(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】両面恒温織物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 11/00 20060101AFI20240404BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20240404BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240404BHJP
D03D 15/217 20210101ALI20240404BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20240404BHJP
D03D 15/547 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
D03D15/20 100
D03D15/283
D03D15/217
D03D15/37
D03D15/547
(21)【出願番号】P 2022581622
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 CN2022084895
(87)【国際公開番号】W WO2023050751
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】202111166553.0
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522504640
【氏名又は名称】ヤン,イェン
【氏名又は名称原語表記】YANG,YAN
【住所又は居所原語表記】ROOM 203A,BUILDING 1, YARD 56,ZHAOQUANYING,CHANGJIN ROAD,SHUNYI DISTRICT,BEIJING,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,タオ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特公平04-027806(JP,B2)
【文献】特開2015-183326(JP,A)
【文献】特開2021-091982(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108977988(CN,A)
【文献】中国実用新案第207549667(CN,U)
【文献】中国実用新案第201967672(CN,U)
【文献】中国実用新案第213108511(CN,U)
【文献】国際公開第89/004351(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106676709(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0332505(US,A1)
【文献】中国実用新案第202112342(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第114211829(CN,A)
【文献】特開2018-127873(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103215672(CN,A)
【文献】特表2021-512228(JP,A)
【文献】特開2020-059952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00 - 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維と第2繊維とを含む両面恒温織物であって、
前記第1繊維は麻繊維であり、
前記第2繊維は、その表面にネジ状溝を有する螺旋繊維であり、
前記第1繊維と前記第2繊維とが複合して前記織物が形成され、該織物の一方の側が前記第1繊維であり、他方の側が前記第2繊維であり、着用時に第1繊維側と第2繊維側のいずれが内側又は外側を向いていてもよく、
前記第2繊維は、その表面をレーザー彫刻またはエッチングして作られたネジ状溝を有する螺旋繊維であり、
前記第2繊維は、ポリエステル繊維と、前記ポリエステル繊維の周囲に被覆された日焼け止め反射コーティングとを含み、前記ネジ状溝は、前記日焼け止め反射コーティングの外側に設けられており、
前記日焼け止め反射コーティングの成分は、アルキド樹脂と日焼け止めナノ粒子を含み、両者の重量比は1:(0~0.3)であり、
前記アルキド樹脂は、シリコーン変性アルキド樹脂であり、
前記第1繊維と前記第2繊維とを二重織物に編成することを特徴とする両面恒温織物。
【請求項2】
前記第2繊維の繊度が2.0dtex~5.0dtexであることを特徴とする請求項1に記載の両面恒温織物。
【請求項3】
前記麻繊維が変性麻繊維であることを特徴とする請求項1に記載の両面恒温織物。
【請求項4】
前記シリコーン変性アルキド樹脂は、ポリアルキルシリコーン樹脂、ポリアリレートシリコーン樹脂またはポリアルキルアリールシリコーン樹脂とアルキド樹脂を共縮重合して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の両面恒温織物。
【請求項5】
前記螺旋繊維の外面は、台形、矩形または三角形である歯型を呈することを特徴とする請求項4に記載の両面恒温織物。
【請求項6】
前記歯型の歯型角は0~30°であり、歯先から歯底までの幅は0.1~3.0μmであり、ピッチは0.1~5.0μmであることを特徴とする請求項5に記載の両面恒温織物。
【請求項7】
前記日焼け止めナノ粒子の粒径範囲が0.5~10μmであることを特徴とする請求項5に記載の両面恒温織物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の両面恒温織物の製造方法において、前記製造方法は、
前記第2繊維の製造と、
両面恒温織物の製造と、を含み、
前記第2繊維の製造は、
(1)アルキド樹脂を溶融または溶剤に溶解し、日焼け止めナノ粒子を加え、20-60分間攪拌する工程と、(2) 工程(1)で得られた物質を粘稠状の半固体の形態にする工程と、(3)溶剤を完全に除去または降温して固体薄膜にし、前記日焼け止め反射コーティングを得る工程と、(4) 前記ポリエステル繊維の周囲に日焼け止め反射コーティングを被覆する工程と、を含む方法1、または、
前記方法1の工程(1)と同一の工程と、(2)前記工程(1)で得られた物質を粘稠状の半固体の形態にする工程と、(3)前記工程(2)で得られた前記粘稠状の半固体を前記ポリエステル繊維の周囲に塗布する工程と、を含む方法2により行われる、両面恒温織物の製造方法。
【請求項9】
前記方法1について、工程(3)で得られた前記日焼け止め反射コーティングに
、前記ネジ状溝を設けることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記方法1または前記方法2における工程(2)について、粘稠状の半固体にする工程は、A.増粘剤を加えることと、B.溶解の場合、溶剤の一部を除去することと、C.溶融の場合は、温度を下げて粘稠状にすることとを含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記方法1または前記方法2における工程(1)において、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムのうちの少なくとも1種を含む結着剤を添加することを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は紡績技術分野に関し、特に両面恒温織物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果と都市ヒートアイランド効果の作用により、地球温暖化が進み、極端な天気の発生がますます頻繁になり、夏の高温天気の持続時間と高温度もますます深刻化している。高温の天気に伴い、冷房とエアコンのヒートポンプ設備の使用量と需要量は年々増加している。しかし、従来の冷房設備の大量使用は莫大なエネルギー消費を生みやすく、その中でCFC、HCFC類の工業質はオゾン層にも破壊作用がある。そのため、新しい環境保護冷却製品の研究は環境保護と人々の生活の質を高める重要な課題となっている。その中で、恒温織物は輻射冷房と熱反射などの機能を発揮することで人体温度の制御を実現でき、省エネで環境に配慮し、便利で有効な熱管理手段である。
【0003】
恒温織物は主に輻射冷房、熱反射、変温材料などの技術を利用して、人体の皮膚接触温度を快適に感じる範囲に維持する。すなわち、寒い時には保温作用を発揮し、暑い時には降温作用を発揮する。太陽輻射のエネルギーの大部分は可視光と赤外光領域に集中しており、材料の選択と構造の設計により、太陽輻射0.3μm~2.5μm帯域で高い反射率を持ち、人体熱輻射7μm~14μm帯域で高い放射率を持つ織物を製造することで、「大気窓」で低温宇宙空間と高層大気圏との間で人体が輻射熱交換できるようにし、冷房効果を得ることができる。また、太陽光に対する材料の反射を高め、太陽光の透過と吸収を減らすことで、日射による熱蓄積を低減し、紫外線による人体の健康被害を低減することができる。
【0004】
台湾特許第I707906号公報には、グラフェンが特殊な熱学的特性と優れた導電性を有することを利用して、低沸点と高表面張力の溶媒を組み合わせてナノグラフェンシート懸濁溶液を調製し、ナノグラフェンシート懸濁溶液と疎水性樹脂を混合してグラフェン樹脂溶液を調製し、塗布または印刷によりグラフェン樹脂溶液を織物組織に被覆、練り込み、グラフェン恒温層を形成するグラフェン恒温織物が開示されている。環境温度が高い場合、グラフェン恒温層は人体皮膚の熱の散逸を加速し、涼しくする効果を達成することができ、環境温度が低い場合、グラフェン恒温層は人体皮膚の異なる部位の温度を均一化することができ、しかも人体皮膚から放射される遠赤外線を吸収及び放出することによって、同時に保温と恒温の効果を達成する。しかし、人間がグラフェンに長期的に接触した結果は完全に確定することはできず、グラフェンを人体に長期的に接触する織物に適用することは安全性の保証がなく、グラフェンは製造過程で環境への汚染が大きい。
【0005】
米国特許第11058161号公報には、少なくとも1層の金属層を含む熱反射織物が開示されており、放射線障壁を形成することにより、人体の外部放射に対する熱損失を低減することができる。金属層と、金属層の低放射率の表面を露出させるためにエアギャップが良好な3D経編地とを結合する。3D経編地は厚みがあるため、金属層と他の表面との間に絶縁を与えることができる。この織物は体の熱をシステムに反射して体の熱損失を補うことができるが、保温効果しかなく、高温の天気で体の温度を下げて恒温を実現することはできない。
【0006】
中国特許第104127279号公報には、機能材料担体層と皮膚に近い保温層とを外側から内側に向かって含む多機能自発温度調節フィルムが開示されている。機能材料担体層は水を通さない柔軟な材料からなる密封空洞構造で、冷房用または暖房用化学原料を搭載している、保温層は防水保温性能を持つ材料で構成されている。暖房用化学原料を使用すると、機能材料担体層に暖房効果を発揮することができる、冷房用化学原料を使用すると、保温層が局部的な凍傷を引き起こすことを回避できると同時に、機能材料担体層と皮膚との間に均一で安定した熱交換が発生し、長期的な冷却効果を発揮する。しかし、このフィルムは通気、透湿機能が乏しく、また温度制御効果は時効性があるため、日常の服装には応用できない。
【0007】
中国実用新案第211747098号公報には、織物製の上着、温度調節モジュール、温度検出センサー、制御モジュール及びリチウム電池パックを含む恒温動作可能な空調服が開示されている。半導体冷却フィンと放熱ファンで冷却し、その間に放熱フィンを設け、制御モジュールはリチウム電池パック、温度調節モジュール、温度検出センサーに接続されており、リチウム電池パックは電源として機能し、温度検出センサーは温度を検出して温度情報を制御モジュールにフィードバックし、制御モジュールは設定温度に応じて温度調節モジュールをオンにして冷房または暖房を実現する。この服装は良好な冷暖房機能を持っているが、製造プロセスが複雑で、コストが高く、しかもエネルギー消費量ゼロの個人熱管理を実現できない。
【0008】
中国特許公開第113136724号公報には、輻射冷房織物が開示されている。この織物には、絹繊維を含有し、輻射冷房織物は、繊維に付着する屈折率が1.6以上3.0未満の素材を含み、繊維に付着した屈折率の高い素材を繊維と重ね合わせることで紫外線反射率を高め、未処理の織物に比べて紫外光の反射率を42%向上させ、太陽光の波長帯全体での反射率を95%にし、処理後の織物の日光下での温度を室温より3.6度程度低くするとともに、肌にかぶせると、綿の織物よりも12度程度低くすることができる。しかし、この織物は保温効果がなく、低温時に恒温環境を作ることができない。
【0009】
以上のように、従来の特許では、保温と降温の機能を兼ね備えた恒温性織物を製造し、人体の熱管理の日常的な服装に応用できるようにするために便利で効果的な省エネの方法が不足している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本願実施例は、従来技術に存在する技術的欠点を解決するために、両面恒温織物及びその製造方法を提供する。
【0011】
本願は、麻繊維である第1繊維と、その表面にネジ状溝をさらに有する螺旋繊維である第2繊維とを含む両面恒温織物であって、前記第1繊維と前記第2繊維とが複合して前記織物が形成され、該織物の一方の側が前記第1繊維であり、他方の側が前記第2繊維であり、着用時に第1繊維側と第2繊維側のいずれが内側又は外側を向いていてもよい両面恒温織物を提供する。
【0012】
さらに、前記麻繊維(天然麻繊維)は変性麻繊維である。
【0013】
さらに、前記第2繊維は、ポリエステル繊維と、前記ポリエステル繊維の周囲に被覆された日焼け止め反射コーティングとを含み、前記螺旋状溝は、前記日焼け止め反射コーティングの外側に設けられている。
【0014】
さらに、前記日焼け止め反射コーティングの成分は、アルキド樹脂と日焼け止めナノ粒子を含み、両者の重量比は1:(0~0.3)である。
【0015】
さらに、前記アルキド樹脂は、シリコーン変性アルキド樹脂であり、好ましくは、前記シリコーン変性アルキド樹脂は、ポリアルキルシリコーン樹脂、ポリアリレートシリコーン樹脂またはポリアルキルアリールシリコーン樹脂とアルキド樹脂を共縮重合して得られるものである。
【0016】
さらに、前記螺旋繊維の外面は、台形、矩形または三角形である歯型を呈し、好ましくは、前記歯型の歯型角は0~30°であり、歯先から歯底までの幅は0.1~3.0μmであり、ピッチは0.1~5.0μmである。
【0017】
さらに、前記日焼け止めナノ粒子の粒径範囲は0.5~10μmである。
【0018】
本発明の別の発明点は、上記いずれかに記載の両面恒温織物の製造方法を提供し、前記製造方法は、
前記第2繊維の製造と、
前記恒温織物の製造と、を含み、
前記第2繊維の製造は、
(1)アルキド樹脂を溶融または溶剤に溶解し、日焼け止めナノ粒子を加え、20-60分間攪拌する工程と、(2)工程(1)で得られた物質を粘稠状の半固体の形態にする工程と、(3)溶剤を完全に除去または降温して固体薄膜にし、前記日焼け止め反射コーティングを得る工程と、(4)前記ポリエステル繊維の周囲に前記日焼け止め反射コーティングを被覆する工程と、を含む方法1、または、
(1)前記方法1の工程(1)と一致する工程と、(2)前記工程(1)で得られた物質を粘稠状の半固体の形態にする工程と、(3)前記工程(2)で得られた前記粘稠状の半固体を前記ポリエステル繊維の周囲に塗布する工程と、を含む方法2により行われ、
前記両面恒温織物の製造は、請求項1~8のいずれか1項に記載の前記第1繊維と前記第2繊維とを二重織物に編成することにより行われる。
【0019】
さらに、前記方法1について、前記工程(3)で得られた前記日焼け止め反射コーティングに、上記のいずれかに記載の前記ネジ状溝を設けることを含み、
さらに、前記方法1または前記方法2における前記工程(2)について、粘稠状の半固体にする方法は、A.増粘剤を加えることと、B.溶解の場合、溶剤の一部を除去することと、C.溶融の場合は、温度を下げて粘稠状にすることとを含む。
【0020】
さらに、前記方法1または前記方法2における前記工程(1)において、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムのうちの少なくとも1種を含む結着剤を添加する。
【0021】
上記の技術案で、本発明が提供する技術案は、少なくとも、本願における両面恒温織物は両面着用でき、外側は外向きでも内向きでもよく、それに応じて内側は内向きでも外向きでもよく、着用の仕方によって異なる効果を有するという利点を有する。
【0022】
シリコーン変性アルキド樹脂は光反射性、断熱性、屋外耐候性と耐紫外性能に優れている。均一沈殿法で得られた日焼け止めナノ粒子を一定の割合でシリコーン変性アルキド樹脂に添加することで、日焼け止め、光反射能力をさらに向上させることができる。ネジ構造を導入すると、異なる入射角度での太陽光に対する反射が大きくなる。麻繊維は本来のほぐれ、通気、熱伝導が速く、涼感にあふれ、汗が肌につかず、防虫・防カビ、静電気が少ないという特性を維持しながら、部分的な疎水的特性を持っており、その導湿・散湿機能を強化している。それ以上の透湿、通気孔の設計や織物密度の低減を行わなくても良好な導湿・通気作用を発揮し、出来上がった生地が裏面に着た時に良好な保温作用を持つことを保証している。したがって、本発明で提供される両面恒温織物は、表裏面で着用することで、輻射放熱と片方向導湿によって高温条件下での降温を選択的に実現したり、熱反射によって低温条件下での保温を実現したりすることができる。ダブル生地構造は放熱性と通気性を高め、織物内部に空気孔、媒体粒子、ポリマーナノファイバーなどのランダムナノ構造を導入することで、強いミー散乱を提供し、日射帯域の効率的な制御を実現する。合成繊維と天然繊維をそれぞれ改良して混紡することで、生地の快適性が大幅に向上するとともに、合成繊維と天然繊維の吸湿性の違いに基づいて、一方向の吸湿特性を持つ生地を製造することができ、生地のドライ感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本願は、本発明の目的、技術案及び有益な効果をより明確にするために、以下の図面を提供して説明する。
【
図1】本願の実施例に示す螺旋溝の構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本願の具体的な実施形態について説明する。
本発明において、本明細書で使用する科学的および技術的名詞は、特に明記されていない限り、当業者が通常理解する意味を有する。また、本文で使用する試薬、材料と操作手順はすべて相応の分野で広く使用されている試薬、材料と通常の手順である。
【0025】
(実施例1)
本実施例は、温度調節可能な両面恒温織物を提供し、第1繊維と第2繊維を含み、両者が複合して二重繊維構造になっており、複合方式は従来技術での二重複合の方式を参照することができ、好ましくは裏経表緯の継ぎ合わせ方法を用いて内外層生地を複合させて両面織物を形成する。
【0026】
前記第1繊維は麻繊維であり、天然麻繊維が好ましい。前記第2繊維は、その表面にネジ状溝をさらに有する螺旋繊維である。
【0027】
さらに好ましい実施形態として、前記麻繊維は変性麻繊維であることが好ましく、天然麻繊維を採用することにより、人体に対してより健康的であり、その吸湿性がより高い。これを変性することにより、吸湿性とともに熱伝導性を高めることができる。好ましくは、変性麻繊維はポリブチレンサクシネート(PBS)に麻繊維をグラフト共重合したものであり、このように変性された麻繊維は良好な片方向導湿機能を有し、また優れた熱伝導性能を有し、織物内層として実用性が高く、効果的である。
【0028】
さらに好ましい実施態様として、改質方法として、麻繊維を過マンガン酸カリウム溶液で前処理すること、デカリンを溶媒としてコハク酸とブタンジオールを触媒のSnCl2と混合した後、まず150℃から160℃の温度条件で1から2時間反応させてエステル化が完全に終わった後、190℃から200℃まで昇温し、前処理した麻繊維を加えてグラフト共重合させる。10~12時間保温し、変性麻繊維を得る。
【0029】
さらに好ましい実施形態として、前記第2繊維の繊度は、2.0dtex~5.0dtexであり、例えば2.0dtex、2.5dtex、3.0dtex、3.5dtex、4.0dtex、4.5dtex、5.0dtexなどであり、繊維径範囲は15.0~30.0μmである。この繊度の範囲の繊維を採用することで、本発明の適用を満足することができる。
【0030】
さらに好ましい実施形態として、前記第2繊維は、ポリエステル繊維と、前記ポリエステル繊維の周囲に被覆された日焼け止め反射コーティングとを含み、前記螺旋状溝は、前記日焼け止め反射コーティングの外側に設けられている。好ましくは、前記ポリエステル繊維はポリエチレンテレフタレートである。
【0031】
さらに好ましい実施態様として、前記日焼け止め反射コーティングの成分は、アルキド樹脂と日焼け止めナノ粒子を含み、両者の重量比は1:(0~0.3)である。
【0032】
前記アルキド樹脂はシリコーン変性アルキド樹脂であることが好ましい。
【0033】
さらに好ましい実施態様として、前記シリコーン変性アルキド樹脂は、ポリアルキルシリコーン樹脂、ポリアリレートシリコーン樹脂またはポリアルキルアリールシリコーン樹脂とアルキド樹脂とを共縮重合して得られるものである。
【0034】
さらに好ましい実施形態として、前記螺旋繊維の外面は、台形、矩形または三角形である歯型を呈し、より好ましくは台形と矩形であり、最も好ましくは台形である。
【0035】
さらに好ましい実施形態として、前記歯型の歯型角は0~30°であり、好ましくは17~23°であり、例えば17°、18°、19°、20°、21°、22°、23°である、歯先から歯底までの幅は0.1~3.0μmであり、好ましくは0.2~1μmであり、例えば0.2μm、0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmであり、ピッチは0.1~5.0μmであり、好ましくは0.5~2μmであり、例えば0.5μm、0.8μm、1.0μm、1.3μmである。
【0036】
さらに好ましい実施態様として、前記日焼け止めナノ粒子の粒径範囲は0.5~10μm、好ましくは2~6μmであり、この範囲における粒子は日焼け止め性能と比表面積のバランスをとることができ、小さすぎると日焼け止め強度や効果が不足し、大きすぎると比表面積が小さくなり、日焼け止め性能に影響を及ぼす。さらに重要なことは、この大きさのナノ粒子が本発明のシリコーン変性アルキド樹脂に導入されて、強いミー散乱を提供して、日射帯域に対する効率的な制御を実現して、温度調節に役立つことである。
【0037】
さらに好ましい実施形態として、前記日焼け止めナノ粒子は、TiO2、ZnO、SiO2、ZrO2、CeO2、MgO、Al2O3、Fe2O3、Fe3O4、MgSiO3、Al2SiO5、BaCO3、BaSO4、玉石粉、雲母粉、石英砂、ドロマイト、ろう石、ボルネオール、ケイ酸カルシウム、ポリエチレン(PE)、ZrN、AlN、SiN、BN、Si3N4、SiC、Zn(NO3)2、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、グラファイト、カーボンナノチューブ、アルミニウム-カーボンナノチューブ、フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン、シリコーン変性アクリル樹脂またはフッ素樹脂、クロロトリフルオロエチレン、サリシレート、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、トリメトキシベンゾエート、p-アミノ安息香酸、フェニルシンナメート、カンファー誘導体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールとの共重合体、フォルムアミジン中ベンゾオキサジノンの1種または2種以上を含む。
【0038】
本実施例の案は一定の温度調節効果があり、比較的恒温の状態を保つことができる。
【0039】
暑い日や日差しが強い時は、第2繊維を外側に向けて着ることができる。第2繊維以外の特定の日焼け止め反射コーティングは、太陽からの熱輻射の波長帯で高い反射性を有する。さらに重要なことは、第2繊維のある側面に設けられた特定の螺旋溝は、特に歯型角が17~23°の場合、照射された日光を溝で効率的に反射・屈折させるとともに、いくつかの拡散反射現象が存在し、その共同作用は降温に大きな役割を果たす。また、第2繊維中のアルキド樹脂、特にシリコーン変性アルキド樹脂は、強い保温効果を有し、外界の高温が体内に入るのを大幅に阻止することができる。上記日焼け止め反射コーティングの特殊な反射性、螺旋溝の特殊な構造、及びアルキド樹脂によって、三者の相乗作用により、降温と温度調節に優れた効果がある。また、内側の天然改質麻繊維は吸湿、吸熱、片方向導湿などの作用が強く、降温にも有利で、人体をより快適にする。総合的に言えば、温度を下げて暑さを防ぐ効果が高い。
【0040】
寒い日には、第2繊維を内側に向けて着用することが好ましい。太陽からの熱輻射の波長帯と人体からの熱輻射の波長帯が重ならないため、第2繊維にある特定の日焼け止め反射コーティングは人体からの熱輻射の波長帯に高い吸収性を有し、逆に着用したときに保温効果を発揮する。一方、第2繊維中のアルキド樹脂、特にシリコーン変性アルキド樹脂は、強い保温効果を持ち、体内温度が失われないように最大限に保つことができる。さらに重要なのは、外側の麻繊維は吸光性に優れており、体内温度の保持や上昇に対しては、優れた保持作用を有する。
【0041】
本実施例は特定の大きさの日焼け止め粒子とシリコーン変性アルキド樹脂及び特定の構造の螺旋繊維を結合または併用することで、織物の温調作用を大幅に増加させ、総合効果を向上させた。
(実施例2)
【0042】
実施例1に加えて、本実施例は両面恒温織物の製造方法であり、その製造方法は以下の通りである。
第2繊維の製造:方法1:(1)アルキド樹脂を溶融または溶剤に溶解し(溶解度が60~100%であればよく、すなわち不完全に溶解してもよい)その後、加熱条件下、日焼け止めナノ粒子を加え、20-60分間攪拌する、(2)(1)で得られた物質を粘稠状の半固体の形態にする、(3)溶剤を完全に除去または降温して固体薄膜にし、前記日焼け止め反射コーティングを得る、(4)次に、前記ポリエステル繊維の周囲に前記日焼け止め反射コーティングを被覆する、ここでのアルキド樹脂は乾性または半乾性の樹脂を選択できる。溶剤はアルキド樹脂を部分的に溶解できるものであればよい、例えばエステル、アルコール、ケトン系溶剤である。
方法2:(1)方法1の手順(1)と一致する、(2)(1)で得られた物質を粘稠状の半固体の形態にする、(3)手順(2)で得られた前記粘稠状の半固体を前記ポリエステル繊維の周囲に塗布する。
両面恒温織物の製造:そして、第1繊維と前記第2繊維を二重織物に編成する。編成方法は従来の二重生地に従えばよく、好ましくは裏経表緯の継ぎ合わせ方法を用いて内外層生地を複合させて両面織物を形成するような織り方を採用する。
【0043】
さらに好ましい実施形態として、上記方法1について、手順(3)で得られた前記日焼け止め反射コーティング、すなわち一方の側面に上記のネジ状溝を設ける。その表面をレーザー彫刻またはエッチングして作られたネジ繊維が好ましく、良好な光反射と熱反射性能を有する、織物の外層である。
【0044】
さらに好ましい実施態様としては、上記方法1または方法2における手順(1)に、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムのうちの少なくとも1種を含む結着剤を加える。
【0045】
さらに好ましい実施態様として、上記方法1または方法2における手順(2)について、粘稠状の半固体にする方法は、A.増粘剤を加える、B.溶解の場合、溶剤の一部を除去する、すなわち樹脂がゲル状の場合、溶剤除去操作を停止する、C.溶融の場合は、温度を下げて粘稠にすることを含む。
実施例3
【0046】
実験例:本発明の実施例2により製造された両面恒温織物。
比較例1:実験例における日焼け止め反射コーティングを加えず、その他は実験例と一致した。
比較例2:実験例における日焼け止めナノ粒子を加えず、その他は実験例と一致した。
比較例3:実施例におけるアルキド樹脂を加えず、代わりにポリエステル繊維を圧延機に入れ、日焼け止めナノ粒子液に浸し、ディップ圧延ローラー群のディップ圧延を経て日焼け止めナノ粒子をポリエステル繊維の構造面にマイクロナノ押し当てし、乾燥後に日焼け止めナノ粒子にまみれたポリエステル繊維を形成した。その他は実験例と一致した。
比較例4:実験例における螺旋溝を表面にバンプが多く含まれる粗い構造に修正し、その他は実験例と一致した。
比較例5:実験例における変性麻繊維を麻繊維に修正し、その他は実験例と一致した。
【0047】
実験方法:
1.10℃の条件下で湯たんぽで人体を模擬し、実施例1及び比較例1~5の恒温両面織物を湯たんぽに被せ、異なる両面恒温織物の保温性能を反映するように湯たんぽの温度の経時変化を測定する。
結果は次の表のとおりである。
【0048】
2.実施例1と比較例1~5の両面恒温織物について太陽光反射率と放射率の測定を行い、その冷却効果を反映した。
結果は次の表のとおりである。
【0049】
3.実施例1と比較例1~5の両面恒温織物について、通気性の検出を行い、具体的な手順は、通気度測定器を用いて、定差圧流量測定法を用いて、サンプルを通気度測定器に装着し、サンプルの両側に一定の差圧が形成されるように圧力を調節し、一定時間内にサンプルの所定面積を垂直に通過する気流流量を測定して、異なる両面恒温織物の通気率(L/h)を求める。
【0050】
以上のことから、本願は総合的に、その温度調節機能が良好で、かつその通気性が全体的に良好であることがわかる。
【0051】
本発明では、前述の恒温両面織物は量産可能であり、繊維の表面構造を修飾し、繊維を改質することにより、この織物は、暑い時には輻射放熱と片方向導湿による降温、寒い時には熱反射による保温が可能となり、人体の温度制御の服装製造に応用できる。
【0052】
本文では、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」などは関連部分間の相対的な位置関係を示すためにのみ使用され、これらの関連部分の絶対的な位置を限定するものではない。
【0053】
本文では、「第一」、「第二」などは互いに区別するためのものであり、重要度や順序、および互いに存在する前提などを示すものではない。
【0054】
本文では、「等しい」、「同じ」などは、厳密な数学的および/または幾何学的な意味での制限ではなく、当業者が理解でき、かつ製造または使用などで許容される誤差も含む。
【0055】
特に明記されていない限り、本文中の数値範囲には、その両端点内の全範囲だけでなく、その中に含まれるいくつかのサブ範囲も含まれる。
【0056】
以上、添付図面を参照して本願の好ましい具体的な実施の形態および実施例について詳細に説明するが、本願は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない、当業者の有する知識の範囲内において、本願の着想を逸脱することなく種々の変更を加えることが可能である。