2個以上とすることができる。
【0029】
本発明のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法は、以下のステップによって実現される。
ステップ1:円板状のワークピース7を心押し台6でスピニングコア型4にセンタリングして押し付ける。
ステップ2:ワークピース7の方向に向かって逆押し板5をワークピース7のエッジに押し付けるように、スピニングコア型4の軸方向に沿ったスラスト力を逆押し板5に付与し、ワークピース7の中心領域からエッジへ流れるパルス電流を心押し台6および逆押し板5に付与し、電流補助スピニングとする。
ステップ3:スピニングローラー3が3個である場合、各深絞りスピニング面1の円弧半径および整形スピニング面2の傾斜角度が順次徐々に減少し、それに応じて、流動スピニング段のテーパ構造の先端アールとスピニングコア型4との隙間も徐々に減少するように、スピニングローラー3の深絞りスピニング面1を動作ポジションにする。
ステップ4:スピニングローラーの円弧半径の大きい順に、深絞りスピニング面1がワークピース7を順次徐々に深絞りスピニングを行い、深絞りスピニングが流動スピニング段の先端アールまで達したときにワークピース7の流動スピニングが完了し、ワークピース7の深絞り、薄肉化を完了し、次に整形スピニング面2に入り、薄肉されたワークピース7の表面に対して徐々に光整形を行うことによって、ワークピース7の深絞りスピニング、流動スピニングおよび整形スピニング過程が完了し、ディープカップ状部品全体の所望の肉厚が得られるまで、スピニングローラーの1回の送りで深絞り、流動および整形スピニングの3つの工程が完成するように、スピニングコア型4を回転させる。最後にディープカップ状部品の口部の余辺が切除される。
【0030】
流動スピニング段の先端アールとスピニングコア型4の軸面との間の隙間が最も小さいスピニングローラー3は、ディープカップ状部品の成形後の最終的な肉厚を決定する。
【0031】
以上のようにして、本発明を好適に実現することができる。上記工程では3つのスピニングローラーを採用したが、実際の応用では、具体的な状況および応用要求に応じて、構造や形状は順次類推でき、数は1つ、2つ、3つ、4つ以上であってもよい。
【0032】
本発明の実施形態は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の精神および原理から逸脱することなく、その他のいかなる変更、修飾、代替、組み合わせ、簡略化も、等価な置換形態であるべきであり、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【0033】
(付記)
(付記1)
スピニングコア型(4)、心押し台(6)、およびスピニングコア型(4)の周方向に均等に配置された複数のスピニングローラー(3)を備えたディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
各スピニングローラー(3)は、スピニングコア型(4)の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっており、
各スピニングローラー(3)のスピニング面は、深絞りスピニング面(1)、流動スピニング段および整形スピニング面(2)を含み、
前記オフセット配置とは、各スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)、流動スピニング段および整形スピニング面(2)がスピニングコア型(4)の軸方向および径方向にそれぞれオフセット配置になっていることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【0034】
(付記2)
付記1に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
前記スピニングローラー(3)は、少なくとも3個であり、
前記オフセット配置は、具体的に、
各スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)の断面線が円弧線であり、かつ各深絞りスピニング面(1)の円弧半径が順次徐々に減少し、
各スピニングローラー(3)の整形スピニング面(2)の断面形状が直線であり、回転順に応じて、最初の2つの隣接するスピニングローラー(3)の整形スピニング面(2)のスピニングコア型(4)の軸線に対する傾斜角度が同一または順次減少し、一方、3番目のスピニングローラー(3)の整形スピニング面(2)のスピニングコア型(4)の軸線に対する傾斜角度が最初の2つのスピニングローラー(3)の傾斜角度より小さく、
深絞りスピニング面(1)の円弧線と整形スピニング面(2)とが直線的に接する先端アールである各流動スピニング段がテーパ構造であり、かつ各流動スピニング段の先端アールが順次徐々にずれていくことを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【0035】
(付記3)
付記2に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
前記最初の2つの隣接するスピニングローラー(3)の傾斜角度が同一であることは、2°~3°の範囲で同じであることを意味し、順次減少することは、2°~3°の範囲で順次減少することを意味し、前記3番目のスピニングローラー(3)の傾斜角度は、0.5°~1°であることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【0036】
(付記4)
付記3に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
前記ディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置は、
ワークピース(7)の縁に当接する逆押し板(5)をさらに含み、
逆押し板(5)と心押し台(6)にそれぞれ電極が設けられ、心押し台(6)に正電極があり、逆押し板(5)が負極であり、
スピニング中に、ワークピース(7)の中心領域から心押し台(6)および逆押し板(5)を介してエッジへパルス電流が流れ、電流補助スピニングとなることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【0037】
(付記5)
付記4に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
前記ワークピース(7)は、合金構造鋼であり、電流補助スピニング時のパルス電流は、1100A~1400Aであることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【0038】
(付記6)
付記5に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置であって、
スピニングローラー(3)は、3個である場合、スピニングコア型(4)の周方向に120°に均一に配置されていることを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形装置。
【0039】
(付記7)
付記1~6のいずれか一つに記載の装置で実現されるディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法であって、
円板状のワークピース(7)を心押し台(6)でスピニングコア型(4)にセンタリングして押し付ける工程と、
ワークピース(7)の方向に向かって逆押し板(5)をワークピース(7)のエッジに押し付けるように、スピニングコア型(4)の軸方向に沿ったスラスト力を逆押し板(5)に付与し、ワークピース(7)の中心領域からエッジへ流れるパルス電流を心押し台(6)および逆押し板(5)に付与し、電流補助スピニングとする工程と、
スピニングローラー(3)が3個である場合、各深絞りスピニング面(1)の円弧半径および整形スピニング面(2)の傾斜角度が順次徐々に減少し、それに応じて、流動スピニング段のテーパ構造の先端アールとスピニングコア型(4)との隙間も徐々に減少するように、スピニングローラー(3)の深絞りスピニング面(1)を動作ポジションにする工程と、
スピニングローラーの円弧半径の大きい順に、深絞りスピニング面(1)がワークピース(7)を順次徐々に深絞りスピニングを行い、深絞りスピニングが流動スピニング段の先端アールまで達したときにワークピース(7)の流動スピニングが完了し、ワークピース(7)の深絞り、薄肉化を完了し、次に整形スピニング面(2)に入り、薄肉されたワークピース(7)の表面に対して徐々に光整形を行うことによって、ワークピース(7)の深絞りスピニング、流動スピニングおよび整形スピニング過程が完了し、ディープカップ状部品全体の所望の肉厚が得られるまで、スピニングローラーの1回の送りで深絞り、流動および整形スピニングの3つの工程が完成するように、スピニングコア型(4)を回転させる工程とを含むことを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法。
【0040】
(付記8)
付記7に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法であって、
流動スピニング段の先端アールとスピニングコア型(4)の軸面との間の隙間が最も小さいスピニングローラー(3)は、ディープカップ状部品の成形後の最終的な肉厚を決定することを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法。
【0041】
(付記9)
付記8に記載のディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法であって、
ディープカップ状部品の所望の肉厚に達した後、ディープカップ状部品の口部の余辺を切除することを特徴とするディープカップ状薄肉部品電流補助複合スピニング成形方法。